説明

弾球遊技機

【課題】遊技者による前後方向の操作によって遊技球の発射勢を増減させることができることが可能な弾球遊技機の提供。
【解決手段】ベース体3と、前後方向に移動可能にベース体3に支持されるとともに、遊技者に前方から押圧操作されるカバー4と、カバー4を前方に付勢するカバーバネ6と、主回転軸心C1を中心として発射勢増大方向及び発射勢減少方向へ回転自在にベース体3に支持され、円弧状の伝達歯車部83を有する伝達ギヤ体8と、調整回転軸心C2を中心として回転自在にベース体3に支持され、伝達歯車部83と噛合する調整歯車部92を有し、伝達ギヤ体8の回転をボリューム2に伝達する調整ギヤ体9と、伝達ギヤ体8とカバー4との間に設けられ、カバー4の後方への移動に連動して、伝達ギヤ体8を発射勢増大方向に回転させ、且つカバー4の前方への移動に連動して、伝達ギヤ体8を発射勢減少方向に回転させる操作伝達機構12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技盤の遊技領域に遊技球を発射して遊技を行う弾球遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パチンコ遊技機の正面右下部に突設された打球発射ハンドルが記載されている。この打球発射ハンドルは、パチンコ遊技機の前面枠に固定された取付基盤と、環状に形成され、外周に指掛片が突設され、また、中心に回転軸が固定された操作レバーと、打球発射を制御するために電気的に接続された制御用スイッチが固定された取付板と、コイル状のバネと、球面状で内面に突軸部が一体に形成されたスイッチ操作ボタンと、隙間封鎖用の環状体と、略1/4の球面状で内面には固定軸が一体に形成されている固定ドーム部材と、を有している。操作レバーの回転軸の他端部は、打撃強度調整用の引張ワイヤに巻回されたプーリに固着されている。打球発射ハンドルは、取付基盤の前方に、操作レバーと取付板とスイッチ操作ボタンと環状体と固定ドーム部材とをその順に重ねるとともに、スイッチ操作ボタンの突軸部を制御用スイッチの作動部に対峙させ、バネを取付板とスイッチ操作ボタンの間に圧縮状態にて介在させ、固定ドーム部材を取付基盤に固定することによって構成される。操作レバーは、取付基盤に回転自在に支持される。
【0003】
この打球発射ハンドルでは、遊技者は固定ドーム部材を手で握り、その指を指掛片に引っ掛けて操作レバーを回転させ、引張ワイヤを牽引することにより、打球の打撃強度を調整し、打球を所望の飛距離で発射させる。また、スイッチ操作ボタンの押圧によって、制御用スイッチをオン又はオフさせることで打球の発射を継続又は停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−45480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の打球発射ハンドルのように、遊技球の発射勢の増減を操作レバーの回転操作によって行うことは、遊技者にとって広く知られた一般的な操作である。このため、所望の発射勢で遊技球を発射させるための操作(発射操作)に遊技者の興味を引き付けることはできない。
【0006】
そこで本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、斬新な発射操作によって遊技者の興味を引き付けることが可能な弾球遊技機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、遊技球を発射する発射装置と、発射装置における遊技球の発射勢を変更する発射勢変更手段と、発射勢変更手段を操作するための発射操作装置とを備えた弾球遊技機であって、発射操作装置は、ベース体と、押圧操作部と、押圧操作部付勢手段と、伝達ギヤ体と、調整ギヤ体と、操作伝達機構と、を備える。
【0008】
