説明

微多孔膜、かかる膜の製造方法、およびバッテリーセパレーターフィルムとしてのかかる膜の使用

本発明は、ポリマーを含み、かつ透気度、シャットダウン温度、および突刺強度のバランスの良い微多孔膜に関する。本発明は、かかる膜の作製方法、およびリチウムイオン二次電池等におけるバッテリーセパレーターフィルムとしてのかかる膜の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年5月11日出願の米国特許仮出願第61/177,060号および2009年6月25日出願の欧州特許出願公開第091636985号;2009年3月30日出願の米国特許仮出願第61/164,824号および2009年5月25日出願の欧州特許出願公開第091609644号;2009年3月30日出願の米国特許仮出願第61/164,817号および2009年5月25日出願の欧州特許出願公開第091609651号;2009年3月30日出願の米国特許仮出願第61/164,833号および2009年5月25日出願の欧州特許出願公開第091609669号;2009年3月30日出願の米国特許仮出願第61/164,827号および2009年5月25日出願の欧州特許出願公開第091609677号;2009年6月24日出願の米国特許仮出願第61/220,094号および2009年8月19日出願の欧州特許出願公開第091681940号の優先権を主張し、それぞれの内容を全体として参照により組み入れるものとする。
【0002】
本発明は、ポリマーを含み、かつ透気度、シャットダウン温度、および突刺強度のバランスの良い微多孔膜に関する。本発明は、かかる膜の製造方法、およびリチウムイオン二次電池等におけるバッテリーセパレーターフィルムとしてのかかる膜の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
微多孔膜は、一次電池および二次電池用のセパレーターとして有用である。このような電池としては、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池等が挙げられる。微多孔性ポリオレフィン膜をリチウムイオン電池用のセパレーターとして使用する場合、膜の特性が電池の性能に大きく影響する。特に、微多孔性ポリオレフィン膜の透気度およびシャットダウン温度は、一般的に電池の性能に影響する。
【0004】
バッテリーセパレーターフィルムは、電池の安全域を向上させるために、メルトダウン温度に比べて比較的低いシャットダウン温度を有することが望ましい。通常は、ポリエチレンを含有する微多孔性ポリオレフィン膜は、約132℃〜140℃の比較的高いシャットダウン温度を有する。
【0005】
高強度および高透気度を有する微多孔膜は、超高分子量ポリオレフィン(以下、「UHMWPO」と呼ぶ)を用いて作製されてきた。例えば特開昭60−242035号公報(特許文献1)には、7×10以上の平均分子量を有するUHMWPOと溶媒とを含有する溶液を押し出すことにより作製されるゲル状シートを成型すること、ゲル状シートから溶媒を除去すること、次いでゲル状シート延伸することを含むプロセスにより作製されるUHMWPO膜が開示されている。特開平03−064334号公報(特許文献2)には、高濃度UHMWPO溶液から微多孔膜を製造するために特定の分子量分布を有するポリオレフィン微多孔膜が開示されている。
【0006】
特開昭60−023954号公報(特許文献3)、特開平03−201360号公報(特許文献4)、および特開平05−025305号公報(特許文献5)には、分岐状低密度ポリエチレン(LDPE)および/または直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含むバッテリーセパレーターフィルムが開示されている。このフィルムは比較的低いシャットダウン温度を有すると言われている。さらに、特開平11−269289号公報(特許文献6)には、シャットダウン温度を下げるために、2〜80質量%の、95℃〜125℃の融解ピークを有するほぼ直鎖状のエチレン−α−オレフィンコポリマーを含む微多孔膜が開示されている。シャットダウン温度は改善されるが、比較的低い融解ピークのポリエチレンを使用することによって、特にフィルム製造、電池製造、または電池使用においてポリエチレンの融解ピーク以上の温度を伴う場合には、透気度がより低くなる可能性がある。特開2002−338730号公報(特許文献7)には、この透気度の喪失は、例えば125℃〜132℃の範囲といった、比較的高い融解ピークを有するポリエチレンを用いることによって一部克服することができる、ということが開示されている。
【特許文献1】特開昭60−242035号公報
【特許文献2】特開平03−064334号公報
【特許文献3】特開昭60−023954号公報
【特許文献4】特開平03−201360号公報
【特許文献5】特開平05−025305号公報
【特許文献6】特開平11−269289号公報
【特許文献7】特開2002−338730号公報
【0007】
改善はされてきているが、比較的低いシャットダウン温度および比較的高い透気度を有する膜が望まれている。
【発明の概要】
【0008】
ある実施形態においては、本発明は、115.0℃〜130.0℃の範囲の融解ピーク温度および5.0×10〜4.0×10の範囲の重量平均分子量を有するポリオレフィンを含む微多孔膜に関する。所望により、膜は、5.0×10秒/100cm/20μm以下の透気度および130.5℃以下のシャットダウン温度を有する。
【0009】
別の実施形態においては、本発明は、
(1)希釈剤と、(i)115.0℃〜130.0℃の範囲の融解ピーク温度および5.0×10〜4.0×10の重量平均分子量を有する第1のポリエチレンを含むポリマーとの混合物を押し出す工程、
(2)押出物を少なくとも1つの平面方向に延伸する工程、および
(3)希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去して微多孔膜を形成する工程
を含む微多孔膜の製造方法に関する。
【0010】
別の実施形態においては、本発明は、前述のプロセスで製造される微多孔膜に関する。
【0011】
別の実施形態においては、本発明は、電解質と、負極と、正極と、負極と正極の間に位置するセパレーターとを含む電池であって、セパレーターが、前述のいずれかの実施形態の微多孔膜を含む、電池に関する。
【0012】
さらに別の実施形態においては、本発明は、例えば電気自動車、ハイブリッド電気自動車、電動工具、コンピューター、携帯電話、家庭用電化製品等における電源としてのかかる電池の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ポリオレフィンの融解ピークおよび重量平均分子量が膜の透気度およびシャットダウン温度に及ぼす影響を示す図である。指定されたポリオレフィンの量を増やすことにより、透気度が低下し、膜シャットダウン温度がより低くなっている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、透気度とシャットダウン温度とのバランスが向上した微多孔膜に関する。微多孔膜が、例えば130.0℃以下といった、比較的低い融解ピーク(「Tm」)を有するポリマーを含むと、膜中のポリマーの量が増加するにつれて膜のシャットダウン温度が低下し膜の透気度が上昇する、ということがわかっている。したがって、比較的高いTmのポリマーを用いる場合、シャットダウン温度を抑えるために必要とされる比較的多い量が、透気度の低下にもつながる。115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲の重量平均分子量(「Mw」)を有するポリマーを選択することによって、この難点は克服できる、すなわちシャットダウン温度と透気度の両方を向上させることができる、ということがわかっている。図からわかるように、このようなポリマーから製造される微多孔膜は、比較的低い膜シャットダウン温度においても良好な透気度を有する。
