説明

往復動圧縮機

【課題】製造コストを削減するとともに製造期間を短縮することができ、かつ比較的低温の気体を圧縮する場合においても吸気室の気密性を確保することができる往復動圧縮機を提供する。
【解決手段】圧縮室2a内でピストン3を往復動させて圧縮室2a内の気体を圧縮する往復動圧縮機21であって、圧縮室2a、および圧縮室2aに連通された吸気室5の間の連通部を開閉する開閉弁7と、吸気室5の外壁面に固定され、吸気室5の内外への熱の移動を抑制する断熱部材20と、断熱部材20および吸気室5の壁を貫通して設けられ、開閉弁7の開閉を行う作動軸16と、を備える往復動圧縮機21に係る。往復動圧縮機21は、断熱部材20の、作動軸16が貫通している貫通穴内に設けられ、該貫通穴と作動軸16との間の隙間を閉塞するシール部材19をさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮シリンダ内でピストンを往復動させて該圧縮シリンダ内にある気体を圧縮する往復動圧縮機に関する。特に、比較的低温の気体を圧縮する往復動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮シリンダ内でピストンを往復動させて、該圧縮シリンダ内の気体を圧縮する往復動圧縮機が知られている。
【0003】
図3は、往復動圧縮機の断面図である。図3に示すように、往復動圧縮機1は、圧縮シリンダ2と、圧縮シリンダ2内のピストン3を往復動させるピストン駆動部4と、を備えている。
【0004】
圧縮シリンダ2内は、ピストン3が往復移動することによって容積が変化する圧縮室2aと、圧縮室2aへ気体を吸気する吸気室5と、圧縮室2aから気体を吐出する吐出室6)と、に分けられている。吸気室5から圧縮室2aへ送られた気体がピストン3によって圧縮され、圧縮された気体が圧縮室2aから吐出室6へ送られる。
【0005】
往復動圧縮機1の、圧縮室2aと吸気室5との連通部、および圧縮室2aと吐出室6との連通部には開閉弁(以下、吸気弁7、吐出弁8)が配設されている。
【0006】
吸気弁7には、吸気室5と圧縮室2aとの圧力差により作動する逆止弁が用いられている。吸気弁7の構造および動作について、図4を用いて説明する。図4(a)は、閉じた状態にある吸気弁7の断面図であり、図4(b)は、開いた状態にある吸気弁7の断面図である。
【0007】
図4に示すように、吸気弁7は、吸気室5と圧縮室2aとの連通部を塞ぐように吸気室5の内壁面に固定された弁座9を備えている。弁座9には吸気室5と圧縮室2aとの間を連通する複数の連通孔10が形成されている。
【0008】
また、吸気弁7は、弁座9の圧縮室2a側に、連通孔10の全てを覆うことが可能な弁板11を備えている。弁板11は、弁座9を貫通する弁軸12を備えている。弁軸12が弁座9の貫通穴をスライド移動することによって、弁板11は吸気室5から圧縮室2aへ向かう方向の前後に移動する。図4(a)に示すように、弁板11が弁座9に接触している状態では、全ての連通孔10は弁座9によって閉塞される。弁板11が弁座9から離れる方向に移動することによって、連通孔10が開放される(図4(b))。
【0009】
また、吸気弁7は、弁板11を弁座9へ向かって付勢するコイルバネ13を有する弁板押さえ14を備えている。弁板押さえ14は弁座9に対して固定されている。したがって、弁板11にコイルバネ13以外の力が作用していないときは、弁板11はコイルバネ13によって弁座9に押し付けられ、連通孔10は閉塞される。
【0010】
ピストン3(図3)が、圧縮室2aの容積を縮小させる方向に移動するときには、圧縮室2a内の圧力は、吸気室5内の圧力と同じかそれよりも大きくなる。その結果、弁板11は、コイルバネ13の付勢力および圧縮室2a内の圧力により弁座9に押し付けられる(図4(a))。したがって、連通孔10が閉塞され、圧縮室2aから吸気室5へ向かって気体が流れなくなり、ピストン3により圧縮室2a内の気体が圧縮される。
【0011】
また、ピストン3(図3)が圧縮室2aの容積を拡大させる方向に移動するときには、圧縮室2a内の圧力は、吸気室5内の圧力よりも小さくなる。その結果、吸気室5内の気体は、コイルバネ13および圧縮室2aの気体が弁板11に加える力よりも大きい力を弁板11に加え、弁板11は弁座9から離れる方向に移動する(図4(b))。したがって、連通孔10が開放され、吸気室5内の気体が圧縮室2aへ吸気される。
【0012】
このように吸気弁7が動作することによって、吸気室5から圧縮室2aへ気体が吸気され、また圧縮室2a内で気体が圧縮される。図3に示すように、圧縮室2a内で気体が圧縮された後に吐出弁8が開放されることによって、圧縮された気体が圧縮室2aから吐出室6へ送られる。
