説明

弾性ローラの脱型方法および脱型装置

【課題】弾性ローラを、弾性層表面の裂け、割れを発生させることなくパイプ金型から脱型する脱型方法および脱型装置を提供する。
【解決手段】パイプ金型の中心軸上に配置された芯材と、該パイプ金型の中空部に弾性層材料を注入し硬化させ形成した弾性層とで構成される弾性ローラを該パイプ金型から脱型する脱型方法において、芯材の中心軸もしくはパイプ金型の中心軸のどちらか一方を、同軸をずらす方向に変位させ、次いで変位させた状態のまま該パイプ金型中心軸まわりに該パイプ金型もしくは該芯材を該パイプ金型と該芯材の位相を保った状態で回転させ、弾性層をパイプ金型壁面から剥離し、その後、弾性ローラを脱型する。この方法を行うに好適な装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材と該芯材の周囲に設けられた円筒状の弾性層からなる弾性ローラの脱型方法及び弾性ローラ脱型装置に関する。詳しくは、本発明は、複写装置、画像記録装置、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置に搭載される画像形成装置用弾性ローラの脱型方法及び画像形成装置用弾性ローラ脱型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置の小型化、高画質化及び低価格化の要求に伴い、画像形成装置に組み込まれているトナー供給ローラ、帯電ローラ、転写ローラ等の機能性ローラにおいては、高精度化及び低価格化が要求されている。それに応じ、これらの機能性ローラの品質を向上又は維持しながら製造コストを下げる努力がなされている。
【0003】
こうした中、ローラの脱型方法として、従来の方法では芯材の一端を他端側へ押す事でパイプ金型からローラを抜出し脱型していた。しかしながら、この方法では弾性層とパイプ金型壁面の離型性が悪い、言い換えると弾性層とパイプ金型壁面が接着していると、芯材の一端を他端側へ押した時に過大な負荷が弾性層にかかるため、弾性層表面の裂け、割れが発生することがあった。
【0004】
これらの問題を解決するために、芯材の一端を他端側へ押す時に押し側端部よりエア等の圧縮気体を入れながら芯材を押す方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、より確実に脱型するために芯材をパイプ金型の半径方向に変位させて、弾性層とパイプ金型壁面との間に隙間を形成した後、芯材の一端を押し脱型する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−130843号公報
【特許文献2】特開2007−276252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、弾性層とパイプ金型壁面の離型性によっては、圧縮気体を入れても弾性層表面がパイプ金型壁面から剥離しない場合があり、結果、弾性層表面の裂け、割れを解消するに至らず改善が求められていた。
【0007】
また、特許文献2の方法では、芯材をパイプ金型の半径方向に変位させても、弾性層とパイプ金型壁面との間に形成される隙間はローラ表面の一部分であり、ローラ全周にわたり隙間を形成するものではなく、したがってローラ脱型時に、隙間を形成出来なかった部分に裂け、割れが発生してしまう事があった。
【0008】
従って本発明は、パイプ金型の中心軸上に配置された芯材と、パイプ金型の中空部に弾性層材料を注入し硬化させ形成した弾性層と、で構成される弾性ローラを、弾性層表面の裂け、割れを発生させることなくパイプ金型から脱型する脱型方法および脱型装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、パイプ金型の中心軸上に配置された芯材と、該パイプ金型の中空部に弾性層材料を注入し硬化させ形成した弾性層と、で構成される弾性ローラを該パイプ金型から脱型する脱型方法において、
芯材の中心軸もしくはパイプ金型の中心軸のどちらか一方を、同軸をずらす方向に変位させ、次いで変位させた状態のまま該パイプ金型中心軸まわりに該パイプ金型もしくは該芯材を該パイプ金型と該芯材の位相を保った状態で回転させ、該弾性層を該パイプ金型壁面から剥離し、その後、該弾性ローラを脱型する事を特徴とする弾性ローラの脱型方法により解決される。
【0010】
また、本発明の目的は、パイプ金型の中心軸上に配置された芯材と、該パイプ金型の中空部に弾性層材料を注入し硬化させ形成した弾性層と、で構成される弾性ローラを該パイプ金型から脱型する脱型方法において、
