説明

復調回路、復調方法および受信装置

【課題】受信性能を向上させることができる復調回路、復調方法および受信装置の提供を図る。
【解決手段】受信信号を復調した復調信号を用いて、硬判定処理を行う硬判定処理部71,74,77と、前記復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲を決定し、ビットの尤度値を算出して軟判定処理を行う軟判定処理部72,75,78と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願で言及する実施例は、復調回路、復調方法および受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送、例えば、日本国における地上波デジタル放送の送信装置における変調は、まず、マップ処理により送信信号のビットストリームを複素平面にマッピングする。例えば、64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)であれば、送信信号のビットストリームを6ビットずつに区切り、複素平面上の64個の信号点にマッピングする。
【0003】
さらに、複素平面上の64個の信号点にマッピングされたデータ(信号)は、OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing:直交周波数分割多重方式)であれば、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)する。そして、IFFTされたデジタル信号をアナログ信号に変換した後、所望の周波数にアップしてアンテナから送り出す。
【0004】
一方、地上波デジタル放送の受信装置における復調は、上述した変調と逆の処理を実施する。すなわち、アンテナで受信したアナログ信号をデジタル信号に変換し、さらに、OFDMであれば、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)して伝送路等化する。
【0005】
さらに、伝送路等化した後の信号に対して、上述したマップ配列に従って、例えば、64QAMであれば、上記6ビットの尤度値(『0』または『1』のどちらに近いかを示す値)を求めるデマッピング処理を行う。
【0006】
この際、上述した変調の場合と異なり、伝送路に雑音およびマルチパス(電波の反射)やフェージング(移動受信で生じる電波の周波数変動)が生じて、送信点からずれた情報を受信することになる。
【0007】
ここで、伝送路等化したI/Q座標(コンスタレーション)上において、受信点から最も近い送信点を検出して各ビットに割り振るのが硬判定処理であり、硬判定によって各ビットに割り振られた信号点を複数ビットで量子化して、硬判定処理されたビットがどの程度確からしいかを求めて復号するのが軟判定処理である。
【0008】
すなわち、硬判定処理は、1つのビットに対して、1つの閾値で『0』もしくは『1』の2値信号と判定し、軟判定処理は、1つのビットに対して、複数の閾値で多値信号として判定する。
【0009】
ところで、従来、デジタル放送の受信装置(復調回路)としては、様々なものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−010987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、例えば、デジタル放送の復調回路においては、1つのビットに対して複数の閾値で多値信号として判定する軟判定処理が行われている。
【0012】
従来、受信性能を向上させるためには、例えば、軟判定処理に使用する軟判定ビット数を増やして軟判定の解像度(分割値)を増加させている。
【0013】
しかしながら、軟判定ビット数を増やすと情報量も増えるため、処理を行う回路や消費電力の増大を招き、さらに、軟判定ビット数をある程度以上増やしても受信性能を向上させることが困難になってしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施形態によれば、受信信号を復調した復調信号を用いて、硬判定処理を行う硬判定処理部と、軟判定処理部と、を有することを特徴とする復調回路が提供される。
【0015】
前記軟判定処理部は、前記復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲を決定し、ビットの尤度値を算出して軟判定処理を行う。
【発明の効果】
【0016】
開示の復調回路、復調方法および受信装置は、受信性能を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】64QAMによる複素平面上のマッピング配列の一例を示す図である。
【図2】図1のマッピング配列におけるデマップ処理を説明するための図である。
【図3】4ビット軟判定処理を説明するための図である。
【図4】本実施例に係る復調方法を説明するための図(その1)である。
【図5】本実施例に係る復調方法を説明するための図(その2)である。
【図6】本実施例に係る復調方法を説明するための図(その3)である。
【図7】本実施例に係る復調方法を説明するための図(その4)である。
【図8】本実施例に係る復調方法を説明するための図(その5)である。
【図9】本実施例に係る復調方法を説明するための図(その6)である。
【図10】本実施例に係る復調回路の一例の全体構成を示すブロック図である。
【図11】図10の復調回路におけるデマップ部の一例を示すブロック図である。
【図12】変調方式および符号化率とデマップ尤度値との対応例を示す図である。
【図13】図11のデマップ部におけるTMCC訂正部から出力される情報の一例を説明するための図(その1)である。
【図14】図11のデマップ部におけるTMCC訂正部から出力される情報の一例を説明するための図(その2)である。
【図15】復調回路におけるデマップ部の他の例を示すブロック図である。
【図16】様々なパラメータとデマップ尤度値との対応例を示す図である。
【図17】図8および図9を参照して説明した第2実施例の変形例における処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図18】本実施例に係る受信装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、復調回路、復調方法および受信装置の実施例を詳述する前に、復調回路およびその問題点を、図1〜図3を参照して説明する。