【0015】
図1は、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するポリエチレンの量を関数とした、ポリエチレン微多孔膜の透気度およびシャットダウン性能を表にしたもの(表A)を図で表したものである。ポリエチレンAからDは、望ましい範囲のTmおよびMwを有する。ポリエチレンEは比較のために示す。
【表A】

【0016】
ポリエチレンEに関しては、131.0℃の膜シャットダウン温度においても、膜の透気度は5×10秒/100cm/20μm超である。図中の他の曲線は、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するポリエチレン(ポリエチレンAからD)の含有量が増加していく微多孔膜を表している。これらの膜は、膜のシャットダウン温度が例えば130.5℃以下といった比較的低い場合においても、比較的高い透気度(5.0×10秒/100cm/20μm以下)を有する。
[1]微多孔性ポリオレフィン膜の製造に用いる材料の組成
【0017】
ある実施形態においては、微多孔膜は、ポリマーと希釈剤との混合物を押し出すことにより作製される。希釈剤は、ポリマー用の溶媒であってもよい。ポリマーが希釈剤に可溶であるか、または希釈剤と混和する場合、このポリマー−希釈剤混合物はポリマー溶液と呼ぶことができる。ポリマーがポリオレフィンであり希釈剤が流動パラフィンである場合、この混合物はポリオレフィン溶液と呼ぶことができる。ポリマーがポリマーの混合物、例えばポリオレフィンの組合せである場合、ポリマー組成物、例えばポリオレフィン組成物と呼ぶことができる。ポリマーは、例えば個々のポリマー成分の混合物または反応器ブレンドであってもよい。ある実施形態においては、膜は、希釈剤およびポリオレフィンの混合物から製造され、ここでの希釈剤は、流動パラフィン等のポリオレフィン混合物用の溶媒である。以下、この実施形態において有用なポリオレフィンの例についてさらに詳細に説明する。本発明をこれらの実施形態に関して説明するが、本発明はそれらに限定されるものではなく、これらの実施形態についての説明は、本発明のより広い範囲内の他の実施形態を除外することを意図するものではない。
(1)ポリエチレン樹脂(1種または複数)
【0018】
ある実施形態においては、微多孔膜の製造に用いるポリオレフィンは、ポリオレフィンの混合物を含む。例えば、膜は、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有する第1のポリエチレンと、1.0×10以下のMwおよび131.0℃以上の融解ピークを有する第2のポリエチレンとの混合物から製造することができる。別の実施形態においては、ポリエチレン混合物は、第1のポリエチレン、第2のポリエチレン、および1.0×10を超えるMwを有する第3のポリエチレンを含む。さらに別の実施形態においては、ポリエチレン混合物は、第1のポリエチレンおよび第3のポリエチレンを含む。ポリエチレン混合物のMwは決定的な要因ではなく、例えば約1×10〜約1×10、約1×10〜約5×10、または約2×10〜約3×10の範囲であってもよい。ある実施形態においては、微多孔膜は、膜の質量を基準として50質量%以上のポリエチレンを含む。微多孔膜の製造に用いるポリエチレンは、エチレン繰り返し単位を含有するポリオレフィン(ホモポリマーまたはコポリマー)を含んでもよい。所望によりポリエチレンは、ポリエチレンホモポリマー、および/または繰返し単位の少なくとも85%(個数基準)がエチレン単位であるポリエチレンコポリマーを含む。
(a)第1のポリエチレン
【0019】
第1のポリエチレンは、115.0℃〜130.0℃の範囲のTm、および5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するエチレン系ポリオレフィンホモポリマーまたはコポリマーを含む。Tmが115.0℃以下の場合、同時に膜透気度を低下させることなく熱的に安定な膜(例えば熱収縮が小さいもの)を製造することがより困難である。通常は、熱的に安定な膜の製造には115.0℃を超える熱処理温度(例えば熱固定温度)が用いられ、熱固定温度がポリマーのTm以上の場合は膜透気度が低下する。第1のポリエチレンのTmが131.0℃を超えると、高い透気度と低いシャットダウン温度の両方を有する微多孔膜を製造することがより困難である。第1のポリエチレンのMwが5.0×10を有意に下回るかまたはMwが4.0×10を有意に上回ると、Tmが例えば125℃〜130℃の範囲またはそれ以上といった比較的高い場合であっても、良好な透気度を有する微多孔膜を製造することがより困難である、ということが分かっている。
【0020】
Tmは、JIS K7122に従って次のようにして測定する。第1のポリエチレンの試料を、210℃で溶融プレスされる厚さ0.5mmの成形物として調製し、次いで約25℃の温度にさらしながら約24時間保存する。次いで試料を、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製Pyris Diamond DSC)の試料ホルダーに入れ、窒素雰囲気中にて25℃の温度にさらす。次いで試料を、230℃の温度に達するまで10℃/分の速度で上昇する温度にさらす(第1の加熱サイクル)。試料を230℃の温度に1分間さらし、次いで30℃の温度に達するまで10℃/分の速度で低下する温度にさらす。試料を30℃の温度に1分間さらし、次いで230℃の温度に達するまで10℃/分の速度で上昇する温度にさらす(第2の加熱サイクル)。DSCによって、第2の加熱サイクル中に試料へと流れる熱の量が記録される。Tmは、30℃〜200℃の温度範囲内の、DSCによって記録される試料への熱流量が最大の時の温度である。ポリエチレンは、主ピークに隣接する副融解ピーク、および/または溶融終点転移(end-of-melt transition)を示すことがあるが、本明細書においては、そのような副融解ピークはまとめて一つのの融点と見なし、これらのピークの中で最も高いものをTmと見なす。
【0021】
ある実施形態においては、第1のポリエチレンは、例えば120.0℃〜126.0℃、120.5℃〜124.5℃、または121.0℃〜124.0℃といった、120.0℃〜128.0℃の範囲のTmを有する。別の実施形態においては、第1のポリエチレンは、122.0℃〜126.0℃の範囲のTmを有する。
【0022】
ある実施形態においては、第1のポリエチレンは、8.0×10〜2.0×10の範囲のMwを有する。別の実施形態においては、第1のポリエチレンは、1.0×10〜1.0×10の範囲のMwを有する。所望により第1のポリエチレンは、例えば1.5〜20、約1.5〜約5、または約1.8〜約3.5の範囲といった、100以下の分子量分布(「MWD」:Mw/Mnと定義される)を有する。
【0023】
ある実施形態においては、第1のポリエチレンは、エチレンとα−オレフィン等のコモノマーとのコポリマーを含む。コモノマーは、通常はエチレンの量と比べると比較的少量で存在する。例えばコモノマー量は、コポリマー100モル%を基準として通常は10モル%未満、例えば1.0%〜5.0モル%である。コモノマーは、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン、または他のモノマーの1つまたは複数であってもよい。かかるポリマーまたはコポリマーは、シングルサイト触媒を含むいずれかの好適な触媒を用いて製造することができる。例えばポリマーは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,084,534号に開示されている方法(例えば、当該特許の実施例27および41に開示されている方法)に従って製造することができる。
【0024】
ある実施形態においては、第1のポリエチレンの量は、例えば、膜の製造に用いるポリマーの全質量を基準として、例えば約1.0質量%〜30.0質量%または1.0質量%〜20.0質量%、例えば約4.0質量%〜17.0質量%または約8.0質量%〜約13.0質量%といった、1.0質量%以上であってもよい。
