説明

形態変形玩具用脚部材

【課題】足部に対する脛部の可動範囲を大きくしても、外観の美感を損ねることがない形態変形玩具用脚部材を提供する。
【解決手段】 第1のリンク部材29が、第2のリンク部材31の主要部である円板部31bを覆うことができる形状構造を有する。第2のリンク部材31が、第2の回り対偶の回転中心(軸部29iの軸中心)を中心にして所定の角度範囲を回転する際に、第2のリンク部材31における第3の回り対偶を形成する部分(31c、31d)は、第1のリンク部材29の外側に露出する。脛部の形状構造と、第3のリンク部材33及び第4のリンク部材35の形状構造とを、脛部を足部に最も近づけた状態のときの脛部の回動範囲(第1の角度範囲θ3)よりも、脛部を足部から最も離した状態での脛部の回動範囲(第2の角度範囲θ4)が大きくなるように定める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足部と、脛部と、足部と脛部とを連結する連結機構を有する足首部とを含む形態変形玩具用脚部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
実開昭61−45993号公報[特許文献1]には、上腿部をなす第一部材と、下腿部をなす第二部材と、第一部材と第二部材とを連結する連結機構を有する関節部材とからなる形態変形玩具用脚部材が開示されている。この公知の形態変形玩具用脚部材の関節部材には、第一部材の支軸が枢支される円形の透孔と、第二部材の支軸が枢支される長孔とが設けられており、第2部材の支軸が長孔内を摺動することができるようになっている。したがって第二部材が、第一部材に対して回動、屈曲且つ伸縮することができるので、第一部材に連結された第二部材の可動範囲をある程度大きくすることができる。
【特許文献1】実開昭61−45993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら従来の形態変形玩具用脚部材では、形態の変形のために第一部材に連結された第二部材の可動範囲を大きくしようとすると(すなわち下腿部の長さを変更しようとすると)、連結部材が必要以上に大きく外に露出してしまい、形態変形玩具の美観を大きく損ねてしまう問題があった。
【0004】
また、従来の形態変形玩具用脚部材では、バレリーナが爪先立ちしているときのように、爪先を真っ直ぐに延ばした状態で足を延ばした姿勢を作ろうとしても、足部に対して脛部の外装が大きな障害となって、そのような姿勢を作ることができなかった。
【0005】
本発明の目的は、下腿部の長さを変えることができて、しかも脛部の可動範囲を従来よりも大きくすることができる形態変形玩具用脚部材を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、足部に対する脛部の可動範囲を大きくしても、外観の美感を損ねることがない形態変形玩具用脚部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、足部と、脛部と、前記足部と前記脛部とを連結する連結機構を有する足首部とを含む形態変形玩具用脚部材を改良の対象とする。本発明では、連結機構を、足部と第1の回り対偶で連結される第1のリンク部材と、第1のリンク部材と第2の回り対偶で連結される第2のリンク部材と、第2のリンク部材と第3の回り対偶で連結される第3のリンク部材と、第3のリンク部材と第4の回り対偶で連結され且つ前記脛部と連結される第4のリンク部材とから構成する。回り対偶で連結するとは、二つのリンク部材が回り対偶の中心線を中心にして回動するように、二つのリンク部材を連結することである。第1のリンク部材は、第2のリンク部材の主要部を覆うことができる形状構造を有している。第2のリンク部材が第2の回り対偶の回転中心を中心にして所定の角度範囲を回転する際に、第2のリンク部材における第3の回り対偶を形成する部分は、第1のリンク部材の外側に露出している。そして、脛部の形状構造と、第3のリンク部材及び第4のリンク部材の形状構造とは、次の二つの動作が実現できるように構成されている。第1の動作は、第3のリンク部材が第3の回り対偶の回転中心を中心にして一方の回転方向に回転可能な最大角度まで回転し且つ第4のリンク部材が第4の回り対偶の回転中心を中心にして一方の回転方向とは逆の他方の回転方向に回転可能な最大角度まで回動したときに、第3のリンク部材及び第4のリンク部材を収納し且つ第1のリンク部材の一部を収納した第1の状態で、第2の回り対偶を中心にして脛部が第1の角度範囲内を回動し得る動作である。