【0019】
図1は、64QAMによる複素平面上のマッピング配列の一例を示す図である。図1に示されるように、64QAMによる複素平面上のマッピング配列は、横軸Iおよび縦軸Qの複素平面に対して、64個の信号点(コンスタレーションポイント)となる。
【0020】
すなわち、変調方式が64QAMであれば、例えば、地上波デジタル放送の送信信号のビットストリームを6ビットずつに区切り、複素平面上の64個の信号点によりマッピングすることになる。
【0021】
図2は、図1のマッピング配列におけるデマップ処理を説明するための図であり、また、図3は、4ビット軟判定処理を説明するための図である。
【0022】
図2に示されるように、伝送路等化された受信信号は、変調方式が64QAMであれば、コンスタレーション(I/Q座標:複素平面)上において、64個の信号点にマッピングされる。そして、その中で最も距離的に近い信号点を特定し、その特定された信号点が送信点であると推定する。
【0023】
すなわち、I軸方向の8つの位置を示す3ビットとQ軸方向の8つの位置を示す3ビットの合計6ビットによる硬判定情報が得られ、その硬判定情報が、(b0,b1,b2,b3,b4,b5)として割り振られる。
【0024】
なお、変調方式が16QAMの場合には、I軸およびQ軸合わせて4ビットの硬判定情報が得られ、また、変調方式がQPSKの場合には、I軸およびQ軸合わせて2ビットの硬判定情報が得られる。
【0025】
ところで、硬判定情報に基づいて、例えば、ビタビ復号処理により誤り訂正しながら送信データを求めることができるが、例えば、受信環境が悪い場合には、復号誤りが生じてしまう。
【0026】
そこで、『0』または『1』の硬判定情報だけでなく、隣接する硬判定位置の間を分割し、判定結果の確からしさの情報を『0』から『1』の間を分割した値として軟判定情報を求めることが行われている。この軟判定情報を用いることで、ビタビ復号処理により復号誤りの可能性を低減することができる。なお、上述した硬判定処理および軟判定処理は、例えば、デマップ部で行われる。
【0027】
図2において、参照符号『*』を付した部分が、軟判定部位になる。このような軟判定部位において、例えば、図3に示すような4ビットの軟判定処理を行う。すなわち、軟判定部位『*』の傾斜部に対して、例えば、4ビット『0000』〜『1111』までの16値(0〜15)に割り振りを行うのが軟判定処理である。
【0028】
このようにして求めたデマップ尤度値(『0』または『1』のどちらに近いかを示す値)は、例えば、後段の誤り訂正部に入力されて誤り訂正が行われ、送信点が復元される。すなわち、軟判定処理を施したデータは、例えば、ビタビ復号などの誤り訂正をかけて誤りを取り除く処理を行うため、デマップ部における処理は、受信性能を向上させる上で重要な処理となっている。
【0029】
ところで、デマップ部において、受信性能を向上させる手法としては、単純に軟判定ビット数を増やして軟判定の解像度を増加させるのが一般的である。
【0030】
しかしながら、軟判定ビット数を増やすと情報量も増えるため、例えば、軟判定処理を行うためのメモリ容量を増加させなければならず、回路規模および消費電力の増大を招くことになる。さらに、軟判定ビット数は、ある程度以上増やすと、それ以上増やしても受信性能を向上させることは困難になる。
【0031】
以下、復調回路、復調方法および受信装置の実施例を、添付図面を参照して詳述する。まず、本実施例に係る復調方法は、デマップ尤度値(デマップされたビットの尤度値:『0』または『1』のどちらに近いかを示す値)の算出を、受信パラメータに応じて切り替える構成とし、尤度値の傾きを複数パターン用意して最適なものを選択する。
【0032】
ここで、デマップ尤度値の傾きは、デマップ処理した復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲に関連し、傾きを緩やかにすることは、割り当て範囲を広くすることに対応する。なお、受信パラメータとしては、例えば、使用する変調方式や符号化率などがある。
【0033】
さらに、本実施例に係る復調方法は、デマップ尤度値の算出を、受信パラメータではなく受信環境に応じて切り替える構成とし、尤度値の傾きを複数パターン用意して最適なものを選択することもできる。
【0034】
すなわち、デマップ尤度値の傾き(デマップ処理した復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲)を複数パターン用意し、受信環境に応じて最適な組み合わせを選択することもできる。なお、受信環境としては、例えば、MER(Modulation Error Rate)、遅延情報、或いは、フェージングレベルなどがある。
【0035】
以上において、デマップ尤度値の算出は、受信パラメータおよび受信環境の両方に応じて切り替えることもできるのはいうまでもない。また、デマップ尤度値の傾き(割り当て範囲)が制御される個所は、硬判定データが確実に『0』から『1』へ、或いは、『1』から『0』へ変化する個所に限定されるものではない。すなわち、ある第1レベルから、その第1レベルとは異なる第2レベルへ変化する個所であればよい。
【0036】
ところで、デマップ尤度値の傾きを緩やかにすると、すなわち、割り当て範囲を広くすると、複数の軟判定位置が生じることにもなり得る。このように、複数の軟判定位置が生じた場合には、後述するように、例えば、後段のデインターリーブを行うときに使用するメモリの増加を防ぐ圧縮処理を実施することにより、対処することができる。
【0037】
図4〜図9は、本実施例に係る復調方法を説明するための図である。ここで、図4および図5は、64QAMによりデマップ処理した復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲が1倍のものを示す。図6および図7は、割り当て範囲が1.5倍のものを示し、図8および図9は、割り当て範囲が2倍のものを示す。
【0038】
なお、図4,図6および図8は、−7〜+7のマップ位置(X)に対するデマップ処理した各ビットの復調信号を示す。図5,図7および図9は、各ビットのマップ位置とデマップ結果の関係を示す。
【0039】
また、図4,図6および図8において、異なる倍率の割り当て範囲(傾き)のパターンが用意される遷移個所は、硬判定データが『0』から『1』へ、或いは、『1』から『0』へ変化する個所になっているが、それに限定されるものではない。すなわち、遷移個所は、軟判定処理によるデータが変化する個所であってもよい。
