形状予測シミュレータ、方法およびプログラム
【課題】高精度、且つ、高速な形状予測演算が可能な形状予測シミュレータを提供する。
【解決手段】化学機械研磨により形成される研磨面の形状を予測する形状予測シミュレータであって、形状予測の対象領域を複数の領域に分割する際の、各分割領域の間のオーバーラップ量を定義するオーバーラップ量定義部4と、上記対象領域を、オーバーラップ量定義部4にて定義されたオーバーラップ量に対応する領域を含む上記複数の領域に分割し、該分割領域毎の形状予測を分散処理により演算する形状予測演算処理部5と、形状予測演算処理部5で演算した上記分割領域毎の形状予測結果を合成するマージ処理部6と、を有する。
【解決手段】化学機械研磨により形成される研磨面の形状を予測する形状予測シミュレータであって、形状予測の対象領域を複数の領域に分割する際の、各分割領域の間のオーバーラップ量を定義するオーバーラップ量定義部4と、上記対象領域を、オーバーラップ量定義部4にて定義されたオーバーラップ量に対応する領域を含む上記複数の領域に分割し、該分割領域毎の形状予測を分散処理により演算する形状予測演算処理部5と、形状予測演算処理部5で演算した上記分割領域毎の形状予測結果を合成するマージ処理部6と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨技術に関し、特に、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)により形成される研磨面の形状を予測する形状予測シミュレータ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの平坦化技術や配線形成技術として、CMPプロセスが多用されている(特許文献1参照)。また、近年、CMPプロセスにおける平坦化形状や配線形成形状を予測する形状予測シミュレータ技術も確立されつつある。
【0003】
以下に、関連技術として、CMP形状予測シミュレータについて説明する。
【0004】
図7は、関連技術としてのCMP形状予測シミュレータの動作を説明するためのフローチャートである。
【0005】
図7を参照すると、まず、半導体デバイスのパターン密度の演算条件を設定する(ステップS10)。このパターン密度演算条件の設定では、半導体デバイスの設計情報であるレイアウトデータ(設計図)に基づいて、形状予測する解析エリアを指定し、演算分解能を決定する。設計図の全体または一部を解析エリアとして指定することができる。
【0006】
次に、指定解析エリアのパターン密度を抽出する。このパターン密度抽出処理では、隣接するデバイスパターンからの影響を考慮する必要がないため、分散処理を適用することで、高効率な演算処理が可能となる。図7に示した例では、パターン密度抽出処理として、ステップS11のローカル処理またはステップS12の分散処理を行う。図8にローカル処理の一例を示し、図9に分散処理の一例を示す。
【0007】
ローカル処理では、図8に示すように、1つの演算処理装置(CPU)が、演算処理の対象とされた全領域に対するパターン密度の演算処理を行う。CPUは、全対象領域を複数の領域にグリッド分割し、各分割領域におけるパターンの密度を演算する。グリッド分割において、グリッドの大きさは演算分解能により決まる。
【0008】
一方、分散処理では、図9に示すように、演算処理の対象とされた領域は4つに分割され、分割領域はそれぞれ4つの演算処理装置(CPU)に割り当てられる。各CPUでは、割り当てられた領域を複数の領域にグリッド分割し、各分割領域におけるパターンの密度を演算する。
【0009】
ステップS11またはステップS12のパターン密度演算処理の後、プロセス条件を設定する。このプロセス条件設定では、形状予測するためのモデル選択や処理時間等のプロセス条件を設定する(ステップS13)。そして、ステップS10で設定された演算分解能、ステップS11またはS12にて抽出されたパターン密度、およびステップS13で設定したプロセス条件に従って形状予測演算を行い(ステップS14)、その後、ホットスポット解析を行う(ステップS15)。
【特許文献1】特開2003−282495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述した関連技術としてのCMP形状予測シミュレータには、以下のような問題がある。
【0011】
CMPプロセスでは、デバイスパターン、研磨パッドおよびスラリー(砥粒)が物理的に接触して研磨処理が行われるため、研磨されたデバイスの形状は、デバイスパターン密度に強く依存したものとなる。また、研磨により形成される形状は、隣接するデバイスパターンの影響も受ける。
【0012】
図10に、1台のCPUで形状予測演算処理を行う場合(ローカル処理)と4台のCPUで形状予測演算処理を行う場合(分散処理)の比較結果を示す。図10において、図面に向かって左側に、ローカル処理および分散処理の一例が処理対象の図形とともに示されており、右側には、それらローカル処理および分散処理による形状予測結果と実測値を示すグラフが示されている。ローカル処理および分散処理の各処理における対象図形は同じものである。グラフにおいて、縦軸は研磨された部位の高さを示し、横軸は解析範囲(スキャン長)を示す。グラフ中、最も太い線は、ローカル処理図形のa−a’における研磨部位の高さの変化を示し、2番目に太い線は、分散処理図形のb−b’における研磨部位の高さの変化を示す。最も細い線は、実際に研磨された部位の実測値である。
【0013】
ローカル処理の場合の演算処理時間は6720秒であるのに対して、分散処理による演算処理時間は1700秒である。形状予測演算処理に分散処理を適用することで、約4倍の高速化を実現することができる。しかし、この分散処理は、単純に解析エリアを4つ分割して演算を行う処理であり、図形境界部を跨ぐデバイスパターンや、境界部近傍のデバイスパターンの影響を考慮した形状予測は行われない。この結果、図10のグラフに示すように、分散処理では、図形境界部(b−b’)近傍において、予測結果と実測値の差が大きくなり、形状予測精度が著しく低下する。
【0014】
このようなことから、上述のCMP形状予測シミュレータにおいては、形状予測演算処理にローカル処理を適用している。このため、解析エリアや演算分解能などの諸条件によっては、形状予測演算処理に莫大な時間を要する。
【0015】
本発明の目的は、上記問題を解決し、高精度、且つ、高速に形状予測演算を行うことが可能な、形状予測シミュレータ、方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の形状予測シミュレータは、
化学機械研磨により形成される研磨面の形状を予測する形状予測シミュレータであって、