【0008】
なお本願明細書において、「回転可能な最大角度」とは、第2乃至第4の回り対偶の回転中心が仮想の一直線上に沿って並んだ状態から、回転するリンク部材が、一方または他方の方向に回転したときに、他のリンク部材または他のリンク部材に対応して設けられているストッパ部等と当接して、その当接した位置よりもさらにその一方または他方の方向に回転できなくなるまでの角度を言う。
【0009】
また第2の動作は、第2の回り対偶の回転中心、第3の回り対偶の回転中心及び第4の回り対偶の回転中心が、仮想の一直線に沿って並んだときに、第3のリンク部材及び第4のリンク部材の大部分を収納した第2の状態で、第2の回り対偶の回転中心を中心にして第1の角度範囲よりも大きい第2の角度範囲内を脛部が回動し得る動作である。脛部の形状構造と、第3のリンク部材及び第4のリンク部材の形状構造とをこのように構成することにより、次のような変形が可能になる。すなわち、足部に対して脛部を最も近づけた状態である第1の状態のときと、足部に対して脛部を最も離した状態である第2の状態のときのいずれにおいても、第2のリンク部材の主要部は第1のリンク部材によって覆われており、しかも第3及び第4のリンク部材も脛部内に収納された状態になっているので、下腿部の外観の美観が損なうことなく、下腿部の長さを変えることができる。また第2の状態で、脛部を足部から最も離した状態では、第1の状態のように脛部を足部に最も近づけた状態のときの脛部の回動範囲(第1の角度範囲)よりも、脛部の回動範囲(第2の角度範囲)が大きいため、脛部と足部とが干渉する可能性が低くなって、爪先を脛部に対して真っ直ぐに延ばして、バレリーナの爪先立ちに似た姿勢まで、下腿部の形状を変形することができるようになる。
【0010】
第2の角度範囲をより大きくするためには、足部の裏面を平坦な設置面に完全に接触させた状態で、脛部を、第2の状態を維持して、第2の角度範囲内で他方の回転方向に回転させたときに、脛部が足部と接触することなく、設置面と接触するように足部の形状構造を定めるとよい。このように構成すると、脛部が足部に接触することがないので、バレリーナの爪先立ちに似た姿勢を確実に実現できる。
【0011】
足部に対して脛部を最も近づけた状態で、安定してまたはガタツキ無しに脛部を回動させるためには、第1乃至第4のリンク部材の形状構造を、次の二つの状態を構成できるように定めるのが好ましい。最初の状態は、第3のリンク部材が一方の回転方向に第3の回り対偶の回転中心を中心にして回動し、且つ第3のリンク部材の外面が第1のリンク部材または前記第2のリンク部材と当接した状態が、第3のリンク部材が第3の回り対偶の回転中心を中心にして一方の回転方向に第1の最大角度まで回転した状態である。そして次の状態は、第4のリンク部材または第3のリンク部材に、ストッパ部を設けて、第4のリンク部材が他方の回転方向に回転したときにストッパ部が第4のリンク部材または第3のリンク部材と接触した状態が、第4のリンク部材が第4の回り対偶の回転中心を中心にして一方の回転方向とは逆の他方の回転方向に第2の最大角度まで回動した状態である。これら二つの状態を構成できるように、第1乃至第4のリンク部材の形状構造を定めると、リンク部材同士の回動範囲がリンク部材同士またはリンク部材とストッパ部との接触によって確実に規制されるため、脛部を足部に最も近づけた状態で脛部を回動させても、下腿部の形状または姿勢が安定しており、ガタツキなく脛部を足部に対して回動変形させることができる。
【0012】
特にストッパ部を第4のリンク部材に設けた場合には、ストッパ部が第3のリンク部材以外のリンク部材の動きを干渉することがなく、変形をスムーズなものとすることができる。
【0013】
足部に脛部を最も近づけたときの脛部の回動範囲である第1の角度範囲は、第1の状態を維持して、脛部が第2の回り対偶の回転中心を中心にして回動したときに、脛部の一部が足部の一部と接触することにより確定されるようにしてもよい。このように構成すると、特別なストッパ部を設けることなく、回動範囲を規制することができる。
【0014】
