説明

往復動ピストン内燃機関のガス交換弁をハイドロリック的に制御するための装置

往復動ピストン内燃機関のガス交換弁(1)をハイドロリック的に制御するための装置であって、スレーブシリンダ(2)が設けられており、該スレーブシリンダ(2)が、それぞれ1つまたは複数のガス交換弁(1)に作用接続されており、マスタアクチュエータ(12)が設けられており、該マスタアクチュエータ(12)が、往復動ピストン内燃機関により回転可能に駆動されるカムシャフト(35)に設けられた、基本プロフィールとカムプロフィール(13)とを備えた少なくとも1つのカム(11)に作用接続されていて、スレーブシリンダ(2)にハイドロリック的に接続可能であり、作動部材(25)によってコントロールされた制御装置(4)が設けられており、該制御装置(4)が、スレーブシリンダ(2)に供給されるハイドロリック液の量を制御しており、少なくとも1つの供給管路(6)が設けられており、該供給管路(6)を通じて当該装置に、少なくとも1つの逆止弁(5)によって圧力源から低圧液が供給可能である形式のものにおいて、マスタアクチュエータ(12)が、複数の可動のベーン(10)と、該ベーン(10)を支持する構成エレメントと、複数の壁(34)とによって画定されたセル(8)を有しており、前記ベーン(10)が、前記少なくとも1つのカム(11)の基本プロフィールおよびカムプロフィール(13)に作用接続されていることを特徴とする、往復動ピストン内燃機関のガス交換弁をハイドロリック的に制御するための装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、往復動ピストン内燃機関のガス交換弁、つまり吸気弁もしくは排気弁を液圧的もしくはハイドロリック的に制御するための装置であって、スレーブシリンダ設けられており、該スレーブシリンダが、それぞれ1つまたは複数のガス交換弁に作用接続されており、マスタアクチュエータが設けられており、該マスタアクチュエータが、往復動ピストン内燃機関により回転可能に駆動されるカムシャフトに設けられた、基本プロフィールとカムプロフィールとを備えた少なくとも1つのカムに作用接続されていて、スレーブシリンダにハイドロリック的に接続可能であり、作動部材によってコントロールされた制御装置が設けられており、該制御装置が、スレーブシリンダに供給されるハイドロリック液の量を制御しており、少なくとも1つの供給管路が設けられており、該供給管路を通じて当該装置に、少なくとも1つの逆止弁によって圧力源から低圧液が供給可能である形式のものに関する。
【0002】
発明の背景
米国特許第6886511号明細書に基づき、このような形式の、往復動ピストン内燃機関のガス交換弁をハイドロリック的に制御するための装置が公知である。この公知の装置では、各スレーブシリンダに、マスタアクチュエータとして形成された押しのけピストンが対応配置されている。この押しのけピストンはカムシャフトに配置されたカムに結合されている。各スレーブシリンダに供給されるハイドロリック液の量は、補償ピストンによって制御される。この補償ピストンのストッパは作動部材によりコントロールされている。さらに、この装置には、とりわけ漏れ損失を補償するための低圧液のための供給管路が逆止弁を介して接続されている。この公知の装置は大きな構成手間を必要とする。なぜならば、各ガス交換弁もしくは各ガス交換弁グループに、作動部材等を備えた専用のユニットが対応配置されているからである。
【0003】
さらにドイツ連邦共和国特許第2813132号明細書に基づき、各ガス交換弁に、該ガス交換弁をハイドロリック的に制御するための、スレーブシリンダとマスタシリンダとから形成された装置を対応させることが公知である。この場合、各スレーブシリンダに供給されるハイドロリック液の制御は、マスタシリンダおよび/またはスレーブシリンダに設けられた閉制御部もしくは放圧部(Absteuerung)を介して行われる。この装置においても、構成にかかる手間は相応して大きい。
【0004】
さらに、欧州特許出願公開第1273770号明細書に基づき公知の、ガス交換弁をハイドロリック的に制御するための装置では、同じく各1つのスレーブシリンダとマスタシリンダとが設けられている。この場合、各ユニットには1つの圧力アキュムレータが対応配置されており、制御装置が、この圧力アキュムレータ内への放圧部を開放状態に保持していると、この圧力アキュムレータ内には、スレーブシリンダのためには規定されていないハイドロリック液量が貯えられる。この公知の装置においては、構成にかかる手間が一層大きくなる。なぜならば、圧力アキュムレータと制御装置とが分離されているからである。
【0005】
発明の課題
したがって、本発明の課題は、冒頭で述べた形式の、ガス交換弁をハイドロリック的に制御するための装置を改良して、前記欠点が回避されて、構成にかかる手間が減じられるような装置を提供することである。
【0006】
発明の要約
