説明

復号方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、移動無線通信のような符号誤りが生じやすい環境下での通信に好適な符号化方法および復号方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
誤り検出符号とターボ符号のような組織的誤り訂正符号とを組み合わせて用いて、情報の符号化伝送を行い、受信側で受信情報の繰り返し復号を行う技術が知られている。図4および図5はこの種の符号化伝送技術を適用した符号化装置および復号装置の構成例を示すものである。
【0003】
まず、図4に示す符号化装置は、誤り検出符号化器としてのCRC符号化器21と、誤り訂正符号化器としてのターボ符号化器22とを有している。この構成において、CRC符号化器21により、情報源からの情報に対してCRC情報が付加され、誤り検出符号として出力される。そして、この誤り検出符号の誤り訂正符号化がターボ符号器22によって行われ、その結果得られる誤り訂正符号が復号装置へ向けて送信されるのである。なお、ターボ符号については、例えば文献“IEEE TRANSACTIONS OF INFORMATION THEORY, VOL.42, No.2, MARCH 1996, pp.429−445”に詳しく説明されている。
【0004】
次に、図5に示す復号装置は、2個の復号器31および32と、CRC判定器33とを有している。この構成において、符号化装置からの受信情報は、復号器31に入力される。この復号器31と他の復号器32との間で、外部情報Leの授受を行いつつ繰り返し復号が行われる。そして、所定回数の繰り返し復号の後、その時点で得られている尤度Lから最終的な復号結果が得られる。この復号結果はCRC判定器33に入力され、CRC判定器33により最終的な復号結果に誤りがあるか否かが判定される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来の繰り返し復号方法では、予め決められた回数だけ復号を繰り返すので、必ずしも最も信頼度の高い復号結果が最終的に得られるとは限らず、途中の復号過程において得られた復号結果よりも信頼度の低い復号結果が最終的に得られてしまうことがあるという問題があった。すなわち、従来の繰り返し復号方法を用いた場合、次のような事態が起こるのである。
【0006】
例えば誤り訂正符号の長さが400ビットであり、この誤り訂正符号の中に長さ100ビットの誤り検出符号が4個含まれているものとする。また、誤り訂正復号の繰り返し回数は8回であるとする。この場合において、誤り訂正復号を繰り返し進めて行くと、残留誤りが徐々に軽減される。そして、例えば3回目の復号を行った結果、1つの誤り検出符号については残留誤りがなくなったとする。このような場合であっても、従来の繰り返し復号方法では、4回目以降の繰り返し復号をそのまま継続するため、場合によっては、折角、残留誤りがなくなった部分(誤り検出符号)に、4回目以降の誤り訂正復号により誤りが生じてしまうのである。
【0007】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、繰り返し復号の過程において常に最善の復号結果が最終的な復号結果として得られる復号方法および該復号方法に好適な符号化方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、情報ビットに対して誤り検出符号化および誤り訂正符号化を順次施すことにより生成された符号化系列を通信手段または記録媒体を介して取得し、前記誤り訂正符号に対応した復号器により繰り返し復号を行う方法において、繰り返し復号を構成する個々の復号毎に、誤り検出符号の復号を行って残留誤りの有無を判断し、残留誤りがないと判断した場合には、その誤り検出符号に含まれる情報の信頼度を向上させる処理を行うことを特徴とする復号方法を提供するものである。
【0009】
ここで、誤り検出符号に含まれる情報の信頼度を向上させる処理としては、当該誤り検出符号に対応した外部情報および尤度情報の一方または両方の値を増加させる処理を行うことが挙げられる。
【0010】
なお、繰り返し復号の過程において、全ての誤り検出符号について誤りがないと判定した場合には、直ちに繰り返し復号を終わらせるようにしてもよい。
【0011】
また、誤り検出符号の復号を行って残留誤りの有無を判断し、残留誤りがあると判断した場合には、その誤り検出符号に含まれる情報の中で信頼度の低いビットを反転させ、変更したビット列を複数生成し、それぞれを誤り検出符号として復号するようにしてもよい。
【0012】
また、この発明は、上記復号方法と組み合わせて用いるのに好適な符号化方法として、情報ビットの誤り検出符号化を行う過程と、誤り検出符号のインタリーブを行う過程と、誤り検出符号をインタリーブした情報に対し、繰り返し復号の可能な符号による誤り訂正符号化を施す過程とを具備することを特徴とする符号化方法を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
A.第1の実施形態
