説明

形質導入T細胞選択のためのトランケート上皮増殖因子レセプタ(EGFRt)

非免疫的選別エピトープが、タンパク質のある部分を除去することで調製され得る。例えば、遺伝子コードトランケートされたヒト内皮細胞増殖因子レセプタポリペプチド(EGFRt)は、膜遠位EGF結合ドメイン及び細胞傷害シグナル系を欠失するが、抗EGFR抗体により認識される細胞外エピトープを保持する。細胞は、EGFRtを発現するように遺伝子組換えされ、その後、完全長EGFR免疫活性の使用に伴う免疫活性を有さずに精製され得る。フローサイトメトリ分析を介して、EGFRtは、マウスでのインビボで遺伝子組換えヒトT細胞移植のための追跡マーカとして使用することが可能である。さらに、EGFRtは、セツキシマブ介在抗体依存性細胞傷害(ADCC)を介して細胞除去の可能性が示される。従ってEGFRtは、治療の可能性を持つ遺伝子組換え細胞のための、非免疫性選別ツール、追跡マーカ、細胞除去ツール又は自殺遺伝子として使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年11月3日に出願された米国仮特許出願番号61/257、567の効果を主張するものであり、この出願の内容は参照され本明細書に援用される。
【0002】
本発明の物及び方法は免疫の分野及び遺伝子的改変細胞の精製の分野に関し、特に癌免疫療法での使用のための、セツキシマブと対形成するヒト上皮増殖因子レセプタ(EGRF)から誘導されるポリペプチドなどの、対応する抗体と対形成するトランケート又は改変されたレセプタに関する。
【背景技術】
【0003】
腫瘍を目標とするキメラ抗原レセプタ(CARs)を均一に発現する免疫細胞物は、形質導入及び他の遺伝子改変手順に本質的である導入遺伝子発現物ごとの変化を除去することが適合性治療戦略の臨床評価にとっては望ましく、かつその後の選別をすることなく他の遺伝子的改変のために望ましいものである。遺伝子的に再構成された免疫細胞を用いる免疫治療は種々の癌患者の微小残存病変を治療するための魅力的な方法である。しかし、前記形質導入戦略の部分として抗生物質選択性蛋白を発現する細胞生成物の免疫拒絶反応がこの戦略を妨げる。ヒトリンパ球上に発現されない新規な選択マーカーは、内因性シグナル機能又はトラフィック機能(以下「シグナル系」とする場合がある)を含まず、かつ知られた、好ましくは市販されている医薬品グレードの抗体試薬であって、インビボ追跡(トラッキング)で選択のために使用され、形質導入細胞を死滅させるために使用され得るものにより認識される新規な選択マーカーは、当該技術分野において重要な改良となるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、遺伝子組換え細胞物及びそのインビボ及びエクスビボでの両方での精製の方法が提供される。遺伝子組換え細胞は、遺伝子組換えにより改変、又は内因性ヌクレオチド配列を付加、欠失、置換又は中断する他のプロセスにより組み換えされ得る。遺伝子組み換細胞は、変化した免疫活性を含む、改変活性を有する形質導入T細胞であり得る。
【発明を実施するための手段】
【0005】
ここで記載される実施態様によると、免疫的磁気選別適用可能な非免疫選択エピトープは、細胞物の望ましくない免疫拒絶反応がなく(即ち、抗物質選別タンパク質の発現なしで)、癌患者への免疫治療を実施可能とする。これは前記タンパク質の特定のアミノ酸配列を除去することで調製される。ある実施態様では、前記非免疫的選択エピトープは、遺伝子がコードする内因性細胞表面分子であり、改変されトランケートされて、知られた抗体又はその機能的断片により認識され、かつ全てのシグナル系ドメイン及び/又は全ての前記知られた抗体により認識されない細胞外ドメインを除去し、かつ細胞外エピトープを維持するものである。前記シグナル系ドメイン及び/又は全ての前記知られた抗体により認識されないドメインの除去は、得られる内因性細胞表面分子を望ましい性質として不活性とする。前記非免疫性選別エピトープはまた、選別ツールや追跡(トラッキング)ツールとして使用され得る。
【0006】
前記改変内因性細胞表面分子には、限定されるものではないが全ての細胞表面に関連するレセプタ、リガンド、グリコプロテイン、細胞接着分子、抗原、インテグリン又はここで記載されるように改変された分化クラスタ(CD)が挙げられる。いくつかの実施態様では、前記改変内因性細胞表面分子は、トランケートされたチロシンキナーゼレセプタである。1つの側面では、前記トランケートされたチロシンキナーゼレセプタは、内皮増殖因子レセプタファミリ(例えば、ErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4)の一つである。
【0007】
内皮増殖因子レセプタはまた、EGFR、ErbB1及びHER1として知られ、細胞外リガンドの内皮増殖因子ファミリの一員の細胞表面レセプタである。EGFR活性の変化が、ある癌について関連付けられてきた。第1の側面では、遺伝子が提供され、前記遺伝子がコードするEGFRポリペプチドは、ヒト内皮増殖因子レセプタ(EGFR)を含み、これは、膜遠位EGF結合ドメインと細胞傷害シグナルテールを除去し(これを「トランケート」又は「トランケートされた」、又は「EGFRt」とする)、しかし抗EGFR抗体により認識される細胞外膜近位エピトープは保持するように構成されるものである。好ましくは、前記抗体は、知られた、市販され利用可能な抗EGFRモノクローナル抗体であり、例えばセツキシマブ(cetuximab)、マツズマブ(matuzumab)、ネシツムマブ(necitumumab)又はパニツムマブ(panitumumab)が挙げられる。
【0008】
ビオチン化セツキシマブを抗ビオチンミクロビーズと組み合わせて免疫的磁気選別に適用することで、レンチウイスルによる遺伝子組換えでEGFRt含有構成物を含むT細胞を2%程度の低い集団からより高い90%以上の純度に、前記細胞調製に対して観察できるほどの毒性もなく濃縮される。この不活性EGFRt分子の構成物発現は、T細胞型に変更を与えず又は協働的に発現されるキメラ抗原レセプタ(CAR)であるCD19Rにより再構成されるようにエフェクタ機能に影響を与えない。フローサイトメトリ分析から、EGFRtはマウスのT細胞移植のインビボトラックマーカとして利用することができることが分かった。さらに、EGFRは、エルビタックス(Erbitux)(R)介在抗体依存性細胞傷害(ADCC)経路を通じて自殺遺伝子としての可能性を有することが示された。従って、EGFRtは、免疫治療の可能性を有する遺伝子組換えT細胞の非免疫選別ツール、トラッキングマーカ及び自殺遺伝子として使用され得る。前記EGFRt核酸はまた、本技術分野でよく知られる方法で検出され得る。
【0009】
他の実施態様では、改変され、トランケートされ又は変更された内因性細胞表面分子であって、好ましくは市販されている以下記載される抗体に結合する内因性細胞表面分子を見出しかつ設計する方法が提供される。前記方法には、対象となるタンパク質のモデル化、及び抗体結合部分は変更せずに機能性タンパク質をトランケートすることが含まれる。得られる改変されたレセプタ又はリガンドは、ラベル化抗体を用いて選別(ソート)され、その後前記改変されたレセプタ又はリガンドの濃度が増加するように濃縮させることができる。
【0010】
他の実施態様では、改変され、トランケートされた又は変更された内因性細胞表面分子遺伝子配列(例えばトランケートされたEGFR)を持つT細胞を遺伝子組換えし、その後前記遺伝子組換えT細胞へ前記改変されたリガンド又はレセプタ配列を結合する抗体を適用することを含む、遺伝子組換えT細胞を選別する方法が提供される。前記改変されたレセプタ配列がEGFRtである場合、前記抗体は好ましくはビオチン化抗EGFRモノクローナル抗体である。前記T細胞はその後、抗ビオチンミクロビーズを添加し、かつT細胞を免疫的磁気選別を用いて選択し、蛍光色素共役抗ビオチンを添加し、かつ蛍光活性化細胞選別(ソート)又はその他の全ての信頼性のある細胞ソート方法を用いてT細胞を選択することでソートされる。前記改変リガンド又はレセプタ配列、例えばEGFRt配列はレンチウイルスベクタなどの適切な移動体内に含まれ得る。
【0011】
本発明のこれら及びその他も実施態様は、以下図面と詳細な説明に基づきさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、結晶構造に基づくEGFRとEGFRtの分子モデルを示す。左のEGFR構造は完全長EGFRを示し、4つの細胞外ドメイン(ドメインI〜IV)構造を持つ。中間の構造はトランケートされたEGFR(EGFRt)を示し、未変成EGFRと比べて、ドメインI、ドメインII、膜近傍ドメイン及びチロシンキナーゼドメインを欠いている。右のEGFRtは、V−CH1及びV−Cからなるエルビタックス(Eribitux)(R)Fabに結合されたトランケート構造を示す。前記ドメインは点線で区切られている。
