説明

形状推定システム、サーバ装置、形状推定方法、及び、形状推定プログラム

【課題】位置が特定されていないセンサノードで検出された検出対象に関する情報から、検出対象の形状情報を推定する形状推定システムを提供する。
【解決手段】形状推定システムが、複数のセンサノードとサーバ装置とを備える。複数のセンサノードのそれぞれは、予め定められている複数のセンシングエリア内における検出対象物の有無を検出するセンサ部と、センサ部による検出結果をサーバ装置へ送信する第1の通信部とを有し、複数のセンサノードが、複数のセンシングエリアの設定条件が異なる複数種類のセンサノードからなり、サーバ装置は、複数のセンサノードから送信された検出結果を受信する第2の通信部と、複数のセンサノードから受信した検出結果と、複数のセンサノードの複数のセンシングエリアに関する情報と、複数のセンシングエリアの平均密度に関する情報とに基づいて、検出対象物の形状に関する形状情報の推定値を算出する処理部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサネットワークにおける各センサノードの検出結果から、検出対象の周長、大きさなどの形状に関する情報である形状情報を推定する形状推定システム、サーバ装置、形状推定方法、及び、形状推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信機能を備える小型のセンサノード(センサと通信機能を有するネットワーク機器)をさまざまな場所に数多く分散させ、センサネットワークを構成し、さまざまな場所の状態を計測して、計測結果を色々なアプリケーションに使おうという試みが盛んに行われている(例えば、非特許文献1及び2)。そのような状況下において、検出対象の大きさや、形状の推定、及び推定した情報に基づき検出対象の種別を判定することが考えられている。例えば、ある領域に進入する車両の大きさや、形状を推定し、推定した情報に基づき、検出対象物の車両の種別を判定することなどがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】I.F.Akyildiz,W.Su,Y.Sankarasubramaniam,and E.Cayirci,“A Survey on Sensor Networks”, IEEE Communications Magazine,40,8,pp.102−114,2002.
【非特許文献2】Ben W.Cook,Steven Lanzisera,and Kristofer S.J.Pister,“SoC Issues for RF Smart Dust”, Proceedings of the IEEE,94,6,pp.1177−1196,June 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなセンサネットワークにおいて、個々の決められた位置にセンサノードを配備する場合、センサノード設置時に位置を把握しなければならないという手間が生じる。また、個々のセンサノードを適当に配備後、センサノードに付随するGPS(Global Positioning System)などで、自律的にセンサノード位置を特定し、登録する場合、個々のセンサノードにGPSが必要となるなどの付加コストが発生する。センサネットワークにおいては、非常に多くのセンサノードを利用する場合があると考えられることから、このような場合には、特に、個々のセンサノードの位置を設計あるいは登録することなく、利用できることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、位置が特定されていないセンサノードで検出された検出対象に関する情報から、検出対象の形状情報を推定することができる形状推定システム、サーバ装置、形状推定方法、及び、形状推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、複数のセンサノードとサーバ装置とを備える形状推定システムであって、前記複数のセンサノードのそれぞれは、予め定められている複数のセンシングエリア内における検出対象物の有無を検出するセンサ部と、前記センサ部による検出結果を前記サーバ装置へ送信する第1の通信部と、を有し、前記複数のセンサノードが、前記予め定められている複数のセンシングエリアの設定条件が異なる複数種類のセンサノードからなり、前記サーバ装置は、前記複数のセンサノードから送信された前記検出結果を受信する第2の通信部と、前記複数のセンサノードから受信した前記検出結果と、前記複数のセンサノードの前記予め定められている複数のセンシングエリアに関する情報と、前記複数のセンシングエリアの平均密度に関する情報とに基づいて、前記検出対象物の形状に関する形状情報の推定値を算出する処理部とを備えていることを特徴とする形状推定システムである