(b)第2のポリエチレン
【0025】
第2のポリエチレンは、131.0℃以上(例えば131.0℃〜135℃の範囲)のTm、および例えば1.0×10〜9.0×10、例えば約4×10〜約8×10の範囲といった、1.0×10以下のMwを有する。Tmは、第1のポリエチレンと同じ方法で測定する。所望により第2のポリエチレンは、例えば1〜50.0、例えば約3.0〜約20.0の範囲といった、1.0×10以下の分子量分布(「MWD」)を有する。例えば第2のポリエチレンは、高密度ポリエチレン(「HPDE」)、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンの1つまたは複数であってもよい。所望により、第2のポリエチレンはHDPEである。所望により、第2のポリエチレンは末端不飽和基を有する。例えば第2のポリエチレンは、例えば炭素原子10,000個当たり5.0以上、例えば炭素原子10,000個当たり10.0以上といった、炭素原子10,000個当たり0.20以上の末端不飽和基量を有してもよい。末端不飽和基量は、例えばPCT公開WO1997/23554に記載の手順に従って測定することができる。別の実施形態においては、第2のポリエチレンは、炭素原子10,000個当たり0.20未満の末端不飽和基量を有する。所望により第2のポリエチレンの量は、膜の製造に用いるポリマーの総量を基準として、例えば25.0質量%〜99.0質量%、例えば50.0質量%〜95.0質量%、または60.0質量%〜85.0質量%の範囲といった、99.0質量%以下である。
【0026】
ある実施形態においては、第2のポリエチレンは、(i)エチレンホモポリマー、または(ii)エチレンと、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1等のコモノマーとのコポリマーの少なくとも1つである。コモノマーを使用する場合、その量は、コポリマー100モル%を基準として10.0モル%以下である。かかるポリマーまたはコポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒またはシングルサイト触媒を用いるプロセス等の、いずれかの都合のよい重合プロセスにより製造することができる。コモノマーは、α−オレフィンであってもよく、例えば、所望によりコモノマーは、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン、または他のモノマーの1つまたは複数である。
(c)第3のポリエチレン
【0027】
ある実施形態においては、第3のポリエチレンは、例えば1.1×10〜約5×10の範囲、例えば約1.2×10〜約3×10、例えば約2×10といった、1.0×10を超えるMwを有する。所望により第3のポリエチレンは、例えば約2.0〜約1.0×10、例えば約4〜約20または約4.5〜約10.0といった、1.0×10以下のMWDを有する。例えば、第3のポリエチレンは超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)であってもよい。所望により第3のポリエチレンの量は、膜の製造に用いるポリマーの全質量を基準として、例えば0質量%〜74.0質量%、例えば1.0質量%〜46.0質量%、または7.0質量%〜32.0質量%の範囲といった、99.0質量%以下である。第3のポリエチレンの含有量が74.0質量%超であると、向上したシャットダウン特性および熱収縮特性を有する微多孔膜を製造することがより困難である。ある実施形態においては、第3のポリエチレンは、(i)エチレンホモポリマー、または(ii)エチレンと、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1等のコモノマーとのコポリマーの少なくとも1つである。コモノマーを使用する場合、その量は、コポリマー100モル%を基準として10モル%以下である。コモノマーは、例えばポリオレフィンであってもよい。所望によりコモノマーは、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン、または他のコモノマーの1つまたは複数である。かかるポリマーまたはコポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒またはシングルサイト触媒を用いるプロセス等のいずれかの都合のよい重合プロセスを用いて製造することができる。
(d)第1、第2、および第3のポリエチレンの混合物
【0028】
ある実施形態においては、膜は、希釈剤と、第1、第2、および第3のポリエチレンの混合物とから製造される。第1、第2、および第3のポリエチレンを使用する場合、ポリマー−希釈剤混合物中のポリエチレン混合物のMWDは、従来の方法、例えば、混合物中の樹脂の相対量およびMWDを調節すること、または反応器ブレンド処理条件を調節することにより制御することができる。ある実施形態においては、第2のポリエチレンは高密度ポリエチレンである。所望により、膜中の第2および第3のポリエチレンの混合物の量は、膜の質量を基準として、例えば70.0質量%〜約95.0質量%の範囲といった70.0質量%以上であり、残りが第1のポリエチレンとなる。
(e)分子量分布(MWD)
【0029】
混合したポリエチレンのMWDは、5.0〜約3.0×10、5.0〜約100、または約10〜約30の範囲であってもよい。決定的な要因ではないが、MWDが5.0未満であると、押出しがより困難になり得、かつ許容可能な厚さ均一性を有する微多孔性ポリオレフィン膜を作製することがより困難になり得る。一方、MWDが3.0×10を超えると、十分な強度を有する微多孔膜を作製することがより困難になり得る。ポリオレフィンまたはポリオレフィンの混合物のMWDは、例えば多段階重合を用いることによって制御することができる。
【0030】
ポリエチレンのMwおよびMWDは、示差屈折計(DRI)を備えた高温サイズ排除クロマトグラフ、すなわち「SEC」(GPC PL 220、ポリマーラボラトリーズ社)を用いて決定する。3本のPLgel Mixed-Bカラム(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いる。公称流量は0.5cm/分であり、公称注入量は300μLである。トランスファーライン、カラム、およびDRI検出器が、145℃に維持されたオーブン内に含まれている。測定は、"Macromolecules, Vol. 34, No. 19, pp. 6812-6820 (2001)"に開示されている手順に従って行う。
【0031】
使用するGPC溶媒は、約1000ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する、濾過済みの、アルドリッチ社製の、試薬グレードの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)である。TCBを、SECに導入する前にオンライン脱気装置で脱気する。ポリマー溶液を、乾燥ポリマーをガラス容器に入れ、所望の量の上記TCB溶媒を加え、次いでこの混合物を160℃で継続的に撹拌しながら約2時間加熱することにより調製する。溶液中のポリマーの濃度は0.25〜0.75mg/mlである。試料溶液は、GPCに注入する前に、モデルSP260 Sample Prep Station(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて2μmフィルターでオフラインろ過する。
【0032】