ベース体は、弾球遊技機に固定される。押圧操作部は、ベース体の前方に配置され、前後方向に移動可能にベース体に支持されるとともに、遊技者に前方から押圧操作される。押圧操作部付勢手段は、ベース体と押圧操作部との間に配置され、押圧操作部を前方に付勢する。伝達ギヤ体は、ベース体と押圧操作部との間に配置され、主回転軸心を中心として発射勢増大方向及び発射勢減少方向へ回転自在にベース体に支持され、主回転軸心を中心とした円弧状の伝達歯車部を有する。調整ギヤ体は、ベース体と押圧操作部との間に配置され、主回転軸心と略平行な調整回転軸心を中心として回転自在にベース体に支持され、調整回転軸心を中心とした円弧状であって伝達歯車部と噛合する調整歯車部を有し、伝達ギヤ体の回転を発射勢変更手段に伝達する。操作伝達機構は、伝達ギヤ体と押圧操作部との間に設けられ、押圧操作部の後方への移動に連動して、伝達ギヤ体を発射勢増大方向に回転させ、且つ押圧操作部の前方への移動に連動して、伝達ギヤ体を発射勢減少方向に回転させる。
【0009】
上記構成では、押圧操作部は、遊技者からの操作を受けない初期状態では、押圧操作部付勢手段によって前方へ付勢される。
【0010】
遊技を開始する遊技者は、操作部を前方から押圧する。操作部が前方から押圧され、後方へ移動すると、操作伝達機構は伝達ギヤ体を発射勢増大方向に回転させ、伝達ギヤ体の回転が調整ギヤ体を介して発射勢変更手段に伝達され、遊技球の発射勢が増大する。また、遊技者が遊技中に操作部の押圧を弱め、操作部が前方へ移動すると、操作伝達機構は伝達ギヤ体を発射勢減少方向に回転させ、伝達ギヤ体の回転が調整ギヤ体を介して発射勢変更手段に伝達され、遊技球の発射勢が減少する。すなわち、遊技者は、操作部を押圧操作し、操作部の前後方向の移動量を適宜調節することによって、所望の発射勢で遊技球を発射することができる。
【0011】
このため、押圧操作部を押圧操作するという斬新な発射操作によって、遊技者の興味を引き付けることができる。また、手首や肘に障害があり、操作レバーを回転操作することが困難な遊技者においても、容易に発射操作を行わせることができる。
【0012】
また、上記発射操作装置は、ベース体と押圧操作部との間に配置され、主回転軸心を中心として発射勢増大方向及び発射勢減少方向へ回転自在にベース体に支持され、遊技者に回転操作される回転操作部を備えてもよい。この場合、伝達ギヤ体は、回転操作部に回転不能に連結され、回転操作部の発射勢増大方向及び発射勢減少方向への回転に伴って発射勢増大方向及び発射勢減少方向に回転する。
【0013】
上記構成では、遊技者が回転操作部を回転操作し、回転操作部が発射勢増大方向及び発射勢減少方向へ回転すると、伝達ギヤ体は、この回転に伴って発射勢増大方向及び発射勢減少方向に回転する。すなわち、遊技者は、回転操作部の回転量を適宜調整することによっても所望の発射勢で遊技球を発射することができる。
【0014】
このため、遊技者に、発射操作として、操作部への押圧操作、又は、回転操作部への回転操作を適宜選択させることができる。したがって、例えば遊技者が回転操作部を回転操作して所望の回転位置に保持していた場合に、遊技領域の右側領域への遊技球の発射が要求される遊技(右打ち遊技)への移行のように、遊技の途中で遊技球の発射勢を増大させる必要が生じたときは、遊技者は回転操作部を更に回転操作することなく、押圧操作部を押圧操作することによって遊技球の発射勢を増大させることができるので、右打ち遊技への移行時に容易に、且つ即座に遊技球の発射勢を増大させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、斬新な発射操作によって遊技者の興味を引き付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の発射操作装置の(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【図2】図1の発射操作装置の分解斜視図である。
【図3】図1の発射操作装置の初期状態を示す側断面図(図1のA−A矢視断面図)である。
【図4】図1の発射操作装置のカバーが後方へ移動した状態を示す正面図である。
【図5】図4のC−C矢視切断面図である。
【図6】図1の発射操作装置の初期状態を示す要部側断面図(図1のB−B矢視断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下では、遊技者側を前方とし、弾球遊技機側を後方とし、前方から視た左右を左右方向として説明する。ハンドルリング、伝達ギヤ体の発射勢増大方向は、前方から視て右回り(時計回り)であり、調整ギヤ体の発射勢増大方向は左回り(反時計回り)であり、また、カバーの発射勢増大方向は、後方である。また、図2、図3、図5及び図6中の矢印は、上記前方を示す。
