説明

形状変形装置、形状変形方法及びプログラム

【課題】最適化問題の発生を防ぎつつ、高い変形精度で変形することができ、さらに計算時間を短縮することを可能にすること。
【解決手段】形状データ作成システム1は、1の制御点が移動することにより変形される空間の範囲を所定範囲として、複数の制御点を移動させて内板形状及び成形形状を含む変形対象空間を変形させる変形実行部252と、変形実行部252により当該複数の制御点が移動された後、当該変形対象空間における制御点の数を増加させるとともに、変形される空間の範囲を所定範囲に比べて縮小させる条件変更部254と、を備え、変形実行部252は、条件変更部254により制御点の数、及び変形される空間の範囲が変更された後、変更された複数の制御点を移動させて当該変形対象空間を変形させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被変形形状を含む空間に設けられ、当該空間を変形させる複数の制御点を移動させて、被変形形状を変形させる、形状変形装置、形状変形方法及びプログラムに関し、最適化問題の発生を防ぎつつ、高い変形精度で変形することができ、さらに計算時間を短縮することができる形状変形装置、形状変形方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等の製品の設計では、初期段階において、製品の外観を決定するデザイン形状が設計され、その後の段階において、このデザイン形状に対応し、製品の内部形状を決定する内板形状、及びプレス加工時等に必要となる成形形状が設計される。続いて、このデザイン形状、内板形状、及び成形形状に基づいて、実際に成形性の検証シミュレーションが行われ、成形可能か否かの検討が行われる。続いて、成形可能という検討結果を得られた場合、デザイン形状、内板形状、及び成形形状が確定される。
【0003】
しかしながら、デザイン形状、内板形状、及び成形形状は、主に、この順番に設計されるため、デザイン形状が設計された直後には、内板形状及び成形形状の設計がなされておらず、検証シミュレーションを行うことができない。このため、内板形状及び成形形状が設計されてから検証シミュレーションを行う必要があり、仮に成形不可能という検討結果が得られた場合、デザイン形状の再設計を行わなければならず、大幅な手戻りが生じてしまう。
【0004】
そこで、製品のデザイン形状といった設計の初期段階において、既存の設計情報から当該デザイン形状に類似する既存のデザイン形状を流用して検証シミュレーションを行う方法が提案されている。すなわち、検証シミュレーションでは、流用した既存のデザイン形状を製品のデザイン形状に近づける変形を行い、同様の変形を、当該既存のデザイン形状に対応する内板形状及び成形形状に対して行い、変形された内板形状及び成形形状が成形可能か否かを検討する。例えば、特許文献1には、FFD(Free−Form Deformation)法を使用してデザインを最適化する方法が提案されている。すなわち、特許文献1では、デザインを示す物体点を移動させる方向及び移動させる量を指示して、変形を行う方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−265401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の方法によりデザインを最適化する場合に、物体点を移動させる方向及び移動させる量が最適な値となるように自動的に計算する方法を用いることが提案されている。
【0007】
このような方法としては、共役勾配法、最急降下法、ニュートン法といったアルゴリズムが挙げられる。しかしながら、いずれの方法においても、変形の対象となる形状と目標となる形状との類似度が低い場合、目標となる形状に到達する前に、局所的な最適解に収束してしまい、結果として、目標となるデザインの形状に到達できない恐れがある。これは、最適化問題と呼ばれるものである。
【0008】
最適化問題は、物体点、すなわち、形状を示すパラメータの数が多いことを起因とする場合が多い。そこで、最適化問題を解消するために、パラメータの数を減らすと、形状の細部を表現することができず、変形精度が低下してしまう。さらに、最適化問題が発生しない場合であっても、パラメータの数が多いほど、計算時間が増加するといった問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、最適化問題の発生を防ぎつつ、高い変形精度で被変形形状を基準形状に類似するように変形することができ、さらに計算時間を短縮することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の形状変形装置(例えば、後述の形状データ検索システム1)は、被変形形状(例えば、後述の内板形状及び成形形状)を含む空間としての形状包含空間(例えば、後述の内板形状及び成形形状包含変形対象空間)に設けられ、当該形状包含空間を変形させる複数の制御点を移動させて、被変形形状を基準形状(例えば、後述の基準部位形状)に類似するように変形させる形状変形装置において、1の制御点が移動することにより変形される空間の範囲を所定範囲として、複数の制御点を移動させて前記形状包含空間を変形させる変形手段(例えば、後述の変形実行部252)と、前記変形手段により当該複数の制御点が移動された後、前記形状包含空間における制御点の数を増加させるとともに、前記変形される空間の範囲を前記所定範囲に比べて縮小させる条件変更手段(例えば、後述の条件変更部254)と、を備え、前記変形手段は、前記条件変更手段により前記制御点の数、及び前記変形される空間の範囲が変更された後、変更された複数の制御点を移動させて前記形状包含空間を変形させる。
【0011】
この発明によれば、変形手段により、1の制御点が移動することにより変形される空間の範囲を所定範囲として、複数の制御点が移動されて形状包含空間が変形される。次に、条件変更手段により、変形手段により当該複数の制御点が移動された後、形状包含空間における制御点の数が増加され、変形される空間の範囲が所定範囲に比べて縮小される。次に、変形手段により、条件変更手段により制御点の数、及び変形される空間の範囲が変更された後、変更された複数の制御点が移動されて形状包含空間が変形される。
【0012】
このように、本発明の形状変形装置は、形状包含空間を変形させる途中で、形状包含空間における制御点の数を増加させることができる。よって、本発明の形状変形装置は、変形の初期段階において、制御点の数を少ない状態として、最適化問題の発生を防ぎつつ、短い計算時間で形状包含空間に含まれる被変形形状を低い変形精度で変形させることができる。そして、本発明の形状変形装置は、制御点の数を増加させて、低い変形精度で変形させた被変形形状を高い変形精度で変形させることができる。したがって、本発明の形状変形装置は、最適化問題の発生を防ぎつつ、高い変形精度で被変形形状を変形することができ、さらに計算時間を短縮することができる。
【0013】
本発明の形状変形方法は、被変形形状を含む空間としての形状包含空間に設けられ、当該形状包含空間を変形させる複数の制御点を移動させて、被変形形状を基準形状(例えば、後述の基準部位形状)に類似するように変形させる形状変形装置が実行する形状変形方法において、1の制御点が移動することにより変形される空間の範囲を所定範囲として、複数の制御点を移動させて前記形状包含空間を変形させる変形ステップ(例えば、後述する内板・成形形状データ作成処理のステップS52)と、前記変形ステップにおいて当該複数の制御点が移動された後、前記形状包含空間における制御点の数を増加させるとともに、前記変形される空間の範囲を前記所定範囲に比べて縮小させる条件変更ステップ(例えば、後述する内板・成形形状データ作成処理のステップS58)と、を含み、前記変形ステップにおいては、前記条件変更ステップの処理で前記制御点の数、及び前記変形される空間の範囲が変更された後、変更された複数の制御点を移動させて前記形状包含空間を変形させる。
【0014】
この発明によれば、本発明の形状変形装置と同様の効果を奏することができる。
【0015】
また、前記制御点は、FFD(Free−Form Deformation)法において、前記被変形形状を含む空間に格子状に配置される点であることが好ましい。
【0016】
このようにすることで、本発明の形状変形方法は、FFD法における制御点を被変形形状の変形途中で増加させて、最適化問題の発生を防ぎつつ、高い変形精度で被変形形状を変形することができる。
【0017】
また、上記形状変形方法は、前記変形ステップの処理で変形された後の前記被変形形状の変形前と、前記基準形状との差異を測定し、当該差異が閾値未満か否かを判定する判定ステップ(例えば、後述する変形データ作成処理のステップS46)をさらに含み、前記条件変更ステップにおいては、前記判定ステップの処理で、前記差異が前記閾値未満と判定された場合に、前記形状包含空間における制御点の数を増加させるとともに、前記変形される空間の範囲を前記所定範囲に比べて縮小させ、さらに、当該閾値に所定値減算し、前記変形ステップにおいては、前記条件変更ステップの処理で、前記制御点の数、前記変形される空間の範囲、及び前記閾値が変更された後、前記差異が当該閾値未満となるまで、複数の制御点を繰返し移動させて前記形状包含空間を変形させることが好ましい。
