説明

強化燻薪の製造方法

【課題】 柔らかで美しい色調と美的感覚とを保持すると共に、従来からの防腐性、防黴性、防虫性、防湿性、防水性、防油性、防臭性及び低水分化による高発熱量等の特性を保持させた琥珀色を呈する強化燻薪の製造方法の提供。
【解決手段】 一定サイズに揃えた薪材を含水率を20%以下に乾燥させた後、これをステンレス製の籠状部材に収容し、該籠状部材に入れたままステンレス製タンクに入れた木酢液に浸漬し、該薪材の芯部にまで木酢液を含浸させる。その後、含浸済みの薪材を取り出して含水率20〜25%に乾燥させ、これを燻煙炉に入れ、温度200〜230℃の下で2日間燻煙処理した後、含水率5〜15%に乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材に木酢液を含浸させた後、燻煙処理を施すことで木材の持つ特性に加えて防腐性、防黴性、防虫性、防湿性、高発熱量化の性質を備え、かつ琥珀色を呈する強化燻薪の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燻薪とは、生薪を燻煙処理し、乾燥と初期熱分解とによって含水率を調整した薪を云うものである。キャンプ場等で使う携帯用燃料や地震等の際の非常時用燃料として用いられ、木材の持つ特性に加えた防腐性、防黴性、防虫性、防湿性、高発熱量化を備えたものである。
【0003】
このような燻薪を製造する技術としては次のようなものが提案されている。
その第1例は「木材に木酢液或いは木タールを含浸せしめた後、燻材処理を施す木材の処理方法」である。
即ち、木材を木酢液、或いは木タールに1分間程度浸して、木材に木酢液、或いは木タールを木材の表面から5〜6mm程度浸透させ、これを燻材処理釜に入れて温度150〜230℃の下で2〜11時間程度加熱燻材処理することによって、木材中に木酢液、或いは木タールの有効成分を付加浸透させ、同時に部分反応により一部を改質し、水分を蒸発させると共に木酢液、或いは木タールを付加固定させるもので、含水率20%以下に乾燥した木材処理物を得るとするものである(特許文献1)。
【0004】
第2例は「生薪に木酢液を含浸させ、乾溜窯に入れて乾溜し表面を熱分解して木炭とは異なる褐色に着色した燻薪」を得るものであって、生薪に木酢液を含浸させ、これを含水率40%程度まで乾燥し、乾溜窯に入れて更に含水率20%以下に乾燥した後、温度230〜250℃の下で約1時間乾溜して、表面を熱分解し褐色に着色させた強化燻薪を得るとするものである(特許文献2)。
【0005】
前述の第1例は、木材を木酢液、或いは木タールに浸してから加熱燻材処理を行うことで、ヘミセルロースの分解と、加熱と煙とによる木酢成分の浸透固定とによって、本来の木材の性質に加えて有効な防腐性、防黴性、防虫性、防湿性、防水性を加え、低水分軽量化による高発熱量化等の特性を高めたとされるものであり、燻薪を含む従来と同じ黒色乃至黒褐色の木材処理物を得る代表的な提案である。
【0006】
また第2例は、生薪に木酢液を含浸させてから加熱処理を行うが、この加熱処理として燻煙処理ではなく、乾溜窯による空気を供給しない乾溜加熱を採用したものである。即ち、乾溜窯による乾溜なので薪の表面の着火燃焼や木質セルロースの炭化分解は発生せず、薪の表面は、一般の燻煙処理をしたものとは異なる「褐色」を呈したものとなり、かつ乾溜過程で木酢液が薪内部に浸透して防腐防虫効果を高め、更に着火性の良いものであるとされる燻薪の提案である。
【0007】
しかし、以上のように、特許文献1、2及びその他の従来の燻薪は、その色調が黒色又は褐色であって、いかにも見た感じが暗くて美観に乏しく、汚らしく、手で直接触れることに躊躇いを感じがちなものである。
発明者らはこの点に着眼し、柔らかで美しい色調と美的感覚とを保持させると共に、これまでの燻薪の利点を持った強化燻薪を得る検討を鋭意行った結果、問題解決に到達したものである。
【0008】
【特許文献1】特公昭61−13964号公報
【特許文献2】実用新案登録第2520478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、柔らかで美しい色調と美的感覚とを保持すると共に、従来からの防腐性、防黴性、防虫性、防湿性、防水性、防油性、防臭性及び低水分化による高発熱量等の特性を保持させた琥珀色を呈する強化燻薪の製造方法を提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1は、薪材をステンレス製タンク中で木酢液に浸漬して含浸させ、その後、木酢液の含浸済みの薪材を取り出して乾燥させ、これを燻煙炉に入れて燻煙処理した後、乾燥させることにより琥珀色を呈する強化燻薪を製造する強化燻薪の製造方法である。