また第2の回り対偶の回転中心を中心にして回転する第2のリンク部材の外周面が、円弧面を含むように構成し、第1のリンク部材の外周面と第2のリンク部材の円弧面とが、第2のリンク部材が回動する範囲において、常に面一になるように、第1のリンク部材の構造を定めてもよい。このように構成すると、第1のリンク部材と第2のリンク部材とが、あたかも一つの部材で構成されているように見せることができるので、形態変形玩具用脚部材の足首部の外観の美感を損なうことがない。
【0015】
第1の回り対偶は、第1のリンク部材が足部材に対してピボット運動することを許容するように構成してもよい。ここでピボット運動とは、回転運動と揺動運動の両方を同時に行うことができる運動である。このように構成すると、足首部に対する足部の可動範囲を十分に大きなものとすることができるのに加えて、足部の裏面と脛部の背面を平坦な設置面に完全に接触させるような変形をさせることも可能になる。さらに、第1の回り対偶をこのように構成すると、例えばロボット玩具の脚部材に本発明を適用した場合に、ロボット玩具の一対の脚部材を横に開き、片方の脚部材に重心をかけてその脚部材の膝を曲げたときに、他方の脚部材においても、第1の回り対偶があるために、他方の脚部材を横方向に曲げたとしても、他方の脚部材の足部の裏面を平坦な設置面に完全に接触させることができる。
【0016】
なおピボット運動をする第1の回り対偶は、第1のリンク部材に設けられた一部が球状をなす突起と、この突起を収容するように足部に形成された凹部とから構成することができる。このように第1の回り対偶を構成すれば、簡単な構造でピボット運動を許容する回り対偶を形成することができる。
【0017】
第2乃至第4の回り対偶は、各回り対偶がそれぞれ連結する2つのリンク部材の一方に設けられた軸と、2つのリンク部材の他方に設けられて軸の一部が回転可能に嵌る孔又は凹部とからなる連結構造を備えたものとしてそれぞれ構成してもよい。このように構成すると、各回り対偶の連結構造を簡単な構成とすることができ、しかも足部に対する脛部の可動範囲が大きくなるように変形玩具を変形させることが容易になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、足部に対して脛部を最も近づけた状態である第1の状態のときと、足部に対して脛部を最も離した状態である第2の状態のときのいずれにおいても、第2のリンク部材の主要部は第1のリンク部材によって覆われており、しかも第3及び第4のリンク部材も脛部内に収納された状態になっているので、下腿部の外観の美観を損なうことなく、下腿部の長さを変えることができるという利点が得られる。また第2の状態で、脛部を足部から最も離した状態では、第1の状態のように脛部を足部に最も近づけた状態のときの脛部の回動範囲(第1の角度範囲)よりも、脛部の回動範囲(第2の角度範囲)が大きいため、脛部と足部とが干渉する可能性が低くなって、爪先を脛部に対して真っ直ぐに延ばして、バレリーナの爪先立ちに似た姿勢まで、下腿部の形状を変形することができるようになる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図面を参照して本発明の形態変形玩具用脚部材の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本発明の形態変形玩具用脚部材を採用した人形ロボット玩具(形態変形玩具)1が立っている状態における左側面図である。図1に示された人形ロボット玩具1は、頭部3、胴部5、腰部7、一対の腕部9並びに一対の脚部11を有している。なお図1には、一方の右側の腕部9と右側の脚部11だけが示されている。以下の説明では、右側の脚部11を代表例として説明する。なお頭部3、胴部5、腰部7、一対の腕部9の構成は、公知の構成を適宜採用することができるものであり、その詳細は本発明の要旨とは関係がないので説明を省略する。脚部11は、大腿部または上腿部13と下腿部15とから構成されている。そして下腿部15は、膝部17、脛部19と、足首部21と、足部23とから構成されている。図示していないが、上腿部13と脛部19との間には、両者の間における回動運動を許容する連結機構が設けられている。上腿部13の上端部に形成された凹部14は、腰部7との連結機構の一部が嵌合される。
【0020】
