説明

微小カーボン分散物

【課題】 新規な導電性材料の提供。
【解決手段】 ナノからマイクロサイズの微小カーボンと該微小カーボンの分散剤とを含有する微小カーボン分散液体媒体を、前記液体媒体が水系の場合には疎水性平滑体に適用した後に乾燥する一方、前記液体媒体が非水系の場合には親水性平滑体に適用した後に乾燥し、場合により、その後に前記分散剤を洗浄することにより得られる、網目状ナノカーボン凝集体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノからマイクロサイズの微小カーボン(例えば、カーボンナノチューブ)が均一に分散した複合材料としての微小カーボン分散物(例えば、ゲルとその乾燥ゲル、繊維、膜、成型体)及び物品を製造する際に該物品に前記微小カーボンを分散させるための仲介材料としての微小カーボン分散物、それらの製造方法並びにそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノからマイクロサイズのカーボンは、様々な分野で最近注目されている。特に、ナノカーボンは、カーボンナノチューブ(CNT)に代表される、エネルギー、エレクトロニクス、化学、医薬品、光学部品、材料・機械等の各種分野で注目されている新素材である。その中でもナノテクノロジーを代表する素材の一つであるCNTは、軽くて強い新素材であり、ディスプレイなどの電子エミッタの材料、水素吸蔵材料、原子間力顕微鏡の探針などの応用研究が進められている。ここで、CNTには、単層・多層タイプとカップスタック型が存在し、単層・多層タイプのものは、直径がナノメートルオーダーの針状炭素分子であり、グラフェンを円筒状に丸めた構造を持っている。そして、グラフェン円筒が同心円状に多層構造をなしているものをマルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)といい、FED用エミッタ、超高強度材料、複合材料などの用途に利用されている。また、単層のグラフェン円筒のみからなるものをシングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)といい、燃料電池やリチウム二次電池負極などの用途に利用されている。特に、カーボンナノチューブをフィラ−とした複合材料の開発が精力的に行われている。
【0003】
ところで、これまでCNTは、優れた電気伝導特性や機械強度を有するので、電子放出素子等の電子材料分野や高強度材料分野での研究が中心に行われてきた。例えば、特許文献1の技術は、電子放出素子を得るためのCNT薄膜の製造方法である。当該方法では、分散粒子を電極粒子に堆積し、薄膜化している。即ち、この技術においては、高電子放出能を担保するために、高密度でCNT同士が凝集している。また、特許文献2の技術は、熱可塑性樹脂と発泡剤と架橋剤とCNTとを含有する、断熱材等に用いられる熱可塑性樹脂組成物である。CNTを含有する当該組成物は、溶融混練して成型した後に架橋・発泡反応に付され、CNTが分散した架橋熱可塑性樹脂が形成される。
【特許文献1】特開2001−48511
【特許文献2】特開2004−75707
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、前記複合材料を製造するに際し、従来技術では、樹脂と混合して複合材を得ているものが一般的である。しかしながら、この手法によると、混合するカーボンナノチューブが複雑に絡み合った形状をしていると、カーボンナノチューブの塊が残り、均一な分散性を担保できないという問題がある。具体的には、電子材料としての前記CNT材料は、高密度でCNT同士が凝集しているため、通気性、透過性、吸着性といった性質を十分に備えているとはいえない。また、高強度材料としての前記CNT材料も、発泡した結果の孔に関しては通気性があるものの、熱可塑性樹脂の架橋構造間の隙間は僅かであり、内部の通気性は著しく悪い。したがって、これらの材料を吸着剤として使用したとしても、表面或いは内部に存在するCNTの吸収能を十分に発揮することができない。そこで、本発明は、複合材料において、カーボンナノチューブの均一な分散性を担保するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題に鑑み発明者が鋭意研究した結果、複合材料の製造に際して、微小カーボン分散液を使用することにより、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。併せて、当該研究の際に、他の用途にも適用可能な新規分散液も見出した。結局、本発明は以下の通りである。
【0006】
本発明(1)は、ナノからマイクロサイズの微小カーボンと該微小カーボンの分散剤とを含有する微小カーボン分散液体媒体を、当該液体媒体が水系の場合には疎水性平滑体に適用した後に乾燥する一方、当該液体媒体が非水系の場合には親水性平滑体に適用した後に乾燥し、場合により、前記乾燥後に前記分散剤を洗浄することにより得られる、網目状ナノカーボン凝集体である。
【0007】
本発明(2)は、前記発明(1)の網目状ナノカーボン凝集体を含む導電性材料である。
【0008】
本発明(3)は、前記発明(2)の導電性材料を含む電気製品である。
【0009】
ここで、上記発明(1)〜(3)において、「平滑体」とは、表面が平面状である場合のみならず例えば球面状である場合をも包含する概念である。また、「適用」とは、例えば、塗布や浸漬等を挙げることができ、具体例としては、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、フローコート等の手段を挙げることができる。尚、他の用語の定義については、以下で適宜説明する。
【0010】
次に、権利請求に係る上記発明(1)〜(3)以外の、本明細書に開示した発明について説明する。
【0011】
本発明(4−1)は、ナノからマイクロサイズの微小カーボンと該微小カーボンの分散剤とを含有する微小カーボン分散液体媒体を用いて製造される微小カーボン分散物である。
【0012】
ここで、「ナノからマイクロサイズの微小カーボン」とは、径が10−6〜10−9mのオーダー、長さが10−4〜10−9m(好適には10−6〜10−9m)のオーダーであるカーボンをいい、例えばナノカーボンである。「ナノカーボン」とは、10−9mのオーダーであるカーボンをいい、好適には、カーボンナノチューブ(単層・二層・多層タイプ、カップスタック型)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、黒鉛又はフラーレンを挙げることができる。ここで、「ナノからマイクロサイズの微小カーボン」は、ナノからマイクロサイズのカーボンに該当する少なくとも一種のカーボンを含有することを意味し、例えば、ナノからマイクロサイズのすべてのサイズを含有することや、ナノからマイクロサイズ以外のカーボンを含有しないことを意味するものではない。更に、「カーボンナノチューブ」とは、単層及び多層(二層以上)を含み、グラファイト層の乱れたカーボンナノファイバーも包含する。尚、層の数が多い程分散しにくくなるので、層の数が多い程、本発明の意義は増大する。尚、本用語は、本発明(4−1)に限られず、そうでない旨の特記がある場合を除き、この後で説明するすべての発明に関しても適用される。また、本用語以外の、以下の各発明での説明で登場する各用語に関しても同様である。
【0013】
「分散剤」とは、微小カーボンを液体媒体に分散させるための試薬をいう。好適には、微小カーボンの性質を損ねないために、微小カーボンの表面を修飾しない形で微小カーボンを分散させる試薬である。ここで、「分散」とは、懸濁や溶解も含む広義の分散を意味する。例えば、微小カーボンがすべて溶解している態様、すべて懸濁している態様、一部が溶解している態様(他は懸濁等その他の形態で存在)、一部が懸濁している態様(他は溶解等その他の形態で存在)を挙げることができる。また、視覚的観点からは、例えば、微小カーボンが液中に分散して浮遊し、あたかも外見上は一様に見える状態のものをいう。特に好適には、一日以上静置した後も、液状部分の上層部まで微小カーボンが存在しているものをいう。
【0014】
「微小カーボン分散物」とは、対象物中に微小カーボンが分散している状態にある当該対象物を指す。ここで、微小カーボンが該対象物中に均一に分散していることが好適である。例えば、カーボンナノチューブが均一に分散した複合材料(例えば、繊維、フィルム、成型体)である。また、「均一に分散」とは、得られた複合材料の物性が、場所毎にばらつかない状態(例えば±20%程度)を意味する。具体的には、電子顕微鏡で観察した際に、従来の塊状の場合と比較して均一に分散していることが視覚的に確認できる程度であれば、本発明にいう「均一に分散」に該当する。
【0015】
「該カーボン分散液体媒体」における「液体媒体」は、分散剤との組み合わせで、該カーボンを分散させ得るものであれば特に限定されず、例えば、水性溶媒、例えば、水、アルコール、これらの組み合わせ、非水性溶媒(油性溶媒)、例えば、シリコンオイル、四塩化炭素、クロロホルム、トルエン、これらの組み合わせを挙げることができる。
【0016】
本発明(4−2)は、前記微小カーボン分散物が、対象物の表面に前記微小カーボンが分散している表面分散タイプであるか、対象物の内部に前記微小カーボンが分散している内部分散タイプである、前記発明(4−1)の微小カーボン分散物である。
【0017】
本発明(4−3)は前記内部分散タイプの前記微小カーボン分散物が、該微小カーボン液体媒体又はその乾燥物をゲル化させることにより得られるゲル又はその乾燥物である、前記発明(4−2)の微小カーボン分散物である。
【0018】
当該発明に係る「微小カーボン液体媒体」は、ゲル化可能である必要がある。ここで、「ゲル化可能な」とは、該カーボン分散液体媒体中に、何らかの手段で架橋し得る架橋基を有するゲル化材料が含まれていることを意味する。好適には、該分散剤がゲル化材料である。
【0019】
「その乾燥物」とは、「該カーボン分散液体媒体」の乾燥物を指し、乾燥の度合いは特に限定されない。この状態においては、該カーボンは、非常に粒径が小さい状態を維持しながら、高い均一性でゲル化材料{例えば分散剤(例えば界面活性剤)}中に存在していると理解される。
【0020】
「その乾燥物をゲル化」とは、その乾燥物を何らの手段により液体媒体が存在する湿潤形態にした状況下でゲル化させることを意味する。例えば、ゲル化剤含有液体媒体をその乾燥物に適用する態様、その乾燥物に液体媒体を適用した後、光・放射線架橋する態様等を挙げることができる。
【0021】
「得られるゲル」は、該カーボンが非常に小さい粒径を維持しながら、高い均一性でゲルに内包されていると理解される。ここで、「内包」とは、ゲルの網目構造中に該カーボンを包接していることに加え、場合により、液体媒体中の該カーボン又は乾燥形態の該カーボンをゲル膜が包み込んでいる概念である。例えば、液体媒体を包み込んだビーズ状又はファイバー状ゲルの場合には、該カーボンがゲル網目中にのみ存在する態様、該カーボンがゲル網目中に存在し、かつ、内部の液体媒体中にも該カーボンが溶解・分散している態様を挙げることができる。また、膜状、板状ゲル又はバルク状ゲルの場合には、ナノカーボンがゲル網目中に存在する態様を挙げることができる。更に、「得られたゲル」ではなく「得られるゲル」であるので、物として同一である限り、当該製法限定によって得られたゲルには限定されない。
【0022】
ここで、「ゲル」とは、高分子同士が化学架橋又は物理架橋することにより形成された三次元網目構造、或いは、モノマーの重合と同時に架橋することにより形成された三次元網目構造であって、該構造中に溶媒を保持したものをいい、前記「溶媒」とは、網目構造中に含まれている、網目構造を膨潤させる液体の意である。したがって、単に「液体」とも読み替え得る。尚、当該溶媒は、特に限定されず、具体的用途との関係で適宜選択される。したがって、本ゲルの原料である「ゲル化可能な該カーボン分散液体媒体」における「液体媒体」と必ずしも同一である必要はなく、該原料をゲル化させた後に溶媒交換を行った場合には、新たな溶媒が「得られるゲル」の溶媒となる。具体例を挙げると、水性溶媒、例えば、水、アルコール、これらの組み合わせ、油性溶媒、例えば、シリコンオイル、四塩化炭素、クロロホルム、トルエン、これらの組み合わせを挙げることができる。例えば、液体媒体が水である場合には、例えば浄水器での使用といった生体安全性が求められる用途や、溶離液として水溶液を用いたクロマトグラフィーの分離用樹脂として使用できる。
【0023】
本発明(4−4)は、前記微小カーボン分散物が、内層と外層の二重構造を採っており、該内層が該カーボン分散液体媒体であり、該外層が該微小カーボン分散液体媒体のゲル化物である、前記発明(4−3)の微小カーボン分散物である。
【0024】
尚、内層と外層の二重構造を採っている限り、例えば、当該外層の更に外側に、更にゲルやポリマー等を被覆させた態様も、本発明の範囲内である。
【0025】
ここで、上記発明(4−2)〜(4−4)のゲル又は乾燥ゲルの態様をA群とすると、好適なA群の発明は、以下の通りである。
【0026】
好適態様(A−1)は、ナノからマイクロサイズのカーボンと該カーボンの分散剤とを含有するゲル化可能な該カーボン分散液体媒体又はその乾燥物をゲル化させることにより得られるゲルである。
【0027】
好適態様(A−2)は、該カーボン分散液体媒体が、該カーボン溶液又は懸濁液である、前記好適態様(1)のゲルである。ここで、「該カーボン溶液又は懸濁液」の「又は」という用語は、その一方のみが必須である限り、他方を排除するものではない。これについても特記しない限り、他の箇所にも適用される。即ち、例えば、該カーボン分散液体媒体において、該カーボンがすべて溶解している態様、すべて懸濁している態様、一部が溶解している態様(他は懸濁等その他の形態で存在)、一部が懸濁している態様(他は溶解等その他の形態で存在)を挙げることができる。尚、溶液状が、より粒径が小さく均一性が高いので好適である。
【0028】
好適態様(A−3)は、該分散剤が架橋することによりゲル化した、前記好適態様(A−1)又は(A−2)のゲルである。
【0029】
好適態様(A−4)は、該分散剤が界面活性剤である、前記好適態様(A−1)〜(A−3)のいずれか一つのゲルである。尚、界面活性剤の具体例は、以下の「発明の最良の形態」の欄で詳述する。
【0030】
好適態様(A−5)は、該カーボンが、カーボンナノチューブ(単層・二層・多層タイプ、カップスタック型)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、黒鉛、フラーレン、カーボンマイクロホーン、マイクロカーボンフィルターである、前記好適態様(A−1)〜(A−4)のいずれか一つのゲルである。ここで、本好適態様にいう「黒鉛」は、粒径が10−6m以下に粉砕されたものを指す。
【0031】
好適態様(A−6)は、形状が、ビーズ状、ファイバー状、膜状、板状又はバルク状である、前記好適態様(A−1)〜(A−5)ののいずれか一つのゲルである。
【0032】
ここで、「ビーズ状」とは、「小包」ともいい得、略球状を意味し、粒径は特に限定されず、用途等により好適範囲は変動する。また、「ファイバー状」とは、線状であることを意味し、長さや径は特に限定されず、用途により決定される。例えば、糸のように細いものやヒキガエルの卵程度の太いものもすべて「ファイバー状」に包含される。次に、「膜状」及び「板状」については、表面積や形状は特に限定されず、用途により決定される。「バルク状」についても、体積や形状は特に限定されず、用途により決定される。尚、以下で述べる他の好適態様{例えば好適態様(A−7)}に関しては、例えば、ビーズ状又はファイバー状ゲルが、内層と外層の二重構造を採っているものもあるが、本好適態様(A−6)に関しては、特に限定されず、二重構造を採っておらず、すべてがゲル化したものも包含する。
【0033】
好適態様(A−7)は、該ビーズ状ゲル又は該ファイバー状ゲルが、内層と外層の二重構造を採っており、該内層が該カーボン分散液体媒体であり、該外層が該カーボン分散液体媒体のゲル化物である、前記好適態様(A−6)のゲルである。
【0034】
好適態様(A−8)は、該ビーズ状ゲル又は該ファイバー状ゲルが、ゲル化剤を含有する液体媒体中に、該カーボン分散液体媒体を滴下又は流下することにより得られるものである、前記好適態様(A−7)のゲルである。
【0035】
ここで、「ゲル化剤」とは、該カーボン分散液体媒体中のゲル材料(例えば分散剤)を架橋しうるゲル化剤であれば特に限定されない。「該ゲル化剤を含有する液体媒体」の「液体媒体」とは、該ゲル化剤を分散(例えば溶解、懸濁)しうる液体媒体であれば特に限定されず、例えば、本好適態様(A−1)の箇所で述べた「ナノカーボン分散液体媒体」の「液体媒体」と同一であるものを挙げることができる。尚、ナノカーボン分散液体媒体中のゲル化材料(例えば分散剤)をゲル化剤でゲル化させることが目的であるので、好適には、「該ゲル化剤を含有する液体媒体」の「液体媒体」及び「ナノカーボン分散液体媒体」の「液体媒体」の少なくともいずれか一方は、該ゲル化材料と該ゲル化剤の両方を分散させる性質を有していることが好適である。
【0036】
また、「滴下」とは、時間に関して非連続的に「該カーボン分散液体媒体」を「ゲル化剤を含有する液体媒体」に適用することをいう。また、「流下」とは、時間に関して連続的に「該カーボン分散液体媒体」を「ゲル化剤を含有する液体媒体」に適用することをいう。いずれも、自由落下のみならず、加速して「ゲル化剤を含有する液体媒体」に落としても(例えば、注射器のようなもので押圧をかけることによる落下)、減速して「ゲル化剤を含有する液体媒体」に落としても(例えば、チューブやガイド部材のようなものでゆっくりと「ゲル化剤を含有する液体媒体」に落とす)よい。適用する方向は、好適には下方向であるが、他の方向であってもよい。
