説明

後付部品の着脱構造

【課題】不要な音の発生を抑制しつつ、後付部品を簡単に着脱することが可能となる後付部品の着脱構造を提供する。
【解決手段】譜面立て2は、電子楽器1の筐体に設けられた複数の通気口のうち、所定の2つの通気口に、2つの取付片31aおよび31bを挿入することで、電子楽器1に固定される。これとは逆に、譜面立て2を電子楽器1から取り外すときには、2つの取付片31aおよび31bを電子楽器1から引き抜くことで、譜面立て2を電子楽器1から取り外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器に後付部品を着脱自在に取り付け可能な構造に関する。
【背景技術】
【0002】
楽器に後付部品を着脱自在に取り付け可能な構造として、たとえば、後付部品にネジ穴のあるステーを設け、このネジ穴にネジを差し込んで、楽器の筐体にステーを螺着するようにしたものがある。
【0003】
また、楽器の筐体に溝を設け、この溝に、後付部品の一部をはめ込んで固定するようにしたものも知られている。
【0004】
尚、適当な先行技術文献情報は見当たらない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の後付部品の着脱構造のうち、前者では、後付部品を着脱するときに、ネジを締めたり緩めたりしなければならないので、後付部品を簡単に着脱することができなかった。
【0006】
また、後者では、演奏者の演奏に起因する楽器本体の揺れや、楽音の発生に起因する楽器本体の振動が後付部品に作用することで、ビビリ音が発生することもあった。
【0007】
本発明は、この点に着目してなされたものであり、不要な音の発生を抑制しつつ、後付部品を簡単に着脱することが可能となる後付部品の着脱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の後付部品の着脱構造は、楽器本体に着脱自在に後付けする後付部品の着脱構造であって、前記楽器本体側に、第1の開口部を形成した表面部と、前記第1の開口部の内周縁近部に位置し、当該第1の開口部より小さい形状の第2の開口部を備えた、弾性体からなる保持部材と、前記第1および第2の開口部に続く第3の開口部を備えた支持部材とを有するとともに、前記後付部品側に、前記第1の開口部より小さく、前記第2の開口部と略同一あるいは微少に大きい形状の突起部であって、前記第1〜第3の開口部を通った上で、前記支持部材によって支持される突起部を含む取付片を有し、前記取付片はL字形状をなし、該取付片の一端に前記突起部が形成され、該取付片の他端が前記後付部品に回転自在に取り付けられ、該取付片が回転されることにより、該取付片は、当該後付部品から突出または当該後付部品に格納されることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記支持部材は、複数の壁面を連続させた壁面構造をなすことを特徴とする。
【0010】
さらに好ましくは、前記楽器本体には、所定の目的のために複数個の穴が設けられており、前記開口部は、該複数の穴のうちの一部を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、後付部品側に設けられた突起部が、楽器本体側に設けられた第1〜第3の開口部を通った上で、楽器本体側に設けられた支持部材によって支持されるので、後付部品を簡単に着脱することが可能となる。また、第2の開口部を備えた保持部材は弾性体からなり、該保持部材を介して、後付部品は楽器本体にがたつきなくしっかり保持されるので、不要な音の発生を抑制することができる。さらに、後付部品が楽器本体から取り外されたときには、取付片は当該後付部品に格納されるので、該取付片が邪魔にならない。これにより、当該後付部品が収納し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る後付部品の着脱構造を適用した電子楽器1を前(操作者側)から見下ろしたときの外観を示す斜視図であり、図2は、図1の電子楽器1を後ろから見上げたときの外観を示す斜視図である。
【0014】
図1および図2に示すように、譜面立て2が、後付部品として、譜面立て2を2点で支える台座部3aおよび3bのそれぞれに設けられた取付片31aおよび31bを介して電子楽器1に取り付けられるように構成されている。
【0015】
図3は、譜面立て2を電子楽器1に対して着脱する様子を示す図である。
