説明

影響係数取得方法

【課題】回転体における2つの切削対象部をそれぞれ切削することで回転体のバランス修正を行う場合に、試し錘を使用することなく、精度のよい影響係数を取得する影響係数取得方法を提供する。
【解決手段】互いに異なる条件で得られた回転体の第1および第2の振動データと、第1および第2の切削対象部におけるバランス変化に対する回転体の振動変化を示す基本影響係数とに基づいて、第1および第2の切削対象部に対応する第1および第2のアンバランスデータを算出し、当該データに基づいて回転体を切削してバランス修正を行う(ステップS1、S2、S4)。バランス修正の過程で得た振動データと切削のデータとに基づいて、新たな影響係数を算出する(ステップS9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械の影響係数を取得する影響係数取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械は、例えば、流体と力を及ぼし合う回転翼が回転体に設けられた流体機械である。流体機械には、原動機と被動機がある。原動機は、流体が回転翼に作用させる圧力により回転体が回転駆動されることで、流体の持つエネルギーを回転運動エネルギーに変換する。原動機としては、例えば、ガスタービン(軸流タービン、ラジアルタービン)がある。被動機は、回転駆動されている回転翼が流体に圧力を作用させることで、回転運動エネルギーを流体に与える。被動機としては、例えば、圧縮機(遠心圧縮機、航空エンジンなどに設けられる軸流圧縮機、斜流圧縮機、横流圧縮機、ポンプ)がある。また、流体機械には、原動機と被動機の両方の機能を持つ過給機もある。
【0003】
影響係数は、回転機械に設けられる回転体のバランス変化に対する回転体の振動変化を示す。影響係数は、回転体のバランス修正に利用される。そのため、回転体のバランスを修正する前に、回転機械の影響係数を取得しておく。
【0004】
影響係数は、例えば、次のように試し錘を使用して求めることができる。まず、試し錘を使用せずに、回転体を回転させ、回転体を支持する支持体の振動を計測する。次に、試し錘を回転体に取り付けて、回転体を回転させ、回転体を支持する支持体の振動を計測する。その上で、試し錘を使用しない時の振動と、試し錘を取り付けた時の振動と、試し錘の質量および取付位置とから、影響係数を算出する。なお、影響係数の算出に使用する振動は、回転体の回転速度(即ち、1秒間での回転数)と同じ周波数成分の振動であるのがよい。
【0005】
このように取得した影響係数を用いて、次のように回転体のバランスを修正する。始めに影響係数を用いて、回転体のアンバランスデータを算出する。次に、このアンバランスデータが示す修正位置において、アンバランスデータが示す質量だけ回転体を切削する。これにより、回転体のバランスを修正する。このようなバランス修正方法は、影響係数法といい、例えば、下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−102049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、試し錘を使用した影響係数取得方法では、以下の問題があった。
(1)試し錘の取り付けおよび取り外しをするため、その分、時間がかかる。
(2)試し錘の取付方法として、接着やネジ止めがあるが、接着の場合は接着剤の質量を把握できず、ネジ止めの場合は、回転中にネジが緩むとネジや試し錘が飛散する。
【0008】
また、回転体における2つの切削対象部をそれぞれ切削することでバランス修正の精度を向上させることが望まれる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、回転体における2つの切削対象部をそれぞれ切削することで回転体のバランス修正を行う場合に、試し錘を使用することなく、精度のよい影響係数を取得する影響係数取得方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明によると、回転機械に設けられている回転体のバランス変化に対する回転体の振動変化を示す影響係数を取得する影響係数取得方法であって、
(A)回転体を第1の回転速度で回転させた状態で、回転体を支持する支持体の振動を計測しつつ回転体の回転角を計測し、該振動と回転角に基づいて第1の振動データを生成し、回転体を第2の回転速度で回転させた状態で、前記支持体の振動を計測しつつ回転体の回転角を計測し、該振動と回転角に基づいて第2の振動データを生成し、
(B)前記(A)で生成した第1および第2の振動データと、回転体における第1および第2の切削対象部におけるバランス変化に対する回転体の振動変化を示す基本影響係数とに基づいて、第1および第2の切削対象部にそれぞれ対応する第1および第2のアンバランスデータを算出し、
(C)第1のアンバランスデータに基づいて第1の切削対象部を切削し、第2のアンバランスデータに基づいて第2の切削対象部を切削し、
(D)前記(A)〜(C)を繰り返し、
(E)前記(C)を設定回数だけ行ったら、回転体を第1の回転速度で回転させた状態で、回転体を支持する支持体の振動を計測しつつ回転体の回転角を計測し、該振動と回転角に基づいて第1の振動データを生成し、回転体を第2の回転速度で回転させた状態で、前記支持体の振動を計測しつつ回転体の回転角を計測し、該振動と回転角に基づいて第2の振動データを生成し、
(F)前記(A)と前記(E)で生成した各振動データと前記(C)で行った切削のデータとに基づいて、新たな影響係数を算出する、ことを特徴とする影響係数取得方法が提供される。
【0011】
また、上述の目的を達成するため、本発明によると、回転機械に設けられている回転体のバランス変化に対する回転体の振動変化を示す影響係数を取得する影響係数取得方法であって、
第1および第2の振動センサを、それぞれ、前記回転体を支持する支持体における互いに異なる箇所に取り付けておき、
(A)回転体を回転させた状態で、前記支持体の振動を第1および第2の振動センサにより計測しつつ回転体の回転角を計測し、第1の振動センサが計測した前記振動と前記回転角とに基づいて第1の振動データを生成し、第2の振動センサが計測した前記振動と前記回転角とに基づいて第2の振動データを生成し、
(B)前記(A)で生成した第1および第2の振動データと、回転体における第1および第2の切削対象部におけるバランス変化に対する回転体の振動変化を示す基本影響係数とに基づいて、第1および第2の切削対象部にそれぞれ対応する第1および第2のアンバランスデータを算出し、
(C)第1のアンバランスデータに基づいて第1の切削対象部を切削し、第2のアンバランスデータに基づいて第2の切削対象部を切削し、
(D)前記(A)〜(C)を繰り返し、
(E)前記(C)を設定回数だけ行ったら、回転体を回転させた状態で、前記支持体の振動を第1および第2の振動センサにより計測しつつ回転体の回転角を計測し、第1の振動センサが計測した前記振動と前記回転角とに基づいて第1の振動データを生成し、第2の振動センサが計測した前記振動と前記回転角とに基づいて第2の振動データを生成し、
(F)前記(A)と前記(E)で生成した各振動データと前記(C)で行った切削のデータとに基づいて、新たな影響係数を算出する、ことを特徴とする影響係数取得方法が提供される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によると、
(G)前記(F)の後、前記(E)で生成した第1および第2の振動データと前記新たな影響係数とに基づいて、第1および第2の切削対象部にそれぞれ対応する第1および第2のアンバランスデータを算出し、
