説明

弾性表面波装置及び通信装置

【課題】 挿入損失劣化を低減し、小型化を実現した弾性表面波装置及びそれを用いた通信装置を提供すること。
【解決手段】 第1,第2の弾性波表面共振子18,19は、中心共通バスバー電極25の両側に接続されて形成され、中心共通バスバー電極25に不平衡信号端子22が接続されており、第1,第2の弾性表面波素子20,21は、中心共通バスバー電極部29の両側に接続されて形成され、弾性表面波素子20,21と弾性表面波共振子18,19とは、互いに隣接して弾性表面波の伝搬方向に直交する方向に並んで配置され、弾性表面波素子20,21の各中央のIDT電極のバスバー電極が平衡信号端子23,24に接続され、弾性表面波素子20,21のそれぞれの中央のIDT電極以外のもののバスバー電極が弾性表面波共振子18,19のIDT電極のバスバー電極に並列接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話等の移動体通信機器に用いられる弾性表面波フィルタや弾性表面波共振器などの弾性表面波装置及びこれを備えた通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話や自動車電話等の移動体通信機器のRF(無線周波数)段に用いられる周波数選択フィルタとして、弾性表面波フィルタが広く用いられている。一般に、周波数選択フィルタに求められる特性としては、広通過帯域、低損失、高減衰量等の諸特性が挙げられる。近年、特に移動体通信機器における受信感度の向上、低消費電力化のために、さらに弾性表面波フィルタに対する低損失化の要求が高まっている。また、近年、移動体通信機器において、小型化のためアンテナが、従来のホイップアンテナから誘電体セラミックス等を用いた内蔵アンテナに移行してきている。そのため、アンテナのゲインを充分に得ることが難しくなり、弾性表面波フィルタに対してさらに挿入損失を改善させる要求が増大している。
【0003】
また、IDT電極(Inter Digital Transducer)の電極指ピッチは、高周波になるほど小さくなり、IDT電極の膜厚は薄くなる。例えば、1.9GHz帯の弾性表面波フィルタのIDT電極の膜厚は、900MHz帯の弾性表面波フィルタの約半分の膜厚で設計されることとなり、フィルタ間を接続する引き出し電極等の伝送線路におけるオーミック損失が高周波になるほど大きくなる。そのため、さらに挿入損失が劣化する傾向がある。
【0004】
このような挿入損失の劣化を抑制するために、種々の提案がされている。例えば、圧電基板上に3つのIDT電極を設けた縦1次モードと縦3次モードを利用した2重モード弾性表面波共振器フィルタについて、次のような挿入損失を改善する手段が提案されている。
【0005】
図5に、従来の共振器型弾性表面波フィルタの電極構造について、上からみた平面図及び電極指ピッチの変化を示すグラフを示す。圧電基板202上に配設された複数の電極指を有するIDT電極204は、互いに対向させ噛み合わせた一対の櫛歯状電極からなり、この一対の櫛歯状電極に電界を印加し弾性表面波を生じさせるものである。IDT電極204の一方の櫛歯状電極に接続された入力端子215から電気信号を入力することにより、励振された弾性表面波がIDT電極204の両側に配置されたIDT電極203,205に伝搬される。また、IDT電極203,205のそれぞれを構成する一方の櫛歯状電極からIDT電極206,209を通じて出力端子216,217へ電気信号が出力される。なお、図中210,211,212,213はそれぞれ反射器電極である。このように、共振器電極パターンを2段縦続接続させることにより、1段目と2段目の定在波の相互干渉により、通過帯域外減衰量を高減衰化し、フィルタ特性の通過帯域外減衰量を向上させることができる。
【0006】
即ち、同様の特性をもつ弾性表面波フィルタを2段縦続接続の構成とすることで、1段目で減衰された信号が2段目でさらに減衰され、通過帯域外減衰量を約2倍に向上させることができる。
【0007】
ここで、IDT電極204に接続された入力端子215に電気信号を入力することにより、弾性表面波を励振させ、この弾性表面波がIDT電極204の両側に位置するIDT電極203,205に伝搬され、IDT電極207,208に接続された出力端子216,217から電気信号が出力される。また、IDT電極203〜205及び206〜209の両端に位置する反射器電極210,211及び212,213により弾性表面波が反射され、両端の反射器電極210,211間及び反射器電極212,213間で定在波となる。
【0008】
この定在波のモードには、3つのIDT電極により1次モードとその高次(3次)モードが含まれる。これらのモードで発生する共振により通過特性が得られるため、これらのモードで発生する共振周波数のピーク位置を制御することにより通過帯域内の挿入損失を改善することができる。また従来、隣り合うIDT電極の端部に電極指の狭ピッチ部を設けることにより、IDT電極間におけるバルク波の放射損を低減して、共振モードの状態を制御することにより挿入損失の改善が図られていた(例えば、特許文献1,2を参照。)。
【0009】
また、図6に従来の縦結合共振器型弾性表面波フィルタの電極構造の平面図を示す。低損失化を実現する他の手段として、3つの縦結合共振器型弾性表面波フィルタで構成されており、1つの共振器型弾性表面波共振子116に2つの縦結合共振器弾性表面波素子114,115を並列接続している。これにより、図5に示した2段縦続接続したタイプの縦結合共振器型弾性表面波フィルタと比べて、IDT電極の電極指の交差幅を小さくし、さらに、並列接続することにより、縦結合共振器弾性表面波フィルタにおける抵抗損失を小さくすることができ、低損失な縦結合共振器弾性表面波フィルタを実現することができる(例えば、特許文献3を参照。)。
【0010】
