説明

弾性表面波アクチュエータ

【課題】簡単な構成により、交差指電極の製造ばらつきや温度特性の影響を大幅に低減して弾性表面波を容易に励振可能とし、低コスト化と使い勝手の向上を実現する弾性表面波アクチュエータを提供する。
【解決手段】弾性表面波アクチュエ−タ1は、弾性表面波Wを励振するための交差指電極4が形成された圧電基板2から成る固定子と、交差指電極4によって励振された弾性表面波Wによって圧電基板2上において駆動される移動子3と、弾性表面波Wを励振するための発振回路6と、を備えており、発振回路6が、交差指電極4と、この交差指電極4を流れる電流を増幅する増幅器5とから成るものである。発振回路6は、交差指電極4の共振周波数で発振回路6を容易に発振させることができる。自励発振によって弾性表面波Wを励振でき、従来のような外部の高周波電源によって励振周波数を決めて励振する場合と異なり、製造ばらつきや温度特性の影響を大幅に低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、弾性体の表面を伝搬するレイリー波(弾性表面波)の楕円振動を利用したリニアモータ形式の弾性表面波アクチュエータが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような弾性表面波アクチュエータにおいて、圧電基板の表面に形成した交差指電極(Interdigital transducer,IDT)を用いて、弾性表面波が励振される。弾性表面波のエネルギは、外部の高周波電源から交差指電極を介して供給される。
【特許文献1】特開平7−231685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の弾性表面波アクチュエータや、特許文献1に示されるような弾性表面波アクチュエータにおいては、次のような問題がある。一般に、弾性表面波を励振するための交差指電極は非常に周波数選択性が高く、交差指電極に印加する電圧の周波数の許容誤差は、例えば、5%以下とされる。ところが、交差指電極のパターンを露光法などにより圧電基板上に形成する際、パターンの形状や間隔などが、ある範囲でばらつくので、形成された交差指電極の共振周波数がばらつくことになる。このような状況のもとで、弾性表面波を励振する際に、実験室レベルでは、試作した交差指電極の特性を計測し、その結果に合わせて高周波電源の発振周波数を調整することができるが、弾性表面疲アクチュエータを商品として実用化する場合に、研究開発に使用するような発振周波数の調整可能な高価な発振器を使うことはできない。
【0004】
従って、抵抗、コンデンサ、コイル、トランジスタなどの回路素子を用いて発振回路を作ることになるが、交差指電極の共振周波数が個々の弾性表面波アクチュエータ毎にばらつくので、発振回路の発振周波数を個々の弾性表面波アクチュエータ毎に高精度に調整する必要があり、その調整に非常に大きな労力が必要となる。
【0005】
さらに、交差指電極の形状や圧電基板の特性、および、発振回路を構成する各回路素子の特性が、周囲の温度環境の影響を受けて変化するので、交差指電極の共振周波数や発振回路の発振周波数が変化することになる。このような温度変化に対応するには、発振回路に温度補償回路を組み込んだり、弾性表面疲アクチュエータの使用環境を制限したり、温度変化の少ない圧電材料を選択したり、温度変化毎に周波数を調整したりすることが必要である。これらのことは、弾性表面疲アクチュエータの低コスト化や使い勝手向上の阻害要因となっている。
【0006】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、交差指電極の製造ばらつきや温度特性の影響を大幅に低減して弾性表面波を容易に励振でき低コスト化と使い勝手の向上とを実現できる弾性表面波アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、弾性表面波を励振するための交差指電極が形成された圧電基板から成る固定子または移動子と、前記交差指電極によって励振された弾性表面波によって前記圧電基板上において駆動される移動子または固定子と、前記弾性表面波を励振するための発振回路と、を備えた弾性表面波アクチュエ−タにおいて、前記発振回路が、前記交差指電極と、この交差指電極を流れる電流を増幅する増幅器とから成るものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータにおいて、前記発振回路が、弾性表面波の振幅を調整する振幅調整回路を備えているものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の弾性表面波アクチュエータにおいて、前記発振回路が、当該発振回路に発生する交流電流の位相を調整する位相調整回路を備えているものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の弾性表面波アクチュエータにおいて、前記交差指電極から所定距離隔てた前記圧電基板の表面に、弾性表面波のエネルギを機械電気変換によって電力に変換するための交差指電極を備え、前記発振回路が、前記電力変換用の交差指電極からの電力を前記増幅器に帰還するように構成されているものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載の弾性表面波アクチュエータにおいて、前記移動子または固定子が、前記励振用の交差指電極と前記電力変換用の交差指電極との間に配置されるものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4に記載の弾性表面波アクチュエータにおいて、前記移動子または固定子が、前記励振用の交差指電極と前記電力変換用の交差指電極の外側に配置されるものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、弾性表面波の発振回路を増幅器と交差指電極とで構成するので、交差指電極の共振周波数で発振回路を発振させることができる。つまり、いわゆる自励発振によって弾性表面波を励振でき、従来のような外部の高周波電源によって励振周波数を決めて励振する場合と異なり、弾性表面波を容易に励振できる。また、自励発振によるので、交差指電極の製造ばらつきや温度特性の影響を受けることなく、同一構成の発振回路を用いて、弾性表面波を容易に励振できる。従って、低コスト化と使い勝手の向上とを実現した弾性表面波アクチュエータを提供できる。
【0014】
請求項2の発明によれば、弾性表面波の振動振幅の大きさを調節することができるので、振動振幅に依存する移動子の移動速度を可変とすることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、位相調整回路によって位相を調整することにより、大きな製造ばらつきや周囲環境からの影響に対応できる。発振回路の配線方法を変更したりする場合にも、最適励振が可能なように、発振回路の発振条件を容易に調整できる。
【0016】
請求項4の発明によれば、移動子の移動に用いられなかった弾性表面波のエネルギを回収することができ、エネルギ効率を高めることができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、励振用と電力変換用の2つの交差指電極に挟まれた領域では、安定した略一様強度の弾性表面波が励振されるので、広い領域において、移動子を安定に移動(駆動)させることができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、交差指電極から離れた領域まで移動子の移動領域とすることができ、弾性表面波アクチュエータの構造上の設計自由度が増す。また、励振用の交差指電極の両側にそれぞれ、移動子と電力変換用の交差指電極とを配置すれば、励振用の交差指電極の一方側では移動子を駆動し、他方側では弾性表面波のエネルギーを回収することができるので、エネルギ効率をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る弾性表面波アクチュエータについて、図面を参照して説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1(a)(b)は第1の実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの構成を示し、図2、図3は同弾性表面波アクチュエータを増幅器の回路図とともに示す。本実施形態の弾性表面波アクチュエ−タ1は、弾性表面波Wを励振するための交差指電極4が形成された圧電基板2から成る固定子、交差指電極4によって励振された弾性表面波Wによって圧電基板2上において駆動される移動子3と、弾性表面波Wを励振するための発振回路6と、を備えており、発振回路6が、交差指電極4と、この交差指電極4を流れる電流を増幅する増幅器5とから成るものである。
【0021】
圧電基板2は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)のように圧電体そのものであったり、シリコン基板などの上に圧電材であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の薄膜を形成したものでもよい。また、これら以外の圧電材料を用いることもできる。圧電基板2の表面形状は、平面とは限らず円柱面やその他の曲面でもよい。圧電体のこのような平面や曲面または、このような面上に形成された圧電体の膜の表面に、弾性表面波Wが励振される。
【0022】
交差指電極4は、一対の複数の櫛歯状の電極を、互いの櫛歯が交互に入り込むように対向させて、圧電基板2の表面に形成されている。交差指電極4のピッチ(図中λ)は、励振される弾性表面波Wの波長に一致している。
【0023】