本発明の上記課題は、マスタアクチュエータが、複数の可動のベーンと、該ベーンを支持する構成エレメントと、複数の壁とによって画定されたセル(小室)を有しており、前記ベーンが、前記少なくとも1つのカムの基本プロフィールおよびカムプロフィールに作用接続されていることにより解決される。この構成により、多数のセルを備えた1つのポンプユニットが形成される。これらのセルは各スレーブシリンダに接続されているので、唯一つのカムと唯一つの構成エレメントとを用いるだけで複数のガス交換弁またはガス交換弁群が操作可能となる。
【0007】
本発明の有利な構成では、ベーンを支持する構成エレメントが、前記少なくとも1つのカムを取り囲むステータとして形成されている。
【0008】
これにより、一種のディスク形の構成ユニットが得られる。この構成ユニットでは、1つのカムにより複数のセルのハイドロリック的な容積が変えられる。ステータは有利には環状に形成されていて、スレーブシリンダのための接続部を有している。
【0009】
当然ながら、ベーンを支持する構成エレメントを中央のステータとして形成し、カムを内側カムとして1つのリングまたは円筒体に配置することも可能である。
【0010】
往復動ピストン内燃機関のシリンダの個数に応じて、各1つのカムとステータとを備えた2つまたはそれ以上の構成ユニットを相並んで設けることが有利になり得る。この場合、カムは1つの軸もしくは1つの中空軸に相並んで配置されている。セルの個数およびスレーブシリンダに対するセルの対応関係ならびにカムの個数は、往復動ピストン内燃機関のシリンダ数および点火順序に適合されなければならない。
【0011】
この構成により、構成手間およびコストの著しい低減が得られる。なぜならば、1つのカムと、複数のベーンを支持する1つのステータとを備えた1つの構成ユニットを用いて複数のスレーブシリンダを制御することができるからである。
【0012】
ベーンとカムプロフィールとの間の良好な密な接触を確保するためには、ベーンが、カムプロフィールの方向に負荷されていることが提案される。このことは、たとえばばねによって行われ得るか、あるいはまた、カムプロフィールの方向でベーンに作用するハイドロリック圧によっても行われ得る。
【0013】
ベーンに対するハイドロリック圧の形成は、ステータに設けられた補償室によって行われ得る。この場合、補償室はハイドロリック液のための接続部に接続されていて、相応する圧力で負荷される。
【0014】
マスタアクチュエータとスレーブシリンダとのハイドロリック的な接続は、有利にはハイドロリック管路によって行われる。これらのハイドロリック管路はセルに接続されていると共に、逆止弁によって低圧液のための供給管路に接続されている。
【0015】
この場合、有利には、潤滑のためにもともと必要とされている往復動ピストン内燃機関のオイルポンプを圧力源として使用することができる。なぜならば、連続的に必要となる低圧液は漏れを補償するためにしか必要とされず、したがって少量であるからである。
【0016】
本発明のさらに別の有利な構成では、各セルの間に室が設けられていることが提案される。これにより、各セルは相互間に特定の間隔を有している。これらの室には、漏れ管路が接続されていてよい。これらの漏れ管路は有利には少なくとも1つの流出弁または逃し弁もしくは過圧弁によってコントロールされており、これによりセルに対するカウンタウェイトとして前記室内に特定の液体量および/または液体圧が設定される。
【0017】
カムのカムプロフィールが、周方向で見て、汎用の弁リフト曲線の寸法を超えて拡幅されていると、ガス交換弁のための広幅のリフト曲線を形成することが可能となる。これにより、たとえば運転時の上死点におけるガス交換弁同士の間の、より大きなオーバラップを発生させるか、もしくはオーバラップを変化させることができる。スレーブシリンダに到達するハイドロリック液の量が変えられることにより、制御装置によって、各ガス交換弁のための、より小幅のリフト曲線が容易に形成可能となる。
【0018】
本発明のさらに別の有利な構成では、制御装置が、セルに作用接続された流出開口を有しており、該流出開口の横断面が調節可能であることが提案される。このためには、少なくとも1つの壁に、セルの個数に相当する流出窓が設けられていてよい。この場合、この壁が回転可能に形成されていて、前記流出窓が、セルと、隣接した室との間で旋回可能であることが提案される。これにより、カムは流出窓の位置に応じて、スレーブシリンダに到達する量の変化を制御することができる。
【0019】
流出窓の半径方向の延在長さが、カムプロフィールの半径方向の延在長さにほぼ適合されていると、流出窓の位置に応じて圧送量のゼロ制御も可能になる。
【0020】
本発明のさらに別の有利な構成では、制御装置が、ハイドロリック管路に接続された補償ピストンを有しており、該補償ピストンが、ばね負荷されていて、調節可能な終端ストッパに結合されている。この終端ストッパは有利にはストッパタペットとして形成されていて、有利にはポット状に形成されているので、前記終端ストッパは圧縮ばねの一部を収容することができる。
【0021】