芯材の中心軸もしくはパイプ金型の中心軸のどちらか一方を、同軸をずらす方向に変位させ、次いで変位させた状態のまま該パイプ金型中心軸まわりに該パイプ金型もしくは該芯材を該パイプ金型と該芯材の位相をずらしながら回転させ、該弾性層を該パイプ金型壁面から剥離し、その後、該弾性ローラを脱型する事を特徴とする弾性ローラの脱型方法により解決される。
【0011】
また、本発明の目的は、パイプ金型の中心軸上に配置された芯材と、パイプ金型の中空部に弾性層材料を注入し硬化させ形成した弾性層と、で構成される弾性ローラをパイプ金型から脱型する脱型装置において、
芯材の両端部を把持する手段と、
該芯材を該把持する手段により把持した状態で芯材の中心軸もしくは該パイプ金型の中心軸のどちらか一方を、同軸をずらす方向に変位させる手段と、
該変位させる手段により変位された状態で該パイプ金型をパイプ金型中心軸まわりに回転させる手段と、
該回転を停止し、該変位を戻した後に該弾性ローラを該パイプ金型から押出す手段と、を有することを特徴とする弾性ローラ脱型装置により解決される。
【0012】
また、本発明の目的は、パイプ金型の中心軸上に配置された芯材と、パイプ金型の中空部に弾性層材料を注入し硬化させ形成した弾性層と、で構成される弾性ローラをパイプ金型から脱型する脱型装置において、
芯材の両端部を把持する手段と、
該芯材を該把持する手段により把持した状態で芯材の中心軸もしくは該パイプ金型の中心軸のどちらか一方を、同軸をずらす方向に変位させる手段と、
該変位させる手段により変位された状態で該把持した芯材を該パイプ金型中心軸まわりに回転させる手段と、
該回転を停止し該変位を戻した後に該弾性ローラを該パイプ金型から押出す手段と、を有することを特徴とする弾性ローラ脱型装置により解決される。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、パイプ金型の中心軸上に配置された芯材と、パイプ金型の中空部に弾性層材料を注入し硬化させ形成した弾性層と、で構成される弾性ローラを、弾性層表面の裂け、割れを発生させることなくパイプ金型から脱型する脱型方法および脱型装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明を更に詳しく説明する。はじめに本発明の弾性ローラの脱型方法について図に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0015】
本発明の弾性ローラの脱型方法は、図2に示すパイプ金型10の中心軸上に配置された芯材1と、パイプ金型10の中空部に弾性層材料を注入し硬化させ形成した弾性層2と、で構成される弾性ローラを脱型する方法である。
【0016】
弾性ローラとしては複写装置、画像記録装置、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置に搭載される画像形成装置用の弾性ローラに好適に用いることができる。
【0017】
本発明で用いる弾性ローラの芯材は、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム及びニッケル等の金属材料の丸棒を用いることができる。更に、これらの金属表面に防錆や耐傷性付与を目的としてメッキ処理を施しても構わない。
【0018】
弾性層材料としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロルスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料を使用することができる。
【0019】
また、ポリウレタンフォーム,シリコーンゴムフォーム,ウレタンゴムフォームなどを用いることもできる。これらの弾性層材料のうちポリウレタンフォームが好ましい。
【0020】
この場合、ポリウレタンフォームを構成するポリイソシアネートとしては、芳香族イソシアネート又はその誘導体、脂肪族イソシアネート又はその誘導体、脂環族イソシアネート又はその誘導体が用いられる。これらの中で芳香族イソシアネート又はその誘導体が好ましく、特にトリレンジイソシアネート又はその誘導体、ジフェニルメタンジイソシアネート又その誘導体が好適に用いられる。
【0021】
ポリウレタン原料を構成するポリオール成分としては、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオール,ポリテトラメチレンエーテルグリコール,酸成分とグリコール成分を縮合したポリエステルポリオール,カプロラクトンを開環重合したポリエステルポリオール,ポリカーボネートジオール等を用いることができる。
【0022】
この場合、発泡剤としては、ゴム用有機系化学発泡剤としてオキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、アゾジカルボンアミド(ADCA)等を用いることができる。また、ポリウレタンフォーム用発泡剤として、水;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、メチレンクロライド等のハロゲン化炭素類;ペンタン、ブタン、プロパン等の炭化水素類、フラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メチルホルマート、ジメチルオキサラート、エチルアセタート等のカルボン酸アルキルエステル等、二酸化炭素等が単独又は混合して使用されるが、環境保護の観点より水を単独で使用することが好ましい。
【0023】
まず、図3に示すように、芯材1の中心軸もしくはパイプ金型10の中心軸を、同軸をずらす方向に変位させる。変位させる事で弾性層2に力が加わり、弾性層の一部がパイプ金型壁面から剥離する。ここで、芯材もしくはパイプ金型の中心軸を、平行を維持した状態で変位させると、弾性層の長手方向の剥離をより効率よく行う事ができるため好適である。次いで変位させた状態を維持したまま、図4、図5に示すように、パイプ金型10の中心軸まわりにパイプ金型10もしくは芯材1を回転させる。回転させる事で、弾性層2とパイプ金型壁面の剥離箇所がローラ弾性層全域に広がっていく。
【0024】
この時、第一の弾性ローラ脱型方法の場合、図4に示すように該芯材1と該パイプ金型10の位相を保った状態で回転させる。図4中の黒丸は芯材1とパイプ金型10の中心軸まわりの位相(相対角度)を説明するために表記したものである。例えば、パイプ金型10をパイプ金型中心軸まわりに90°回転させた時、芯材1も芯材中心軸まわりに90°回転させる。つまりパイプ金型10と芯材1の黒丸位置(方向)を合わせることで、パイプ金型10と芯材1の位相(相対角度)を保つ。位相を保つ事で、脱型対象である弾性ローラの弾性層に過剰な負荷をかけることがない。この場合、該芯材もしくは該パイプ金型中心軸のどちらか一方を同軸をずらす方向に変位させたことで発生する力が弾性層とパイプ金型壁面を剥離させる。従来の脱型方法である芯材をパイプ金型半径方向に変位させる直線動作のみでは、弾性層周面全域を剥離することが困難であったが、本発明の脱型方法の工程である回転させる工程により、弾性層周面全域を剥離することができる。
【0025】
第二の弾性ローラ脱型方法の場合、図5に示すように該芯材と該パイプ金型の位相をずらしながら回転させる。例えば、パイプ金型10をパイプ金型中心軸まわりに90°回転させた時、芯材1は芯材中心軸まわりに45°回転させる。つまりパイプ金型10と芯材1の黒丸位置(方向)をずらすことで、パイプ金型10と芯材1の位相(相対角度)をずらす。ここで、説明のために該パイプ金型10の回転角度90°に対し、該芯材1の回転角度を45°としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ローラ弾性層の強度により最適な回転角度を選択する必要がある。位相をずらす事で、該芯材もしくは該パイプ金型中心軸のどちらか一方を同軸をずらす方向に変位させたことで発生する力とは別に、位相がずれる事によりローラ弾性層周方向に力が働き、より効果的に弾性層周面全域を剥離することができる。ただし、前述したように、弾性層に力が集中するため過度の位相ずらしは弾性層の破壊を招く可能性がある。使用する弾性層の強度を考慮して設定する必要がある。
【0026】
その後、変位を戻し、図6のように芯材1の一端を芯材中心軸方向へ押す事で弾性ローラをパイプ金型10から押出し脱型する。図6ではシャフト13を利用して芯材1をパイプ金型10から押出しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば圧縮エアをパイプ金型端部よりパイプ金型内部に供給することで弾性層を加圧し、弾性ローラを押出してもよい。芯材端部弾性層2とパイプ金型壁面を一度完全に剥離させる事で、弾性ローラを押出す時に弾性層にかかる負荷を大幅に軽減する事ができる。
【0027】
芯材1の中心軸とパイプ金型10の中心軸の変位量xは、大きい方が弾性層5とパイプ金型壁面の剥離範囲が大きくなるため好ましいが、変位量xが大きすぎると、剥離箇所と反対側の弾性層に過大な圧縮力が加わり弾性層自身を破壊してしまう事があるため、弾性層物性により適度に選定する必要がある。
【0028】
パイプ金型10の中心軸まわりにパイプ金型10もしくは芯材1を回転させる回転量(角度)は、少なくとも360°以上行う。通常、360°回転させる事で弾性層全域(全周面)がパイプ金型壁面から剥離するが、弾性層2とパイプ金型壁面の離型性が極端に悪い場合は一部剥離しない部分が発生する場合がある。これを解消し弾性層とパイプ金型壁面が全域にわたり剥離するため、回転量は多いほうが好ましい。ただし、回転量が多すぎると生産タクトが遅くなるため適度に選定する必要がある。
【0029】
パイプ金型10の中心軸まわりにパイプ金型10もしくは芯材1を回転させる回転速度については、特に制限はないが、回転速度が速い場合は弾性層2にかかる負荷が過大になり弾性層を破壊してしまう可能性がある。また、弾性層は力をかけると伸びる性質があるため変位させてもすぐには剥離せず完全に剥離するには時間を要する場合がほとんどである。このため回転速度を遅くした方が、弾性層とパイプ金型壁面を剥離するのに効果がある。しかし回転速度を遅くすると生産タクトが遅くなるため、使用する弾性層処方や、芯材の中心軸とパイプ金型の中心軸の変位量により最適な回転速度を選出する必要がある。
【0030】
次に本発明の脱型装置について説明する。
【0031】
本発明の第一の弾性ローラ脱型装置は、芯材の両端部を把持する手段、該芯材を該把持する手段により把持した状態で芯材の中心軸もしくはパイプ金型の中心軸のどちらか一方を、同軸をずらす方向に変位させる手段、該変位させる手段により変位させた状態でパイプ金型をパイプ金型中心軸まわりに回転させる手段、弾性ローラをパイプ金型から押出す手段、で構成される。
【0032】
芯材の両端部を把持する手段としては、特に制限はなく一般的な芯材把持方法が利用できる。例えば図7に示すように、端部に芯材が入る孔が開けられたシャフト11、13により、該芯材両端部を挟み込んで把持したり、芯材1の外周を加えて把持するチャック等が利用できる。ここで該把持手段は該芯材1を該芯材中心軸まわりに回転可能に把持する構造とする。第一の弾性ローラ脱型方法の場合は、パイプ金型10の位相に合わせて該把持手段を該芯材1とともに回転させる。第二の弾性ローラ脱型方法の場合は、パイプ金型10の位相に対して該把持手段を該芯材1の位相をずらしながら回転させる。回転させる機構に特に制限はなく、一般の駆動機器を用いてもよいし、該把持手段の回転方向に負荷をかけて該芯材1を把持した該把持手段に回転制限をかけてもよい。
【0033】
芯材の中心軸とパイプ金型の中心軸を変位させる手段としては、シリンダやモータ等の一般的な駆動機器が利用できる。パイプ金型もしくは芯材のどちらか一方を固定し、もう一方を該駆動機器を利用して動かし、パイプ金型もしくは芯材の中心軸を変位させる。
【0034】
パイプ金型をパイプ金型中心軸まわりに回転させる手段としては、モータを利用して回転させる。構成としては特に制限はなく一般的な構成を利用できる。例えば図7に示すように、パイプ金型10の外周面を2つの回転可能なロール22で支持し、該ロール22をモータ駆動により回転させてパイプ金型10を従動回転させる構成が利用できる。他に磁力やベルト等を利用してパイプ金型を回転させてもよい。
【0035】
弾性ローラをパイプ金型から押出す手段としては、図6に示すように、芯材1の一端をパイプ金型の中心軸方向に移動可能なシャフト13で芯材1の他端方向へ押して、パイプ金型から弾性ローラを押出す手段が利用できる。弾性ローラをパイプ金型から押出す手段は、回転させる手段によるパイプ金型の回転を停止し、変位を戻した後に、弾性ローラをパイプ金型から押出すことができる。
他の手段としては、パイプ金型一端より圧縮エアをパイプ金型内部に供給することで弾性層を加圧し弾性ローラを押出すこともできる。
【0036】
本発明の第二の弾性ローラ脱型装置は、芯材の両端部を把持する手段、該芯材を該把持する手段により把持した状態で芯材の中心軸もしくはパイプ金型の中心軸のどちらか一方を、同軸をずらす方向に変位させる手段、該変位させる手段により変位させた状態で該把持した芯材をパイプ金型中心軸まわりに回転させる手段、弾性ローラをパイプ金型から押出す手段、で構成される。
【0037】
変位させ把持した芯材をパイプ金型中心軸まわりに回転させる手段としては、図8に示すようにシャフト11、13等の芯材1を把持している把持体を、芯材1を把持させた状態でパイプ金型中心軸まわりに回転させる手段が利用できる。該把持体は芯材1の両端に配置されているため、この2つの把持体を、各々回転させる、もしくは同期させて回転させる。回転駆動にはモータ等の一般駆動機器が利用できる。
【0038】
他の手段については、前述した第一の弾性ローラ脱型装置の手段と同様である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例ついて説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0040】
実施にあたり、図1に示す形状をした発泡ローラを成型した。該発泡ローラの発泡体外径はφ12であり、発泡体部長さは220mmである。
