微小共振器、周波数フィルタ及び通信装置
【課題】 隣り合う微小共振素子間における振動により生じる相互作用による基板への影響をなくし、信頼性の高い微小共振器及び通信装置を提供する。
【解決手段】 微小共振素子が、同一基板上に微小機械振動を用いた複数の微小共振素子を有し、第1の位相で振動する微小共振素子と、この第1の位相と逆位相である第2の位相で振動する微小共振素子とが対をなすように配置されるように構成される。
【解決手段】 微小共振素子が、同一基板上に微小機械振動を用いた複数の微小共振素子を有し、第1の位相で振動する微小共振素子と、この第1の位相と逆位相である第2の位相で振動する微小共振素子とが対をなすように配置されるように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小共振器、この微小共振器を用いて構成した周波数フィルタ及びこの微小共振器によるフィルタを備えた通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報技術の発展に伴って、近年ネットワークを利用するデバイスの数は飛躍的に増加しており、使い勝手の面からも、無線ネットワーク技術に対する需要が高まっている。無線通信で用いられるRF(高周波)フロントエンドモジュールには、半導体チップの他に、RF(高周波)フィルタ、IF(中間周波)フィルタ用にSAW(表面弾性波)フィルタや誘電体フィルタなど、比較的サイズの大きな部品が存在しており、これらの存在がRFフロントエンドの小型化と低コスト化を阻んできた。これらのフィルタ機能を半導体チップの中に取り込むことが現在求められている。
【0003】
一方、近年、マイクロマシン(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems、超小型電気的・機械的複合体)素子、及びMEMS素子を組み込んだ小型機器が、注目されている。MEMS素子の基本的な特徴は、機械的構造として構成されている駆動体が素子の一部に組み込まれていることであって、駆動体の駆動は、電極間のクーロン力などを応用して電気的に行われる。
【0004】
半導体プロセスによるマイクロマニシング技術を用いて形成された微小振動素子は、デバイスの占有面積が小さいこと、高いQ値を実現できること、他の半導体デバイスとの集積が可能なこと、という特長により、無線通信デバイスの中でも中間周波数(IF)フィルタ、高周波(RF)フィルタとしての利用がミシガン大学を始めとする研究機関から提案されている(非特許文献1参照)。
【0005】
図13は、非特許文献1に記載された高周波フィルタを構成する振動子、即ち、MEMS型の共振器の概略を示す。この共振器1は、半導体基板2上に絶縁膜3を介して、例えば、多結晶シリコンによる入力側配線層4と出力電極5が形成され、この出力電極5に対向して空間6を挟んで、例えば、多結晶シリコンによる振動可能なビーム、いわゆるビーム型の振動電極7が形成されている。振動電極7は、両端のアンカー部(支持部)8[8A,8B]にて支持されるように、出力電極5をブリッジ状に跨いで入力側配線層4に接続される。振動電極7は入力電極となる。入力側配線4の金(Au)膜9より入力端子t1が導出され、出力電極5より出力端子t2が導出される。
【0006】
この共振器1は、振動電極7と接地間にDCバイアス電圧V1が印加された状態で、入力端子t1を通じて振動電極7に高周波信号S1が供給される。即ち、入力端子t1からDCバイアス電圧V1と高周波信号S1が入力されると、長さLで決まる固有振動数を有する振動電極7が、出力電極5と振動電極7間に生じる静電力で振動する。この振動によって、出力電極5と振動電極7との間の容量の時間変化と、DCバイアス電圧に応じた高周波信号が出力電極5(従って、出力端子t2)から出力される。高周波フィルタでは、振動電極7の固有振動数(共振周波数)に対応した信号が出力される。
【0007】
【非特許文献1】IEEE Journal of Solid-state Circuits, Vol.35, No.4, April 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に高い周波数領域においては、出力信号としての共振ピークが小さくなる傾向があり、高い周波数領域で良好なフィルタ特性を得るためには、共振ピークのSN比を向上する必要がある。ミシガン大学の文献に係るディスク型の振動子によれば、出力信号のノイズ成分は、入力電極である振動電極7と出力電極5間に構成される寄生容量C0を直接透過する信号に起因する。
【0009】
ノイズ成分を低減化する方法として、DCバイアス電圧を印加する振動電極を入力電極と出力電極との間に配置する構成が考えられる。図12は、上記のノイズ成分の低減方法をビーム型構造の共振器に対して適用した先行技術を示す。この共振器11は、例えば半導体基板12上に絶縁膜13を介して入力電極14及び出力電極15が形成され、この入力電極14及び出力電極15に対向して空間16を挟んで振動板となる電極、いわゆるビーム型の振動電極17が形成されてなる。振動電極17は、入出力電極14,15をブリッジ状に跨ぎ、入出力電極14,15の外側に配置した配線層18に接続されるように、両端を支持部(いわゆるアンカー部)19[19A、19B]で一体に支持される。入力電極14、出力電極15、配線層18は、同じ導電材料で形成され、例えば多結晶シリコン膜、アルミニウム膜などの金属膜等にて形成される。
【0010】
入力電極14には入力端子t1が設けられ、入力端子t1を通じて高周波信号S2が入力される。出力電極15には出力端子t2が設けられ、出力端子t2から目的周波数の高周波信号が出力される。振動電極17には、所要のDCバイアス電圧V2が印加される。
【0011】
このMEMS共振器11では、入力電極14に高周波振動S2が入力されると、DCバイアス電圧V2が印加された振動電極17と入力電極14間に生じる静電力で振動電極17が共振し、出力電極15から目的周波数の高周波信号が出力される。このMEMS共振器素子11によれば、入出力電極14及び15の対向面積が小さくかつ入出力電極14及び15間の間隔を大きくとれるので、入出力電極間の寄生容量C0が小さくなる。従って、入出力電極14間の寄生容量C0を直接透過する信号、つまりノイズ成分が小さくなり、出力信号のSN比を向上させることができる。
【0012】
しかしながら、上述の図12に示すようなビーム構造を持つMEMS共振器11においては、インピーダンスが高くなり、即ち、数μm〜数十μmサイズの共振器におけるインピーダンスは数十KΩ〜数百KΩに達するため、システムのインピーダンスとして50Ωが基本である高周波(RF)デバイスへの適用は困難であるという問題が生じる。
【0013】
そこで、インピーダンスを下げる方法として、ビーム構造を有する複数のMEMS共振器素子を電気的に並列接続する構成が考えられる。図10及び図11は、上記のインピーダンスを下げる方法をビーム型構造の共振器に対して適用した先行技術を示す(特願2003−377302号)。
【0014】
この共振器51は、共通の基板52上にビーム構造を有する複数、本例では2つのMEMS共振器素子23[23−1、23−2]を並列的に配置し、これら複数のMEMS共振器素子23[23−1、23−2]を電気的に並列接続して構成される。
即ち、各MEMS共振器素子23−1、23−2は、それぞれ基板52の同一平面上に入力電極14及び出力電極15をそれぞれ2つに分岐して形成し、分岐された各対をなす入出力電極14−1、15−1、入出力電極14−2、15−2に対向しておのおの空間16を挟んで各独立した振動板となるビーム、いわゆるビーム型の振動電極17形成して構成される。各MEMS共振器素子23−1、23−2は、同一基板52上に並列して配置されるとともに、入力電極14−1、14−2が共通に接続され、出力電極15−1,15−2が共通接続されていることから、並列接続された形となる。
【0015】
しかしながら、図11Aに示すように、MEMS共振器素子のような微小共振器同士を近づけて配設した場合は、隣り合う微小共振素子の振動電極17の振動により生じる振動の位相Sが一致し、この振動により微小共振素子23−1に生じた力F1と、微小共振素子23−2に生じた力F2とが相互作用により重畳し、基板12にF1とF2を足し合わした力のベクトルF3が発生する。その結果、その合体した力F3により基板12自体が撓み、その結果として振動電極17の振動によって基板12に不要な振動モードが誘起されるという問題が生じる。図11Bに示すように、基板12に不要な振動が誘起された状態で、微小共振素子23−1の透過特性と、微小共振素子23−2の透過特性とを重ね合わせた場合には、上述した基板12の振動により両微小共振素子の共振特性のピークがずれてしまう。すなわち、重ねあわせた後の透過特性が不安定になり、好ましい透過特性が得られないという問題が生じる。特に、両持ち梁構造のビームを用いた微小共振器の場合は、ビームを支持する支持部を介して振動が基板へ伝わりやすいという問題が生じる。
【0016】
また、複数の微小共振素子を並列状に配置した場合には、各微小共振素子のビームの振動により生じた力が、基板上で足し合わされることになる。その結果、基板上でより大きな力が発生して基板が撓み、不要な振動がさらに大きくなるという問題が生じる。
【0017】
なお、相互作用の影響を低減させるために、隣り合う微小共振素子同士の配置間隔を十分に広くするということも考えられるが、その場合には、基板上における配線や微小共振素子の占有面積が大きくなり、微小共振器の性能が低下するとともに、微小共振器の小型化が図れないという問題が生じる。
【0018】
さらに、上述した微小共振器で周波数フィルタを構成した場合には、微小共振器の透過特性が悪いため、周波数フィルタの信頼性が低下するという問題が生じる。また、上述した微小共振器によるフィルタを通信機に用いた場合には、フィルタの透過特性が悪いため、通信の信頼性が低下するという問題が生じる。
【0019】
本発明は、上述の点に鑑み、基板側の不要な振動を抑制して安定した良好な透過特性が得られる微小共振器を提供するものである。
また、本発明は、このような微小共振器による信頼性の高い周波数フィルタ、さらにこの微小共振器によるフィルタを備えた信頼性の高い通信装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る微小共振器は、同一基板上に微小機械振動を用いた複数の微小共振素子を有し、第1の位相で振動する微小共振素子と、第1の位相と逆位相である第2の位相で振動する微小共振素子とが対をなすように配置されていることを特徴とする。