図1および図2は、本実施形態に係る復号方法と組み合わせて用いるのに好適な符号化装置の構成例を示すブロック図である。
【0015】
まず、図1に示す符号化装置は、CRC符号化器1と、インタリーバ2と、ターボ符号化器3とにより構成されている。この構成において、CRC符号化器1により、情報源からの情報に対してCRC情報が付加され、誤り検出符号として出力される。そして、この誤り検出符号を構成する各ビットを入れ替えるインタリーブがインタリーバ2によって行われる。このインタリーブ後の符号の誤り訂正符号化がターボ符号器3によって行われ、その結果得られる誤り訂正符号が復号装置へ向けて送信されるのである。
【0016】
次に、図2に示す符号化装置は、分割部4と、n個のCRC符号化器5−1〜5−nと、n個のインタリーバ6−1〜6−nと、多重化部7と、ターボ符号化器8とにより構成されている。この構成において、情報源からの情報は、分割部4によってn分割され、n個のCRC符号化器5−1〜5−nに振り分けられる。CRC符号化器5−1〜5−nでは、振り分けられた各情報に対してCRC判定情報が付加され、誤り検出符号として出力される。インタリーバ6−1〜6−nでは、各々前段のCRC符号化器から出力される誤り検出符号のインタリーブが行われる。そして、インタリーバ6−1〜6−nから得られるn個のインタリーブ済みの誤り検出符号が多重化部7によって多重化される。この多重化後の符号に対する誤り訂正符号化がターボ符号器8によって行われ、この結果得られる誤り訂正符号が復号装置に向けて送信される。
【0017】
なお、以上説明した各符号化装置は、本発明に係る復号方法と組み合わせて用いることにより特有の効果(後述)を生じるものであるが、本発明に係る復号方法は必ずしもこれらの符号化装置を前提とするものではなく、本発明に係る復号方法は、誤り検出符号と、ターボ符号のような繰り返し復号が適用される誤り訂正符号とを用いた符号化により得られる符号の全てに適用可能である。
【0018】
図3はこの発明の第1の実施形態である復号装置の構成を示すブロック図である。この復号装置は、繰り返し復号を行う2個の復号器11および13と、これらの復号器の各出力信号のCRC判定を行う2個のCRC判定器12および14とにより構成されている。なお、この復号装置は、例えば図4に示すような符号化装置から送られてくる符号化系列の繰り返し復号を行うものである。
【0019】
図3に示す構成において、符号化装置からの受信情報が復号器11に入力されると、この復号器11と他の復号器13との間で、外部情報Leの授受を行いつつ繰り返し復号が行われる。ただし、この繰り返し復号の過程において、各復号器11(13)の後続のCRC判定器12(14)は、復号器11(13)から尤度情報Lが出力される毎にその尤度情報LについてのCRC判定を逐次行う。そして、CRC判定の結果、誤りが存在しないフレームがあった場合、CRC判定器12(14)は、そのフレームに対応する外部情報Leの値を大きくして後続の復号器13(11)に供給する。ここで、外部情報Leを大きくする方法としては、現状の外部情報Leの定数倍にする方法、外部情報Leを適当に選んだ大きな定数にする方法などが考えられる。また、これ以外に、例えば100ビットの誤り検出ビットに誤りがない場合において各ビットに対応した各外部情報Leの平均値を新たな外部情報Leとして後続の復号器へ送る方法が挙げられる。これは、信頼度が外部情報Leの絶対値だけでなく平均値にも依存することを考慮した方法である。
【0020】
所定回数の繰り返し復号が終了すると、復号器11または13により最終的な尤度情報Lの硬判定が行われ、復号結果が得られる。そして、CRC判定器12または14により、この最終的な復号結果に誤りがあるか否かが判定される。
【0021】
以上説明したように、本実施形態においても繰り返し復号は所定回数だけ繰り返される。しかし、その繰り返し復号の過程において、あるフレームについて符号誤りがない旨のCRC判定がなされたときには、外部情報Leを大きくすることにより当該フレームの信頼度が高められる。その後、この信頼度の高くなったフレームについては誤り訂正可能な範囲が制約されるため、既に得られた誤りのない復号結果を誤訂正するような誤り訂正復号が抑止される。
【0022】
なお、本実施形態には次のような変形例が考えられる。
(1)繰り返し復号の過程において、全フレームにおいてCRC判定結果により誤りがないと判定された場合には、直ちに繰り返し復号を終わらせるようにしてもよい。
(2)上記実施形態では誤りの存在しないフレームの信頼度を高める処理として、当該フレームに対応した外部情報Leの値を増加させる処理を行ったが、当該フレームの尤度情報Lを高める処理または当該フレームの外部情報Leと尤度情報Lの両方を高める処理を行うようにしてもよい。この場合には、図3において、CRC判定器によって変更された尤度情報Lも復号器へ送り出されることとなる。復号器では、この尤度情報Lを用いて復号が行われる。
【0023】
さて、既に説明した通り、上記実施形態に係る復号方法は、誤り検出符号と、ターボ符号のような繰り返し復号が適用される誤り訂正符号とを用いた符号化により得られる符号の全てに適用可能であるが、前掲図1または図2に例示するような符号化装置を本発明に係る復号方法と組み合わせて用いると、特有の効果が生じる。以下、この点に関して説明する。
