説明

影響係数取得方法

【課題】試し錘を使用することなく、精度のよい影響係数を取得する。
【解決手段】回転体の回転バランス変化に対する回転体の振動変化を示す影響係数を取得する影響係数取得方法。回転体が回転している状態で、回転体を支持する支持体の振動を計測することで第1の振動データを取得する第1振動データ取得ステップS1と、回転体の一部を切削することで、回転バランス変化を回転体に与える切削ステップS2と、回転体が回転している状態で、支持体の振動を計測することで第2の振動データを取得する第2振動データ取得ステップS3と、第1の振動データと、切削ステップで与えた回転バランス変化と、第2の振動データとに基づいて、回転体の影響係数を算出する係数算出ステップS4と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の影響係数を取得する影響係数取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転体は、回転機械に設けられ、その軸を中心として回転する。本願において、回転機械は、流体と力を及ぼし合う回転翼が回転体に設けられた流体機械である。回転機械には、原動機と被動機がある。原動機は、流体が回転翼に作用させる圧力により回転体が回転駆動されることで、流体の持つエネルギーを回転運動エネルギーに変換する。この回転運動エネルギーは、前記回転翼を含む回転体の運動エネルギーである。原動機としては、例えば、ガスタービン(軸流タービン、ラジアルタービン)がある。被動機は、回転駆動されている回転翼が流体に圧力を作用させることで、回転運動エネルギーを流体に与える。この回転運動エネルギーは、前記回転翼を含む回転体の運動エネルギーである。被動機としては、例えば、圧縮機(遠心圧縮機、航空エンジンなどに設けられる軸流圧縮機、斜流圧縮機、横流圧縮機、ポンプ)がある。また、回転機械には、原動機と被動機の両方の機能を持つ過給機もある。
【0003】
影響係数は、回転体の回転バランス変化に対する回転体の振動変化を示す。影響係数は、回転体のバランス修正に利用される。そのため、回転体のバランスを修正する前に、この回転体の影響係数を取得しておく。
【0004】
従来において、影響係数は、次のように試し錘を使用して求められていた。まず、試し錘を使用せずに、回転体を回転させ、回転体を支持する支持体の振動を計測する。次に、試し錘を回転体に取り付けて、回転体を回転させ、回転体を支持する支持体の振動を計測する。その上で、試し錘を使用しない時の振動と、試し錘を取り付けた時の振動と、試し錘の質量および取付位置とから、影響係数を算出する。なお、影響係数の算出に使用する振動は、回転体の回転速度(即ち、1秒間での回転数)と同じ周波数成分の振動であるのがよい。
【0005】
このように取得した影響係数を用いて、次のように回転体のバランスを修正する。影響係数から、回転体のアンバランスデータを算出する。このアンバランスデータが示す修正位置において、アンバランスデータが示す質量だけ回転体を切削する。これにより、回転体のバランスを修正する。このようなバランス修正方法は、影響係数法といい、例えば、下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−102049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、試し錘を使用した影響係数取得方法では、以下の問題があった。
(1)試し錘の取り付けおよび取り外しをするため、その分、時間がかかる。
(2)試し錘の取付方法として、接着やネジ止めがあるが、接着の場合は接着剤の質量を把握できず、ネジ止めの場合は、回転中にネジが緩むとネジや試し錘が飛散する。
【0008】
そこで、本発明の目的は、試し錘を使用することなく、精度のよい影響係数を取得する影響係数取得方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明によると、回転体の回転バランス変化に対する回転体の振動変化を示す影響係数を取得する影響係数取得方法であって、
回転体が回転している状態で、回転体を支持する支持体の振動を計測することで第1の振動データを取得する第1振動データ取得ステップと、
回転体の一部を切削することで、回転バランス変化を回転体に与える切削ステップと、
回転体が回転している状態で、前記支持体の振動を計測することで第2の振動データを取得する第2振動データ取得ステップと、
第1の振動データと、切削ステップで与えた回転バランス変化と、第2の振動データとに基づいて、回転体の影響係数を算出する係数算出ステップと、を有する、ことを特徴とする影響係数取得方法が提供される。
【0010】
上述した本発明の影響係数取得方法では、振動計測により第1の振動データを取得し、次いで、切削により回転バランス変化を回転体に与え、次に、振動計測により第2の振動データを取得し、その後、これら第1の振動データ、回転バランス変化、および第2の振動データに基づいて影響係数を算出するので、バランス変化用の試し錘の取り付けおよび取り外しの作業が無くなる。従って、影響係数を取得する時間を短縮できる。
また、試し錘を使用しないので、回転体の回転により試し錘が飛散する事故も生じない。
さらに、試し錘の取付位置と質量の誤差が無くなる。即ち、切削データから回転バランス変化が精度よく得られるので、影響係数の算出精度が向上する。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によると、前記回転体を有する計測対象回転機械とは別の回転機械であり、計測対象回転機械と同機種の基準用回転機械を用意し、
基準用回転機械の回転体の影響係数を基準影響係数として取得し、
基準影響係数からアンバランスデータU1を算出し、
前記切削ステップでは、該アンバランスデータU1に基づいて、前記回転体を切削する。