【0040】
まず、図4および図5は、64QAMによりデマップ処理した復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲が1倍(そのまま)のものを示している。すなわち、図4における割り当て範囲Raは、マップ位置(X)の2目盛り分の広さになっている。
【0041】
なお、この割り当て範囲Raは、例えば、『1』から『0』に遷移する個所の傾き、或いは、『0』から『1』に遷移する個所の傾きに関連し、Raが広く(倍率が高く)なれば、傾きは緩やかになる。
【0042】
図5に示されるように、64QAMによりデマップ処理した復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲が1倍(デマップ尤度値の傾きも1倍)のものにおいて、ビットb0,b1の硬判定部位では、Xが−7〜−5,−5〜−3および−3〜−1で『1』になる。また、Xが+1〜+3,+3〜+5および+5〜+7で『0』になる。なお、ビットb0,b1の軟判定部位は、Xが−1〜+1で『(1−X)/2』になる。
【0043】
さらに、割り当て範囲が1倍のものにおいて、ビットb2,b3の硬判定部位では、Xが−3〜−1,−1〜+1および+1〜+3で『1』になり、また、Xが−7〜−5および+5〜+7で『0』になる。なお、ビットb2,b3の軟判定部位は、Xが−5〜−3および+3〜+5で『(5+X)/2』になる。
【0044】
そして、割り当て範囲が1倍のものにおいて、ビットb4,b5の硬判定部位では、Xが−5〜−3および+3〜+5で『1』になり、また、Xが−1〜+1で『0』になる。
【0045】
なお、ビットb4,b5の軟判定部位は、Xが−7〜−5で『(7+X)/2』になり、Xが−3〜−1で『(−1−X)/2』になり、Xが+1〜+3で『(−1+X)/2』になり、そして、Xが+5〜+7で『(7−X)/2』になる。
【0046】
ここで、実際のデマップ尤度値は、例えば、受信C/N(Carrier/Noise比)が低いほど、すなわち、ノイズが多いほど、正規分布の関係から尤度の傾きが緩く(割り当て範囲が広く)なる。これは、受信C/Nが低いほど、受信点の確かさが薄れるためである。これを踏まえて、以下に尤度の傾きを緩やかにしたものを説明する。
【0047】
図6および図7は、64QAMによりデマップ処理した復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲が1.5倍(デマップ尤度値の傾きが2/3倍)のものを示している。すなわち、図6におけるデマップ処理した復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲Rbは、マップ位置(X)の3目盛り分の広さになっている。
【0048】
ここで、図7(a)は、ビットb0,b1のマップ位置とデマップ結果の関係を示し、図7(b)は、ビットb2,b3のマップ位置とデマップ結果の関係を示す。図7(c)は、ビットb4,b5のマップ位置とデマップ結果の関係を示す。
【0049】
まず、図7(a)に示されるように、割り当て範囲が1.5倍のものにおいて、ビットb0,b1の硬判定部位では、Xが−7〜−5,−5〜−3および−3〜−1.5で『1』になり、また、Xが+1.5〜+3,+3〜+5および+5〜+7で『0』になる。なお、ビットb0,b1の軟判定部位は、Xが−1.5〜+1.5で『(1.5−X)/3』になる。
【0050】
すなわち、ビットb0,b1の軟判定部位において、復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲Rbは、例えば、図4に示した割り当て範囲Raを1.5倍した3目盛り分の広さになっている。従って、デマップ尤度値の傾きは、1/1.5(2/3)と緩やかになる。
【0051】
また、図7(b)に示されるように、割り当て範囲が1.5倍のものにおいて、ビットb2,b3の硬判定部位では、Xが−2.5〜−1,−1〜+1および+1〜+2.5で『1』になり、また、Xが−7〜−5.5および+5.5〜+7で『0』になる。
【0052】
なお、ビットb2,b3の軟判定部位は、Xが−5.5〜−2.5で『(5.5+X)/3』になり、また、Xが+2.5〜+5.5で『(5.5−X)/3』になる。
【0053】
さらに、図7(c)に示されるように、割り当て範囲が1.5倍のものにおいて、ビットb4,b5の硬判定部位では、Xが−4.5〜−3.5および+3.5〜+4.5で『1』になり、また、Xが−0.5〜+0.5で『0』になる。
【0054】
なお、ビットb4,b5の軟判定部位は、Xが−7〜−4.5で『(7.5+X)/3』になり、Xが−3.5〜−0.5で『(−0.5−X)/3』になる。さらに、Xが+0.5〜+3.5で『(−0.5+X)/3』になり、そして、Xが+4.5〜+7で『(7.5−X)/3』になる。
【0055】
次に、図8および図9は、64QAMによりデマップ処理した復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲が2倍(デマップ尤度値の傾きが1/2倍)のものを示している。すなわち、図5におけるデマップ処理した復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲Rcは、マップ位置(X)の4目盛り分の広さになっている。
【0056】
ここで、図9(a)は、ビットb0,b1のマップ位置とデマップ結果の関係を示し、図9(b)は、ビットb2,b3のマップ位置とデマップ結果の関係を示す。図9(c)は、ビットb4,b5のマップ位置とデマップ結果の関係を示す。
【0057】
まず、図9(a)に示されるように、割り当て範囲が2倍のものにおいて、ビットb0,b1の硬判定部位では、Xが−7〜−5,−5〜−3および−3〜−2で『1』になり、また、Xが+2〜+3,+3〜+5および+5〜+7で『0』になる。なお、ビットb0,b1の軟判定部位は、Xが−2〜+2で『(2−X)/4』になる。
【0058】
すなわち、ビットb0,b1の軟判定部位において、復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲Rcは、例えば、図4に示した割り当て範囲Raを2倍した4目盛り分の広さになっている。従って、デマップ尤度値の傾きは、1/2とさらに緩やかになる。
【0059】