【0018】
このようにすることで、本発明の形状変形方法は、判定ステップにおいて、被変形形状の変形前と比べた場合の差異が閾値未満と判定された場合に、条件変更ステップにおいて、形状包含空間における制御点の数を増加させるとともに、1の制御点が移動することにより変形される空間の範囲を、形状包含空間が変形される前に比べて縮小させ、さらに、当該閾値に所定値減算する。よって、本発明の形状変形方法は、被変形形状の差異が変形前と比べて閾値未満となるような形状変形の収束状態となった場合に、条件変形ステップにおいて制御点等の変形条件を切り替えて、高い変形精度で被変形形状の変形を行うことができる。
【0019】
また、上記形状変形方法は、前記被変形形状と前記基準形状とは点列データから構成され、前記判定ステップにおいては、前記変形ステップの処理で変形された後の前記被変形形状の点列データと前記基準形状の点列データ(例えば、後述の対象部位点列データ)とのそれぞれについて、所定の分解能でフーリエ変換を行うことにより前記被変形形状の波形データと前記基準形状の波形データとを算出し、算出された前記被変形形状の波形データと前記基準形状の波形データとのベクトル差を算出することによって、前記被変形形状と前記基準形状との差異を測定することが好ましい。
【0020】
このようにすることで、本発明の形状変形方法は、判定ステップにおいて、被変形形状の波形データと基準形状の波形データとのベクトル差を算出することによって、被変形形状と前記基準形状との差異を測定する。よって、本発明の形状変形方法は、ベクトル差を基準として適切に類似度を判定することができる。
【0021】
また、上記形状変形方法は、前記条件変更ステップにおいては、前記判定ステップの処理で、前記差異が前記閾値未満と判定された場合に、前記形状包含空間における制御点の数を増加させるとともに、前記変形される空間の範囲を前記所定範囲に比べて縮小させ、さらに、当該閾値を所定値減算するとともに前記所定の分解能を上げることが好ましい。
【0022】
このようにすることで、本発明の形状変形方法は、変形の初期段階で、制御点が少なく分解能が粗い場合の変形計算を適用して、形状が収束した後、制御点が多く分解能が細かい場合の変形計算を適用することができる。
【0023】
本発明のプログラムは、上述の本発明の形状変形方法に対応するプログラムである。したがって、本発明のプログラムも、上述の本発明の形状変形方法と同様の効果を奏することが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、最適化問題の発生を防ぎつつ、高い変形精度で変形することができ、さらに計算時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係る形状データ作成システムの概要を示す図である。
【図2】本実施形態に係る形状データ作成システムの機能構成を示す図である。
【図3】本実施形態に係る形状データ作成システムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る類似既存デザイン形状データ抽出処理を示すフローチャートである。
【図5】本実施形態に係る基準合せ処理を示すフローチャートである。
【図6】図5に続くフローチャートである。
【図7】本実施形態に係る内板・成形形状データ作成処理を示すフローチャートである。
【図8】変形計算に対する制御点及び分解能の特性を示す模式図である。
【図9】本発明を適用して変形計算を複数行った場合の、被変形形状の目標形状に対する差異度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の形状データ検索装置に係る一実施形態としての形状データ作成システムの処理の流れの概要を示す図である。
【0027】
ここで、本明細書でいう「システム」とは、複数の装置や複数の処理部により構成される装置全体を表すものをいう。すなわち、1つの筺体に含まれる範囲を1台と定義するならば、形状データ作成システムは、1台で構成することもできるし、複数台で構成することもできる。
形状データ作成システムは、車両における新規のデザイン形状を示す新規のデザイン形状データに対応して、新規の内板形状を示す新規の内板形状データ、及び新規の成型形状を示す新規の成形形状データを作成する。
形状データ作成システムは、作成した新規の内板形状データ及び新規の成形形状データを、新規のデザイン形状データと対応付けて記憶する。このようにして記憶されるデータ、すなわち、内板形状データ、成形形状データ、及びデザイン形状データを含むデータを、以下、「形状データ」と呼ぶ。記憶された形状データは、その後、別の新規の形状データが作成される場合には、既存の形状データとして用いられる。
【0028】
すなわち、図1の手順1において、形状データ作成システムは、新規のデザイン形状データの入力を受け付け、この新規のデザイン形状データに類似する既存のデザイン形状データを既存の形状データから抽出する。
手順2において、形状データ作成システムは、この既存のデザイン形状データにより示される既存のデザイン形状を、変形させることによって、新規のデザイン形状データにより示される新規のデザイン形状に近づけるためのルール(以下、「変形ルール」と呼ぶ)を作成する(図1の手順2)。
続いて、形状データ作成システムは、この変形ルールに基づいて、既存の形状データに含まれる内板形状データ及び成形形状データの各々を変形することで、新規のデザイン形状データに対応する新規の内板形状データ及び成形形状データの各々を作成する(図1の手順3)。
【0029】
図2は、本実施形態に係る形状データ作成システム1の機能的構成を示す機能ブロック図である。
形状データ作成システム1は、記憶部10と、制御部20と、入力部30と、を備えている。
記憶部10は、形状DB(Database)11を備える。
制御部20は、検索条件受付部21と、検索部22と、基準合せ部23と、変形ルール作成部24と、形状データ作成部25と、結合部26と、を備える。
入力部30は、キーボードやマウス等により構成され、ユーザの操作を受けて各種情報を入力する。
表示部40は、液晶ディスプレイ等の各種ディスプレイにより構成され、制御部20の制御に応じて、制御部20による処理結果や各種情報等を表示する。
【0030】
形状DB11は、複数の車両の機種それぞれについての既存の形状データを記憶する。既存の形状データには、上述したように、既存のデザイン形状データと、既存の内板形状データと、既存の成形形状データとが関連付けられて含まれている。
【0031】
デザイン形状データは、車両の設計の初期段階において、デザイン形状を示すために作成されるデータである。このデザイン形状データは、車両を構成する複数の部位毎に、その部位の輪郭形状を示す線データと、当該輪郭で囲まれる面の形状を示す面データとを含んで構成されている。
また、これら線データ及び面データの各々は、点列データ、可視化形状データ(STL(Standard Triangulated Language又はSTereo Lithography)データ)、及びCAD(Computer Aided Design)データから構成されている。
また、複数の部位のそれぞれは、その部位を示す識別情報に対応付けられている。つまり、デザイン形状データは、複数の部位それぞれの識別情報と、複数の部位それぞれの線データ及び面データとが関連付けられて形状DB11に記憶されている。
【0032】
内板形状データは、デザイン形状を示すデザイン形状データが作成されてから、このデザイン形状データに基づいて作成されるデータであり、デザイン形状データの所定の部位の線データ及び面データにより示されるデザイン形状に対応して、当該部位の内板形状を決定する形状を示すデータである。内板形状データは、複数の部位における形状、寸法、部材といった内板形状に関連する設計情報を含んでいる。また、内板形状データにおける複数の部位に関する設計情報のそれぞれは、識別情報に対応付けられている。
【0033】
成形形状データは、デザイン形状を示すデザイン形状データが作成されてから、このデザイン形状データに基づいて作成されるデータであり、プレス加工時に必要となる形状(例えば金型形状)を示すデータである。成形形状データは、内板形状データと同様に、複数の部位における形状、寸法、部材といった成形形状に関連する設計情報を含んでいる。また、成形形状データにおける複数の部位に関する設計情報それぞれは、識別情報に対応付けられている。
【0034】
このように、内板形状データ及び成形形状データは、デザイン形状が設計されてから、このデザイン形状に基づいて作成されるデータである。
つまり、このデザイン形状を示すデザイン形状データにおける複数の部位に関する線データ及び面データそれぞれは、内板形状データ及び成形形状データの複数の部位に関する設計情報それぞれと対応付けられている。また、デザイン形状データにおける複数の部位の識別情報それぞれも、内板形状データ及び成形形状データの複数の部位の識別情報それぞれと対応付けられている。
【0035】