(H)前記(G)で算出した第1のアンバランスデータに基づいて第1の切削対象部を切削し、前記(G)で算出した第2のアンバランスデータに基づいて第2の切削対象部を切削する。
【0013】
また、本発明の好ましい実施形態によると、前記(E)の後であって、前記(F)の前に、前記(E)で生成した第1および第2の振動データと基本影響係数とに基づいて、第1および第2の切削対象部にそれぞれ対応する第1および第2のアンバランスデータを算出し、該第1および第2のアンバランスデータにより示されるアンバランス量がしきい値より大きい場合に、前記(F)を行う。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によると、前記(D)では、前記(B)で算出する第1および第2のアンバランスデータにより示されるアンバランス量がしきい値以下になるまで、または、前記(C)を前記設定回数だけ行うまで、前記(A)〜(C)を繰り返す。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明によると、互いに異なる条件で得られた第1および第2の振動データと、第1および第2の切削対象部におけるバランス変化に対する回転体の振動変化を示す基本影響係数とに基づいて、第1および第2の切削対象部に対応する第1および第2のアンバランスデータを算出する。従って、これらの第1および第2のアンバランスデータに基づいて、それぞれ、第1および第2の切削対象部を切削してバランス修正を行える。
また、このようなバランス修正の過程で得た振動データと切削のデータとに基づいて、新たな影響係数を算出するので、当該影響係数は、バランス修正を行っている回転機械の特性を高精度に反映したものになる。従って、試し錘を使用することなく、高精度な影響係数を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の影響係数取得方法に使用できる影響係数取得装置を示す。
【図2】振動データの説明図である。
【図3】本発明の実施形態による影響係数取得方法を示すフローチャートである。
【図4】回転機械が過給機である場合の影響係数取得装置を示す。
【図5】振動センサを2つ使用する場合の影響係数取得装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0018】
図1(A)は、本発明の影響係数取得方法に使用できる影響係数取得装置10を示す。図1(B)は、図1(A)のB−B矢視図である。影響係数取得装置10は、支持体3、振動センサ5、角度センサ7、演算器9、および切削装置11を備える。
【0019】
支持体3は、回転機械の回転体13を支持する。回転体13は、支持体3に支持された状態で、回転体13の中心軸Cを中心に回転可能である。なお、支持体3の一部は、回転機械の静止側部材により構成されてもよい。
【0020】
振動センサ5は、支持体3に取り付けられる。振動センサ5は、回転体13が回転している状態で、支持体3の振動(即ち、加速度、速度、変位、または荷重)を計測し、該振動を示す振動信号を演算器9に出力する。この振動センサ5として、影響係数の取得に使用可能な公知のセンサを使用できる。
【0021】
角度センサ7は、回転体13の回転角を計測し、該回転角を示す回転角信号を演算器9に出力する。この回転角は、回転体13が1回転することでゼロ度〜360度まで変化する。
【0022】
演算器9は、前記振動信号(計測された振動)と前記回転角信号(計測された回転角)に基づいて振動データを生成する。振動データは、振動の振幅と位相θからなる。図2(A)は、振動の振幅と位相θを示す。図2(A)において、横軸は、角度センサ7により計測された回転体13の回転角を示し、縦軸は、振動センサ5により計測された振動のうち1次振動の強度を示す。1次振動は、回転体13の回転速度と同じ周波数成分の振動である。即ち、1次振動振幅は、振動センサ5による振動計測時における回転体13の回転速度(1秒間での回転数)と同じ周波数[Hz]の成分を、振動センサ5が出力した前記振動信号から抽出した振動である。図2(A)において、位相θは、基準回転角(図2(A)の例では、ゼロ度)に対する1次振動のずれを示す。即ち、位相θは、基準回転角に対する、1次振動の周期の始点となる回転角のずれを示す。
振動データを複素数で表す。図2(B)は、複素数で表した振動データを示す。図2(B)のように、1次振動の振幅の大きさ(絶対値)をRとし、上述の位相θを偏角として、振動データは複素数で表わされる。演算器9は、振動センサ5からの振動信号と角度センサ7からの回転角信号から、複素数の振動データを生成する(以下、同様)。
【0023】
切削装置11は、回転体13の切削対象部13aまたは13bを切削する切削工具11a(例えば、エンドミル)と、該切削工具11aを3次元的(例えば、図1(A)の互いに直交するX軸方向、Y軸方向、Z軸方向)に移動させる駆動機構11bと、該駆動機構11bの動作を制御することで切削工具11aの位置を制御する位置制御部11cとを有する。位置制御部11cは、入力されるアンバランスデータに従って切削対象部13aまたは13bを切削する。
【0024】
回転体13の切削対象部として、第1および第2の切削対象部13a,13bが設けられる。第1および第2の切削対象部13a,13bは、回転体13の中心軸Cに対する半径方向の位置と軸方向の位置との少なくともいずれかが互いに異なる。図1の例では、第1の切削対象部13aは、回転体13の軸方向先端部分の外周部であり、第2の切削対象部13bは、回転体13の軸方向中間部分に設けた円盤状部材の外周部である。なお、本願において、周方向は中心軸C回りの方向であり、半径方向は中心軸Cに対する方向であり、軸方向は中心軸Cと平行な方向である。
【0025】
図3は、本発明の実施形態による影響係数取得方法を示すフローチャートである。なお、この影響係数取得方法は、回転体13のアンバランス修正方法でもあり、このアンバランス修正方法の実施中に新たな影響係数を取得するものである。
【0026】
ステップS1において、回転機械の回転体13を第1の回転速度で回転させ、この状態で、振動センサ5が、回転体13を支持する支持体3の振動を計測しながら、角度センサ7が回転角を計測する。このように計測した振動と回転角に基づいて、演算器9が、第1の振動データa1,nを生成する。なお、ここで述べた第1の回転速度と、以下において述べる各第1の回転速度とは同じ速度である。
さらに、ステップS1において、第1の回転速度と異なる第2の回転速度で回転機械の回転体13を回転させ、この状態で、振動センサ5が、回転体13を支持する支持体3の振動を計測しながら、角度センサ7が回転角を計測する。このように計測した振動と回転角に基づいて、演算器9が、第2の振動データa2,nを生成する。なお、ここで述べた第2の回転速度と、以下において述べる各第2の回転速度とは同じ速度である。
【0027】
ここで、振動データaの添え字1は、第1の回転速度を示し、振動データaの添え字2は、第2の回転速度を示し、振動データaの添え字nは、当該振動データを生成した時点においてステップS4を既に行った回数を示す。なお、当該振動データを生成した時点においてステップS4を未だ行っていない場合には、振動データaの添え字nはゼロである。
【0028】
ステップS2において、ステップS1で生成した振動データa1,n、a2,nと、回転体13における第1および第2の切削対象部13a,13bにおけるバランス変化に対する回転体13の振動変化を示す基本影響係数とに基づいて、演算器9により、第1および第2の切削対象部13a、13bにそれぞれ対応する第1および第2のアンバランスデータU、Uを算出する。第1および第2のアンバランスデータU、Uは、次の[数1]の行列式で算出される。
【0029】
【数1】

