弾性トーションばね要素を備えたシートアセンブリ
【課題】広角度範囲で回転角度の関数として線形に進行する復元トルクを発生させる弾性トーションばね要素を備えたシートアセンブリを提供すること。
【解決手段】バックサポート44と座席ベース5の旋回運動中に、内側ケーシング12が外側ケーシング14に対して回転軸6上で回転角度φだけ回転できるように、支持部材42を弾性トーションばね要素10の外側ケーシング14に、バックサポート44と座席ベース5を弾性トーションばね要素10の内側ケーシング12に、それぞれ連結し、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間に配置した弾性部材16が変形することにより、弾性部材16が外側ケーシング14と内側ケーシング12との間に回転に対抗して作動する復元トルクを発生させるシートアセンブリ1において、内側ケーシング12の接触面12a及び/または外側ケーシング14の接触面14aを非円形断面に形成した。
【解決手段】バックサポート44と座席ベース5の旋回運動中に、内側ケーシング12が外側ケーシング14に対して回転軸6上で回転角度φだけ回転できるように、支持部材42を弾性トーションばね要素10の外側ケーシング14に、バックサポート44と座席ベース5を弾性トーションばね要素10の内側ケーシング12に、それぞれ連結し、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間に配置した弾性部材16が変形することにより、弾性部材16が外側ケーシング14と内側ケーシング12との間に回転に対抗して作動する復元トルクを発生させるシートアセンブリ1において、内側ケーシング12の接触面12a及び/または外側ケーシング14の接触面14aを非円形断面に形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席ベース、バックサポート及びバックサポート及び/または座席ベース用の支持部材を備え、バックサポート及び/または座席ベースは、バックサポート及び/または座席ベースが回転軸上で旋回運動することができるように支持部材に旋回自在に配置されており、また、バックサポートと支持部材との間、及び/または座席ベースと支持部材との間で力を伝達する少なくとも一つの弾性トーションばね要素を備えたシートアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、内側ケーシングと、この内側ケーシングを取り囲む外側ケーシングと、内側ケーシングと外側ケーシングとの間の空間に配置された弾性体を含む弾性トーションばね要素は公知である。この配置では、一般に、内側ケーシングは、この内側ケーシングに弾性体が接触する少なくとも一つの接触面を備えており、また、外側ケーシングは、この外側ケーシングに弾性体が接触する少なくともひとつの接触面を備えている。さらに、弾性トーションばね要素の内側ケーシング及び/または外側ケーシングは、回転軸上で回転するように配置されており、内側ケーシングが外側ケーシングに対して移動する回転中に、また、この過程で、弾性部材が変形することにより、該弾性部材が、外側ケーシングと内側ケーシングとの間に、回転に対抗するように作動する復元トルクを発生させるように、回転軸上の回転角度によって、内側ケーシング及び/または外側ケーシングを回転させることができる。
【0003】
このような弾性トーションばね要素は、例えば、第2ボディに対して第1ボディが移動する間に、それぞれの移動に反作用する復元力を発生させるように、互いに相対的に移動することができる第1ボディと第2ボディとの間でパワーを伝達する装置に使用される。第1の力を第1ボディに作用させて、その結果、第1のボディを第2のボディに対して移動させる場合、パワーを伝達する装置は、例えば、伝達するパワーとして、第1の力に反作用する復元力を発生させるため、第1のボディは第2のボディに対して平衡する位置にあるとみなすことができる。ここで、平衡位置では、第1の力は、復元力によって相殺される。
【0004】
第1ボディと、この第1ボディに対して移動することができる第2ボディとの間でパワーを伝達する装置は、上述した形式の少なくとも一つの弾性トーションばね要素と、第1ボディを弾性トーションばね要素の外側ケーシングに連結する第1連結手段と、第2ボディを弾性トーションばね要素の内側ケーシングに連結する第2連結手段とを使用して実施することができる。このために、第1連結手段と第2連結手段は、例えば、第1ボディを弾性トーションばね要素の外側ケーシングに連結すると共に、第2ボディを弾性トーションばね要素の内側ケーシングに連結して、内側ケーシング及び/または外側ケーシングの回転軸上で所定角度の回転、すなわち、外側ケーシングに対する内側ケーシングの回転により第2ボディに対して第1ボディの移動中、また、この過程で、弾性部材の変形が発生するように、設計することができる。この配置では、弾性トーションばね要素の弾性部材は、外側ケーシングと内側ケーシングとの間に復元トルクを発生する。この復元トルクは、内側ケーシングの回転または外側ケーシングの回転に反作用する。また、この配置では、弾性トーションばね要素によって発生される復元トルクは、第2ボディに対する第1ボディの移動に反作用する復元トルクに相当する。
【0005】
上述した形式のパワー伝達装置は、機械構造分野で多くの技術に応用されている。このようなパワーを伝達する装置の応用分野の一つは、特に、例えばチェア(背もたれ付き椅子)のシートアセンブリに関連している。
【0006】
シートアセンブリは、通常、固定して配置された支持構造体を含んでいるが、しばしば、固定しないように設計される。背もたれは、支持構造体及び/または支持構造体に枢着された座席ベースに対して枢着することができる。これを可能とするために、例えば、一方では、背もたれ及び/または座席ベースの空間的配置を、シートアセンブリ上に座る人の連続的に変化する体位に合わせるか、または、例えば、同じシートアセンブリを異なる人の異なる要求、例えば、好ましい体位に関連させて異なる体格、異なる体重または異なる習性に合わせることができる。この場合、上述した形式のパワー伝達装置は、背もたれを、弾性トーションばね要素手段によって支持構造体に連結するために有利に使用することができ、また、これを可能とするために、力が背もたれに作用した場合、背もたれを所定のノーマル位置に対して旋回させて、この背もたれの旋回移動中に、弾性トーションばね要素は、背もたれを安定した平衡位置に保持するために、背もたれに作用する復元力を発生するか、または、背もたれに作用する復元トルクを発生する。これにより着座性が改善される。それに応じて、上述した形式のパワー伝達装置は、シートアセンブリの座席ベースを弾性トーションばね要素手段によって支持構造体に連結するために使用することができる。
【0007】
特許文献1にはチェア(背もたれ付き椅子)が開示されており、このチェアは、上述した形式の弾性トーションばね要素258を備えており、この要素は、回転軸上での座席支持部材の旋回移動に反作用する復元トルクを発生するために使用されている。弾性トーションばね要素258は、内側ケーシング260と外側ケーシング264を備えており、内側ケーシング260と外側ケーシング264との間の空間に弾性部材262が組み込まれている。内側ケーシングの外側に、弾性部材262が内側ケーシング260に接触する接触面を有しており、また、外側ケーシング264の内側に、弾性部材262が外側ケーシング264に接触する接触面を有している。この配置では、弾性部材262は、内側ケーシング260の接触面と外側ケーシング264の接触面に固着されているため、弾性部材262は、内側ケーシング260の接触面または外側ケーシング264の接触面のどちらに対してもスリップすることができない。
【0008】
外側ケーシング264と内側ケーシング260は円筒状となるように設計され、互いに同軸上に配置されている。外側ケーシング264は、チェアの支持構造体に保持されており、一方、内側ケーシング260は、その長手軸上で回転することができる軸250に回転するように固定されている。チェアの座席ベース32は軸250に連結されており、人の体重が座席ベース32に作用した場合、軸250がその長手軸上で回転して、座席ベース32は、所定のノーマル位置から旋回する。軸250が旋回すると、内側ケーシング260は、その長手軸方向に旋回して、そして、この過程で、外側ケーシング264に対して旋回して、その結果、弾性トーションばね要素258は、軸250または座席ベース32に作用する復元トルクを発生する。この復元トルクは、軸250の回転移動または座席ベース32の旋回移動に反作用し、また、回転角度の増加に伴って増大する。この場合の弾性トーションばね要素258は、座席ベース32が上述したノーマル位置から旋回する際に軸250に作用する最低トルクの範囲(以下、「最低復元トルク」という)が、例えば、チェアに着座する人の体重によって変化する。このために、外側ケーシング264は、その長手軸上で、チェアの支持構造体に配置された旋回機構手段によって旋回することができ、また、軸250の長手軸上で旋回することができる。ここで、外側ケーシング264は、チェアの支持構造体、内側ケーシング260または軸250に対して旋回する。外側ケーシング264が内側ケーシング260に対して回転することによって、弾性トーションばね要素258にはプレテンションがかけられる。ここで、外側ケーシング264が内側ケーシング260に対して回転することによる回転角度と、座席ベース32がノーマル位置にある場合の「最低復元トルク」の範囲が決定される。
【0009】
外側ケーシング264及び内側ケーシング260の形状が円筒形状であるため、弾性部材262に隣接する外側ケーシング264の接触面と内側ケーシング260の接触面は円形であり、また、平面部分は軸250に直交する。軸250がその長手軸方向上で回転する間に、弾性部材262は変形して、引張荷重を受ける。
【0010】
弾性トーションばね要素258は、軸250のある回転角度までの回転中に発生する復元トルクが回転角度の関数として比較的わずかな上昇を示すという点で不利であり、この場合、特に、弾性トーションばね要素258はプレテンションがかけられないか、或いは、ほんの少しだけプレテンションがかけられるだけである。このことは、例えば、体重が重い人に最適な着座快適性を提供するために、最低復元トルクが大きく設定された場合、弾性トーションばね要素258は非常に高い範囲でプレテンションがかけられるというさらなる不利に導くことになる。さらに、軸250の回転角度の関数としての復元トルクは、例えば、軸250が0°からほぼ70°の範囲の回転角度で回転される場合に、非線形(累進的に)で急激に増大する。シートアセンブリに関する応用との関連では、上述した回転角度範囲における復元トルクの大幅な非線形性は好ましくない。その理由は、このような非線形性は、一般に、使用者に不快だと思われるからである。このように、有効な回転角度範囲が減少することは、不快である。さらに、大きなプレテンションにより、弾性部材262は常に大きな荷重にさらされて、より早く疲労を感じてしまう。その結果、弾性トーションばね要素258は、サービス寿命が短くなり、頻繁に取り替える必要がある。さらに、弾性トーションばね要素258のプレテンションの設定が面倒であり、また、時間を浪費して、さらに、外側ケーシング264は、最低復元トルクに設定するために、内側ケーシング260に対して大きな角度で調整する必要があるという不利がある。
【0011】
特許文献2には、上述した形式の別の弾性トーションばね要素が開示されている。この弾性トーションばね要素は、ベースプレートと、このベースプレートに移動可能に保持されたモーターとの間でパワーを伝達する装置に使用されている。この弾性トーションばね要素は、また、内側ケーシングと、この内側ケーシングを取り囲む外側ケーシングを備えており、内側ケーシング及び/または外側ケーシングは、回転軸上に回転自在に配置されている。内側ケーシングの外面と外側ケーシングの内面は、回転軸に直交する断面四角形状の平面部分を備えている。内側ケーシングと外側ケーシングとの間に空間が存在する。「ノーマル位置」において、弾性トーションばね要素の内側ケーシングが外側ケーシングに対して回転軸上で45°だけ回転することにより、空間は、外側ケーシングの4つのコーナー部に形成された4つの小区画から構成され、回転軸に直交する断面で見た場合に三角形の形状となる。どの場合でも4つの小区画には、弾性部材(好適にはゴムから形成される)が挿入される。非変形状態では、弾性部材は円筒形状である。小区画空間に配置する前に、弾性部材は圧縮され、圧縮状態では、各小区画が弾性部材の一つで占められるように小区画空間に挿入され、各弾性部材は、内側ケーシングの外面及び外側ケーシングの内面に対して所定の圧力で静止している。ここで、弾性部材は、内側ケーシング及び外側ケーシングのどちらにも固着されていない。この弾性トーションばね要素の4つの弾性部材は同一であるため、弾性トーションばね要素の内側ケーシングは、外側ケーシングまたは内側ケーシングに外力が作用しないように、弾性部材によって上述したノーマル位置に保持される。ここで、外力は、外側ケーシングに対して、内側ケーシングを回転軸上で回転させることがある。しかしながら、内側ケーシングが外側ケーシングに対して回転軸上で回転した場合、4つの弾性部材は、内側ケーシングと外側ケーシングとの間に復元トルクを発生する。この復元トルクは、回転移動に反作用して、回転角度の増大に伴って増加する。この弾性トーションばね要素には、様々な欠点がある。内側ケーシングは、外側ケーシングに対して、両回転方向に同じ範囲だけ、最大でも、ほぼ30°まで回転軸上で回転することができる。ノーマル位置に比べて30°以上回転することはできない。内側ケーシングの回転中、弾性トーションばね要素の復元トルクは、0°から30°の範囲の回転角度(外側ケーシングに関連する上述したノーマル位置に対しての回転角度)の関数として、非線形で急激に増大する。さらに、内側ケーシングが、内側ケーシングまたは外側ケーシングに対して30°以上回転した場合には、弾性部材がスリップしてしまうという危険性がある。この配置では、内側ケーシングは、不安定な位置に移動することができるため、弾性部材は、もはや復元トルクを発生することができない。この復元トルクは、内側ケーシングを、外側ケーシングに対してノーマル位置に確実に戻すように移動させる。多くの適用例では、このような不安定さは望ましくないし、例えば、内側ケーシングがノーマル位置に対してほぼ30°の限界に達した場合に内側ケーシングの更なる回転を阻止する安全手段を使用して阻む必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許公開第1486142号公報
【特許文献2】英国特許公開第2070727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、本発明の目的は、上述した欠点を回避して、内側ケーシングを外側ケーシングに対して30°以上まで回転させて、回転角度の関数として比較的急激に増大すると共に、できるだけ広い角度範囲で回転角度の関数として基本的に線形に進行する復元トルクを発生させることができる弾性トーションばね要素を備えたシートアセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的は、請求項1の特徴を備えたシートアセンブリ、または、請求項2の特徴を備えたシートアセンブリによって達成される。
【0015】
本発明に従うシートアセンブリは、座席ベースと、バックサポートと、バックサポート及び/または座席ベース用の支持部材と、を含んでおり、バックサポート及び/または座席ベースは、バックサポート及び/または座席ベースが回転軸上で旋回運動することができるように、支持部材に旋回自在にヒンジ結合されている。シートアセンブリは、さらに、少なくとも一つの弾性トーションばね要素を含んでいる。
【0016】
弾性トーションばね要素は、内側ケーシングと、この内側ケーシングを取り囲んでいる外側ケーシングと、内側ケーシングと外側ケーシングとの間の空間に配置された弾性部材と、を含んでいる。内側ケーシングは、弾性部材が内側ケーシングに接触する少なくとも一つの接触面を備えており、また、外側ケーシングは、弾性部材が外側ケーシングに接触する少なくとも一つの接触面を備えており、また、弾性部材は、内側ケーシングの接触面と外側ケーシングの接触面に固着されている。さらに、弾性トーションばね要素の内側ケーシング及び/または外側ケーシングは、回転軸上に回転自在に配置されている。
【0017】
第1改良例によれば、支持部材は、弾性トーションばね要素の外側ケーシングに連結されており、バックサポート及び/または座席ベースは、このバックサポート及び/または座席ベースの旋回運動中に、内側ケーシングが回転軸上で回転角度だけ回転すると共に、内側ケーシングが外側ケーシングに対して回転移動できるように弾性トーションばね要素の内側ケーシングに連結されており、また、この過程で、弾性部材が変形することにより、弾性部材が、外側ケーシングと内側ケーシングとの間に復元トルクを発生する。この復元トルクは回転に対抗するように作用する。
【0018】
第2改良例(すなわち、上記第1改良例とは別)によれば、支持部材は、弾性トーションばね要素の内側ケーシングに連結されており、バックサポート及び/または座席ベースは、このバックサポート及び/または座席ベースの旋回運動中に、外側ケーシングが回転軸上で回転角度だけ回転すると共に、内側ケーシングが外側ケーシングに対して回転移動できるように弾性トーションばね要素の外側ケーシングに連結されており、また、この過程で、弾性部材が変形することにより、弾性部材が、外側ケーシングと内側ケーシングとの間に復元トルクを発生する。この復元トルクは回転に対抗するように作用する。
【0019】
本発明によれば、内側ケーシング及び/または外側ケーシングの接触面は、内側ケーシングの接触面の、回転軸に直交する平面部分は非円形断面に形成され、及び/または、外側ケーシングの接触面の、回転軸に直交する平面部分は非円形断面に形成されるように設計されている。弾性部材は、例えば、ゴムから形成されている。
【0020】
本発明によれば、弾性トーションばね要素は、上述した特許文献1の弾性トーションばね要素とは異なっており、回転軸に直交する内側ケーシングの接触面の平面部分、及び/または、回転軸に直交する外側ケーシングの接触面の平面部分は非円形形状であるが、一方、特許文献1の弾性トーションばね要素の、回転軸に直交する内側ケーシングの接触面の平面部分、及び/または、外側ケーシングの接触面は、二つの同心円の形状の断面を有している。特許文献1の弾性トーションばね要素の場合は、内側ケーシングと外側ケーシングの接触面は、結果的に、弾性トーションばね要素の回転軸に対して対称に回転するように設計される。特に、その結果、弾性トーションばね要素の弾性部材は、外側ケーシングに対して内側ケーシングの回転中に、もっぱら引っ張り荷重にさらされ、弾性部材の機械的張力の空間分布が、弾性トーションばね要素の回転軸に対して対称に回転するように変形する。
これに対して、本発明の弾性トーションばね要素の場合、内側ケーシングと外側ケーシングの少なくとも一つの接触面は、回転軸に対して対称に回転しないように設計されている。その結果、本発明の弾性トーションばね要素の弾性部材と、特許文献1の弾性トーションばね要素の弾性部材との相違により、弾性トーションばね要素の内側ケーシングが弾性トーションばね要素の外側ケーシングに対して回転軸上で回転する場合に異なるように変形する。その結果、本発明に従う弾性トーションばね要素の外側ケーシングまたは内側ケーシングの断面形状により、(特許文献1の弾性トーションばね要素と比較した場合)(特に小さい回転角度の範囲で)回転角度の関数として急激に増大するように復元トルクを発生する。この比較は、弾性トーションばね要素の弾性部材が、同じエラストマー、例えば、ゴムから形成されていることを前提としている。その結果、本発明の弾性トーションばね要素は、この弾性トーションばね要素が所定の最低復元トルクを発生させて、弾性部材にプレテンションをかけるために、内側ケーシングは、回転軸上で外側ケーシングに対して小さい回転角度で回転される必要があるという点で有利に組み付けられる。このように、本発明に従う弾性トーションばね要素は、弾性部材がより少ない程度で伸びて、その結果、損傷や疲労することがないという利点を提供する。
【0021】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素は、特に、弾性部材が、内側ケーシングの接触面と外側ケーシングの接触面に固着されているという点で、上述した特許文献2の弾性トーションばね要素とは異なっている。このことは、内側ケーシングが外側ケーシングに対して回転軸上で回転して、また、この過程で、弾性部材が変形した場合でも、弾性部材は、上述した接触面の範囲では、内側ケーシングの接触面に対しても、外側ケーシングの接触面に対してもスライドすることがないという利点を提供する。弾性部材が内側ケーシングと外側ケーシングに固着されている点で、本発明に従う弾性トーションばね要素の場合は、(外側ケーシングに対して内側ケーシングの少なくとも特定の位置において)弾性部材はプレテンションがかけられることがなく、また、圧縮されることもなく、内側ケーシングと外側ケーシングとの間の空間に弾性部材を挿入することが可能となる。この結果、特に、特許文献2の弾性トーションばね要素と比較した場合、(外側ケーシングに対して所定のノーマル位置からスタートする)内側ケーシングは、弾性部材を損傷させることなく、外側ケーシングに対して、30°を越える回転角度範囲、例えば、0°から80°の回転角度範囲で回転することができる。さらに、弾性部材は、本発明の弾性トーションばね要素が外側ケーシングに対して内側ケーシングの回転運動中に、例えば、0°から80°の回転角度範囲で回転角度の関数として基本的に線形に進行する復元トルクを発生するように設計することができる。
【0022】
上述した第1改良例の改善例では、弾性トーションばね要素の外側ケーシングが支持部材に連結されており、また、弾性トーションばね要素の内側ケーシングは、回転軸上で回転することができるようにベアリング軸に回転自在に連結されており、ベアリング軸は、バックサポート及び/または座席ベースに回転するように固着されている。
【0023】
上述した第2改良例の改善例では、弾性トーションばね要素の内側ケーシングが支持部材に連結されており、また、弾性トーションばね要素の外側ケーシングは、回転軸上で回転することができるようにベアリング軸に回転自在に連結されており、ベアリング軸は、バックサポート及び/または座席ベースに回転するように固着されている。
【0024】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素の一つの実施の形態では、内側ケーシングの接触面と外側ケーシングの接触面は、内側ケーシング及び/または外側ケーシングが回転軸上で少なくとも所定の回転角度範囲で回転中に、内側ケーシングの規定点と外側ケーシングの規定点との間の距離が減少するように互いに配置されている。この場合、内側ケーシングの規定点と外側ケーシングの規定点との間の距離の減少により、内側ケーシングの外側ケーシングに対する回転中に、弾性部材自体に引張荷重がかからないが、弾性部材の特定の範囲には、圧縮荷重がかかる。したがって、弾性部材の変形は、引張応力と圧縮応力のオーバレイによって決定される。弾性部材のある範囲の圧縮荷重は、弾性部材の他の範囲の引張荷重で相殺される。その結果、弾性部材の全素材は、不均一に荷重にさらされる。この実施の形態では、外側ケーシングと内側ケーシングとの間に復元トルクを発生させて、この復元トルクが、回転角度の関数として急激な増大を示して、特に、大きな回転角度範囲では、回転角度の関数として基本的に線形の進行を示すようにすることが可能である。
【0025】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素の一つの実施の形態では、内側ケーシングの接触面と外側ケーシングの接触面の回転軸に直交する平面部分は、非円形断面であり、また、互いに、内側ケーシング及び/または外側ケーシングが回転軸上で回転することにより、弾性部材の少なくとも一部の領域に圧縮荷重が発生するように配置されていることを特徴としている。この実施の形態では、内側ケーシング及び/または外側ケーシングが回転軸上で回転中に、弾性部材は、この弾性部材のある範囲は引張荷重にさらされ、また、他の範囲では圧縮荷重にさらされて、少なくともある回転角度範囲で変形する。この配置では、引張荷重と圧縮荷重は、弾性部材が不均一に荷重にさらされるように、弾性部材内に分布して、少なくとも一部の圧縮応力は、引張応力で相殺される。この実施の形態では、外側ケーシングと内側ケーシングとの間に復元トルクを発生させて、この復元トルクが、回転角度の関数として特に急激な増大を示し、また、大きな角度範囲では、回転角度の関数として基本的に線形の進行を示すようにすることが可能である。