【0013】
特許文献1や特許文献2では、気体を圧縮する往復動圧縮機であって、吸気弁を強制的に開放する吸気弁開放機構をさらに備えた往復動圧縮機が開示されている。以下、図5を用いて特許文献1や特許文献2に開示されている往復動圧縮機の説明をするが、図3,4と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0014】
図5は、特許文献1や特許文献2に開示されている吸気弁開放機構15の断面図である。図5に示すように、吸気弁開放機構15は、作動軸16と、作動軸16の軸方向へ作動軸16を押圧する作動軸押圧装置17と、を備えている。
【0015】
作動軸押圧装置17は吸気室5の外壁面に設置されており、作動軸16は吸気室5の壁を貫通して作動軸押圧装置17から弁軸12まで設けられている。作動軸押圧装置17が作動軸16を押圧することによって、作動軸16は弁板11を弁座9から離す方向に弁軸12および弁板11を押圧する。
【0016】
吸気室5の壁の、作動軸16が貫通している貫通穴には、作動軸16の移動を案内するための孔を有するホルダ部材18が、該貫通穴とホルダ部材18との間の隙間を封止するように設けられている。また、ホルダ部材18の孔には、Oリングといった、作動軸16と当該孔との間の隙間を閉塞するシール部材19が設けられており、吸気室5の密閉性が確保されている。
【0017】
コイルバネ13および圧縮室2a内の気体が弁板11に加える力よりも大きい力を作動軸押圧装置17が弁板11に加えることによって、弁板11が弁座9から離される。すなわち、連通孔10は圧縮室2a内の圧力にかかわらず強制的に開放される。
【0018】
吸気弁開放機構15を用いて吸気弁7を強制的に開放することによって、ピストン3が圧縮室2aの容積を縮小させる方向に移動する場合であっても、圧縮室2a内の気体が吸気室5へ流れ、圧縮室2a内で気体が圧縮されなくなる。その結果、圧縮室2aから吐出室6へ送られる気体の吐出量を減らすことができる。
【0019】
連通孔10の強制的な開放を解除する場合には、作動軸押圧装置17は作動軸16の押圧を停止する。弁板11に作動軸押圧装置の力が加えられなくなり、弁板11は圧縮室2aと吸気室5との圧力差に応じて移動し、連通孔10を開閉する。
【0020】
特許文献1や特許文献2で開示されている吸気弁開放機構15は、低温(例えば零下50℃以下)の気体を圧縮する往復動圧縮機にも採用されている。
【0021】
しかしながら、低温の気体を吸気室5から圧縮室2aへ送る場合、吸気室5の温度も低下し、作動軸押圧装置17の温度が低下する。作動軸押圧装置17を円滑に動作させるために作動軸押圧装置17に潤滑油が用いられている場合、作動軸押圧装置17の温度低下に伴って潤滑油の温度が低下する。その結果、作動軸押圧装置17が円滑に動作しなくなってしまうことがあった。
【0022】
そこで、低温の気体を圧縮する往復動圧縮機においては、作動軸押圧装置17は、図6に示すように吸気室5の壁に取り付けられている。図6は、低温の気体が流される吸気室5の壁に取り付けられた吸気弁開放機構15の断面図である。作動軸押圧装置17は、断熱部材20を介して吸気室5の壁に取り付けられている。断熱部材20によって吸気室5と作動軸押圧装置17との間の熱の移動が抑制され、作動軸押圧装置17および作動軸押圧装置17の潤滑油の温度の低下を抑制することができる。その結果、作動軸押圧装置17を円滑に動作させることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】実開平01−124391号公報
【特許文献2】特開平09−242675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、図6に示す構造では、ホルダ部材18の孔にシール部材19が設けられているため、吸気室5内に流される低温の気体の影響や吸気室5の温度の低下にシール部材19の温度が低下する。
【0025】
ホルダ部材18を形成する材質よりも大きい熱膨張率を有する材質からシール部材19がなる場合には、シール部材19およびホルダ部材18の温度の低下に伴ってシール部材19はホルダ部材18よりも大きく収縮する。その結果、シール部材19とホルダ部材18との間に隙間が形成され、吸気室5の気密性が低下する。
【0026】