検索条件受付部21は、入力部30を介してオペレータから、検索条件として、新規のデザイン形状データ等を受け付ける。
【0036】
具体的には、検索条件受付部21は、検索条件として、新規のデザイン形状データと、検索対象とする既存のデザイン形状データの情報(車種、発売年度等)とを受け付ける。
【0037】
また、検索条件受付部21は、当該新規のデザイン形状データのうち検索対象とする部位の情報を受け付ける。すなわち、検索条件受付部21は、入力部30を介してオペレータから、部位の名称又は識別情報の指定を受け付けることにより、部位の情報を受け付ける。さらに、検索条件受付部21は、入力部30を介してオペレータから、受け付けられた部位のうち検索対象とする部位の範囲として、当該部位の3次元座標におけるX軸方向の寸法X、Y軸方向の寸法Y、Z軸方向の寸法Zを受け付ける。ここで、寸法X、寸法Y、及び寸法Zにより指定された部位の範囲を対象部位という。
【0038】
また、検索条件受付部21は、後述のフーリエ変換において使用する分解能を受け付ける。
【0039】
また、検索条件受付部21は、重み係数を受け付ける。
重み係数は、輪郭形状を示す線データに対応する後述の既存部位点列データ、当該輪郭で囲まれる面の形状を示す面データに対応する後述の既存部位点列データそれぞれに対して指定する値であり、例えば、1や0.5といった値をとる。この重み係数により、後述の類似度判定部223において類似度を算出する際の、線データの影響度及び面データの影響度を調整することができる。
【0040】
検索部22は、検索条件受付部21により検索条件を受け付けたことに応じて、新規のデザイン形状データのうち検索条件に含まれる部分に類似する既存のデザイン形状データの対応部分を検索し、当該部分を出力する。
この検索部22は、点列データ取得部221と、波形データ変換部222と、類似度判定部223と、抽出部224とを備える。
【0041】
点列データ取得部221は、検索条件受付部21において新規のデザイン形状データを受け付けたことに応じて、形状DB11から、複数の既存のデザイン形状データ及び当該新規の形状デザインデータの各々に対応する点列データを取得する。
【0042】
具体的には、点列データ取得部221は、検索条件受付部21において新規のデザイン形状データを受け付けたことに応じて、新規のデザイン形状データに対応する新規点列データのうち、検索条件受付部21において受け付けた対象部位に対応する点列データを新規部位点列データとして取得する。
ここで、点列データ取得部221は、新規部位点列データとして、輪郭形状を示す線データに対応するものと、当該輪郭で囲まれる面の形状を示す面データに対応するものとをそれぞれ取得する。
【0043】
また、点列データ取得部221は、検索条件受付部21において新規の形状データを受け付けたことに応じて、検索条件(車種、発売年度等)を満たす既存の形状データのうち、検索条件受付部21において受け付けた検索対象の対象部位に対応する点列データを既存部位点列データとして複数取得する。
ここで、点列データ取得部221は、既存部位点列データとして、輪郭形状を示す線データに対応するものと、当該輪郭で囲まれる面の形状を示す面データに対応するものとをそれぞれ取得する。
【0044】
波形データ変換部222は、点列データ取得部221により取得された新規部位点列データ及び複数の既存部位点列データの各々についてフーリエ変換を行う。
ここで、新規部位点列データについてフーリエ変換が行われた結果得られるデータを、以下「新規波形データ」と呼ぶ。また、既存部位点列データについてフーリエ変換が行われた結果得られるデータを、以下「既存波形データ」と呼ぶ。なお、データの形態だけに着目する場合、すなわち新規と既存の区別が不要の場合、新規波形データと既存波形データとをまとめて、以下、「波形データ」と呼ぶ。換言すると、点列データについてフーリエ変換が行われた結果得られるデータが、ここでいう波形データである。
以下、このような波形データの具体的な求め方の一例について説明する。
【0045】
まず、波形データ変換部222は、検索条件受付部21により受け付けられた分解能をresolutionとすると、以下の式(1)に示すように、波形データの変換に用いる波形指数h、k、lの最大値H、K、Lを算出する。
【0046】
【数1】

【0047】
ここで、フーリエ変換前の点列データは、N(Nは1以上の整数値)個の点データから構成されているものとする。また、波形指数hは、0からHまでの任意の整数である。同様に、波形指数kは0からKまでの任意の整数、波形指数lは0からLまでの任意の整数である。ここで、h、k、lが全て0になるh、k、lの整数の組合せは含まれないものとする。
この場合、波形データ変換部222は、Cを任意の定数とし、wを点列データのi番目の点データに対する重み係数であるとすると、以下の式(2)に示すように規格化定数Sを算出する。
【0048】
【数2】

【0049】
続いて、波形データ変換部222は、規格化定数S、波形指数h、k、lを用いて、点列データを波形データに変換する。点列データのうちi番目の点データのX座標をx、Y座標をy、Z座標をzとそれぞれし、虚数をjとすると、当該点列データから変換される任意の波形指数h、k、lに対応する波形データFhklは、以下の式(3)で示される。
【0050】
【数3】

【0051】
このようにして、波形データ変換部222は、任意の波形指数h、k、lに対応する新規部位点列データを式(3)で表される新規波形データFhklに変換するとともに、任意の波形指数h、k、lに対応する複数の既存部位点列データを式(3)で表される既存波形データFhklに変換する。
なお、新規波形データFhklと既存波形データFhklとを明確に区別すべく、以下、任意の波形指数h、k、lに対応する新規波形データFhklを「新規波形データF」と表わす一方、任意の波形指数h、k、lに対応する既存波形データFhklを「既存波形データF」と表わす。
【0052】
類似度判定部223は、波形データ変換部222において変換された新規波形データFと、複数の既存波形データFとの類似度を判定する。
【0053】
具体的には、類似度判定部223は、波形データ変換部222において変換された新規波形データFと、複数の既存波形データFそれぞれとのスカラ差を算出する。このスカラ差をDとすると、スカラ差Dは、波形指数h、k、lが取り得る全ての整数の組み合わせ、すなわち、波形データの全ての要素に基づいて算出され、以下の式(4)に示される。
【0054】
【数4】

【0055】
ここでは、類似度判定部223は、線データに対応する新規波形データFと、複数の既存波形データFそれぞれとのスカラ差D(以下、他と区別すべく「DSL」と表記する)を算出するとともに、面データに対応する新規波形データFと、複数の既存波形データFそれぞれとのスカラ差D(以下、他と区別すべく「DSS」と表記する)を算出する。
【0056】
また、類似度判定部223は、波形データ変換部222において変換された新規波形データFと、複数の既存波形データFそれぞれとのベクトル差を算出する。このベクトル差をDとすると、ベクトル差Dは、波形指数h、k、lが取り得る全ての整数の組み合わせ、すなわち、波形データの全ての要素に基づいて算出され、以下の式(5)に示される。
【0057】
【数5】

【0058】
ここでは、類似度判定部223は、線データに対応する新規波形データFと、複数の既存波形データFそれぞれとのベクトル差D(以下、他と区別すべく「DVL」と表記する)を算出するとともに、面データに対応する新規波形データFと、複数の既存波形データFそれぞれとのスカラ差(以下、他と区別すべく「DVS」と表記する)を算出する。
【0059】
抽出部224は、類似度判定部223により判定された類似度、すなわち、スカラ差D及びベクトル差Dに基づいて、複数の既存波形データFの中から、新規波形データFに類似する既存波形データFを特定し、特定した当該既存波形データFに対応する既存のデザイン形状データを、新規のデザイン形状データに類似するデータとして抽出する。
【0060】
具体的には、抽出部224は、スカラ差Dとベクトル差Dとを既存のデザイン形状データそれぞれに対応する類似度として表示部40に表示させ、オペレータから既存のデザイン形状データの選択を受け付ける。ここで、抽出部224は、オペレータから入力部30を介した操作入力に応じて、スカラ差Dが小さい順に類似度を表示したり、ベクトル差Dが小さい順に類似度を表示したりする。そして、抽出部224は、選択された類似度に対応する既存波形データFを新規波形データFに類似する既存波形データFに特定し、特定した当該既存波形データFに対応する既存のデザイン形状データを、新規の形状データFに類似するデータとして抽出する。
【0061】
基準合せ部23は、検索条件受付部21により受け付けられた新規のデザイン形状データが示すデザイン形状(新規デザイン形状)の対象部位を基準部位形状として認識する。また、基準合せ部23は、検索部22(抽出部224)により抽出された既存のデザイン形状データが示す既存のデザイン形状(既存デザイン形状)の、新規デザイン形状の対象部位に対応する部位(以下、「対応部位」)を対象部位形状として認識する。続いて、基準合せ部23は、基準部位形状と対象部位形状との形状の差異を算出する。そして、基準合せ部23は、この算出した差異に基づいて、基準合せ処理として、既存デザイン形状を新規デザイン形状に近づける修正を行う。