【0026】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素の一つの実施の形態では、内側ケーシングの接触面と外側ケーシングの接触面は、内側ケーシング及び/または外側ケーシングが回転軸上で所定の回転角度範囲だけ回転することによって、この回転角度で線形に増大する復元トルクとなるように設計されている。内側ケーシングの接触面または外側ケーシングの接触面は、回転軸に対して対称に回転しないため、回転角度に依存する復元トルクは、内側ケーシングが所定のノーマル位置にある場合に外側ケーシングに関連すると見なされる内側ケーシングの位置によって決定される。外側ケーシングに対する内側ケーシングのノーマル位置は、所定の回転角度範囲で回転角度の関数としての復元トルクが線形の進行を示すように選択することができる。
【0027】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素の一つの実施の形態では、内側ケーシングの接触面及び/または外側ケーシングの接触面の、回転軸に直交する平面部分は、多角形に或いはある部分が直線を備えるように設計される。このような内側ケーシングと外側ケーシングの接触面により、弾性部材は、各回転角度で応用特有な不均一な変形をすることが可能となる。
【0028】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素の一つの実施の形態では、外側ケーシングの接触面は、少なくともある部分では円筒形状になるように設計される。その結果、弾性部材は、内側ケーシングの外側ケーシングに対する回転中に、不均一な荷重にさらされる。
【0029】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素の一つの実施の形態では、外側ケーシングの回転軸に直交する接触面の平面部分は、少なくとも二対の対向するコーナー部が丸い矩形であるように設計される。このような外側ケーシングの内面の形態によって、各回転角度によって弾性部材に応用特有な不均一な荷重を付与することができる。
【0030】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素の一つの実施の形態では、外側ケーシングの接触面は、二対の対向する等辺の角形部分といずれの場合でも矩形の角形部分の端部に連結される対向する二対の半円形部分を備えている。寸法については、外側ケーシングを備えた弾性トーションばね要素は、復元トルクの進行が回転角度に関して線形である特性曲線からなるように設計される。
【0031】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素の一つの実施の形態では、内側ケーシングの接触面の回転軸に直交する平面部分は、矩形であるように設計される。このような内側ケーシングの接触面の形態により、外側ケーシングに対する内側ケーシングの回転中に、弾性部材のある領域は、弾性部材の引張力を相殺する圧縮力にさらされるため、特に有利である。この弾性部材の不均一な荷重の結果、弾性トーションばね要素によって、回転角度、特に広い回転角度範囲の関数として発生した復元トルクは、特に急激に増大する線形の進行を示す。例えば、内側ケーシングの接触面は、回転軸に直交する平面部分を正方形にすることができる。
【0032】
弾性トーションばね要素の外側ケーシングと内側ケーシングの形状と寸法に関しては、弾性トーションばね要素の外側ケーシングの内側断面と内側ケーシングの外側断面は、外側ケーシングの内側断面の表面積と内側ケーシングの外側断面の表面積の比が、7/3より大きい場合に有利である。これにより、弾性トーションばね要素によって発生される回転角度の関数としての復元トルクは、特に広い回転角度範囲で線形の進行を示すことが保証される。上述した状態が満たされると、例えば、弾性トーションばね要素の弾性部材がゴムで形成されている場合、回転角度の関数としての復元トルクの線形の進行は、少なくとも70°の回転角度範囲にわたって達成することができる。
【0033】
弾性トーションばね要素では、弾性部材が、この弾性部材を貫く一つあるいは数個の孔を備える場合に有利である。この孔は、回転軸に沿って延在している。この手段はいくつかの利点に関連する。例えば、弾性部材を加硫で製造する場合、弾性部材を形成する加硫される素材を、加硫の前に素材に孔を成形することが特に有利である。この場合、孔の形成は、加硫の直後の弾性部材は、その内側に弾性張力を有することなく、或いは、ほんの少しの弾性張力を有するため、弾性トーションばね要素は、弾性部材に次の処理を必要とすることなく、加硫の直後にいつでも使用できる状態になるという効果がある。しかしながら、弾性部材は、上述した孔を備えることなく製造される場合は、外側ケーシングと内側ケーシングとの間にトルクが作用しない場合でも、弾性部材は、加硫直後にその内側に比較的高い弾性張力を有する可能性がある。この弾性張力は、加硫直後の弾性トーションばね要素に、回転角度の関数としての所望の復元トルクの進行を示さないという状況をもたらす可能性がある。一般にこの場合、内側ケーシングは、外側ケーシングに対して比較的小さい回転角度だけ回転されるため、加硫直後の弾性トーションばね要素により発生される復元トルクは比較的に小さくなる可能性がある。上述したように、弾性トーションばね要素の加硫後の弾性部材は、その内部に比較的高い弾性張力を有する場合、この弾性トーションばね要素は、一般的に、弾性部材の内部の張力を減少させる適当な次処理、例えば、弾性部材を特定の方向に絞ること(スキージング)によって最適化される。この次の処理は、念入りな仕上げであり、好ましくはない。しかしながら、上述したように、加硫の前に弾性部材に一つあるいは二つの孔を形成する場合には、この次の処理の必要性を回避することができる。このような加硫直後の(一つまたは数個の孔を備えた)弾性部材は、弾性張力を有することがないか、或いは、ほんの少しの弾性張力を有しており、上述した次の処理をすることなく、比較的広い回転角度範囲にわたって内側ケーシングを外側ケーシングに対して回転させることが可能であり、また、比較的に高い復元トルクを発生させることが可能となる。
【0034】
弾性トーションばね要素の弾性部材が、その弾性部材内に一つまたは数個の孔を備える場合、外側ケーシングに対して特定の回転角度で内側ケーシングを回転させた際に、この過程で弾性部材が変形され、孔の断面の形状と寸法が変化するという効果がある。この効果は、弾性部材の損傷を大幅に減少させて、内側ケーシングを外側ケーシングに対して比較的大きい回転角度で回転させることが可能となり、このようにして、弾性部材の耐用年数を延長させることができる。既述したように、弾性部材の特定の範囲では、本発明のシートアセンブリの弾性トーションばね要素の弾性部材には、内側ケーシングが外側ケーシングに対して特定の回転角度だけ回転した場合に圧縮荷重が作用する。弾性部材の特定の範囲では、この圧縮荷重は、弾性トーションばね要素の回転軸の方向に弾性部材を部分的に伸ばして、圧縮荷重が作用するこの範囲では、間隔が長くなることによって回転角度が大きくなる。この弾性部材の伸長は、例えば、弾性部材の表面(外側ケーシングの接触面にも内側ケーシングの接触面にも結合されていない弾性部材の範囲)を部分的に凹凸に変形させて、回転角度を全体的に大きくするという効果がある。回転角度が大きい場合、例えば、変形により表面の隣り合う領域が互いに接触するため、これらの表面領域間の摩擦が大きくなる可能性がある。例えば、上述した摩擦が原因で、変形により弾性部材の摩耗や裂傷が促進されて、特に、内側ケーシングが頻繁に回転された場合や、外側ケーシングに対して比較的大きな回転角度で高速で回転させた場合に、弾性部材の耐用年数を短くしてしまう。上述したタイプの摩耗や裂傷は、弾性トーションばね要素の弾性部材が一つまたは数個の貫通穴を有する場合に効果的に防止することができる。好適には、各孔は、回転角度が増大するにつれて各孔の断面積が減少するように、弾性部材に配置することができる。各孔の断面積を減少させることにより、回転角度が増加した弾性部材は、圧縮荷重が作用する弾性部材の領域が、弾性トーションばね要素の回転軸の方向にわずかに広がるため、弾性部材の表面がわずかに変形するという効果を有する。このように、弾性部材が回転軸の方向に広がることは、各孔の断面積の減少によって少なくとも部分的に相殺される。各孔は、弾性部材の荷重能力を改善して、弾性部材を破壊することなく比較的大きな復元トルクを発生させることができる。各孔は、丸い断面或いは他の適宜の断面を備えることができる。
【0035】
上述した弾性トーションばね要素の実施の形態の変形例として、弾性トーションばね要素は、(i)外側ケーシングに対して内側ケーシングを所定のノーマル位置に保持して、このノーマル位置では、弾性部材は所定の弾性変形を有し、外側ケーシングと内側ケーシングとの間に所定の最小値に等しい復元トルクを発生させるように、また、(ii)回転軸上での回転角度が、該回転角度の増加に伴って復元トルクが増大するように、内側ケーシングを外側ケーシングに対して回転させることができるように設計された保持要素を備えている。
【0036】
この変形例では、内側ケーシングは、ノーマル位置にある場合に、外側ケーシングに対して回転軸上で一方向のみに回転することができ、保持要素は、内側ケーシングがノーマル位置にある場合に、他の方向への回転を阻止する。この弾性部材の場合は、常に弾性変形しているため、弾性トーションばね要素は、内側ケーシングが外側ケーシングに対して回転中に、常にゼロよりも大きい値の復元トルクを発生する。内側ケーシングがノーマル位置にある場合、弾性部材によって発生される復元トルクは、保持要素によって処理される。ノーマル位置からスタートする内側ケーシングが外側ケーシングに対して回転する場合、弾性部材は、外側ケーシングと内側ケーシングとの間に復元トルクを発生して、この復元トルクは、上述した最低値からスタートして回転角度が増加するにつれて徐々に増加する。この最低値は、弾性トーションばね要素で発生される最低復元トルクとして定義される。この最低値は、弾性張力(以下、「弾性部材のプレテンション」として参照される)の範囲で決定される。ここでは、弾性部材が、内側ケーシングが外側ケーシングに対してノーマル位置にある場合を含む。この最低値は、要求に応じて設定される。この弾性トーションばね要素の変形例は、二つの部材が相対運動する場合に、常に最低値(ゼロより大きい)を超えるか、または、最低値に等しい復元トルクが発生される二つの部材の間でパワーを伝達する装置に使用する場合に有利である。
【0037】
弾性部材のプレテンションは、例えば、弾性トーションばね要素を製造する場合、最初に、弾性部材は内側ケーシングの接触面と外側ケーシングの接触面に固着され、また、弾性部材は、内側ケーシングが外側ケーシングに対して初期位置にある場合に、最初は変形されることなく、かつ、いかなる機械的な張力も備えることないように実施させることができる。その結果、内側ケーシング及び/または外側ケーシングは、回転軸上で所定の回転方向に、回転角度が所定値(以下、「初期位置に対する角度オフセット」として参照される)に近づくまでの回転角度だけ回転されるため、弾性部材は変形され、かつ、所定の機械的張力を備える。その後、保持要素が、内側ケーシングまたは外側ケーシングが所定の回転方向にさらに回転できるが、初期位置に対する回転角度が上述した「角度オフセット」に等しくなると直ぐに反対方向への回転は阻止されるように、組み込まれる。
【0038】
本発明に従う弾性トーションばね要素は、「角度オフセット」は、(例えば、特許文献1の弾性トーションばね要素と比較した場合に)復元トルクを所定の最低値とみなすことを保証するために、比較的小さくなるように選択することができるという点で優位性を備える。これは、弾性部材上にわずかな効力を備え、また、弾性部材の耐用年数を長くするためには有効である。
【0039】
単なる実施の形態では、保持要素は、回転軸に直交するように内側ケーシングの側面に配置された棒状体でもよいし、さらに、内側ケーシングに固着してもよい。さらに、外側ケーシングは、棒状体用の機械的な端部ストッパを備えることができ、この端部ストッパは、内側ケーシングが所定の回転方向に回転中に棒状体が端部ストッパに支えられて、同じ方向へのさらなる回転が阻止されるように配置される。この配置では、内側ケーシングは反対方向へ回転することができる。この場合、端部ストッパの位置により、外側ケーシングに対する内側ケーシングのノーマル位置が決定される。この場合、機械的な端部ストッパまたは外側ケーシングは、内側ケーシングがノーマル位置にある場合に、弾性部材のプレテンションを吸収する。
【0040】
所定のノーマル位置では、内側ケーシングは、保持要素によって外側ケーシングに対して、例えば、内側ケーシングの外側ケーシングに対する回転中に、保持要素によって、回転角度の増加に伴って復元トルクが線形に増加するように保持される。
【0041】
上述した変形例の実施の形態では、保持要素は、少なくとも一つの張力付与要素を備えており、この張力付与要素は、内側ケーシングにしっかりと係合させた第1部分と、内側ケーシングが外側ケーシングに対して所定のノーマル位置に位置する場合に、外側ケーシングの一部に支えられ、かつ、内側ケーシングと外側ケーシングが互いに回転軸上で復元トルクが増大する回転方向に回転することができる第2部分を備えている。この変形例の他の例では、保持要素は少なくとも一つの張力付与要素を備えており、この張力付与要素は、外側ケーシングにしっかりと係合させた第1部分と、内側ケーシングが外側ケーシングに対して所定のノーマル位置に位置する場合に、内側ケーシングの一部に支えられ、かつ、内側ケーシングと外側ケーシングが互いに回転軸上で復元トルクが増大する回転方向に回転することができる第2部分を備えている。上述した変形例では、張力付与要素は、この張力付与要素が弾性トーションばね要素の回転軸上で回転運動することによって、内側ケーシングを外側ケーシングに対して回転させて、かつ、この過程で、内側ケーシングが保持要素によって外側ケーシングに対してノーマル位置に保持される場合に、保持要素によって維持される機械的なプレテンションを備えた弾性部材を提供するための「ツール」として使用することができる。この弾性トーションばね要素は、保持要素が単一手段によって実施されるため、本発明に従って、内側ケーシング及び/または外側ケーシングは非円形部分を備え、外側ケーシングまたは内側ケーシングのどちらかが張力付与要素用の機械的端部ストッパとして機能することができるという点で優位性を備える。ここで、張力付与要素は、外側ケーシングまたは内側ケーシングの回転軸上での回転中に、回転軸上で円軌道をたどる。所定のプレテンションを達成するためには、張力付与要素が、外側ケーシングまたは内側ケーシングに対して適当な位置に移動する必要があるだけである。
【0042】
弾性トーションばね要素の一つの変形例では、内側ケーシングは凹部を含んでおり、張力付与要素の第1部分は、内側ケーシングの凹部内に回転するように挿入され、また、張力付与要素の第2部分は、内側ケーシングが外側ケーシングに対して所定のノーマル位置に位置する場合に、外側ケーシングの一部に支えられている。外側ケーシングの一部は、例えば、外側ケーシングの外面に配置することができる。この配置では、内側ケーシングと外側ケーシングの相互の角度は、所定の「角度オフセット」だけオフセットされて保持される。
【0043】
張力付与要素を使用することは、いくつかの利点を有する。張力付与要素は、ほとんど材料を必要としないし、経済的に製造することができる。さらに、弾性トーションばね要素の内側ケーシングと外側ケーシングへの張力付与要素の設置は、非常に簡単な方法で、かつ、短時間で実施することができる。さらに、内側ケーシングまたは外側ケーシングに固着するための部材を必要としない。いくつかの弾性トーションばね要素は、張力付与要素手段によって、単一工程で同時にプレテンションをかけることができ、その結果、設置に要する時間はさらに短縮される。
【0044】
好適には、内側ケーシングと外側ケーシングは互いに、内側ケーシングに対して外側ケーシングを予め定めたように配列した弾性部材がプレテンションを有するように配置される。いくつかの弾性トーションばね要素は、例えば、ベアリング軸上に互いに平行に配置することができる。この配置では、弾性トーションばね要素は、異なるプレテンション程度を有しており、外側ケーシングは、互いに同一平面上にあるように配置される。
【0045】
本発明に従うシートアセンブリは、多数の弾性トーションばね要素から構成することができ、この場合、各弾性トーションばね要素は、各弾性トーションばね要素の内側ケーシング及び/または外側ケーシングが同じ回転軸上で回転できるように並んで配置される。この場合、全ての弾性トーションばね要素が、個々の弾性トーションばね要素によって発生された復元トルクをオーバレイ(重ねる)することによって生じる復元トルクを発生する(この場合、第1部材は第2部材に連結される)。
【0046】
シートアセンブリはモジュール設計を含むことができる。全ての弾性トーションばね要素は、例えば、一つのまとまりとして搬送して、設置することができるモジュールから形成することができる。このことは、シートアセンブリの製造やメンテナンスを簡素化する。全ての弾性トーションばね要素は、例えば、モジュール内に予め組み込まれ、また、他の部材に組み付けることができる。
【0047】
いくつかの弾性トーションばね要素を組み合わせるために、モジュールを形成することは、例えば、弾性トーションばね要素の内側ケーシング及び/または弾性トーションばね要素の外側ケーシングを互いにしっかりと連結することが可能となる。このために、内側ケーシングは、例えば、共通のベアリング軸上にセットされ、このベアリング軸に固定される。
【0048】
適当なモジュールの弾性トーションばね要素の場合には、異なる特性を備えることができる。異なる弾性トーションばね要素は、例えば、回転角度の関数としての復元トルクの進行を異ならせることができる。異なる弾性トーションばね要素は、例えば、別々にプレテンションを有し、弾性トーションばね要素の内側ケーシングが外側ケーシングに対してノーマル位置にある場合に、別々の弾性トーションばね要素が異なる復元トルクの範囲を提供することができる弾性部材を備えることができる。異なる特性を備えた異なる弾性トーションばね要素を組み合わせることによって、簡単に、かつ、経済的に、パワーを伝達する装置を製造することが可能となる。この装置は、所望の異なる特性を備えるか、或いは、例えば、個々の弾性トーションばね要素を交換することによって修正することが可能となる。さらに、本発明の詳細及び本発明に従うシートアセンブリの例示的な実施の形態は、以下に、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に従うシートアセンブリの実施の形態をチェアの形態で示す図である。
【図2】第1の実施の形態の弾性トーションばね要素の側面図である。
【図3A】回転角度の関数としての復元トルクの特性曲線を、本発明の実施の形態の弾性トーションばね要素の特性曲線(曲線K1)と、従来の弾性トーションばね要素の特性曲線(曲線K2)を示す図である。
【図3B】本発明に従う弾性トーションばね要素の異なる実施の形態の回転角度の関数としての復元トルクの特性曲線を示す図である。
【図3C】別の実施の形態の弾性トーションばね要素の側面図である。
【図4】保持要素によってプレテンションがかけられた第1の実施の形態の弾性トーションばね要素を示す図である。
【図5】チェアのパワーシステムに組み込まれた第1の実施の形態の弾性トーションばね要素の使用例を示す図である。
【図6】保持要素によってプレテンションがかけられた第2の実施の形態の弾性トーションばね要素を示す図である。
【図7A】保持要素によってプレテンションがかけられて、チェアのパワーシステムに組み込まれた第2の実施の形態の弾性トーションばね要素を3個使用した実施の形態を示す斜視図である。
【図7B】保持要素によってプレテンションがかけられて、チェアのパワーシステムに組み込まれた第2の実施の形態の弾性トーションばね要素を3個使用した実施の形態を図7Aとは異なる方向から見た斜視図である。
【図7C】保持要素によってプレテンションがかけられて、チェアのパワーシステムに組み込まれた第2の実施の形態の弾性トーションばね要素を3個使用した実施の形態を図7A及び図7Bとは異なる方向から見た図である。
【図8A】第2の実施の形態の弾性トーションばね要素の外側ケーシングに対する内側ケーシングの位置を示す図であり、内側ケーシングが外側ケーシングに対して互いに異なる回転角度で回転している図である。
【図8B】第2の実施の形態の弾性トーションばね要素の外側ケーシングに対する内側ケーシングの位置を示す図であり、内側ケーシングが外側ケーシングに対して図8Aとは互いに異なる回転角度で回転している図である。
【図8C】第2の実施の形態の弾性トーションばね要素の外側ケーシングに対する内側ケーシングの位置を示す図であり、内側ケーシングが外側ケーシングに対して図8A及び図8Bとは互いに異なる回転角度で回転している図である。
【図9】チェアの支持部材に組み込んだパワーシステムの形態に組み合わせた第2の実施の形態の弾性トーションばね要素を示す図である。
【図10A】図7A〜図7Cに示すパワーシステムを製造する張力付与装置の斜視図である。
【図10B】図10Aに示す張力付与装置の細部を拡大して示す斜視図である。
【図10C】図7A〜図7Cに示すパワーシステムを製造する張力付与装置を図10Aとは異なる方向から見た斜視図である。
【図10D】図10Cに示す張力付与装置の細部を拡大して示す斜視図である。
【図10E】図7A〜図7Cに示すパワーシステムを製造する張力付与装置をベアリングの軸方向に見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図面及び以下の説明では、同一の符号は同一の部材に対して使用される。
図1は、シートアセンブリの実施の形態をチェア(背もたれ付き椅子)1の形態で示す。チェア1は、回転型オフィスチェアであり、高さ調整手段により360°回転可能に支持支柱2に支持されている。支持支柱2の上端に、支持部材42が基本的に水平になるように組み付けられる。支持部材42は、以下に説明する機械要素を収容するケーシングとして用いられる。バックサポート44は、ベアリング軸26によって支持部材42に旋回自在にヒンジ結合されている。バックピース3は、バックサポート44の他端に連結されており、このバックピースは、基本的に垂直に配置される背もたれ4を受け入れるように設計されている。バックピース3は、バックサポート44との連結部でスライドすることができる。同様に、背もたれ4は高さを調整することができる。
【0051】
支持部材42は、座席ベース5が取り付けられ、水平になるように配置された座席支持部材(図示省略)を備えている。座席支持部材は、支持部材42に旋回自在にヒンジ結合することができる。バックサポート44と座席支持部材を支持部材42上に旋回自在にヒンジ結合することによって、背もたれ4を備えたチェア1に座る人が座席支持部材と同調してリクライニングすることができ、また、座席ベース5も旋回させることができる。このために、支持部材42に配置された弾性トーションばね要素(図示省略)が、支持部材42とバックサポート44との間に復元トルクを作用させる。この復元トルクは、バックサポート44が支持部材42に対して旋回する旋回方向と反対の方向を指向している。
【0052】
図2には、第1の実施の形態に従う弾性トーションばね要素10の側面が示されており、この図では、回転軸6は図面に垂直である。弾性トーションばね要素10は、内側ケーシング12と外側ケーシング14を備えている。内側ケーシング12と外側ケーシング14との間の空間に弾性部材16が配置されている。
【0053】
内側ケーシング12は、その外側に、弾性部材16が内側ケーシング12に接触する接触面12aを備えている。また、外側ケーシング14は、その内側に、弾性部材16が外側ケーシング14に接触する接触面14aを備えている。この場合、内側ケーシング12の接触面12aと外側ケーシング14の接触面14aは、リング状に回転軸6を取り囲んでいる。その結果、この実施の形態では、弾性部材16は、回転軸6を取り囲む閉鎖リングを形成する。
【0054】
弾性部材16は、エラストマー、すなわち、硬くて弾性変形可能な材料からなる。弾性部材16は、内側ケーシング12の接触面12aと外側ケーシング14の接触面14aに固着されるように、すなわち、内側ケーシング12が外側ケーシング14に対して移動中(例えば、内側ケーシング12または外側ケーシング14が回転軸6上で回転中)に、接触面12aと14aに隣接する弾性部材16の領域が接触面12aと14aに対して滑らないように設計されている。弾性部材16は、例えば、接触面12aと14aで、内側ケーシング12と外側ケーシング14に、一体的に、または、しっかりとフィットさせて結合させることができる。
【0055】
例示したゴムは、弾性部材16の製造に適したエラストマーであり、弾性的に変形可能で高い耐久性を有する材料だけでなく、例えば、加硫により、接触面12a及び14aにしっかりと結合することができる材料からなる。