なお、共振器型弾性表面波共振子116は、3個のIDT電極131〜133の両側に反射器電極140,141が形成されて成り、中央のIDT電極132に不平衡信号端子(不平衡信号入(出)力端子)122が接続されている。また、縦結合共振器弾性表面波素子114は、3個のIDT電極134〜136の両側に反射器電極142,143が形成されて成り、中央のIDT電極135に平衡信号端子(不平衡信号出(入)力端子)123が接続されている。また、縦結合共振器弾性表面波素子115は、3個のIDT電極137〜139の両側に反射器電極144,145が形成されて成り、中央のIDT電極138に平衡信号端子(不平衡信号出(入)力端子)124が接続されている。
【特許文献1】特開2002−9587号公報
【特許文献2】特表2002−528987号公報
【特許文献3】特開2001−308672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1,2に開示されている弾性表面波装置では、IDT電極間における弾性表面波がバルク波へモード変換されることによる挿入損失の劣化を抑制することは可能であるが、2つの弾性表面波素子を2段縦続接続させた場合、図6に示した2つの縦結合共振器弾性表面波フィルタを並列接続した弾性表面波装置と比較して、IDT電極の電極指の交差幅が大きくなり、さらに縦続接続させることによって、弾性表面波素子の抵抗損失が大きくなり、縦結合共振器弾性表面波フィルタの低損失化が十分に実現できない。
【0012】
また、特許文献3に開示されているような弾性表面波装置では、1つ縦結合共振器弾性表面波フィルタに対して2つの縦結合共振器弾性表面波フィルタを並列接続させていることにより、前段に縦結合共振器弾性表面波フィルタまたは弾性表面波共振子を用いた場合、各IDT電極の電極指の交差幅をさらに小さくすることが困難になる。さらに、2つの縦結合共振器弾性表面波フィルタを並列接続させているので、弾性表面波素子の配置上、スペースを多く取ることとなり、弾性表面波装置の小型化には不利な配置となっていた。
【0013】
従って、本発明は上記従来の技術における問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、挿入損失の劣化を生じず、優れたフィルタ特性を有し、高品質な弾性表面波フィルタとしても機能でき、さらに小型化することができる弾性表面波装置及びそれを用いた通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の弾性表面波装置は、圧電基板上に、該圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、該伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えたIDT電極と、前記伝搬方向に沿って前記IDT電極の両側に配置された反射器電極とを備えた第1及び第2の弾性波表面共振子と、前記伝搬方向に沿って、前記伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、該奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する第1及び第2の弾性表面波素子とが形成された弾性表面波装置であって、前記第1及び第2の弾性波表面共振子は、前記伝搬方向に延びるように形成された中心共通バスバー電極の両側に、前記中心共通バスバー電極によって互いに接続されて形成されているとともに、前記中心共通バスバー電極に不平衡信号端子が接続されており、前記第1及び第2の弾性表面波素子は、前記伝搬方向に延びるように形成されるとともにIDT電極及び反射器電極のそれぞれに形成された中心共通バスバー電極部の両側に、前記中心共通バスバー電極部によって互いに接続されて形成されており、前記第1及び第2の弾性表面波素子と前記第1及び第2の弾性表面波共振子とは、互いに隣接して前記伝搬方向に直交する方向において並んで配置されており、前記第1及び第2の弾性表面波素子のそれぞれの中央の前記IDT電極のバスバー電極が平衡信号端子に接続され、前記第1及び第2の弾性表面波素子のそれぞれの中央の前記IDT電極以外のもののバスバー電極が前記第1及び第2の弾性表面波共振子の前記IDT電極のバスバー電極に並列接続されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の弾性表面波装置は、圧電基板上に、該圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、該伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えたIDT電極と、前記伝搬方向に沿って前記IDT電極の両側に配置された反射器電極とを備えた第1及び第2の弾性波表面共振子と、前記伝搬方向に沿って、前記伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、該奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する第1及び第2の弾性表面波素子とが形成された弾性表面波装置であって、前記第1及び第2の弾性波表面共振子は、前記伝搬方向に延びるように形成された中心共通バスバー電極の両側に、前記中心共通バスバー電極によって互いに接続されて形成されているとともに、前記中心共通バスバー電極に不平衡信号端子が接続されており、前記第1及び第2の弾性表面波素子は、前記伝搬方向に延びるように形成されるとともにIDT電極及び反射器電極のそれぞれに形成された中心共通バスバー電極部の両側に、前記中心共通バスバー電極部によって互いに接続されて形成されており、前記第1及び第2の弾性表面波素子と前記第1及び第2の弾性表面波共振子とは、弾性表面波の前記伝搬方向において並んで配置されているとともに、前記第1及び第2の弾性表面波素