説明

影響係数取得方法

【課題】同じ機種である複数の回転機械に対してバランス修正を行う場合に、各回転機械のバランス修正を高精度に行うことを可能にする影響係数を効率的に取得する。
【解決手段】回転機械の回転体を回転させ振動データを生成し(ステップS1)、生成した振動データと基本影響係数とに基づいてアンバランスデータを算出し(ステップS2)、アンバランスデータに基づいて回転体を切削し(ステップS3)、その後、回転機械の回転体を回転させ、振動データを生成し(ステップS4)、生成した振動データと切削のデータと影響係数との関係式を取得する(ステップS7)。同じ機種の複数の回転機械についてそれぞれ取得した複数の関係式に基づいて、当該機種に関する新たな影響係数を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械の影響係数を取得する影響係数取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械は、例えば、流体と力を及ぼし合う回転翼が回転体に設けられた流体機械である。流体機械には、原動機と被動機がある。原動機は、流体が回転翼に作用させる圧力により回転体が回転駆動されることで、流体の持つエネルギーを回転運動エネルギーに変換する。原動機としては、例えば、ガスタービン(軸流タービン、ラジアルタービン)がある。被動機は、回転駆動されている回転翼が流体に圧力を作用させることで、回転運動エネルギーを流体に与える。被動機としては、例えば、圧縮機(遠心圧縮機、航空エンジンなどに設けられる軸流圧縮機、斜流圧縮機、横流圧縮機、ポンプ)がある。また、流体機械には、原動機と被動機の両方の機能を持つ過給機もある。
【0003】
影響係数は、回転機械に設けられる回転体のバランス変化に対する回転体の振動変化を示す。影響係数は、回転体のバランス修正に利用される。そのため、回転体のバランスを修正する前に、回転機械の影響係数を取得しておく。
【0004】
影響係数は、例えば、次のように試し錘を使用して求めることができる。まず、試し錘を使用せずに、回転体を回転させ、回転体を支持する支持体の振動を計測する。次に、試し錘を回転体に取り付けて、回転体を回転させ、回転体を支持する支持体の振動を計測する。その上で、試し錘を使用しない時の振動と、試し錘を取り付けた時の振動と、試し錘の質量および取付位置とから、影響係数を算出する。なお、影響係数の算出に使用する振動は、回転体の回転速度(即ち、1秒間での回転数)と同じ周波数成分の振動であるのがよい。
【0005】
このように取得した影響係数を用いて、次のように回転体のバランスを修正する。影響係数を用いて、回転体のアンバランスデータを算出する。このアンバランスデータが示す修正位置において、アンバランスデータが示す質量だけ回転体を切削する。これにより、回転体のバランスを修正する。このようなバランス修正方法は、影響係数法といい、例えば、下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−102049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
同一の機種である複数の回転機械に対し、上述のバランス修正を行う場合、同じ影響係数を用いて、各回転機械の回転体のアンバランスデータを算出していた。
【0008】
この場合、バランス修正の精度が低くなる可能性がある。同じ機種である複数の回転機械には、加工誤差や組立誤差があるので、これらの回転機械の影響係数には個体差がある。従って、個体差のある影響係数を用いて算出したアンバランスデータにも誤差が含まれる。そのため、バランス修正の精度が低くなる可能性がある。
【0009】
その結果、1つの回転機械について、バランス修正をやり直す回数が増えたり、バランス修正をしきれずに当該回転機械を製品として出荷できなくなる可能性がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、同じ機種である複数の回転機械に対してバランス修正を行う場合に、各回転機械のバランス修正を高精度に行うことを可能にする影響係数を効率的に取得できる方法を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明によると、回転機械に設けられている回転体のバランス変化に対する回転体の振動変化を示す影響係数を取得する影響係数取得方法であって、
(A)回転機械の回転体を回転させ、この状態で、前記回転体を支持する支持体の振動を計測するとともに、回転体の回転角を計測し、計測した振動と回転角に基づいて振動データを生成し、
(B)前記(A)で生成した振動データと基本影響係数とに基づいてアンバランスデータを算出し、
(C)前記アンバランスデータに基づいて、前記回転体を切削し、
(D)その後、回転機械の回転体を回転させ、この状態で、前記回転体を支持する支持体の振動を計測するとともに、回転体の回転角を計測し、計測した振動と回転角に基づいて振動データを生成し、
(E)前記(A)と(D)で生成した振動データと、前記(C)で行った切削のデータと、前記(A)、(C)、(D)を行った前記回転機械に関する影響係数との関係式を取得し、
(F)前記(A)〜(E)を、同じ機種の複数の回転機械について行い、これらの回転機械について前記(E)でそれぞれ取得した複数の関係式に基づいて、当該機種に関する新たな影響係数を求める、ことを特徴とする影響係数取得方法が提供される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によると、前記新たな影響係数を求めた後、当該新たな影響係数を前記基本影響係数として、前記機種と同じ新たな回転機械について前記(A)〜(E)を再び行う。
【0013】
好ましくは、アンバランスデータにより示されるアンバランス量の範囲を予め複数設定しておき、
前記各回転機械毎に、該回転機械について前記(B)で算出したアンバランスデータによるアンバランス量を含む前記範囲を判定し、該範囲に該回転機械が属するとし、
前記(F)では、前記各範囲毎に、該範囲に属する前記各回転機械について前記(E)で生成した複数の前記関係式に基づいて、新たな影響係数を求める。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によると、前記(A)では、
(A−1)回転機械の回転体を第1の回転速度で回転させ、この状態で、前記回転体を支持する支持体の振動を計測するとともに、回転体の回転角を計測し、計測した振動と回転角に基づいて振動データを生成し、
(A−2)次いで、回転機械の回転体を第2の回転速度で回転させ、この状態で、前記回転体を支持する支持体の振動を計測するとともに、回転体の回転角を計測し、計測した振動と回転角に基づいて振動データを生成し、
前記(B)では、前記(A−1)と前記(A−2)で生成した振動データと前記基本影響係数とに基づいて、第1および第2のアンバランスデータを算出し、
前記(C)では、
(C−1)第1のアンバランスデータに基づいて、前記回転体における第1の切削対象部を切削し、
(C−2)第2のアンバランスデータに基づいて、前記回転体における第2の切削対象部を切削し、
前記(D)では、
(D−1)回転機械の回転体を第1の回転速度で回転させ、この状態で、前記回転体を支持する支持体の振動を計測するとともに、回転体の回転角を計測し、計測した振動と回転角に基づいて振動データを生成し、
(D−2)次いで、回転機械の回転体を第2の回転速度で回転させ、この状態で、前記回転体を支持する支持体の振動を計測するとともに、回転体の回転角を計測し、計測した振動と回転角に基づいて振動データを生成し、
前記(E)では、前記(A−1)と(A−2)と(D−1)と(D−2)で生成した振動データと、前記(C−1)と(C−2)で行った切削のデータと、前記(A)、(C)、(D)を行った前記回転機械に関する影響係数との関係式を生成する。
【0015】
本発明の別の実施形態によると、第1および第2の振動センサを、それぞれ、前記支持体における互いに異なる箇所に取り付けておき、
前記(A)では、回転機械の回転体を回転させ、この状態で、前記回転体を支持する支持体の振動を第1および第2の振動センサにより計測するとともに、回転体の回転角を角度センサにより計測し、第1の振動センサが計測した振動と角度センサが計測した回転角に基づいて振動データを生成し、第2の振動センサが計測した振動と角度センサが計測した回転角に基づいて振動データを生成し、
前記(B)では、前記(A)で第1の振動センサが計測した振動に基づいて生成した振動データと、前記(A)で第2の振動センサが計測した振動に基づいて生成した振動データと、前記基本影響係数とに基づいて、第1および第2のアンバランスデータを算出し、
前記(C)では、
(C−1)第1のアンバランスデータに基づいて、前記回転体における第1の切削対象部を切削し、
(C−2)第2のアンバランスデータに基づいて、前記回転体を第2の切削対象部を切削し、
前記(D)では、回転機械の回転体を回転させ、この状態で、前記回転体を支持する支持体の振動を第1および第2の振動センサにより計測するとともに、回転体の回転角を角度センサにより計測し、第1の振動センサが計測した振動と角度センサが計測した回転角に基づいて振動データを生成し、第2の振動センサが計測した振動と角度センサが計測した回転角に基づいて振動データを生成し、
前記(E)では、前記(A)で第1の振動センサが計測した振動に基づいて生成した振動データと、前記(A)で第2の振動センサが計測した振動に基づいて生成した振動データと、前記(D)で第1の振動センサが計測した振動に基づいて生成した振動データと、前記(D)で第2の振動センサが計測した振動に基づいて生成した振動データと、前記(A)、(C)、(D)を行った前記回転機械に関する影響係数との関係式を生成する。
【0016】
好ましくは、前記(A)〜(D)を行った前記回転機械について、前記(D)の後、
(a)前記(D)で生成した振動データと前記基本影響係数とに基づいてアンバランスデータを算出し、
(b)当該アンバランスデータが示すアンバランス量がしきい値より大きい場合には、当該アンバランスデータに基づいて、当該回転機械の前記回転体を切削し,
(c)その後、当該回転機械について、アンバランス量が前記しきい値以下になるまで、振動データの生成、アンバランスデータの算出、該アンバランスデータに基づいた回転体の切削を繰り返し、これにより、回転体の切削を設定回数だけ行ったら、当該回転機械について行った切削のデータと当該回転機械について生成した振動データとに基づいて、当該回転機械に関する差し替え用の影響係数を算出し、
(d)該差し替え用の影響係数と当該回転機械について最後に生成した振動データとに基づいてアンバランスデータを算出し、
(e)当該アンバランスデータに基づいて、当該回転機械の前記回転体を切削する。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明によると、各回転機械のバランス修正では、前記(A)のように振動データを取得し、次いで、前記(B)のようにアンバランスデータを算出し、その後、前記(C)のように回転体を切削し、次いで、前記(D)のように、(切削後のアンバランス量を求めるために)振動データを取得する。その後、前記(E)のように、バランス修正の過程で得た前記振動データと前記切削データと、影響係数との関係式を各回転機械毎に取得し、これらの関係式に基づいて、新たな影響係数を算出する。従って、新たな影響係数を効率的に算出できる。
また、前記新たな影響係数は、同一機種の複数の回転機械にそれぞれ固有の複数の影響係数を反映したものとなっているので、該機種の回転機械に関する比較的高精度な影響係数である。従って、前記新しい影響係数を、次の回転機械のバランス修正に使用することで、比較的高精度にバランス修正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の影響係数取得方法に使用できる影響係数取得装置を示す。
【図2】振動データの説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態または第2実施形態による影響係数取得方法を示すフローチャートである。
【図4】(A)は、アンバランス量の範囲を説明する図であり、(B)は、アンバランス量と影響係数の絶対値との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第3実施形態による影響係数取得方法を示すフローチャートである。
【図6】回転機械が過給機である場合の影響係数取得装置を示す。
【図7】振動センサを2つ使用する場合の影響係数取得装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0020】
図1(A)は、本発明の影響係数取得方法に使用できる影響係数取得装置10を示す。図1(B)は、図1(A)のB−B矢視図である。影響係数取得装置10は、支持体3、振動センサ5、角度センサ7、演算器9、および切削装置11を備える。
【0021】
支持体3は、回転機械の回転体13を支持する。回転体13は、支持体3に支持された状態で、回転体13の中心軸Cを中心に回転可能である。なお、支持体3の一部は、回転機械の静止側部材により構成されてもよい。
【0022】
振動センサ5は、支持体3に取り付けられる。振動センサ5は、回転体13が回転している状態で、支持体3の振動(即ち、加速度、速度、変位、または荷重)を計測し、該振動を示す振動信号を演算器9に出力する。この振動センサ5として、影響係数の取得に使用可能な公知のセンサを使用できる。
【0023】
角度センサ7は、回転体13の回転角を計測し、該回転角を示す回転角信号を演算器9に出力する。この回転角は、回転体13が1回転することでゼロ度〜360度まで変化する。
【0024】
演算器9は、前記振動信号(計測された振動)と前記回転角信号(計測された回転角)に基づいて振動データを生成する。振動データは、振動の振幅と位相θからなる。図2(A)は、振動の振幅と位相θを示す。図2(A)において、横軸は、角度センサ7により計測された回転体13の回転角を示し、縦軸は、振動センサ5により検出された振動のうち1次振動の強度を示す。1次振動は、回転体13の回転速度と同じ周波数成分の振動である。即ち、1次振動振幅は、振動センサ5による振動計測時における回転体13の回転速度(1秒間での回転数)と同じ周波数[Hz]の成分を、振動センサ5が出力した前記振動信号から抽出した振動である。図2(A)において、位相θは、基準回転角(図2(A)の例では、ゼロ度)に対する1次振動のずれを示す。即ち、位相θは、基準回転角に対する、1次振動の周期の始点となる回転角のずれを示す。
振動データを、複素数で表す。図2(B)は、複素数で表した振動データを示す。図2(B)のように、1次振動の振幅の大きさ(絶対値)をRとし、上述の位相θを偏角として、振動データは複素数で表わされる(以下、同様)。演算器9は、振動センサ5からの振動信号と角度センサ7からの回転角信号から、複素数の振動データを生成する(以下、同様)。
【0025】
切削装置11は、回転体13の切削対象部13aを切削する切削工具11a(例えば、エンドミル)と、該切削工具11aを3次元的(例えば、図1(A)の互いに直交するX軸方向、Y軸方向、Z軸方向)に移動させる駆動機構11bと、該駆動機構11bの動作を制御することで切削工具11aの位置を制御する位置制御部11cとを有する。位置制御部11cは、入力されるアンバランスデータに従って切削対象部13aを切削する。なお、切削対象部13aは、例えば、回転体13を構成する回転軸の先端に取り付けられたナットまたは円柱形部材である。
【0026】
[第1実施形態]
図3は、本発明の第1実施形態による影響係数取得方法を示すフローチャートである。なお、この影響係数取得方法は、回転体13のアンバランス修正方法でもあり、このアンバランス修正方法の実施中に新たな影響係数を取得するものである(後述する第2または第3実施形態の場合も同様である)。
【0027】
ステップS1において、m番目の回転機械の回転体13を回転させ、この状態で、振動センサ5が、回転体13を支持する支持体3の振動(即ち、加速度、速度、変位、または荷重)を計測しながら、角度センサ7が回転角を計測する。このように計測した振動と回転角に基づいて、演算器9が、振動データaを生成する。なお、回転機械の番号mに関して、最初の回転機械についてステップS1を行う場合には、m=1であり、以後、ステップS1に戻る度に、mの値が1つずつ増える。
【0028】
ステップS2において、ステップS1で生成した振動データaと基本影響係数αとに基づいてアンバランスデータUを算出する。このアンバランスデータUは、演算器9により次式(1)で算出される。

U=a/α ・・・(1)

【0029】
今回のステップS2を行う時点で後述のステップS9をまだ行っていない場合には、今回のステップS2で使用する基本影響係数αは、現在、図3の処理を行っている回転機械と同じ機種の回転機械について、次式(2)により予め取得した影響係数(以下、初期影響係数という)であってよい。

α=(ai1−ai0)/ΔM ・・・(2)

ここで、ai0は、試し錘を回転体13に取り付けていない状態で、上述のように生成した振動データであり、ai1は、試し錘を回転体13に取り付けた状態で、上述のように生成した振動データであり、ΔMは、次式(3)で表わされる。

ΔM=A(cosθ+jsinθ) ・・・(3)

ここで、jは虚数単位であり、Aは、試し錘の質量と、回転体13において試し錘を取り付けた位置と回転体13の中心軸Cとの距離との積であり、θは、回転体13において試し錘を取り付けた周方向位置を示す位相である。なお、周方向は中心軸C回りの方向であり、半径方向は中心軸Cに対する方向であり、軸方向は中心軸Cと平行な方向である(以下、同様)。
【0030】
今回のステップS2を行う時点で後述のステップS9を既に行っている場合には、今回のステップS2で使用する基本影響係数は、前回のステップS9で更新された最新の影響係数である。
今回のステップS2を行う時点で後述のステップS9でアンバランス量の各範囲毎に新たな影響係数を算出している場合には、次のようにする。まず、今回のステップS2において、初期影響係数αと直前のステップS1で生成した振動データaとに基づいて参考用アンバランスデータU0=a/αを算出する。この参考用アンバランスデータU0が含まれる前記範囲を判定する。判定したこの範囲に関して、新たな影響係数が前回のステップS9で既に算出されている場合には、今回のステップS2では、この新たな影響係数αと直前のステップS1で生成した振動データaとに基づいて、アンバランスデータU=a/αを算出する。そうでない場合には、今回のステップS2で使用する基本影響係数αは、初期影響係数である。
【0031】
ステップS3において、ステップS2で算出したアンバランスデータUが示す切削位置と切削量に基づいて、回転体13の切削対象部13aを切削する。このアンバランスデータUは、演算器9から位置制御部11cに入力される。位置制御部11cは、このアンバランスデータUに基づいて駆動機構11bを制御することで切削工具11aを移動させ、これにより、切削対象部13aがアンバランスデータUに従って切削される。
Aを絶対値とし、偏角をθとし、jを虚数単位として、アンバランスデータUを次式(4)で表す。

U=A(cosθ+jsinθ) ・・・(4)

ここで、Aは、アンバランス量を示し、Aはxとyの積である。xは、回転体13の中心軸CからステップS3での切削位置までの半径方向距離であり、yは、ステップS3で切削する質量である。一方、θは、前記切削位置の周方向位置を示す。従って、ステップS3において、切削工具11aは、xとθが示す半径方向位置と周方向位置に位置決めされた状態で、切削質量がyになるまで中心軸Cの方向に移動する。この時、位置制御部11cは、切削対象部13aの密度と、必要であれば切削対象部13aの形状とに基づいて、切削工具11aを中心軸Cの方向に移動させる距離を算出し、該距離に基づいて駆動機構11bを制御する。
なお、ステップS3において、位置制御部11cは、角度センサ7の回転角に基づいて、中心軸C回り方向に関して切削工具11aを前記周方向位置に位置決めしてよい。また、ステップS3では、例えば、回転体13における切削対象部13aと反対側の軸方向端部を、適宜の手段で把持して回転体13が回転しないようにしておくのがよい。
【0032】
ステップS4において、m番目の回転機械の回転体13を回転させ、この状態で、振動センサ5が、回転体13を支持する支持体3の振動を計測しながら、角度センサ7が回転角を計測する。このように計測した振動と回転角に基づいて、演算器9が、振動データaを生成する。
【0033】
ステップS5において、ステップS4で生成した振動データaと基本影響係数αとに基づいて、ステップS2と同じ方法でアンバランスデータUを算出する。
【0034】
今回のステップS5を行う時点で後述のステップS9をまだ行っていない場合には、今回のステップS5で使用する基本影響係数αは、初期影響係数である。
今回のステップS5を行う時点で後述のステップS9を既に行っている場合には、今回のステップS5で使用する基本影響係数は、前回のステップS9で更新された最新の影響係数である。
今回のステップS5を行う時点で後述のステップS9でアンバランス量の各範囲毎に新たな影響係数を算出している場合には、次のようにする。まず、今回のステップS5において、初期影響係数と直前のステップS4で生成した振動データaとに基づいて参考用アンバランスデータU0=a/αを算出する。この参考用アンバランスデータU0が含まれる前記範囲を判定する。判定したこの範囲に関して、新たな影響係数が前回のステップS9で既に算出されている場合には、今回のステップS5では、この新たな影響係数αと直前のステップS4で生成した振動データaとに基づいて、アンバランスデータU=a/αを算出する。そうでない場合には、今回のステップS5で使用する基本影響係数αは、初期影響係数である。
【0035】
ステップS6において、ステップS5で算出したアンバランスデータUが示すアンバランス量がしきい値以下であるかを判断する。この判断が、YESである場合には、現在、処理対象としている当該回転機械を出荷し、ステップS7へ進む。
【0036】
一方、ステップS6の判断がNOである場合には、ステップS61へ進む。ステップS61では、現在、図3の処理を行っている回転機械について、ステップS3を設定回数(2回以上の回数)だけ既に行っているかを判断する。ステップS61の判断がYESである場合には、当該回転機械のバランス修正が不可能であるとして、ステップS7へ進む。ステップS61の判断がNOである場合には、ステップS3へ戻る。戻ったステップS3では、切削対象部13aの切削は、直前のステップS5において算出したアンバランスデータUに基づいて行うが、他の点は上述と同じである。
【0037】
ステップS7において、直前のステップS1またはS4で生成した振動データam,n、am,n−1と、直前のステップS3で行った切削のデータと、m番目の回転機械に関する影響係数αとの関係式を生成する。
この関係式は、次式(5)で表わされる。

m,n−am,n−1=α×(−ΔMm,n) ・・・(5)