また、図9(b)に示されるように、割り当て範囲が2倍のものにおいて、ビットb2,b3の硬判定部位では、Xが−2〜−1,−1〜+1および+1〜+2で『1』になり、また、Xが−7〜−6および+6〜+7で『0』になる。
【0060】
なお、ビットb2,b3の軟判定部位は、Xが−6〜−2で『(6+X)/4』になり、また、Xが+2〜+6で『(6−X)/4』になる。
【0061】
さらに、図9(c)に示されるように、割り当て範囲が2倍のものにおいて、ビットb4,b5では、全てが軟判定部位になる。すなわち、Xが−7〜−4で『(8+X)/4』になり、Xが−4〜+0で『−X/4』になり、Xが+0〜+4で『X/4』になり、そして、Xが+4〜+7で『(8−X)/4』になる。
【0062】
そして、本実施例の変調方法は、予め用意した複数パターンから、受信パラメータに応じて最適なパターンを選択し、その選択されたパターンに従って尤度値を算出するようになっている。なお、受信パラメータとしては、例えば、使用する変調方式や符号化率などがある。
【0063】
さらに、本実施例に係る復調方法は、予め用意した複数パターンから、受信環境に応じて最適なパターンを選択し、その選択されたパターンに従って尤度値を算出してもよい。なお、受信環境としては、例えば、MER、遅延情報、或いは、フェージングレベルなどがある。
【0064】
以上の説明では、64QAMによりデマップ処理した復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲が1倍,1.5倍および2倍、すなわち、デマップ尤度値の傾きが1倍,2/3倍および1/2倍の3種類のパターンを示したが、それに限定されるものではない。すなわち、予め割り当て範囲が2.5倍や3倍のものも含めて複数パターン用意しておき、受信パラメータや受信環境に応じて切り替えるようにすることができる。さらに、本実施例の適用は、64QAMの変調方式に限定されるものではないのはもちろんである。
【0065】
図10は、本実施例に係る復調回路の一例の全体構成を示すブロック図であり、地上波デジタル放送(ISDB−T:Integrated Service Digital Broadcasting-Terrestrial)に則った復調回路(復調LSI)100、アンテナ200およびチューナ300を示すものである。
【0066】
図10に示されるように、アンテナ200は、例えば、OFDM方式のデジタル信号で変調された高周波信号を受信し、その受信した高周波信号がチューナ300に入力される。
【0067】
チューナ300は、例えば、受信するチャネルを選択し、その選択されたチャネルの高周波信号を中間周波数(IF:Intermediate Frequency)へと変換して、A/D(アナログ/デジタル)変換器101へ出力する。A/D変換器101は、アナログ信号である中間周波信号をデジタル信号へと変換する。
【0068】
A/D変換器101の出力は、直交復調部102へ入力されて複素ベースバンド信号へと変換される。さらに、複素ベースバンド信号は、FFT部103による高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)が行われて、時間領域信号から周波数領域の信号へと変換される。
【0069】
そして、FFT部103の出力信号(データキャリア)は、伝送路推定部104およびTMCC訂正部105へ入力される。伝送路推定部104では、例えば、波形等化を行うためにOFDM信号が伝送してきた伝送路の伝搬特性を算出し、その算出結果を伝送路等化部106へ出力する。
【0070】
伝送路等化部106は、例えば、パイロット信号の補間処理とそれを用いてのデータキャリアの等化処理を行って等化されたデータ信号(復調データ)を、デマップ部107へ出力する。
【0071】
FFT部103の出力信号を受け取ったTMCC訂正部105は、TMCC(伝送多重制御:Transmission and Multiplexing Configuration Control)情報に対する誤り訂正を行ってTMCC信号を出力する。
【0072】
ここで、TMCC情報は、例えば、各キャリアで使用される変調方式や時間インターリーブにおけるインターリーブ長などの伝送パラメータを示す制御情報である。なお、誤り訂正されたTMCC情報は、受信装置の各部で利用される。すなわち、例えば、図11を参照して後述するように、TMCC訂正部105の出力信号(変調方式情報および符号化率情報)は、デマップ部107に入力されて利用される。
【0073】
デマップ部107は、伝送路等化部106からの復調データおよびTMCC訂正部105からのTMCC情報を受け取ってデマッピング処理を行う。なお、デマップ部107の各実施例は、後に、図11および図15等を参照して詳述する。
【0074】
デマップ部107の出力信号は、デインターリーブ部108に入力され、送信装置(送信局)で行われるインターリーブ処理の逆変換であるデインターリーブ処理が行われる。ここで、デインターリーブ処理は、所定の時間枠内のデータ列を所定のアルゴリズムに従って並べ替える処理である。
【0075】
誤り訂正部109は、デインターリーブ部108の出力信号(1ビットまたは複数ビットの2値データに変換された送信データ)を受け取って訂正処理を行い、TS(Transform Stream)形式の信号を出力する。なお、このTS形式の信号は、デコーダによって、映像および音声信号に変換される。
【0076】
図11は、図10の復調回路におけるデマップ部の一例を示すブロック図であり、変調方式(QPSK,16QAM,64QAM)に応じて尤度値の候補を切り替える実施例を示すものである。
【0077】
図11に示されるように、デマップ部107は、QPSK,16QAMおよび64QAMに対して、それぞれ硬判定処理部71,74,77、軟判定処理部72,75,78、並びに、尤度値選択部73,76,79を有している。
【0078】
そして、QPSK,16QAMおよび64QAMの変調方式ごとに、予め符号化率に応じた複数の尤度値テーブルを用意し、実際の変調方式および符号化率に従って、最適な尤度値テーブルを選択して軟判定処理を行う。
【0079】
すなわち、デマップ部107は、QPSK硬判定処理部71,QPSK軟判定処理部72およびQPSK尤度値選択部73、並びに、16QAM硬判定処理部74、16QAM軟判定処理部75および16QAM尤度値選択部76を有する。さらに、デマップ部107は、64QAM硬判定処理部77,64QAM軟判定処理部78および64QAM尤度値選択部79、並びに、セレクタ80を有する。