好ましくは、複数の微小共振素子が電気的に並列に接続されている構成とする。
【0021】
本発明に係る微小共振器の好ましい形態は、同一平面上に配置された入力電極及び出力電極と、前記入力電極と出力電極に対して空間を挟んで配置された振動板となるビームとを備え、電気的に並列に接続されているとともに、同一基板上に並列に配置されている複数の微小共振素子を有し、前記入力電極又は出力電極のいずれか一方の電極が、互いに対向するように配置されている構成とする。
好ましくは、入力電極と出力電極を共通にして並列状に配置された複数の振動板からなるビームを備えている構成とする。
好ましくは、ビームを支持するための支持部材を有し、この支持部材が基板上に設けられている構成とする。
【0022】
本発明に係る周波数フィルタは、同一基板上に微小機械振動を用いた複数の微小共振素子を有し、第1の位相で振動する微小共振素子と、第1の位相と逆位相である第2の位相で振動する微小共振素子とが対をなすように配置されてなる微小共振器を用いて構成されていることを特徴とする。
好ましくは、複数の微小共振素子が電気的に並列に接続されている構成とする。
【0023】
本発明に係る周波数フィルタの好ましい形態は、同一平面上に配置された入力電極及び出力電極と、入力電極と出力電極に対して空間を挟んで配置された振動板となるビームとを備え、電気的に並列に接続されているとともに、同一基板上に並列に配置されている複数の微小共振素子を有し、入力電極又は出力電極のいずれか一方の電極が、互いに対向するように配置されてなる微小共振器を用いて構成されている構成とする。
好ましくは、入力電極と出力電極を共通にして並列状に配置された複数の振動板からなるビームを備えている構成とする。
【0024】
本発明に係る通信装置は、送信信号及び/又は受信信号の帯域制限を行うフィルタを備えた通信装置において、フィルタとして、同一基板上に微小機械振動を用いた複数の微小共振素子を有し、第1の位相で振動する微小共振素子と、第1の位相と逆位相である第2の位相で振動する微小共振素子とが対をなすように配置されている微小共振器によるフィルタが用いられていることを特徴とする。
好ましくは、複数の微小共振素子が電気的に並列に接続されている構成とする。
【0025】
本発明に係る通信装置の好ましい形態は、送信信号及び/又は受信信号の帯域制限を行うフィルタを備え、前記フィルタとして、同一平面上に配置された入力電極及び出力電極と、前記入力電極と出力電極に対して空間を挟んで配置された振動板となるビームとを備え、電気的に並列に接続されているとともに、同一基板上に並列に配置されている複数の微小共振素子を有し、前記入力電極又は出力電極のいずれか一方の電極が、互いに対向するように配置されている微小共振器によるフィルタが用いられている構成とする。
好ましくは、入力電極と出力電極を共通にして並列状に配置された複数の振動板からなるビームを備えている構成とする。
【0026】
本発明の微小共振器では、隣り合う微小共振素子の振動の位相を逆相関係にすることにより、基板上における振動の相互作用の影響を低減することができ、振動により基板に生じる撓み、すなわち、不要な振動を防止することができる。また、本発明の周波数フィルタでは、透過特性の優れた微小共振器により構成されているので、安定したフィルタ動作を行うことができる。さらに、本発明の通信装置では、透過特性の優れた微小共振器によるフィルタを用いることにより、信頼性の高い通信を行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の微小共振器によれば、第1の位相で振動する微小共振素子とこれに逆相の第2の位相で振動する微小共振素子とが対をなすように配置されているので、微小共振器の動作時に、各微小共振素子から基板に伝わる運動エネルギーが相殺されて、基板に不要な振動が誘起されず、良好な透過特性を有する微小共振器を提供することができる。また、複数の微小共振素子が電気的に並列に接続されている微小共振器では、総合的に各微小共振素子から基板に伝わる運動エネルギーが相殺され、安定した良好な透過特性を有する微小共振器、いわゆる微小共振器群が得られる。
【0028】
本発明の微小共振器によれば、微小共振素子に接続される入力電極又は出力電極のいずれか一方の電極が互いに対向するように配置されているので、各微小共振素子の振動により基板に生じる不要な振動を防止することにより、良好な透過特性を備えた微小共振器を提供することができる。
【0029】
また、微小共振器が、入力電極と出力電極を共通にして並列状に配置された複数の振動板からなるビームを備えているときは、多数の微小共振素子を備えることができ、かつコンパクト化された微小共振器を提供することができる。また、ビームが基板上に設けられた支持部材で支持されているときも、良好な透過特性を備えた微小共振器を提供することができる。
【0030】
本発明の周波数フィルタによれば、上述の本発明に係る微小共振器を用いて構成されるので、フィルタ特性が安定した信頼性の高い周波数フィルタを提供することができる。
【0031】
本発明の通信装置によれば、上述の本発明に係る微小共振器による透過特性の高いフィルタを備えているので、通信の信頼性の高い通信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の第1実施の形態を説明する。本発明で対象とする微小共振器は、マイクロスケール、ナノスケールの共振器素子を備えた共振器である。
【0033】
図1は、本発明に係る微小共振器の第1実施の形態を示す。本実施の形態に係る微小共振器21は、共通の基板22上にビーム構造を有する複数、本例では2つの微小共振素子23[23−1、23−2]を並列的に配置し、これら複数の微小共振素子23[23−1,23−2]を電気的に並列接続して構成される。
【0034】
即ち、各微小共振素子23−1、23−2は、図1及び図2に示すように、それぞれ基板22の同一平面上に入力電極24及び出力電極25をそれぞれ2つに分岐して形成し、分岐された各対をなす出入力電極24−1,25−1、出入力電極24−2,25−2に対向してそれぞれ空間26を挟んで各独立した振動板となるビーム、いわゆるビーム型の振動電極27を形成して構成される。各微小共振素子23−1,23−2は、同一基板22上に並列して配置されると共に、入力電極24−1,24−2が共通に接続され、出力電極25−1,25−2が共通に接続されていることから、並列接続された形となる。この微小共振器21は、いわゆる複数の微小共振素子23からなる微小共振器群として構成される。
【0035】
図1に示すように、微小共振素子23−1に接続される入力電極24−1と、微小共振素子23−2に接続される入力電極24−2とが、両微小共振素子間に存在する隙間を隔てて、互いに対向するように配置されている。微小共振素子23−1に接続される出力電極25−1と、微小共振素子23−2に接続される出力電極25−2は、前記入力電極24−1、24−2を挟さむよう外側に配置されている。なお、入力電極と出力電極の配置が逆の関係になってもよい。
【0036】
すなわち、微小共振素子23−1に接続される出力電極25−1と、微小共振素子23−2に接続される出力電極25−2とが、両微小共振素子間に存在する隙間を隔てて対向するように配置してもよい。つまり、隣接する微小共振素子23の間で、入出力電極のいずれか一方の電極が互いに近接するように対向配置されている。
【0037】
本実施の形態では、この複数の微小共振素子23−1,23−2の各入力電極24を共通に接続し、各出力電極25を共通に接続して1つのデバイスとして微小共振器21が構成される。
【0038】
各振動電極27は、入出力電極24,25をブリッジ状に跨ぎ、入出力電極24,25の外側に配置した支持部を兼ねる配線層28に接続されるように両端が支持されている。
基板22は、例えばシリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)などの半導体基板上に絶縁膜を形成した基盤、石英基板やガラス基板のような絶縁性基板等が用いられる。本例では、シリコン基板上にシリコン窒化膜を形成した基盤が用いられる。入力電極24、出力電極25、配線層28は、同じ導電材料で形成することができ、例えば多結晶シリコン膜、アルミニウム(Al)などの金属膜、さらには半導体基板に不純物を導入して形成した不純物半導体層、等にて形成することができる。振動電極27は、例えば多結晶シリコン膜、アルミニウム(Al)などの金属膜にて形成することができる。
【0039】
共通接続された入力電極24には所要の周波数信号、例えば高周波信号が入力され、共通接続された出力電極25から目的周波数の信号、例えば高周波信号が出力される。各振動電極27には所要のDCバイアス電圧が印加される。
【0040】
この微小共振器21の動作は次の通りである。各振動電極27に所要のDCバイアス電圧が印加される。入力電極24に、例えば高周波信号が入力されると、振動電極27と入力電極24間に生じる静電力で、2次の振動モードで振動電極27が共振する。この振動電極27の共振で出力電極25から目的周波数の高周波信号が出力される。他の周波数の信号が入力されたときは、振動電極27が共振せず、出力電極25からは信号が出力されない。
【0041】
本実施の形態に係る微小共振器21によれば、複数の微小共振素子23[23−1,23−2]を並列に配置し、各入力電極24及び各出力電極25をそれぞれ共通に接続して、微小共振素子23−1,23−2を並列接続することにより、微小共振器21の合成インピーダンスを低下させることができる。すなわち、このときの合成インピーダンスZaは、次のようになる。
1/Za=(1/Z1)+(1/Z2)
Z1=Z2とすれば、
Za=(1/2)Z1
となる。
すなわち、各微小共振素子23−1、23−2を同じパターンで形成し、それぞれのインピーダンスZ1,Z2の値を同じにすれば、合成インピーダンスZaは、インピーダンスZ1の2分の1になる。従って、微小共振素子を2つ以上配置して並列接続すれば、適用すべき電子機器に適合する合成インピーダンスを有した微小共振器21が得られる。
【0042】
本実施の形態に係る微小共振器21によれば、図1及び図2に示すように、隣り合う微小共振素子23に接続される入力電極24又は出力電極25のいずれか一方の電極を、互いに対向するように配置することで、図2に示すように隣り合う微小共振素子23−1の振動の位相Sと微小共振素子23−2の振動の位相Sが逆相関係となる。その結果、振動電極27の振動により微小共振素子23−1に生じた力F1と、微小共振素子23−2に生じた力F2とが、基板22上において相互に作用した場合には、それぞれの力F1とF2が、互いに逆方向に作用して打ち消しあい、基板22上に生じる力は0となる。