ここで、振動データaの添え字nまたはn−1は、当該振動データを生成する時点で、ステップS3を既に行った回数を示し、ΔMm,nは、ステップS1またはS4で振動データam,n−1を生成した後であって振動データam,nを生成する前に行ったステップS3における切削のデータを示す。すなわち、ΔMm,n=A(cosθ+jsinθ)である。ここで、Aは、切削で除去したアンバランス量を示し、Aはxとyの積で表わされ、この場合、xは、回転体13の中心軸CからステップS3での切削位置までの半径方向距離であり、yは、ステップS3で切削した質量である。一方、θは、前記切削位置の周方向位置を示す。
また、振動データaと切削のデータの添え字mは、現時点のステップS7の対象となっている回転機械の前記番号である。
【0038】
振動データaの添え字nに関して、例えば、今回の回転機械について、ステップS6からステップS3へ一度も戻っていない場合には、n=1であり、n−1=0であり、am,1はステップS4で生成した振動データであり、am,0はステップS1で生成した振動データであり、ΔMm,1は、ステップS3で行った切削のデータである。
また、ステップS6からステップS3へk回だけ戻っている場合には、(k+1)個の前記関係式を生成する。例えば、ステップS6からステップS3へ2回だけ戻っている場合には、am,1−am,0=α×(−ΔMm,1)、am,2−am,1=α×(−ΔMm,2)、am,3−am,2=α×(−ΔMm,3)が生成され、ステップS6からステップS3へ3回だけ戻っている場合には、am,1−am,0=α×(−ΔMm,1)、am,2−am,1=α×(−ΔMm,2)、am,3−am,2=α×(−ΔMm,3)、am,4−am,3=α×(−ΔMm,4)が生成される。
【0039】
ステップS8において、ステップS1〜S7を行った回転機械の数が設定数(例えば2)以上になったかどうかを判断する。すなわち、上述のmが、設定数以上であるかを判断する。この判断がYESである場合には、ステップS9へ進み、そうでない場合には、mの値を1つ増やして、同じ機種の新たな回転機械の回転体13を支持体3に設置し、ステップS1へ戻る。その後、当該新たな回転機械についてステップS1〜S8を再び行う。
【0040】
ステップS9において、前記設定数以上の数の同一機種の回転機械(すなわち、m個の回転機械)について、それぞれ、ステップS1〜S7を行うことで取得した複数の前記関係式に基づいて、新たな影響係数を算出する。前記基本影響係数を当該新たな影響係数に更新する。すなわち、次回、ステップS2とステップS5を行う時に当該新たな影響係数を前記基本影響係数として用いる。なお、ステップS9において使用する前記関係式の数は、ステップS1〜S7を行った回転機械の数(すなわち、mの値)が増えるほど大きくなる、
【0041】
ステップS9において、好ましくは、新たな影響係数を、各関係式における影響係数を未知数として、最小二乗法により複数の前記関係式から算出する。具体的には、次の[数1]を解くことで、新たな影響係数αを算出する。
【0042】
【数1】

【0043】
[数1]において、am,n、am,n−1、α、ΔMm,nは、それぞれ、上式(5)におけるam,n、am,n−1、α、ΔMm,nである。
また、[数1]において、Σm,nは、得られた前記関係式に関するmとnの全ての組み合わせについての和を示す。これについて、現時点におけるmの値をmとすると、mは、1からmまでの整数であり、各mについて、ステップS6からステップS3へk回だけ戻っている場合には、nは、1から(k+1)までの整数である。
[数1]において、αとαIは、それぞれ、影響係数αの実部と虚部である。なお、上式(6)の上側の式を解くことで、新たな影響係数αの実部が求まり、上式(6)の下側の式を解くことで、新たな影響係数αの虚部が求まる。
【0044】
ステップS9で新たな影響係数を算出したら、mの値を1つ増やしてステップS1へ戻り、同じ機種の新たな回転機械について上述の処理を再び行う。ただし、次のステップS2とステップS5では、直前のステップS9で算出した新たな影響係数を前記基本影響係数としてアンバランスデータを算出する。
【0045】
好ましくは、ステップS9は、次のように行う。
まず、アンバランスデータにより示されるアンバランス量の範囲を予め複数設定しておく。例えば、アンバランス量について図4(A)に示す3つの範囲R1、R2、R3を予め設定しておく。範囲R1は、アンバランス量が0からX1までの範囲であり、範囲R2は、アンバランス量がX1からX2までの範囲であり、範囲R3は、アンバランス量がX2以上の範囲である。
その上で、前記各回転機械毎に、該回転機械についてステップS2で算出したアンバランスデータが示すアンバランス量を含む前記範囲を判定し、該範囲に該回転機械が属するとする。ステップS9では、前記各範囲毎に、該範囲に属する前記各回転機械についてそれぞれステップS7で生成した複数の前記関係式に基づいて、上述のように新たな影響係数を求める。
図4(B)のように、アンバランス量が大きくなるにつれて、影響係数の大きさ(絶対値)が変化する傾向があるため、アンバランス量の範囲毎に、新たな影響係数を求め、この影響係数を用いてアンバランスデータを高精度に算出できる。
【0046】
[第2実施形態]
次に、上述の影響係数取得装置10を用いた本発明の第2実施形態による影響係数取得方法を説明する。本発明の第2実施形態による影響係数取得方法も、図3に基づいて説明する。
【0047】
第2実施形態では、以下で説明するように、ステップS3において、回転体13における第1および第2の切削対象部13a,13bを部分的に切削する。第1および第2の切削対象部13a,13bは、図1の例のように回転体13の中心軸Cに対する半径方向の位置が互いに異なるか、または、軸方向の位置が互いに異なる。図1の例では、第1の切削対象部13aは、回転体13の軸方向先端部分の外周部であり、第2の切削対象部13bは、回転体13の軸方向中間部分に設けた円盤状部材の外周部である。
【0048】
ステップS1において、m番目の回転機械の回転体13を第1の回転速度で回転させ、この状態で、振動センサ5が、回転体13を支持する支持体3の振動(即ち、加速度、速度、変位または荷重)を計測しながら、角度センサ7が回転角を計測する。このように計測した振動と回転角に基づいて、演算器9が、振動データa1,m,0を生成する。なお、ここで述べた第1の回転速度と、以下において述べる各第1の回転速度とは同じ速度である。
さらに、ステップS1において、第1の回転速度と異なる第2の回転速度でm番目の回転機械の回転体13を回転させ、この状態で、振動センサ5が、回転体13を支持する支持体3の振動を計測しながら、角度センサ7が回転角を計測する。このように計測した振動と回転角に基づいて、演算器9が、振動データa2,m,0を生成する。なお、ここで述べた第2の回転速度と、以下において述べる各第2の回転速度とは同じ速度である。
ここで、振動データaの添え字1は、第1の回転速度を示し、振動データaの添え字2は、第2の回転速度を示し、振動データaの添え字mは、m番目の回転機械を示す(以下、同様)。また、振動データaの添え字0は、m番目の回転機械について、ステップS3を未だ行っていないことを示す。
【0049】
ステップS2において、ステップS1で生成した振動データa1、m,0、a2、m,0と基本影響係数とに基づいて、演算器9により、第1および第2のアンバランスデータU、Uを算出する。第1および第2のアンバランスデータU、Uは、次の[数2]の行列式で表わされる。
【0050】
【数2】

【0051】
この[数2]において、α1,b、α1,d、α2,b、α2,dは、基本影響係数であり、−1は、逆行列を示す。
【0052】
今回のステップS2を行う時点で後述のステップS9をまだ行っていない場合には、今回のステップS2で使用する基本影響係数は、現在、図3の処理を行っている回転機械と同じ機種の回転機械について、次の[数3]により予め取得した初期影響係数α1,b、α1,d、α2,b、α2,dであってよい。
【0053】
【数3】

【0054】
ここで、a10は、試し錘を回転体13に取り付けずに、上述のように、第1の回転速度で回転体13を回転させた状態で計測した振動と回転角に基づいて生成した振動データであり、a20は、試し錘を回転体13に取り付けずに、上述のように、第2の回転速度で回転体13を回転させた状態で計測した振動と回転角に基づいて生成した振動データであり、a1bは、第1の切削対象部13aに試し錘を取り付け、上述のように、第1の回転速度で回転体13を回転させた状態で計測した振動と回転角に基づいて生成した振動データであり、a2bは、第1の切削対象部13aに試し錘を取り付け、上述のように、第2の回転速度で回転体13を回転させた状態で計測した振動と回転角に基づいて生成した振動データであり、a1dは、第2の切削対象部13bに試し錘を取り付け、上述のように、第1の回転速度で回転体13を回転させた状態で計測した振動と回転角に基づいて生成した振動データであり、振動データa2dは、第2の切削対象部13bに試し錘を取り付け、上述のように、第2の回転速度で回転体13を回転させた状態で計測した振動と回転角に基づいて生成した振動データである。
[数3]のΔMTbは、次式(9)で表わされる。

ΔMTb=ATb(cosθTb+jsinθTb) ・・・(9)

ここで、jは虚数単位であり、ATbは、第1の切削対象部13aに取り付けた試し錘の質量と、第1の切削対象部13aにおいて当該試し錘を取り付けた位置と回転体13の中心軸Cとの距離との積であり、θTbは、回転体13において当該試し錘を取り付けた周方向位置を示す位相である。
同様に、[数3]のΔMTdは、次式(10)で表わされる。