子のそれぞれの中央の前記IDT電極のバスバー電極が平衡信号端子に接続され、前記第1及び第2の弾性表面波素子のそれぞれの中央の前記IDT電極以外のもののバスバー電極が前記第1及び第2の弾性表面波共振子の前記IDT電極のバスバー電極に並列接続されていることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、上記各構成において、前記第1及び第2の弾性波表面共振子は、前記中心共通バスバー電極上に、それに沿って絶縁体を介して形成されるとともに、前記IDT電極に接続された引き出し電極が設けられており、該引き出し電極が前記不平衡信号端子に接続されていることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、上記各構成において、前記第1及び第2の弾性表面波素子は、前記平衡信号端子と前記第1及び第2の弾性表面波素子のそれぞれの中央の前記IDT電極とを接続する平衡側信号用引き出し配線と、前記第1及び第2の弾性表面波素子と前記第1及び第2の弾性表面波共振子とを接続する不平衡側信号用引き出し配線とが、絶縁体を介して交差して配設されていることによって、前記第1及び第2の弾性表面波素子と前記第1及び第2の弾性表面波共振子との接続部に容量形成部が設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の通信装置は、上記いずれかの本発明の弾性表面波装置を有する、受信回路及び送信回路の少なくとも一方を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の弾性表面波装置は、圧電基板上に、圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えたIDT電極と、伝搬方向に沿ってIDT電極の両側に配置された反射器電極とを備えた第1及び第2の弾性波表面共振子と、伝搬方向に沿って、伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する第1及び第2の弾性表面波素子とが形成された弾性表面波装置であって、第1及び第2の弾性波表面共振子は、伝搬方向に延びるように形成された中心共通バスバー電極の両側に、中心共通バスバー電極によって互いに接続されて形成されているとともに、中心共通バスバー電極に不平衡信号端子が接続されており、第1及び第2の弾性表面波素子は、伝搬方向に延びるように形成されるとともにIDT電極及び反射器電極のそれぞれに形成された中心共通バスバー電極部の両側に、中心共通バスバー電極部によって互いに接続されて形成されており、第1及び第2の弾性表面波素子と第1及び第2の弾性表面波共振子とは、互いに隣接して伝搬方向に直交する方向において並んで配置されており、第1及び第2の弾性表面波素子のそれぞれの中央のIDT電極のバスバー電極が平衡信号端子に接続され、第1及び第2の弾性表面波素子のそれぞれの中央のIDT電極以外のもののバスバー電極が第1及び第2の弾性表面波共振子のIDT電極のバスバー電極に並列接続されていることにより、中心共通バスバー電極によって、第1及び第2の弾性表面波共振子が接続されて、共通化して形成されていることにより、IDT電極の交差幅を従来の弾性表面波共振子の約半分にまで狭くすることができ、また、従来の弾性表面波共振子と比べて抵抗損失を小さくすることができるので、弾性表面波共振子による挿入損失を小さくすることができる。
【0020】
同様に、中心共通バスバー電極部によって、第1及び第2の弾性表面波素子が接続されて、共通化して形成されていることにより、それらを接続する引き出し電極を省略することができ、弾性表面波素子を極めて小型にすることができる。
【0021】
また、第1及び第2の弾性表面波素子が、弾性表面波の伝搬方向に直交する方向において2つの弾性表面波共振子と並んで配置されているとともに、弾性表面波共振子に並列接続されているので、従来の弾性表面波素子と比べて抵抗損失を小さくすることができ、弾性表面波素子による挿入損失を小さくすることができる。
【0022】
さらに、中心共通バスバー電極により共通化された第1及び第2の弾性表面波共振子、及び中心共通バスバー電極部により共通化された第1及び第2の弾性表面波素子が、それぞれ弾性表面波の伝搬方向に対して直交した方向に、並行して配置されており、反射器電極も共通化されているため、弾性表面波装置全体の面積を小さくすることができ、弾性表面波装置を極めて小型化することができる。
【0023】
また、本発明の弾性表面波装置は、圧電基板上に、圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えたIDT電極と、伝搬方向に沿ってIDT電極の両側に配置された反射器電極とを備えた第1及び第2の弾性波表面共振子と、伝搬方向に沿って、伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する第1及び第2の弾性表面波素子とが形成された弾性表面波装置であって、第1及び第2の弾性波表面共振子は、伝搬方向に延びるように形成された中心共通バスバー電極の両側に、中心共通バスバー電極によって互いに接続されて形成されているとともに、中心共通バスバー電極に不平衡信号端子が接続されており、第1及び第2の弾性表面波素子は、伝搬方向に延びるように形成されるとともにIDT電極及び反射器電極のそれぞれに形成された中心共通バスバー電極部の両側に、中心共通バスバー電極部によって互いに接続されて形成されており、第1及び第2の弾性表面波素子と第1及び第2の弾性表面波共振子とは、弾性表面波の伝搬方向において並んで配置されているとともに、第1及び第2の弾性表面波素子のそれぞれの中央のIDT電極のバスバー電極が平衡信号端子に接続され、第1及び第2の弾性表面波素子のそれぞれの中央のIDT電極以外のもののバスバー電極が第1及び第2の弾性表面波共振子のIDT電極のバスバー電極に並列接続されていることにより、IDT電極の交差幅を従来の弾性表面波共振子の約半分にまで狭くすることができ、また、従来の弾性表面波共振子と比べて抵抗損失を小さくすることができるので、弾性表面波共振子による挿入損失を小さくすることができる。