【0016】
同図に示すように、譜面立て2は、電子楽器1の筐体に設けられた複数の通気口のうち、所定の2つの通気口に、2つの取付片31aおよび31bを挿入することで、電子楽器1に固定される。
【0017】
これとは逆に、譜面立て2を電子楽器1から取り外すときには、2つの取付片31aおよび31bを電子楽器1から引き抜くことで、譜面立て2を電子楽器1から取り外す。
【0018】
図4は、1つの取付片31aまたは31bを固定するための電子楽器1側の構造を拡大して透視した拡大透視図である。
【0019】
同図に示すように、1つの取付片31aまたは31bを固定するための電子楽器1側の構造は、電子楽器1の筐体に設けられた、所定の2つの穴11と、取付片31aまたは31bを挿入して支持する支持部材4と、電子楽器1の筐体と支持部材4との間に配置され、取付片31aまたは31bが支持部材4によって支持されているときに、電子楽器1上に発生した振動などで譜面立て2がぐらつかないように保持する保持部材5とからなる。
【0020】
図示例の構造では、1つの取付片31aまたは31bにつき、その取付片31aまたは31bを挿入できる穴11が2つ設けられている。実際には、穴11を1つ設ければよいにも拘わらず、このように2つ設けるようにしたのは、譜面立て2を固定する他の方法用に構成した構造を本発明に流用したためである。ここで流用した他の方法の詳細は、本出願人が先に出願した明細書(特願2005−108617号)に記載されているので、その説明は省略する。
【0021】
図5は、支持部材4の斜視図である。
【0022】
支持部材4は、たとえば樹脂成型によって形成され、同図に示すように、支持部材4には、取付片31aまたは31bが挿入されるボス部41bと、電子楽器1の上側の筐体に支持部材4を螺着させるための4つのネジ穴42aと、電子楽器1の下側の筐体に支持部材4を螺着させるための1つのネジ穴43aとが設けられている。
【0023】
支持部材4は、複数の壁面を連続させた壁面構造をなし、ボス部41b(および41a)は、壁面をボス状に形成したものである。そして、ボス部41b(および41a)の周囲には、補強用のリブが壁面により形成されている。また、ネジ穴42aは、壁面42上に形成され、ネジ穴43aは、壁面43上に形成されている。
【0024】
ボス部41b(および41a)の開口部41b1(および41a1)は、略楕円形状となっている。これに対して、開口部41b1に挿入される取付片31aまたは31bは、図7に示すように、円筒形状となっており、開口部41b1(および41a1)の短径が取付片31aまたは31bの半径と略同一となっている。したがって、開口部41b1に取付片31aまたは31bが挿入された場合、取付片31aまたは31bは、開口部41a1および41b1の長径方向に余裕がある。このため、ボス部41bの長径方向の両側には、取付片31aまたは31bが長径方向にぐらつかないように規制する凸部41b2が設けられている。なお、開口部41a1にのみ、長径方向に余裕が生じるようにしたのは、本発明の特徴ではなく、前記先願発明の特徴であるので、その理由についての説明は省略する。また、ボス部41bの底は、図示しないが、閉口されている。これは、後述するように、ボス部41b底に取付片31aまたは31bが当接することで、取付片31aまたは31bの挿入状態を規制するようにしているからである。
【0025】
図6は、保持部材5の斜視図であり、(a)は、取付片31aまたは31bを挿入する側から見た図であり、(b)は、(a)と反対側から見た図である。
【0026】
保持部材5は、ゴム等の弾性部材からなり、同図(a)に示すように、保持部材5には、取付片31aまたは31bが挿入される穴5bが形成され、穴5bには、取付片31aまたは31bを挿入し易いように、テーパー加工が施されている。穴5bは、略円形状をなし、その半径は、取付片31aまたは31bをがたつきなくしっかり保持するために、取付片31aまたは31bの半径よりやや短く採られている。保持部材5の、取付片31aまたは31bが挿入される側には、保持部材5の肉厚を薄くするための溝5cが形成されている。保持部材5は、この溝5cによって折り曲げ易くなっており、保持部材5を支持部材4に取り付ける場合、まず、一方の穴5a(または5b)が形成された部位を支持部材4の対応する位置に取り付け、その後、他方の穴5b(または5a)が形成された部位を支持部材4の対応する位置に取り付けることができ、これにより、保持部材5の支持部材4への取り付けが容易になる。