【0043】
従って、振動により発生する力は0となるので、基板22が撓むことはなく不要な振動が誘起されることはない。すなわち、振動により微小共振素子に生じた力が、支持部28を介して基板22上に作用する場合でも、基板22が撓むことを防止できる。したがって、図3に示すように、この状態で隣り合う微小共振素子23−1、23−2の透過特性を重ね合わせた場合に良好な透過特性を得ることができる。
【0044】
図4は、本発明に係る微小共振器の第2実施の形態を示す。
本実施の形態に係る微小共振器31は、図1に示した微小共振器21の入力電極24及び出力電極25上に、並列状に複数の振動電極27を配置して構成される。すなわち、複数の振動電極27が、各入出力電極24,25の長手方向に沿って平行に配列される。
入力電極24−1、出力電極25−1の上には、微小共振素子列23′−1が、入力電極24−2、出力電極25−2の上には、微小共振素子列23′−2が、それぞれ形成されている。
第1実施の形態と同じ構成に対応する部分には、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0045】
本実施の形態に係る微小共振器31によれば、各微小共振素子23の振動電極27を加算することで、振動電極面積を大きくした1つの微小共振器を得ることができる。また、隣り合う微小共振素子23に接続される入力電極24又は出力電極25のいずれか一方の電極を、互いに対向するように配置させているので、一組の入力電極24及び出力電極25上に複数の振動電極27を並列状に設けたとしても、微小共振素子列23′−1の振動の位相と、それに隣り合う微小共振素子列23−2の振動の位相とを互いに反転させた関係にすることができる。その結果、各振動電極27の振動により微小共振素子列23′−1及び23′−2に生じた力が、基板22上において相互に作用した際には互いの力が逆方向に作用して打ち消しあい、基板22上に生じる力の和は0となる。すなわち、振動により微小共振素子に生じる力によって、基板22が振動することはないので、この状態で隣り合う微小共振素子列の透過特性を重ね合せた場合でも良好な透過特性を得ることができる。
【0046】
図5は、本発明に係る微小共振器の第3実施の形態を示す。本実施の形態に係る微小共振器33は、共通の基板22上にビーム構造を有する複数、本例では4つの微小共振素子23[23−1,23−2,23−3,23−4]を並列的に配置し、これら複数の微小共振素子23[23−1,23−2,23−3,23−4]を電気的に並列接続して構成される。すなわち、各微小共振素子23−1、23−2、23−3,23−4は、それぞれ基板22の同一平面上に入力電極24及び出力電極25をそれぞれ4つに分岐して形成し、分岐された各対をなす入出力電極24−1、25−1、入出力電極24−2,25−2、入出力電極24−3,25−3、入出力電極24−4,25−4に対向してそれぞれ空間を挟んで各独立した振動板となるビーム、いわゆるビーム型の振動電極27を形成して構成される。各微小共振素子23−1〜23−4は、同一基板22上に並列して配置されると共に、入力電極24−1〜24−4が共通に接続され、出力電極25−1〜25−4が共通に接続されていることから、並列接続された形となる。
【0047】
図5に示すように、隣り合う微小共振素子23−1と微小共振素子23−2との関係においては、微小共振素子23−1に接続される入力電極24−1と、微小共振素子23−2に接続される入力電極24−2とが、両微小共振素子間に存在する隙間を隔てて、互いに対向するように配置されている。微小共振素子23−1に接続される出力電極25−1と、微小共振素子23−2に接続される出力電極25−2は、前記入力電極24−1、24−2を挟むよう外側に配置されている。
また、隣り合う微小共振素子23−2と微小共振素子23−3との関係においては、微小共振素子23−2に接続される出力電極25−2と微小共振素子23−3に接続される出力電極25−3とが、両微小共振素子間に存在する隙間を隔てて、互いに対向するように配置されている。微小共振素子23−2に接続される入力電極24−2と、微小共振素子23−3に接続される入力電極24−3は、前記出力電極25−2、25−3を挟むように配置されている。
【0048】
さらに、微小共振素子23−3と微小共振素子23−4との関係においては、微小共振素子23−3に接続される入力電極24−3と、微小共振素子23−4に接続される入力電極24−4とが、両微小共振素子間に存在する隙間を隔てて、互いに対向するように配置されている。微小共振素子23−3に接続される出力電極25−3と、微小共振素子23−4に接続される出力電極25−4は、前記入力電極24−3、24−4を挟むよう外側に配置されている。
すなわち、いずれかの隣り合う微小共振素子23間において、微小共振素子間に存在する隙間を隔てて、入力電極24又は出力電極25のいずれか一方の電極が、互いに対向するように配置されている。
【0049】
本実施の形態では、この複数の微小共振素子23−1〜23−4の各入力電極24を共通に接続し、各出力電極25を共通に接続して1つのデバイスとして微小共振器33が構成される。
【0050】
本実施の形態に係る微小共振器33によれば、複数の微小共振素子を並列的に配置させるように構成した微小共振器において、隣り合う微小共振素子23に接続される入力電極24又は出力電極25のいずれか一方の電極を、互いに対向するように配置させているので、ひとつの微小共振素子の振動の位相と、それに隣り合う微小共振素子の振動の位相とを互いに反転させた関係にすることができる。
【0051】
その結果、振動電極の振動により各微小共振素子に生じた力が、基板22上において相互に作用した場合には互いに逆方向に作用して打ち消しあい、基板22上に生じる力は0となる。すなわち、基板22に作用する力0となり、振動により微小共振素子に生じる力によって基板22が振動することはなく、この状態で隣り合う微小共振素子の透過特性を重ね合わせた場合には良好な透過特性を得ることができる。
【0052】
図6は、本発明に係る微小共振器の第4実施の形態を示す。
本実施の形態に係る微小共振器41は、図5に示した微小共振素子33の入力電極24及び出力電極25上に、並列状に複数の振動電極27を配置して構成される。すなわち、複数の振動電極27が、各入出力電極24,25の長手方向に沿って平行に配列される。
入力電極24−1、出力電極25−1の上には、微小共振素子列23’−1が、入力電極24−2、出力電極25−2の上には、微小共振素子列23’−2が、入力電極24−3、出力電極25−3の上には、微小共振素子列23’−3が、入力電極24−4、出力電極25−4の上には、微小共振素子列23’−4が、それぞれ形成されている。
第3実施の形態と同じ構成に対応する部分には、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0053】
本実施の形態に係る微小共振器41によれば、各微小共振素子23の振動電極27を加算することで、振動電極面積を大きくした1つの微小共振器を得ることができる。また、隣り合う微小共振素子23に接続される入力電極24又は出力電極25のいずれか一方の電極を、互いに対向するように配置させているので、一組の入力電極24及び出力電極25上に複数の振動電極27を並列状に設けたとしても、各列の微小共振素子、例えば微小共振素子列23'−1の振動の位相と、それに隣り合う微小共振素子列、例えば微小共振素子列23’−2の振動の位相とを逆位相とし、互いに反転させた関係にすることができる。
【0054】
その結果、各振動電極27の振動により各微小共振素子列23’−1〜23’−4に生じた力が、基板22上において相互に作用した際には互いの力が逆方向に作用して打ち消しあい、基板22上に生じる力の和は0となる。すなわち、振動により微小共振素子に生じる力によって、基板22が振動することはないので、隣り合う微小共振素子列の透過特性を重ね合わせた場合に良好な透過特性を得ることができる。
【0055】
次に、図7及び図8を用いて本実施の形態の微小共振器の製造方法を説明する。なお、図では要部の微小共振素子の断面構造を示す。
本実施の形態においては、まず、図7Aに示すように、シリコン基板51の上面に所要の膜厚の絶縁膜52を形成した基板22を用意する。本例では、シリコン基板51上に膜厚1μmのシリコン窒化(SiN)膜52を形成して基板22を形成する。
【0056】
次に、図7Bに示すように、基板22の絶縁膜52上に下部電極、すなわち入出力電極となる所要の膜厚の導電性膜53を形成する。本例では、シリコン窒化膜52上に膜厚0.5μmの多結晶シリコン膜(Poly-Si)53を蒸着により形成する。
次いで、図7Cに示すように、多結晶シリコン膜53を選択エッチングによりパターニングして下部電極となる入力電極24及び出力電極25と、配線層28とを形成する。この出入力電極24,25及び配線層28のパターンは、前述の図1、図4、図5、図6に対応したパターンに形成される。
【0057】
次に、図7Dに示すように、入出力電極24,25及び配線層28の上面を含む基板22の前面に所要の膜厚の犠牲層54を形成する。本例では、犠牲層となる膜厚0.5μmのシリコン酸化(SiO2)膜54を蒸着により形成する。
次に、図7Eに示すように、犠牲層54を平坦化処理して、入出力電極24,25上の犠牲層54の膜厚を所要の膜厚に設定する。この犠牲層54の膜厚は、前述の振動電極27と入出力電極24,25との間の空間26の高さに相当する。本例では、CMP(化学機械研磨)法を用いて犠牲層のシリコン酸化膜54を平坦化し、入出力電極24、25の上に膜厚0.1μmのシリコン酸化膜54が残るようにする。
【0058】
つぎに、図8Fに示すように、犠牲層54の一部を選択エッチングして配線層28の一部が露出するコンタクト孔55を形成する。
次に、図8Gに示すように、犠牲層54上に振動電極、すなわちビームとなる所要の膜厚の導電性膜56を形成する。このとき、導電性膜56の一部はコンタクト孔55を通じて配線28に接続される。本例では、ビームとなる膜厚0.5μmの多結晶シリコン膜56を蒸着により形成する。
なお、前述の多結晶シリコン膜53、56、シリコン酸化膜54は、化学蒸着法であるCVD(化学気相成長)法で形成することができるが、物理蒸着法で形成することも可能である。
【0059】
次に、図8Hに示すように、導電性膜である多結晶シリコン膜56をパターニングして振動電極となるビーム27を形成する。
【0060】