【0030】
この[数1]において、α1,b、α1,d、α2,b、α2,dは、基本影響係数であり、−1は、逆行列を示す。
【0031】
基本影響係数は、現在、図3の処理を行っている回転機械と同じ機種の回転機械について、次の[数2]により予め取得した影響係数α1,b、α1,d、α2,b、α2,dであってよい。
【0032】
【数2】

【0033】
ここで、a10は、試し錘を回転体13に取り付けずに、上述のように、第1の回転速度で回転体13を回転させた状態で計測した振動と回転角に基づいて生成した振動データであり、a20は、試し錘を回転体13に取り付けずに、上述のように、第2の回転速度で回転体13を回転させた状態で計測した振動に基づいて生成した振動データであり、a1bは、第1および第2の切削対象部13a、13bのうち第1の切削対象部13aにのみ試し錘を取り付け、上述のように、第1の回転速度で回転体13を回転させた状態で計測した振動に基づいて生成した振動データであり、a2bは、第1および第2の切削対象部13a、13bのうち第1の切削対象部13aにのみ試し錘を取り付け、上述のように、第2の回転速度で回転体13を回転させた状態で計測した振動に基づいて生成した振動データであり、a1dは、第1および第2の切削対象部13a、13bのうち第2の切削対象部13bにのみ試し錘を取り付け、上述のように、第1の回転速度で回転体13を回転させた状態で計測した振動に基づいて生成した振動データであり、振動データa2dは、第1および第2の切削対象部13a、13bのうち第2の切削対象部13bにのみ試し錘を取り付け、上述のように、第2の回転速度で回転体13を回転させた状態で計測した振動に基づいて生成した振動データである。
[数2]のΔMTbは、次の式(3)で表わされる。

ΔMTb=ATb(cosθTb+jsinθTb) ・・・(3)

ここで、jは虚数単位であり、ATbは、第1の切削対象部13aに取り付けた試し錘の質量と、第1の切削対象部13aにおいて当該試し錘を取り付けた位置と回転体13の中心軸Cとの距離との積であり、θTbは、回転体13において当該試し錘を取り付けた周方向位置を示す位相である。
同様に、[数2]のΔMTdは、次の式(4)で表わされる。

ΔMTd=ATd(cosθTd+jsinθTd) ・・・(4)

ここで、jは虚数単位であり、ATdは、第2の切削対象部13bに取り付けた試し錘の質量と、第2の切削対象部13bにおいて当該試し錘を取り付けた位置と回転体13の中心軸Cとの距離との積であり、θTdは、回転体13において当該試し錘を取り付けた周方向位置を示す位相である。
【0034】
ステップS3において、ステップS2で算出した第1および第2のアンバランスデータU、Uにより示されるアンバランス量がしきい値以下であるかを判断する。具体的には、ステップS2で算出した第1のアンバランスデータUとステップS2で算出した第2のアンバランスデータUとよるアンバランス量が、しきい値以下であるかを判断する。
【0035】
例えば、ステップS2で算出した第1のアンバランスデータUが示すアンバランス量(すなわち、複素数であるアンバランスデータUの絶対値。以下同様)と、ステップS2で算出した第2のアンバランスデータUが示すアンバランス量(すなわち、複素数であるアンバランスデータUの絶対値。以下同様)との和もしくは平均値がしきい値以下であるかを判断する。
または、ステップS2で算出した第1のアンバランスデータUが示すアンバランス量と、ステップS2で算出した第2のアンバランスデータUが示すアンバランス量とのうち大きい方の値がしきい値以下であるかを判断する。
または、ステップS2で算出した第1のアンバランスデータUが示すアンバランス量が、第1のアンバランスデータ用のしきい値以下であり、かつ、ステップS2で算出した第2のアンバランスデータUが示すアンバランス量が、第2のアンバランスデータ用のしきい値以下であるかを判断する。この場合、好ましくは、第1のアンバランスデータ用のしきい値は、第2のアンバランスデータ用のしきい値と異なるのがよい。
【0036】
ステップS3の判断が、YESである場合には、図3の処理を終了して当該回転機械を出荷する。一方、ステップS3の判断がNOである場合には、ステップS4へ進む。
【0037】
ステップS4において、ステップS2で算出した第1のアンバランスデータUが示す切削位置と切削量に基づいて、回転体13の第1の切削対象部13aを切削する。なお、ここでの切削位置は、回転体13の軸方向先端部分の外周部13a上にあり、図1(B)において一点鎖線L1上にある。図1(B)において、一点鎖線L1上に重複している破線で描いた円は、一点鎖線L1上に位置決めされた場合の切削工具11aを示す。
【0038】
この第1のアンバランスデータUは、演算器9から位置制御部11cに入力される。位置制御部11cは、この第1のアンバランスデータUに基づいて駆動機構11bを制御することで切削工具11aを移動させ、これにより、切削対象部13aが第1のアンバランスデータUに従って切削される。
第1のアンバランスデータUを次式(5)で表す。

=A(cosθ+jsinθ) ・・・(5)

ここで、jは虚数単位であり、Aはアンバランス量を示す。Aはxとyの積で表わすことができ、この場合、xは、回転体13の中心軸CからステップS4での切削位置(図1(B)における一点鎖線L1上の位置)までの半径方向距離であり、yは、ステップS4で切削する質量である。一方、θは、前記切削位置の周方向位置を示す。従って、ステップS4において、切削工具11aは、xとθが示す半径方向位置と周方向位置に位置決めされた状態で、切削質量がyになるまで軸方向に移動する。この時、位置制御部11cは、切削対象部13aの密度と、必要であれば切削対象部13aの形状とに基づいて、切削工具11aを軸方向に移動させる距離(yに相当)を算出し、該距離に基づいて駆動機構11bを制御する。
【0039】
さらに、ステップS4において、ステップS2で算出した第2のアンバランスデータUが示す切削位置と切削量に基づいて、回転体13の第2の切削対象部13bを切削する。この切削は、第1の切削対象部13aの切削と同様に行われる。なお、ここでの切削位置は、回転体13に設けた前記円盤状部材の外周部13b上にあり、図1(B)において一点鎖線L2上にある。図1(B)において、一点鎖線L2上に重複している破線で描いた円は、一点鎖線L2上に位置決めされた場合の切削工具11aを示す。
【0040】
なお、ステップS4において、位置制御部11cは、角度センサ7が計測した回転角に基づいて、周方向に関して切削工具11aを位置決めしてよい。また、ステップS4では、例えば、回転体13における切削対象部13aと反対側の軸方向端部を、適宜の手段で把持して回転体13が回転しないようにしておくのがよい。
【0041】
ステップS5において、ステップS4を設定回数(2回以上の回数)だけ既に行っている場合には、ステップS6へ進み、そうでない場合には、ステップS1へ戻る。なお、前記設定回数は、例えば、2である。
【0042】
ステップS6において、回転機械の回転体13を第1の回転速度で回転させ、この状態で、振動センサ5が、回転体13を支持する支持体3の振動を計測しながら、角度センサ7が回転角を計測する。このように計測した振動と回転角に基づいて、演算器9が、第1の振動データa1,nを生成する。
さらに、ステップS6において、第2の回転速度で回転機械の回転体13を回転させ、この状態で、振動センサ5が、回転体13を支持する支持体3の振動を計測しながら、角度センサ7が回転角を計測する。このように計測した振動と回転角に基づいて、演算器9が、第2の振動データa2,nを生成する。
【0043】
ステップS7において、ステップS6で生成した振動データa1,n、a2,nと、基本影響係数とに基づいて、上述の[数1]と同じ式により、第1および第2の切削対象部13a、13bにそれぞれ対応する第1および第2のアンバランスデータU、Uを算出する。すなわち、上述の[数1]に、ステップS6で生成した振動データa1,n、a2,nと、上述の基本影響係数を適用することで、第1および第2のアンバランスデータU、Uを算出する。
【0044】
ステップS8において、ステップS7で算出した第1のアンバランスデータUと、ステップS7で算出した第2のアンバランスデータUとによるアンバランス量がしきい値以下であるかを判断する。この判断の方法は、ステップS3の判断方法と同じである。
ステップS8の判断が、YESである場合には、図3の処理を終了して当該回転機械を出荷する。一方、ステップS8の判断がNOである場合には、ステップS9へ進む。
【0045】
ステップS9において、演算器9が、新たな影響係数α1,b、α1,d、α2,b、α2,dを、次の式(6)〜(9)を連立させて解くことで算出する。

1,p−a1,q=α1,b×(−ΔMbpq)+α1,d×(−ΔMdpq) ・・・(6)

1,r−a1,s=α1,b×(−ΔMbrs)+α1,d×(−ΔMdrs) ・・・(7)

2,p−a2,q=α2,b×(−ΔMbpq)+α2,d×(−ΔMdpq) ・・・(8)

2,r−a2,s=α2,b×(−ΔMbrs)+α2,d×(−ΔMdrs) ・・・(9)

【0046】
上式(6)〜(9)において、振動データaの添え字p、q、rまたはsは、上述の添え字nに相当し、当該振動データが、p、q、rまたはs回目のステップS4を行った直後に(ステップS1またはS6で)生成した振動データであることを示す。すなわち、振動データaの添え字p、q、rまたはsは、当該振動データを生成した時点で既にステップS4を行っている回数である。
また、上式(6)〜(9)において、p、q、r、sは、ステップS5で使用した前記設定回数以下の値である。pはqより大きく、rはsよりも大きい。また、p≠rとq≠sとの少なくとも一方が成り立つ。なお、振動データaの添え字qまたはsが0の場合は、当該振動データは、ステップS1で生成した振動データである。好ましくは、前記設定回数は2であり、pは2であり、rは1であり、qとsは0である。
【0047】
上式(6)〜(9)におけるΔMbpq、ΔMdpqΔ、Mbrs、ΔMdrsは、上述のステップS4で行った切削のデータであり、例えば、位置制御部11cにより生成されて演算器9へ入力される。ΔMbpq、ΔMdpqΔ、Mbrs、ΔMdrsは、具体的には次の通りである。
【0048】
また、上式(6)、(8)において、ΔMbpqは、次の式(10)で表わされる。

ΔMbpq=ΣAbi(cosθbi+jsinθbi) ・・・(10)

ここで、jは虚数単位であり、bは、第1の切削対象部13aにおける切削データであることを示し、Σは、iに関する総和を示し、iは、qより大きくp以下である各整数である。また、式(10)において、Abiは、i回目のステップS4で第1の切削対象部13aを切削した質量と、第1の切削対象部13aにおいて当該切削を行った位置と回転体13の中心軸Cとの距離との積であり、θbiは、i回目のステップS4で第1の切削対象部13aを切削した周方向位置を示す位相である。ただし、i=0は、ステップS4が未実施であることを示すので、i=0の場合、Abi=0である。
【0049】
また、上式(6)、(8)において、ΔMdpqは、次の式(11)で表わされる。

ΔMdpq=ΣAdi(cosθdi+jsinθdi) ・・・(11)

ここで、jは虚数単位であり、dは、第2の切削対象部13bにおける切削データであることを示し、Σは、iに関する総和を示し、iは、qより大きくp以下である各整数である。また、式(11)において、Adiは、i回目のステップS4で第2の切削対象部13bを切削した質量と、第2の切削対象部13bにおいて当該切削を行った位置と回転体13の中心軸Cとの距離との積であり、θdiは、i回目のステップS4で第2の切削対象部13bを切削した周方向位置を示す位相である。ただし、i=0は、ステップS4が未実施であることを示すので、i=0の場合、Adi=0である。
【0050】
また、上式(7)、(9)において、ΔMbrsは、次の式(12)で表わされる。

ΔMbrs=ΣAbi(cosθbi+jsinθbi) ・・・(12)

ここで、jは虚数単位であり、bは、第1の切削対象部13aにおける切削データであることを示し、Σは、iに関する総和を示し、iは、sより大きくr以下である各整数である。また、式(12)において、Abiは、i回目のステップS4で第1の切削対象部13aを切削した質量と、第1の切削対象部13aにおいて当該切削を行った位置と回転体13の中心軸Cとの距離との積であり、θbiは、i回目のステップS4で第1の切削対象部13aを切削した周方向位置を示す位相である。ただし、i=0は、ステップS4が未実施であることを示すので、i=0の場合、Abi=0である。
【0051】
また、上式(7)、(9)において、ΔMdrsは、次の式(13)で表わされる。

ΔMdrs=ΣAdi(cosθdi+jsinθdi) ・・・(13)

ここで、jは虚数単位であり、dは、第2の切削対象部13bにおける切削データであることを示し、Σは、iに関する総和を示し、iは、sより大きくr以下である各整数である。また、式(13)において、Adiは、i回目のステップS4で第2の切削対象部13bを切削した質量と、第2の切削対象部13bにおいて当該切削を行った位置と回転体13の中心軸Cとの距離との積であり、θdiは、i回目のステップS4で第2の切削対象部13bを切削した周方向位置を示す位相である。ただし、i=0は、ステップS4が未実施であることを示すので、i=0の場合、Adi=0である。
【0052】
ステップS10において、ステップS6で生成した振動データa1,n,a2,nと、ステップS9で算出した新たな影響係数に基づいて、上述の[数1]と同じ式により、第1および第2の切削対象部13a、13bにそれぞれ対応する第1および第2のアンバランスデータU、Uを算出する。具体的には、上述の[数1]に、ステップS6で生成した振動データa1,n、a2,nと、ステップS9で算出した新たな影響係数を適用することで、第1および第2のアンバランスデータU、Uを算出する。すなわち、上述の[数1]において、基本影響係数α1,b、α1,d、α2,b、α2,dを、それぞれ、前記新たな影響係数α1,b、α1,d、α2,b、α2,dに置き換え、ステップS6で生成した振動データa1,n、a2,nを上述の[数1]に適用することで、第1および第2のアンバランスデータU、Uを算出する。
【0053】
ステップS11において、ステップS10で算出した第1のアンバランスデータUが示す切削位置と切削量に基づいて、回転体13の第1の切削対象部13aを切削する。この切削は、上述したステップS4の切削と同様に行われる。
さらに、ステップS11において、ステップS10で算出した第2のアンバランスデータUが示す切削位置と切削量に基づいて、回転体13の第2の切削対象部13bを切削する。この切削は、上述したステップS4の切削と同様に行われる。
【0054】
なお、ステップS11を行ったら、ステップS6に戻り、ステップS6〜S11を繰り返してよい。この場合、ステップS8においてNOと判断した回数が、設定回数(2以上の数)に達したら、回転体13のアンバランス修正が不可能であり、当該回転機械の出荷が不可能であるとする。
【0055】
[実施例]
図4(A)は、上述の実施形態による影響係数取得装置10を、回転機械としての過給機20に適用した場合を示す。
【0056】
過給機20の回転体13は、図4(A)に示すように、エンジンの排ガスにより回転駆動されるタービン翼15と、タービン翼15と一体的に回転することで圧縮空気をエンジンに供給するコンプレッサ翼17と、一端部にタービン翼15が結合され他端部にコンプレッサ翼17が結合される回転軸19と、を有する。また、過給機20は、回転体13を回転可能に支持する静止側部材21を有する。図4(A)の例では、静止側部材21は、回転体13(回転軸19)を回転可能に支持する軸受23a,23bが内部に組み込まれる軸受ハウジングである。また、過給機20は、タービン翼15を内部に収容するタービンハウジング25と、コンプレッサ翼17を内部に収容するコンプレッサハウジング(図4(A)では取り外されている)と、を備える。タービンハウジング25には、タービン翼15を回転駆動する流体を流す流路(スクロール)が形成されている。タービンハウジング25は、支持体3の内部に取り付けられる。タービン翼15を駆動する流体をタービンハウジング25の前記流路へ供給でき、タービン翼15を駆動した当該流体を支持体3の外部へ排出できるように支持体3が構成されている。
【0057】
また、支持体3は、タービンハウジング25を介して、または直接、軸受ハウジング21を支持する。例えば、軸受ハウジング21を適宜の手段で支持体3に取り付け、これにより、支持体3は、軸受ハウジング21を直接支持してよい。これにより、支持体3は、軸受ハウジング21を介して回転体13を回転可能に支持する。
【0058】
図4(A)の例では、タービンハウジング25は、完成品の過給機20のタービンハウジングと異なり、図3の方法を実施するための専用ハウジングである。すなわち、ステップS3もしくはステップS8でYESとなった後、または、ステップS11での切削によりアンバランス量がしきい値以下になった後に、完成品の過給機20に専用のタービンハウジングとコンプレッサハウジングが軸受ハウジング21に取り付けられ、これにより過給機20が完成する。
【0059】