成型した発泡ローラの材料と成型条件、成型の手順を以下に示す。
【0041】
まず、成型に使用した材料について説明する。混合ポリオールとして、FA−908を100重量部、ジエタノールアミンを0.5重量部、L5366を1重量部、ToyoCat−ETを0.1重量部、TEDA−L33を0.5重量部、水(発泡剤)を2重量部用意し、それらを混合した。前記FA−908とは、三洋化成株式会社製ポリエーテルポリオールである。前記L5366とは、日本ユニカー株式会社製シリコーン系整泡剤である。前記ToyoCat−ETとは、東ソー株式会社製第3級アミン触媒である。前記TEDA−L33とは、東ソー株式会社製第3級アミン触媒である。その後、T80(三井武田ケミカル株式会社製イソシアネート、NCO%=48)29.5重量部、M200(三井武田ケミカル株式会社製イソシアネート、NCO%=31)7.4部とをNCOインデックス100となるように混合攪拌したものを発泡弾性層材料とした。
【0042】
次に製作した脱型装置について説明する。概略図を図9に示す。
【0043】
芯材の両端部を把持する手段は、芯材1の両端を把持するシャフト11、13と、シャフト11、13を回転可能に支持するホルダ12、14と、これらを一軸移動させる移動手段15、16で構成した。
【0044】
シャフト13の一端には芯材1を把持するために逆センターの穴加工を施した。シャフト13の長さは、パイプ金型10から成型した弾性ローラを押出すため、パイプ金型の全長より長く設計した。移動手段15、16には市販のエアシリンダを使用した。
【0045】
芯材の中心軸とパイプ金型の中心軸を変位させる手段は、パイプ金型10の外周面を受けて支持する2つのロール22と、パイプ金型10を固定する金型押え18と、該ロール22に接続配置されロール22ごとパイプ金型10を動かすエアシリンダ17で構成した。
【0046】
パイプ金型をパイプ金型中心軸まわりに回転させる手段は、パイプ金型10の外周面を受けて支持する2つのロール22を回転させることで、パイプ金型10を従動回転させた。ロール22を回転させるためにモータ19を配置し、プーリー20、ベルト21を介してロール22を回転させた。2つのロール22は同方向に回転するように設定した。
【0047】
弾性ローラをパイプ金型から押出す手段は、シャフト11、13で芯材1を挟み込んだ状態でエアシリンダ15、16を動かし(図9では下側に移動)、パイプ金型10から弾性ローラを押出す構成とした。
【0048】
次に成型手順について説明する。パイプ金型、上駒、下駒で構成される成型金型にシリコンオイル離型剤を塗布し、φ5×260mm(L)の芯金と上駒、下駒をパイプ金型に組付け型組みし、65℃に予熱した。その後、型組みした成型金型内に、混合攪拌した該発泡材料を入れ、成型金型キャビティを充填した。その後、10分間、65℃に温度制御された熱盤において硬化させ、上駒、下駒を外し、パイプ金型と成型した弾性層と芯材で構成される図2に示す状態とした。この状態のものを製作した本発明の脱型装置にセットし、パイプ金型中心軸と芯材中心軸の変位量x2.5mm、パイプ金型の回転速度90rpm、回転量1080°(3周)、パイプ金型と芯金の位相を同位相とし、弾性ローラをパイプ金型から押出す速度150mm/s、の条件において、本発明の脱型方法・脱型装置を用いてパイプ金型から弾性ローラを押し出して脱型した。脱型して得られた弾性ローラを実施例1とした。
【0049】
次にパイプ金型と芯金の位相をパイプ金型に対して芯金を5.5%位相をずらしながら回転させた以外は、実施例1と同様に成型し得られた弾性ローラを実施例2とした。例えると、パイプ金型90°回転させた時の芯金回転角度は85°である。
【0050】
脱型前までの工程を実施例1と同様に行い、脱型工程において本発明の脱型装置を用いずに手作業にて芯材をパイプ金型の半径方向に数回変位させローラ弾性層とパイプ金型壁面の一部を剥離させ、その後、芯材の一端を押してパイプ金型から弾性ローラを押出し脱型し得られた弾性ローラを比較例1とした。
【0051】
脱型前までの工程を実施例と同様に行い、その後ローラ弾性層とパイプ金型壁面を剥離することなく芯材の一端を押してパイプ金型から弾性ローラを押出し脱型し得られた弾性ローラを比較例2とした。
【0052】
各条件で成型した弾性ローラを目視による外観検査にて比較した。
【0053】
実施例1で成型した弾性ローラは、脱型した弾性ローラの弾性層に裂け・割れは発生せず、良好な弾性ローラが得られた。
【0054】
実施例2で成型した弾性ローラについても、脱型した弾性ローラの弾性層に裂け・割れは発生せず、良好な弾性ローラが得られた。
【0055】
比較例1で成型した弾性ローラは、脱型した弾性ローラの弾性層に裂け・割れが発生するものが3%程度あった。
【0056】
比較例2で成型した弾性ローラは、脱型した弾性ローラの弾性層に裂け・割れが高確率で発生した。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、例えば電子写真装置や静電記録装置に用いられる発泡ローラを製造する際に、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施で成型した弾性ローラの模式図である。
【図2】本発明の脱型方法を適用する前状態のパイプ金型および弾性ローラの断面図である。
【図3】本発明の脱型方法過程である変位時のパイプ金型と弾性層を示す断面図である。
【図4】本発明の脱型方法過程である位相保持回転時のパイプ金型と弾性層を示す断面図である。
【図5】本発明の脱型方法過程である位相ずらし回転時のパイプ金型と弾性層を示す断面図である。
【図6】本発明の脱型方法過程である弾性ローラ押出し時の状態を示す断面図である。
【図7】本発明の第一の弾性ローラ脱型装置を示す概略図である。
【図8】本発明の第二の弾性ローラ脱型装置を示す概略図である。
【図9】本実施で製作した脱型装置の概略図である。
【符号の説明】
【0059】
1: 芯材
2: 弾性層
10: パイプ金型
11: シャフト1(芯材把持体1)
12: シャフトホルダ1
13: シャフト2(芯材把持体2)
14: シャフトホルダ2
15: エアシリンダ1
16: エアシリンダ2
17: 変位用エアシリンダ
18: パイプ金型押え
19: モーター
20: プーリー
21: タイミングベルト
22: ロール
23: パイプ金型受け
x: 変位量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ金型の中心軸上に配置された芯材と、該パイプ金型の中空部に弾性層材料を注入し硬化させ形成した弾性層と、で構成される弾性ローラを該パイプ金型から脱型する脱型方法において、
芯材の中心軸もしくはパイプ金型の中心軸のどちらか一方を、同軸をずらす方向に変位させ、次いで変位させた状態のまま該パイプ金型中心軸まわりに該パイプ金型もしくは該芯材を該パイプ金型と該芯材の位相を保った状態で回転させ、該弾性層を該パイプ金型壁面から剥離し、その後、該弾性ローラを脱型する事を特徴とする弾性ローラの脱型方法。
【請求項2】
パイプ金型の中心軸上に配置された芯材と、該パイプ金型の中空部に弾性層材料を注入し硬化させ形成した弾性層と、で構成される弾性ローラを該パイプ金型から脱型する脱型方法において、
芯材の中心軸もしくはパイプ金型の中心軸のどちらか一方を、同軸をずらす方向に変位させ、次いで変位させた状態のまま該パイプ金型中心軸まわりに該パイプ金型もしくは該芯材を該パイプ金型と該芯材の位相をずらしながら回転させ、該弾性層を該パイプ金型壁面から剥離し、その後、該弾性ローラを脱型する事を特徴とする弾性ローラの脱型方法。
【請求項3】
パイプ金型の中心軸上に配置された芯材と、パイプ金型の中空部に弾性層材料を注入し硬化させ形成した弾性層と、で構成される弾性ローラをパイプ金型から脱型する脱型装置において、
芯材の両端部を把持する手段と、
該芯材を該把持する手段により把持した状態で芯材の中心軸もしくは該パイプ金型の中心軸のどちらか一方を、同軸をずらす方向に変位させる手段と、
該変位させる手段により変位された状態で該パイプ金型をパイプ金型中心軸まわりに回転させる手段と、
該回転を停止し、該変位を戻した後に該弾性ローラを該パイプ金型から押出す手段と、を有することを特徴とする弾性ローラ脱型装置。
【請求項4】
パイプ金型の中心軸上に配置された芯材と、パイプ金型の中空部に弾性層材料を注入し硬化させ形成した弾性層と、で構成される弾性ローラをパイプ金型から脱型する脱型装置において、
芯材の両端部を把持する手段と、
該芯材を該把持する手段により把持した状態で芯材の中心軸もしくは該パイプ金型の中心軸のどちらか一方を、同軸をずらす方向に変位させる手段と、
該変位させる手段により変位された状態で該把持した芯材を該パイプ金型中心軸まわりに回転させる手段と、
該回転を停止し該変位を戻した後に該弾性ローラを該パイプ金型から押出す手段と、を有することを特徴とする弾性ローラ脱型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−5839(P2010−5839A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165683(P2008−165683)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】