次に、図8Iに示すように、犠牲層54を選択的に除去する。本例では、犠牲層であるシリコン酸化膜54をフッ酸により除去する。これにより、入力電極24及び出力電極25に対して所要の空間26を挟んでビーム、従って、振動電極27が配置された微小共振器21、31、33又は41を得る。
【0061】
本発明は、上述した各実施の形態の微小共振器を用いて周波数フィルタを構成することができる。この微小共振器によるフィルタは、高周波(RF)フィルタ、中間周波(IF)フィルタ等として用いることができる。
【0062】
本発明は、上述した実施の形態の微小共振器による知る多を用いて構成される携帯電話機、無線LAN機器、無線トランシーバ、テレビチューナ、ラジオチューナ等の、電磁波を利用して通信する通信装置を提供することができる。
【0063】
次に、上述した本発明の実施の形態のフィルタを適用した通信装置の構成例を、図9を参照して説明する。
まず送信系の構成について説明すると、Iチャンネルの送信データとQチャンネルの送信データを、それぞれデジタル/アナログ変換器(DAC)201I及び201Qに供給してアナログ信号に変換する。変換された各チャンネルの信号は、バンド・パス・フィルタ202I及び202Qに供給され、送信信号の帯域以外の信号成分を除去した後に、バンド・パス・フィルタ202I及び202Qの出力を、変調器210に供給する。
【0064】
変調器210では、各チャンネル信号を、バッファアンプ211I及び211Qを介してミキサ212I及び212Qに供給する。この信号と、送信用のPLL(phase-locked loop)回路203から供給される送信周波数に対応した周波数信号とを混合して変調し、両混合信号を加算器214で加算して一系統の送信信号とする。この場合、ミキサ212Iに供給する周波数信号は、位相器213で信号位相を90°シフトさせてあり、Iチャンネルの信号とQチャンネルの信号とが直交変調されるようにしてある。
【0065】
加算器214の出力は、バッファランプ215を介して電力増幅器204に供給し、所定の送信電力となるように増幅する。電力増幅器204で増幅された信号は、送受信切替器205と高周波フィルタ206を介してアンテナ207に供給され、アンテナ207から無線送信される。高周波フィルタ206は、この通信装置で送信及び受信する周波数帯域以外の信号成分を除去するバンド・パス・フィルタである。
【0066】
受信系の構成としては、アンテナ207で受信した信号を、高周波フィルタ206及び送受信切替器205を介して高周波部220に供給する。高周波部220では、受信信号を低ノイズアンプ(LNA)221で増幅した後、バンド・パス・フィルタ222に供給して、受信周波数帯域以外の信号を除去し、この除去された信号を、バッファアンプ223を介してミキサ224に供給する。そして、チャンネル選択用PLL回路251から供給される周波数信号を混合して、所定の送信チャンネルの信号を中間周波数信号とし、その中間周波信号を、バッファアンプ225を介して中間周波回路230に供給する。
【0067】
中間周波回路230では、供給される中間周波信号を、バッファアンプ231を介してバンド・パス・フィルタ232に供給して、中間周波信号の帯域以外の信号成分を除去する。この除去された信号を自動ゲイン調整回路(AGC回路)233に供給して、ほぼ一定のゲインの信号とする。自動ゲイン調整回路233でゲイン調整された中間周波数信号は、バッファアンプ234を介して復調器240に供給される。
【0068】
復調器240では、供給される中間周波信号を、バッファアンプ241を介してミキサ242I及び242Qに供給して、中間周波用PLL回路252から供給される周波数信号を混合して、受信したIチャンネルの信号成分とQチャンネルの信号成分を復調する。この場合、I信号用のミキサ242Iには、位相器243で信号位相を90°シフトさせた周波数信号を供給するようにしてあり、直交変調されたIチャンネルの信号成分とQチャンネルの信号成分を復調する。
【0069】
復調されたIチャンネルとQチャンネルの信号は、それぞれバッファランプ244I及び244Qを介してバンド・パス・フィルタ253I及び253Qに供給され、Iチャンネル及びQチャンネルの信号以外の信号成分が除去される。この除去された信号をアナログ/デジタル変換器(ADC)254I及び254Qに供給し、サンプリングしてデジタルデータ化し、Iチャンネルの受信データ及びQチャンネルの受信データを得る。
【0070】
ここまで説明した構成において、各バンド・パス・フィルタ202I、202Q、206,222,232,253I、253Qの一部又は全部を、上述した実施の形態のフィルタを適用して帯域制限することが可能である。
この通信装置によれば、前述したフィルタ、すなわち適用すべき通信装置に適合する合成インピーダンスを有したフィルタを備えるので、信頼性の高い通信装置を提供することができる。また、本発明の通信装置によれば、透過特性の高い微小共振器によるフィルタを備えているので、通信の信頼性の高い通信装置を提供することができる。
【0071】
図9の例では、各フィルタをバンド・パス・フィルタとして構成したが、所定の周波数よりも下の周波数帯域だけを通過させるロー・パス・フィルタや、所定の周波数よりも上の周波数帯域だけを通過させるハイ・パス・フィルタとして構成し、それらのフィルタに上述した各実施の形態の構成のフィルタを適用してもよい。また図9の例では、無線送信及び無線受信を行う通信装置としたが、有線の伝送路を介して送信及び受信を行う通信装置が備えるフィルタに適用してもよく、さらに送信処理だけを行う通信装置や受信処理だけを行う通信装置が備えるフィルタに、上述した実施の形態のフィルタを適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る微小共振器の第1実施の形態を示す構成図である。
【図2】図1の要部における微小共振素子の断面図である。
【図3】本発明に係る微小共振器の共振特性を示す図である。
【図4】本発明に係る微小共振器の第2実施の形態を示す構成図である。
【図5】本発明に係る微小共振器の第3実施の形態を示す構成図である。
【図6】本発明に係る微小共振器の第4実施の形態を示す構成図である。
【図7】A〜E 本発明に係る微小共振器の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図(その1)である。
【図8】F〜I 本発明に係る微小共振器の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図(その2)である。
【図9】本発明の通信装置の一実施の形態を示す回路図である。
【図10】先行技術に係る微小共振器の例を示す構成図である。
【図11】A 図10の要部における微小共振素子の断面図である。 B 図10の隣り合う微小共振素子の透過特性を重ねあわせた例を示す図である。
【図12】先行技術に係る微小共振器の例を示す断面図である。
【図13】従来のMEMS共振器の断面図である。
【符号の説明】
【0073】
21、31、33、41 微小共振器
22 基板
23 微小共振素子
24 入力電極
25 出力電極
26 空間
27 ビーム(振動電極)
28 支持部
202、206、222、232、253 フィルタ
201、254 デジタル/アナログ変換器
207 アンテナ
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小共振器、この微小共振器を用いて構成した周波数フィルタ及びこの微小共振器によるフィルタを備えた通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報技術の発展に伴って、近年ネットワークを利用するデバイスの数は飛躍的に増加しており、使い勝手の面からも、無線ネットワーク技術に対する需要が高まっている。無線通信で用いられるRF(高周波)フロントエンドモジュールには、半導体チップの他に、RF(高周波)フィルタ、IF(中間周波)フィルタ用にSAW(表面弾性波)フィルタや誘電体フィルタなど、比較的サイズの大きな部品が存在しており、これらの存在がRFフロントエンドの小型化と低コスト化を阻んできた。これらのフィルタ機能を半導体チップの中に取り込むことが現在求められている。
【0003】
一方、近年、マイクロマシン(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems、超小型電気的・機械的複合体)素子、及びMEMS素子を組み込んだ小型機器が、注目されている。MEMS素子の基本的な特徴は、機械的構造として構成されている駆動体が素子の一部に組み込まれていることであって、駆動体の駆動は、電極間のクーロン力などを応用して電気的に行われる。
【0004】
半導体プロセスによるマイクロマニシング技術を用いて形成された微小振動素子は、デバイスの占有面積が小さいこと、高いQ値を実現できること、他の半導体デバイスとの集積が可能なこと、という特長により、無線通信デバイスの中でも中間周波数(IF)フィルタ、高周波(RF)フィルタとしての利用がミシガン大学を始めとする研究機関から提案されている(非特許文献1参照)。
【0005】
図13は、非特許文献1に記載された高周波フィルタを構成する振動子、即ち、MEMS型の共振器の概略を示す。この共振器1は、半導体基板2上に絶縁膜3を介して、例えば、多結晶シリコンによる入力側配線層4と出力電極5が形成され、この出力電極5に対向して空間6を挟んで、例えば、多結晶シリコンによる振動可能なビーム、いわゆるビーム型の振動電極7が形成されている。振動電極7は、両端のアンカー部(支持部)8[8A,8B]にて支持されるように、出力電極5をブリッジ状に跨いで入力側配線層4に接続される。振動電極7は入力電極となる。入力側配線4の金(Au)膜9より入力端子t1が導出され、出力電極5より出力端子t2が導出される。
【0006】
この共振器1は、振動電極7と接地間にDCバイアス電圧V1が印加された状態で、入力端子t1を通じて振動電極7に高周波信号S1が供給される。即ち、入力端子t1からDCバイアス電圧V1と高周波信号S1が入力されると、長さLで決まる固有振動数を有する振動電極7が、出力電極5と振動電極7間に生じる静電力で振動する。この振動によって、出力電極5と振動電極7との間の容量の時間変化と、DCバイアス電圧に応じた高周波信号が出力電極5(従って、出力端子t2)から出力される。高周波フィルタでは、振動電極7の固有振動数(共振周波数)に対応した信号が出力される。
【0007】