【0037】
好適態様(A−9)は、該膜状ゲル、該板状ゲル又は該バルク状ゲルが、膜状に塗工された又は型に入れられた該カーボン分散液体媒体を架橋することにより、或いは、この乾燥物にゲル化剤を含有する液体媒体を適用することにより得られるものである、前記好適態様(A−6)のゲルである。
【0038】
ここで、架橋は、前者に関しては、ゲル化剤を用いての架橋(ゲル化剤含有液を適用したり、固体のゲル化剤を適用するなどする)及びゲル化剤を用いない架橋(例えば、放射線架橋)の両方を意味し、後者に関しては、ゲル化剤含有液の形態でのゲル化剤を用いての架橋を意味する。
【0039】
また、「型」は、オープンタイプでもクローズドタイプでもよく、大きさや形状も特に限定されず、用途との関係で決定される。「適用」とは、添加することやされること、塗布することやされることを含む、該カーボン分散液体媒体又はこの乾燥物と、ゲル化剤又は該ゲル化剤を含有する液体媒体とを合わせる一切の概念を意味する。
【0040】
好適態様(A−10)は、前記好適態様(A−1)〜(A−9)のいずれか一つのゲルを乾燥させることより得られる乾燥ゲルである。
【0041】
ここで、「乾燥ゲル」とは、溶媒を含んだ元のゲルを乾燥させたゲルであれば、乾燥の程度(ゲル中の溶媒量の程度)は特に限定されず、用途との関係で決定される。例えば、元のゲルのX%の溶媒が取り除かれたゲルや100%の溶媒が取り除かれた完全乾燥ゲル(樹脂)を挙げることができる。
【0042】
本発明(4−5)は、前記内部分散タイプの前記微小カーボン分散物が、前記微小カーボン分散液体媒体に原料モノマーを分散させた後、該原料モノマーを重合し、前記液体媒体を除去することにより製造されるものである、前記発明(4−2)の微小カーボン分散物である。尚、ここでの「モノマーを分散」とは、溶解、懸濁、乳濁も含む。
【0043】
本発明(4−6)は、前記内部分散タイプの前記微小カーボン分散物が、前記微小カーボン分散液体媒体に原料ポリマーを分散させた後、前記液体媒体を除去することにより製造されるものである、前記発明(4−2)の微小カーボン分散物である。尚、ここでの「ポリマーを分散」とは、溶解、懸濁、乳濁も含む。
【0044】
本発明(4−7)は、前記表面分散タイプの前記微小カーボン分散物が、前記微小カーボン分散液体媒体に原料を浸漬し、場合により該原料を解きほぐした後、前記液体媒体を除去することにより製造されるものである、前記発明(4−2)の微小カーボン分散物である。「解きほぐ」す処理としては、例えば、超音波処理を挙げることができる。
【0045】
本発明(4−8)は、前記微小カーボン分散物を構成する前記対象物が、前記微小カーボン分散物を構成する前記対象物が表面及び/又は内部に分散している前記微小カーボンを所定条件下で遊離可能な素材で構成されている、前記発明(4−1)又は(4−2)の微小カーボン分散物である。
【0046】
ここで、「遊離」とは、例えば、前記対象物が、化学処理(酸、アルカリ、酵素等)や物理処理(熱、電気等)等により、分解、蒸発、融解及び溶解したり、沈殿等をすることにより、担持する微小カーボンと分離することを意味する。
【0047】
本発明(4−9)は、前記微小カーボン分散物が、前記微小カーボン分散液体媒体に前記対象物を加えた後、前記液体媒体側から前記対象物側に前記微小カーボンを移動させる誘発型相間移動処理を行なうことにより製造されるものである、前記発明(4−8)の微小カーボン分散物である。
【0048】
ここで、「誘発型相間移動処理」とは、微小カーボンが分散した状態のままで、微小カーボンを分散剤と分離し、当該分散液から他の相に微小カーボンを移動する処理であれば特に限定されず、例えば、微小カーボンの分子運動を高める加熱処理(例えば電磁波処理)や振動エネルギーを付与する処理(例えば超音波処理)、圧力を付加する処理等を挙げることができる。
【0049】
本発明(4−10)は、前記誘発型相間移動処理が、電磁波又は超音波処理である、前記発明(4−9)の微小カーボン分散物である。
【0050】
本発明(4−11)は、前記対象物が、極細繊維又は高級パラフィンである、前記発明(4−8)〜(4−10)のいずれか一つの微小カーボン分散物である。
【0051】
ここで「極細繊維」とは、直径が1000μm以下の繊維を指し、好適には直径が100μm以下、より好適には直径が10μm以下の繊維を指す。「高級パラフィン」とは、融点が40℃以上のパラフィン類を指す。例えば、ポリエステル繊維、発泡ウレタン繊維を挙げることができる。
【0052】
本発明(4−12)は、前記微小カーボン分散物が、物品を製造する際に該物品に前記微小カーボンを分散させるための仲介材料である、前記発明(4−8)〜(4−11)のいずれか一つの微小カーボン分散物である。
【0053】
ここで、「仲介材料」を構成する前記対象物は、微小カーボンを遊離後、例えば、前記物品を構成する一材料として機能する等、最終的に製造される前記物品中に残存するものであっても、或いは、前記物品中に前記微小カーボンを分散させるためだけの単なるキャリアとして機能する等、最終的に製造される前記物品中に残存しないものであってもよい。
【0054】
本発明(4−13)は、ナノからマイクロサイズの微小カーボンと該微小カーボンの分散剤とを含有する微小カーボン分散液体媒体又はその乾燥物中に含まれる架橋可能な成分を架橋させる工程を含む、該微小カーボンがゲル又はその乾燥物の内部に分散している微小カーボン分散物の製造方法である。
【0055】
ここで、「架橋」は、化学架橋及び物理架橋の両方を含む。「化学架橋」とは、共有結合架橋を意味し、架橋剤を用いての架橋や、ラジカル重合(放射線架橋、光架橋、プラズマ架橋)による架橋を挙げることができる。この化学架橋については、一般に、形成された架橋結合が強固であるという特徴がある。前者について具体例を挙げると、化学架橋性分散剤/架橋剤が、アミノ基、水酸基を有するポリマー/ジアルデヒド化合物;ハロゲン系ポリマー、カルボキシポリマーエステル、イソシアナート、エポキシ基、メチロール基を有するポリマー/アミン化合物;カルボキシル基を有するポリマー/アジリジン化合物;ニトリル基、メルカプト基、カルボキシル基等を有するポリマー/ジ或いはポリメチロールフェノール樹脂;アミン、ジエン系のポリマー/ハロゲン化物系;−OH、−SH、NH、−COOH等の活性水素を有するポリマー/ジ及びポリイソシアナート化合物;クロルスルホン基、イソシアナート基を有するポリマー、セルロース等/ジオール、ポリオール、ビスフェノール等のアルコール類;カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、クロルスルホン基を有するポリマー/ジエポキシ化合物である。また、後者についての具体例は、放射線架橋に関しては、γ線を照射することにより水中で架橋されるものとして、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、天然ゴムを挙げることができ、光架橋に関しては、ジアゾ樹脂、ビスアジド、重クロム酸塩のような光橋架剤で架橋されるものとして、ポリビニルアルコールやN−ビニルピロリドンのような水溶性高分子を挙げることができ、プラズマ架橋に関しては、高周波放電を利用して励起させた不活性ガスを接触されることにより架橋されるものとして、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロンを挙げることができる。
【0056】
次に、「物理架橋」とは、イオン結合(クーロン力結合)、水素結合、配位結合、ヘリックス形成又は疎水結合による物理的橋架けをいう。この物理架橋については、一般に、熱、溶液種、イオン強度、pHの変化によりゾル‐ゲル転移を起こすという特徴がある。具体例は、イオン結合に関しては、混合により架橋しうるものとして、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウム、クロリド−ポリメタクリル酸ナトリウムを挙げることができ、水素結合に関しては、凍結乾燥法により架橋しうるものとしてポリアクリル酸、凍結解凍法により架橋しうるものしてポリアクリル酸−ポリビニルアルコール、凍結低温結晶化法により架橋しうるものとしてポリメタクリル酸−ポリエチレングリコールを挙げることができ、配位結合に関しては、キレート反応により架橋しうるものとして、ポリビニルアルコール−Cu2+、ポリアクリル酸−Fe3+を挙げることができ、ヘリックス形成に関しては、高分子鎖間でヘリックスを形成することにより架橋しうるものとして、寒天、ゼラチン、カラギーナン、アルギン酸を挙げることができ、疎水結合に関しては、疎水性相互作用により架橋しうるものとして、卵白アルブミン、血清アルブミンを挙げることができる。
【0057】
本発明(4−14)は、前記架橋可能な成分が分散剤である、前記発明(4−13)の製造方法である。
【0058】
本発明(4−15)は、ナノからマイクロサイズの微小カーボンと該微小カーボンの分散剤とを含有し、架橋可能な成分を含有する微小カーボン分散液体媒体を、該成分をゲル化し得るゲル化剤を含有する液体媒体中に添加する工程を含む、内層と外層の二重構造を採っており、該内層が該微小カーボン分散液体媒体であり、該外層が該微小カーボン分散液体媒体のゲル化物である、該微小カーボンがゲルの内部に分散している微小カーボン分散物の製造方法である。
【0059】
ここで、上記発明(4−13)〜(4−15)の製造方法の態様をB群とすると、好適なB群の発明は、以下の通りである。
【0060】
好適態様(B−1)は、ナノからマイクロサイズのカーボンと該カーボンの分散剤とを含有するゲル化可能な該カーボン分散液体媒体を、該カーボン分散液体媒体をゲル化し得るゲル化剤を含有する液体媒体中に添加する工程を含む、内層と外層の二重構造を採っており、該内層が該カーボン分散液体媒体であり、該外層が該カーボン分散液体媒体のゲル化物である、ナノからマイクロサイズのカーボンを内包するビーズ状又はファイバー状ゲル或いはその乾燥ゲルの製造方法である。
【0061】
ここで、「添加する工程」における「添加」とは、ビーズ状又はファイバー状ゲルが得られる添加態様であれば特に限定されず、例えば、ビーズ状であれば上記した「滴下」であり、ファイバー状であれば上記した「流下」を挙げることができる。また、当該工程以外の工程を含んでいてもよく、例えば、該カーボン(例えばナノカーボン)の製造工程、該カーボンの精製工程、該カーボン分散液体媒体製造工程、ゲル化剤含有液体媒体の製造工程、ゲルの乾燥工程等を挙げることができる。
【0062】
好適態様(B−2)は、該カーボン分散液体媒体が、該カーボン溶液又は懸濁液である、前記好適態様(B−1)の製造方法である。
【0063】
好適態様(B−3)は、該分散剤が、該ゲル化剤により架橋しうるものである、前記好適態様(B−1)又は(B−2)の製造方法である。
【0064】
好適態様(B−4)は、該分散剤が界面活性剤である、前記好適態様(B−1)〜(B−3)ののいずれか一つの製造方法である。
【0065】
好適態様(B−5)は、該カーボンが、カーボンナノチューブ(単層・多層タイプ、カップスタック型)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、黒鉛、フラーレン、カーボンマイクロホーン、マイクロカーボンフィルターである、前記好適態様(B−1)〜(B−4)のいずか一つの製造方法である。
【0066】
好適態様(B−6)は、(1)ナノからマイクロサイズのカーボンと該カーボンの分散剤とを含有するゲル化可能な該カーボン分散液体媒体を膜状に塗工した後に該カーボン分散液体媒体をゲル化させることにより膜状ゲルを得る工程を含むか、(2)ナノからマイクロサイズのカーボンと該カーボンの分散剤とを含有するゲル化可能な該カーボン分散液体媒体を膜状に塗工した後に乾燥させて膜状乾燥物を得、次いで、該膜状乾燥物が再び湿潤状態に戻った際にゲル化させ得るゲル化剤を含有する液体媒体を該膜状乾燥物に適用することにより膜状ゲルを得る工程を含むか、或いは(3)前記工程(1)及び/又は前記工程(2)を繰り返すことにより板状ゲル又はバルク状ゲルを得る工程を含む、ナノからマイクロサイズのカーボンを内包する膜状、板状又はバルク状ゲル或いはその乾燥ゲルの製造方法である。
【0067】
ここで、「塗工」とは、該液体媒体をコーター等で塗布する場合のみならず、該液体媒体を吹き付けたりする場合も含む。また、当該工程以外の工程を含んでいてもよく、例えば、該カーボン(例えばナノカーボン)の製造工程、該カーボンの精製工程、該カーボン分散液体媒体製造工程、ゲル化剤含有液体媒体の製造工程、ゲルの乾燥工程等を挙げることができる。
【0068】
上記工程(1)に関しては、例えば、該カーボン分散液体媒体を膜状に塗工した後、該膜状液体媒体中に、ゲル化剤を直接吹き付けたり光・放射線を照射する等して、該カーボン分散液体媒体をゲル化させる態様を挙げることができる。上記工程(2)に関しては、例えば、該膜状乾燥物に、ゲル化剤が分散した液体媒体を適用することにより、該膜状乾燥物が該液体媒体を吸収し、該吸収体がゲル化剤によりゲル化される態様を挙げることができる。上記工程(3)に関しては、例えば、膜状ゲルを形成させた後、そのゲル上に再び該液体媒体を塗工し、ゲル化剤を適用するといった操作を何回か行う態様を挙げることができる。
【0069】
好適態様(B−7)は、該カーボン分散液体媒体が、該カーボン溶液又は懸濁液である、前記好適態様(B−6)の製造方法である。
【0070】
好適態様(B−8)は、該分散剤が、架橋しうるものである、前記好適態様(B−6)又は(B−7)の製造方法である。
【0071】
好適態様(B−9)は、該分散剤が界面活性剤である、前記好適態様(B−6)〜(B−9)のいずれか一つの製造方法である。
【0072】
好適態様(B−10)は、該カーボンが、カーボンナノチューブ(単層・多層タイプ、カップスタック型)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、黒鉛、フラーレン、カーボンマイクロホーン、マイクロカーボンフィルターである、前記好適態様(B−16)〜(B−19)のいずれか一つの製造方法である。
【0073】
好適態様(B−11)は、(1)ナノからマイクロサイズのカーボンと該カーボンの分散剤とを含有するゲル化可能な該カーボン分散液体媒体を型に入れた後に該カーボン分散液体媒体をゲル化させることにより該型に対応した形状のゲルを得る工程を含むか、或いは、(2)ナノからマイクロサイズのカーボンと該カーボンの分散剤とを含有するゲル化可能な該カーボン分散液体媒体を型に入れた後に乾燥させて該型に対応した形状の乾燥物を得、次いで、該乾燥物が再び湿潤状態に戻った際にゲル化させ得るゲル化剤を含有する液体媒体を該乾燥物に適用することにより該型に対応した形状のゲルを得る工程を含む、ナノからマイクロサイズのカーボンを内包する該型に対応した形状のゲル或いはその乾燥ゲルの製造方法である。
【0074】
上記(1)に関しては、例えば、型投入工程後、該型に入った該カーボン分散液体媒体中に、ゲル化剤を直接吹き付けたり、ゲル化剤を含有する液体媒体を投入したり、或いは光・放射線を照射する等して、該カーボン分散液体媒体をゲル化させる態様を挙げることができる。上記工程(2)に関しては、例えば、該乾燥物に、ゲル化剤が分散した液体媒体を適用することにより、該乾燥物が該液体媒体を吸収し、該吸収体がゲル化剤によりゲル化される態様を挙げることができる。
【0075】
「型」の形状や大きさ等は特に限定されず、用途に応じて決定される。また、「該型に対応した形状」とは、該型と完全に同一形状であるということを必ずしも意味せず、例えば、該型を用いて得られたゲルが、該型から取り出した後に膨張して該型よりも大きくなる態様も包含する、該型を用いて製造された結果としてのすべての形状を含む概念である。
【0076】
好適態様(B−12)は、該型が、円形容器、多角形容器、球形容器、直方体形容器であり、該型に対応した形状のゲルが、夫々、円形板状ゲル、多角形状板状ゲル、球形ゲル、直方体形ゲルである、前記好適態様(B−11)の製造方法である。
【0077】
好適態様(B−13)は、該カーボン分散液体媒体が、該カーボン溶液又は懸濁液である、前記好適態様(B−11)又は(B−12)の製造方法である。
【0078】
好適態様(B−14)は、該分散剤が、架橋しうるものである、前記好適態様(B−11)〜(B−13)のいずれか一つの製造方法である。
【0079】
好適態様(B−15)は、該分散剤が界面活性剤である、前記好適態様(B−11)〜(B−14)のいずれか一つの製造方法である。
【0080】
好適態様(B−16)は、該カーボンが、カーボンナノチューブ(単層・多層タイプ、カップスタック型)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、黒鉛、フラーレン、カーボンマイクロホーン、マイクロカーボンフィルターである、前記好適態様(B−11)〜(B−15)のいずれか一つの製造方法である。
【0081】
本発明(4−16)は、ナノからマイクロサイズの微小カーボンと該微小カーボンの分散剤とを含有する微小カーボン分散液体媒体に対象物原料モノマーを分散させる工程、該対象物原料モノマーを重合する工程及び該液体媒体を除去する工程を含む、該微小カーボンが対象物内部に分散している微小カーボン分散物の製造方法である。尚、ここでの「モノマーを分散」とは、溶解、懸濁、乳濁も含む。
【0082】
本発明(4−17)は、ナノからマイクロサイズの微小カーボンと該微小カーボンの分散剤とを含有する微小カーボン分散液体媒体に対象物原料ポリマーを分散させる工程及び該液体媒体を除去する工程を含む、該微小カーボンが対象物内部に分散している微小カーボン分散物の製造方法である。尚、ここでの「ポリマーを分散」とは、溶解、懸濁、乳濁も含む。
【0083】
