説明

往復動ポンプ及びそれを具備した透析装置

【課題】被供給部に供給すべき液体や被供給部からの排液が外部に漏れてしまうのを回避することができる往復動ポンプ及びそれを具備した透析装置を提供する。
【解決手段】給液側ポンプ室P1の外側に隣接して設けられた給液側副ポンプ室P1aと、排液側ポンプ室P2の外側に隣接して設けられた排液側副ポンプ室P2aと、給液側ポンプ室P1、給液側副ポンプ室P1a、排液側ポンプ室P2及び排液側副ポンプ室P2aを貫通して延設されるとともに、プランジャ2とモータMとを連結して成るロッド7と、給液側ポンプ室P1と給液側副ポンプ室P1aとの間におけるロッド7の貫通部、及び排液側ポンプ室P2と排液側副ポンプ室P2aとの間におけるロッド7の貫通部のそれぞれに配設されたシール手段12、13とを具備したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給液側ポンプ室により液体を被供給部に供給するとともに当該被供給部からの排液を排液側ポンプ室に導出して排出するための往復動ポンプ及びそれを具備した透析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液透析治療において用いられるダイアライザ等の血液浄化器には、透析液を供給するための透析液供給ラインと、透析排液を排出するための透析液排出ラインとが接続される。これら透析液供給ライン及び透析液排出ラインは、透析装置本体から延設されて血液浄化器に接続され、透析液を血液浄化器に供給しつつ当該血液浄化器からの透析排液を排出し得るよう構成されている。
【0003】
また、透析装置本体には、透析液供給ラインと透析液排出ラインとに跨って往復動ポンプ(複式ポンプ)が配設されている。かかる往復動ポンプは、図6、7に示すように、プランジャ102を往復動自在に収容する筐体101と、筐体101内に形成されるとともにプランジャ102にて隔成された給液側ポンプ室P1及び排液側ポンプ室P2と、給液側ポンプ室P1と連通した給液側ポート105、106と、排液側ポンプ室P2と連通した排液側ポート107、108と、プランジャ102を往復動させるためのモータMとを具備している。
【0004】
また、給液側ポート105、106には、それぞれ逆止弁V1、V2が形成されるとともに、排液側ポート107、108には、それぞれ逆止弁V3、V4が形成されており、給液側ポンプ室P1にて透析液を吸込みつつその透析液を血液浄化器に供給し、排液側ポンプ室P2にて血液浄化器からの排液を導きつつその排液を外部に排出させ得るよう構成されている。
【0005】
モータMには、その出力軸Maを介して偏心カム103が形成されており、当該偏心カム103の動作にて往復動可能なブロック104がプランジャ102に配設されている。而して、モータMを駆動させることにより、ブロック104を介してプランジャ102を往復動させ、その動作に伴って給液側ポンプ室P1にて透析液を吸込みつつその透析液を血液浄化器に供給するとともに、排液側ポンプ室P2にて血液浄化器からの排液を導きつつその排液を外部に排出させ得るようになっている。このような往復動ポンプは、例えば特許文献1にて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−284772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の往復動ポンプにおいては、図6、7に示すように、筐体101にモータMを配設するためのモータ用筐体101aが必要とされるとともに、当該モータ用筐体101aと筐体101との間にシール材S1、S2を介在させた構造とされているので、当該シール材S1、S2の経年劣化等により血液浄化器に供給すべき透析液や血液浄化器からの排液が往復動ポンプの外部に漏れてしまう虞があった。このような問題は、血液浄化器以外の被供給部に液体を供給する他の分野の往復動ポンプにおいても同様に生じている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、被供給部に供給すべき液体や被供給部からの排液が外部に漏れてしまうのを回避することができる往復動ポンプ及びそれを具備した透析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、被供給部に液体を供給するための給液側ポンプ室と、前記被供給部から排出された排液を排出するための排液側ポンプ室と、前記給液側ポンプ室と排液側ポンプ室との間で往復