形状予測の対象領域を複数の領域に分割する際の、各分割領域の間のオーバーラップ量を定義するオーバーラップ量定義部と、
前記対象領域を、前記オーバーラップ量定義部にて定義されたオーバーラップ量に対応する領域を含む前記複数の領域に分割し、該分割領域毎の形状予測を分散処理により演算する形状予測演算処理部と、
前記形状予測演算処理部で演算した前記分割領域毎の形状予測結果を合成するマージ処理部と、を有する。
【0017】
また、本発明の形状予測方法は、化学機械研磨により形成される研磨面の形状を予測する形状予測方法であって、
形状予測の対象領域を複数の領域に分割する際の、各分割領域の間のオーバーラップ量を定義し、
前記対象領域を、定義した前記オーバーラップ量に対応する領域を含む前記複数の領域に分割し、該分割領域毎の形状予測を分散処理により演算し、
演算した前記分割領域毎の形状予測結果を合成する、ことを特徴する。
【0018】
また、本発明のプログラムは、化学機械研磨により形成される研磨面の形状を予測する形状予測処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
形状予測の対象領域を複数の領域に分割する際の、各分割領域の間のオーバーラップ量を定義する処理と、
前記対象領域を、定義した前記オーバーラップ量に対応する領域を含む前記複数の領域に分割し、該分割領域毎の形状予測を分散処理により演算する処理と、
演算した前記分割領域毎の形状予測結果を合成する処理と、を前記コンピュータに実行させることを特徴する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、形状予測演算の分散処理が可能であるので、演算処理を高速に行うことができる。
【0020】
また、分割領域をオーバーラップさせることで、分割領域間の境界部を跨ぐデバイスパターンや、境界部近傍のデバイスパターンの影響を考慮した形状予測演算が可能になっており、これにより、高精度な形状予測演算を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態であるCMP形状予測シミュレータの構成を示すブロック図である。
【0023】
CMP形状予測シミュレータは、コンピュータシステムより構成される。コンピュータシステムは、プログラムなどを蓄積する記憶装置、キーボードやマウスなどの入力装置、LCDなどの表示装置、外部との通信を行うモデムなどの通信装置、プリンタなどの出力装置、および記憶装置に格納されたプログラム従って動作し、入力装置からの入力を受け付けて通信装置、出力装置、表示装置の各動作を制御する制御装置から構成される。
【0024】
図1を参照すると、CMP形状予測シミュレータは、主に、パターン密度演算条件設定部1、パターン密度演算部2、プロセス条件設定部3、オーバーラップ量定義部4、形状予測演算部5、マージ処理部6および解析部7から構成される。
【0025】
パターン密度演算条件設定部1は、研磨対象である半導体デバイスのパターン密度の演算条件を設定する。このパターン密度演算条件の設定において、パターン密度演算条件設定部1は、半導体デバイスの設計情報であるレイアウトデータ(設計図)を表示装置にて表示させる。シミュレータ操作者は、表示されたレイアウトデータを参照し、入力装置を通じて、形状予測する解析エリアを指定し、演算分解能を設定する。解析エリアとして、設計図の全体または一部を指定することができる。これら入力情報(解析エリアおよび演算分解能)は、演算条件として、パターン密度演算条件設定部1からパターン密度演算部2に供給される。
【0026】
パターン密度演算部2は、パターン密度演算条件設定部1から供給された演算条件に基づいて、指定解析エリアのパターン密度を抽出する。このパターン密度抽出処理では、1つのCPUにより演算処理を行うローカル処理(図7のステップS11参照)と、複数のCPUにより演算処理を行う分散処理(図7のステップS12参照)のいずれかを適用する。シミュレータ操作者が、入力装置にて所定の入力操作を行うことにより、ローカル処理または分散処理の選択が行われる。パターン密度抽出処理に分散処理を適用すれば、高効率な演算処理が可能となる。パターン密度抽出結果は、パターン密度演算部2から形状予測演算部5に供給される。
【0027】
プロセス条件設定部3は、形状予測するためのモデル選択や処理時間等のプロセス条件を設定する。ここで、モデルは、パターン密度や配線幅の条件に対する研磨特性(研磨の振る舞い)をモデル化したもの(方程式)である。予め対象となるプロセスに対して、研磨特性をモデル化したものが、プロセス別にツールに格納されている。プロセス条件設定部3は、ツール情報を表示装置にて表示させ、シミュレータ操作者が、入力装置を通じて、表示されたツール情報の中から形状予測するためのモデルを指定する。また、シミュレータ操作者は、入力装置を通じて、研磨時間に対応する処理時間を設定する。これら入力情報(選択されたモデルおよび設定された処理時間)は、プロセス条件として、プロセス条件設定部3から形状予測演算部5に供給される。
【0028】
オーバーラップ量定義部4は、形状予測の対象領域を複数の領域に分割する際の、各分割領域の間のオーバーラップ量を定義する。具体的には、オーバーラップ量定義部4は、化学機械研磨で使用する部材の特性により決まる、パターンに対する研磨影響範囲を関数化し、該関数化により得られる、研磨影響範囲における研磨時の圧力変化を示すグラフの半値幅をオーバーラップ量として定義する。より具体的には、オーバーラップ量は、対象となる「プロセス条件・部材構成」下で、実際に半導体デバイスを研磨した際の膜厚データや断面形状から得られる、パターンに対する研磨影響範囲を関数化した特性図(グラフ)に基づいて決定される。ここで、部材構成は、研磨用パッド等のCMPプロセスで使用される部材を意味する。
【0029】
図2に、硬度の異なる2つのパッドに関する、半導体デバイスを研磨した場合のパターンに与える研磨影響範囲を関数化したグラフを示す。一方のパッドAの硬度は、他方のパッドBの硬度より小さい。図2に示すグラフにおいて、縦軸は圧力、横軸は影響領域を示す。影響領域は圧力が変化した領域を示す。パッドAによる研磨の影響領域は、パッドBによる研磨の影響領域よりも大きい。パッドAによる研磨の場合は、その影響領域の半値幅aが、オーバーラップ量として定義される。パッドBによる研磨の場合は、その影響領域の半値幅bが、オーバーラップ量として定義される。このように必要最低限のオーバーラップ量を定義することで、オーバーラップ量の増加による演算処理時間の増加を最小限にすることが可能である。オーバーラップ量(半値幅)は、オーバーラップ量定義部4から形状予測演算部5に供給される。
【0030】