【0018】
図1から図6に示すように、本実施形態の弾球遊技機(パチンコ機)は、遊技機本体(図示省略)に内蔵されて遊技盤の遊技領域(図示省略)に遊技球を発射する発射装置(図示省略)と、発射装置のモータ等の駆動源に通電される電流値を増減して発射装置における遊技球の発射勢を変更するボリューム(可変抵抗器:発射勢変更手段)2と、ボリューム2を操作するための発射操作装置1とを備える。遊技者は、発射操作装置1を操作することによって、遊技球の発射の開始及び停止や発射勢の調節を行う。
【0019】
ボリューム2は、ボリューム本体21と、ボリューム本体21から前方へ延びる調整軸22とを有する。調整軸22は、ボリューム本体21に回転自在に支持され、調整軸22が発射停止位置から発射勢増大方向へ回転することによって、発射装置における遊技球の発射勢が増大する。
【0020】
[発射操作装置の構造]
発射操作装置1は、遊技機本体に固定されるベース体3と、ベース体3の前側に取り付けられるドーム状のカバー4と、ベース体3とカバー4との間に配置されるハンドルリング5と、ハンドルリング5とカバー4との間に配置されるカバーバネ6と、ハンドルリング5の内側領域に設けられるハンドルバネ7と、を備えている。
【0021】
ベース体3は、遊技機本体に固定される円筒状の基部31と、基部31から前方に向かってテーパ状に拡径する収容部32と、基部31と収容部32との境界近傍で前後方向と略直交するベース板部33とを一体的に備える。ベース板部33の略中央には、筒状軸受部34が形成されている。
【0022】
収容部32が区画する内側領域には、ベース板部33から前方に延出する複数の円筒状のボス35と、ベース板部33から前方に延出し、ハンドルバネ7の一端部を係止するハンドルバネ係止部36と、一端が筒状軸受部34に挿入され、ベース体3に回転自在に支持される略円筒状の伝達ギヤ体8と、ベース体3の基部31に固定されたボリューム2の調整軸22に嵌合されて調整軸22と一体に回転する調整ギヤ体9と、ベース板部33から前方に延出し、調整ギヤ体9の回転範囲を規制する一対のボリューム規制部材37と、遊技球の発射を停止する発射停止スイッチ10及び発射停止ボタン11と、ベース板部33から前方に延出し、発射停車スイッチ10を支持する棒状のスイッチ支持部38と、ベース板部33から前方に延出し、発射停車ボタン11を回転自在に支持する棒状のボタン支持軸39と、が設けられている。また、収容部32の前端左下側の外周縁には、発射停止ボタン11が挿通する切欠部32aが形成されている。
【0023】
ボス35は、前後方向に延びる円筒状のボス本体35aと、ボス本体の前端部で前後方向と略直交するボス板部35b(図6参照)とを一体的に有する。ボス板部35bの中央には、前後方向に貫通する挿入孔35cが形成されている。挿入孔35cの内径は、ボス本体35aの内径よりも小さく設定されており、ボス板部35bの後面は、前後方向に略直交する方向で、且つ内周方向に突出する段部35dを形成する。
【0024】
伝達ギヤ体8は、後側が前側よりも細径である段付き円筒状の軸部81と、軸部の前端部から外周方向に突出するフランジ状の係合部82と、を一体的に有する。軸部81の後側が筒状軸受部34に前方から挿入されると、伝達ギヤ体8は、ベース体3に回転自在に支持される。伝達ギヤ体8の軸部81の前側の外周面には、伝達ギヤ体8の回転中心である主回転軸心C1を中心とした円弧状の伝達歯車部83が形成されている。
【0025】
また、伝達ギヤ体8の内側の前方には、内周面から内周方向に突出し、前後方向に所定の間隔を空けて、主回転軸心C1を挟んで相対向する一対の突起部84が形成されている。
【0026】
調整ギヤ体9は、ボリューム2の調整軸22が挿入される貫通孔91と、調整歯車部92と、調整ギヤ体9の回転範囲を規制するためのボリューム被規制部93とを備える。貫通孔91にボリューム2の調整軸22が挿通されると、調整ギヤ体9は、主回転軸心C1と略平行な調整回転軸心C2を中心として回転自在に、ボリューム2を介して、ベース体3に支持される。調整歯車部92は、調整回転軸心C2を中心とした円弧状であり、調整ギヤ体9の回転範囲に対応するセクタ歯車の歯部として形成されている。