動可能とされ、当該往復動により、前記給液側ポンプ室に対する液体の吸込みと吐出及び前記排液側ポンプ室に対する排液の吸込みと吐出を行わせる往復動手段と、該往復動手段を往復動させるための駆動源とを備え、前記給液側ポンプ室により液体を被供給部に供給するとともに当該被供給部からの排液を前記排液側ポンプ室により排出するための往復動ポンプであって、前記給液側ポンプ室の外側に隣接して設けられた給液側副ポンプ室と、前記排液側ポンプ室の外側に隣接して設けられた排液側副ポンプ室と、前記給液側ポンプ室、給液側副ポンプ室、排液側ポンプ室及び排液側副ポンプ室を貫通して延設されるとともに、前記往復動手段と駆動源とを連結して成り、前記駆動源の駆動力を前記往復動手段に伝達して往復動させ得るロッドと、前記給液側ポンプ室と給液側副ポンプ室との間における前記ロッドの貫通部、及び前記排液側ポンプ室と排液側副ポンプ室との間における当該ロッドの貫通部のそれぞれに配設されたシール手段とを具備したことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の往復動ポンプにおいて、前記ロッドの先端側及び基端側にそれぞれ取り付けられて前記給液側副ポンプ室及び排液側副ポンプ室を形成するダイアフラムを有したことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の往復動ポンプにおいて、前記給液側ポンプ室及び給液側副ポンプ室を介して前記被供給部に液体が供給されるとともに、前記排液側ポンプ室及び排液側副ポンプ室を介して前記被供給部からの排液を排出することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の往復動ポンプにおいて、前記往復動手段は、前記ロッドに形成されて前記給液側ポンプ室と排液側ポンプ室とを隔成するプランジャから成り、且つ、前記給液側ポンプ室と排液側ポンプ室との間の位置であって当該プランジャが往復動する略中央の位置に中央シール手段を形成し、当該中央シール手段により当該給液側ポンプ室と排液側ポンプ室とを液密状態で隔成したことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の往復動ポンプにおいて、前記往復動手段は、前記ロッドに形成されて前記給液側ポンプ室と排液側ポンプ室とを隔成するダイアフラムから成ることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか1つに記載の往復動ポンプにおいて、前記被供給部は血液浄化器から成るとともに、前記液体は透析液から成ることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の往復動ポンプを具備したことを特徴とする透析装置。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、給液側ポンプ室及び排液側ポンプ室の外側に給液側副ポンプ室及び排液側副ポンプ室を設け、それら給液側ポンプ室と給液側副ポンプ室との間におけるロッドの貫通部、及び排液側ポンプ室と排液側副ポンプ室との間におけるロッドの貫通部にそれぞれシール手段を配設したので、給液側ポンプ室及び排液側ポンプ室の定量性が保たれ、シール手段の経年劣化等によりシールに漏れが発生しても、それぞれの副ポンプ室(給液側副ポンプ室及び排液側副ポンプ室)に流れ込むため、外部への漏れが回避できる。
【0017】
請求項2の発明によれば、ロッドの先端側及び基端側にそれぞれ取り付けられて給液側副ポンプ室及び排液側副ポンプ室を形成するダイアフラムを有したので、当該ダイアフラムの取り付け部位に対する別個のシール手段を不要とすることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、給液側ポンプ室及び給液側副ポンプ室を介して被供給部に液体が供給されるとともに、排液側ポンプ室及び排液側副ポンプ室を介して被供給部からの排液を排出するので、シール手段の経年劣化等により給液側ポンプ室から給液側副ポンプ室に液体が漏れてしまった場合、その漏れた液体を当該給液側副ポンプ室から被供給部に供給することができ、排液側ポンプ室から排液側副ポンプ室に排液が漏れてしまった場合、その漏れた排液を当該排液側副ポンプ室から排出させることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、給液側ポンプ室と排液側ポンプ室との間の位置であってプランジャが往