【0080】
まず、QPSK硬判定処理部71,16QAM硬判定処理部74および64QAM硬判定処理部77は、それぞれの変調方式QPSK(Quadrature Phase Shift Keying),16QAMおよび64QAMにおいて硬判定処理を行う。
【0081】
また、QPSK軟判定処理部72,16QAM軟判定処理部75および64QAM軟判定処理部78は、それぞれの変調方式QPSK,16QAMおよび64QAMにおいて軟判定処理を行う。
【0082】
そして、QPSK尤度値選択部73,16QAM尤度値選択部76および64QAM尤度値選択部79は、それぞれ予め用意された複数パターンから、符号化率情報に応じた最適なパターンを選択する。
【0083】
なお、QPSK尤度値選択部73,16QAM尤度値選択部76および64QAM尤度値選択部79により選択されたパターンは、それぞれ対応するQPSK軟判定処理部72,16QAM軟判定処理部75および64QAM軟判定処理部78に入力される。
【0084】
そして、QPSK軟判定処理部72,16QAM軟判定処理部75および64QAM軟判定処理部78は、QPSK尤度値選択部73,16QAM尤度値選択部76および64QAM尤度値選択部79で選択された尤度値テーブルに従って軟判定処理を行う。
【0085】
セレクタ80は、QPSK軟判定処理部72,16QAM軟判定処理部75および64QAM軟判定処理部78の出力信号を受け取り、それらの出力信号から変調方式情報に従って選択したものをデマップ出力として出力する。なお、符号化率情報(C0)および変調方式情報(M0)は、TMCC訂正部105から出力されている。
【0086】
以上により、デマップ部107は、変調方式M0および符号化率C0に従って、予め用意した複数パターンから最適なパターンを選択し、その選択されたパターンによりデマップ尤度値を算出してデマップ出力を出力する。
【0087】
具体的に、変調方式(QPSK、16QAM、64QAM)に対しては、例えば、符号点位置が近くなるほど、すなわち、64QAMになるほど、傾きの緩いデマップ尤度値のパターンを使用する。
【0088】
換言すると、同じ符号化率に対して、64QAM尤度値選択部79は、16QAM尤度値選択部76が選択するパターンよりも傾きが緩いパターン、すなわち、割り当て範囲の広いパターンを選択する。
【0089】
さらに、同じ符号化率に対して、16QAM尤度値選択部76は、QPSK尤度値選択部73が選択するパターンよりも傾きが緩いパターン、すなわち、割り当て範囲の広いパターンを選択する。
【0090】
図12は、変調方式および符号化率とデマップ尤度値との対応例を示す図である。具体的に、同じ64QAMの変調方式に関して、64QAM尤度値選択部79は、畳み込み符号に使用する符号化率C0が7/8に対して割り当て範囲が1.0倍のパターンを選択し、また、C0が5/6に対して割り当て範囲が1.5倍のパターンを選択する。
【0091】
さらに、64QAM尤度値選択部79は、C0が3/4に対して割り当て範囲が2.5倍のパターンを選択し、また、C0が2/3に対して割り当て範囲が3.0倍のパターンを選択する。そして、64QAM尤度値選択部79は、C0が1/2に対して割り当て範囲が4.0倍のパターンを選択する。
【0092】
また、同じ16QAMの変調方式に関して、16QAM尤度値選択部76は、畳み込み符号に使用する符号化率C0が7/8に対して割り当て範囲が1.0倍のパターンを選択し、さらに、C0が5/6に対して割り当て範囲が1.5倍のパターンを選択する。
【0093】
そして、16QAM尤度値選択部76は、C0が3/4に対して割り当て範囲が2.0倍のパターンを選択し、また、C0が2/3に対して割り当て範囲が2.5倍のパターンを選択する。さらに、16QAM尤度値選択部76は、C0が1/2に対して割り当て範囲が3.0倍のパターンを選択する。
【0094】
このように、同じ変調方式に関しては、符号化率が小さいほど、すなわち、1/2に近いほど、受信C/Nが低くても受信することができるため、傾きが緩いパターン、すなわち、割り当て範囲の広いパターンを使用すればより受信性能を向上させることができる。
【0095】
一方、同じ符号化率に関して、具体的に、同じ符号化率C0が5/6に関して、64QAM尤度値選択部79および16QAM尤度値選択部76は、割り当て範囲が1.5倍のパターンを選択する。また、QPSK尤度値選択部73は、割り当て範囲が1.0倍のパターンを選択する。
【0096】
さらに、例えば、同じ符号化率C0が3/4に関して、64QAM尤度値選択部79は、割り当て範囲が2.5倍のパターンを選択し、また、16QAM尤度値選択部76は、割り当て範囲が2.0倍のパターンを選択する。そして、QPSK尤度値選択部73は、割り当て範囲が1.5倍のパターンを選択する。
【0097】
このように、同じ符号化率に関しては、符号点位置が近いパラメータほど、すなわち、64QAMほど、応じて符号点位置が異なることになるため、傾きが緩いパターン、すなわち、割り当て範囲の広いパターンを使用すればより受信性能を高めることができる。
【0098】
図13および図14は、図11のデマップ部におけるTMCC訂正部から出力される情報の一例を説明するための図である。すなわち、TMCC訂正部105は、図13に示すような204ビットのTMCC情報を出力する。
【0099】
ここで、変調方式情報(M0)は、28〜30ビット目,41〜43ビット目および54〜56ビット目に割り振られており、畳み込み符号化率情報(C0)は、31〜33ビット目,44〜46ビット目および57〜59ビット目に割り振られている。
【0100】
すなわち、図14に示されるように、上記28〜30,41〜43および54〜56ビット目の変調方式情報(M0)により、例えば、DQPSK,QPSK,16QAMおよび64QAMの変調方式が規定される。
【0101】
さらに、上記31〜33,44〜46および57〜59ビット目の畳み込み符号化率情報(C0)により、例えば、1/2,2/3,3/4,5/6および7/8の畳み込み符号化率が規定される。
【0102】
図15は、復調回路におけるデマップ部の他の例を示すブロック図であり、受信環境(MER,遅延情報,フェージングレベル)に応じて尤度値の候補を切り替える実施例を示すものである。すなわち、MERに基づいて受信C/Nを推測し、それに応じたデマップ尤度値の傾き(割り当て範囲)を有するパターンを選択して常に最適な軟判定を実施する。
【0103】
