説明

弾性体外観検査方法

【課題】弾性体に生じた割れを検出することができる弾性体外観検査方法を提供する。
【解決手段】弾性体2に生じたひび割れは、弾性体2を変形する際に開口し、この開口状態で各カメラ52,53で取得された画像を用いて画像処理装置81によって割れの検出を行う。このため、通常時に閉鎖するひび割れであっても、その開口部を開口して天面13及び底面14に顕在化させることができる。これにより、変形状態で撮像した取得画像106では、ひび割れ102を目立たせることができるので、取得画像106を用いて画像解析する際には、ひび割れ102の検出が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性体に生じた割れを検査する弾性体外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴムベルトの側面を検査する際には、外観検査方法が採用されている(例えば、特許文献1。)。
【0003】
この外観検査方法を実施する外観検査装置は、ゴムベルトの側面に表出したカット糸等の異物を検査する画像処理装置と、ベルトに生じたクラックを検査するレーザー処理装置とを備えている。
【0004】
前記画像処理装置は、ゴムベルト側面の画像をカメラで取得して画像解析することで、ゴムベルト側面に存在するカーボンやカット糸、あるいは白色系のZuO、金属片や異物を検出してマークするように構成されている。
【0005】
また、前記レーザー処理装置は、ゴムベルト側面に投光されたレーザーの反射光を半導体位置検出素子(PSD)で受光し、該半導体位置検出素子からの変位データの変化からゴムベルト側面の凹凸を検出してマークするように構成されている。
【特許文献1】特開平6−050907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の外観検査装置にあっては、弾性体に表面に開口したクラックは検査できるが、ひび割れを検査することができないという問題点があった。
【0007】
すなわち、ゴムベルトなどの弾性体にひび割れが生じた場合、対向した縁部が密着することにより、ひび割れの開口部が閉鎖してしまう。
【0008】
このため、表面の凹凸を検出する前述したレーザー処理装置では、このひび割れを検出することができなかった。
【0009】
また、ひび割れは、開口部が閉鎖されてしまうため、その開口部を撮像することができず、前述した画像処理装置でも、ひび割れを検出することができなかった。
【0010】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、弾性体に生じた割れを検出することができる弾性体外観検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の弾性体外観検査方法にあっては、弾性体に生じた割れを検出する弾性体外観検査方法において、弾性体を変形した状態で取得した画像を用いて割れの検出を行う。
【0012】
すなわち、弾性体に生じた割れは、当該弾性体を変形する際に開口し、この開口状態で取得された画像を用いて割れの検出が行われる。
【0013】
このため、通常時に閉鎖するひび割れであっても、その開口部が開口されるため、表面に顕在化される。
【0014】
また、請求項2の弾性体外観検査方法においては、リング状に形成された前記弾性体を横方向へ引張して略楕円形状に変形し、引張方向に交差する交差方向から前記弾性体の天面又は底面の少なくとも一方の所定箇所の画像を取得するとともに、前記弾性体を周方向に回転して前記天面又は前記底面の少なくとも一方の全体の画像を取得する。
【0015】
すなわち、リング状に形成された弾性体は、横方向へ引張され略楕円形状に変形される。この変形状態にある弾性体は、引張方向に交差する交差方向から天面又は底面の少なくとも一方の所定箇所の画像が取得される。
【0016】
そして、この弾性体は、周方向に一回転されることにより、検査対象となる前記前記天面又は前記底面の少なくとも一方の画像が全体に渡って取得され、検査対象とされた面が全域に渡って検査される。
【0017】
さらに、請求項3の弾性体外観検査方法では、前記弾性体の前記天面の画像を取得する天面画像取得位置と前記弾性体の前記底面の画像を取得する底面画像取得位置とが前記弾性体を挟んだ対称位置とならないように前記天面画像取得位置と前記底面画像取得位置とをずらした位置に設定した。