復動する略中央の位置に中央シール手段を形成し、当該中央シール手段により当該給液側ポンプ室と排液側ポンプ室とを液密状態で隔成したので、中央シール手段が経年劣化等した場合であっても、液体が給液側ポンプ室から排液側ポンプ室に至り、或いは排液が排液側ポンプ室から給液側ポンプ室に至ることとなり、往復動ポンプの外部に漏れてしまうのを回避することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、往復動手段は、ロッドに形成されて給液側ポンプ室と排液側ポンプ室とを隔成するダイアフラムから成るので、往復動手段をプランジャで構成するものに比べ、給液側ポンプ室と排液側ポンプ室とを液密状態で隔成するシール手段等を不要とすることができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、被供給部は血液浄化器から成るとともに、液体は透析液から成るので、血液浄化器に供給すべき透析液や当該血液浄化器からの透析液排液が往復動ポンプの外部に漏れてしまうのを回避することができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、請求項6記載の往復動ポンプが奏する効果を有した透析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願発明の実施形態に係る往復動ポンプを示す縦断面図
【図2】図1におけるII−II線断面図
【図3】図1におけるIII−III線断面図
【図4】同往復動ポンプにおける血液浄化器との接続関係を示す模式図
【図5】本願発明の他の実施形態に係る往復動ポンプを示す縦断面図
【図6】従来の往復動ポンプを示す横断面図
【図7】従来の往復動ポンプを示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る往復動ポンプは、血液透析装置に適用され、給液側ポンプ室により液体を被供給部に供給するとともに当該被供給部からの排液を排液側ポンプ室により排出するための所謂複式ポンプから成り、図1〜3に示すように、給液側ポンプ室P1及び排液側ポンプ室P2が形成された筐体1と、往復動手段としてのプランジャ2と、ダイアフラム8にて形成される給液側副ポンプ室P1aと、ダイアフラム9にて形成される排液側副ポンプ室P2aと、ロッド7と、駆動源としてのモータMと、シール手段12、13と、中央シール手段14とから主に構成されている。
【0025】
当該往復動ポンプは、図4に示すように、被供給部としての血液浄化器15と接続される。かかる血液浄化器15は、血液導入口15a及び血液導出口15bと、透析液導入口15c及び透析液導出口15dとが形成されており、血液導入口15aに動脈側血液回路16が接続されるとともに、血液導出口15bに静脈側血液回路17が接続される。また、透析液導入口15cには、往復動ポンプから延設された透析液導入ラインL1が接続されるとともに、透析液導出口15dには、往復動ポンプから延設された透析液導出ラインL2が接続される。
【0026】
動脈側血液回路16及び静脈側血液回路17は、患者の血液を体外循環させる血液回路を構成するもので、それぞれの先端には動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針(何れも不図示)が取り付けられるようになっている。これら動脈側血液回路16と静脈側血液回路17との間に接続される血液浄化器15は、その筐体内に複数の中空糸膜(血液浄化膜)が配設されており、該中空糸膜内部が血液導入口15a及び血液導出口15bを連通して、血液回路中を流れる血液を流通させ得る血液流路を成している一方、中空糸膜の外周面と筐体内周壁との間の空間が透析液導入口15c及び透析液導出口15dを連通して、往復動ポンプから供給された透析液(液体)を流通させ得る透析液流路を成している。尚、中空糸膜には複数の微少孔が形成されているため、血液が血液流路を通過し、透析液が透析液流路を通過する際、当該中空糸膜を介して血液中の不要物(老廃物)が透析液側に透析除去することができるよう構成されている。
【0027】
一方、本往復動ポンプに係る筐体1は、金属製や硬質樹脂製の成形部品等から成るもので、その内部に給液側ポンプ室P1、排液側ポンプ室P2、給液側副ポンプ室P1a及び排液側副ポンプ室P2aが形成されている。また、筐体1における給液側副ポンプ室P1aの上下方向には、当該給液側副ポンプ室P1aと連通した突接続口1a、1bが突出形成されており、これら突接続口1a、1bに対して任意流路(可撓性チューブ等)を接続し得るようになっている。同様に、筐体1における排液側副ポンプ室P2aの上下方向には、当該排液側副ポンプ室P2aと連通した突接続口1c、1dが突出形成されており、これら突接続口1c、1dに対して任意流路(可撓性チューブ等)を接続し得るようになっている。