Mp(「Mp」はMwにおけるピークと定義する)が約580〜約10,000,000の範囲の17種のそれぞれのポリスチレン標準を用いて作成した検量線でカラムセットの分離効率を較正する。ポリスチレン標準はポリマーラボラトリーズ社(マサチューセッツ州アマースト)より入手する。各PS標準についてDRI信号のピークにおける保持容量を記録し、このデータセットを二次多項式に当てはめることによって、検量線(logMp対保持容量)を作成する。ウェーブメトリクス社(Wave Metrics, Inc.)製IGOR Proを用いて試料を分析する。
(2)さらなる他のポリマー
【0033】
ポリエチレン樹脂(1種または複数)に加え、ポリオレフィン混合物は、所望により第4のポリオレフィン等のさらなる他のポリマーを含有してもよい。第4のポリオレフィンは、ホモポリマー、または例えばポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等のコポリマー、の1つまたは複数であってもよい。所望により、第4のポリオレフィンは約1×10〜約4×10の範囲のMwを有する。第4のポリオレフィンを使用する場合、通常その量は、微多孔膜の製造に用いるポリマーの質量を基準として20.0質量%未満の範囲であり、例えば0.5質量%〜10.0質量%の範囲である。ポリオレフィン組成物はまた、ポリエチレンワックス、例えば約1×10〜約1×10のMwを有するものを含有してもよい。ポリエチレンワックスを使用する場合、通常その量は、微多孔膜の製造に用いる第1、第2、および第3のポリマーとポリエチレンワックスとを合わせた質量の約20.0%質量%未満である。ある実施形態においては、ポリエチレンワックスの量は、例えば0.5質量%〜10質量%の範囲といった、10.0質量%未満である。第4のポリマーおよび/またはポリエチレンワックスを使用する場合、微多孔性ポリオレフィン膜の特性の有意な劣化を引き起こす量で使用されない限り、その量は決定的な要因ではない。ある実施形態においては、第4のポリマーは、1.0×10以上のMwおよび90J/g以上の融解熱(第二融解)を有するポリプロピレンである。好適なポリプロピレンは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT特許公開第WO2007/132942号に記載されている。
[2]微多孔膜の製造方法
【0034】
ある実施形態においては、微多孔膜は、押出物から製造される単層(すなわち、一層)膜である。押出物は、ポリオレフィンおよび希釈剤から次のようにして製造することができる。
【0035】
ある実施形態においては、微多孔膜は、(1)希釈剤(例えば膜形成溶媒)とポリオレフィンとを混合する工程、(2)混合した希釈剤とポリオレフィンとをダイを通して押し出して、押出物を形成する工程、(3)所望により押出物を冷却してゲル状シート等の冷却押出物を形成する工程、(4)冷却押出物を少なくとも1つの平面方向に延伸する工程、例えば、横方向(TD)、機械方向(MD)、またはその両方に延伸する工程、および(5)希釈剤の少なくとも一部を押出物または冷却押出物から除去して膜を形成する工程を含むプロセスにより製造される。
【0036】
所望によりこのプロセスは、(6)工程(5)の後のいずれかの時点において、残留したいずれかの揮発性種の少なくとも一部を膜から除去すること、をさらに含む。
【0037】
所望によりこのプロセスは、(7)工程(5)の後のいずれかの時点において膜を熱処理(熱固定またはアニーリング等)にかけること、をさらに含む。
【0038】
所望によりこのプロセスは、工程(5)の後のいずれかの時点、例えば工程(6)と(7)の間において膜を少なくとも1つの平面方向に延伸すること、をさらに含む。例えばこのプロセスは、(8)工程(6)の乾燥膜を、第1の乾燥長さから、約1.1〜約1.5の範囲の倍率で第1の乾燥長さよりも長い第2の乾燥長さへMDに延伸し、膜を、第1の乾燥幅から、約1.1〜約1.3の範囲の倍率で第1の乾燥幅よりも広い第2の幅へTDに延伸すること、ならびに、その後(9)第2の乾燥幅から、第1の乾燥幅〜第1の乾燥幅の約1.1倍の範囲である第3の乾燥幅へと減少させること、をさらに含んでもよい。
【0039】
PCT公開WO2008/016174に記載されている、随意の熱溶媒処理工程、随意の熱固定工程、随意の電離放射線による架橋工程、および随意の親水性処理工程等を所望により行ってもよい。これらの随意の工程の数も順序も決定的な要因ではない。
(1)ポリオレフィンと希釈剤との混合
【0040】
上記のポリオレフィン混合物は、例えば乾燥混合または溶融ブレンドにより混合することができ、次いでポリオレフィン混合物を少なくとも1種の希釈剤と混合してポリオレフィン溶液等のポリオレフィン−希釈剤混合物を製造することができる。あるいは、ポリオレフィン混合物と希釈剤は単一の工程で混合することができる。樹脂および溶媒を、連続して、平行して、またはそれらの組合せで加えてもよい。あるいは、ポリオレフィン混合物は、まず初めに樹脂の少なくとも一部を混合してポリオレフィン組成物を調製し、次いでポリオレフィン組成物と少なくとも1種の膜形成溶媒(ならびに、所望により樹脂のさらなる一部および/または新たな樹脂)とを混合してポリオレフィン溶液を調製することによって製造することができる。所望によりポリオレフィン溶液は、酸化防止剤、ケイ酸塩微粉末(細孔形成材料)等の1種または複数等の添加剤を含有する。かかる添加剤の量は、膜の特性に悪影響を及ぼすほど大量に存在しない限り決定的な要因ではない。通常かかる添加剤の量は、合計で、ポリオレフィン溶液の質量を基準として1質量%を超えることはない。
【0041】
液体膜形成溶媒を含む希釈剤を使用することにより、比較的高い倍率で延伸を行うことをさほど困難ではないものにすることができる。液体溶媒は、例えば、ノナン、デカン、デカリン、p−キシレン、ウンデカン、ドデセン等の脂肪族、脂環式、または芳香族炭化水素;流動パラフィン;上記の炭化水素と同程度の沸点を有する鉱油蒸留物;およびフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等の室温で液体のフタル酸エステル等であってもよい。流動パラフィン等の不揮発性溶媒を使用することにより、溶媒含有量が安定しているゲル状成形物(またはゲル状シート)を得ることをより容易にすることができる。ある実施形態においては、溶融ブレンド中にポリオレフィン溶液またはポリオレフィン組成物と混和するが室温では固体である1種または複数の固体溶媒を、液体溶媒に加えてもよい。かかる固体溶媒は、例えばステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等であってもよい。固体溶媒は液体溶媒なしで使用してもよいが、その場合は工程(4)中にゲル状シートを均一に延伸することがより困難になり得る。
【0042】
ある実施形態においては、液体溶媒の粘度は、25℃の温度で測定した場合、約30cSt〜約500cSt、または約30cSt〜約200cStの範囲である。粘度の選択は特に決定的な要因ではないが、25℃における粘度が約30cSt未満である場合は、ポリオレフィン溶液が泡立つことがあり、その結果配合が困難になる。一方で、粘度が約500cStを超えた場合は、工程(5)中に溶媒を除去することがより困難になり得る。ポリオレフィン溶液は、1種または複数の酸化防止剤等の添加剤を含有してもよい。ある実施形態においては、かかる添加剤の量は、ポリオレフィン溶液の質量を基準として1質量%を超えることはない。
【0043】
押出物の製造に用いる膜形成溶媒の量は重要ではなく、膜形成溶媒とポリオレフィン組成物とを合わせた質量を基準として、例えば約25質量%〜約99質量%の範囲であってもよく、残りが第1、第2、および第3のポリエチレンの混合物等のポリマーとなる。
(2)押出し
【0044】
ある実施形態においては、混合したポリオレフィン組成物と希釈剤(この場合は膜形成溶媒)とを押出機からダイへと導く。
【0045】