【0027】
ボリューム被規制部93は、調整ギヤ体9の回転中心から半径方向に沿って、調整ギヤ体9の本体から外側に延出する。調整ギヤ体9がベース体3に支持されると、ボリューム被規制部93は、一対のボリューム規制部材37の間に配置される。ボリューム被規制部93がボリューム規制部材37に当接することによって、調整ギヤ体9の回転が規制される。ボリューム規制部材37が規制する回転範囲は、伝達歯車部83が規制する回転範囲よりも僅かに広く設定され、通常の使用状態では、ボリューム被規制部93はボリューム規制部材37に当接しない。なお、ボリューム被規制部93及びボリューム規制部材37は、発射操作装置1の組立時において、調整ギヤ体9を伝達歯車部81に噛み合わせる際の調整ギヤ体9の回転角度を決めるために用いられる。
【0028】
発射停止スイッチ10は、略矩形状体のスイッチ本体10aと、一端部が前後方向と直交する方向に回動可能にスイッチ本体に支持される回動部10bと、スイッチ本体10aの側面部に設けられ、回動部10bの他端部を収容部32の外側へ付勢する付勢部(図示省略)を有する。また、スイッチ本体10aの後面には、支持部挿通孔(図示省略)が設けられており、支持部挿通孔にスイッチ支持部38が挿通されると、発射停止スイッチ10はベース体2に回転不能に固定される。
【0029】
発射停止ボタン11は、一端部に軸受孔11aを有し、切欠部32aの右上方で軸受孔11aにボタン支持軸39が挿通されると、ベース体3に回転自在に支持される。発射停止ボタン11の他端部には、収容部32の外側にボタン被操作部11bが設けられている。また、略中央部の内側には、回動部10bに当接する当接部11cが設けられている。当接部11cが回動部10bに当接すると、ボタン被操作部11bは、発射停止スイッチ10の付勢部の付勢力によって、発射許可位置に移動し、切欠部32aから収容部32の外部へ突出する。遊技者によって、ボタン被操作部11bが上記付勢力に抗して発射許可位置から収容部の内側へ押下されると、ボタン被操作部11bは、発射停止位置に移動し、この移動に伴って当接部11cが発射停止スイッチ10の回動部10bを内側に押圧する。回動部10bが内側に押圧されると、発射停止スイッチ10は発射許可状態から発射禁止状態に切り替わり、発射停止スイッチ10から発射装置の発射制御部へ発射停止信号が出力される。ボタン被操作部11bが発射停止位置に維持されている間、発射停止スイッチ10は継続的に発射停止信号を出力し、発射停止信号を受信した発射装置は遊技球の発射を停止する。
【0030】
ハンドルリング5は、前後方向の長さが短い概略円筒状の円筒部51と、円筒部51の内部に設けられた概略円板状のベース板部52とを一体的に有し、円筒部51の外周部分には、遊技者が指をかけて握って操作するためのハンドル被操作部53が設けられている。
【0031】
ハンドルリング5のベース板部52の中央部には、前後方向に貫通する挿通孔54が形成されている。また、ベース板部52には、2箇所の長孔55が形成されている。長孔55は、主回転軸心C1を中心とした円弧状に形成されている。また、ベース板部52の前面には、前面から延出し、ハンドルリング5に対する遊技者の手の接触を検知するタッチセンサ56を係止するタッチセンサ係止部57が設けられ、また、前面の挿通孔54を挟んでタッチセンサ係止部57と相対向する位置から延出し、ハンドルリング5を発射勢減少方向に付勢するハンドルバネ7の他端部を係止するハンドルバネ係止部58が設けられている。被操作部53は、ハンドルリング5を把持して操作する遊技者の右手の指の間に位置するように、前方から視て略三角形状に突出する。
【0032】
また、ハンドルリング5のベース板部52の後面には前方に凹む係合凹部59(図3及び図5参照)が一体的に形成されている。係合凹部59は、伝達ギヤ体8の係合部82と相対回転が規制された状態で係合する。係合凹部59が係合部82と係合することによって、ハンドルリング5と伝達ギヤ体8とは回転不能に連結され、ハンドルリング5が、ベース体3に回転自在に支持され、遊技者からの回転操作を受けて伝達ギヤ体8と一体的に回転する。