【0028】
給液側ポンプ室P1は、血液浄化器15(図4参照)に透析液を供給するためのもので、上下方向には給液側導入ポート3及び給液側導出ポート4がそれぞれ取り付けられている。尚、図中符号V1、V2は、給液側導入ポート3及び給液側導出ポート4にそれぞれ取り付けられた逆止弁を示しており、図中下方から上方への透析液の流通を許容するとともに、上方から下方への透析液の流通を規制するようになっている。
【0029】
排液側ポンプ室P2は、血液浄化器15から排出された排液を排出するためのもので、上下方向には排液側導入ポート5及び排液側導出ポート6がそれぞれ取り付けられている。尚、図中符号V3、V4は、排液側導入ポート5及び排液側導出ポート6にそれぞれ取り付けられた逆止弁を示しており、図中下方から上方への排液の流通を許容するとともに、上方から下方への排液の流通を規制するようになっている。
【0030】
プランジャ2は、給液側ポンプ室P1と排液側ポンプ室P2との間で往復動可能とされ、当該往復動により、給液側ポンプ室P1に対する透析液の吸込みと吐出及び排液側ポンプ室P2に対する透析排液の吸込みと吐出を行わせるものであり、駆動源としてのモータMの駆動により往復動が可能とされている。即ち、モータMが駆動してプランジャ2が図中左右方向に往復動することにより、給液側ポンプ室P1においては、透析液の吸込みと血液浄化器15に対する供給とが繰り返し行われるとともに、排液側ポンプ室P2においては、血液浄化器15からの排液の導入と外部への排出とが繰り返し行われるようになっているのである。
【0031】
給液側副ポンプ室P1aは、給液側ポンプ室P1の外側(図中左側)に隣接して設けられたものであり、突接続口1a、1bにより透析液の流入及び流出が可能とされるとともに、ロッド7に取り付けられたダイアフラム8にて当該給液側副ポンプ室P1aを成す空間が形成されている。ダイアフラム8は、その縁部が筐体1に液密状態で嵌合固定されており、ロッド7の移動に伴って撓んで給液側副ポンプ室P1aの容積を可変とするよう構成されている。
【0032】
排液側副ポンプ室P2aは、排液側ポンプ室P2の外側(図中右側)に隣接して設けられたものであり、突接続口1c、1dにより排液の流入及び流出が可能とされるとともに、ロッド7に取り付けられたダイアフラム9にて当該排液側副ポンプ室P2aを成す空間が形成されている。ダイアフラム9は、その縁部が筐体1に液密状態で嵌合固定されており、ロッド7の移動に伴って撓んで排液側副ポンプ室P2aの容積を可変とするよう構成されている。
【0033】
ロッド7は、給液側ポンプ室P1、給液側副ポンプ室P1a、排液側ポンプ室P2及び排液側副ポンプ室P2aを貫通して延設されるとともに、プランジャ2(往復動手段)とモータM(駆動源)とを連結して成り、当該モータMの駆動力をプランジャ2に伝達して往復動させ得るものである。より具体的には、ロッド7は、その先端側にダイアフラム8及び基端側にダイアフラム9が固定されるとともに、当該ダイアフラム8とダイアフラム9との略中間の部分にプランジャ2が形成されており、当該プランジャ2と共にこれらダイアフラム8、9の中央部位が変位して全体が撓むようになっている。
【0034】
而して、給液側副ポンプ室P1aは、給液側ポンプ室P1と連通して透析液を収容及び流通可能とされるとともに、プランジャ2と連動して当該給液側ポンプ室P1の容積変化と逆の容積変化(給液側ポンプ室P1の容積が増加するのに伴って容積が低減され、当該給液側ポンプ室P1の容積が低減するのに伴って容積が増加する如き容積変化)を伴うよう構成されたものとされ、排液側副ポンプ室P2aは、排液側ポンプ室P2と連通して排液を収容及び流通可能とされるとともに、プランジャ2と連動して当該排液側ポンプ室P2の容積変化と逆の容積変化(排液側ポンプ室P2の容積が増加するのに伴って容積が低減され、当該排液側ポンプ室P2の容積が低減するのに伴って容積が増加する如き容積変化)を伴うよう構成されている。
【0035】