【非特許文献1】IEEE Journal of Solid-state Circuits, Vol.35, No.4, April 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に高い周波数領域においては、出力信号としての共振ピークが小さくなる傾向があり、高い周波数領域で良好なフィルタ特性を得るためには、共振ピークのSN比を向上する必要がある。ミシガン大学の文献に係るディスク型の振動子によれば、出力信号のノイズ成分は、入力電極である振動電極7と出力電極5間に構成される寄生容量C0を直接透過する信号に起因する。
【0009】
ノイズ成分を低減化する方法として、DCバイアス電圧を印加する振動電極を入力電極と出力電極との間に配置する構成が考えられる。図12は、上記のノイズ成分の低減方法をビーム型構造の共振器に対して適用した先行技術を示す。この共振器11は、例えば半導体基板12上に絶縁膜13を介して入力電極14及び出力電極15が形成され、この入力電極14及び出力電極15に対向して空間16を挟んで振動板となる電極、いわゆるビーム型の振動電極17が形成されてなる。振動電極17は、入出力電極14,15をブリッジ状に跨ぎ、入出力電極14,15の外側に配置した配線層18に接続されるように、両端を支持部(いわゆるアンカー部)19[19A、19B]で一体に支持される。入力電極14、出力電極15、配線層18は、同じ導電材料で形成され、例えば多結晶シリコン膜、アルミニウム膜などの金属膜等にて形成される。
【0010】
入力電極14には入力端子t1が設けられ、入力端子t1を通じて高周波信号S2が入力される。出力電極15には出力端子t2が設けられ、出力端子t2から目的周波数の高周波信号が出力される。振動電極17には、所要のDCバイアス電圧V2が印加される。
【0011】
このMEMS共振器11では、入力電極14に高周波振動S2が入力されると、DCバイアス電圧V2が印加された振動電極17と入力電極14間に生じる静電力で振動電極17が共振し、出力電極15から目的周波数の高周波信号が出力される。このMEMS共振器素子11によれば、入出力電極14及び15の対向面積が小さくかつ入出力電極14及び15間の間隔を大きくとれるので、入出力電極間の寄生容量C0が小さくなる。従って、入出力電極14間の寄生容量C0を直接透過する信号、つまりノイズ成分が小さくなり、出力信号のSN比を向上させることができる。
【0012】
しかしながら、上述の図12に示すようなビーム構造を持つMEMS共振器11においては、インピーダンスが高くなり、即ち、数μm〜数十μmサイズの共振器におけるインピーダンスは数十KΩ〜数百KΩに達するため、システムのインピーダンスとして50Ωが基本である高周波(RF)デバイスへの適用は困難であるという問題が生じる。
【0013】
そこで、インピーダンスを下げる方法として、ビーム構造を有する複数のMEMS共振器素子を電気的に並列接続する構成が考えられる。図10及び図11は、上記のインピーダンスを下げる方法をビーム型構造の共振器に対して適用した先行技術を示す(特願2003−377302号)。
【0014】
この共振器51は、共通の基板52上にビーム構造を有する複数、本例では2つのMEMS共振器素子23[23−1、23−2]を並列的に配置し、これら複数のMEMS共振器素子23[23−1、23−2]を電気的に並列接続して構成される。
即ち、各MEMS共振器素子23−1、23−2は、それぞれ基板52の同一平面上に入力電極14及び出力電極15をそれぞれ2つに分岐して形成し、分岐された各対をなす入出力電極14−1、15−1、入出力電極14−2、15−2に対向しておのおの空間16を挟んで各独立した振動板となるビーム、いわゆるビーム型の振動電極17形成して構成される。各MEMS共振器素子23−1、23−2は、同一基板52上に並列して配置されるとともに、入力電極14−1、14−2が共通に接続され、出力電極15−1,15−2が共通接続されていることから、並列接続された形となる。
【0015】
しかしながら、図11Aに示すように、MEMS共振器素子のような微小共振器同士を近づけて配設した場合は、隣り合う微小共振素子の振動電極17の振動により生じる振動の位相Sが一致し、この振動により微小共振素子23−1に生じた力F1と、微小共振素子23−2に生じた力F2とが相互作用により重畳し、基板12にF1とF2を足し合わした力のベクトルF3が発生する。その結果、その合体した力F3により基板12自体が撓み、その結果として振動電極17の振動によって基板12に不要な振動モードが誘起されるという問題が生じる。図11Bに示すように、基板12に不要な振動が誘起された状態で、微小共振素子23−1の透過特性と、微小共振素子23−2の透過特性とを重ね合わせた場合には、上述した基板12の振動により両微小共振素子の共振特性のピークがずれてしまう。すなわち、重ねあわせた後の透過特性が不安定になり、好ましい透過特性が得られないという問題が生じる。特に、両持ち梁構造のビームを用いた微小共振器の場合は、ビームを支持する支持部を介して振動が基板へ伝わりやすいという問題が生じる。
【0016】
また、複数の微小共振素子を並列状に配置した場合には、各微小共振素子のビームの振動により生じた力が、基板上で足し合わされることになる。その結果、基板上でより大きな力が発生して基板が撓み、不要な振動がさらに大きくなるという問題が生じる。
【0017】
なお、相互作用の影響を低減させるために、隣り合う微小共振素子同士の配置間隔を十分に広くするということも考えられるが、その場合には、基板上における配線や微小共振素子の占有面積が大きくなり、微小共振器の性能が低下するとともに、微小共振器の小型化が図れないという問題が生じる。
【0018】
さらに、上述した微小共振器で周波数フィルタを構成した場合には、微小共振器の透過特性が悪いため、周波数フィルタの信頼性が低下するという問題が生じる。また、上述した微小共振器によるフィルタを通信機に用いた場合には、フィルタの透過特性が悪いため、通信の信頼性が低下するという問題が生じる。
【0019】
本発明は、上述の点に鑑み、基板側の不要な振動を抑制して安定した良好な透過特性が得られる微小共振器を提供するものである。
また、本発明は、このような微小共振器による信頼性の高い周波数フィルタ、さらにこの微小共振器によるフィルタを備えた信頼性の高い通信装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る微小共振器は、同一基板上に微小機械振動を用いた複数の微小共振素子を有し、第1の位相で振動する微小共振素子と、第1の位相と逆位相である第2の位相で振動する微小共振素子とが対をなすように配置されていることを特徴とする。
好ましくは、複数の微小共振素子が電気的に並列に接続されている構成とする。
【0021】
本発明に係る微小共振器の好ましい形態は、同一平面上に配置された入力電極及び出力電極と、前記入力電極と出力電極に対して空間を挟んで配置された振動板となるビームとを備え、電気的に並列に接続されているとともに、同一基板上に並列に配置されている複数の微小共振素子を有し、前記入力電極又は出力電極のいずれか一方の電極が、互いに対向するように配置されている構成とする。
好ましくは、入力電極と出力電極を共通にして並列状に配置された複数の振動板からなるビームを備えている構成とする。
好ましくは、ビームを支持するための支持部材を有し、この支持部材が基板上に設けられている構成とする。
【0022】
本発明に係る周波数フィルタは、同一基板上に微小機械振動を用いた複数の微小共振素子を有し、第1の位相で振動する微小共振素子と、第1の位相と逆位相である第2の位相で振動する微小共振素子とが対をなすように配置されてなる微小共振器を用いて構成されていることを特徴とする。
好ましくは、複数の微小共振素子が電気的に並列に接続されている構成とする。
【0023】
本発明に係る周波数フィルタの好ましい形態は、同一平面上に配置された入力電極及び出力電極と、入力電極と出力電極に対して空間を挟んで配置された振動板となるビームとを備え、電気的に並列に接続されているとともに、同一基板上に並列に配置されている複数の微小共振素子を有し、入力電極又は出力電極のいずれか一方の電極が、互いに対向するように配置されてなる微小共振器を用いて構成されている構成とする。
好ましくは、入力電極と出力電極を共通にして並列状に配置された複数の振動板からなるビームを備えている構成とする。
【0024】
本発明に係る通信装置は、送信信号及び/又は受信信号の帯域制限を行うフィルタを備えた通信装置において、フィルタとして、同一基板上に微小機械振動を用いた複数の微小共振素子を有し、第1の位相で振動する微小共振素子と、第1の位相と逆位相である第2の位相で振動する微小共振素子とが対をなすように配置されている微小共振器によるフィルタが用いられていることを特徴とする。
好ましくは、複数の微小共振素子が電気的に並列に接続されている構成とする。
【0025】
本発明に係る通信装置の好ましい形態は、送信信号及び/又は受信信号の帯域制限を行うフィルタを備え、前記フィルタとして、同一平面上に配置された入力電極及び出力電極と、前記入力電極と出力電極に対して空間を挟んで配置された振動板となるビームとを備え、電気的に並列に接続されているとともに、同一基板上に並列に配置されている複数の微小共振素子を有し、前記入力電極又は出力電極のいずれか一方の電極が、互いに対向するように配置されている微小共振器によるフィルタが用いられている構成とする。
好ましくは、入力電極と出力電極を共通にして並列状に配置された複数の振動板からなるビームを備えている構成とする。
【0026】
本発明の微小共振器では、隣り合う微小共振素子の振動の位相を逆相関係にすることにより、基板上における振動の相互作用の影響を低減することができ、振動により基板に生じる撓み、すなわち、不要な振動を防止することができる。また、本発明の周波数フィルタでは、透過特性の優れた微小共振器により構成されているので、安定したフィルタ動作を行うことができる。さらに、本発明の通信装置では、透過特性の優れた微小共振器によるフィルタを用いることにより、信頼性の高い通信を行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の微小共振器によれば、第1の位相で振動する微小共振素子とこれに逆相の第2の位相で振動する微小共振素子とが対をなすように配置されているので、微小共振器の動作時に、各微小共振素子から基板に伝わる運動エネルギーが相殺されて、基板に不要な振動が誘起されず、良好な透過特性を有する微小共振器を提供することができる。また、複数の微小共振素子が電気的に並列に接続されている微小共振器では、総合的に各微小共振素子から基板に伝わる運動エネルギーが相殺され、安定した良好な透過特性を有する微小共振器、いわゆる微小共振器群が得られる。