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記処理部が、前記検出結果を前記センサノードの種類毎に集計し、その集計結果と、前記複数のセンサノードの前記予め定められている複数のセンシングエリアに関する情報と、前記複数のセンシングエリアの平均密度に関する情報とを用い、前記検出対象物の形状に関する形状情報の推定値を算出することを特徴とする請求項1に記載の形状推定システムである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記センサ部が、予め定められている距離を有して配置された2つの2値センサから構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の形状推定システムである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記サーバ装置は、前記センシングエリアに関する情報と前記平均密度に関する情報とが、前記センサノードの種類を識別する識別情報と関連づけられて予め記憶されている記憶部、を備えており、前記複数のセンサノードのそれぞれが備える前記第1の通信部は、前記センサ部による検出結果を前記サーバ装置へ送信する場合に、当該検出結果とともに、自センサノードの種類を識別する識別情報を、前記サーバ装置へ送信し、前記サーバ装置が備える処理部は、前記第1の通信部から受信した前記識別情報に、前記記憶部に記憶されている識別情報が一致する前記センシングエリアに関する情報と前記平均密度に関する情報とを、前記記憶部から読み出し、当該読み出した前記センシングエリアに関する情報と前記平均密度に関する情報と、前記受信した前記検出結果とに基づいて、前記検出対象物の形状に関する形状情報の推定値を算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の形状推定システムである。
【0010】
請求項5に記載の発明は、予め定められている複数のセンシングエリア内における検出対象物の有無を検出するセンサ部と、前記センサ部による検出結果をサーバ装置へ送信する第1の通信部とそれぞれを有し、前記予め定められている複数のセンシングエリアの設定条件が異なる複数種類のセンサノードと、サーバ装置とを備える形状推定システムにおけるサーバ装置であって、前記複数のセンサノードから送信された前記検出結果を受信する第2の通信部と、前記複数のセンサノードから受信した前記検出結果と、前記複数のセンサノードの前記予め定められている複数のセンシングエリアに関する情報と、前記複数のセンシングエリアの平均密度に関する情報とを用い、前記検出対象物の形状に関する形状情報の推定値を算出する処理部とを備えることを特徴とするサーバ装置である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、予め定められている複数のセンシングエリア内における検出対象物の有無を検出するセンサ部と、前記センサ部による検出結果をサーバ装置へ送信する通信部とそれぞれを有し、前記予め定められている複数のセンシングエリアの設定条件が異なる複数種類のセンサノードと、前記サーバ装置とを備える形状推定システムにおける形状推定方法であって、前記サーバ装置が、前記複数のセンサノードから送信された前記検出結果を受信する通信過程と、前記複数のセンサノードから受信した前記検出結果と、前記複数のセンサノードの前記予め定められている複数のセンシングエリアに関する情報と、前記複数のセンシングエリアの平均密度に関する情報とに基づいて、前記検出対象物の形状に関する形状情報の推定値を算出する処理過程とを含むことを特徴とする形状推定方法である。
【0012】
請求項7に記載の発明は、予め定められている複数のセンシングエリア内における検出対象物の有無を検出するセンサ部と、前記センサ部による検出結果をサーバ装置へ送信する通信部とそれぞれを有し、前記予め定められている複数のセンシングエリアの設定条件が異なる複数種類のセンサノードと、前記サーバ装置とを備える形状推定システムの前記サーバ装置における形状推定プログラムであって、前記複数のセンサノードから送信された前記検出結果を受信する通信過程と、前記複数のセンサノードから受信した前記検出結果と、前記複数のセンサノードの前記予め定められている複数のセンシングエリアに関する情報と、前記複数のセンシングエリアの平均密度に関する情報とに基づいて、前記検出対象物の形状に関する形状情報の推定値を算出する処理過程とをコンピュータに実行させるための形状推定プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、各センサノードに複数のセンシングエリアを持たせるとともに、センサノードの種類をセンシングエリアの設定条件が異なる複数種類とし、センサデータサーバにおいて複数のセンサノードから受信した検出結果と、複数のセンサノードの所定の複数のセンシングエリアに関する情報と、複数のセンシングエリアの平均密度に関する情報とに基づいて、検出対象物の形状に関する形状情報の推定値を算出するようにしている。したがって、個々のセンサノードの位置を設計した上で配備することなく、また、GPS等の位置センサノードを用いてセンサノード位置を特定することなく、対象物に対して、対象物個々の形状情報の推定値を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の形状推定システムの一実施形態におけるセンサノードの構成例を示す平面図である。