【0062】
ここで、新規デザイン形状の対象部位に対応する点列データは、新規部位点列データであるが、以下、基準部位点列データという。また、既存デザイン形状の対応部位に対応する点列データは、既存部位点列データであるが、以下、対象部位点列データという。
また、基準部位点列データの任意の波形指数h、k、lに対応する波形データは、新規波形データFであるが、以下、基準波形データFともいう。また、対象部位点列データの任意の波形指数h、k、lに対応する波形データは、既存波形データFであるが、以下、対象部位波形データFともいう。
【0063】
基準合せ部23は、基準部位点列データに対応する基準波形データFと、対象部位点列データに対応する対象部位波形データFとのスカラ差Dを第1の閾値Tとし、ベクトル差Dを第2の閾値Tとする。
【0064】
続いて、基準合せ部23は、対象部位点列データの修正を行う。
具体的には、基準合せ部23は、対象部位点列データに対応する対象部位形状を所定角度ずつ回転させる修正を当該対象部位点列データに行う。続いて、基準合せ部23は、修正後の対象部位点列データについて、波形データ変換部222によりフーリエ変換を行う。ここで、変換された波形データを、対象部位波形データFB1という。続いて、基準合せ部23は、対象部位波形データFB1と、基準波形データFとのスカラ差が、第1の閾値T以下であるか判定する。続いて、基準合せ部23は、スカラ差が第1の閾値T以下であると判定した場合、対象部位形状を回転させる修正を終了する。なお、基準合せ部23は、対象部位形状を規定回数だけ回転させてもスカラ差が第1の閾値T以下とならなかった場合、対象部位形状を回転させる修正をキャンセルし、次の処理(伸縮させる修正)に移る。
【0065】
また、基準合せ部23は、対象部位形状を第1の値ずつ伸長させる修正を、回転に係る修正(キャンセルされた場合も含む)が行われた当該対象部位点列データに行う。続いて、基準合せ部23は、修正後の対象部位点列データについて、波形データ変換部222によりフーリエ変換を行う。ここで、変換された波形データを、対象部位波形データFB2という。続いて、基準合せ部23は、対象部位波形データFB2と、基準波形データFとのスカラ差が、第1の閾値T以下であるか判定する。続いて、基準合せ部23は、スカラ差が第1の閾値T以下であると判定した場合、対象部位形状を伸長させる修正を終了する。なお、基準合せ部23は、対象部位形状を規定回数だけ伸長させてもスカラ差が第1の閾値T以下とならなかった場合、対象部位形状を伸長させる修正をキャンセルし、次の処理(平行移動させる修正)に移る。
【0066】
なお、基準合せ部23は、対象部位形状を第1の値ずつ伸長させる修正を対象部位点列データに行うこととしたが、これに限らない。すなわち、基準合せ部23は、対象部位形状を第1の値ずつ縮小させる修正を当該対象部位点列データに行うこととしてもよい。
【0067】
また、基準合せ部23は、対象部位形状を第2の値ずつ平行移動させる修正を、伸長(縮小)に係る修正(キャンセルされた場合も含む)が行われた対象部位点列データに行う。続いて、基準合せ部23は、修正後の対象部位点列データについて、波形データ変換部222によりフーリエ変換を行う。ここで、変換された波形データを、対象部位波形データFB3という。続いて、基準合せ部23は、対象部位波形データFB3と、基準波形データFとのベクトル差が、第2の閾値T以下であるか判定する。続いて、基準合せ部23は、ベクトル差が第2の閾値T以下である場合、対象部位形状の平行移動させる修正を終了する。なお、基準合せ部23は、対象部位形状を規定回数だけ平行移動させてもベクトル差が第2の閾値T以下とならなかった場合、対象部位形状を平行移動させる修正をキャンセルし、その後、対象部位形状を平行移動させる修正を終了する。
【0068】
このようにして、基準合せ部23は、対象部位形状と基準部位形状との位置を合わせる修正を行う。なお、対象部位点列データに対して行われた修正内容は、後述の形状データ作成部25において使用されるものである。このため、基準合せ部23は、対象部位点列データに対して行われた修正内容を、記憶部10に一時的に記憶させる。
【0069】
変形ルール作成部24は、対象部位形状を基準部位形状に近づける変形を行い、この変形結果に基づいて後述の形状データ作成部25において使用される変形ルールを作成する。変形ルール作成部24は、変形条件受付部241と、変形実行部242と、判定部243と、条件変更部244と、を備える。
【0070】
変形条件受付部241は、対象部位形状の変形時に使用する変形条件として、入力部30を介してオペレータから、FFD法(Free−Form Deformation法)において空間の変形を行うための制御点の数、分解能、重み係数、変形時における収束条件を受け付ける。
【0071】
ここで、FFD法は、3次元構造体である変形対象物を包含する変形対象空間に複数の制御点を格子状に配置し、これら複数の制御点を移動することにより、この変形対象物の形態の変形を行う手法である。
また、空間は、変形が行われる仮想空間である。
【0072】
制御点は、3次元座標情報であり、空間を変形させる際に基準となる点である。1の制御点が移動すると、制御点を中心とした所定範囲の空間が変形される。この所定範囲の空間は、制御点の数に対応している。例えば、空間内の制御点が相対的に少ない場合には、所定範囲が相対的に大きくなり、空間内の制御点が相対的に多い場合には、所定範囲が相対的に小さくなる。
分解能及び重み係数は、フーリエ変換において使用する数値である。
【0073】
収束条件は、対象部位形状の変形時における変形量が妥当な量に達したか否かを判定するために用いられる閾値と、対象部位形状を変形させる最小回数及び最大回数と、制御点を分割(増加)させる回数を示す分割指定回数とを含んでいる。
【0074】
なお、変形条件受付部241は、制御点の数、分解能、及び重み係数の組み合わせを予め定めておき、入力部30を介して、当該組み合わせからの選択を受け付けるようにしてもよい。また、変形条件受付部241は、収束条件を受け付けずに、制御点の数、及び分解能に基づいて自動的に設定するようにしてもよい。
【0075】
変形実行部242は、検索条件受付部21により受け付けられた新規のデザイン形状データに対応する基準部位形状を認識する。また、変形実行部242は、基準合せ部23により修正された既存のデザイン形状データに対応する対象部位形状を認識する。
【0076】
続いて、変形実行部242は、対象部位形状を変形対象物として、対象部位形状を包含する変形対象空間を定義する。そして、変形実行部242は、この変形対象空間内に複数の制御点を格子状に配置するとともに、対象部位形状と基準部位形状のそれぞれに対して、形状の特徴を示す特徴点を複数個定義する。ここで、制御点は、入力部30を介して受け付けられた制御点の数だけ定義される。また、対象部位形状の特徴点と、基準部位形状の特徴点とは、対応付けられている。
【0077】
変形実行部242は、対象部位形状の複数の特徴点それぞれが、当該特徴点が対応する基準部位形状の特徴点に近づくように、変形対象空間内の制御点を移動させることによって、対象部位形状を変形する。すると、対象部位形状に対応する点列データの値が変更される。
【0078】
判定部243は、変形実行部242による変形回数をカウントする。続いて、判定部243は、第1の判定、第2の判定、第3の判定、及び第4の判定を行う。
【0079】
まず、判定部243は、第1の判定として、変形実行部242による対象部位形状の変形回数が、収束条件に含まれる最大回数に達したか否かを判定する。判定部243は、変形回数が最大回数に達したと判定した場合、第4の判定を行い、変形回数が最大回数に達していないと判定した場合、第2の判定を行う。
【0080】
判定部243は、変形回数が最大回数に達していないと判定した場合、基準部位形状と対象部位形状との差異を算出し、その後、第2の判定を行う。
具体的には、判定部243は、上述の(1)式に基づいて、変形条件受付部241により受け付けられた分解能に対応する波形指数の最大値を算出するとともに、上述の(2)式に基づいて、変形条件受付部241により受け付けられた重み係数に対応する規格化定数を算出する。
【0081】
続いて、判定部243は、算出した波形指数の最大値及び規格化定数を用いて、波形データ変換部222により、基準部位形状に対応する点列データを基準波形データに変換するとともに、対象部位形状に対応する対象部位点列データを対象部位波形データに変換する。続いて、判定部243は、上述の(5)式に基づいて、基準波形データと対象部位波形データとのベクトル差を、基準部位形状と、変形後の対象部位形状との差異として算出する。
【0082】
続いて、判定部243は、算出された差異が、収束条件に含まれる閾値未満か否かを判定する。判定部243は、算出された差異が閾値未満であると判定した場合、第3の判定を行い、算出された差異が閾値以上であると判定した場合、変形実行部252に処理を移す。
【0083】