【0024】
また、中心共通バスバー電極部によって第1及び第2の弾性表面波素子部が接続されて、共通化して形成されていることにより、それらを接続する引き出し電極を省略することができ、弾性表面波素子を極めて小型にすることができる。
【0025】
さらに、中心共通バスバー電極により共通化された第1及び第2の弾性表面波共振子、及び中心共通バスバー電極部により共通化された第1及び第2の弾性表面波素子が、それぞれ弾性表面波の伝搬方向に対して直交した方向に並行して配置されており、反射器電極も共通化されているため、弾性表面波装置全体の面積を小さくすることができ、弾性表面波装置を極めて小型化することができる。
【0026】
また、弾性表面波共振子と弾性表面波素子を、弾性表面波の伝搬方向において並べて配置することにより、中心共通バスバー電極及び中心共通バスバー電極部に対して略対称な配置を実現することができるので、弾性表面波装置の平衡度を向上させることができる。さらに、圧電基板ウェハ1枚当たりの弾性表面波装置の取り数を多くすることができ、弾性表面波装置の部材コストを大幅に削減することができる。
【0027】
本発明の弾性表面波装置は好ましくは、上記各構成において、第1及び第2の弾性波表面共振子は、中心共通バスバー電極上に、それに沿って絶縁体を介して形成されるとともに、IDT電極に接続された引き出し電極が設けられており、この引き出し電極が不平衡信号端子に接続されていることにより、中心共通バスバー電極上に絶縁体及びその上に引き出し電極が形成されているため、中心共通バスバー電極上の構造物のトータル厚みが厚くなり、中心共通バスバー電極上において、金属膜と絶縁体による質量効果が、従来のバスバー構造と比較して大きくはたらくこととなる。そのため、中心共通バスバー電極の部位における弾性表面波の音速が遅くなっている。この構成により、弾性表面波の励振に寄与しないIDT電極の中心共通バスバー電極近傍における音速を、弾性表面波の励振に寄与する電極指交差部領域の音速より遅くすることができ、弾性表面波のエネルギーを閉じ込めることが可能となり、挿入損失を低減し、通過帯域におけるフィルタ特性の急峻性を向上させた弾性表面波装置を提供することができる。
【0028】
また、中心共通バスバー電極上に引き出し電極を配置したことにより、弾性表面波装置の面積において引き出し電極が占める面積を極力低減することができ、弾性表面波装置を極端に小型化することが可能である。
【0029】
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、上記各構成において、第1及び第2の弾性表面波素子は、平衡信号端子と第1及び第2の弾性表面波素子のそれぞれの中央のIDT電極とを接続する平衡側信号用引き出し配線と、第1及び第2の弾性表面波素子と第1及び第2の弾性表面波共振子とを接続する不平衡側信号用引き出し配線とが、絶縁体を介して交差して配設されていることによって、第1及び第2の弾性表面波素子と第1及び第2の弾性表面波共振子との接続部に容量形成部が設けられていることにより、従来、寄生容量を発生させる要因となる、弾性表面波素子や弾性表面波共振子の周辺の電極パターン等の構造が異なっていると、例えば弾性表面波素子や弾性表面波共振子の周辺の電極パターン等の構造に対称性がないと、2つの平衡出力端子に伝わる信号が互いに振幅が異なり、また位相が逆相からずれてしまって平衡度が劣化することがあるが、上記の構成により、不平衡側信号用引き出し配線と平衡側信号用引き出し配線とが、絶縁体を介して交差して配設して形成された容量形成部により、弾性表面波装置の等価回路上に導入される容量を、第1及び第2の弾性表面波素子において調整することが可能となり、振幅平衡度及び位相平衡度を向上させることができる。
【0030】
また、上記の構成と同様に、弾性表面波素子の各IDT電極及び反射器電極のバスバー電極を中心共通バスバー電極部として一体化したことにより、弾性表面波素子の面積を極力低減することができ、弾性表面波装置を極端に小型化することが可能である。
【0031】
本発明の通信装置は、上記いずれかの本発明の弾性表面波装置を有する、受信回路及び送信回路の少なくとも一方を備えたことにより、従来より要求されていた厳しい挿入損失を満たすことができるものが得られ、感度が格段に良好な通信装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の弾性表面波装置の実施の形態について図面を参照にしつつ詳細に説明する。また、本発明の弾性表面波素子について、簡単な構造の共振器型の弾性表面波フィルタを例にとり説明する。なお、以下に説明する図面において同一構成には同一符号を付すものとする。また、各電極の大きさや電極間の距離等、電極指の本数や間隔等については、説明のために模式的に図示している。
【0033】
図1は、本発明の弾性表面波装置について実施の形態の1例を示す平面図である。
【0034】