また、ロッド7の基端側には、図1に示すように、クロスヘッド7aが形成されており、このクロスヘッド7aにロッド7全体の往復動を案内するクロスヘッドシリンダ11が当接しつつ配設されている。モータMは、駆動により回転する出力軸Maが形成されており、当該出力軸Maとクロスヘッド7aとの間にはコネクティングロッド10が接続されている。而して、モータMが駆動すると、コネクティングロッド10を介してロッド7が図中左右方向に往復動し得るようになっている。
【0036】
シール手段12、13は、給液側ポンプ室P1と給液側副ポンプ室P1aとの間におけるロッド7の貫通部、及び排液側ポンプ室P2と排液側副ポンプ室P2aとの間における当該ロッド7の貫通部のそれぞれに配設された例えばOリング等の汎用シール部品から成るもので、ロッド7の摺動を許容させつつ、給液側ポンプ室P1と給液側副ポンプ室P1aとの間、及び排液側ポンプ室P2と排液側副ポンプ室P2aとの間のシール(もれ防止)を行い得るものとされる。
【0037】
中央シール手段14は、給液側ポンプ室P1と排液側ポンプ室P2との間の位置であってプランジャ2が往復動する略中央の位置に形成された例えばOリング等の汎用シール部品から成るもので、当該中央シール手段14により当該給液側ポンプ室P1と排液側ポンプ室P2とを液密状態で隔成し得るようになっている。即ち、給液側ポンプ室P1は、シール手段12と中央シール手段14とでシールされるとともに、排液側ポンプ室P2は、シール手段13と中央シール手段14とでシールされているのである。
【0038】
ここで、本実施形態においては、給液側ポンプ室P1及び給液側副ポンプ室P1aを介して血液浄化器15に透析液が供給されるとともに、排液側ポンプ室P2及び排液側副ポンプ室P2aを介して血液浄化器15からの排液を排出するよう構成されている。より具体的には、図4に示すように、血液浄化器15の透析液導入口15cと突接続口1bとの間に透析液導入ラインL1が接続されるとともに、当該血液浄化器15の透析液導出口15dと突接続口1cとの間に透析液導出ラインL2が接続されている。
【0039】
また、突接続口1aと給液側導出ポート4とは、透析液導入ラインL1の一部を構成する流路L4が接続されるとともに、給液側導入ポート3は、当該透析液導入ラインL1の一部を構成する流路L3に接続されている。かかる流路L3は、図示しない所定濃度に調製された透析液の供給源等が接続されており、かかる供給源から送られた透析液が給液側ポンプ室P1及び給液側副ポンプ室P1aを通って血液浄化器15に供給されるようになっている。
【0040】
一方、突接続口1dと排液側導入ポート5とは、透析液導出ラインL2の一部を構成する流路L5が接続されるとともに、排液側導出ポート6は、当該透析液導出ラインL2の一部を構成する流路L6に接続されている。かかる流路L6は、図示しない排液手段等が接続されており、血液浄化器15からの排液が排液側副ポンプ室P2a及び排液側ポンプ室P2を通って排液手段まで排出されるようになっている。尚、同図中符号Va、Vbは、流路L4及びL6にそれぞれ接続された背圧弁を示している。
【0041】
そして、モータMを駆動させてプランジャ2を往復動させる過程において、当該プランジャ2が図4中右側へ移動すると、透析液の供給源から給液側ポンプ室P1に対する透析液の吸込みがなされつつ、ダイアフラム8の略中央が右側に押圧されて撓んで給液側副ポンプ室P1aの容積が減少することにより、給液側副ポンプ室P1aから透析液導入ラインL1を介して血液浄化器15に透析液が供給されることとなる。一方、モータMを駆動させてプランジャ2を往復動させる過程において、当該プランジャ2が図1中左側へ移動すると、給液側ポンプ室P1から血液浄化器15に対する透析液の供給がなされつつ、ダイアフラム8の略中央が左側に押圧されて撓んで給液側副ポンプ室P1aの容積が増加することにより、給液側ポンプ室P1から血液浄化器15に供給される透析液の一部を給液側副ポンプ室P1aが吸収したり補ったりすることとなる。
【0042】
例えば、給液側ポンプ室P1及び排液側ポンプ室P2を給液側副ポンプ室P1a及び排液側副ポンプ室P2aの2倍程度の吐出容量とすれば、往復動ポンプから血液浄化器15に透析液が供給される際に生じる脈動が均されることとなり、当該脈動を低減させることができる。尚、給液側ポンプ室P1及び排液側ポンプ室P2は、その吐出容量が給液側副ポンプ室P1a及び排液側副ポンプ室P2aよりも大きければ脈動を低減させることができる。
【0043】