【0028】
本発明の微小共振器によれば、微小共振素子に接続される入力電極又は出力電極のいずれか一方の電極が互いに対向するように配置されているので、各微小共振素子の振動により基板に生じる不要な振動を防止することにより、良好な透過特性を備えた微小共振器を提供することができる。
【0029】
また、微小共振器が、入力電極と出力電極を共通にして並列状に配置された複数の振動板からなるビームを備えているときは、多数の微小共振素子を備えることができ、かつコンパクト化された微小共振器を提供することができる。また、ビームが基板上に設けられた支持部材で支持されているときも、良好な透過特性を備えた微小共振器を提供することができる。
【0030】
本発明の周波数フィルタによれば、上述の本発明に係る微小共振器を用いて構成されるので、フィルタ特性が安定した信頼性の高い周波数フィルタを提供することができる。
【0031】
本発明の通信装置によれば、上述の本発明に係る微小共振器による透過特性の高いフィルタを備えているので、通信の信頼性の高い通信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の第1実施の形態を説明する。本発明で対象とする微小共振器は、マイクロスケール、ナノスケールの共振器素子を備えた共振器である。
【0033】
図1は、本発明に係る微小共振器の第1実施の形態を示す。本実施の形態に係る微小共振器21は、共通の基板22上にビーム構造を有する複数、本例では2つの微小共振素子23[23−1、23−2]を並列的に配置し、これら複数の微小共振素子23[23−1,23−2]を電気的に並列接続して構成される。
【0034】
即ち、各微小共振素子23−1、23−2は、図1及び図2に示すように、それぞれ基板22の同一平面上に入力電極24及び出力電極25をそれぞれ2つに分岐して形成し、分岐された各対をなす出入力電極24−1,25−1、出入力電極24−2,25−2に対向してそれぞれ空間26を挟んで各独立した振動板となるビーム、いわゆるビーム型の振動電極27を形成して構成される。各微小共振素子23−1,23−2は、同一基板22上に並列して配置されると共に、入力電極24−1,24−2が共通に接続され、出力電極25−1,25−2が共通に接続されていることから、並列接続された形となる。この微小共振器21は、いわゆる複数の微小共振素子23からなる微小共振器群として構成される。
【0035】
図1に示すように、微小共振素子23−1に接続される入力電極24−1と、微小共振素子23−2に接続される入力電極24−2とが、両微小共振素子間に存在する隙間を隔てて、互いに対向するように配置されている。微小共振素子23−1に接続される出力電極25−1と、微小共振素子23−2に接続される出力電極25−2は、前記入力電極24−1、24−2を挟さむよう外側に配置されている。なお、入力電極と出力電極の配置が逆の関係になってもよい。
【0036】
すなわち、微小共振素子23−1に接続される出力電極25−1と、微小共振素子23−2に接続される出力電極25−2とが、両微小共振素子間に存在する隙間を隔てて対向するように配置してもよい。つまり、隣接する微小共振素子23の間で、入出力電極のいずれか一方の電極が互いに近接するように対向配置されている。
【0037】
本実施の形態では、この複数の微小共振素子23−1,23−2の各入力電極24を共通に接続し、各出力電極25を共通に接続して1つのデバイスとして微小共振器21が構成される。
【0038】
各振動電極27は、入出力電極24,25をブリッジ状に跨ぎ、入出力電極24,25の外側に配置した支持部を兼ねる配線層28に接続されるように両端が支持されている。
基板22は、例えばシリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)などの半導体基板上に絶縁膜を形成した基盤、石英基板やガラス基板のような絶縁性基板等が用いられる。本例では、シリコン基板上にシリコン窒化膜を形成した基盤が用いられる。入力電極24、出力電極25、配線層28は、同じ導電材料で形成することができ、例えば多結晶シリコン膜、アルミニウム(Al)などの金属膜、さらには半導体基板に不純物を導入して形成した不純物半導体層、等にて形成することができる。振動電極27は、例えば多結晶シリコン膜、アルミニウム(Al)などの金属膜にて形成することができる。
【0039】
共通接続された入力電極24には所要の周波数信号、例えば高周波信号が入力され、共通接続された出力電極25から目的周波数の信号、例えば高周波信号が出力される。各振動電極27には所要のDCバイアス電圧が印加される。
【0040】
この微小共振器21の動作は次の通りである。各振動電極27に所要のDCバイアス電圧が印加される。入力電極24に、例えば高周波信号が入力されると、振動電極27と入力電極24間に生じる静電力で、2次の振動モードで振動電極27が共振する。この振動電極27の共振で出力電極25から目的周波数の高周波信号が出力される。他の周波数の信号が入力されたときは、振動電極27が共振せず、出力電極25からは信号が出力されない。
【0041】
本実施の形態に係る微小共振器21によれば、複数の微小共振素子23[23−1,23−2]を並列に配置し、各入力電極24及び各出力電極25をそれぞれ共通に接続して、微小共振素子23−1,23−2を並列接続することにより、微小共振器21の合成インピーダンスを低下させることができる。すなわち、このときの合成インピーダンスZaは、次のようになる。
1/Za=(1/Z1)+(1/Z2)
Z1=Z2とすれば、
Za=(1/2)Z1
となる。
すなわち、各微小共振素子23−1、23−2を同じパターンで形成し、それぞれのインピーダンスZ1,Z2の値を同じにすれば、合成インピーダンスZaは、インピーダンスZ1の2分の1になる。従って、微小共振素子を2つ以上配置して並列接続すれば、適用すべき電子機器に適合する合成インピーダンスを有した微小共振器21が得られる。
【0042】
本実施の形態に係る微小共振器21によれば、図1及び図2に示すように、隣り合う微小共振素子23に接続される入力電極24又は出力電極25のいずれか一方の電極を、互いに対向するように配置することで、図2に示すように隣り合う微小共振素子23−1の振動の位相Sと微小共振素子23−2の振動の位相Sが逆相関係となる。その結果、振動電極27の振動により微小共振素子23−1に生じた力F1と、微小共振素子23−2に生じた力F2とが、基板22上において相互に作用した場合には、それぞれの力F1とF2が、互いに逆方向に作用して打ち消しあい、基板22上に生じる力は0となる。
【0043】
従って、振動により発生する力は0となるので、基板22が撓むことはなく不要な振動が誘起されることはない。すなわち、振動により微小共振素子に生じた力が、支持部28を介して基板22上に作用する場合でも、基板22が撓むことを防止できる。したがって、図3に示すように、この状態で隣り合う微小共振素子23−1、23−2の透過特性を重ね合わせた場合に良好な透過特性を得ることができる。
【0044】
図4は、本発明に係る微小共振器の第2実施の形態を示す。
本実施の形態に係る微小共振器31は、図1に示した微小共振器21の入力電極24及び出力電極25上に、並列状に複数の振動電極27を配置して構成される。すなわち、複数の振動電極27が、各入出力電極24,25の長手方向に沿って平行に配列される。
入力電極24−1、出力電極25−1の上には、微小共振素子列23′−1が、入力電極24−2、出力電極25−2の上には、微小共振素子列23′−2が、それぞれ形成されている。
第1実施の形態と同じ構成に対応する部分には、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0045】
本実施の形態に係る微小共振器31によれば、各微小共振素子23の振動電極27を加算することで、振動電極面積を大きくした1つの微小共振器を得ることができる。また、隣り合う微小共振素子23に接続される入力電極24又は出力電極25のいずれか一方の電極を、互いに対向するように配置させているので、一組の入力電極24及び出力電極25上に複数の振動電極27を並列状に設けたとしても、微小共振素子列23′−1の振動の位相と、それに隣り合う微小共振素子列23−2の振動の位相とを互いに反転させた関係にすることができる。その結果、各振動電極27の振動により微小共振素子列23′−1及び23′−2に生じた力が、基板22上において相互に作用した際には互いの力が逆方向に作用して打ち消しあい、基板22上に生じる力の和は0となる。すなわち、振動により微小共振素子に生じる力によって、基板22が振動することはないので、この状態で隣り合う微小共振素子列の透過特性を重ね合せた場合でも良好な透過特性を得ることができる。
【0046】
図5は、本発明に係る微小共振器の第3実施の形態を示す。本実施の形態に係る微小共振器33は、共通の基板22上にビーム構造を有する複数、本例では4つの微小共振素子23[23−1,23−2,23−3,23−4]を並列的に配置し、これら複数の微小共振素子23[23−1,23−2,23−3,23−4]を電気的に並列接続して構成される。すなわち、各微小共振素子23−1、23−2、23−3,23−4は、それぞれ基板22の同一平面上に入力電極24及び出力電極25をそれぞれ4つに分岐して形成し、分岐された各対をなす入出力電極24−1、25−1、入出力電極24−2,25−2、入出力電極24−3,25−3、入出力電極24−4,25−4に対向してそれぞれ空間を挟んで各独立した振動板となるビーム、いわゆるビーム型の振動電極27を形成して構成される。各微小共振素子23−1〜23−4は、同一基板22上に並列して配置されると共に、入力電極24−1〜24−4が共通に接続され、出力電極25−1〜25−4が共通に接続されていることから、並列接続された形となる。
【0047】
図5に示すように、隣り合う微小共振素子23−1と微小共振素子23−2との関係においては、微小共振素子23−1に接続される入力電極24−1と、微小共振素子23−2に接続される入力電極24−2とが、両微小共振素子間に存在する隙間を隔てて、互いに対向するように配置されている。微小共振素子23−1に接続される出力電極25−1と、微小共振素子23−2に接続される出力電極25−2は、前記入力電極24−1、24−2を挟むよう外側に配置されている。