【0018】
すなわち、前記天面の画像を取得する天面画像取得位置と、前記底面の画像を取得する底面画像取得位置とは、前記弾性体を挟んだ対称位置とならないように、ずらした位置に設定されている。
【0019】
このため、前記各画像をカメラで取得する際に、対称位置にカメラが設けられた場合と比較して、対称位置のカメラの映り込みが防止される。また、前記各画像取得位置を照らす照明の入り込みも防止される。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明の請求項1の弾性体外観検査方法にあっては、弾性体に生じたひび割れが通常時に閉鎖してしまう場合であっても、その開口部を開口して表面に顕在化させることができる。
【0021】
これにより、この変形状態で取得した画像において、前記ひび割れを目立たせることができる。このため、当該画像を用いた検査において、割れの検出を容易に行うことができる。
【0022】
そして、投光されたレーザーの反射光を半導体位置検出素子(PSD)で受光して表面の凹凸を検出する従来と比較して、コスト増を招くことなく、割れの検査を行うことができる。
【0023】
また、請求項2の弾性体外観検査方法においては、リング状に形成された弾性体を横方向へ引張して略楕円形状に変形することで、当該弾性体に生じたひび割れを開口することができる。この変形状態にある弾性体は、引張方向に交差する交差方向から天面又は底面の少なくとも一方の所定箇所の画像が取得される。
【0024】
そして、この弾性体を、周方向に一回転することによって、検査対象となる前記天面又は前記底面の少なくとも一方の全体の画像を取得することができ、検査対象とされた面を生じた割れの検査を全域に渡って行うことができる。
【0025】
さらに、請求項3の弾性体外観検査方法では、前記天面の画像を取得する天面画像取得位置と、前記底面の画像を取得する底面画像取得位置とが、前記弾性体を挟んだ対称位置とならないように、ずらした位置に設定されている。
【0026】
このため、前記各画像をカメラで取得する際に、対称位置にカメラが設けられた場合と比較して、対称位置のカメラの映り込みを防止することができる。これに伴って、対称位置での画像取得位置を照らす照明光の入り込みも防止することができる。
【0027】
これにより、カメラを用いた天面及び底面の同時検査を、不具合無く、効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態にかかる弾性体外観検査装置1を示す図であり、該弾性体外観検査装置1は、本発明の弾性体外観検査方法を実施できるように構成されている。前記弾性体外観検査装置1は、リング状の弾性体2に生じた割れを検出するように構成されており、その弾性体2の一例としてファンベルトが挙げられる。
【0030】
この弾性体2は、断面が矩形状に形成されており、内側を構成する内周面11と、外側を構成する外周面12と、上端を構成する天面13と、下端を構成する底面14とを備えている。
【0031】
前記弾性体外観検査装置1は、検査対象となる弾性体2を所定の高さ位置に保持する図外の保持機構と、図外の駆動機構によって駆動される左バー21と、図外の駆動機構によって駆動される右バー22とを備えており、両バー21,22は、離間して配設されている。各バー21,22を駆動する駆動機構は、対応したバー21,22を昇降するとともに、両バー21,22の配置方向である横方向23へ駆動するように構成されている。
【0032】
これにより、下降位置において近接する方向へ移動された両バー21,22を上昇し、前記保持機構によって上部に保持された前記弾性体2の内側に前記両バー21,22を挿入できるように構成されており、この挿入状態において、前記両バー21,22を離反するように左横方向31及び右横方向32へ移動して前記弾性体2の内周面11を付勢することで、当該弾性体2を横方向23へ引張できるように構成されている。また、この引張状態において、リング状の前記弾性体2を、前記両バー21,22による引張方向に延在した長軸35と、該長軸35に直交する方向に延在した短軸36とを有する略楕円形状に変形できるように構成されている。
【0033】