本発明(4−18)は、ナノからマイクロサイズの微小カーボンと該微小カーボンの分散剤とを含有する微小カーボン分散液体媒体に対象物を浸漬する工程及び該液体媒体を除去する工程を含む、該微小カーボンが対象物表面に分散している微小カーボン分散物の製造方法である。
【0084】
本発明(4−19)は、前記液体媒体側から前記対象物側に前記微小カーボンを移動させる誘発型相間移動処理工程を更に含む、前記発明(4−18)の製造方法である。
【0085】
本発明(4−20)は、本発明(4−1)〜(4−12)のいずれか一つの微小カーボン分散物を含む吸着性材料である。
【0086】
ここで、吸着の対象となる物質は特に限定されず、液或いはガスに含まれているいずれの物質であってもよい。例えば、液相処理の場合には、石油留分(溶剤、燃料油、潤滑油、ワックス)脱色、脱水または脱ガム、上水からの悪臭、不快な味および色の除去、動植物油の脱色、粗製糖みつの脱色、飲料および薬用飲料の清澄化、発酵液からのビタミンなどの生産物の回収、水質汚染防止のためのプロセス排水の浄化(イオン交換を含む)、プロセス用水からの塩または灰分の除去(イオン交換、イオン遅滞、イオン排除による脱イオンを含む)、脂肪族炭化水素から芳香族炭化水素の分離、気相処理の場合には、塗料の乾燥、新聞印刷、衣服のドライクリーニングあるいはレーヨン紡糸のような蒸発プロセスから排出される空気からの溶媒回収、ガスの脱水(パッケージ内乾燥を含む)、大気汚染防止のために換気系内あるいは排ガスからの悪臭除去および毒性ガスの除去、低温における希ガス(クリプトン、キセノン)の分離、深冷分離への原料空気からの不純物の除去、都市の照明灯用ガスからの悪臭除去、低分子量の炭化水素ガスの気相分離(還流を伴う吸着あるいは深冷分離に対する代替)で問題となる物質の吸着を挙げることができる。更に、繊維等の染色に利用することも可能である。即ち、微小カーボン(例えばCNT)は「吸着場」として機能するので、様々な色に染めることができる。
【0087】
本発明(4−21)は、液体又は気体中の汚染物質・有害物質吸着用である、前記発明(4−20)の吸着性材料である。
【0088】
例えば、前記汚染物質・有害物質としては、塩化水素、塩化ビニル、水酸化ナトリウム、テトラクロロエチレン(溶剤)、BDBPP化合物(防炎加工剤)、トリブチル錫化合物(防菌・防かび剤)、ホルムアルデヒド(樹脂加工剤)、有機水銀化合物(防菌・防かび剤)、ディルドリン(防虫加工剤)、硫酸(洗浄剤)、DTTB(防虫加工剤)、水酸化カリウム(洗浄剤)、トリクロロエチレン(溶剤)、APO(防炎加工剤)、TDBPP、メタノール(溶剤)、トリフェニル錫化合物等を挙げることができる。
【0089】
本発明(4−22)は、工業用水・飲料用水濾過機器用、純水装置用、各種クロマトグラフィー用、発癌物質等の人体有害物質吸着装置用、空気清浄機用、排気ガス浄化装置用、導電材料用である、前記発明(4−20)又は(4−21)の吸着性材料である。
【0090】
尚、飲料水濾過機器用に関し、吸着対象となる物質は特に限定されないが、遊離残留塩素、濁り、トリハロメタン、溶解性鉛、農薬(CAT)、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、カビ臭(2―MIB)を挙げることができる。また、発癌物質吸着等の人体有害物質吸着用に関し、吸着対象の一つである発癌物質は特に限定されないが、例えば、臭化エチジウム、トリハロメタン類、各種環境ホルモン(例えばノニルフェノール)を挙げることができる。空気清浄機用に関し、吸着対象となる物質は特に限定されないが、例えば、部屋の中の花粉、タバコの煙、ダニの死骸などのハウスダストを挙げることができる。更に、「導電材料用」の具体的用途としては、例えば、エレクトロニクス分野、電気製品、機械部品、車輌等の各種部品等を挙げることができる。特に、耐熱性を備えたゲルと組み合わせて用いた場合、好適な一例として、燃料電池セパレーター用素材を挙げることができる。
【0091】
本発明(4−23)は、前記発明(4−1)〜(4−12)のいずれか一つの微小カーボン分散物を含む導電材料である。
【0092】
ここで、本発明に係る「導電材料」の具体的用途としては、例えば、エレクトロニクス分野、電気製品、機械部品、車輌等の各種部品等を挙げることができる。特に、耐熱性を備えたゲルと組み合わせて用いた場合、好適な一例として、燃料電池セパレーター用素材を挙げることができる。
【0093】
本発明(4−24)は、前記発明(4−20)の吸着性材料を含む、工業用水・飲料用水濾過機器、純水装置、各種クロマトグラフィー、発癌物質等の人体有害物質吸着装置、空気清浄機、排気ガス浄化装置又は電気製品である。
【0094】
本発明(4−25)は、物品又は物品原料が存在する系であって、前記発明(4−1)〜(4−12)のいずれか一つの微小カーボン分散物を乾式的又は湿式的に添加する工程を含む、微小カーボンが分散した物品の製造方法である。
【0095】
ここで、当該発明は、高度に分散した微小カーボンを乾式的又は湿式的に目的物質に融合するための技術である。従来、繊維、ガラス、金属及び有機・無機の結晶又はそのアモルファスなどに高度に分散した微小カーボンを導入する際に採用されてきた方法は、乾式導入法、つまり、粉末状の微小カーボンを添加する方法である。ここで、例えば、カーボンナノチューブは、通常、バンドルと呼ばれる形で存在している。そのため、カーボンナノチューブが高度に融合した複合材料、つまり、カーボンナノチューブが一本一本に分散した状態で存在する材料を得ることは極めて困難であるという問題があった。上記発明では、例えば、まず、バンドル状のカーボンナノチューブを分散剤を用いて、高度に分散したカーボンナノチューブの溶液を作製する。次に、この分散溶液に、「仲介材料」又は「仲介媒体」と呼ばれる物質を添加し、カーボンナノチューブを分散した状態で「仲介媒体」に移す。高度に分散したカーボンナノチューブを担持する「仲介媒体」を出発物質として、目的材料を作製する。その後、必要に応じて、「仲介材料」の分解等の処理を行い、「仲介媒体」を除去する。「仲介媒体」としては、酸、アルカリ又は熱で分解する材料や、温度の変化によって、固体/液体のような相転移する材料が好適である。ここで、「乾式的」とは、固体相に対しての添加態様を意味し、「湿式的」とは、液体相に対しての添加態様を意味する。
【0096】
本発明(4−26)は、物品又は物品原料が存在する系であって、前記発明(4−8)の所定条件を充足する系に、前記発明(4−8)〜(4−12)のいずれか一つの微小カーボンを添加する工程を含む、微小カーボンが分散した物品の製造方法である。
【0097】
本発明(4−27)は、前記物品がアラミド繊維であり、かつ、前記対象物が濃硫酸可溶性素材である、前記発明(4−26)の製造方法である。
【0098】
本発明(4−28)は、カーボンナノチューブ分散剤としてフラーレンを用いた、カーボンナノチューブ非水系分散液である。
【0099】
本発明(4−29)は、カーボンナノチューブ分散剤としてサイクロデキストリンとフラーレンを用いた、カーボンナノチューブ水系分散液である。
【0100】
本発明(4−30)は、ナノからマイクロサイズの微小カーボンの分散剤により該微小カーボンを分散させた液体媒体である、該微小カーボンが表面及び/又は内部に分散した微小カーボン製造用分散液である。
【0101】
前記発明の好適態様は、カーボンナノチューブ分散剤によりカーボンナノチューブを分散させた液体媒体である、カーボンナノチューブが均一に分散した複合材料の製造用カーボンナノチューブ分散液である。以下の発明(4−31)〜(4−33)は、当該好適態様に係るものである。
【0102】
本発明(4−31)は、液体媒体が非水系液体媒体であり、前記微小カーボンがカーボンナノチューブであり、前記分散剤がフラーレンである、前記発明(4−30)の分散液である。
【0103】
ここで、「非水系」とは、ベースとなる液体媒体が非水溶性溶媒であることを意味する。また、「非水溶性溶媒」とは、23.5℃における水に対する溶解度が0.2重量%以下である溶媒を意味する。「フラーレン」とは、例えば、C60、C70、C82といったフラーレンに加え、フラーレンダイマー等も包含する概念である。非水系溶媒としては、好適には芳香環を有する非水系溶媒、例えば、トルエン、アントラセンやナフタレン(アセトニトリルで溶解)等を挙げることができる。
【0104】
本発明(4−32)は、液体媒体が水系液体媒体であり、前記微小カーボンがカーボンナノチューブであり、前記分散剤が前記液体媒体中で直径が50〜2000nmの球状ミセルを形成しうる界面活性剤又は重量平均分子量が1万〜5千万である水溶性高分子である、前記発明(4−30)の分散液である。
【0105】
ここで、「水系」とは、ベースとなる液体媒体が水溶性溶媒(水性溶媒)であることを意味する。ここで、「水溶性溶媒」とは、23.5℃における水に対する溶解度が20重量%以上である溶媒を意味し、水も包含する概念である。
【0106】
「球状ミセル」(「小胞体」)とは、界面活性剤により形成されたミセルであって、球状のような収納空間を持つものをいう。例えば、リン脂質系界面活性剤の場合には、該小胞体はリポソームといわれる。ここで、この球状ミセル(小胞体)の直径は、光散乱法に従って測定された値(20℃のpH未調整の水溶液)を指す。
【0107】
「水溶性高分子」(擬似ミセルタイプ)とは、重量平均分子量が1万〜5千万(好適には1万〜5百万)であるものをいう。ここで、重量平均分子量は、プルランを標準としたゲル濾過高速液体クロマトグラフィーにより測定した値に基づくものである。
【0108】
本発明(4−33)は、液体媒体が水系液体媒体であり、前記微小カーボンがカーボンナノチューブであり、前記分散剤がサイクロデキストリンとフラーレンである、前記発明(4−30)の分散液である。
【0109】
ここで、「サイクロデキストリン」とは、澱粉に酵素(サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ)を作用させて得られる環状オリゴ糖であり、α、β及びγタイプのいずれでもよい。
【0110】
本発明(4−34)は、ナノからマイクロサイズの微小カーボンと該微小カーボンの分散剤とを含有する微小カーボン分散液体媒体において、前記分散剤の一つとして、微小カーボンのアンバンドル状態促進物質及び/又はアンバンドル状態維持物質を含有することを特徴とする微小カーボン分散液体媒体である。
【0111】
ここで、当該アンバンドル状態促進物質としては、例えば、微小カーボンに付着・侵入したり、又は微小カーボン間に介在することにより、微小カーボン同士に斥力を生じさせるような荷電物質{アニオンやカチオン(例えばNaI)}を挙げることができる。また、当該アンバンドル状態維持物質としては、例えば、分離した微小カーボン間に介在することにより、両者が結合したり近接することを物理的に防止する障害物質{例えば高分子化合物(例えばκ−カラゲナン)}を挙げることができる。
【0112】
本発明(4−35)は、前記微小カーボンが表面及び/又は内部に分散した微小カーボン製造用である、前記発明(4−34)の微小カーボン分散液体媒体である。
【0113】
本発明(4−36)は、ナノからマイクロサイズの微小カーボンへの付着部分と電気的引力誘発基とを有する微小カーボン分散剤であって、一方の該微小カーボンに付着した該分散剤の電気的引力誘発基が、別の該微小カーボンに付着した該分散剤の電気的引力誘発基との間で発生した電気的引力で引き合うことにより該微小カーボンのアンバンドル状態を促進する微小カーボン分散剤である。
【0114】
ここで、「電気的引力誘発基」とは、アニオン基又はカチオン基である。因みに、上記微小カーボン分散剤は、一分子中に両方の電気的性質を有する化合物であっても(例えば、アニオン基とカチオン基を有する両性イオン界面活性剤)、一分子中に一方の電気的性質を有する化合物(例えば、カチオン界面活性剤)と一分子中に他方の電気的性質を有する化合物(例えば、アニオン界面活性剤)との混合物であってもよい。また、「付着部分」とは、微小カーボンと親和性を有する部分を意味し、例えば、微小カーボンが疎水性である場合には、疎水性部分(例えば、アルキレン基)である。
【0115】
本発明(4−37)は、前記分散剤が、アニオン基及びカチオン基を有する微小カーボン分散剤であって、一方の該微小カーボンに付着した該分散剤のアニオン基及びカチオン基が、別の該微小カーボンに付着した該分散剤のカチオン基及びアニオン基との間で発生した電気的引力で夫々引き合うことにより該微小カーボンのアンバンドル状態を促進する微小カーボン分散剤である、前記発明(4−36)の微小カーボン分散剤である。
【0116】
本発明(4−38)は、前記分散剤が両性イオン界面活性剤である、前記発明(4−37)の分散剤である。
【0117】
本発明(4−39)は、ナノからマイクロサイズの微小カーボンと前記発明(4−36)〜(4−38)のいずれか一つの分散剤とを含有する微小カーボン分散液体媒体を用いて製造される微小カーボン分散物である。
【発明の効果】
【0118】
本発明(4−1)及び(4−2)によれば、微小カーボン分散物の微小カーボンは、極めて高い均一性で前記分散物中に存在する(表面及び/又は内部)ので、前記分散物は、前記微小カーボン固有の物性(例えば、強度、吸着性、導電性)を部位に関わらず均一に保有し得るという効果を奏する。
【0119】
本発明(4−3)によれば、ナノからマイクロサイズの微小カーボン分散液体媒体をゲル化させたものであるため、透過性に優れたゲルの特性を享受できると共に、粒径の極めて小さいナノからマイクロサイズの微小カーボンが、極めて高い均一性で該ゲルの網目構造中に存在するので、非常に高い吸着性を有するという効果を奏する。
【0120】
本発明(4−4)は、外層のゲルが、内層の液体媒体をゲル化させたものであるので、外層のゲルと内層の液体媒体の親和性が高められる結果、より浸透性・透過性・吸着性を高めることができるという効果を奏する。更に、内層のナノからマイクロサイズの微小カーボン分散液体媒体を外層のゲルが包み込む構成を採っているので、取扱いに不便な液体を固体と同一に扱えるという効果を奏すると共に、外層がゲルであるので浸透性に優れていることに加え、内層がナノからマイクロサイズのカーボン分散液体媒体であるので、特に液体媒体と親和性の高い物質を吸着する場合には高い吸着性能を発揮し得るという効果を奏する。
【0121】
ここで、上記発明(4−2)〜(4−4)のゲル又は乾燥ゲルに係る好適態様(A−1)〜(A−10)の効果も述べる。
【0122】
好適態様(A−1)は、ナノからマイクロサイズのカーボン分散液体媒体をゲル化させたものであるため、透過性に優れたゲルの特性を享受できると共に、粒径の極めて小さいナノからマイクロサイズのカーボンが、極めて高い均一性で該ゲルの網目構造中に存在すると考えられるため、非常に高い吸着性を有するという効果を奏する。
【0123】
好適態様(A−2)は、前記好適態様(A−1)の効果に加え、原料である該カーボン分散液体媒体が、溶液又は懸濁液であるため、得られたゲルの網目構造中には、該カーボンが、更に粒径の小さい状態で存在するものと理解され、その結果、更に高い吸着性を有するという効果を奏する。
【0124】
好適態様(A−3)は、前記好適態様(A−1)又は(A−2)の効果に加え、液体媒体に溶解している分散剤がゲル化したものであるため、より均一な網目構造が形成され、当該網目構造中に粒径の極めて小さいカーボンが内包され、その結果、更に吸着性能が高まるという効果を奏する。
【0125】
好適態様(A−4)は、前記好適態様(A−1)〜(A−3)の効果に加え、架橋性の界面活性剤を用いているので、その疎水部位で該カーボンを保持し、その親水部位で溶媒(親水性溶媒)を保持しうるという効果を奏する。
【0126】
好適態様(A−5)は、前記発明(A−1)〜(A−4)の効果に加え、カーボンナノチューブ(単層・多層タイプ、カップスタック型)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、黒鉛、フラーレン、カーボンマイクロホーン、マイクロカーボンフィルターといった、各種用途に適した様々な形態のナノからマイクロサイズのカーボンを利用し得るという効果を奏する。
【0127】
好適態様(A−6)は、ビーズ状、ファイバー状、膜状、板状又はバルク状といった、各種用途に適した形状を採り得るという効果を奏する。
【0128】
好適態様(A−7)は、前記好適態様(A−6)の効果に加え、外層のゲルが、内層の液体媒体をゲル化させたものであるので、外層のゲルと内層の液体媒体の親和性が高められる結果、より浸透性・透過性・吸着性を高めることができるという効果を奏する。更に、内層のナノからマイクロサイズのカーボン分散液体媒体を外層のゲルが包み込む構成を採っているので、取扱いに不便な液体を固体と同一に扱えるという効果を奏すると共に、外層がゲルであるので浸透性に優れていることに加え、内層がナノからマイクロサイズのカーボン分散液体媒体であるので、特に液体媒体と親和性の高い物質を吸着する場合には高い吸着性能を発揮し得るという効果を奏する。
【0129】
好適態様(A−8)は、前記好適態様(A−7)の効果に加え、滴下という手法を採ることにより、より球体に近い形状のゲルとなる結果、単位重量当たりのゲル表面積が大きくなり、より吸着特性が向上するという効果を奏し、また、流下という手法を採ることにより、所望の長さや太さのゲルとなる結果、用途との関係で最適のサイズとなり得るという効果を奏する。
【0130】
好適態様(A−9)は、前記好適態様(A−6)の効果に加え、形状が、膜状、板状又はバルク状であるので、該形状が要求される様々な用途に適用可能であるという効果を奏する。
【0131】
好適態様(A−10)は、乾燥ゲルであるので通気性に優れていると共に、該乾燥ゲルの網目構造内に極めて粒径の小さいナノからマイクロサイズのカーボンが均一に分散しているので、空気等の気体中に含まれた物質を極めて高効率で吸着できるという効果を奏する。