図1に示すように、本発明の弾性表面波装置は、圧電基板上1に、圧電基板1上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、この伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えたIDT電極2,3と、伝搬方向に沿ってIDT電極2,3の両側に配置された反射器電極10〜13とを備えた第1及び第2の弾性波表面共振子18,19と、伝搬方向に沿って、伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極4〜6及び7〜9と、この奇数個のIDT電極4〜6及び7〜9の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極14〜17とを有する第1及び第2の弾性表面波素子20,21とが形成された弾性表面波装置であって、第1及び第2の弾性波表面共振子18,19は、伝搬方向に延びるように形成された中心共通バスバー電極25の両側に、中心共通バスバー電極25によって互いに接続されて形成されているとともに、中心共通バスバー電極25に不平衡信号端子(不平衡入力端子22または不平衡出力端子22)が接続されており、第1及び第2の弾性表面波素子20,21は、伝搬方向に延びるように形成されるとともにIDT電極4〜9及び反射器電極14〜17のそれぞれに形成された中心共通バスバー電極部29の両側に、中心共通バスバー電極部29によって互いに接続されて形成されており、第1及び第2の弾性表面波素子20,21と第1及び第2の弾性表面波共振子18,19とは、互いに隣接して伝搬方向に直交する方向において並んで配置されており、第1及び第2の弾性表面波素子20,21のそれぞれの中央のIDT電極5,8のバスバー電極が平衡信号端子(平衡入力端子23,24または平衡出力端子23,24)に接続され、第1及び第2の弾性表面波素子20,21のそれぞれの中央のIDT電極以外のもののバスバー電極が第1及び第2の弾性表面波共振子18,19のIDT電極のバスバー電極に並列接続されている。
【0035】
この構成により、中心共通バスバー電極25によって第1及び第2の弾性表面波共振子18,19が接続されて、共通化して形成されていることにより、IDT電極の交差幅を従来の弾性表面波共振子の約半分にまで狭くすることができ、また、従来の弾性表面波共振子と比べて抵抗損失を小さくすることができるので、弾性表面波共振子による挿入損失を小さくすることができる。
【0036】
また、同様に、中心共通バスバー電極部29によって第1及び第2の弾性表面波素子20,21が接続されて、共通化して形成されていることにより、それらを接続する引き出し電極を省略することができ、弾性表面波素子を極めて小型にすることができる。
【0037】
また、第1及び第2の弾性表面波素子20,21が、弾性表面波の伝搬方向に直交する方向において2つの弾性表面波共振子18,19と並んで配置されているとともに、弾性表面波共振子に並列接続されているので、従来の弾性表面波素子と比べて抵抗損失を小さくすることができ、弾性表面波素子による挿入損失を小さくすることができる。
【0038】
さらに、中心共通バスバー電極25により共通化された第1及び第2の弾性表面波共振子18,19と、中心共通バスバー電極部29により共通化された第1及び第2の弾性表面波素子20,21とが、弾性表面波の伝搬方向に対して直交した方向に並行して配置されており、反射器電極も共通化されているため、弾性表面波装置全体の面積を小さくすることができ、弾性表面波装置を極めて小型化することができる。さらに、圧電基板ウェハ1枚当たりの弾性表面波装置の取り数を多くすることができ、弾性表面波装置の部材コストを大幅に削減することができる。
【0039】
本発明の図1の弾性表面波装置において、第1及び第2の弾性表面波共振子18,19は、中心共通バスバー電極25を中心にして、線対称状に形成される。また、第1及び第2の弾性表面波素子20,21は、中心共通バスバー電極部29を中心にして、線対称状に形成される。
【0040】
ただし、第1及び第2の弾性表面波素子20,21について、それらの特性を異なるものとする場合には、第1及び第2の弾性表面波素子20,21を、中心共通バスバー電極部29を中心にして、全体的には線対称状に形成するが、電極指の長さや極性等を異なるようにしてもよい。
【0041】
また、中心共通バスバー電極25の幅は、それに対向するバスバー電極と同じ幅であり、単に弾性表面波共振子を2つ繋げると、中心共通バスバー電極25の幅はそれに対向するバスバー電極の2倍になるが、そのような構成にせずともよい。従って、単に弾性表面波共振子を2つ繋げた場合よりも小型化が達成される。
【0042】
また、中心共通バスバー電極部29の幅は、それに対向するバスバー電極と同じ幅であり、単に弾性表面波素子を2つ繋げると、中心共通バスバー電極部29の幅はそれに対向するバスバー電極の2倍になるが、そのような構成にせずともよい。従って、単に弾性表面波素子を2つ繋げた場合よりも小型化が達成される。
【0043】
なお、中心共通バスバー電極25は、弾性表面波の伝搬方向に一直線状に延びるように連続して形成される。一方、中心共通バスバー電極部29は、弾性表面波の伝搬方向に一直線状に延びるように形成されるとともにIDT電極4〜9及び反射器電極14〜17のそれぞれに形成される。即ち、中心共通バスバー電極部29は断続的に形成される。
【0044】
また、図2に、本発明の弾性表面波装置について、好適な例であって実施の形態の他例の平面図を示す。図2に示すように、上記図1の構成において、第1及び第2の弾性波表面共振子18,19は、中心共通バスバー電極25上に、それに沿って絶縁体26を介して形成されるとともに、IDT電極2,3に接続された引き出し電極27が設けられており、この引き出し電極27が不平衡入力端子22または不平衡出力端子22に接続されている。
【0045】
これにより、中心共通バスバー電極25上の絶縁体26及びその上に形成された引き出し電極27が形成されているため、中心共通バスバー電極25上の構造物のトータル厚みが厚くなり、中心共通バスバー電極25上において、金属膜と絶縁体26による質量効果が従来のバスバー電極構造と比較して大きくはたらくこととなる。その結果、中心共通バスバー電極25部において弾性表面波の音速が遅くなっている。この構成により、弾性表面波の励振に寄与しないIDT電極の共通電極近傍における音速を、弾性表面波の励振に寄与する電極指交差部領域の音速より遅くすることができ、弾性表面波のエネルギーを閉じ込めることが可能となり、挿入損失を低減し、通過帯域におけるフィルタ特性の急峻性を向上させた弾性表面波装置を提供することができる。