ストッパタペットまたは補償ピストンは、互いに向かい合わされた面に環状溝を有しており、これらの環状溝はストッパタペットに対する補償ピストンの終端位置減衰を生ぜしめることができる。この場合、有利にはストッパタペットまたは補償ピストンがフランジを有しており、このフランジが、第2の構成部分に設けられた段部に対して嵌合するので、中央の1つの環状溝が生じる。
【0022】
ストッパタペットが、回転可能に支承された偏心板に支持されていると有利である。この場合、前記偏心板は対応する1つの共通の軸に取り付けられていてよい。この軸は、回転調節のために形成された作動部材に結合されている。
【0023】
補償ピストンとストッパタペットとが、ベーンを支持する構成エレメント内に、有利には半径方向に向けられて配置されていると、特にコスト節約型でかつスペース節約型の構成が得られる。この場合、ストッパタペットは制御リングに作用接続されていてよい。この制御リングは、ストッパタペットに嵌合する制御面を有しており、該制御面の深さは、周面に沿って変化していている。制御リングを回転させることにより、制御面はストッパタペットに沿って移動するので、ストッパタペットの位置は半径方向で変化し、補償ピストンは、より大きな補償運動またはより小さな補償運動を実施することができる。この場合、制御リングは直接にステータに支承されていてよい。
【0024】
制御リングが、伝動装置エレメント、有利にはウォームねじ山を有しており、該伝動装置エレメントが、第2の伝動装置エレメント、有利にはウォームに結合されていると、制御リング、ひいては制御装置の簡単な調節が与えられている。第2の伝動装置エレメントはこの場合、前記作動部材に結合されているので、第2の伝動装置エレメントの回転運動により、スレーブシリンダに到達するハイドロリック液の量の調節が行われる。
【0025】
少なくとも1つのカムと、複数のセルおよび該セルに対応する構成部分と、複数の補償ピストンと、複数のストッパタペットと、1つの制御リングとを、ホイール/ディスク状の1つの構成ユニットにまとめることができる。これにより、マスタアクチュエータを、対応する制御ユニットと共に、1つのスペース節約型でかつ廉価なユニットにまとめることができる。このユニットには、スレーブシリンダに通じたハイドロリック管路が接続される。
【0026】
既に述べたように、前記ホイール/ディスク状の複数の構成ユニットを相並んで設けることもできる。
【0027】
図面の簡単な説明
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ガス交換弁をハイドロリック的に制御するための装置を、ベーンを支持したステータとカム輪郭とが展開された状態で示す概略図である。
【図2】2つのベーンを備えたステータとカムプロフィールの周方向延在長さの一部を示す断面図ならびに対応するガス交換弁のリフト曲線を示す線図である。
【図3】カムプロフィールが周方向で延長されていて、図2の実施例の場合よりも広幅のリフト曲線が生ぜしめられる実施例を示す、図2と同様の図面である。
【図4】セルの間の室に漏れ管路が接続されている、図1の実施例と同様の実施例を示す概略図である。
【図5】圧送量を変えるための補償ピストンが設けられている、図4の実施例と同様の実施例を示す概略図である。
【図6】1つのセルと、ガス交換弁を備えた1つのスレーブシリンダと、制御装置の細部とを拡大して示す概略図である。
【図7】流出窓を有するマスタアクチュエータユニットの断面図である。
【図8】図7に示したマスタアクチュエータユニットをカムの別の位置で示す断面図である。
【図9】図7および図8に示したマスタアクチュエータユニットを、流出窓の位置が変えられた状態で示す断面図である。
【図10】図9に示したマスタアクチュエータユニットをカムの別の位置で示す断面図である。
【図11】図7および図8に示したマスタアクチュエータユニットを、流出窓の位置がさらに変えられた状態で示す断面図である。
【図12】図11に示したマスタアクチュエータユニットをカムの別の位置で示す断面図である。
【図13】カムとセルと制御装置およびその個別部分とを備えた構成ユニットの側面図である。
【0029】
図面の詳細な説明
図1〜図13には、符号1でガス交換弁が示されている。ガス交換弁1はスレーブシリンダ2に結合されており、この場合、このスレーブシリンダ2は圧力負荷されるとガス交換弁1を開放することができる。各スレーブシリンダ2には、それぞれ1つのハイドロリック管路3が接続されている。これらのハイドロリック管路3は「ブラックボックス」として図示された制御装置4によってコントロールされている。ハイドロリック管路3は制御装置4の他方の側において分岐された後に一方では逆止弁5に通じている。これらの逆止弁5は低圧液のための供給管路6に接続されており、この場合、この供給管路6はオイルポンプ7に接続されている。ハイドロリック管路3はその分岐後に他方ではセル(小室)8に通じている。これらのセル8はステータ9とベーン10とカム11とによって画定されている。カム11は、図13に示したカムシャフト35に装着案内されている。側方の画定もしくは仕切りは各1つの壁を介して行われる。セルとステータとベーンとカムとから成るユニットは「マスタアクチュエータ12」とも呼ばれる。
【0030】
カム11に設けられたカムプロフィール13がベーン10に沿って移動すると、セル8内の体積が変化する。ハイドロリック液はハイドロリック管路3を通じて制御装置4にまで圧送され、さらに制御装置4から所要量がスレーブシリンダ2にまで圧送される。
【0031】
セル8に並んで室14が設けられており、これらの室14はセル8の間の間隔を確保している。
【0032】
図2および図3には、それぞれ1つのセル8が拡大されて図示されており、さらにこれに並んで対応するガス交換弁のためのリフト曲線が図示されている。カムプロフィール13は図2に示した周方向延在長さL1を有しており、これによりリフト曲線15が形成される。それに対して図3に示した周方向延在長さL2は図2の周方向延在長さL1よりも著しく大きく形成されているので、広幅のリフト曲線16が生ぜしめられる。
【0033】
図4には、図1に示した構成に対して補足的に、室14に漏れ管路17が接続されている。これらの漏れ管路17は1つの流出弁18によってコントロールされている。
【0034】
図5に示した実施例では、これらの漏れ管路17に、1つの過圧弁もしくは逃し弁19と、さらに符号20で示した1つの蓄圧器もしくは圧力アキュムレータとが接続されているので、漏れオイルは室14から流出するのではなく、規定された圧力レベルに保持される。さらに図5から判るように、一般に符号4で示した制御装置が複数の補償ピストン21を有しており、これらの補償ピストン21はハイドロリック管路3に接続されている。これらの補償ピストン21は圧縮ばね22によって負荷されており、これらの圧縮ばね22はストッパタペット23に支持されている。ストッパタペット23の位置は偏心板24によってコントロールされる。これらの偏心板24は1つのシャフトに装着配置されており、この場合、シャフトの位置、ひいては偏心板24の位置は、作動部材25によって規定される。
【0035】
この構成の場合でも、セル8の体積の減小によるセル8内での圧力形成時もしくは増圧時には、ハイドロリック管路3を通じてハイドロリック液が圧送される。この場合、ある程度の増圧を越えると、補償ピストン21がストッパタペット23の方向に運動し、そして補償ピストン21がストッパタペット23に当接するまで、補償ピストン21は特定量のハイドロリック液を収容する。その後ではじめて、スレーブシリンダ2内の増圧が行われ、ガス交換弁1の開放行程が行われる。圧縮ばね22のばね力を、ガス交換弁の閉鎖ばねの開放力に合わせて調整することは、当業者にとっては自明である。
【0036】
さらに図5から判るように、ステータ9に設けられたベーン10が補償室26に作用接続されている。これらの補償室26は分岐管路を介して各ハイドロリック管路3に接続されているので、セル8内での圧力形成時もしくは増圧時には、補償室26内での圧力上昇が行われる。これにより、ベーン10はカムプロフィール13に押圧されるので、一層良好なシールが得られる。
【0037】
図6に示した拡大図から判るように、ハイドロリック管路3には圧力室27が接続されている。この圧力室27は補償ピストン21によって画定される。ストッパタペット23はフランジ28を有しており、このフランジ28は補償ピストン21に設けられた段部を取り囲んでいる。ストッパタペット23のフランジ28は補償ピストン21と共に環状溝29を形成しており、この環状溝29はストッパタペット23における補償ピストン21の終端位置減衰のために働く。
【0038】
図7〜図12には、とりわけセル8の壁が図示されている。この壁は符号34で示されている。壁34には、流出窓30に相応した個数のセルが設けられている。壁34は回転可能であるので、流出窓30は、流出窓30全体が室14内に位置するか、または流出窓30全体がセル8内に位置するように調節され得る。
【0039】
図9および図10に図示されているような中間位置も可能である。流出窓30が室14の範囲に位置している場合、カムプロフィール13がセル内へ運動すると、セル内で通常の増圧が行われると同時にハイドロリック液の十分な圧送が行われる。図9および図10に図示されているように、流出窓30が部分的に室14に位置しかつ部分的にセル8に位置し、しかもカムプロフィール13の運動に先行するような位置に位置している場合には、減じられた圧送容量を有する遅延された増圧が行われる。なぜならば、この場合にもちろん放圧されているか、または小さな圧力でしか負荷されていない室14内へ容量が逃出し得るからである。
【0040】
図11および図12から判るように、流出窓30は、カムプロフィール13と同じ半径方向高さを有しているので、流出窓30がセル8の範囲に位置すると、セル8内での著しい増圧は行われない。なぜならば、流出窓30の半径方向外側に位置する容量が圧縮されないからである。
【0041】