【0056】
内側ケーシング12と外側ケーシング14は、剛材料、例えば、鋼材から製造される。内側ケーシング12または外側ケーシング14の、弾性部材16に隣接する接触面12aと14aの平面部分は、少なくとも円形状の部分とは異なっており、回転軸6に直交するように配置されており、この特別な形状により、弾性部材16のある領域には、内側ケーシング12が回転軸6上で外側ケーシング14に対して回転中に発生する引張荷重を相殺する圧縮荷重が発生する。このように、弾性部材16は、効果的に不均一な荷重にさらされる。
【0057】
図2は、内側ケーシング12を、「非回転」状態(実線)と「回転」状態(破線)で示しており、内側ケーシング12は、非回転状態に比べて回転状態では回転軸6上で時計回り方向に回転角度φだけ旋回されるが、この過程で、外側ケーシング14は変化しないままである。非回転状態では、弾性部材16は、プレテンションがかけられていない、すなわち、いかなる機械的張力も有していないとみなされる。非回転状態では、内側ケーシング12の右上側コーナーまたは左下側コーナーから外側ケーシングの内側の所定のポイントまでの距離は、矢印X1またはY1で示されている。回転状態では、内側ケーシング12の右上側コーナーまたは左下側コーナーから外側ケーシングの内側の所定のポイントまでの距離は、矢印X2またはY2で表されている。図2に示すように、距離X2は、距離X1よりも短く、また、距離Y2は距離Y1よりも短い。この領域は、弾性部材16が、内側ケーシング12が外側ケーシング14に対して回転軸6上で回転した場合に圧縮される。上述した圧縮荷重は圧縮によって発生する。
【0058】
内側ケーシング12が回転軸6上で回転角度φだけ回転した後、弾性部材6は変形され、外側ケーシング14と内側ケーシング12との間に復元トルクDが発生する。この復元トルクは、回転方向と反対方向を指向しており、回転角度φが増加すると増大する。
【0059】
内側ケーシング12が回転角度φだけ回転する間に、距離X2−X1及び距離Y2−Y1が減少するという事実は、接触面12aまたは接触面14aの非円形の断面(回転軸6に対して垂直になるように配置された平面部分)が原因である。上述した接触面12aまたは14aの断面の円からの幾何学的偏差は、内側ケーシング12が回転角度φだけ回転中に、弾性部材6の機械的な張力の空間分布が、回転軸6に対して回転対称である特許文献1の弾性トーションばね要素の機械的な張力の空間分布とは異なり、回転軸6に対して回転対称ではないことによることを意味する。この張力分布の相違は、回転角度φの関数としての復元トルクDの依存に関連する顕著な相違である。特に、この相違は、(以下にさらに詳細に説明する)特許文献1の弾性トーションばね要素に比較して、回転角度φの関数としての復元トルクDが非常に大きな増大を示す本発明の弾性トーションばね要素に起因する。
【0060】
図2に示す実施の形態では、弾性部材16に隣接する内側ケーシング12の接触面12aは正方形である。この実施の形態では、内側ケーシング12は、正方形のスリーブ(4面体)に設計されており、このスリーブは、回転軸6に平行に延在する正方形断面の貫通チャンネル(貫通路)12.1を有している。これは、内側ケーシング12のチャンネル12.1内に、同一寸法の正方形のベアリング軸(図示省略)を半径方向に収容して、しっかりと連結することができるという優位性に関連する。
【0061】
図2に示すように、内側ケーシング12の非回転状態(実線)では、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間に回転オフセットが存在する。詳細に述べると、内側ケーシング12の外面と外側ケーシング14の(直線状に延在する)外面は、互いに平行になるように整列されていない(回転オフセット)。この回転オフセットの範囲は、回転角度φの関数としての復元トルクDの進行に影響する追加的なパラメータを表す。
【0062】
外側ケーシング14の外面は、ブロック要素(図2には示されていない)に係合することができる外側ケーシングカム18を備える。ブロック要素は、以下の図5〜図9で説明される。
【0063】
弾性部材16に隣接する内側ケーシング14の接触面14aは、矩形と円形との組合せであるとみなすことができる形状を備えている。さらに詳述すると、外側ケーシング14の形状は、互いに対で対向するように配置された二つの等辺の角形部分を備え、この実施の形態の角形部分は、90°の角度に取り囲み、また、互いに対で対向するように配置された二つの半円形部分を備えており、これらの半円形部分の端部は、角形部分の端部にそれぞれ結合されている。実施される幾通りかの測定シリーズに基づいて、内側ケーシング12の正方形の形状に組み合わせた外側ケーシング14の「レモンの形状」に似た形状が定められ、この形状は、回転角度φに関連する復元トルクDの特性曲線が、回転角度φの殆どの領域で線形に延びる弾性トーションばね要素10を形成するために、特に有利である。
【0064】
図3には、本発明の実施の形態に係る弾性トーションばね要素の特性曲線K1(回転角度φに関連する復元トルクD)と、従来の弾性トーションばね要素の特性曲線K2(特許文献1から公知)が描かれた図が示されており、これらの曲線K1及びK2は、同じ材料(ゴム)からなるエラストマーの弾性トーションばね要素に対して決定され、曲線K1及びK2を有する弾性トーションばね要素は、内側ケーシングの形状と外側ケーシングの形状のみが異なる。曲線K1及びK2の進行(経過)は、第1に、復元トルクDは回転角度φの増加にしたがって増大することを示している。この実施の形態では、最大回転角度は70°である。弾性トーションばね要素の特性曲線K1は、図2に示す(レモン形状の)弾性トーションばね要素を用いて実施された測定シリーズによって決定される。図3Aには、図表の下方に、弾性トーションばね要素の断面が、上述した曲線K1及びK2の決定に関連して示されている。二つの実線14aまたは12aは、曲線K1に関連する弾性トーションばね要素の外側ケーシングの接触面の形状または内側ケーシングの接触面の形状(スタートの順序)を示しており、二つの破線14aまたは12aは、曲線K2に関連する弾性トーションばね要素の外側ケーシングの接触面の形状または内側ケーシングの接触面の形状(スタートの順序)を示している。二つの弾性トーションばね要素の断面形状と寸法を比較することを考慮して、図3Aには、二つの弾性トーションばね要素の断面が互いに重ねて示されている。
【0065】
図表に示すように、本発明の実施の形態に従う弾性トーションばね要素の特性曲線K1は、殆どの回転角度で線形に延びている。これに対して、従来の弾性トーションばね要素の特性曲線K2は、特に、回転角度の初期で、非線形(進行)に上昇している。この図表は、また、本発明の実施の形態に従う弾性トーションばね要素の特性曲線K1は、従来の弾性トーションばね要素の特性曲線K2と比較して、より急勾配である。このように、既に小回転角度φで、より大きい復元トルクDが発生される。その結果、等しい復元トルクDでは、弾性材料は、従来の弾性トーションばね要素の弾性材料と比較してより小さい範囲で変形される。有利には、弾性材料は、より小さい範囲で荷重にさらされるため、疲労する傾向がない。これにより、耐用年数が延長される。
【0066】
弾性トーションばね要素は、所定の最大回転角度まで回転することができることは知られている。この最大回転角度を越えた更なる回転は、極端な非線形性となり、最終的には、弾性材料が破断してしまう。測定シリーズでは、特性曲線K1とK2を描くために、比較される弾性トーションばね要素は、最大70°の回転角度φまで回転される。
【0067】
図3Bには、本発明に従う弾性トーションばね要素の6つの異なる実施の形態に係る回転角度φの関数としての復元トルクDの経過を表す測定値が示されている。それぞれの実施の形態に対応する復元トルクDの経過を示す曲線は1〜6の番号で示されている。全ての実施の形態は、弾性トーションばね要素10の外側ケーシング14が正方形状を備える点で共通する特徴を有しており、外側ケーシング14の接触面14aの断面は、(回転軸6に垂直な断面積に関して)各辺の長さが60mmの正方形である。各実施の形態は、内側ケーシング12の接触面12aの断面が、異なる形状を備えると共に、異なる寸法を有する点で相違している。曲線1と2では、内側ケーシング12の接触面12aの断面が、(スタートの順序で)直径10mmまたは20mmの円形である。曲線3〜6では、内側ケーシング12の接触面12aの断面が、(スタートの順序で)各辺の長さが20mm、25mmm、30mmまたは40mmの正方形である。曲線3〜6では、内側ケーシング12の接触面12aは、対応する外側ケーシング14の接触面14aと平行するように配置されており、回転角度φ=0(ゼロ)及び復元トルクD=0(ゼロ)であると仮定する。全てのケースにおいて、弾性部材16は同一の材料(ゴム)から形成されると仮定する。曲線1〜6を比較すると、「小」回転角度の範囲の復元トルクDは、曲線1と2のケースでは直径が大きくなるほど、また、曲線3〜6のケースでは、内側ケーシング12の接触面12aの断面の各辺の長さが長くなるほど、より一層明確に増大することを示している。また、内側ケーシング12が正方形の形状であることにより、回転角度φの関数としての復元トルクDが、内側ケーシング12が大径の円形形状である場合よりも急激に増大することを示している。さらに、曲線1〜5では、0〜70°の範囲で直線的に延びるが、曲線6は、40°を越えると、累進的に上昇することを示している。特殊な応用を目的とすると、回転角度φの関数としての復元トルクDが、広範な回転角度範囲(例えば、0°〜70°)にわたって線形の進行を示していることは興味があり、外側ケーシング14の断面積に対する内側ケーシング12の断面積が所定値を越えない場合に有利である。
【0068】
図3Bに示すように、種々の弾性トーションばね要素の回転角度φの関数としての復元トルクDの進行(経過)を詳細に分析すると、本発明の弾性トーションばね要素では、回転軸6に垂直な断面の形状の違いにより、外側ケーシング14の内側断面の表面積Faと内側ケーシング12の外側断面の表面積Fiは、回転角度φの関数としての復元トルクDが線形進行を示す全域の回転角度φの範囲を決定するパラメータであることを示している。このケースでは、外側ケーシング14の内側断面は平坦であり、かつ、回転軸6に垂直となるように配置されており、外端は接触面14aで範囲が定められている。それに対応させて、内側ケーシング12の外側断面は平坦であり、かつ、回転軸6に直交するように配置されており、外端は接触面12aで範囲が定められている。
【0069】
図3Bに示す測定値を分析することにより、測定値に対応する弾性トーションばね要素は、回転角度0°≦φ≦70°の範囲で、この回転角度φの関数としての復元トルクDが線形の進行を示し、表面積Faと表面積Fiとの比に関連して、次の条件B1が適用されることが分かった。
Fa/Fi≧7/3 (B1)
【0070】
弾性トーションばね要素の寸法が、Fa/Fi<7/3のように選択される場合には、弾性トーションばね要素によって発生される復元トルクDは、(図3Bの進行(経過)6で示すように)回転角度φの関数として累進的に増大し、Fa/Fiの比がより小さい場合には、復元トルクDは、回転角度φの関数としてさらに累進的に増大する。
【0071】
既述したように、図3Aに示す測定データは、外側ケーシング14が正方形状の内側断面を備える弾性トーションばね要素に関連する。しかしながら、この実験結果は、弾性トーションばね要素の外側ケーシングが、弾性トーションばね要素の内側断面が正方形状でない形状に形成されている場合でも、条件B1が、本発明の他の弾性トーションばね要素に同様に適用できることを示している。例えば、図2及び図4〜8に示す弾性トーションばね要素は、回転角度0°≦φ≦70°の範囲では、回転角度φの関数としての復元トルクDが線形の進行を示し、外側ケーシングの内側断面の表面積Faと内側ケーシングの外側断面の表面積Fiとの比は、条件B1に従うと7/3を越える。これは、ゴムから形成される弾性部材16に関連させて実験的に実証された。
【0072】
図3Cは、図2に示す弾性トーションばね要素10とは異なる弾性トーションばね要素10の側面を示しており、この弾性トーションばね要素10は、図2に示す弾性トーションばね要素10とは、弾性トーションばね要素10の弾性部材16が、この弾性部材16を貫通して回転軸6に沿って延在する4つの孔を備えている。この実施の形態では、4つの孔のそれぞれは、内側ケーシング12の4つのエッジ13.1、13.2、13.3、13.4の近辺に配置されている。図3Cに示すように、エッジ13.1、13.2、13.3、13.4は、内側ケーシング12の接触面12a上に形成され、かつ、回転軸6に平行するように配置されている。図3Cの破線6.1は、回転軸6と、エッジ13.1及び13.3の両方に延びる平面を示す。それに対応して、図3Cの破線6.2は、回転軸6と、エッジ13.2及び13.4の両方に延びる平面を示す。図3Cは、弾性部材16が、いかなる機械的な張力を有することなく、かつ、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間にいかなる復元トルクも発生しない状態の弾性トーションばね要素10を示している。エッジ13.1から延びるφで示す矢印は、内側ケーシング12が、回転軸6上で回転角度φ(図3Cの時計回り方向)だけ回転され、かつ、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間に復元トルクを発生するように外側ケーシング14に対して回転される場合のエッジ13.1が移動する経路の進行を示している。平面6.1及び6.2は、弾性部材16を4つの異なる領域に分割しており、これらの4つの領域の少なくとも一つの小区域は、内側ケーシング12が回転軸6上で回転角度φだけ外側ケーシング14に対して回転された場合に圧縮荷重にさらされる。内側ケーシング12が回転軸6上で外側ケーシング14に対して回転された場合、弾性部材16は変形して、孔17の断面積は、回転角度φが増加するに従って連続的に減少する。既述したように、この孔17の形状の変化が弾性部材16を膨張させ、この膨張により、回転軸6に沿って上述した圧縮荷重を発生させる。この圧縮荷重は部分的に相殺される。これにより、内側ケーシング12が外側ケーシング14に対して回転角度φだけ回転された場合に、弾性部材16が損傷を受け、かつ、損耗されることが防止される。
【0073】
図4は、保持要素19を備えた、本発明の第1の実施の形態に係る図2に示す弾性トーションばね要素10の斜視図である。保持要素19は、内側ケーシング12と外側ケーシング14とを互いに「ノーマル位置」に保持するために使用され、このノーマル位置では、弾性部材16は機械的なプレテンションを有しており、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間に復元トルクDを発生する。この復元トルクDはゼロ(0)とは異なる。この「ノーマル位置」では、内側ケーシングは、図2の「非回転位置」(プレテンションはない)と比較して、図2に関連して時計回り方向に、また、図4に関連して反時計回り方向に、回転角度Δφ(以下、「プレテンション角度」と称する)だけ回転されている。この実施の形態では、保持要素19は、弾性トーションばね要素10の側面に固定される二つの張力付与要素20を備えている。張力付与要素20は平板からなり、その中央領域が、二つの対向するフランジ22を残して孔があけられている。これらのフランジ22は、内側に90°折り曲げられている。張力付与要素20の外側領域に、それぞれ90°内側に折り曲げられたブラケット24’、24’’を備えている。
【0074】
弾性トーションばね要素10上に張力付与要素20を取り付けるために、フランジ22は、その外側領域を内側ケーシング12に第1距離だけ挿入して、内側ケーシング12の内面にしっかりと連結できるように設計されている。その後、張力付与要素20と内側ケーシング12は半径方向にしっかりと連結され、また、外側ケーシング14に対して所定の角度(例えば、20°)だけ反時計回り方向に回転させて、外側ケーシング14に固定される。
【0075】
張力付与要素20のフランジ22が内側ケーシング12のチャンネル12.1に完全に押し込まれると、同時に、ブラケット24’、24’’は、外側ケーシング14の外面にしっかりと固定される。このようにして取り付けられた張力付与要素20がプレテンションを維持する。より詳細に説明すると、ブラケット24’、24’’が外側ケーシング14の外面に支えられて静止するため、もはやプレテンション角度Δφより小さい角度を選択することはできない。しかしながら、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間の回転オフセットを(さらに反時計回り方向に)増加させることは可能である。この回転オフセットが増加すると、ブラケット24’、24’’の内側領域が外側ケーシング14の外面に沿ってスライドするか、または、持ち上げられる。弾性トーションばね要素10の破壊を防止するために、この実施例では、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間の最大回転角度(例えば70°)を越えることはできない。最大回転角度φでは、ブラケット24’は、外側ケーシング14のカム18に支えられて静止して、それ以上の回転が阻止されるからである。
【0076】
図5は、図4で詳細に示した張力付与要素を側面に備えた3つの弾性トーションばね要素10’〜10’’’を示す。これらの弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、その内側ケーシング手段によってベアリング軸26上に取り付けられる。ベアリング軸26と弾性トーションばね要素10’〜10’’’の内側ケーシングは、半径方向にしっかりと連結されるように寸法が定められている。さらに、ベアリング軸26は、弾性トーションばねベース要素28の内側ケーシングにしっかりと連結されるように半径方向に挿入される。この配置により、(図1に示すが、図5には示されていない)チェア用のパワー伝達装置30が形成される。以下、「パワーシステム」30として参照する。このパワーシステム30は、原則として、チェアの背もたれまたは座席ベースに復元トルクを作用させるために使用される。この場合、背もたれまたは座席ベースは、背もたれまたは座席ベース用の支持部材に対して旋回する。パワーシステム30は、弾性トーションばねベース要素28の外側ケーシングにより、チェアの固定支柱(図示省略)に連結される。ベアリング軸26は、その軸方向の端部で、背もたれに回転するように固定されている。チェアに座っている人が背もたれに寄り掛かると、背もたれとこの背もたれに関節接合された座席支持部材が同調して旋回する。背もたれは、ベアリング軸26に回転するように連結されているため、ベアリング軸26は(例えば、反時計回り方向に)回転する。この回転は、弾性トーションばねベース要素28によって発生する、少なくともある復元トルクに常に反作用する。
【0077】
図5はまた、ベアリング軸26に対して平行に延在する軸に関節接合されるブロック要素32’〜32’’’を示す。ブロック要素32’〜32’’’は、カム軸36に放射状に固定されたロックラグ34’〜34’’’手段によって制御することができる。作動中、ブロック要素32’〜32’’’は、それぞれ互いに別々に、二つの異なる位置に旋回される。
図5に示す実施例では、全てのブロック要素32’〜32’’’は、弾性トーションばね要素10’〜10’’’の外側ケーシング上に形成された外側ケーシングカム18’〜18’’’に接触しないように配置されているため、ブロック要素32’〜32’’’と弾性トーションばね要素10’〜10’’’は分離した状態にある。ベアリング軸26と平行に延在するカム軸36は、個々のロックラグ34’〜34’’’が変化した位置にあるみなすように旋回することができる。この位置では、(回転後のカム軸36の位置により)一つまたはいくつかのブロック要素32’、32’’または32’’’がカム軸36の回転中に旋回され、これらのブロック要素32’、32’’または32’’’が、弾性トーションばね要素10’〜10’’’の外側ケーシングカム18’、18’’または18’’’に接触するように旋回されて、弾性トーションばね要素10’〜10’’’(図5では示されていない)に連結される。この連結状態では、カム軸36の回転中に旋回されたブロック要素32’、32’’または32’’’が、所定の位置で、弾性トーションばね要素10’〜10’’’の外側ケーシングに連結される。
【0078】
図5に示す実施の形態では、ブロック要素32’〜32’’’と外側ケーシングカム18’〜18’’’とは連結されていないため、上述したようにチェアに座った人が寄り掛かった場合、ベアリング軸26は反時計回り方向に回転して、弾性トーションばね要素10’〜10’’’は一体的に、ベアリング軸26の回転に従う。上述したように、この実施例では、パワーシステム30によって提供される全復元トルクDは、もっぱら弾性トーションばねベース要素28によって発生される復元トルクに等しい。したがって、弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、パワーシステム30によって供給される復元トルクDに貢献しない。
【0079】
カム軸36の回転が変化すると、例えば、一つまたはいくつかのブロック要素32’〜32’’’と一つまたはいくつかの外側ケーシングカム18’〜18’’’との間で連結することが可能となる。こうして、対応するブロック要素32’〜32’’’の一つに連結された弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、その外側ケーシングによってロックされる。その結果、パワーシステム30によって提供される全ての復元トルクを合計した全復元トルクは、弾性トーションばねベース要素28によって発生され、弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、ブロック要素32’〜32’’’手段によってロックされる。さらに詳述すると、全復元トルクは、カム軸36の回転によって設定することができる。
【0080】
図5に示すように、弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、異なる寸法に形成されている。これは、復元トルクを異ならせることができることを意味する。この実施例では、弾性トーションばね要素10’’’は、弾性トーションばね要素10’’よりも大きい復元トルクを発生させ、次に、弾性トーションばね要素10’’は、弾性トーションばね要素10’よりも大きい復元トルクを発生させる。個々の弾性トーションばね要素10’〜10’’’を別々に連結または連結解除することにより、全体で8つの異なる復元トルクを選択することができる。その結果、チェアに座る人のそれぞれの体重に合わせて復元トルクを切り替えることができる。このように、弾性トーションばね要素10’〜10’’’とブロック要素32’〜32’’’とを連結または連結解除することによって、例えば、体重45Kgの人が、体重120Kgの人が人間工学的に調整された復元トルクを経験することができるのと同じ程度に人間工学的に調整された復元トルクを経験することができる。上述した8つの異なる段階によると、例えば、45Kgから120Kgの体重の範囲で、人間工学的に最適な方法で支持することが可能となる。これにより、着座快適性がかなり改善される。
【0081】
図6は、第2の実施の形態の弾性トーションばね要素10を示す。この実施の形態では、内側ケーシング(図示省略)と外側ケーシング14は互いに、張力付与要素38によって、プレテンションがかけられている。この弾性トーションばね要素の詳細については、図7A〜図7Cが参照される。
【0082】
図7A〜図7Cは、図5に示す実施例と同様のパワーシステム30の種々の図を示しており、3つの弾性トーションばね要素10’〜10’’’を備えている。これらの3つの弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、図6に示す実施例にしたがって組み立てられる。また、パワーシステム30は、弾性トーションばねベース要素28と軸26を備えている。実施例では、図4及び図5に示す張力付与要素20とは異なる張力付与要素38’〜38’’’’を備えている。張力付与要素38’〜38’’’’は、平板状要素であり、それらの内側領域は矩形状に打ち抜かれている。この配置では、打ち抜き開口の形状がベアリング軸26の外側形状(正方形)に一致しており、しっかりと結合される。張力付与要素38’〜38’’’’の外側領域は、直交する貫通孔を有するように湾曲部39’〜39’’’’を備えている。
【0083】