ΔMTd=ATd(cosθTd+jsinθTd) ・・・(10)

ここで、jは虚数単位であり、ATdは、第2の切削対象部13bに取り付けた試し錘の質量と、第2の切削対象部13bにおいて当該試し錘を取り付けた位置と回転体13の中心軸Cとの距離との積であり、θTdは、回転体13において当該試し錘を取り付けた周方向位置を示す位相である。
【0055】
今回のステップS2を行う時点で後述のステップS9を既に行っている場合には、今回のステップS2で使用する基本影響係数は、前回のステップS9で更新された最新の影響係数である。
【0056】
今回のステップS2を行う時点で後述のステップS9でアンバランス量の各範囲毎に新たな影響係数を算出している場合には、次のようにする。
【0057】
まず、ステップS2において、初期影響係数と直前のステップS1で生成した振動データa1,m,0、a2,m,0に基づいて、次の[数4]により、第1および第2の参考用アンバランスデータを算出する。
【0058】
【数4】

【0059】
この[数4]において、α1,b、α1,d、α2,b、α2,dは、初期影響係数であり、a1,m,0、a2,m,0は、直前のステップS1で生成した振動データであり、Uは、第1の参考用アンバランスデータであり、Uは、第2の参考用アンバランスデータである。
【0060】
次に、第1および第2の参考用アンバランスデータU、Uによるアンバランス量が含まれる前記範囲を判定する。
ステップS9において後述する(C1)に従う場合には、第1の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量と、第2の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量との和もしくは平均値が、予め設定した複数の前記範囲のうちいずれの範囲内に属するかを判定し、当該和もしくは平均値が属する範囲に現在対象としている回転機械が属するとする。
ステップS9において後述する(C2)に従う場合には、第1の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量と、第2の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量とのうち大きい方の値が、予め設定した複数の前記範囲のうちいずれの範囲内に属するかを判定し、当該大きい方の値が属する範囲に現在対象としている回転機械が属するとする。
ステップS9において後述する(C3)に従う場合には、第1の参考用アンバランスデータUについては、当該第1の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量が、第1のアンバランスデータUについて予め設定した複数の前記範囲のうちいずれの範囲内に属するかを判定し、第1の参考用アンバランスデータUが示す当該アンバランス量が属する範囲に現在対象としている回転機械が属するとし、第2の参考用アンバランスデータUについては、当該第2の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量が、第2のアンバランスデータUについて予め設定した複数の前記範囲のうちいずれの範囲内に属するかを判定し、第2の参考用アンバランスデータUが示す当該アンバランス量が属する範囲に現在対象としている回転機械が属するとする。
【0061】
ステップS9において後述する(C1)または(C2)に従う場合には、回転機械が属すると判定した前記範囲に関して、新たな影響係数が前回のステップS9で既に算出されている場合には、今回のステップS2では、この新たな影響係数を基本影響係数として、当該基本影響係数と、直前のステップS1で生成した振動データa1,m,0、a2,m,0とを、[数2]に適用することで、第1および第2のアンバランスデータU,Uを算出する。そうでない場合には、今回のステップS2で使用する基本影響係数は、初期影響係数である。
【0062】
一方、ステップS9において後述する(C3)に従う場合には、第1の参考用アンバランスデータUについて、上述のように回転機械が属すると判定した前記範囲に関して、第1のアンバランスデータUに対応する新たな影響係数α1,b、α2,bが前回のステップS9で既に算出されている場合には、今回のステップS2では、当該新たな影響係数α1,b、α2,bを第1のアンバランスデータUに対応する基本影響係数α1,b、α2,bとし、第2の参考用アンバランスデータUについては、上述のように回転機械が属すると判定した前記範囲に関して、第2のアンバランスデータUに対応する新たな影響係数α1,d、α2,dが前回のステップS9で既に算出されている場合には、今回のステップS2では、当該新たな影響係数α1,d、α2,dを第2のアンバランスデータUに対応する基本影響係数α1,d、α2,dとし、当該基本影響係数α1,b、α2,b、α1,d、α2,dと、直前のステップS1で生成した振動データa1,m,n、a2,m,nとを、[数2]に適用することで、第1および第2のアンバランスデータU,Uを算出する。
なお、第1の参考用アンバランスデータUについて回転機械が属すると判定した前記範囲に関して、第1のアンバランスデータUに対応する基本影響係数α1,b、α2,bがステップS9で未だ算出されていない場合には、今回のステップS2で使用する基本影響係数α1,b、α2,bは、初期影響係数α1,b、α2,bであり、第2の参考用アンバランスデータUについて回転機械が属すると判定した前記範囲に関して、第2のアンバランスデータUに対応する基本影響係数α1,d、α2,dがステップS9で未だ算出されていない場合には、今回のステップS2で使用する基本影響係数α1,d、α2,dは、初期影響係数α1,d、α2,dである。
【0063】
ステップS3において、ステップS2で算出した第1のアンバランスデータUが示す切削位置と切削量に基づいて、回転体13の第1の切削対象部13aを切削する。この切削は、第1実施形態のステップS3と同様に行われる。なお、ここでの切削位置は、回転体13の軸方向先端部分の外周部13a上にあり、図1(B)において一点鎖線L1上にある。図1(B)において、一点鎖線L1上に重複している破線で描いた円は、一点鎖線L1上に位置決めされた状態の切削工具11aを示す。
さらに、ステップS3において、ステップS2で算出した第2のアンバランスデータUが示す切削位置と切削量に基づいて、回転体13の第2の切削対象部13bを切削する。この切削は、第1実施形態のステップS3と同様に行われる。なお、ここでの切削位置は、回転体13に設けた前記円盤状部材の外周部13b上にあり、図1(B)において一点鎖線L2上にある。図1(B)において、一点鎖線L2上に重複している破線で描いた円は、一点鎖線L2上に位置決めされた状態の切削工具11aを示す。
【0064】
ステップS4において、回転機械の回転体13を前記第1の回転速度で回転させ、この状態で、振動センサ5が、回転体13を支持する支持体3の振動を計測しながら、角度センサ7が回転角を計測する。このように第1の回転速度において計測した振動と回転角に基づいて、演算器9が、振動データa1,m,nを生成する。
さらに、ステップS4において、前記第2の回転速度で回転機械の回転体13を回転させ、この状態で、振動センサ5が、回転体13を支持する支持体3の振動を計測しながら、角度センサ7が回転角を計測する。このように第2の回転速度において計測した振動と回転角に基づいて、演算器9が、振動データa2,m,nを生成する。
ここで、振動データaの添え字nは、m番目の回転機械について、今回のステップS4を行う時点で、図3のフローチャートにおいてステップS3を既に行った回数を示し(以下、同様)、振動データaの添え字1、2、mは、上述と同じである。
【0065】
ステップS5において、直前のステップS4で生成した振動データa1,m,n、a2,m,nと基本影響係数とに基づいて、第1および第2のアンバランスデータU、Uを算出する。第1および第2のアンバランスデータU、Uは、次の[数5]の行列式で表わされる。
【0066】
【数5】

【0067】
今回のステップS5を行う時点で後述のステップS9をまだ行っていない場合には、今回のステップS5で使用する基本影響係数は、初期影響係数である。
今回のステップS5を行う時点で後述のステップS9を既に行っている場合には、今回のステップS5で使用する基本影響係数は、前回のステップS9で更新された最新の影響係数である。
【0068】
また、今回のステップS5を行う時点で後述のステップS9でアンバランス量の各範囲毎に新たな影響係数を算出している場合には、次のようにする。
【0069】
まず、ステップS5において、初期影響係数と直前のステップS4で生成した振動データa1,m,n、a2,m,nに基づいて、次の[数6]により、第1および第2の参考用アンバランスデータを算出する。
【0070】
【数6】