図13では、圧力形成および量制御のために設けられた全ての構成部分が1つの構成ユニットにまとめられている。ストッパタペット23は半径方向でステータ9から突出していて、制御面31に作用接続されている。これらの制御面31は制御リング32に配置されており、この制御リング32はステータ9を取り囲むように配置されている。制御リング32はウォームねじ山を有している。ウォームねじ山は符号33で示したウォームに作用接続されているので、軸方向で位置固定されたウォームが回転すると、制御リング32はステータ9を巡って回転させられるので、制御面31を介してストッパタペット23は半径方向に運動させられ、これにより量制御が行われる。
【0042】
この構成ユニットは、逆止弁5もステータ9に取り付けられていることで完成されている。
【符号の説明】
【0043】
1 ガス交換弁
2 スレーブシリンダ
3 ハイドロリック管路
4 制御装置
5 逆止弁
6 供給管路
7 オイルポンプ
8 セル
9 ステータ
10 ベーン
11 カム
12 マスタアクチュエータ
13 カムプロフィール
14 室
15 リフト曲線
16 リフト曲線
17 漏れ管路
18 流出弁
19 逃し弁
20 圧力アキュムレータ
21 補償ピストン
22 圧縮ばね
23 ストッパタペット
24 偏心板
25 作動部材
26 補償室
27 圧力室
28 フランジ
29 環状溝
30 流出窓
31 制御面
32 制御リング
33 ウォーム
34 壁
35 カムシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動ピストン内燃機関のガス交換弁(1)をハイドロリック的に制御するための装置であって、スレーブシリンダ(2)が設けられており、該スレーブシリンダ(2)が、それぞれ1つまたは複数のガス交換弁(1)に作用接続されており、マスタアクチュエータ(12)が設けられており、該マスタアクチュエータ(12)が、往復動ピストン内燃機関により回転可能に駆動されるカムシャフト(35)に設けられた、基本プロフィールとカムプロフィール(13)とを備えた少なくとも1つのカム(11)に作用接続されていて、スレーブシリンダ(2)にハイドロリック的に接続可能であり、作動部材(25)によってコントロールされた制御装置(4)が設けられており、該制御装置(4)が、スレーブシリンダ(2)に供給されるハイドロリック液の量を制御しており、少なくとも1つの供給管路(6)が設けられており、該供給管路(6)を通じて当該装置に、少なくとも1つの逆止弁(5)によって圧力源から低圧液が供給可能である形式のものにおいて、マスタアクチュエータ(12)が、複数の可動のベーン(10)と、該ベーン(10)を支持する構成エレメントと、複数の壁(34)とによって画定されたセル(8)を有しており、前記ベーン(10)が、前記少なくとも1つのカム(11)の基本プロフィールおよびカムプロフィール(13)に作用接続されていることを特徴とする、往復動ピストン内燃機関のガス交換弁をハイドロリック的に制御するための装置。
【請求項2】
ベーン(10)を支持する構成エレメントが、前記少なくとも1つのカム(11)を取り囲むステータ(9)として形成されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
セル(8)の個数およびスレーブシリンダ(2)に対するセル(8)の対応関係ならびにカム(11)の個数が、内燃機関のシリンダ数および点火順序に適合されている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
ベーン(10)が、カムプロフィール(13)の方向に、たとえばばねまたはハイドロリック圧によって負荷されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
ベーン(10)が、ステータ(9)に設けられた補償室(26)に作用接続されており、該補償室(26)が、ハイドロリック液のための接続部に接続されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
マスタアクチュエータ(12)がスレーブシリンダ(2)にハイドロリック管路(3)によってハイドロリック的に接続されており、該ハイドロリック管路(3)が、セル(8)に接続されていると共に、逆止弁(5)によって低圧液のための供給管路(6)に接続されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
往復動ピストン内燃機関のオイルポンプ(7)が圧力源として働く、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
各セル(8)の間に室(14)が設けられている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記室(14)に有利には少なくとも1つの流出弁(18)または逃し弁(19)によってコントロールされた漏れ管路(17)が接続されている、請求項8記載の装置。