【0012】
基準用回転機械と計測対象回転機械とは同機種であるので、基準用回転機械の回転体についての基準影響係数を用いて、計測対象回転機械の回転体を切削することは、計測対象回転機械のバランスを修正することになる。従って、切削ステップの切削は、対象回転機械の回転体の影響係数を取得するためのステップと、回転体のバランスを修正するためステップとの両方を兼ねることができる。
【0013】
また、本発明の好ましい実施形態によると、前記係数算出ステップで算出した前記影響係数からアンバランスデータU0を算出するアンバランスデータ算出ステップと、
該アンバランスデータU0に基づいて、計測対象回転機械の回転体を切削するバランス修正ステップと、を有する。
【0014】
係数算出ステップで算出した、計測対象回転機械の回転体の影響係数を用いて、計測対象回転機械の回転体を切削することで、計測対象回転機械のバランスを高精度に修正できる。
しかも、上述の切削ステップにおいて、計測対象回転機械の回転体のバランスが既に修正されているので、バランス修正ステップで、回転体のバランス精度がさらに高まる。また、バランス修正ステップの後、引き続いて、計測対象回転機械の回転体のバランスを影響係数法により修正する場合には、修正回数を減らすことができる。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明によると、試し錘を使用することなく、精度のよい影響係数を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の影響係数取得方法に使用できる影響係数取得装置を示す。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】振動データを示す波形である。
【図4】振動データを表す複素平面である。
【図5】本発明の実施形態による影響係数取得方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の影響係数取得装置を過給機に提供した場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の影響係数取得方法に使用できる影響係数取得装置10を示す。図2は、図1のII−II矢視図である。影響係数取得装置10は、支持体3、加速度センサ5、角度センサ7、演算器9、および切削装置11を備える。
【0019】
支持体3は、回転機械の回転体13を支持する。回転体13は、支持体3に支持された状態で、回転体13の軸Cを中心に回転可能である。なお、支持体3の一部は、回転機械の静止側部材により構成されてもよい。
【0020】
加速度センサ5は、支持体3に取り付けられる。加速度センサ5は、回転体13が回転している状態で、支持体3の加速度(即ち、振動)を計測し、該加速度を示す振動信号を演算器9に出力する。この加速度センサ5として、影響係数の取得に使用可能な公知のセンサを使用できる。
【0021】
角度センサ7は、回転体13の回転角を検出し、該回転角を示す回転角信号を演算器9に出力する。この回転角は、回転体13が1回転することでゼロ度〜360度まで変化する。即ち、回転角は、所定の始点となる回転体の回転位相(始点回転角)から回転体13が回転した角度を示す。
【0022】
演算器9は、前記振動信号と前記回転角信号に基づいて振動データを抽出し、この振動データから影響係数を算出する。振動データは、振動の振幅と位相θからなる。図3は、振動の振幅と位相θを示す。図3において、横軸は、角度センサ7により検出した回転体13の回転角を示し、縦軸は、加速度センサ5により検出された振動のうち1次振動の強度を示す。1次振動は、回転体13の回転速度と同じ周波数成分の振動である。即ち、1次振動振幅は、加速度センサ5による振動計測時における回転体13の回転速度(1秒間での回転数)と同じ周波数[Hz]の成分を、加速度センサ5が出力した前記振動信号から抽出した振動である。図3において、位相θは、基準回転角(図3の例では、ゼロ度)に対する1次振動のずれを示す。即ち、位相θは、基準回転角に対する、1次振動の周期の始点となる回転角のずれを示す。
振動データ(即ち、後述の振動データX1、X2)を、複素数で表す。図4は、複素数で表した振動データを示す。図4のように、1次振動の振幅を大きさ(絶対値)Rとし、上述の位相θを偏角として、振動データを複素数で表す(以下、同様)。演算器9は、加速度センサ5からの振動信号と角度センサ7からの回転角信号から、複素数の振動データを生成する。
【0023】
切削装置11は、回転体13の切削対象部13aを切削する切削工具11a(例えば、エンドミル)と、該切削工具11aを3次元的(例えば、図1の互いに直交するX軸方向、Y軸方向、Z軸方向)に移動させる駆動機構11bと、該駆動機構11bの動作を制御することで切削工具11aの位置を制御する位置制御部11cとを有する。位置制御部11cは、入力される切削データに従って切削対象部13aを切削する。なお、切削対象部13aは、例えば、回転体13を構成する回転軸の先端に取り付けられたナットまたは円柱形部材である。
【0024】
図5は、本発明の実施形態による影響係数取得方法を示すフローチャートである。この影響係数取得方法は、第1振動データ取得ステップS1、切削ステップS2、第2振動データ取得ステップS3、係数算出ステップS4、アンバランスデータ算出ステップS5、バランス修正ステップS6とを有する。
【0025】
第1振動データ取得ステップS1では、計測対象回転機械の回転体13(以下、対象回転体13という)が回転している状態で、加速度センサ5が、対象回転体13を支持する支持体3の振動(即ち、加速度)を計測しながら、角度センサ7が回転角を検出することで、第1の振動データX1を取得する。第1の振動データX1を次式(1)で表す。