パワーシステム30の組付け中に、ベアリング軸26と弾性トーションばねベース要素28の内側ケーシングは、半径方向にしっかりと連結される。第1張力付与要素38’はそのうち抜き開口によってベアリング軸26に取り付けられるため、ベアリング軸26と張力付与要素38’との間も、半径方向にしっかりと取り付けられる。その後、第1弾性トーションばね要素10’は、ベアリング軸26上に配置される。このステップに続いて、次の張力付与要素38’’などが設置される。張力付与要素38’〜38’’’を備えた3つの全ての弾性トーションばね要素10’〜10’’’がベアリング軸26上に配置された後、最後に、最後の張力付与要素38’’’’が側面に配置される。
【0084】
続いて、弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、個々にまたは同時にプレテンションがかけられ、例えば、ベアリング軸26に半径方向に取り付けられた外側ケーシングは、ベアリング軸26の長手方向において時計回り方向に回転される。この回転は、ピン40’、40’’を湾曲部39’〜39’’’’の各孔を貫通して挿入することができる回転角度まで続けられる。ピン40’、40’’を各孔に貫通して挿入した後、外側ケーシングを回転するための力の導入は終了する。この状態では、各弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、外側ケーシングの外面がピン40’、40’’に支えられて静止しているため、その位置に留まる。もはや外側ケーシングを最初の状態に戻すように回転させることはできない。
【0085】
図4及び図5に示す実施例に比べて、弾性トーションばね要素10’〜10’’’の内側ケーシング内に挿入されるフランジがないという点で張力付与要素38’〜38’’’の配置と設計に関連する利点がある。このように、ベアリング軸26は、内側ケーシング内面全体にしっかりと固定されて係合する。その結果、ベアリング軸26と弾性トーションばね要素10’〜10’’’の内側ケーシングとの間のいかなる遊びも避けられる。これに比較にて、図4及び図5に示す実施例では、ベアリング軸26のある部分でフランジ22によって起こされる弾性トーションばね要素10’〜10’’’の復元トルクの導入の結果としてベアリングの遊びが存在して、そのために、弾性トーションばね要素10’〜10’’’の内側ケーシングは、ベアリング軸26に機械的に接触することができない(図4及び図5を参照)。
【0086】
図7A〜図7Cに示す実施例は、図4及び図5に示す、各弾性トーションばね要素が張力付与要素20を備えている実施例の設置に比べて、設置が比較的に簡単であるという点でさらなる利点を有している。また、設置時間が相当に短縮される。さらに、個々の張力付与要素38’〜38’’’’の製造はかなり簡単で、かつ、時間的に集中が少ないという利点もある。また、張力付与要素は、打ち抜きによって、経済的に、簡単に製造することができる。
【0087】
図8A〜図8Cは、第2の実施の形態の弾性トーションばね要素10を示しており、一連の図において、内側ケーシング12と外側ケーシング14は互いに、増加する回転角度φだけ回転される。図8Aには、初期の非回転状態の弾性トーションばね要素10が示されており、この状態における弾性部材16は、いかなる弾性変形もなく、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間の復元トルクは発生しない(D=0)。この状態では、内側ケーシング12と外側ケーシング14は、互いに、−40°の回転角度φで反時計回り方向に回転されるように配置されている。図8Bには、時計回り方向に回転された状態の弾性トーションばね要素10が示されている。この配置では、内側ケーシング12は外側ケーシング14に対して、φ=0°の回転角度で配置されている。さらに詳述すると、図8Aに示す初期の状態に比べて、内側ケーシング12と外側ケーシング14は互いに、Δφ=40°だけ回転されている。図8Cには、回転された状態の弾性トーションばね要素10が示されており、この状態では、図8Aの状態に比べて、Δφ=70°だけ回転されている。
【0088】
初期の非回転状態(図8A)と比較した場合に、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間に−40°の回転オフセットがあり、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間のさらなる回転が、時計回り方向に回転角度の範囲で行われ(図8B及び図8Cを参照)、ここで、回転角度φの関数としての復元トルクの特性曲線が、大きい角度範囲にわたって線形に伸び、また、回転角度の関数として急勾配となる点で有利である。
【0089】
図9は、(図9に示されていない)チェアの支持部材42に組み込まれる図7A〜図7Cに図示したパワーシステム30を示している。この配置では、弾性トーションばねベース要素28が、その外側ケーシングによって支持部材42にしっかりと結合されている。支持部材42の開口部を通して、ベアリング軸(図示省略)が、回転するようにバックサポート44の一部に取り付けられる。続いて、バックサポート44は、図1のバックピース3(図9に示されていない)を受け入れるように使用され、このバックピース3に図1の背もたれ4が連結される。背もたれ4は基本的に垂直になるように延びている。背もたれ4は、パワーシステム30によって導入された復元トルクに対抗するように旋回することができる。また、図1の座席ベース5用の座席支持部材は、バックサポート44及び/または背もたれ4に連結することができるため、座席ベース5は、背もたれ4に同調して旋回させることができる。
【0090】
既述したように、図5に示すパワーシステム30と比較して、ベアリング軸26は、チェアに座った人が寄り掛かるとすぐに旋回する。図9に示す実施例では、ベアリング軸は、人が寄り掛かると時計回り方向に回転する。この状態では、パワーシステム30の弾性トーションばね要素10’〜10’’’の外側ケーシングカム(図示省略)は、ブロック要素によって支持部材42に連結されないし、個々の弾性トーションばね要素10’〜10’’’はこの回転に追従する。
【0091】
カム軸36が回転すると、このカム軸36に配置されたロックラグ34’〜34’’’
によって作動される個々のブロック要素32’〜32’’’は、弾性トーションばね要素10’〜10’’’の外側ケーシングカム18’〜18’’’に連結されるように切り替えられる。弾性トーションばね要素10’、10’’または10’’’の外側ケーシングカム18’〜18’’’のいずれかが連結状態になると、外側ケーシングカム18’、18’’または18’’’は、弾性トーションばね要素10’、10’’または10’’’に、弾性トーションばねベース要素28の復元トルクに追加して、復元トルクをベアリング軸26に作用させる。このように、弾性トーションばね要素10’〜10’’’は有利に設計され、個々に切り替えられて、回転角度に対して線形の復元トルクがバックサポートに作用するように配置される。この復元トルクは、チェアに座る人の体重に調整される。このようにして、最適な復元トルクが人の背中に作用して、その結果、着座快適性が改善される。
【0092】
図10A〜図10Eは、図7A〜図7Cに示す張力付与要素38’〜38’’’’を備えた弾性トーションばね要素10’〜10’’’に、各側面の間にプレテンションを付与するための張力付与装置46を示す図である。図10Aと図10Cには、張力付与装置46の全体を異なる方向から見た図が示されている。図10Bと図10Dには、張力付与装置46の細部を異なる方向から見た図が示されている。張力付与装置46は、迅速に、かつ、簡単に、数工程だけで、個々の弾性トーションばね要素10’〜10’’’にプレテンションを付与するために使用される。張力付与装置46は、ベアリング軸26(図10A〜図10Eには示されていない)を、その軸方向の端部で固定して取り付ける取付装置48’、48’’を備えている。図7A〜図7Cの上述した説明と関連させて説明すると、個々の弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、事前にベアリング軸26上に取り付けられる。ここで、張力付与要素38’〜38’’’’は、弾性トーションばね要素の間と側面に設置される。これらの張力付与要素38’〜38’’’’は、ベアリング軸に対して半径方向にしっかりと固定して連結される。
【0093】
張力付与装置46は、また、バー50を備えており、このバー50は、レバー52の二つのレバーアームの間に直交するように連結されている。レバーアームは、張力付与装置のベアリング54’、54’’で旋回するようにヒンジ結合されている。レバー52は、その下端が、装置52によって、前後に偏向させることができる。レバー52の下方を、図10Aの描写面から離れる方向に偏向させると、バー50は、矢印Aで示すように、弾性トーションばね要素10’〜10’’’に向けて偏向される。
【0094】
図10C〜図10Eに明確に示すように、バー50の矢印A方向への第1偏向段階では、最初に、バー50の表面領域が、例えば、外側ケーシングカム18’〜18’’’によって、第1弾性トーションばね要素10’’’の外側ケーシングの外面領域に係合する。
【0095】
バー50の矢印A方向への第2偏向段階では、さらに、バー50の表面領域が、第2弾性トーションばね要素10’’の外側ケーシングの外面領域に係合する。第1段階と第2段階との間でバー50が偏向する間に、事前に係合される第1弾性トーションばね要素10’’’の外側ケーシングの外面が、十分に旋回されるか、回転される。バー50の矢印A方向への第3偏向段階では、第3弾性トーションばね要素10’の外側ケーシングの外面領域に係合される。第2段階と第3段階との間でバー50が偏向する間に、第1弾性トーションばね要素10’’’と第2弾性トーションばね要素10’’は、偏向されるか、または、回転される。バー50の第4偏向段階では、全ての弾性トーションばね要素10’〜10’’’が、図7A〜図7Cに示すピン40’、40’’が、各張力付与要素38’〜38’’’’の湾曲部39’〜39’’’’の孔を貫通して挿入することができるように互いに平行に偏向されるか、回転される。ピン40’、40’’が上記孔を貫通して挿入されるとすぐに、バー50の上記偏向は反転され、すなわち、バー50は、矢印Aの方向とは反対方向に移動される。挿入されたピン40’40’’は、各弾性トーションばね要素10’〜10’’’の外側ケーシングの外面に支えられ、かつ、弾性トーションばね要素10’〜10’’’の復元トルクの効果によって固定される。さらに、ピン40’、40’’は、回転するように半径方向に連結された張力付与要素38’〜38’’’’によって保持される。各弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、もはや最初の非偏向状態(図10A〜図10E)に戻すことはできない。
【0096】
図10Eは、張力付与装置のベアリング54’、54’’の軸方向に見た張力付与装置46を示す。この図は、特に、初期状態における各弾性トーションばね要素10’〜10’’’が、異なる方法で偏向されることを示している。これは、弾性トーションばね要素10’〜10’’’の内側ケーシングが外側ケーシングの形状に対して、それぞれの弾性トーションばね要素10’〜10’’’が異なる回転オフセットで配置されているという事実に基づいている。弾性トーションばね要素10’〜10’’’の回転オフセットは、例えば、20°、25°及び40°とすることができる。内側ケーシングと外側ケーシングとの間の回転オフセットが異なることにより、各弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、異なる範囲でプレテンションが付与される。この実施例では、弾性トーションばね要素10’’’は、弾性トーションばね要素10’’よりも大きな範囲のプレテンションが付与され、また、弾性トーションばね要素10’’は、弾性トーションばね要素10’よりも大きな範囲のプレテンションが付与される。図10A及び図10C〜図10Eに示すように、プレテンションが付与された後、ピン40’、40’’は、張力付与要素38’〜38’’’’の湾曲部39’〜39’’’’の孔を貫通して挿入することができる。このように、各弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、ピン40’、40’’によって保持される。
【0097】
より小さいプレテンションを選択することはできないが、各弾性トーションばね要素10’〜10’’’の外側ケーシングを対応する内側ケーシングに対してさらに回転させて、弾性トーションばね要素10’〜10’’’によって発生される復元トルクが、回転角度が増加するにしたがって増大するように、外側ケーシング上に形成された外側ケーシングカム18’〜18’’’がピン40’に支えられて静止するまで回転させることができる。この状態では、弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、最大許容回転角度に到達して、最大限の実施可能な復元トルクを提供することができる。
【0098】
図10A〜図10Eに示す張力付与装置46とそれに関連させて説明した方法は、上述したパワーシステム30は、弾性トーションばね要素10’〜10’’’が異なる場合でも非常に迅速にほんのわずかな操作で生産することができることを、例示的に示すものである。
【符号の説明】
【0099】
1 シートアセンブリ、2 支柱、4 背もたれ、5 座席ベース、6 回転軸、10 弾性トーションばね要素、12 内側ケーシング、12a 内側ケーシングの接触面、14 外側ケーシング、14a 外側ケーシングの接触面、16 弾性部材、17 孔、19 保持要素(張力付与要素)、20 張力付与要素、26 ベアリング軸、28 弾性トーションばねベース要素(弾性トーションばね要素)、38 張力付与要素、42 支持部材、44 バックサポート
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席ベース、バックサポート及びバックサポート及び/または座席ベース用の支持部材を備え、バックサポート及び/または座席ベースは、バックサポート及び/または座席ベースが回転軸上で旋回運動することができるように支持部材に旋回自在に配置されており、また、バックサポートと支持部材との間、及び/または座席ベースと支持部材との間で力を伝達する少なくとも一つの弾性トーションばね要素を備えたシートアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、内側ケーシングと、この内側ケーシングを取り囲む外側ケーシングと、内側ケーシングと外側ケーシングとの間の空間に配置された弾性体を含む弾性トーションばね要素は公知である。この配置では、一般に、内側ケーシングは、この内側ケーシングに弾性体が接触する少なくとも一つの接触面を備えており、また、外側ケーシングは、この外側ケーシングに弾性体が接触する少なくともひとつの接触面を備えている。さらに、弾性トーションばね要素の内側ケーシング及び/または外側ケーシングは、回転軸上で回転するように配置されており、内側ケーシングが外側ケーシングに対して移動する回転中に、また、この過程で、弾性部材が変形することにより、該弾性部材が、外側ケーシングと内側ケーシングとの間に、回転に対抗するように作動する復元トルクを発生させるように、回転軸上の回転角度によって、内側ケーシング及び/または外側ケーシングを回転させることができる。
【0003】
このような弾性トーションばね要素は、例えば、第2ボディに対して第1ボディが移動する間に、それぞれの移動に反作用する復元力を発生させるように、互いに相対的に移動することができる第1ボディと第2ボディとの間でパワーを伝達する装置に使用される。第1の力を第1ボディに作用させて、その結果、第1のボディを第2のボディに対して移動させる場合、パワーを伝達する装置は、例えば、伝達するパワーとして、第1の力に反作用する復元力を発生させるため、第1のボディは第2のボディに対して平衡する位置にあるとみなすことができる。ここで、平衡位置では、第1の力は、復元力によって相殺される。
【0004】
第1ボディと、この第1ボディに対して移動することができる第2ボディとの間でパワーを伝達する装置は、上述した形式の少なくとも一つの弾性トーションばね要素と、第1ボディを弾性トーションばね要素の外側ケーシングに連結する第1連結手段と、第2ボディを弾性トーションばね要素の内側ケーシングに連結する第2連結手段とを使用して実施することができる。このために、第1連結手段と第2連結手段は、例えば、第1ボディを弾性トーションばね要素の外側ケーシングに連結すると共に、第2ボディを弾性トーションばね要素の内側ケーシングに連結して、内側ケーシング及び/または外側ケーシングの回転軸上で所定角度の回転、すなわち、外側ケーシングに対する内側ケーシングの回転により第2ボディに対して第1ボディの移動中、また、この過程で、弾性部材の変形が発生するように、設計することができる。この配置では、弾性トーションばね要素の弾性部材は、外側ケーシングと内側ケーシングとの間に復元トルクを発生する。この復元トルクは、内側ケーシングの回転または外側ケーシングの回転に反作用する。また、この配置では、弾性トーションばね要素によって発生される復元トルクは、第2ボディに対する第1ボディの移動に反作用する復元トルクに相当する。
【0005】
上述した形式のパワー伝達装置は、機械構造分野で多くの技術に応用されている。このようなパワーを伝達する装置の応用分野の一つは、特に、例えばチェア(背もたれ付き椅子)のシートアセンブリに関連している。
【0006】
シートアセンブリは、通常、固定して配置された支持構造体を含んでいるが、しばしば、固定しないように設計される。背もたれは、支持構造体及び/または支持構造体に枢着された座席ベースに対して枢着することができる。これを可能とするために、例えば、一方では、背もたれ及び/または座席ベースの空間的配置を、シートアセンブリ上に座る人の連続的に変化する体位に合わせるか、または、例えば、同じシートアセンブリを異なる人の異なる要求、例えば、好ましい体位に関連させて異なる体格、異なる体重または異なる習性に合わせることができる。この場合、上述した形式のパワー伝達装置は、背もたれを、弾性トーションばね要素手段によって支持構造体に連結するために有利に使用することができ、また、これを可能とするために、力が背もたれに作用した場合、背もたれを所定のノーマル位置に対して旋回させて、この背もたれの旋回移動中に、弾性トーションばね要素は、背もたれを安定した平衡位置に保持するために、背もたれに作用する復元力を発生するか、または、背もたれに作用する復元トルクを発生する。これにより着座性が改善される。それに応じて、上述した形式のパワー伝達装置は、シートアセンブリの座席ベースを弾性トーションばね要素手段によって支持構造体に連結するために使用することができる。
【0007】
特許文献1にはチェア(背もたれ付き椅子)が開示されており、このチェアは、上述した形式の弾性トーションばね要素258を備えており、この要素は、回転軸上での座席支持部材の旋回移動に反作用する復元トルクを発生するために使用されている。弾性トーションばね要素258は、内側ケーシング260と外側ケーシング264を備えており、内側ケーシング260と外側ケーシング264との間の空間に弾性部材262が組み込まれている。内側ケーシングの外側に、弾性部材262が内側ケーシング260に接触する接触面を有しており、また、外側ケーシング264の内側に、弾性部材262が外側ケーシング264に接触する接触面を有している。この配置では、弾性部材262は、内側ケーシング260の接触面と外側ケーシング264の接触面に固着されているため、弾性部材262は、内側ケーシング260の接触面または外側ケーシング264の接触面のどちらに対してもスリップすることができない。
【0008】
外側ケーシング264と内側ケーシング260は円筒状となるように設計され、互いに同軸上に配置されている。外側ケーシング264は、チェアの支持構造体に保持されており、一方、内側ケーシング260は、その長手軸上で回転することができる軸250に回転するように固定されている。チェアの座席ベース32は軸250に連結されており、人の体重が座席ベース32に作用した場合、軸250がその長手軸上で回転して、座席ベース32は、所定のノーマル位置から旋回する。軸250が旋回すると、内側ケーシング260は、その長手軸方向に旋回して、そして、この過程で、外側ケーシング264に対して旋回して、その結果、弾性トーションばね要素258は、軸250または座席ベース32に作用する復元トルクを発生する。この復元トルクは、軸250の回転移動または座席ベース32の旋回移動に反作用し、また、回転角度の増加に伴って増大する。この場合の弾性トーションばね要素258は、座席ベース32が上述したノーマル位置から旋回する際に軸250に作用する最低トルクの範囲(以下、「最低復元トルク」という)が、例えば、チェアに着座する人の体重によって変化する。このために、外側ケーシング264は、その長手軸上で、チェアの支持構造体に配置された旋回機構手段によって旋回することができ、また、軸250の長手軸上で旋回することができる。ここで、外側ケーシング264は、チェアの支持構造体、内側ケーシング260または軸250に対して旋回する。外側ケーシング264が内側ケーシング260に対して回転することによって、弾性トーションばね要素258にはプレテンションがかけられる。ここで、外側ケーシング264が内側ケーシング260に対して回転することによる回転角度と、座席ベース32がノーマル位置にある場合の「最低復元トルク」の範囲が決定される。
【0009】
外側ケーシング264及び内側ケーシング260の形状が円筒形状であるため、弾性部材262に隣接する外側ケーシング264の接触面と内側ケーシング260の接触面は円形であり、また、平面部分は軸250に直交する。軸250がその長手軸方向上で回転する間に、弾性部材262は変形して、引張荷重を受ける。
【0010】
弾性トーションばね要素258は、軸250のある回転角度までの回転中に発生する復元トルクが回転角度の関数として比較的わずかな上昇を示すという点で不利であり、この場合、特に、弾性トーションばね要素258はプレテンションがかけられないか、或いは、ほんの少しだけプレテンションがかけられるだけである。このことは、例えば、体重が重い人に最適な着座快適性を提供するために、最低復元トルクが大きく設定された場合、弾性トーションばね要素258は非常に高い範囲でプレテンションがかけられるというさらなる不利に導くことになる。さらに、軸250の回転角度の関数としての復元トルクは、例えば、軸250が0°からほぼ70°の範囲の回転角度で回転される場合に、非線形(累進的に)で急激に増大する。シートアセンブリに関する応用との関連では、上述した回転角度範囲における復元トルクの大幅な非線形性は好ましくない。その理由は、このような非線形性は、一般に、使用者に不快だと思われるからである。このように、有効な回転角度範囲が減少することは、不快である。さらに、大きなプレテンションにより、弾性部材262は常に大きな荷重にさらされて、より早く疲労を感じてしまう。その結果、弾性トーションばね要素258は、サービス寿命が短くなり、頻繁に取り替える必要がある。さらに、弾性トーションばね要素258のプレテンションの設定が面倒であり、また、時間を浪費して、さらに、外側ケーシング264は、最低復元トルクに設定するために、内側ケーシング260に対して大きな角度で調整する必要があるという不利がある。
【0011】