形状予測演算部5は、パターン密度演算部2から供給されたパターン密度抽出結果と、プロセス条件設定部3から供給されたプロセス条件と、オーバーラップ量定義部4から供給されたオーバーラップ量(半値幅)とに基づいて、半導体デバイスを研磨した場合の形状予測の演算処理を行う。この形状予測演算処理では、形状予測の対象領域(図形)を、半値幅により定義されたオーバーラップ量を付加した形で複数の領域に分割する。分割した領域をそれぞれ別々のCPUに割り当てる。各CPUでは、割り当てられた領域を複数の領域にグリッド分割し、各分割領域における形状予測演算処理を行う。
【0031】
図3に、演算処理の対象とされた領域(形状予測対象領域)を4分割して分散処理を行う場合の各CPUに割り当てる分割領域を模式的に示す。図3の例では、演算処理の対象とされた領域は第1乃至第4の分割領域に分割される。
【0032】
第1の分割領域の他の分割領域との境界部に、オーバーラップ量定義部4から供給されたオーバーラップ量(半値幅)に対応する幅のオーバーラップ部Aが付加されている。オーバーラップ部Aを含む第1の分割領域が、第1のCPU(1)に割り当てられる。
【0033】
第2の分割領域の他の分割領域との境界部に、オーバーラップ量定義部4から供給されたオーバーラップ量(半値幅)に対応する幅のオーバーラップ部Bが付加されている。オーバーラップ部Bを含む第2の分割領域が、第2のCPU(2)に割り当てられる。
【0034】
第3の分割領域の他の分割領域との境界部に、オーバーラップ量定義部4から供給されたオーバーラップ量(半値幅)に対応する幅のオーバーラップ部Cが付加されている。オーバーラップ部Cを含む第3の分割領域が、第3のCPU(3)に割り当てられる。
【0035】
第4の分割領域の他の分割領域との境界部に、オーバーラップ量定義部4から供給されたオーバーラップ量(半値幅)に対応する幅のオーバーラップ部Dが付加されている。オーバーラップ部Dを含む第4の分割領域が、第4のCPU(4)に割り当てられる。
【0036】
形状予測演算部5では、第1乃至第4のCPUが、割り当てられた領域を複数の領域にグリッド分割し、各分割領域における形状予測演算処理を行う。
【0037】
なお、半値幅により定義されたオーバーラップ量を付加した分割領域の境界線と、先のパターン密度演算条件設定で定義された演算分解能(グリッドサイズ)に基づくグリッド線との間でアンマッチが生じる可能性がある。
【0038】
図4Aに、オーバーラップ量を付加した分割領域の境界線がグリッド線と一致する場合の例を模式的に示す。この例のように、オーバーラップ量を付加した領域の境界線がグリッド線と一致する場合は、形状予測演算部5による分割領域の拡張処理は行われない。
【0039】
図4Bに、オーバーラップ量を付加した分割領域の境界線がグリッド線と一致しない場合の例を模式的に示す。X軸(横軸)方向およびY軸(縦軸)方向の両方向において、オーバーラップ量を付加した領域の境界線がグリッド線と一致しない。この場合は、形状予測演算部5は、X軸方向およびY軸方向の両方向において、オーバーラップ量を付加した分割領域をさらに拡張するための処理を行う。拡張された領域の境界線は、グリッド線と一致する。X軸方向についてのみアンマッチが生じた場合は、X軸方向についての拡張処理が行われる。同様に、Y軸方向についてのみアンマッチが生じた場合は、Y軸方向についての拡張処理が行われる。
【0040】
マージ処理部6は、形状予測演算部5から供給される各分割領域の形状予測結果(予測値)に基づく図形を合成する。オーバーラップ領域における形状予測結果(予測値)は、マージ処理後に不要となる。このため、図形合成を行う前に、マージ処理部6は、各分割領域の形状予測結果(予測値)から各オーバーラップ領域における形状予測結果(予測値)を削除する。マージ処理結果は、マージ処理部6から解析部7に供給される。
【0041】
解析部7は、マージ処理部6から供給されるマージ処理結果に基づいて解析処理を行う。この解析処理では、例えば、マージ処理結果から指定解析エリアの膜厚等の解析を行う。
【0042】
次に、本実施形態のCMP形状予測シミュレータによる形状予測処理の手順につい説明する。
【0043】
図5に、形状予測処理手順の一例を示す。図5を参照すると、まず、パターン密度演算条件設定部1が、研磨対象である半導体デバイスのパターン密度の演算条件を設定する(ステップ)。そして、パターン密度演算部2が、パターン密度演算条件設定部1により設定された演算条件に基づいて、指定解析エリアのパターン密度を抽出する(ステップS21)。
【0044】
次に、プロセス条件設定部3がプロセス条件を設定し(ステップS22)、オーバーラップ量定義部4がオーバーラップ量を定義する(ステップS23)。そして、形状予測演算部5が、ステップS21で抽出したパターン密度抽出結果と、ステップS22で設定したプロセス条件と、ステップS23で定義したオーバーラップ量(半値幅)とに基づいて、半導体デバイスを研磨した場合の形状を予測するための演算処理(分散処理)を行う(ステップS24)。
【0045】
次に、マージ処理部6が、ステップS24の分散処理により得られた、各分割領域の形状予測結果(予測値)に基づく図形を合成する(ステップS25)。そして、解析部7が、ステップS25のマージ処理の結果に基づいて解析処理を行う。
【0046】
上述の各構成部における処理(機能)は、CMP形状予測シミュレータを構成するコンピュータシステム上で、記憶装置に格納されたプログラムを制御装置(CPU)が実行することで実現することができる。プログラムは、予め記憶装置に記憶しておいてもよく、また、CD−ROMやDVDに代表される記録媒体により提供されてもよい。記録媒体によりプログラムを提供する場合は、CMP形状予測シミュレータに、記録媒体に対する情報の書き込みおよび読み出しを行うための装置を設ける。
【0047】
また、プログラムは、インターネットに代表されるネットワークを通じてCMP形状予測シミュレータに提供してもよい。この場合は、CMP形状予測シミュレータに、ネットワークを介した通信機能を設ける。
【0048】
以上説明した本実施形態のCMP形状予測シミュレータによれば、形状予測演算部5にて、形状予測演算の分散処理が行われるので、演算処理を高速に行うことができる。
【0049】
また、分割領域をオーバーラップさせることで、分割領域間の境界部を跨ぐデバイスパターンや、境界部近傍のデバイスパターンの影響を考慮した形状予測演算が可能になっており、これにより、高精度な形状予測演算を実現することができる。
【0050】