【0071】
この[数6]において、α1,b、α1,d、α2,b、α2,dは、初期影響係数であり、a1,m,n、a2,m,nは、直前のステップS4で生成した振動データであり、Uは、第1の参考用アンバランスデータであり、Uは、第2の参考用アンバランスデータである。
【0072】
次に、第1および第2の参考用アンバランスデータU、Uによるアンバランス量が含まれる前記範囲を判定する。
ステップS9において後述する(C1)に従う場合には、第1の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量と、第2の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量との和もしくは平均値が、予め設定した複数の前記範囲のうちいずれの範囲内に属するかを判定し、当該和もしくは平均値が属する範囲に現在対象としている回転機械が属するとする。
ステップS9において後述する(C2)に従う場合には、第1の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量と、第2の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量とのうち大きい方の値が、予め設定した複数の前記範囲のうちいずれの範囲内に属するかを判定し、当該大きい方の値が属する範囲に現在対象としている回転機械が属するとする。
ステップS9において後述する(C3)に従う場合には、第1の参考用アンバランスデータUについては、当該第1の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量が、第1のアンバランスデータUについて予め設定した複数の前記範囲のうちいずれの範囲内に属するかを判定し、第1の参考用アンバランスデータUが示す当該アンバランス量が属する範囲に現在対象としている回転機械が属するとし、第2の参考用アンバランスデータUについては、当該第2の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量が、第2のアンバランスデータUについて予め設定した複数の前記範囲のうちいずれの範囲内に属するかを判定し、第2の参考用アンバランスデータUが示す当該アンバランス量が属する範囲に現在対象としている回転機械が属するとする。
【0073】
ステップS9において後述する(C1)または(C2)に従う場合には、回転機械が属すると判定した前記範囲に関して、新たな影響係数が前回のステップS9で既に算出されている場合には、今回のステップS5では、この新たな影響係数を基本影響係数として、当該基本影響係数と、直前のステップS4で生成した振動データa1,m,n、a2,m,nとを、[数5]に適用することで、第1および第2のアンバランスデータU,Uを算出する。そうでない場合には、今回のステップS5で使用する基本影響係数は、初期影響係数である。
【0074】
一方、ステップS9において後述する(C3)に従う場合には、第1の参考用アンバランスデータUについて、上述のように回転機械が属すると判定した前記範囲に関して、第1のアンバランスデータUに対応する新たな影響係数α1,b、α2,bが前回のステップS9で既に算出されている場合には、今回のステップS5では、当該新たな影響係数α1,b、α2,bを第1のアンバランスデータUに対応する基本影響係数α1,b、α2,bとし、第2の参考用アンバランスデータUについては、上述のように回転機械が属すると判定した前記範囲に関して、第2のアンバランスデータUに対応する新たな影響係数α1,d、α2,dが前回のステップS9で既に算出されている場合には、今回のステップS5では、当該新たな影響係数α1,d、α2,dを第2のアンバランスデータUに対応する基本影響係数α1,d、α2,dとし、当該基本影響係数α1,b、α2,b、α1,d、α2,dと、直前のステップS4で生成した振動データa1,m,n、a2,m,nとを、[数5]に適用することで、第1および第2のアンバランスデータU,Uを算出する。
なお、第1の参考用アンバランスデータUについて回転機械が属すると判定した前記範囲に関して、第1のアンバランスデータUに対応する基本影響係数α1,b、α2,bがステップS9で未だ算出されていない場合には、今回のステップS5で使用する基本影響係数α1,b、α2,bは、初期影響係数α1,b、α2,bであり、第2の参考用アンバランスデータUについて回転機械が属すると判定した前記範囲に関して、第2のアンバランスデータUに対応する基本影響係数α1,d、α2,dがステップS9で未だ算出されていない場合には、今回のステップS5で使用する基本影響係数α1,d、α2,dは、初期影響係数α1,d、α2,dである。
【0075】
ステップS6において、ステップS5で算出した第1のアンバランスデータUと、ステップS5で算出した第2のアンバランスデータUとによるアンバランス量が、しきい値以下であるかを判断する。
例えば、ステップS5で算出した第1のアンバランスデータUが示すアンバランス量と、ステップS5で算出した第2のアンバランスデータUが示すアンバランス量との和もしくは平均値がしきい値以下であるかを判断する。
または、ステップS5で算出した第1のアンバランスデータUが示すアンバランス量と、ステップS5で算出した第2のアンバランスデータUが示すアンバランス量とのうち大きい方の値がしきい値以下であるかを判断する。
または、ステップS5で算出した第1のアンバランスデータUが示すアンバランス量が、第1のアンバランスデータ用のしきい値以下であり、かつ、ステップS5で算出した第2のアンバランスデータUが示すアンバランス量が、第2のアンバランスデータ用のしきい値以下であるかを判断する。この場合、好ましくは、第1のアンバランスデータ用のしきい値は、第2のアンバランスデータ用のしきい値と異なるのがよい。
【0076】
ステップS6における前記判断が、YESである場合には、現在、処理対象としている当該回転機械を出荷し、ステップS7へ進む。
一方、ステップS6の判断がNOである場合には、ステップS61へ進む。ステップS61では、現在、図3の処理を行っている回転機械について、ステップS3を設定回数(2回以上の回数)だけ既に行っているかを判断する。ステップS61の判断がYESである場合には、当該回転機械のバランス修正が不可能であるとして、ステップS7へ進む。ステップS61の判断がNOである場合には、ステップS3へ戻る。戻ったステップS3では、第1および第2の切削対象部13a,13bの切削は、それぞれ、直前のステップS5において算出した第1および第2のアンバランスデータU、Uに基づいて行うが、他の点は上述と同じである。
【0077】
ステップS7において、ステップS1で生成した振動データa1,m,0、a2,m,0と、ステップS4で生成した振動データa1,m,n、a2,m,nと、ステップS3で行った切削のデータと、m番目の回転機械に関する影響係数との関係式を生成する。
この関係式は、次の[数7]の行列式で表わされる。
【0078】
【数7】

【0079】
この[数7]における各記号の定義は、以下の通りである。
α1,b、α1,d、α2,b、α2,dは、m番目の回転機械に関する影響係数である。
また、ΔMb,m,nは、ステップS3で行った第1の切削対象部13aの切削のデータである。すなわち、ΔMb,m,n=A(cosθ+jsinθ)である。ここで、Aは、アンバランス量を示し、Aはxとyの積である。xは、回転体13の中心軸CからステップS3での切削位置までの半径方向距離であり、yは、ステップS3で切削した質量である。一方、θは、前記切削位置の周方向位置を示す。
同様に、ΔMd,m,nは、ステップS3で行った第2の切削対象部13bの切削のデータである。すなわち、ΔMd,m,n=A(cosθ+jsinθ)である。ここで、Aは、アンバランス量を示し、Aはxとyの積である。xは、回転体13の中心軸CからステップS3での切削位置までの半径方向距離であり、yは、ステップS3で切削した質量である。一方、θは、前記切削位置の周方向位置を示す。
なお、[数7]におけるΔMの添え字bは、当該ΔMが第1の切削対象部13aの切削のデータであることを示し、ΔMの添え字dは、当該ΔMが第2の切削対象部13bの切削のデータであることを示し、ΔMの添え字mは、当該ΔMがm番目の回転機械に関するデータであることを示し、ΔMの添え字nは、当該ΔMがn回目のステップS3での切削のデータであることを示す(後述のe1,m,n、とe2,m,nを表す式においても同様)。
振動データaの添え字nは、m番目の回転機械について、当該振動データを生成した時点で既に行っているステップS3の回数を示す。
今回のm番目の回転機械について、ステップS6からステップS3へ一度も戻っていない場合には、振動データaの添え字n、n−1は、それぞれ1、0であり、1組の関係式(すなわち、n=1とした1組の[数7])が得られる。
また、ステップS6からステップS3へk回だけ戻っている場合には、(k+1)組の前記関係式(すなわち、n=1とした[数7]と、n=2とした[数7]、・・・n=kとした[数7]のk組の関係式、n=k+1とした[数7]の(k+1)組の関係式)を生成する。
【0080】
ステップS8において、ステップS1〜S7を行った回転機械の数が設定数(例えば3以上の設定数)以上になったかどうかを判断する。すなわち、上述のmが、設定数以上であるかを判断する。この判断がYESである場合には、ステップS9へ進み、そうでない場合には、mの値を1つ増やしてステップS1へ戻り、同じ機種の新たな回転機械についてステップS1〜S8を再び行う。なお、当該設定数以上の番号mの各回転機械については、ステップS8からステップS9へ進む。
【0081】
ステップS9において、前記設定数以上の数mの同一機種の回転機械について、それぞれ、ステップS1〜S7を行うことで取得した複数の前記関係式に基づいて、新たな影響係数を算出する。前記基本影響係数を当該新たな影響係数に更新する。すなわち、次回、ステップS2とステップS5を行う時に当該新たな影響係数を前記基本影響係数として用いる。なお、ステップS9において使用する前記関係式の数は、ステップS1〜S7を行った回転機械の数(すなわち、mの値)が増えるほど大きくなる、
【0082】
ステップS9において、好ましくは、新たな影響係数を、各関係式における影響係数を未知数として、最小二乗法により複数の関係式から算出する。具体的には、次の[数8]を解くことで、新たな影響係数α1,b、α1,d、α2,b、α2,dを算出する。
【0083】
【数8】

【0084】
[数8]において、e1,m,n、とe2,m,nは、次式(16)、(17)で表現されるものである。

1,m,n=a1,m,n−a1,m,n−1+α1,b×ΔMb,m,n+α1,d×ΔMd,m,n
・・・(16)

2,m,n=a2,m,n−a2,m,n−1+α2,b×ΔMb,m,n+α2,d×ΔMd,m,n
・・・(17)

【0085】
また、[数8]において、α1,b,Rとα1,b,Iは、それぞれ、α1,bの実部と虚部であり、α1,d,Rとα1,d,Iは、それぞれ、α1,dの実部と虚部であり、α2,b,Rとα2,b,Iは、それぞれ、α2,bの実部と虚部であり、α2,d,Rとα2,d,Iは、それぞれ、α2,dの実部と虚部である。すなわち、jを虚数単位として次式(18)〜(21)が成り立つ。

α1,b=α1,b,R+jα1,b,I ・・・(18)

α1,d=α1,d,R+jα1,d,I ・・・(19)

α2,b=α2,b,R+jα2,b,I ・・・(20)

α2,d=α2,d,R+jα2,d,I ・・・(21)