【0132】
本発明(4−5)によれば、微小カーボン液体媒体に原料モノマーが分散した状態で重合するので、得られた重合物における微小カーボンの高い内部分散性が担保されているという効果を奏する。
【0133】
本発明(4−6)によれば、微小カーボン液体媒体に原料ポリマーが分散した状態で液体媒体を除去するので、得られた除去物における微小カーボンの高い内部分散性が担保されているという効果を奏する。
【0134】
本発明(4−7)によれば、微小カーボン液体媒体に原料を浸漬するので、得られた浸漬処理物における微小カーボンの高い表面分散性が担保されているという効果を奏する。
【0135】
本発明(4−8)〜(4−12)によれば、前記微小カーボン分散物を構成する前記対象物が、所定条件下で微小カーボンを遊離する素材から構成されているので、前記所定条件下にある液体媒体に当該微小カーボン分散物を添加することにより、微小カーボンと対象物とが分離する結果、前記微小カーボンは、前記液体媒体中に分散する。このような状態で、例えば、製造物の原料モノマーや原料ポリマーを溶解し、重合や溶媒除去等を行うことにより、前記微小カーボンが均一に分散した前記製造物を製造することができる。ある種の液体媒体に関しては、当初から微小カーボンを分散させることが困難であり、このような場合、微小カーボンを当該液体媒体に分散させる材料として、極めて有用である。
【0136】
本発明(4−13)によれば、ナノからマイクロサイズの微小カーボン分散液体媒体又はその乾燥物中に含まれる架橋可能な成分を架橋させるので、透過性に優れたゲルの特性を享受できると共に、粒径の極めて小さいナノからマイクロサイズの微小カーボンが、極めて高い均一性で該ゲルの網目構造中に存在する微小カーボン分散物を製造することができるという効果を奏する。
【0137】
本発明(4−14)は、前記発明(4−13)の効果に加え、液体媒体に溶解している分散剤がゲル化したものであるため、より均一な網目構造が形成され、当該網目構造中に粒径の極めて小さいカーボンが内包され、その結果、更に高い吸着性能を有するゲル又は乾燥ゲルを得ることができることに加え、他のゲル化材料を別途添加する必要がないため、コストパフォーマンスに優れるという効果も奏する。
【0138】
本発明(4−15)は、ナノからマイクロサイズのカーボン分散液体媒体を、該媒体のゲル化剤を含有する液体媒体中に添加するといった極めて簡便な手法で、前記効果を奏する、内層と外層の二重構造を採っており、該内層が該カーボン分散液体媒体であり、該外層が該カーボン分散液体媒体のゲル化物である、ナノからマイクロサイズのカーボンを内包するビーズ状又はファイバー状ゲル或いはその乾燥ゲルを得ることができるという効果を奏する。また、滴下や流下というように添加の方法を変えることにより、用途に応じた様々な形状や大きさのゲル又は乾燥ゲルを簡単に得ることができるという効果も奏する。
【0139】
ここで、上記発明(4−13)〜(4−15)のゲル又は乾燥ゲルに係る好適態様(B−1)〜(B−16)の効果も述べる。
【0140】
好適態様(B−1)は、ナノからマイクロサイズのカーボン分散液体媒体を、該媒体のゲル化剤を含有する液体媒体中に添加するといった極めて簡便な手法で、前記効果を奏する、内層と外層の二重構造を採っており、該内層が該カーボン分散液体媒体であり、該外層が該カーボン分散液体媒体のゲル化物である、ナノからマイクロサイズのカーボンを内包するビーズ状又はファイバー状ゲル或いはその乾燥ゲルを得ることができるという効果を奏する。また、滴下や流下というように添加の方法を変えることにより、用途に応じた様々な形状や大きさのゲル又は乾燥ゲルを簡単に得ることができるという効果も奏する。
【0141】
好適態様(B−2)は、原料である該カーボン分散液体媒体が、溶液又は懸濁液であるため、得られたゲルの網目構造中には、該カーボンが、更に粒径の小さい状態で存在するものと理解され、その結果、更に高い吸着性を有するゲル又は乾燥ゲルを得ることができるという効果を奏する。
【0142】
好適態様(B−3)は、液体媒体に溶解している分散剤がゲル化したものであるため、より均一な網目構造が形成され、当該網目構造中に粒径の極めて小さいカーボンが内包され、その結果、更に高い吸着性能を有するゲル又は乾燥ゲルを得ることができることに加え、他のゲル化材料を別途添加する必要がないため、コストパフォーマンスに優れるという効果も奏する。
【0143】
好適態様(B−4)は、架橋性の界面活性剤を用いているので、その疎水部位で該カーボンを保持し、その親水部位で溶媒(親水性溶媒)を保持しうるゲルを得ることができるという効果を奏する。
【0144】
好適態様(B−5)は、カーボンナノチューブ(単層・多層タイプ、カップスタック型)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、黒鉛、フラーレン、カーボンマイクロホーン、マイクロカーボンフィルターといった、各種用途に適した様々な形態のナノからマイクロサイズのカーボンを含有するゲル又は乾燥ゲルが得られるという効果を奏する。
【0145】
好適態様(B−6)は、粒径の極めて小さいナノからマイクロサイズのカーボンが極めて高い均一性で網目構造中に存在する、透過性や通気性に優れたゲルや乾燥ゲルを非常に簡単な操作で得ることができると共に、ゲル又は乾燥ゲルを用途に応じた形状(膜状、板状又はバルク状)にすることが可能になるという効果も奏する。また、工程(2)や工程(3)における、ゲル化工程前に該カーボン分散液体媒体中の液体媒体を揮発させた上で、ゲル化剤を液体媒体中に存在させた形態で適用することにより、該乾燥物が該液体媒体を吸収し、その結果、短時間でむらなくゲルが形成されるという効果も奏する。
【0146】
好適態様(B−7)は、原料である該カーボン分散液体媒体が、溶液又は懸濁液であるため、得られたゲルの網目構造中には、該カーボンが、更に粒径の小さい状態で存在するものと理解され、その結果、更に高い吸着性を有するゲル又は乾燥ゲルを得ることができるという効果を奏する。
【0147】
好適態様(B−8)は、液体媒体に溶解している分散剤がゲル化したものであるため、より均一な網目構造が形成され、当該網目構造中に粒径の極めて小さいカーボンが内包され、その結果、更に高い吸着性能を有するゲル又は乾燥ゲルを得ることができることに加え、他のゲル化材料を別途添加する必要がないため、コストパフォーマンスに優れるという効果も奏する。
【0148】
好適態様(B−9)は、架橋性の界面活性剤を用いているので、その疎水部位で該カーボンを保持し、その親水部位で溶媒(親水性溶媒)を保持しうるゲルが得られるという効果を奏する。
【0149】
好適態様(B−10)は、カーボンナノチューブ(単層・多層タイプ、カップスタック型)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、黒鉛、フラーレン、カーボンマイクロホーン、マイクロカーボンフィルターといった、各種用途に適した様々な形態のナノからマイクロサイズのカーボンを含有するゲル又は乾燥ゲルが得られるという効果を奏する。
【0150】
好適態様(B−11)は、粒径の極めて小さいナノからマイクロサイズのカーボンが極めて高い均一性で網目構造中に存在する、透過性や通気性に優れたゲルや乾燥ゲルを非常に簡単な操作で得ることができると共に、型を用いて製造するので、ゲル又は乾燥ゲルを用途に応じた形状にすることが可能になるという効果も奏する。
【0151】
好適態様(B−12)は、円形板状ゲル、多角形状板状ゲル、球形ゲル、直方体形ゲル又はこれらの乾燥ゲルを簡単な操作で得ることができるという効果を奏する。
【0152】
好適態様(B−13)は、原料である該カーボン分散液体媒体が、溶液又は懸濁液であるため、得られたゲルの網目構造中には、該カーボンが、更に粒径の小さい状態で存在するものと理解され、その結果、更に高い吸着性を有するゲル又は乾燥ゲルを得ることができるという効果を奏する。
【0153】
好適態様(B−14)は、液体媒体に溶解している分散剤がゲル化したものであるため、より均一な網目構造が形成され、当該網目構造中に粒径の極めて小さいカーボンが内包され、その結果、更に高い吸着性能を有するゲル又は乾燥ゲルを得ることができることに加え、他のゲル化材料を別途添加する必要がないため、コストパフォーマンスに優れるという効果も奏する。
【0154】
好適態様(B−15)は、架橋性の界面活性剤を用いているので、その疎水部位で該カーボンを保持し、その親水部位で溶媒(親水性溶媒)を保持しうるゲルを得ることができるという効果を奏する。
【0155】
好適態様(B−16)は、カーボンナノチューブ(単層・多層タイプ、カップスタック型)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、黒鉛、フラーレン、カーボンマイクロホーン、マイクロカーボンフィルターといった、各種用途に適した様々な形態のナノからマイクロサイズのカーボンを含有するゲル又は乾燥ゲルが得られるという効果を奏する。
【0156】
本発明(4−16)によれば、微小カーボン液体媒体に原料モノマーが分散した状態で重合するので、得られた重合物における微小カーボンの高い内部分散性を担保することができるという効果を奏する。
【0157】
本発明(4−17)によれば、微小カーボン液体媒体に原料ポリマーが分散した状態で液体媒体を除去するので、得られた除去物における微小カーボンの高い内部分散性を担保することができるという効果を奏する。
【0158】
本発明(4−18)によれば、微小カーボン液体媒体に原料を浸漬するので、得られた浸漬処理物における微小カーボンの高い表面分散性を担保することができるという効果を奏する。
【0159】
本発明(4−19)によれば、誘発型相間移動処理工程を行うことにより、前記液体媒体側から前記対象物側に前記微小カーボンを確実に移動させることができるという効果を奏する。
【0160】
本発明(4−20)は、例えば、DNA汚染物質として知られる臭化エチジウムの吸着試験においては、活性炭等ではなし得なかった完全な除去が達成された程に、他の吸着性材料(例えば活性炭)と比較してその吸着能が顕著に高いという効果を奏する。
【0161】
本発明(4−21)は、その吸着能の高さを利用して、液体又は気体中の汚染物質・有害物質を吸着でき、当該物質による人体への影響が抑制されるという効果を奏する。
【0162】
本発明(4−22)は、工業用水・飲料用水濾過機器用、純水装置用、各種クロマトグラフィー用、発癌物質等の人体有害物質吸着用、空気清浄機用、排気ガス浄化装置用として使用すると、当該用途における既存の吸着剤(例えば、活性炭)よりも遥かに高い吸着能を有するため、目的の有害物質をこれまでの予想を超えて除去できるという効果を奏する。更に、導電体・半導体特性を有するナノからマイクロサイズのカーボンを用いているので、吸着性が求められる特殊な電子材料として有用であるという効果を奏する。尚、本発明は、吸着性のみならず、透過性や通気性にも優れているので、これらの性質が求められる電子材料にも有用である。
【0163】
本発明(4−23)は、導電体・半導体特性を有するナノからマイクロサイズのカーボンを物品に適用したときに、当該カーボンがもともと有している筈の導電性を全く又は十分に発揮できないという重要課題を、当該カーボンを分散状態で存在させることにより、はじめて解決した点で極めて画期的である。即ち、理由は定かでないが、従来は塊状で存在していた当該カーボンを分散状態で存在させることにより、著しい導電性向上効果を奏することを、本発明者は新規に見出したのである。
【0164】
本発明(4−24)は、前記効果を有する吸着性材料を含むので、従来の吸着性材料(例えば活性炭)と比較して目的物質を効率的に吸着でき、各機器や装置の性能を高めるという効果を奏する。更に、電気製品等は、前記効果を有する導電性材料を含むので、当該カーボンの存在に基づく優れた導電性や機械強度等の特性を享有できるという効果を奏する。
【0165】
本発明(4−25)によれば、例えば、通常はバンドルと呼ばれる形で存在しているカーボンナノチューブを一本一本に分散した状態で存在させることが可能になるという効果を奏する。
【0166】
本発明(4−26)によれば、前記微小カーボン分散物を構成する前記対象物が、所定条件で該微小カーボンを遊離させる素材から構成されているので、最終物品中に当該素材が存在することが不都合な場合に、当該素材を最終物品に含まれないようにできるという効果を奏する。更に、ある種の液体媒体に関しては、当初から微小カーボンを分散させることが困難であり、このような場合、微小カーボンを当該液体媒体に分散させる材料として、極めて有用である。
【0167】
本発明(4−27)によれば、繊維内に均一に微小カーボンが分散した、耐熱性と強度に優れたアラミド繊維を製造することができる。
【0168】
本発明(4−28)及び(4−31)によれば、微小カーボンの中でも特に有用性が高いカーボンナノチューブが非水系溶媒に分散しているので、対象物の製造プロセスにおいて非水系溶媒の使用が必須である場合、当該対象物にカーボンナノチューブを分散させる際に極めて有用であるという効果を奏する。
【0169】
本発明(4−29)、(4−32)及び(4−33)によれば、微小カーボンの中でも特に有用性が高いカーボンナノチューブが水系溶媒に分散しているので、対象物の製造プロセスにおいて水系溶媒の使用が必須である場合、当該対象物にカーボンナノチューブを分散させる際に極めて有用であるという効果を奏する。
【0170】
本発明(4−30)によれば、微小カーボンを対象物中に分散させるための原料として非常に有用であるという効果を奏する。
【0171】
本発明(4−34)及び(4−35)によれば、微小カーボンのアンバンドル状態促進物質及び/又はアンバンドル状態維持物質を含有しているので、分散状態を形成しにくい分散剤や再結合し易い分散剤を使用した場合であっても、これらの問題を生じないという効果を奏する。
【0172】
本発明(4−36)〜(4−39)によれば、電気的な引力によりバンドル状態にある微小カーボン同士を引き剥がされるので、より高い分散状態を担保できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0173】
以下では、本発明の最良形態を述べることとする。以下の説明では、まず、第一の最良形態として、微小カーボン分散液自体を架橋させることにより得られるゲル状の微小カーボン分散物について説明する。次に、第二の最良形態として、微小カーボン分散液を用いて得られる微小カーボン分散物について説明する。最後に、微小カーボン分散物(仲介物質)を用いて得られる微小カーボン分散物品について説明する。尚、本発明は、これらの最良形態に何ら限定されるものではない。
【0174】
第一の最良形態
以下では、第一の最良形態に係る微小カーボン分散物について、水中の有害物質の吸着剤に関する用途を例にとりまず説明する。まず、当該用途において、ゲル中の溶媒は水であることが最良である。また、該ゲルの製造に際しては、後の工程で溶媒交換を行うよりも、当初から、カーボン分散液体媒体の「液体媒体」として水を用いた方が効率的である。更に、ナノからマイクロサイズのカーボンとしてカーボンナノチューブ(CNT)を使用した場合を想定する。この前提の下、本最良形態の各構成要件につき最良形態を説明する。
【0175】
はじめに、CNT水溶液に含まれる分散剤について説明する。CNTを溶解するものとして好適な分散剤は、界面活性剤(可溶化剤)である。当該界面活性剤は、CNT水溶液中で直径が50〜2000nmの球状ミセルを形成しうる界面活性剤(ミセルタイプ)及び/又は重量平均分子量が1万〜5千万である水溶性高分子(擬似ミセルタイプ)である。尚、擬似ミセルタイプも本明細書においては「界面活性剤」の概念に包含される。
【0176】
ここで、「界面活性剤(ミセルタイプ)」とは、水溶液中で直径が50〜2000nm(好適には50〜300nm)の球状ミセルを形成しうるものをいう。この大きさの球状ミセル(小胞体)が好適である理由は定かでないが、現時点では、以下のような理由ではないかと推察している。例えば、カーボンナノチューブの場合、その長さは、通常、100〜1000nmの範囲にある。そして、該界面活性剤(ミセルタイプ)水溶液中では、カーボンナノチューブは、数分の一程度(例えば四分の一程度)の長さに折り畳まれ、その結果、溶液中では数十nm〜数百nmの長さになる。恐らく、上記のサイズが、この折り畳まれたカーボンナノチューブを小胞体内に収納するのに丁度良く、結果、カーボンナノチューブを効率的に可溶化できるためと理解される。また、他のナノカーボンについても同様の作用機序でミセル内に格納されるものと推定される。
【0177】
尚、従来にも界面活性剤を添加する技術はある(特開2002−255528)が、それにより形成されるミセルは、0.1nm程度と非常に小さいものであり、そのミセル表面にカーボンナノチューブが付着するという原理である。本最良形態は、ミセル表面でなく、ミセル(小胞体)の内部にナノカーボン(例えばカーボンナノチューブ)を格納するという新規な着想に基づくものである。
【0178】
なお、ここでの「球状ミセル」(「小胞体」)とは、界面活性剤により形成されたミセルであって、球状のような収納空間を持つものをいう。例えば、リン脂質系界面活性剤の場合には、該小胞体はリポソームといわれる。また、この球状ミセル(小胞体)の直径は、光散乱法に従って測定された値(20℃のpH未調整の水溶液)を指す。
【0179】