図6は、本実施形態のCMP形状予測シミュレータにおける形状予測演算処理(分散処理)の結果と、比較例である、1台のCPUによる形状予測演算処理(ローカル処理)の結果とを示す。図6において、図面に向かって左側に、ローカル処理(図10のローカル処理に同じ)および分散処理の一例が処理対象の図形とともに示されており、右側には、それらローカル処理および分散処理による形状予測結果と実測値を示すグラフが示されている。ローカル処理および分散処理の各処理における対象図形は同じものである。グラフにおいて、縦軸は研磨された部位の高さを示し、横軸は解析範囲(スキャン長)を示す。グラフ中、最も太い線は、分散処理図形のb−b’における研磨部位の高さの変化を示し、2番目に太い線は、ローカル処理図形のa−a’における研磨部位の高さの変化を示す。最も細い線は、実際に研磨された部位の実測値である。
【0051】
ローカル処理の場合の演算処理時間は6720秒であるのに対して、分散処理による演算処理時間は1932秒である。分散処理によれば、ローカル処理に比べて、約3.5倍の高速化を実現することができる。
【0052】
また、図6のグラフから分かるように、図形境界部(b−b’)近傍において、分散処理による予測結果は実測値とほぼ同じ値になっており、図10に示した分散処理に比較して、形状予測精度を向上することができる。
【0053】
上述したCMP形状予測シミュレータは本発明の一例であり、その構成および動作は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更することができる。
【0054】
例えば、形状予測演算処理部5は、分散処理とローカル処理の切り替え可能な構成であってもよい。シミュレータ操作者が、入力装置にて所定の入力操作を行うことにより、ローカル処理または分散処理の選択が行われる。小規模演算の場合は、ローカル処理を適用し、大規模演算の場合は、分散処理を適用する。これにより、効率よく、形状予測演算処理を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、半導体製造技術に適用可能である他、非金属系、金属膜系を問わず、化学機械研磨により形成される研磨面の形状を予測する形状予測システム全般(または図形処理装置全般)に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態であるCMP形状予測シミュレータの構成を示すブロック図である。
【図2】硬度の異なる2つのパッドに関する、パターンに対する研磨影響範囲を関数化したグラフを示す図である。
【図3】形状予測対象領域を4分割して分散処理を行う場合の各CPUに割り当てる分割領域を示す模式図である。
【図4A】オーバーラップ量を付加した分割領域の境界線がグリッド線と一致する場合の一例を示す模式図である。
【図4B】オーバーラップ量を付加した分割領域の境界線がグリッド線と一致しない場合の一例を示す模式図である。
【図5】図1に示すCMP形状予測シミュレータにて行われる形状予測処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態のCMP形状予測シミュレータにおける形状予測演算処理(分散処理)の結果と、比較例である、1台のCPUによる形状予測演算処理(ローカル処理)の結果とを示す模式図である。
【図7】関連技術としてのCMP形状予測シミュレータの動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7に示すCMP形状予測シミュレータにて行われるパターン密度演算のローカル処理の一例を示す模式図である。
【図9】図7に示すCMP形状予測シミュレータにて行われるパターン密度演算の分散処理の一例を示す模式図である。
【図10】図7に示すCMP形状予測シミュレータにて行われる形状予測演算に適用される、ローカル処理および分散処理の結果を示す模式図である。
【符号の説明】
【0057】
1 パターン密度演算条件設定部
2 パターン密度演算部
3 プロセス条件設定部
4 オーバーラップ量定義部
5 形状予測演算部
6 マージ処理部
7 解析部
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨技術に関し、特に、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)により形成される研磨面の形状を予測する形状予測シミュレータ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの平坦化技術や配線形成技術として、CMPプロセスが多用されている(特許文献1参照)。また、近年、CMPプロセスにおける平坦化形状や配線形成形状を予測する形状予測シミュレータ技術も確立されつつある。
【0003】
以下に、関連技術として、CMP形状予測シミュレータについて説明する。
【0004】
図7は、関連技術としてのCMP形状予測シミュレータの動作を説明するためのフローチャートである。
【0005】
図7を参照すると、まず、半導体デバイスのパターン密度の演算条件を設定する(ステップS10)。このパターン密度演算条件の設定では、半導体デバイスの設計情報であるレイアウトデータ(設計図)に基づいて、形状予測する解析エリアを指定し、演算分解能を決定する。設計図の全体または一部を解析エリアとして指定することができる。
【0006】
次に、指定解析エリアのパターン密度を抽出する。このパターン密度抽出処理では、隣接するデバイスパターンからの影響を考慮する必要がないため、分散処理を適用することで、高効率な演算処理が可能となる。図7に示した例では、パターン密度抽出処理として、ステップS11のローカル処理またはステップS12の分散処理を行う。図8にローカル処理の一例を示し、図9に分散処理の一例を示す。
【0007】
ローカル処理では、図8に示すように、1つの演算処理装置(CPU)が、演算処理の対象とされた全領域に対するパターン密度の演算処理を行う。CPUは、全対象領域を複数の領域にグリッド分割し、各分割領域におけるパターンの密度を演算する。グリッド分割において、グリッドの大きさは演算分解能により決まる。
【0008】
一方、分散処理では、図9に示すように、演算処理の対象とされた領域は4つに分割され、分割領域はそれぞれ4つの演算処理装置(CPU)に割り当てられる。各CPUでは、割り当てられた領域を複数の領域にグリッド分割し、各分割領域におけるパターンの密度を演算する。
【0009】
ステップS11またはステップS12のパターン密度演算処理の後、プロセス条件を設定する。このプロセス条件設定では、形状予測するためのモデル選択や処理時間等のプロセス条件を設定する(ステップS13)。そして、ステップS10で設定された演算分解能、ステップS11またはS12にて抽出されたパターン密度、およびステップS13で設定したプロセス条件に従って形状予測演算を行い(ステップS14)、その後、ホットスポット解析を行う(ステップS15)。
