説明

弾性素材の加工方法および加工装置

【課題】従来のウレタンフォームシートなどの弾性素材シートの二次加工では、所定の輪郭を有するロールや形状形成シートでウレタンフォームシートを挟み込んで変形させ、断面中央部を切断する方式があった。しかし、この方式では所定形状が変更されるごとに、ロールや形状形成シートの再加工が必要なことや、新規形状製作までの迅速な対応に欠けるという問題があった。
【解決手段】先端にローラ形の圧子を設けた数値制御式の圧縮変形機構を、ウレタンフォームシートの相対する面に複数配置し、ウレタンフォームシートの一部を所定形状に関連付けて変形させる。そして、ウレタンフォームシートを送給させて、切断機構により水平に切断して所定の形状に成形することができる。さらに、成形形状と圧縮変形機構の制御量を数値データとして関連づけることで、同一加工の再現性の確保や新規形状製作の迅速化をはかることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッキング材、緩衝材として用いられるウレタンフォームなどの弾性素材で形成されたシートを、所定の形状に自動的に加工する方法および加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のウレタンフォームなどの加工方法には、弾性素材であるウレタンフォームシートを変形させた状態で断面から水平に切断し、復元量の違いを利用した成形加工法がある。
その一つとして、所定形状の輪郭を有する上下一対のロールでウレタンフォームシートを挟み込んで変形させ、断面中央を切断する方法がある(例えば、特許文献1参照)。また、所定形状の輪郭を有する一対の形状形成シートでウレタンフォームシートを挟み込んで変形させ、断面中央を切断する方法もある(例えば、特許文献2参照)。そのほか、製品形状に合わせて製作した成形型内にウレタンを注入して製作する一体成形法もある(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−283281号 公報
【特許文献2】特開2004−290386号 公報
【特許文献3】特開平11−156867号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示す方法は、同一形状を繰り返して成形する加工には適しているが、椅子の背もたれのような自由曲面構造を有する製品の加工は不可能であり、さらに加工する形状が変更されるごとに高額なロールを作り変える必要があった。
【0005】
また、特許文献2に示す方法は、高額なロールを必要とはしないが、この場合も加工する形状が変更されるごとに形状形成シートを作り変える必要があった。
【0006】
さらに、特許文献3に示す方法は金型内に注入して成形するために、どのような形状でも正確に、かつ大量に成形することは可能であるが、少量生産の場合には金型の製造コストが大きな負担になるという問題があった。
【0007】
本発明は、数値制御が可能な送給機構、数値制御が可能な圧縮変形機構、素材に適合した切断機構、開口機構および制御用のコンピュータを加工単位とし、二次加工により所定形状を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明においては上記目的を達成するため、コンピュータによる速度および位置の数値制御が可能なサーボモータとウレタンフォームシート送給ロールの組み合わせ、あるいはサーボモータとボールスクリューやラックピニオンなどの直動変換部で構成される直動装置とウレタンフォームシートの把持部の組み合わせ、などからなる送給機構を用いてウレタンフォームシートを一定方向に送給する。
【0009】
また、コンピュータによる速度および位置の数値制御がサーボモータとボールスクリューやラックピニオン、リンク、スライダなどの直動変換部で構成される直動装置先端に、送給方向に回転するローラなどの圧子を設けた圧縮変形機構を用い、数値制御によりローラ位置を変化させてウレタンフォームシートに押し込むことで変形をおこさせる。その場合、ウレタンフォームシートの相対する二面それぞれに近接して複数の圧縮変形機構を配置し、独立に制御することで所定形状に関連づけた変形を与える。
【0010】
さらに、圧縮変形機構で変形させたウレタンフォームシートを送給して、圧縮変形機構に接して配置した、固定式直刃、移動式回転刃、超音波切断機、レーザ光、電熱線、高圧水およびエンドレスで駆動される帯状の鋸刃や直刃など、素材の特性に適合した各種の切断工具を備えた切断機構で水平に切断し、クサビとローラを組み合わせた開口機構で2つの部分に分離することにより、切断面に所定形状を成形することができる。
【発明の効果】
【0011】
上述したように本発明による加工方法では、所定形状の輪郭を有する一対のロールや、所定形状の輪郭を有する一対の形状形成シートなどを使用することなく、複数の圧縮変形機構でウレタンフォームシートを所定形状に関連づけて変形させた後に切り離すことにより、所定の形状に成形することができる。
また、加工した製品を測定して、所定位置の断面形状と圧縮変形機構による所定位置の圧縮量とを関連付けたデータとしてコンピュータに記憶することにより、同一形状の再現はもとより、データを修正することで、数回の試行錯誤で新たな形状を成形することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0013】
図1において、1はウレタンフォームシートである。シート1端部の上下両面には圧縮変形機構2を、シート1の両側面には水平位置決め機構3を、シート1中央部の上下両面には送給機構4を配してある。コンピュータ7は制御信号の伝送ケーブル8を介して送給機構4と圧縮変形機構2を制御し、制御データと加工後の形状データを記憶する。
【0014】