押出物または冷却押出物は、延伸工程後に、望ましい厚さ(通常3μm以上)を有する最終膜を製造するのに適切な厚さを有するべきである。例えば押出物は、約0.1mm〜約10mm、または約0.5mm〜5mmの範囲の厚さを有してもよい。押出しは通常は、溶融状態の、ポリオレフィン組成物と膜形成溶媒との混合物を用いて行う。シート形成ダイを使用する場合は、ダイリップを、通常は、例えば140℃〜250℃の範囲の高温に加熱する。押出しを実行するための好適な処理条件は、PCT公開WO2007/132942および同WO2008/016174に開示されている。機械方向(「MD」)は、押出物がダイから製造される方向と定義される。横方向(「TD」)は、MDおよび押出物の厚さ方向の両方に対して垂直な方向と定義される。押出物はダイから連続的に製造することもできるし、または例えば(バッチ処理の場合のように)ダイから少量ずつ製造することもできる。TDおよびMDの定義は、バッチ処理および連続処理のどちらにおいても同じである。
(3)随意である押出物の冷却
【0046】
所望により、押出物を5℃〜40℃の範囲の温度にさらして冷却押出物を形成することができる。冷却速度は特に決定的な要因ではない。例えば押出物は、押出物の温度(冷却した温度)が押出物のゲル化温度とほぼ同じ(またはそれ以下)になるまで、最低でも約30℃/分の冷却速度で冷却してもよい。冷却の処理条件は、例えばPCT公開第WO2008/016174号および同第WO2007/132942号に開示されているものと同じであってもよい。
(4)押出物の延伸
【0047】
押出物または冷却押出物を、少なくとも一つの方向に延伸する。押出物は、例えばPCT公開第WO2008/016174号に記載されている、例えばテンター法、ロール法、インフレーション法、またはそれらの組合せにより延伸することができる。延伸は、一軸に、または二軸に行ってもよいが、二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、順次延伸、または多段階延伸(例えば同時二軸延伸と順次延伸の組合せ)のいずれを用いてもよいが、同時二軸延伸が好ましい。二軸延伸を用いる場合、倍率の大きさは各延伸方向で同じである必要はない。
【0048】
延伸倍率は、一軸延伸の場合、例えば2倍以上、好ましくは3〜30倍であってもよい。二軸延伸の場合、延伸倍率は、例えばいずれの方向にも3倍以上(例えば3倍〜30倍の範囲)であってもよく、面積倍率では、例えば16倍以上、例えば25倍以上であってもよい。この延伸工程の例としては、面積倍率が約9倍〜約49倍の延伸が挙げられる。各方向への延伸の量は、やはり同じである必要はない。倍率はフィルムの大きさに乗法的に影響する。例えば、TDに4倍の倍率に延伸される、最初の幅(TD)が2.0cmであるフィルムは、最終幅が8.0cmとなる。機械方向(「MD」)は、フィルムが形成される時の進行方向、すなわち製造中におけるフィルムの最長軸、にほぼ沿った方向である、フィルム(この場合は押出物)の平面の方向である。横方向(「TD」)もまたフィルムの平面にあり、機械方向とフィルムの厚さにほぼ平行である第3の軸との両方にほぼ垂直である。
【0049】
必須ではないが、延伸は、押出物をおよそTcdからTmの範囲の温度(延伸温度)にさらしながら行ってもよく、この場合TcdおよびTmは、結晶分散温度、および押出物の製造に用いるポリエチレンの中で最も融解ピークの低いポリエチレン(通常は第1のポリエチレン)の融解ピークである。結晶分散温度は、ASTM D 4065に従って動的粘弾性の温度特性を測定することにより決定する。Tcdが約90℃〜100℃の範囲である実施形態においては、延伸温度は、例えば約100℃〜125.0℃、例えば105℃〜125.0℃といった、90.0℃〜125.0℃であってもよい。所望により、延伸温度は(Tm−10.0℃)以下である。
【0050】
ある実施形態においては、延伸押出物は、希釈剤除去の前に所望により熱処理にかけられる。熱処理では、延伸押出物は、押出物が延伸中にさらされる温度より高い(温かい)温度にさらされる。延伸押出物がそのより高い温度にさらされている間、延伸押出物の平面寸法(MDの長さおよびTDの幅)は一定に保つことができる。押出物はポリオレフィンおよび希釈剤を含有しているため、その長さおよび幅は、「湿潤」長さおよび「湿潤」幅と呼ばれる。ある実施形態においては、延伸押出物は、押出物を熱処理するのに十分な時間、例えば1秒〜100秒の範囲の時間、120.0℃〜125.0℃の範囲の温度にさらされるが、その間は、例えば、テンタークリップを用いて延伸押出物をその外周に沿って保持することにより、湿潤長さおよび湿潤幅は一定に保たれる。言い換えれば、熱処理の間、MDまたはTDへの延伸押出物の拡大または縮小(すなわち寸法変化)はない。
【0051】
この工程、および試料(例えば、押出物、乾燥押出物、膜等)を高温にさらす乾燥延伸および熱固定等のその他の工程において、こうした暴露は、空気を熱し、次いでこの加熱空気を試料の近くに運ぶことにより行うことができる。加熱空気の温度は、通常は所望の温度と等しい設定値に制御され、次いでプレナム等を通して試料に向けて導かれる。試料を加熱面にさらす方法、オーブンでの赤外線加熱等の従来の方法を含む、試料を高温にさらすその他の方法を、加熱空気とともに、または加熱空気の代わりに用いてもよい。
(5)希釈剤の除去
【0052】
ある実施形態においては、希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去(または置換)し、乾燥膜を形成する。例えばPCT公開第WO2008/016174号に記載のように、置換(または「洗浄」)溶媒を用いて希釈剤を除去(洗浄、または置換)してもよい。
(6)膜の乾燥
【0053】
ある実施形態においては、残留したいずれかの揮発性種(例えば洗浄溶媒)の少なくとも一部を、希釈剤除去後に乾燥膜から除去する。加熱乾燥、風乾(空気を動かすこと)等の従来の方法を含む、洗浄溶媒を除去することが可能ないずれの方法を用いてもよい。洗浄溶媒等の揮発性種を除去するための処理条件は、例えばPCT公開第WO2008/016174号に開示されているものと同じであってもよい。
(7)熱処理
【0054】
ある実施形態においては、膜を熱固定等の熱処理にかける。熱固定の間、例えば膜は、例えば90.0℃〜130.0℃、約100℃〜128℃、または105℃〜125℃といった、およそTcd〜およそTmの範囲の温度にさらされる。この場合Tmは、膜の製造に用いるポリマーの中で融解ピークが最も低いポリマー、例えば第1のポリエチレン、の融解ピークである。
(8)膜の延伸(乾燥配向)
【0055】
所望により工程(6)の乾燥膜を、工程(6)と(7)の間に少なくとも1つの方向に延伸(希釈剤の少なくとも一部が除去または置換されているため「乾燥延伸」と呼ばれる)してもよい。乾燥延伸した乾燥膜は「延伸」膜と呼ばれる。乾燥延伸の前には、乾燥膜はMDの最初の大きさ(第1の乾燥長さ)およびTDの最初の大きさ(第1の乾燥幅)を有する。本明細書で用いる用語「第1の乾燥幅」は、乾燥配向開始前における乾燥膜のTDへの大きさを指す。用語「第1の乾燥長さ」は、乾燥配向開始前における乾燥膜のMDへの大きさを指す。例えば、国際公開第2008/016174号に記載の種類のテンター延伸装置を用いることができる。
【0056】
乾燥膜は、第1の乾燥長さから、約1.1〜約1.5の範囲の倍率(「MD乾燥延伸倍率」)で第1の乾燥長さより長い第2の乾燥長さへ、MDに延伸してもよい。TD乾燥延伸を用いる場合、乾燥膜は、第1の乾燥幅から、ある倍率(「TD乾燥延伸倍率」)で第1の乾燥幅より広い第2の乾燥幅へ、TDに延伸してもよい。所望により、TD乾燥延伸倍率はMD乾燥延伸倍率以下である。TD乾燥延伸倍率は、約1.1〜約1.3の範囲であってもよい。乾燥延伸(膜形成溶媒を含有した押出物をすでに延伸しているため再延伸とも呼ばれる)は、MDおよびTDに逐次的または同時的であってもよい。通常、TD熱収縮はMD熱収縮よりも電池の特性に与える影響が大きいため、通常はTD倍率の大きさはMD倍率の大きさを超えることはない。TD乾燥延伸を用いる場合、乾燥延伸は、MDおよびTDに同時的、または逐次的であってもよい。乾燥延伸が逐次的の場合、通常はMD延伸を最初に行い、続いてTD延伸を行う。