【図2】本発明の形状推定システムの一実施形態の構成例を示すシステム図である。
【図3】本発明の形状推定システムの一実施形態のシミュレーション結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の形状推定システムの一実施形態におけるセンサノードの構成例を示す平面図である。図2は、本発明の形状推定システムの一実施形態の構成例を示すシステム図である。
【0016】
図1に示すセンサノードは、複数(この場合、2個)のセンサ11a及び11bがあらかじめ定められた形状に配置された複合センサノード(すなわち複数個のセンサを備えるセンサノード)1_jとして構成されている。なお、本発明の形状推定システム100では、図2に示すように、センサ11a及び11bの配置形状(すなわちセンシングエリア12a及び12bの設定条件)が異なる複数種類(種類j)の複合センサノード1_j(図2では1_1〜1_3)がそれぞれ複数個、混在して配置されるようになっている。
【0017】
この複合センサノード1_jは、センサ11a及び11b、CPU(中央処理装置)13、無線通信機14、及び図示していない電源回路等を備えている。また、1対のセンサ11a及び11bは、所定の複数のセンシングエリア12a及び12b内における検出対象物の有無を検出するセンサ部を構成している。
【0018】
センサ11aは、センシングエリア12a内に、検出対象が存在するか否か、すなわち検出対象の有無を検出する2値センサである。また、センサ11bは、センサ11aと同一のセンサであり、センシングエリア12bにおける検出対象の有無を検出する2値センサである。センシングエリア12aは、センシングエリア12aの中心121aから複合センサノード1_jの種類j毎にあらかじめ定められた半径r_jの円形の領域である。ただし、センシングエリア12aは、平面的には円形であるが、立体的には球形あるいは半球形、もしくはおおむね球状の領域となっている。センシングエリア12bも、センシングエリア12aと同様、センシングエリア12bの中心121bから複合センサノード1_jの種類j毎にあらかじめ定められた半径r_jの円形の領域である。また、中心121aと中心121bとのセンサ間距離l_jは複合センサノード1_jの種類j毎にあらかじめ定められた長さに設定されている。
【0019】
CPU13は、センサ11a及び11bの検出結果を処理し、その処理結果に基づいて無線通信機14を制御する。無線通信機14は、センサ11a及び11bの検出結果を一定時間ごとにセンタデータサーバ(サーバ装置)2(図2参照)へ無線通信によって送信する。この通信を利用し、複合センサノード1_jは、センサデータサーバ2に対して、各時刻tに、同時刻のセンシング結果I_2(t)、I_1(t)を表す2ビットのセンシングデータを、複合センサノード1_jの種類を表す自タイプ番号(自種類番号)jとともに送信する。センシング結果I_2(t)は、2つのセンサ11a及び11b両方で検出対象を検出した場合「1」、そうでない場合「0」となる。センシング結果I_1(t)は、いずれかの一方だけのセンサ11a又は11bが検出した場合「1」、そうでない場合「0」となる。
【0020】
以上のように、本実施形態では、タイプjの複合センサノード1_jが、長さl_jの線分の両端に円形のセンシングエリア(センシングエリア半径r_j)をもつ2個の2値センサ11a及び11bを備えている(j=1,…,J_c)。この結果、同複合センサノード1_jからは、2つのセンサ11a及び11b両方で検出対象を検出し場合、1つだけで検出した場合、及び、いずれも検出しなかった場合、の3値の情報を得ることが可能となる。
【0021】
一方、図2の形状推定システム100は、複合センサノード1_1〜1_3と、複合センサノード1_1〜1_3と通信を行うセンサデータサーバ2とから構成されている。図2の複合センサノード1_1〜1_3は、図1を参照して説明した複合センサノード1_j(j=1〜3)に対応している(ただし、複合センサノード1_jの種類は3種類である)。
【0022】