【0033】
カバー4は、後方に向って拡径されるドーム状に形成され、ベース体3の収容部32の前方を覆う。カバー4の内側領域には、一端部がベース体3のハンドルバネ係止部36に、また、他端部がハンドルリング5のハンドルバネ係止部58に係止されるコイルバネのハンドルバネ7と、ハンドルリング5のタッチセンサ係止部57に係止されるタッチセンサ56とが設けられている。
【0034】
カバー4の後面(ドーム状の部分の裏面)のうちベース体3のボス35に対応する部分には、後方に突出する嵌合軸部41(図3及び図5参照)が形成されている。嵌合軸部41の後側には、中心部に切欠部42が形成されている(図6参照)。嵌合軸部41の後端部には、切欠部42を挟んで相対向する一対の分岐軸部43が形成されている。各分岐軸部43の後端部には、係止爪44が形成されている。係止爪44は、分岐軸部43の外周面から前後方向に直交する方向に外側に延出する係止面部44aと係止面部44aの外縁から係止爪44の先端部まで傾斜して延びる傾斜面部44bとを有する。
【0035】
また、カバー4の後面の略中央部には、後方へ延出する回転軸部45が形成されている。回転軸部45の後端部は、カバー4の外周縁(ドーム状の部分の外周縁)よりも後方へ突出する。また、回転軸部45の後端部の外周面には、螺旋状の溝46が形成されている。
【0036】
カバーバネ6は、カバー4の外周縁と略同径のコイルバネであり、ハンドルリング5の円筒部51の内側に収容される。
【0037】
ハンドルリング5は、ベース体3に前方から重なって組み付けられる。ハンドルリング5がベース体3に組み付けられると、ベース体3のボス35及びハンドルバネ係止部36は、ハンドルリング5の長孔55を挿通し、前方へ突出する。また、ハンドルリング5の挿通孔54とベース体3の伝達ギヤ体8の内側とが連通する。
【0038】
カバー4は、組み付け作業時において、ベース体3に組み付けられてカバーバネ6を円筒部51の内側に収容したハンドルリング5の前方から重なって、ベース体3に組み付けられる。組み付け作業者はカバー4の分岐軸部43の係止爪44の後端(傾斜面部44bの先端部)をボス35の挿入孔35cを区画するボス板部35bの内縁に当接させ、また、回転軸部45をハンドルリング5の挿通孔54と伝達ギヤ体8の内側に挿通させ、カバー4を後方へ押圧する。カバー4が押圧されると、カバー4の分岐軸部43が内側に撓み、傾斜面部44bがボス板部35bの内縁を摺動し、分岐軸部43は挿入孔35cを挿通し、カバー4は後方へ移動する。分岐軸部43が挿入孔35cを挿通すると、カバー4の前後方向に直交する方向の回転が規制される。
【0039】
また、カバー4の組み付け作業時において、上記のようにカバー4が後方へ移動すると、カバー4の外周縁(ドーム状部分の外周縁)とカバーバネ6とが当接する。なお、カバー4が更に後方へ移動すると、この移動に伴って、カバーバネ6は、カバー4の外周縁とハンドルリング5のベース板部52との間で収縮する。収縮したカバーバネ6は、カバー4を前方へ付勢する付勢力をカバー4の外周縁に付与する。
【0040】
また、カバー4の組み付け作業時において、上記のようにカバー4が後方へ移動し、所定位置に達すると、伝達ギヤ体8の突起部84が回転軸部45の螺旋状の溝46内へ進入し、突起部84と溝46とが相対移動可能な状態で係合する。カバー4が所定位置よりも後方へ移動した後、作業者がカバー4の押圧を解除することによって、カバー4の組み付け作業は終了する。以上のように、組み付けられたカバー4は、カバーバネ6によって前方へ付勢され、且つ、後述するようにカバー4の前方への移動はハンドルリング5の回転可能範囲により規制されて、上記所定位置よりも後方の前方の移動限界位置、すなわち遊技者からの操作を受ける前の発射停止位置に保持される(図3参照)。カバー4に後方への押圧力が作用すると、カバー4は回転せずに後方へ移動し、溝46に移動可能に係合している突起部84は、溝46の螺旋形状に沿って溝46内を一方向に移動し、すなわち溝46を区画する回転軸部45の外周面を時計回りに摺動し、伝達ギヤ体8が発射勢増大方向(時計回り)に回転する。