移動子3は、圧電基板2における表面波発生領域に、圧電基板2と接触して設けられている。移動子3は、圧電基板2に対して、相対的に移動する。通常、圧電基板2が固定され、移動子3が移動する。なお、弾性表面波アクチュエ−タ1において、どちらが移動するかということは、相対的なものであり、移動子3が固定され、圧電基板2が移動する場合もある。
【0024】
移動子3は、例えば、シリコンのような硬い材料で形成される。移動子3における圧電基板2との接触面32には、弾性表面波Wの運動エネルギーを効率よく移動子3に伝達するための複数の突起が設けられている。このような突起は、移動子3がシリコンで形成される場合、シリコンのエッチング工法で製作される。なお、移動子3の材料は、シリコンでなくても硬い材料であればよい。さらに、弾性表面波Wの運動エネルギを効率よく移動子3に伝達できるのであれば、接触面32における突起も不要である。
【0025】
移動子3は、予圧手段31によって予圧Fが加えられて、圧電基板2に圧接されている。移動子3は、この予圧Fに基づく摩擦力によって、圧電基板2上を移動する。圧電基板2の表面の弾性表面波Wは、予圧Fに逆らって、すなわち、移動子を持ち上げながら振動するようなエネルギをもって励振される必要がある。
【0026】
弾性表面波アクチュエ−タ1において、弾性表面波Wが励振され、移動子3に予圧Fが加えられた状態で、移動子3は、弾性表面波Wの進行方向a1とは逆の、方向a2に向かって移動する。これは、弾性表面波Wが、後方楕円運動を行っていることに基づく。
【0027】
上述の弾性表面波アクチュエ−タ1は、交差指電極4に増幅器5を接続し、増幅器5から弾性表面波Wを励振するエネルギを、交差指電極4を介して圧電基板2の表面に供給して動作させること、すなわち移動子3を方向a2に向けて移動させることができる。なお、図1(a)(b)の構成では、移動子3を一方方向にしか移動させることができないので、方向a2とは逆の方向に移動子3を移動させる復帰機構を設けることで、移動子3の往復動が可能となる。例えば、バネなどを用いた復帰機構をにより、方向a1向きの付勢力を与えたり、復帰機構として交差指電極をもう一対設けたりすればよい。
【0028】
(交差指電極と増幅器による励振)
上述のように、交差指電極4に増幅器5を接続すると、弾性表面波Wを励振することができる。このような構成として、例えば、水晶振動子に増幅器を接続して発振させる、いわゆる水晶発振器が知られている。また、水晶振動子に変えて、弾性表面波素子を用いた弾性表面波発振器が知られている。これらは、発振信号を生成し、その安定した一定周期の信号を用いるものである。
【0029】
本発明の弾性表面波アクチュエ−タ1は、発振信号を生成する替わりに駆動用の弾性表面波Wを生成し、その弾性表面波Wによって移動子3を駆動するアクチュエータを構成するものである。
【0030】
本実施形態の弾性表面波アクチュエ−タ1によれば、弾性表面波Wの発振回路6を増幅器5と交差指電極4とで構成するので、交差指電極4の共振周波数で発振回路6を発振させることができる。つまり、いわゆる自励発振によって弾性表面波Wを励振でき、従来のような外部の高周波電源によって励振周波数を決めて励振する場合と異なり、弾性表面波Wを容易に励振できる。
【0031】
また、自励発振によるので、交差指電極4の製造ばらつきや温度特性の影響(これらは、特定の励振周波数に定めた場合に受けると予測される影響である)を受けることがなく、同一構成の発振回路を用いて、弾性表面波Wを容易に励振できる。従って、弾性表面波アクチュエータ1は、低コスト化と使い勝手の向上とを実現したものとなる。なお、アクチュエータにとって、どの様な周波数の弾性表面波Wが励振されるか、ということは、第二義的な事柄である。
【0032】
上記状況をさらに説明する。交差指電極4は、通常、製作ロット毎に発振周波数が変動するが、交差指電極4の発振周波数が多少異なっていたとしても、本実施形態の弾性表面波アクチュエータ1は、そのそれぞれの異なる周波数のもとで駆動可能となる。
【0033】
ところが、従来にあっては、電源側に発信回路が別にあるので、すなわち、その発振回路が電源側で設定された自己の発振周波数を持っているので、交差指電極の発振周波数と電源側の発振周波数とを高い精度で一致させないと、弾性表面波アクチュエ−タとしての駆動効率が落ちることになる。ところが、電源側の発振周波数が精度良く構成されていたとしても、交差指電極側で発振周波数がばらつくので、電源側で周波数の調整が必要になり、弾性表面波アクチュエ−タを製造する際の負担となる。本実施形態の弾性表面波アクチュエータ1は、このような周波数調整の負担を解消するものである。
【0034】
(発振回路の例)
発振回路6を構成する増幅器5として、図2に示すように、1つのトランジスタTrを用いたベース接地増幅回路を用いることができる。なお、この増幅器5は、簡便ではあるが出力インピーダンスが高いので、交差指電極4に高電流を流そうとすると、増幅器5での電力消費が多くなる。
【0035】