センサデータサーバ2は、通信部21と、処理部22とから構成されている。通信部21は、複合センサノード1_1〜1_3と無線通信を行い、複合センサノード1_1〜1_3から受信したセンシング結果を表す情報を処理部22へ出力する。処理部22は、通信部21を制御するとともに、通信部21から入力された複合センサノード1_1〜1_3によるセンシング結果を用いて所定の処理を行い、検出対象の周長、大きさなどの形状に関する情報である形状情報を推定する。詳細は後述するが、処理部22は、複数センサノード1_1〜1_3から受信した検出結果を複数センサノード1_1〜1_3の種類毎に集計し、その集計結果と、複数センサノード1_1〜1_3の複数のセンシングエリアに関する情報と、複数のセンシングエリアの平均密度に関する情報とを用い、複数の検出対象物の形状に関する形状情報の推定値を算出する処理を実行する。この処理部22は、コンピュータ、メモリ、その他の周辺装置等からなり、メモリに記憶されているプログラムを実行することで、通信部21の制御、形状情報を推定値の算出処理等の所定の処理を行う。
【0023】
なお、図2に示す複合センサノード1_1〜1_3の種類数や個数は一例であって、本実施形態はこれに限定されない。また、図2に示す対象物3_1、3_2及び3_3は、それぞれ形状が異なる3種類の検出対象であって、各複合センサノード1_1〜1_3の検出対象となる。ただし、対象物3_1、3_2及び3_3の種類(形状)数や個数についても一例である。また、対象物3_1、3_2及び3_3は、有体物(有形物)に限らず、音響、香気、電気、光、熱等の無体物であってもよい。
【0024】
次に、図2の形状推定システム100の動作について説明する。ここでは、一例として、処理部22において推定する対象物3_1、3_2、3_3の形状情報を、対象物3_1、3_2、3_3が円形であるとした場合の半径の大きさであるとする。すなわち、以下の説明では、それを一般化して表し、図2の形状推定システム100によって、n_T個の円形の対象物3_1、3_2、3_3、…、3_{n_T}(それぞれの半径がR_i,i=1,…,n_T)の各半径を推定する場合を例示する。
【0025】
また、対象物3_1、3_2、3_3、…、3_{n_T}のカテゴリーが円であることと対象物数n_Tは既知であるとする。また、本実施形態においては、J_c個のタイプ(種類)の複合センサノード1_j(j=1,…,J_c)が用いられていることとする。そして、これらの各タイプの複合センサノード1_jは、検出対象範囲内に、ランダムに各センシングエリア12a、12bの種類毎に平均密度d_j (j=1,…,J_c)が所定値となるように多数ばらまかれて、すなわち分散して配置されていることとする。ここで、平均密度d_jは、各種類jの各複合センサノード1_jの各センサ11a、11bの各センシングエリア12a、12bの面積(あるいは体積)の合計が、観測領域(観測対象の全領域)に対して、しめる割合である。
【0026】
センタデータサーバ2は、あらかじめ、各タイプの複合センサノード1_jのパラメータ(平均密度d_j、センサ間距離l_j、センシングエリア半径r_j、j=1,…,J_c)を記憶部に保持している。この記憶部は、たとえば、センタデータサーバ2に備えられている記憶部である。そして、各複合センサノード1_jからデータを受信して、センタデータサーバ2は、タイプごとに、各時刻tで、センシング結果I_1(t)の総和と、センシング結果I_2(t)の総和を計算する。タイプjのセンシング結果I_1(t)の総和とセンシング結果I_2(t)の総和を、N_{1,j}(t)、N_{2,j}(t)とおく。ある時刻に、N_{1,j}(t)、N_{2,j}(t)の時間平均を計算する。この時間平均をK_{1,j}、K_{2,j}とおく。センタデータサーバ2は、あらかじめ、「対象物カテゴリー円」に対して次の形の式を保持している。
【0027】
第1、2の方程式:適当な(たとえば、一番大きなセンシングエリア半径r_j1と一番小さなセンシングエリア半径r_j2をもつ)2つのタイプj1、j2に対して、
【0028】
【数1】

【0029】
ここで、K_{1,j1}、K_{2,j1}は、タイプj1の複合センサノード1_j1の検出結果に基づく、ある時刻での、センシング結果I_1(t)、I_2(t)の総和N_{1,j1}(t)、N_{2,j1}(t)の各時間平均である。K_{1,j2}、K_{2,j2}は、タイプj2の複合センサノード1_j2の検出結果に基づく、ある時刻での、センシング結果I_1(t)、I_2(t)の総和N_{1,j2}(t)、N_{2,j2}(t)の各時間平均である。d_j1は、複合センサノード1_j1の平均密度、d_j2は、複合センサノード1_j2の平均密度である。r_j1、r_j2は、複合センサノード1_j1、1_j2の各センシングエリア半径である。R_1、…、R_{n_T}は、対象物3_1、…、3_{n_T}の各半径である。
【0030】
第3〜Jcの方程式:タイプj=1、…、Jc−2(各タイプ1、…、Jcからタイプj1とj2を除いたもの)に対して、
【0031】
【数2】

【0032】