また、カバー4に前方への押圧力が作用すると、カバー4は回転せずに前方へ移動し、突起部84は溝46の螺旋形状に沿って溝46内を他方向(カバー4に後方への押圧力が作用したときとは逆方向)に移動し、すなわち溝46を区画する回転軸部45の外周面を反時計回りに摺動し、伝達ギヤ体8が発射勢減少方向(反時計回り)に回転する。なお、溝46の前端から後端までの前後方向の距離は、カバー4の前後方向に移動可能な距離よりも長く設定されており、カバー4が後述する後方の移動限界位置に移動しても突起部84は溝46の前端に達することはなく、また、カバー4が前方の移動限界位置(発射停止位置)に移動しても突起部84は溝46の後端に達することはない。すなわち、カバー4の組み付け後は、突起部84と溝46とは常に係合している状態となる。
【0041】
上記のような構成によって、ハンドルリング5は、ベース体3及びカバー4に回転自在に支持される。ハンドルリング5の回転は、長孔55に挿通するボス35によって規制される。すなわち、ハンドルリング5の回転可能範囲は、長孔55の長さ(円弧方向の両端縁)によって、遊技者からの操作を受ける前の発射停止位置(図1(a)参照)から遊技球の発射勢が最大となる最大発射勢位置までの範囲に規定される。ハンドルリング5は、一端部がベース体3のハンドルバネ係止部36に、また、他端部がハンドルリング5のハンドルバネ係止部58に係止されたハンドルバネ7によって、発射勢減少方向(反時計回り)に付勢され、ボス35が長孔55の一端縁と当接することによって、発射停止位置に保持される。また、ハンドルリング5が発射勢増大方向(時計回り)へ最大発射勢位置まで回転すると、ボス35が長孔55の他端縁と当接する。
【0042】
上記のように構成される発射操作装置1において、発射停止位置のカバー4が後方へ押圧され、この押圧による押圧力がカバーバネ6からカバー4の外周縁に伝達される付勢力よりも大きい場合、カバー4は回転せずに後方へ移動(図5参照)する。カバー4の後方への移動に連動して、カバー4への押圧力(回転軸部45の溝46に作用する後方への押圧力)が、溝46に係合する伝達ギヤ体8の突起部84に回転力として伝達され、突起部84は溝46を区画する回転軸部45の外周面を時計回りに摺動し、伝達ギヤ体8が発射勢増大方向(時計回り)に回転する。また、カバー4が後方へ移動後、カバー4に与えられる押圧力がカバーバネ6の付勢力よりも小さくなった場合、カバー4は回転せずに前方へ移動する。カバー4の前方への移動に連動して、カバーバネ6の付勢力(溝46に作用する前方への押圧力)が突起部84に回転力として伝達され、突起部84は溝46を区画する回転軸部45の外周面を反時計回りに摺動し、伝達ギヤ体8が発射勢減少方向(反時計回り)に回転する。すなわち、突起部84と溝46とは、操作伝達機構12を構成する。なお、伝達ギヤ体8の発射勢増大方向及び発射勢減少方向の回転に伴い、伝達ギヤ体8と回転不能に連結されているハンドルリング5も発射勢増大方向に回転(図4参照)及び発射勢減少方向に回転する。
【0043】
また、ハンドルリング5が発射停車位置から発射勢増大方向(時計回り)に回転すると、ハンドルリング5に回転不能に連結されている伝達ギヤ体8が発射勢増大方向に回転し、ハンドルリング5が発射勢減少方向(反時計回り)に回転すると、伝達ギヤ体8は発射勢減少方向に回転する。伝達ギヤ体8の発射勢増大方向及び発射勢減少方向への回転に伴い、伝達ギヤ体8の突起部84はカバー4の螺旋状の溝46を区画する回転軸部45の外周面を時計回り及び反時計周りに摺動する。このため、ハンドルリング5及び伝達ギヤ体8の回転に連動して、カバー4が後方に移動(図5参照)及び前方に移動する。以上のように、ハンドリング5の発射勢増大及び発射勢減少方向の回転とカバー4の前後方向の移動は連動する。したがって、カバー4の前後方向の移動可能範囲(距離)は、ハンドルリング5の回転可能範囲によって規定される。すなわち、ハンドルリング5が発射停止位置にあるとき、カバー4の前方の移動限界位置となり、ハンドルリング5が最大発射勢位置にあるとき、カバー4の後方の移動限界位置となる。
【0044】
