説明

後味のマスキング

消費組成物の消費において経験する苦い後味のマスキング方法であって、マスキングする量の塩化コリンの組成物への添加を含む。必要な比率は、栄養補助食品として使用される塩化コリンの比率よりも大幅に低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、苦い後味のマスキングに関する。
【背景技術】
【0002】
苦い後味は、多くの消費組成物(すなわち、摂取のため(例えば、食料および飲料)または吐き出す前に口に一時的に保持するために(例えば、マウスウォッシュ)経口的に取り入れられる組成物)の消費においてみられる。一特定例は、砂糖以外のいくつかの天然および合成甘味料、例えば、レバウジオシドA(「Reb A」)を含むステビア誘導体、ステビオサイド、スクラロース、アスパルテーム、トリロバチン、シクラメート、サッカリン、ネオテーム、モナチンおよびアセスルファムK(「ace−K」)にある苦い後味である。これは、例えば、通常の砂糖ベースの甘味料の一部がかかる甘味料により置き換えられた製品の消費によりカロリーの摂取を低減させることを試みる消費者に抵抗を生じさせ得る。苦い後味はとくに、いわゆる高甘味度甘味料において目立つ。
【0003】
しかしながら、苦い後味は、甘味料添加の結果のみではない。例えば、機能性成分および機能性食品、例えば、カフェイン、タウリン、L−カルニチン、タンニン、グルコノラクトン、あるビタミンおよびミネラル、およびスポーツドリンク、栄養ドリンク等にみられる塩もまた、オフノートまたは後味を生じさせる。
【0004】
この問題を解決するための一つの提案された方法は、苦い後味をマスキングする一方、他の経口的に経験する特性に有害な効果がないマスキング剤の添加である。かかるマスキングのメカニズムは明確に理解されていないが、口内および舌上の苦味受容体の少なくともいくつかの遮断にかかわると信じられている。今まで、メカニズムの実用化は、実際には成功していなかった。
【発明の概要】
【0005】
広範囲の苦い後味を、単純で効果的な方法により、マスキングすることが可能であることが今見出された。したがって、マスキングする量の塩化コリンの組成物への添加を含む、消費組成物の消費において経験する苦い後味のマスキング方法を提供する。
【0006】
塩化コリンは、天然に存在し、また必須栄養素である。それは、米国食品医薬品局のGRAS(Generally Recognised As Safe(一般的に安全と認められた))リストに掲載されており、それは、制限なく使用することができることを意味する。それは、栄養補助食品として市販されており、また純材料は、精製化学製品供給業者から入手可能である。それは、甘味増強組成物に添加することができることが知られている(例えば、米国特許第3329508号および米国特許出願公開第2008/107775号)。しかしながら、それが広範囲の用途において苦い後味をマスキングすることができるという事実は、これまで知られておらず、驚きであった。
【0007】
「マスキングする量」は、苦い後味の所望のマスキングを作り出すのに十分な塩化コリンを意味する。量は、栄養補助食品に使用される量(女性は1日あたり425mg、男性は1日あたり525mg)よりも大幅に少なく、生来さまざまであり、所望のマスキング度ならびに組成物および遮断しようとする特定の後味の性質に依存する。しかしながら、当業者であれば、日常の実験のみによりあらゆる場合において好適な量を簡単に決定することができる。
【0008】
一般的指針として、使用される塩化コリンの量は、500ppbおよび500ppmの間、より詳細には10ppmおよび50ppmの間においてさまざまである。しかしながら、これらの量は、一般的指針としてのみ示すものであって、熟練したフレーバリストであれば、特定の効果を達成するためにこれらの枠外の量を利用し得る。
【0009】
とくに、上述のとおり遮断することができる苦い後味の非限定の例は、
− 非糖甘味料
− スポーツドリンク
− コーヒーベースの飲料
− 大豆ベースの飲料
に関して経験するものである。
【0010】
塩化コリンは、苦い後味を経験し得るあらゆる消費組成物において使用してもよい。かかる組成物の非限定の例は、ダイエット清涼飲料、フレーバー水、乳飲料、コーヒー飲料、ヨーグルト、アイスクリーム、経口医薬製剤、シリアル類、クッキー、ケーキ、チューインガム、ハードキャンディ、チョコレート、栄養ドリンク、歯磨き粉、マウスウォッシュ、機能性食品等を含む。