また、他の増幅器5として、図3に示すように、2つのトランジスタTr1,Tr2を用いた、エミッタフォロワ回路を用いることができる。この増幅器5の場合、上述の図2に示したものと異なり、出力インピーダンスを下げることができるので、交差指電極4に高電流を流すことができ、高パワの弾性表面波アクチュエ−タを実現できる。なお、これらの回路は、周知のものであり、その説明は省略する。
【0036】
(第2の実施形態)
図4は第2の実施形態に係る弾性表面波アクチュエータを模式的に示す。本実施形態の弾性表面波アクチュエータ1は、上述の第1の実施形態における弾性表面波アクチュエ−タ1において、発振回路6が、弾性表面波Wの振幅を調整する振幅調整回路7を備えているものである。
【0037】
振幅調整回路7は、例えば、交差指電極4と並列に可変抵抗器R7を接続することによって実現できる。この弾性表面波アクチュエータ1によれば、弾性表面波Wの振動振幅の大きさを調節することができるので、その振動振幅に依存する移動子3の移動速度を可変とすることができる。
【0038】
(第3の実施形態)
図5(a)(b)は第3の実施形態に係る弾性表面波アクチュエータを模式的に示す。本実施形態の弾性表面波アクチュエータ1は、上述の第1の実施形態における弾性表面波アクチュエ−タ1において、発振回路6が、発振回路6に発生する交流電流の位相を調整する位相調整回路8を備えているものである。
【0039】
位相調整回路8は、可変コンデンサC1や可変コイルLを、交差指電極4と直列に接続することによって実現できる。この弾性表面波アクチュエータ1によれば、位相調整回路8によって位相を調整することにより、大きな製造ばらつきや周囲環境からの影響に対応でき、アクチュエータを安定して動作させることができる。発振回路6の配線方法を変更したりする場合にも、最適励振が可能なように、発振条件を容易に調整できる。
【0040】
また、位相調整回路8を単独で備えるだけでなく、図6に示すように、発振回路6に位相調整回路8と共に、第2の実施形態における振幅調整回路7を備えるようにしてもよい。この場合、弾性表面波アクチュエータ1が、より使い勝手の向上したものとなる。
【0041】
(第4の実施形態)
図7、図8は第4の実施形態に係る弾性表面波アクチュエータを模式的に示す。本実施形態の弾性表面波アクチュエータ1は、上述の第1の実施形態における弾性表面波アクチュエ−タ1において、交差指電極4から所定距離隔てた圧電基板2の表面に、弾性表面波Wのエネルギを機械電気変換によって電力に変換するための交差指電極9を備え、発振回路6が、電力変換用の交差指電極9からの電力を増幅器5に帰還するように構成されているものである。この場合、移動子3は、励振用の交差指電極4と電力変換用の交差指電極9との間に配置される。
【0042】
この弾性表面波アクチュエータ1によれば、移動子3の移動に用いられなかった、矢印a3方向に進む弾性表面波Wのエネルギを回収することができ、エネルギ効率を高めることができる。また、励振用と電力変換用の2つの交差指電極4,9に挟まれた領域では、安定した略一様強度の弾性表面波Wが励振されるので、広い領域において、移動子3を安定に移動(駆動)させることができる。
【0043】
また、上述の弾性表面波アクチュエータ1において、図8に示すように、発振回路6に振幅調整回路7と位相調整回路8とを備えるようにしてもよい。この場合、弾性表面波アクチュエータ1が、より使い勝手の向上したものとなる。
【0044】
(第5の実施形態)
図9、図10は第5の実施形態に係る弾性表面波アクチュエータを模式的に示す。本実施形態の弾性表面波アクチュエータ1は、上述の第4の実施形態における弾性表面波アクチュエ−タ1において、移動子3が、励振用の交差指電極4と電力変換用の交差指電極9の外側に配置されるものである。図9に示した弾性表面波アクチュエータ1の場合、移動子3は交差指電極4側に配置されている。すなわち、電力変換用の交差指電極9、交差指電極4、そして移動子3、という順番でこれらが圧電基板2上に配置されている。
【0045】
ところで、弾性表面波Wは、通常、交差指電極4から、櫛歯電極の配列方向の両側(方向a1,a4)に対称的に伝搬する。従って、移動子3のある方向a1に向かう弾性表面波Wは、移動子3の駆動に利用されるが、移動子3のない方向a4に向かう弾性表面波Wは、移動子3の駆動には利用されない。
【0046】
本実施形態の弾性表面波アクチュエ−タ1は、交差指電極4の両側にそれぞれ、移動子3と交差指電極9とがあるので、交差指電極4の一方側では移動子3を駆動し、他方側では交差指電極9によってエネルギーを回収することができる。これにより、エネルギ効率をより高めることができる。
【0047】
また、本実施形態の弾性表面波アクチュエ−タ1によれば、交差指電極4から離れた領域まで移動子3の移動領域とすることができ、アクチュエータの構造上の設計自由度が増す。
【0048】
また、上述の弾性表面波アクチュエータ1において、図10に示すように、発振回路6に振幅調整回路7と位相調整回路8とを備えるようにしてもよい。この場合、弾性表面波アクチュエータ1が、より使い勝手の向上したものとなる。