特許文献2には、上述した形式の別の弾性トーションばね要素が開示されている。この弾性トーションばね要素は、ベースプレートと、このベースプレートに移動可能に保持されたモーターとの間でパワーを伝達する装置に使用されている。この弾性トーションばね要素は、また、内側ケーシングと、この内側ケーシングを取り囲む外側ケーシングを備えており、内側ケーシング及び/または外側ケーシングは、回転軸上に回転自在に配置されている。内側ケーシングの外面と外側ケーシングの内面は、回転軸に直交する断面四角形状の平面部分を備えている。内側ケーシングと外側ケーシングとの間に空間が存在する。「ノーマル位置」において、弾性トーションばね要素の内側ケーシングが外側ケーシングに対して回転軸上で45°だけ回転することにより、空間は、外側ケーシングの4つのコーナー部に形成された4つの小区画から構成され、回転軸に直交する断面で見た場合に三角形の形状となる。どの場合でも4つの小区画には、弾性部材(好適にはゴムから形成される)が挿入される。非変形状態では、弾性部材は円筒形状である。小区画空間に配置する前に、弾性部材は圧縮され、圧縮状態では、各小区画が弾性部材の一つで占められるように小区画空間に挿入され、各弾性部材は、内側ケーシングの外面及び外側ケーシングの内面に対して所定の圧力で静止している。ここで、弾性部材は、内側ケーシング及び外側ケーシングのどちらにも固着されていない。この弾性トーションばね要素の4つの弾性部材は同一であるため、弾性トーションばね要素の内側ケーシングは、外側ケーシングまたは内側ケーシングに外力が作用しないように、弾性部材によって上述したノーマル位置に保持される。ここで、外力は、外側ケーシングに対して、内側ケーシングを回転軸上で回転させることがある。しかしながら、内側ケーシングが外側ケーシングに対して回転軸上で回転した場合、4つの弾性部材は、内側ケーシングと外側ケーシングとの間に復元トルクを発生する。この復元トルクは、回転移動に反作用して、回転角度の増大に伴って増加する。この弾性トーションばね要素には、様々な欠点がある。内側ケーシングは、外側ケーシングに対して、両回転方向に同じ範囲だけ、最大でも、ほぼ30°まで回転軸上で回転することができる。ノーマル位置に比べて30°以上回転することはできない。内側ケーシングの回転中、弾性トーションばね要素の復元トルクは、0°から30°の範囲の回転角度(外側ケーシングに関連する上述したノーマル位置に対しての回転角度)の関数として、非線形で急激に増大する。さらに、内側ケーシングが、内側ケーシングまたは外側ケーシングに対して30°以上回転した場合には、弾性部材がスリップしてしまうという危険性がある。この配置では、内側ケーシングは、不安定な位置に移動することができるため、弾性部材は、もはや復元トルクを発生することができない。この復元トルクは、内側ケーシングを、外側ケーシングに対してノーマル位置に確実に戻すように移動させる。多くの適用例では、このような不安定さは望ましくないし、例えば、内側ケーシングがノーマル位置に対してほぼ30°の限界に達した場合に内側ケーシングの更なる回転を阻止する安全手段を使用して阻む必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許公開第1486142号公報
【特許文献2】英国特許公開第2070727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、本発明の目的は、上述した欠点を回避して、内側ケーシングを外側ケーシングに対して30°以上まで回転させて、回転角度の関数として比較的急激に増大すると共に、できるだけ広い角度範囲で回転角度の関数として基本的に線形に進行する復元トルクを発生させることができる弾性トーションばね要素を備えたシートアセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的は、請求項1の特徴を備えたシートアセンブリ、または、請求項2の特徴を備えたシートアセンブリによって達成される。
【0015】
本発明に従うシートアセンブリは、座席ベースと、バックサポートと、バックサポート及び/または座席ベース用の支持部材と、を含んでおり、バックサポート及び/または座席ベースは、バックサポート及び/または座席ベースが回転軸上で旋回運動することができるように、支持部材に旋回自在にヒンジ結合されている。シートアセンブリは、さらに、少なくとも一つの弾性トーションばね要素を含んでいる。
【0016】
弾性トーションばね要素は、内側ケーシングと、この内側ケーシングを取り囲んでいる外側ケーシングと、内側ケーシングと外側ケーシングとの間の空間に配置された弾性部材と、を含んでいる。内側ケーシングは、弾性部材が内側ケーシングに接触する少なくとも一つの接触面を備えており、また、外側ケーシングは、弾性部材が外側ケーシングに接触する少なくとも一つの接触面を備えており、また、弾性部材は、内側ケーシングの接触面と外側ケーシングの接触面に固着されている。さらに、弾性トーションばね要素の内側ケーシング及び/または外側ケーシングは、回転軸上に回転自在に配置されている。
【0017】
第1改良例によれば、支持部材は、弾性トーションばね要素の外側ケーシングに連結されており、バックサポート及び/または座席ベースは、このバックサポート及び/または座席ベースの旋回運動中に、内側ケーシングが回転軸上で回転角度だけ回転すると共に、内側ケーシングが外側ケーシングに対して回転移動できるように弾性トーションばね要素の内側ケーシングに連結されており、また、この過程で、弾性部材が変形することにより、弾性部材が、外側ケーシングと内側ケーシングとの間に復元トルクを発生する。この復元トルクは回転に対抗するように作用する。
【0018】
第2改良例(すなわち、上記第1改良例とは別)によれば、支持部材は、弾性トーションばね要素の内側ケーシングに連結されており、バックサポート及び/または座席ベースは、このバックサポート及び/または座席ベースの旋回運動中に、外側ケーシングが回転軸上で回転角度だけ回転すると共に、内側ケーシングが外側ケーシングに対して回転移動できるように弾性トーションばね要素の外側ケーシングに連結されており、また、この過程で、弾性部材が変形することにより、弾性部材が、外側ケーシングと内側ケーシングとの間に復元トルクを発生する。この復元トルクは回転に対抗するように作用する。
【0019】
本発明によれば、内側ケーシング及び/または外側ケーシングの接触面は、内側ケーシングの接触面の、回転軸に直交する平面部分は非円形断面に形成され、及び/または、外側ケーシングの接触面の、回転軸に直交する平面部分は非円形断面に形成されるように設計されている。弾性部材は、例えば、ゴムから形成されている。
【0020】
本発明によれば、弾性トーションばね要素は、上述した特許文献1の弾性トーションばね要素とは異なっており、回転軸に直交する内側ケーシングの接触面の平面部分、及び/または、回転軸に直交する外側ケーシングの接触面の平面部分は非円形形状であるが、一方、特許文献1の弾性トーションばね要素の、回転軸に直交する内側ケーシングの接触面の平面部分、及び/または、外側ケーシングの接触面は、二つの同心円の形状の断面を有している。特許文献1の弾性トーションばね要素の場合は、内側ケーシングと外側ケーシングの接触面は、結果的に、弾性トーションばね要素の回転軸に対して対称に回転するように設計される。特に、その結果、弾性トーションばね要素の弾性部材は、外側ケーシングに対して内側ケーシングの回転中に、もっぱら引っ張り荷重にさらされ、弾性部材の機械的張力の空間分布が、弾性トーションばね要素の回転軸に対して対称に回転するように変形する。
これに対して、本発明の弾性トーションばね要素の場合、内側ケーシングと外側ケーシングの少なくとも一つの接触面は、回転軸に対して対称に回転しないように設計されている。その結果、本発明の弾性トーションばね要素の弾性部材と、特許文献1の弾性トーションばね要素の弾性部材との相違により、弾性トーションばね要素の内側ケーシングが弾性トーションばね要素の外側ケーシングに対して回転軸上で回転する場合に異なるように変形する。その結果、本発明に従う弾性トーションばね要素の外側ケーシングまたは内側ケーシングの断面形状により、(特許文献1の弾性トーションばね要素と比較した場合)(特に小さい回転角度の範囲で)回転角度の関数として急激に増大するように復元トルクを発生する。この比較は、弾性トーションばね要素の弾性部材が、同じエラストマー、例えば、ゴムから形成されていることを前提としている。その結果、本発明の弾性トーションばね要素は、この弾性トーションばね要素が所定の最低復元トルクを発生させて、弾性部材にプレテンションをかけるために、内側ケーシングは、回転軸上で外側ケーシングに対して小さい回転角度で回転される必要があるという点で有利に組み付けられる。このように、本発明に従う弾性トーションばね要素は、弾性部材がより少ない程度で伸びて、その結果、損傷や疲労することがないという利点を提供する。
【0021】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素は、特に、弾性部材が、内側ケーシングの接触面と外側ケーシングの接触面に固着されているという点で、上述した特許文献2の弾性トーションばね要素とは異なっている。このことは、内側ケーシングが外側ケーシングに対して回転軸上で回転して、また、この過程で、弾性部材が変形した場合でも、弾性部材は、上述した接触面の範囲では、内側ケーシングの接触面に対しても、外側ケーシングの接触面に対してもスライドすることがないという利点を提供する。弾性部材が内側ケーシングと外側ケーシングに固着されている点で、本発明に従う弾性トーションばね要素の場合は、(外側ケーシングに対して内側ケーシングの少なくとも特定の位置において)弾性部材はプレテンションがかけられることがなく、また、圧縮されることもなく、内側ケーシングと外側ケーシングとの間の空間に弾性部材を挿入することが可能となる。この結果、特に、特許文献2の弾性トーションばね要素と比較した場合、(外側ケーシングに対して所定のノーマル位置からスタートする)内側ケーシングは、弾性部材を損傷させることなく、外側ケーシングに対して、30°を越える回転角度範囲、例えば、0°から80°の回転角度範囲で回転することができる。さらに、弾性部材は、本発明の弾性トーションばね要素が外側ケーシングに対して内側ケーシングの回転運動中に、例えば、0°から80°の回転角度範囲で回転角度の関数として基本的に線形に進行する復元トルクを発生するように設計することができる。
【0022】
上述した第1改良例の改善例では、弾性トーションばね要素の外側ケーシングが支持部材に連結されており、また、弾性トーションばね要素の内側ケーシングは、回転軸上で回転することができるようにベアリング軸に回転自在に連結されており、ベアリング軸は、バックサポート及び/または座席ベースに回転するように固着されている。
【0023】
上述した第2改良例の改善例では、弾性トーションばね要素の内側ケーシングが支持部材に連結されており、また、弾性トーションばね要素の外側ケーシングは、回転軸上で回転することができるようにベアリング軸に回転自在に連結されており、ベアリング軸は、バックサポート及び/または座席ベースに回転するように固着されている。
【0024】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素の一つの実施の形態では、内側ケーシングの接触面と外側ケーシングの接触面は、内側ケーシング及び/または外側ケーシングが回転軸上で少なくとも所定の回転角度範囲で回転中に、内側ケーシングの規定点と外側ケーシングの規定点との間の距離が減少するように互いに配置されている。この場合、内側ケーシングの規定点と外側ケーシングの規定点との間の距離の減少により、内側ケーシングの外側ケーシングに対する回転中に、弾性部材自体に引張荷重がかからないが、弾性部材の特定の範囲には、圧縮荷重がかかる。したがって、弾性部材の変形は、引張応力と圧縮応力のオーバレイによって決定される。弾性部材のある範囲の圧縮荷重は、弾性部材の他の範囲の引張荷重で相殺される。その結果、弾性部材の全素材は、不均一に荷重にさらされる。この実施の形態では、外側ケーシングと内側ケーシングとの間に復元トルクを発生させて、この復元トルクが、回転角度の関数として急激な増大を示して、特に、大きな回転角度範囲では、回転角度の関数として基本的に線形の進行を示すようにすることが可能である。
【0025】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素の一つの実施の形態では、内側ケーシングの接触面と外側ケーシングの接触面の回転軸に直交する平面部分は、非円形断面であり、また、互いに、内側ケーシング及び/または外側ケーシングが回転軸上で回転することにより、弾性部材の少なくとも一部の領域に圧縮荷重が発生するように配置されていることを特徴としている。この実施の形態では、内側ケーシング及び/または外側ケーシングが回転軸上で回転中に、弾性部材は、この弾性部材のある範囲は引張荷重にさらされ、また、他の範囲では圧縮荷重にさらされて、少なくともある回転角度範囲で変形する。この配置では、引張荷重と圧縮荷重は、弾性部材が不均一に荷重にさらされるように、弾性部材内に分布して、少なくとも一部の圧縮応力は、引張応力で相殺される。この実施の形態では、外側ケーシングと内側ケーシングとの間に復元トルクを発生させて、この復元トルクが、回転角度の関数として特に急激な増大を示し、また、大きな角度範囲では、回転角度の関数として基本的に線形の進行を示すようにすることが可能である。
【0026】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素の一つの実施の形態では、内側ケーシングの接触面と外側ケーシングの接触面は、内側ケーシング及び/または外側ケーシングが回転軸上で所定の回転角度範囲だけ回転することによって、この回転角度で線形に増大する復元トルクとなるように設計されている。内側ケーシングの接触面または外側ケーシングの接触面は、回転軸に対して対称に回転しないため、回転角度に依存する復元トルクは、内側ケーシングが所定のノーマル位置にある場合に外側ケーシングに関連すると見なされる内側ケーシングの位置によって決定される。外側ケーシングに対する内側ケーシングのノーマル位置は、所定の回転角度範囲で回転角度の関数としての復元トルクが線形の進行を示すように選択することができる。
【0027】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素の一つの実施の形態では、内側ケーシングの接触面及び/または外側ケーシングの接触面の、回転軸に直交する平面部分は、多角形に或いはある部分が直線を備えるように設計される。このような内側ケーシングと外側ケーシングの接触面により、弾性部材は、各回転角度で応用特有な不均一な変形をすることが可能となる。
【0028】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素の一つの実施の形態では、外側ケーシングの接触面は、少なくともある部分では円筒形状になるように設計される。その結果、弾性部材は、内側ケーシングの外側ケーシングに対する回転中に、不均一な荷重にさらされる。
【0029】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素の一つの実施の形態では、外側ケーシングの回転軸に直交する接触面の平面部分は、少なくとも二対の対向するコーナー部が丸い矩形であるように設計される。このような外側ケーシングの内面の形態によって、各回転角度によって弾性部材に応用特有な不均一な荷重を付与することができる。
【0030】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素の一つの実施の形態では、外側ケーシングの接触面は、二対の対向する等辺の角形部分といずれの場合でも矩形の角形部分の端部に連結される対向する二対の半円形部分を備えている。寸法については、外側ケーシングを備えた弾性トーションばね要素は、復元トルクの進行が回転角度に関して線形である特性曲線からなるように設計される。
【0031】
本発明に従うシートアセンブリの弾性トーションばね要素の一つの実施の形態では、内側ケーシングの接触面の回転軸に直交する平面部分は、矩形であるように設計される。このような内側ケーシングの接触面の形態により、外側ケーシングに対する内側ケーシングの回転中に、弾性部材のある領域は、弾性部材の引張力を相殺する圧縮力にさらされるため、特に有利である。この弾性部材の不均一な荷重の結果、弾性トーションばね要素によって、回転角度、特に広い回転角度範囲の関数として発生した復元トルクは、特に急激に増大する線形の進行を示す。例えば、内側ケーシングの接触面は、回転軸に直交する平面部分を正方形にすることができる。
【0032】
弾性トーションばね要素の外側ケーシングと内側ケーシングの形状と寸法に関しては、弾性トーションばね要素の外側ケーシングの内側断面と内側ケーシングの外側断面は、外側ケーシングの内側断面の表面積と内側ケーシングの外側断面の表面積の比が、7/3より大きい場合に有利である。これにより、弾性トーションばね要素によって発生される回転角度の関数としての復元トルクは、特に広い回転角度範囲で線形の進行を示すことが保証される。上述した状態が満たされると、例えば、弾性トーションばね要素の弾性部材がゴムで形成されている場合、回転角度の関数としての復元トルクの線形の進行は、少なくとも70°の回転角度範囲にわたって達成することができる。
【0033】
弾性トーションばね要素では、弾性部材が、この弾性部材を貫く一つあるいは数個の孔を備える場合に有利である。この孔は、回転軸に沿って延在している。この手段はいくつかの利点に関連する。例えば、弾性部材を加硫で製造する場合、弾性部材を形成する加硫される素材を、加硫の前に素材に孔を成形することが特に有利である。この場合、孔の形成は、加硫の直後の弾性部材は、その内側に弾性張力を有することなく、或いは、ほんの少しの弾性張力を有するため、弾性トーションばね要素は、弾性部材に次の処理を必要とすることなく、加硫の直後にいつでも使用できる状態になるという効果がある。しかしながら、弾性部材は、上述した孔を備えることなく製造される場合は、外側ケーシングと内側ケーシングとの間にトルクが作用しない場合でも、弾性部材は、加硫直後にその内側に比較的高い弾性張力を有する可能性がある。この弾性張力は、加硫直後の弾性トーションばね要素に、回転角度の関数としての所望の復元トルクの進行を示さないという状況をもたらす可能性がある。一般にこの場合、内側ケーシングは、外側ケーシングに対して比較的小さい回転角度だけ回転されるため、加硫直後の弾性トーションばね要素により発生される復元トルクは比較的に小さくなる可能性がある。上述したように、弾性トーションばね要素の加硫後の弾性部材は、その内部に比較的高い弾性張力を有する場合、この弾性トーションばね要素は、一般的に、弾性部材の内部の張力を減少させる適当な次処理、例えば、弾性部材を特定の方向に絞ること(スキージング)によって最適化される。この次の処理は、念入りな仕上げであり、好ましくはない。しかしながら、上述したように、加硫の前に弾性部材に一つあるいは二つの孔を形成する場合には、この次の処理の必要性を回避することができる。このような加硫直後の(一つまたは数個の孔を備えた)弾性部材は、弾性張力を有することがないか、或いは、ほんの少しの弾性張力を有しており、上述した次の処理をすることなく、比較的広い回転角度範囲にわたって内側ケーシングを外側ケーシングに対して回転させることが可能であり、また、比較的に高い復元トルクを発生させることが可能となる。
【0034】
弾性トーションばね要素の弾性部材が、その弾性部材内に一つまたは数個の孔を備える場合、外側ケーシングに対して特定の回転角度で内側ケーシングを回転させた際に、この過程で弾性部材が変形され、孔の断面の形状と寸法が変化するという効果がある。この効果は、弾性部材の損傷を大幅に減少させて、内側ケーシングを外側ケーシングに対して比較的大きい回転角度で回転させることが可能となり、このようにして、弾性部材の耐用年数を延長させることができる。既述したように、弾性部材の特定の範囲では、本発明のシートアセンブリの弾性トーションばね要素の弾性部材には、内側ケーシングが外側ケーシングに対して特定の回転角度だけ回転した場合に圧縮荷重が作用する。弾性部材の特定の範囲では、この圧縮荷重は、弾性トーションばね要素の回転軸の方向に弾性部材を部分的に伸ばして、圧縮荷重が作用するこの範囲では、間隔が長くなることによって回転角度が大きくなる。この弾性部材の伸長は、例えば、弾性部材の表面(外側ケーシングの接触面にも内側ケーシングの接触面にも結合されていない弾性部材の範囲)を部分的に凹凸に変形させて、回転角度を全体的に大きくするという効果がある。回転角度が大きい場合、例えば、変形により表面の隣り合う領域が互いに接触するため、これらの表面領域間の摩擦が大きくなる可能性がある。例えば、上述した摩擦が原因で、変形により弾性部材の摩耗や裂傷が促進されて、特に、内側ケーシングが頻繁に回転された場合や、外側ケーシングに対して比較的大きな回転角度で高速で回転させた場合に、弾性部材の耐用年数を短くしてしまう。上述したタイプの摩耗や裂傷は、弾性トーションばね要素の弾性部材が一つまたは数個の貫通穴を有する場合に効果的に防止することができる。好適には、各孔は、回転角度が増大するにつれて各孔の断面積が減少するように、弾性部材に配置することができる。各孔の断面積を減少させることにより、回転角度が増加した弾性部材は、圧縮荷重が作用する弾性部材の領域が、弾性トーションばね要素の回転軸の方向にわずかに広がるため、弾性部材の表面がわずかに変形するという効果を有する。このように、弾性部材が回転軸の方向に広がることは、各孔の断面積の減少によって少なくとも部分的に相殺される。各孔は、弾性部材の荷重能力を改善して、弾性部材を破壊することなく比較的大きな復元トルクを発生させることができる。各孔は、丸い断面或いは他の適宜の断面を備えることができる。
【0035】
上述した弾性トーションばね要素の実施の形態の変形例として、弾性トーションばね要素は、(i)外側ケーシングに対して内側ケーシングを所定のノーマル位置に保持して、このノーマル位置では、弾性部材は所定の弾性変形を有し、外側ケーシングと内側ケーシングとの間に所定の最小値に等しい復元トルクを発生させるように、また、(ii)回転軸上での回転角度が、該回転角度の増加に伴って復元トルクが増大するように、内側ケーシングを外側ケーシングに対して回転させることができるように設計された保持要素を備えている。
【0036】
この変形例では、内側ケーシングは、ノーマル位置にある場合に、外側ケーシングに対して回転軸上で一方向のみに回転することができ、保持要素は、内側ケーシングがノーマル位置にある場合に、他の方向への回転を阻止する。この弾性部材の場合は、常に弾性変形しているため、弾性トーションばね要素は、内側ケーシングが外側ケーシングに対して回転中に、常にゼロよりも大きい値の復元トルクを発生する。内側ケーシングがノーマル位置にある場合、弾性部材によって発生される復元トルクは、保持要素によって処理される。ノーマル位置からスタートする内側ケーシングが外側ケーシングに対して回転する場合、弾性部材は、外側ケーシングと内側ケーシングとの間に復元トルクを発生して、この復元トルクは、上述した最低値からスタートして回転角度が増加するにつれて徐々に増加する。この最低値は、弾性トーションばね要素で発生される最低復元トルクとして定義される。この最低値は、弾性張力(以下、「弾性部材のプレテンション」として参照される)の範囲で決定される。ここでは、弾性部材が、内側ケーシングが外側ケーシングに対してノーマル位置にある場合を含む。この最低値は、要求に応じて設定される。この弾性トーションばね要素の変形例は、二つの部材が相対運動する場合に、常に最低値(ゼロより大きい)を超えるか、または、最低値に等しい復元トルクが発生される二つの部材の間でパワーを伝達する装置に使用する場合に有利である。
【0037】
弾性部材のプレテンションは、例えば、弾性トーションばね要素を製造する場合、最初に、弾性部材は内側ケーシングの接触面と外側ケーシングの接触面に固着され、また、弾性部材は、内側ケーシングが外側ケーシングに対して初期位置にある場合に、最初は変形されることなく、かつ、いかなる機械的な張力も備えることないように実施させることができる。その結果、内側ケーシング及び/または外側ケーシングは、回転軸上で所定の回転方向に、回転角度が所定値(以下、「初期位置に対する角度オフセット」として参照される)に近づくまでの回転角度だけ回転されるため、弾性部材は変形され、かつ、所定の機械的張力を備える。その後、保持要素が、内側ケーシングまたは外側ケーシングが所定の回転方向にさらに回転できるが、初期位置に対する回転角度が上述した「角度オフセット」に等しくなると直ぐに反対方向への回転は阻止されるように、組み込まれる。
【0038】
本発明に従う弾性トーションばね要素は、「角度オフセット」は、(例えば、特許文献1の弾性トーションばね要素と比較した場合に)復元トルクを所定の最低値とみなすことを保証するために、比較的小さくなるように選択することができるという点で優位性を備える。これは、弾性部材上にわずかな効力を備え、また、弾性部材の耐用年数を長くするためには有効である。
【0039】
単なる実施の形態では、保持要素は、回転軸に直交するように内側ケーシングの側面に配置された棒状体でもよいし、さらに、内側ケーシングに固着してもよい。さらに、外側ケーシングは、棒状体用の機械的な端部ストッパを備えることができ、この端部ストッパは、内側ケーシングが所定の回転方向に回転中に棒状体が端部ストッパに支えられて、同じ方向へのさらなる回転が阻止されるように配置される。この配置では、内側ケーシングは反対方向へ回転することができる。この場合、端部ストッパの位置により、外側ケーシングに対する内側ケーシングのノーマル位置が決定される。この場合、機械的な端部ストッパまたは外側ケーシングは、内側ケーシングがノーマル位置にある場合に、弾性部材のプレテンションを吸収する。
【0040】
所定のノーマル位置では、内側ケーシングは、保持要素によって外側ケーシングに対して、例えば、内側ケーシングの外側ケーシングに対する回転中に、保持要素によって、回転角度の増加に伴って復元トルクが線形に増加するように保持される。
【0041】