界面活性剤の種類は、上記の特性を有するものである限り特に限定されず、例えば、リン脂質系界面活性剤及び非リン脂質系活性剤のいずれも用い得る。特に好適な界面活性剤は、両性イオン界面活性剤である。尚、図13に、両性イオン界面活性剤を用いたときのCNT分離メカニズムを概念的に示す。まず、図13(A)に示すように、CNTに両性イオン界面活性剤が付着する。すると、図13(B)に示すように、CNTに付着した両性イオン界面活性剤のアニオン及びカチオンが、別のCNTに付着した両性イオン界面活性剤のカチオン及びアニオンと夫々引力で引き合うことにより(二重の力)、CNTが引っ張られる結果、バンドル状態から、一本一本に分離したアンバンドル状態になる。尚、ここでは、一分子中にアニオンとカチオンを有する両性イオン界面活性剤を分散剤として用いた態様について例示したが、アニオン界面活性剤を添加したCNT液(第一液)とカチオン界面活性剤を添加したCNT液(第二液)とを混合することによっても、前記電気的引力に基づき、アンバンドル状態を形成し得る。
【0180】
ここで、「リン脂質系界面活性剤」とは、リン酸基を官能基とする陰イオン性界面活性剤・両性イオン界面活性剤であり、リン脂質(グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質の両方を含む)及び改質リン脂質(例えば、水素添加リン脂質、リゾリン脂質、酵素変換リン脂質、リゾホスファチジルグリセロール、他の物質との複合体)のいずれでもよい。このようなリン脂質は、生物を構成する細胞の種々の膜系、例えば原形質膜、核膜、小胞体膜、ミトコンドリア膜、ゴルジ体膜、リソソーム膜、葉緑体膜、細菌細胞膜に存在し、好適には、リポソームの調製に用いられるリン脂質が好適である。具体的には、例えば、ホスファチジルコリン{例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトリルホスファチジルコリン(DPPC)}、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリンを挙げることができる。
【0181】
また、「非リン脂質系界面活性剤」とは、リン酸基を官能基として含まない非イオン型界面活性剤・両性イオン型界面活性剤であり、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミノ] −2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(CHAPSO)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミノ]−プロパンスルホン酸(CHAP)及びN,N−ビス(3−D−グルコナミドプロピル)−コラミドを挙げることができる。
【0182】
尚、参考までに両性界面活性剤を挙げる。尚、以下の表は、順に、四級アンモニウム塩基/スルホン酸基タイプ、四級アンモニウム塩基/リン酸酸基タイプ(水に可溶)、四級アンモニウム塩基/リン酸酸基タイプ(水に不溶)、四級アンモニウム塩基/カルボキシル基タイプの名称と入手先を示したものである。
【0183】
【表1】

【0184】
【表2】

【0185】
【表3】

【0186】
【表4】

【0187】
次に、「水溶性高分子(擬似ミセルタイプ)」とは、重量平均分子量が1万〜5千万(好適には1万〜5百万)であるものをいう。ここで、重量平均分子量は、プルランを標準としたゲル濾過高速液体クロマトグラフィーにより測定した値に基づくものである。
【0188】
上記の水溶性高分子は、上記の分子量を有するものである限り特に限定されず、例えば、各種の植物性界面活性剤、水溶性多糖類、例えば、アルギン酸類、例えば、アルギン酸、プロピレングリコールアルギネート、アラビアンゴム、キサンタンガム、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、水溶性セルロース類、例えば、酢酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン、キチン;水溶性タンパク質、例えば、ゼラチン、コラーゲン;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー;DNAから選ばれる化合物を挙げることができる。
【0189】
ここで、アルギン酸類及び水溶性セルロース類における「類」とは、アルギン酸やセルロースと基本骨格を共通にしており、かつ、水溶性を示すこれらの誘導体(例えば、塩、エステル、エーテル)を指す。
【0190】
次に、本最良形態におけるCNT水溶液につき説明する。水溶液中の界面活性剤の含有量に関しては、ミセルタイプの場合、界面活性剤の含有量は、小胞体を形成する臨界ミセル濃度以上である必要がある。通常、粗生成物1g用の水溶液1リットル当たり、0.2〜10mmolである。また、擬似ミセルタイプの場合、水溶性高分子の含有量は特に限定されないが、通常、粗生成物1g用の水溶液1リットル当たり、5〜50gである。また、可溶化条件に関しては、ミセルタイプの場合は、ナノカーボン(例えばカーボンナノチューブ)を完全に溶解させるため、例えば、最初に超音波で5分程度ほぐす。その後、室温だと6時間程度、60℃に加温すると数分程度で完全に溶解する。また、擬似ミセルタイプの場合は、例えば、ホモジナイザーで、擬似ミセル形成物質(例えば、アルギン酸ナトリウム)、透過剤(例えば、水酸化リチウム)、酸化剤(例えば、過硫酸ナトリウム)、ナノカーボン及び脱イオン水を含む混合物を十分に拡散分散させた後、40℃で、一日程度、静置する。尚、透過剤や酸化剤を用いない場合には、例えば、40℃で1週間程度、静置する。
【0191】
次に、本最良形態における架橋剤につき説明する。本最良形態においては、界面活性剤が架橋基を有する。例えば、アルギン酸類は、分子中にカルボン酸基を有し、このカルボン酸基が多価陽イオンとキレート構造を形成することにより架橋しゲルを形成する。ここで、多価の陽イオンとは、二価以上の陽イオンを意味し、好適には、二価以上の金属イオン、より好適には二価の金属イオン、例えば、バリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉛イオン、銅イオン、ストロンチウムイオン、カドミウムイオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオン、鉄イオンを挙げることができる。尚、多価イオンがゲル化を引き起こす傾向は、バリウム<鉛<銅<ストロンチウム<カドミウム<カルシウム<亜鉛<ニッケル<コバルト<マンガン<鉄<マグネシウムの順であると報告されている。尚、イオン交換は一段的には交換イオンの原子価の増大と共に増大する。したがって、アルギン酸類(例えば、アルギン酸ナトリウム)の水溶液に多価の陽イオン(例えば、バリウムイオン)を含む水溶液を添加すれば、速やかにイオン交換が生じ、アルギン酸と多価の陽イオンとのゲルが生成する。
【0192】
以下では、最良形態の中でもより好適な二種類の界面活性剤につき詳述する。第一の形態は界面活性剤(+ゲル化材料)としてアルギン酸を用いた、ビーズ状及びファイバー状ゲルである。第二の形態は界面活性剤(+ゲル化材料)としてメチルセルロースを用いた、膜状ゲルである。
【0193】
第一の形態は、内層と外層の二重構造を採っており、該内層がカーボンナノチューブ水溶液であり、該外層が網目構造中にカーボンナノチューブを包接するハイドロゲルである、ビーズ状・ファイバー状ゲルである。以下、本最良形態を詳述する。
【0194】
まず、内層に存在するカーボンナノチューブ水溶液につき説明する。当該水溶液は、カーボンナノチューブとこれの分散剤としての界面活性剤を含む。以下、夫々につき詳述する。
【0195】
本最良形態で使用可能なカーボンナノチューブは、特に限定されず、いかなる合成方法、例えば、電気放電法(C.Journet et al., Nature 388, 756(1997)及びD.S.
Bethune et al., Nature 363, 605(1993))、レーザー蒸着法(R.E.Smally
et al., Science 273, 483(1996))、気相合成法(R.Andrews et al.,
Chem. Phys. Lett.,303,468, 1999)、熱化学気相蒸着法(W.Z.Li et
al., Science, 274, 1701(1996)、Shinohara et al.,
Jpn.J.Appl.Phys. 37, 1257(1998))、プラズマ化学気相蒸着法(Z.F.Ren et
al., Science, 282,1105(1998))等により製造されたものでもよい。
【0196】
尚、合成に際し金属触媒が用いられた粗生成物に関しては、酸で処理して金属触媒を除去することが好適である。酸処理に関しては、例えば、特開2001−26410記載のように、酸水溶液としては硝酸溶液または塩酸溶液を用い、例えば、硝酸溶液は50倍の水に希釈された溶液を、塩酸溶液も50倍の水に希釈された溶液を使用する手法を挙げることができる。そして、このように酸処理した後、洗浄し、フィルタリングし、カーボンナノチューブ水溶液とする。
【0197】
本形態で使用可能な界面活性剤は、上記のミセルタイプ及び擬似ミセルタイプであるが、特に好適なものはアルギン酸類である。該水溶液中のアルギン酸類の好適な含有量は、特に限定されないが、通常、粗生成物1g用の水溶液1リットル当たり、5〜50gである。
【0198】
更に、本形態で使用可能なカーボンナノチューブ水溶液は、当初においては、カーボンナノチューブ透過性物質及び酸化剤を更に含有し、かつ、アルカリ性水溶液の形態にあることが好適である。ここで、「当初においては」とは、最終的にビーズ状又はファイバー状になった際にはこれら成分や状態は必須でないことを意味する。即ち、これら成分や状態は、カーボンナノチューブ源として上記粗生成物を使用した場合に系内に存在する不必要な成分を除去するために添加・調整されるからである。以下、これらにつき説明する。
【0199】
まず、「ナノカーボン透過性物質」とは、カーボンナノチューブのC−C格子サイズより小さい直径を有する物質を意味する。例えば、このような直径(イオン径)を有するナノチューブ透過性カチオン、具体的には、リチウムイオンを挙げることができる。但し、水素イオンは、格子サイズより小さいが、オキソニウムイオンの形で水に奪われてしまうため、カーボンナノチューブ透過性カチオンとしては不適切である。尚、カーボンナノチューブ透過性物質の役割は現時点では解明されていないが、例えば、カーボンナノチューブ透過性カチオンの場合には、カーボンナノチューブ内に入り込むことにより、カーボンナノチューブ内部の電荷状態を変えると共に、カーボンナノチューブ内部の表面及び内部の不純物を押し出す役割を担うと推察される。このカーボンナノチューブ透過性物質の含有量は、カーボンナノチューブ粗生成物1g用水溶液の場合、水溶液1リットル当たり、好適には0.1〜1molである。
【0200】
次に、酸化剤について説明する。使用可能な酸化剤は、特に限定されないが、過硫酸塩(液中では過硫酸イオン)が好適である。その理由は、過硫酸塩が、アルカリ性で活性が高いことに加え、酸化した後自身は硫酸になるので、後処理が容易であるからである。
【0201】
次に、pHについて説明する。pHは、6〜14の範囲であることが好適である(好適にはアルカリ性)。液がこの範囲であることが好適である理由は定かでないが、ナノカーボンの表面の電子状態を変えることに加え、カーボンナノチューブの場合には、カーボンの表面を柔らかくし、カーボンナノチューブを折り畳む役割を担っていると推察される。尚、ミセルタイプの場合は、10〜14の範囲、擬似ミセルタイプの場合は、6〜12の範囲が好適である。
【0202】
更には、別の理由からもpHを当初はアルカリ性に保つことは重要である。カーボンナノチューブの可溶化剤であるアルギン酸は、中性、酸性領域では水に不溶であるが、アルカリ性下では高粘性の水溶液となる。そのため、カーボンナノチューブ水溶液中により多くのアルギン酸を含有させる必要がある場合には、液性としてはアルカリ性が好適である。
【0203】
尚、用途によっては、カーボンナノチューブの製造の際の残渣である金属や他の不純物、そして、これらを除去するためのカーボンナノチューブ透過性物質、酸化剤、酸化剤の還元物が残存していたり、pHがアルカリ性であってもよい場合もあるので、これらの場合には、最終的な製品であるビーズ状又はファイバー状のゲル中のカーボンナノチューブ水溶液は、前記成分等がそのまま残存していてもpHがアルカリ性であってもよい。
【0204】
次に、外層である、網目構造中にカーボンナノチューブを包接するハイドロゲルにつき説明する。当該網目構造は、水とカーボンナノチューブを包接する限り特に限定されないが、製造の容易さや内層中のカーボンナノチューブ水溶液との親和性等の観点から、内層中のカーボンナノチューブ水溶液の可溶化剤を架橋させたものであることが好適である。具体的な好適例は、アルギン酸の架橋物である。この場合、架橋はキレート架橋であることが好適であり、キレート架橋の架橋剤としては、多価の陽イオン(例えば、バリウムイオン、カルシウムイオン)を挙げることができる。
【0205】
外層のハイドロゲルは、カーボンナノチューブを含有していることが好適である。但し、外層にカーボンナノチューブが包接されていなくとも、ハイドロゲルは浸透性に優れているので、例えば、本最良形態に係るビーズ状ゲルが吸着剤として用いられる場合には、外部に存在する物質は、ハイドロゲルの前記性質により、内部(内層)に浸透し、内層のカーボンナノチューブに吸着される。
【0206】
以上の二層構造のビーズ状・ファイバー状ゲルは、以下のような手順で製造され得る。まず、前記ゲル化材料(アルギン酸)のゲル化剤(二価金属イオン、例えば、バリウムイオン)を含有する水溶液を準備する。この際、ゲル化剤は、例えば、使用するアルギン酸の架橋基がすべて架橋しうるに十分な濃度に設定する。そして、前記のカーボンナノチューブ水溶液を、例えば、薬剤を製造する際に用いる滴下装置や注射器等を用い、該ゲル化剤水溶液に滴下又は流下させる。すると、ゲル化剤水溶液と接触したカーボンナノチューブ水溶液部分はただちに架橋反応を起こしゲル化し、接触しなかったカーボンナノチューブ水溶液を閉じ込めた、ビーズ状又はファイバー状ゲルが得られる。
【0207】
次に、第二の形態である、カーボンナノチューブを網目構造内に包接した膜状ゲルの乾燥物(乾燥ゲル、樹脂、乾燥シート状物)につき説明する。尚、使用可能なカーボンナノチューブ等に関しては第一の形態と同じなので、重複部分の説明は省略する。
【0208】
膜状ゲルを構成する擬似ミセルタイプの界面活性剤は、膜状乾燥ゲルという薄い形状でも十分な強度を担保するという観点から、水溶性セルロース類、例えば、ヒドロキシメチルセルロースやメチルセルロースが好適である。また、架橋は、キレート架橋や水素結合架橋が好適であり、例えばゲル化材料としてメチルセルロースを用いた場合、架橋剤としては多価の陽イオン(例えば、バリウムイオン)が好適である。
【0209】
本形態の乾燥ゲルは、前記ゲルを乾燥させたものである。ここで、乾燥の程度(溶媒含有率)は限定されないが、例えば、エアフィルタの用途で用いる場合には、溶媒含有率が低い方が好適である。また、厚さに関しても、用途との関係で変動するが、前記用途の場合であれば、典型的には、0.1〜3mm程度である。
【0210】
以上の膜状乾燥ゲルは、以下のような手順で製造され得る。まず、前記ゲル化材料(メチルセルロース)のゲル化剤(二価金属イオン、例えば、バリウムイオン)を含有する水溶液を準備する。この際、ゲル化剤は、例えば、使用するメチルセルロースの架橋基がすべて架橋しうるに十分な濃度に設定する。そして、メチルセルロースを含有するカーボンナノチューブ溶液を板上に適用し、コーターで膜状にした後に、該膜状溶液を乾燥させる。次いで、該膜状乾燥物に前記ゲル化剤水溶液をまんべんなく塗布すると、該乾燥物は該水溶液を吸収すると同時に架橋反応を起こし、カーボンナノチューブを包接したメチルセルロースハイドロゲルが得られる。その後、該ゲルを周知方法で乾燥させることにより、前記の膜状乾燥ゲルが得られる。
【0211】
第二の最良形態
以下、第二の最良形態について詳述する。尚、以下の説明においては、カーボンナノチューブが均一に分散した複合材料の製造用カーボンナノチューブ分散液(以下、「複合材料製造用分散液」という。)をまず説明し、その中で、当該分散液の中で新規なものを特に詳述する。次いで、当該複合材料製造用分散液の使用方法(換言すれば「カーボンナノチューブが均一に分散した複合材料」の製造方法)を説明し、最後に当該複合材料について説明する。
【0212】
複合材料製造用分散液は、カーボンナノチューブ分散剤によりカーボンナノチューブを分散させた液体媒体である。
【0213】
ここで、使用可能なCNTは、特に限定されず、いかなる合成方法、例えば、電気放電法(C.Journet et
al., Nature 388, 756(1997)及びD.S. Bethune et al., Nature
363, 605(1993))、レーザー蒸着法(R.E.Smally et al., Science 273,
483(1996))、気相合成法(R.Andrews et al., Chem. Phys. Lett., 303,
468, 1999)、熱化学気相蒸着法(W.Z.Li et al., Science, 274,
1701(1996)、Shinohara et al., Jpn.J.Appl.Phys. 37,
1257(1998))、プラズマ化学気相蒸着法(Z.F.Ren et al., Science, 282, 1105(1998))等により製造されたものでもよい。
【0214】
尚、合成に際し金属触媒が用いられた粗生成物に関しては、酸で処理して金属触媒を除去することが好適である。酸処理に関しては、例えば、特開2001−26410記載のように、酸水溶液としては硝酸溶液または塩酸溶液を用い、例えば、硝酸溶液は50倍の水に希釈された溶液を、塩酸溶液も50倍の水に希釈された溶液を使用する手法を挙げることができる。そして、このように酸処理した後、洗浄し、フィルタリングし、金属触媒を実質的に含まないCNTを得る。