X1=ar1+jai1 ・・・(1)

ここで、ar1は実部であり、ai1は虚部であり、jは虚数単位(以下、同様)である。
第1の振動データX1の取得は、演算器9が行う。即ち、演算器9は、第1振動データ取得ステップS1において、加速度センサ5からの前記振動信号と角度センサ7からの前記回転角信号とに基づいて、第1の振動データX1を生成する。
【0026】
切削ステップS2では、切削装置11により、対象回転体13の切削対象部13aの一部を切削することで、回転バランス変化を対象回転体13に与える。
【0027】
第2振動データ取得ステップS3では、対象回転体13が回転している状態で、加速度センサ5が、対象回転体13を支持する支持体3の振動(即ち、加速度)を計測しながら、角度センサ7が回転角を検出することで、第2の振動データX2を取得する。第2の振動データX2を次式(2)で表す。

X2=ar2+jai2 ・・・(2)

ここで、ar2は実部であり、ai2は虚部である。
第2の振動データX2の取得は、演算器9が行う。即ち、演算器9は、第2振動データ取得ステップS3において、加速度センサ5からの前記振動信号と角度センサ7からの前記回転角信号とに基づいて、第2の振動データX2を算出する。
【0028】
係数算出ステップS4では、第1の振動データX1と、切削ステップS2で与えた回転バランス変化と、第2の振動データX2とに基づいて、対象回転体13の影響係数F0を算出する。影響係数F0は、次式(3)で算出される。

F0=(X2−X1)/{−M(cosθ1+jsinθ1)} ・・・(3)

ここで、−M(cosθ1+jsinθ1)は、切削ステップS2で対象回転体13に与えた前記回転バランス変化を表す。具体的には、Mは、切削ステップS2で切削した換算質量である。この切削した換算質量Mは、M=r0×m0である。r0は、対象回転体13の軸Cから切削ステップS2での切削位置までの半径方向距離であり、m0は、切削ステップS2で切削した質量である。一方、θ1は、前記切削位置の回転方向位置を示す。この回転方向位置は、所定の回転方向位置に対する位相で表現されてよい。
なお、係数算出ステップS4は、演算器9が実行する。即ち、演算器9は、式(3)により影響係数F0を算出する。なお、前記回転バランス変化を示す切削データが、位置制御部11cから演算器9に入力されてよい。即ち、位置制御部11cは、切削ステップS2で行った切削に関する前記切削データを演算器9に出力することで、演算器9が、該切削データを複素数表現の前記回転バランス変化に変換してよい。代わりに、後述するアンバランスデータU1が前記回転バランス変化として前記演算器9に入力されてよい。
【0029】
アンバランスデータ算出ステップS5では、係数算出ステップS4で算出した影響係数F0からアンバランスデータU0を算出する。アンバランスデータU0は、演算器9により次式(4)で算出される。