然るに、給液側ポンプ室P1及び給液側副ポンプ室P1aを介して血液浄化器15に透析液が供給されるとともに、排液側ポンプ室P2及び排液側副ポンプ室P2aを介して血液浄化器15からの排液を吐出するよう構成されていれば他の接続関係にて構成してもよく、例えば給液側導出ポート4と透析液導入口15c、排液側導入ポート5と透析液導出口15dとをそれぞれ接続するとともに、給液側導入ポート3と突接続口1b及び排液側導出ポート6と突接続口1cとを接続し、透析液の供給源から突接続口1aを介して透析液を吸込みつつ突接続口1dを介して排液を排出させるようにしてもよい。
【0044】
上記実施形態によれば、給液側ポンプ室P1及び排液側ポンプ室P2の外側に給液側副ポンプ室P1a及び排液側副ポンプ室P2aを設け、それら給液側ポンプ室P1と給液側副ポンプ室P1aとの間におけるロッド7の貫通部、及び排液側ポンプ室P2と排液側副ポンプ室P2aとの間におけるロッド7の貫通部にそれぞれシール手段12、13を配設したので、血液浄化器15に供給すべき透析液や血液浄化器15からの排液が往復動ポンプの外部に漏れてしまうのを回避することができる。
【0045】
また、ロッド7の先端側及び基端側にそれぞれ取り付けられて給液側副ポンプ室P1a及び排液側副ポンプ室P2aを形成するダイアフラム8、9を有したので、当該ダイアフラム8、9の取り付け部位に対する別個のシール手段を不要とすることができる。更に、給液側ポンプ室P1及び給液側副ポンプ室P1aを介して血液浄化器15に透析液が供給されるとともに、排液側ポンプ室P2及び排液側副ポンプ室P2aを介して血液浄化器15からの排液を排出するので、シール手段12の経年劣化等により給液側ポンプ室P1から給液側副ポンプ室P1aに透析液が漏れてしまった場合、その漏れた透析液を当該給液側副ポンプ室P1aから血液浄化器15に供給することができ、排液側ポンプ室P2から排液側副ポンプ室P2aに排液が漏れてしまった場合、その漏れた排液を当該排液側副ポンプ室P2aから排出させることができる。
【0046】
更に、給液側ポンプ室P1と排液側ポンプ室P2との間の位置であってプランジャ2が往復動する略中央の位置に中央シール手段14を形成し、当該中央シール手段14により当該給液側ポンプ室P1と排液側ポンプ室P2とを液密状態で隔成したので、中央シール手段14が経年劣化等した場合であっても、透析液が給液側ポンプ室P1から排液側ポンプ室P2に至り、或いは排液が排液側ポンプ室P2から給液側ポンプ室P1に至ることとなり、往復動ポンプの外部に漏れてしまうのを回避することができる。
【0047】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図5に示すように、プランジャ2に代えて、ロッド7に形成されて給液側ポンプ室P1と排液側ポンプ室P2とを隔成するダイアフラム18で往復動手段を構成するようにしてもよい。この場合であっても、上記実施形態と同様、給液側ポンプ室P1及び排液側ポンプ室P2の外側に給液側副ポンプ室P1a及び排液側ポンプ室P2aを設け、それら給液側ポンプ室P1と給液側副ポンプ室P1aとの間におけるロッド7の貫通部、及び排液側ポンプ室P2と排液側副ポンプ室P2aとの間におけるロッド7の貫通部にそれぞれシール手段12、13を配設したので、血液浄化器15に供給すべき透析液や血液浄化器15からの排液が往復動ポンプの外部に漏れてしまうのを回避することができる。更に、かかる実施形態とすれば、ダイアフラム18から成る往復動手段としたので、先の実施形態の如き往復動手段をプランジャで構成するものに比べ、給液側ポンプ室P1と排液側ポンプ室P2とを液密状態で隔成させる中央シール手段14を不要とすることができる。
【0048】
また、給液側ポンプ室P1及び給液側副ポンプ室P1aを介して血液浄化器15に透析液が供給されるとともに、排液側ポンプ室P2及び排液側副ポンプ室P2aを介して血液浄化器15からの排液を排出するよう構成されていれば、図4で示す如き接続形態に限定されず、種々の接続形態とすることができる。尚、シール手段12、13及び中央シール手段14は、Oリングから成るものに代え、他の形態のシール手段とすることができる。
【0049】
また更に、本発明は、血液浄化器15に透析液を供給するものに限定されず、当該血液浄化器15以外の被供給部に液体を供給し得る他の往復動ポンプ(汎用の産業用ポンプ全般)に適用することができる。この場合であっても、給液側ポンプ室及び排液側ポンプ室の外側に給液側副ポンプ室及び排液側ポンプ室を設け、それら給液側ポンプ室と給液側副ポンプ室との間におけるロッドの貫通部、及び排液側ポンプ室と排液側副ポンプ室との間におけるロッドの貫通部にそれぞれシール手段を配設することにより、被供給部に供給すべき液体や当該被供給部からの排液が往復動ポンプの外部に漏れてしまうのを回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