【0024】
通常、CRC符号化では、情報ビットの先頭または後尾にまとまった形で冗長ビット(CRCビット)が配置される。しかしながら、図1または図2に示す構成においては、CRC符号化器の後段のインタリーバにより、この冗長ビットが符号語の全体にまばらに配置されることとなる。このように冗長ビットがまばらに配置されることにより、誤り検出符号と誤り訂正符号(ターボ符号)を連接符号化したときの符号語間の最小ハミング距離を大きくすることができ、上記実施形態またはその変形例と組み合わせたときの復号後の誤り特性を改善することができるのである。
【0025】
B.第2の実施形態
本実施形態は、本出願人により出願された特許第2759043号(発明の名称:「情報ビット系列伝送システム」)に開示された誤り訂正復号方法を上記第1の実施形態の復号方法の中に取り入れたものである。具体的には次の通りである。
【0026】
上記第1の実施形態では、誤り検出符号の復号方法として硬判定復号を行っていた。これに対し、本実施形態では、誤り検出符号の復号方法として軟判定復号を行う。すなわち、本実施形態では、誤り検出符号の復号を行い、残留誤りの有無を判断し、残留誤りがあると判断した場合には、その誤り検出符号に含まれる情報の中で信頼度の低いビットを反転させ、変更したビット列を複数生成し、それぞれを誤り検出符号として復号するという処理を、各繰り返し復号毎に実行する。この過程において、残留誤りがないと判断した場合には、その誤り検出符号に含まれる情報ビットの外部情報または尤度情報の値を増加させる。本実施形態においても上記第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、情報ビットに対して誤り検出符号化および誤り訂正符号化を順次施すことにより生成された符号化系列を通信手段または記録媒体を介して取得し、前記誤り訂正符号に対応した復号器により繰り返し復号を行う方法において、繰り返し復号における個々の復号毎に、誤り検出符号の復号を行って残留誤りの有無を判断し、残留誤りがないと判断した場合には、その誤り検出符号に含まれる情報の信頼度を向上させる処理を行うようにしたので、繰り返し復号の過程において常に最善の復号結果が最終的な復号結果として得られるいう効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態である復号装置と組み合わせて用いるのに好適な符号化装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】この発明の第1の実施形態である復号装置と組み合わせて用いるのに好適な符号化装置の他の構成例を示すブロック図である。
【図3】この発明の第1の実施形態である復号装置の構成を示すブロック図である。
【図4】従来の符号化装置の構成例を示すブロック図である。
【図5】従来の復号装置の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
11,13……復号器、12,14……CRC判定器、
Le……外部情報、L……尤度情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報ビットに対して誤り検出符号化および誤り訂正符号化を順次施すことにより生成された符号化系列を通信手段または記録媒体を介して取得し、前記誤り訂正符号に対応した復号器により繰り返し復号を行う方法において、
繰り返し復号における個々の復号毎に、誤り検出符号の復号を行って残留誤りの有無を判断し、残留誤りのない誤り検出符号に対応した外部情報または尤度情報を増加させることを特徴とする復号方法。
【請求項2】
繰り返し復号の過程において、全ての誤り検出符号について誤りがないと判定した場合には、直ちに繰り返し復号を終わらせることを特徴とする請求項1に記載の復号方法。
【請求項3】
前記誤り検出符号の復号を行って残留誤りの有無を判断し、残留誤りがあると判断した場合には、その誤り検出符号に含まれる情報の中で信頼性の低いビットを反転させ、変更したビット列を複数生成し、それぞれを誤り検出符号として復号することを特徴とする請求項1に記載の復号方法。

【図1】
image rotate



【図2】
image rotate



【図3】
image rotate



【図4】
image rotate



【図5】
image rotate


【特許番号】特許第3545623号(P3545623)
【登録日】平成16年4月16日(2004.4.16)
【発行日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−615
【出願日】平成11年1月5日(1999.1.5)
【公開番号】特開2000−201085(P2000−201085A)
【公開日】平成12年7月18日(2000.7.18)
【審査請求日】平成14年4月8日(2002.4.8)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【参考文献】
【文献】特開昭60−120623(JP,A)