また、隣り合う微小共振素子23−2と微小共振素子23−3との関係においては、微小共振素子23−2に接続される出力電極25−2と微小共振素子23−3に接続される出力電極25−3とが、両微小共振素子間に存在する隙間を隔てて、互いに対向するように配置されている。微小共振素子23−2に接続される入力電極24−2と、微小共振素子23−3に接続される入力電極24−3は、前記出力電極25−2、25−3を挟むように配置されている。
【0048】
さらに、微小共振素子23−3と微小共振素子23−4との関係においては、微小共振素子23−3に接続される入力電極24−3と、微小共振素子23−4に接続される入力電極24−4とが、両微小共振素子間に存在する隙間を隔てて、互いに対向するように配置されている。微小共振素子23−3に接続される出力電極25−3と、微小共振素子23−4に接続される出力電極25−4は、前記入力電極24−3、24−4を挟むよう外側に配置されている。
すなわち、いずれかの隣り合う微小共振素子23間において、微小共振素子間に存在する隙間を隔てて、入力電極24又は出力電極25のいずれか一方の電極が、互いに対向するように配置されている。
【0049】
本実施の形態では、この複数の微小共振素子23−1〜23−4の各入力電極24を共通に接続し、各出力電極25を共通に接続して1つのデバイスとして微小共振器33が構成される。
【0050】
本実施の形態に係る微小共振器33によれば、複数の微小共振素子を並列的に配置させるように構成した微小共振器において、隣り合う微小共振素子23に接続される入力電極24又は出力電極25のいずれか一方の電極を、互いに対向するように配置させているので、ひとつの微小共振素子の振動の位相と、それに隣り合う微小共振素子の振動の位相とを互いに反転させた関係にすることができる。
【0051】
その結果、振動電極の振動により各微小共振素子に生じた力が、基板22上において相互に作用した場合には互いに逆方向に作用して打ち消しあい、基板22上に生じる力は0となる。すなわち、基板22に作用する力0となり、振動により微小共振素子に生じる力によって基板22が振動することはなく、この状態で隣り合う微小共振素子の透過特性を重ね合わせた場合には良好な透過特性を得ることができる。
【0052】
図6は、本発明に係る微小共振器の第4実施の形態を示す。
本実施の形態に係る微小共振器41は、図5に示した微小共振素子33の入力電極24及び出力電極25上に、並列状に複数の振動電極27を配置して構成される。すなわち、複数の振動電極27が、各入出力電極24,25の長手方向に沿って平行に配列される。
入力電極24−1、出力電極25−1の上には、微小共振素子列23’−1が、入力電極24−2、出力電極25−2の上には、微小共振素子列23’−2が、入力電極24−3、出力電極25−3の上には、微小共振素子列23’−3が、入力電極24−4、出力電極25−4の上には、微小共振素子列23’−4が、それぞれ形成されている。
第3実施の形態と同じ構成に対応する部分には、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0053】
本実施の形態に係る微小共振器41によれば、各微小共振素子23の振動電極27を加算することで、振動電極面積を大きくした1つの微小共振器を得ることができる。また、隣り合う微小共振素子23に接続される入力電極24又は出力電極25のいずれか一方の電極を、互いに対向するように配置させているので、一組の入力電極24及び出力電極25上に複数の振動電極27を並列状に設けたとしても、各列の微小共振素子、例えば微小共振素子列23'−1の振動の位相と、それに隣り合う微小共振素子列、例えば微小共振素子列23’−2の振動の位相とを逆位相とし、互いに反転させた関係にすることができる。
【0054】
その結果、各振動電極27の振動により各微小共振素子列23’−1〜23’−4に生じた力が、基板22上において相互に作用した際には互いの力が逆方向に作用して打ち消しあい、基板22上に生じる力の和は0となる。すなわち、振動により微小共振素子に生じる力によって、基板22が振動することはないので、隣り合う微小共振素子列の透過特性を重ね合わせた場合に良好な透過特性を得ることができる。
【0055】
次に、図7及び図8を用いて本実施の形態の微小共振器の製造方法を説明する。なお、図では要部の微小共振素子の断面構造を示す。
本実施の形態においては、まず、図7Aに示すように、シリコン基板51の上面に所要の膜厚の絶縁膜52を形成した基板22を用意する。本例では、シリコン基板51上に膜厚1μmのシリコン窒化(SiN)膜52を形成して基板22を形成する。
【0056】
次に、図7Bに示すように、基板22の絶縁膜52上に下部電極、すなわち入出力電極となる所要の膜厚の導電性膜53を形成する。本例では、シリコン窒化膜52上に膜厚0.5μmの多結晶シリコン膜(Poly-Si)53を蒸着により形成する。
次いで、図7Cに示すように、多結晶シリコン膜53を選択エッチングによりパターニングして下部電極となる入力電極24及び出力電極25と、配線層28とを形成する。この出入力電極24,25及び配線層28のパターンは、前述の図1、図4、図5、図6に対応したパターンに形成される。
【0057】
次に、図7Dに示すように、入出力電極24,25及び配線層28の上面を含む基板22の前面に所要の膜厚の犠牲層54を形成する。本例では、犠牲層となる膜厚0.5μmのシリコン酸化(SiO2)膜54を蒸着により形成する。
次に、図7Eに示すように、犠牲層54を平坦化処理して、入出力電極24,25上の犠牲層54の膜厚を所要の膜厚に設定する。この犠牲層54の膜厚は、前述の振動電極27と入出力電極24,25との間の空間26の高さに相当する。本例では、CMP(化学機械研磨)法を用いて犠牲層のシリコン酸化膜54を平坦化し、入出力電極24、25の上に膜厚0.1μmのシリコン酸化膜54が残るようにする。
【0058】
つぎに、図8Fに示すように、犠牲層54の一部を選択エッチングして配線層28の一部が露出するコンタクト孔55を形成する。
次に、図8Gに示すように、犠牲層54上に振動電極、すなわちビームとなる所要の膜厚の導電性膜56を形成する。このとき、導電性膜56の一部はコンタクト孔55を通じて配線28に接続される。本例では、ビームとなる膜厚0.5μmの多結晶シリコン膜56を蒸着により形成する。
なお、前述の多結晶シリコン膜53、56、シリコン酸化膜54は、化学蒸着法であるCVD(化学気相成長)法で形成することができるが、物理蒸着法で形成することも可能である。
【0059】
次に、図8Hに示すように、導電性膜である多結晶シリコン膜56をパターニングして振動電極となるビーム27を形成する。
【0060】
次に、図8Iに示すように、犠牲層54を選択的に除去する。本例では、犠牲層であるシリコン酸化膜54をフッ酸により除去する。これにより、入力電極24及び出力電極25に対して所要の空間26を挟んでビーム、従って、振動電極27が配置された微小共振器21、31、33又は41を得る。
【0061】
本発明は、上述した各実施の形態の微小共振器を用いて周波数フィルタを構成することができる。この微小共振器によるフィルタは、高周波(RF)フィルタ、中間周波(IF)フィルタ等として用いることができる。
【0062】
本発明は、上述した実施の形態の微小共振器による知る多を用いて構成される携帯電話機、無線LAN機器、無線トランシーバ、テレビチューナ、ラジオチューナ等の、電磁波を利用して通信する通信装置を提供することができる。
【0063】
次に、上述した本発明の実施の形態のフィルタを適用した通信装置の構成例を、図9を参照して説明する。
まず送信系の構成について説明すると、Iチャンネルの送信データとQチャンネルの送信データを、それぞれデジタル/アナログ変換器(DAC)201I及び201Qに供給してアナログ信号に変換する。変換された各チャンネルの信号は、バンド・パス・フィルタ202I及び202Qに供給され、送信信号の帯域以外の信号成分を除去した後に、バンド・パス・フィルタ202I及び202Qの出力を、変調器210に供給する。
【0064】
変調器210では、各チャンネル信号を、バッファアンプ211I及び211Qを介してミキサ212I及び212Qに供給する。この信号と、送信用のPLL(phase-locked loop)回路203から供給される送信周波数に対応した周波数信号とを混合して変調し、両混合信号を加算器214で加算して一系統の送信信号とする。この場合、ミキサ212Iに供給する周波数信号は、位相器213で信号位相を90°シフトさせてあり、Iチャンネルの信号とQチャンネルの信号とが直交変調されるようにしてある。
【0065】
加算器214の出力は、バッファランプ215を介して電力増幅器204に供給し、所定の送信電力となるように増幅する。電力増幅器204で増幅された信号は、送受信切替器205と高周波フィルタ206を介してアンテナ207に供給され、アンテナ207から無線送信される。高周波フィルタ206は、この通信装置で送信及び受信する周波数帯域以外の信号成分を除去するバンド・パス・フィルタである。
【0066】
受信系の構成としては、アンテナ207で受信した信号を、高周波フィルタ206及び送受信切替器205を介して高周波部220に供給する。高周波部220では、受信信号を低ノイズアンプ(LNA)221で増幅した後、バンド・パス・フィルタ222に供給して、受信周波数帯域以外の信号を除去し、この除去された信号を、バッファアンプ223を介してミキサ224に供給する。そして、チャンネル選択用PLL回路251から供給される周波数信号を混合して、所定の送信チャンネルの信号を中間周波数信号とし、その中間周波信号を、バッファアンプ225を介して中間周波回路230に供給する。
【0067】
中間周波回路230では、供給される中間周波信号を、バッファアンプ231を介してバンド・パス・フィルタ232に供給して、中間周波信号の帯域以外の信号成分を除去する。この除去された信号を自動ゲイン調整回路(AGC回路)233に供給して、ほぼ一定のゲインの信号とする。自動ゲイン調整回路233でゲイン調整された中間周波数信号は、バッファアンプ234を介して復調器240に供給される。
【0068】
復調器240では、供給される中間周波信号を、バッファアンプ241を介してミキサ242I及び242Qに供給して、中間周波用PLL回路252から供給される周波数信号を混合して、受信したIチャンネルの信号成分とQチャンネルの信号成分を復調する。この場合、I信号用のミキサ242Iには、位相器243で信号位相を90°シフトさせた周波数信号を供給するようにしてあり、直交変調されたIチャンネルの信号成分とQチャンネルの信号成分を復調する。
【0069】