【請求項10】
カムプロフィール(13)が、周方向で見て、ガス交換弁(1)の汎用のリフト曲線(15)の寸法を超えて拡幅されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
制御装置(4)が、セル(8)に作用接続された流出開口を有しており、該流出開口の横断面が調節可能である、請求項1から10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つの壁(34)に、セル(8)の個数に相当する流出窓(30)が設けられている、請求項11記載の装置。
【請求項13】
壁(34)が回転可能に形成されていて、前記流出窓(30)が、セル(8)と、隣接した室(14)との間で旋回可能である、請求項11または12記載の装置。
【請求項14】
流出窓(30)の半径方向の延在長さが、カムプロフィール(13)の半径方向の延在長さにほぼ相当している、請求項11から13までのいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
制御装置(4)が、ハイドロリック管路(3)に接続された補償ピストン(21)を有しており、該補償ピストン(21)が、ばね負荷されていて、調節可能な終端ストッパに結合されている、請求項1から14までのいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
終端ストッパがストッパタペット(23)として形成されていて、有利には圧縮ばね(22)を収容するためにポット状に形成されている、請求項15記載の装置。
【請求項17】
ストッパタペット(23)と補償ピストン(21)とが、互いに向かい合わされた面に、終端位置減衰のための環状溝(29)を形成している、請求項15または16記載の装置。
【請求項18】
ストッパタペット(23)が、回転可能に支承された偏心板(24)に作用接続されている、請求項15から17までのいずれか1項記載の装置。
【請求項19】
前記偏心板(24)が、1つの共通の軸に配置されており、該軸が、作動部材(25)に結合されている、請求項15から18までのいずれか1項記載の装置。
【請求項20】
補償ピストン(21)とストッパタペット(23)とが、ステータ(9)に、有利には半径方向に向けられて配置されている、請求項15から17までのいずれか1項記載の装置。
【請求項21】
ストッパタペット(23)が制御リング(32)に作用接続されており、該制御リング(32)が、ストッパタペット(23)に嵌合した制御面(31)を有しており、該制御面(31)の半径方向の深さが、周面に沿って変化していて、制御リング(32)の回転によりストッパタペット(23)の位置が変化されるようになっている、請求項20記載の装置。
【請求項22】
制御リング(32)がステータ(9)に支承されている、請求項20または21記載の装置。
【請求項23】
制御リング(32)が、伝動装置エレメント、有利にはウォームねじ山を有しており、該伝動装置エレメントが、第2の伝動装置エレメント、有利にはウォーム(33)に結合されており、該第2の伝動装置エレメントが前記作動部材(25)に結合されている、請求項20から22までのいずれか1項記載の装置。
【請求項24】
少なくとも1つのカム(11)と、複数のセル(8)および該セルに対応する構成部分と、複数の補償ピストン(21)と、複数のストッパタペット(23)と、1つの制御リング(32)とが、ホイール/ディスク状の1つの構成ユニットにまとめられている、請求項1から23までのいずれか1項記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−513767(P2010−513767A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540684(P2009−540684)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061957
【国際公開番号】WO2008/071502
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(390009623)シエツフレル コマンディートゲゼルシャフト (99)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【出願人】(593097719)アー エフ テー アトラス ファールツォイクテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】AFT Atlas Fahrzeugtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Gewerbestr.14,Werdohl,Germany
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany
【Fターム(参考)】