U0=X2/F0 ・・・(4)

ここで、X2は、上述の第2の振動データである。
【0030】
バランス修正ステップS6では、アンバランスデータU0が示す切削位置と切削量に基づいて、対象回転体13の切削対象部13aを切削する。このアンバランスデータU0は、演算器9から位置制御部11cに入力される。位置制御部11cは、U0に基づいて駆動機構11bを制御することで切削工具11aを移動させ、これにより、切削対象部13aがU0に従って切削される。
U0を、Aを絶対値とし、偏角をθ2として、次式(5)で表す。

U0=A(conθ2+jsinθ2) ・・・(5)

Aは、アンバランス換算質量を示し、A=r1×m1である。ここで、r1は、対象回転体13の軸CからステップS6での切削位置までの半径方向距離であり、m1は、ステップS6で切削する質量である。一方、θ2は、前記切削位置の回転方向位置を示す。従って、ステップS6において、切削工具11aは、r1とθ2が示す半径方向位置と回転方向位置に位置決めされた状態で、切削質量がm1になるまで軸C1の方向に移動する。この時、位置制御部11cは、切削対象部13aの密度と、必要であれば切削対象部13aの形状とに基づいて、切削工具11を軸Cの方向に移動させる距離を算出し、該距離に基づいて駆動機構11bを制御する。
【0031】
好ましくは、上述の切削ステップS2は、基準影響係数を利用して行う。基準影響係数は、基準用回転機械の回転体13(以下、基準回転体13という)の影響係数である。基準用回転機械は、前記対象回転体13を有する計測対象回転機械とは別の回転機械であるが、該計測対象回転機械と同機種である。基準影響係数は、次のように取得する。
対象回転体13の影響係数を取得するのに使用した影響係数取得装置10を用いて、基準影響係数を取得するのがよい。この場合、対象回転体13の影響係数F0の取得方法と同じ方法で、図5のステップS1〜S4を実行することで、基準回転体13の基準影響係数を取得する。即ち、ステップS1のように、基準回転体13について第1の振動データ(上記のX1に相当)を取得し、ステップS2のように、基準回転体13の切削対象部13aの一部を切削し、ステップS3のように、基準回転体13について第2の振動データ(上記のX2に相当)を取得し、ステップS4のように、基準影響係数(上記のF0に相当)を算出する。ただし、上述した従来技術のように試し錘を用いて基準影響係数を取得してもよいし、他の方法で取得してもよい。これらの場合でも、影響係数F0の取得に使用する支持体3で基準回転体13を支持する。
基準影響係数からアンバランスデータU1を算出する。U1は、U0の算出と同様の式で算出されてよい。この場合、上述の切削ステップS2では、切削工具11aは、U1が示す半径方向位置と回転方向位置に位置決めされた状態で、切削質量がU1の示す質量になるまで軸C1の方向に移動する。
なお、基準影響係数は、影響係数F0と一致しない。基準用回転機械と計測対象回転機械とは、同機種であっても、それぞれに製作誤差があるからである。
【0032】
上述した本発明の影響係数取得方法では、以下の効果(A)〜(D)が得られる。
【0033】
(A)振動計測により第1の振動データX1を取得し、次いで、切削により回転バランス変化U0を対象回転体13に与え、次に、振動計測により第2の振動データX2を取得し、その後、これら第1の振動データX1、回転バランス変化U0、および第2の振動データX2に基づいて影響係数を算出するので、バランス変化用の試し錘の取り付けおよび取り外しの作業が無くなる。従って、影響係数を取得する時間を短縮できる。また、試し錘を使用しないので、対象回転体13の回転により試し錘が飛散する事故も生じない。さらに、試し錘の取付位置と質量の誤差が無くなる。即ち、切削データから回転バランス変化が精度よく得られるので、影響係数の算出精度が向上する。
【0034】
(B)影響係数F0と誤差はあるが同機種の基準用回転機械の基準影響係数を用いて切削ステップS2を行い、次いで、影響係数F0と基準影響係数との誤差を補正するようにステップS2〜S6を行うので、バランス修正ステップS6、および必要であればステップS6の後でのバランス修正の精度が向上する。
【0035】
(C)基準用回転機械と計測対象回転機械とは同機種であるので、基準用回転機械の基準回転体13についての基準影響係数を用いて、計測対象回転機械の対象回転体13を切削することは、対象回転体13のバランス修正することになる。従って、切削ステップS2の切削は、対象回転体13の影響係数を取得するためのステップと、対象回転体13のアンバランスの修正するためステップとの両方を兼ねることができる。
【0036】