判定部243は、算出された差異が閾値未満であると判定した場合、第3の判定として、変形実行部242による変形回数が、収束条件に含まれる最小回数に達したか否かを判定する。判定部243は、変形回数が最小回数に達したと判定した場合、第4の判定を行い、変形回数が最小回数に達していないと判定した場合、変形実行部242に処理を移す。
【0084】
判定部243は、変形回数が最大回数に達したと判定した場合、又は算出された差異が閾値未満と判定し、かつ変形回数が最小回数に達したと判定した場合、第4の判定を行う。すなわち、判定部243は、第4の判定として、後述の条件変更部244により、制御点が分割された回数(分割実行回数)が、収束条件に含まれる分割指定回数に達したか否かを判定する。判定部243は、分割実行回数が分割指定回数に達したと判定した場合、変形実行部242による変形において移動及び分割が行なわれた制御点の変化を変形ルールとして出力する。また、判定部243は、分割実行回数が分割指定回数に達していないと判定した場合、条件変更部244に処理を移す。
【0085】
条件変更部244は、判定部243の第4の判定において、分割実行回数が分割指定回数に達していないと判定された場合に実行される。すなわち、条件変更部244は、変形対象空間における制御点を分割することにより、当該空間における制御点の数を増加させる。すると、1の制御点が移動することにより変形される空間の範囲である所定範囲は、当該複数の制御点が分割される前の所定範囲と比べて縮小される。なお、条件変更部244は、制御点の数を増加させた場合に、分解能を上げるようにしてもよい。また、条件変更部244は、制御点の数に基づいて、収束条件に含まれる閾値を所定値だけ減算する。また、条件変更部244は、制御点の数に基づいて、収束条件に含まれる最小回数及び最大回数を変更する。条件変更部244は、これらの処理を行った後、変形実行部242に処理を移す。
【0086】
形状データ作成部25は、変形ルール作成部24により作成された変形ルールに基づいて、検索部22(抽出部224)により抽出された既存のデザイン形状データに関連付けられている既存の内板形状データ及び既存の成形形状データをそれぞれ変形する。
【0087】
具体的には、形状データ作成部25は、抽出された既存の内板形状データ及び既存の成形形状データの各対応部位に対して、基準合せ部23によって記憶部10に一時的に記憶された修正内容に基づいて修正を行う。
すなわち、形状データ作成部25は、既存の内板形状データ及び既存の成形形状データの各対応部位に対応する点列データを抽出する。そして、形状データ作成部25は、これらの点列データに対して、基準合せ部23によって記憶部10に一時的に記憶された修正内容に基づいて基準合せのための修正を行う。
【0088】
続いて、形状データ作成部25は、修正された点列データが示す内板形状及び成形形状の各対応部位を包含する変形対象空間(以下、「内板・成形形状包含変形対象空間」と呼ぶ)を定義する。そして、形状データ作成部25は、内板・成形形状包含変形対象空間内に複数の制御点を格子状に配置する。
【0089】
ここで、制御点は、変形ルール作成部24によって受け付けられた制御点の数だけ、内板・成形形状包含変形対象空間内に配置される。また、1の制御点が移動することにより変形される空間の範囲は、所定範囲であることとする。
【0090】
続いて、形状データ作成部25は、内板・成形形状包含変形対象空間内に配置された制御点を、変形ルール作成部24によって作成された変形ルールに従って変化させる。つまり、形状データ作成部25は、内板・成形形状包含変形対象空間内に配置された制御点に対して、変形実行部242による変形において移動及び分割が行なわれた制御点の変化と同一に変化させる。すると、既存の内板形状に対応する点列データ及び既存の成形形状に対応する点列データの値が変更され、既存の内板形状データ及び既存の成形形状データが、新規のデザイン形状データに対応して変更される。そして、形状データ作成部25は、変更された既存の内板形状データ及び既存の成形形状データを新規の内板形状データ及び新規の成形形状データとして出力する。
【0091】
なお、内板形状データや成形形状データ以外に、既存のデザイン形状データに関連付けられている既存のデータがある場合、形状データ作成部25は、これら既存のデータについて、内板形状データや成形形状データと同様に変形することにより、新規のデザイン形状データに対応する新規のデータを作成してもよい。
【0092】
結合部26は、検索条件受付部21により受け付けられた新規のデザイン形状データと、形状データ作成部25により作成された新規の内板形状データ及び新規の成形形状データ(作成対象部位についてのデータ)とを関連付けて、新規の形状データを作成する。
なお、結合部26は、これら新規のデザイン形状データ、内板形状データ、及び成形形状データに対応するデザイン形状、内板形状、及び成形形状の位置合わせを行い、表示部40に表示させるようにしてもよい。
【0093】
なお、検索条件受付部21により、新規のデザイン形状データ全体が示すデザイン形状全体が複数の部位に分割され、それぞれの部位が作成対象部位として受け付けられた場合、形状データ作成部25により、複数の部位に対応して、新規の内板形状データ及び新規の成形形状データ(対応部位についての各部分データ)が複数生成される。この場合、結合部26は、複数生成された新規の内板形状データ及び新規の成形形状データ(対応部位についての各部分データ)を合成することにより、新規のデザイン形状データ全体に対応する内板形状データ及び成形形状データを生成する。
【0094】
続いて、形状データ作成システム1が実行する処理のうち、新規のデザイン形状データを受け付けてから、対応する新規の内板形状データ及び新規の成形形状データを作成することによって、新規の形状データを作成するまでの処理(以下、「新規形状データ作成処理」と呼ぶ)の流れについて説明する。
図3は、本実施形態に係る形状データ作成システム1が実行する新規形状データ作成処理の流れを示すフローチャートである。
【0095】
ステップS1において、図2の検索条件受付部21は、入力部30を介して、検索の対象とする新規のデザイン形状データ及び設定情報の入力を受け付ける。
ここで、設定情報は、例えば、作成対象部位の情報や、類似度の判定に用いられる情報を含んでいる。
【0096】
ステップS2において、検索部22は、ステップS1の処理で受け付けられた設定情報に基づいて、新規のデザイン形状データに類似する既存のデザイン形状データを形状DB11から抽出する。
なお、このようなステップS2の処理を、図3の記載に併せて、「類似既存デザイン形状データ抽出処理」と呼ぶ。類似既存デザイン形状データ抽出処理の詳細は、図4を参照して後述する。
【0097】
ステップS3において、基準合せ部23は、ステップS2の処理で抽出された既存デザイン形状データが示す既存デザイン形状の対応部位をステップS1で受け付けられた新規デザイン形状の作成対象部位に近づける修正を行う。
なお、このようなステップS3の処理を、図3の記載に併せて、「基準合せ処理」と呼ぶ。基準合せ処理の詳細は、図5及び図6を参照して後述する。
【0098】
ステップS4において、変形ルール作成部24は、変形ルールを作成する。
なお、このようなステップS4の処理を、図3の記載に併せて、「変形ルール作成処理」と呼ぶ。変形ルール作成処理の詳細は、図7を参照して後述する。
【0099】
ステップS5において、形状データ作成部25は、ステップS4の処理で作成された変形ルールに基づいて、新規の内板形状データ及び新規の成形形状データを作成する。
具体的には、形状データ作成部25は、新規の内板形状データ及び新規の成形形状データの内板・成形形状包含変形対象空間を定義し、この空間内に配置された制御点を、ステップS4において作成された変形ルールに従って変化させる。
【0100】
ステップS6において、結合部26は、ステップS1の処理で受け付けられた新規のデザイン形状データと、ステップS5の処理で作成された新規の内板形状データ及び成形形状データの作成対象部位とを関連付けて、新規の形状データを作成する。
これにより、新規形状データ作成処理は終了となる。
なお、新規形状データ作成処理により作成された新規の形状データは、形状DB11に記憶され、次回以降に別途実行される新規形状データ作成処理において、既存の形状データとして取り扱われる。
【0101】
次に、このような新規形状データ作成処理のうち、ステップS2の類似既存デザイン形状データ抽出処理の詳細について説明する。
図4は、類似既存デザイン形状データ抽出処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
【0102】
上述したように、図3のステップS1の処理で新規のデザイン形状データ及び設定情報の入力が受け付けられると、処理はステップS2に進み、類似既存デザイン形状データ抽出処理として、次のようなステップS21からステップS24の処理が実行される。
【0103】
ステップS21において、点列データ取得部221は、検索条件受付部21において新規の形状データを受け付けた(図3のステップS1参照)ことに応じて、複数の既存の形状データの各々に対応する複数の既存部位点列データ、及び当該新規の形状データに対応する新規点列データを形状DB11からそれぞれ取得する。