【0086】
なお、[数8]において、Σm,nは、mとnの全ての組み合わせについての和を示す。これについて、現時点におけるmの値をmとすると、mは、1からmまでの整数であり、各mについて、ステップS6からステップS3へk回だけ戻っている場合には、nは、1から(k+1)までの整数である。
【0087】
ステップS9で新たな影響係数を算出したら、mの値を1つ増やしてステップS1へ戻り、同じ機種の新たな回転機械について上述の処理を再び行う。ただし、次のステップS2とステップS5では、直前のステップS9で算出した新たな影響係数を前記基本影響係数として第1および第2のアンバランスデータU、Uを算出する。
【0088】
好ましくは、ステップS9は、次のように行う。
まず、アンバランスデータにより示されるアンバランス量の範囲を予め複数設定しておく。例えば、アンバランス量について図4(A)に示す3つの範囲R1、R2、R3を予め設定しておく。範囲R1は、アンバランス量が0からX1までの範囲であり、範囲R2は、アンバランス量がX1からX2までの範囲であり、範囲R3は、アンバランス量がX2以上の範囲である。
その上で、前記各回転機械毎に、該回転機械についてステップS2で算出した第1および第2のアンバランスデータU、Uによるアンバランス量の前記範囲を判定し、該範囲に該回転機械が属するとする。この判定方法には、次の(C1)と(C2)と(C3)の方法がある。
【0089】
(C1)ステップS2で算出した第1のアンバランスデータUが示すアンバランス量と、ステップS2で算出した第2のアンバランスデータUが示すアンバランス量との和もしくは平均値が、予め設定した前記複数の範囲のうちいずれの範囲内に属するかを判定し、当該和もしくは平均値が属する範囲に当該回転機械が属するとする。
(C2)ステップS2で算出した第1のアンバランスデータUが示すアンバランス量と、ステップS2で算出した第2のアンバランスデータUが示すアンバランス量とのうち大きい方の値が、予め設定した前記複数の範囲のうちいずれの範囲内に属するかを判定し、当該大きい方の値が属する範囲に当該回転機械が属するとする。
(C3)第1のアンバランスデータUについて、アンバランス量の範囲を予め複数設定し、ステップS2で算出した第1のアンバランスデータUが示すアンバランス量が、当該複数の範囲のうちいずれの範囲内に属するかを判定し、当該アンバランス量が属する範囲に当該回転機械が属するとし、第2のアンバランスデータUについて、アンバランス量の範囲を予め複数設定し、ステップS2で算出した第2のアンバランスデータUが示すアンバランス量が、当該複数の範囲のうちいずれの範囲内に属するかを判定し、当該アンバランス量が属する範囲に当該回転機械が属するとする。
【0090】
上述の(C1)または(C2)の方法を採用する場合には、ステップS9では、前記各範囲毎に、該範囲に属する前記各回転機械についてそれぞれステップS7で生成した複数の前記関係式に基づいて、上述と同様に新たな影響係数を求める。
上述の(C3)の方法を採用する場合には、ステップS9では、第1のアンバランスデータUについての前記各範囲毎に、該範囲に属する前記各回転機械についてそれぞれステップS7で生成した複数の前記関係式に基づいて、上述と同様に、第1のアンバランスデータUに対応する新たな影響係数α1,b、α2,bを求め、第2のアンバランスデータUについての前記各範囲毎に、該範囲に属する前記各回転機械についてそれぞれステップS7で生成した複数の前記関係式に基づいて、上述と同様に、第2のアンバランスデータUに対応する新たな影響係数α1,d、α2,dを求める。
【0091】
図4(B)のように、アンバランス量が大きくなるにつれて、影響係数の大きさ(絶対値)が変化する傾向があるため、上述のように、アンバランス量の範囲毎に、複数の回転機械の特性を反映した新たな影響係数を求め、この影響係数を用いてアンバランスデータを高精度に算出できる。また、上述の(C3)の場合には、さらに、第1および第2の切削対象部13a,13bのバランス変化をそれぞれ考慮した新たな影響係数を求めることができる。
【0092】
[第3実施形態]
図5は、本発明の第3実施形態による影響係数取得方法を示すフローチャートである。この第3実施形態による影響係数取得方法では、以下の点を上述の第2実施形態から変更し、その他の点は、上述の第2実施形態と同じである。
第3実施形態によると、図5のように、ステップS3を行った後、ステップS4へ進む前に、ステップS11を行う。
ステップS11において、同じ回転機械(すなわち、現在、図5の処理を行っている回転機械)について、ステップS3を設定回数(2回以上の回数)だけ既に行っている場合には、ステップS12へ進み、そうでない場合には、ステップS4へ進む。ステップS4へ進んだ場合、その後の処理について、上述のステップS61を省略する以外は上述と同じである。すなわち、ステップS6の判断がNOである場合には、ステップS6の次に、ステップS61を行うことなくステップS3へ戻る。
【0093】
ステップS12において、回転機械の回転体13を第1の回転速度で回転させ、この状態で、振動センサ5が、回転体13を支持する支持体3の振動を計測しながら、角度センサ7が回転角を計測する。このように計測した振動と回転角に基づいて、演算器9が、振動データa1,m,nを生成する。
さらに、ステップS12において、第1の回転速度と異なる第2の回転速度で回転機械の回転体13を回転させ、この状態で、振動センサ5が、回転体13を支持する支持体3の振動を計測しながら、角度センサ7が回転角を計測する。このように計測した振動と回転角に基づいて、演算器9が、振動データa2,m,nを生成する。
【0094】
ステップS13において、ステップS12で生成した振動データa1,m,n、a2,m,nと基本影響係数とに基づいて、第1および第2のアンバランスデータU、Uを算出する。これらの第1および第2のアンバランスデータU、Uは、次の[数9]の行列式で表わされる。
【0095】
【数9】

【0096】
今回のステップS13を行う時点で上述のステップS9をまだ行っていない場合には、今回のステップS13で使用する基本影響係数は、初期影響係数である。
【0097】
今回のステップS13を行う時点で上述のステップS9を既に行っている場合には、今回のステップS13で使用する基本影響係数は、前回のステップS9で更新された最新の影響係数である。
【0098】
また、今回のステップS13を行う時点で上述のステップS9でアンバランス量の各範囲毎に新たな影響係数を算出している場合には、次のようにする。
【0099】
まず、ステップS13において、初期影響係数と直前のステップS12で生成した振動データa1,m,n、a2,m,nに基づいて、次の[数10]により、第1および第2の参考用アンバランスデータを算出する。
【0100】
【数10】

【0101】
この[数10]において、α1,b、α1,d、α2,b、α2,dは、初期影響係数であり、a1,m,n、a2,m,nは、直前のステップS12で生成した振動データであり、Uは、第1の参考用アンバランスデータであり、Uは、第2の参考用アンバランスデータである。
【0102】
次に、第1および第2の参考用アンバランスデータU、Uによるアンバランス量が含まれる前記範囲を判定する。
ステップS9において上述した(C1)に従う場合には、第1の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量と、第2の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量との和もしくは平均値が、予め設定した複数の前記範囲のうちいずれの範囲内に属するかを判定し、当該和もしくは平均値が属する範囲に現在対象としている回転機械が属するとする。
ステップS9において上述した(C2)に従う場合には、第1の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量と、第2の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量とのうち大きい方の値が、予め設定した複数の前記範囲のうちいずれの範囲内に属するかを判定し、当該大きい方の値が属する範囲に現在対象としている回転機械が属するとする。
ステップS9において上述した(C3)に従う場合には、第1の参考用アンバランスデータUについては、当該第1の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量が、第1のアンバランスデータUについて予め設定した複数の前記範囲のうちいずれの範囲内に属するかを判定し、第1の参考用アンバランスデータUが示す当該アンバランス量が属する範囲に現在対象としている回転機械が属するとし、第2の参考用アンバランスデータUについては、当該第2の参考用アンバランスデータUが示すアンバランス量が、第2のアンバランスデータUについて予め設定した複数の前記範囲のうちいずれの範囲内に属するかを判定し、第2の参考用アンバランスデータUが示す当該アンバランス量が属する範囲に現在対象としている回転機械が属するとする。
【0103】
ステップS9において後述する(C1)または(C2)に従う場合には、回転機械が属すると判定した前記範囲に関して、新たな影響係数が前回のステップS9で既に算出されている場合には、今回のステップS13では、この新たな影響係数を基本影響係数として、当該基本影響係数と、直前のステップS12で生成した振動データa1,m,n、a2,m,nとを[数9]に適用することで、第1および第2のアンバランスデータU,Uを算出する。そうでない場合には、今回のステップS13で使用する基本影響係数は、初期影響係数である。
【0104】
一方、ステップS9において上述した(C3)に従う場合には、第1の参考用アンバランスデータUについて、上述のように回転機械が属すると判定した前記範囲に関して、第1のアンバランスデータUに対応する新たな影響係数α1,b、α2,bが前回のステップS9で既に算出されている場合には、今回のステップS13では、当該新たな影響係数α1,b、α2,bを第1のアンバランスデータUに対応する基本影響係数α1,b、α2,bとし、第2の参考用アンバランスデータUについては、上述のように回転機械が属すると判定した前記範囲に関して、第2のアンバランスデータUに対応する新たな影響係数α1,d、α2,dが前回のステップS9で既に算出されている場合には、今回のステップS13では、当該新たな影響係数α1,d、α2,dを第2のアンバランスデータUに対応する基本影響係数α1,d、α2,dとし、当該基本影響係数α1,b、α2,b、α1,d、α2,dと、直前のステップS12で生成した振動データa1,m,n、a2,m,nとを、[数9]に適用することで、第1および第2のアンバランスデータU,Uを算出する。
なお、第1の参考用アンバランスデータUについて回転機械が属すると判定した前記範囲に関して、第1のアンバランスデータUに対応する基本影響係数α1,b、α2,bがステップS9で未だ算出されていない場合には、今回のステップS13で使用する基本影響係数α1,b、α2,bは、初期影響係数α1,b、α2,bであり、第2の参考用アンバランスデータUについて回転機械が属すると判定した前記範囲に関して、第2のアンバランスデータUに対応する基本影響係数α1,d、α2,dがステップS9で未だ算出されていない場合には、今回のステップS13で使用する基本影響係数α1,d、α2,dは、初期影響係数α1,d、α2,dである。
【0105】
ステップS14において、ステップS13で算出した第1のアンバランスデータUと、ステップS13で算出した第2のアンバランスデータUとによるアンバランス量がしきい値以下であるかを判断する。
例えば、ステップS13で算出した第1のアンバランスデータUが示すアンバランス量と、ステップS13で算出した第2のアンバランスデータUが示すアンバランス量との和もしくは平均値がしきい値以下であるかを判断する。
または、ステップS13で算出した第1のアンバランスデータUが示すアンバランス量と、ステップS13で算出した第2のアンバランスデータUが示すアンバランス量とのうち大きい方の値がしきい値以下であるかを判断する。
または、ステップS13で算出した第1のアンバランスデータUが示すアンバランス量が、第1のアンバランスデータ用のしきい値以下であり、かつ、ステップS13で算出した第2のアンバランスデータUが示すアンバランス量が、第2のアンバランスデータ用のしきい値以下であるかを判断する。この場合、好ましくは、第1のアンバランスデータ用のしきい値は、第2のアンバランスデータ用のしきい値と異なるのがよい。
ステップS14における前記判断が、YESである場合には、当該回転機械を出荷し、次の回転機械についてステップS1から本実施形態の方法を実施する。すなわち、回転機械の番号を示す上述のmの値を1つ増やしてステップS1を行う。
一方、ステップS14の判断がNOである場合には、ステップS15へ進む。
【0106】
ステップS15において、現在対象としている回転機械について、ステップS14を許容回数より多く行っているかを判断する。すなわち、ステップS14でNOと判定した回数が許容回数を超えているかを判断する。ステップS15の判断が、YESの場合には、当該回転機械のバランス修正が不可能であるとして、当該回転機械について図5の処理を終了し、次の回転機械についてステップS1から本実施形態の方法を実施する。すなわち、回転機械の番号を示す上述のmの値を1つ増やしてステップS1を行う。
一方、ステップS15の判断がNOである場合には、ステップS16へ進む。
【0107】
ステップS16において、演算器9が、m番目の回転機械の回転体13について、差し替え用の影響係数α1,b、α1,d、α2,b、α2,dを次式(24)〜(27)により算出する。すなわち、次の式(24)〜(27)を連立させて解くことで差し替え用の影響係数を算出する。