給液側ポンプ室の外側に隣接して設けられた給液側副ポンプ室と、排液側ポンプ室の外側に隣接して設けられた排液側副ポンプ室と、給液側ポンプ室、給液側副ポンプ室、排液側ポンプ室及び排液側副ポンプ室を貫通して延設されるとともに、往復動手段と駆動源とを連結して成り、駆動源の駆動力を往復動手段に伝達して往復動させ得るロッドと、給液側ポンプ室と給液側副ポンプ室との間におけるロッドの貫通部、及び排液側ポンプ室と排液側副ポンプ室との間における当該ロッドの貫通部のそれぞれに配設されたシール手段とを具備した往復動ポンプ及びそれを具備した透析装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 筐体
2 プランジャ(往復動手段)
3 給液側導入ポート
4 給液側導出ポート
5 排液側導入ポート
6 排液側導出ポート
7 ロッド
8 ダイアフラム
9 ダイアフラム
10 コネクティングロッド
11 クロスヘッドシリンダ
12 シール手段
13 シール手段
14 中央シール手段
15 血液浄化器(被供給部)
16 動脈側血液回路
17 静脈側血液回路
18 ダイアフラム(往復動手段)
M モータ(駆動源)
P1 給液側ポンプ室
P1a 給液側副ポンプ室
P2 排液側ポンプ室
P2a 排液側副ポンプ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被供給部に液体を供給するための給液側ポンプ室と、
前記被供給部から排出された排液を排出するための排液側ポンプ室と、
前記給液側ポンプ室と排液側ポンプ室との間で往復動可能とされ、当該往復動により、前記給液側ポンプ室に対する液体の吸込みと吐出及び前記排液側ポンプ室に対する排液の吸込みと吐出を行わせる往復動手段と、
該往復動手段を往復動させるための駆動源と、
を備え、前記給液側ポンプ室により液体を被供給部に供給するとともに当該被供給部からの排液を前記排液側ポンプ室により排出するための往復動ポンプであって、
前記給液側ポンプ室の外側に隣接して設けられた給液側副ポンプ室と、
前記排液側ポンプ室の外側に隣接して設けられた排液側副ポンプ室と、
前記給液側ポンプ室、給液側副ポンプ室、排液側ポンプ室及び排液側副ポンプ室を貫通して延設されるとともに、前記往復動手段と駆動源とを連結して成り、前記駆動源の駆動力を前記往復動手段に伝達して往復動させ得るロッドと、
前記給液側ポンプ室と給液側副ポンプ室との間における前記ロッドの貫通部、及び前記排液側ポンプ室と排液側副ポンプ室との間における当該ロッドの貫通部のそれぞれに配設されたシール手段と、
を具備したことを特徴とする往復動ポンプ。
【請求項2】
前記ロッドの先端側及び基端側にそれぞれ取り付けられて前記給液側副ポンプ室及び排液側副ポンプ室を形成するダイアフラムを有したことを特徴とする請求項1記載の往復動ポンプ。
【請求項3】
前記給液側ポンプ室及び給液側副ポンプ室を介して前記被供給部に液体が供給されるとともに、前記排液側ポンプ室及び排液側副ポンプ室を介して前記被供給部からの排液を排出することを特徴とする請求項2記載の往復動ポンプ。
【請求項4】
前記往復動手段は、前記ロッドに形成されて前記給液側ポンプ室と排液側ポンプ室とを隔成するプランジャから成り、且つ、前記給液側ポンプ室と排液側ポンプ室との間の位置であって当該プランジャが往復動する略中央の位置に中央シール手段を形成し、当該中央シール手段により当該給液側ポンプ室と排液側ポンプ室とを液密状態で隔成したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の往復動ポンプ。
【請求項5】
前記往復動手段は、前記ロッドに形成されて前記給液側ポンプ室と排液側ポンプ室とを隔成するダイアフラムから成ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の往復動ポンプ。
【請求項6】
前記被供給部は血液浄化器から成るとともに、前記液体は透析液から成ることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の往復動ポンプ。
【請求項7】
請求項6記載の往復動ポンプを具備したことを特徴とする透析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate