説明

弾性ローラの製造方法

【課題】連続成形時の変動による振れの悪化を修正可能な弾性ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】軸芯体外周面に環状塗工ヘッドを用いて液状材料を塗工した塗層を硬化させて弾性層を形成する弾性ローラの製造方法を繰り返して複数のローラを製造する方法において、軸芯体軸方向の相異なる2点の中心位置を測定しこの2点を結んだ直線を軸芯体中心軸としたとき、第一弾性ローラを製造するために1A)第一軸芯体中心軸位置を測定し、1B)第一軸芯体に塗層を形成し、1C)その硬化前に塗層の中心位置を測定し、工程1B後に第二弾性ローラを製造するために2A)第二軸芯体中心軸位置を測定し、2B)第二軸芯体中心軸位置と工程1Cで得た中心位置に基づいて第二軸芯体中心軸から半径25μmの範囲内に工程2Cで形成する塗層の中心位置が重なるようにヘッドの位置を調整し、2C)第二軸芯体に塗層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンター又は複写機の如き画像形成装置および電子写真プロセスカートリッジなどに用いられる弾性ローラ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置の本体内部には画像形成部が設置され、クリーニング、帯電、潜像形成、現像、転写、定着のプロセスを経て画像が形成される。画像形成部は、像担持体である感光体を備えており、さらにクリーニング部、帯電部、潜像形成部、現像部および転写部を備えている。この画像形成部で形成された感光体上のトナー画像は転写部材によって、記録材に転写され、搬送された後、定着部において加熱、加圧され、定着された記録画像として、出力される。
【0003】
次に、クリーニング、帯電、潜像形成、現像、転写、定着のプロセスの内、帯電、潜像形成、現像、転写プロセスについて説明する。
【0004】
帯電部材は、感光体の表面に対し、所定の極性で、一次帯電処理を行う。帯電部材により帯電処理された後、露光され、感光体の表面に目的画像に対応した静電潜像が形成される。この静電潜像は現像装置により、トナー画像として可視像化される。このトナー画像は、感光体下で転写手段により記録材の裏面から電圧を印加することにより記録材に転写される。その後、記録材は定着部へ搬送され、トナー画像は定着され、画像形成物として出力される。
【0005】
上記のような画像形成装置においては、帯電部材、潜像を可視化するための現像部材、転写手段に、軸芯体の外周面にゴム材料で形成された弾性体を有する弾性ローラが用いられている。感光体に接することが良好であるからである。
【0006】
これら画像形成装置に用いられる弾性ローラの形状には非常に高い寸法精度が求められる。これらの寸法精度が低いと、例えば、現像部材においては感光体に供給する現像剤の量が不均一となり濃度ムラや抵抗ムラなどの弊害が生じることがある。また帯電部材においては、感光体を均一に帯電処理することができにくく、その結果、画像の品質に種々の影響を及ぼすことがある。この高い寸法精度の要求に応えるため、高粘度の弾性層形成用の材料を円筒状の塗工ヘッドを用いて軸芯体の外周面に直接塗布する工程を含む弾性ローラの製造方法が提案されている(特許文献1参照)。これによれば、弾性層材料の粘度や弾性層の層厚による塗工工程の制限を除去し、より簡易な装置で軸芯体外周上に弾性層材料を直接塗工して、良好かつ均一な弾性層を形成することができる。この方法では、軸芯体の中心線が水平方向と平行となった状態で弾性層材料を前記軸芯体の表面に塗工する。この方法は次の段階を有する。すなわち、軸芯体の表面に弾性層材料を塗工した後の軸芯体の外径と略等しい内径を有するリング形状の塗工ヘッドを用意する段階。軸芯体を塗工ヘッドの内側に同軸上に配置させる段階。塗工ヘッドの内周面と軸芯体の間の隙間に弾性層材料を供給する段階。そして、軸芯体に対して前記塗工ヘッドを軸芯体の軸方向に軸線と同軸に相対移動させる段階である。これにより、塗工ヘッドの内周面と軸芯体との隙間部分に弾性層材料を供給し、軸芯体を水平状態で塗工ヘッドを軸芯体の軸線方向にその軸線と同軸に相対移動させることで軸芯体外周面に弾性層材料が塗工される。塗工ヘッドが軸芯体に塗工層が形成された部分の外径とほぼ等しい内径を持つリング形状であるため、塗工ヘッドが軸芯体に対して非接触状態であり、塗工時の塗工跡が残らない。
【特許文献1】特開2003−190870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1記載の従来技術を背景にして、弾性ローラを精度良く製造できる環境が整いつつある。しかし、上記従来技術では長時間成形時の安定性に言及されていない。また工場等での大量生産を見据えた場合、長時間製造する際に機械振動、温湿度、材料ロットごとの材料物性のばらつき等々の何らかの変動により、弾性ローラの精度が低下してしまうという生産安定性の課題があった。また、近年の電子写真に対する高解像画像の需要増に伴い、電子写真装置に使用される弾性ローラの高精度化が要求されている。そのため、従来よりも高精度な弾性ローラ、およびその製造方法の確立が急務となっている。
【0008】
本発明の目的は、寸法精度、特には振れの良い弾性ローラの製造方法、さらには、連続成形時の変動による振れの悪化を修正し、高い生産安定性を維持した弾性ローラの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有することを特徴とする。
【0010】
すなわち本発明は、軸芯体の外周面に環状塗工ヘッドを用いて液状材料を塗工して液状材料層を形成する工程と該液状材料層を硬化させて弾性層を形成する硬化工程とを有する弾性ローラの製造方法を繰り返すことにより複数の弾性ローラを製造する弾性ローラの製造方法において、
軸芯体の軸方向の相異なる2点の中心位置を測定し、該2点を結んだ直線を該軸芯体の中心軸としたとき、
第一の弾性ローラを製造するために、
1A)第一の軸芯体の中心軸の位置を測定する工程と、
1B)第一の軸芯体の外周面に環状塗工ヘッドを用いて液状材料を塗工して液状材料層を形成する工程と、
1C)工程1Bで形成した液状材料層が硬化する前に、液状材料層の中心位置を測定する工程と、
を有し、
工程1Bより後に、第二の弾性ローラを製造するために、
2A)第二の軸芯体の中心軸の位置を測定する工程と、
2B)第二の軸芯体の中心軸の位置と、工程1Cで求めた液状材料層の中心位置とに基づいて、第二の軸芯体の中心軸から半径25μmの範囲内に、工程2Cで形成する液状材料層の中心位置が重なるように、環状塗工ヘッドの位置を第二の軸芯体に対し相対的に調整する工程と、
2C)第二の軸芯体の外周面に環状塗工ヘッドを用いて液状材料を塗工して液状材料層を形成する工程と、
を有することを特徴とする弾性ローラの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、寸法精度、特には振れの良い弾性ローラの製造方法、さらには、連続成形時の変動による振れの悪化を修正し、高い生産安定性を維持した弾性ローラを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の形態を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0013】
本発明の弾性ローラの製造方法に好適に用いることができる環状塗工ヘッドを有する弾性ローラの製造装置(以下、リングコート機という。)の概略説明図を図1に示す。
【0014】
このリングコート機は、架台31の上に略垂直にコラム32が取り付けられ、架台31とコラム32の上部に精密ボールネジ33が略垂直に取り付けられている。44はリニアガイドであり、精密ボールネジ33と平行にコラム32にリニアガイド44は2本取り付けられている。リニアモーションガイド(以下、LMガイド)34はリニアガイド44と精密ボールネジ33とを連結し、サーボモータ35よりプーリ36を介して回転運動が伝達され昇降できるようになっている。コラム32には環状塗工ヘッド固定テーブル45が取り付けられている。環状塗工ヘッド固定テーブル45には、水平方向への駆動機構を備えた環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46が取り付けられており、環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46上に環状塗工ヘッド38が取り付けられている。また、環状塗工ヘッド固定テーブル45には、軸芯体の位置および塗工ヘッドの位置を検出するために、LED光の投光部と受光部との1対からなる位置検出器48がX方向およびY方向にそれぞれ一組ずつ取り付けられている。
【0015】
LMガイド34にはブラケット37が取り付けられる。ブラケット37には、水平方向への駆動機構を備えた軸芯体位置補正XYステージ47が取り付けられており、軸芯体位置補正XYステージ47上に軸芯体101を保持し固定する軸芯体下保持軸39が、略垂直に取り付けられている。また、ローラの軸芯体101の逆側を保持する軸芯体上保持軸40がブラケット37の上部に取り付けられ、軸芯体上保持軸40は軸芯体下保持軸39に対向して略同心になるように配置して軸芯体を保持している。
【0016】
環状塗工ヘッド38の中心軸は、軸芯体下保持軸39と軸芯体上保持軸40の移動方向と平行となるようにそれぞれに支持されている。
【0017】