【0104】
ステップS22において、波形データ変換部222は、ステップS21の処理で取得された各点列データを各波形データに変換する。
具体的には、波形データ変換部222は、新規部位点列データ及び複数の既存部位点列データの各々についてフーリエ変換を行うことによって、当該新規点列データを新規波形データに変換するとともに、当該複数の既存点列データの各々を複数の既存波形データの各々に変換する。
【0105】
ステップS23において、類似度判定部223は、ステップS22の処理で変換された新規波形データと複数の既存波形データのそれぞれとについてのスカラ差及びベクトル差を算出する。
【0106】
ステップS24において、抽出部224は、ステップS23の処理で算出されたスカラ差及びベクトル差に基づいて、新規のデザイン形状データに類似する既存のデザイン形状データを形状DB11から抽出する。
【0107】
これにより、類似既存デザイン形状データ抽出処理は終了となる。すなわち、図3のステップS2の処理が終了して、処理はステップS3に進むことになる。
【0108】
次に、ステップS3の基準合せ処理の詳細について説明する。
図5及び図6は、基準合せ処理の詳細な流れを示すフローチャートである。なお、図5及び図6のフローチャートの説明における、回転、伸長、平行移動の変化に係る規定数は、それぞれ異なるものとする。
【0109】
上述したように、図4のステップS24の処理で既存のデザイン形状データが形状DB11から抽出されると、処理はステップS3に進み、基準合せ処理として、次のようなステップS301からステップS314の処理が実行される。
【0110】
ステップS301において、基準合せ部23は、閾値を設定する。具体的には、基準合せ部23は、基準部位点列データに対応する基準波形データと、対象部位点列データに対応する対象部位波形データとについて、それらのスカラ差を第1の閾値に設定し、それらのベクトル差を第2の閾値に設定する。
【0111】
ステップS302において、基準合せ部23は、図3のステップS2の処理で抽出された既存のデザイン形状データが示す既存デザイン形状の対象部位形状を所定角度回転させる修正を対象部位点列データに対して行う。
【0112】
ステップS303において、基準合せ部23は、ステップS302の処理で修正された対象部位点列データについて、波形データ変換部222によりフーリエ変換を行い、修正後波形データに変換する。
【0113】
ステップS304において、基準合せ部23は、ステップS303の処理で変換された修正後波形データと基準波形データとのスカラ差を算出し、算出したスカラ差が第1の閾値以下であるか否かを判定する。基準合せ部23は、この判定がYESの場合、ステップS306に処理を移し、この判定がNOの場合、ステップS305に処理を移す。
【0114】
ステップS305において、基準合せ部23は、対象部位形状を規定数回転させたか否かを判定する。基準合せ部23は、この判定がYESの場合、ステップS306に処理を移し、この判定がNOの場合、処理をステップS302に処理を移す。つまり、基準合せ部23は、対象部位形状を規定数回転させても、スカラ差が第1の閾値以下とならなかった場合に、回転に係る処理をキャンセルして次の処理に移る。
【0115】
ステップS306において、基準合せ部23は、対象部位形状を第1の値ずつ伸長させる修正を、回転に係る修正(ステップS305の処理でキャンセルされた場合も含む)が行われた対象部位点列データに対して行う。
【0116】
ステップS307において、基準合せ部23は、ステップS306の処理で修正された対象部位点列データについて、波形データ変換部222によりフーリエ変換を行い、修正後波形データに変換する。
【0117】
ステップS308において、基準合せ部23は、ステップS307の処理で変換された修正後波形データと基準波形データとのスカラ差を算出し、算出したスカラ差が第1の閾値以下であるか否かを判定する。基準合せ部23は、この判定がYESの場合、ステップS310に処理を移し、この判定がNOの場合、ステップS309に処理を移す。
【0118】
ステップS309において、基準合せ部23は、対象部位形状を規定数伸長させたか否かを判定する。基準合せ部23は、この判定がYESの場合、図6のステップS310に処理を移し、この判定がNOの場合、処理をステップS306に処理を移す。つまり、基準合せ部23は、対象部位形状を規定数伸長させても、スカラ差が第1の閾値以下とならなかった場合に、伸長に係る処理をキャンセルして次の処理に移る。
【0119】
図6に移り、ステップS310において、基準合せ部23は、対象部位形状を第2の値ずつ平行移動させる修正を、伸長に係る修正(ステップS309の処理でキャンセルされた場合も含む)が行われた対象部位点列データに対して行う。
【0120】
ステップS311において、基準合せ部23は、ステップS310の処理で修正された対象部位点列データについて、波形データ変換部222によりフーリエ変換を行い、修正後波形データに変換する。
【0121】
ステップS312において、基準合せ部23は、ステップS311の処理で変換された修正後波形データと基準波形データとのベクトル差を算出し、算出したベクトル差が第2の閾値以下であるか否かを判定する。基準合せ部23は、この判定がYESの場合、ステップS314に処理を移し、この判定がNOの場合、ステップS313に処理を移す。
【0122】
ステップS313において、基準合せ部23は、対象部位形状を規定数平行移動させたか否かを判定する。基準合せ部23は、この判定がYESの場合、ステップS314に処理を移し、この判定がNOの場合、処理をステップS310に処理を移す。つまり、基準合せ部23は、対象部位形状を規定数平行移動させても、ベクトル差が第2の閾値以下とならなかった場合に、平行移動に係る処理をキャンセルして次の処理に移る。
【0123】
ステップS314において、ステップS301からステップS313までの処理で対象部位点列データに対して行われた修正内容を記憶部10に一時記憶させる。
【0124】
これにより、基準合せ処理は終了となる。すなわち、図3のステップS3の処理が終了して、処理はステップS4に進むことになる。
【0125】
次に、ステップS4の変形ルール作成処理の詳細について説明する。
図7は、変形ルール作成処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
【0126】
ステップS41において、変形条件受付部241は、変形条件を受け付ける。具体的には、変形条件受付部241は、対象部位形状の変形時に使用する変形条件として、入力部30を介してオペレータから、FFD法における制御点の数、分解能、重み係数、収束条件を受け付ける。
【0127】
ステップS42において、変形実行部242は、対象部位形状を包含し、複数の制御点が格子状に配置された変形対象空間を定義する。
【0128】
ステップS43において、変形実行部242は、対象部位形状の複数の特徴点それぞれが、当該特徴点が対応する基準部位形状に近づくように、変形対象空間内の制御点を移動させることによって、変形対象空間を変形させる。これにより、変形対象空間内の対象部位形状が変形される。ここで、判定部243は、変形実行部252による変形回数をカウントする。
【0129】
ステップS44において、判定部243は、ステップS43においてカウントした変形回数が、収束条件に含まれる最大回数に達したか否かを判定する。判定部243は、この判定がYESの場合、ステップS48に処理を移し、この判定がNOの場合、ステップS45に処理を移す。
【0130】
ステップS45において、判定部243は、基準部位形状と、ステップS43において変形された対象部位形状との差異を算出する。
【0131】
ステップS46において、判定部243は、ステップS45で測定された差異が、収束条件に含まれる閾値未満か否かを判定する。判定部243は、この判定がYESの場合、ステップS47に処理を移し、この判定がNOの場合、ステップS43に処理を移す。
【0132】
ステップS47において、判定部243は、ステップS43の処理の回数、すなわち変形回数が、収束条件に含まれる最小回数に達したか否かを判定する。判定部243は、この判定がYESの場合、ステップS48に処理を移し、この判定がNOの場合、ステップS43に処理を移す。
【0133】
ステップS48において、判定部243は、制御点が分割された回数(分割実行回数)、すなわち後述のステップS49により変形条件が変更された回数が、分割指定回数に達したか否かを判別する。判定部243は、この判定がYESの場合、ステップS43における制御点の移動及び後述のステップS43における制御点の分割を、制御点の変化、すなわち変形ルールとして出力して変形ルール作成処理を終了し、この判定がNOの場合、ステップS49に処理を移す。
【0134】