ただし、f_1(x)は、xが真の時「1」、それ以外「0」をあらわす。r(i,j)=min(R_i,r_j)(すなわちR_iとr_jで小さい方の変数をとる関数)である。
【0033】
そして、上記K_{1,j}、K_{2,j}に検出結果から得た値を入力し、この連立非線形方程式を、未知数R_i(i=1,…,n_T)について解くことで、対象物の半径R_iの推定値を得る。
【0034】
なお、上記第1、2の方程式は、
【0035】
【数3】

【0036】
すなわち、左辺「対象物検出センサ数の期待値」が右辺「(センサ密度2d_j)×Σi{半径r_j1(またはr_j2)+R_iの円の面積}」、に等しいことが、積分幾何の計算により得られることに基づくものである。つまり、積分幾何の計算によって求められる期待値E[・]の代わりに、測定値K_{1,j1}+2K_{2,j1}、K_{1,j2}+2K_{2,j2}を用いたものである。
【0037】
それ以外の方程式についても同様に、幾何積分の計算により、左辺「対象物を2つのセンサ両方が検出した複合センサノード数」の期待値が右辺となることが導ける。そこで、左辺を期待値の代わりに実測値に置き換えたものである。
【0038】
仮に、対象物が円ではなく、2辺がa_i,b_iの長さの長方形(i=1,…,n_T)の場合は、上記非線形連立方程式は次のように書き換えられる。
【0039】
第1、2の方程式:適当な(たとえば、一番大きなセンシングエリア半径r_j1と一番小さなセンシングエリア半径r_j2をもつ)2つのタイプj1、j2に対して、
【0040】
【数4】

【0041】
ここで、a_1、…、a_{n_T}は、長方形の対象物i(i=1、…、n_T)の各一辺の長さである。b_1、…、b_{n_T}は、長方形の対象物i(i=1、…、n_T)の他の各一辺の長さである。
【0042】
第3〜Jcの方程式:タイプj=1、…、Jc−2(各タイプ1、…、Jcからタイプj1とj2を除いたもの)の複合センサノード1_jからの検出結果についてのレポートを用い、
【0043】
【数5】

【0044】
ただし、α(i,j)=min(a_i+2r_j,b_i+2r_j)、β(i,j)=max(a_i+2r_j,b_i+2r_j)である。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、複数の検出対象物に対して、対象物個々のパラメータ(大きさ、周長等)を、次の条件で推定することができる。すなわち、個々のセンサの位置を設計した上で配備することなく、また、GPS等の位置センサを用いてセンサ位置を特定することなく、推定することができる。また、個々のセンサは、2値センサであって、センシングエリア内にいずれかの対象物があったか否か、のみ、レポートすることができるものとすることができる。これによれば、複数の検出対象物に対するパラメータ推定を、単純な2値センサを、センサ設計配備や位置検出機能無しで実現できることから、経済的で、多用途である。
【0046】
なお、本実施形態では、各センサノードを、複数のセンサを備えた複合センサノードとすることとし、複数のセンサのセンシングエリアの設定条件を複数種類(複数タイプ)設定することで、複数の検出対象物についての形状情報の推定ができるようになっている。なお、仮に、センサを1個のみ備えた1種類のセンサノードを用いた場合には、各センサの位置情報なしに、各センサが対象物を検出したかどうかの情報のみで、大きさや周長を推定することはできるが、複数の対象物には対応することはできない。
【0047】
なお、本発明の実施の形態は、上記のものに限定されず、例えば図2のセンサデータサーバ2で複数の観測領域に対するデータ処理を行うようにしたり、センサデータサーバ2を複数設けて、通信網を介して連携して処理を分担して行うようにしたりする変更などを適宜行うことができる。また、検出対象物の個々の形状情報は、上記のように検出対象物が円形状の場合の半径、長方形状である場合の各辺の長さに限らず、面積、外周長等の他のものであってもよい。また、各センサ12a、12bは、複合センサノード1_jの同一筐体内あるいは同一基板上に配置あるいは搭載されている必要はなく、各センサ12a、12bの一方または両方は、CPU13と異なる筐体内あるいは基板上に設けられていてもよい。その場合に、各センサ12a、12bと、CPU13間は有線または無線の制御線、信号線または通信線で接続することができる。また、センシングエリア12aとセンシングエリア12bに対しては、必ずしも独立したセンサ11a、11bを用いる必要はなく、例えば1個のセンサに対して、2以上のセンシングエリアを設定できるような構成を組み合わせて、時分割で2つのセンシングエリアにおける対象物の有無を検出するようにすることも可能である。
【0048】