液状材料の供給口41は、配管42を介して供給弁43に接続されている。材料供給弁43は、その手前に混合ミキサー、材料供給ポンプ、材料定量吐出装置、材料タンク等(何れも不図示)を備え、定量(単位時間当たりの量が一定)の液状材料を吐出可能としている。液状材料は材料タンクから、材料定量吐出装置により一定量計量され、混合ミキサーで混合される。その後、材料供給ポンプにより混合された液状材料は、材料供給弁43から配管42を経由して、供給口41に送られる。
【0018】
供給口41より送り込まれた液状材料は、環状塗工ヘッド38内の流路を通り、環状塗工ヘッド38のノズルから吐出する。液状材料の層厚を一定にさせるために、環状塗工ヘッドノズルからの吐出量と材料供給ポンプからの供給量を一定にして、保持されている軸芯体101を垂直方向(軸芯体の中心軸方向)に上方へ移動させる。こうすることで、軸芯体101は環状塗工ヘッド38に対して相対的に軸方向に移動し、軸芯体101の外周上に液状材料からなる円筒形状(ローラ形状)の層102が形成される。
【0019】
上記環状塗工ヘッドを有するリングコート機を用いて、本発明に係る弾性ローラの製造方法を行うことができる。従来は、高粘度の材料を塗工する場合、環状塗工ヘッドからの液状材料吐出が周方向で均一にはならず、層厚のばらつきが大きくなりやすい。また、弾性ローラを連続的に製造する場合、例えば装置の振動などの外乱による生産安定性の低下を防ぐ手段が望まれる。ここで、振れ精度に対しては、真円度がある程度良好であるとすると、軸芯体の中心軸と弾性層の中心位置の間隔が支配的であり、また弾性層の中心位置は環状塗工ヘッドの中心位置に依存する。すなわち、振れ精度良い弾性ローラを安定的に製造するには、軸芯体の中心軸に環状塗工ヘッドの中心位置が合うようにその都度調整することが望まれる。ここで、高粘度の液状材料を塗工する場合、長期間にわたって安定的に高い精度で均一に吐出させることは難しい場合が多いため、軸芯体の中心軸と環状塗工ヘッドの中心位置は必ずしも一致しない場合もある。それらを踏まえ、本発明に係わる、弾性ローラを連続的に製造する弾性ローラの製造方法の一形態について説明する。
【0020】
〔基準に対する環状塗工ヘッド中心の位置座標を求める工程〕
弾性ローラを製造するにあたり、予め基準をどこにとっても良いが、基準に対する環状塗工ヘッド中心の水平面における相対的な位置座標(XY座標)を求めておく。例えば、軸芯体上保持軸あるいは軸芯体下保持軸を基準とし、環状塗工ヘッドの位置座標を接触式で求める方法や、環状塗工ヘッドに基準となるピンを立て、環状塗工ヘッドの位置座標を位置検出器によって非接触で求める方法などが挙げられる。
【0021】
その一例として、軸芯体上保持軸40の位置座標を基準とし、環状塗工ヘッド38上に立てられたピンと軸芯体上保持軸40との間隔から環状塗工ヘッド38と軸芯体上保持軸40の位置関係を把握する方法を説明する。まず、軸芯体上保持軸40の水平面における絶対位置座標(XY座標)を位置検出器48により測定する。その後、図2に示すように環状塗工ヘッド38上に、環状塗工ヘッド38の中心軸から等距離に、また中心軸を挟むようにXおよびY軸方向にそれぞれ2本ずつ、計4本のピン49を立てる。そして、軸芯体上保持軸40とピンとの間隔を位置検出器48により計測する。その時、図2に示すように、間隔W1、W2、W1’およびW2’が、W1=W2、W1’=W2’となるように環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46を調整する。この工程を経ることにより、軸芯体上保持軸と、環状塗工ヘッド中心が合致し、軸芯体上保持軸を基準とした環状塗工ヘッド中心の水平面における位置座標(XY座標)が相対的に求められる。
【0022】
次に軸芯体下保持軸39、軸芯体中心軸位置を測定するための軸芯体の軸方向の相異なる2点の中心および吐出塗工された液状材料層の中心を求める位置測定工程を説明する。尚、当該中心は、軸芯体上保持軸40を基準とした相対座標として求められる。
【0023】
この工程は弾性ローラを連続的に製造する場合は予め一回行えば良いが、装置の経時的な変化を補正するため、ある間隔ごとに複数回行っても良い。
【0024】
〔軸芯体下保持軸の位置座標を検出する工程(第一の弾性ローラ)〕
軸芯体101は、軸芯体上保持軸40および軸芯体下保持軸39によって上下軸方向に把持される。この時、軸芯体下保持軸39の上端は、環状塗工ヘッド38の中を通って環状塗工ヘッドより上方に位置している。位置検出器48によって、軸芯体下保持軸39の水平面における相対位置座標(XY座標)を測定する。
【0025】
本発明において、軸芯体を上下軸方向に把持するとは、図3に示すように軸芯体が鉛直方向になるよう軸芯体の端部を把持するものである。
【0026】
〔工程1A)第一の軸芯体の中心軸の位置を測定する工程(第一の弾性ローラ)〕
次に、上下軸方向に軸芯体101を把持した状態で、LMガイド34が下降する。この時、軸芯体の位置を位置検出器48によって測定する。軸芯体の軸方向の相異なる2点の中心位置、例えば、図3に示す101−1および101−2の二箇所の水平面における中心位置座標(XY座標)を位置検出器48−1および48−2によって測定する。この二箇所の水平面における中心位置座標を結んだ直線を軸芯体101の中心軸とする。
【0027】
この二箇所の間隔は、軸芯体の軸方向に、軸芯体全長の50%以上の間隔を持っていることが好ましい。この二個所が、軸芯体の両端部からそれぞれ軸芯体全長の25%以内の位置(すなわち、測定箇所の間隔は軸芯体全長の50%以上)に存在することがより好ましい。さらに好ましくは、この二個所が、軸芯体の軸方向に、軸芯体全長の80%以上の間隔を持っていることが好ましい。弾性ローラの振れ測定機としては、軸芯体上保持軸側の軸芯体端部を把持し回転させて外径差を測る方法が一般的である。二個所の測定個所の間隔を軸芯体全長の50%以上、さらには80%以上とすることで、軸芯体の中心軸と弾性ローラの振れ測定機における弾性ローラ回転軸とのずれを抑制し、弾性ローラとしての振れ精度を良好に維持することが容易となる。
【0028】
〔工程1B)液状材料層を形成する工程、工程1C)液状材料層の中心位置を測定する工程(第一の弾性ローラ)〕
環状塗工ヘッド38から液状材料を吐出させながら、保持されている軸芯体101を垂直方向(軸芯体の中心軸方向)に上方へ移動させることで、軸芯体101の外周上に液状材料からなる円筒形状(ローラ形状)の層102が塗工される。
【0029】
このとき、軸芯体101の移動中に、位置検出器48により液状材料層102の水平面における中心位置座標(XY座標)を測定する。
【0030】
この工程は、軸芯体の外周に液状材料層を設けた直後、軸芯体を軸芯体保持軸から取り外す前に行うことが好ましい。軸芯体を軸芯体保持軸から取り外す前に測定することで、次製造までの間隔が空かず、連続して塗工できる。
【0031】
そして、軸芯体上保持軸を上昇させ、リングコート機から軸芯体を取り外すことで弾性ローラが製造される。
【0032】
基準に対する環状塗工ヘッド中心の位置座標を求める工程は、少なくとも、複数の弾性ローラの製造開始前に行う。軸芯体下保持軸の位置座標を検出する工程、軸芯体の中心軸の位置を測定する工程、液状材料層を形成する工程・液状材料層の中心位置を測定する工程は、少なくとも一本の弾性ローラ(第一の弾性ローラ)を製造するために行う。これにより、第一の弾性ローラに関して、軸芯体上保持軸に対する環状塗工ヘッドおよび軸芯体下保持軸の相対的な位置関係、及び軸芯体の中心軸に対する液状材料層中心の変位量が分かる。これらの結果を元に、次の弾性ローラ(第二の弾性ローラ)の製造に移る。
【0033】
〔工程2A)第二の軸芯体の中心軸の位置を測定する工程(第二の弾性ローラ)〕
次の弾性ローラを製造するために、軸芯体を軸芯体上下保持軸に把持させ、軸芯体の中心軸の位置を求める。この工程は第一の弾性ローラの場合と同様に行うことができる。
【0034】
〔第二の軸芯体の倒れを補正する工程〕
図4に示すように、軸芯体の相異なる2点の中心座標が互いに水平方向で合致するように補正する工程を経ることで軸芯体中心軸の倒れを補正する。具体的には、工程2Aで求めた101−1の水平面における中心位置座標(XY座標)に、同様に求めた102−2の水平面における中心位置座標(XY座標)を一致させるように軸芯体位置補正XYステージ47により、軸芯体中心軸の倒れを補正する。
【0035】
軸芯体中心軸の倒れを補正した場合、補正後の測定個所101−1および102−2の中心位置を演算し、それぞれの中心位置を結んだ直線を軸芯体の中心軸の位置とする。
【0036】
〔工程2B)環状塗工ヘッドの位置を第二の軸芯体に対し相対的に調整する工程(第二の弾性ローラ)〕
さらに、上記のように求められた軸芯体の中心軸に対する液状材料層中心の変位量を解消するために、環状塗工ヘッドの位置補正工程を経る。
【0037】
図5(a)は工程1Cにおける環状塗工ヘッド、軸芯体、液状材料層それぞれの外形および中心位置関係を模式的に示した図である。図5(b)は工程2Cにおける環状塗工ヘッド、軸芯体、液状材料層それぞれの外形および中心位置関係をXY座標上で模式的に示した図である。例えば、図5(a)に示すように第一の軸芯体の中心軸のXY座標に対し、工程1Cで求めた液状材料層の中心位置のXY座標がX方向にΔ分ずれているとする。ここで、軸芯体の倒れ補正を行っているならば、軸芯体中心軸の中心位置座標はZ座標によらずXY座標は変わらない。また、液状材料を吐出塗工している最中は環状塗工ヘッドを固定しているため、工程1Cで求めた液状材料層の中心位置座標もZ座標によらずXY座標は変わらない。第二の弾性ローラの製造に移る際、上下軸芯体保持軸によるクランプのばらつきを除くならば、第二の軸芯体の中心軸のXY座標は、第一の軸芯体の中心軸のXY座標と同じ位置にあると仮定できる。すなわち、図5(b)に示すように環状塗工ヘッドを−X方向にΔだけ移動させ、液状材料の吐出塗工を行えば、軸芯体の中心軸に対し液状材料層の偏肉が無い弾性ローラの製造が可能となる。
【0038】
具体的には、第二の軸芯体の中心軸の半径25μmの範囲内に、液状材料層の中心位置を重ねるように環状塗工ヘッドの位置を調整することが好ましい。さらには、半径10μmの範囲内に調整することがより好ましい。液状材料層の中心位置と、軸芯体の中心軸との距離が25μmより大きい場合、軸芯体に対して液状材料層の偏肉が大きくなり弾性ローラとして振れ精度の悪化につながる。液状材料層の中心位置と、軸芯体の中心軸との距離を10μm以下とすることで軸芯体に対する液状材料層の偏肉が極めて減少し、弾性ローラとしての振れ精度が著しく向上する。
【0039】
この調整量の決定は、液状材料層の塗工後に液状材料層の位置を測定する工程を1本行い、その結果を元に決定してもよい。例えばn(nは正の整数)本目の弾性ローラについて工程1Cを行って液状材料層の中心位置を求め、この液状材料層中心位置と、n+1本目の第二の軸芯体の中心軸位置とを用いてn+1本目の弾性ローラ製造のための上記調整量を決めることができる。ここではn本目の弾性ローラが第一の弾性ローラであり、n+1本目の弾性ローラが第二の弾性ローラである。続いて、n+1本目の弾性ローラを第一の弾性ローラとし、n+2本目の弾性ローラを第二の弾性ローラとして、順次複数のローラを製造することができる。
【0040】
あるいは、測定のための成形工程を複数本行って調整量を決定してもよい。すなわち複数の第一の弾性ローラを製造するために工程1A、1Bおよび1Cを複数回繰り返して行う。そして複数回の工程1Cで得られた液状材料層の水平面における中心位置座標(XY座標)の平均値に基づいて調整量を決定してもよい。例えばn本目からn+4本目までの弾性ローラについてそれぞれ工程1Cを行い、測定した5つの液状材料層の中心位置の平均値を求めておく。そして、n+5本目からn+9本目までの弾性ローラの製造にあたっては、それぞれの軸芯体の中心軸位置と前記平均値とを用いて上記調整量を決めることができる。
【0041】
さらには、もしくは移動平均して決定してもよい。例えば、n+5本目の弾性ローラ製造にあたっては、その軸芯体中心軸の水平面における位置座標(XY座標)と、n本目からn+4本目までの弾性ローラについての液状材料層の水平面における中心位置座標(XY座標)の平均値とを用いて上記調整量を決める。そしてn+6本目の弾性ローラ製造にあたっては、その軸芯体中心軸の水平面における位置座標(XY座標)と、n+1本目からn+5本目までの弾性ローラについての液状材料層の中心位置座標(XY座標)の平均値とを用いて上記調整量を決めることができる。
【0042】
なお、上記のように、第一の弾性ローラ、第二の弾性ローラという表現は、製造する順番の前後関係を表し、第二の弾性ローラを製造するにあたって、第一の弾性ローラに係る測定値を用いることを表すために便宜上用いている。第二の弾性ローラは、後に、第一の弾性ローラになりうるものである。
【0043】
〔工程2C)第二の軸芯体の外周面に環状塗工ヘッドを用いて液状材料を塗工して液状材料層を形成する工程(第二の弾性ローラ)〕
環状塗工ヘッドから液状材料を吐出させ、保持されている軸芯体101を鉛直方向(軸芯体の中心軸方向)に上方へ移動させることで、軸芯体101の外周上に液状材料からなる円筒形状(ローラ形状)の層102が塗工される。そして、リングコート機から軸芯体を取り外すことで弾性ローラ(液状材料層は未硬化)が得られる。
【0044】
このようにして、以下の工程を繰り返す。
・基準(この場合は軸芯体上保持軸)に対する環状塗工ヘッドの位置を予め測定する工程。
・軸芯体の相異なる2点それぞれの水平面における中心位置から中心軸を算出し決定する工程。
・軸芯体中心軸の倒れ補正工程。
・液状材料塗工後の液状材料層の水平面における中心位置の測定工程。
・液状材料層の水平面における中心位置座標(XY座標)を基にした環状塗工ヘッドの位置調整工程。
【0045】
そうすることで、液状材料層の厚み精度を良くすることができ、振れの小さい弾性ローラを安定的に連続して製造することができる。すなわち、本発明に係わる製造方法は、軸芯体の中心軸を環状塗工ヘッドの中心位置と同心に合わせるのではなく、軸芯体の中心軸に液状材料層の中心位置を重ねるように塗工することで振れの小さい弾性ローラを安定的に連続して製造することができる。
【0046】
〔弾性層厚さ〕
なお、液状材料層を硬化して得られた弾性層の層厚は0.5mm以上10.0mm以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、2.0mm以上6.0mm以下である。
【0047】
リングコート機としては、特許文献3にて開示されているように、環状塗工ヘッドが横方向に移動させるもの(横型)があり、液状材料層の均一性が十分に得られる。弾性層の厚みが2.0mm以下となるように液状材料を塗工する場合、横型のリングコート機でも有用である。しかしながら、電子写真方式の画像形成装置に用いられる弾性ローラでは弾性層の厚みが2.0mm以上であることが多い。弾性ローラは、他部材と接触した状態で回転しており、接触状態を安定に保つ必要があるからである。弾性層の層厚を2.0mm以上となるように横型のリングコート機を用いて液状材料を塗布すると、液状材料の自重により重力方向に垂れが生じ、弾性層の厚みのばらつきが大きくなり、振れが大きくなる傾向がある。したがって、電子写真方式の画像形成装置に用いられる弾性ローラを製造するためには、上記するような縦型のリングコート機を用いることが好ましい。
【0048】
弾性層の層厚が0.5mm以上であると、例えば現像ローラの場合、弾性層の弾性が優れたものになり、現像剤へのストレスを低減させることが容易である。また、弾性層の層厚が10.0mm以下となるように液状材料を塗工すると、縦型リングコート機において液状材料の自重により重力方向に垂れが生じることを防止することが容易で、優れた外径寸法や振れを実現することが容易である。
【0049】
〔振れ〕
弾性ローラとして好ましく使用できる振れは、弾性ローラを適用する装置のグレードや耐久性にもよるが、60μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。振れを上記範囲、特には30μm以下とすることにより、他部材に与える応力に偏りが生じてストレスが大きな部分の磨耗や劣化を早める原因となることを防止できる。また、電荷や現像剤の供給バランスがくずれることによる画像弊害、特には濃度ムラなどが生じる原因となることを防止できる。
【0050】
〔液状材料〕
降伏応力が20Pa以上600Pa以下である非ニュートン性液状材料を液状材料として用いることが、塗工厚みを100μm以上とした場合でも寸法精度の良好な塗膜形成物が得られるため、好ましい。
【0051】
降伏応力(しばしば降伏点と呼ばれる)とは、それ以下では試料が固体として振舞う限界応力のことである。応力により試料はバネのように弾性的に変形するが、この応力が取り除かれると変形は元に戻る。降伏応力を超えると、凝集フィラーによって形成されていた3次元網目構造の構造破壊が生じ、試料は流動を開始する。
【0052】
すなわち、塗膜の厚みが大きくなるにつれて材料にかかる重力は大きくなり、重力方向に材料が流れやすくなる。流れを生じさせないためには、重力に対して充分な降伏応力を持つことが望まれる。塗膜の厚みに対して充分な降伏応力を持つことにより、形状が安定し寸法精度の良い成形物を得ることが出来る。
【0053】
降伏応力のより好ましい範囲は、100Pa以上400Pa以下である。降伏応力が20Pa以上600Pa以下の範囲にある場合、塗工厚みに対する寸法精度を維持し、塗工面の平滑さとのバランスを優れた状態で、両立することができる
降伏応力が600Pa以下の場合には、塗工時における材料のレベリング作用効果が優れ、塗工後の表面にスジが発生したり凹凸ができたりすることを防止することが容易である。20Pa以上の場合には、重力に対して優れた降伏応力が得られ塗膜形成後の形状を保持することが容易で、加熱硬化後の弾性ロールの塗工厚みに対する外径寸法差が大きくなることを防止することが容易である。
【0054】
〔液状材料層を硬化させて弾性層を形成する硬化工程〕
次に、軸芯体の外周面に形成された未硬化の塗布液(液状材料層102)は、硬化され弾性層となり、弾性ローラが製造される。この際、円筒形状(ローラ形状)の未硬化の塗布液は、粘着性を有しているため、熱処理する方法としては非接触の熱処理方法で行うことが好ましい。
【0055】
その熱処理方法としては、赤外線加熱方法、熱風加熱方法、ニクロム熱加熱方法等が挙げられる。特に、装置が簡易で、未硬化物の層を軸方向に均一に熱処理できる赤外線加熱が好ましい。この時、赤外線加熱装置を固定し、円筒形状(ローラ形状)の未硬化物層を設けた軸芯体を周方向に回転させることにより、周方向に均一に熱処理を行うことができる。塗布液表面の熱処理温度としては、使用する液状材料にもよるが、硬化反応が開始する温度、例えば付加反応架橋型液状シリコーンゴムの場合は100〜250℃が好ましい。例えば、赤外線加熱を行う場合には材料の特性(熱伝導率、比熱等)に応じて赤外線加熱装置と未硬化の塗布液の層との距離、出力等を調整すれば良い。また、熱風加熱を行う場合には熱風の温度や向きを調節すれば良い。
