説明

形状自在な吸着パッド

【課題】吸盤を用いてワークを把持する吸着パッドを用いて把持を行う際に、吸着力の不足により把持が不完全な状態になることや把持ができても移動する際に落下することを防止する。
【解決手段】ワークを把持する吸着パットであって、ワークの一方向に位置する固定部材11と、固定部材11のワークに対向する面に密着して取り付けられた中央に減圧空間17を有する形状自在パッド12と、減圧空間17内の圧力を所定負圧に減圧しかつ大気圧に戻すことができる減圧装置と、を備える。さらに、形状自在パッド12は、ワークの固定部材11に対向する面に対して押し付ける押付力によりワークの表面形状をならうようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ロボットの吸着パッドに関する。
【0002】
搬送ロボットは、取出位置にあるワークを別の位置まで搬送する産業用ロボットであり、ワークを把持するためのロボットハンドを有する。この場合、ワークの形状が不定である場合、既存の爪では対応ができない場合が存在した。
【0003】
そこで、ワークの形状によらずにワークを把持して移動するロボットハンドについて、例えば特許文献1及び特許文献2が既に提案されている。
【0004】
特許文献1は、凹凸を有する不規則形状な部品にも適用できる吸着式ロボットハンドを提供することを目的とする。
そのために、ロボットハンドに接続された複数の吸盤を用いてワーク上部から支える形で把持させてワークを移動可能な構成を有するものである。
【0005】
特許文献2は、特許文献1と同様にワークの形状が不規則であっても適用が可能であり、さらにワークの形状が不規則であるために機能しない吸盤が存在する場合であっても確実に把持が可能なロボットハンドを提供することを目的とする。
そのために、把持の際に、実際にワーク面に吸着している吸盤のみを識別する制御装置を有することによって、吸盤効率を高めることを可能としたものである。
【0006】
一方で特許文献3は、使用時の形状が、任意の所望の形状に成形固定できる形状自在のエアバッグを提供することを目的とする。
そのためには、気密袋体内に発泡スチロール粒を充填すると共に、上記袋体内を減圧しつつ発泡スチロール粒を互いに係合及び固化させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−283884号公報「吸着式ロボットハンド」
【特許文献2】特開平4−80797号公報「産業用ロボットのハンド装置」
【特許文献3】特開平2−177909号公報「形状自在エアバッグ」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
吸盤を用いてワークを把持するロボットハンドを用いて把持を行う場合、ワークの形状によっては吸着可能な面を十分に確保することができない場合がある。
このような場合には、吸着力の不足により把持が不完全な状態になるか、または把持ができても移動する際に落下する危険性があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ワークの形状によらずに確実にワークを把持することを可能とする吸着パッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明によると、ワークを把持する吸着パットであって、
ワークの一方向に位置する固定部材と、
該固定部材のワークに対向する面に密着して取り付けられ、中央に減圧空間を有する形状自在パッドと、
前記減圧空間内の圧力を所定負圧に減圧しかつ大気圧に戻すことができる減圧装置と、を備え、
前記形状自在パッドは、ワークの固定部材に対向する面に対して押し付ける押付力によりワークの表面形状をならうようになっている、ことを特徴とする吸着パッド。
【0011】
このような構成にすることで、形状自在パッドを把持対象であるワークの表面形状に変形させることができるため、ワークの形状によってロボットの先端部分を交換する必要がなく、また、上記機能によってワークを安定して把持することが可能になる。
【0012】
また本発明によると、前記形状自在パッドは、可撓性かつ気密性の中空バッグと、
該中空バッグ内に充填された粒体と、
前記中空バッグ内の圧力を所定負圧に減圧しかつ大気圧に戻すことができる減圧装置からなる。
【0013】
本発明によると、前記粒体は、前記減圧装置によって前記中空バッグ内の圧力が所定圧に減圧すると表面摩擦によって前記中空バッグ全体を固形化させることができる物質からなる。
【0014】
本発明によると、前記粒体は、前記減圧装置によって前記中空バッグ内の圧力を大気圧に戻すことで前記中空バッグ全体の固形化を解くことができる物質からなる。
【0015】
このような構成によって、吸着パッドは、中空バッグ内の圧力を減圧して形状自在パッドの形状をワークの形状に合わせて固形化することで、ワークの把持が可能になる。また、中空バッグ内の圧力を大気圧に戻すことによって形状自在パッドの形状の固形化を解くことで、ワークを把持から開放することが可能になる。
また、上記吸着パッドは、ワークの形状によらずに使用することができるため、対応できるワークが増加する。
さらに、ワークの形状に合わせてワークごとに中空バッグの形状を変化させることができるために、例えば果物のような柔らかく傷つきやすいようなワークであっても確実に把持することができる。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明によると、固定部材に形状自在パッドが取り付けられた吸着パッドを使用することによって、形状が不定なワークに対しても安定した形で把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例による吸着パッドを備えたロボットの構成図である。
【図2】本発明の第1実施例による吸着パッドの構成図である。
【図3】本発明の第1実施例による吸着パッドの断面図である。
【図4】本発明の第2実施例による吸着パッドの構成図である。
【図5】本発明の第2実施例による吸着パッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施例による吸着パッドを備えたロボットの構成図である。
この図において、1はロボット、2a〜2cはロボットアーム、3はロボットの手先部、4はロボット支持台、5は吸着パッド、6はワーク、7はワーク用容器、8a〜8cは関節、9は減圧装置、10は接続部である。
【0020】
ロボット1は、この例ではロボット支持台4の上面に固定された垂直多関節ロボットであるが、本発明はこれに限定されず、その他のロボット(スカラロボットや直交ロボット)であってもよい。
【0021】
吸着パッド5は、ロボットの手先部3に搭載され、ロボットアーム2a〜2c及び関節8a〜8cを有するロボット1により、所定の作動範囲で3次元的に移動され、かつ自由な姿勢をとることができるようになっている。
【0022】
ワーク6は、形状が不定である。この例では、把持対象であるワーク6はワーク用容器7の中に格納されているが、ワーク6が直接的にテーブル等に置かれているものを把持する形であってもよい。
【0023】
関節8a〜8cは、ロボットアーム2a〜2c及びロボットの手先部3を連結しており、それぞれ回転軸C1〜C3(図2の紙面と垂直な軸)、C4(ロボットアーム2aの長手方向に延びる軸)周りに回転が可能である。
【0024】
減圧装置9は、後述する形状自在パッド12と後述するチューブ13、15によって接続されており、形状自在パッド12内の圧力を減圧することでワーク6の把持を行い、また形状自在パッド12内の圧力を大気圧まで戻すことによってワーク6の把持を解消する。
接続部10は、吸着パッド5とロボットの手先部3を接続するものである。
この例では、減圧装置9は接続部10内に設置されているが、減圧装置9の機能を損なわなければ他の場所でもよい。
【0025】
図2は本発明の第1実施例による吸着パッドの構成図である。
また、図3は本発明の第1実施例による吸着パッドの構成図である。
(A)は吸着パッドの断面図、(B)は吸着パッドによってワークを把持している状態の吸着パッドの断面図である。
この図において、11は固定部材、12は形状自在パッド、12aは中空バッグ、12bは粒体、13はチューブ、14はチューブ接続部、15はチューブ、16はチューブ接続部、17は減圧空間である。
【0026】
固定部材11は、形状自在パッド12と密接に接続されている。
この例では円形状になっており、チューブ13、15を通すために空洞になっている部分を有する。
【0027】
形状自在パッド12は、中空バッグ12a及び粒体12bからなり、チューブ15を介して減圧装置9による加圧、減圧を受ける。
【0028】
粒体12bは、減圧したときに中空バッグ12aの内部で固形化させる必要があるため、例えば発砲スチロールのような表面摩擦の大きい物質である必要がある。
また、表面摩擦を大きくするために、粒体12bの形状は球状や8面体といった形状であって、各粒体12bの寸法は1mm〜1cm程度の大きさ(粒状からビーズ状程度の大きさ)であることが好ましい。
【0029】
中空バッグ12aは、いかなる形状のワーク6を把持する際にも、ワーク6の表面形状に沿って形状を変化させることが可能であって、また気体の通気を許さない気密性を有する素材である必要がある。例えば、樹脂袋である。
【0030】
本実施例における減圧は、減圧装置9によって、チューブ13を介して行われる減圧空間17内の減圧及びチューブ15を介して行われる形状自在パッド12における中空バッグ12a内の減圧との、2回の減圧が行われる。
上記2回の減圧のタイミングは、中空バッグ12a内の減圧の方を先に行うか、ほぼ同時に行う。
【0031】
減圧装置9によって、形状自在パッド12内の圧力を減圧した際、形状自在パッド12の体積が減少し、ワーク6と形状自在パッド12との間に隙間が発生する場合には、減圧装置9によって減圧させながら隙間の発生に応じた分だけ固定部材11をワーク6の方向に移動させる。
【0032】
図4は本発明の第2実施例による吸着パッドの構成図である。
また、図5は本発明の第2実施例による吸着パッドの断面図である。
(A)は吸着パッドの断面図、(B)は吸着パッドによってワークを把持している状態の吸着パッドの断面図である。
この図において、21は固定部材、22は形状自在パッド、22aは中空バッグ、22bは粒体、23はチューブ、24はチューブ接続部、25はワーク接続部、26は通気素材、27は減圧空間である。
【0033】
固定部材21は、この実施例ではチューブ23を通すために空洞が1つ存在している。
【0034】
本実施例における減圧は、減圧装置9によって、チューブ23を介して減圧をすることで、吸着バッド22における中空バッグ22a内の圧力及び減圧空間27の圧力を1回で減圧することができる。
【0035】
ワーク接続部25は、ワーク6と吸着バッド22が吸着する部分である。
【0036】
通気素材26は、減圧装置9によって減圧空間27の減圧又は加圧が行えるように、例えばメッシュのような通気性に富む素材を使用する。
ただし、中空バッグ22a内の粒体22bが、減圧空間27に漏れない程度の網目にする必要がある。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0038】
1 ロボット、2a〜2c ロボットアーム、3 ロボットの手先部、
4 ロボット支持台、5 吸着パッド、6 ワーク、
7 ワーク用容器、8a〜8c 関節、9 減圧装置、10 接続部、
11 固定部材、12 形状自在パッド、12a 中空バッグ、12b 粒体、
13 チューブ、14 チューブ接続部、15 チューブ、
16 チューブ接続部、17 減圧空間、21 固定部材、
22 形状自在パッド、22a 中空バッグ、22b 粒体、23 チューブ、
24 チューブ接続部、25 ワーク接続部、26 通気素材、
27 減圧空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持する吸着パットであって、
ワークの一方向に位置する固定部材と、
該固定部材のワークに対向する面に密着して取り付けられ、中央に減圧空間を有する形状自在パッドと、
前記減圧空間内の圧力を所定負圧に減圧しかつ大気圧に戻すことができる減圧装置と、を備え、
前記形状自在パッドは、ワークの固定部材に対向する面に対して押し付ける押付力によりワークの表面形状をならうようになっている、ことを特徴とする吸着パッド。
【請求項2】
前記形状自在パッドは、可撓性かつ気密性の中空バッグと、
該中空バッグ内に充填された粒体と、
前記中空バッグ内の圧力を所定負圧に減圧しかつ大気圧に戻すことができる減圧装置からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の吸着パッド。
【請求項3】
前記粒体は、前記減圧装置によって前記中空バッグ内の圧力が所定圧に減圧すると表面摩擦によって前記中空バッグ全体を固形化させることができる物質からなる、ことを特徴とする請求項2に記載の吸着パッド。
【請求項4】
前記粒体は、前記減圧装置によって前記中空バッグ内の圧力を大気圧に戻すことで前記中空バッグ全体の固形化を解くことができる物質からなる、ことを特徴とする請求項2に記載の吸着パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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