【0049】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、前述したように、圧電基板2の表面形状は平面に限らないとしたが、例えば、円柱の内面や外面に、軸方向に弾性表面波を発生させたり、円周方向弾性表面波を発生させたりすることにより、軸方向に移動子を駆動させたり、軸回りに移動子を回転させたりすることができる。これにより、内軸または外筒延伸アクチュエータや内軸または外筒回転アクチュエータ等を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの模式的に示した発振回路と弾性表面波アクチュエータ本体の平面図、(b)は同弾性表面波アクチュエータ本体の断面図。
【図2】同上弾性表面波アクチュエータにおける増幅器の回路図とともに示した弾性表面波アクチュエータ本体の平面図。
【図3】同上弾性表面波アクチュエータにおける増幅器の回路図の他の例とともに示した弾性表面波アクチュエータ本体の平面図。
【図4】第2の実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの模式的に示した発振回路と弾性表面波アクチュエータ本体の平面図。
【図5】(a)は第3の実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの模式的に示した発振回路と弾性表面波アクチュエータ本体の平面図、(b)は同弾性表面波アクチュエータの発振回路の変形例と弾性表面波アクチュエータ本体の平面図。
【図6】同上弾性表面波アクチュエータの発振回路の他の変形例と弾性表面波アクチュエータ本体の平面図。
【図7】第4の実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの模式的に示した発振回路と弾性表面波アクチュエータ本体の平面図。
【図8】同上弾性表面波アクチュエータの発振回路の変形例と弾性表面波アクチュエータ本体の平面図。
【図9】第5の実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの模式的に示した発振回路と弾性表面波アクチュエータ本体の平面図。
【図10】同上弾性表面波アクチュエータの発振回路の変形例と弾性表面波アクチュエータ本体の平面図。
【符号の説明】
【0051】
1 弾性表面波アクチュエータ
2 圧電基板(固定子)
3 移動子
4 交差指電極
5 増幅器
6 発振回路
7 振幅調整回路
8 位相調整回路
9 交差指電極(電力変換用)
W 弾性表面波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性表面波を励振するための交差指電極が形成された圧電基板から成る固定子または移動子と、
前記交差指電極によって励振された弾性表面波によって前記圧電基板上において駆動される移動子または固定子と、
前記弾性表面波を励振するための発振回路と、を備えた弾性表面波アクチュエ−タにおいて、
前記発振回路が、前記交差指電極と、この交差指電極を流れる電流を増幅する増幅器とから成ることを特徴とする弾性表面波アクチュエ−タ。
【請求項2】
前記発振回路が、弾性表面波の振幅を調整する振幅調整回路を備えていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータ。
【請求項3】
前記発振回路が、当該発振回路に発生する交流電流の位相を調整する位相調整回路を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の弾性表面波アクチュエータ。
【請求項4】
前記交差指電極から所定距離隔てた前記圧電基板の表面に、弾性表面波のエネルギを機械電気変換によって電力に変換するための交差指電極を備え、
前記発振回路が、前記電力変換用の交差指電極からの電力を前記増幅器に帰還するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の弾性表面波アクチュエータ。
【請求項5】
前記移動子または固定子が、前記励振用の交差指電極と前記電力変換用の交差指電極との間に配置されることを特徴とする請求項4に記載の弾性表面波アクチュエータ。
【請求項6】
前記移動子または固定子が、前記励振用の交差指電極と前記電力変換用の交差指電極の外側に配置されることを特徴とする請求項4に記載の弾性表面波アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−294162(P2008−294162A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137139(P2007−137139)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】