【0215】
次に、液体媒体は、用途に応じて選択することになる。例えば、非水系液体媒体としては、脂肪族又は芳香族炭化水素類、例えば、炭素数が5〜12の脂肪族又は芳香族炭化水素類、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンを挙げることができる。尚、単独使用の他、2種以上の混合物として使用してもよい。また、例えば、水系液体媒体としては、水、水混和性の有機溶媒、又はこれらの混合溶媒が挙げられる。水混和性の有機溶媒とは、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、各種カルボニル化合物、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチルが挙げられる。
【0216】
液体媒体として非水系液体媒体を選択した場合、好適なCNT分散剤は、フラーレンである。非水系液体媒体中では、2個のCNTの開口部にフラーレンが挟まる構造が確認されている。このような構造を採ることにより、CNTが液内で安定に分散することを可能としていると考えられる。尚、フラーレンの添加量は、添加するCNTの全重量に対して、15〜30%であることが好適である。
【0217】
液体媒体として水系液体媒体を選択した場合、第一の好適なCNT分散剤は、前記液体媒体中で直径が50〜2000nmの球状ミセルを形成しうる界面活性剤又は重量平均分子量が1万〜5千万である水溶性高分子である。この大きさの球状ミセル(小胞体)が好適である理由は定かでないが、現時点では、以下のような理由ではないかと推察している。例えば、CNTの場合、その長さは、通常、100〜1000nmの範囲にある。そして、該界面活性剤(ミセルタイプ)水溶液中では、CNTは、数分の一程度(例えば四分の一程度)の長さに折り畳まれ、その結果、溶液中では数十nm〜数百nmの長さになる。恐らく、上記のサイズが、この折り畳まれたCNTを小胞体内に収納するのに丁度良く、結果、CNTを効率的に可溶化できるためと理解される。
【0218】
界面活性剤の種類は、上記の特性を有するものである限り特に限定されず、例えば、リン脂質系界面活性剤及び非リン脂質系活性剤のいずれも用い得る。
【0219】
ここで、「リン脂質系界面活性剤」とは、リン酸基を官能基とする陰イオン性界面活性剤・両性イオン界面活性剤であり、リン脂質(グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質の両方を含む)及び改質リン脂質(例えば、水素添加リン脂質、リゾリン脂質、酵素変換リン脂質、リゾホスファチジルグリセロール、他の物質との複合体)のいずれでもよい。このようなリン脂質は、生物を構成する細胞の種々の膜系、例えば原形質膜、核膜、小胞体膜、ミトコンドリア膜、ゴルジ体膜、リソソーム膜、葉緑体膜、細菌細胞膜に存在し、好適には、リポソームの調製に用いられるリン脂質が好適である。具体的には、例えば、ホスファチジルコリン{例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトリルホスファチジルコリン(DPPC)}、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリンを挙げることができる。
【0220】
また、「非リン脂質系界面活性剤」とは、リン酸基を官能基として含まない非イオン型界面活性剤・両性イオン型界面活性剤であり、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミノ] −2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(CHAPSO)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミノ]−プロパンスルホン酸(CHAP)及びN,N−ビス(3−D−グルコナミドプロピル)−コラミドを挙げることができる。
【0221】
更に、水溶性高分子としては、例えば、各種の植物性界面活性剤、水溶性多糖類、例えば、アルギン酸類、例えば、アルギン酸、プロピレングリコールアルギネート、アラビアンゴム、キサンタンガム、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、水溶性セルロース類、例えば、酢酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン、キチン;水溶性タンパク質、例えば、ゼラチン、コラーゲン;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー;DNAから選ばれる化合物を挙げることができる。
【0222】
ここで、アルギン酸類及び水溶性セルロース類における「類」とは、アルギン酸やセル ロースと基本骨格を共通にしており、かつ、水溶性を示すこれらの誘導体(例えば、塩、エステル、エーテル)を指す。
【0223】
尚、水溶液中の界面活性剤の含有量に関しては、ミセルタイプの場合、界面活性剤の含有量は、小胞体を形成する臨界ミセル濃度以上である必要がある。通常、粗生成物1g用の水溶液1リットル当たり、0.2〜10mmolである。また、擬似ミセルタイプの場合、水溶性高分子の含有量は特に限定されないが、通常、粗生成物1g用の水溶液1リットル当たり、5〜50gである。また、可溶化条件に関しては、ミセルタイプの場合は、CNTを完全に溶解させるため、例えば、最初に超音波で5分程度ほぐす。その後、室温だと6時間程度、60℃に加温すると数分程度で完全に溶解する。また、擬似ミセルタイプの場合は、例えば、ホモジナイザーで、擬似ミセル形成物質(例えば、アルギン酸ナトリウム)、透過剤(例えば、水酸化リチウム)、酸化剤(例えば、過硫酸ナトリウム)、CNT及び脱イオン水を含む混合物を十分に拡散分散させた後、40℃で、一日程度、静置する。尚、透過剤や酸化剤を用いない場合には、例えば、40℃で1週間程度、静置する。
【0224】
第一の好適なCNT分散剤の内、特に好適なものはアルギン酸類である。該分散液中のアルギン酸類の好適な含有量は、特に限定されないが、通常、粗生成物1g用の水溶液1リットル当たり、5〜50gである。
【0225】
更に、ミセルタイプのCNT分散液は、CNT透過性物質及び酸化剤を更に含有し、かつ、アルカリ性水溶液の形態にあることが好適である。ここで、「CNT透過性物質」とは、CNTのC−C格子サイズより小さい直径を有する物質を意味する。例えば、このような直径(イオン径)を有するCNT透過性カチオン、具体的には、リチウムイオンを挙げることができる。但し、水素イオンは、格子サイズより小さいが、オキソニウムイオンの形で水に奪われてしまうため、CNT透過性カチオンとしては不適切である。尚、CNT透過性物質の役割は現時点では解明されていないが、例えば、CNT透過性カチオンの場合には、CNT内に入り込むことにより、CNT内部の電荷状態を変えると共に、CNT内部の表面及び内部の不純物を押し出す役割を担うと推察される。このCNT透過性物質の含有量は、CNT粗生成物1g用水溶液の場合、水溶液1リットル当たり、好適には0.1〜1molである。また、使用可能な酸化剤は、特に限定されないが、過硫酸塩(液中では過硫酸イオン)が好適である。その理由は、過硫酸塩が、アルカリ性で活性が高いことに加え、酸化した後自身は硫酸になるので、後処理が容易であるからである。更に、pHは、6〜14の範囲であることが好適である(好適にはアルカリ性)。液がこの範囲であることが好適である理由は定かでないが、CNT表面の電子状態を変えることに加え、CNT表面を柔らかくし、CNTを折り畳む役割を担っていると推察される。尚、ミセルタイプの場合は、10〜14の範囲、擬似ミセルタイプの場合は、6〜12の範囲が好適である。加えて、別の理由からもpHを当初はアルカリ性に保つことは重要である。CNT分散剤であるアルギン酸は、中性、酸性領域では水に不溶であるが、アルカリ性下では高粘性の水溶液となる。そのため、CNT水溶液中により多くのアルギン酸を含有させる必要がある場合には、液性としてはアルカリ性が好適である。
【0226】
液体媒体として水系液体媒体を選択した場合、第二の好適なCNT分散剤は、サイクロデキストリンとフラーレンである。ここで、使用可能なサイクロデキストリンは、グルコース残基の数が6個のα型、7個のβ型、8個のγ型のサイクロデキストリンのいずれでもよく、その他、マルトシルサイクロデキストリン、ジメチルサイクロデキストリンの如き分岐サイクロデキストリンや修飾サイクロデキストリン、又はサイクロデキストリンポリマー等も使用可能である。これらの分散剤によりCNTが可溶化するメカニズムは、まず、サイクロデキストリンが疎水性のフラーレンを包接し、次に、当該包接体の表面のフラーレン(疎水性)がCNT(疎水性)と親和力に基づき結合しているためと考えられる。尚、サイクロデキストリンの添加量は、添加するCNTの全重量に対して、150〜300%であることが好適であり、フラーレンの添加量は、添加するCNTの全重量に対して、15〜30%であることが好適である。
【0227】
次に、複合材料製造用分散液の使用方法(換言すれば「カーボンナノチューブが均一に分散した複合材料」の製造方法)を説明する。大別して3種類の使用方法を挙げることができる。まず、第一の方法が、当該複合材料製造用分散液に、複合材料の原料モノマーを分散させ、次に、前記原料モノマーを周知方法で重合(場合により架橋も)し、最後に、液体媒体を除去する方法である。当該方法は、フィルムや成型体状の複合材料を製造する際に好適である。
【0228】
第二の方法が、複合材料製造用分散液に原料ポリマーを分散させた後、前記液体媒体を除去する方法である。当該方法は、フィルムや成型体状の複合材料を製造する際に好適である。
【0229】
第三の方法が、複合材料製造用分散液に原料を浸漬し、前記原料を解きほぐした後、前記液体媒体を除去する方法である。ここで、原料を解きほぐす手法としては、例えば、加熱処理や超音波処理を挙げることができる。当該方法は、繊維状の複合材料を製造する際に好適である。
【0230】
最後に、カーボンナノチューブが均一に分散した複合材料について説明する。当該複合材料は、各種用途で利用し得る。例えば、吸着材料を挙げることができる。ここで、吸着の対象となる物質は特に限定されず、液或いはガスに含まれているいずれの物質であってもよい。例えば、液相処理の場合には、石油留分(溶剤、燃料油、潤滑油、ワックス)脱色、脱水または脱ガム、上水からの悪臭、不快な味および色の除去、動植物油の脱色、粗製糖みつの脱色、飲料および薬用飲料の清澄化、発酵液からのビタミンなどの生産物の回収、水質汚染防止のためのプロセス排水の浄化(イオン交換を含む)、プロセス用水からの塩または灰分の除去(イオン交換、イオン遅滞、イオン排除による脱イオンを含む)、脂肪族炭化水素から芳香族炭化水素の分離、気相処理の場合には、塗料の乾燥、新聞印刷、衣服のドライクリーニングあるいはレーヨン紡糸のような蒸発プロセスから排出される空気からの溶媒回収、ガスの脱水(パッケージ内乾燥を含む)、大気汚染防止のために換気系内あるいは排ガスからの悪臭除去および毒性ガスの除去、低温における希ガス(クリプトン、キセノン)の分離、深冷分離への原料空気からの不純物の除去、都市の照明灯用ガスからの悪臭除去、低分子量の炭化水素ガスの気相分離(還流を伴う吸着あるいは深冷分離に対する代替)で問題となる物質の吸着を挙げることができる。特に、液体、気体、ガス中の汚染物質・有害物質吸着用材料として有用である。ここで、例えば、前記汚染物質・有害物質としては、塩化水素、塩化ビニル、水酸化ナトリウム、テトラクロロエチレン(溶剤)、BDBPP化合物(防炎加工剤)、トリブチル錫化合物(防菌・防かび剤)、ホルムアルデヒド(樹脂加工剤)、有機水銀化合物(防菌・防かび剤)、ディルドリン(防虫加工剤)、硫酸(洗浄剤)、DTTB(防虫加工剤)、水酸化カリウム(洗浄剤)、トリクロロエチレン(溶剤)、APO(防炎加工剤)、TDBPP、メタノール(溶剤)、トリフェニル錫化合物等を挙げることができる。更には、工業用水・飲料用水濾過機器用、純水装置用、各種クロマトグラフィー用、発癌物質等の人体有害物質吸着装置用、空気清浄機用、排気ガス浄化装置用の吸着性材料として有用である。更には、導電材料としても有用である。例えば、エレクトロニクス分野、電気製品、機械部品、車輌等の各種部品等を挙げることができる。特に、耐熱性を備えたゲルと組み合わせて用いた場合、好適な一例として、燃料電池セパレーター用素材を挙げることができる。更には、強化複合材料としても有用である。例えば、強化繊維、特に耐熱・強化繊維に利用することが有用である。
【0231】
第三の最良形態
以下、第三の最良形態について詳述する。尚、以下の説明においては、カーボンナノチューブが均一に分散した物品の製造用カーボンナノチューブ分散物をまず説明し、次に当該物品製造用CNT分散物の使用方法(換言すれば「カーボンナノチューブが均一に分散した物品」の製造方法)を説明する。
【0232】
まず、物品製造用CNT分散物は、対象物表面にCNTが均一に分散したものである。ここで、対象物とは、前記のように、所定条件でCNTを遊離可能な素材であれば特に限定されない。
【0233】
【表5】

【0234】
次に、本微小カーボン分散物の製造方法について説明する。まず、前記微小カーボン分散液体媒体に前記対象物を添加する。次に、前記液体媒体側から前記対象物側に前記微小カーボンを移動させる誘発型相間移動処理を行なうことにより製造可能である。
【0235】
次に、本微小カーボン分散物の使用方法について、アラミド繊維の製造方法を例にとり説明する。まず、アラミド繊維の製造工程において、アラミド繊維原料を濃硫酸に溶解する処理があるので、当該濃硫酸中で溶解することにより当該液中にCNTを均一分散させるような対象物の材料を選択する必要がある。このような対象物としては、極細繊維や高級パラフィンを用いることが好適である。そして、前記アラミド繊維原料が溶解した濃硫酸に、CNTが均一分散した対象物を投入すると、当該対象物が溶解してCNTが濃硫酸中に分散する。このような状態から、既知手法で繊維を製造すると、CNTが均一分散したアラミド繊維を得ることができる。
【0236】
以下に本発明の実施例を示して、更に具体的に説明する。尚、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0237】
CNF合成
本実施例に係るカーボンナノファイバー(CNF)を、化学蒸着法(CVD)を使用することにより、以下の手順で合成した{N.M. Rodriguez, J. Mater. Res., 8, 3233(1996)}。粉末Ni触媒をAl23プレートに載せたのち、このNi/Al23プレートを、水平管炉中に配置した石英管に入れ、10%水素/ヘリウム蒸気中873Kで約2時間還元した。CNFの成長は、大気圧下873Kでの4時間の反応で、エチレンの分解(C24/H2=4:1)によって達成した。金属触媒を溶解させるため、熱CVD生成物であるすすを、フラスコに取り付けた環流中、373Kで約12時間、6.0M HClで処理した。高圧小胞押出し機を使用して、懸濁液を孔径0.1μmの重ね合わせた2枚のポリカーボネートフィルターに通した。固形ケークを脱イオン水で徹底的に洗浄したのち、333Kで少なくとも24時間乾燥させた。得られたCNFの純度は90%を超えることがわかった。直径及び長さはそれぞれ50〜300nm及び2〜15μmの範囲であった。図1は、得られたCNFのSEM画像(図1A)及びTEM画像(図1B)を示す。002面が繊維軸方向に積み重なっている小板状のCNFならびに002面が両側で繊維軸に対して斜めに分布しているヘリンボン状のCNFが認められた。
【0238】
CNF/アルギン酸コロイド水溶液の調製
本実施例に係るアルギン酸ナトリウム(アルギン酸ナトリウム20mg/mlを含有する20℃の水溶液の粘度及びpHはそれぞれ300〜400cP及び6.0〜8.0である)は、Wako Chemical Industries(大阪)から得た。アルギン酸ナトリウム(Na−ALG)を脱イオン水に溶解してNa−ALG水溶液を調製した。CNFをNa−ALG水溶液に加えたのち、高せん断混合と十分な超音波処理との組み合わせによって十分に混合した。CNF/Na−ALGコロイド水溶液を4000rpmで30分間遠心分離し、水溶液から分離するごく少量の黒い沈殿物をコロイド水溶液から取り出した。図2は、0.5mg/ml CNF及び20mg/ml Na−ALGを含有するCNF/Na−ALGコロイド水溶液を入れた100mlバイアルの写真を示す。3週間の観察期間中、このコロイド水溶液からの沈殿は認められなかった。20mg/mlアルギン酸ナトリウムを含有する水溶液を分散溶液として使用することにより、CNF濃度1.0mg/mlまでの均一性の高いCNF/アルギン酸コロイド水溶液を得ることができた。
【0239】
均一性/安定性試験
UV−visを検出系として使用してCNF/Na−ALGコロイド溶液中のCNFの検量線の直線性を計算することにより、CNF/Na−ALGコロイド水溶液の均一性を計測した。主にCNF分散系に由来する特徴的な吸収が220〜500nmの波長範囲付近で見られる(図3)。260nmでのCNF/Na−ALGコロイド水溶液中のCNFの検量線の直線性r2は0.9989よりも高いことが見いだされ、CNF/Na−ALGコロイド溶液の高い均一性を示すものである。検量線を導出するのに使用したサンプルは、各サンプル中のNa−ALGの濃度を20mg/mlで固定した状態でCNFをそれぞれ0、0.1、0.2、0.3、0.4及び0.5mg/ml含有するNa−ALG水溶液であった。Jiangらによって報告されているもの[L. Jiang, L. Gao, J.