【0057】
乾燥延伸は、乾燥膜を例えばおよそTcd−30℃〜Tmの範囲といった、Tm以下の温度にさらしながら行ってもよい。この場合Tmは、膜の製造に用いるポリマーの中で融解ピークが最も低いポリマー、例えば第1のポリエチレン、の融解ピークである。ある実施形態においては、延伸温度は、例えば約80℃〜約129.0℃といった、約70.0〜約130.0℃の範囲の温度にさらした膜で行う。ある実施形態においては、MD延伸はTD延伸の前に行い、
(i)MD延伸は、膜を、例えば70.0℃〜129.0℃、または約80℃〜約125℃といった、Tcd−30℃〜およそTm−10℃の範囲の第1の温度にさらしながら行い、
(ii)TD延伸は、膜を、例えば70.0℃〜129.0℃、または約105℃〜約125℃、または約110℃〜約120℃といった、第1の温度より高いがTmよりは低い第2の温度にさらしながら行う。
【0058】
ある実施形態においては、MD乾燥延伸倍率の合計は、例えば1.2〜1.4といった、約1.1〜約1.5の範囲であり、TD乾燥延伸倍率の合計は、例えば1.15〜1.25といった、約1.1〜約1.3の範囲であり、MD乾燥延伸はTD乾燥延伸の前に行い、MD乾燥延伸は、膜を80.0℃〜約120.0℃の範囲の温度にさらしながら行い、TD乾燥延伸は、膜を115.0℃〜約130.0℃の範囲であるがTmよりは低い温度にさらしながら行う。
【0059】
延伸率は、延伸方向(MDまたはTD)に3%/秒以上であることが好ましく、この率は、MDおよびTD延伸について独立して選択してもよい。延伸率は、好ましくは5%/秒以上、より好ましくは10%/秒以上、例えば5%/秒〜25%/秒の範囲である。特に決定的な要因ではないが、延伸率の上限は、膜の破裂を防ぐために50%/秒であることが好ましい。
(9)膜の制御された幅の縮小(膜の熱緩和)
【0060】
乾燥延伸に続き、所望により、乾燥膜に、第2の乾燥幅から第3の乾燥幅への制御された幅の縮小を施すが、第3の乾燥幅は、第1の乾燥幅から第1の乾燥幅の約1.1倍の範囲である。通常は幅の縮小は、膜を、Tcd−30℃以上であるが第1のポリエチレンのTm以下である温度にさらしながら行う。例えば、幅の縮小中に、膜を、例えば約115℃〜約130.0℃、例えば約120℃〜約128℃といった、70.0℃〜約130.0℃の範囲の温度にさらしてもよい。ある実施形態においては、膜の幅の減少は、膜を、第1のポリエチレンのTmよりも低い温度にさらしながら行う。ある実施形態においては、第3の乾燥幅は、第1の乾燥幅の1.0倍〜第1の乾燥幅の約1.1倍の範囲である。
【0061】
制御された幅の縮小中に、TD延伸中に膜がさらされた温度以上の温度に膜をさらすと、最終膜の耐熱収縮性がより高くなる、と考えられる。
[3]構造、特性、および組成
【0062】
特定の実施形態においては、膜は、膜の質量を基準として5.0質量%〜15.0質量%の第1のポリエチレンを含む。第1のポリエチレンは、エチレンと、1.0モル%〜5.0モル%の、プロピレン、ブテン、ヘキセン、またはオクテンとのコポリマーである。コポリマーは、122.0℃〜126℃の範囲のTmおよび3.0×10〜2.5×10の範囲のMwを有する。膜は、125.0℃〜130.0℃の範囲のシャットダウン温度、および1.0×10秒/100cm/20μm〜5.0×10秒/100cm/20μmの範囲の透気度を有する。
【0063】
ある実施形態においては、膜の厚さは、通常は例えば約5μm〜約30μmといった、約1μm〜約100μmの範囲である。微多孔膜の厚さは、縦方向に1cm間隔で20cmの幅にわたって接触式厚さ計により測定することができ、次いで平均値を出して膜厚さを得ることができる。株式会社ミツトヨ製ライトマチック等の厚さ計が好適である。この方法は、後述の通り、熱圧縮後の厚さの変化を測定するのにも好適である。光学的厚さ測定法等の、非接触式厚さ測定もまた好適である。
【0064】
最終微多孔膜は、通常は押出物の製造に用いるポリマーを含む。処理中に導入する少量の希釈剤または他の種もまた、微多孔膜の質量を基準として、通常は1質量%未満の量で存在してもよい。処理中にポリマーの分子量が少量低下することがあるが、これは許容可能なものである。ある実施形態においては、処理中に分子量の低下があったとしても、膜中のポリマーのMWDの値と膜の製造に用いるポリマーのMWDとの違いは、例えば、わずか約10%、わずか約1%、またはわずか約0.1%にしかならない。
【0065】
押出物および微多孔膜は、無機種(例えば、ケイ素および/またはアルミニウム原子を含有する種)等の他の材料ならびに/またはPCT公開WO2007/132942および同WO2008/016174に記載のポリマー等の耐熱性ポリマーを含有してもよいが、これらは必須ではない。ある実施形態においては、押出物および膜は、かかる物質を実質的に含まない。この文脈における実質的に含まないとは、微多孔膜中のかかる物質の量が、押出物の製造に用いるポリマーの全質量を基準として1.0質量%未満であることを意味する。
【0066】
微多孔膜は単層膜であってもよい。ある実施形態においては、微多孔膜は、第2の膜をさらに含む。第2の膜は、例えば微多孔層であってもよい。
【0067】
所望により、微多孔膜は以下の特性の1つまたは複数を有する。
(a)標準化透気度≦5.0×10秒/100cm/20μm
【0068】
ある実施形態においては、膜の標準化透気度(ガーレー値:20μmの厚さを有する同等の膜の透気度として表す)は、例えば約50.0秒/100cm/20μm〜約5.0×10秒/100cm/20μmの範囲といった、5.0×10秒/100cm/20μm以下である。透気度値は、20μmのフィルム厚さを有する同等の膜の値に標準化するため、膜の透気度値は、「秒/100cm/20μm」の単位で表す。ある実施形態においては、標準化透気度は、100秒/100cm/20μm〜約450秒/100cm/20μmの範囲である。標準化透気度は、JIS P8117に従って測定し、その結果を、A=20μm*(X)/T(式中、Xは、実厚さTを有する膜の透気度の測定値であり、Aは、厚さ20μmの同等の膜の標準化透気度である)の式を用いて厚さ20μmの同等の膜の透気度値に標準化する。
(b)約25%〜約80%の範囲の空孔率
【0069】
ある実施形態においては、膜は、例えば約25%〜約80%、または30%〜60%の範囲といった、25%以上の空孔率を有する。膜の空孔率は、膜の実質量と、同じ組成の同等の非多孔膜(同じ長さ、幅、および厚さを有するという意味において同等)の質量とを比較することにより、従来法で測定する。次に、以下の式を用いて空孔率を求める:空孔率%=100×(w2−w1)/w2。式中、「w1」は微多孔膜の実質量であり、「w2」は、同じ大きさおよび厚さを有する、同等の非多孔膜の質量である。
(c)シャットダウン温度≦130.5℃
【0070】
微多孔膜のシャットダウン温度は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開WO2007/052663に開示されている方法によって測定する。この方法に従い、微多孔膜を昇温(30℃で開始して5℃/分)し、その間に膜の透気度を測定する。微多孔膜のシャットダウン温度は、微多孔膜の透気度(ガーレー値)が最初に100,000秒/100cmを超える時の温度と定義される。微多孔膜の透気度は、透気度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)を用いてJIS P8117に従って測定する。
【0071】
ある実施形態においては、膜は、例えば124.0℃〜129.0℃の範囲といった、120.0℃〜130.0℃の範囲のシャットダウン温度を有する。
(e)メルトダウン温度≧140.0℃
【0072】