【0056】
ここで、液状材料層の硬化後の物性安定化、液状材料層中の反応残渣および未反応低分子分を除去する等を目的として、硬化させて形成した弾性層に更に熱処理による二次硬化を行わせても良い。
【0057】
〔現像ローラ〕
本発明により得られる弾性ローラは現像ローラとして使用することができる。その一例の概略図を図6に示す。図6(a)はこの現像ローラの長手方向に平行な断面を表したものであり、図6(b)は長手方向に垂直な断面を表したものである。
【0058】
現像ローラの軸芯体101としては、その材料は公知の導電性材料、例えば炭素鋼、合金鋼及び鋳鉄又は導電性樹脂の中から、適宜選択して用いることが出来る。ここで、合金鋼としては、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブテン鋼、クロム鋼、クロムモリブテン鋼、Al、Cr、Mo及びVを添加した窒化用鋼が挙げられる。強度の観点から、金属製のものが好ましい。
【0059】
軸芯体の外径は適宜決めることができるが、通常4mm〜20mmの範囲にする。
【0060】
さらに防錆対策として軸芯体材料にめっき、酸化処理を施すことができる。めっきの種類としては電気めっき、無電解めっきなどいずれも使用することが出来るが、寸法安定性の観点から無電解めっきが好ましい。ここで使用される無電解めっきの種類としては、ニッケルめっき、銅めっき、金めっき、カニゼンめっき、その他各種合金めっきがある。ニッケルめっきの種類としては、Ni−P、Ni−B、Ni−W−P、Ni−P−PTFE複合めっきがある。膜厚みはそれぞれ0.05μm以上であれば好ましいが、より好ましくは0.1μm〜30μmである。
【0061】
また、現像ローラは感光体、現像ブレード、トナー等と圧接している。このため、これらの部材に与えるダメージを小さくするために硬度が小さく、圧縮永久歪みが小さい材料で構成されることが、良好な画像を得るためには重要である。また、現像ローラは表面が耐磨耗性などを有し、耐久性が高いことが望ましい。このため、現像ローラは軸芯体101の周囲に弾性層102を有した構成となっている。なお、図中、未硬化の弾性層(液状材料層)と弾性層(液状材料層が硬化したもの)の両者を含めて符号102で表す。
【0062】
このとき、弾性層102の硬度は上記の理由からAsker C硬度10〜80度であることが望ましい。弾性層の硬度が10度以上であると、長期停止の際、弾性ローラと上記当接部材との当接部分に永久ひずみによる変形が起こることを防止し、濃度ムラなどの画像弊害の原因となることを防止することが容易である。また、弾性層の硬度が80度以下であれば、接触現像時に繰り返しトナーに高い圧力がかかってトナーに流動性を付与する外添剤のトナーへの埋没や分離が起こることを防止することが容易である。またトナー残量が減少するにつれトナーの弾性ローラへの固着や所謂フィルミングにより出力画像の画質が悪くなることを防止することが容易である。
【0063】
また、弾性層102は1層である必要はなく、多層になっていても構わない。
【0064】
弾性層102形成に用いられる液状材料としては、液状ジエンゴム(ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム等)、液状シリコーンゴム、液状ウレタンゴムが挙げられる。これらの材料は単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。これらの材料の発泡させた発泡体を弾性層に用いても良い。中でも、弾性層には適度に低硬度であり良好な変形回復力を持たせることが望まれるため、弾性層に用いられる材料としては液状シリコーンゴムまたは液状ウレタンゴムを用いることが好ましい。特に加工性が良好で寸法精度の安定性が高く、硬化反応時に反応副生成物が発生しないなどの生産性に優れる理由から、付加反応架橋型液状シリコーンゴムを用いることがより好ましい。
【0065】
また、耐磨耗性などを高めるために、弾性層102の外周面に表面層103が形成される場合もある。表面層も弾性層と同様に1層である必要はなく、多層になっていても構わない。
【0066】
例えば、表面層103を構成する材料は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、ボールミルの如きビーズを利用した従来公知の分散装置を使用して、分散させる。得られた表層形成用の分散体は、スプレー塗工法又はディッピング法等により弾性層の表面に塗布される。
【0067】
表面層103の厚みとしては、5μm〜50μmが好ましい。低分子量成分がしみ出してきて感光体を汚染することを防止する観点から、また画像を繰り返して出力した場合に磨耗等による劣化により表面層の硬化が損なわれることを防止する観点から、5μm以上が好ましい。ローラが硬くなってトナーの劣化が早まったりトナー融着が発生することを防止する観点から50μm以下が好ましい。より好ましくは10μm〜30μmである。
【0068】
表面層の厚みの測定方法にはいくつかあるが、表面層を設けた弾性層の水平方向断面から、マイクロスコープや顕微鏡を用いて測定する方法が一般的である。
【0069】
本発明によれば、軸芯体外周面に高粘度材料からなる円筒形状(ローラ形状)の硬化物の層である弾性層が寸法精度良く設けられた弾性ローラを得ることができる。
【0070】
本発明によって得られる弾性ローラを現像ローラとして使用する際、現像ローラは、潜像を担持する潜像担持体としての感光体に対向して、当接または圧接した状態で現像剤(トナー)を担持する。そして、現像ローラは、感光体に現像剤としてのトナーを付与することにより潜像をトナー画像として可視化する機能を持つ。
【0071】
〔電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置〕
本発明によって得られる弾性ローラを現像ローラとして搭載することのできる電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置の一例を図7に模式図として示した。この図7により以下説明する。
【0072】
なお、本画像形成装置には、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックのトナー画像を形成する画像形成ユニット10a〜10d(合計4個)がタンデム方式で設けられている。これら4個の画像形成ユニット10a〜10dは、感光体11、帯電装置12、画像露光装置(不図示)、現像装置14、クリーニング装置15、画像転写装置16の仕様が各色トナー特性に応じて少し調整に差異があるものの、基本的構成においては同じである。なお、図には帯電装置として帯電ローラが、画像転写装置として転写ローラが示され、また画像露光装置からの書き込みビーム13が示される。また、感光体11、帯電装置12、現像装置14及びクリーニング装置15が一体となり、プロセスカートリッジを形成している。なお、プロセスカートリッジとしては、現像装置14からなる現像カートリッジタイプなどがある。
【0073】
現像装置14は、一成分系トナー5を収容した現像容器6と、現像容器6内の長手方向に延在する開口部に位置し、感光体11と対向設置された現像ローラ1とを備え、感光体11上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。さらに、現像ローラ1に一成分系トナー5を供給すると共に現像に使用されずに現像ローラ1に担持されている一成分系トナー5を現像ローラ1から掻き取るトナー供給ローラ7が設けられている。また現像ローラ1上の一成分系トナー5の担持量を規制すると共に摩擦帯電する現像ブレード8が設けられている。
【0074】
感光体11の表面が帯電装置12により所定の極性・電位に一様に帯電され、画像情報が画像露光装置からビーム13として、帯電された感光体11の表面に照射され、静電潜像が形成される。次いで、形成された静電潜像上に、本発明によって得られる弾性ローラを現像ローラ1とする現像装置14から一成分系トナーが供給され、感光体11表面にトナー画像が形成される。このトナー画像は感光体11の回転に伴って、画像転写装置16と対向する場所に来たときにその回転と同期して供給されてきた紙等の転写材25に転写される。
【0075】
なお、ここでは4つの画像形成ユニット10a〜10dが一連に連動して所定の色画像を1つの転写材25上に重ねて形成している。したがって、転写材25をそれぞれの画像形成ユニットの画像形成と同期させる、すなわち、画像形成が転写材25の挿入と同期している。そのために、転写材25を輸送するための転写搬送ベルト17が感光体11と画像転写装置16との間に挟まれるように、転写搬送ベルト17の駆動ローラ18、テンションローラ19及び従動ローラ20に架けまわされる。そして、転写材25は転写搬送ベルト17に吸着ローラ21の働きにより静電的に吸着された形で搬送されている。なお、22は転写材25を供給するための供給ローラである。
【0076】