図2は、脚部11の下腿部15の脛部19以下の部分を分解して示した部分分解斜視図である。本実施の形態では、足部23と脛部19とを連結する連結機構27が、足首部21に含まれている。また図3は、脛部19の外装20だけを縦に半分に切断したときの脛部19と足首部21とに含まれる連結機構27の関係を示している。
【0021】
脛部19の外装20は、中空構造を有しており、その内部には、上側仕切り壁部24と下側仕切り壁部25とが一体に設けられている。そして上側仕切り壁部24には、図1に示した膝部17と脛部19とを回り対偶で連結するために使用される軸嵌合用凹部26を備えた軸受け部品28が嵌合構造を用いて嵌合されている。また下側仕切り壁部25には、連結機構27の一部を構成する第4のリンク部材35が回転可能に支持されている。
【0022】
連結機構27は、足部23と第1の回り対偶で連結される第1のリンク部材29と、第1のリンク部材29と第2の回り対偶で連結される第2のリンク部材31と、第2のリンク部材31と第3の回り対偶で連結される第3のリンク部材33と、第3のリンク部材33と第4の回り対偶で連結され且つ脛部19と連結される第4のリンク部材35とから構成される。第1乃至第4の回り対偶を構成するために使用する回動構造については、以下の説明で明確にする。
【0023】
以下連結機構27の構造を説明するために、図4(A)及び(B)を参照して説明する。図4(A)は、連結機構27の拡大分解斜視図であり、(B)は組合せた連結機構27の側面図に軸部を破線で示したものである。第1のリンク部材29は、対象的な形状を有する二つ割り構造で組み合わされる第1及び第2のケース半部29a及び29bが組み合わされて構成される。第1及び第2のケース半部29a及び29bは、それぞれ円板の一部をカットした一部に直線部分を有する形状のケース半部本体29c及び29dと、ケース半部本体29c及び29dの内側縁部から相手側のケース半部本体が位置する方向に延びる環状の周壁部29e及び29fと、第1のリンク部材29を足部にピボット運動可能に連結する連結構造の一部を構成する球状突出部形成用の突出部半部29g及び29hとを備えている。そして第2のケース半部29bのケース半部本体29dの内壁面中央部分には、第1のリンク部材29と第2のリンク部材31とを回動可能に連結する連結構造の一部を構成する軸部29iが一体に設けられている。また第1のケース半部29aのケース半部本体29cの内壁面中央部分には、図示していないが、軸部29iの先端部に設けた孔29jに嵌合される突起が一体に形成されている。さらに突出部半部29hには、嵌合用円柱部29h1が一体に形成され、突出部半部29gには被嵌合用貫通孔29g1が形成されている。第1及び第2のケース半部29a及び29bが組み合わされた状態では、嵌合用円柱部29h1が、被嵌合用貫通孔29g1に嵌合されており、また軸部29iの先端部の孔29jに、図示しない突起が嵌合されている。突出部半部29g及び29hが、結合されて球状突出部29kを形成する。この球状突出部29kは、球状部29mと、円柱部29nと、切頭円錐部29pとを備えている。切頭円錐部29pは、第1及び第2のケース半部29a及び29bが組み合わされた状態で形成される直線面29qに基部が位置している。直線面29qに対応する周壁部29e及び29fの端面部分の一部(切頭円錐部29pの基部に対応する部分)は、第1及び第2のケース半部29a及び29bが組み合わされた状態で接触している。しかしながら周壁部29e及び29fのその他の端面部分は、互いに非接触状態になるように、ケース半部本体29c及び29d側に下がっている。第1のリンク部材29及び足部23をこのように定めると、足首部に対する足部の可動範囲を十分に大きなものとすることができるので、一方の脚部に重心が偏る姿勢に形態変形玩具を変形させても、他方の脚部の足部の裏面を平坦な設置面に完全に接触させることができる。
【0024】