ここで、フェージングやマルチパスがあるとコンスタレーションにひずみが生じるために、実際に受信可能な受信C/Nはそれが存在しない場合よりも高くなる。そのため、フェージングおよびマルチパスを、パイロット信号を用いて数値化し、その値が大きければ大きいほど傾きを急峻に(割り当て範囲を狭く)するようにパターン選択を行う。
【0104】
まず、図15に示されるように、デマップ部107は、QPSK,16QAMおよび64QAMに対して、それぞれ硬判定処理部171,174,177、軟判定処理部172,175,178、並びに、尤度値選択部173,176,179を有している。
【0105】
各尤度値選択部173,176,179は、例えば、MERおよび遅延情報,フェージングレベルごとに予め複数の尤度値テーブルを用意しておく。そして、実際のMERおよび遅延情報,フェージングレベルに従って、最適な尤度値テーブルを選択して軟判定処理を行う。
【0106】
ここで、図15と前述した図11との比較から明らかなように、本実施例では、さらに、伝送路推定部104の出力を受け取って遅延情報やフェージングレベルを出力する遅延プロファイル取得部110が設けられている。
【0107】
また、デマップ部107は、さらに、各変調方式の硬判定処理部171,174および177の出力を受け取って、TMCC訂正部105からの変調方式情報に従って選択するセレクタ181、および、MER算出部182を有する。ここで、MER算出部182は、セレクタ181の出力におけるMERを算出し、その算出されたMERを各変調方式の尤度値選択部173,176および179へ出力する。
【0108】
なお、図15におけるブロック171〜180は、図11におけるブロック71〜80に対応する。ただし、本実施例におけるQPSK尤度値選択部173,16QAM尤度値選択部176および64QAM尤度値選択部179は、遅延プロファイル取得部110の出力およびMER算出部182の出力を受け取って尤度値を選択する。
【0109】
すなわち、QPSK尤度値選択部173は、例えば、遅延プロファイル取得部110からの遅延情報およびフェージングレベル、並びに、MER算出部182からのQPSKのMERを受け取って対応する最適な尤度値テーブルを選択する。
【0110】
また、16QAM尤度値選択部176は、例えば、遅延プロファイル取得部110からの遅延情報およびフェージングレベル、並びに、MER算出部182からの16QAMのMERを受け取って対応する最適な尤度値テーブルを選択する。
【0111】
さらに、64QAM尤度値選択部179は、例えば、遅延プロファイル取得部110からの遅延情報およびフェージングレベル、並びに、MER算出部182からの64QAMのMERを受け取って対応する最適な尤度値テーブルを選択する。
【0112】
そして、各変調方式の軟判定処理部172,175および178は、それぞれの変調方式尤度値選択部173,176および179で選択された尤度値テーブルに従って軟判定処理を行う。その後、セレクタ180は、各変調方式の軟判定処理部172,175および178の出力信号を受け取り、それらの出力信号から変調方式情報に従って選択したものをデマップ出力として出力する。
【0113】
ここで、上述した実施例では、受信環境として、MER,遅延情報およびフェージングレベルを示して説明したが、例えば、MERだけに基づいて受信C/Nを推測し、それに応じた尤度値の傾き(割り当て範囲の広さ)を選択して軟判定を行ってもよい。また、受信環境としては、MER,遅延情報およびフェージングレベルに限定されないのはいうまでもない。
【0114】
図16は、様々なパラメータとデマップ尤度値との対応例を示す図であり、図16(a)〜図16(c)は、QPSK,16QAMおよび64QAMに対して、MERと遅延情報,フェージングレベルに対する選択パターン(割り当て範囲の倍率)を示す。また、図16(d)は、遅延情報およびフェージングレベルを区分するテーブルの例を示す。
【0115】
具体的に、図16(a)に示されるように、変調方式がQPSKの場合、例えば、MERが7dB以下のとき、遅延情報およびフェージングレベルが『小』および『中』ならば、割り当て範囲が1.5倍のものを選択し、『大』ならば1.0倍のものを選択する。なお、MERが7dB以上のときは、遅延情報およびフェージングレベルの『小』,『中』,『大』に関わらず、1.0倍のものを選択する。また、MERがちょうど7dBのときは、どちらに含めてもよいが、例えば、7dB以上として扱う。
【0116】
また、図16(b)に示されるように、変調方式が16QAMの場合、MERが16dB〜13dB(13dB以下)のとき、遅延情報およびフェージングレベルが『小』ならば、割り当て範囲が2.0倍のものを選択する。さらに、遅延情報およびフェージングレベルが『中』ならば、割り当て範囲が1.5倍のものを選択し、『大』ならば1.0倍のものを選択する。
【0117】
さらに、図16(c)に示されるように、変調方式が64QAMの場合、MERが16dB〜13dB(13dB以下)のとき、遅延情報およびフェージングレベルが『小』ならば、割り当て範囲が3.0倍のものを選択する。また、遅延情報およびフェージングレベルが『中』ならば、割り当て範囲が2.5倍のものを選択し、『大』ならば1.5倍のものを選択する。
【0118】
このように、例えば、同じ変調方式の場合、MERが大きいほど、また、遅延情報およびフェージングレベルが小さいほど、傾きの緩いデマップ尤度値のパターン、すなわち、割り当て範囲の広いパターンを選択する。
【0119】
ここで、遅延情報およびフェージングレベルの区分(『大』,『中』,『小』)は、例えば、図16(d)に示されるように、遅延情報およびフェージングレベルの値に応じて決めることができる。
【0120】
すなわち、例えば、変調方式がQPSKの場合、遅延情報は、0μS,ガード長以下,ガード長以上の条件により、また、フェージングレベルは、0Hz,70Hz以下,70Hz以上の条件により分けて、『大』,『中』,『小』を割り当てる。
【0121】
なお、図16では、各条件として以上および以下で区分けしているが、値がちょうどその条件に一致したときには、どちらに含めてもよいが、例えば、以上で区分けした方に含めればよい。具体的に、例えば、図16(a)でMERがちょうど7dBのときには、例えば、7dB以上として処理する。
【0122】