【0011】
本発明の2は、本発明の1の強化燻薪の製造方法に於いて、前記薪材をステンレス製タンク中で木酢液に浸漬して含浸させる工程を、該薪材をステンレス製の籠状部材に充填した上で行うこととしたものである。
【0012】
本発明の3は、本発明の1又は2の強化燻薪の製造方法に於いて、前記ステンレス製タンク中に於ける薪材の木酢液の含浸を、その芯部にまで行うこととしたものである。
【0013】
本発明の4は、本発明の1、2又は3の強化燻薪の製造方法に於いて、前記薪材を、ステンレス製タンク中で木酢液に浸漬して含浸させる工程に先だって、該薪材を乾燥させることとしたものである。
【0014】
本発明の5は、本発明の1、2、3又は4の強化燻薪の製造方法に於いて、前記ステンレス製タンク中から取り出した木酢液含浸済みの薪材の乾燥を、含水率20〜25%に行うこととしたものである。
【0015】
本発明の6は、本発明の1、2、3、4又は5の強化燻薪の製造方法に於いて、前記燻煙炉中での薪材の燻煙処理を、温度200〜230℃の下で行うこととしたものである。
【0016】
本発明の7は、本発明の1、2、3、4、5又は6の強化燻薪の製造方法に於いて、燻煙処理後の薪材の乾燥を、含水率5〜15%に行うこととしたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の1の強化燻薪の製造方法によれば、得られる強化燻薪は、その外観が透明感のある「琥珀色」を呈した見た目が柔らかで美しい色調のものとなる。これによって一目見ただけではっきりと他の燻薪と区別ができ、木炭と間違えることもなくなる。また見て美しいのみでなく、これを直接手で掴んでもその色が手に付着することもなく、極めて扱いやすいものともなる。
【0018】
更に本発明によって得られる強化燻薪は、特に防腐性、防黴性、防虫性、防湿性、防水性、防油性、防臭性に優れており、更に着火性及び燃焼性も良く、発熱量も高いので、携帯用燃料や非常時用燃料としても効果的に利用することができる。また燻煙処理を施してあるため容易に水分を吸収せず、前記低水分状態を維持し、それに基づく優れた性能も長期にわたって維持することができるものである。
【0019】
また原料である薪材としては間伐材や製材背板等の廃材を有効に使って製造することもできるので、低コストで生産することができる。
【0020】
本発明の2の強化燻薪の製造方法によれば、薪材をステンレス製の籠状部材に充填した上でステンレス製タンク中で木酢液に浸漬することとしたため、浸す操作が容易になるのは云うまでもなく、その後に於ける薪材の琥珀色の発色をより確実なものとすることができる。
【0021】
本発明の3の強化燻薪の製造方法によれば、これによって得られる強化燻薪は、木酢液を薪材の芯部にまで含浸させてから燻煙処理を行うものである結果、燃焼時に煙の発生の殆どないものとなって扱いやすくかつ環境にも優しいものとなる。
【0022】
本発明の4の強化燻薪の製造方法によれば、木酢液の浸透が良好に行われ、芯部までの浸透も速やかに行われるようになり、燃焼時に煙の発生が少ない等の品質の良い燻薪を得ることができる。
【0023】
本発明の5の強化燻薪の製造方法によれば、燻煙工程を良好に行い得ることになり、品質の良い燻薪を得ることができる。
【0024】
本発明の6の強化燻薪の製造方法によれば、木酢液の有効成分が乾燥と同時に薪材組織中に良好に定着され、品質の良い燻薪を得ることができる。
【0025】
本発明の7の強化燻薪の製造方法によれば、得られる燻薪の含水率を5〜15%まで低下させているので、特に防腐性、防黴性、防虫性等に優れ、更に燃焼性や着火性も良く、発熱量も十分に高いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、 薪材をステンレス製タンク中で木酢液に浸漬して含浸させ、その後、木酢液の含浸済みの薪材を取り出して乾燥させ、これを燻煙炉に入れて燻煙処理した後、乾燥させることにより琥珀色を呈する強化燻薪を製造する強化燻薪の製造方法
【0027】
即ち、本発明の琥珀色を呈する強化燻薪の製造方法は、基本的に、次の4工程の処理操作によって製造される。
第1工程・・・・・ステンレス製タンクの中での木酢液の含浸
第2工程・・・・・木酢液含浸後の乾燥
第3工程・・・・・燻煙窯の中での燻煙処理
第4工程・・・・・燻煙処理後の乾燥
【0028】
被処理材である薪材としては、その材種としてブナ、ナラ、スギ、カシ、マツ、ヒノキ、カエデ、タケ等の容易に入手できるものを用いることができ、特に材種を限定する必要はない。またこれらの薪材としては間伐材や製材背板などを用いることもできる。或いは廃材等も利用可能である。
【0029】
第1工程はステンレス製タンクの中での木酢液の含浸であるが、これに先立って薪材を一定サイズに揃え、更に乾燥させておくのが好ましい。
【0030】
多くの場合、薪材は適正サイズに揃っているという訳にはいかず、いろいろな太さや長さのものが混在している。そこで前記第1工程に先立って薪材を一定サイズ化しておくのが適当である。サイズは特定のそれに限定されないが、木口の太さを50〜60mm程度に、長さを250mm程度に、適宜な工具を用いて分割切断して揃えるのが適当である。このように一定サイズにすることにより処理を均一化し、同時に処理される薪材について全て一定水準の処理効果を得ることができる。また製品となった時に取扱い易いものともなる。
【0031】
これらの薪材は、自然乾燥によって、或いは乾燥機による強制乾燥によって乾燥させるのが適当である。含水率20%以下に乾燥させるのが好ましい。この程度に乾燥することにより後工程での木酢液の含浸を良好なものとすることができる。
【0032】
前記のように、以上の前処理の後に第1工程を実行するのが適当である。この第1工程はステンレス製タンクの中での木酢液の含浸である。
【0033】
まず前記のように、例えば、含水率20%以下に乾燥した薪材を、ステンレス製タンク中で木酢液中に浸漬し、該薪材に木酢液を含浸させる。この木酢液の含浸は薪材の芯部にまで行うのが適当である。薪材の木酢液への浸漬は、木酢液を予め入れてあるステンレス製タンク中に薪材を装入することで行っても、薪材をステンレス製タンク中に装入した後に木酢液を入れることで行うこととしても良いのは云うまでもない。
【0034】
薪材を木酢液中に浸漬するためのタンクは、ステンレス製であることが重要であって、他の材質のタンク、例えば、鉄製やプラスチック製のタンクでは不適である。これらの材質のタンクでは得られる強化燻薪が琥珀色にならない。なおこの場合に用いるのに適当なタンクのステンレス組成は、ニッケル8〜12%、クロム18〜20%を含む、一般に広く採用されているSUS−304が有効である。
【0035】
またステンレス製タンク中で木酢液に浸漬する際には、薪材を予めステンレス製の籠状部材に収容し、該籠状部材に収容した状態で該ステンレス製タンク中に装入するのが適当である。既述のように、木酢液は予め該ステンレス製タンク中に入れておいても後から入れることとして良い。いずれにしてもステンレス製の籠状部材に収容した薪材をステンレス製タンク中で木酢液に浸漬して木酢液を含浸させるべきである。木酢液は薪材の芯部にまで含浸させるのが好ましいのは先に述べたとおりである。
【0036】
この籠状部材もステンレス製であることが得られる燻薪を確実に琥珀色にするために極めて重要である。なおステンレス製タンク中に装入した薪材は、個別に装入した場合も、ステンレス製の籠状部材に収容して装入した場合も、効率的に木酢液を含浸させるために、何らかの手段で浮き上がりを防止すべきである。また薪材相互に適当な隙間が空くように装入量を調整すべきである。
【0037】
このように薪材をステンレス製の籠状部材に収容した上でステンレス製タンクの中に装入することとすれば、適当な吊り上げ機器等を用いて遠隔装入又は引き上げ操作が可能となるため、例えば、予め木酢液の入れてあるタンクに装入する場合であっても、作業者が誤って木酢液を浴びるようなこともなく、安全確実に薪材の木酢液への浸漬作業を行うことができる。
【0038】
またステンレス製タンクに入れた木酢液で薪材を含浸処理して燻煙したものが琥珀色を呈した燻薪になる理由については、必ずしも明らかではないが、薪材の組成分と、木酢液の組成分と、ステンレスの組成分とがお互いに複雑に絡み合って琥珀色を呈するようになると推定される。いずれにしても本発明方法によって得られる燻薪は琥珀色になり、その色は安定し、手で触れてもその色が手に付着するようなこともない。
【0039】
木酢液は、木材の熱分解の際に生成される水溶性成分であって、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クロトン酸等のカルボン酸類、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パレルアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン等のケトン類、メチルアルコール、エチルアルコール、アリルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール類、ギ酸メチルエステル、酢酸メチルエステル等のエステル類、メチルアミン、ジメチルアミン等のアミン類、キシロール、チモール等の炭化水素類など数十種類の有機物質を含むものである。その主成分は酢酸、メチルアルコール及び溶解タール等で、その水溶液はpH2〜3の酸性を呈し、腐朽菌の生育を阻害する性質を有することから、古くから木材に塗被又は含浸させて防腐・防虫剤として利用されている。
【0040】
該木酢液は、種々の割合で水で希釈したものを使用することができる。例えば、水で1:1等に希釈したものが採用できる。
【0041】
第2工程は木酢液含浸後の乾燥である。木酢液を含浸させた薪材は、前記ステンレス製タンクから取り出し、自然乾燥又は乾燥機による強制乾燥によって十分に乾燥させる。例えば、含水率20〜25%までに乾燥させる。薪材を、前記のように、ステンレス製の籠状部材に充填して木酢液に浸漬した場合は、該籠状部材に収容したままで取り出して、木酢液の滴りがなくなるまで水切りを行った後、該籠状部材から取り出した上で、自然乾燥によって、或いは乾燥機による強制乾燥によって乾燥させる。前記のように、含水率20〜25%になるまで乾燥させるのが適当である。
【0042】
第3工程は燻煙窯の中での燻煙処理である。木酢液を含浸させて乾燥させた薪材を燻薪釜の中に入れて燻煙処理する。例えば、温度200〜230℃の下で2日間程度燻煙処理する。この燻煙処理によって琥珀色を呈するものとなる。燻薪釜としてはバッチ式隔壁燻薪釜や連続式燻薪釜等を自由に用いることができる。燻煙材としてはスギ、ヒノキ、コナラ、クヌギ、サクラなどのチップやバーク等が採用され得る。特定の樹種のそれに限定されない。
【0043】
第4工程は燻煙処理を行った後の乾燥である。燻薪釜から燻煙処理を行った燻薪を取り出し、自然乾燥によって、或いは乾燥機による強制乾燥によって乾燥させる。含水率5〜15%程度に乾燥するのが好ましい。この程度に乾燥することによってより品質の優れた強化燻薪となる。
【0044】
このような第1工程〜第4工程までの一連の処理によって本発明による強化燻薪が得られる。得られた強化燻薪は透明感のある美しい柔らかな琥珀色を呈したものとなっている。また、前記したように、その琥珀色の発色は安定しており、手で触れてもそれが手に付着するとか、色が落ちるようなことはない。
【実施例1】
【0045】
薪材としてスギ材を採用し、伐採後1ケ月間自然乾燥させたものを準備した。
まず薪材を木口の太さ60mm、長さ250mm程度のサイズに適宜な工具を用いて揃えた。次いでこの一定サイズ化した薪材を雨が当たらない風通しのよい建家の中に積み上げ、2ケ月間放置して自然乾燥を行い、含水率を20%以下にまで乾燥させた。なお含水率は、木材水分計(株式会社ケット化学研究所)を使用して測定した(以下同じ)。
【0046】
乾燥した薪材をステンレス製(SUS−304)の籠状部材中に収容し、その状態で木酢液を所定の水位までに入れたステンレス製(SUS−304)タンクの中に装入し、薪材を木酢液中に浸漬した。薪材は、落とし蓋部材で籠状部材を上方から抑えておくことにより浮き上がりを防止し、常時木酢液中に浸漬した状態を維持した。こうして7日間放置し、薪材の芯部にまで木酢液を含浸させた。芯部にまで木酢液が含浸したことは、一部の薪材を切断して目視によって確認した。
【0047】
ここで用いた木酢液は、その原液を水道水で、1:1の割合に希釈したものであり、そのpHは2〜3である。前記ステンレス製タンクの容量は縦、横及び高さがそれぞれ2mの寸法のものであり、これに籠状部材に収容して装入した薪材は、相互間に十分に隙間を確保し得る状態とした。浸漬期間中に木酢液の水位が低下した場合は、浸漬した薪材が水面から露出しないように木酢液の追加を行った。追加した木酢液も水道水で1:1の割合に希釈したものである。なお上記の処理は常温下で行った。
【0048】
前記期間(7日間)の経過後、ステンレス製タンクの中から前記籠状部材を引き上げ、複数の棒材を横置きした台上に載せて水切りを行った。木酢液の滴下がなくなった後、更に風通しのよい建家の中に積み上げて、3日間の自然乾燥を行い、含水率20〜25%に乾燥させた。
【0049】
こうして木酢液を含浸させて乾燥させた薪材を複数台のトロッコに積み上げて隔壁式燻煙釜(バッチ式)の中に送り込み、温度200〜230℃の下で2日間燻煙処理をした。燻煙材としてはスギ材のチップを用いた。
【0050】
その後、燻煙釜から燻煙処理の済んだ薪材を取り出し、風通しのよい建家の中に積み上げて5日間放置して自然乾燥し、含水率約13%に乾燥させた。
この一連の操作によって琥珀色を呈したスギ材の強化燻薪を得た。
【実施例2】
【0051】
薪材としてナラ材を採用し、伐採後1ケ月間自然乾燥させたものを準備した。
上記薪材を、木口の太さ60mm、長さ250mm程度に揃えた。
次いで一定サイズに揃えた薪材を風通しの良い建家内に積み上げ2ヶ月間放置して含水率を20%以下に乾燥させた。
【0052】
その後、乾燥した薪材をステンレス製(SUS−304)の籠状部材に収容した上で、ステンレス製(SUS−304)タンクの所定の水位までに入れた木酢液中に浸漬した。薪材が浮き上がって液面から露出しないように、該籠状部材を落とし蓋部材で上方から抑えておき、薪材の芯部にまで木酢液を含浸させた。薪材の木酢液への浸漬は7日間継続した。
【0053】
木酢液を含浸させた薪材をステンレス製の籠状部材に収容したままステンレス製タンクから取り出し、複数の棒材を横置きした台上に載せて水切りを行い、木酢液の滴下がなくなった後、該籠状部材から取り出し、温度80℃に設定した乾燥機の中に入れて含水率が20〜25%になるまで乾燥した。
【0054】
乾燥した薪材を複数台のトロッコに積み上げて連続式燻煙釜の中に送り込み、温度200〜230℃の下で2日間燻煙処理をした。燻煙材としてはナラ材のチップを用いた。
その後、その燻煙釜から燻煙処理が済んだ薪材を取り出し、乾燥機に入れて強制乾燥し含水率約10%に乾燥した。
この一連の操作によって琥珀色を呈したナラ材の強化燻薪を得た。
【比較例】
【0055】
実施例1と同様の寸法形状の杉材を薪材として採用し、これを木酢液を入れた鉄製のタンク中に1分間浸漬し、取り出した後、実施例1と同様の連続式燻煙釜にトロッコに積み上げて送り込み、温度150℃〜230℃の下で20時間燻煙処理をした。その一連の作業によってスギ材の強化燻薪を得た。



【0056】
実施例1、実施例2及び比較例で得た燻薪の品質を次の表1に示す。
【表1】

【0057】
表1に示すように実施例1及び2の強化燻薪は、透明感のある琥珀色を呈しており、一目で他と異なる柔らかで美しい色調と美的感覚とを保持している。手で接触しても汚れが付かない。更に強化燻薪として燻薪一般の優れた品質を保持しており、更に加えて特に発熱量が大きい点及び発煙性の少ない点に比較例を越える利点を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薪材をステンレス製タンク中で木酢液に浸漬して含浸させ、その後、木酢液の含浸済みの薪材を取り出して乾燥させ、これを燻煙炉に入れて燻煙処理した後、乾燥させることにより琥珀色を呈する強化燻薪を製造する強化燻薪の製造方法。
【請求項2】
前記薪材をステンレス製タンク中で木酢液に浸漬して含浸させる工程を、該薪材をステンレス製の籠状部材に充填した上で行うこととした請求項1の強化燻薪の製造方法。
【請求項3】
前記ステンレス製タンク中に於ける薪材の木酢液の含浸を、その芯部にまで行うこととした請求項1又は2の強化燻薪の製造方法。
【請求項4】
前記薪材を、ステンレス製タンク中で木酢液に浸漬して含浸させる工程に先だって、該薪材を乾燥させることとした請求項1、2又は3の強化燻薪の製造方法。
【請求項5】
前記ステンレス製タンク中から取り出した木酢液含浸済みの薪材の乾燥を、含水率20〜25%に行うこととした請求項1、2、3又は4の強化燻薪の製造方法。
【請求項6】
前記燻煙炉中での薪材の燻煙処理を、温度200〜230℃の下で行うこととした請求項1、2、3、4又は5の強化燻薪の製造方法。
【請求項7】
燻煙処理後の薪材の乾燥を、含水率5〜15%に行うこととした請求項1、2、3、4、5又は6の強化燻薪の製造方法。

【公開番号】特開2006−289632(P2006−289632A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109528(P2005−109528)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(504398111)株式会社アイビーシステム (1)
【Fターム(参考)】