【図2A】図2Aは、EGFRtT細胞のビオチン化セツキシマブ(cetuximab)(図ではエルビタックス(Erbitux)(R)と記載される)選択を示し、セツキシマブのビオチン化及び再改質プロセスの模式図である。
【図2B】図2Bは、ビオチン化セツキシマブの滴定を示すグラフである。10EGFR細胞が、0μg(黒)、0.145μg(オレンジ)、14.5ng(黄)、1.45ng(緑)、0.145ng(青)又は14.5pg(紫)のいずれかで染色され、その後0.5μgのPE共役ストレプトアビジンで処理され、フローサイトメトリで分析された。14.5ng以上のビオチン化セツキシマブが将来の染色で十分であるように思われる。
【図2C】図2Cは、免疫的磁気的(上)及び蛍光励起細胞選別(下)EGFRt選択手順の両方を模式的に示す。
【図2D】図2Dは、CAR及びEGFRtを含む構成をレンチウイルスで遺伝子導入された種々のT細胞の免疫磁気的選択を示す。レンチウイルスベクターに含まれるCD19CAR−T2A−EGFRt(左)及びCD19CAR−T2A−EGFRt−IMPDH2dm(右)構成が、表面EGFRt発現について上の対応する前及び後での選択フローサイトメトリ分析が示される。CD19特異的コドン最適化配列、CD28共刺激CAR、さらに自己開裂T2A、EGFRt及びIMPDH2dm選別マーカが示され、同時に伸長因子1プロモーター配列(EF−1p)及びGCSFRアルファ鎖シグナル配列(GCSFRssであり、これは表面発現を構成する)が示される。ビオチン化セツキシマブ抗体及びPE共役抗ビオチン抗体(黒ヒストグラム)で染色されたレンチウイルスによる遺伝子導入T細胞のフローサイトメトリが、前記インプットT細胞(PRESLXN)及びAutoMACS(TM)から得られたポジティブ画分(POS FRXN)の両方で実施された。白ヒストグラムは、PE共役抗ビオチン抗体のみでの染色を表し、ポジティブ細胞パーセントがそれぞれのヒストグラムに示される。CD19CAREGFRr細胞株Aの選別は、T細胞芽の遺伝子組換え後3日で行った。CD19CAREGFRr細胞株Bの選別は、トランケートされたCMVpp−65特異的TCM由来細胞の3回REM刺激の後で行った。CD19CAREGFRt細胞株Cの選別は遺伝子組換えCD8CM誘導細胞の2回REM刺激後に行った。CD19CAREGFRt細胞株Dの選別は、遺伝子組換えTEM誘導細胞の1回REM刺激の後で行った。Cd19CAREGFRtIMPDH2dm細胞株Eの選別は、遺伝子組換えTCM誘導細胞の1回のREM刺激の後に行った。
【図3A】図3は選別されたT細胞に発現されたEGFRtが不活性であることを示す。図3Aは、T細胞に発現されたEGFRtがEGFとのコインキュベートでリン酸化されないことを示す。ネガティブコントロールT細胞、CD19CAREGFRt細胞株A細胞、又はA431細胞が、5分間、100ng/mLのEGF又はセツキシマブ(図ではErbtxと符号付されている)のいずれかとインキュベートし、その後ホスファターゼインヒビタの存在下で溶解させた。溶解物をウェスタンブロットし、その後βアクチン、EGFRの細胞質ドメイン又はEGFRの1068位でリン酸化されたチロシンのいずれかに特異的な抗体を用いて立証された。
【図3B】図3Bは、EGFが、EGFRt発現T細胞の表面に結合しないことを示す。A431、細胞株A431及びネガティブコントロールT細胞が、PE共役抗EGFR、又はビオチン化セツキシマブかビオチン化EGFのいずれかで染色され、続いてPE共役ストレプトアビジン(黒ヒストグラム)対PE共役同位体コントロールAb又はストレプトアビジンのみ(白ヒストグラム)をフローサイトメトリにより分析した。ポジティブ染色パーセントはそれぞれのヒスとグラムに示される。
【図4A】図4は選別されたEGFRtCD19RT細胞が、エフェクタ細胞型を維持して増殖することができることを示す。図4Aは、急速増殖媒体(REM)刺激がAutoMACS(TM)選別(0日目、ここでMACSは磁気活性化細胞選別を意味する)開始後12日以上についてEGFRt選別T細胞の細胞株A〜Eの増殖を示す線グラフである。急速増殖培地(REM)でのT細胞増殖は、10T細胞を、30ng/mLの抗CD38(OKT3;Ortho Biotech、Raritan、NJ)、5x10の照射PBMC(3500cGy)、及び10T照射LCL(8000vGy)とを50mLのCM中で、50U/mLのrhlL−2及び10ng/mlのrhlL−15(CellGenix)を48時間ごとに1日目から始めて添加してインキュベートすることを含む。T細胞はこの方法で14日ごとに再刺激を行った。
【図4B】図4Bは、RGFRt選別T細胞(刺激後11〜13日)を表すヒストグラムであり、表面EGFR(即ち、EGFRt、ビオチン化セツキシマブ)、Fc(即ち、CAR)及びT細胞マーカCD4又はCD8(黒ヒストグラム)対同位体コントロールAb(白ヒストグラム)のフローサイトメトリ分析を示す。ポジティブ染色パーセントはそれぞれのヒストグラムに示される。「N.D.」はデータ無し、を意味する。
【図4C】図4Cは、細胞株A〜Eのそれぞれに対応する5つの線グラフである。EGFRt選別T細胞(REM刺激後11〜15日内)それぞれの細胞株は、示されるE:T比でターゲットとして、51Crラベル化NS0、U251T、CD19t発現NS0、CMVpp65発現U251T、CD19発現Daudi又はSupB15、又はOKT3発現LCL細胞と4時間インキュベートされた。クロム遊離は細胞傷害活性を決定するために測定された。
【図4D】図4Dは、CD19CAREGFRtIMPDH2dm細胞株EでのMPA抵抗を示すグラフである。IMPDH2mdを発現しないコントロールT細胞とEGFRt選別IMPDH2dm発現細胞株E細胞は、1μMのMPAの存在下又は存在なしのいずれかで培養され、細胞数がモニタされた。
【図5】図5は、EGFRt発現がインビボT細胞移植の追跡マーカとして使用され得ることを示す。コントロールマウス又は10CD19CAREGFRt細胞株Cを受けたマウスから36日目に取得された骨髄が、PerCP−共役抗ヒトCD45及びビオチン化セツキシマブ(「バイオエルブ(Bio−Erb)」)を用いて染色し、その後PE−共役ストレプトアビジンで染色された。4量体(Quadrants)が、同位体コントロール染色に基づき生成され、それぞれの4量体のポジティブ染色パーセントとがそれぞれのヒストグラムに示される。
【図6】図6は、セツキシマブ(図ではエルビタックス(Erbituk)(R)と符号付されている)介在ADCCについてEGFRt発現ターゲットT細胞を示すグラフである。51Crラベル化細胞株A細胞は、エフェクタとしてヒトPBMCの添加に先立ちネガティブコントロールとして20μg/mLまでのセツキシマブ又はCD20特異的mAbリタキサン(Rituxan)のいずれかとインキュベートされるか又はされなかった。
【図7】図7は、EGFRtにリンクされたGMCSFRアルファ鎖の、ヌクレオチド(センス鎖が配列番号NO:1、アンチセンス鎖が配列番号NO:2)及びアミノ酸(配列番号NO:3)配列を示す。GMSCSFRアルファ鎖シグナル配列は、表面提示するように構成され、ヌクレオチド1〜66でエンコードされる。EGFRtはヌクレオチド67〜1071でエンコードされる。
【図8】図8は、CD19R−CD28gg−Zeta(C)−T2A−EGFRtの、ヌクレオチド配列(センス鎖、配列番号NO:4、アンチセンス鎖、配列番号NO:5)及びアミノ酸配列(配列番号NO:6)を示す。CD19R−CD28gg−Zeta(CO)はヌクレオチド1〜2040でコードされ、T2Aはヌクレオチド2041〜2112でコードされ、GMCSFRはヌクレオチド2113〜2178でコードされ、EGFRtはヌクレオチド2179〜3186でコードされる。
【図9】図9は、CD19−CD28gg−Zeta(CO)−T2A−EGFRt発現を示すグラフである。抗CD3/抗CD28ビーズ刺激プライマリT細胞芽をCD19R−CD28gg−Zeta(CO)−T2A−EGFRt_epHIV7レンチウイルスベクタ(MOI=3)で遺伝子組換えした結果、CAR(ビオチン化抗FcAb及びストレプトアビジン−PEを用いて)及びトランケートされたEGFR分子(ビオチン化セツキシマブAb及びストレプトアビジン−PEを用いて)の両方が表面に向けられていることが、4日目のフローサイトメトリで示された。それぞれの図の白部分は非遺伝子組換えコントロールT細胞芽を示す。
【図10】図10は、本開示の物の試験についての臨床試験のための可能なフローを示すスキームである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の特定の実施態様が、具体的な例、配列及び図面に基づき記載される。種々の実施態様は本発明をこれらの実施態様に限定することを意図するものではない。むしろ本発明は、全ての変法・変更又はそれらの均等物をカバーすることを意図するものであり、これらは特許請求の範囲に定められる本発明の範囲に含まれる。当業者は、これらの記載されたと類似又は均等な多くの方法及び材料が本発明を実施するために使用され得ることを認識するものである。