伝達ギヤ体8が発射勢増大方向又は発射勢減少方向への回転すると、この回転に連動して、伝達ギヤ体8の伝達歯車部83と噛合する調整歯車部92を有する調整ギヤ体9が発射勢増大方向(反時計回り)又は発射勢減少方向(時計回り)に回転する。これによって、ボリューム2の調整軸22が発射勢増大方向又は発射勢減少方向に回転し、発射装置における遊技球の発射勢が調整される。
【0045】
[遊技球の発射操作]
遊技者からの操作を受けない初期状態では、ボリューム2の調整軸22が発射勢停止位置に保持され、カバー4及びハンドルリング5も、それぞれ発射停止位置に保持される(図3参照)。
【0046】
遊技者は、遊技の開始時及び遊技中において、発射操作として、カバー4への押圧操作、又は、ハンドルリング5への回転操作を任意に選択することができる。
【0047】
発射操作としてカバー4への押圧操作を選択する場合、遊技者は、カバー4の前面(ドーム状部分の前面)に右手の掌又は指を当てて、カバー4を後方へ押圧する。この押圧操作による押圧力がカバーバネ6の付勢力(すなわち、カバーバネ6からカバー4の外周縁に伝達される付勢力)よりも大きくなると、カバー4は後方へ移動(図5参照)する。この移動に連動して、カバー4への押圧力(回転軸部45の溝46に作用する後方への押圧力)が、溝46に係合する伝達ギヤ体8の突起部84に回転力として伝達され、突起部84が溝46を区画する回転軸部45の外周面を時計回りに摺動し、伝達ギヤ体8が発射勢増大方向(時計回り)に回転する。伝達ギヤ体8が発射勢増大方向に回転すると、調整ギヤ体9及びボリューム2の調整軸22が発射勢増大方向に回転して、遊技球の発射勢が増大する。また、遊技者が上記押圧操作後、カバー4への押圧を弱め、押圧力がカバーバネ6の付勢力よりも小さくなると、カバー4が前方へ移動する。この移動に連動して、カバーバネ6の付勢力(溝46に作用する前方への押圧力)が突起部84に回転力として伝達され、突起部84が溝46を区画する回転軸部45の外周面を反時計回り摺動し、伝達ギヤ体8が発射勢減少方向(反時計回り)に回転する。伝達ギヤ体8が発射勢減少方向に回転すると、調整ギヤ体9及びボリューム2の調整軸22が発射勢減少方向に回転して、遊技球の発射勢が減少する。すなわち、遊技者は、押圧操作によるカバー4の発射停止位置からの前後方向の移動量を適宜調節することによって、所望の発射勢で遊技球を発射することができる。
【0048】
このため、カバー4を押圧操作するという斬新な発射操作によって、遊技者の興味を引き付けることができる。
【0049】
また、手首や肘に障害があり、操作レバーを回転操作することが困難な遊技者においても、容易に発射操作を行わせることができる。
【0050】
また、発射操作としてハンドルリング5への回転操作を選択する場合、遊技者は、ハンドルリング5を発射停車位置から発射勢増大方向(時計回り)に回転操作する。ハンドルリング5が発射勢増大方向に回転すると、伝達ギヤ体8が発射勢増大方向に回転する。伝達ギヤ体8が発射勢増大方向に回転すると、調整ギヤ9体及びボリューム2の調整軸22が発射勢増大方向に回転して、遊技球の発射勢が増大する。また、遊技者が遊技中にハンドルリング5を発射勢減少方向(反時計回り)に回転操作すると、伝達ギヤ体8が発射勢減少方向に回転する。伝達ギヤ体8が発射勢減少方向に回転すると、調整ギヤ体9及びボリューム2の調整軸22が発射勢減少方向に回転して、遊技球の発射勢が減少する。すなわち、遊技者は、ハンドルリング5を回転操作することによっても、所望の発射勢で遊技球を発射することができる。
【0051】
上記のように、遊技者は、発射操作として、カバー4への押圧操作、又は、ハンドルリング5への回転操作を適宜選択することができる。したがって、例えば遊技者がハンドルリング5を回転操作して所望の回転位置に保持していた場合に、遊技領域の右側領域への遊技球の発射が要求される遊技(右打ち遊技)への移行のように、遊技の途中で遊技球の発射勢を増大させる必要が生じたときは、遊技者は更にハンドルリング5を回転操作することなく、カバー4を押圧操作することで遊技球の発射勢を増大させることができ、右打ち遊技への移行時に容易に、且つ即座に遊技球の発射勢を増大させることができる。
【0052】