また、遅延情報およびフェージングレベルに対する条件、並びに『大』,『中』,『小』の3つの区分は、単なる例であり、より多くの区分(例えば、5つの区分)も可能である。さらに、前述した変調方式および符号化率の条件も含めて、予め複数の尤度値テーブルを用意し、その中から最適なテーブルを選択してもよいのはいうまでもない。
【0123】
このように、本実施例によれば、予め複数の尤度値テーブルを用意しておき、変調方式,符号化率,MER,遅延情報およびフェージングレベル等の条件に応じて適切な尤度値テーブルを選択し、その尤度値テーブルに基づいて軟判定処理を行うことができる。
【0124】
なお、尤度値テーブルは、上述したものに限らず、予め調べて適宜設定を変更することで、より一層最適なパラメータを使用した軟判定処理を行うことが可能になる。
【0125】
また、完全な正規分布を用いることなく、上述したような割り当て範囲のみを1.5倍や2倍にした尤度値テーブルを使用することでデータを圧縮することが可能になる。これにより、後段のデインターリーブ部のメモリを削減して回路規模の増加を招くことなく、性能を向上させることができる。
【0126】
ところで、前述したように、デマップ尤度値の傾きを緩やかに(割り当て範囲を広く)すると、複数の軟判定位置が生じることがあり得る。具体的に、図8の割り当て範囲を2倍に広げたものでは、例えば、ビットb0の軟判定個所がPP0aおよびPP0bの2個所発生することになる。
【0127】
しかしながら、複数の軟判定個所が生じた場合でも、本実施例では、単に、割り当て範囲を1.5倍、2倍(傾きを2/3倍や1/2倍)にしただけであるため、1個所の難判定情報だけでデータを復元することが可能である。
【0128】
具体的に、図8では、ビットb0の軟判定個所がPP0aおよびPP0bの2個所存在するが、例えば、b0が『0.2』の位置PP0aであれば、b2(PP2)は『1』で、b4(PP4)は『0.3』と推定できる。このように、1個所の軟判定情報で復元可能な尤度調整を行うことにより、低コストで、高性能な特性を確保することが可能になる。
【0129】
図17は、図8および図9を参照して説明した第2実施例の変形例における処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0130】
まず、ステップST1において、ビットb0,b1が軟判定個所であるかどうかを判別し、軟判定個所であると判別すると、ステップST2に進んで、b0,b1の軟判定情報と全ての硬判定情報を保持する。
【0131】
また、ステップST1において、ビットb0,b1が軟判定個所ではないと判別すると、ステップST3に進んで、b2,b3が軟判定個所であるかどうかを判別する。ステップST3で、軟判定個所であると判別すると、ステップST4に進んで、b2,b3の軟判定情報と全ての硬判定情報を保持する。
【0132】
そして、ステップST3において、軟判定個所であると判別すると、ステップST4に進んで、b2,b3の軟判定情報と全ての硬判定情報を保持する。一方、ステップST3において、軟判定個所ではないと判別すると、ステップST5に進んで、b4,b5の軟判定情報と全ての硬判定情報を保持する。
【0133】
そして、複数の軟判定個所が生じた場合には、保持している情報を使用し、例えば、前述した図16のテーブルを用いてデータの判定処理を行う。すなわち、デマップ部107において、複数の軟判定個所のいずれか1個所の軟判定情報により、軟判定を行い、例えば、後段のデインターリーブ部108に対しては、軟判定個所が1個所の場合と同様に、デマップ出力を出力することになる。
【0134】
図18は、本実施例に係る受信装置の一例を示すブロック図であり、本実施例の受信装置は、地上波デジタル放送に則った復調回路(復調LSI)100、アンテナ200、チューナ300およびデコーダ400を有する。
【0135】
復調回路100は、前述した図10と同様に、A/D変換器101,直交復調部102,FFT部103,伝送路推定部104,伝送路等化部106,デマップ部107,デインターリーブ部108および誤り訂正部109を有する。
【0136】
ここで、FFT部103,伝送路推定部104,デインターリーブ部108および誤り訂正部109には、それぞれメモリ130,140,180および190が設けられている。なお、各ブロックの説明は、図10を参照したのとどうようであり、その説明は省略する。
【0137】
復調回路100から出力されたTS信号は、デコーダ400に入力され、映像および音声信号に変換される。なお、この映像および音声信号は、例えば、携帯電話やカーナビゲーションシステム、或いは、テレビジョンセットのディスプレイおよびスピーカ等を介してユーザに提供されることになる。
【0138】
なお、本実施例の適用は、地上波デジタル放送に限定されるものではなく、軟判定処理を行う様々な変調方式の受信装置に対して幅広く適用することができる。
【0139】
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに、以下の付記を開示する。
(付記1)
受信信号を復調した復調信号を用いて、硬判定処理を行う硬判定処理部と、
前記復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲を決定し、ビットの尤度値を算出して軟判定処理を行う軟判定処理部と、
を有することを特徴とする復調回路。
【0140】
(付記2)
前記尤度値を算出するビットのデマップされたデマップ尤度値を、予め用意された複数のパターンから選択する尤度値選択部を有する、
ことを特徴とする付記1に記載の復調回路。
【0141】
(付記3)
前記尤度値選択部は、受信信号の変調方式および符号化率に基づいて前記パターンの選択を行い、
前記軟判定処理部は、前記尤度値選択部により選択された前記パターンに従って前記割り当て範囲を決定して前記軟判定処理を行う、
ことを特徴とする付記2に記載の復調回路。
【0142】
(付記4)
前記予め用意された複数のパターンは、
前記割り当て範囲を、前記変調方式が多値であるほど広くし、且つ、前記符号化率が低いほど広くするパターンを含む、
ことを特徴とする付記3に記載の復調回路。
【0143】
(付記5)
前記尤度値選択部は、受信環境に基づいて前記パターンの選択を行い、
前記軟判定処理部は、前記尤度値選択部により選択された前記パターンに従って前記割り当て範囲を決定して前記軟判定処理を行う、
ことを特徴とする付記2〜4のいずれか1項に記載の復調回路。
【0144】
(付記6)
前記受信環境は、
MER、並びに、遅延情報およびフェージングレベルの条件を含む、