【0014】
エルビタックス(Erbitux)(R)は、抗EGFRモノクローナル抗体セツキシマブの登録商標であり、独立して、前記商標名製品処方、前記商標名製品の前記遺伝子医薬及び活性医薬成分を含む。
【0015】
用語「遺伝子改変]とは、内因性ヌクレオチド配列に付加、欠失、置換又は中断する全てのプロセスを意味し、限定されるものではないがウイルス介在遺伝子組換え、リポソーム介在遺伝子組換え、トラスフォーム、トランスフェクション及び形質導入、例えばレンチウイルス、アデノウイルス、レトロウイスル、アデノ関連ウイスル及びヘルペスウイルスなどのDNAウイスルに基づくベクタの使用などのウイスル介在遺伝子導入が挙げられる。
【0016】
用語「抗体」とは、ヒト、マウス、ヒト化、キメラ又はその他の種から誘導される、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ダイマ、マルチマ、多重特異的抗体及び抗体断片が含まれる。用語「モノクローナル抗体」とは、特定の抗原サイトに対して向けられた実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を意味する。
【0017】
「バリアント」とは、天然の配列ポリペプチドからいくらか異なるアミノ酸配列を持つポリペプチドを意味する。通常は、アミノ酸バリアントは、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%配列相同性の同一性を保持するものである。アミノ酸配列バリアントは、前記参照アミノ酸配列内のいくつかの位置で、置換、欠失及び/又は付加を含むことができる。
【0018】
「パーセント同一性」とは、最大の配列同一性を達成するために前記配列を最善整列をさせた(必要ならばギャップを挿入して)後、同一であるアミノ酸配列の残部のパーセントとして定められる。前記整列のための方法及びコンピュータプログラムは本技術分野で知られている。かかるプログラムには、GAP、BESTFIT、FASTA、BLAST又はAlign2が含まれる。
【0019】
用語「抗体依存性細胞傷害」及び「ADCC」とは細胞介在反応であって、ナチュラルキラー細胞、好中球及びマクロファージなどのFcレセプタを発現する非特異的細胞傷害細胞が、目標細胞上に結合された抗体を認識し、前記目標細胞の溶解を起こすものである。ADCC活性は、米国特許番号第5、821 、337に記載される方法を用いて評価され得る。
【0020】
「エフェクタ細胞」とは、1以上の定常領域のレセプタを発現し、エフェクタ機能を実行する白血球である。
【0021】
用語、癌などの疾患、傷害を「処置」することは、前記疾患、傷害を軽減し緩和するために治療措置又は予防措置のいずれかを取ることを意味する。かかる処理には、症状の予防、緩和、範囲及び/又は鎮静の低減又は安定化を含む。
【0022】
用語「治療的有効量」とは、疾患、傷害を治療するための有効な化合物又は分子の量を意味する。
【0023】
用語「癌」とは、制御されていない細胞増殖を行なっている細胞を意味する。癌の例には、大腸癌及び頭頸部癌が含まれる。
【0024】
「サイトカイン」とは、細胞間介在物(メディエータ)として他の細胞に作用するために1つの細胞により放出されるタンパク質である。
【0025】
「非免疫性物」とは、免疫応答を開始、停止又はそれに影響されない物質であり、前記免疫応答に適応免疫応答及び/又は自然免疫応答が含まれる。
【0026】
用語「遺伝子」とは、ポリペプチド鎖の生成に関与するDNAの断片を意味し;これにはコード領域の前部と後部コード領域「リーダーとテーラー」を含み、同じく個々のコードセグメント(エクソン)の間の介在配列(イントロン)を含む。いくつかの遺伝子は、イントロンを、全部又は一部欠失して伸展され得る。いくつかのリーダー配列は、前記核酸のポリペプチドへの翻訳を強化する。
【0027】
用語「単離」とは、前記材料がその当初の環境(例えば、その材料が天然由来であれば、自然環境)から除かれることを意味する。例えば、生動物内の天然由来のポリヌクレオチド又はポリペプチドは単離されないが、同じポリヌクレオチド又はポリペプチドが、前記天然系で共存する材料のいくつか又は全てから分離された単離される。かかるポリヌクレオチドはベクタ及び/又はポリヌクレオチドの一部であり得る。又はポリペプチドは組成物の一部であり得る。またかかるベクタや組成物が天然環境の一部ではない場合にも単離され得る。
【0028】
用語「ベクタ」とは、核酸を輸送し得る又は宿主細胞に維持できる全ての試薬であり得る。これには、ウイルスベクタ(例えばレトロウイルスベクタ、レンチウイルスベクタ、アデノウイリスベクタ、又はアデノ関連ウイルスベクタ)、プラスミド、ネイキド核酸、ポリペプチド又は他の分子と複合した核酸及び固体相粒子上に固定化された核酸などが含まれる。適切なDNAが、種々の手順により前記ベクタ内へ挿入され得る。一般的に、DNA配列は、当該技術分野において知られた手順により適切な制限エンドヌクレアーゼサイトに挿入される。かかる手順及びその他の手順は、当該技術分野における技術の範囲内のものである。高等真核生物による本発明にポリペプチドをエンコードするDNAの翻訳は、前記ベクタ内へエンハンサ配列を挿入することで増加される。エンハンサはDNAのシス(cis)作用要素であり、その転写を増加させるためのプロモータ上で作用する通常は約10から300bpである。例としては、100から270bpの複製起源の後側でのSV40エンハンサ、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサ、前記複製起源の後側でのポリオーマエンハンサ、及びアデノウイルスエンハンサが含まれる。
【0029】
「レセプタ」とは、分子に特異的に結合することができるポリペプチドを意味する。多くのレセプタは通常前記細胞表面上で作用することができる一方、いくつかのレセプタは、前記細胞内に位置される場合にリガンドと結合し、又は主に細胞間に存在しかつそこでリガンドに結合し得る。
【0030】
「抗体又はその機能的断片」とは、特定の抗原又はエピトープに特異的に結合するか又は免疫的に反応する免疫グロブリン分子を意味し、かつポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方を含む。用語「抗体」には、遺伝子工学的又はその他の方法で改変された免疫グロブリンの形であり、例えばイントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト化抗体、ヒト化抗体及びヘテロ共役抗体(例えば、バイスペシフィック抗体、ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディなど)が含まれる。用語「機能的抗体断片」には、抗体の抗原結合断片を含み、これには例えば、Fab’、F(ab’).sub.2、Fab、Fv、rlgG、及びscFv断片が含まれる。用語scFvとは単鎖Fv抗体を意味し、これは、従来の2つの鎖抗体の前記重鎖及び前記軽鎖の変動ドメインが結合して1つの鎖を形成したものである。
【0031】
1つの実施態様において、遺伝子コード改変内因性細胞表面分子であって、免疫磁気選別と適合可能な非免疫性選択エピトープとして使用され得る遺伝子コード改変内因性細胞表面分子が提供される。かかる非免疫性選択エピトープは、細胞物の望ましくない免疫拒絶反応がなく、癌患者の免疫治療を実施することができる。内因性細胞表面分子は、知られた抗体又はその機能性断片により認識される細胞外エピトープを保持し、かつシグナル系ドメイン及び/又は前記知られた抗体により認識されない全ての細胞外ドメインを除去するように改変又はトランケートされ得る。シグナル系ドメイン及び/又は前記知られた抗体により認識されない全ての細胞外ドメインを欠く改変された内因性細胞表面分子は不活性にされる。
【0032】
前記改変された内因性細胞表面分子には、限定されるものではないが、全ての非免疫性細胞表面関連レセプタ、グリコプロテイン、細胞接着分子、抗原、インテグリン又はここで記載されるように改変される分化クラスタ(CD)が含まれる。かかる細胞表面分子の改変は、知られた抗体又はその機能的断片により認識されるエピトープを保持し;かつシグナル系ドメイン及び/又は知られた抗体により認識されない全ての細胞外ドメインを除去することで、達成される。前記シグナル系ドメイン及び/又は知られた抗体により認識されない全ての細胞外ドメインを除去することで、前記内因性細胞表面分子を、非免疫性及び/又は不活性にする。
【0033】
ここで記載される実施態様による改変され又はトランケートされる内因性細胞表面分子には、限定されるものではないが、EpCAM、VEGFR、インテグリン(例えばインテグリンανβ3、α4、αIIβ3、α4β7、α5β1、ανβ3、αν)、TNFレセプタスーパーファミリ(例えばTRAIL−R1、TRAIL−R2)、PDGFレセプタ、インターフェロンレセプタ、葉酸レセプタ、GPNMB、ICAM−1、HLA−DR、CEA、CA−125、MUC1、TAG−72、IL−6レセプタ、5T4、GD2、GD3、又は分化クラスタ(例えばCD2、CD3、CD4、CD5、CD11、CD11a/LFA−1、CD15、CD18/ITGB2、CD19、CD20、CD22、CD23/lgEレセプタ、CD25、CD28、CD30、CD33、CD38、CD40、CD41、CD44、CD51、CD52、CD62L、CD74、CD80、CD125、CD147/ベイシジン、CD152/CTLA−4、CD154/CD40L、CD195/CCR5、D319/SLAMF7)が挙げられる。
【0034】
改変又はトランケートされた細胞表面分子を認識するために使用され得る対応する市販抗体には、限定されるものではないが、3F8、アバゴボマブ(abagovomab)、アブシキシマブ(abciximab)、アデカツムマブ(adecatumumab)、アフツズマブ(afutuzumab)、アレムツズマブ(alemtuzumab)、アルツモマブペンテタート(altumomab pentetate)、アナツモマブマフェナトックス(anatumomab mafenatox)、アポリツマブ(apolizumab)、アルシツモマブ(arcitumomab)、アセリズマブ(aselizumab)、アトリズマブ(atlizumab)(=トシリズマブ(tocilizumab))、バシリキシマブ(basiliximab)、ベクツモマブ(bectumomab)、ベンラリズマブ(benralizumab)、ベシレソマブ(besilesomab)、ビバツズマブメルタンシン(bivatuzumab mertansine)、ブリナツモマブ(blinatumomab)、ブレンツキシマブベドチン(brentuximab vedotin)、カンツズマブメルタンシン(cantuzumab mertansine)、カプロマブペンチタイド(capromab pendetide)、カツマキソマブ(catumaxomab)、CC49、セデリツマブ(cedelizumab)、セルモロイキン(celmoleukin)、シタツズマブボダトックス(citatuzumab bogatox)、クレノリキシマブ(clenoliximab)、クリバツズマブテトラキセタン(clivatuzumab tetraxetan)、CNTO−95、コナツムマブ(onatumumab)、ダセツズマブ(dacetuzumab)、ダクリズマブ(daclizumab)、ダラツムマブ(daratumumab)、デツモマブ(detumomab)、エクロメキシマブ(ecromeximab)、エドロコロマブ(edrecolomab)、エファリズマブ(efalizumab)、エロツズマブ(elotuzumab)、エンリモマブペゴル(enlimomab pegol)、エピツモマブシツキセタン(epitumomab cituxetan)、エプラツズマブ(epratuzumab)、エルリズマブ(erlizumab)、エタラシズマブ(etaracizumab)、ファノレソマブ(fanolesomab9、ファラリモマブ(faralimomab)、ファレツズマブ(farletuzumab)、ガリキシマブ(galiximab)、ガビリモマブ(gavilimomab)、ゲムツズマブオゾガマイシン(gemtuzumab ozogamicin)、グレムバツムマブベドチン(glembatumumab vedotin)、ゴミリキシマブ(gomiliximab)、イバリズマブ(ibalizumab)、イブンツモマブチウキセタン(ibntumomab tiuxetan)、イゴボマブ(igovomab)、インテツムマブ(intetumumab)、イラツムマブ(iratumumab)、イノリモマブ(inolimomab)、イノツズマブオゾガマイシン(inotuzumab ozogamicin)、イピリムマブ(ipilimumab)、ケルキシマブ(keliximab)、ラベツズマブ(labetuzumab)、リンツズマブ(lintuzumab)、レキサツムマブ(lexatumumab)、ルカツムマブ(lucatumumab)、ルミリキイシマブ(lumiliximab)、マパツムマブ(mapatumumab)、マスリモマブ(maslimomab)、ミラツズマブ(milatuzumab)、ミンレツモマブ(minretumomab)、ミツモマブ(mitumomab)、ムロモマブ−CD3、ナプツモマブエスタフェナトックス(naptumomab estafenatox)、ナタリズマブ(natalizumab)、オクレリズマブ(ocrelizumab)、オデュリモマブ(odulimomab)、オファツムマブ(ofatumumab)、オララツマブ(olaratumab)、オポルツズマブモナトックス(oportuzumab monatox)、オレゴボマブ(oregovomab)、 オテリキシズマブ(otelixizumab)、ペムツモマブ(pemtumomab)、プリリキシマブ(priliximab)、 PRO 140、フツキシマブ(htuximab)、レベリズマブ(rovelizumab)、ラプリズマブ(ruplizumab)、サツモマブペンデタイド(satumomab pendetide)、シプリズマブ(siplizumab)、ソンツズマブ(sontuzumab)、タドシズマブ(tadocizumab)、タプリツモマブパプトックス(taplitumomab paptox)、テネリキシマブ(teneliximab)、テプリズマブ(teplizumab)、TGN1412、チシリマブ(ticilimumab)(=トレメリムマブ(tremelimumab))、チガツズマブ(tigatuzumab)、トシリズマブ(tocilizumab)(=アトリズマブ(atlizumab))、トラリズマブ(toralizumab)、トシツモマブ(tositumomab)、トレメリムマブ(tremelimumab)、トコツズマブ(tucotuzumab)、ベドリツマブ(vedolizumab)、ベツツズマブ(veltuzumab)、ビシリズマブ(visilizumab)、ビタキシン(vitaxin)、ボロキシマブ(volociximab)、ボツムマブ(votumumab)、ザノリムマブ(zanolimumab)、ジラリムマブ(ziralimumab)、ゾリモマブアリトックス(zolimomab aritox)が挙げられる。
【0035】
いくつかの実施態様では、改変内因性細胞表面分子は改変又はトランケートされたチロシンキナーゼレセプタ遺伝子によりエンコードされる。ここで記載される実施態様による改変又はトランケートされ得るチロシンキナーゼレセプタの例には、限定されるものではないが、内皮増殖因子レセプタファミリ(EGRF/EbB1/HER1;ErbB2/HER2/neu;ErbB3/HER3;ErBB4/HER4)、ヘパトサイト増殖因子レセプタ(HGFR/c−MET)及びインシュリン様増殖因子レセプタ−1(IGF−1R)が挙げられる。いくつかの実施態様によると、改変チロシンキナーゼレセプタは、知られる抗体又はその機能的断片により認識される細胞外エピトープを保持し、かつ少なくともチロシンキナーゼドメインを欠失する。チロシンキナーゼドメインを欠失する改変チロシンキナーゼレセプタはレセプタを不活性なものとする。
【0036】
改変チロシンキナーゼレセプタを認識するために使用される市販の抗体には、限定されるものではないが、AMG−102、AMG−479、BIIB022OA−5D5、CP−751、871、IMC−A12、R1507、セツキシマブ(cetuximab)、シクツムマブ(cixutumumab)、エルツマキソマブ(ertumaxomab)、フィジツムマブ(figitumumab)、マツズマブ(matuzumab)、ネシツムマブ(necitumumab)、パニツムマブ(panitumumab)、ペルツズマブ(pertuzumab)、ニモツズマブ(nimotuzumab)、ロバツムマブ(robatumumab)、トラスツズマブ(trastuzumab)、ザルツムマブ(zalutumumab)が含まれる。
【0037】
1つの実施態様では、前記改変内因性細胞表面分子はトランケートされたEGFR(tEGFR)であって、膜遠位EGF−結合ドメイン及び細胞傷害シグナル系をトランケートされているが、知られた抗体又はその機能断片(例えばセツキシマブ(cetuximab)、マツズマブ(matuzumab)、ネクツムマブ(necitumumab)又はパニツムマブ(panitumumab))により認識される細胞外膜遠位エピトープを保持する。他の実施態様では、前記tEGFRはドメインI、ドメインII、膜近傍ドメイン及びチロシンキナーゼドメインを、改変しないEGFRに比較して欠失している(図1)。
【0038】
改変内因性細胞表面分子は、遺伝子的に改変された免疫細胞集団のための細胞選別マーカ又は濃縮マーカとして使用され得る。前記改変内因性細胞表面分子は、遺伝子コード腫瘍目標キメラ抗原レセプタ(CAR)と結合し得る。これらの遺伝子は、ベクタに挿入されて遺伝子的に改変されるT細胞の集団を遺伝子組換えする。遺伝子組換え後、遺伝子組換えされたCARと改変内因性細胞表面分子を発現する細胞は、全ての適切な精製方法で濃縮される。例えば、前記遺伝子組換え細胞により発現された改変内因性細胞表面分子を認識する市販抗体を用いて、抗ビオチンミクロビーズを用いる免疫磁気精製又は蛍光励起細胞選別するために蛍光色素共役抗ビオチンが挙げられる。
【0039】
他の実施態様では、遺伝子コードトランケートされたヒト内皮増殖因子レセプタ(EGFRt)であって膜遠位EGF結合ドメインと細胞傷害シグナル系を欠失するが、FDA認可抗EGFRモノクローナル抗体(mAb)セツキシマブ又は他の抗EGRF抗体により認識される細胞外膜近位エピトープを保持する。EGFRtは、腫瘍関連抗原に特異的にキメラ抗原レセプタと結合され得る。前記腫瘍関連抗原は、CD19、 CD20、又はCD22又は他の腫瘍関連抗原、好ましくはCD19 (CD19CAR)であり得る。腫瘍関連抗原には、C−末端2A開裂リンカとEGFRtのコード配列が続く。ビオチン化セツキシマブは、腫瘍関連抗原/CAR発現遺伝子産物の免疫的精製の目的のために市販の抗ビオチンミクロビーズと共役されて使用され得る。この例では、腫瘍関連抗原はCD19であり、産物はCD19R発現遺伝子組換え産物である。又は、ビオチン化セツキシマブは、蛍光励起細胞ソートのために蛍光色素共役抗ビオチンと共役されて使用され得る。
【0040】
他の実施態様では、改変内因性細胞表面分子は、インビボT細胞移植のためのマーカとして使用され得る。例えば、前記改変内因性細胞表面分子がEGFRtである場合、EGFRtはT細胞であって、T細胞の細胞機能に影響せずインビボで移植されるT細胞の取り込みの追跡(トラック)、又は前記T細胞が目標とされる、例えば臓器移植の場合の骨髄細胞などの細胞の取り込みの追跡に使用され得る。sr39TKなどのプローブ又はレセプタ遺伝子と共役されるセツキシマブの使用は、PET画像化技術を介して患者へのEGFRt発現細胞の追跡能力を改良するために使用され得る。
【0041】
別の実施態様では、改変内因性細胞表面分子は細胞自殺を誘起するために使用され得る。例えば、EGFRtは、セツキマブ介在補助物及び/又は抗体依存細胞介在細胞傷害(ADCC)経路を介して自殺遺伝子として使用され得る。ゼツキシマブが治療用FDA認可抗体であるという事実はさらに、前記医療設定でのEGFRtの自殺遺伝子の可能性をもたらす。
【0042】
他の実施態様では、トランケートされた内皮増殖因子レセプタ(EGFRt)選別エピトープ又は他の改変細胞表面分子が、他の配列に付けられる。1つの例示的配列はGMCSFRアルファ鎖シグナル配列であり、これは表面発現するようにEGRFtに付されている。GMCSFRはヌクレオチド1−66によりエンコードされ、EGFRtは配列番号NO:1のヌクレオチド67−1071でエンコードされている(図7参照のこと)。図7にはまた、EGFRtにリンクされたGMCSFRアルファ鎖シグナル配列のアンチセンス鎖(配列番号NO:2)及びアミノ酸(配列番号NO:3)が示される。他のかかる配列は、抗CD19共刺激キメラ抗原レセプタ(CD19R−CD28gg−Zeta(CO)をコードするコドン最適化cDNA配列及び開裂性T2Aリンカである。細胞質CD3ζドメインに融合された細胞質共刺激(CD28)ドメインを介してシグナルを送るCD19特異的キメラ抗原レセプタを発現するように改変された細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、優れた抗腫瘍性を示し、CD28介在生存及びサイトカイン生産増加に寄与する。この構成物はさらにセツキシマブ−ビオチン/抗ビオチンミクロビーズを用いてCAR発現遺伝子組み換え産物の免疫的磁気精製のために、C末端2A開裂性リンカが導入され、さらに前記リンカの後にトランケートされたヒトEGFR(EGFRt)のコード配列を導入するように改変され得る。図8はCD19R−CD228gg−Zeta(CO)−T2A−EGFRtの配列が示される。またそれぞれ配列番号NO:4(ヌクレオチドセンス鎖)、5(ヌクレオチドアンチセンス鎖)及び6(タンパク質)である。プライマリヒトT細胞をこのコドン最適化cDNAでレンチウイルス遺伝子組換え物は、前記CARとEGFRtの協働発現をするようにされる(図9)。
【0043】
遺伝子組換え手順に本質的である遺伝子組み換え発現産物間の変動を続く選択を行うことなく除去するために、CliniMACS装置(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、ドイツ)を用いて免疫的磁気選別を適用可能な非免疫的選択エピトープEGFRtが開発された。例えば、EGFRtはトランケートされたヒト内皮増殖因子レセプタであって膜遠位EGF結合ドメインとシグナル系を欠失するが、市販抗EGFRmAbセツキシマブで認識される細胞外膜近位エピトープは保持するものである(図1参照)。ビオチン化セツキシマブは、抗ビオチンミクロビーズ((Miltenyi)と組み合わせて免疫的磁気選別に適用される。レンチウイルスを用いてCD19R−CD28gg−Zeta(CO)−T2A−EGFRtで遺伝子組換えされたヒトOKT3芽(blasts)が、Miltenyi AutoMACS装置を用いて免疫的磁気選別の対象とされ、EGFRt+CAR+T細胞のくり返しにより、22%(選別前)から99%(選別後)まで、細胞調製に対して観察できるほどの傷害を示さずに濃縮された(図3)。免疫的磁気選別(ソート)に代えて、又は加えてEGFRtは蛍光系細胞選別技術を用いて選別されることができる。
【0044】
EGF結合ドメイン及び細胞間シグナルドメインが欠失していることは、T細胞により発現される場合不活性となる。重要なことは、前記EGFRt選別T細胞はその望ましいエフェクタ細胞型−前記EGFRtと共に協働的に発現されるキメラ抗原レセプタにより介在される腫瘍細胞傷害活性を含む−を維持し、かつ確立された拡張プロトコルに従う、ということである。
【0045】
すなわち、このEGFRtは、これまで報告されてきたその他の選別マーカと比較して、免疫治療のための種々の利点を有する。特に、トランケートされたCD4及びCD19とは異なり、これはリンパ球のサブ集団により外因的に発現されたものではないということである。さらに、トランケートされたCD34及び低親和性の神経細胞増殖因子レセプタと比較して、免疫細胞産物に悪い影響を与え得るいかなる活性も有しないことである。最後に、これはこれ自体で、知られた、好ましくは市販の医薬品グレードの抗体医薬、例えばセツキシマブにより結合/認識され得るものである。また、これらは、EGFRtをすべてのトランスフェクション/形質転換系のための優れた1つの選択肢であり、適合可能な免疫療法のための細胞産物の生成に適用され得る。従って、EFGRtは、レンチウイルスにより遺伝子組換えされた免疫治療に関連するT細胞のための選択マーカとして好ましく使用され得る。
【0046】
また、新規な治療用細胞産物を同定するための方法が適用され、この方法は次の基準を有する:改変された内因性細胞表面分子、リガンド又はレセプタであって、改変されても、治療用に使用されるべき対象体中で外因性的に発現されず、前記産物又は産物が投与される対象体の機能を阻害する免疫活性又はその他の機能的活性を持たず、かつ知られた抗体により認識される、ものである。
【0047】
これまで本発明は実施態様及び例を示すことで記載されてきたが、当業者は、記載され例示された本発明の変更もまた、本明細書に開示されるように本発明の本質及び範囲から離れるものではないことを、理解するであろう。以下の例は本発明を理解するためのものであり、いかなるようにも本発明の範囲を限定するように解釈されることを意図するものではない。例は従来技術の方法の詳細な説明は含まない。そのような方法は当業者にはよく知られており多くの文献に記載されている。
【0048】
例1: EGFRtの生成及びEGFRt発現T細胞の免疫的磁気選別
材料及び方法
抗体及びフローサイトメトリ
FITC−、PE−及びPerCP−共役アイソタイプコントロール、PerCP−共役抗CD8、FITC共役抗CD4、PE−共役抗IFNγ、PerCP−共役抗CD45及びPE−共役ストレプトアビジンは、BD Biosciences(San Jose、CA)から入手した。ビオチン化抗Fcは、Jackson ImmunoResearch Laboratories、Inc.(Westgrove、PA)から購入した。PE−共役抗ビオチンはMiltenyi Biotec(Auburn、CA)から購入した。ビオチン化EGFはMolecular Probes(R)Invitrogen(Carlsbad、CA)から入手した。PE−共役抗EGFRはAbeam Inc.(Cambridge、MA)から購入した。全ての抗体及びビオチンEGFは製造者の指示書に沿って使用した。フローサイトメトリデータ取得は、FACScalibur(BD Biosciences)で行い、分析の領域での細胞パーセントは、 FCS Express V3(De Novo Software、LosAngeles、CA)を用いて計算した。
【0049】
ビオチン化セツキシマブの生成のために、200mgのセツキシマブ(エルブタックス(R))を、MidGeeフープカートリッジ(UFP−30−E−H42LA)を用いてPBS(D−PBS、pH7.5±0.1)527mlを用いてバッファ交換した(19時間)。前記材料2mg/Lを、スルホ−NHS−LC−ビオチンを用いて20:1で改変した。反応は1時間室温及びその後過剰ビオチンを限外濾過で除去する反応であった。前記ビオチン化セツキシマブの200mgをその後、MidGee フープカートリッジ(UFP−30−E−H42LA)を用いてPBS(D−PBS、pH7.5±0.1)533mlを用いてバッファ交換した(18時間)。グリセロールを最終濃度20%となるように添加し、得られた材料バイアル中で凍結させた。
【0050】
細胞株
特に記載されない限り、全ての細胞は、2mMのL−グルタミン(Irvine Scientific)、25mMのN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES、Irvine Scientific)、100 U/mLのペニシリン、0.1mg/mLのストレプトマイシン(Irvine Scientific)、及び10%加熱−不活性化ウシ胎児血清(FCS、 Hyclone、Logan、UT)を加えたRPMI1640 (Irvine Scientific、 Santa Ana、CA)中(以下培養培地(CM)とする)で保存された。
【0051】
T細胞を調製するために、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、City of Hope National Medical Center Internal Review Board−approved protocolに基づき参加の同意を得た健康なドナーから得られたヘパリン化末梢血から、Ficoll−Paque(Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)を用いて密度勾配遠心分離により分離された。細胞株Aの調製のため、洗浄されたPBMCを25U/mLのIL−2及び1:1(細胞:ビーズ)比のダイナビーズ(Dynabeads)(R)ヒトT細胞増殖CD3/CD28(Dynabeads(R)Human T expander CD3/CD28、Invitrogen、Carlsbad、CA)で刺激した。他の細胞株の調製のために、洗浄されたPBMCは最初に、製造者の指示書に沿って抗CD45RAビーズ(Miltenyi Biotec)を用いてautoMACS(TM)で除去され、その後いくつかの場合ではまた抗PE−ビーズ(Miltenyi Biotec)と共にPE−共役抗CD4(BD Biosciences)を用いて除去された。得られた細胞はその後ビオチン化DREG56(抗CD61L)と抗ビオチンビーズ(Miltenyi Biotec)を用いてautoMACS(TM)ポジティブ選別が実施されて精製CD62LCD45ROCMを生成する。CD8細胞はさらに、いくつかの場合には製造者の指示書に沿ってAutoMACS(TM)(Miltenyi Biotec)を用いて選別される。CMV特異的細胞は、非特定刺激を避けるためにFCSの代わりに10%ヒト血清を用いて、5U/ml lL−2(Chiron、Emeryville、CA)及び自己照射ウイルス抗原提示細胞を4:1(応答:刺激)比で週に一度で3週間T細胞を刺激した。ウイルス抗原提示細胞は、CMVpp65抗原を発現するように遺伝子組換えされたPBMCから誘導された。
【0052】
PBMCを、Human T cell Nucleofector kit(Amaxa Inc.、Gaithersberg、MD)を用いて核感染溶液中に再分散させ、5x10細胞を、10μgのHygroR−pp65_pEK(又はトランスフェクションコントロールとして、Amaxa Inc.から入手されたpmaxGFP)を最終容積100μL/キュベットとして0.2cmキュベット内に入れ、Amaxa Nucleofector I(Amaxa Inc.)を用いてプログラムU−14によりエレクトロポレートし、その後細胞をγ照射(1200cGy)する前に回復させるために37℃で6時間保持した。
【0053】
CD19CAR−T2A−EGFRt_epHIV7(pJ02104)及びCD19CAR−T2A−EGFRt−T2A−IMPDH2dm_epHIV7(pJ02111)レンチウイルス構成物は、(a)キメラ抗原レセプタ(CAR)であって、CD19特異的FmC63mAb、IgG1ヒンジ−CH2−CH3、供刺激分子CD28の膜間及び細胞質シグナルドメイン、及びCD3ζ鎖[10]のV及びV遺伝子断片;(b)自己開裂性T2A配列[11];(c)トランケートされたEGFR配列(図1参照);及び(d)示されるようにMPA抵抗性を与えるIMPDH2二重変異を含む。レンチウイルス形質変換は、T細胞で行われ、30ng/mLの抗−CD38(OKT3; Ortho Biotech、Raritan、NJ)(即ち細胞株A)、又はヒトCD3/CD28Dynal beads(1:10比(即ち細胞株B、C、D及びE)と25UのIL2/mlのいずれかで刺激された。細胞は、レンチウイルスを3から5μg/mlポリイブレンのMOIで添加する前に、RetroNectin(R)(50ug/ml)コーティングプレート上で37℃で2時間培養された。4時間後、暖かい培地を加えて容積を3倍とし、前記細胞を洗浄し、48時間後新鮮な培地へ移された。EGFRt発現細胞のAutoMACS(TM)ソートが、ビオチン化セツキジマブ及び抗ビオチンミクロビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて製造者の指示書に沿って実施された。迅速増殖媒体(REM)中のT細胞の増殖は10T細胞を30ng/mLの抗CD3ε(OKT3; Ortho Biotech、 Raritan、NJ)、5x10γ照射PBMC(3500cGy)、及び10γ照射LCL(8000cGy)でインキュベートすることを含み;50U/ml rhlL−2及び10ng/mlのrhlL−15(CellGenix)を第1日から始めて48時間ごとに添加する。T細胞はこの方法で14日ごとに再刺激する。
【0054】
EBV形質転換リンパ芽球様細胞株(LCL)は既に記載されたようにPBMCから調製された[13]。LCL−OKT3細胞は、LCLを核感染溶液中で、Amaxa Nucleofector kit Tを用いてOKT3−2A−Hygromycin_pEK(pJ01609)プラスミドを5μg/10で細胞を添加して再懸濁させ、Amaxa Nucleofector Iを用いてプログラムT−20によりエレクトロポレートすることで調製した。得られたLCL−OKT3−2A−ハイグロマイシン_pEK(cJ03987)は、0.4mg/mlハイグロマイシン含有CM中で成長させた。マウス骨髄腫細胞株NS0(City of Hope National Medical Center、 Duarte、 CAのAndrew Raubitschekから譲渡)を核感染キットT(Amaxa Inc.、 Gaithersberg、MD)を用いて核感染溶液中で再分散させ、CD19t−DHFRdm−2A−IL12_pEK(pJ01607)又はGFP−IMPDH2dm−2A−IL15_pcDNA3.1(+)(pJ01043)プラスミドを5μg/5x10細胞で添加し、及び細胞をAmaxa Nucleofector Iを用いてプログラムT−27を用いてエレクトロポレートした。得られたNS0−CD19t−DHFRdm−2A−IL12_pEK(cJ03935)及びNS0−GFP:IMPDH2−IL15(IL2ss)_pcDNA3.1(+)(cJ02096)は、10%加熱不活性化FSC、25mMHEPES及び2mML−グルタミンで0.05μMのメトトレキサート(MTX)又は6μMミコフェノール酸(MPA)のいずれかの存在下で補助されたDMEM(Irvine Scientific、 Santa Ana、CA)中で増殖させた。U251の腫瘍細胞株はU251Tと参照され、 Waldemar Debinski博士(Wake Forest、NC)から親切にも譲渡された。U251T−pp65は、U251Tをpp65−2A−eGFP−ffluc_epHIV7(pJ01928)を用いてMOIが1でレンチウイルスを用いて調製された。得られたU251T−pp65−2A−eGFP−fflun_epHIV7はその後GFP+集団についてFACSソートされた (cJ05058)。ダウジ(Daudi)リンパ球細胞株はATCCから購入し、RPMI1640(Irvine Scientific)、2mMのL−グルタミン(Irvine Scientific)、10%の加熱不活性化FCS(Hyclone)を含む媒体中で増殖させた。SupB15急性リンパ芽球性白血病細胞及びA431表皮類似癌細胞はATCCから購入した。
【0055】
タンパク質分析
細胞(10まで)を、ホスファターゼインヒビタカクテルII80μLを含む1%トリトン−X溶解バッファ(Sigma−Aldrich Corp.、St.Louis、MO)(インヒビタ対バッファ容積比1:20)で溶解させた。50μgのタンパク質をそれぞれのレーンに載せ、ウェスタンブロットを、プローブとしてホスフォ−EGFレセプタ抗体サンプルキット(Cell Signaling Technology、Inc.、Danvers、MA)を用いて行い、続いて山羊抗ウサギ抗体(LI−COR、Lincoln、NE)共役IRDye(TM)680CW又は800CWと、同様に抗ベータアクチン抗体 (LI−COR)共役IRDye(TM) 800を、製造者の指示書に沿って用いて行った。ブロットはOdyssey Infrared Imaging System(LI−COR)で画像化させた。
【0056】
クロム遊離アッセイ
T細胞の細胞溶解活性が、4時間クロム遊離アッセイ(CRA)で決定された。ここでエフェクタ細胞は5x10のCr51ラベル化ターゲットT細胞(Na51CrO;5mCi/ml);Amersham Pharmacia、Piscataway、NJ)を含むV底96ウェルマイクロプレートの3重ウェルに播種され、5%CO中37℃で種々のE:T比で200μLのCM中で4時間インキュベートされた。プレートを遠心分離し、上澄みの100μlをそれぞれのウェルから除いてγカウンタ(Packard Cobra II、 Downer’s Grove、IL)を用いて遊離クロムを評価した。 特定溶解パーセントは次のように計算された:100x(実験的遊離−自発的遊離)/(最大遊離−自発的遊離)。最大遊離は、2%SDSで溶解されたラベル化標的を含むウェルのCr含有量の測定から決定された。
【0057】
抗体依存性細胞傷害は、5x1051Crラベル化ターゲットT細胞を用いて上のようにクロム遊離により決定された。ここで51Crラベル化ターゲットT細胞はセツキシマブ又はリツキシマブ(CD特異的mAb)のいずれかの10μg/mLまで90分間前インキュベートし、洗浄しその後5x10の新たに単離されたPBMCでコインキュベートした。
【0058】
インビボでのT細胞移植及びセツキシマブ介在自殺
T細胞移植のために、6から10週齢NOD/ScidIL−2RγCnullマウスに、10T細胞(細胞株C)が0日に静脈内に注射された。2x10照射(8000ラド)NSO−GFP:IMPDH2−IL15(IL2ss)_pcDNA3.1(+)(cJ02096)細胞が、インビボでヒトIL−15の系統的供給を与えるために0日で週3回腹腔内投与される。骨髄を安楽死させた動物から採取しフローサイトメトリで分析した。抗体依存性細胞傷害アッセイは、EGFRtT細胞に対するセツキシマブの活性を決定することで実施される。
【0059】
結果
EGFRt発現T細胞の免疫的磁気選別
トランケートヒトEGFR(EGFRt)は、全長EGFRの膜間ドメインと細胞外ドメインIII及びIVのみを含み、免疫的磁気選別と適合して非免疫的磁気選択エピトープとして調製された。図1の分子モデルに示されるように、EGFRtはセツキシマブにより結合され得る機能を保持するが、細胞間ドメインの欠失により全てのシグナル系を欠いている。さらに、これはEGF結合に必要なN末端ドメインを欠いている。
【0060】
EGFRt発現細胞のための免疫的磁気選別のために、ビオチン化セツキシマブが調製され(図2A、B)、市販抗ビオチンミクロビーズとAutoMACS(TM)分離装置(Miltenyi Biotec)とを利用することができる(図2C)。種々のT細胞株をEGFRt含有構成物(ここでEGFRt遺伝子は自己開裂性T2A配列を持つ1端又は両端で対象となる他の遺伝子から分離された)でレンチウイルスによる遺伝子組換え物は、一定して前記細胞の40%未満のEGFRt分子の表面検出を与える結果となった。表面検出はまた、EGFRt−sr39TK融合でも達成され得る(図2D)。免疫的磁気選別はEGFRtT細胞集団の90%を超える純度で回収することを可能とした。この遺伝子組換え及び選別手順を行ったT細胞集団は、抗CD3/抗CD28ビーズ刺激T細胞ブラスト(細胞株A)、中心メモリ(CD45ROCD62LTCM)誘導T細胞(細胞株B、C及びE)であり、これらはある場合にはまたCMV特異性について前選別されている(外因性TCR、細胞株B)又はCD8発現について前選別されており(細胞株C)、同様にエフェクタメモリ(CD62LCD45ROTEM)誘導T細胞(細胞株D)である。これらのデータは、EGFRtが種々のT細胞形質導入物の選別マーカとして使用され得ることを示し、これは最初の形質導入効果がたかだか2%であってもそうである。
【0061】
選別T細胞のEGFRtの不活性
EGFRtが不活性であることを確認するために、EGFRリン酸化についてのウェスタン免疫ブロット分析を、EGFRr選別T細胞でEGF又はセツキシマブで培養後に行った。予想の通り、セツキシマブはバックグラウンド以上のEGFRリン酸化を誘導せず、EGFR細胞株A431でさえもそうであった(図3A)。さらに、A431細胞で見られたこととは対照的に、EGFとコインキュベート後の細胞株Aの溶解物でもリン酸化は見られなかった。実際、ビオチン化EGFを用いてフローサイトメトリ分析では、EGFはEGFRt選別T細胞には結合せず(図3B)、これはそのN、末端をトランケートされていることによると予想される。これらのEGFRtT細胞はまた、セツキシマブとは異なる他の抗EGFR抗体でも認識されなかった。
【0062】
増殖EGFRtCD19CART細胞でのエフェクタ細胞型の維持
AutoMACS(TM)分離の直後、選別されたT細胞は、OKT3、照射PBMCフィーダー及びLCL、IL−2及びOL−5でのREM刺激の後12日以内に30倍以上に増殖した(図4A)。得られた増殖EGFRtT細胞のフローサイトメトリ分析はさらに、それらがCD19CAR及びCD8、TCR、CD3、パーホリン、グランザイムなどのT細胞マーカを発現していることが確認された(図4B)。さらに、これらのEGFRt選別細胞株のCD19CARによる細胞活性は、CD19発現腫瘍ターゲットを用いて遊離クロムアッセにより明らかである(図4C)。細胞株Eとその非選別又は「親の」細胞株のCD19特異的反応性の直接比較は、EGFRt選別において強化されたCD19CAR介在細胞傷害性があることを示す。さらに、CMV特的TCM−誘導CD19CAREGFRt細胞株B細胞はまた、ターゲット発現CMV−pp65抗原に対するこれらの外因性T細胞レセプタを介して細胞傷害性を示す。
【0063】
また、CD19CAREGFRtIMPDH2dm細胞株Eについて、イノシンモノホスフェートデヒドロゲネース2二重変異体(IMPDH2dm)がIMPDH2インヒビターミコフェノール酸(MPA;臓器移植で拒絶反応を抑制するために使用される共通の免疫抑制剤)への抵抗性を与える可能性が試験された。1μMMPA中での培養で、細胞株E、細胞の生存及び/又は増殖は抑制されなかった(図4D)。これは、IMPDH2dm伝子発現を欠くコントロールTを細胞株で見られる抑制効果と対照的である。これらのデータはさらに、EGFRt介在選別が、T細胞を遺伝子組換えするために使用されるレンチウイルス内に存在する他の遺伝子の選別に対応するという証拠を示す。
【0064】
インビボでEGFRtT細胞のトラッキング(追跡)
インビボでの移植T細胞を検出する可能性を試験するために、CD19CAREGFRt細胞株Cで移植させたマウスから集めた骨髄細胞が、ビオチン化セツキシマブを用いてフローサイトメトリで分析された(図5)。T細胞を受けていないコントロールマウスは、マウスEGFRに対してある程度のセツキシマブの交差反応があることを示した。従って、移植細胞株C細胞の検出を可能とするためには、ヒトCD45及びEGFRtの両方の二重染色が必要であることが決定された。細胞はまた、免疫組織化学を用いて、生検材料をスクリーニングするための可能性を決定するために分析され得る。
【0065】
EGFRtT細胞のセツキシマブ介在細胞傷害
セツキシマブはEGFR発現細胞を、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を介して溶解することが知られていることから、EGFRtT細胞に対するセツキシマブの活性を決定するためにアッセイを行った(図6)。51Crラベル化細胞株A細胞をターゲットとし、新たに単離したヒトPBMCをエフェクタとして用いて、セツキシマブは、CD20特異的ヒト化mAbリツキサン(Rituxan)を用いた場合を超える有意にクロム遊離を介在することが見出された。
【0066】
EGFRt+Tを細胞の治療的使用の例
高リスクの中間悪性度B細胞リンパ腫を持つ大人の対象体は、自己骨髄破壊的幹細胞移植の候補者であり、適合的に転移された自己TCM−誘導CD19RCD8EGFRtT細胞移植物による移植後免疫治療を受け得る。
それぞれの患者から集めた白血球分離物が、TCM選別され、医療グレードのCD19CAR−T2A−EGFRt_epHIV7で遺伝子組換えされ、その後選別され閉鎖系内でEGFRtT細胞の増殖を行う。得られた細胞物は品質管理試験(殺菌及び腫瘍特異的細胞傷害性試験)を経て、凍結保存される。一方で、白血球除去輸血後に、研究参加者は、腫瘍低減化学療法及びG−CSFとの自動HSC収集のための動員とともに標準のサルベージ化学的治療を開始する。EGFRt選別、CD19特異的T細胞はまた、通常のCD20(CD19)B細胞もターゲットとするものであり、遺伝子改変CTLを受ける際に患者の炎症応答を低減させ、およびまた直ぐに目標のリンパ球へ注射されたT細胞を増加させるために、リツキシマブ(TM)を用いて最初B細胞数を低減させることができる。さらに、リツキシマブ(TM)は、遺伝子組換えT細胞に対してホルモン性免疫応答を遅らせる可能性がある。リツキシマブ(TM)が、前記サルベージ/プライミング治療戦略の一部として与えられない場合には、研究参加者はリツキシマブ(TM)(キメラ抗CD20抗体)を375mg/mで計画された自動HSCT手順の4週間内に1回の静脈注射を受けることができる。リツキシマブ注射は標準方法で実行され得る。これにはジフェンヒドラミン及びアセトアミノフェン及びヒドロコルチゾンの前投与が含まれる。HSCT後の2日目と3日目で、自己凍結保存CD19RCD8EGFRtT細胞物が輸送され、患者の側で解凍される。研究参加者はT細胞注射の少なくとも30分前に、15mg/kgのアセトアミノフェン経口(最大650mg)及び15〜1mg/kg静脈注射(最大投与50mg)のジフェンヒドラミンが前投与され得る。臨床及び実験室の相互関連フォローアップ研究は、医師の裁量で実施され得る。これには、CD19発現リンパ球細胞及び/又は適合性遺伝子組換えT細胞の適量的RT−PCR研究;FDG−PET及び/又はCTスキャン;疾患特異的病理学的評価のための骨髄検査;リンパ節生検;及び/又は長期間フォローアップであり、FDAのBiologic Response Modifiers Advisory Committeeにより設定されたガイドラインの沿った遺伝子組み換え研究に適用されるものが含まれる。図10は本発明に係る物及び方法の臨床試験のための可能なスキームを与える。
【0067】
本発明は例で示された特定の実施態様に限定されるものではない。これら実施態様は本発明のいくつかの側面を説明することを意図するものであり、これらの実施態様と機能的に均等な全ては本発明の範囲に含まれる。実際に、当業者には、ここで示されたこれらの実施態様の種々の変更・変法が添付された特許請求の範囲の範囲内であることが意図されていることは明らかであろう。
【0068】
本明細書において引用される全ての特許、特許出願及び参考文献の内容は、参照されて本明細書に援用される。
【0069】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変内因性細胞表面分子をエンコードする遺伝子であり、前記分子が知られた抗体又はその機能的断片により認識され;しかし前記分子はシグナル系ドメインを欠失して、前記内因性細胞表面分子を不活性とする、遺伝子。
【請求項2】
請求項1に記載の遺伝子であり、前記改変内因性細胞表面分子が、ヒトチロシンキナーゼレセプタ遺伝子から誘導される、遺伝子。
【請求項3】
請求項2に記載の遺伝子であり、前記ヒトチロシンキナーゼレセプタ遺伝子が、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、HGFR/c−MET及びIGF−1Rを含む群から選択される、遺伝子。
【請求項4】
請求項3に記載の遺伝子であり、前記ヒトチロシンキナーゼレセプタ遺伝子が、改変EGFR遺伝子であり、前記改変EGFR遺伝子が、EGFRドメインIII及びEGFRドメインIVを含むがEGFRドメインI、EGFRドメインII、EGFRドメインIV及びEGFRチロシンキナーゼドメインを欠失する、遺伝子。
【請求項5】
請求項4に記載の遺伝子であり、前記改変EGFR遺伝子をエンコードするアミノ酸配列が、少なくとも90%の配列番号NO:3と同一である、遺伝子。
【請求項6】
請求項4に記載の遺伝子であり、前記改変EGFR遺伝子をエンコードする前記アミノ酸配列が配列番号NO:3を含む、遺伝子。
【請求項7】
請求項4に記載の遺伝子であり、前記改変EGFR遺伝子が知られた抗EGFRモノクローナル抗体と結合する、遺伝子。
【請求項8】
請求項7に記載の遺伝子であり、前記知られたEGFR抗体が、セツキシマブ、マツズマブ、ネシツムマブ又はパニツムマブのいずれかである、遺伝子。
【請求項9】
請求項4に記載の遺伝子であり、前記改変EGFR遺伝子が、CD19R−CD28gg−Zeta(CO)−T2A−EGFRtの構成物のコンポーネントである、遺伝子。
【請求項10】
請求項9に記載の遺伝子であり、前記構成物をエンコードする前記アミノ酸配列が、少なくとも90%配列番号NO:6と同一である、遺伝子。
【請求項11】
請求項9に記載の遺伝子であり、前記構成物をエンコードする前記アミノ酸配列が配列番号NO:6を含む、遺伝子。
【請求項12】
遺伝子組換えT細胞を選別する方法であり、前記方法が:
(a) T細胞集団を、改変内因性細胞表面分子をエンコードする遺伝子で遺伝子組換えし、前記分子が知られた抗体又はその機能的断片により認識される細胞外エピトープを含み;しかし前記分子は、シグナル系ドメインを欠失して前記内因性細胞表面分子を不活性とし;及び
(b) 前記遺伝子組換えT細胞の集団を、前記遺伝子組換えされた細胞を、知られた抗体及びその機能的断片のビオチン化したもので選別することで濃縮する、ことを含む方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であり、前記改変された内因性細胞表面分子遺伝子が、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、HGFR/c−MET及びIGF−1Rを含む群から選択されるヒトチロシンキナーゼレセプタ遺伝子である、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であり、前記ヒトチロシンキナーゼレセプタ遺伝子が改変EGFR遺伝子であり、前記改変EGFR遺伝子が、EGFRドメインIII及びEGFRドメインIVを含むが、EGFRドメインI、EGFRドメインII、EGFR膜近傍ドメイン及びEGFRチロシンキナーゼドメインを欠失する、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であり、前記改変EGFR遺伝子が知られた抗EGFRモノクローナル抗体と結合する、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であり、前記知られた抗EGFR抗体がセツキシマブ、
マツズマブ、ネシツムマブ、又はパニツムマブのいずれかである、方法。
【請求項17】
請求項12に記載の方法であり、前記遺伝子組換えT細胞の集団の濃縮が、抗ビオチンミクロビーズを添加し、かつ免疫的磁気選別を用いてT細胞を選別することにより達成する、方法。
【請求項18】
請求項12に記載の方法であり、前記遺伝子組換えT細胞の集団の濃縮が、蛍光色素共役抗ビオチンを添加し、かつ蛍光活性化細胞選別を用いてT細胞を選別することにより達成される、方法。
【請求項19】
請求項12に記載の方法であり、改変内因性細胞表面分子をエンコードする遺伝子が配列番号NO:3である、方法。
【請求項20】
請求項12に記載の方法であり、前記T細胞集団が、配列番号NO:6を含むレンチウイルスベクタにより遺伝子組換えされる、方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−509879(P2013−509879A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537974(P2012−537974)
【出願日】平成22年11月3日(2010.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/055329
【国際公開番号】WO2011/056894
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(598004424)シティ・オブ・ホープ (15)
【氏名又は名称原語表記】City of Hope
【住所又は居所原語表記】1500 East,Duarte Road,Duarte,California 91010−0269,United States of America
【Fターム(参考)】