【0046】
この引き出し電極27は、IDT電極や中心共通バスバー電極25と同じ材質のアルミニウムやアルミニウム合金等から成り、その幅は中心共通バスバー電極25と同程度であり、引き出し電極27の電極膜厚は0.15μm〜0.40μm程度である。
【0047】
また、絶縁体26は、酸化シリコン、ポリイミド系樹脂またはアクリル系樹脂のレジスト等の材料から成り、中心共通バスバー電極25と同程度の幅で、厚みは1μm〜10μm程度である。厚みが1μm未満では、引き出し電極27と中心共通バスバー電極25との間の絶縁性を確保するのが難しくなり、10μmを超えると、引き出し電極27等の配線の断線の発生を抑制することが難しくなり、弾性表面波装置の信頼性が低下し易くなる。
【0048】
また、絶縁体26は、単層からなっていてもよいが、複数層を積層したものであってもよい。また、絶縁体26の誘電率を小さくするために、誘電率が1の気泡を多く含む多孔質体としたり、または誘電率を大きくするためにアルミナやチタン酸バリウム等の高誘電率の粒子を含有させてもよい。また、中心共通バスバー電極25部の音速をより遅くするために、絶縁体26に比重の大きいセラミック粒子等を混入させてもよい。
【0049】
また、図3に本発明の弾性表面波装置について実施の形態の他例を示す平面図を示す。図3に示すように、本発明の弾性表面波装置は、圧電基板上1に、圧電基板1上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えたIDT電極2,3と、伝搬方向に沿ってIDT電極2,3の両側に配置された反射器電極10〜13とを備えた第1及び第2の弾性波表面共振子18,19と、圧電基板1上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極4〜9と、奇数個のIDT電極4〜9の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極14〜17とからなる第1及び第2の弾性表面波素子20,21とが形成された弾性表面波装置であって、第1及び第2の弾性波表面共振子18,19は、伝搬方向に延びるように形成された中心共通バスバー電極25の両側に、中心共通バスバー電極25によって互いに接続されて形成されているとともに、中心共通バスバー電極25に不平衡入力端子22または不平衡出力端子22が接続されており、第1及び第2の弾性表面波素子20,21は、伝搬方向に延びるように形成された中心共通バスバー電極部29の両側に、中心共通バスバー電極部29によって互いに接続されて形成されており、第1及び第2の弾性表面波素子20,21と第1及び第2の弾性表面波共振子18,19とは、弾性表面波の伝搬方向において並んで配置されているとともに、第1及び第2の弾性表面波素子20,21のそれぞれの中央のIDT電極5,8のバスバー電極が平衡入力端子23,24または平衡出力端子23,24に接続され、第1及び第2の弾性表面波素子20,21のそれぞれの中央のIDT電極以外のもののバスバー電極が第1及び第2の弾性表面波共振子18,19のIDT電極のバスバー電極に並列接続されている。
【0050】
これにより、中心共通バスバー電極25によって第1及び第2の弾性表面波共振子18,19が接続されて、共通化して形成されていることにより、IDT電極の交差幅を従来の弾性表面波共振子の約半分にまで狭くすることができ、また、従来の弾性表面波素子と比べて抵抗損失を小さくすることができるので、弾性表面波素子による挿入損失を小さくすることができる。
【0051】
また、中心共通バスバー電極部29によって第1及び第2の弾性表面波素子20,21が接続されて、共通化して形成されていることにより、それらを接続する引き出し電極を省略することができ、弾性表面波素子を極めて小型にすることができる。
【0052】
さらに、中心共通バスバー電極25により共通化された第1及び第2の弾性表面波共振子18,19、及び中心共通バスバー電極部29により共通化された第1及び第2の弾性表面波素子20,21が、それぞれ弾性表面波の伝搬方向に対して直交した方向に並行して配置されており、反射器電極10〜17も共通化されているため、弾性表面波装置全体の面積を小さくすることができ、弾性表面波装置を極めて小型化することができる。
【0053】
また、弾性表面波共振子と弾性表面波素子を、弾性表面波の伝搬方向に対して並べて配置することにより、中心共通バスバー電極25及び中心共通バスバー電極部29に対して全体として略対称な電極の配置を実現することができるので、弾性表面波装置の平衡度を向上させることができる。さらに、圧電基板ウェハ1枚当たりの弾性表面波装置の取り数を多くすることができ、弾性表面波装置の部材コストを大幅に削減することができる。
【0054】
また、図4に、本発明の弾性表面波装置について、好適な例であって実施の形態の他例を示す平面図を示す。図4に示すように、上記図3の構成において、第1及び第2の弾性波表面共振子18,19は、中心共通バスバー電極25上に、それに沿って絶縁体26を介して形成されるとともに、IDT電極2,3に接続された引き出し電極27が設けられており、この引き出し電極27が不平衡入力端子22または不平衡出力端子22に接続されている。
【0055】
これにより、中心共通バスバー電極25上に、絶縁体26及びその上に引き出し電極27が形成されているため、中心共通バスバー電極25上の構造物のトータル厚みが厚くなり、中心共通バスバー電極25上において、金属膜と絶縁体26による質量効果が従来のバスバー電極構造と比較して大きくはたらくこととなる。その結果、中心共通バスバー電極25部において弾性表面波の音速が遅くなっている。この構成により、弾性表面波の励振に寄与しないIDT電極の共通電極近傍における音速を、弾性表面波の励振に寄与する電極指交差部領域の音速より遅くすることができ、弾性表面波のエネルギーを閉じ込めることが可能となり、挿入損失を低減し、通過帯域におけるフィルタ特性の急峻性を向上させた弾性表面波装置を提供することができる。