第2のリンク部材31は、中央に軸部29iが貫通する貫通孔31aを備えた円板部31bと、円板部31bに一体に設けられて径方向に突出する突出片31cとを備えている。そして突出片31cには、開口部31dが形成されている。開口部31dは、軸部29iから見て径方向外側に開口し、且つ軸部29iから見て軸線方向の両方向(突出片31cの厚み方向の両方向)に開口している。開口部31dの内周面を軸線方向から見た形状は、円の一部を径方向に切り欠いた形状になっている。この円の直径は、第3のリンク部材33に設けられた軸部33cの直径より僅かに大きい。そして開口部31の径方向外側に開口する開口部分の幅寸法(円板部31bの周方向に測った寸法)は、第3のリンク部材33に設けれた軸部33cの直径よりも小さく設定されている。したがって、軸部33cは、開口部31dを押し広げるようにして開口部に嵌合され、嵌合された後は簡単には抜けない。第2のリンク部材の円板部31bの直径は、第1のリンク部材29を構成する第1及び第2のケース半部29a及び29bの周壁部29e及び29fの外径の直径寸法とほぼ同じである。その結果、第1及び第2のケース半部29a及び29bが組み合わされた状態で、第2のリンク部材31の円板部31bは、第1及び第2のケース半部29a及び29bの間の隙間内で、軸部29iを中心にして所定の角度範囲内を回動する。このとき第2のリンク部材31の円板部31bの外周面と、第1及び第2のケース半部29a及び29bの周壁部29e及び29fの外周面とは面一状態になっている。したがって一見しただけでは、第2のリンク部材31の存在は、分からない。
【0025】
第3のリンク部材33は、両端が円弧状に湾曲した2枚の細長い板材33a及び33bと、この細長い板材33a及び33bを所定の間隔をあけて連結するように配置された2本の軸部33c及び33dとが一体に構成された構造を有している。なお2本の軸部33c及び33dは図4(B)に破線で示してある。2本の軸部33c及び33dは、長い板材33a及び33bの長手方向に間隔をあけて配置されている。
【0026】
第3のリンク部材33の軸部33dには、第4のリンク部材35が回り対偶を構成するように連結されている。第4のリンク部材は、第3のリンク部材の軸部33dに嵌合される嵌合部35aと、板状のストッパ部35bと、脛部19の下側仕切り壁部25に嵌合される嵌合用突出部35cとから構成されている。嵌合部35aは、軸部33dに嵌合された状態で見ると、軸部33dの径方向と軸線方向の両方向に貫通する開口部35dを有している。この開口部35dの内周面の形状は、円形の一部を呈しており、その円形の直径寸法は軸部33dの外径寸法より僅かに大きい。そして開口部35dの径方向に開口する部分の開口幅寸法(軸部33dの周方向に測った開口部35dの開口長さ寸法)は、軸部33dの直径寸法よりも小さい。その結果、軸部33dは、開口部35dを押し広げるようにして、開口部35d内に嵌合される。ストッパ部35bは、第3のリンク部材33の2枚の板材33a及び33bの外面と図4(B)に示す姿勢で接触した状態でストッパ機能を発揮する。すなわち図4(B)に示す状態では、第4のリンク部材35は、反時計回り方向には回動するが、時計回り方向には回動しない。第3のリンク部材33の2枚の板材33a及び33bの長手方向の円弧状の湾曲面は、ストッパ部35bが図4(B)に示す状態から反時計回り方向に回動することを許容するようにその形状が定められている。第4のリンク部材35の嵌合用突出部35cは、第4のリンク部材35が、下側仕切り壁部25に嵌合された状態で、嵌合用突出部35cを中心にして所定の角度回動できるように、下側仕切り壁部25に嵌合されている。
【0027】
図5は足部の平面図、右側面図及び背面図である。足部は、二つ割構造を有しており、その内部には、前述の第1のリンク部材29の球状突出部29kの球状部29mが摺動可能且つ回動可能に収容される凹部23aを備えている。そしてこの凹部23aの開口部の回りには、環状のテーパ面23bが形成されている。球状突出部29kの球状部29mが、凹部23a内に嵌合された状態で、球状突出部29kの切頭円錐部29pの外周面が、この環状のテーパ面23bと接触する。
【0028】
上記実施の形態では、第1のリンク部材29は、第2のリンク部材31の主要部である円板部31bを覆うことができる形状構造を有している。そして第2のリンク部材31が、第2の回り対偶の回転中心(軸部29iの軸中心)を中心にして所定の角度範囲を回転する際に、第2のリンク部材31における第3の回り対偶を形成する部分(31c、31d)は、第1のリンク部材29の外側に露出している。そして、脛部19の形状構造と、第3のリンク部材33及び第4のリンク部材35の形状構造とは、次の二つの動作が実現できるように構成されている。