【特許文献1】特開2003−282495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述した関連技術としてのCMP形状予測シミュレータには、以下のような問題がある。
【0011】
CMPプロセスでは、デバイスパターン、研磨パッドおよびスラリー(砥粒)が物理的に接触して研磨処理が行われるため、研磨されたデバイスの形状は、デバイスパターン密度に強く依存したものとなる。また、研磨により形成される形状は、隣接するデバイスパターンの影響も受ける。
【0012】
図10に、1台のCPUで形状予測演算処理を行う場合(ローカル処理)と4台のCPUで形状予測演算処理を行う場合(分散処理)の比較結果を示す。図10において、図面に向かって左側に、ローカル処理および分散処理の一例が処理対象の図形とともに示されており、右側には、それらローカル処理および分散処理による形状予測結果と実測値を示すグラフが示されている。ローカル処理および分散処理の各処理における対象図形は同じものである。グラフにおいて、縦軸は研磨された部位の高さを示し、横軸は解析範囲(スキャン長)を示す。グラフ中、最も太い線は、ローカル処理図形のa−a’における研磨部位の高さの変化を示し、2番目に太い線は、分散処理図形のb−b’における研磨部位の高さの変化を示す。最も細い線は、実際に研磨された部位の実測値である。
【0013】
ローカル処理の場合の演算処理時間は6720秒であるのに対して、分散処理による演算処理時間は1700秒である。形状予測演算処理に分散処理を適用することで、約4倍の高速化を実現することができる。しかし、この分散処理は、単純に解析エリアを4つ分割して演算を行う処理であり、図形境界部を跨ぐデバイスパターンや、境界部近傍のデバイスパターンの影響を考慮した形状予測は行われない。この結果、図10のグラフに示すように、分散処理では、図形境界部(b−b’)近傍において、予測結果と実測値の差が大きくなり、形状予測精度が著しく低下する。
【0014】
このようなことから、上述のCMP形状予測シミュレータにおいては、形状予測演算処理にローカル処理を適用している。このため、解析エリアや演算分解能などの諸条件によっては、形状予測演算処理に莫大な時間を要する。
【0015】
本発明の目的は、上記問題を解決し、高精度、且つ、高速に形状予測演算を行うことが可能な、形状予測シミュレータ、方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の形状予測シミュレータは、
化学機械研磨により形成される研磨面の形状を予測する形状予測シミュレータであって、
形状予測の対象領域を複数の領域に分割する際の、各分割領域の間のオーバーラップ量を定義するオーバーラップ量定義部と、
前記対象領域を、前記オーバーラップ量定義部にて定義されたオーバーラップ量に対応する領域を含む前記複数の領域に分割し、該分割領域毎の形状予測を分散処理により演算する形状予測演算処理部と、
前記形状予測演算処理部で演算した前記分割領域毎の形状予測結果を合成するマージ処理部と、を有する。
【0017】
また、本発明の形状予測方法は、化学機械研磨により形成される研磨面の形状を予測する形状予測方法であって、
形状予測の対象領域を複数の領域に分割する際の、各分割領域の間のオーバーラップ量を定義し、
前記対象領域を、定義した前記オーバーラップ量に対応する領域を含む前記複数の領域に分割し、該分割領域毎の形状予測を分散処理により演算し、
演算した前記分割領域毎の形状予測結果を合成する、ことを特徴する。
【0018】
また、本発明のプログラムは、化学機械研磨により形成される研磨面の形状を予測する形状予測処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
形状予測の対象領域を複数の領域に分割する際の、各分割領域の間のオーバーラップ量を定義する処理と、
前記対象領域を、定義した前記オーバーラップ量に対応する領域を含む前記複数の領域に分割し、該分割領域毎の形状予測を分散処理により演算する処理と、
演算した前記分割領域毎の形状予測結果を合成する処理と、を前記コンピュータに実行させることを特徴する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、形状予測演算の分散処理が可能であるので、演算処理を高速に行うことができる。
【0020】
また、分割領域をオーバーラップさせることで、分割領域間の境界部を跨ぐデバイスパターンや、境界部近傍のデバイスパターンの影響を考慮した形状予測演算が可能になっており、これにより、高精度な形状予測演算を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態であるCMP形状予測シミュレータの構成を示すブロック図である。
【0023】
CMP形状予測シミュレータは、コンピュータシステムより構成される。コンピュータシステムは、プログラムなどを蓄積する記憶装置、キーボードやマウスなどの入力装置、LCDなどの表示装置、外部との通信を行うモデムなどの通信装置、プリンタなどの出力装置、および記憶装置に格納されたプログラム従って動作し、入力装置からの入力を受け付けて通信装置、出力装置、表示装置の各動作を制御する制御装置から構成される。
【0024】
図1を参照すると、CMP形状予測シミュレータは、主に、パターン密度演算条件設定部1、パターン密度演算部2、プロセス条件設定部3、オーバーラップ量定義部4、形状予測演算部5、マージ処理部6および解析部7から構成される。
【0025】
パターン密度演算条件設定部1は、研磨対象である半導体デバイスのパターン密度の演算条件を設定する。このパターン密度演算条件の設定において、パターン密度演算条件設定部1は、半導体デバイスの設計情報であるレイアウトデータ(設計図)を表示装置にて表示させる。シミュレータ操作者は、表示されたレイアウトデータを参照し、入力装置を通じて、形状予測する解析エリアを指定し、演算分解能を設定する。解析エリアとして、設計図の全体または一部を指定することができる。これら入力情報(解析エリアおよび演算分解能)は、演算条件として、パターン密度演算条件設定部1からパターン密度演算部2に供給される。
【0026】
パターン密度演算部2は、パターン密度演算条件設定部1から供給された演算条件に基づいて、指定解析エリアのパターン密度を抽出する。このパターン密度抽出処理では、1つのCPUにより演算処理を行うローカル処理(図7のステップS11参照)と、複数のCPUにより演算処理を行う分散処理(図7のステップS12参照)のいずれかを適用する。シミュレータ操作者が、入力装置にて所定の入力操作を行うことにより、ローカル処理または分散処理の選択が行われる。パターン密度抽出処理に分散処理を適用すれば、高効率な演算処理が可能となる。パターン密度抽出結果は、パターン密度演算部2から形状予測演算部5に供給される。