【0056】
また、図1〜図4に示すように、本発明の弾性表面波装置は、第1及び第2の弾性表面波素子20,21は、平衡信号端子と第1及び第2の弾性表面波素子20,21のそれぞれの中央のIDT電極5,8とを接続する平衡側信号用引き出し配線30と、第1及び第2の弾性表面波素子20,21と第1及び第2の弾性表面波共振子18,19とを接続する不平衡側信号用引き出し配線31とが、絶縁体28を介して交差して配設されていることによって、第1及び第2の弾性表面波素子20,21と第1及び第2の弾性表面波共振子18,19との接続部に容量形成部32が設けられている。
【0057】
これにより、弾性表面波装置の等価回路上に導入される容量を、第1及び第2の弾性表面波素子20,21において調整することが可能となり、振幅平衡度及び位相平衡度を向上させることができる。
【0058】
また、絶縁体28は、酸化シリコン、ポリイミド系樹脂またはアクリル系樹脂のレジスト等の材料から成り、平衡側信号用引き出し配線30の幅よりも大きな幅で、厚みは1μm〜10μm程度である。厚みが1μm未満では、不平衡側信号用引き出し配線31と平衡側信号用引き出し配線30との間の絶縁性を確保することが難しくなり、10μmを超えると、平衡側信号用引き出し配線30の断線の発生を抑制することが難しくなり、弾性表面波装置の信頼性が低下し易くなる。
【0059】
また、絶縁体28は、単層からなっていてもよいが、複数層を積層したものであってもよい。また、絶縁体28の誘電率を小さくするために、誘電率が1の気泡を多く含む多孔質体としたり、または誘電率を大きくするためにアルミナやチタン酸バリウム等の高誘電率の粒子を含有させてもよい。
【0060】
なお、IDT電極2〜9,反射器電極10〜17の電極指の本数は数本〜数100本にも及ぶので、簡単のため、図面においてはそれらの形状を簡略化して図示している。
【0061】
次に、本発明の弾性表面波装置の製造方法について説明する。図1の構成の場合、まず、圧電基板1上に導体層を形成し、この導体層を一対の平行な共通電極(バスバー電極)と各共通電極から互いに噛み合うように延びた複数の電極指とにパターニングしてIDT電極2〜9を形成し、IDT電極2〜9上を絶縁体(保護膜)で被覆し、引き出し電極及びパッド電極部となる導体層をリフトオフ工程またはフォトリソグラフィにより形成する。
【0062】
ここで、圧電基板1としてはタンタル酸リチウム単結晶やニオブ酸リチウム単結晶や四ホウ酸リチウム単結晶等を用いることができる。
【0063】
また、圧電基板1上に形成する導体層として、アルミニウム,アルミニウム合金,銅,銅合金,金,金合金,タンタル,タンタル合金、またはこれらの材料から成る層の積層膜、またはこれらの材料の層とチタン,クロム等の材料の層との積層膜を用いることができる。引き出し電極及びパッド電極部となる導体層としては、アルミニウム層、アルミニウム及びクロム等の材料の層の積層膜、クロム,ニッケル,金等の材料の層の積層膜等を用いることができる。導体層の成膜方法としては、スパッタリング法や電子ビーム蒸着法を用いることができる。
【0064】
この導体層をパターニングする方法としては、導体層の成膜後にフォトリソグラフィを行い、次いでRIE(Reactive Ion Etching)やウェットエッチングを行う方法がある。または、導体層の成膜前に圧電基板1の一方主面にレジストを形成しフォトリソグラフィを行って所望のパターンの開口を形成した後、導体層を成膜し、その後レジストを不要部分に成膜された導体層ごと除去するリフトオフプロセスを行ってもよい。
【0065】
次に、IDT電極2〜9を保護するための絶縁体(保護膜)を成膜する。絶縁体(保護膜)の材料としてはシリコン,シリカ等を用いることができる。成膜方法としては、スパッタリング法,CVD(Chemical Vapor Deposition)法,電子ビーム蒸着法等を用いることができる。
【0066】
なお、絶縁体28は、感光性ポリイミド樹脂を用いて、スピンコート法によって圧電基板1上に感光性ポリイミド樹脂を塗布した後、所定箇所を露光し現像する工程によって形成される。
【0067】
また、本発明の弾性表面波装置を通信装置に適用することができる。即ち、少なくとも受信回路及び送信回路の一方を備え、これらの回路に含まれるバンドパスフィルタとして用いる。例えば、送信回路から出力された送信信号をミキサでキャリア周波数にのせて、不要信号をバンドパスフィルタで減衰させ、その後、パワーアンプで送信信号を増幅して、デュプレクサを通ってアンテナより送信することができる送信回路を備えた通信装置や、受信信号をアンテナで受信し、デュプレクサを通った受信信号をローノイズアンプで増幅し、その後、バンドパスフィルタで不要信号を減衰して、ミキサでキャリア周波数から信号を分離し、この信号を取り出す受信回路へ伝送するような受信回路を備えた通信装置に適用可能であり、本発明の弾性表面波装置を採用すれば、感度が向上した優れた通信装置を提供できる。
【0068】
以上により、優れた弾性表面波装置を有する受信回路や送信回路を備え、感度が格段に良好な優れた通信機等の通信装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の弾性表面波装置について実施の形態の1例を示す平面図である。
【図2】本発明の弾性表面波装置について実施の形態の他例を示す平面図である。
【図3】本発明の弾性表面波装置について実施の形態の他例を示す平面図である。
【図4】本発明の弾性表面波装置について実施の形態の他例を示す平面図である。
【図5】従来の弾性表面波装置の電極構造の平面図及び電極指ピッチの変化を示すグラフである。