図4(B)は、図4(A)のB−B矢視図であるが、軸受ハウジング21などの図示を省略している。第1の切削対象部13aは、回転体13におけるコンプレッサ翼17側の軸方向端部に螺合したナット27の外周部分(すなわち、図4(B)において、一点鎖線L1が描く環状部分)である。ナット27の当該螺合により複数のコンプレッサ翼17が形成されているコンプレッサ羽根車12が回転軸19に締結されている。コンプレッサ羽根車12は、複数のコンプレッサ翼17を周方向に結合するように周方向に延びている翼結合部24を有する。第2の切削対象部13bは、翼結合部24の外周部分(すなわち、図4(B)において、破線L2が描く環状部分)である。なお、複数のコンプレッサ翼17は、周方向に間隔を置いて配置されている。
【0060】
第2の切削対象部13bを切削する場合において、上述のステップS2またはS10で算出した第2のアンバランスデータUが示す周方向位置(複素数Uの偏角に相当)が、コンプレッサ翼17の位置であるときには、次のようにする。当該アンバランスデータUを、翼結合部24の外周部(第2の切削対象部13b)において、コンプレッサ翼17が位置していない範囲(図4(B)の斜線部分)内における複数の位置におけるアンバランス量(以下、分解アンバランス量という)に分解する。その上で、上述のステップS4またはS11では、これら複数の位置の各々において、上述と同様に、対応する分解アンバランス量に相当する分だけ第2の切削対象部13bを切削する。
アンバランスデータUは、アンバランスが存在する周方向位置(複素数Uの偏角に相当)とアンバランス量(複素数Uの絶対値に相当)とからなるベクトルと見なせるので、アンバランスデータUを、それぞれ、アンバランスが存在する周方向位置(ベクトルの向き)とアンバランス量(ベクトルの大きさ)とからなる複数のベクトル成分に分解することができる。
【0061】
図4(A)では、角度センサ7と切削装置11は、共にコンプレッサ翼17側に設けられているが、角度センサ7を使用する時には、切削装置11の切削工具11aが角度センサ7に干渉しない位置へ退避し、切削装置11を使用する時には、角度センサ7が切削装置11に干渉しない位置へ退避してよい。
【0062】
図4において、影響係数取得装置10の他の構成と動作は、上述の実施形態と同じであってよい。また、図4に示す影響係数取得装置10を用いて、上述の実施形態による影響係数取得方法を過給機20に対し実施してよい。
【0063】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変更例1、2、3を任意に組み合わせて採用してもよいし、変更例1、2、3のいずれかを採用してもよい。この場合、他の点は、上述と同じであってもよいし、適宜変更してもよい。
【0064】
(変形例1)
例えば、上述の実施形態では、第1の回転速度で回転体13を回転させた状態で振動と回転角を計測し、該振動と回転角に基づいて第1の振動データa1,nを生成し、さらに、第2の回転速度で回転体13を回転させた状態で振動と回転角を計測し、該振動と回転角に基づいて第2の振動データa2,nを生成したが、代わりに、図5のように、支持体3における別々の箇所に、それぞれ、第1および第2の振動センサ5a,5bを取り付けておいてもよい。この場合、次のように行う。
ステップS1とステップS6の各々において、回転機械の回転体13を回転させ、この状態で、前記回転体13を支持する支持体3の振動を第1および第2の振動センサ5a,5bにより計測するとともに、角度センサ7により回転体13の回転角を計測する。第1の振動センサ5aで計測した振動と角度センサ7により計測した回転角とに基づいて演算器9により第1の振動データa1,nを生成し、第2の振動センサ5bで計測した振動と角度センサ7により計測した回転角とに基づいて演算器9により第2の振動データa2,nを生成する。この場合、振動データaの添え字1は、当該振動データが第1の振動センサ5aで計測した振動に基づいて生成されたことを示し、振動データaの添え字2は、当該振動データが第2の振動センサ5bで計測した振動に基づいて生成されたことを示し、振動データaの添え字nは、上述と同じである。
【0065】
この変形例1において、上述の基本影響係数は、現在、図3の処理を行っている回転機械と同じ機種の回転機械について、上述の[数2]により予め取得した影響係数α1,b、α1,d、α2,b、α2,dであってよい。
ただし、この場合、上述の[数2]において、a10は、試し錘を回転体13に取り付けずに、上述のように、回転体13を回転させた状態で第1の振動センサ5aが計測した振動に基づいて生成した振動データであり、a20は、試し錘を回転体13に取り付けずに、上述のように、回転体13を回転させた状態で第2の振動センサ5bが計測した振動に基づいて生成した振動データであり、a1bは、第1および第2の切削対象部13a、13bのうち第1の切削対象部13aにのみ試し錘を取り付け、上述のように、回転体13を回転させた状態で第1の振動センサ5aが計測した振動に基づいて生成した振動データであり、a1dは、第1および第2の切削対象部13a、13bのうち第2の切削対象部13bにのみ試し錘を取り付け、上述のように、回転体13を回転させた状態で第1の振動センサ5aが計測した振動と回転角に基づいて生成した振動データであり、a2bは、第1および第2の切削対象部13a、13bのうち第1の切削対象部13aに試し錘を取り付け、上述のように、回転体13を回転させた状態で第2の振動センサ5bが計測した振動に基づいて生成した振動データであり、a2dは、第1および第2の切削対象部13a、13bのうち第2の切削対象部13bにのみ試し錘を取り付け、上述のように、回転体13を回転させた状態で第2の振動センサ5bが計測した振動と回転角に基づいて生成した振動データである。
【0066】
(変形例2)