1,m,p−a1,m,q=α1,b×(−ΔMbpq)+α1,d×(−ΔMdpq) ・・・(24)

1,m,r−a1,m,s=α1,b×(−ΔMbrs)+α1,d×(−ΔMdrs) ・・・(25)

2,m,p−a2,m,q=α2,b×(−ΔMbpq)+α2,d×(−ΔMdpq) ・・・(26)

2,m,r−a2,m,s=α2,b×(−ΔMbrs)+α2,d×(−ΔMdrs) ・・・(27)

【0108】
上式(24)〜(27)において、振動データaの添え字p、q、rまたはsは、上述の添え字nに相当し、当該振動データが、p、q、rまたはs回目のステップS3を行った直後に(ステップS12またはS4で)生成した振動データであることを示す。すなわち、振動データaの添え字p、q、rまたはsは、当該振動データを生成した時点で既にステップS3を行っている回数である。振動データaの添え字mは、上述と同じである。
また、上式(24)〜(27)において、p、q、r、sは、ステップS11で使用した前記設定回数以下の値である。pはqより大きく、rはsよりも大きい。また、p≠rとq≠sとの少なくとも一方が成り立つ。なお、振動データaの添え字qまたはsが0の場合は、当該振動データは、ステップS1で生成した振動データである。好ましくは、前記設定回数は2であり、pは2であり、rは1であり、qとsは0である。
【0109】
上式(24)〜(27)におけるΔMbpq、ΔMdpqΔ、Mbrs、ΔMdrsは、上述のステップS3で行った切削のデータであり、例えば、位置制御部11cにより生成されて演算器9へ入力される。ΔMbpq、ΔMdpqΔ、Mbrs、ΔMdrsは、具体的には次の通りである。
【0110】
また、上式(24)、(26)において、ΔMbpqは、次の式(28)で表わされる。

ΔMbpq=ΣAbi(cosθbi+jsinθbi) ・・・(28)

ここで、jは虚数単位であり、bは、第1の切削対象部13aにおける切削データであることを示し、Σは、iに関する総和を示し、iは、qより大きくp以下である各整数である。また、式(28)において、Abiは、i回目のステップS3で第1の切削対象部13aを切削した質量と、第1の切削対象部13aにおいて当該切削を行った位置と回転体13の中心軸Cとの距離との積であり、θbiは、i回目のステップS3で第1の切削対象部13aを切削した周方向位置を示す位相である。ただし、i=0は、ステップS3が未実施であることを示すので、i=0の場合、Abi=0である。
【0111】
また、上式(24)、(26)において、ΔMdpqは、次の式(29)で表わされる。

ΔMdpq=ΣAdi(cosθdi+jsinθdi) ・・・(29)

ここで、jは虚数単位であり、dは、第2の切削対象部13bにおける切削データであることを示し、Σは、iに関する総和を示し、iは、qより大きくp以下である各整数である。また、式(29)において、Adiは、i回目のステップS3で第2の切削対象部13bを切削した質量と、第2の切削対象部13bにおいて当該切削を行った位置と回転体13の中心軸Cとの距離との積であり、θdiは、i回目のステップS3で第2の切削対象部13bを切削した周方向位置を示す位相である。ただし、i=0は、ステップS3が未実施であることを示すので、i=0の場合、Adi=0である。
【0112】
また、上式(25)、(27)において、ΔMbrsは、次の式(30)で表わされる。

ΔMbrs=ΣAbi(cosθbi+jsinθbi) ・・・(30)

ここで、jは虚数単位であり、bは、第1の切削対象部13aにおける切削データであることを示し、Σは、iに関する総和を示し、iは、sより大きくr以下である各整数である。また、式(30)において、Abiは、i回目のステップS3で第1の切削対象部13aを切削した質量と、第1の切削対象部13aにおいて当該切削を行った位置と回転体13の中心軸Cとの距離との積であり、θbiは、i回目のステップS3で第1の切削対象部13aを切削した周方向位置を示す位相である。ただし、i=0は、ステップS3が未実施であることを示すので、i=0の場合、Abi=0である。
【0113】
また、上式(25)、(27)において、ΔMdrsは、次の式(31)で表わされる。

ΔMdrs=ΣAdi(cosθdi+jsinθdi) ・・・(31)

ここで、jは虚数単位であり、dは、第1の切削対象部13aにおける切削データであることを示し、Σは、iに関する総和を示し、iは、sより大きくr以下である各整数である。また、式(31)において、Adiは、i回目のステップS3で第2の切削対象部13bを切削した質量と、第2の切削対象部13bにおいて当該切削を行った位置と回転体13の中心軸Cとの距離との積であり、θdiは、i回目のステップS3で第2の切削対象部13bを切削した周方向位置を示す位相である。ただし、i=0は、ステップS3が未実施であることを示すので、i=0の場合、Adi=0である。
【0114】
ステップS17において、ステップS12で生成した振動データa1,m,n,a2,m,nと、ステップS16で算出した差し替え用の影響係数α1,b、α1,d、α2,b、α2,dに基づいて、次の[数11]により、第1および第2のアンバランスデータU、Uを算出する。
【0115】
【数11】