なお、遊技者がカバー4への押圧操作を行っている場合に、右打ち遊技へ移行したときは、遊技者は、カバー4を更に後方へ押圧して、カバー4を更に後方へ移動させ、遊技球の発射勢が増大させることもできる。また、カバー4への押圧操作を維持しながらハンドルリング5を発射勢増大方向へ回転操作して、遊技球の発射勢を増大させることもできる。
【0053】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、上記実施形態では、カバー3が前後方向に移動可能にベース体2に支持されている態様を説明したが、回転軸部45を含む移動カバー部と回転軸部45を含まない固定カバー部にカバー3を分割してもよい。この場合、固定カバー部の嵌合軸部41はボス35に前後方向に移動不能に固定される。すなわち、固定カバー部は、ベース体2に前後方向に移動不能に固定される。これによって、遊技者は、固定カバー部に右手の掌を当接させて、右手を固定カバー部に所望の位置で支持させながら、例えば、親指で移動カバー部を押圧操作することができる。
【0054】
また、本実施形態では、カバー4への押圧操作とハンドルリング5への回転操作のいずれによっても遊技球の発射勢の変更が可能な発射操作装置1について説明したが、ハンドルリング5を省略し、カバー4への押圧操作のみによって発射勢の変更を可能としてもよい。この場合、カバー4の後方への移動限界位置を、例えばカバー4の外周縁と最大限に収縮したカバーバネ6との当接によって規定し、カバー4の前方への移動限界位置を、カバー4の分岐軸部43の係止爪44の係止面部44aと、ボス35のボス板部35bの後面の段部35dとの当接によって(図6参照)上記所定位置よりも後方の発射停止位置に規定してもよい。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【符号の説明】
【0055】
1 発射操作装置
2 ボリューム
3 ベース体
4 カバー
45 回転軸部
46 溝
5 ハンドルリング
6 カバーバネ
8 伝達ギヤ体
83 伝達歯車部
84 突起部
9 調整ギヤ体
92 調整歯車部
12 操作伝達機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技球を発射する発射装置と、該発射装置における遊技球の発射勢を変更する発射勢変更手段と、該発射勢変更手段を操作するための発射操作装置とを備えた弾球遊技機であって、
前記発射操作装置は、
前記弾球遊技機に固定されるベース体と、
前記ベース体の前方に配置され、前後方向に移動可能に該ベース体に支持されるとともに、遊技者に前方から押圧操作される押圧操作部と、
前記ベース体と前記押圧操作部との間に配置され、前記押圧操作部を前方に付勢する押圧操作部付勢手段と、
前記ベース体と前記押圧操作部との間に配置され、主回転軸心を中心として発射勢増大方向及び発射勢減少方向へ回転自在に前記ベース体に支持され、前記主回転軸心を中心とした円弧状の伝達歯車部を有する伝達ギヤ体と、
前記ベース体と前記押圧操作部との間に配置され、前記主回転軸心と略平行な調整回転軸心を中心として回転自在に前記ベース体に支持され、前記調整回転軸心を中心とした円弧状であって前記伝達歯車部と噛合する調整歯車部を有し、前記伝達ギヤ体の回転を前記発射勢変更手段に伝達する調整ギヤ体と、
前記伝達ギヤ体と前記押圧操作部との間に設けられ、該押圧操作部の後方への移動に連動して、該伝達ギヤ体を発射勢増大方向に回転させ、且つ該押圧操作部の前方への移動に連動して、該伝達ギヤ体を発射勢減少方向に回転させる操作伝達機構と、を備える
ことを特徴とする弾球遊技機。
【請求項2】
請求項1に記載の弾球遊技機であって、
前記発射操作装置は、
前記ベース体と前記押圧操作部との間に配置され、前記主回転軸心を中心として発射勢増大方向及び発射勢減少方向へ回転自在に該ベース体に支持され、遊技者に回転操作される回転操作部を備え、
前記伝達ギヤ体は、前記回転操作部に回転不能に連結され、前記回転操作部の発射勢増大方向及び発射勢減少方向への回転に伴って発射勢増大方向及び発射勢減少方向に回転する
ことを特徴とする弾球遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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