画像が形成された転写材25は、転写搬送ベルト17から剥離装置23の働きにより剥がされ、定着装置24に送られ、トナー画像は転写材25に定着されて、印画が完了する。一方、トナー画像の転写材25への転写が終わった感光体11はさらに回転して、クリーニング装置15により表面がクリーニングされ、必要により除電装置(不図示)によって除電される。その後感光体11は次の画像形成に供される。なお、26、27はそれぞれ画像転写装置16、吸着ローラ21へのバイアス電源を示す。
【0077】
なお、ここでは、タンデム型の転写材上へ直接各色のトナー画像を転写する装置で説明した。しかし、現像ローラとして本発明によって得られる弾性ローラを使用できる装置はこの限りではない。例えば、白黒の単色画像形成装置、転写ローラや転写ベルトに一旦各色のトナー画像を重ねてカラー画像を形成し、それを転写部材へ一括して転写する画像形成装置が挙げられる。また、各色の現像ユニットがロータ上に配置されたり、感光体に並列して配置されたりした画像形成装置等が挙げられる。また、プロセスカートリッジではなく、感光体、帯電装置、現像装置等が直接画像形成装置に組み込まれていても構わない。
【0078】
本発明によって得られる弾性ローラは、上記した現像ローラとしてばかりでなく、その弾性層の均一性が良好であることから、帯電ローラ又は、転写ローラの如き導電性が必要なローラの用途にも使用可能である。
【実施例】
【0079】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。まず、実施例において行った各種評価および測定方法について説明する。
【0080】
(画像評価)
電子写真プロセスカートリッジに、各例において作成したローラを各色それぞれについて現像ローラもしくは帯電ローラとして組み込んだ。このカートリッジは像担持体である感光体を一様に帯電させ、感光体への選択的な露光により潜像を形成し、潜像を現像剤であるトナーで顕在化し、トナー画像を記録媒体に転写し、転写後の感光体上の残トナーをクリーニングする各手段が一体化されたものである。その仕様は、公称寿命6000枚、A4サイズ、5%印字率、hp社製、商品名:プリントカートリッジ黒・プリントカートリッジシアン・プリントカートリッジマゼンタ・プリントカートリッジイエローである。
【0081】
次にこの電子写真プロセスカートリッジを電子写真方式の画像形成装置(商品名:Color Laserjet 3700、hp社製、印刷解像度600dpi)に組み込んだ。そして、この画像形成装置を用いて、画像(ベタ画像、ハーフトーン画像)を出力し、濃度ムラ(ローラピッチ)を以下のように評価した。
A:目視にて全画像において良好な場合。
B:ベタ、ハーフトーンにて濃度ムラが若干確認されるが、実用上問題ない場合。
C:全画像において濃度ムラが確認された場合。
【0082】
(振れ精度測定)
振れの値は次のようにして求めることができる。図10に示すように、基準となる定盤201上に垂直に取り付けられた軸芯体支持部材202に、弾性ローラの軸芯体101の露出部分を把持させ、把持部分を支点としてローラを8rpmで回転させる。このときのローラの弾性層102と定盤間の距離の変動を、軸芯体と垂直に配置した非接触位置検出器(キーエンス社製。商品名:LS−5000)で測定する。弾性層と定盤間の距離の最大値と最小値の差を値として求める。弾性層の軸方向に1cmピッチで弾性層と定盤間の距離の最大値と最小値の差を求め、その差の値の中で最大の値を弾性層の振れの値とする。
【0083】
(降伏応力測定)
粘弾性測定装置による液状材料の降伏応力測定法を以下に記す。
【0084】
粘弾性測定装置にはHaake社製RheoStress600(商品名)を用いた。
【0085】
材料約1gを採取し試料台の上にのせ、コーンプレートを徐々に近づけて、試料台から約50μmの位置で測定ギャップを設定した(コーンプレートには直径35mm、傾斜角度1°のものを用いた)。そのとき、まわりに押し出された材料を奇麗に除去し測定に影響の出ないようにした。
【0086】
材料温度が25℃になるようにプレート台の温度は設定され、試料をセットしてから10分間放置後、測定を開始した。
【0087】
試料にかける応力は0.00Paからスタートし50000.00Paまでの範囲(周波数は1Hz)を、180秒かけて変動させ、そのときの貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”、位相差tanδの変化を32ポイント測定した。G’ははじめ線形粘弾性領域で一定の値となり、その後貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”が交差する点の応力値を読み取り、降伏応力とした。
【0088】
(弾性層厚み測定法)
ローラの側面から垂直に鋭利な刃物を弾性層に投入して軸心体まで到達させて、断面観察できるような試料とする。図11(a)は弾性ローラにおける試料の採取位置を示した模式図である。図11(b)は採取した試料の切断面を模式的に示した図である。
【0089】
図11(a)に示すように、ローラ長手方向のゴム部を4等分する3箇所1101、1102および1103の試料を採取し、図11(b)に示すようにビデオマイクロ(キーエンス社製、商品名:VHX100)で厚みを測定する。そして、3個のデータからの平均値を用いて弾性層厚みとした。
【0090】
〔実施例1〕
弾性ローラを製造するにあたり、軸芯体としては外径6mmの丸棒状鉄製軸芯体にニッケルメッキを施し、さらに厚み約1μmのプライマーDY35−051(商品名:東レダウコーニング社製)を塗布後、温度150℃で30分間焼き付けしたものを用いた。
【0091】
(弾性層形成用の液状材料(シリコーンゴム組成物)の調製)
液状の付加反応架橋型分子鎖両末端ビニル基封鎖ジメチルポリシロキサン(分子量Mw=10万):80質量部。
カーボンブラック(電気化学工業製、商品名:デンカブラック粉状):7質量部。
シリカ(日本アエロジル製、商品名:AEROSIL50):13質量部。
【0092】
上記材料を、プラネタリーミキサーを用いて30分間混合脱泡し、降伏応力210〔Pa〕の液状のシリコーンゴムベース材料を得た。さらにこのベース材料100質量部に対して、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(白金含有量3質量%)0.02質量部を加えて混合し混合物Aとした。また混合物Aに、混合物A中の上記ベース材料100質量部に対して1.5質量部の、粘度10cps(0.01Pa・s)のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(SiH含有量1質量%)を加えて混合し混合物Bとした。混合物Aと混合物Bをそれぞれ、原料タンクにセットし、圧送ポンプを使用してスタティックミキサーに送り出し混合物Aと混合物Bを1:1の質量比率で混合した。このシリコーンゴム混合液を弾性層形成用の液状材料とした。
【0093】
(弾性ローラ作成の前準備)
図1に示した構成を有する、環状塗工ヘッドを有する縦型リングコート機を用いた。弾性ローラを製造するにあたり、軸芯体上保持軸40の絶対位置座標を基準とした環状塗工ヘッド38の水平面における中心位置座標(XY座標)を求めた。まず、軸芯体上保持軸40の水平面における絶対位置座標(XY座標)を位置検出器48により測定する。その後、軸芯体上保持軸40を環状塗工ヘッド38の上部に立てられているピンとの距離を測定できる位置に固定した。その後、非接触式LED位置検出器48(キーエンス社製、商品名:LS−7000)により軸芯体上保持軸とピンとの間隔を計測した。そして、図2に示すW1、W2、W1’およびW2’が、W1=W2、W1’=W2’となるように環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46を調整した。これにより、軸芯体上保持軸を基準とした環状塗工ヘッドの水平面における中心位置座標(XY座標)を相対的に求めた。
【0094】
その後、軸芯体下保持軸の水平面における中心位置座標(XY座標)も位置検出器により測定し、軸芯体上保持軸と軸芯体下保持軸が鉛直になるように軸芯体位置補正XYステージ47により調整した。
【0095】
(弾性ローラの作成)
軸芯体下保持軸39の上端を、環状塗工ヘッド38の中を通って環状塗工ヘッドより上に位置させた。この状態で、軸芯体下保持軸39にセットされた長さ280mm、外径6mmの鉄製軸芯体を、軸芯体上保持軸40を下降させることで、上下軸方向に把持した。その後、LMガイドで把持した軸芯体を下降させた。このときに、位置検出器48で、軸芯体上保持軸側の軸芯体端部からの長手方向距離14mmと266mmの2箇所それぞれの水平面における中心位置座標(XY座標)を検出した。なお、これら2箇所の間隔は軸芯体全長の90%である。これら2点の中心位置座標を結んだ直線を軸芯体の中心軸とした。
【0096】
軸芯体の相異なる2点の中心位置座標が互いに水平方向で合致するように(すなわち、軸芯体の中心軸が鉛直方向となるように)軸芯体下保持軸39の位置座標を軸芯体位置補正XYステージ47により、補正した(軸芯体の倒れ補正)。
【0097】
その後、軸芯体上保持軸および下保持軸を鉛直方向に上昇(60mm/sec)させて軸芯体を移動させた。それに合わせて、環状塗工ヘッドの内側に開口した環状スリットから、上記弾性層形成用の液状材料を5.04ml/secで吐出し、軸芯体の外周面に塗工長240mmのシリコーンゴム材料からなる円筒形状(ローラ形状)に液状材料層を形成した。その時、位置検出器により液状材料層の水平面における中心位置座標(XY座標)を測定した。