まず第1の動作は、第3のリンク部材33が第3の回り対偶の回転中心(軸部33cの軸中心)を中心にして一方の回転方向(図4(B)において反時計回り方向)に回転可能な最大角度θ1(本例では約135°)まで回転し且つ第4のリンク部材35が第4の回り対偶の回転中心(軸部33dの軸中心)を中心にして一方の回転方向(反時計回り方向)とは逆の他方の回転方向(時計回り方向)に回転可能な最大角度θ2(本例では約90°)まで回動したときに、第3のリンク部材33及び第4のリンク部材35を収納し且つ第1のリンク部材29の一部を収納した第1の状態で、第2の回り対偶の回転中心(軸部29iの軸中心)を中心にして脛部19が第1の角度範囲内を回動し得る動作である。ここで第1の最大角度θ1(本例では約135°)とは、第3のリンク部材33の外面が第1のリンク部材29の周壁部29e及び29fの外周面と接触して、第3のリンク部材33がそれ以上回転できなくなる角度である。また第2の最大角度θ2(本例では約90°)とは、ストッパ部35bが第3のリンク部材33の2枚の板材33a及び33bと接触して、それ以上回転できなくなる角度である。さらに第1の角度範囲θ3とは、図6(A)に示すように、脛部19が足部23の前方側に傾倒したときに、脛部19の外装が足部23と干渉する(当たる)位置から、脛部19が足部23の後方側に傾倒したときに、脛部19の外装が足部23と干渉する(当たる)位置まで第2のリンク部材29が回動できる角度範囲である。図6(B)は、図6(A)に対応した動作時の第1乃至第4のリンクの動きを示すための図である。
【0029】
また第2の動作は、図7(B)に示すように、第2の回り対偶の回転中心(軸部29iの軸中心)、第3の回り対偶の回転中心(軸部33cの軸中心)及び第4の回り対偶の回転中心(軸部33dの軸中心)が、仮想Lの一直線に沿って並んだときに、第3のリンク部材33及び第4のリンク部材35の大部分を収納した第2の状態で、第2の回り対偶の回転中心(軸部29iの軸中心)を中心にして第1の角度範囲θ3よりも大きい第2の角度範囲θ4内を脛部19が回動し得る動作である。ここで第2の角度範囲θ4とは、図6(A)に示すように、脛部19が足部23の前方側に傾倒したときに、脛部19の外装が足部23と干渉する(当たる)位置から、脛部19が足部23の後方側に傾倒したときに、脛部19の外装が設置面と干渉する(当たる)位置まで第2のリンク部材29が回動できる角度範囲である。なお図7(B)は、図7(A)に対応した動作時の第1乃至4のリンクの動きを示すための図である。
【0030】
脛部19の形状構造と、第3のリンク部材33及び第4のリンク部材35の形状構造とをこのように構成することにより、次のような変形が可能になる。すなわち、足部23に対して脛部19を最も近づけた状態である第1の状態[図6に示す状態]のときと、足部23に対して脛部19を最も離した状態である第2の状態[図7に示す状態]のときのいずれにおいても、第2のリンク部材31の主要部(円板部31b)は第1のリンク部材29によって覆われており、しかも第3及び第4のリンク部材33及び35も脛部19内に収納された状態になっているので、下腿部の外観の美観が損なうことなく、下腿部の長さを変えることができる。また第2の状態[図7に示す状態]で、脛部19を足部23から最も離した状態では、第1の状態[図6に示す状態]のように脛部19を足部23に最も近づけた状態のときの脛部19の回動範囲(第1の角度範囲θ3)よりも、脛部19の回動範囲(第2の角度範囲θ4)が大きいため、脛部19と足部23とが干渉する可能性が低くなって、爪先を脛部19に対して真っ直ぐに延ばして、バレリーナの爪先立ちに似た姿勢まで、下腿部の形状を変形することができるようになる。
【0031】
第2の角度範囲θ4をより大きくするためには、足部23の裏面を平坦な設置面に完全に接触させた状態で、脛部19を、第2の状態[図7に示す状態]を維持して、第2の角度範囲内で他方の回転方向(図面上で時計回り方向)に回転させたときに、脛部19が足部23と接触することなく、設置面と接触するように足部23の形状構造を定めるとよい。
【0032】