【0027】
保持部材5は、支持部材4のボス部41aおよび41bを覆うようにして取り付ける。したがって、保持部材5には、ボス部41aおよび41bをそれぞれ覆う被覆部5dおよび5eが設けられている。そして、前述したように、ボス部41aおよび41bの周囲には、それぞれリブが形成されているので、被覆部5dおよび5eには、そのリブが嵌合する溝5d1および5e1が形成されている。
【0028】
このように構成された支持部材4および保持部材5を電子楽器1の本体に取り付ける場合、まず、保持部材5の被覆部5dまたは5eのいずれか一方、たとえば被覆部5dを、被覆部5dに形成された溝5d1を利用して位置決めしながら、支持部材4のボス部41aに嵌め込み、次に、同様にして、被覆部5eをボス部41bに嵌めこむ。そして、保持部材5の嵌め込まれた支持部材4の前記4つのネジ穴42aのうち、所定の2つのネジ穴にネジ(図示せず)を通して、電子楽器1の上側筐体の内側に設けられたボス部12に螺着させ、さらに、前記ネジ穴43aにネジ(図示せず)を通して、電子楽器1の下側筐体の内側に設けられたボス部13に螺着させる(図4参照)。これにより、電子楽器1の筐体上の2つの通気口11のそれぞれと、保持部材5の2つの穴5aおよび5bのそれぞれと、支持部材4の2つの開口部41a1および41b1のそれぞれとが一直線上につながるので、その一直線上につながった2つの穴の一方に、譜面立て2の取付片31aを挿入できるようになる。
【0029】
同様にして、もう1つの取付片31bを挿入する、電子楽器1の本体側の位置に、もう1組の支持部材4および保持部材5を取り付ける。
【0030】
図7は、図3中の一方の台座部3aおよび取付片31aの分解斜視図であり、図8は、図7の台座部3aおよび取付片31aを反対側から見たときの分解斜視図である。なお、もう一方の台座部3bおよび取付片31bも、台座部3aおよび取付片31aと同様に構成されている。
【0031】
図7および図8に示すように、取付片31aは、たとえば金属によって構成され、L字状に折り曲げ形成されている。取付片31aは、L字の短部31a1と長部31a2によって構成され、短部31a1は、台座部3aに設けられた穴3a1に挿入され、ネジ32aを介して、台座部3に取り付けられる。台座部3の、取付片31aの短部31a1が挿入される面には、取付片31aの長部31a2が嵌合する、2つの溝3a2および3a3が、互いに直角に形成されている。溝3a2は、図9および図10に示すように、取付片31aが邪魔にならないように、取付片31aを譜面立て2の長手方向に仕舞うときに用いられ、溝3a3は、取付片31aを譜面立て2から突出させて、譜面立て2を電子楽器1に固定させるときに用いられる。なお、取付片31aの長部31a2の先端は、挿入し易いように、テーパー形状となっている。
【0032】
このようにして、取付片31aが取り付けられた台座部3aは、コの字状に形成された凹部3a3に譜面立て2を嵌め込んで固着する。同様にして、取付片31bが取り付けられた台座部3bの凹部にも、譜面立て2を嵌め込んで固着する。ここで、固着方法は、譜面立て2と台座部3aおよび3bとが容易に離れない方法であれば、どのようなものを用いてもよい。たとえば、接着剤を用いて固着する方法が考えられる。
【0033】
このように台座部3aおよび3bが固着された譜面立て2を電子楽器1に取り付けるには、そのとき取付片31aおよび31bが仕舞った状態、すなわち図9および図10に示す状態である場合は、まず、取付片31aおよび31bを譜面立て2から突出させ、次に、取付片31aおよび31bを同時に(あるいは、1つずつ順次)、電子楽器1側の通気口11に挿入する。このとき、保持部材5の穴5bの形状が各取付片31aおよび31bの形状よりやや小さいので、各取付片31aおよび31bは、なかなか奥に入っていかない。このため、譜面立て2を左右に動かしながら、取付片31を挿入して行き、各取付片31aおよび31bがボス部41bの底面に当接した時点で、譜面立て2の電子楽器1の筐体への取り付けは完了する。
【0034】
電子楽器1に取り付けられた譜面立て2の取り外しは、上記取り付けと逆に行えばよいので、その説明は省略する。
【0035】
なお、本実施の形態では、後付部品として、譜面立てを例に挙げて説明したが、これは説明の都合上に過ぎず、たとえば、取付片31aおよび31bと同様の取付片が取り付けられたスピーカを後付けするようにしてもよい。