ステップS49において、条件変更部244は、分割実行回数が分割指定回数に達していない場合に、変形条件を変更する。すなわち、条件変更部244は、変形対象空間における制御点を分割することにより、当該空間における制御点の数を増加させる。また、条件変更部244はフーリエ変換に用いる分解能を上げる。また、条件変更部244は、1の制御点が移動することにより変形される空間の範囲を所定範囲に比べて縮小させる。また、条件変更部244は、制御点の数に基づいて、収束条件に含まれる閾値を所定値だけ減算する。また、条件変更部244は、制御点の数に基づいて、収束条件に含まれる最小回数及び最大回数を変更する。そして、条件変更部244は、ステップS49において変形条件が変更されると、ステップS43で変形実行部242によりカウントされた変形回数をリセットする。条件変更部244は、この処理が終了すると、ステップS43に処理を移す。
【0135】
これにより、変形ルール作成処理は終了となる。すなわち、図3のステップS4の処理が終了して、処理はステップS5に進むことになる。
【0136】
以上、本実施形態によれば、形状データ作成システム1は、波形データ変換部222により、新規点列データ及び既存点列データのフーリエ変換を行い、当該新規点列データを新規波形データに変換するとともに、当該既存点列データを既存波形データに変換し、類似度判定部223により、変換された新規波形データと、既存波形データとの類似度を判定する。また、形状データ作成システム1は、抽出部224により、判定された類似度に基づいて、新規波形データに類似する既存波形データを特定し、当該既存波形データに対応する既存の形状データを検索結果として抽出する。よって、形状データ作成システム1は、フーリエ変換により、比較対象となる形状を変換させることによって、形状全体を任意の分解能にて数値化して表現することができる波形データとして捉えることができる。よって、形状データ作成システム1は、形状の類似度を数値化して、形状を検索することができる。
【0137】
また、類似度判定部223は、新規波形データと、既存波形データとのスカラ差を算出し、当該スカラ差に基づいて類似度を判定する。このようにすることで、形状データ作成システム1では、フーリエ変換によって変換された波形データのスカラ差を比較することによって、新規の形状データに対応する形状と既存の形状データに対応する形状との位置が異なる場合であっても、形状差のみを判定の基準とすることができる。
【0138】
また、類似度判定部223は、新規波形データと、既存波形データとのスカラ差及びベクトル差を算出し、当該スカラ差及びベクトル差に基づいて類似度を判定する。このようにすることで、形状データ作成システム1では、フーリエ変換によって変換された波形データのベクトル差を比較することによって、新規の形状データに対応する形状と既存の形状データに対応する形状との位置の差を判定の基準とすることができる。
【0139】
また、新規点列データ及び既存点列データは、形状の面形状を示す面データ及び形状の輪郭形状を示す線データから構成される。このようにすることで、形状データ作成システム1では、形状の面形状及び輪郭形状に基づいて類似する形状データを検索することができる。また、形状データ作成システム1では、形状の面形状及び輪郭形状の2つの尺度に基づいて類似する形状データを検索することができるので、面形状及び輪郭形状に重みをつけて、類似する形状の判定をすることができる。
【0140】
また、形状データ作成システム1は、検索部22において取得された新規のデザイン形状データ及び対象部位点列データのフーリエ変換を行い、当該新規のデザイン形状データを新規波形データに変換するとともに、当該対象部位点列データを対象部位波形データに変換する。続いて、形状データ作成システム1は、変換された対象部位波形データと、新規波形データとの差異が所定の閾値以下となるように、対象部位点列データに対応する形状を変形させる修正を当該対象部位点列データに行う。
【0141】
よって、形状データ作成システム1は、フーリエ変換により、新規部位点列データ及び対象部位点列データを波形データに変換させるので、波形データの振幅と位相に基づいて、それぞれの形状の特徴を比較することができる。すなわち、形状データ作成システム1は、部分的に特徴がある形状にトラップされることなく、形状データ全体について比較して、対象部位点列データに対応する形状を、新規のデザイン形状データに対応する形状に類似するように効率よく修正することができる。
【0142】
また、形状データ作成システム1は、修正後の対象部位点列データに対応する波形データと、新規波形データとのスカラ差が第1の閾値以下となるように、対象部位形状を回転させる修正及び対象部位形状を伸長させる修正を対象部位点列データに行う。また、形状データ作成システム1は、修正後の対象部位点列データに対応する波形データと、新規波形データとのベクトル差が第2の閾値以下となるように、対象部位形状を平行移動させる修正を対象部位点列データに行う。
【0143】
このようにすることで、形状データ作成システム1は、対象部位点列データの修正の種類に応じて、修正後の対象部位点列データに対応する波形データと、新規波形データとのスカラ差、ベクトル差を基準として適切に類似度を判定することができる。
【0144】
また、形状データ作成システム1は、新規部位点列データ及び対象部位点列データのフーリエ変換を行い、当該新規部位点列データを新規波形データに変換するとともに、当該対象部位点列データを対象部位波形データに変換する。続いて、形状データ作成システム1は、新規波形データと、修正後の対象部位波形データとの差異が第1の閾値又は第2の閾値以下となるような、対象部位形状を変形させる修正を変形ルールとし、当該変形ルールにより、対象部位点列データに対応する既存のデザイン形状データに関連付けられている内板形状データ及び成形形状データを修正する。続いて、形状データ作成システム1は、新規のデザイン形状データと、修正された内板形状データ及び成形形状データとを結合する。
【0145】
よって、形状データ作成システム1は、当該変形ルールに基づいて、対象部位点列データに対応する既存のデザイン形状データに関連付けられている内板形状データ及び成形形状データを修正して、新規のデザイン形状データと結合する。よって、形状データ作成システム1は、新規のデザイン形状データに対応する内板形状データ及び成形形状データが存在しない場合であっても、新規のデザイン形状データに類似する既存のデザイン形状データの内板形状データ及び成形形状データに基づいて、新規のデザイン形状データに対応する内板形状データ及び成形形状データを生成することができる。
【0146】
また、形状データ作成システム1は、変形実行部242により、1の制御点が移動することにより変形される空間の範囲を所定範囲として、複数の制御点を複数回移動させて変形対象空間を変形させる。次に、条件変更部244により、変形実行部242により当該複数の制御点が複数回移動された後、変形対象空間における制御点の数を増加させるとともに、変形される空間の範囲を所定範囲に比べて縮小させる。次に、変形実行部242により、条件変更部244により制御点の数、及び変形される空間の範囲が変更された後、変更された複数の制御点を複数回移動させて変形対象空間を変形させる。
【0147】
このように、形状データ作成システム1は、変形対象空間を変形させる途中で、変形対象空間における制御点の数を増加させ、分解能を増加させることができる。
【0148】
ここで、変形計算に対する制御点及び分解能の特性について説明する。図8は、変形計算に対する制御点及び分解能の特性を示す模式図である。
図8では、制御点が少なく分解能が粗い場合、制御点が少なく分解能が細かい場合、制御点が多く分解能が粗い場合、制御点が多く分解能が細かい場合の4つの場合に分けられている。そして、図8では、4つの場合の各々について、変形計算に対して被変形形状が複数回変形された場合の目標形状に対する差異度を示すグラフ、及び特性(収束失敗率、1回当り処理時間、処理回数、全体処理時間、計算誤差)が示されている。なお、制御点が多い場合とは、制御点が少ない場合に比べて制御点が2倍の場合であるものとする。また、分解能が細かい場合とは、分解能が粗い場合に比べて2倍の精度の場合であるものとする。また、グラフに示される白丸印○は、複数の変形計算における途中経過を示すものであり、黒丸印●は、変形計算が終了したことを示すものである。
【0149】
例えば、分解能が細かい場合は、分解能が荒い場合に比べて計算誤差が半分になり、高精度になるものの、収束失敗率、1回当り処理時間、全体処理時間が2倍になる。これは、分解能を細かくすることにより最適化問題が発生する可能性が高くなるためである。
また、制御点が多い場合は、制御点が少ない場合に比べて計算誤差が半分になるものの、処理回数と全体処理時間が2倍になる。これは、制御点が多くなったことにより、変形時の計算が増加するためである。また、制御点が多い場合は、制御点が少ない場合に比べて、収束失敗率が増加する。これは、分解能を細かくした場合と同様に、変形精度を高めたことにより最適化問題が発生する可能性が高くなるためである。なお、ここでいう「半分」や「2倍」との表現は、増減の一例を示すものであり、厳密に「半分」、「2倍」になることに限らない。
【0150】