足部23に対して脛部19を最も近づけた状態で、安定してまたはガタツキ無しに脛部19を回動させるためには、第1乃至第4のリンク部材29乃至35の形状構造を、次の二つの状態を構成できるように定めるのが好ましい。最初の状態は、第3のリンク部材33が一方の回転方向(図面上で反時計回り方向)に第3の回り対偶の回転中心(軸部33cの軸中心)を中心にして回動し、且つ第3のリンク部材33の外面が第1のリンク部材29または前記第2のリンク部材31と当接した状態が、第3のリンク部材33が第3の回り対偶の回転中心(軸部33cの軸中心)を中心にして一方の回転方向に第1の最大角度θ1まで回転した状態である。そして次の状態は、第4のリンク部材35が他方の回転方向に回転したときにストッパ部35bが第3のリンク部材33と接触した状態が、第4のリンク部材35が第4の回り対偶の回転中心(軸部33dの軸中心)を中心にして一方の回転方向(図面上で反時計回り方向)とは逆の他方の回転方向(図面上で時計回り方向)に第2の最大角度θ2まで回動した状態である。これら二つの状態を構成できるように、第1乃至第4のリンク部材29乃至35の形状構造を定めると、リンク部材同士の回動範囲がリンク部材31,33同士またはリンク部材33とストッパ部35bとの接触によって確実に規制されるため、脛部19を足部23に最も近づけた状態で脛部19を回動させても、下腿部の形状または姿勢が安定しており、ガタツキなく脛部19を足部23に対して回動変形させることができる。
【0033】
本実施の形態では、第2乃至第4の回り対偶を、各回り対偶がそれぞれ連結する2つのリンク部材の一方に設けられた軸(29i,33c,33d)と、2つのリンク部材の他方に設けられて軸の一部が回転可能に嵌る孔31a又は凹部(または開口部)31c,35dとからなる連結構造を用いてそれぞれ構成しているので、各回り対偶に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施の形態の人形ロボット玩具(形態変形玩具)の左側面図である。
【図2】本実施の形態の人形ロボット玩具の脚部の部分分解斜視図である。
【図3】脛部の外装だけを縦に半分に切断したときの脛部と足首部に含まれる連結機構の関係を示す図である。
【図4】(A)は、連結機構の拡大分解斜視図であり、(B)は組合せた連結機構の側面図に軸部を破線で示した図である。
【図5】(A),(B)及び(C)は、本実施の形態の足部の平面図、右側面図及び背面図である。
【図6】(A)及び(B)は、第1の状態において第2の回り対偶の回転中心を中心にして脛部が回動する動作及び動作時のリンクの動きを示すための図である。
【図7】(A)及び(B)は、第2の状態において第2の回り対偶の回転中心を中心にして脛部が回動する動作及び動作時のリンクの動きを示すための図である。
【符号の説明】
【0035】
1 人形ロボット玩具
3 頭部
5 胴部
7 腰部
9 腕部
11 脚部
13 大腿部又は上腿部
14 凹部
15 下腿部
17 膝部
19 脛部
21 足首部
27 連結機構
29 第1のリンク部材
31 第2のリンク部材
33 第3のリンク部材
35 第4のリンク部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足部と、脛部と、前記足部と前記脛部とを連結する連結機構を有する足首部とを含む形態変形玩具用脚部材であって、
前記連結機構は、前記足部と第1の回り対偶で連結される第1のリンク部材と、
前記第1のリンク部材と第2の回り対偶で連結される第2のリンク部材と、
前記第2のリンク部材と第3の回り対偶で連結される第3のリンク部材と、
前記第3のリンク部材と第4の回り対偶で連結され且つ前記脛部と連結される第4のリンク部材とからなり、
前記第1のリンク部材は前記第2のリンク部材の主要部を覆うことができる形状構造を有しており、
前記第2のリンク部材が前記第2の回り対偶の回転中心を中心にして所定の角度範囲を回転する際に、前記第2のリンク部材における前記第3の回り対偶を形成する部分は、前記第1のリンク部材の外側に露出しており、
前記第3のリンク部材が前記第3の回り対偶の前記回転中心を中心にして一方の回転方向に回転可能な最大角度まで回転し且つ前記第4のリンク部材が前記第4の回り対偶の前記回転中心を中心にして前記一方の回転方向とは逆の他方の回転方向に回転可能な最大角度まで回動したときに、前記第3のリンク部材及び前記第4のリンク部材を収納し且つ前記第1のリンク部材の一部を収納した第1の状態で、前記第2の回り対偶を中心にして前記脛部が前記第1の角度範囲を回動し得るように、前記脛部の形状構造と、前記第3のリンク部材及び第4のリンク部材の形状構造が定められており、