【0098】
リングコート機から軸芯体を取り外し、未硬化の液状材料層を有するローラ(以下、未硬化のローラ)を1本作成した。ここで、軸芯体上保持軸は内部にプランジャー50を内包しており、軸芯体を把持している時は図8(b)のような状態なある。軸芯体外周面に未硬化の液状材料層を設けたあと赤外線加熱に搬送する直前に、軸芯体上保持軸内に内包されていたプランジャーが下降し、軸芯体を直立に維持しつつ軸芯体上保持軸が上方へ移動する(図8(aおよびc))。プランジャーにより直立を維持された軸芯体の上端部を図9に示すような把持搬送手段により把持させ、プランジャーを軸芯体上保持軸内に収納した後、未硬化の液状材料層を加熱硬化させるための赤外線加熱機に搬送した。ここで、図9に示す把持搬送手段は、電磁石51と切欠き形状を有する電磁石ヨーク52から成り、電磁石51の電源のオンにより電磁石ヨーク52に設けられた切欠き部に磁力が発生し、軸芯体を把持可能となっている。
【0099】
その後、2本目の軸芯体について、1本目と同様にして補正した。
【0100】
その後、軸芯体中心軸と1本目に測定した液状材料層中心(XY座標)の距離が5μmとなるように環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46により、環状塗工ヘッド38の位置を補正した。その後、1本目と同様に未硬化のローラを作成した。2本目の未硬化のローラも1本目と同様の手段を用いて赤外線加熱機に搬送した。
【0101】
3本目も軸芯体の倒れ補正工程を経た後2本目の液状材料層の中心位置を基に同様の補正を行い、未硬化のローラを作成した。3本目の未硬化のローラも1本目と同様の手段を用いて赤外線加熱機に搬送した。
【0102】
これら未硬化のローラの液状材料層を加熱硬化させる赤外線加熱機について説明する。赤外線加熱機は軸芯体を中心として60rpmで回転させ、その未硬化の成形物層(液状材料層)表面に、株式会社ハイベック社製の赤外線加熱ランプ「HYL25」(商品名)で赤外線(出力1000W)を4分間照射し、加熱硬化させる。なお、赤外線照射時の成形物層表面とランプの距離は60mmであり、成形物層表面の温度は200℃であった。
【0103】
その後、硬化したシリコーンゴムの弾性層の物性を安定させ、シリコーンゴムの弾性層中の反応残渣および未反応低分子分を除去する等を目的として、電気炉で200℃、4時間の二次硬化を行った。そうして、軸芯体の外周上に層厚3.0mmのシリコーン層を有する弾性ローラを得た。
【0104】
上記弾性ローラの製造工程を繰り返し、弾性ローラを2本目以降の1000本作製した。
【0105】
この弾性ローラ1000本の振れの分布を表2に示す。表2には、表2に示されるの各振れ範囲に該当する弾性ローラの本数を示してある。
【0106】
弾性ローラの振れ30μm以下が100%で、繰返し再現性も良かった。軸芯体の中心軸に沿った塗工を行え、また、軸芯体中心軸と振れ測定機におけるローラの回転軸とのずれが小さく、安定して弾性ローラを製造できた。
【0107】
(現像ローラの作製)
ポリウレタンポリオールプレポリマー「タケラックTE5060」(商品名、三井武田ケミカル株式会社製)100質量部。
イソシアネート「コロネート2521」(商品名、日本ポリウレタン株式会社製)77質量部。
カーボンブラック「MA100」(商品名、三菱化学株式会社製)24質量部。
【0108】
上記材料にMEK(メチルエチルケトン)を加え、サンドミルで1時間分散した。分散後さらにMEKを加えて固形分20質量%から30質量%の範囲で塗布乾燥後の膜厚が20μmとなるように調整して、表面層用塗料を得た。
【0109】
この塗料中に、1000本作製した弾性ローラのうち、一番振れが大きい弾性ローラ(振れ25μm)を浸漬して、塗料膜を形成した後、自然乾燥させた。次いで、140℃にて60分間加熱処理して、塗料膜を硬化し、表面層が形成された現像ローラNo.1を得た。
【0110】
(画像評価)
作成した現像ローラNo.1(弾性層の振れ25μm)を現像ローラとして前記電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0111】
〔実施例2〕
軸芯体の中心軸位置算出のための軸芯体の相異なる2点の水平面における中心位置座標(XY座標)測定の際、測定個所を軸芯体上保持軸側の軸芯体端部からの距離70mmと210mm(2箇所の間隔は軸芯体全長の50%)の2箇所で行った。これ以外は実施例1と同様にして、弾性ローラを2本目以降の1000本を作製した。
【0112】
この弾性ローラ1000本の振れの分布を表2に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が100%であった。軸芯体の中心軸に沿った塗工を行え、また、軸芯体中心軸と振れ測定機におけるローラの回転軸とのずれが小さかったため、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0113】
ここで得られた1000本の弾性ローラのうち一番振れが大きい弾性ローラを用いたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラNo.2(弾性層の振れ30μm)を得、画像評価した。結果を表2に示す。
【0114】
〔実施例3〕
軸芯体中心軸の水平面における中心位置座標(XY座標)と液状材料層の水平面における中心位置座標(XY座標)の距離を15μmとした以外は実施例1と同様にして、弾性ローラを1000本同様に作製した。
【0115】
この弾性ローラ1000本の振れの分布を表2に示す。弾性ローラの振れ50μm以下が100%だった。軸芯体の中心軸に沿った塗工を行えた。また、軸芯体中心軸の水平面における中心位置と液状材料層の水平面における中心位置の距離は小さかった。そして軸芯体中心軸と振れ測定機におけるローラの回転軸とのずれも小さかった。そのため、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0116】
ここで得られた1000本の弾性ローラのうち一番振れが大きい弾性ローラを用いたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラNo.3(弾性層の振れ47μm)を得、画像評価した。結果を表2に示す。
【0117】
〔実施例4〕
軸芯体中心軸の水平面における中心位置と液状材料層の水平面における中心位置の距離を25μmとした。それ以外は実施例1と同様にして、弾性ローラを1000本同様に作製した。
【0118】
この弾性ローラ1000本の振れの分布を表2に示す。弾性ローラの振れ90μm以下が100%だった。軸芯体の中心軸に沿った塗工を行えた。また、軸芯体中心軸の水平面における中心位置と液状材料層の水平面における中心位置の距離は小さかった。また軸芯体中心軸と振れ測定機におけるローラの回転軸とのずれも小さかった。そのため、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0119】
ここで得られた1000本の弾性ローラのうち一番振れが大きい弾性ローラを用いたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラNo.4(弾性層の振れ60μm)を得、画像評価した。結果を表2に示す。
【0120】
〔実施例5〕
環状塗工ヘッド38の位置補正工程を行わず未硬化のローラを5本製造した。環状塗工ヘッド38の位置補正量を、前記5本の未硬化のローラの液状材料層の中心位置の平均を用いて算出した。その後、環状塗工ヘッド38の位置補正量を元に6本目以降の5本の未硬化のローラを製造した。これ以降、環状塗工ヘッド38の位置補正工程を5本ごとに行った。上記工程を繰り返し、6本目以降の弾性ローラを1000本作製した。
【0121】
この弾性ローラ1000本の振れの分布を表2に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が100%であった。軸芯体の中心軸に沿った塗工を行えた。また、軸芯体中心軸の水平面における中心位置と液状材料層の水平面における中心位置の距離は小さかった。また、軸芯体中心軸と振れ測定機におけるローラの回転軸とのずれも小さかった。そして、経時による塗工ヘッド位置のずれを5本ごとに修正しながら塗工できた。そのため、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0122】
ここで得られた1000本の弾性ローラのうち一番振れが大きい弾性ローラを用いたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラNo.5(弾性層の振れ30μm)を得、画像評価した。結果を表2に示す。
【0123】
〔実施例6〕
軸芯体の相異なる2点の中心位置座標(XY座標)が互いに水平方向で合致するようにする工程(軸芯体の倒れ補正)を行わなかった。それ以外は実施例1と同様にして、弾性ローラを1000本同様に作製した。
【0124】
この弾性ローラ1000本の振れの分布を表2に示す。弾性ローラの振れ50μm以下が100%で、30μm以下が83%であった。実施例1と比べれば振れの小さいローラを安定して製造しづらかった。
【0125】
ここで得られた1000本の弾性ローラのうち一番振れが大きい弾性ローラを用いたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラNo.6(弾性層の振れ50μm)を得、画像評価した。結果を表2に示す。