また、複合センサノード1_jと、対象物3_i(i=1、2、…)との観測領域内での相対的な関係は、複合センサノード1_jを固定して、対象物3_iが移動するもの、複合センサノード1_jが移動して、対象物3_iが固定されているもの、あるいはそれらが組み合わされたものとすることなどができる。また、複合センサノード1_jやセンサデータサーバ2は、コンピュータと、そのコンピュータで実行されるプログラムとを用いて構成することができるが、その場合のプログラムの一部または全部は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体または通信回線を介して提供することが可能である。
【0049】
次に、本実施形態を用いた形状情報の推定処理のシミュレーション結果について説明する。以下の条件で、計算機シミュレーションを実施した。設定条件を設定番号1〜5として5通りに異ならせて得られた対象物の円の半径R_1〜R_4の推定値(図中「^」印で示す)を図3に示した。設定番号1〜5では、複合センサノードセンサ間距離l_jとセンシングエリア半径r_jの設定を変えて5種類のシミュレーションを行っている。各設定において共通の条件(1)〜(10)と、変更した設定条件(11a)〜(11e)は、次のとおりである。
【0050】
(1)シミュレーション時間:20000、(2)観測領域:20000.00×100.00、(3)複合センサノード1_jの平均密度:d_j=0.5(すべてのjで)、(4)複合センサノードを構成するセンサ数:2、(5)センシングエリア形状:円、(6)対象物の発生間隔:1000.00、(7)対象物の移動速度:1.00、(8)対象物の種類:4、(9)対象物の数:4、(10)対象物の形状:円(半径:R_1=25,R_2=10,R_3=5,R_4=3)、(11a)設定番号1で使用した複合センサノードの(センサ間距離l_j,センシングエリア半径r_j)=(30,1),(20,1),(10, 1)、(11b)設定番号2で使用した複合センサノードの(l_j,r_j)=(30,5),(20,5),(10,5)、(11c)設定番号3で使用した複合センサノードの(l_j,r_j)=(20, 1),(20,5)、(11d)設定番号4で使用した複合センサノードの(l_j,r_j)=(30,1),(20,1),(20,5)、(11e)設定番号5で使用した複合センサノードの(l_j,r_j)=(30,5),(20,1),(20,5)。
【0051】
なお、複合センサノード1_jの種類j毎の個数は、観測領域の面積と、複合センサノード1_jの平均密度d_jと、センシングエリアの面積(センシングエリア半径r_j)の値によって変化している(算出されている)。
【0052】
このミュレーション結果から、本実施形態によれば、個々のセンサノードの位置を設計した上で配備することなく、また、GPS等の位置センサノードを用いてセンサノード位置を特定することなく、複数の対象物に対して、対象物個々の形状情報の推定値を算出することができる。
また、個々のセンサノードは、2値センサを複数備えるものとして、センシングエリア内にいずれかの対象物があったか否かのみレポートするようにすれば、複数の対象物に対する形状情報の推定を、単純な2値センサを、センサノード設計配備や位置検出機能無しで実現できることから、経済的で、多用途である。
なお、上記の説明においては、2次元的な広がりをもつ複数の対象を検出する場合について説明したが、同様に、3次元的な広がりをもつ複数の対象を検出することも可能である。
【0053】
また、図1におけるセンサデータサーバ2の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりセンサデータサーバ2の機能を実行してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0054】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0055】
1_j、1_1、1_2、1_3 複合センサノード
2 センサデータサーバ
3_1、3_2、3_3 対象物
11a、11b センサ(2値センサ)
12a、12b センシングエリア
13 CPU
14 無線通信機
r_j センシングエリアの半径
l_j センサ間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサノードとサーバ装置とを備える形状推定システムであって、
前記複数のセンサノードのそれぞれは、
予め定められている複数のセンシングエリア内における検出対象物の有無を検出するセンサ部と、
前記センサ部による検出結果を前記サーバ装置へ送信する第1の通信部と、
を有し、
前記複数のセンサノードが、前記予め定められている複数のセンシングエリアの設定条件が異なる複数種類のセンサノードからなり、
前記サーバ装置は、
前記複数のセンサノードから送信された前記検出結果を受信する第2の通信部と、