前記第2の回り対偶の前記回転中心、前記第3の回り対偶の回転中心及び前記第4の回り対偶の回転中心が、仮想の一直線に沿って並んだときに、前記第3のリンク部材及び前記第4のリンク部材の大部分を収納した第2の状態で、前記第2の回り対偶の前記回転中心を中心にして前記第1の角度範囲よりも大きい第2の角度範囲内を前記脛部が回動し得るように、前記脛部の形状構造と、前記第3のリンク部材及び第4のリンク部材の形状構造が定められていることを特徴とする形態変形玩具用脚部材。
【請求項2】
前記足部の裏面を平坦な設置面に完全に接触させた状態で、前記脛部を、前記第2の状態を維持して、前記第2の角度範囲内で前記他方の回転方向に回転させたときに、前記脛部は前記足部と接触することなく、前記設置面と接触するように前記足部の形状構造が定められている請求項1に記載の形態変形玩具用脚部材。
【請求項3】
前記第3のリンク部材が前記一方の回転方向に前記第3の回り対偶の前記回転中心を中心にして回動し、且つ前記第3のリンク部材の外面が前記第1のリンク部材または前記第2のリンク部材と当接した状態が、前記第3のリンク部材が前記第3の回り対偶の前記回転中心を中心にして前記一方の回転方向に前記回転可能な最大角度まで回転した状態を構成し、
前記第4のリンク部材または前記第3のリンク部材には、ストッパ部が設けられており、前記第4のリンク部材が前記他方の回転方向に回転したときに前記ストッパ部が前記第4のリンク部材または前記第3のリンク部材と接触した状態が、前記第4のリンク部材が前記第4の回り対偶の前記回転中心を中心にして前記一方の回転方向とは逆の他方の回転方向に前記回転可能な最大角度まで回動した状態を構成するように、前記第1乃至第4のリンク部材の形状構造が定められている請求項1に記載の形態変形玩具用脚部材。
【請求項4】
前記ストッパ部は、前記第4のリンク部材に設けられている請求項3に記載の形態変形玩具用脚部材。
【請求項5】
前記第1の角度範囲は、前記第2の状態を維持して、前記脛部が前記第2の回り対偶の前記回転中心を中心にして回動したときに、前記脛部の一部が前記足部の一部と接触することにより確定される請求項1に記載の形態変形玩具用脚部材。
【請求項6】
前記第2の回り対偶の前記回転中心を中心にして回転する前記第2のリンク部材の外周面は、円弧面を含んでおり、
前記第1のリンク部材の外周面と前記第2のリンク部材の前記円弧面とが、前記第2のリンク部材が回動する範囲において、常に面一になるように、前記第1のリンク部材の構造が定められている請求項1に記載の形態変形玩具用脚部材。
【請求項7】
前記第1の回り対偶は、前記第1のリンク部材が前記足部材に対してピボット運動することを許容するように構成されている請求項1に記載の形態変形玩具用脚部材。
【請求項8】
前記第1の回り対偶は、前記第1のリンク部材に設けられた一部が球状をなす突起と、前記足部に形成されて前記一部が球状をなす突起を収容する一部が球状をなす凹部とを備えている請求項7に記載の形態変形玩具用脚部材。
【請求項9】
前記第2の回り対偶は、前記第1のリンク部材及び第2のリンク部材の一方に設けられた軸と、前記第1のリンク部材及び第2のリンク部材の他方に設けられて前記軸の一部が回転可能に嵌る孔又は凹部とを備えている請求項1に記載の形態変形玩具用脚部材。
【請求項10】
前記第3の回り対偶は、前記第2のリンク部材及び第3のリンク部材の一方に設けられた軸と、前記第2のリンク部材及び第3のリンク部材の他方に設けられて前記軸の一部が回転可能に嵌る孔又は凹部とを備えている請求項1に記載の形態変形玩具用脚部材。
【請求項11】
前記第4の回り対偶は、前記第3のリンク部材及び第4のリンク部材の一方に設けられた軸と、前記第3のリンク部材及び第4のリンク部材の他方に設けられて前記軸の一部が回転可能に嵌る孔又は凹部とからなる連結構造を備えている請求項1に記載の形態変形玩具用脚部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−212526(P2008−212526A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56982(P2007−56982)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(506113602)株式会社コナミデジタルエンタテインメント (1,441)
【Fターム(参考)】