図9は、本発明を適用して変形計算を複数回行った場合の、被変形形状の目標形状に対する差異度を示すグラフである。図9に示すように、本実施形態では、変形の初期段階で、図8に示される制御点が少なく分解能が粗い場合の変形計算を適用して、形状が収束した後、図8に示される制御点が多く分解能が細かい場合の変形計算を適用することができる。このようにすることで、形状データ作成システム1は、変形の初期段階において、制御点の数を少ない状態として、最適化問題の発生を防ぎつつ、短い計算時間で変形対象空間に含まれる対象部位形状を低い変形精度で変形させることができる。そして、形状データ作成システム1は、制御点の数を増加させて、低い変形精度で変形させた対象部位形状を高い変形精度で変形させることができる。したがって、形状データ作成システム1は、最適化問題の発生を防ぎつつ、高い変形精度で被変形形状を変形することができ、さらに計算時間を短縮することができる。
【0151】
また、形状データ作成システム1は、FFD法における制御点を対象部位形状の変形途中で増加させて、最適化問題の発生を防ぎつつ、高い変形精度で対象部位形状を変形し、変形ルールを作成することができる。
【0152】
また、形状データ作成システム1は、判定部243において、基準部位形状と、変形後の対象部位形状の差異が閾値未満と判定された場合に、条件変更部244により、変形対象空間における制御点の数を増加させるとともに、1の制御点が移動することにより変形される空間の範囲を、変形対象空間が変形される前に比べて縮小させ、さらに、当該閾値を所定値減算する。よって、形状データ作成システム1は、基準部位形状と、変形後の対象部位形状の差異が変形前と比べて閾値未満となるような形状変形の収束状態となった場合に、条件変更部254により制御点等の変形条件を切り替えて、高い変形精度で対象部位形状の変形を行うことができる。
【0153】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0154】
例えば、基準合せ部23は、対象部位形状に対して、回転、伸長、平行移動の順に修正を行うこととしたが、これに限らない。すなわち、基準合せ部23は、対象部位形状に対する回転、伸長、平行移動の修正を、任意の順番で行うようにしてもよい。
【0155】
また、本発明に係る一連の処理は、ソフトウェアにより実行させることも、ハードウェアにより実行させることもできる。
【0156】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムを、コンピュータ等にネットワークを介して、或いは、記録媒体からインストールすることができる。コンピュータは、専用のハードウェアを組み込んだコンピュータであってもよいし、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0157】
本発明に係る一連の処理を実行するための各種プログラムを含む記録媒体は、情報処理装置(本実施形態では形状データ作成システム)本体とは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布されるリムーバブルメディアでもよく、或いは、情報処理装置本体に予め組み込まれた記録媒体等でもよい。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、又は光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD−ROM(Compact Disk−Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini−Disk)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた記録媒体としては、例えば、プログラムが記録されているROMや、図2の記憶部10に含まれるハードディスク等でもよい。
【0158】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
【符号の説明】
【0159】
1 形状データ作成システム
10 記憶部
11 形状DB
20 制御部
21 検索条件受付部
22 検索部
23 基準合せ部
24 変形ルール作成部
25 形状データ作成部
26 結合部
30 入力部
221 点列データ取得部
222 波形データ変換部
223 類似度判定部
224 抽出部
241 変形条件設定部
242 変形実行部
243 判定部
244 条件変更部
254 条件変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被変形形状を含む空間としての形状包含空間に設けられ、当該形状包含空間を変形させる複数の制御点を移動させて、被変形形状を基準形状に類似するように変形させる形状変形装置において、
1の制御点が移動することにより変形される空間の範囲を所定範囲として、複数の制御点を移動させて前記形状包含空間を変形させる変形手段と、
前記変形手段により当該複数の制御点が移動された後、前記形状包含空間における制御点の数を増加させるとともに、前記変形される空間の範囲を前記所定範囲に比べて縮小させる条件変更手段と、を備え、
前記変形手段は、前記条件変更手段により前記制御点の数、及び前記変形される空間の範囲が変更された後、変更された複数の制御点を移動させて前記形状包含空間を変形させる形状変形装置。
【請求項2】
被変形形状を含む空間としての形状包含空間に設けられ、当該形状包含空間を変形させる複数の制御点を移動させて、被変形形状を基準形状に類似するように変形させる形状変形装置が実行する形状変形方法において、
1の制御点が移動することにより変形される空間の範囲を所定範囲として、複数の制御点を移動させて前記形状包含空間を変形させる変形ステップと、
前記変形ステップにおいて当該複数の制御点が移動された後、前記形状包含空間における制御点の数を増加させるとともに、前記変形される空間の範囲を前記所定範囲に比べて縮小させる条件変更ステップと、を含み、
前記変形ステップにおいては、前記条件変更ステップの処理で前記制御点の数、及び前記変形される空間の範囲が変更された後、変更された複数の制御点を移動させて前記形状包含空間を変形させる
形状変形方法。
【請求項3】
前記制御点は、FFD(Free−Form Deformation)法において、前記形状包含空間に格子状に配置される点である
請求項2に記載の形状変形方法。
【請求項4】
前記変形ステップの処理で変形された後の前記被変形形状と、前記基準形状との差異を測定し、当該差異が閾値未満か否かを判定する判定ステップをさらに含み、
前記条件変更ステップにおいては、前記判定ステップの処理で、前記差異が前記閾値未満と判定された場合に、前記形状包含空間における制御点の数を増加させるとともに、前記変形される空間の範囲を前記所定範囲に比べて縮小させ、さらに、当該閾値を所定値減算し、
前記変形ステップにおいては、前記条件変更ステップの処理で、前記制御点の数、前記変形される空間の範囲、及び前記閾値が変更された後、前記差異が当該閾値未満となるまで、複数の制御点を繰返し移動させて前記形状包含空間を変形させる
請求項2又は3に記載の形状変形方法。
【請求項5】
前記被変形形状と前記基準形状とは点列データから構成され、
前記判定ステップにおいては、前記変形ステップの処理で変形された後の前記被変形形状の点列データと前記基準形状の点列データとのそれぞれについて、所定の分解能でフーリエ変換を行うことにより前記被変形形状の波形データと前記基準形状の波形データとを算出し、算出された前記被変形形状の波形データと前記基準形状の波形データとのベクトル差を算出することによって、前記被変形形状と前記基準形状との差異を測定する
請求項4に記載の形状変形方法。
【請求項6】
前記条件変更ステップにおいては、前記判定ステップの処理で、前記差異が前記閾値未満と判定された場合に、前記形状包含空間における制御点の数を増加させるとともに、前記変形される空間の範囲を前記所定範囲に比べて縮小させ、さらに、当該閾値を所定値減算するとともに前記所定の分解能を上げる
請求項5に記載の形状変形方法。
【請求項7】
被変形形状を含む空間としての形状包含空間に設けられ、当該形状包含空間を変形させる複数の制御点を移動させて、被変形形状を基準形状に類似するように変形させるコンピュータに、
1の制御点が移動することにより変形される空間の範囲を所定範囲として、複数の制御点を移動させて前記形状包含空間を変形させる変形ステップと、
前記変形ステップの処理により当該複数の制御点が移動された後、前記形状包含空間における制御点の数を増加させるとともに、前記変形される空間の範囲を前記所定範囲に比べて縮小させる条件変更ステップと、を含み、
前記変形ステップにおいては、前記条件変更ステップにおいて前記制御点の数、及び前記変形される空間の範囲が変更された後、変更された複数の制御点を移動させて前記形状包含空間を変形させる
制御処理を実行させるプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−256123(P2012−256123A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127667(P2011−127667)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】