復調されたIチャンネルとQチャンネルの信号は、それぞれバッファランプ244I及び244Qを介してバンド・パス・フィルタ253I及び253Qに供給され、Iチャンネル及びQチャンネルの信号以外の信号成分が除去される。この除去された信号をアナログ/デジタル変換器(ADC)254I及び254Qに供給し、サンプリングしてデジタルデータ化し、Iチャンネルの受信データ及びQチャンネルの受信データを得る。
【0070】
ここまで説明した構成において、各バンド・パス・フィルタ202I、202Q、206,222,232,253I、253Qの一部又は全部を、上述した実施の形態のフィルタを適用して帯域制限することが可能である。
この通信装置によれば、前述したフィルタ、すなわち適用すべき通信装置に適合する合成インピーダンスを有したフィルタを備えるので、信頼性の高い通信装置を提供することができる。また、本発明の通信装置によれば、透過特性の高い微小共振器によるフィルタを備えているので、通信の信頼性の高い通信装置を提供することができる。
【0071】
図9の例では、各フィルタをバンド・パス・フィルタとして構成したが、所定の周波数よりも下の周波数帯域だけを通過させるロー・パス・フィルタや、所定の周波数よりも上の周波数帯域だけを通過させるハイ・パス・フィルタとして構成し、それらのフィルタに上述した各実施の形態の構成のフィルタを適用してもよい。また図9の例では、無線送信及び無線受信を行う通信装置としたが、有線の伝送路を介して送信及び受信を行う通信装置が備えるフィルタに適用してもよく、さらに送信処理だけを行う通信装置や受信処理だけを行う通信装置が備えるフィルタに、上述した実施の形態のフィルタを適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る微小共振器の第1実施の形態を示す構成図である。
【図2】図1の要部における微小共振素子の断面図である。
【図3】本発明に係る微小共振器の共振特性を示す図である。
【図4】本発明に係る微小共振器の第2実施の形態を示す構成図である。
【図5】本発明に係る微小共振器の第3実施の形態を示す構成図である。
【図6】本発明に係る微小共振器の第4実施の形態を示す構成図である。
【図7】A〜E 本発明に係る微小共振器の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図(その1)である。
【図8】F〜I 本発明に係る微小共振器の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図(その2)である。
【図9】本発明の通信装置の一実施の形態を示す回路図である。
【図10】先行技術に係る微小共振器の例を示す構成図である。
【図11】A 図10の要部における微小共振素子の断面図である。 B 図10の隣り合う微小共振素子の透過特性を重ねあわせた例を示す図である。
【図12】先行技術に係る微小共振器の例を示す断面図である。
【図13】従来のMEMS共振器の断面図である。
【符号の説明】
【0073】
21、31、33、41 微小共振器
22 基板
23 微小共振素子
24 入力電極
25 出力電極
26 空間
27 ビーム(振動電極)
28 支持部
202、206、222、232、253 フィルタ
201、254 デジタル/アナログ変換器
207 アンテナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一基板上に微小機械振動を用いた複数の微小共振素子を有し、
第1の位相で振動する微小共振素子と、この第1の位相と逆位相である第2の位相で振動する微小共振素子とが対をなすように配置されていることを特徴とする微小共振器。
【請求項2】
前記複数の微小共振素子が電気的に並列に接続されていることを特徴とする請求項1記載の微小共振器。
【請求項3】
同一基板上に配置された入力電極及び出力電極と、
前記入力電極と出力電極に対して空間を挟んで配置された振動板となるビームとを備えた電気的に並列に接続されている複数の微小共振素子を有し、
前記入力電極又は出力電極のいずれか一方の電極が、互いに対向するように配置されていることを特徴とする微小共振器。
【請求項4】
前記微小共振素子が、前記入力電極と出力電極を共通にして並列状に配置された複数の振動板からなるビームを備えていることを特徴とする請求項3記載の微小共振器。
【請求項5】
前記ビームを支持するための支持部材を有し、この支持部材が前記基板上に設けられていることを特徴とする請求項3又は4記載の微小共振器。
【請求項6】
同一基板上に微小機械振動を用いた複数の微小共振素子を有し、
第1の位相で振動する微小共振素子と、該第1の位相と逆位相である第2の位相で振動する微小共振素子とが対をなすように配置されてなる微小共振器を用いて構成されていることを特徴とする周波数フィルタ。
【請求項7】
前記複数の微小共振素子が電気的に並列に接続されていることを特徴とする請求項6記載の周波数フィルタ。
【請求項8】
同一基板上に配置された入力電極及び出力電極と、
前記入力電極と出力電極に対して空間を挟んで配置された振動板となるビームとを備え、
電気的に並列に接続されている配置されている複数の微小共振素子を有し、
前記入力電極又は出力電極のいずれか一方の電極が、互いに対向するように配置されてなる微小共振器を用いて構成されていることを特徴とする周波数フィルタ。
【請求項9】
前記微小共振器が、前記入力電極と出力電極を共通にして並列状に配置された複数の振動板からなるビームを備えていることを特徴とする請求項8記載の周波数フィルタ。
【請求項10】
送信信号及び/又は受信信号の帯域制限を行うフィルタを備えた通信装置において、前記フィルタとして、
同一基板上に微小機械振動を用いた複数の微小共振素子を有し、
第1の位相で振動する微小共振素子と、該第1の位相と逆位相である第2の位相で振動する微小共振素子とが対をなすように配置されている微小共振器によるフィルタが用いられていることを特徴とする通信装置。
【請求項11】
前記フィルタにおける微小共振器は、
前記複数の微小共振素子が電気的に並列に接続されていることを特徴とする請求項10記載の通信装置。
【請求項12】
送信信号及び/又は受信信号の帯域制限を行うフィルタを備えた通信装置において、前記フィルタとして、
同一平面上に配置された入力電極及び出力電極と、
前記入力電極と出力電極に対して空間を挟んで配置された振動板となるビームとを備えた電気的に並列に接続されている複数の微小共振素子を有し、
前記入力電極又は出力電極のいずれか一方の電極が、互いに対向するように配置されている微小共振器によるフィルタが用いられていることを特徴とする通信装置。
【請求項13】
前記フィルタにおける微小共振器は、
前記入力電極と出力電極を共通にして並列状に配置された複数の振動板からなるビームを備えていることを特徴とする請求項12記載の通信装置。
【請求項1】
同一基板上に微小機械振動を用いた複数の微小共振素子を有し、
第1の位相で振動する微小共振素子と、この第1の位相と逆位相である第2の位相で振動する微小共振素子とが対をなすように配置されていることを特徴とする微小共振器。
【請求項2】
前記複数の微小共振素子が電気的に並列に接続されていることを特徴とする請求項1記載の微小共振器。
【請求項3】
同一基板上に配置された入力電極及び出力電極と、
前記入力電極と出力電極に対して空間を挟んで配置された振動板となるビームとを備えた電気的に並列に接続されている複数の微小共振素子を有し、
前記入力電極又は出力電極のいずれか一方の電極が、互いに対向するように配置されていることを特徴とする微小共振器。
【請求項4】
前記微小共振素子が、前記入力電極と出力電極を共通にして並列状に配置された複数の振動板からなるビームを備えていることを特徴とする請求項3記載の微小共振器。
【請求項5】
前記ビームを支持するための支持部材を有し、この支持部材が前記基板上に設けられていることを特徴とする請求項3又は4記載の微小共振器。
【請求項6】
同一基板上に微小機械振動を用いた複数の微小共振素子を有し、
第1の位相で振動する微小共振素子と、該第1の位相と逆位相である第2の位相で振動する微小共振素子とが対をなすように配置されてなる微小共振器を用いて構成されていることを特徴とする周波数フィルタ。
【請求項7】
前記複数の微小共振素子が電気的に並列に接続されていることを特徴とする請求項6記載の周波数フィルタ。
【請求項8】
同一基板上に配置された入力電極及び出力電極と、
前記入力電極と出力電極に対して空間を挟んで配置された振動板となるビームとを備え、
電気的に並列に接続されている配置されている複数の微小共振素子を有し、
前記入力電極又は出力電極のいずれか一方の電極が、互いに対向するように配置されてなる微小共振器を用いて構成されていることを特徴とする周波数フィルタ。
【請求項9】
前記微小共振器が、前記入力電極と出力電極を共通にして並列状に配置された複数の振動板からなるビームを備えていることを特徴とする請求項8記載の周波数フィルタ。
【請求項10】
送信信号及び/又は受信信号の帯域制限を行うフィルタを備えた通信装置において、前記フィルタとして、
同一基板上に微小機械振動を用いた複数の微小共振素子を有し、
第1の位相で振動する微小共振素子と、該第1の位相と逆位相である第2の位相で振動する微小共振素子とが対をなすように配置されている微小共振器によるフィルタが用いられていることを特徴とする通信装置。
【請求項11】
前記フィルタにおける微小共振器は、
前記複数の微小共振素子が電気的に並列に接続されていることを特徴とする請求項10記載の通信装置。
【請求項12】
送信信号及び/又は受信信号の帯域制限を行うフィルタを備えた通信装置において、前記フィルタとして、
同一平面上に配置された入力電極及び出力電極と、
前記入力電極と出力電極に対して空間を挟んで配置された振動板となるビームとを備えた電気的に並列に接続されている複数の微小共振素子を有し、
前記入力電極又は出力電極のいずれか一方の電極が、互いに対向するように配置されている微小共振器によるフィルタが用いられていることを特徴とする通信装置。
【請求項13】
前記フィルタにおける微小共振器は、
前記入力電極と出力電極を共通にして並列状に配置された複数の振動板からなるビームを備えていることを特徴とする請求項12記載の通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−157830(P2006−157830A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349054(P2004−349054)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]