【0027】
プロセス条件設定部3は、形状予測するためのモデル選択や処理時間等のプロセス条件を設定する。ここで、モデルは、パターン密度や配線幅の条件に対する研磨特性(研磨の振る舞い)をモデル化したもの(方程式)である。予め対象となるプロセスに対して、研磨特性をモデル化したものが、プロセス別にツールに格納されている。プロセス条件設定部3は、ツール情報を表示装置にて表示させ、シミュレータ操作者が、入力装置を通じて、表示されたツール情報の中から形状予測するためのモデルを指定する。また、シミュレータ操作者は、入力装置を通じて、研磨時間に対応する処理時間を設定する。これら入力情報(選択されたモデルおよび設定された処理時間)は、プロセス条件として、プロセス条件設定部3から形状予測演算部5に供給される。
【0028】
オーバーラップ量定義部4は、形状予測の対象領域を複数の領域に分割する際の、各分割領域の間のオーバーラップ量を定義する。具体的には、オーバーラップ量定義部4は、化学機械研磨で使用する部材の特性により決まる、パターンに対する研磨影響範囲を関数化し、該関数化により得られる、研磨影響範囲における研磨時の圧力変化を示すグラフの半値幅をオーバーラップ量として定義する。より具体的には、オーバーラップ量は、対象となる「プロセス条件・部材構成」下で、実際に半導体デバイスを研磨した際の膜厚データや断面形状から得られる、パターンに対する研磨影響範囲を関数化した特性図(グラフ)に基づいて決定される。ここで、部材構成は、研磨用パッド等のCMPプロセスで使用される部材を意味する。
【0029】
図2に、硬度の異なる2つのパッドに関する、半導体デバイスを研磨した場合のパターンに与える研磨影響範囲を関数化したグラフを示す。一方のパッドAの硬度は、他方のパッドBの硬度より小さい。図2に示すグラフにおいて、縦軸は圧力、横軸は影響領域を示す。影響領域は圧力が変化した領域を示す。パッドAによる研磨の影響領域は、パッドBによる研磨の影響領域よりも大きい。パッドAによる研磨の場合は、その影響領域の半値幅aが、オーバーラップ量として定義される。パッドBによる研磨の場合は、その影響領域の半値幅bが、オーバーラップ量として定義される。このように必要最低限のオーバーラップ量を定義することで、オーバーラップ量の増加による演算処理時間の増加を最小限にすることが可能である。オーバーラップ量(半値幅)は、オーバーラップ量定義部4から形状予測演算部5に供給される。
【0030】
形状予測演算部5は、パターン密度演算部2から供給されたパターン密度抽出結果と、プロセス条件設定部3から供給されたプロセス条件と、オーバーラップ量定義部4から供給されたオーバーラップ量(半値幅)とに基づいて、半導体デバイスを研磨した場合の形状予測の演算処理を行う。この形状予測演算処理では、形状予測の対象領域(図形)を、半値幅により定義されたオーバーラップ量を付加した形で複数の領域に分割する。分割した領域をそれぞれ別々のCPUに割り当てる。各CPUでは、割り当てられた領域を複数の領域にグリッド分割し、各分割領域における形状予測演算処理を行う。
【0031】
図3に、演算処理の対象とされた領域(形状予測対象領域)を4分割して分散処理を行う場合の各CPUに割り当てる分割領域を模式的に示す。図3の例では、演算処理の対象とされた領域は第1乃至第4の分割領域に分割される。
【0032】
第1の分割領域の他の分割領域との境界部に、オーバーラップ量定義部4から供給されたオーバーラップ量(半値幅)に対応する幅のオーバーラップ部Aが付加されている。オーバーラップ部Aを含む第1の分割領域が、第1のCPU(1)に割り当てられる。
【0033】
第2の分割領域の他の分割領域との境界部に、オーバーラップ量定義部4から供給されたオーバーラップ量(半値幅)に対応する幅のオーバーラップ部Bが付加されている。オーバーラップ部Bを含む第2の分割領域が、第2のCPU(2)に割り当てられる。
【0034】
第3の分割領域の他の分割領域との境界部に、オーバーラップ量定義部4から供給されたオーバーラップ量(半値幅)に対応する幅のオーバーラップ部Cが付加されている。オーバーラップ部Cを含む第3の分割領域が、第3のCPU(3)に割り当てられる。
【0035】
第4の分割領域の他の分割領域との境界部に、オーバーラップ量定義部4から供給されたオーバーラップ量(半値幅)に対応する幅のオーバーラップ部Dが付加されている。オーバーラップ部Dを含む第4の分割領域が、第4のCPU(4)に割り当てられる。
【0036】
形状予測演算部5では、第1乃至第4のCPUが、割り当てられた領域を複数の領域にグリッド分割し、各分割領域における形状予測演算処理を行う。
【0037】
なお、半値幅により定義されたオーバーラップ量を付加した分割領域の境界線と、先のパターン密度演算条件設定で定義された演算分解能(グリッドサイズ)に基づくグリッド線との間でアンマッチが生じる可能性がある。
【0038】
図4Aに、オーバーラップ量を付加した分割領域の境界線がグリッド線と一致する場合の例を模式的に示す。この例のように、オーバーラップ量を付加した領域の境界線がグリッド線と一致する場合は、形状予測演算部5による分割領域の拡張処理は行われない。
【0039】
図4Bに、オーバーラップ量を付加した分割領域の境界線がグリッド線と一致しない場合の例を模式的に示す。X軸(横軸)方向およびY軸(縦軸)方向の両方向において、オーバーラップ量を付加した領域の境界線がグリッド線と一致しない。この場合は、形状予測演算部5は、X軸方向およびY軸方向の両方向において、オーバーラップ量を付加した分割領域をさらに拡張するための処理を行う。拡張された領域の境界線は、グリッド線と一致する。X軸方向についてのみアンマッチが生じた場合は、X軸方向についての拡張処理が行われる。同様に、Y軸方向についてのみアンマッチが生じた場合は、Y軸方向についての拡張処理が行われる。
【0040】
マージ処理部6は、形状予測演算部5から供給される各分割領域の形状予測結果(予測値)に基づく図形を合成する。オーバーラップ領域における形状予測結果(予測値)は、マージ処理後に不要となる。このため、図形合成を行う前に、マージ処理部6は、各分割領域の形状予測結果(予測値)から各オーバーラップ領域における形状予測結果(予測値)を削除する。マージ処理結果は、マージ処理部6から解析部7に供給される。
【0041】
解析部7は、マージ処理部6から供給されるマージ処理結果に基づいて解析処理を行う。この解析処理では、例えば、マージ処理結果から指定解析エリアの膜厚等の解析を行う。