メルトダウン温度は以下の手順で測定する:3mm×50mmの長方形の試料を、試料の長軸が微多孔膜のTDと一直線になり、かつ短軸がMDと一直線になるように微多孔膜から切り出す。この試料を、チャック間距離10mmで、熱機械分析装置(TMA/SS6000 セイコーインスツル株式会社製)にセットする。すなわち、上部チャックから下部チャックまでの距離が10mmである。下部チャックを固定し、上部チャックで試料に19.6mNの荷重をかける。両チャックおよび試料を、加熱可能な管に封入する。30℃で開始し、管の内部の温度を5℃/分の速度で上昇させ、19.6mNの荷重下における試料の長さの変化を0.5秒間隔で測定し、温度の上昇とともに記録する。温度は200℃まで上昇させる。試料のメルトダウン温度は、試料が破壊する温度と定義され、通常は約140℃〜約200℃の範囲の温度である。微多孔膜の製造に第1のポリエチレンを用いることが膜のメルトダウン温度に有意に影響するとは考えられない。
[4]バッテリーセパレーターおよび電池
【0073】
本発明の微多孔膜は、シャットダウン温度と透気度とのバランスが良く、かつ常圧で液体(水性および非水性)を透過させる。したがって、微多孔膜は、バッテリーセパレーター、濾過膜等として使用することができる。微多孔膜は、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池のセパレーター等における二次電池のセパレーターとして特に有用である。ある実施形態においては、膜は、リチウムイオン二次電池におけるバッテリーセパレーターフィルムとして使用される。
【0074】
かかる電池は、PCT公開WO2008/016174に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
本発明を、本発明の範囲を制限することを意図することなく、下記実施例を参照してより詳細に説明する。
実施例
実施例1
【0076】
微多孔膜を、希釈剤とポリエチレンとの混合物から製造する。ポリエチレンは、(a)12.3質量%の3.8×10のMw、3.0のMWD、および125.8のTmを有する第1のポリエチレン(シングルサイト触媒を用いて製造)、(b)69.7質量%の5.6×10のMwおよび4.1のMWDを有する第2のポリエチレン(HDPE)、ならびに(c)18質量%の1.95×10のMwおよび5.1のMWDを有する第3のポリエチレン(UHMWPE)を含む(質量パーセントは混合物中のポリエチレンの質量が基準)。ポリエチレンを、混合物中のポリエチレンの質量を基準として0.5質量%のテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン(酸化防止剤)と混合する。
【0077】
ポリエチレン溶液を、二軸スクリュー押出機からTダイに供給し、厚さ約1.0mmのシート状に押し出す。押出物を20℃に制御された冷却ロールで冷却してゲル状シートを形成する。ゲル状シートを、押出物を115℃の温度にさらしながら、バッチタイプの延伸機でMDおよびTDの両方に5倍に同時に二軸延伸する。次いで押出物を20cm×20cmのアルミニウムフレームプレートに固定し、25℃に制御された塩化メチレンの洗浄浴に浸漬し、3分間100rpmで揺らしながら洗浄して流動パラフィンを除去する。洗浄した膜を室温で空気乾燥させた。次いで、膜の大きさをほぼ一定に保ちながら、膜を115℃で熱固定したまま10分間保持して最終微多孔膜を製造する。
実施例2
【0078】
ポリエチレンが、9.8質量%の第1のポリエチレン;72.2質量%の第2のポリエチレン;および18質量%の第3のポリエチレンを含むこと以外は、実施例1を繰り返した。
実施例3
【0079】
ポリエチレンが、16.4質量%の第1のポリエチレン、65.6質量%の第2のポリエチレン、および18質量%の第3のポリエチレンを含むこと以外は、実施例1を繰り返した。
実施例4
【0080】
ポリエチレンが、7.4質量%の4.5×10のMw、3.0のMWD、および122.2℃のTmを有する第1のポリエチレン(シングルサイト触媒で製造);74.6質量%の第2のポリエチレン;ならびに18質量%の第3のポリエチレンを含むこと以外は、実施例1を繰り返した。
実施例5
【0081】
ポリエチレンが、10.7質量%の1.2×10のMw、2.5のMWD、および123.5℃のTmを有する第1のポリエチレン(シングルサイト触媒を用いて製造);71.3質量%の第2のポリエチレン;ならびに18質量%の第3のポリエチレンを含むこと以外は、実施例1を繰り返した。
実施例6
【0082】
ポリエチレンが、13.1質量%の実施例4の第1のポリエチレン;68.9質量%の第2のポリエチレン;および18質量%の第3のポリエチレンを含むこと以外は、実施例1を繰り返した。
実施例7
【0083】
ポリエチレンが、8.2質量%の1.7×10のMw、2.8のMWD、および123.0℃のTmを有する第1のポリエチレン(シングルサイト触媒で製造);73.8質量%の第2のポリエチレン;ならびに18質量%の第3のポリエチレンを含むこと以外は、実施例1を繰り返した。
実施例8
【0084】
ポリエチレンが、9質量%の1.7×10のMw、2.8のMWD、および123.0℃のTmを有する第1のポリエチレン(Evolve(商標) SP3530、株式会社プライムポリマー製);73.0質量%の7.5×10のMwおよび11.9のMWDを有する第2のポリエチレン(HDPE);ならびに18質量%の第3のポリエチレンを含むこと以外は、実施例1を繰り返した。
実施例9
【0085】
流動パラフィンの除去に続いて、膜を、115℃の温度にさらしながら1.2倍の倍率へのTDへの延伸に付すこと以外は、実施例3を繰り返した。
比較例1
【0086】
ポリエチレンが、82.0質量%の第2のポリエチレン、および18質量%の第3のポリエチレンを含むこと以外は、実施例1を繰り返した。
比較例2
【0087】
ポリエチレンが、16.4質量%の2.1×10のMw、3.2のMWD、および98℃のTmを有する第1のポリエチレン(シングルサイト触媒で製造);65.6質量%の第2のポリエチレン;ならびに18質量%の第3のポリエチレンを含むこと以外は、実施例1を繰り返した。延伸温度は110℃であり、熱固定温度は90℃である。
比較例3
【0088】
ポリエチレンが、8.2質量%の7.5×10のMw、3.6のMWD、および120.0℃のTmを有する第1のポリエチレン(シングルサイト触媒で製造);73.8質量%の第2のポリエチレン;ならびに18質量%の第3のポリエチレンを含むこと以外は、実施例1を繰り返した。
比較例4
【0089】
ポリエチレンが、14.8質量%の比較例3の第1のポリエチレン;67.2質量%の第2のポリエチレン;および18質量%の第3のポリエチレンを含むこと以外は、実施例1を繰り返した。
比較例5
【0090】
ポリエチレンが、17.0質量%の1.7×10のMw、3.0のMWD、および130.4℃のTmを有する第1のポリエチレン(シングルサイト触媒で製造);65.0質量%の第2のポリエチレン;ならびに18質量%の第3のポリエチレンを含むこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0091】
表1から明らかなように、実施例1〜9の微多孔膜は、130.5℃以下のシャットダウン温度および5.0×10/100cm以下の透気度を有する。かかる膜はまた、シャットダウン温度と透気度との良好なバランスも有する。特に、実施例1、3、5、および7の微多孔膜は、これらの特性の優れたバランスを示している。比較例1、3、および5の膜はより高いシャットダウン温度(130.5℃超)を有し、比較例2および4の膜は不十分な透気度を有する。比較例2の第1のポリエチレンのTmは、延伸中に溶融状態になり、その結果膜の微細孔内に移動し、それによって透気度が低下すると考えられる。比較例3および4の第1のポリエチレンのMwは大き過ぎ、これにより低濃度において膜のシャットダウン温度がわずかしか下がらず、またより高い濃度での膜透気度に悪影響を及ぼしていると考えられる。比較例5の第1のポリエチレンはTmが高過ぎ、これにより比較的大量に使用される場合でもシャットダウン温度の有意な低下が抑えられていると考えられる。