前記各バー21,22は、円柱状に形成されており、前記各駆動機構は、対応するバー21,22を回動できるように構成されている。これにより、前記両バー21,22で前記弾性体2を内側から押圧した状態で、前記各バー21,22を時計回りCWに回動することによって、各バー21,22の側面と前記弾性体2の内周面11とに生ずる摩擦力によって、リング状の弾性体2を、その周方向41時計回りCWに回動できるように構成されている。
【0034】
この弾性体外観検査装置1は、前記両バー21,22による引張方向である前記横方向23に直交した交差方向51から前記弾性体2の前記天面13の画像を取得する上部カメラ52と、前記交差方向51から前記弾性体2の前記底面14の画像を取得する下部カメラ53とを備えている。
【0035】
前記上部カメラ52は、前記弾性体2より上方に配置されており、当該上部カメラ52の真下に位置する前記弾性体2の前記天面13における天面画像取得位置61の画像を取得できるように構成されている。また、前記下部カメラ53は、前記弾性体2より下方に配置されており、当該下部カメラ53の真上に位置する前記弾性体2の前記底面14における底面画像取得位置62の画像を取得できるように構成されている。
【0036】
これにより、前記各カメラ52,53は、前記天面13又は前記底面14の所定箇所を撮影するように配置されており、前記弾性体2を前記周方向41に一回転させることによって、前記天面13及び前記底面14の全体の画像を取得できるように構成されている。
【0037】
前記天面画像取得位置61と前記底面画像取得位置62とは、前記弾性体2を挟んだ上下の対称位置とならないように、前記弾性体2の延在方向である水平方向71へずらした位置に設定されており、前記短軸36と交差する前記弾性体2の一方側の部位に前記天面画像取得位置61が、他方側の部位に前記底面画像取得位置62が設定されている。
【0038】
前記短軸36と交差する前記天面画像取得位置61及び前記底面画像取得位置62では、当該弾性体2が引張方向に引き延ばされた状態で変形されている。このため、前記各画像取得位置61,62に生じたひび割れは、その周囲部が左右に引張されることによって、開口するように構成されている。
【0039】
前記弾性体外観検査装置1は、前記上部カメラ52より上方から前記天面画像取得位置61へ向けて光を照らす上部照明と、前記下部カメラ53より下方から前記底面画像取得位置62へ向けて光を照らす下部照明とを備えており(図示省略)、前記各カメラ52,53では、対応する照明で照らされた各画像取得位置61,62の画像を撮影できるように構成されている。
【0040】
そして、前記弾性体外観検査装置1は、パソコン等で構成された画像処理装置81を備えている。
【0041】
この画像処理装置81には、前記保持機構と、前記左バー21を駆動する駆動機構と、前記右バー22を駆動する駆動機構と、前記上部カメラ52と、前記下部カメラ53等が接続されており、当該画像処理装置81がハードディスク等の記憶手段に記憶されたプログラムに従って前述した動作を行うことで、前記弾性体2への前記両バー21,22のセットと、両バー21,22による前記弾性体2の引張と、前記各カメラ52,53による撮像とを行うとともに、前記弾性体2を周方向41に一回転することで、前記弾性体2の前記天面13及び前記底面14の画像を全域に渡って取得するように構成されている。
【0042】
このとき、前記画像処理装置81は、前記各カメラ52,53から取得した画像を逐次解析し、前記天面13及び前記底面14での割れ等の異常の有無を検出しており、割れ等の異常を検出した際には、その旨をモニターやスピーカーから出力するように構成されている。
【0043】
以上の構成において、前記弾性体2に生じたひび割れは、当該弾性体2を変形する際に開口される。そして、このひび割れは、開口した状態で前記各カメラ52,53で取得され、この取得画像を用いた割れの検出が前記画像処理装置81で行われる。
【0044】
このため、通常時に閉鎖するひび割れであっても、その開口部を開口して前記天面13及び底面14に顕在化させることができる。
【0045】
すなわち、図2は、弾性体2の天面画像取得位置61を上部カメラ52で取得した画像を示す図である。
【0046】
この図は、破線で囲んだひび割れ位置101にひび割れ102が生じた弾性体2を撮像した画像であり、前記弾性体2を引き伸ばさない状態で取得した取得画像105が上段に、前記弾性体2を引き伸ばした状態で取得した取得画像106が下段に示されている。
【0047】