上述では、切削対象部13a,13bの切削は、軸方向に行われたが、半径方向に行われてもよい。
【0067】
(変形例3)
上述では、基本影響係数を、試し錘を用いて回転体13にバランス変化を与えることで取得したが、基本影響係数を、回転体13を切削することで回転体13にバランス変化を与えることで取得ししてもよい。
【符号の説明】
【0068】
3 支持体、5 振動センサ、7 角度センサ、9 演算器、11 切削装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械に設けられている回転体のバランス変化に対する回転体の振動変化を示す影響係数を取得する影響係数取得方法であって、
(A)回転体を第1の回転速度で回転させた状態で、回転体を支持する支持体の振動を計測しつつ回転体の回転角を計測し、該振動と回転角に基づいて第1の振動データを生成し、回転体を第2の回転速度で回転させた状態で、前記支持体の振動を計測しつつ回転体の回転角を計測し、該振動と回転角に基づいて第2の振動データを生成し、
(B)前記(A)で生成した第1および第2の振動データと、回転体における第1および第2の切削対象部におけるバランス変化に対する回転体の振動変化を示す基本影響係数とに基づいて、第1および第2の切削対象部にそれぞれ対応する第1および第2のアンバランスデータを算出し、
(C)第1のアンバランスデータに基づいて第1の切削対象部を切削し、第2のアンバランスデータに基づいて第2の切削対象部を切削し、
(D)前記(A)〜(C)を繰り返し、
(E)前記(C)を設定回数だけ行ったら、回転体を第1の回転速度で回転させた状態で、回転体を支持する支持体の振動を計測しつつ回転体の回転角を計測し、該振動と回転角に基づいて第1の振動データを生成し、回転体を第2の回転速度で回転させた状態で、前記支持体の振動を計測しつつ回転体の回転角を計測し、該振動と回転角に基づいて第2の振動データを生成し、
(F)前記(A)と前記(E)で生成した各振動データと前記(C)で行った切削のデータとに基づいて、新たな影響係数を算出する、ことを特徴とする影響係数取得方法。
【請求項2】
回転機械に設けられている回転体のバランス変化に対する回転体の振動変化を示す影響係数を取得する影響係数取得方法であって、
第1および第2の振動センサを、それぞれ、前記回転体を支持する支持体における互いに異なる箇所に取り付けておき、
(A)回転体を回転させた状態で、前記支持体の振動を第1および第2の振動センサにより計測しつつ回転体の回転角を計測し、第1の振動センサが計測した前記振動と前記回転角とに基づいて第1の振動データを生成し、第2の振動センサが計測した前記振動と前記回転角とに基づいて第2の振動データを生成し、
(B)前記(A)で生成した第1および第2の振動データと、回転体における第1および第2の切削対象部におけるバランス変化に対する回転体の振動変化を示す基本影響係数とに基づいて、第1および第2の切削対象部にそれぞれ対応する第1および第2のアンバランスデータを算出し、
(C)第1のアンバランスデータに基づいて第1の切削対象部を切削し、第2のアンバランスデータに基づいて第2の切削対象部を切削し、
(D)前記(A)〜(C)を繰り返し、
(E)前記(C)を設定回数だけ行ったら、回転体を回転させた状態で、前記支持体の振動を第1および第2の振動センサにより計測しつつ回転体の回転角を計測し、第1の振動センサが計測した前記振動と前記回転角とに基づいて第1の振動データを生成し、第2の振動センサが計測した前記振動と前記回転角とに基づいて第2の振動データを生成し、
(F)前記(A)と前記(E)で生成した各振動データと前記(C)で行った切削のデータとに基づいて、新たな影響係数を算出する、ことを特徴とする影響係数取得方法。
【請求項3】
(G)前記(F)の後、前記(E)で生成した第1および第2の振動データと前記新たな影響係数とに基づいて、第1および第2の切削対象部にそれぞれ対応する第1および第2のアンバランスデータを算出し、
(H)前記(G)で算出した第1のアンバランスデータに基づいて第1の切削対象部を切削し、前記(G)で算出した第2のアンバランスデータに基づいて第2の切削対象部を切削する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の影響係数取得方法。
【請求項4】
前記(E)の後であって、前記(F)の前に、前記(E)で生成した第1および第2の振動データと基本影響係数とに基づいて、第1および第2の切削対象部にそれぞれ対応する第1および第2のアンバランスデータを算出し、該第1および第2のアンバランスデータにより示されるアンバランス量がしきい値より大きい場合に、前記(F)を行う、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の影響係数取得方法。
【請求項5】
前記(D)では、前記(B)で算出する第1および第2のアンバランスデータにより示されるアンバランス量がしきい値以下になるまで、または、前記(C)を前記設定回数だけ行うまで、前記(A)〜(C)を繰り返す、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の影響係数取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−88060(P2012−88060A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232353(P2010−232353)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】