ことを特徴とする付記5に記載の復調回路。
【0145】
(付記7)
前記予め用意された複数のパターンは、
前記割り当て範囲を、前記MERが大きいほど広くし、且つ、前記遅延情報およびフェージングレベルが小さいほど広くするパターンを含む、
ことを特徴とする付記6に記載の復調回路。
【0146】
(付記8)
受信信号を復調した復調信号を用いて、硬判定処理を行い、
前記復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲を決定し、ビットの尤度を算出して軟判定処理を行う、
ことを特徴とする復調方法。
【0147】
(付記9)
前記尤度値を算出するビットのデマップされたデマップ尤度値を、予め用意された複数のパターンから選択する、
ことを特徴とする付記8に記載の復調方法。
【0148】
(付記10)
前記尤度値の選択は、受信信号の変調方式および符号化率に基づいて前記パターンの選択を行い、
前記軟判定処理は、選択された前記パターンに従って前記割り当て範囲を決定して前記軟判定処理を行う、
ことを特徴とする付記9に記載の復調方法。
【0149】
(付記11)
前記予め用意された複数のパターンは、
前記割り当て範囲を、前記変調方式が多値であるほど広くし、且つ、前記符号化率が低いほど広くするパターンを含む、
ことを特徴とする付記10に記載の復調方法。
【0150】
(付記12)
前記尤度値の選択は、受信環境に基づいて前記パターンの選択を行い、
前記軟判定処理は、選択された前記パターンに従って前記割り当て範囲を決定して前記軟判定処理を行う、
ことを特徴とする付記9〜11のいずれか1項に記載の復調方法。
【0151】
(付記13)
前記受信環境は、
MER、並びに、遅延情報およびフェージングレベルの条件を含む、
ことを特徴とする付記12に記載の復調方法。
【0152】
(付記14)
前記予め用意された複数のパターンは、
前記割り当て範囲を、前記MERが大きいほど広くし、且つ、前記遅延情報およびフェージングレベルが小さいほど広くするパターンを含む、
ことを特徴とする付記13に記載の復調方法。
【0153】
(付記15)
受信するチャネルを選択するチューナと、
該チューナからの受信信号を受け取る付記1〜7のいずれ1項に記載の復調回路と、
該復調回路の出力信号を変換して映像/音声信号を出力するデコーダと、
を有することを特徴とする受信装置。
【符号の説明】
【0154】
71,171 QPSK硬判定処理部
72,172 QPSK軟判定処理部
73,173 QPSK尤度値選択部
74,174 16QAM硬判定処理部
75,175 16QAM軟判定処理部
76,176 16QAM尤度値選択部
77,177 64QAM硬判定処理部
78,178 64QAM軟判定処理部
79,179 64QAM尤度値選択部
80,181 セレクタ
100 復調回路(復調LSI)
101 A/D変換器
102 直交復調部
103 FFT部
104 伝送路推定部
105 TMCC訂正部
106 伝送路等化部
107 デマップ部
108 デインターリーブ部
109 誤り訂正部
110 遅延プロファイル取得部
130,140,180,190 メモリ
182 MER算出部
200 アンテナ
300 チューナ
400 デコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号を復調した復調信号を用いて、硬判定処理を行う硬判定処理部と、
前記復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲を決定し、ビットの尤度値を算出して軟判定処理を行う軟判定処理部と、
を有することを特徴とする復調回路。
【請求項2】
前記尤度値を算出するビットのデマップされたデマップ尤度値を、予め用意された複数のパターンから選択する尤度値選択部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の復調回路。
【請求項3】
前記尤度値選択部は、受信信号の変調方式および符号化率に基づいて前記パターンの選択を行い、
前記軟判定処理部は、前記尤度値選択部により選択された前記パターンに従って前記割り当て範囲を決定して前記軟判定処理を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の復調回路。
【請求項4】
前記予め用意された複数のパターンは、
前記割り当て範囲を、前記変調方式が多値であるほど広くし、且つ、前記符号化率が低いほど広くするパターンを含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の復調回路。
【請求項5】
前記尤度値選択部は、受信環境に基づいて前記パターンの選択を行い、
前記軟判定処理部は、前記尤度値選択部により選択された前記パターンに従って前記割り当て範囲を決定して前記軟判定処理を行う、
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の復調回路。
【請求項6】
前記受信環境は、
MER、並びに、遅延情報およびフェージングレベルの条件を含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の復調回路。
【請求項7】
前記予め用意された複数のパターンは、
前記割り当て範囲を、前記MERが大きいほど広くし、且つ、前記遅延情報およびフェージングレベルが小さいほど広くするパターンを含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の復調回路。
【請求項8】
受信信号を復調した復調信号を用いて、硬判定処理を行い、
前記復調信号の遷移個所に対する割り当て範囲を決定し、ビットの尤度を算出して軟判定処理を行う、
ことを特徴とする復調方法。
【請求項9】
前記尤度値を算出するビットのデマップされたデマップ尤度値を、予め用意された複数のパターンから選択する、
ことを特徴とする請求項8に記載の復調方法。
【請求項10】
受信するチャネルを選択するチューナと、
該チューナからの受信信号を受け取る請求項1〜7のいずれ1項に記載の復調回路と、
該復調回路の出力信号を変換して映像/音声信号を出力するデコーダと、
を有することを特徴とする受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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