そのため、低温の気体を圧縮する往復動圧縮機1では、シール部材19をホルダ部材18の材質と同じ熱膨張率を有する材質で形成したり、シール部材19やホルダ部材18を加熱する加熱機器を設ける必要があった。シール部材19の材質の制限や、加熱機器といった部品の追加により、往復動圧縮機1の製造コストが増加し、往復動圧縮機1の製造期間が長くなっていた。
【0027】
そこで、本発明は、製造コストの増加や製造期間の延長を招くことなく、比較的低温の気体が流されても吸気室の気密性を確保することができる往復動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、圧縮室内でピストンを往復動させて該圧縮室内の気体を圧縮する往復動圧縮機であって、圧縮室、および該圧縮室に連通された吸気室の間の連通部を開閉する開閉弁と、吸気室の外壁面に固定され、吸気室の内外への熱の移動を抑制する断熱部材と、断熱部材および吸気室の壁を貫通して設けられ、開閉弁の開閉を行う作動軸と、を備える往復動圧縮機に係る。この態様において、断熱部材の、作動軸が貫通している貫通穴内に設けられ、該貫通穴と作動軸との間の隙間を閉塞するシール部材をさらに備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明の往復動圧縮機によれば、製造コストの増加や製造期間の延長を招くことなく、比較的低温の気体を圧縮する場合においても吸気室の気密性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る往復動圧縮機の断面図である。
【図2】図1に示す往復動圧縮機に設けられた吸気弁開放機構の拡大断面図である。
【図3】従来の往復動圧縮機の断面図である。
【図4】吸気弁の構造および動作を説明するための断面図である。
【図5】図3に示す往復動圧縮機に設けられた吸気弁開放機構の拡大断面図である。
【図6】低温の気体を圧縮する往復動圧縮機に設けられた、従来の吸気弁開放機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明に係る往復動圧縮機について説明する。なお、図3ないし図6に示されるものと同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0032】
図1は、本発明の実施形態に係る往復動圧縮機の断面図である。図1に示すように、往復動圧縮機21は、圧縮室2a、吸気室5および吐出室6を有する圧縮シリンダ2、ピストン3、ピストン駆動部4、吸気弁7並びに吐出弁8を備えている。
【0033】
また、往復動圧縮機21は、吸気弁7を強制的に開放し、圧縮室2aから吐出室6へ送られる気体の吐出量を減らす吸気弁開放機構15を備えている。図2は、吸気弁開放機構15付近の拡大断面図である。
【0034】
図2に示すように、吸気弁開放機構15は、作動軸16と、作動軸16の軸方向へ作動軸16を押圧する作動軸押圧装置17と、を備えている。
【0035】
作動軸押圧装置17は、断熱部材20を介して吸気室5の外壁面に取り付けられている。作動軸16は、断熱部材20および吸気室5の壁を貫通して作動軸押圧装置17から吸気弁7まで設けられている。
【0036】
作動軸押圧装置17が作動軸16を押圧することによって、作動軸16は吸気弁7を強制的に開放する。吸気弁7を閉じる場合には、吸気弁開放機構15は、作動軸16の押圧を停止する。
【0037】
本実施形態で採用されている作動軸押圧装置17の構造および動作について説明する。作動軸押圧装置17は、作動流体を内部に取り込むことによって作動軸16を押圧する力を変化させるものである。
【0038】
このような作動軸押圧装置17の駆動方法には、Gas to load方式とGas to unload方式の大きく2種類に分けられる。
【0039】
Gas to load方式は、作動軸押圧装置17内に作動流体を送っている場合には作動軸16への押圧力が小さくなり、作動流体を作動軸押圧装置17内から抜いた場合に作動軸16への押圧力が大きくなる方式である。すなわち、作動流体を作動軸押圧装置17内へ送っている状態では吸気弁開放機構15が吸気弁7を強制的に開放せず、往復動圧縮機21(図1)は圧縮室2a内で気体を圧縮する(load)。
【0040】
Gas to unload方式は、吸気弁7を強制的に開放する場合に作動流体を作動軸押圧装置17へ送る方式である。すなわち、作動流体を作動軸押圧装置17内へ送っている状態では吸気弁開放機構15が吸気弁7を強制的に開放し、往復動圧縮機21(図1)は圧縮室2a内で気体を圧縮しなくなる(unload)。
【0041】
この二つの方式の中でも、一般的に機械の安全性を考慮し、Gas to load方式を用いる場合が多い。本実施形態の作動軸押圧装置17にはGas to load方式が用いられている。