Sun, J. Colloid and Interface Sci., 260, 89 (2003)]と同様な方法で沈降時間に対するCNF濃度を計算することにより、CNF/Na−ALGコロイドの安定性を計測した。CNF濃度の変化は、室温で3週間の長期計測でも0.4%未満であることがわかった。CNF/Na−ALGコロイドのゼータ電位が、コロイド溶液の安定性を決定する他の不可欠なパラメータである。0.5mg/ml CNF及び20mg/ml Na−ALGを含有するCNF/Na−ALGコロイド溶液を調製し、電気泳動光散乱分光光度計(ELS-8000、Otsuka Electronics)をゼータ電位計測に使用して分析した。ゼータ電位値ζは、ヘルムホルツ−スモルコフスキー式ζ=4πμη/D(ただし、μ、η及びDは、それぞれ境界層の電気泳動易動度、粘度及び誘電率を表す)に基づいて粒子速度から計算される[H.E. Ries, Nature (London), 226,72 (1970)]。ζ対pHのプロット(図4)から見てとれるように、CNF/Na−ALGコロイドの最大ζ値は−58.03mVであることが見いだされ、これもまた、CNF/Na−ALGコロイドの高い安定性(反発力)を示している。CNF/Na−ALGコロイドのζ対pHプロット(図4)と、Na−ALG(20mg/ml)のみを含有する水溶液のζ対pHプロットとは実質的に同一であり、CNF/Na−ALGコロイドのゼータ電位がアルギン酸イオンによって決定されることを示すものであった。両サンプルに関して、すべてのpH値試験でζの絶対値の低下はpHの低下として見られる(サンプルのpHは、1.0M HClを使用して調節した)。これは、全pH範囲を通じてアルギン酸分子がCNFによって吸着されたことを暗示する。アルギン酸イオン(主にCNFの表面に吸着される)のカルボキシル基の間で発生する静電反発力が、CNFの間で発生するファンデルワールス引力を弱め、その結果、CNF/Na−ALGコロイドが高度に安定化される。
【0240】
FT−IRスペクトルのシフト
アルギン酸は、β−D−マンヌロン酸(M)とα−L−グルロン酸(G)との直鎖状の水溶性1,4−結合コポリマーである。M及びGは、図5に示すように、ホモポリマー[ポリ(β−D−マンノシルロネート)、M−M−M)]及びポリ(α−L−グロシルロネート、G−G−G)ブロックに配列することもできるし、ヘテロポリマー(M−G−M)ブロックに配列することもできる[N.P. Chandia, B. Matushiro, A.E.Vasquez, Carbohydrate Polymers, 46,
81 (2001)]。水溶液中のアルギン酸/CNF複合体の形成の機構を解明しようとして、アルギン酸(基準サンプル)及びCNF/アルギン酸複合体のFT−IRスペクトルを計測した。アルギン酸に典型的な特性バンドは、(i)1627及び1419cm-1(カルボン酸に典型的な特性バンド)、(ii)808cm-1(マンヌロン酸の特性バンド)及び/又は787cm-1(グルロン酸の特性バンド)、(iii)940cm-1(α1→4結合の特性バンド)ならびに(iv)904cm-1(α−L−グロピラヌロン環の特性バンド)である[N.P. Chandia, B. Matushiro, A.E.Vasquez, Carbohydrate Polymers, 46,
81 (2001)、H. Ronghua, D. Yumin, Y. Jianhong,
Carbohydrate Polymers, 52, 19 (2003)]。CNF/Na−ALGサンプルのアルギン酸のカルボン酸の特性バンドは、基準アルギン酸サンプルにおける1627.63及び1419.35cm-1から、CNF/アルギン酸Naサンプルにおける1613.16及び1413.57cm-1にそれぞれシフトする。CNF/Na−ALGサンプルのアルギン酸のα1→4結合の特性バンド及びα−L−グロピラヌロン環の特性バンドは、基準アルギン酸サンプルにおける947.84及び890.95cm-1から、CNF/アルギン酸Naサンプルにおける943.98及び887.8cm-1にそれぞれシフトする。CNF/Na−ALGサンプルの特性バンドにおけるこれらのシフトは、アルギン酸がCNFと相互作用している徴候である。他方、CNF/Na−ALGサンプルのマンヌロン酸の特性バンドは、基準アルギン酸サンプルにおける811.88cm-1から814.77cm-1にシフトする。マンヌロン酸バンドにおけるこの増大は、アルギン酸の糖骨格がアルギン酸/CNF複合体の形成を支配する要の部位であることを示唆する徴候である。また、グルロン酸の特性バンド(同じく約3cm-1増大)が認められ、この研究に使用されたアルギン酸がM及びGの両単位によって構築されることを示した。
【0241】
生体適合性研究
正常なヒト繊維芽細胞(HF)を典型的な細胞として使用し、BioWhitteker社から入手した。MTS細胞増殖検定キットは、Promegaから購入したものであった。ダルベッコ修飾イーグル最低必須培地(D−MEM)、L−グルタミン及びウシ胎児血清(FBS)は、Sigmaから購入したものであった。CNF1.0mg/ml及びNa−ALG20mg/mlを含有するCNF/Na−ALGコロイド水溶液を、5%FBS及び50μg/mlカナマイシンを含有するD−MEMで1/10、1/100及び1/1000に希釈した。また、Na−ALG(20mg/ml)のみを含有する水溶液(対照媒体)をCNF/Na−ALGの場合と同じ培地で同じ程度に希釈した。HFを96マルチウェルプレートに2×310個/ウェルで播種し、10%FBS及び50μg/mlカナマイシンを含有する200μl D−MEM中、37℃で3日間維持した。CNF/Na−ALG又は対照媒体を含有する培地に交換し、HFを37℃で1〜7日間さらにインキュベートした。インキュベーション後、細胞増殖をMTS検定によって評価した。MTS検定のために、333μg/ml MTS及び25μMフェナジンメトスルフェート溶液を含有する100μl イーグル最小必須培地(フェノールレッドなし)に交換した。37℃で2時間インキュベートしたのち、各ウェルの485nmでの吸光度を計測した。MTS処理の2時間後にA485の値から細胞増殖を計算した。処理された細胞の平均値を非処理細胞(5%FBSで培養)の平均値で割ることにより、相対細胞増殖率(RCG、%)を計算した。CNF及び/又はNa−ALGを含有する培地でインキュベートされた細胞のRCGは、投与の1日後及び2日後で100%±5%であった。投与の7日後でさえ、RCGは85%を超えていた。
【0242】
8週齢のオスJcl:SDラットをClea Japan社から購入した。これらのラットを6日間隔離し、気候順応させた。1匹は投与なしに使用し、他のラットには胃管を使用して経口的に単回投与した。用量値は、体重1kgあたり、CNFが10mgであり、Na−ALGが200mgであった。肉眼的観察結果及び体重を週1回記録した。観察の最後に、ラットを16時間飢えさせ、麻酔を施したのち、血液及び血清サンプルを採取した。また、腺胃の変化を観察するため、剖検を実施した。投与の1〜2週間後で、白血球(WBC)が、非処置ラットにおける5100から、媒体対照を与えられたラットにおける7700及び8100に増大していた。CNF/Na−ALGコロイドを与えられたラットに関しても同様な状況(WBCが5100から7900及び8400に増大)が認められた。β−グロブリン分画は、非処置ラットにおける16.2%からNa−ALG及びCNF/Na−ALGで処置されたラットにおける21.7%及び21.5%に増大していた。投与の1週間後で、Na−ALG及び/又はCNF/Na−ALGを与えられたラットに関して腺胃の深いひだが認められた。他のパラメータの変化は認められなかった(偏差<10%)。投与後3週間で、すべての血液学的及び生化学的データは正常値に復帰した。
インビトロ及びインビボの両実験は、アルギン酸ナトリウム及びCNF/Na−ALGコロイド水溶液がこの実験で研究された細胞/動物に対して有害な影響をほとんど又は全く及ぼさないという事実を示す。
【0243】
高分散CNFを含有するBa2+−アルギン酸コーティングされた小胞の大規模製造
CNF/Na−ALGコロイド溶液を使用して、封入法により、高分散CNFを含有するBa2+−アルギン酸コーティングされた小胞を製造した。封入機器Encapsulator Research IER-20は、InoTechから購入したものである。(i)アルギン酸ナトリウムのみを20mg/ml含有する水溶液、(ii)20mg/ml Na−ALG溶液中に高分散させたCNFを0.5mg/ml含有する水溶液、及び(iii)20mg/ml Na−ALG溶液中に簡単に分散させたCNF(超音波処理によって5分間混合)を0.5mg/ml含有する水溶液を調製し、それぞれ基準小胞(CNF含有せず)、高分散CNFを含有する小胞及び低分散CNFを含有する小胞の調製に使用した。BaCl2を脱イオン水に溶解させて100mMの濃度にすることにより、ゼラチン化溶液(硬化溶液とも知られる)を調製した。この封入技術を使用して、調節可能なサイズの小胞を量産的に得た。直径300マイクロメートルのノズルを使用して、1100V、振動周波数900Hzで静電荷張力を活性化することにより、400〜800マイクロメートルの直径範囲を有する小胞を得た。高分散CNFを含有する小胞の典型的な顕微鏡観察結果を図7に示す。この封入法を使用すると、キログラム単位の小胞を数時間のうちに製造することができる。Ba2+イオンはCa2+イオンよりも強力なゼラチン化イオンであり[P. Grohn, Exp. Clin. Endocrinol., 102, 380 (1994)]、この試験を通じて使用した。Ba2+−アルギン酸コーティングされたCNFの小胞は、化学的にも機械的にも安定であり、水よりもはるかに重い(水相からの分離が容易)。
【0244】
水溶液からエチジウムイオンを除去するための吸着剤としてのCNF/Ba2+−アルギン酸小胞
基準小胞(CNF含有せず)及びCNFを含有する小胞を、ふるいを使用しながら脱イオン水で徹底的に洗浄した。ふるいの網の目は100マイクロメートルであった。基準小胞、高分散CNFを含有する小胞をそれぞれ10ml入れた底が円錐形の2本の45ml管を、チューブスタンドを使用して垂直に保持した。次に、30μM臭化エチジウム水溶液15mlを各管に加えた。エチジウム溶液を小胞と混合した約5分後に、凝集相溶液を収集し、UV−vis分光計(Jasco UV-550)を使用して計測を実施した。図8はその結果を示す。30μM臭化エチジウム水溶液の480nmでの吸収値は0.142であることがわかった。しかし、この溶液を高分散CNF含有小胞と混合すると、4.9×10-3に低下した。
【0245】
図9は、水溶液中のエチジウムイオンの濃度の変化を接触時間(30μM臭化エチジウム水溶液15mlを高分散CNF含有小胞10mlと混合)の関数として示す。接触時間が増すにつれ、水溶液中のエチジウムイオンの濃度は急速に低下した。溶液をCNF/Ba2+−アルギン酸小胞と混合した約8分後で0.98μMに達し、その後は変化がなかった。0.5mg/ml CNF及び20mg/ml Na−ALGを含有するCNF/Na−ALGコロイド水溶液をゲル化溶液として使用して得られた小胞10mlが水溶液からエチジウムイオンを除去する能力は0.43μモル/mlであることがわかった。この数値は、臭化エチジウム水溶液をCNF/Ba2+−アルギン酸小胞と混合した約10分後に、小胞によって除去されたエチジウムイオンの量を、吸着剤として使用した小胞の量で割ることによって計算した。
【0246】
また、高分散多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を含有するBa2+−アルギン酸コーティングされた小胞を吸着剤として使用することにより、同一の実験を実施した。MWCNT(直径20〜40nm、長さ5〜20μm、純度>80%、製造元推奨)をNano Labから購入し、そのままの状態で使用した。水性MWCNT/Na−ALGコロイド、MWCNT/Ba2+−アルギン酸小胞を調製する方法及びエチジウムイオンを除去する能力を試験する方法は、CNFの場合と同じであった。エチジウムイオンを吸着する能力は、0.5mg/ml MWCNT及び20mg/ml Na−ALGを含有する水溶液をゲル化溶液として使用して得られたMWCNT/Ba2+−ALG小胞10mlの場合で、0.42μモル/mlであることがわかった。この能力値は、事実、CNF/Ba2+−ALG小胞の能力値と実質的に同じである。
【実施例2】
【0247】
本実施例のアルギン酸ナトリウム(Na−ALG)は、和光純薬工業(大阪)から入手した。MWCNT(CVD生成物:外径15nm±5nm、長さ1〜5μm、純度>90%、製造元公表)は、Nanolab(米マサチューセッツ州)から購入し、そのままの状態で使用した。Na−ALGを脱イオン水に溶解して、濃度15mg/mlのNa−ALG水溶液を製造した。MWCNTを、高せん断混合と超音波処理との組み合わせにより、このNa−ALG水溶液中に濃度1.0mg/mlで分散させた。半自動機器IER-20(登録商標)システム(Inotech、スイスDottikon)をMWCNTの封入に使用して、Ba2+−アルギン酸でコーティングされたマイクロビーズを形成した。IER-20(登録商標)システムは、注入器、注入器ポンプ、拍動チャンバ、振動システム、ノズル、電極、超音波振動システムならびに静電供給システム及びOリング形電極からなるものであった。注入器ポンプを使用して、Na−ALG/MWCNTコロイド水溶液を拍動チャンバに圧送した。次いで、このコロイド水溶液を精密穿孔したサファイヤノズル(ノズル径300μm)に通し、ノズルから出るときに等しいサイズの小滴に分離させた。これらの小滴をノズルとリング電極との間の静電界に通し、小滴の表面に静電荷を帯びさせた。小滴が硬化溶液(架橋剤含有溶液)、すなわち塩化バリウム水溶液(Ba2+イオン100mM)中に落下するとき、静電反発力が小滴を分散させた。IER-20(登録商標)システムの作動原理に関するさらなる情報は、関連の参考文献[H.Brandenberger,
D. Nussli, V. Piech, F. Widmer, J. Electrostatics, 1999, 45, 227、D. Serp, E. Cantana, C. Heinzen, U. von Stockar, I. W. Marson,
Biotech. & Bioeng., 2000, 70, 41]を読むことによって得ることができる。得られたBa2+−ALG/MWCNT複合ビーズを、100μmメッシュのふるいを使いながら脱イオン水で徹底的にすすいだ。図10は、Ba2+−ALG/MWCNT複合ビーズの典型的な顕微鏡観察結果を示す。400〜900マイクロメートルの範囲の直径のビーズが製造された。ビーズのサイズは、超音波振動周波数、静電荷張力、ノズル径及びNa−ALG/MWCNTコロイド水溶液の流量を変えることによって調節することができる。この封入法を使用すると、キログラム量のBa2+−ALG/MWCNT複合ビーズを数時間のうちに製造することができる。Ba2+イオンはCa2+イオンよりも強力な凝集性イオンであり[P.Grohn, Exp. Clin. Endocrinol., 1994, 102, 380]、したがって、この研究で硬化性イオンとして使用した。Ba2+−ALG/MWCNT複合マイクロビーズは、化学的かつ機械的に安定であり、水よりもはるかに重い。したがって、水相から分離させることが容易である。
【0248】
開放型のガラスカラム(長さ20cm、直径5.0cm)をBa2+−ALG/MWCNT複合マイクロビーズ約200mlで充填した。3種のモデル化合物、すなわちジベンゾ−p−ダイオキシン(DD)、ジベンゾフラン(DF)及びビフェニル(BP)をそれぞれ2.0μMの濃度で含有する水溶液2リットルを、ぜん動式ポンプによって10ml/minの一定流量でカラムに汲み込んだ。GC−MSを使用して流出液中のモデル化合物の濃度を計測した。標的種、すなわちDD、DF及びBPをヘキサン10mlで流出液50mlから抽出した。ヘキサン相を水相から分離させ、1.0mlに減らしたのち、GC−MS(島津GC−MS−QP5050A)によって分析した。各モデル化合物2.0μMを含有する水溶液は、DD、DF及びBPの原液(各2.0mM、メタノールに溶解)を脱イオン水で希釈することによって調製した。
【0249】
カラムに一度通した後の流出液中のDD、DF及びBPの濃度は、それぞれ0.014μM、0.015μM及び0.018μMであることがわかった。しかし、この流出液をもう一度カラムに通すと、これらモデル化合物はもはや検出されず、濃度はこのGC−MSシステムの検出能力未満に減少していた。汚染された水を一度通したのち、ヘキサン40mlを使用してモデル化合物をカラムから溶出させた。ヘキサン相を水相から分離させ、同一のGC−MS分析条件を使用して直接分析した。ヘキサンサンプル中のDD、DF及びBPの濃度は、それぞれ99.12μM、99.03μM及び98.86μMであることがわかった。図11は、典型的な全イオンクロマトグラム(TIC)及び各ピークに対応するマススペクトルを示す。まずBPをGCカラムから溶出させたのち、DF、次いでDDを溶出させた。除去カラムに1回通した場合のDD、DF及びBPの除去効率は、それぞれ99.12%、99.03%及び98.89%であった。これらの値は、カラム中に保持された各モデル化合物の総量をカラムに供給された各モデル化合物の総量で割ることによって計算した。最初の循環からの流出液を二回目の処理のための除去カラムに戻すことにより、より高い除去効率を得ることもできる。