【0116】
ステップS17を行ったらステップS3へ戻り、戻ったステップS3において、ステップS17で算出した第1のアンバランスデータUが示す切削位置と切削量に基づいて、回転体13の第1の切削対象部13aを切削するとともに、ステップS17で算出した第2のアンバランスデータUが示す切削位置と切削量に基づいて、回転体13の第2の切削対象部13bを切削する。ここでの各切削対象部13a、13bの切削は、上述した第1実施形態のステップS3と同様に行われる。
戻ったステップS3での切削後の手順は、上述と同じである。
【0117】
[実施例]
図6(A)は、上述の実施形態による影響係数取得装置10を、回転機械としての過給機20に適用した場合を示す。
【0118】
過給機20の回転体13は、図6(A)に示すように、エンジンの排ガスにより回転駆動されるタービン翼15と、タービン翼15と一体的に回転することで圧縮空気をエンジンに供給するコンプレッサ翼17と、一端部にタービン翼15が結合され他端部にコンプレッサ翼17が結合される回転軸19と、を有する。また、過給機20は、回転体13を回転可能に支持する静止側部材21を有する。図6(A)の例では、静止側部材21は、回転体13(回転軸19)を回転可能に支持する軸受23a,23bが内部に組み込まれる軸受ハウジングである。また、過給機20は、タービン翼15を内部に収容するタービンハウジング25と、コンプレッサ翼17を内部に収容するコンプレッサハウジング(図6(A)では取り外されている)と、を備える。タービンハウジング25には、タービン翼15を回転駆動する流体を流す流路(スクロール)が形成されている。タービンハウジング25は、支持体3の内部に取り付けられる。タービン翼15を駆動する流体をタービンハウジング25の前記流路へ供給でき、タービン翼15を駆動した当該流体を支持体3の外部へ排出できるように支持体3が構成されている。
【0119】
また、支持体3は、タービンハウジング25を介して、または直接、軸受ハウジング21を支持する。例えば、軸受ハウジング21を適宜の手段で支持体3に取り付けることにより、支持体3は、軸受ハウジング21を直接支持してよい。これにより、支持体3は、軸受ハウジング21を介して回転体13を回転可能に支持する。
【0120】
図6(A)の例では、タービンハウジング25は、完成品の過給機20のタービンハウジングと異なり、上述した第1、第2または第3実施形態による影響係数取得方法を実施するための専用ハウジングである。すなわち、ステップS6またはステップS14でYESとなったら、当該回転体13の軸受ハウジング21に、完成品の過給機20に専用のタービンハウジングとコンプレッサハウジングが取り付けられ、これにより過給機20が完成する。
【0121】
図6(B)は、図6(A)のB−B矢視図であるが、軸受ハウジング21などの図示を省略している。第1の切削対象部13aは、回転体13におけるコンプレッサ翼17側の軸方向端部に螺合したナット27の外周部分(すなわち、図6(B)において、一点鎖線L1が描く環状部分)である。ナット27の当該螺合により複数のコンプレッサ翼17が形成されているコンプレッサ羽根車12が回転軸19に締結されている。コンプレッサ羽根車12は、複数のコンプレッサ翼17を周方向に結合するように周方向に延びている翼結合部24を有する。第2の切削対象部13bは、翼結合部24の外周部分(すなわち、図6(B)において、破線L2が描く環状部分)である。なお、複数のコンプレッサ翼17は、周方向に間隔を置いて配置されている。
【0122】
第2のアンバランスデータUに基づいて第2の切削対象部13bを切削する場合において、第2のアンバランスデータUが示す周方向位置(複素数Uの偏角に相当)が、コンプレッサ翼17の位置であるときには、次のようにする。当該アンバランスデータUを、翼結合部24の外周部(第2の切削対象部13b)において、コンプレッサ翼17が位置していない範囲(図6(B)の斜線部分)内の複数の位置におけるアンバランス量(以下、分解アンバランス量という)に分解する。その上で、これら複数の位置の各々において、上述と同様に、対応する分解アンバランス量に相当する分だけ第2の切削対象部13bを切削する。
アンバランスデータUは、アンバランスが存在する周方向位置(複素数Uの偏角に相当)とアンバランス量(複素数Uの絶対値に相当)とからなるベクトルと見なせるので、アンバランスデータUを、それぞれ、アンバランスが存在する周方向位置(ベクトルの向き)とアンバランス量(ベクトルの大きさ)とからなる複数のベクトル成分に分解することができる。
【0123】
図6(A)では、角度センサ7と切削装置11は、共にコンプレッサ翼17側に設けられているが、角度センサ7を使用する時には、切削装置11の切削工具11aが角度センサ7に干渉しない位置へ退避し、切削装置11を使用する時には、角度センサ7が切削装置11に干渉しない位置へ退避してよい。
【0124】
図6において、影響係数取得装置10の他の構成と動作は、上述の実施形態と同じであってよい。また、図6に示す影響係数取得装置10を用いて、上述の実施形態による影響係数取得方法を過給機20に対し実施してよい。
【0125】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変更例1、2、3を任意に組み合わせて採用してもよいし、変更例1、2、3のいずれかを採用してもよい。この場合、他の点は、上述と同じであってもよいし、適宜変更してもよい。
【0126】
(変形例1)
例えば、上述の第2実施形態と第3実施形態では、第1の回転速度で回転体13を回転させた状態で振動と回転角を計測して振動データを生成し、さらに、第2の回転速度で回転体13を回転させた状態で振動と回転角を計測し振動データを生成したが、代わりに、図7のように、前記支持体3における別々の箇所に、それぞれ、第1および第2の振動センサ5a,5bを取り付けておいてもよい。この場合、次のように行う。
ステップS1において、回転機械の回転体13を回転させ、この状態で、前記回転体13を支持する支持体の振動を第1および第2の振動センサ5a,5bにより計測するとともに、角度センサ7により回転体13の回転角を計測し、第1の振動センサ5aで計測した振動と角度センサ7により計測した回転角とに基づいて演算器9により振動データa1,m,n(ただし、ステップS1ではn=0である)を生成し、第2の振動センサ5bで計測した振動と角度センサ7により計測した回転角とに基づいて演算器9により振動データa2,m,n(ただし、ステップS1ではn=0である)を生成する。ステップS4、ステップS12も同様である。この場合、振動データaの添え字1は、当該振動データが第1の振動センサ5aで計測した振動に基づいて生成されたことを示し、振動データaの添え字2は、当該振動データが第2の振動センサ5bで計測した振動に基づいて生成されたことを示し、振動データaの他の添え字は、上述と同じである。この変形例1の振動データa1,m,n、a2,m,nが、それぞれ、上述の第2実施形態または第3実施形態における振動データa1,m,n、a2,m,nに置き換えられる。
【0127】
この変形例1において、ステップS2を行う時点でステップS9をまだ行っていない場合には、この時にステップS2で使用する基本影響係数は、現在、図3または図5の処理を行っている回転機械と同じ機種の回転機械について、上述の[数3]により予め取得した初期影響係数α1,b、α1,d、α2,b、α2,dであってよい。
ただし、この場合、上述の[数3]において、a10は、試し錘を回転体13に取り付けずに、上述のように、回転体13を回転させた状態で第1の振動センサ5aが計測した振動に基づいて生成した振動データであり、a20は、試し錘を回転体13に取り付けずに、上述のように、回転体13を回転させた状態で第2の振動センサ5bが計測した振動に基づいて生成した振動データであり、a1bは、第1の切削対象部13aに試し錘を取り付け、上述のように、回転体13を回転させた状態で第1の振動センサ5aが計測した振動に基づいて生成した振動データであり、a1dは、第2の切削対象部13bに試し錘を取り付け、上述のように、回転体13を回転させた状態で第1の振動センサ5aが計測した振動に基づいて生成した振動データであり、a2bは、第1の切削対象部13aに試し錘を取り付け、上述のように、回転体13を回転させた状態で第2の振動センサ5bが計測した振動に基づいて生成した振動データであり、a2dは、第2の切削対象部13bに試し錘を取り付け、上述のように、回転体13を回転させた状態で第2の振動センサ5bが計測した振動に基づいて生成した振動データである。
【0128】
(変形例2)
上述では、切削対象部の切削は、軸方向に行われたが、半径方向に行われてもよい。
【0129】
(変形例3)
上述では、初期影響係数を、試し錘を用いて回転体13にバランス変化を与えることで取得したが、初期影響係数を、回転体13を切削することで回転体13にバランス変化を与えることで取得してもよい。
【符号の説明】
【0130】
3 支持体、5 振動センサ、7 角度センサ、9 演算器、11 切削装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械に設けられている回転体のバランス変化に対する回転体の振動変化を示す影響係数を取得する影響係数取得方法であって、
(A)回転機械の回転体を回転させ、この状態で、前記回転体を支持する支持体の振動を計測するとともに、回転体の回転角を計測し、計測した振動と回転角に基づいて振動データを生成し、
(B)前記(A)で生成した振動データと基本影響係数とに基づいてアンバランスデータを算出し、
(C)前記アンバランスデータに基づいて、前記回転体を切削し、
(D)その後、回転機械の回転体を回転させ、この状態で、前記回転体を支持する支持体の振動を計測するとともに、回転体の回転角を計測し、計測した振動と回転角に基づいて振動データを生成し、
(E)前記(A)と(D)で生成した振動データと、前記(C)で行った切削のデータと、前記(A)、(C)、(D)を行った前記回転機械に関する影響係数との関係式を取得し、
(F)前記(A)〜(E)を、同じ機種の複数の回転機械について行い、これらの回転機械について前記(E)でそれぞれ取得した複数の関係式に基づいて、当該機種に関する新たな影響係数を求める、ことを特徴とする影響係数取得方法。
【請求項2】
前記新たな影響係数を求めた後、当該新たな影響係数を前記基本影響係数として、前記機種と同じ新たな回転機械について前記(A)〜(E)を再び行う、ことを特徴とする請求項1に記載の影響係数取得方法。
【請求項3】
アンバランスデータにより示されるアンバランス量の範囲を予め複数設定しておき、
前記各回転機械毎に、該回転機械について前記(B)で算出したアンバランスデータによるアンバランス量を含む前記範囲を判定し、該範囲に該回転機械が属するとし、
前記(F)では、前記各範囲毎に、該範囲に属する前記各回転機械について前記(E)で生成した複数の前記関係式に基づいて、新たな影響係数を求める、ことを特徴とする請求項1または2に記載の影響係数取得方法。
【請求項4】
前記(A)では、
(A−1)回転機械の回転体を第1の回転速度で回転させ、この状態で、前記回転体を支持する支持体の振動を計測するとともに、回転体の回転角を計測し、計測した振動と回転角に基づいて振動データを生成し、
(A−2)次いで、回転機械の回転体を第2の回転速度で回転させ、この状態で、前記回転体を支持する支持体の振動を計測するとともに、回転体の回転角を計測し、計測した振動と回転角に基づいて振動データを生成し、
前記(B)では、前記(A−1)と前記(A−2)で生成した振動データと前記基本影響係数とに基づいて、第1および第2のアンバランスデータを算出し、
前記(C)では、
(C−1)第1のアンバランスデータに基づいて、前記回転体における第1の切削対象部を切削し、
(C−2)第2のアンバランスデータに基づいて、前記回転体における第2の切削対象部を切削し、
前記(D)では、
(D−1)回転機械の回転体を第1の回転速度で回転させ、この状態で、前記回転体を支持する支持体の振動を計測するとともに、回転体の回転角を計測し、計測した振動と回転角に基づいて振動データを生成し、
(D−2)次いで、回転機械の回転体を第2の回転速度で回転させ、この状態で、前記回転体を支持する支持体の振動を計測するとともに、回転体の回転角を計測し、計測した振動と回転角に基づいて振動データを生成し、
前記(E)では、前記(A−1)と(A−2)と(D−1)と(D−2)で生成した振動データと、前記(C−1)と(C−2)で行った切削のデータと、前記(A)、(C)、(D)を行った前記回転機械に関する影響係数との関係式を生成する、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の影響係数取得方法。
【請求項5】
第1および第2の振動センサを、それぞれ、前記支持体における互いに異なる箇所に取り付けておき、
前記(A)では、回転機械の回転体を回転させ、この状態で、前記回転体を支持する支持体の振動を第1および第2の振動センサにより計測するとともに、回転体の回転角を角度センサにより計測し、第1の振動センサが計測した振動と角度センサが計測した回転角に基づいて振動データを生成し、第2の振動センサが計測した振動と角度センサが計測した回転角に基づいて振動データを生成し、
前記(B)では、前記(A)で第1の振動センサが計測した振動に基づいて生成した振動データと、前記(A)で第2の振動センサが計測した振動に基づいて生成した振動データと、前記基本影響係数とに基づいて、第1および第2のアンバランスデータを算出し、
前記(C)では、
(C−1)第1のアンバランスデータに基づいて、前記回転体における第1の切削対象部を切削し、
(C−2)第2のアンバランスデータに基づいて、前記回転体を第2の切削対象部を切削し、
前記(D)では、回転機械の回転体を回転させ、この状態で、前記回転体を支持する支持体の振動を第1および第2の振動センサにより計測するとともに、回転体の回転角を角度センサにより計測し、第1の振動センサが計測した振動と角度センサが計測した回転角に基づいて振動データを生成し、第2の振動センサが計測した振動と角度センサが計測した回転角に基づいて振動データを生成し、
前記(E)では、前記(A)で第1の振動センサが計測した振動に基づいて生成した振動データと、前記(A)で第2の振動センサが計測した振動に基づいて生成した振動データと、前記(D)で第1の振動センサが計測した振動に基づいて生成した振動データと、前記(D)で第2の振動センサが計測した振動に基づいて生成した振動データと、前記(A)、(C)、(D)を行った前記回転機械に関する影響係数との関係式を生成する、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の影響係数取得方法。
【請求項6】
前記(A)〜(D)を行った前記回転機械について、前記(D)の後、
(a)前記(D)で生成した振動データと前記基本影響係数とに基づいてアンバランスデータを算出し、
(b)当該アンバランスデータが示すアンバランス量がしきい値より大きい場合には、当該アンバランスデータに基づいて、当該回転機械の前記回転体を切削し,
(c)その後、当該回転機械について、アンバランス量が前記しきい値以下になるまで、振動データの生成、アンバランスデータの算出、該アンバランスデータに基づいた回転体の切削を繰り返し、これにより、回転体の切削を設定回数だけ行ったら、当該回転機械について行った切削のデータと当該回転機械について生成した振動データとに基づいて、当該回転機械に関する差し替え用の影響係数を算出し、
(d)該差し替え用の影響係数と当該回転機械について最後に生成した振動データとに基づいてアンバランスデータを算出し、
(e)当該アンバランスデータに基づいて、当該回転機械の前記回転体を切削する、ことを特徴とする請求項4または5に記載の影響係数取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−88058(P2012−88058A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232273(P2010−232273)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】