前記両取得画像105,106から判るように、前記弾性体2を引き伸ばさない状態で取得した上段の前記取得画像105では、ひび割れ102の両縁が密着し開口部が閉鎖しており、当該取得画像105では、ひび割れ102を確認することができない。
【0048】
しかし、前記弾性体2を引き伸ばした状態で取得した下段の前記取得画像106では、ひび割れ102の周囲部を左右に引張することで開口部が開口されており、この取得画像106では、ひび割れ102を容易に確認することができる。
【0049】
このように、変形状態で撮像した取得画像106にあっては、前記ひび割れ102を目立たせることができる。このため、当該取得画像106を用いて画像解析を行う検査において、ひび割れ102の検出を容易に行うことができる。
【0050】
そして、投光されたレーザーの反射光を半導体位置検出素子(PSD)で受光して表面の凹凸を検出する従来と比較して、コスト増を招くことなく、割れの検査を正確に行うことができる。
【0051】
また、リング状に形成された前記弾性体2を横方向23へ引張して略楕円形状に変形することで、当該弾性体2に生じたひび割れ102を開口することができる。この変形状態にある弾性体2は、引張方向に交差する交差方向51上方から前記天面13の所定位置である前記天面画像取得位置61の画像が、また前記交差方向51下方から前記底面14の所定箇所である前記底面画像取得位置62の画像が取得される。
【0052】
そして、この弾性体2を、周方向41に一回転することで、前記天面13及び前記底面14の両面全体の画像を取得することができる。これにより、前記両面13,14に生じた割れの検査を全域に渡って行うことができる。
【0053】
さらに、前記天面13の画像を取得する前記天面画像取得位置61と、前記底面14の画像を取得する前記底面画像取得位置62とは、前記弾性体2を挟んだ対称位置とならないように、ずらした位置に設定されている。
【0054】
このため、各画像を前記各カメラ52,53で取得する際に、前記上部カメラ52が前記弾性体2を挟んだ対称位置である前記下部カメラ53の真上に配置された場合と比較して、対称位置にあるカメラの映り込みを防止することができる。
【0055】
これに伴って、対称位置での画像取得位置61,62を照らす照明光の入り込み、すなわち前記天面画像取得位置61を照らす上部照明からの光の前記下部カメラ53への入り込みや、前記底面画像取得位置62を照らす下部照明からの光の前記上部カメラ52への入り込みも防止することができる。
【0056】
これにより、前記両カメラ52,53を用いた前記天面13及び前記底面14の同時検査を、不具合無く、効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
【図2】同実施の形態の取得画像を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 弾性体外観検査装置
2 弾性体
13 天面
14 底面
23 横方向
31 左横方向
32 右横方向
41 周方向
61 天面画像取得位置
62 底面画像取得位置
71 水平方向
81 画像処理装置
101 ひび割れ位置
102 ひび割れ
106 取得画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体に生じた割れを検出する弾性体外観検査方法において、
弾性体を変形した状態で取得した画像を用いて割れの検出を行うことを特徴とした弾性体外観検査方法。
【請求項2】
リング状に形成された前記弾性体を横方向へ引張して略楕円形状に変形し、引張方向に交差する交差方向から前記弾性体の天面又は底面の少なくとも一方の所定箇所の画像を取得するとともに、前記弾性体を周方向に回転して前記天面又は前記底面の少なくとも一方の全体の画像を取得することを特徴とした請求項1記載の弾性体外観検査方法。
【請求項3】
前記弾性体の前記天面の画像を取得する天面画像取得位置と前記弾性体の前記底面の画像を取得する底面画像取得位置とが前記弾性体を挟んだ対称位置とならないように前記天面画像取得位置と前記底面画像取得位置とをずらした位置に設定したことを特徴とする請求項2記載の弾性体外観検査方法。

【図1】
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【図2】
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