【0042】
次に、本実施形態のCMP形状予測シミュレータによる形状予測処理の手順につい説明する。
【0043】
図5に、形状予測処理手順の一例を示す。図5を参照すると、まず、パターン密度演算条件設定部1が、研磨対象である半導体デバイスのパターン密度の演算条件を設定する(ステップ)。そして、パターン密度演算部2が、パターン密度演算条件設定部1により設定された演算条件に基づいて、指定解析エリアのパターン密度を抽出する(ステップS21)。
【0044】
次に、プロセス条件設定部3がプロセス条件を設定し(ステップS22)、オーバーラップ量定義部4がオーバーラップ量を定義する(ステップS23)。そして、形状予測演算部5が、ステップS21で抽出したパターン密度抽出結果と、ステップS22で設定したプロセス条件と、ステップS23で定義したオーバーラップ量(半値幅)とに基づいて、半導体デバイスを研磨した場合の形状を予測するための演算処理(分散処理)を行う(ステップS24)。
【0045】
次に、マージ処理部6が、ステップS24の分散処理により得られた、各分割領域の形状予測結果(予測値)に基づく図形を合成する(ステップS25)。そして、解析部7が、ステップS25のマージ処理の結果に基づいて解析処理を行う。
【0046】
上述の各構成部における処理(機能)は、CMP形状予測シミュレータを構成するコンピュータシステム上で、記憶装置に格納されたプログラムを制御装置(CPU)が実行することで実現することができる。プログラムは、予め記憶装置に記憶しておいてもよく、また、CD−ROMやDVDに代表される記録媒体により提供されてもよい。記録媒体によりプログラムを提供する場合は、CMP形状予測シミュレータに、記録媒体に対する情報の書き込みおよび読み出しを行うための装置を設ける。
【0047】
また、プログラムは、インターネットに代表されるネットワークを通じてCMP形状予測シミュレータに提供してもよい。この場合は、CMP形状予測シミュレータに、ネットワークを介した通信機能を設ける。
【0048】
以上説明した本実施形態のCMP形状予測シミュレータによれば、形状予測演算部5にて、形状予測演算の分散処理が行われるので、演算処理を高速に行うことができる。
【0049】
また、分割領域をオーバーラップさせることで、分割領域間の境界部を跨ぐデバイスパターンや、境界部近傍のデバイスパターンの影響を考慮した形状予測演算が可能になっており、これにより、高精度な形状予測演算を実現することができる。
【0050】
図6は、本実施形態のCMP形状予測シミュレータにおける形状予測演算処理(分散処理)の結果と、比較例である、1台のCPUによる形状予測演算処理(ローカル処理)の結果とを示す。図6において、図面に向かって左側に、ローカル処理(図10のローカル処理に同じ)および分散処理の一例が処理対象の図形とともに示されており、右側には、それらローカル処理および分散処理による形状予測結果と実測値を示すグラフが示されている。ローカル処理および分散処理の各処理における対象図形は同じものである。グラフにおいて、縦軸は研磨された部位の高さを示し、横軸は解析範囲(スキャン長)を示す。グラフ中、最も太い線は、分散処理図形のb−b’における研磨部位の高さの変化を示し、2番目に太い線は、ローカル処理図形のa−a’における研磨部位の高さの変化を示す。最も細い線は、実際に研磨された部位の実測値である。
【0051】
ローカル処理の場合の演算処理時間は6720秒であるのに対して、分散処理による演算処理時間は1932秒である。分散処理によれば、ローカル処理に比べて、約3.5倍の高速化を実現することができる。
【0052】
また、図6のグラフから分かるように、図形境界部(b−b’)近傍において、分散処理による予測結果は実測値とほぼ同じ値になっており、図10に示した分散処理に比較して、形状予測精度を向上することができる。
【0053】
上述したCMP形状予測シミュレータは本発明の一例であり、その構成および動作は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更することができる。
【0054】
例えば、形状予測演算処理部5は、分散処理とローカル処理の切り替え可能な構成であってもよい。シミュレータ操作者が、入力装置にて所定の入力操作を行うことにより、ローカル処理または分散処理の選択が行われる。小規模演算の場合は、ローカル処理を適用し、大規模演算の場合は、分散処理を適用する。これにより、効率よく、形状予測演算処理を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、半導体製造技術に適用可能である他、非金属系、金属膜系を問わず、化学機械研磨により形成される研磨面の形状を予測する形状予測システム全般(または図形処理装置全般)に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態であるCMP形状予測シミュレータの構成を示すブロック図である。
【図2】硬度の異なる2つのパッドに関する、パターンに対する研磨影響範囲を関数化したグラフを示す図である。
【図3】形状予測対象領域を4分割して分散処理を行う場合の各CPUに割り当てる分割領域を示す模式図である。
【図4A】オーバーラップ量を付加した分割領域の境界線がグリッド線と一致する場合の一例を示す模式図である。
【図4B】オーバーラップ量を付加した分割領域の境界線がグリッド線と一致しない場合の一例を示す模式図である。
【図5】図1に示すCMP形状予測シミュレータにて行われる形状予測処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態のCMP形状予測シミュレータにおける形状予測演算処理(分散処理)の結果と、比較例である、1台のCPUによる形状予測演算処理(ローカル処理)の結果とを示す模式図である。
【図7】関連技術としてのCMP形状予測シミュレータの動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7に示すCMP形状予測シミュレータにて行われるパターン密度演算のローカル処理の一例を示す模式図である。
【図9】図7に示すCMP形状予測シミュレータにて行われるパターン密度演算の分散処理の一例を示す模式図である。
【図10】図7に示すCMP形状予測シミュレータにて行われる形状予測演算に適用される、ローカル処理および分散処理の結果を示す模式図である。
【符号の説明】
【0057】
1 パターン密度演算条件設定部
2 パターン密度演算部
3 プロセス条件設定部
4 オーバーラップ量定義部
5 形状予測演算部
6 マージ処理部