【0092】
優先権書類を含む、本明細書で引用した全ての特許、試験手順、およびその他の文献は、参照により、かかる開示が本発明に矛盾しない範囲で完全に組み込まれ、またかかる組込みが許容される全ての管轄について、完全に組み込まれる。
【0093】
本明細書中に開示した例示的形態は特定のものについて記載しているが、種々の他の変形態様が、当業者にとっては明らかであり、かつ当業者によって本開示の精神および範囲から逸脱することなく容易に行われ得ることが理解されるであろう。したがって、本明細書に添付した特許請求の範囲の範囲は本明細書中に示した実施例および説明に限定されるものではなく、特許請求の範囲は、本開示が属する分野の当業者によってその等価物として扱われる全ての特徴を含む、本明細書に備わる特許可能な新規性のある特徴の全てを包含するものとして解釈されることが意図されている。
【0094】
数値の下限および数値の上限が本明細書中に列挙されている場合、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が想定されている。
【表1】

【表1−1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンを含む微多孔膜であって、ポリオレフィンが、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有することを特徴とする微多孔膜。
【請求項2】
膜が、5.0×10秒/100cm/20μm以下の標準化透気度および130.5℃以下のシャットダウン温度を有することを特徴とする請求項1に記載の微多孔膜。
【請求項3】
ポリオレフィンが、シングルサイト触媒で製造されるエチレン系ポリオレフィンコポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の微多孔膜。
【請求項4】
膜が、膜の質量を基準として5.0〜15.0質量%の範囲の量のエチレン系ポリオレフィンを含むことを特徴とする請求項3に記載の微多孔膜。
【請求項5】
ポリオレフィンが、エチレン系ポリオレフィンであり、膜が、131.0℃以上のTmおよび1.0×10〜9.0×10の範囲のMwを有する第2のポリエチレン、ならびに1.0×10を超えるMwを有する第3のポリエチレンをさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の微多孔膜。
【請求項6】
エチレン系ポリオレフィンが、120.0℃〜128.0℃の範囲のTmを有することを特徴とする請求項5に記載の微多孔膜。
【請求項7】
エチレン系ポリオレフィンが、1.0×10〜1.0×10の範囲のMwを有することを特徴とする請求項5または6に記載の微多孔膜。
【請求項8】
エチレン系ポリオレフィンが、エチレンと第2のαオレフィンとのコポリマーであり、コポリマーが、122.0℃〜126.0℃の範囲のTmを有することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項9】
コポリマーが、メタロセン触媒を使用するプロセスで製造されることを特徴とする請求項8に記載の微多孔膜。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の微多孔膜を含むことを特徴とするバッテリーセパレーターフィルム。
【請求項11】
微多孔膜の製造方法であって、
(1)希釈剤と、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するポリオレフィンを含むポリマーとの混合物を押し出す工程;
(2)押出物を少なくとも1つの平面方向に延伸する工程;および
(3)希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去して微多孔膜を形成する工程
を含むことを特徴とする微多孔膜の製造方法。
【請求項12】
ポリマーが、(ii)131.0℃以上のTmおよび1.0×10以下のMwを有する第2のポリオレフィン及び/または(iii)1.0×10を超えるMwを有する第3のポリオレフィンをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1、第2、および第3のポリオレフィンが、ポリエチレンであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1のポリオレフィンが、エチレンとコモノマーとのコポリマーであり、第1のポリオレフィンのTmが、122.0℃〜126.0℃の範囲であり、第1のポリオレフィンのMwが、1.0×10〜1.0×10の範囲であり、かつ第1のポリオレフィンのMWDが、1.8〜3.5の範囲であることを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
工程(3)に続いて膜を少なくとも1つの平面方向に延伸する工程をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
工程(3)に続いて膜を熱処理にかける工程をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
工程(2)の延伸が、押出物を90.0℃〜125.0℃の範囲の温度にさらしながら、面積が9倍〜49倍の範囲の倍率になるまで二軸に行われることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
工程(3)の後に、残留したいずれかの揮発性種を膜から除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
第1のポリエチレンがポリマー−希釈剤混合物中のポリマーの質量を基準として4.0質量%〜17.0質量%の範囲の量で存在し、第2のポリエチレンが50.0質量%〜95.0質量%の範囲の量で存在し、かつ第3のポリエチレンが1.0質量%〜46.0質量%の範囲の量で存在することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項20】
延伸の前に押出物を冷却する工程をさらに含むことを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
請求項11〜20のいずれかに記載の膜生成物。
【請求項22】
電解質と、負極と、正極と、負極と正極の間に位置するセパレーターとを含む電池であって、セパレーターが、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するポリオレフィンを含むことを特徴とする電池。
【請求項23】
電池が、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池、ニッケル亜鉛二次電池、または銀亜鉛二次電池であることを特徴とする請求項21に記載の電池。
【請求項24】
正極が、集電体、およびリチウムイオンを吸収かつ放出することができる集電体上の正極活物質層を含むことを特徴とする請求項22に記載の電池。
【請求項25】
電解質が、有機溶媒中のリチウム塩を含むことを特徴とする請求項23に記載の電池。

【図1】
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【公表番号】特表2012−522108(P2012−522108A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503463(P2012−503463)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/026431
【国際公開番号】WO2010/114676
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(510157580)東レバッテリーセパレータフィルム株式会社 (31)
【Fターム(参考)】