【0126】
〔実施例7〕
環状塗工ヘッド38の位置補正を行わず未硬化のローラを100本製造した。その後、101本目のローラを製造するために用いる環状塗工ヘッド38の位置補正量をそれまでの100本の液状材料層の水平面における中心位置座標(XY座標)の平均を用いて算出し、101本目のローラを製造した。102本目は2本目から101本目までの100本の液状材料層の水平面における中心位置座標(XY座標)の平均から算出するように、1本ずつ移動平均して位置補正量を決定した。これ以外は実施例1と同様にして、弾性ローラを101本目以降の1000本を作製した。
【0127】
この弾性ローラ1000本の振れの分布を表2に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が100%であった。軸芯体の中心軸に沿った塗工を行えた。また、軸芯体中心軸の水平面における中心位置と液状材料層の水平面における中心位置の距離が小さかった。また軸芯体中心軸と振れ測定機におけるローラの回転軸とのずれが小さかった。また経時による塗工ヘッド位置のずれを修正しながら塗工できた。そのため、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0128】
ここで得られた1000本の弾性ローラのうち一番振れが大きい弾性ローラを用いたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラNo.7(弾性層の振れ24μm)を得、画像評価した。結果を表2に示す。
【0129】
〔実施例8〕
環状塗工ヘッドの内側に開口した環状スリットから、シリコーンゴム材料を2.98ml/secで吐出し、軸芯体の外周上に層厚2.0mmのシリコーン層を有する弾性ローラを得たこと以外は実施例1と同様にして、弾性ローラを1000本同様に作製した。
【0130】
この弾性ローラ1000本の振れの分布を表2に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が100%であった。軸芯体の中心軸に沿った塗工を行えた。また、軸芯体中心軸の水平面における中心位置と液状材料層の水平面における中心位置の距離が小さかった。また軸芯体中心軸と振れ測定機におけるローラの回転軸とのずれが小さかった。そのため、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0131】
ここで得られた1000本の弾性ローラのうち一番振れが大きい弾性ローラを用いたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラNo.8(弾性層の振れ28μm)を得、画像評価した。結果を表2に示す。
【0132】
〔実施例9〕
液状の付加反応架橋型分子鎖両末端ビニル基封鎖ジメチルポリシロキサン(分子量Mw=10万):80質量部。
カーボンブラック(電気化学工業製、商品名:デンカブラック粉状):5質量部。
石英(Pennsilvania Glass Sand製:商品名:Min−Usil):15質量部。
【0133】
上記材料をプラネタリーミキサーを用いて30分間混合脱泡し、降伏応力20〔Pa〕の液状のシリコーンゴムベース材料を得た。
【0134】
環状塗工ヘッドの内側に開口した環状スリットから上記材料を0.60ml/secで吐出し、軸芯体の外周上に層厚0.5mmのシリコーン層を有する弾性ローラを得た。
【0135】
上記以外は実施例1と同様にして、弾性ローラを1000本同様に作製した。
【0136】
この弾性ローラ1000本の振れの分布を表2に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が100%であった。軸芯体の中心軸に沿った塗工を行えた。また、軸芯体中心軸の水平面における中心位置と液状材料層の水平面における中心位置の距離が小さかった。また軸芯体中心軸と振れ測定機におけるローラの回転軸とのずれが小さかった。そのため、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0137】
ここで得られた1000本の弾性ローラのうち一番振れが大きい弾性ローラを用いたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラNo.9(弾性層の振れ26μm)を得、画像評価した。結果を表2に示す。
【0138】
〔実施例10〕
液状の付加反応分子鎖両末端ビニル基封鎖ジメチルポリシロキサン(分子量Mw=10万):60質量部。
液状の付加反応分子鎖両末端ビニル基封鎖ジメチルポリシロキサン(分子量Mw=50万):30質量部。
カーボンブラック(三菱化学製、商品名:MA11):5質量部。
シリカ(日本アエロジル製、商品名:AEROSIL380):5質量部。
【0139】
上記材料をプラネタリーミキサーを用いて30分間混合脱泡し、降伏応力600〔Pa〕の液状のシリコーンゴムベース材料を得た。
【0140】
環状塗工ヘッドの内側に開口した環状スリットから上記材料を29.86ml/secで吐出し、軸芯体の外周上に層厚10.0mmのシリコーン層を有する弾性ローラを得た。
【0141】
上記以外は実施例1と同様にして、弾性ローラを1000本同様に作製した。
【0142】
この弾性ローラ1000本の振れの分布を表2に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が88.6%で、振れ50μm以下が100%であった。軸芯体の中心軸に沿った塗工を行えた。また、軸芯体中心軸の水平面における中心位置と液状材料層の水平面における中心位置の距離が小さかった。また軸芯体中心軸と振れ測定機におけるローラの回転軸とのずれが小さかった。そのため、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0143】
ここで得られた1000本の弾性ローラのうち一番振れが大きい弾性ローラを用いたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラNo.10(弾性層の振れ50μm)を得、画像評価した。結果を表2に示す。
【0144】
〔実施例11〕
液状の付加反応架橋型分子鎖両末端ビニル基封鎖ジメチルポリシロキサン(分子量Mw=10万):75質量部。
カーボンブラック(電気化学工業製、商品名:デンカブラック粉状):5質量部。
シリカ(日本シリカ工業製、商品名:Nipsil SS50):7質量部。
石英(Pennsilvania Glass Sand製、商品名:Min−Usil):13質量部。
【0145】
上記材料をプラネタリーミキサーを用いて30分間混合脱泡し、降伏応力15〔Pa〕の液状のシリコーンゴムベース材料を得た。
【0146】
環状塗工ヘッドの内側に開口した環状スリットから上記材料を0.36ml/secで吐出し、軸芯体の外周上に層厚0.3mmのシリコーン層を有する弾性ローラを得た。
【0147】
上記以外は実施例1と同様に弾性ローラを1000本同様に作製した。
【0148】
この弾性ローラ1000本の振れの分布を表2に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が100%で、振れ20μm以下が81%であった。繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0149】
ここで得られた1000本の弾性ローラのうち一番振れが大きい弾性ローラを用いたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラNo.11(弾性層の振れ23μm)を得、画像評価した。層厚が0.3mmであるため、画像を出力するにつれローラ上にスジ等の発生が見られ、画像がかさついたものとなった。しかし実用上問題の無い範囲であった。
【0150】
〔実施例12〕
液状の付加反応架橋型分子鎖両末端ビニル基封鎖ジメチルポリシロキサン(分子量Mw=50万):60質量部。
カーボンブラック(ケッチェンインターナショナル製、商品名:ケッチェンEC):20質量部。
シリカ(日本アエロジル製、商品名:AEROSIL380):20質量部。
【0151】
上記材料を、プラネタリーミキサーを用いて30分間混合脱泡し、降伏応力800〔Pa〕の液状のシリコーンゴムベース材料を得た。
【0152】
環状塗工ヘッドの内側に開口した環状スリットから上記材料を40.32ml/secで吐出し、軸芯体の外周上に層厚12.0mmのシリコーン層を有する弾性ローラを得た。
【0153】
上記以外は実施例1と同様に弾性ローラを1000本同様に作製した。
【0154】
この弾性ローラ1000本の振れの分布を表2に示す。弾性ローラの振れ50μm以下が91.5%で、振れ30μm以下が61%であった。液状材料層の層厚が12mmと厚いため、実施例1と比べて、液状材料の自重により重力方向に垂れが生じやすく振れの悪いローラができやすかった。また、液状材料の降伏応力が800Paと大きかったため、実施例1と比べて、塗工時における材料のレベリング作用効果が小さく、塗工後の表面にスジが発生したり凹凸ができたりするローラができやすく、振れの小さいローラを安定して製造しづらかった。
【0155】