前記複数のセンサノードから受信した前記検出結果と、前記複数のセンサノードの前記予め定められている複数のセンシングエリアに関する情報と、前記複数のセンシングエリアの平均密度に関する情報とに基づいて、前記検出対象物の形状に関する形状情報の推定値を算出する処理部とを備えている
ことを特徴とする形状推定システム。
【請求項2】
前記処理部が、
前記検出結果を前記センサノードの種類毎に集計し、その集計結果と、前記複数のセンサノードの前記予め定められている複数のセンシングエリアに関する情報と、前記複数のセンシングエリアの平均密度に関する情報とを用い、前記検出対象物の形状に関する形状情報の推定値を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の形状推定システム。
【請求項3】
前記センサ部が、予め定められている距離を有して配置された2つの2値センサから構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の形状推定システム。
【請求項4】
前記サーバ装置は、
前記センシングエリアに関する情報と前記平均密度に関する情報とが、前記センサノードの種類を識別する識別情報と関連づけられて予め記憶されている記憶部、
を備えており、
前記複数のセンサノードのそれぞれが備える前記第1の通信部は、
前記センサ部による検出結果を前記サーバ装置へ送信する場合に、当該検出結果とともに、自センサノードの種類を識別する識別情報を、前記サーバ装置へ送信し、
前記サーバ装置が備える処理部は、
前記第1の通信部から受信した前記識別情報に、前記記憶部に記憶されている識別情報が一致する前記センシングエリアに関する情報と前記平均密度に関する情報とを、前記記憶部から読み出し、当該読み出した前記センシングエリアに関する情報と前記平均密度に関する情報と、前記受信した前記検出結果とに基づいて、前記検出対象物の形状に関する形状情報の推定値を算出する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の形状推定システム。
【請求項5】
予め定められている複数のセンシングエリア内における検出対象物の有無を検出するセンサ部と、前記センサ部による検出結果をサーバ装置へ送信する第1の通信部とそれぞれを有し、前記予め定められている複数のセンシングエリアの設定条件が異なる複数種類のセンサノードと、サーバ装置とを備える形状推定システムにおけるサーバ装置であって、
前記複数のセンサノードから送信された前記検出結果を受信する第2の通信部と、
前記複数のセンサノードから受信した前記検出結果と、前記複数のセンサノードの前記予め定められている複数のセンシングエリアに関する情報と、前記複数のセンシングエリアの平均密度に関する情報とを用い、前記検出対象物の形状に関する形状情報の推定値を算出する処理部と
を備えることを特徴とするサーバ装置。
【請求項6】
予め定められている複数のセンシングエリア内における検出対象物の有無を検出するセンサ部と、前記センサ部による検出結果をサーバ装置へ送信する通信部とそれぞれを有し、前記予め定められている複数のセンシングエリアの設定条件が異なる複数種類のセンサノードと、前記サーバ装置とを備える形状推定システムにおける形状推定方法であって、
前記サーバ装置が、
前記複数のセンサノードから送信された前記検出結果を受信する通信過程と、
前記複数のセンサノードから受信した前記検出結果と、前記複数のセンサノードの前記予め定められている複数のセンシングエリアに関する情報と、前記複数のセンシングエリアの平均密度に関する情報とに基づいて、前記検出対象物の形状に関する形状情報の推定値を算出する処理過程と
を含むことを特徴とする形状推定方法。
【請求項7】
予め定められている複数のセンシングエリア内における検出対象物の有無を検出するセンサ部と、前記センサ部による検出結果をサーバ装置へ送信する通信部とそれぞれを有し、前記予め定められている複数のセンシングエリアの設定条件が異なる複数種類のセンサノードと、前記サーバ装置とを備える形状推定システムの前記サーバ装置における形状推定プログラムであって、
前記複数のセンサノードから送信された前記検出結果を受信する通信過程と、
前記複数のセンサノードから受信した前記検出結果と、前記複数のセンサノードの前記予め定められている複数のセンシングエリアに関する情報と、前記複数のセンシングエリアの平均密度に関する情報とに基づいて、前記検出対象物の形状に関する形状情報の推定値を算出する処理過程と
をコンピュータに実行させるための形状推定プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−69637(P2011−69637A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218954(P2009−218954)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】