【0042】
Gas to load方式の作動軸押圧装置17のケーシング22内にはコイルバネ23が設けられている。コイルバネ23は作動軸16の軸方向の延長上に配置されている。また、コイルバネ23の伸縮方向は作動軸16の軸方向と一致しており、コイルバネ23の、作動軸16側とは反対側の端部はケーシング22に固定されている。
【0043】
さらに、作動軸押圧装置17は、コイルバネ23の復元力を作動軸16へ伝える押圧棒24を備えている。押圧棒24はケーシング22を貫通してコイルバネ23と作動軸16との間に配置されている。
【0044】
ケーシング22の、押圧棒24が貫通している貫通穴には、Oリングといったシール部材25が設けられている。シール部材25により、作動流体がケーシング22内から外部へ漏出しないようになっている。
【0045】
コイルバネ23と押圧棒24との間にはバネ押さえ26が配置されており、コイルバネ23は自然長よりも縮められている。したがって、コイルバネ23の復元力によりバネ押さえ12および押圧棒24が押圧されて作動軸16が押圧される。
【0046】
作動軸押圧装置17は、作動流体が作動軸押圧装置17の内部に送られることによってコイルバネ23が縮められる構造を有している。具体的には、作動軸16とバネ押さえ26との間に作動流体が送られ、バネ押さえ26は作動流体の圧力によってバネ押さえ26からコイルバネ23へ向かう方向へ力を受ける。すなわち、コイルバネ23の復元力が作動流体の圧力により相殺されて、コイルバネ23の作動軸16への押圧力が弱められる。その結果、作動軸16が吸気弁7を押圧しなくなり、吸気弁7が閉塞される。
【0047】
吸気弁7を開く場合には、作動軸押圧装置17への作動流体の供給が停止され、また作動軸押圧装置17内の作動流体が抜かれる。その結果、コイルバネ23を縮める方向の力がコイルバネ23へ加えられなくなり、コイルバネ23の復元力により作動軸16が押圧される。作動軸16により吸気弁7が押圧されて吸気弁7が開放される。
【0048】
次に、吸気室5の密閉性を確保する構造について説明する。
【0049】
吸気室5の外壁面には、吸気室5の内外への熱の移動を抑制する断熱部材20が、例えばボルトを用いて断熱部材20と吸気室5との間の隙間を封止するように強固に固定されている。断熱部材20と吸気室5との間に、ガスケットやパテといった封止部材(不図示)を用いて断熱部材20と吸気室5との間の密閉性を高めてもよい。
【0050】
また、断熱部材20の、作動軸16が貫通している貫通穴には、Oリングといった、作動軸16と当該貫通穴との間の隙間を閉塞するシール部材19が設けられている。
【0051】
断熱部材20と吸気室5との間が封止され、かつ断熱部材20の貫通穴と作動軸16との間が閉塞されることによって、吸気室5の密閉性が確保されている。
【0052】
シール部材19は断熱部材20の貫通穴に設けられているため、吸気室5の壁とシール部材19との間で熱の移動が抑制される。すなわち、吸気室5に比較的低温の気体が送られて吸気室5の壁の温度が低下しても、シール部材19の温度は低下しない。
【0053】
そのため、断熱部材20を形成する材質と異なる熱膨張率を有する材質でシール部材19が形成され、かつシール部材19を加熱する加熱機器が往復動圧縮機21(図1)に設けられていなくても、吸気室5の気密性を確保することができる。したがって、シール部材19の材質の制限がなく、加熱機器といった部品が増加しないため、往復動圧縮機1の製造コストを削減し、往復動圧縮機1の製造期間を短縮することができる。
【0054】
特に、気体の温度が零下50℃以下である場合には、図6に示す従来の構造では、シール部材19およびホルダ部材18の温度が低下してシール部材19とホルダ部材28との間の隙間が拡大し、吸気室5内の気体が該隙間から漏出することが知られている。本実施形態では、シール部材19が断熱部材20に設けられているため、気体の温度が零下50℃以下であってもシール部材19の温度が低下することがなく、吸気室5の気密性を確保することができる。
【0055】
また、断熱部材20のうちの、作動軸押圧装置17が設けられている側にシール部材19を設けることによって、吸気室5の温度の影響をより抑制することができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、断熱部材20の、貫通穴軸方向と垂直に交わる面で切断された断面であって貫通穴軸方向の中心付近の位置における断面(A−A断面)の面積は、断熱部材20の、吸気室5の壁に接触している吸気室側面20aの面積よりも小さくなっている。これは、断熱部材20の、吸気室5から作動軸押圧装置17への熱伝達面積をより小さくし、吸気室5と作動軸押圧装置17との間の熱移動を抑制するためである。吸気室5の壁に接触している面の面積をより大きくすることによって、断熱部材20を吸気室5の壁へより強固に固定することができる。