また、図2に示すように、圧縮変形機構2の先端にローラ9を設けてシート1の円滑な送給を可能にするほか、送給方向の抵抗による変形をなくし、さらに角部に丸みをもたせることで垂直方向の変形のみを与える。さらに、連続した円滑な変形を与える場合は、ローラ9とシート1との間に弾性体で製作した薄いベルトを挿入してもよい。図3はシート1の切断部の拡大図で、圧縮変形機構2の直後に切断工具5、および切断したシートが切断工具や他の部材と干渉するのを防ぐ開口機構6を配してある。
【0015】
図4に1回の切断で得られた中間加工品の断面10を示す。さらに切断されたシートどうしを切断前と同様の位置で重ね合わせ、変形量を変えて新たな位置を再度切断することで、新たな切断面に新たな所定形状を形成させたものが最終加工品の断面11である。また、送給機構4と連動して圧縮変形機構2を制御することにより、送給方向にも変化した形状を有する加工が可能になる。図5にその最終加工品の縦断面12を示す。
【0016】
以下、動作を説明する。ウレタンフォームシート1を送給して、前端部を圧縮変形機構2の直下に配置した切断工具5で切断し、開口機構6に接触した時点で停止させる。次いで切断機構に直近してシート1の上下両面に配置された複数の圧縮変形機構2に、コンピュータ7から所定の制御信号を送信して、シート1の前端を所定の形状に変形させる。その状態で、送給ロール4にコンピュータ7から所定の制御信号を送信して送給を開始することでシート1は連続して切断され、さらに開口機構6で上下に二分割され、10のような中間段階断面を有するシートに加工される。さらにこの二分割されたシートどうしを重ね合わせ、圧縮変形量を変えて再加工することで11のような最終製品断面を有するシートになる。
【0017】
そして、圧縮変形機構2の制御量を一定のままで送給、切断すれば、長手方向に同一断面形状を有する加工面が成形されるが、送給と連動して圧縮変形機構2の制御量を変化させれば、送給方向にも変化した12のような形状が成形される。
【0018】
また、加工終了後に加工品の所定位置ごとの断面形状データを作成し、コンピュータに記憶されている所定位置ごとの圧縮変形機構2の制御量データと合わせて所定のデータ形式で保存しておくことで、同一形状の再現が容易になるばかりでなく、新しい形状を成形する時の支援データとしても流用可能であり、新規形状の加工開発期間を短縮できる。
【0019】
さらに、この加工法は実施形態例に示す椅子の背もたれのほかに、マット、洗浄用具などにも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態を示す加工装置の主投影図および平面図である。
【図2】圧縮変形機構の主投影図および側面図である。
【図3】切断部の拡大断面図である。
【図4】加工品の1回加工および2回加工時の断面図である。
【図5】圧縮変形機構の制御量を変化させた場合の加工品の縦断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ウレタンフォームシート
2 圧縮変形機構
3 水平位置決め機構
4 送給機構(シート送給ロール)
5 切断機構(帯状直線刃)
6 開口機構
7 コンピュータ
8 制御信号伝送ケーブル
9 圧縮変形機構先端のローラ
10 中間加工品の断面
11 最終加工品の断面
12 最終加工品の縦断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性素材から形成されたシートを所定形状に加工する方法であって、前記シートを所定方向に送給し、送給方向に直交して前記シートを挟むように配置した、独立作動可能な複数の圧縮装置で前記シートを前記所定形状に関連付けて変形させ、変形した前記シート断面を切断し、切断した前記シート断面を開口させる一連の工程を連続して行うことで、前記シートの切断面に逐次的に所定形状を形成させる弾性素材の加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、切断されたシートを切断前と同様の位置で重ね合わせ、変形量を変えて再度切断することで、新たな切断面に新たな所定形状を形成させる弾性素材の加工方法。
【請求項3】
弾性素材から形成されたシートを所定形状に加工する装置であって、
所定方向に送給可能な状態に拘束された前記シートを対象に、
速度および位置の数値制御が可能なサーボモータと送給ロールの組み合わせ、あるいは前記サーボモータの回転運動を直線運動に変換する直動変換部と前記シートの把持部との組み合わせによる前記シートの送給機構と、
前記サーボモータと前記直動変換部を組み合わせた直動装置先端に、前記シートを加圧する部品を装着した前記シートの圧縮変形機構と、
数種類の切断方式からなる前記シートの切断機構と、
クサビおよびローラを組み合わせた前記シートの開口機構とを具備し、
前記送給機構で送給される前記シートの切断面に平行な二面の一端を、前記二面それぞれに垂直に配した前記圧縮変形機構で変形させ、
前記圧縮変形機構に隣接して前記シート送給方向に配置した前記切断機構と、
前記切断機構に隣接して前記シート送給方向に配置した前記開口機構で二つの部分に分離することで、切断面に所定形状を形成させる弾性素材の加工装置。
【請求項4】
弾性素材から形成されたシートを所定形状に加工する装置であって、
前記シートの送給機構と前記シートの圧縮変形機構との数値制御装置としてコンピュータを用い、
前記シートを切断して所定形状を形成した加工品の所定位置における前記加工品の断面形状と、
前記所定位置の加工時の圧縮変形機構の圧縮量とを関連づけたデータとして前記コンピュータに記憶させ、
同一形状加工の再現性の確保のほか、類似形状や新規形状加工の支援手段とする請求項3に記載の弾性素材の加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−152523(P2007−152523A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353620(P2005−353620)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【Fターム(参考)】