ここで得られた1000本の弾性ローラのうち一番振れが大きい弾性ローラを用いたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラNo.12(弾性層の振れ68μm)を得、画像評価した。結果を表2に示す。
【0156】
〔実施例13〕
実施例1と同様に弾性ローラを1本目の弾性ローラから数えて1000本作製した。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表2に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が100%で、振れ20μm以下が72.3%であった。1本目のローラであっても振れは良かった。さらに2本目以降は軸芯体の中心軸に沿った塗工を行えた。また、軸芯体中心軸の水平面における中心位置と液状材料層の水平面における中心位置の距離が小さかった。また軸芯体中心軸と振れ測定機におけるローラの回転軸とのずれが小さかった。そのため、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0157】
また、実施例1と同様にして表面層を設け、帯電ローラNo.1(弾性層の振れ26μm)を得た。作成した帯電ローラ1を帯電ローラとして前述の電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0158】
〔比較例1〕
軸芯体の中心軸を垂直にする工程を行わなかったことと、軸芯体中心軸と液状材料層の中心位置の距離を30μmとした以外は実施例1と同様にして、弾性ローラを1000本同様に作製した。
【0159】
この弾性ローラ1000本の振れの分布を表2に示す。弾性ローラの振れ90μm以下が93.5%、50μm以下が23.8%で、30μm以下が8.4%であった。軸芯体中心軸の水平面における中心位置と液状材料層の水平面における中心位置の距離が離れていた。また軸芯体の中心軸に沿った塗工を行えなかった。そのため、振れの小さいローラを安定して製造しづらかった。
【0160】
ここで得られた1000本の弾性ローラのうち一番振れが大きい弾性ローラを用いたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラNo.13(弾性層の振れ100μm)を得、画像評価した。結果を表2に示す。
【0161】
〔比較例2〕
以下の工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを1000本作製した。
・軸芯体の中心軸算出のための軸芯体の測定工程。
・軸芯体の中心軸を鉛直方向に沿うようにする工程。
・液状材料層の中心位置算出のための測定工程。及び
・環状塗工ヘッドの位置補正工程。
【0162】
この弾性ローラ1000本の振れの分布を表2に示す。弾性ローラの振れ90μm以下が37.9%、50μm以下が0.8%で、30μm以下が0%であった。軸芯体の中心軸に沿った塗工を、軸芯体を変えるごとに行えなかったことと、振れ測定機におけるローラの回転軸に、液状材料層の中心位置が合うように(すなわち、均一に)液状材料を吐出できなかったため、振れの小さいローラを安定して製造しづらかった。
【0163】
ここで得られた1000本の弾性ローラのうち一番振れが大きい弾性ローラを用いたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラNo.14(弾性層の振れ120μm)を得、画像評価した。結果を表2に示す。
【0164】
上記実施例、比較例の各条件をまとめた表を表1に示す。
【0165】
【表1】

【0166】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明に用いることのできる塗工装置の例を示す模式図である。
【図2】基準に対する環状塗工ヘッド位置座標の求め方の一例を説明するための概略説明図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図である。
【図3】軸芯体中心軸座標の求め方の一例を説明するための模式図である。
【図4】軸芯体中心軸を直立させる工程を説明するための概略説明図である。
【図5】(a)および(b)は軸芯体中心軸と弾性層中心位置を一致させる工程を説明するための概略説明図である。
【図6】本発明によって得られる弾性ローラの例を示す模式図であり、(a)は弾性ローラ長手方向断面図、(b)は弾性ローラ軸方向断面図である。
【図7】画像形成装置の例を説明するための模式的断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、軸芯体上保持軸に内包されたプランジャーによって軸芯体の直立を維持する様子を説明するための概略説明図である。
【図9】プランジャーによって直立状態を維持された軸芯体を電磁石と切欠き形状を有する電磁石ヨークにより把持する様子を説明するための概略説明図である。
【図10】振れ測定に用いる振れ測定装置の概略説明図である。
【図11】弾性層厚さの測定位置を説明するための模式図であり、(a)は弾性ローラから資料を切り出す位置を示す正面図、(b)は切り出した試料の切断面を示す図である。
【符号の説明】
【0168】
1 現像ローラ
5 非磁性一成分トナー
6 現像容器
7 トナー供給ローラ
8 現像ブレード
10a〜d 画像形成ユニット
11 感光体
12 帯電装置(帯電ローラ)
13 画像露光装置からの書き込みビーム
14 現像装置
15 クリーニング装置
16 画像転写装置(転写ローラ)
17 転写搬送ベルト
18 駆動ローラ
19 テンションローラ
20 従動ローラ
21 吸着ローラ
22 供給ローラ
23 剥離装置
24 定着装置
25 転写材
26 バイアス電源(画像転写装置(転写ローラ)16用)
27 バイアス電源(吸着ローラ21用)
31 架台
32 コラム
33 ボールネジ
34 LMガイド
35 サーボモータ
36 プーリ
37 ブラケット
38 塗工ヘッド
39 軸芯体下保持軸
40 軸芯体上保持軸
41 供給口
42 配管
43 材料供給弁
44 リニアガイド
45 環状塗工ヘッド固定テーブル
46 環状塗工ヘッド位置補正XYステージ
47 軸芯体位置補正XYステージ
48 位置検出器
48−1 X方向位置検出器
48−2 Y方向位置検出器
49 ピン
50 プランジャー
51 電磁石
52 切欠き形状を有する電磁石ヨーク
101 軸芯体
102 弾性層
103 表面層
201 定盤
202 軸芯体支持部材
1101、1102、1103 弾性層厚さ測定個所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体の外周面に環状塗工ヘッドを用いて液状材料を塗工して液状材料層を形成する工程と該液状材料層を硬化させて弾性層を形成する硬化工程とを有する弾性ローラの製造方法を繰り返すことにより複数の弾性ローラを製造する弾性ローラの製造方法であって、
軸芯体の軸方向の相異なる2点の中心位置を測定し、該2点を結んだ直線を該軸芯体の中心軸としたとき、
第一の弾性ローラを製造するために、
1A)第一の軸芯体の中心軸の位置を測定する工程と、
1B)第一の軸芯体の外周面に環状塗工ヘッドを用いて液状材料を塗工して液状材料層を形成する工程と、
1C)工程1Bで形成した液状材料層が硬化する前に、液状材料層の中心位置を測定する工程と、
を有し、
工程1Bより後に、第二の弾性ローラを製造するために、
2A)第二の軸芯体の中心軸の位置を測定する工程と、
2B)第二の軸芯体の中心軸の位置と、工程1Cで求めた液状材料層の中心位置とに基づいて、第二の軸芯体の中心軸から半径25μmの範囲内に、工程2Cで形成する液状材料層の中心位置が重なるように、環状塗工ヘッドの位置を第二の軸芯体に対し相対的に調整する工程と、
2C)第二の軸芯体の外周面に環状塗工ヘッドを用いて液状材料を塗工して液状材料層を形成する工程と、
を有することを特徴とする弾性ローラの製造方法。
【請求項2】
複数の第一の弾性ローラを製造するために工程1A、1Bおよび1Cを複数回繰り返し、
工程2Bにおいて、工程1Cで求めた液状材料層の中心位置として、複数回の工程1Cで求めた液状材料層の中心位置の平均値を用いる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記軸芯体の軸方向の相異なる2点が、該軸芯体全長の50%以上の間隔を持つ請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程2Aの後、工程2Bの前に、
第二の軸芯体の相異なる2点の中心位置座標が互いに水平方向で合致するように第二の軸芯体の位置を調整する工程を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記液状材料の降伏応力が20Pa以上600Pa以下であり、前記弾性層の層厚が0.5mm以上10.0mm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の弾性ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−299100(P2008−299100A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145244(P2007−145244)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】