【図6】従来の弾性表面波装置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0070】
1:圧電基板
2〜9:IDT電極
10〜17:反射器電極
18:第1の弾性表面波共振子
19:第2の弾性表面波共振子
20:第1の弾性表面波素子
21:第2の弾性表面波素子
25:中心共通バスバー電極
27:引き出し電極
28:絶縁体
29:中心共通バスバー電極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板上に、該圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、該伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えたIDT電極と、前記伝搬方向に沿って前記IDT電極の両側に配置された反射器電極とを備えた第1及び第2の弾性波表面共振子と、
前記伝搬方向に沿って、前記伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、該奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する第1及び第2の弾性表面波素子とが形成された弾性表面波装置であって、
前記第1及び第2の弾性波表面共振子は、前記伝搬方向に延びるように形成された中心共通バスバー電極の両側に、前記中心共通バスバー電極によって互いに接続されて形成されているとともに、前記中心共通バスバー電極に不平衡信号端子が接続されており、
前記第1及び第2の弾性表面波素子は、前記伝搬方向に延びるように形成されるとともにIDT電極及び反射器電極のそれぞれに形成された中心共通バスバー電極部の両側に、前記中心共通バスバー電極部によって互いに接続されて形成されており、
前記第1及び第2の弾性表面波素子と前記第1及び第2の弾性表面波共振子とは、互いに隣接して前記伝搬方向に直交する方向において並んで配置されており、
前記第1及び第2の弾性表面波素子のそれぞれの中央の前記IDT電極のバスバー電極が平衡信号端子に接続され、前記第1及び第2の弾性表面波素子のそれぞれの中央の前記IDT電極以外のもののバスバー電極が前記第1及び第2の弾性表面波共振子の前記IDT電極のバスバー電極に並列接続されていることを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項2】
圧電基板上に、該圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、該伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えたIDT電極と、前記伝搬方向に沿って前記IDT電極の両側に配置された反射器電極とを備えた第1及び第2の弾性波表面共振子と、
前記伝搬方向に沿って、前記伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極と、該奇数個のIDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する第1及び第2の弾性表面波素子とが形成された弾性表面波装置であって、
前記第1及び第2の弾性波表面共振子は、前記伝搬方向に延びるように形成された中心共通バスバー電極の両側に、前記中心共通バスバー電極によって互いに接続されて形成されているとともに、前記中心共通バスバー電極に不平衡信号端子が接続されており、
前記第1及び第2の弾性表面波素子は、前記伝搬方向に延びるように形成されるとともにIDT電極及び反射器電極のそれぞれに形成された中心共通バスバー電極部の両側に、前記中心共通バスバー電極部によって互いに接続されて形成されており、
前記第1及び第2の弾性表面波素子と前記第1及び第2の弾性表面波共振子とは、弾性表面波の前記伝搬方向において並んで配置されているとともに、
前記第1及び第2の弾性表面波素子のそれぞれの中央の前記IDT電極のバスバー電極が平衡信号端子に接続され、前記第1及び第2の弾性表面波素子のそれぞれの中央の前記IDT電極以外のもののバスバー電極が前記第1及び第2の弾性表面波共振子の前記IDT電極のバスバー電極に並列接続されていることを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の弾性波表面共振子は、前記中心共通バスバー電極上に、それに沿って絶縁体を介して形成されるとともに、前記IDT電極に接続された引き出し電極が設けられており、該引き出し電極が前記不平衡信号端子に接続されていることを特徴とする請求項1または2記載の弾性表面波装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の弾性表面波素子は、前記平衡信号端子と前記第1及び第2の弾性表面波素子のそれぞれの中央の前記IDT電極とを接続する平衡側信号用引き出し配線と、前記第1及び第2の弾性表面波素子と前記第1及び第2の弾性表面波共振子とを接続する不平衡側信号用引き出し配線とが、絶縁体を介して交差して配設されていることによって、前記第1及び第2の弾性表面波素子と前記第1及び第2の弾性表面波共振子との接続部に容量形成部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の弾性表面波装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか記載の弾性表面波装置を有する、受信回路及び送信回路の少なくとも一方を備えたことを特徴とする通信装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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