【0250】
また、母材マイクロビーズ、すなわちMWCNTを含有しないBa2+−アルギン酸マイクロビーズだけを充填した除去カラムを使用する実験を実施した。1回目の循環で、DD及びDFの除去効率は18.3%であり、BPの除去効率は18.4%であることがわかった。2回目の循環の除去効率は、1回目の循環の除去効率と実質的に同じであった。これらの吸着実験データは、標的化合物の除去が主としてMWCNTの存在のおかげであることを示唆する。標的化合物とMWCNTとの高親和力結合は、カーボンナノチューブの独特な構造及び電子的性質に帰すことができる。MWCNTのグラフィンシート中の炭素原子の六角形配列がモデル化合物の芳香族結合と強力に相互作用する。これらの相互作用の結果として、標的種、すなわちDD、DF及びBPがBa2+−アルギン酸/MWCNT複合吸着剤のMWCNTによって効率的に除去されたのである。加えて、Ba2+−アルギン酸/MWCNT複合吸着剤は、ビーズをヘキサンで再生することによって再利用することもできる。
【実施例3】
【0251】
製造例1 CNT分散液1(両性イオン界面活性剤/イオン性ポリマーを分散剤とした水系分散液)の製造例
単層カーボンナノチューブ(SWCNT、Nano Lab社製)100mg、界面活性剤(N−オクタデシル−N,N’−ジメチル−3−アミノ−1−プロパンスルホネート、Zwitter−3−18、Fluka社製)1.68g及びグリセロール(和光純薬社製)5mLの混合体を、すり鉢を使い約2時間磨り混ぜた後、5 mLの脱イオン水を加えて、更に30分磨り混ぜた。この混合コロイドに、0.6 g NaI(和光純薬社製)及び1.0gκ−カラゲナン(和光純薬社製)加えた後、更に30分磨り混ぜた。この混合体が100mLになるように、10%のメタノール水溶液を加えた。氷トレイに置き、ホモジナイザーで約一時間混合した後、遠心分離に付し、不溶成分を除去した。分散度及び安定性は、既報した方法(例えば、Environ.Sci.Technol.,38,6890−6896,2004)で評価した。尚、本製造例において、Iは、凝集形態にある、界面活性剤付着SWCNTの夫々を引き剥がすように機能し、また、カラゲナンは、引き剥がされた界面活性剤付着SWCNTが再結合するのを防止するよう機能する。このように分散助剤として機能しているものも、本発明にいう「分散剤」の概念に包含される。尚、図14〜図16は、この製造例に準じて製造した、SWCNTの濃度が夫々0.25,0.25/10,0.25/30mg/mlの分散液を用いてのAFM写真(Molecular Imaging社製の走査型顕微鏡、ヤマト科学)である。具体的には、図14〜図16は、これらの分散液を疎水性基板(HOPG基板)に適用し、次に当該適用物を乾燥させることにより形成された、CNTがバンドル状に凝集したものが相互に連結した網目状のCNT凝集体を示したものである。このような網目状CNT凝集体が形成される理由は、分散液が水系であるのに対して基板が疎水性であることに基づき、分散液を適用した後の乾燥に伴う液膜厚の低下により分散液が撥水するためである。これらの写真から分かるように、本製造例に係る分散剤を用いると、極めて高い分散性を有する凝集体を得ることができることが分かる。また、図17は、SWCNTの代わりに多層カーボンナノチューブ(MWCNT、Nano Lab社製)を用いた場合(MWCNTの濃度が10μg/ml)のAFM写真である。この写真から、本製造例に係る分散剤が多層カーボンナノチューブに対しても同様の結果をもたらすことが分かる。次に、当該網目状CNT凝集体を洗浄して分散剤を除去した後、電気特性を調べたところ、いずれも高い導電性を示すことが確認された。尚、HOPG基板の代わりに親水性基板(雲母基板)を用いて同様の試験を実施したが、液が撥水せず網目状CNT凝集体は形成されなかった。
【0252】
製造例2 CNT分散液2(シリコン系界面活性剤を更に加えた水系分散液)の製造例
製造例1で得られた分散液100mlに対して、発泡ポリウレタンを作製する際に使われているシリコン系整泡剤50mlを加え、振とう機で約1時間振とうした。分散度及び安定性が共に高いSWCNT溶液を作製した。
【0253】
製造例3 CNT分散液3(シクロデキストリンポリマーを分散剤とした水系分散液)の製造例
単層カーボンナノチューブ(SWCNT、Nano Lab社製)10mg、C60フラーレン(東京化成工業株式会社製)0.1mg、CD−ポリマー(Sigma社製)500mg及びグリセロール(和光純薬社製)5mlの混合体を、すり鉢を使い約2時間磨り混ぜた後、5mLの脱イオン水を加えて、更に30分磨り混ぜた。この混合コロイドに、0.4gCaCl(和光純薬社製)を加えた後、更に30分磨り混ぜた。この混合体が100mlになるように、脱イオン水を加えた。氷トレイに置き、ホモジナイザーで約一時間混合した後、遠心分離をかけて、不溶成分を除去した。分散度及び安定性は前記方法で評価した。尚、本製造例において、Ca2+は、SWCNT/フラーレン/CD複合体に付着し、当該複合体が凝集することを防止するよう機能している。
【0254】
製造例4 CNT分散液4{低分子化合物(脂質)を分散剤とした非水系分散液}の製造例
100mgレシチン(卵黄由来レシチン、和光純薬)を20mLクロロホルムで溶かした後、ナス型フラスコに入れ、クロロホルムが完全に除去するまでエバポレートした。次に、製造例1で得られた分散液に濃度が10mMになるように塩化ナトリウムを加えたもの10mLを加え、フラスコに付着しているレシチンの薄膜を、ボルテックスミキサーで懸濁した。次に、懸濁液を凍結乾燥した後、10ml脱イオン水及び10mlヘキサンを加えて、十分に振動混合した後、分液漏斗中で、ヘキサン層(レシチン/カーボンナノチューブの複合体)を回収した。尚、本製造例において、塩化ナトリウムは、ミセル形成を補助するよう機能している。
【0255】
製造例5 CNT分散液5(パラフィンを分散剤とした非水系分散液)の製造例
製造例1で得られた分散剤に、0.2%パラフィン(当該パラフィンの融点:55〜60℃)のエーテルを1:1で加え、振とう機で約2時間振とうした。パラフィン層(パラフィン/カーボンナノチューブの複合体)を分画、回収し、ナス型フラスコに入れ、エーテルが完全に除去するまでエバポレートした。パラフィン/カーボンナノチューブの複合体(室温においては固体)を回収した。
【0256】
製造例6 CNT分散液6(高分子ポリマーを分散剤とした非水系分散液)の製造例
単層カーボンナノチューブ(SWCNT、Nano Lab社製)100mg、界面活性剤(N−オクタデシル−N,N’−ジメチル−3−アミノ−1−プロパンスルホネート、Zwitter−3−18、Fluka社製)1.68g及びグリセロール(和光純薬社製)5mLの混合体を、すり鉢を使い約2時間磨り混ぜた後、0.6 g NaI(和光純薬社製)を添加して更に30分磨り混ぜた。その後、ポリスルホン(Aldrich、MO 26000)1gを溶解した1−メチルーピロリドン溶液50mlを加えた後、すり鉢を使い約2時間磨り混ぜた後、遠心分離に付して不溶成分を除去した。
【0257】
製造例7 CNT分散液7(フラーレンを分散剤とした非水系分散液)の製造例
トルエン50mlにC60フラーレン(東京化成工業株式会社)0.5g溶解した後、単層カーボンナノチューブ(SWCNT、Nano Lab社製)10mgを添加し、すり鉢を使い約2時間磨り混ぜ、標記分散液を得た。
【0258】
製造例8 仲介物質を用いた、CNT分散アラミド繊維の製造例
製造例1で得られた分散液100mLに対して、5gの極細ポリエステル繊維(直径10μm、ユニチカ社製)を加え十分に浸した後、氷を満たしたトレイに置き、電子レンジで氷が溶ける直前まで加熱した。この過程で、分散剤は水の相へ、そして、SWCNTは疎水相である極細繊維へ移動した。次に、SWCNTを担持した極細繊維を脱イオン水で十分に洗浄した後、5%の過酸化水素水溶液で処理し、残留した分散剤を除去した。十分に乾燥したSWCNT/繊維の複合体を使い、以下の手順で、高度に分散したカーボンナノチューブを融合したアラミド繊維を作製した。作製の方法としては、先ず、濃硫酸で溶かしたポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA、約26%)溶液100gに対して、SWCNT/極細繊維複合体約1gを加えた後、極細繊維が完全に分解されるまで攪拌した。図12はその様子を示したSEM写真である。次に、液晶紡糸法に従い、PPTA/SWCNT溶液からSWCNTを融合したアラミド糸を作製した。ここで、得られたアラミド糸について導電性試験を行った結果、導電性が確認された。
【0259】
製造例9 仲介物質を用いた、CNT分散ハイドロアパタイトの製造例
製造例8で得たSWCNT/極細繊維約1gを、500mL の3.0mM CaHPO・2HO と7.0mM Ca(OH)を含む水溶液に、室温下7日間浸した後、120MPa下1000℃で処理し、SWCNTと融合したハイドロアパタイトを作製した。
【0260】
製造例10 CNT分散液を用いた、CNT分散発泡ポリウレタンの製造例
製造例2で得られたCNT分散液に触媒量のアミン触媒(トリエチレンジアミン)と水を加えて混合した{分散液:水=1:4(容量)}後、当該溶液とトルエンジイソシアネートとを体積比1:4で混合し、CNT分散発泡ウレタンを得た。
【0261】
製造例11 CNT分散液を用いた、CNT分散透析膜の製造例
製造例6で得られたCNT分散液をテフロン(登録商標)製プレートにキャストし、1−メチル−2−ピロリドンをゆっくり除去し、カーボンナノチューブが内部で分散した透析膜を作製した。
【0262】
製造例12 CNT分散液を用いた、CNT分散耐熱性フィルターの製造例
市販のアルミニウムフィルター(アノディスクメンブレン、20〜500ナノメートル幅のポーラスが散在している)に製造例1で得られた分散液を滴下し、もう一枚のアルミニウムフィルターで挟み込みした後、10%エタノール/水、5%過酸化水素水で十分に洗浄した。その後、加熱接着し、カーボンナノチューブを吸着サイドとする耐熱性ナノフィルターを作製した。
【0263】
製造例13 CNT分散液を用いた、CNT分散導電性フィルター1の製造例
発泡ポリウレタン (スポンジ) に、製造例1で得られた分散液を均一に浸した後、10%エタノール/水、5%過酸化水素水で十分に洗浄、乾燥した。当該スポンジを100mM硝酸銀水銀イオンで浸した後、箱型電極で還元し、スポンジを鋳型とする銀フロックを作製した。その後、スポンジを熱分解し、CNT分散導電性ポーラスフィルターを作製した。ここで、得られたフィルターについて導電性試験を行った結果、導電性が確認された。
【0264】
製造例14 CNT分散液を用いた、CNT分散導電性フィルター2の製造例
製造例1で得られた分散液50mlに、アルギン酸ナトリウム(和光純薬製)1.2重量%となるように添加した後、キャストし室温で乾燥しフィルムを得た。次に、当該フィルムに1M硝酸銀水溶液を加えることにより、膜状のゲルを得た。次に、当該ゲルを1Mアルコルビン酸で還元することにより、SWCNTが分散した膜状銀を得た。ここで、得られたフィルターについて導電性試験を行った結果、導電性が確認された。
【0265】
製造例15 仲介物質を用いた、乾式での繊維フィルタ製造例
ポリエステル繊維(ユニチカ製)1gを、製造例8で得たSWNT/極細繊維1gと混合した後、150℃でプレスし、繊維フィルタを得た。このフィルタの性能を確認するためにシリコーンオイルを吸着させた。その結果、フィルタの重量に対して30重量%のオイル吸着能を有することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0266】
【図1】図1は、CVD法によって合成したカーボンナノファイバー(CNF)のSEM画像(図1A)及びTEM画像(図1B)である。SEM(Hitachi 4800)は15kVで作動させ、TEM(Hitachi H-800)は200kVで作動させた。
【図2】図2は、CNF/Na−ALG水溶液を含有する水溶液100mlバイアルの写真である。CNF及びNa−ALGの濃度はそれぞれ0.5mg/ml及び20mg/mlであった。
【図3】図3は、CNF/Na−ALGコロイド水溶液(CNF0.5mg/ml、Na−ALG20mg/ml)のUV−visスペクトル(上のライン)及びNa−ALGのみを含有する水溶液(Na−ALG20mg/ml)のUV−visスペクトル(下のライン)である。
【図4】図4は、pHに対する、CNF/Na−ALGコロイド水溶液(CNF0.5mg/ml、Na−ALG20mg/ml)及びNa−ALGのみを含有する水溶液(Na−ALG20mg/ml)のゼータ電位(ζ)である。
【図5】図5は、アルギン酸に可能な3種の分子形態、ホモポリマーM−M−M及びG−G−GならびにヘテロポリマーM−G−M結合アルギン酸である。
【図6】図6は、臭化カリウム(KBr)ペレット法を使用した、固体状態におけるNa−ALGのFT−IRスペクトル(上のライン)及びNa−ALG/CNF複合体のFT−IRスペクトル(下のライン)である。
【図7】図7は、高分散CNFを含有するBa2+−アルギン酸コーティングされた小胞の顕微鏡観察結果である。小胞は、0.5mg/ml CNF及び20mg/ml Na−ALGを含有するコロイド水溶液をゲル化溶液として使用し、100mM BaCl2を含有する水溶液をゼラチン化溶液として使用して製造した。
【図8】図8は、30μM臭化エチジウムを含有する水溶液(ラインA)、この30μM臭化エチジウム溶液15mlをBa2+−アルギン酸小胞と混合したもの(基準小胞、ラインB)及び高分散CNFを含有する小胞(ラインC)の、溶液/小胞混合の10分後におけるUV−vis吸収である。
【図9】図9は、30μM臭化エチジウムを含有する水溶液10mlを、基準(Ba2+−ALG)小胞15mlと混合した後(上のライン)及びCNF/Ba2+−ALG小胞と混合した後(下のライン)の、エチジウムイオン濃度の変化を混合時間の関数として示す。
【図10】図10は、Ba2+−ALG/MWCNT複合ビーズの顕微鏡観察写真である。直径400〜900マイクロメートルのビーズが観察された。
【図11】図11は、ヘキサンを使用して除去カラムから取り出された標的化合物のGC−MS測定/同定結果である。BP、DF及びDDの保持時間はそれぞれ4.12分、5.02分及び5.29分であった。カラム:DB−5MS(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)。MSスペクトルは、BP、DF及びDDそれぞれのピークに対応している。
【図12】図12は、製造例8における、SWCNTが分散したアラミド繊維のSEM写真である。
【図13】図13は、両性イオン界面活性剤を用いたときのCNT分離メカニズムを概念的に示したものである。
【図14】図14は、製造例1に準じて製造した、SWCNTの濃度が0.25mg/mlのAFM写真である。
【図15】図15は、製造例1に準じて製造した、SWCNTの濃度が0.25/10mg/mlのAFM写真である。
【図16】図16は、製造例1に準じて製造した、SWCNTの濃度が0.25/30mg/mlのAFM写真である。
【図17】図17は、製造例1に準じて製造した、MWCNTの濃度が10μg/mlのAFM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノからマイクロサイズの微小カーボンと該微小カーボンの分散剤とを含有する微小カーボン分散液体媒体を、当該液体媒体が水系の場合には疎水性平滑体に適用した後に乾燥する一方、当該液体媒体が非水系の場合には親水性平滑体に適用した後に乾燥し、場合により、前記乾燥後に前記分散剤を洗浄することにより得られる、網目状ナノカーボン凝集体。
【請求項2】
請求項1記載の網目状ナノカーボン凝集体を含む導電性材料。
【請求項3】
請求項2記載の導電性材料を含む電気製品。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図13】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2007−182363(P2007−182363A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82166(P2006−82166)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(800000024)北海道ティー・エル・オー株式会社 (20)
【Fターム(参考)】