【0036】
このように、本実施の形態では、後付部品側に設けられた突起部が、電子楽器1の筐体上に設けられた通気口11、保持部材5の穴5bおよび支持部材4のボス部41bを通った上で、楽器本体側に設けられた支持部材によって支持されるので、後付部品を簡単に着脱することが可能となる。さらに、保持部材5は弾性体からなり、後付部品は楽器本体にがたつきなくしっかり保持されるので、不要な音の発生を抑制することができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、後付部品の突起部が挿入される、電子楽器の筐体上の穴として、通気口の一部を用いたが、これは、後付部品を取り外したときに、後付部品用の穴が他の穴と同化して、後付部品用の穴であることが一見しただけでは分からないようにするためである。したがって、大きさが同じ程度の複数の穴が、通気口以外に、電子楽器の筐体上に開いていた場合には、それを用いるようにすればよい。また、複数の穴のそれぞれの大きさは、同じ程度が好ましいものの、多少大きさが異なってもよいし、後付部品用の穴であることが分かるようなマーク(たとえば、“△”)をその穴の近傍に付けるようにしてもよい。
【0038】
また、本実施の形態では、2つの台座部3aおよび3bにそれぞれ設けた取付片31aおよび31bを電子楽器1の筐体に挿入して、電子楽器1上に譜面立て2を設置するようにしたが、台座部の個数も、取付片の個数も、2つに限られる訳ではない。
【0039】
なお、本実施の形態では、後付部品を着脱自在に取り付ける対象として、電子(鍵盤)楽器を例に挙げて説明したが、これは説明の都合上に過ぎず、他の電子楽器に対しても、電子楽器でないアコースティック楽器に対しても、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態に係る後付部品の着脱構造を適用した電子楽器を前から見下ろしたときの外観を示す斜視図である。
【図2】図1の電子楽器を後ろから見上げたときの外観を示す斜視図である。
【図3】譜面立てを電子楽器に対して着脱する様子を示す図である。
【図4】1つの取付片を固定するための電子楽器側の構造を拡大して透視した拡大透視図である。
【図5】図4中の支持部材の斜視図である。
【図6】図4中の保持部材の斜視図である。
【図7】図3中の右側の1組の台座部および取付片の分解斜視図である。
【図8】図7の1組の台座部および取付片を反対側から見たときの分解斜視図である。
【図9】取付片を譜面立ての長手方向に仕舞ったときの状態を示す斜視図である。
【図10】図9とは反対側から見たときの斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1…電子楽器,2…譜面立て,3a,3b…台座部,31a,31b…取付片,4…支持部材,41a,41b…ボス部,5…保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽器本体に着脱自在に後付けする後付部品の着脱構造であって、
前記楽器本体側に、
第1の開口部を形成した表面部と、
前記第1の開口部の内周縁近部に位置し、当該第1の開口部より小さい形状の第2の開口部を備えた、弾性体からなる保持部材と、
前記第1および第2の開口部に続く第3の開口部を備えた支持部材と
を有するとともに、
前記後付部品側に、
前記第1の開口部より小さく、前記第2の開口部と略同一あるいは微少に大きい形状の突起部であって、前記第1〜第3の開口部を通った上で、前記支持部材によって支持される突起部を含む取付片
を有し、
前記取付片はL字形状をなし、該取付片の一端に前記突起部が形成され、該取付片の他端が前記後付部品に回転自在に取り付けられ、該取付片が回転されることにより、該取付片は、当該後付部品から突出または当該後付部品に格納されることを特徴とする後付部品の着脱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−199185(P2007−199185A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15301(P2006−15301)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】