上述した変形例の実施の形態では、保持要素は、少なくとも一つの張力付与要素を備えており、この張力付与要素は、内側ケーシングにしっかりと係合させた第1部分と、内側ケーシングが外側ケーシングに対して所定のノーマル位置に位置する場合に、外側ケーシングの一部に支えられ、かつ、内側ケーシングと外側ケーシングが互いに回転軸上で復元トルクが増大する回転方向に回転することができる第2部分を備えている。この変形例の他の例では、保持要素は少なくとも一つの張力付与要素を備えており、この張力付与要素は、外側ケーシングにしっかりと係合させた第1部分と、内側ケーシングが外側ケーシングに対して所定のノーマル位置に位置する場合に、内側ケーシングの一部に支えられ、かつ、内側ケーシングと外側ケーシングが互いに回転軸上で復元トルクが増大する回転方向に回転することができる第2部分を備えている。上述した変形例では、張力付与要素は、この張力付与要素が弾性トーションばね要素の回転軸上で回転運動することによって、内側ケーシングを外側ケーシングに対して回転させて、かつ、この過程で、内側ケーシングが保持要素によって外側ケーシングに対してノーマル位置に保持される場合に、保持要素によって維持される機械的なプレテンションを備えた弾性部材を提供するための「ツール」として使用することができる。この弾性トーションばね要素は、保持要素が単一手段によって実施されるため、本発明に従って、内側ケーシング及び/または外側ケーシングは非円形部分を備え、外側ケーシングまたは内側ケーシングのどちらかが張力付与要素用の機械的端部ストッパとして機能することができるという点で優位性を備える。ここで、張力付与要素は、外側ケーシングまたは内側ケーシングの回転軸上での回転中に、回転軸上で円軌道をたどる。所定のプレテンションを達成するためには、張力付与要素が、外側ケーシングまたは内側ケーシングに対して適当な位置に移動する必要があるだけである。
【0042】
弾性トーションばね要素の一つの変形例では、内側ケーシングは凹部を含んでおり、張力付与要素の第1部分は、内側ケーシングの凹部内に回転するように挿入され、また、張力付与要素の第2部分は、内側ケーシングが外側ケーシングに対して所定のノーマル位置に位置する場合に、外側ケーシングの一部に支えられている。外側ケーシングの一部は、例えば、外側ケーシングの外面に配置することができる。この配置では、内側ケーシングと外側ケーシングの相互の角度は、所定の「角度オフセット」だけオフセットされて保持される。
【0043】
張力付与要素を使用することは、いくつかの利点を有する。張力付与要素は、ほとんど材料を必要としないし、経済的に製造することができる。さらに、弾性トーションばね要素の内側ケーシングと外側ケーシングへの張力付与要素の設置は、非常に簡単な方法で、かつ、短時間で実施することができる。さらに、内側ケーシングまたは外側ケーシングに固着するための部材を必要としない。いくつかの弾性トーションばね要素は、張力付与要素手段によって、単一工程で同時にプレテンションをかけることができ、その結果、設置に要する時間はさらに短縮される。
【0044】
好適には、内側ケーシングと外側ケーシングは互いに、内側ケーシングに対して外側ケーシングを予め定めたように配列した弾性部材がプレテンションを有するように配置される。いくつかの弾性トーションばね要素は、例えば、ベアリング軸上に互いに平行に配置することができる。この配置では、弾性トーションばね要素は、異なるプレテンション程度を有しており、外側ケーシングは、互いに同一平面上にあるように配置される。
【0045】
本発明に従うシートアセンブリは、多数の弾性トーションばね要素から構成することができ、この場合、各弾性トーションばね要素は、各弾性トーションばね要素の内側ケーシング及び/または外側ケーシングが同じ回転軸上で回転できるように並んで配置される。この場合、全ての弾性トーションばね要素が、個々の弾性トーションばね要素によって発生された復元トルクをオーバレイ(重ねる)することによって生じる復元トルクを発生する(この場合、第1部材は第2部材に連結される)。
【0046】
シートアセンブリはモジュール設計を含むことができる。全ての弾性トーションばね要素は、例えば、一つのまとまりとして搬送して、設置することができるモジュールから形成することができる。このことは、シートアセンブリの製造やメンテナンスを簡素化する。全ての弾性トーションばね要素は、例えば、モジュール内に予め組み込まれ、また、他の部材に組み付けることができる。
【0047】
いくつかの弾性トーションばね要素を組み合わせるために、モジュールを形成することは、例えば、弾性トーションばね要素の内側ケーシング及び/または弾性トーションばね要素の外側ケーシングを互いにしっかりと連結することが可能となる。このために、内側ケーシングは、例えば、共通のベアリング軸上にセットされ、このベアリング軸に固定される。
【0048】
適当なモジュールの弾性トーションばね要素の場合には、異なる特性を備えることができる。異なる弾性トーションばね要素は、例えば、回転角度の関数としての復元トルクの進行を異ならせることができる。異なる弾性トーションばね要素は、例えば、別々にプレテンションを有し、弾性トーションばね要素の内側ケーシングが外側ケーシングに対してノーマル位置にある場合に、別々の弾性トーションばね要素が異なる復元トルクの範囲を提供することができる弾性部材を備えることができる。異なる特性を備えた異なる弾性トーションばね要素を組み合わせることによって、簡単に、かつ、経済的に、パワーを伝達する装置を製造することが可能となる。この装置は、所望の異なる特性を備えるか、或いは、例えば、個々の弾性トーションばね要素を交換することによって修正することが可能となる。さらに、本発明の詳細及び本発明に従うシートアセンブリの例示的な実施の形態は、以下に、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に従うシートアセンブリの実施の形態をチェアの形態で示す図である。
【図2】第1の実施の形態の弾性トーションばね要素の側面図である。
【図3A】回転角度の関数としての復元トルクの特性曲線を、本発明の実施の形態の弾性トーションばね要素の特性曲線(曲線K1)と、従来の弾性トーションばね要素の特性曲線(曲線K2)を示す図である。
【図3B】本発明に従う弾性トーションばね要素の異なる実施の形態の回転角度の関数としての復元トルクの特性曲線を示す図である。
【図3C】別の実施の形態の弾性トーションばね要素の側面図である。
【図4】保持要素によってプレテンションがかけられた第1の実施の形態の弾性トーションばね要素を示す図である。
【図5】チェアのパワーシステムに組み込まれた第1の実施の形態の弾性トーションばね要素の使用例を示す図である。
【図6】保持要素によってプレテンションがかけられた第2の実施の形態の弾性トーションばね要素を示す図である。
【図7A】保持要素によってプレテンションがかけられて、チェアのパワーシステムに組み込まれた第2の実施の形態の弾性トーションばね要素を3個使用した実施の形態を示す斜視図である。
【図7B】保持要素によってプレテンションがかけられて、チェアのパワーシステムに組み込まれた第2の実施の形態の弾性トーションばね要素を3個使用した実施の形態を図7Aとは異なる方向から見た斜視図である。
【図7C】保持要素によってプレテンションがかけられて、チェアのパワーシステムに組み込まれた第2の実施の形態の弾性トーションばね要素を3個使用した実施の形態を図7A及び図7Bとは異なる方向から見た図である。
【図8A】第2の実施の形態の弾性トーションばね要素の外側ケーシングに対する内側ケーシングの位置を示す図であり、内側ケーシングが外側ケーシングに対して互いに異なる回転角度で回転している図である。
【図8B】第2の実施の形態の弾性トーションばね要素の外側ケーシングに対する内側ケーシングの位置を示す図であり、内側ケーシングが外側ケーシングに対して図8Aとは互いに異なる回転角度で回転している図である。
【図8C】第2の実施の形態の弾性トーションばね要素の外側ケーシングに対する内側ケーシングの位置を示す図であり、内側ケーシングが外側ケーシングに対して図8A及び図8Bとは互いに異なる回転角度で回転している図である。
【図9】チェアの支持部材に組み込んだパワーシステムの形態に組み合わせた第2の実施の形態の弾性トーションばね要素を示す図である。
【図10A】図7A〜図7Cに示すパワーシステムを製造する張力付与装置の斜視図である。
【図10B】図10Aに示す張力付与装置の細部を拡大して示す斜視図である。
【図10C】図7A〜図7Cに示すパワーシステムを製造する張力付与装置を図10Aとは異なる方向から見た斜視図である。
【図10D】図10Cに示す張力付与装置の細部を拡大して示す斜視図である。
【図10E】図7A〜図7Cに示すパワーシステムを製造する張力付与装置をベアリングの軸方向に見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図面及び以下の説明では、同一の符号は同一の部材に対して使用される。
図1は、シートアセンブリの実施の形態をチェア(背もたれ付き椅子)1の形態で示す。チェア1は、回転型オフィスチェアであり、高さ調整手段により360°回転可能に支持支柱2に支持されている。支持支柱2の上端に、支持部材42が基本的に水平になるように組み付けられる。支持部材42は、以下に説明する機械要素を収容するケーシングとして用いられる。バックサポート44は、ベアリング軸26によって支持部材42に旋回自在にヒンジ結合されている。バックピース3は、バックサポート44の他端に連結されており、このバックピースは、基本的に垂直に配置される背もたれ4を受け入れるように設計されている。バックピース3は、バックサポート44との連結部でスライドすることができる。同様に、背もたれ4は高さを調整することができる。
【0051】
支持部材42は、座席ベース5が取り付けられ、水平になるように配置された座席支持部材(図示省略)を備えている。座席支持部材は、支持部材42に旋回自在にヒンジ結合することができる。バックサポート44と座席支持部材を支持部材42上に旋回自在にヒンジ結合することによって、背もたれ4を備えたチェア1に座る人が座席支持部材と同調してリクライニングすることができ、また、座席ベース5も旋回させることができる。このために、支持部材42に配置された弾性トーションばね要素(図示省略)が、支持部材42とバックサポート44との間に復元トルクを作用させる。この復元トルクは、バックサポート44が支持部材42に対して旋回する旋回方向と反対の方向を指向している。
【0052】
図2には、第1の実施の形態に従う弾性トーションばね要素10の側面が示されており、この図では、回転軸6は図面に垂直である。弾性トーションばね要素10は、内側ケーシング12と外側ケーシング14を備えている。内側ケーシング12と外側ケーシング14との間の空間に弾性部材16が配置されている。
【0053】
内側ケーシング12は、その外側に、弾性部材16が内側ケーシング12に接触する接触面12aを備えている。また、外側ケーシング14は、その内側に、弾性部材16が外側ケーシング14に接触する接触面14aを備えている。この場合、内側ケーシング12の接触面12aと外側ケーシング14の接触面14aは、リング状に回転軸6を取り囲んでいる。その結果、この実施の形態では、弾性部材16は、回転軸6を取り囲む閉鎖リングを形成する。
【0054】
弾性部材16は、エラストマー、すなわち、硬くて弾性変形可能な材料からなる。弾性部材16は、内側ケーシング12の接触面12aと外側ケーシング14の接触面14aに固着されるように、すなわち、内側ケーシング12が外側ケーシング14に対して移動中(例えば、内側ケーシング12または外側ケーシング14が回転軸6上で回転中)に、接触面12aと14aに隣接する弾性部材16の領域が接触面12aと14aに対して滑らないように設計されている。弾性部材16は、例えば、接触面12aと14aで、内側ケーシング12と外側ケーシング14に、一体的に、または、しっかりとフィットさせて結合させることができる。
【0055】
例示したゴムは、弾性部材16の製造に適したエラストマーであり、弾性的に変形可能で高い耐久性を有する材料だけでなく、例えば、加硫により、接触面12a及び14aにしっかりと結合することができる材料からなる。
【0056】
内側ケーシング12と外側ケーシング14は、剛材料、例えば、鋼材から製造される。内側ケーシング12または外側ケーシング14の、弾性部材16に隣接する接触面12aと14aの平面部分は、少なくとも円形状の部分とは異なっており、回転軸6に直交するように配置されており、この特別な形状により、弾性部材16のある領域には、内側ケーシング12が回転軸6上で外側ケーシング14に対して回転中に発生する引張荷重を相殺する圧縮荷重が発生する。このように、弾性部材16は、効果的に不均一な荷重にさらされる。
【0057】
図2は、内側ケーシング12を、「非回転」状態(実線)と「回転」状態(破線)で示しており、内側ケーシング12は、非回転状態に比べて回転状態では回転軸6上で時計回り方向に回転角度φだけ旋回されるが、この過程で、外側ケーシング14は変化しないままである。非回転状態では、弾性部材16は、プレテンションがかけられていない、すなわち、いかなる機械的張力も有していないとみなされる。非回転状態では、内側ケーシング12の右上側コーナーまたは左下側コーナーから外側ケーシングの内側の所定のポイントまでの距離は、矢印X1またはY1で示されている。回転状態では、内側ケーシング12の右上側コーナーまたは左下側コーナーから外側ケーシングの内側の所定のポイントまでの距離は、矢印X2またはY2で表されている。図2に示すように、距離X2は、距離X1よりも短く、また、距離Y2は距離Y1よりも短い。この領域は、弾性部材16が、内側ケーシング12が外側ケーシング14に対して回転軸6上で回転した場合に圧縮される。上述した圧縮荷重は圧縮によって発生する。
【0058】
内側ケーシング12が回転軸6上で回転角度φだけ回転した後、弾性部材6は変形され、外側ケーシング14と内側ケーシング12との間に復元トルクDが発生する。この復元トルクは、回転方向と反対方向を指向しており、回転角度φが増加すると増大する。
【0059】
内側ケーシング12が回転角度φだけ回転する間に、距離X2−X1及び距離Y2−Y1が減少するという事実は、接触面12aまたは接触面14aの非円形の断面(回転軸6に対して垂直になるように配置された平面部分)が原因である。上述した接触面12aまたは14aの断面の円からの幾何学的偏差は、内側ケーシング12が回転角度φだけ回転中に、弾性部材6の機械的な張力の空間分布が、回転軸6に対して回転対称である特許文献1の弾性トーションばね要素の機械的な張力の空間分布とは異なり、回転軸6に対して回転対称ではないことによることを意味する。この張力分布の相違は、回転角度φの関数としての復元トルクDの依存に関連する顕著な相違である。特に、この相違は、(以下にさらに詳細に説明する)特許文献1の弾性トーションばね要素に比較して、回転角度φの関数としての復元トルクDが非常に大きな増大を示す本発明の弾性トーションばね要素に起因する。
【0060】
図2に示す実施の形態では、弾性部材16に隣接する内側ケーシング12の接触面12aは正方形である。この実施の形態では、内側ケーシング12は、正方形のスリーブ(4面体)に設計されており、このスリーブは、回転軸6に平行に延在する正方形断面の貫通チャンネル(貫通路)12.1を有している。これは、内側ケーシング12のチャンネル12.1内に、同一寸法の正方形のベアリング軸(図示省略)を半径方向に収容して、しっかりと連結することができるという優位性に関連する。
【0061】
図2に示すように、内側ケーシング12の非回転状態(実線)では、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間に回転オフセットが存在する。詳細に述べると、内側ケーシング12の外面と外側ケーシング14の(直線状に延在する)外面は、互いに平行になるように整列されていない(回転オフセット)。この回転オフセットの範囲は、回転角度φの関数としての復元トルクDの進行に影響する追加的なパラメータを表す。
【0062】
外側ケーシング14の外面は、ブロック要素(図2には示されていない)に係合することができる外側ケーシングカム18を備える。ブロック要素は、以下の図5〜図9で説明される。
【0063】
弾性部材16に隣接する内側ケーシング14の接触面14aは、矩形と円形との組合せであるとみなすことができる形状を備えている。さらに詳述すると、外側ケーシング14の形状は、互いに対で対向するように配置された二つの等辺の角形部分を備え、この実施の形態の角形部分は、90°の角度に取り囲み、また、互いに対で対向するように配置された二つの半円形部分を備えており、これらの半円形部分の端部は、角形部分の端部にそれぞれ結合されている。実施される幾通りかの測定シリーズに基づいて、内側ケーシング12の正方形の形状に組み合わせた外側ケーシング14の「レモンの形状」に似た形状が定められ、この形状は、回転角度φに関連する復元トルクDの特性曲線が、回転角度φの殆どの領域で線形に延びる弾性トーションばね要素10を形成するために、特に有利である。
【0064】
図3には、本発明の実施の形態に係る弾性トーションばね要素の特性曲線K1(回転角度φに関連する復元トルクD)と、従来の弾性トーションばね要素の特性曲線K2(特許文献1から公知)が描かれた図が示されており、これらの曲線K1及びK2は、同じ材料(ゴム)からなるエラストマーの弾性トーションばね要素に対して決定され、曲線K1及びK2を有する弾性トーションばね要素は、内側ケーシングの形状と外側ケーシングの形状のみが異なる。曲線K1及びK2の進行(経過)は、第1に、復元トルクDは回転角度φの増加にしたがって増大することを示している。この実施の形態では、最大回転角度は70°である。弾性トーションばね要素の特性曲線K1は、図2に示す(レモン形状の)弾性トーションばね要素を用いて実施された測定シリーズによって決定される。図3Aには、図表の下方に、弾性トーションばね要素の断面が、上述した曲線K1及びK2の決定に関連して示されている。二つの実線14aまたは12aは、曲線K1に関連する弾性トーションばね要素の外側ケーシングの接触面の形状または内側ケーシングの接触面の形状(スタートの順序)を示しており、二つの破線14aまたは12aは、曲線K2に関連する弾性トーションばね要素の外側ケーシングの接触面の形状または内側ケーシングの接触面の形状(スタートの順序)を示している。二つの弾性トーションばね要素の断面形状と寸法を比較することを考慮して、図3Aには、二つの弾性トーションばね要素の断面が互いに重ねて示されている。
【0065】
図表に示すように、本発明の実施の形態に従う弾性トーションばね要素の特性曲線K1は、殆どの回転角度で線形に延びている。これに対して、従来の弾性トーションばね要素の特性曲線K2は、特に、回転角度の初期で、非線形(進行)に上昇している。この図表は、また、本発明の実施の形態に従う弾性トーションばね要素の特性曲線K1は、従来の弾性トーションばね要素の特性曲線K2と比較して、より急勾配である。このように、既に小回転角度φで、より大きい復元トルクDが発生される。その結果、等しい復元トルクDでは、弾性材料は、従来の弾性トーションばね要素の弾性材料と比較してより小さい範囲で変形される。有利には、弾性材料は、より小さい範囲で荷重にさらされるため、疲労する傾向がない。これにより、耐用年数が延長される。
【0066】
弾性トーションばね要素は、所定の最大回転角度まで回転することができることは知られている。この最大回転角度を越えた更なる回転は、極端な非線形性となり、最終的には、弾性材料が破断してしまう。測定シリーズでは、特性曲線K1とK2を描くために、比較される弾性トーションばね要素は、最大70°の回転角度φまで回転される。
【0067】
図3Bには、本発明に従う弾性トーションばね要素の6つの異なる実施の形態に係る回転角度φの関数としての復元トルクDの経過を表す測定値が示されている。それぞれの実施の形態に対応する復元トルクDの経過を示す曲線は1〜6の番号で示されている。全ての実施の形態は、弾性トーションばね要素10の外側ケーシング14が正方形状を備える点で共通する特徴を有しており、外側ケーシング14の接触面14aの断面は、(回転軸6に垂直な断面積に関して)各辺の長さが60mmの正方形である。各実施の形態は、内側ケーシング12の接触面12aの断面が、異なる形状を備えると共に、異なる寸法を有する点で相違している。曲線1と2では、内側ケーシング12の接触面12aの断面が、(スタートの順序で)直径10mmまたは20mmの円形である。曲線3〜6では、内側ケーシング12の接触面12aの断面が、(スタートの順序で)各辺の長さが20mm、25mmm、30mmまたは40mmの正方形である。曲線3〜6では、内側ケーシング12の接触面12aは、対応する外側ケーシング14の接触面14aと平行するように配置されており、回転角度φ=0(ゼロ)及び復元トルクD=0(ゼロ)であると仮定する。全てのケースにおいて、弾性部材16は同一の材料(ゴム)から形成されると仮定する。曲線1〜6を比較すると、「小」回転角度の範囲の復元トルクDは、曲線1と2のケースでは直径が大きくなるほど、また、曲線3〜6のケースでは、内側ケーシング12の接触面12aの断面の各辺の長さが長くなるほど、より一層明確に増大することを示している。また、内側ケーシング12が正方形の形状であることにより、回転角度φの関数としての復元トルクDが、内側ケーシング12が大径の円形形状である場合よりも急激に増大することを示している。さらに、曲線1〜5では、0〜70°の範囲で直線的に延びるが、曲線6は、40°を越えると、累進的に上昇することを示している。特殊な応用を目的とすると、回転角度φの関数としての復元トルクDが、広範な回転角度範囲(例えば、0°〜70°)にわたって線形の進行を示していることは興味があり、外側ケーシング14の断面積に対する内側ケーシング12の断面積が所定値を越えない場合に有利である。
【0068】
図3Bに示すように、種々の弾性トーションばね要素の回転角度φの関数としての復元トルクDの進行(経過)を詳細に分析すると、本発明の弾性トーションばね要素では、回転軸6に垂直な断面の形状の違いにより、外側ケーシング14の内側断面の表面積Faと内側ケーシング12の外側断面の表面積Fiは、回転角度φの関数としての復元トルクDが線形進行を示す全域の回転角度φの範囲を決定するパラメータであることを示している。このケースでは、外側ケーシング14の内側断面は平坦であり、かつ、回転軸6に垂直となるように配置されており、外端は接触面14aで範囲が定められている。それに対応させて、内側ケーシング12の外側断面は平坦であり、かつ、回転軸6に直交するように配置されており、外端は接触面12aで範囲が定められている。
【0069】
図3Bに示す測定値を分析することにより、測定値に対応する弾性トーションばね要素は、回転角度0°≦φ≦70°の範囲で、この回転角度φの関数としての復元トルクDが線形の進行を示し、表面積Faと表面積Fiとの比に関連して、次の条件B1が適用されることが分かった。
Fa/Fi≧7/3 (B1)
【0070】
弾性トーションばね要素の寸法が、Fa/Fi<7/3のように選択される場合には、弾性トーションばね要素によって発生される復元トルクDは、(図3Bの進行(経過)6で示すように)回転角度φの関数として累進的に増大し、Fa/Fiの比がより小さい場合には、復元トルクDは、回転角度φの関数としてさらに累進的に増大する。
【0071】
既述したように、図3Aに示す測定データは、外側ケーシング14が正方形状の内側断面を備える弾性トーションばね要素に関連する。しかしながら、この実験結果は、弾性トーションばね要素の外側ケーシングが、弾性トーションばね要素の内側断面が正方形状でない形状に形成されている場合でも、条件B1が、本発明の他の弾性トーションばね要素に同様に適用できることを示している。例えば、図2及び図4〜8に示す弾性トーションばね要素は、回転角度0°≦φ≦70°の範囲では、回転角度φの関数としての復元トルクDが線形の進行を示し、外側ケーシングの内側断面の表面積Faと内側ケーシングの外側断面の表面積Fiとの比は、条件B1に従うと7/3を越える。これは、ゴムから形成される弾性部材16に関連させて実験的に実証された。
【0072】
図3Cは、図2に示す弾性トーションばね要素10とは異なる弾性トーションばね要素10の側面を示しており、この弾性トーションばね要素10は、図2に示す弾性トーションばね要素10とは、弾性トーションばね要素10の弾性部材16が、この弾性部材16を貫通して回転軸6に沿って延在する4つの孔を備えている。この実施の形態では、4つの孔のそれぞれは、内側ケーシング12の4つのエッジ13.1、13.2、13.3、13.4の近辺に配置されている。図3Cに示すように、エッジ13.1、13.2、13.3、13.4は、内側ケーシング12の接触面12a上に形成され、かつ、回転軸6に平行するように配置されている。図3Cの破線6.1は、回転軸6と、エッジ13.1及び13.3の両方に延びる平面を示す。それに対応して、図3Cの破線6.2は、回転軸6と、エッジ13.2及び13.4の両方に延びる平面を示す。図3Cは、弾性部材16が、いかなる機械的な張力を有することなく、かつ、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間にいかなる復元トルクも発生しない状態の弾性トーションばね要素10を示している。エッジ13.1から延びるφで示す矢印は、内側ケーシング12が、回転軸6上で回転角度φ(図3Cの時計回り方向)だけ回転され、かつ、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間に復元トルクを発生するように外側ケーシング14に対して回転される場合のエッジ13.1が移動する経路の進行を示している。平面6.1及び6.2は、弾性部材16を4つの異なる領域に分割しており、これらの4つの領域の少なくとも一つの小区域は、内側ケーシング12が回転軸6上で回転角度φだけ外側ケーシング14に対して回転された場合に圧縮荷重にさらされる。内側ケーシング12が回転軸6上で外側ケーシング14に対して回転された場合、弾性部材16は変形して、孔17の断面積は、回転角度φが増加するに従って連続的に減少する。既述したように、この孔17の形状の変化が弾性部材16を膨張させ、この膨張により、回転軸6に沿って上述した圧縮荷重を発生させる。この圧縮荷重は部分的に相殺される。これにより、内側ケーシング12が外側ケーシング14に対して回転角度φだけ回転された場合に、弾性部材16が損傷を受け、かつ、損耗されることが防止される。
【0073】
図4は、保持要素19を備えた、本発明の第1の実施の形態に係る図2に示す弾性トーションばね要素10の斜視図である。保持要素19は、内側ケーシング12と外側ケーシング14とを互いに「ノーマル位置」に保持するために使用され、このノーマル位置では、弾性部材16は機械的なプレテンションを有しており、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間に復元トルクDを発生する。この復元トルクDはゼロ(0)とは異なる。この「ノーマル位置」では、内側ケーシングは、図2の「非回転位置」(プレテンションはない)と比較して、図2に関連して時計回り方向に、また、図4に関連して反時計回り方向に、回転角度Δφ(以下、「プレテンション角度」と称する)だけ回転されている。この実施の形態では、保持要素19は、弾性トーションばね要素10の側面に固定される二つの張力付与要素20を備えている。張力付与要素20は平板からなり、その中央領域が、二つの対向するフランジ22を残して孔があけられている。これらのフランジ22は、内側に90°折り曲げられている。張力付与要素20の外側領域に、それぞれ90°内側に折り曲げられたブラケット24’、24’’を備えている。
【0074】
弾性トーションばね要素10上に張力付与要素20を取り付けるために、フランジ22は、その外側領域を内側ケーシング12に第1距離だけ挿入して、内側ケーシング12の内面にしっかりと連結できるように設計されている。その後、張力付与要素20と内側ケーシング12は半径方向にしっかりと連結され、また、外側ケーシング14に対して所定の角度(例えば、20°)だけ反時計回り方向に回転させて、外側ケーシング14に固定される。
【0075】
張力付与要素20のフランジ22が内側ケーシング12のチャンネル12.1に完全に押し込まれると、同時に、ブラケット24’、24’’は、外側ケーシング14の外面にしっかりと固定される。このようにして取り付けられた張力付与要素20がプレテンションを維持する。より詳細に説明すると、ブラケット24’、24’’が外側ケーシング14の外面に支えられて静止するため、もはやプレテンション角度Δφより小さい角度を選択することはできない。しかしながら、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間の回転オフセットを(さらに反時計回り方向に)増加させることは可能である。この回転オフセットが増加すると、ブラケット24’、24’’の内側領域が外側ケーシング14の外面に沿ってスライドするか、または、持ち上げられる。弾性トーションばね要素10の破壊を防止するために、この実施例では、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間の最大回転角度(例えば70°)を越えることはできない。最大回転角度φでは、ブラケット24’は、外側ケーシング14のカム18に支えられて静止して、それ以上の回転が阻止されるからである。
【0076】
図5は、図4で詳細に示した張力付与要素を側面に備えた3つの弾性トーションばね要素10’〜10’’’を示す。これらの弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、その内側ケーシング手段によってベアリング軸26上に取り付けられる。ベアリング軸26と弾性トーションばね要素10’〜10’’’の内側ケーシングは、半径方向にしっかりと連結されるように寸法が定められている。さらに、ベアリング軸26は、弾性トーションばねベース要素28の内側ケーシングにしっかりと連結されるように半径方向に挿入される。この配置により、(図1に示すが、図5には示されていない)チェア用のパワー伝達装置30が形成される。以下、「パワーシステム」30として参照する。このパワーシステム30は、原則として、チェアの背もたれまたは座席ベースに復元トルクを作用させるために使用される。この場合、背もたれまたは座席ベースは、背もたれまたは座席ベース用の支持部材に対して旋回する。パワーシステム30は、弾性トーションばねベース要素28の外側ケーシングにより、チェアの固定支柱(図示省略)に連結される。ベアリング軸26は、その軸方向の端部で、背もたれに回転するように固定されている。チェアに座っている人が背もたれに寄り掛かると、背もたれとこの背もたれに関節接合された座席支持部材が同調して旋回する。背もたれは、ベアリング軸26に回転するように連結されているため、ベアリング軸26は(例えば、反時計回り方向に)回転する。この回転は、弾性トーションばねベース要素28によって発生する、少なくともある復元トルクに常に反作用する。
【0077】
図5はまた、ベアリング軸26に対して平行に延在する軸に関節接合されるブロック要素32’〜32’’’を示す。ブロック要素32’〜32’’’は、カム軸36に放射状に固定されたロックラグ34’〜34’’’手段によって制御することができる。作動中、ブロック要素32’〜32’’’は、それぞれ互いに別々に、二つの異なる位置に旋回される。
図5に示す実施例では、全てのブロック要素32’〜32’’’は、弾性トーションばね要素10’〜10’’’の外側ケーシング上に形成された外側ケーシングカム18’〜18’’’に接触しないように配置されているため、ブロック要素32’〜32’’’と弾性トーションばね要素10’〜10’’’は分離した状態にある。ベアリング軸26と平行に延在するカム軸36は、個々のロックラグ34’〜34’’’が変化した位置にあるみなすように旋回することができる。この位置では、(回転後のカム軸36の位置により)一つまたはいくつかのブロック要素32’、32’’または32’’’がカム軸36の回転中に旋回され、これらのブロック要素32’、32’’または32’’’が、弾性トーションばね要素10’〜10’’’の外側ケーシングカム18’、18’’または18’’’に接触するように旋回されて、弾性トーションばね要素10’〜10’’’(図5では示されていない)に連結される。この連結状態では、カム軸36の回転中に旋回されたブロック要素32’、32’’または32’’’が、所定の位置で、弾性トーションばね要素10’〜10’’’の外側ケーシングに連結される。
【0078】
図5に示す実施の形態では、ブロック要素32’〜32’’’と外側ケーシングカム18’〜18’’’とは連結されていないため、上述したようにチェアに座った人が寄り掛かった場合、ベアリング軸26は反時計回り方向に回転して、弾性トーションばね要素10’〜10’’’は一体的に、ベアリング軸26の回転に従う。上述したように、この実施例では、パワーシステム30によって提供される全復元トルクDは、もっぱら弾性トーションばねベース要素28によって発生される復元トルクに等しい。したがって、弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、パワーシステム30によって供給される復元トルクDに貢献しない。
【0079】
カム軸36の回転が変化すると、例えば、一つまたはいくつかのブロック要素32’〜32’’’と一つまたはいくつかの外側ケーシングカム18’〜18’’’との間で連結することが可能となる。こうして、対応するブロック要素32’〜32’’’の一つに連結された弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、その外側ケーシングによってロックされる。その結果、パワーシステム30によって提供される全ての復元トルクを合計した全復元トルクは、弾性トーションばねベース要素28によって発生され、弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、ブロック要素32’〜32’’’手段によってロックされる。さらに詳述すると、全復元トルクは、カム軸36の回転によって設定することができる。
【0080】
図5に示すように、弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、異なる寸法に形成されている。これは、復元トルクを異ならせることができることを意味する。この実施例では、弾性トーションばね要素10’’’は、弾性トーションばね要素10’’よりも大きい復元トルクを発生させ、次に、弾性トーションばね要素10’’は、弾性トーションばね要素10’よりも大きい復元トルクを発生させる。個々の弾性トーションばね要素10’〜10’’’を別々に連結または連結解除することにより、全体で8つの異なる復元トルクを選択することができる。その結果、チェアに座る人のそれぞれの体重に合わせて復元トルクを切り替えることができる。このように、弾性トーションばね要素10’〜10’’’とブロック要素32’〜32’’’とを連結または連結解除することによって、例えば、体重45Kgの人が、体重120Kgの人が人間工学的に調整された復元トルクを経験することができるのと同じ程度に人間工学的に調整された復元トルクを経験することができる。上述した8つの異なる段階によると、例えば、45Kgから120Kgの体重の範囲で、人間工学的に最適な方法で支持することが可能となる。これにより、着座快適性がかなり改善される。
【0081】
図6は、第2の実施の形態の弾性トーションばね要素10を示す。この実施の形態では、内側ケーシング(図示省略)と外側ケーシング14は互いに、張力付与要素38によって、プレテンションがかけられている。この弾性トーションばね要素の詳細については、図7A〜図7Cが参照される。
【0082】
図7A〜図7Cは、図5に示す実施例と同様のパワーシステム30の種々の図を示しており、3つの弾性トーションばね要素10’〜10’’’を備えている。これらの3つの弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、図6に示す実施例にしたがって組み立てられる。また、パワーシステム30は、弾性トーションばねベース要素28と軸26を備えている。実施例では、図4及び図5に示す張力付与要素20とは異なる張力付与要素38’〜38’’’’を備えている。張力付与要素38’〜38’’’’は、平板状要素であり、それらの内側領域は矩形状に打ち抜かれている。この配置では、打ち抜き開口の形状がベアリング軸26の外側形状(正方形)に一致しており、しっかりと結合される。張力付与要素38’〜38’’’’の外側領域は、直交する貫通孔を有するように湾曲部39’〜39’’’’を備えている。
【0083】
パワーシステム30の組付け中に、ベアリング軸26と弾性トーションばねベース要素28の内側ケーシングは、半径方向にしっかりと連結される。第1張力付与要素38’はそのうち抜き開口によってベアリング軸26に取り付けられるため、ベアリング軸26と張力付与要素38’との間も、半径方向にしっかりと取り付けられる。その後、第1弾性トーションばね要素10’は、ベアリング軸26上に配置される。このステップに続いて、次の張力付与要素38’’などが設置される。張力付与要素38’〜38’’’を備えた3つの全ての弾性トーションばね要素10’〜10’’’がベアリング軸26上に配置された後、最後に、最後の張力付与要素38’’’’が側面に配置される。
【0084】
続いて、弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、個々にまたは同時にプレテンションがかけられ、例えば、ベアリング軸26に半径方向に取り付けられた外側ケーシングは、ベアリング軸26の長手方向において時計回り方向に回転される。この回転は、ピン40’、40’’を湾曲部39’〜39’’’’の各孔を貫通して挿入することができる回転角度まで続けられる。ピン40’、40’’を各孔に貫通して挿入した後、外側ケーシングを回転するための力の導入は終了する。この状態では、各弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、外側ケーシングの外面がピン40’、40’’に支えられて静止しているため、その位置に留まる。もはや外側ケーシングを最初の状態に戻すように回転させることはできない。
【0085】
図4及び図5に示す実施例に比べて、弾性トーションばね要素10’〜10’’’の内側ケーシング内に挿入されるフランジがないという点で張力付与要素38’〜38’’’の配置と設計に関連する利点がある。このように、ベアリング軸26は、内側ケーシング内面全体にしっかりと固定されて係合する。その結果、ベアリング軸26と弾性トーションばね要素10’〜10’’’の内側ケーシングとの間のいかなる遊びも避けられる。これに比較にて、図4及び図5に示す実施例では、ベアリング軸26のある部分でフランジ22によって起こされる弾性トーションばね要素10’〜10’’’の復元トルクの導入の結果としてベアリングの遊びが存在して、そのために、弾性トーションばね要素10’〜10’’’の内側ケーシングは、ベアリング軸26に機械的に接触することができない(図4及び図5を参照)。
【0086】
図7A〜図7Cに示す実施例は、図4及び図5に示す、各弾性トーションばね要素が張力付与要素20を備えている実施例の設置に比べて、設置が比較的に簡単であるという点でさらなる利点を有している。また、設置時間が相当に短縮される。さらに、個々の張力付与要素38’〜38’’’’の製造はかなり簡単で、かつ、時間的に集中が少ないという利点もある。また、張力付与要素は、打ち抜きによって、経済的に、簡単に製造することができる。
【0087】
図8A〜図8Cは、第2の実施の形態の弾性トーションばね要素10を示しており、一連の図において、内側ケーシング12と外側ケーシング14は互いに、増加する回転角度φだけ回転される。図8Aには、初期の非回転状態の弾性トーションばね要素10が示されており、この状態における弾性部材16は、いかなる弾性変形もなく、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間の復元トルクは発生しない(D=0)。この状態では、内側ケーシング12と外側ケーシング14は、互いに、−40°の回転角度φで反時計回り方向に回転されるように配置されている。図8Bには、時計回り方向に回転された状態の弾性トーションばね要素10が示されている。この配置では、内側ケーシング12は外側ケーシング14に対して、φ=0°の回転角度で配置されている。さらに詳述すると、図8Aに示す初期の状態に比べて、内側ケーシング12と外側ケーシング14は互いに、Δφ=40°だけ回転されている。図8Cには、回転された状態の弾性トーションばね要素10が示されており、この状態では、図8Aの状態に比べて、Δφ=70°だけ回転されている。
【0088】
初期の非回転状態(図8A)と比較した場合に、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間に−40°の回転オフセットがあり、内側ケーシング12と外側ケーシング14との間のさらなる回転が、時計回り方向に回転角度の範囲で行われ(図8B及び図8Cを参照)、ここで、回転角度φの関数としての復元トルクの特性曲線が、大きい角度範囲にわたって線形に伸び、また、回転角度の関数として急勾配となる点で有利である。
【0089】
図9は、(図9に示されていない)チェアの支持部材42に組み込まれる図7A〜図7Cに図示したパワーシステム30を示している。この配置では、弾性トーションばねベース要素28が、その外側ケーシングによって支持部材42にしっかりと結合されている。支持部材42の開口部を通して、ベアリング軸(図示省略)が、回転するようにバックサポート44の一部に取り付けられる。続いて、バックサポート44は、図1のバックピース3(図9に示されていない)を受け入れるように使用され、このバックピース3に図1の背もたれ4が連結される。背もたれ4は基本的に垂直になるように延びている。背もたれ4は、パワーシステム30によって導入された復元トルクに対抗するように旋回することができる。また、図1の座席ベース5用の座席支持部材は、バックサポート44及び/または背もたれ4に連結することができるため、座席ベース5は、背もたれ4に同調して旋回させることができる。
【0090】
既述したように、図5に示すパワーシステム30と比較して、ベアリング軸26は、チェアに座った人が寄り掛かるとすぐに旋回する。図9に示す実施例では、ベアリング軸は、人が寄り掛かると時計回り方向に回転する。この状態では、パワーシステム30の弾性トーションばね要素10’〜10’’’の外側ケーシングカム(図示省略)は、ブロック要素によって支持部材42に連結されないし、個々の弾性トーションばね要素10’〜10’’’はこの回転に追従する。
【0091】
カム軸36が回転すると、このカム軸36に配置されたロックラグ34’〜34’’’
によって作動される個々のブロック要素32’〜32’’’は、弾性トーションばね要素10’〜10’’’の外側ケーシングカム18’〜18’’’に連結されるように切り替えられる。弾性トーションばね要素10’、10’’または10’’’の外側ケーシングカム18’〜18’’’のいずれかが連結状態になると、外側ケーシングカム18’、18’’または18’’’は、弾性トーションばね要素10’、10’’または10’’’に、弾性トーションばねベース要素28の復元トルクに追加して、復元トルクをベアリング軸26に作用させる。このように、弾性トーションばね要素10’〜10’’’は有利に設計され、個々に切り替えられて、回転角度に対して線形の復元トルクがバックサポートに作用するように配置される。この復元トルクは、チェアに座る人の体重に調整される。このようにして、最適な復元トルクが人の背中に作用して、その結果、着座快適性が改善される。
【0092】
図10A〜図10Eは、図7A〜図7Cに示す張力付与要素38’〜38’’’’を備えた弾性トーションばね要素10’〜10’’’に、各側面の間にプレテンションを付与するための張力付与装置46を示す図である。図10Aと図10Cには、張力付与装置46の全体を異なる方向から見た図が示されている。図10Bと図10Dには、張力付与装置46の細部を異なる方向から見た図が示されている。張力付与装置46は、迅速に、かつ、簡単に、数工程だけで、個々の弾性トーションばね要素10’〜10’’’にプレテンションを付与するために使用される。張力付与装置46は、ベアリング軸26(図10A〜図10Eには示されていない)を、その軸方向の端部で固定して取り付ける取付装置48’、48’’を備えている。図7A〜図7Cの上述した説明と関連させて説明すると、個々の弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、事前にベアリング軸26上に取り付けられる。ここで、張力付与要素38’〜38’’’’は、弾性トーションばね要素の間と側面に設置される。これらの張力付与要素38’〜38’’’’は、ベアリング軸に対して半径方向にしっかりと固定して連結される。
【0093】
張力付与装置46は、また、バー50を備えており、このバー50は、レバー52の二つのレバーアームの間に直交するように連結されている。レバーアームは、張力付与装置のベアリング54’、54’’で旋回するようにヒンジ結合されている。レバー52は、その下端が、装置52によって、前後に偏向させることができる。レバー52の下方を、図10Aの描写面から離れる方向に偏向させると、バー50は、矢印Aで示すように、弾性トーションばね要素10’〜10’’’に向けて偏向される。
【0094】
図10C〜図10Eに明確に示すように、バー50の矢印A方向への第1偏向段階では、最初に、バー50の表面領域が、例えば、外側ケーシングカム18’〜18’’’によって、第1弾性トーションばね要素10’’’の外側ケーシングの外面領域に係合する。
【0095】
バー50の矢印A方向への第2偏向段階では、さらに、バー50の表面領域が、第2弾性トーションばね要素10’’の外側ケーシングの外面領域に係合する。第1段階と第2段階との間でバー50が偏向する間に、事前に係合される第1弾性トーションばね要素10’’’の外側ケーシングの外面が、十分に旋回されるか、回転される。バー50の矢印A方向への第3偏向段階では、第3弾性トーションばね要素10’の外側ケーシングの外面領域に係合される。第2段階と第3段階との間でバー50が偏向する間に、第1弾性トーションばね要素10’’’と第2弾性トーションばね要素10’’は、偏向されるか、または、回転される。バー50の第4偏向段階では、全ての弾性トーションばね要素10’〜10’’’が、図7A〜図7Cに示すピン40’、40’’が、各張力付与要素38’〜38’’’’の湾曲部39’〜39’’’’の孔を貫通して挿入することができるように互いに平行に偏向されるか、回転される。ピン40’、40’’が上記孔を貫通して挿入されるとすぐに、バー50の上記偏向は反転され、すなわち、バー50は、矢印Aの方向とは反対方向に移動される。挿入されたピン40’40’’は、各弾性トーションばね要素10’〜10’’’の外側ケーシングの外面に支えられ、かつ、弾性トーションばね要素10’〜10’’’の復元トルクの効果によって固定される。さらに、ピン40’、40’’は、回転するように半径方向に連結された張力付与要素38’〜38’’’’によって保持される。各弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、もはや最初の非偏向状態(図10A〜図10E)に戻すことはできない。
【0096】
図10Eは、張力付与装置のベアリング54’、54’’の軸方向に見た張力付与装置46を示す。この図は、特に、初期状態における各弾性トーションばね要素10’〜10’’’が、異なる方法で偏向されることを示している。これは、弾性トーションばね要素10’〜10’’’の内側ケーシングが外側ケーシングの形状に対して、それぞれの弾性トーションばね要素10’〜10’’’が異なる回転オフセットで配置されているという事実に基づいている。弾性トーションばね要素10’〜10’’’の回転オフセットは、例えば、20°、25°及び40°とすることができる。内側ケーシングと外側ケーシングとの間の回転オフセットが異なることにより、各弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、異なる範囲でプレテンションが付与される。この実施例では、弾性トーションばね要素10’’’は、弾性トーションばね要素10’’よりも大きな範囲のプレテンションが付与され、また、弾性トーションばね要素10’’は、弾性トーションばね要素10’よりも大きな範囲のプレテンションが付与される。図10A及び図10C〜図10Eに示すように、プレテンションが付与された後、ピン40’、40’’は、張力付与要素38’〜38’’’’の湾曲部39’〜39’’’’の孔を貫通して挿入することができる。このように、各弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、ピン40’、40’’によって保持される。
【0097】
より小さいプレテンションを選択することはできないが、各弾性トーションばね要素10’〜10’’’の外側ケーシングを対応する内側ケーシングに対してさらに回転させて、弾性トーションばね要素10’〜10’’’によって発生される復元トルクが、回転角度が増加するにしたがって増大するように、外側ケーシング上に形成された外側ケーシングカム18’〜18’’’がピン40’に支えられて静止するまで回転させることができる。この状態では、弾性トーションばね要素10’〜10’’’は、最大許容回転角度に到達して、最大限の実施可能な復元トルクを提供することができる。
【0098】
図10A〜図10Eに示す張力付与装置46とそれに関連させて説明した方法は、上述したパワーシステム30は、弾性トーションばね要素10’〜10’’’が異なる場合でも非常に迅速にほんのわずかな操作で生産することができることを、例示的に示すものである。
【符号の説明】
【0099】
1 シートアセンブリ、2 支柱、4 背もたれ、5 座席ベース、6 回転軸、10 弾性トーションばね要素、12 内側ケーシング、12a 内側ケーシングの接触面、14 外側ケーシング、14a 外側ケーシングの接触面、16 弾性部材、17 孔、19 保持要素(張力付与要素)、20 張力付与要素、26 ベアリング軸、28 弾性トーションばねベース要素(弾性トーションばね要素)、38 張力付与要素、42 支持部材、44 バックサポート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席ベース(5)と、
バックサポート(44)と、
バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)用の支持部材(42)と、
少なくとも一つの弾性トーションばね要素(10,28)と、を備えたシートアセンブリ(1)であって、
バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)は、バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)が回転軸(6)上で旋回運動することができるように支持部材(42)に旋回自在にヒンジ結合されており、また、
少なくとも一つの弾性トーションばね要素(10,28)は、内側ケーシング(12)と、該内側ケーシング(12)を取り囲む外側ケーシング(14)と、内側ケーシング(12)と外側ケーシング(14)との間の空間に配置された弾性部材(16)とを含んでおり、
ここで、内側ケーシング(12)は、弾性部材(16)が内側ケーシング(12)に接触する少なくとも一つの接触面(12a)を含んでおり、また、
外側ケーシング(14)は、弾性部材(16)が外側ケーシング(14)に接触する少なくとも一つの接触面(14a)を含んでおり、さらに、
弾性部材(16)は、内側ケーシング(12)の接触面(12a)と外側ケーシング(14)の接触面(14a)に固着されており、また、
弾性トーションばね要素(10,28)の内側ケーシング(12)及び/または外側ケーシング(14)は、回転軸(6)上に回転自在に配置されており、また、
バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)の旋回運動中に、内側ケーシング(12)が外側ケーシング(14)に対して回転して回転軸(6)上で回転角度(φ)だけ回転できるように、支持部材(42)は、弾性トーションばね要素(10,28)の外側ケーシング(14)に連結され、また、バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)は、弾性トーションばね要素(10,28)の内側ケーシング(12)に連結されており、また、この過程で、弾性部材(16)が変形することにより、該弾性部材(16)が、外側ケーシング(14)と内側ケーシング(12)との間に、回転に対抗するように作動する復元トルクを発生させる、シートアセンブリ(1)において、
回転軸(6)に直交する内側ケーシング(12)の接触面(12a)の平面部分が非円形断面からなり、及び/または、回転軸(6)に直交する外側ケーシング(14)の接触面(14a)の平面部分が非円形断面からなる、ことを特徴とするシートアセンブリ。
【請求項2】
座席ベース(5)と、
バックサポート(44)と、
バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)用の支持部材(42)と、
少なくとも一つの弾性トーションばね要素(10,28)と、を備えたシートアセンブリ(1)であって、
バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)は、バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)が回転軸(6)上で旋回運動することができるように支持部材(42)に旋回自在にヒンジ結合されており、また、
少なくとも一つの弾性トーションばね要素(10,28)は、内側ケーシング(12)と、該内側ケーシング(12)を取り囲む外側ケーシング(14)と、内側ケーシング(12)と外側ケーシング(14)との間の空間に配置された弾性部材(16)とを含んでおり、
ここで、内側ケーシング(12)は、弾性部材(16)が内側ケーシング(12)に接触する少なくとも一つの接触面(12a)を含んでおり、また、
外側ケーシング(14)は、弾性部材(16)が外側ケーシング(14)に接触する少なくとも一つの接触面(14a)を含んでおり、さらに、
弾性部材(16)は、内側ケーシング(12)の接触面(12a)と外側ケーシング(14)の接触面(14a)に固着されており、また、
弾性トーションばね要素(10,28)の内側ケーシング(12)及び/または外側ケーシング(14)は、回転軸(6)上に回転自在に配置されており、また、
バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)の旋回運動中に、内側ケーシング(12)が外側ケーシング(14)に対して回転して回転軸(6)上で回転角度(φ)だけ回転できるように、支持部材(42)は、弾性トーションばね要素(10,28)の内側ケーシング(12)に連結され、また、バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)は、弾性トーションばね要素(10,28)の外側ケーシング(14)に連結されており、また、この過程で、弾性部材(16)が変形することにより、該弾性部材(16)が、外側ケーシング(14)と内側ケーシング(12)との間に、回転に対抗するように作動する復元トルクを発生させる、シートアセンブリ(1)において、
回転軸(6)に直交する内側ケーシング(12)の接触面(12a)の平面部分が非円形断面からなり、及び/または、回転軸(6)に直交する外側ケーシング(14)の接触面(14a)の平面部分が非円形断面からなる、ことを特徴とするシートアセンブリ。
【請求項3】
弾性トーションばね要素(10,28)の外側ケーシング(14)は支持部材(42)に連結され、かつ、弾性トーションばね要素(10,28)の内側ケーシング(12)はベアリング軸(26)に連結されて、回転軸(6)上で回転することができ、ベアリング軸(26)はバックサポート(44)及び/または座席ベース(5)に回転するように固着されていることを特徴とする請求項1に記載のシートアセンブリ。
【請求項4】
弾性トーションばね要素の内側ケーシングは支持部材に連結され、かつ、弾性トーションばね要素の内側ケーシングはベアリング軸に連結されて、回転軸上で回転することができ、ベアリング軸はバックサポート及び/または座席ベースに回転するように固着されていることを特徴とする請求項2に記載のシートアセンブリ。
【請求項5】
内側ケーシング(12)の接触面(12a)と外側ケーシング(14)の接触面(14a)は、互いに、内側ケーシング(12)及び/または外側ケーシング(14)が回転軸(6)上で少なくとも所定の回転角度範囲で回転中に、内側ケーシング(12)の規定点と外側ケーシング(14)の規定点との間の距離が減少(X1−X2、Y1−Y2)するように配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項6】
回転軸(6)に直交する内側ケーシング(12)の接触面(12a)と外側ケーシング(14)の接触面(14a)の平面部分は、非円形断面からなり、かつ、互いに、内側ケーシング(12)及び/または外側ケーシング(14)が回転軸(6)上で回転することにより、弾性部材(16)の少なくとも一部の領域に圧縮荷重が発生するように配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項7】
いずれの場合でも回転軸(6)に直交している内側ケーシング(12)の接触面(12a)及び/または外側ケーシング(14)の接触面(14a)の平面部分は、多角形或いは少なくともある部分が直線となるように設計されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項8】
外側ケーシング(14)の接触面(14a)は、
(a)少なくともある部分は円筒形であり、または、
(b)いずれの場合でも回転軸(6)に直交している平面部分は矩形で、少なくとも対向する二対のコーナー部は丸い形状であり、または、
(c)対向する二対の等辺の角形部分と、いずれの場合でも矩形の角形部分の端部に連結される対向する二対の半円形部分を含む、ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項9】
いずれの場合でも回転軸(6)に直交している内側ケーシング(12)の接触面(12a)の平面部分は矩形であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項10】
外側ケーシング(14)の内側断面の表面積(Fa)と内側ケーシング(12)の外側断面の表面積(Fi)との比は、7/3よりも大きいことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項11】
弾性部材(16)は、一つまたは数個の貫通孔(17)を備えており、該貫通孔(17)は回転軸(6)に沿って延在していることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項12】
弾性トーションばね要素(10)は、
(i)外側ケーシング(14)に対して内側ケーシング(12)を所定のノーマル位置に保持して、このノーマル位置では、弾性部材(16)は所定の弾性変形を有し、外側ケーシング(14)と内側ケーシング(12)との間に所定の最小値に等しい復元トルクを発生させるように、また、
(ii)回転軸(6)上での回転角度(φ)が、該回転角度(φ)の増加に伴って復元トルクが増大するように、内側ケーシング(12)を外側ケーシング(14)に対して回転させることができるように、設計された保持要素(19,20,38,38’−38’’’’)を備えることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項13】
保持要素は、
(i)内側ケーシング(12)にしっかりと係合させた第1部分と、内側ケーシング(12)が外側ケーシング(14)に対して所定のノーマル位置に位置する場合に、外側ケーシング(14)の一部に支えられ、かつ、内側ケーシング(12)と外側ケーシング(14)が互いに回転軸(6)上で復元トルクが増大する回転方向に回転することができる第2部分を含むか、または、
(ii)外側ケーシング(14)にしっかりと係合させた第1部分と、内側ケーシング(12)が外側ケーシング(14)に対して所定のノーマル位置に位置する場合に、内側ケーシング(12)の一部に支えられ、かつ、内側ケーシング(12)と外側ケーシング(14)が互いに回転軸(6)上で復元トルクが増大する回転方向に回転することができる第2部分を含む、少なくとも一つの張力付与要素(19,20,38,38’−38’’’’)を備えることを特徴とする請求項12に記載のシートアセンブリ。
【請求項14】
内側ケーシング(12)は凹部(12.1)を含んでおり、張力付与要素(20)の第1部分は、内側ケーシング(12)の凹部(12.1)内に回転するように挿入され、また、張力付与要素(20)の第2部分は、内側ケーシング(12)が外側ケーシング(14)に対して所定のノーマル位置に位置する場合に、外側ケーシング(14)の一部に支えられることを特徴とする請求項13に記載のシートアセンブリ。
【請求項15】
多数の弾性トーションばね要素を備えており、これらの弾性トーションばね要素は並んで配置されており、各弾性トーションばね要素の内側ケーシング(12)及び/または外側ケーシング(14)は、同一の回転軸(6)上に回転自在に配置されていることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項16】
各弾性トーションばね要素の内側ケーシングは相互にしっかりと連結されるか、及び/または、各弾性トーションばね要素の外側ケーシングは相互にしっかりと連結されることを特徴とする請求項15に記載のシートアセンブリ。
【請求項1】
座席ベース(5)と、
バックサポート(44)と、
バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)用の支持部材(42)と、
少なくとも一つの弾性トーションばね要素(10,28)と、を備えたシートアセンブリ(1)であって、
バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)は、バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)が回転軸(6)上で旋回運動することができるように支持部材(42)に旋回自在にヒンジ結合されており、また、
少なくとも一つの弾性トーションばね要素(10,28)は、内側ケーシング(12)と、該内側ケーシング(12)を取り囲む外側ケーシング(14)と、内側ケーシング(12)と外側ケーシング(14)との間の空間に配置された弾性部材(16)とを含んでおり、
ここで、内側ケーシング(12)は、弾性部材(16)が内側ケーシング(12)に接触する少なくとも一つの接触面(12a)を含んでおり、また、
外側ケーシング(14)は、弾性部材(16)が外側ケーシング(14)に接触する少なくとも一つの接触面(14a)を含んでおり、さらに、
弾性部材(16)は、内側ケーシング(12)の接触面(12a)と外側ケーシング(14)の接触面(14a)に固着されており、また、
弾性トーションばね要素(10,28)の内側ケーシング(12)及び/または外側ケーシング(14)は、回転軸(6)上に回転自在に配置されており、また、
バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)の旋回運動中に、内側ケーシング(12)が外側ケーシング(14)に対して回転して回転軸(6)上で回転角度(φ)だけ回転できるように、支持部材(42)は、弾性トーションばね要素(10,28)の外側ケーシング(14)に連結され、また、バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)は、弾性トーションばね要素(10,28)の内側ケーシング(12)に連結されており、また、この過程で、弾性部材(16)が変形することにより、該弾性部材(16)が、外側ケーシング(14)と内側ケーシング(12)との間に、回転に対抗するように作動する復元トルクを発生させる、シートアセンブリ(1)において、
回転軸(6)に直交する内側ケーシング(12)の接触面(12a)の平面部分が非円形断面からなり、及び/または、回転軸(6)に直交する外側ケーシング(14)の接触面(14a)の平面部分が非円形断面からなる、ことを特徴とするシートアセンブリ。
【請求項2】
座席ベース(5)と、
バックサポート(44)と、
バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)用の支持部材(42)と、
少なくとも一つの弾性トーションばね要素(10,28)と、を備えたシートアセンブリ(1)であって、
バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)は、バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)が回転軸(6)上で旋回運動することができるように支持部材(42)に旋回自在にヒンジ結合されており、また、
少なくとも一つの弾性トーションばね要素(10,28)は、内側ケーシング(12)と、該内側ケーシング(12)を取り囲む外側ケーシング(14)と、内側ケーシング(12)と外側ケーシング(14)との間の空間に配置された弾性部材(16)とを含んでおり、
ここで、内側ケーシング(12)は、弾性部材(16)が内側ケーシング(12)に接触する少なくとも一つの接触面(12a)を含んでおり、また、
外側ケーシング(14)は、弾性部材(16)が外側ケーシング(14)に接触する少なくとも一つの接触面(14a)を含んでおり、さらに、
弾性部材(16)は、内側ケーシング(12)の接触面(12a)と外側ケーシング(14)の接触面(14a)に固着されており、また、
弾性トーションばね要素(10,28)の内側ケーシング(12)及び/または外側ケーシング(14)は、回転軸(6)上に回転自在に配置されており、また、
バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)の旋回運動中に、内側ケーシング(12)が外側ケーシング(14)に対して回転して回転軸(6)上で回転角度(φ)だけ回転できるように、支持部材(42)は、弾性トーションばね要素(10,28)の内側ケーシング(12)に連結され、また、バックサポート(44)及び/または座席ベース(5)は、弾性トーションばね要素(10,28)の外側ケーシング(14)に連結されており、また、この過程で、弾性部材(16)が変形することにより、該弾性部材(16)が、外側ケーシング(14)と内側ケーシング(12)との間に、回転に対抗するように作動する復元トルクを発生させる、シートアセンブリ(1)において、
回転軸(6)に直交する内側ケーシング(12)の接触面(12a)の平面部分が非円形断面からなり、及び/または、回転軸(6)に直交する外側ケーシング(14)の接触面(14a)の平面部分が非円形断面からなる、ことを特徴とするシートアセンブリ。
【請求項3】
弾性トーションばね要素(10,28)の外側ケーシング(14)は支持部材(42)に連結され、かつ、弾性トーションばね要素(10,28)の内側ケーシング(12)はベアリング軸(26)に連結されて、回転軸(6)上で回転することができ、ベアリング軸(26)はバックサポート(44)及び/または座席ベース(5)に回転するように固着されていることを特徴とする請求項1に記載のシートアセンブリ。
【請求項4】
弾性トーションばね要素の内側ケーシングは支持部材に連結され、かつ、弾性トーションばね要素の内側ケーシングはベアリング軸に連結されて、回転軸上で回転することができ、ベアリング軸はバックサポート及び/または座席ベースに回転するように固着されていることを特徴とする請求項2に記載のシートアセンブリ。
【請求項5】
内側ケーシング(12)の接触面(12a)と外側ケーシング(14)の接触面(14a)は、互いに、内側ケーシング(12)及び/または外側ケーシング(14)が回転軸(6)上で少なくとも所定の回転角度範囲で回転中に、内側ケーシング(12)の規定点と外側ケーシング(14)の規定点との間の距離が減少(X1−X2、Y1−Y2)するように配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項6】
回転軸(6)に直交する内側ケーシング(12)の接触面(12a)と外側ケーシング(14)の接触面(14a)の平面部分は、非円形断面からなり、かつ、互いに、内側ケーシング(12)及び/または外側ケーシング(14)が回転軸(6)上で回転することにより、弾性部材(16)の少なくとも一部の領域に圧縮荷重が発生するように配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項7】
いずれの場合でも回転軸(6)に直交している内側ケーシング(12)の接触面(12a)及び/または外側ケーシング(14)の接触面(14a)の平面部分は、多角形或いは少なくともある部分が直線となるように設計されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項8】
外側ケーシング(14)の接触面(14a)は、
(a)少なくともある部分は円筒形であり、または、
(b)いずれの場合でも回転軸(6)に直交している平面部分は矩形で、少なくとも対向する二対のコーナー部は丸い形状であり、または、
(c)対向する二対の等辺の角形部分と、いずれの場合でも矩形の角形部分の端部に連結される対向する二対の半円形部分を含む、ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項9】
いずれの場合でも回転軸(6)に直交している内側ケーシング(12)の接触面(12a)の平面部分は矩形であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項10】
外側ケーシング(14)の内側断面の表面積(Fa)と内側ケーシング(12)の外側断面の表面積(Fi)との比は、7/3よりも大きいことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項11】
弾性部材(16)は、一つまたは数個の貫通孔(17)を備えており、該貫通孔(17)は回転軸(6)に沿って延在していることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項12】
弾性トーションばね要素(10)は、
(i)外側ケーシング(14)に対して内側ケーシング(12)を所定のノーマル位置に保持して、このノーマル位置では、弾性部材(16)は所定の弾性変形を有し、外側ケーシング(14)と内側ケーシング(12)との間に所定の最小値に等しい復元トルクを発生させるように、また、
(ii)回転軸(6)上での回転角度(φ)が、該回転角度(φ)の増加に伴って復元トルクが増大するように、内側ケーシング(12)を外側ケーシング(14)に対して回転させることができるように、設計された保持要素(19,20,38,38’−38’’’’)を備えることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項13】
保持要素は、
(i)内側ケーシング(12)にしっかりと係合させた第1部分と、内側ケーシング(12)が外側ケーシング(14)に対して所定のノーマル位置に位置する場合に、外側ケーシング(14)の一部に支えられ、かつ、内側ケーシング(12)と外側ケーシング(14)が互いに回転軸(6)上で復元トルクが増大する回転方向に回転することができる第2部分を含むか、または、
(ii)外側ケーシング(14)にしっかりと係合させた第1部分と、内側ケーシング(12)が外側ケーシング(14)に対して所定のノーマル位置に位置する場合に、内側ケーシング(12)の一部に支えられ、かつ、内側ケーシング(12)と外側ケーシング(14)が互いに回転軸(6)上で復元トルクが増大する回転方向に回転することができる第2部分を含む、少なくとも一つの張力付与要素(19,20,38,38’−38’’’’)を備えることを特徴とする請求項12に記載のシートアセンブリ。
【請求項14】
内側ケーシング(12)は凹部(12.1)を含んでおり、張力付与要素(20)の第1部分は、内側ケーシング(12)の凹部(12.1)内に回転するように挿入され、また、張力付与要素(20)の第2部分は、内側ケーシング(12)が外側ケーシング(14)に対して所定のノーマル位置に位置する場合に、外側ケーシング(14)の一部に支えられることを特徴とする請求項13に記載のシートアセンブリ。
【請求項15】
多数の弾性トーションばね要素を備えており、これらの弾性トーションばね要素は並んで配置されており、各弾性トーションばね要素の内側ケーシング(12)及び/または外側ケーシング(14)は、同一の回転軸(6)上に回転自在に配置されていることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載のシートアセンブリ。
【請求項16】
各弾性トーションばね要素の内側ケーシングは相互にしっかりと連結されるか、及び/または、各弾性トーションばね要素の外側ケーシングは相互にしっかりと連結されることを特徴とする請求項15に記載のシートアセンブリ。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【公開番号】特開2011−147787(P2011−147787A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12075(P2011−12075)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(504418464)ストール ジロフレックス アクチェンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(504418464)ストール ジロフレックス アクチェンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】
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