7 解析部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械研磨により形成される研磨面の形状を予測する形状予測シミュレータであって、
形状予測の対象領域を複数の領域に分割する際の、各分割領域の間のオーバーラップ量を定義するオーバーラップ量定義部と、
前記対象領域を、前記オーバーラップ量定義部にて定義されたオーバーラップ量に対応する領域を含む前記複数の領域に分割し、該分割領域毎の形状予測を分散処理により演算する形状予測演算処理部と、
前記形状予測演算処理部で演算した前記分割領域毎の形状予測結果を合成するマージ処理部と、を有する、形状予測シミュレータ。
【請求項2】
前記対象領域は、半導体デバイスのパターンが形成された領域であり、
前記オーバーラップ量定義部は、前記化学機械研磨で使用する部材の特性により決まる、前記パターンに対する研磨影響範囲を関数化し、該関数化により得られる、前記研磨影響範囲における研磨時の圧力変化を示すグラフの半値幅を前記オーバーラップ量として定義する、請求項1に記載の形状予測シミュレータ。
【請求項3】
前記化学機械研磨で使用する部材の特性が、研磨用パッドの硬度に基づく特性である、請求項2に記載の形状予測シミュレータ。
【請求項4】
前記形状予測演算処理部は、前記オーバーラップ量に対応する領域を含む前記複数の分割領域のそれぞれについて、当該分割領域の境界線が、互いに直交する複数の線からなるグリッド線に一致するか否かを判定し、一致しない場合に、当該分割領域を拡張して前記境界線を前記グリッド線に一致させる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の形状予測シミュレータ。
【請求項5】
前記マージ処理部は、前記形状予測演算処理部で演算した前記分割領域毎の形状予測結果から前記オーバーラップ量に対応する領域における形状予測結果を削除する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の形状予測シミュレータ。
【請求項6】
化学機械研磨により形成される研磨面の形状を予測する形状予測方法であって、
形状予測の対象領域を複数の領域に分割する際の、各分割領域の間のオーバーラップ量を定義し、
前記対象領域を、定義した前記オーバーラップ量に対応する領域を含む前記複数の領域に分割し、該分割領域毎の形状予測を分散処理により演算し、
演算した前記分割領域毎の形状予測結果を合成する、形状予測方法。
【請求項7】
化学機械研磨により形成される研磨面の形状を予測する形状予測処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
形状予測の対象領域を複数の領域に分割する際の、各分割領域の間のオーバーラップ量を定義する処理と、
前記対象領域を、定義した前記オーバーラップ量に対応する領域を含む前記複数の領域に分割し、該分割領域毎の形状予測を分散処理により演算する処理と、
演算した前記分割領域毎の形状予測結果を合成する処理と、を前記コンピュータに実行させるプログラム。
【請求項1】
化学機械研磨により形成される研磨面の形状を予測する形状予測シミュレータであって、
形状予測の対象領域を複数の領域に分割する際の、各分割領域の間のオーバーラップ量を定義するオーバーラップ量定義部と、
前記対象領域を、前記オーバーラップ量定義部にて定義されたオーバーラップ量に対応する領域を含む前記複数の領域に分割し、該分割領域毎の形状予測を分散処理により演算する形状予測演算処理部と、
前記形状予測演算処理部で演算した前記分割領域毎の形状予測結果を合成するマージ処理部と、を有する、形状予測シミュレータ。
【請求項2】
前記対象領域は、半導体デバイスのパターンが形成された領域であり、
前記オーバーラップ量定義部は、前記化学機械研磨で使用する部材の特性により決まる、前記パターンに対する研磨影響範囲を関数化し、該関数化により得られる、前記研磨影響範囲における研磨時の圧力変化を示すグラフの半値幅を前記オーバーラップ量として定義する、請求項1に記載の形状予測シミュレータ。
【請求項3】
前記化学機械研磨で使用する部材の特性が、研磨用パッドの硬度に基づく特性である、請求項2に記載の形状予測シミュレータ。
【請求項4】
前記形状予測演算処理部は、前記オーバーラップ量に対応する領域を含む前記複数の分割領域のそれぞれについて、当該分割領域の境界線が、互いに直交する複数の線からなるグリッド線に一致するか否かを判定し、一致しない場合に、当該分割領域を拡張して前記境界線を前記グリッド線に一致させる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の形状予測シミュレータ。
【請求項5】
前記マージ処理部は、前記形状予測演算処理部で演算した前記分割領域毎の形状予測結果から前記オーバーラップ量に対応する領域における形状予測結果を削除する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の形状予測シミュレータ。
【請求項6】
化学機械研磨により形成される研磨面の形状を予測する形状予測方法であって、
形状予測の対象領域を複数の領域に分割する際の、各分割領域の間のオーバーラップ量を定義し、
前記対象領域を、定義した前記オーバーラップ量に対応する領域を含む前記複数の領域に分割し、該分割領域毎の形状予測を分散処理により演算し、
演算した前記分割領域毎の形状予測結果を合成する、形状予測方法。
【請求項7】
化学機械研磨により形成される研磨面の形状を予測する形状予測処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
形状予測の対象領域を複数の領域に分割する際の、各分割領域の間のオーバーラップ量を定義する処理と、
前記対象領域を、定義した前記オーバーラップ量に対応する領域を含む前記複数の領域に分割し、該分割領域毎の形状予測を分散処理により演算する処理と、
演算した前記分割領域毎の形状予測結果を合成する処理と、を前記コンピュータに実行させるプログラム。
【図1】
【図2】
【図5】
【図7】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図5】
【図7】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−140956(P2009−140956A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312470(P2007−312470)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
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