【0011】
したがって、少なくとも1種の苦い後味を引き起こす成分を含む組成物ベース、および後味をマスキングする量の塩化コリンを含む消費組成物をまた提供する。栄養補助食品的理由から必要とされる通常量の塩化コリンを含有する消費組成物は、かかる組成物に含まれない。
【0012】
「組成物ベース」は、塩化コリン以外に組成物を作るのに必要なすべての成分の組合せを意味する。
本開示はさらに、以下の例を参照に説明するが、これらは、特定の態様を説明し、説明の範囲を何ら限定することを意図しない。
【0013】
例1
様々なコーラ飲料における塩化コリンの使用
(a)スクラロースコーラ、12ppmの塩化コリン
12人のパネリストが行ったブラインドテストにおいて、非処理コーラと比較して、処理コーラは、より心地良いフレーバープロファイルを有し、後味またはオフノートがないことを見出し、数人のパネリストは、甘味のわずかな減少を報告した。
調査を6ppmの塩化コリンを用いて繰り返した。ここでも、オフノートおよび後味の低減が、パネリスト全員により指摘された。
(b)Reb Aコーラ;12ppm
パネリストが、後味の低減およびより少ないオフノートに気付いた。
(c)ASP/Ace−kコーラ;12ppm
パネリストが、オフノートおよび後味の低減に気付いた。数人が、甘味がわずかに弱まったと思った。同じ結果が6ppmで指摘された。
【0014】
例2
コーヒーの苦味の味のマスカー(masker)としての塩化コリン
2種の入れたてのコーヒーのサンプルを、5人のテイスターに盲検的に提示した。一方のサンプルは対照であり、他方は10ppm(コーヒーに関し)の塩化コリンを添加した試験サンプルであった。テイスターは、塩化コリン含有サンプルがより苦味が少ないと報告した。
【0015】
例3
スポーツドリンクのビタミンおよびミネラル味のマスカーとしての塩化コリン
2種の市販の赤橙色のスポーツドリンクのサンプルを、5人のテイスターに盲検的に提示した。一方のサンプルは対照であり、他方は10ppmの塩化コリンを添加した試験サンプルであった。テイスターは、塩化コリン含有サンプルが、対象よりも新鮮であり、石鹸感が少なく、苦味が少ないと報告した。
【0016】
例4
豆乳における苦味のマスカーとしての塩化コリン
2種の市販の無調整豆乳(soy milk nature)のサンプルを、5人のテイスターに盲検的に提示した。一方のサンプルは対照であり、他方は10ppmの塩化コリンを添加した試験サンプルであった。テイスターは、塩化コリン含有サンプルが、よりクリーミーであり、より苦味が少なく、より乾燥大豆のようではないと報告した。
【0017】
態様を、上記説明および前述の例において詳細に説明したが、これらの例は、解説目的のみであり、当業者であれば、本開示の範囲を逸脱することなく変形および変更することができると理解される。上に説明した態様は、選択的であるのみならず、組み合わせることもできることを理解すべきである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
消費組成物の消費において経験する苦い後味のマスキング方法であって、マスキングする量の塩化コリンの組成物への添加を含む、前記方法。
【請求項2】
塩化コリンが、組成物中に500ppb〜500ppmの範囲で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塩化コリンが、組成物中に10ppm〜50ppmの範囲で存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
消費組成物であって、少なくとも1種の苦い後味を引き起こす成分を含む組成物ベース、および後味をマスキングする量の塩化コリンを含む、前記組成物。


【公表番号】特表2013−513393(P2013−513393A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543682(P2012−543682)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069622
【国際公開番号】WO2011/073187
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】