(D)係数算出ステップS4で算出した、対象回転体13の影響係数を用いて、該対象回転体13を切削することで、計測対象回転機械のバランスを高精度に修正できる。しかも、上述の切削ステップS2において、計測対象回転機械の対象回転体13のバランスが既に修正されているので、バランス修正ステップS6で、対象回転体13のバランス精度がさらに高まる。また、バランス修正ステップS6の後、引き続いて、計測対象回転機械の対象回転体13のバランスを影響係数法により修正する場合には、修正回数を減らすことができる。
【0037】
[実施例]
図6は、上述の実施形態による影響係数取得装置10を、回転機械としての過給機20に適用した場合を示す。
【0038】
過給機20の回転体13は、図6に示すように、エンジンの排ガスにより回転駆動されるタービン翼15と、タービン翼15と一体的に回転することで圧縮空気をエンジンに供給するコンプレッサ翼17と、一端部にタービン翼15が結合され他端部にコンプレッサ翼17が結合される回転軸19と、を有する。また、過給機20は、回転体13を回転可能に支持する静止側部材21を有する。図6の例では、静止側部材21は、回転体13(回転軸19)を回転可能に支持する軸受23a,23bが内部に組み込まれる軸受ハウジングである。また、過給機20は、タービン翼15を内部に収容するタービンハウジング25と、コンプレッサ翼17を内部に収容するコンプレッサハウジング(図6では取り外されている)と、を備える。タービンハウジング25には、タービン翼15を回転駆動する流体を流す流路(スクロール)が形成されている。タービンハウジング25は、支持体3の内部に取り付けられる。タービン翼15を駆動する流体をタービンハウジング25の前記流路へ供給でき、タービン翼15を駆動した当該流体を支持体3の外部へ排出できるように支持体3が構成されている。
【0039】
また、支持体3は、タービンハウジング25を介して、または直接、軸受ハウジング21を支持する。図6では、回転体13の切削対象部13aは、コンプレッサ翼17側の端部にあり、この例ではナットである。図6では、角度センサ7と切削装置11は、共にコンプレッサ翼17側に設けられているが、角度センサ7を使用する時には、切削装置11の切削工具11aが角度センサ7に干渉しない位置へ退避し、切削装置11を使用する時には、角度センサ7が切削装置11に干渉しない位置へ退避する。
【0040】
図6において、影響係数取得装置10の他の構成と動作は、上述の実施形態と同じであってよい。また、図6に示す影響係数取得装置10を用いて、上述の実施形態による影響係数取得方法で過給機20の回転体13の影響係数を取得してよい。
【0041】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
3 支持体、5 加速度センサ、7 角度センサ、
9 演算器、10 影響係数取得装置、11 切削装置、
11a 切削工具、11b 駆動機構、11c 位置制御部、
13 回転体、13a 切削対象部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転バランス変化に対する回転体の振動変化を示す影響係数を取得する影響係数取得方法であって、
回転体が回転している状態で、回転体を支持する支持体の振動を計測することで第1の振動データを取得する第1振動データ取得ステップと、
回転体の一部を切削することで、回転バランス変化を回転体に与える切削ステップと、
回転体が回転している状態で、前記支持体の振動を計測することで第2の振動データを取得する第2振動データ取得ステップと、
第1の振動データと、切削ステップで与えた回転バランス変化と、第2の振動データとに基づいて、回転体の影響係数を算出する係数算出ステップと、を有する、ことを特徴とする影響係数取得方法。
【請求項2】
前記回転体を有する計測対象回転機械とは別の回転機械であり、計測対象回転機械と同機種の基準用回転機械を用意し、
基準用回転機械の回転体の影響係数を基準影響係数として取得し、
基準影響係数からアンバランスデータU1を算出し、
前記切削ステップでは、該アンバランスデータU1に基づいて、前記回転体を切削する、ことを特徴とする請求項1に記載の影響係数取得方法。
【請求項3】
前記係数算出ステップで算出した前記影響係数からアンバランスデータU0を算出するアンバランスデータ算出ステップと、
該アンバランスデータU0に基づいて、計測対象回転機械の回転体を切削するバランス修正ステップと、を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の影響係数取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−281743(P2010−281743A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136560(P2009−136560)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】