【0057】
断熱部材20の、作動軸押圧装置17に接触している押圧装置側面20bの面積を、A−A断面の面積よりも大きくしてもよい。この場合、作動軸押圧装置17を断熱部材20へより強固に固定することができる。本実施形態では、吸気室側面20aの面積と押圧装置側面20bの面積は、ほぼ同じ大きさになっている。
【0058】
なお、本実施形態ではGas to load方式の作動軸押圧装置17を用いた往復動圧縮機21について説明したが、作動軸押圧装置17はGas to unload方式のものでもよい。また、作動軸押圧装置17として、作動流体を用いないもの、例えば電気モータによって作動軸16を押圧させるものでもよい。
【0059】
さらに、本実施形態では、作動軸16により吸気弁7を押圧して吸気弁7を強制的に開放する機構が用いられているが、作動軸16を吸気弁7に連結して作動軸16を移動させることによって吸気弁7の開閉を行う機構を用いてもよい。作動軸16が吸気弁7に連結されている機構では、作動軸押圧装置17の代わりに作動軸16を移動させる作動装置が用いられる。
【0060】
本実施形態に係る往復動圧縮機21の、作動軸押圧装置17と断熱部材20との間に、熱を吸収する吸熱部材27を設け、作動軸16が吸熱部材27を貫通していてもよい。さらに、シール部材19を、吸熱部材27の、作動軸16が貫通している貫通穴に設けてもよい。
【0061】
吸熱部材27は、熱伝導率が比較的高い材料で作られている。したがって、吸気室5の外側や作動軸押圧装置17の外側から熱を吸入しやすいため、吸気室5の温度の低下による作動軸押圧装置17の冷却が抑制される。また、吸熱部材27の貫通穴にシール部材19を設けることによって、シール部材19の冷却をより抑制することができる。
【0062】
吸熱部材27はケーシング22の周囲の外気に接触する複数の吸熱孔28が形成された吸熱板29を有している。吸熱孔28が形成されていることによって吸熱板29の表面積がより広くなり、吸熱部材27の吸熱作用をより高めることができる。
【0063】
また、本実施形態では、低温の気体が流される吸気室5の気密性を確保する構造について説明したが、本発明は、吐出室6の気密性を確保する構造や、比較的高温の気体が流される往復動圧縮機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
2 圧縮シリンダ
2a 圧縮室
3 ピストン
5 吸気室
6 吐出室
7 吸気弁
8 吐出弁
15 吸気弁開放機構
16 作動軸
17 作動軸押圧装置
19 シール部材
20 断熱部材
21 往復動圧縮機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮室内でピストンを往復動させて該圧縮室内の気体を圧縮する往復動圧縮機であって、
前記圧縮室、および該圧縮室に連通された吸気室の間の連通部を開閉する開閉弁と、
前記吸気室の外壁面に固定され、前記吸気室の内外への熱の移動を抑制する断熱部材と、
前記断熱部材および前記吸気室の壁を貫通して設けられ、前記開閉弁の開閉を行う作動軸と、を備える往復動圧縮機において、
前記断熱部材の、前記作動軸が貫通している貫通穴内に設けられ、該貫通穴と前記作動軸との間の隙間を閉塞するシール部材をさらに備えていることを特徴とする往復動圧縮機。
【請求項2】
前記シール部材は、前記貫通穴の、前記吸気室側の端部とは反対側の端部に設けられている、請求項1に記載の往復動圧縮機。
【請求項3】
前記断熱部材の、前記吸気室が設けられている側とは反対の側に、前記作動軸を駆動させる作動装置をさらに備え、
前記断熱部材の、前記貫通穴の軸方向と交わる面で切断された断面であって該軸方向の中心付近の位置における断面の面積が、断熱部材の、前記吸気室の壁と接触している吸気室側面の面積よりも小さくなっている、請求項1または2に記載の往復動圧縮機。
【請求項4】
前記吸気室には零下50℃以下の気体が流される、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の往復動圧縮機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate