説明

微小構造化された抗微生物フィルム

微小構造化抗微生物フィルム、抗微生物フィルムアセンブリ、微生物による汚染から表面を保護する方法、及び微小構造化抗微生物フィルムの製造方法。微小構造化抗微生物フィルムは、第1の主面を含む第1の面を有する基板と、前記基板の第1の面に画定された複数の微小構造化ウェルと、前記複数のウェルの少なくとも一部のものの内部に配置される抗微生物物質とを有しうる。複数のウェルのそれぞれは、基板の第1の主面から所定の距離だけ離間した底部によって少なくとも部分的に画定されうる。抗微生物物質を、抗微生物物質の上面が基板の第1の主面から所定の距離だけ離間するように配置することができる。抗微生物フィルムは微小構造化抗微生物フィルムのロール又は積層体を含みうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的には抗微生物フィルムに関し、詳細には微小構造化された抗微生物フィルム及びこうした微小構造化された抗微生物フィルムのアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
微生物(又はマイクローブ)による汚染は人の寿命及び健康に重大な影響を及ぼしうる。詳細には、食品又は生活環境周辺の表面の微生物による汚染は、疾病率、死亡率、労働者の生産性の低下、及びヘルスケアのコストの増大につながりうる。汚染は食品や生活環境周辺の様々な表面において起こりうるものであり、1種類以上の微生物による場合があり、それらの一部のものは病原体でありうる。一般集団により生育、購入、及び消費される食品は微生物を含有又は獲得しうるものであり、こうした微生物はそれらが置かれ、保存、又はパッケージングされる環境の関数として繁殖又は増殖しうる。このような増殖により、食品の腐敗が早まり、毒素を産生したり感染可能な量にまで分裂しうる病原性生物の増殖につながりうる。生活環境周辺の表面は洗浄又は消毒される前に複数の人がこうした表面と接触しうることから、汚染された生活環境周辺の表面は微生物の蔓延を促進しうるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
望ましくない微生物の蔓延に対処するため、頻繁に人と接触する、潜在的に汚染された表面は定期的に洗浄及び消毒することができる。これにより、所定表面上の微生物の濃度は速やかに低減されるものの、微生物による汚染を継続的に防止するには一般的にこうした表面を頻繁に洗浄及び消毒を繰り返す必要がある。汚染及び/又は増殖に対処するための別の方法は、潜在的に有害な微生物を不活化する衛生上の処置を実施することである。しかしながら、手洗い及び/又は抗微生物拭き取り用品、スプレイ又はゲルの使用などのこうした衛生上の処置の多くは、効果を得るためには定期的に行う必要が一般的にあり、その結果、低いユーザーコンプライアンスのために効果が限定されたものとなってしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の特定の実施形態は、微小構造化された抗微生物フィルムを提供するものである。微小構造化抗微生物フィルムは、第1の主面を含む第1の面を有する基板と、基板の第1の面に画定された複数の微小構造化ウェルとを備えうる。複数のウェルのそれぞれは、基板の第1の主面から所定の距離だけ離間してもよい底部によって少なくとも部分的に画定されうる。複数のウェルのそれぞれは前記第1の主面の平面内に少なくとも1つの寸法を有し、該少なくとも1つの寸法は1000マイクロメートル未満であってもよい。微小構造化抗微生物フィルムは、複数のウェルの少なくとも一部のものの内部に配置され、前記基板の第1の主面から所定の距離だけ離間した上面を有する抗微生物物質を更に含みうる。
【0005】
本開示の特定の実施形態は、微小構造化された抗微生物フィルムを提供する。フィルムは、複数の交差壁部の上面によって少なくとも部分的に画定された第1の主面を含む第1の面を有する基板と、前記基板の第1の面に画定された複数の微小構造化ウェルとを有しうる。前記複数のウェルのそれぞれは底部と少なくとも3つの前記複数の交差壁部とによって少なくとも部分的に画定され、前記底部は前記基板の第1の主面から所定の距離だけ離間してもよい。複数のウェルのそれぞれは前記第1の主面の平面内に少なくとも1つの寸法を有し、上記少なくとも1つの寸法は1000マイクロメートル未満であってもよい。微小構造化抗微生物フィルムは、複数のウェルの少なくとも一部のものの内部に配置され、前記基板の第1の主面から所定の距離だけ離間した上面を有する抗微生物物質を更に含みうる。
【0006】
本開示の特定の実施形態は、抗微生物フィルムアセンブリを提供する。抗微生物フィルムアセンブリは、第1の抗微生物フィルム及び第2の抗微生物フィルムを有しうる。第1の抗微生物フィルム及び前記第2の抗微生物フィルムのそれぞれは、第1の主面を有する第1の面及び第2の主面を有する第2の面を有する基板と、前記基板の前記第1の面に画定された複数の微小構造化ウェルとを有しうる。前記複数のウェルは、前記基板の第1の主面から陥入されてもよい。第1の抗微生物フィルム及び前記第2の抗微生物フィルムのそれぞれは、前記複数のウェル内に配置される抗微生物物質を更に有しうる。第1の抗微生物フィルムは前記基板の第2の主面に結合された接着剤を更に有してもよく、第1の抗微生物フィルムの接着剤は第2の抗微生物フィルムの第1の主面と接触するように配置されてもよい。
【0007】
本開示の特定の実施形態は、微生物による汚染から表面を保護するための方法を提供する。本方法は、第1の抗微生物フィルム及び第2の抗微生物フィルムを与える工程を含みうる。第1の抗微生物フィルム及び前記第2の抗微生物フィルムのそれぞれは、第1の主面を有する第1の面及び第2の主面を有する第2の面を有する基板と、基板の前記第1の面に画定され、前記第1の主面から陥入された複数のウェルとを有しうる。第1の抗微生物フィルム及び前記第2の抗微生物フィルムのそれぞれは、複数のウェル内に配置された抗微生物物質と、前記第2の主面に結合された接着剤とを更に有しうる。第1の抗微生物フィルムの接着剤は第2の抗微生物フィルムの第1の主面と接触してもよく、第2の抗微生物フィルムの接着剤は、保護しようとする表面に結合されてもよい。本方法は更に、第1の抗微生物フィルムの接着剤を第2の抗微生物フィルムの第1の主面との接触状態から剥離することによって第2の抗微生物フィルムから第1の抗微生物フィルムを剥離して第2の抗微生物フィルムの抗微生物物質を露出させる工程を更に含んでもよい。
【0008】
本開示の特定の実施形態は、微小構造化抗微生物フィルムを製造するための方法を提供するものである。本方法は、微小構造化抗微生物フィルムを与える工程を含みうる。微小構造化抗微生物フィルムは、第1の主面を含む第1の面を有する基板と、基板の第1の面に画定された複数の微小構造化ウェルとを備えうる。複数のウェルのそれぞれは、前記基板の第1の主面から陥入されてもよい。本方法は更に、基板の第1の主面から所定の距離だけ離間した上面を抗微生物物質が有するように複数の微小構造化ウェルの内部に抗微生物物質を配置する工程を更に含んでもよい。
【0009】
本発明のその他の特徴及び態様は、「発明を実施するための形態」及び付属の図面を考慮することによって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示の一実施形態による微小構造化抗微生物フィルムの概略部分斜視図。
【図2】図1の2−2線に沿った、図1の微小構造化抗微生物フィルムの概略側断面図。
【図3】図1及び2の微小構造化抗微生物フィルムを有する、本開示の一実施形態による抗微生物フィルムアセンブリの概略側断面図。
【図4】本開示の別の実施形態による微小構造化抗微生物フィルムの概略部分斜視図。
【図5】図4の5−5線に沿った、図4の微小構造化抗微生物フィルムの概略側断面図。
【図6】図4及び5の微小構造化抗微生物フィルムを有する、本開示の別の実施形態に基づいた抗微生物フィルムアセンブリの概略側断面図。
【図7】実施例で使用した微小構造化フィルムの光学顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のいずれかの実施形態を詳細に説明するのに先立って、本発明は、以下の説明文に記載されるかあるいは以下の図面に示される構成の詳細及び構成要素の配置にその用途が限定されない点は理解されるべきである。本発明には他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施又は実行することが可能である。更に、本明細書で使用される専門語句及び専門語は説明を目的としたものであり、発明を限定するものとして見なされるべきではない点は理解されるべきである。「含む(including)」、「備える(comprising)」、又は「有する(having)」、及びこれらの変形は、それらの後に列記される要素及びそれらの均等物、並びに更なる要素を包含することを意味するものである。特に特定又は限定されないかぎり、「結合された」なる用語及びその変形は広義で用いられるものであり、直接的及び間接的な結合の両方を包含するものである。その他の実施形態を利用することも可能であり、本開示の範囲から逸脱することなく構造的又は論理的な変更を行うことが可能である点は理解されるべきである。更に、「上側」、「下側」、「下部」、「上部」といった用語は、各要素を互いとの関係において説明するためにのみ用いられるものであり、装置の特定の向きを示すものでも、装置の必要又は要求される向きを示す若しくは示唆するものでも、あるいは本明細書に述べられる発明が使用時にどのように使用、取り付け、表示、又は配置されるかを特定するものでもない。
【0012】
本開示は、一般的には抗微生物フィルムに関し、詳細には微小構造化された抗微生物フィルム及びこうした微小構造化された抗微生物フィルムのアセンブリに関する。本開示は更に、抗微生物フィルムの製造方法、及び微生物汚染から表面を保護するための方法に関する。本開示の微小構造化された抗微生物フィルム又はフィルムのアセンブリは、抗微生物フィルムと接触する人、食品及び/又は表面に抗微生物物質が移ることなく、抗微生物活性を与えることが望ましい様々な用途において使用することができる。
【0013】
「微生物」、「マイクローブ(microbe)」なる用語、又はその派生語は、細菌、ウイルス、藻類、及び原生動物の1以上のものを含むがこれらに限定されない任意の微小な生物を指して用いられる。特定の場合では、対象とする微生物は病原性のものであり、本明細書では「病原体」なる用語は任意の病原性微生物を指して用いられる。
【0014】
「抗微生物活性」なる用語は、一般に、(1)1以上の微生物を殺滅する(すなわち、「殺生物」活性を与える)、(2)1以上の微生物の成長を阻害する、(3)1以上の微生物の繁殖を阻害する、又はこれらの組み合わせの内の1以上を含む。
【0015】
「微小構造」又は「微小構造化された形成部」なる用語、及びこれらの派生語は、突出するか(例えば、壁部)あるいは陥入した(例えば、壁部によって少なくとも部分的に画定されたウェル)認識可能な幾何学形状である構造又は構造を有する形成部を指して一般に用いられる。例えば、微小構造は、液体、固体、半固体、ゼラチン状物質、別の好適な物質、又はこれらの組み合わせを保持するように形成された微小構造化ウェルを有しうる。微小構造は更に、微小構造化されたウェルを少なくとも部分的に画定する壁部又は底部を更に有しうる。更に、微小構造は、上記の微小構造のいずれかに設けられた突起部、陥入部などを有しうる。例えば、微小構造化ウェル又は壁部にはテクスチャーが与えられてもよく、こうしたテクスチャーもまた微小構造と呼ぶことができる。
【0016】
「微小構造化表面」なる用語は、微小構造又は微小構造化された形成部を有する表面を指して一般に用いられる。
【0017】
「微小構造化されたフィルム」なる用語は、微小構造又は微小構造化された形成部を有するフィルム又は他の基材を指して一般に用いられる。本開示では、「微小構造化されたフィルム」なる用語は、その表面に微小構造化されたウェルが画定されたフィルム又は他の基材を一般に指す。微小構造化されたフィルム又は基材は、1以上の微小構造化された表面を有しうる。
【0018】
「微小複製」及びその派生語は、構造化された表面形成部が製造時及び製造後に個々の形成部の忠実性を維持するようなプロセスによる微小構造化表面の製造を指して一般に用いられる。
【0019】
「一次」なる用語は、微小構造に関して用いられる場合、同じ表面上のすべての微小構造の内、最も規模の大きな微小構造を指して一般に用いられる。
【0020】
「二次」なる用語は、微小構造に関して用いられる場合、同じ表面上の1以上の一次微小構造に対してより小さな規模の微小構造を有する微小構造を指して一般に用いられる。
【0021】
図1及び2は、本開示の一実施形態に基づく微小構造化された抗微生物フィルム100を示したものである。微小構造化された抗微生物フィルム100は、微小構造化された第1の面104と第2の面106とを有する基板12を有する。基板102の第1の面104は第1の主面108を含み、基板102の第2の面106は第2の主面110を含んでいる。図1及び2に示される実施形態では、第1の主面108は複数の交差する壁部112により、詳細には複数の交差する壁部112の上面により、少なくとも部分的に画定されている。
【0022】
基板102の第1の面104は、それぞれが4個の壁部112及び1個の底部116によって少なくとも部分的に画定されている複数のウェル114を更に有している。底部116は、基板102の第1の主面108から一定の距離だけ離間しているため、ウェル114は基板102の第1の面104において陥入されている。壁部112及び底部116は1個のウェル114の内面118を少なくとも部分的に画定しており、ウェル114の内面118は基板102の第1の主面108から内側に延びている。ウェル114は、後に詳述する各種の微小複製プロセスを含む様々なプロセスによって形成されうる。基板102の第1の面104は基板102の「微小構造化面」104と呼ぶこともでき、基板102の第1の主面108は基板102の「微小構造化表面」108と呼ぶこともできる。
【0023】
微小構造化された抗微生物フィルム100は更に、基板102の第2の面106上の第2の主面110に結合された接着剤119を有する。接着剤119は、微小構造化された抗微生物フィルム100の所定表面への結合を助けることによって、その表面に抗微生物活性を与える。接着剤119を基板102の第2の面106に隣接して配置することにより、基板102の第1の面104が露出する、すなわち、微小構造化された抗微生物フィルム100が結合される表面から遠ざかる方向に面することになる。接着剤119は、後に詳述するように様々な材料で形成されうる。しかしながら特定の実施形態では、接着剤119を含まない。例えば、特定の実施形態では、微小構造化された抗微生物フィルム100を包装材料(例えば、食品用ラップ)として使用することが可能であり、接着剤を使用する必要はない。しかしながら、特定の実施形態では、後に詳述するように、接着剤119は静電荷を有してもよく、これも包装材料においては有用でありうる。
【0024】
図1及び2に示される実施形態では、接着剤119は基板102の第2の面106に結合された連続層である。しかしながら、特定の実施形態では、接着剤119は連続的、不連続的(例えば、不連続部分により形成されるパターン)、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0025】
特定の実施形態では、微小構造化された抗微生物フィルム100の厚さ(接着剤119を含む)は少なくとも約50マイクロメートルであり、特定の実施形態では少なくとも約500マイクロメートルであり、特定の実施形態では少なくとも約5000マイクロメートルであってもよい。特定の実施形態では、微小構造化された抗微生物フィルム100の厚さは約1000マイクロメートル以下であり、特定の実施形態では約100マイクロメートル以下であり、特定の実施形態では約50マイクロメートル以下であってもよい。
【0026】
基板102を、金属、高分子材料、ガラス、セラミックス、下記の処理方法のいずれかによって加工可能な他の材料、及びこれらの組み合わせ(例えば、複合材料)などの様々な材料で形成することができる。好適な高分子材料の例としては、これらに限定されるものではないが、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレンなど)、ポリ塩化ビニル、オレフィン類のコポリマー(例、プロピレンのコポリマーなど)、エチレンと酢酸ビニル又はビニルアルコールとのコポリマー、ヘキサフルオロプロピレンのコポリマー及びターポリマー並びにこれらの表面改質体などのフッ素化熱可塑性樹脂、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレートなど)及びそのコポリマー、ポリウレタン、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリレート(例、ポリメチルメタクリレート)、生分解性ポリマー(例、セルロース誘導体、ポリグリコール酸、ポリ乳酸など)、上記の充填物(例、ケイ酸塩、シリカ、アルミン酸塩、長石、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタンなどの1以上の充填剤を用いたもの)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。上記に列記した材料のいずれかから形成された共押出しフィルム及び積層フィルムも好適でありうる。特定の実施形態では微小構造化方面108は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらのコポリマーを含む。「(メタ)アクリレート」なる用語は、メタクリレート、アクリレート、又はこれらの組み合わせを一般に指す。
【0027】
特定の実施形態では基板102はガス透過性であり、特定の実施形態では基板102はガス不透過性である。更に基板102は、微小構造化された抗微生物フィルム100の所望の用途に応じて、不透明、半透明、透明、又はこれらの組み合わせであってもよい(例えば、基板102は少なくとも1つの不透明な領域及び少なくとも1つの透明な領域を有してもよい)。
【0028】
基板102の微小構造化表面108を、鋳造、コーティング、及び/又は圧縮法などを含むがこれらに限定されない各種の微小複製法を含む様々な方法によって形成することができる。例えば、微小構造化表面108の微細構造化は、(1)微小構造化パターンを有する鋳型を用いて溶融した熱可塑性樹脂を鋳造する、(2)微小構造化パターンを有する鋳型に液体をコーティングし、液体を固化し、得られたフィルムを取り出す、及び/又は(3)熱可塑性フィルムをニップロールに通過させることにより微小構造化パターンを有する鋳型に対して圧縮する(エンボス加工)、の少なくとも1つによって実現することが可能である。鋳型は、鋳型材料及び所望のトポグラフィーを有する形成部に一部応じて選択される、当該技術分野において周知の多くの方法のいずれかを用いて形成することが可能である。例示的な方法としては、エッチング(例、化学的エッチング、機械的エッチング、又はレーザーアブレーション又は反応性イオンエッチングなどの他のアブレーション手段、及びこれらの組み合わせ)、フォトリソグラフィー、ステレオリソグラフィー、マイクロマシニング、ローレット切り(例えば、切削ローレット切り又は酸補助型ローレット切り)、スコアリング、切削など、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0029】
微小構造化表面108を形成するための代替的な方法としては、熱可塑性押出し、硬化性液体コーティング法、及び、やはり硬化させることが可能な熱可塑性層のエンボス加工が挙げられる。基板102の微小構造化表面108を形成するための基板材料及び異なるプロセスに関する更なる情報は、例えば、ハルバーソン(Halverson)らの国際特許出願公開第2007/070310号、ハンシェン(Hanschen)らの米国特許出願公開第2003/0235677号、及びグラハム(Graham)らの国際特許出願公開第2004/000569号に見られる。
【0030】
微小複製法を用いることにより、微小構造化表面108を、製品間で大きなばらつきがないように、かつ比較的複雑な処理方法を使用せずに大量生産することができる。特定の実施形態では、微小複製法により、製造時及び製造後に製品間におけるばらつきが約50マイクロメートル以下であるような個々の形成部の忠実度を維持した微小構造化表面を製造することができる。特定の実施形態では、微小複製法により、製造時及び製造後に製品間におけるばらつきが25マイクロメートル以下であるような個々の形成部の忠実度を維持した微小構造化表面108を製造することができる。特定の実施形態では、微小構造化表面108は、約50マイクロメートル〜0.05マイクロメートル、特定の実施形態では約25マイクロメートル〜1マイクロメートルの解像度に維持された個々の形成部の忠実度を有するトポグラフィー(すなわち、物体、その場所又は領域の表面形成部)を有する。
【0031】
特定の実施形態では、基板102の厚さは少なくとも約25マイクロメートルであり、特定の実施形態では少なくとも約100マイクロメートルであり、特定の実施形態では少なくとも約400マイクロメートルであってもよい。特定の実施形態では、基板102の厚さは約2000マイクロメートル以下であり、特定の実施形態では約1000マイクロメートル以下であり、特定の実施形態では約250マイクロメートル以下であってもよい。
【0032】
ウェル114は、微小構造化された抗微生物フィルム100の第1の面104と接触する(又はその付近の)微生物に抗微生物物質120がアクセスできるような位置に抗微生物物質120を保持するように構成されており、抗微生物物質120が第1の主面108上に直接存在する必要がない。抗微生物物質120は上面122を有する。特定の実施形態では、図1及び2に示されるように、抗微生物物質120は各ウェル114内に配置され、ウェル114の内の1個以上を抗微生物物質120が部分的に充填し、抗微生物物質120の上面122が基板102の第1の主面108から所定の距離だけ離間するようになっている。この結果、抗微生物物質120は基板102の第1の面104において陥入されている。微小構造化された抗微生物フィルム100、特に微小構造化表面108は、製造後及び抗微生物物質120への曝露に際して、その形状及び表面特性をほぼ維持する。
【0033】
特定の実施形態では、抗微生物物質120を第1の主面108又はその一部の上に配置することもできる。しかしながら、抗微生物物質120は、微小構造化された抗微生物フィルム100の第1の面104と接触する(又はその付近の)微生物に対する抗微生物活性を与えるうえで効果的であるためには第1の主面108上に配置される必要はない。更に、第1の主面108上に存在する抗微生物物質120の部分が第1の主面108から除去されるとしても(例えば、意図的又は意図的でない場合、使用前、使用時、洗浄時、又は別の微小構造化された抗微生物フィルム(又はロールの場合には、同じ微小構造化抗微生物フィルムの一部)が抗微生物フィルムとの接触状態から剥離される際)、ウェル114内に配置され、第1の主面108から陥入された抗微生物物質120のために、微小構造化された抗微生物フィルム100は抗微生物活性を依然として維持することになる。
【0034】
「ウェル内/内部に配置された」なる語句は、抗微生物物質120が1個以上のウェル114内に配置されていることを意味しているだけであり、抗微生物物質120が微小構造化された抗微生物フィルム100のすべてのウェル114内に配置されていることを意味しているものでもなければ、抗微生物物質120を含む各ウェル114が等しい量の抗微生物物質120を含んでいることを意味しているものでもない。むしろ抗微生物物質120は抗微生物活性の所望の有効性及び効能を与えるうえで特定の量で、かつ/又は特定のウェル114内に配置することができる。特定の実施形態では、抗微生物物質120の一部がウェル114の内面118上にあってもよい。
【0035】
抗微生物物質120を様々な方法によってウェル114内に配置することができる。幾つかの配置方法としては、これらに限定されるものではないが、各種の印刷法、各種のコーティング法、重力充填、圧力充填、真空充填、毛管作用、又はこれらの組み合わせが挙げられる。印刷法の例としては、これらに限定されるものではないが、グラビア、オフセット、フレキソ印刷、リソグラフ、電子写真(electrographic)、電子写真(electrophotographic)(レーザー印刷及びゼログラフィーを含む)、イオン蒸着(電子ビーム画像形成法(EBI)とも呼ばれる)、マグネトグラフィー、インクジェット印刷、昇華型印刷、スクリーン印刷、及びこれらの組み合わせが挙げられる。コーティング法の例としては、これらに限定されるものではないが、ノッチバーコーティング、ロッドコーティング、ワイアバーコーティング、スプレーコーティング、ブラッシング、オリフィス調節ダイコーティング、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
抗微生物物質120をウェル114内の少なくとも一部に配置することが可能であり、微小構造化表面108内のウェル114の体積の少なくとも5%に抗微生物物質120を配置することができる。特定の実施形態では、抗微生物物質120はウェル114の体積の少なくとも15%に、特定の実施形態では少なくとも25%に、特定の実施形態では少なくとも35%に配置することができる。
【0037】
特定の実施形態では、抗微生物物質120がウェル114の体積の100%未満で配置されることにより、抗微生物物質120の上面122は第1の主面108から所定の距離だけ離間した状態に保たれる。特定の実施形態では、抗微生物物質120は、ウェル114の体積の90%未満に、特定の実施形態では80%未満に、特定の実施形態では70%未満に、特定の実施形態では、ウェル114の体積の50%未満に配置される。抗微生物物質120がウェル114のそれぞれに存在しない特定の実施形態では、抗微生物物質120は抗微生物物質120を含むウェル114の体積の100%未満に配置される。例えば、微小構造化された抗微生物フィルム100のウェル114の50%のみに抗微生物物質120が入れられる場合、特定の実施形態では、抗微生物物質120は、抗微生物物質120が存在する50%のウェル114の体積の100%未満に配置される。
【0038】
図1及び2には、ウェル114のそれぞれが、あくまで一例として4個の壁部112及び底部116によって形成されている様子が示されており、各ウェル114は壁部112によって隣のウェル114から隔離されている。しかしながら、ウェル114は、ウェル114が抗微生物物質120を保持できるように基板102に画定され、基板102の第1の主面108から陥入しているかぎり、様々な形状を有してもよい点は理解されるはずである。別の言い方をすれば、ウェル114は、ウェル114の内面118が基板の第1の主面108から内側に延びることが可能であるような様々な形状を有しうる。ウェル114のそれぞれは、抗微生物物質120が第1の主面108から離れた状態に保持されるような形状及び寸法に構成されている。すなわち、ウェル114のそれぞれは、抗微生物物質120の貯蔵部を与えるような形状及び寸法に構成されており、流体の流れを促進するような設計とは必ずしもなっていないということである。基板102の第1の面104の微小構造化された形成部は、抗微生物物質120によるウェル114の充填を(例えば、毛管現象により)促進しうるようなものである。しかしながら、ウェル114は、基板102のウェル114内に抗微生物物質120が配置された後、抗微生物物質120の1個のウェルから別のウェルへの移動又は流れを促進するような形状又は寸法とはなっていない。例えば、特定の実施形態では、ウェル114は少なくとも3個の壁部112(すなわち、流体通路を形成しないように)及び底部116によって少なくとも部分的に画定されてもよい。
【0039】
好適なウェルの形状の例としては、これらに限定されるものではないが、各種の多面体形状、平行六面体(例えば、図1及び2に示されるような)、擬角柱、角錐台など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、ウェル114は、多面体、円錐、切頭円錐、角錐、接頭角錐、球、部分球、半球、楕円体、ドーム形状、キューブコーナー形状など、及びこれらの組み合わせであってもよい。更にウェル114は、これらに限定されるものではないが、平行四辺形、角が丸みを帯びた平行四辺形、長方形、正方形、円形、半円形、楕円形、半楕円形、三角形、台形、星形、他の多角形(例えば、4辺よりも多い辺を有する)など、及びこれらの組み合わせを含む、様々な断面形状(図2に示されるような垂直の断面、水平の断面、又はこれらの組み合わせ)を有しうる。
【0040】
特定の実施形態では、ウェル114は縁部又は隅部を有するような形状に構成される。こうした縁部又は隅部は、ウェル114内に抗微生物物質120が保持されることを助け、使用時にウェル114から抗微生物物質120が除去されてしまうことを防止しうるものである。例えば、抗微生物物質120が高い表面エネルギーを有するような実施形態や、抗微生物物質120が基板材料の分子に引きつけられる分子を有するような実施形態では、抗微生物物質120は、平滑な単一の表面ではなく、ウェル114の縁部及び/又は隅部(そこでは抗微生物物質120は2以上の表面と接触状態に維持されうる)に選択的に引きつけられる。
【0041】
図1及び2に示される実施形態では、各ウェル114の底部116は平坦かつ平面状(すなわち所定面積を有する)であり、基板108の第1の主面108とほぼ平行になっている。しかしながら、ウェル114の他の形状が可能であることから、底部116は平面状である必要はなく、基板102の第1の主面108から最大距離離間したウェル114の点又は線を有してもよい。例えば、1以上の半球状のウェル114を用いた実施形態では、こうしたウェル114の底部116は第1の主面108から最大距離離間した半球内の点を含みうる。更に、平面状の底部116を用いた実施形態であっても、底部116は平坦である必要はなく、湾曲、平坦、又はこれらの組み合わせであってもよい。更に、平坦かつ平面状の底部116を用いた実施形態であっても、底部116は第1の主面108と平行である必要はない。
【0042】
更に、図1及び2に示される実施形態では、ウェル114は異なる対称線を有するものとしてそれぞれ示されており、底部116はウェル114の開口部に対して中央に配置されている。しかしながら、ウェル114は対称線を有さずともよく、底部116が(底部116が点、線、又は面積を有しているか否かとは関係なく)ウェル114の開口部に対して中央に配置される必要はない点は理解されるはずである。
【0043】
図1及び2に示される各ウェル114は、あくまで一例として同じサイズ及び形状のものとして示されているが、基板102の第1の面104に画定されるすべてのウェル114が同じサイズ又は形状のものである必要はない点は理解されるはずである。すなわち、ウェル114はすべてが概ね同じ形状及びサイズに形成されてもよく、同じ又は似た形状であるが異なるサイズのものとして形成されてもよく、異なる形状及びサイズのものとして形成されてもよく、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。例えば、特定の実施形態では、基板102の微小構造化面104は、形状が似ているウェル114のサイズが交互に変わるパターンを有してもよく、1つの領域のウェル114同士が同じサイズ(又は形状)であるが隣接する領域とは同じサイズ(又は形状)ではないようなウェル114の領域を有してもよい。
【0044】
更に、図1及び2に示されるウェル114は、あくまで一例として、セル状のアレイに規則的に配列されているものとして示されている。しかしながら、基板102が様々な規則的な配列若しくはアレイ、不規則な配列、又はこれらの組み合わせを含みうる点は理解されるはずである。特定の実施形態では、ウェル114は局所的又はより小さな規模では不規則に配列されるが、より大きな規模ではこの不規則な配列が繰り返されるか整列される。また、特定の実施形態では、ウェル114はより小さな規模で整列されるが、より大きな規模ではこの整列された領域が不規則に配列される。
【0045】
更に、図1及び2に示される実施形態では、各壁部112はすべて同じサイズ及び形状のものとなっている。しかしながら、様々な他の壁部の形状が可能である点は理解されるはずである。例えば、壁部112は実質的に規則的な断面形状を有する必要はなく、上記に述べた断面形状の任意のものを有してもよい。
【0046】
壁部112及びウェル114は、異なるサイズ、寸法、壁部112間又はウェル114間の距離、相対的サイズなどによって特徴付けることができる。壁部112は、厚さ、高さ、長さ、幅といった寸法を一般に有する。ウェル114は、半径、直径、高さ、幅、長さといった寸法を有する所定の体積を一般に有する。一般に、壁部112及び/又はウェル114は、微小構造化された抗微生物フィルム100がいずれの向きにある場合にもウェル114内に抗微生物物質120が保持される(例えば、毛管力により)ような寸法、形状、及び間隔に構成されている。更に、壁部112及び/又はウェル114は、抗微生物物質120が第1の主面108から陥入する一方で、抗微生物物質120が微小構造化された抗微生物フィルム100の第1の面104に抗微生物活性を与えるうえで有効な距離を抗微生物物質120が第1の主面108から置いて配置されるようなサイズ、形状及び間隔で所定位置に配置されている。これにより、抗微生物物質120が第1の主面108上に直接存在する必要なく(上記に述べたように特定の実施形態ではこれは起きうることであるが)、微小構造化された抗微生物フィルム100の第1の面104に抗微生物物質120が抗微生物活性を与えることが可能である。特定の実施形態では、壁部112及び/又はウェル114は、人の肉眼には見えないようなサイズのものとすることができ、これにより、より美的観点から好ましい表面が形成され、微小構造化された抗微生物フィルム100を目立たなくすることができる。
【0047】
抗微生物物質120を第1の主面108に対して陥入させることにより、微小構造化された抗微生物フィルム100を剥離ライナーを使用せずに積み重ねたり、かつ/又はロールに巻くことができる。第1の主面108上にいくらかの抗微生物物質120が存在して、隣接する微小構造化抗微生物フィルム100の接着剤119又は第2の面106によって攪乱される場合であっても、抗微生物物質120の大部分は微小構造化抗微生物フィルム100のウェル114の内部に攪乱されることなく保持され、微小構造化された抗微生物フィルム100はその抗微生物活性を維持することになる。こうした構成については後に詳述する。
【0048】
特定の実施形態では壁部112は少なくとも約1マイクロメートル、特定の実施形態では少なくとも約5マイクロメートル、特定の実施形態では少なくとも約10マイクロメートルの平均厚さを有してもよい。特定の実施形態では壁部112は約50マイクロメートル以下、特定の実施形態では約30マイクロメートル以下、特定の実施形態では約20マイクロメートル以下の平均の厚さを有してもよい。
【0049】
特定の実施形態では、微小構造化表面108の任意の与えられた領域における壁部112及びウェル114の形態は、平均の壁部又はウェルのピッチ(すなわち、それぞれ隣接する壁部112又はウェル114の中心間の距離)が少なくとも約1マイクロメートル、特定の実施形態では少なくとも約10マイクロメートル、特定の実施形態では少なくとも約50マイクロメートルとなるように選択される。特定の実施形態では平均のウェルのピッチは約1000マイクロメートル以下、特定の実施形態では約500マイクロメートル以下、特定の実施形態では約400マイクロメートル以下である。
【0050】
特定の実施形態では、ウェル114は第1の主面108の平面内のX方向の寸法(例えば、長さ、幅、半径、直径、対角線など)によって特徴付けられる。「〜の平面内の」なる語句は、XY平面の寸法を一般に指して用いられ、深さ、すなわち、Z方向の寸法と区別するために用いられているのみであり、その寸法が第1の主面108の平面内に正確に配置されている必要はなく、第1の主面108の平面とほぼ平行な他の同様のXY平面内にある寸法を含みうる。特定の実施形態では平均のウェルのX方向の寸法は、少なくとも約1マイクロメートルであり、特定の実施形態では少なくとも約10マイクロメートルであり、特定の実施形態では少なくとも約50マイクロメートルである。特定の実施形態では平均のウェルのX方向の寸法は約1000マイクロメートル未満であり、特定の実施形態では約500マイクロメートル未満であり、特定の実施形態では約100マイクロメートル未満である。
【0051】
特定の実施形態では平均のウェルの体積は少なくとも約1ピコリットル(pL)であり、特定の実施形態では少なくとも約3pLであり、特定の実施形態では少なくとも約30pLであり、特定の実施形態では少なくとも約300pLである。特定の実施形態では平均のウェルの体積は約20,000pL以下であり、特定の実施形態では約10,000pL以下であり、特定の実施形態では約5,000pL以下である。
【0052】
壁部112及びウェル114を特徴付ける別の方法はこれらをアスペクト比の点から述べることである。ウェル114の「アスペクト比」とは、ウェル114の幅に対するウェル114の深さの比である。壁部112の「アスペクト比」とは、壁部112の幅(又は厚さ)に対する壁部の高さの比である。特定の実施形態では、平均のウェルのアスペクト比は少なくとも約0.01であり、特定の実施形態では少なくとも約0.05であり、特定の実施形態では少なくとも約1である。特定の実施形態では、平均のウェルのアスペクト比は約2以下であり、特定の実施形態では約1以下であり、特定の実施形態では約0.8以下である。
【0053】
特定の実施形態では、平均の壁部のアスペクト比は少なくとも約0.01であり、特定の実施形態では少なくとも約0.05であり、特定の実施形態では少なくとも約1である。特定の実施形態では、平均の壁部のアスペクト比は約15以下であり、特定の実施形態では約10以下であり、特定の実施形態では約8以下である。
【0054】
特定の実施形態では、壁部112の平均の高さ又はウェル114の平均の深さ(すなわち、ウェル114の底部116とウェル114の上部すなわち第1の主面108の隣接部分との間の距離)は、少なくとも約5マイクロメートルであり、特定の実施形態では少なくとも約20マイクロメートルであり、特定の実施形態では少なくとも約30マイクロメートルである。特定の実施形態では、壁部112の平均の高さ又はウェル114の平均の深さは約200マイクロメートル以下であり、特定の実施形態では約100マイクロメートルであり、特定の実施形態では約50マイクロメートルである。図1及び2に示される実施形態では、壁部の高さはウェルの深さとほぼ同じであるが、必ずしもそうである必要はない点は理解されるはずである。例えば、特定の実施形態では、ウェル114は壁部112の最下部よりも更に下に陥入されており、ウェルの深さが壁部の高さよりも大きくなっている。しかしながら、こうした実施形態においても上記のサイズの範囲が適用される。
【0055】
図1及び2に示される実施形態のような特定の実施形態では、基板102の第1の主面108は、壁部112の各交差部に配置される複数の突起部126によって更に画定されうる。突起部126は隣り合う微小構造化抗微生物フィルム100間の接点(又は接触線又は領域であるが、簡単のため「接点」と呼ぶ)として機能するが、これについては図3を参照して下記により詳細に述べる。突起部126は、壁部112の交差部のそれぞれにおいて基板102の微小構造化面104に規則的に分配されている様子が示されている。しかしながら、微小構造化された抗微生物フィルム100は、これよりも少ない(例えば、特定の実施形態では0個)か又は多い突起部126を有してもよく、更に、突起部126は規則的にされる必要はなく、不規則に配列されるか、あるいは規則的な配列と不規則な配列との組み合わせを有しうる点は理解されるはずである。図1及び2に示される実施形態では、突起部126は基板102と同じ材料で形成され、壁部112及びウェル114を形成するのと同じ微小複製プロセスによって形成されるが、その代わりに突起部126を基板102とは異なる材料で形成し、微小構造化抗微生物フィルム100の他の微小構造化形成部を形成した後に形成してもよい点は理解されるはずである。特定の実施形態では、基板102の微小構造化面104は、更なる突起部、凹部若しくは陥入部、又はこれらの組み合わせを含みうる更なる微小構造化形成部を有する。
【0056】
微小構造化形成部の少なくとも一部を、ナノ、マイクロ、又はマクロスケールで形成することができる。微小構造化形成部のそれぞれは、2つ以上の寸法によって画定することができる(例えば、第1の主面108の表面の内/外に向かう1以上の寸法、及び第1の主面108の平面内の1以上の寸法)。特定の実施形態では、第1の主面108は微小構造化形成部の特定の形態を有し、各形成部の少なくとも2つの寸法が微小な寸法である。「形成部」には、壁部112、ウェル114、突起部126、又は第1の主面108上に形成された他の任意の微小構造化形成部を含む、基板102の第1の主面108内に形成された上記の微小構造化形成部の任意のものが含まれる。「微小構造化形成部」はその形状を確認するうえで肉眼に光学的補助を必要とするだけ充分に小さいものである。特定の実施形態では、微小構造化形成部の寸法は少なくとも2つの可能な寸法において200マイクロメートル以下である。
【0057】
微小構造化形成部は所望の特徴的サイズ(例えば、長さ、幅、深さ、半径、直径又は任意の方向に沿って測定した他の寸法)及び密度(例えば、第1の主面108の単位面積当たりの形成部の数)を有しうる。形成部は、3方向のすべてにおいて(例えば、X、Y(第1の主面108の平面内)及びZ(第1の主面の平面の内/外に向かう))その特徴的な長さが同様であるように構成することができる。また、形成部は1以上の方向における特徴的な長さが他の方向におけるよりも大きくなるように構成することもできる。
【0058】
特定の実施形態では、形成部は1以上の寸法における最大の特徴的な長さが約500マイクロメートル以下でありうる。特定の実施形態では最大の特徴的長さは50マイクロメートルであり、特定の実施形態では最大の特徴的長さは10マイクロメートルである。特定の実施形態では、1以上の寸法における最小の特徴的長さは1nmである。特定の実施形態では最小の特徴的長さは10nmであり、特定の実施形態では最小の特徴的長さは100nmである。更に、特定の実施形態では、形成部の密度は1平方mm(mm)当たり少なくとも100個の形成部であり、特定の実施形態では1mm当たり少なくとも1,000個の形成部であり、特定の実施形態では1mm当たり少なくとも10,000個の形成部である。
【0059】
上記で考察したように、接着剤119により、微小構造化された抗微生物フィルム100を様々な表面に結合させることが可能である。特定の実施形態では、後述するように、接着剤は表面に対する良好な接着性を与える一方で適度な力を作用させることにより残渣を残すことなく剥離することが可能である(例えば、剥離可能及び/又は貼り換え可能な感圧性接着剤)。接着剤119に適した材料の例としては、(メタ)アクリレート、ウレタン、シリコーン、エポキシ、ゴム系接着剤(天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、並びにブチルゴム、ブロックコポリマー及び熱可塑性ゴムなど)、及びそれらの組み合わせに基づいた1以上の接着剤が挙げられる。
【0060】
好適な(メタ)アクリレートの例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、2−エチル−ヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、及びそれらの組み合わせなどのアルキルアクリレートモノマーの重合体が挙げられる。市販のブロックコポリマーの例としては、クレイトン・ポリマーズ社(Kraton Polymers)(テキサス州ウェストホロウ)より商品名「KRATON G−1657」で販売されるものが挙げられる。
【0061】
上記に述べたように、特定の実施形態では接着剤119は剥離可能かつ/又は貼り換え可能な感圧性接着剤を含みうる。接着剤は、目的とする基材に最終的に接着された後、微小構造化された抗微生物フィルム100が、想定される物品の寿命の最後に、微小構造化抗微生物フィルム100又は接着剤が結合された表面を損傷することなく、必要に応じて熱を用い、7.62m/時(25フィート/時)を上回る速度で手で剥離することが可能である場合に、「剥離可能」であるとみなされる。特定の実施形態では、剥離可能な感圧性接着剤は、8N/cmよりも小さい、より詳細には6N/cmよりも小さい180°剥離強度(イー・アイ・デュポン・ド・ネムール・アンド・カンパニー社(E. I. du Pont de Nemours and Company)(デラウェア州ウィルミントン)より販売される400ゲージMylar D PETフィルムのシートからの)を有する。
【0062】
「貼り換え可能」なる用語は、接着力を大きく損なうことなく表面に繰り返し接着し、表面から剥離することが少なくとも初期において可能であることを一般に指す。貼り換え可能な感圧性接着剤は、イー・アイ・デュポン・ド・ネムール・アンド・カンパニー社(E. I. du Pont de Nemours and Company)(デラウェア州ウィルミントン)より販売される400ゲージMylar D PETフィルムのシートから剥離した場合に、少なくとも初期の180°剥離強度が特定の実施形態では約2N/cmよりも小さく、特定の実施形態では約1N/cmよりも小さく、特定の実施形態では約0.1N/cm未満である。
【0063】
好適な剥離可能かつ貼り換え可能な感圧性接着剤の例としては、ホッブス(Hobbs)らによる米国特許出願公開第2005/0249791号、及びクープライダー(Cooprider)らによる米国特許第5,571,617号に述べられるもの、並びにシルバー(Silver)による同第3,691,140号、メリル(Merrill)らによる同第3,857,731号、及びベーカー(Baker)らによる同第4,166,152号に開示されるもののような、固体で、本来的に粘着性のエラストマーのマイクロスフェアを主成分とする接着剤が挙げられる。
【0064】
特定の実施形態では、接着剤119は静電荷を有する。特定の実施形態では接着剤119自体が、微小構造化された抗微生物フィルム100(すなわち、基板108の第2の面106)に付与することが可能な静電荷である。また、特定の実施形態では、接着剤119は静電荷を他の接着成分と組み合わせたものである。静電荷接着剤119を用いた実施形態では、接着剤119は永久静電荷であり、様々な表面に対して静電引力を示すことにより、フィルムを所望の表面に剥離可能に(及び/又は貼り換え可能に)結合することが可能である。永久静電荷は、エベラーツ(Everaerts)らによる米国特許出願公開第2005/0000642号に述べられるように、コロナ放電(例えば、窒素又は空気)を用いて微小構造化抗微生物フィルム100(例えば、基板102又は接着剤119に対して)に付与することができる。
【0065】
特定の実施形態では、接着剤119は更なる抗微生物活性源を与える更なる抗微生物物質を含んでもよい。これにより、ホッブス(Hobbs)らによる米国特許出願公開第2005/0249791号に述べられるように微小構造化された抗微生物フィルム100の耐用年数を延ばすことができる。好適な抗微生物物質の例としては、抗微生物物質120について後述するものが挙げられる。
【0066】
特定の実施形態では、接着剤119は、接着剤119が時間とともに、あるいは風雨に曝されることにより黄色に変色して下側の表面の視認性を低下させることがないように充分な光学的品質及び光安定性を示す。接着剤119を、転写コーティング、ナイフコーティング、スピンコーティング、ダイコーティングなどの各種の公知のコーティング法を用いて塗布することができる。好適な接着剤の更なる例としては、ドラハイム(Draheim)らによる米国特許出願公開第2003/0012936号に述べられるようなものがある。こうした接着剤の幾つかがスリーエム社(3M)(ミネソタ州セントポール)より商品名「8141」、「8142」、及び「8161」接着剤として市販されている。
【0067】
特定の実施形態では、図1及び2に示されるように、接着剤119はほぼ平滑であってもよい。特定の実施形態では、接着剤119はテクスチャーを有するかトポグラフィーを有しうる。トポグラフィーは、微小構造化された抗微生物フィルム100が表面に貼着される際に、微小構造化抗微生物フィルム100の下から空気を流出させるうえで効果的であり、微小構造化された抗微生物フィルム100の下に捕らわれた空気ポケットの量を低減させることができる。好適なトポグラフィーの例は、シャー(Sher)らによる米国特許第6,911,243号に述べられている。
【0068】
特定の実施形態では、接着剤119の厚さ(使用されている場合)は少なくとも約10マイクロメートルであり、特定の実施形態では少なくとも約20マイクロメートルであり、特定の実施形態では少なくとも約50マイクロメートルであってもよい。特定の実施形態では、接着剤119の厚さは約300マイクロメートル以下であり、特定の実施形態では約200マイクロメートル以下であり、特定の実施形態では約100マイクロメートル以下であってもよい。
【0069】
図1及び2に示される抗微生物物質120はあくまで一例として液体としてのみ示されているが、抗微生物物質120は固体、液体、半固体、ゼラチン状物質、又はこれらの組み合わせを含みうる点は理解されるはずである。抗微生物物質120は、少なくとも部分的に流動可能であることにより(例えば、高粘度の液体を含む流動性の液体、又は粉末などの流動性の固体)、微小構造化された抗微生物フィルム100のウェル114内への抗微生物物質120の配置を容易とするようなものでもよい。更に、抗微生物物質120は連続した層の形態である必要はなく、不連続、連続、又はこれらの組み合わせであってもよい。抗微生物物質120は、1以上の形態の抗微生物活性を与えるように構成された1以上の抗微生物剤を含んでもよい。特定の実施形態では、抗微生物物質120は1乃至複数の抗微生物剤を単独で含み、更に特定の実施形態では抗微生物物質120は溶媒(又は分散剤、界面活性剤、乳化剤など)、ポリマー結合剤などの他の物質、又はこれらの組み合わせを含む。
【0070】
抗微生物剤は、これらに限定されるものではないが、(1)液体溶媒中に分散された抗微生物剤、(2)液体抗微生物剤、(3)固体抗微生物剤(例えば、抗微生物物質120のコーティング又は層を形成するように粉末化又は乾燥されたもの)、(4)ポリマー結合剤中に分散又は溶解された抗微生物剤、又はこれらの組み合わせなどの様々な形態で抗微生物物質120に加えることができる。組み合わせの例としては、ヒドロゲルの隙間内に分散された抗微生物剤が挙げられる(例えば、抗微生物剤を、ヒドロゲルのポリマー基質中に含まれる水に溶解させることにより、抗微生物物質120が溶媒及びポリマーを含むようにしてもよい)。液体溶媒又はポリマーに分散した抗微生物剤を用いる実施形態では、微小構造化された抗微生物フィルム100のウェル114内に配置された抗微生物物質120を乾燥させることによって溶媒の少なくとも一部を除去して固体、半固体、又はゼラチン状の抗微生物物質120を形成することができる。
【0071】
抗微生物物質120は、各種の有機抗微生物剤(例えば、小さな分子、ポリマー、又はこれらの組み合わせを含む)、各種の無機抗微生物剤、又はこれらの組み合わせなどの様々な抗微生物剤を含みうる。抗微生物物質120は1種類以上の抗微生物剤を含みうる。好適な無機抗微生物剤の例としては、これらに限定されるものではないが、遷移金属イオン系化合物(例えば、銀、亜鉛、銅、金、スズ、及び白金系化合物)、ヨードフォア、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0072】
好適な銀含有抗微生物剤の例としては、硫酸銀、酢酸銀、塩化銀、乳酸銀、リン酸銀、ステアリン酸銀、チオシアン酸銀、タンパク銀、炭酸銀、硝酸銀、スルファジアジン銀、アルギン酸銀、銀ナノ粒子、銀置換セラミックゼオライト、銀とリン酸カルシウムとの錯体、銀銅とリン酸カルシウムとの錯体、クエン酸二水素銀、ヨウ化銀、酸化銀、銀リン酸ジルコニウム、銀置換ガラス、各種アンモニウム塩と錯体化された銀塩及び/又は酸化物の水溶液、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0073】
好適な市販の銀含有抗微生物剤としては、アジオン・テクノロジー社(AgION Technologies Inc.)(マサチューセッツ州ウェイクフィールド)より「AGION」の商品名で販売されるもののような銀ゼオライト;チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)(ニューヨーク州タリータウン)より「IRGAGUARD B5000」及び「IRGAGUARD B8000」の商品名で販売されるAgZnゼオライト;ミリケンケミカルズ社(Milliken Chemicals)(サウスカロライナ州スパータンバーグ)より「ALPHASAN」の商品名で販売される銀ナトリウム水素リン酸ジルコニウム;ニュークリスト・ファーマシューティカルズ社(Nucryst Pharmaceuticals)(マサチューセッツ州ウェイクフィールド)及びアドバンスド・ナノプロダクツ社(Advanced Nano Products Co., Ltd.)(大韓民国)より販売される銀ナノ粒子;ギルテック社(Giltech)(スコットランド)より販売されるリン酸カルシウムで錯体化した銀又は銅銀;エージス・エンバイロンメンツ社(Aegis Environments)(ミシガン州ミッドランド)より販売される他の可能な銀含有抗微生物添加剤、ピュア・バイオサイエンシーズ社(Pure Biosciences)(カリフォルニア州エルカホン)より販売されるクエン酸二水素銀;サーファシン・ディベロプメント社(Surfacine Development Co.)(マサチューセッツ州チングズバロ)より販売されるヨウ化銀、石塚硝子株式会社(日本)より「IONPURE」の商品名で販売される銀置換ガラス、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0074】
ヨウ素及びヨウ素の様々な錯体は一般にヨードフォアと呼ばれる。ヨードフォアとしては、ヨウ素元素又は他のヨウ素化学種(例、トリヨージド)と特定の担体又は結合剤との錯体が挙げられる。ヨードフォアは、ヨウ素元素又は他のヨウ素化学種と、抗微生物物質120中のポリマー結合剤(例、ポリエチレングリコール)との間で形成されうる。こうしたヨードフォアは、ヨウ素の可溶性を増大させるばかりでなく、溶液中の遊離分子としてのヨウ素の濃度を低下させ、ヨウ素を持続放出するある種のリザーバを与えることによっても機能しうる。ヨードフォアは、ポリビニルピロリドン(PVP)、N−ビニルラクタムとアクリレート及びアクリルアミドなど(ただし、これらに限定されない)の他の不飽和モノマーとの共重合体、ノニルフェノールエトキシレートなどのポリエーテル含有界面活性剤を含む各種のポリエーテルグリコール(PEG)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などのポリカルボン酸;ポリアクリルアミド、及びデキストロースなどの多糖類のようなポリマー結合剤を用いて形成することができる。他の好適なヨードフォアとしては、米国特許第4,597,975号(ウッドワード(Woodward)ら)に述べられるプロトン化アミンオキシド界面活性剤−三ヨウ化物錯体が挙げられる。一部の用途では、ヨードフォアはポピドン−ヨードである。これは、利用可能なヨウ素が約9重量%〜約12重量%含まれた、K30ポリビニルピロリドンとヨウ化物との錯体である、ポピドン−ヨードUSPとして市販品を入手することが可能である。
【0075】
好適な有機抗微生物剤の例としては、これらに限定されるものではないが、アークケミカルズ社(Arch Chemicals, Inc.)(コネチカット州ノーウォーク)より「POLYQUAT」の商品名で、及びロンザ・グループ社(Lonza Group Ltd.)(スイス、ヴァレ)より「BARDAC」の商品名で市販される2−ブテニルジメチル塩化アンモニウムポリマーなどのポリマー性第4級アンモニウム塩、フェノール及びその誘導体、パラベン(例、ベチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン)、及び化学式が2,4’,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルであり、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)(ニューヨーク州タリータウン)及びマイクロバン・インターナショナル社(Microban International, Ltd.)(ノースカロライナ州ハンターズビル)より市販されるトリクロサンなどのフェノール化合物;パラクロロメタキシレノール(PCMX);アークケミカルズ社(Arch Chemicals, Inc.)(コネチカット州ノーウォーク)より「VANTOCIL P」の商品名で市販されるポリ(イミノイミドカルボニル−イミドカルボニルイミノヘキサメチレン塩酸塩)、オクテニデン;2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール;ヘキサクロロフェン;ビグアニド化合物(例、クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)、及び酢酸クロルヘキシジンなどのハロゲン化ヘキシジン);ポリヘキサメチレンビグアニド;ショルツ(Scholz)らによる米国特許出願公開第2005/0089539号に開示されるもののような抗微生物脂質;抗微生物酸(例、脂肪酸、安息香酸、及びサリチル酸);抗微生物天然油(例、ティーツリー油、グレープフルーツ種子抽出物);銀塩(例、乳酸銀)、銅塩(例、ナフテン酸銅)、亜鉛塩、スズ塩(例、トリアルキル水酸化スズ、トリアリール水酸化スズ)などの遷移金属の有機塩(すなわち、有機金属抗微生物剤);ハロゲン含有化合物(例、次亜塩素酸塩(例、漂白剤))、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0076】
好適な抗微生物脂質としては、例えば、脂肪酸モノエステル/モノエーテルが挙げられる。「脂肪酸モノエステル/モノエーテル」なる用語は、脂肪酸モノエステル、脂肪酸モノエーテル、又はこれらの組み合わせを一般に指す。特定の実施形態では、抗微生物剤に適した脂肪酸モノエステル/モノエーテルは食品グレードとみなされ、米国食品医薬品局(FDA)によってその安全性が認められている(Generally Recognized As Safe(GRAS))ものである。このような脂肪酸モノエステル/モノエーテルは、例えば、カプリル酸、カプリン酸、及びラウリン酸のグリセロールモノエステル、カプリル酸、カプリン酸、及びラウリン酸のプロピレングリコールモノエステル、並びにそれらの混合物などのC8〜C12脂肪酸から誘導することができる。好適な脂肪酸モノエステルの例としては、これらに限定されるものではないが、「LAURICIDIN」の商品名でメドケム・ラボラトリーズ(Med-Chem Laboratories)(ミシガン州イーストランシング)より市販されるモノラウリン酸グリセリン、「POEM M−100」の商品名で理研ビタミン株式会社(日本、東京都)から市販されるモノカプリル酸グリセリン、「POEM M−200」の商品名で理研ビタミン株式会社から市販されるモノカプリン酸グリセリン;いずれもユニケマ・インターナショナル社(Uniquema International)(イリノイ州シカゴ)から市販される、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノカプリル酸プロピレングリコール、及びモノカプリン酸プロピレングリコール;並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0077】
脂肪酸モノエステル/モノエーテルの好適な濃度の例としては、約1.0重量%〜約30.0重量%の範囲である。組成物中の脂肪酸モノエステル/モノエーテルの特に好適な濃度の例としては、約5.0重量%〜約20.0重量%の範囲である。
【0078】
抗微生物物質120は、アンドリュー(Andrew)らによる発明の名称が「抗微生物物品」(Antimicrobial Articles)である国際特許出願公開第00/71183号、及びアンドリュー(Andrew)らによる発明の名称が「果実、野菜、及び種子殺菌剤」(Fruit, Vegetable, and Seed Disinfectants)である同第01/43549号に述べられるような、脂肪酸モノエステル/モノエーテルと使用するための増強剤及び/又は界面活性剤を含んでもよい。増強剤及び/又は界面活性剤は、水性又は非水性溶媒中に溶解された増強剤及び/又は界面活性剤からなる溶液として与えられてもよい。こうした溶媒の例としては、水、イソプロピルアルコール、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0079】
特定の実施形態では、2種類以上の抗微生物剤(例えば、相乗効果を生ずる2種類以上の抗微生物剤)を加えることによって抗微生物物質120の抗微生物性能を増大させることが可能である。好適な相乗的組成物の一例として、アークケミカルズ社(Arch Chemicals,Inc.)(コネチカット州ノーウォーク)より「POLYQUAT」の商品名で市販される2−ブテニルジメチル塩化アンモニウムポリマーなどの第4級アミン塩、及び無機銀化合物を含むものがある。例えば、第4級アミン塩により、グラム陽性(+)細菌に対してより速効性の抗微生物作用を与える一方で、銀化合物により、グラム陽性(+)及びグラム陰性(−)細菌、ウイルス、及び真菌類に対してより遅効性であるが、より幅広い抗微生物活性を与えることができる。
【0080】
抗微生物物質120中の抗微生物剤の好適な濃度としては、抗菌活性を生ずるうえで充分に高く、かつ抗菌剤が抗微生物物質120中の他の物質(存在する場合)から相分離しないような充分に低い濃度が挙げられる。抗微生物物質120中の好適な抗微生物剤の濃度の例としては、一般に約1重量%〜約50重量%の範囲である。ただし、好適な濃度は使用される抗微生物剤、使用される抗微生物物質120の種類(例えば、溶媒中に分散されたもの、ポリマー結合剤中に分散されたものなど)、及び所望の抗微生物活性のレベルに応じて変化しうる。
【0081】
抗微生物物質120中の無機抗微生物剤の好適な濃度範囲は、約1重量%〜約20重量%の範囲であってもよいが、特に好適な濃度は、約5重量%〜約10重量%の範囲であってもよい。こうした濃度によって、抗微生物物質120の性質に悪影響を及ぼすことなく好適な抗微生物活性を与えることができる。
【0082】
上記に述べたように、抗微生物物質120は、特定の実施形態においてポリマー結合剤中に分散又は溶解された1種類以上の抗微生物剤を含みうる。ポリマーは、ウェル114内の抗微生物剤と結合してこれを保持する機能を有する。抗微生物物質120に使用するのに適したポリマーとしては、これらに限定されるものではないが、水溶性ポリマー、有機溶媒可溶性ポリマー、水をベースとしたポリマー分散液、放射線硬化性ポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0083】
水溶性ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、スルホン化ポリウレタン、これらのコポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。市販のポリビニルアルコールとしては、ジェー・ティー・ベイカー社(J. T. Baker)(ニュージャージー州フィリップスバーグ)及びシグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス)より「POLYVINYL ALCOHOL」の商品名で販売されるものがある。市販のポリビニルピロリドンとしては、ジェー・ティー・ベイカー社(J. T. Baker)より販売されるもの、並びに、ピークケム社(Peakchem)(中華人民共和国、浙江)より販売される、例えば、PVP−K90及びPVP−K30などのPVP−Kxxの関連製品(文字Kの後の数字はポリマーの平均分子量を示す)が挙げられる。市販のポリエチレンオキシドポリマーとしては、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co.)(ミシガン州ミッドランド)より「Polyox」の商品名で販売されるものが挙げられる。
【0084】
有機溶媒可溶性ポリマーとしては、ポリウレタン、アクリルポリマー、ポリアミド、これらのコポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。市販の溶媒ベースのポリウレタンとしては、トルエンに脂肪族ポリウレタンを加えたものである、SU26−248などのストール・ユー・エス・エー社(Stahl USA)(マサチューセッツ州ピーボディ)より「PERMUTHANE」の商品名で販売されるものが挙げられる。他の好適なポリウレタンとしては、Estane5715及び5778などのビー・エフ・グッドリッチ社(B. F. Goodrich)(オハイオ州クリーブランド)より販売されるエスタン(Estane)、いずれもポリエステルポリウレタンであるCA118及びCA237などのハンツマン・ポリウレタン社(Huntsman polyurethane)(イリノイ州リングウッド)より販売されるモルタン(Morthane)が挙げられる。他の好適なポリマーとしては、ネオレジンズ・ディー・エス・エム社(NeoResins DSM)よりU−371の商品名で販売されるものが挙げられる。
【0085】
水をベースとしたポリマー分散液の例としては、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアクリル、ポリエーテル、ポリエステル、及びこれらのコポリマー、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。好適な水性分散液としては、ディー・エス・エム・ネオレジンズ社(DSM NeoResins)(マサチューセッツ州ウィルミントン)より「NEOREZ」の商品名で販売されるようなウレタン、特にNEOREZ R−960及びNEOREZ R−9699;ディー・エス・エム・ネオレジンズ社(DSM NeoResins)よりNEOCRYLの商品名で販売されるような、NEOCRYL XK−90、NEOCRYL XK−96及びNEOCRYL XK−96などのアクリル樹脂;並びに、ディー・エス・エム・ネオレジンズ社(DSM NeoResins)よりNEOPACの商品名で販売されるようなアクリルウレタンコポリマーが挙げられる。他の水ベースのウレタンとしては、ストール・ユー・エス・エー社(Stahl USA)(マサチューセッツ州ピーボディ)より販売されるRU−077及びRU−075を挙げることができる。
【0086】
上記に列記したポリマーは、こうした材料の水溶性を低下させるために部分的又は完全に架橋されたものであってもよい。水溶性の低下したポリマーは、水と接触する表面(例えば、水で洗浄又は水に浸漬される表面)で使用するうえで有効である。架橋を開始するため、抗微生物物質120(又はそのポリマー部分)は、鎖延長剤及び化学架橋剤などの架橋剤を含んでもよい。架橋剤の例としては、バイエル・エー・ジー社(Bayer AG)(ペンシルベニア州ピッツバーグ)より「DESMODUR」の商品名で販売されるようなイソシアネート、ディー・エス・エム・ネオレジンズ社(DSM NeoResins)より「CX−100」の商品名で販売されるようなもの、及びストール・ユー・エス・エー社(Stahl USA)よりXR−2500の商品名で販売されるようなものなどのアジリジン架橋剤が挙げられる。好適な鎖延長剤は、いずれもストール・ユー・エス・エー社(Stahl USA)より販売される、「EX62−944」の商品名で販売されるようなカルボジイミン、及び「XR−9174」の商品名で販売されるようなメラミンが挙げられる。
【0087】
好適な架橋性ポリマー組成物の例としては、塗布されたコーティングが乾燥により自己架橋して耐久性のあるコーティング層を形成する自己架橋性ポリマー分散液が挙げられる。自己架橋性ポリマー分散液は、水分を蒸発させる際に起きる縮合重合により反応して化学結合を形成するような側基を一般に有している。自己架橋性ポリマー分散液は、架橋剤を必要とすることなく、耐溶媒性を有する抗微生物物質120が形成されるという利点を与えるものである。
【0088】
自己架橋性ウレタン分散液の例としては、加水分解性のシリル基で終端し、可溶化能を有するスルホン酸官能基を有するポリエステルウレタンが挙げられる。こうしたポリエステルウレタンはクレプスキー(Krepski)らによる米国特許第5,929,160号に述べられている。好適な自己架橋性ウレタン分散液の更なる例としては、自己架橋機能を実現するための水酸基を有するポリウレタン/水ベースの分散液が挙げられる。好適な水酸基ベースのポリウレタンとしては、マザネク(Mazanek)らによる米国特許出願公開第2003/0199632号に述べられるプロセスに準じて調製されるものが挙げられる。好適な自己架橋性ウレタン分散液の更なる例としては、イングリッシュ(Ingrisch)らによる米国特許第6,462,127号に開示されるような、酸化的に乾燥したポリオールに基づいたポリウレタンポリマーハイブリッド分散液が挙げられる。
【0089】
市販の自己架橋性ポリマーの例としては、ローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas Company)(ペンシルベニア州フィラデルフィア)より「RHEOPLEX」及び「ROVACE」の商品名で販売される分散液が挙げられる。こうした分散液は、通常、基材に用いられる着色染料を保護する目的で織物及び不織布基材の結合剤として使用されるものである。例示的な組成物の例としては、いずれも高い洗浄耐久性及び耐化学物質性を示す、「RHEOPLEX HA−12」(ガラス転移温度が約19℃である非イオン性分散液)及び「RHEOPLEX TR−407」(ガラス転移温度が約34℃であるアニオン性分散液)の商品名のものがある。市販の自己架橋性ポリマーの更なる例としては、いずれもディー・エス・エム・ネオレジンズ社(DSM NeoResins)(マサチューセッツ州ウィルミントン)より販売されるポリエーテル系ポリマー「NEOREZ R−551」及びアクリルエマルジョンポリマー「NEOCRYL XK−98」の商品名のものが挙げられる。
【0090】
放射線硬化性ポリマーの例としては、イリタロ(Ylitalo)らによる国際特許出願公開第2007/070650号に述べられるようなものが挙げられる。
【0091】
抗微生物物質120は、図1及び2では単一の物質層として示されているが、複数の抗微生物物質又は複数の抗微生物物質の層(例えば、重合化層)を有してもよい。こうした実施形態では、抗微生物物質120は抗微生物剤の濃度勾配を有してもよい。例えば、抗微生物剤の濃度を、所定のウェル114の底部116付近の抗微生物剤の濃度が最も高くなるように、抗微生物物質120が配置されたウェル114の底部116からの距離に反比例するようにすることが可能である。
【0092】
特定の実施形態では、抗微生物物質120は、これらに限定されるものではないが、艶消し剤、着色剤(例、色素及び/又は染料)、レオロジー改質剤、湿潤剤、安定剤(例、紫外線(UV)安定剤、フリーラジカル捕捉剤など)、界面活性剤、芳香剤、又はこれらの組み合わせなどの他の添加剤又は補助剤を含んでもよい。
【0093】
紫外線安定剤の好適な例としては、これらに限定されるものではないが、バスフ社(BASF Corp.)(ニュージャージー州パーシパニー)より「UVINOL400」の商品名で、サイテック・インダストリーズ社(Cytec Industries)(ニュージャージー州ウェストパターソン)より「CYASORB UV−1164」の商品名で、更にチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)(ニューヨーク州タリータウン)より「TINUVIN 900」、「TINUVIN 123」及び「TINUVIN 1130」の商品名で販売されるベンゾフェノン型紫外線吸収剤が挙げられる。抗微生物物質120中の紫外線吸収剤の好適な濃度の例としては、約0.1重量%〜約10重量%の範囲であり、特に好適な全濃度は約1重量%〜約5重量%の範囲である。
【0094】
好適なフリーラジカル捕捉剤の例としては、これらに限定されるものではないが、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物、ヒドロキシアミン、立体障害化フェノール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な市販のHALS化合物の例としては、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)(ニューヨーク州タリータウン)より販売される「TINUVIN 292」の商品名のもの、更に、サイテック・インダストリーズ社(Cytec Industries)(ニュージャージー州ウェストパターソン)より販売される「CYASORB UV−24」の商品名のものが挙げられる。抗微生物物質120中のフリーラジカル捕捉剤の好適な濃度の例としては、約0.05重量%〜約0.25重量%の範囲である。
【0095】
好適な界面活性剤の例としては、これらに限定されるものではないが、ショルツ(Scholz)らによる米国特許第5,951,993号に開示されるようなアニオン性、カチオン性、非イオン性、及び両性イオン性界面活性剤、並びに乳化剤、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。好適な界面活性剤の更なる例としては、これらに限定されるものではないが、ポリアルコキシル化ブロックコポリマー界面活性剤、シリコーンコポリオール、ポリエチレンオキシドのアルキル及び/又はアリールエーテル及びエステル、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0096】
図1及び2に示される液体抗微生物物質120は、あくまで一例として、凹状のメニスカスを有する液体(すなわち、基板102又は基板102上に形成されたコーティングの分子を引きつける分子を有する液体)として更に示されている。これは説明を目的としてあくまで一例として示したものであるが、抗微生物物質120は凸状のメニスカスを有する液体(すなわち、基板102又は基板102上に形成されたコーティングの分子を反発する分子を有する液体)、又はメニスカスをほとんどあるいはまったく有さない液体であってもよい点は理解されるはずである。図1及び2に示される実施形態では、抗微生物物質120の上面122は液体抗微生物物質120の上面の任意の部分である。他の形態の抗微生物物質120を用いる実施形態では、上面122は、ウェル114内の任意の位置において抗微生物物質120の上面となっている。例えば、粉末化された抗微生物物質120を用いる実施形態では、上面122はウェル114内に配置された粉末の上面である。特定の実施形態では、粉末は静電相互作用のような相互作用によってウェル114の内面に引きつけられ、これにより粉末化された抗微生物物質120をウェル114内に容易に保持することが可能である。
【0097】
上記に述べたように、微小構造化された抗微生物フィルム100は、包装材料(例、食品のラップ)として、様々な生活環境周辺の表面の保護フィルムとして、及びこれらの組み合わせとして、様々な用途で使用することができる。接着剤119を用いる実施形態では、接着剤119は、微小構造化された抗微生物フィルム100の所定表面への結合を容易にしうるものである。「表面」又は「生活環境周辺の表面」なる用語は、微小構造化された抗微生物フィルム100を結合することが可能な任意の表面を一般に指す。こうした表面は、ヘルスケア施設(例、病院、診療所など)、デイケア施設、学校、水泳プール、化粧室(例、便器、洗面台、シャワー室)、ロッカールーム、フィットネス施設(例、グループフィットネススタジオ、ジムなど)、長期介護施設(例、老人ホーム)、食品加工工場、家庭、オフィス、食品サービス施設、ホテル、運搬用車両(例、自動車、バス、電車、飛行機、ボート、クルーザーなど)などを含むがこれらに限定されない様々な場所に存在しうるものである。表面の例としては、これらに限定されるものではないが、壁(ドアを含む)、床、天井、排水管、冷蔵システム、ダクト(例、エアダクト)、通気口、便座、ハンドル、ドアノブ、手すり、ベッドレール(例えば、病院における)、カウンタートップ、テーブルトップ、食器表面(例、トレイ、皿など)、作業用表面、調理表面、機器表面、衣類など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0098】
微小構造化された抗微生物フィルム100の上記に述べた使用のすべてにおいて、微小構造化された抗微生物フィルム100の微小構造化表面108、特にウェル114は、抗微生物物質120の貯蔵領域又はリザーバを与えるものであり、こうした貯蔵領域又はリザーバは、微小構造化抗微生物フィルム100の第1の面104と接触する(又はその近くの)微生物を殺滅するための抗微生物剤の長期の放出制御を与えることが可能である。更に、接着剤119を用いる実施形態では、微小構造化された抗微生物フィルム100の微小構造化された構成によって、微小構造化された抗微生物フィルム100の第2の面106上に剥離ライナー又は低接着性裏面(LAB)コーティングを設ける必要性をなくすことが可能である。この結果、微小構造化された抗微生物フィルム100をそれ自身の上に巻くことでロールを形成したり、複数の微小構造化された抗微生物フィルム100を剥離ライナーを用いずに互いの上に積み重ねることができる。
【0099】
更に、微小構造化された抗微生物フィルム100の微小構造化された構成は、ウェル114内における抗微生物物質120の保持を助けることによって微小構造化された抗微生物フィルム100の第1の面104と接触する可能性のある物体、食品、人、及び/又は表面に抗微生物物質120が移ることを防止するものである。例えば、微小構造化された抗微生物フィルム100は食品の包装又はパッケージング材料として使用することができる(例えば、「活性食品パッケージング」)。食品グレードの抗微生物組成物の一部のものは、平滑なフィルム上にコーティングされる場合に剥落又は剥離する場合があり、これによりフィルムと接触する食品の外見及び/又は風味が変化してしまう可能性がある。更に、一部の抗微生物組成物では、平滑な基材上にコーティングされる場合にべっとりとした粘着性の残渣が残る場合がある。しかしながら、微小構造化された抗微生物フィルム100の微小構造化表面108、特にウェル114は、抗微生物物質120を保持することにより、通常の使用時に抗微生物物質120が微小構造化抗微生物フィルム100から移ることを防止する、すなわち抗微生物物質120が望ましくない残渣を与えることを防止する一方で抗微生物活性を依然与えるように構成されているものである。
【0100】
画像(例、装飾模様、ロゴ及び/又は英数字など)を微小構造化された抗微生物フィルム100の第2の面106又は接着剤119(使用される場合)の露出した面のいずれかに適用することができる。基板102の画像形成された第2の面106及び接着剤119が用いられる実施形態では、接着剤119は透明なものでよい。上記に述べた印刷又はコーティング法のすべてを含む様々な方法を用いて画像を適用することができる。
【0101】
使用される印刷法及びインクに応じ、基板102の第2の面106にインク受容コーティングを施して画像の印刷を促す必要がある場合がある。微小構造化された抗微生物フィルムが食品と接触する用途での使用を目的としたものである場合、インク受容コーティングは、食品グレードの、その安全性が認められている(Generally Recognized As Safe(GRAS))、かつ/又はFDAに認可されたコーティングからなるものでよく、インク(又はコーティング)は食品グレード、GRAS、及び/又はFDAに認可されたインクからなるものでもよい。
【0102】
特定の実施形態では、微小構造化された抗微生物フィルム100は、使用者に微小構造化された抗微生物フィルム100の交換を促す視覚的指示を与える使用終了指示要素を有してもよい。好適な使用終了指示要素の例としては、時間/温度指示要素及び色が変化する色素が挙げられる。使用終了指示要素は、例えば、ラベル又は塗料の形態で、微小構造化された抗微生物フィルム100が表面に結合された後、微小構造化された抗微生物フィルム100の第1の面104の隅部に適用することができる。特定の実施形態では、対応する微小構造化された抗微生物フィルム100を交換すべき頃合い(抗微生物活性のレベルが大幅に低下又は消失する)に所定の色変化を示すように度盛りされる。
【0103】
時間−温度指示要素は通常、化学反応機構、拡散機構、及び毛細管作用による液体の吸い上げ機構によって動作する。好適な温度/時間指示要素の例は、ボマリト(Bommarito)らによる米国特許第6,741,523号(微小構造化された時間依存型指示要素)、及びアレンズ(Arens)らによる米国特許第5,667,303号、並びに「ザ・ワイリー・エンサイクロ(登録商標)ペディア・オブ・パッケージング・テクノロジー」(The Wiley Encyclopedia of Packaging Technology)(400〜406、(John Wiley & Sons,1986))の「指示装置」(Indicating Devices)の標題の項目に開示されている。好適な市販の時間/温度指示要素の例としては、スリーエム社(3M)(ミネソタ州セントポール)より「MONITOR MARK」の商品名で、ドライパック・インダストリーズ社(Dry Pak Industries)(カリフォルニア州ステュディオシティー)より「WARM MARK」の商品名で、ライフラインズ・テクノロジー社(Lifelines Technology Inc.)(ニュージャージー州モリスプレインズ)より「FRESH CHECK」の商品名で、ビジュアル・インジケーター・タグ・システムズ社(Visual Indicator Tag Systems AB)(スウェーデン、マルモ)より「VISTAB」の商品名で、更にエイブリー・デニソン社(Avery Dennison Corporation)(カリフォルニア州パサデナ)より「TT MONITOR」の商品名で販売されるものが挙げられる。
【0104】
微小構造化された抗微生物フィルム100は、様々な構成のものをエンド・ユーザーに提供することができる。例えば、微小構造化された抗微生物フィルム100は、単一のシートとして(例えば、包装材料又は表面に結合される接着シートとして使用される)、あるいは消費者が個々の使用について所望の量の微小構造化された抗微生物フィルム100を切り離すことができるような引き裂きフィルムのロールとして与えることができる。また、微小構造化された抗微生物フィルム100は、タッチスクリーンディスプレイなどの業界標準的な要素に適合するように予め切断された寸法で与えられてもよい。微小構造化された抗微生物フィルム100は、抗微生物物質120中の抗微生物剤の種類及び濃度を変えることによって特定の用途に合わせて調整することもできる。例えば、微小構造化された抗微生物フィルム100は、特定の病原体(例えば、グラム陽性又はグラム陰性の病原体)、又は病原体の組み合わせに対して有効な抗微生物剤を含んでもよい。
【0105】
抗微生物活性化を様々な方法で定量化することができる。本明細書で述べ、例示する2つの例示的定量化アッセイは、阻害領域アッセイ及び微生物負荷低減率アッセイである。「阻害領域」とは、下記実施例の項において述べる阻害領域アッセイ法に準じて得られる阻害領域を指す。「微生物負荷低減率」とは、下記実施例の項において述べる微生物負荷低減アッセイに準じて得られる微生物負荷低減率を指す。
【0106】
好適な抗微生物活性のレベルの例としては、黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus))(グラム陽性)及び緑膿菌(シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))(グラム陰性)病原体の少なくとも一方について微小構造化抗微生物フィルムの縁部の外側少なくとも約1mmの阻害領域が挙げられる。あくまで一例として、下記の実施例の阻害領域アッセイにおいてはディスク形の微小構造化抗微生物フィルムを用いているが、阻害領域アッセイはフィルムのサイズ又は形状に依存しない点は理解されるはずである。これに関し、本明細書において阻害領域は、増殖が阻害された状態の微小構造化抗微生物フィルムを超えた距離として定義される。例えば、微小構造化抗微生物フィルムの縁部の外側少なくとも約1mmの阻害領域とは、微小構造化抗微生物フィルムが、黄色ブドウ球菌(グラム陽性)及び緑膿菌(グラム陰性)病原体の少なくとも一方の増殖を、微小構造化抗微生物フィルムの下側の領域、及びフィルムの縁部の外側の全方向に1mm延びた領域において阻害したことを示す。
【0107】
抗微生物活性の好適なレベルの更なる例としては、黄色ブドウ球菌(グラム陽性)及び緑膿菌(グラム陰性)病原体の少なくとも一方についてフィルムの縁部の外側少なくとも約3mmの阻害領域が挙げられる。抗微生物活性の特に好適なレベルの例としては、黄色ブドウ球菌(グラム陽性)及び緑膿菌(グラム陰性)病原体の両方についてフィルムの縁部の外側少なくとも約1mmの阻害領域が挙げられる。抗微生物活性の更なるより好適なレベルの例としては、黄色ブドウ球菌(グラム陽性)及び緑膿菌(グラム陰性)病原体の両方についてフィルムの縁部の外側少なくとも約3mmの阻害領域が挙げられる。
【0108】
抗微生物活性、特に殺生物活性の好適なレベルの更なる例としては、黄色ブドウ球菌(グラム陽性)及び緑膿菌(グラム陰性)病原体の少なくとも一方について少なくとも約90%の微生物負荷低減率が挙げられる。抗微生物活性の好適なレベルの更なる例としては、黄色ブドウ球菌(グラム陽性)及び緑膿菌(グラム陰性)病原体の少なくとも一方について少なくとも約99%の微生物負荷低減率が挙げられる。抗微生物活性の好適なレベルの特に好適な例としては、黄色ブドウ球菌(グラム陽性)及び緑膿菌(グラム陰性)病原体の両方について少なくとも約90%の微生物負荷低減率が挙げられる。最後に、抗微生物活性の好適なレベルの更により好適な例としては、黄色ブドウ球菌(グラム陽性)及び緑膿菌(グラム陰性)病原体の両方について少なくとも約99%の微生物負荷低減率が挙げられる。
【0109】
微小構造化抗微生物フィルム100を表面から剥離及び/又は交換する際、使用者は、微小構造化抗微生物フィルム100を適度な力で剥がすことによって表面から接着剤119を薄い層に剥ぐ(又は静電相互作用を無効化する)ことができる。次いで使用者は、使用済みの微小構造化抗微生物フィルム100を廃棄し、第2の微小構造化抗微生物フィルム100を表面に接着することにより病原体による汚染に対する保護期間を更に延長することができる。また、微小構造化抗微生物フィルム100は、積層体として提供される複数の微小構造化抗微生物フィルムの1つであってもよいが、これについては図3を参照しながら下記に詳述する。次いでこの積層体を表面に接着させ、積層体中の最上部の微小構造化抗微生物フィルム100を積層体から剥がすことによって新しい微小構造化抗微生物フィルム100を露出させることができる。
【0110】
図3は、表面160に結合された、本開示の一実施形態による抗微生物フィルムアセンブリ又は多層抗微生物フィルム150を示したものである。抗微生物フィルムアセンブリ150は、あくまで一例として3枚の微小構造化抗微生物フィルム、詳細には、第1の微小構造化抗微生物フィルム100、第2の微小構造化抗微生物フィルム100’、及び第3の微小構造化抗微生物フィルム100”を有している。微小構造化抗微生物フィルム100、100’、100”はそれぞれ、図1及び2に関して上記に述べた微小構造化抗微生物フィルム100と同様の形成部及び要素(並びにこうした形成部及び要素の代替要素)のすべてを有している。簡単のため、説明がすべての微小構造化抗微生物フィルム100に等しく当てはまる場合には、プライム(’)のない参照符合を使用するものとするが、そうした説明は抗微生物フィルムアセンブリ150の微小構造化抗微生物フィルム100のそれぞれに等しく当てはまることは理解されなければならない。
【0111】
図3は、複数の微小構造化抗微生物フィルム100を積層体として互いの上に配置することができることを示している。しかしまた、図3は(表面160なしで示される場合)、1枚の微小構造化抗微生物フィルム100をそれ自身の上に巻くことによって形成されるロールの一部分を示すためにも用いることができる。あくまで説明を目的として、抗微生物フィルムアセンブリ150は3枚の微小構造化抗微生物フィルム100、100’、100”を積層体の形で有している。しかしながら、抗微生物フィルムアセンブリ150は特定の用途において必要なだけ多くの又は少ない数の抗微生物フィルムアセンブリ150を有しうる点は理解されるはずである。
【0112】
抗微生物フィルムアセンブリ150を、抗微生物活性を有することが望ましい表面160に結合させることができる。図3に示されるように、第1の微小構造化抗微生物フィルム100は抗微生物フィルムアセンブリ150の最上層を形成しており、第3の微小構造化抗微生物フィルム100”は抗微生物フィルムアセンブリ150の最下層を形成している。この結果、第3の微小構造化抗微生物フィルム100”の第2の主面110”に結合された第3の接着剤119”が表面160に結合し、第2の微小構造化抗微生物フィルム100’の第2の主面110’に結合された第2の接着剤119’が第3の微小構造化抗微生物フィルム100”の第1の主面108”に結合し、第1の微小構造化抗微生物フィルム100の第2の主面110に結合された第1の接着剤119が第2の微小構造化抗微生物フィルム100’の第1の主面108’に結合している。詳細には、第1及び第2の接着剤119、119’が、第2及び第3の主面108’、108”の突起部126’、126”に結合している様子が示されている。
【0113】
図3に示されるような特定の実施形態では、接着剤119は限られた低温流動性を示すものが選択される。例えば、特定の実施形態では、第1の微小構造化抗微生物フィルム100の接着剤119は限られた低温流動性を有するために、接着剤119が抗微生物物質120’と接触しうる(更にこれを無効化しうる)第2の微小構造化抗微生物フィルム100’のウェル114’内に流入する接着剤119の能力は限定されたものとなっている。
【0114】
微小構造化抗微生物フィルム100の第1の主面108に突起部126を設けることにより、抗微生物フィルムアセンブリ150内の隣接する微小構造化抗微生物フィルム100間の接触面積を最小とすることができる。隣接する微小構造化抗微生物フィルム100間の全接触面積を最小とすることにより、必要な場合には、下側の微小構造化抗微生物フィルム100から上側の微小構造化抗微生物フィルム100を剥離又は分離することが容易となる。更に、図3に示されるような特定の実施形態では、抗微生物フィルムアセンブリ150の最下層の微小構造化抗微生物フィルム100(図3の第3の微小構造化抗微生物フィルム100”)と表面160との間の全接触面積が、抗微生物フィルムアセンブリ150内の任意の隣接する微小構造化抗微生物フィルム100間の接触面積よりも大きくなっている。この構成により、抗微生物フィルムアセンブリ150が結合された表面160から必要な時まで抗微生物フィルムアセンブリ150を剥離することなく抗微生物フィルムアセンブリ150から微小構造化抗微生物フィルム100を剥離することが容易となる。
【0115】
更に、各微小構造化抗微生物フィルム100内の抗微生物物質120がそれぞれの主面108に対して陥入されている結果(すなわち、上面122が第1の主面108から所定の間隔を隔てている)、1つの微小構造化抗微生物フィルム100の抗微生物物質120が隣接する微小構造化抗微生物フィルム100の接着剤119と接触又はこれを無効化することなく微小構造化抗微生物フィルム100の積層体を形成することが可能である。
【0116】
更に、剥離ライナー又は低接着性裏面(LAB)コーティングを使用することなく、第1の微小構造化抗微生物フィルム100の接着剤119を第2の微小構造化抗微生物フィルム100’の第1の主面108に直接結合することが可能である。剥離ライナー又はLABコーティングの必要性がなくなることにより、材料及び製造コストを低減し、剥離ライナーの処分にともなう廃棄物をなくすことができる。
【0117】
第1の微小構造化抗微生物フィルム100がその有効寿命の終わりに達した時点で、第1の微小構造化抗微生物フィルム100を抗微生物フィルムアセンブリ150の残りの部分(すなわち、第2及び第3の微小構造化抗微生物フィルム100’及び100”)から剥がすことによって新しい第2の微小構造化抗微生物フィルム100’を露出させる、といったことができる。
【0118】
特定の実施形態では、複数枚の微小構造化抗微生物フィルム100を剥離することなく、又は抗微生物フィルムアセンブリ150を表面160から剥離することなく、抗微生物フィルムアセンブリ150から微小構造化抗微生物フィルム100を一度に1枚ずつ剥離することができれば有利である。
【0119】
これを実現する1つの方法は、1つの微小構造化抗微生物フィルム100の接着剤119と、隣接する微小構造化抗微生物フィルム100の第1の主面108との間の接触面積が抗微生物フィルムアセンブリ150の下部に向かって概ね増大するように抗微生物フィルムアセンブリ150を構成することである。例えば、図3に示されるような複数の同じ微小構造化抗微生物フィルム100を有する抗微生物フィルムアセンブリ150の代わりに、抗微生物フィルムアセンブリ150は、抗微生物フィルムアセンブリ150の下部に向かってピッチ(すなわち、隣接するウェル114の中心間の距離)が大きくなるような異なる微小構造化抗微生物フィルム100を有してもよい。例えば、こうした実施形態では、最上層の微小構造化抗微生物フィルム100が最小の平均ピッチを有し、最下層の微小構造化抗微生物フィルム100が最大の平均ピッチを有することになる。隣接する微小構造化抗微生物フィルム100間の接触面積を抗微生物フィルムアセンブリ150の下部に向かって大きくする別の方法は、微小構造化抗微生物フィルム100の第1の主面108内の突起部126の数を抗微生物フィルムアセンブリ150の上部に向かって増やすことである。例えば、壁部112の各交差部に1個の突起部126を有する微小構造化抗微生物フィルム100のそれぞれの代わりに、抗微生物フィルムアセンブリ150内のより高い位置に配置される微小構造化抗微生物フィルム100が、抗微生物フィルムアセンブリ150内のより低い位置に配置される微小構造化抗微生物フィルム100よりも第1の主面108内により多くの突起部を有するようにしてもよい。
【0120】
微小構造化抗微生物フィルム100を抗微生物フィルムアセンブリ150から一度に1枚ずつ剥離できるようにするための別の方法は、異なる接着剤を有する微小構造化抗微生物フィルム100から抗微生物フィルムアセンブリ150を形成し、抗微生物フィルムアセンブリ150内のより低い位置に配置される微小構造化抗微生物フィルム100が、抗微生物フィルムアセンブリ150内のより高い位置に配置される微小構造化抗微生物フィルム100よりも強力な接着剤119を有するようにすることである(及びその逆)。あるいは、抗微生物フィルムアセンブリ150の微小構造化抗微生物フィルム100のそれぞれが、同じであるが異なる厚さに形成された接着剤119を有することにより、抗微生物フィルムアセンブリ150内のより低い位置に配置される微小構造化抗微生物フィルム100が、抗微生物フィルムアセンブリ150内のより高い位置に配置される微小構造化抗微生物フィルム100よりも厚い接着剤119を有するようにしてもよい(及びその逆)。「より強力な」なる用語は、接着剤に関して、より剥離強度の高い接着剤を指して一般に用いられる。例えば、より強力な感圧性接着剤とは、感圧性接着剤の剥離強度を測定するための一規格であるASTM D3330に従って別の接着剤よりも高い剥離強度を有する接着剤でありうる。
【0121】
図3に示される実施形態では、抗微生物フィルムアセンブリ150は3枚の同じ微小構造化抗微生物フィルム100を有している。しかしながら、上記に述べたように、異なる種類の微小構造化抗微生物フィルムを抗微生物フィルムアセンブリ150に使用することが可能であり、異なる微小構造化抗微生物フィルムを使用することにより特定の実施形態において特定の利点が得られる点は理解されるはずである。抗微生物フィルムアセンブリ150の各微小構造化抗微生物フィルムは、規則的(例えば、図1及び2の微小構造化抗微生物フィルム100と、後述する図4及び5の微小構造化抗微生物フィルム200とが交互に配置される)、不規則的、又はこれらの組み合わせで配置することができる。
【0122】
図4及び5は、本開示の別の実施形態に基づく微小構造化された抗微生物フィルム200を示したものである。微小構造化抗微生物フィルム200は、図1及び2に示した実施形態に関連して上記に述べたものと多くの同じ要素及び形成部を共有している。したがって、図1及び2に示した実施形態の要素及び形成部に対応する要素及び形成部には200番台の同じ参照符合を付すものとする。図4及び5に示される実施形態の形成部及び要素(並びにこうした形成部及び要素の代替要素)のより完全な説明については、図1及び2に関する上記の説明を参照されたい。
【0123】
微小構造化された抗微生物フィルム200は、微小構造化された第1の面204と第2の面206とを有する基板202を有する。基板202の第1の面204は第1の主面208を含み、基板202の第2の面206は第2の主面210を含んでいる。第1の主面208は複数の一次交差壁部212により、詳細には複数の一次交差壁部212の上面により、少なくとも部分的に画定されている。第1の主面208は「一次微小構造化表面208」と呼ぶこともできる。一次微小構造化表面208は、複数の突起部226によって更に画定されている。微小構造化抗微生物フィルム200は更に、基板202の第2の面206上の第2の主面210に結合された接着剤219を有する。
【0124】
基板202の第1の面204は、それぞれが4個の一次壁部212及び1個の一次底部216によって少なくとも部分的に画定されている複数の一次ウェル214を更に有している。一次底部216は、基板202の第1の主面108から一定の距離だけ離間しているため、一次ウェル214は基板202の第1の面204において陥入されている。一次壁部212及び一次底部216は1個の一次ウェル214の一次内面218を少なくとも部分的に画定し、ウェル214の一次内面218は基板202の第1の主面208から内側に延びている。
【0125】
微小構造化抗微生物フィルム200は更に第2のレベル又は第2段階の微小構造を有している。詳細には、微小構造化抗微生物フィルム200は、「二次微小構造化表面」228と呼ぶこともできる二次的な第1の主面228を有している。二次微小構造化表面228は複数の二次交差壁部232により、詳細には複数の二次交差壁部232の上面により、少なくとも部分的に画定されている。二次微小構造化表面228は、複数の二次突起部(又は他の微小構造化形成部)によって更に画定されることもでき、二次突起部は図を分かりやすくするために図4及び5には示されていない。図4及び5に示される実施形態では、複数の二次壁部232は第1の主面208から所定の距離だけ離間しており、第2の壁部232は微小構造化抗微生物フィルム200の第1の主面208に対して陥入されている。
【0126】
二次微小構造化表面228は、それぞれが4個の二次壁部232及び1個の二次底部236によって少なくとも部分的に画定された複数の二次ウェル234によって更に画定される。二次底部236は一次微小構造化表面208から所定の距離だけ離間し、更に二次微小構造化表面228から所定の距離だけ離間している。二次壁部232及び二次底部236が1個の二次ウェル234の二次内面238を少なくとも部分的に画定し、ウェル234の二次内面238は基板202の一次微小構造化表面208及び二次微小構造化表面228から内側に延びている。
【0127】
図4及び5に示される実施形態では、一次底部216はそれぞれ、複数の二次底部236によって少なくとも部分的に画定され、二次底部236は、一次微小構造化表面208から一次底部216と同じ距離に配置されている。しかしながら、二次底部236は一次底部216と同じ深さに配置される必要はなく、その代わりに、二次底部236を一次微小構造化表面208から更なる距離の位置に配置し、各一次底部216からも所定の距離だけ離間させてもよい点は理解されるはずである。例えば、特定の実施形態では、1個以上の一次ウェル214が、一次底部216と二次底部236との間に二次ウェル234が階段状の構成を画定するように配置された1個以上の二次ウェル234を有してもよい。
【0128】
図4及び5に示されるように、抗微生物物質220を微小構造化抗微生物フィルム200の微小構造化ウェル、詳細には二次ウェル234内に配置することができる。すなわち、各一次ウェル214及び各二次ウェル234は抗微生物物質220を保持するように構成されている。抗微生物物質220は上面222を有する。特定の実施形態では、図1及び2に示されるように、抗微生物物質220は各二次ウェル234内に配置され、二次ウェル234の内の1個以上を抗微生物物質220が部分的に充填し、抗微生物物質220の上面222が基板202の二次微小構造化表面228及び一次微小構造化表面208から所定の距離だけ離間するようになっている。この結果、抗微生物物質220は基板202の第1の面204において陥入され、二次微小構造化表面228から更に陥入されている。
【0129】
図4及び5に示される実施形態では、二次壁部232は一次壁部212よりも短いものとして示されているが、二次壁部232は一次壁部212と同じ高さ(又はそれとより近いサイズ)であってもよい点は理解されるはずである。短い二次壁部232を用いた実施形態では、抗微生物物質220が二次ウェル234を過剰に充填しながらも一次微小構造化表面208に対して陥入した状態に保持されるようにしてもよい(すなわち、抗微生物物質220の上面222が一次微小構造化表面208から依然として所定の距離だけ離間していてもよい)。
【0130】
図4及び5に示される実施形態は、あくまで一例として2つのレベル又は2段階の微小構造を有している。しかしながら、基板202の第1の面204を更なる段階で微小構造化することによって、微小構造化抗微生物フィルム200内に抗微生物物質220を更に容易に保持することができる。こうした更なる段階の微小構造化としては、更なる三次微小構造、四次微小構造などが挙げられる。微小構造化の更なるレベルはそれぞれ、基板202内により深く形成してもよく、形成される更なるウェルが一次微小構造化表面208から一次底部216と同じ距離だけ離間した底部を有してもよく、又はその組み合わせでもよい。
【0131】
図4及び5の微小構造化抗微生物フィルム200は、一次ウェル214、及び各一次ウェル214内の複数の二次ウェル234を示している。しかしながら、様々な規則的な構成、不規則的な構成、又はその組み合わせの構成が可能である点は理解されるはずである。例えば、特定の実施形態では、不規則な一次ウェル214が二次ウェル234を有してもよく、あるいは1つ置きの一次ウェル214が二次ウェル234を有してもよく、あるいは微小構造化抗微生物フィルム200のある領域が一次及び二次ウェル214及び234を有する一方で微小構造化抗微生物フィルム200のある領域は一次ウェル214のみを有する、といった具合である。
【0132】
図4及び5に示される実施形態では、二次壁部232は一次壁部212に対してほぼ平行又は垂直な向きとなっている。しかしながら、二次壁部232は一次壁部212に対して他の異なる角度(例、45°)の向きであってもよい点は理解されるはずである。更に、二次壁部234は一次壁部214と同じ形状を有するものとして示されているが、形状、数、向き、サイズなどに関し図1及び2のウェル114に関して上記に述べた代替的構成のすべてが図4及び5の微小構造化抗微生物フィルム200の一次ウェル214及び二次ウェル234に当てはまることは理解されるはずである。
【0133】
例えば、図4及び5に示される微小構造化抗微生物フィルム200は、各一次ウェル214内に16個の二次ウェル234が形成されたものとして示されている。しかしながら、微小構造化抗微生物フィルム200は、最も少なくて一次ウェル214の1個当たり0個の二次ウェル234、できるだけ多くの、かつ望ましい数の二次ウェル234を有しうる。
【0134】
二次壁部232及びウェル234は異なるサイズを有してよく、図1及び2の壁部112及びウェル114に関して上記に与えられたサイズ範囲によって規定されうる。更に、特定の実施形態では、二次ウェル234の平均の深さ又は二次壁部232の平均の高さが少なくとも約0.1マイクロメートルであってもよく、特定の実施形態では少なくとも約1マイクロメートルであってもよく、特定の実施形態では少なくとも約2マイクロメートルであってもよい。特定の実施形態では、二次ウェル234の平均の深さ又は二次壁部232の平均の高さが約50マイクロメートル以下であってもよく、特定の実施形態では約20マイクロメートル以下であってもよく、特定の実施形態では約10マイクロメートル以下であってよく、特定の実施形態では約5マイクロメートルであってもよい。
【0135】
二次壁部232及びウェル234は更に、一次壁部212及びウェル214と比較した場合のそれらの相対的サイズによって規定することができる。例えば、特定の実施形態では、平均の二次壁部の高さ又は平均の二次ウェルの深さは、それぞれ平均の一次壁部の高さ又は平均の一次ウェルの深さよりも少なくとも約5マイクロメートル小さい。平均の一次壁部の高さ及び平均の一次ウェルの深さ、並びに一次壁部212及びウェル214の他の特徴は、図1及び2の壁部112及びウェル114に関して上記に述べたものと同様と仮定することができる。更に、特定の実施形態では、平均の二次壁部の高さ又は平均の二次ウェルの深さは、それぞれ平均の一次壁部の高さ又は平均の一次ウェルの深さよりも少なくとも約20マイクロメートル小さく、特定の実施形態では少なくとも約50マイクロメートル小さく、特定の実施形態では少なくとも約70マイクロメートル小さい。
【0136】
特定の実施形態では、平均の二次ウェルの体積に対する平均の一次ウェルの体積の比は少なくとも約5であり、特定の実施形態では少なくとも約30であり、特定の実施形態では少なくとも約150である。特定の実施形態では、平均の二次ウェルの体積に対する平均の一次ウェルの体積の比は約2,000,000以下であり、特定の実施形態では約1,000,000以下であり、特定の実施形態では約150,000以下であり、特定の実施形態では約500以下である。
【0137】
図6は、図4及び5の微小構造化抗微生物フィルム200がロールに巻かれた形態を有する抗微生物フィルムアセンブリ250を示したものである。詳細には、図6は、微小構造化抗微生物フィルム200がそれ自身の上に巻回されることによって形成されるロールの一部を示している。図6に示されるように、微小構造化抗微生物フィルム200をそれ自身の上に巻回するには剥離ライナー又はLABコーティングを必要としない。更に、微小構造化抗微生物フィルム200の第1の主面208の1つの部分の突起部226が、微小構造化抗微生物フィルム200の別の部分の接着剤219(第2の主面210と結合されている)と接触することによって微小構造化抗微生物フィルム200の隣接する部分間の接触面積が最小となる。更に、抗微生物フィルムアセンブリ250の最外層を除いて、微小構造化抗微生物フィルム200の1つの部分の抗微生物物質220が微小構造化抗微生物フィルム200の別の部分によって少なくとも部分的に覆われる。
【0138】
図6に示される実施形態では、抗微生物フィルムアセンブリ250の全体は1枚の微小構造化抗微生物フィルム200からなっている。しかしながら特定の実施形態では、抗微生物フィルムアセンブリ250は異なる種類の微小構造化抗微生物フィルムで形成されるロールを有してもよい。例えば、特定の実施形態では、第1の微小構造化抗微生物フィルム(例えば、図1及び2の微小構造化抗微生物フィルム100)をそれ自身の上に巻回することにより第1のロールを形成し、次いで第2の微小構造化抗微生物フィルム(例えば、図4及び5の微小構造化抗微生物フィルム200)を第1のロールの周囲に巻回することができる、といったような具合である。
【0139】
抗微生物フィルムアセンブリ250はあくまで一例としてロールとして図6に示した。しかしながら、微小構造化抗微生物フィルム200は、上記に述べた抗微生物フィルムアセンブリ150と同様、積層体として用いることもできる点は理解されるはずである。こうした抗微生物フィルムアセンブリは、複数の微小構造化抗微生物フィルム200、又は微小構造化抗微生物フィルムの組み合わせを有しうる。更に、こうした積層体では、図3の抗微生物フィルムアセンブリ150に関して上記に述べた代替的構成のいずれを用いることもできる。
【0140】
更に、抗微生物フィルムアセンブリ250からの微小構造化抗微生物フィルム200の剥離を容易にする必要がある場合、図3に関して上記に述べた方法の幾つかを用いることによって、ロールの終点(すなわち、中心)におけるよりもロールの始点において抗微生物フィルムアセンブリ250から微小構造化抗微生物フィルム200をより容易に剥離することが可能であり、これにより、ロールの中心に向かう(すなわち、図6に示される抗微生物フィルムアセンブリ250の最下部に向かう)に従って微小構造化抗微生物フィルム200はより巻きだしにくくなる。
【0141】
以下の実施例は、本発明の説明を目的としたものであって限定的なものではない。
【実施例】
【0142】
本開示の範囲内での多くの改変及び変形は当業者には明らかであることから、あくまで説明を目的とした以下の実施例において本開示についてより具体的に説明する。特に断らないかぎり、以下の実施例において記載するすべての割合、百分率、及び比率は重量を基準としたものであり、また、実施例において使用するすべての試薬は、後述する化学薬品の供給業者から得たかあるいは入手可能なものであり、あるいは従来の技法によって合成されたものを用いた。特に断らないかぎり、材料はシグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma Aldrich Chemical Co.)(ミズーリ州セントルイス)から入手した。
【0143】
下記の組成についての略号を以下の実施例で用いた。
【0144】
【表1】

【0145】
微小構造化フィルム
所望のフィルムパターンの逆型を有するキャストロールに対して溶融ポリプロピレン樹脂をキャスティングすることによって、微小構造化表面308を有するポリプロピレン微小構造化フィルム/基板302を製造した。微小構造化フィルム302の走査電子顕微鏡写真を図7に示す。使用した微小構造化フィルムの更なる詳細については、ハルバーソン(Halverson)らの国際特許出願公開第2007/070310号に述べられている。フィルム302の微小構造化表面308は、一次壁部312によって分離された一次ウェル314を有していた。一次壁部312及び一次ウェル314は、約250マイクロメートルのピッチ(隣接する一次壁部312又はウェル314のそれぞれの中心間の間隔)を有していた。ウェル314は約67マイクロメートルの公称深さを有する偏菱形の形状を有し、壁部312はフィルム302の加工方向に対して45°の角度となる向きを有していた。Wyko干渉計顕微鏡(モデルRST、ビーコ・メトロロジー・グループ社(Veeco Metrology Group)(アリゾナ州ツーソン))で検査したところ、一次壁部312の交差部に多数の上側を向いた突起部326が配置されていることが分かった。各交差部間の壁部の高さは約67マイクロメートルであり、壁部の交差部の領域における壁部の高さは約75マイクロメートルであった。したがって、突起部326はそれぞれ約8マイクロメートルの高さを有していた。微小構造化フィルム302は更に、一次ウェル314のそれぞれを二次ウェル334にサブ分割する二次壁部332を有していた。二次壁部332は約4マイクロメートルの高さを有し、二次壁部332及び二次ウェル334は約25マイクロメートルのピッチ(すなわち、隣接する二次壁部332又はウェル334のそれぞれの中心間の距離)を有していた。二次壁部332は、フィルム302の加工方向に対して平行又は垂直となるように配列されていた(すなわち、二次壁部332は一次壁部312に対して約45°の角度で配置されていた)。
【0146】
試験方法
阻害領域アッセイ法
黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)(アメリカンタイプカルチャーコレクション、バージニア州マナッサス)、グラム陽性(+)判定、及び緑膿菌(ATTC 9027)、グラム陰性(−)判定を用いた。
【0147】
0.5マクファーランド標準比濁液を用い、イー・エム・ディー・バイオサイエンス社(EMD Biosciences)(ドイツ、ダルムシュタット)より入手したリン酸緩衝溶液(PBS)中、1ミリリットル(mL)当たり約1×10個の濃度でコロニー形成単位(CFU)を含む接種懸濁液を調製した。滅菌した綿棒アプリケータ−を懸濁液に浸し、トリプチケースソイ寒天(TSA)プレートの乾燥した表面に異なる3方向に塗り付けることによって菌叢を調製した。各フィルムで3個の7mm径のディスクを調製し、接種プレート上に活性(抗微生物コーティングした)面を下にして置き、滅菌ピンセットで寒天に対してしっかりと押し付けて寒天と完全に接触させた。各プレートを4℃で3時間インキュベートした後、36℃±1℃で24時間インキュベートした。各試料の下及び周囲の領域を細菌の増殖について調べた。増殖がまったく認められなかった各試料の周囲の円の直径の平均値を結果として報告した。例えば、領域の値が7であれば、7mm径のディスクの下側で増殖がまったく認められなかったことを示し、領域の値が9であれば、7mm径のディスクの下側、及びディスクの周囲の所定の領域において増殖がまったく認められず、増殖が認められなかった領域の全直径(ディスクの下の領域を含む)が9mmであったことを示す。
【0148】
微生物負荷低減率アッセイ法
溶融(45℃)寒天スラリーに細菌細胞の標準化された培養を接種することを行うASTM E2180−01(2001年12月10日承認、2002年2月発行)に準じて「微生物負荷低減率」を試験した。次に、接種した寒天スラリー(0.5ミリリットル)の薄層を試験物質及び非処理のコントロール物質にピペットで加えた。各試料は、黄色ブドウ球菌(ATCC6538)及び緑膿菌(ATCC9027)を用いて2重に試験を行った。24時間後、生存した微生物を、試験基板からD/E中和培養液中へ寒天スラリー接種物を溶出することによって回収し、超音波処理及びボルテックスによって抽出した。次に連続希釈を行ない、各希釈液から混釈平板を調製した。各寒天平板を28℃±1℃で48時間インキュベートした。この後、各希釈系列からの細菌コロニーをカウントして記録した。次に非処理試料に対する処理試料の細菌の低減率を計算した。一般には、各試料について2つの複製実験の平均値を結果として報告する。
【0149】
(実施例1)
20部のパーミュタン、30部のトルエン、2部のN−75イソシアネート、及び0.2部のAgIONを含む抗微生物組成物を、すべての成分を小型のジャー内で混合することによって調製した。滑らかなテフロン(登録商標)コーティングを施したガラス棒を用いて抗微生物組成物を微小構造化フィルムの微小構造化面に塗布することによって、コーティングをフィルムの一次ウェル内にフィルムの第1の主面の下へと押し込んだ。これにより、溶媒が蒸発する際に結合剤/抗微生物組成物がフィルムの微小構造化表面の一次ウェル内部でフィルムの第1の主面の下に閉じ込められることで微小構造化抗微生物フィルムが形成された。
【0150】
微小構造化抗微生物フィルムの抗微生物コーティングされた表面にGLAMフィルムの接着剤表面を接触させ、この構造体を1300gのローラーで2回圧延した。
【0151】
この構造体を23℃(73.4°F)及び50%の相対湿度で54日間エイジングした。構造体の2.54cm幅(1インチ幅)の3個の小片を作製し、それぞれの90°剥離接着力を測定した。3つの測定値の平均は5.28g/cm(13.4g/インチ)であり、測定値の標準偏差は0.24g/cm(0.6g/インチ)であった。GLAMフィルムの剥離後、微小構造化フィルムの抗微生物活性を微生物負荷低減率アッセイ法に従って決定した。接着剤の接触の前後の微生物負荷低減率の結果を下記表1に示す。
【0152】
【表2】

【0153】
これらのデータは、接着剤に対して微小構造化抗微生物フィルムをエイジングさせることによりその抗微生物性に影響が見られなかったことを示している。黄色ブドウ球菌に対する抗微生物性能は、添加する抗微生物剤の量(この試料は0.025%の銀を含有するものであった)を増やすか、あるいはコーティングにトリクロサン又は第4級アミン化合物のような相乗的な抗微生物物質を混合することによって向上させることができる。
【0154】
(実施例2)
20重量%のラウリシジン、10重量%のサリチル酸、10重量%のDoss界面活性剤(50%溶液)、及び60重量%のイロプロピルアルコールからなる脂肪酸モノエステルを主成分とする抗微生物物質を、滑らかなテフロン(登録商標)コーティングを施したガラス棒を用いて微小構造化フィルムの微小構造化面上にはけ塗りすることによって抗微生物物質を微小構造化フィルムの一次ウェル内に押し込んで微小構造化抗微生物フィルムを形成した。コントロールとして、同じ抗微生物物質を24号マイヤーロッドを用いて微小構造化フィルムの平滑な面(第2の面)上にコーティングし、約8マイクロメートルの乾燥コーティングの厚さとした。コーティングを50℃のオーブン内で5分間乾燥させた。阻害領域試験及び微生物負荷低減率試験を両方の試料に行った。結果を下記表2及び3に示す。
【0155】
【表3】

【0156】
【表4】

【0157】
(実施例3)
9部のネオクリルXK90を一部の架橋剤パートBと混合することによってアクリル結合剤を主成分とする抗微生物物質を調製した。パートBは、76部のエチルアルコール、22.8部のCX−100、及び1.2部のサーフィノール104PAを合わせることによって調製した。すべての成分はビーカー内で合わせ、高剪断力下で20分混合した。この混合物に0.5部のAgIONを加えた。最終的な組成物を、滑らかなテフロン(登録商標)コーティングを施したガラス棒を用いて微小構造化フィルムの微小構造化面上にコーティングすることによってコーティングを微小構造化フィルムの一次ウェル内に押し込んで微小構造化抗微生物フィルムを形成した。コントロールとして、同じアクリルベースの抗微生物物質を24号マイヤーロッドを用いて微小構造化フィルムの平滑な面(第2の面)上にコーティングし、約10マイクロメートルの乾燥コーティングの厚さとした。両方のコーティングされた試料を55℃のオーブン内で10分乾燥させ、微生物負荷低減率アッセイ法を用いて試験を行った。微生物負荷低減率法の結果を表4に示す。
【0158】
【表5】

【0159】
(実施例4)
次の2種類の抗微生物物質を形成した。(1)マイアサイドASをイソプロピルアルコールに加えた20%溶液、及び(2)バルダック208Mをイソプロピルアルコールに加えた50%溶液。滑らかなテフロン(登録商標)コーティングを施したガラス棒を用いて各抗微生物物質を微小構造化フィルムの微小構造化面上にコーティングすることによって2種類の微小構造化抗微生物フィルムを形成した。コントロールとして、同じ抗微生物物質をそれぞれ、24号マイヤーロッドを用いて微小構造化フィルムの平滑な面(第2の面)上にコーティングし、約24マイクロメートルの湿潤コーティングの厚さとした。微小構造化抗微生物フィルム及びコントロールのコーティングを施したフィルムを60℃のオーブン内で5分間乾燥した。コントロールのコーティングを施したフィルムは触ると、べとつき感があり、抗微生物物質は指で拭き取ることで除去されたが、微小構造化抗微生物フィルムのコーティングされた微小構造化面はべとついたようには見えず、べとつき感もなく、抗微生物物質を拭き取ることはできなかった。ASTM E2180−01試験法を用いた4つの試料の微生物負荷低減率試験の結果を表5に示す。
【0160】
【表6】

【0161】
上記に述べ、図面に示した実施形態はあくまで一例として示したものであり、本発明の概念及び原理に対する限定を目的としたものではない。したがって本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、材料、要素、並びにその構成及び配置における様々な変更が可能であることは当業者には容易に理解されるであろう。本発明の異なる特徴及び態様を以下の特許請求の範囲において記載するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面を含む第1の面を有する基板と、
前記基板の第1の面に画定される複数の微小構造化ウェルであって、前記複数のウェルのそれぞれは底部によって少なくとも部分的に画定され、前記底部は前記基板の前記第1の主面から所定の距離だけ離間され、前記複数のウェルのそれぞれは前記第1の主面の平面内に少なくとも1つの寸法を有し、前記少なくとも1つの寸法が1000マイクロメートル未満であるような複数の微小構造化ウェルと、
前記基板の第1の主面から所定の距離だけ離間した上面を有するように前記複数のウェルの少なくとも一部のものの内部に配置された抗微生物物質と、を備える、微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項2】
前記複数のウェルのそれぞれの前記底部が、前記第1の主面から250マイクロメートル未満の間隔で離間されている、請求項1に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項3】
前記基材がポリマーフィルムを含む、請求項1に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項4】
前記基板が、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、生分解性ポリマー、ポリ塩化ビニル、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項5】
前記基板が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、セルロース誘導体、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項6】
前記抗微生物物質が、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)、パラクロロメタキシレノール(PCMX)、脂肪酸モノエステル/モノエーテル、第4級アンモニウム化合物、ポリヘキサメチレンビグアニド、銀含有化合物、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項7】
前記抗微生物物質が液体を含む、請求項1に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項8】
前記抗微生物物質が流動性粉末を含む、請求項1に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項9】
前記抗微生物物質がポリマー結合剤中に分散された抗微生物剤を含む、請求項1に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項10】
前記複数のウェルが複数の一次ウェルであり、前記複数の交差壁部が複数の一次交差壁部であり、前記複数のウェルのそれぞれの前記底部が一次底部であり、前記複数の一次ウェルのそれぞれが複数の二次ウェルを更に含み、前記複数の二次ウェルのそれぞれは前記基板の前記第1の主面から所定の距離だけ離間された二次底部によって少なくとも部分的に画定される、請求項1に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項11】
前記二次底部が前記一次底部の一部を形成し、前記第1の主面から前記一次底部が離間されているのと同じ距離だけ前記第1の主面から離間されている、請求項10に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項12】
前記二次底部が前記一次底部から更に陥入している、請求項10に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項13】
前記第1の主面が一次微小構造化表面であり、前記二次ウェルが二次微小構造化表面内に形成され、前記抗微生物物質が前記複数の二次ウェル内に配置されることにより、前記抗微生物物質の上面が前記二次微小構造化表面から所定の距離だけ離間される、請求項10に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項14】
前記微小構造化抗微生物フィルムがロールの形態である、請求項1に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項15】
前記微小構造化抗微生物フィルムが複数の積層された微小構造化抗微生物フィルムのうちの1つである、請求項1に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項16】
前記基板が第2の主面を含む第2の面を更に含み、前記第2の主面に接着剤が結合される、請求項1に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項17】
前記接着剤が、(メタ)アクリレート、ウレタン、シリコーン、エポキシ、ゴム系接着剤、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項18】
前記接着剤が、保護しようとする表面に更に結合される、請求項16に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項19】
前記微小構造化抗微生物フィルムがロールの形態であり、前記ロールが剥離ライナーを含まないことにより、前記微小構造化抗微生物フィルムの第1の部分の前記接着剤が前記微小構造化抗微生物フィルムの別の部分の第1の主面に結合される、請求項16に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項20】
前記基板が第2の主面を含む第2の面を更に有し、前記第2の主面が画像を含む、請求項1に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項21】
前記基板の第1の主面が少なくとも1つの上側に延びる突起部を含む、請求項1に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項22】
第1の面を有する基板であって、前記第1の面が複数の交差壁部の上面によって少なくとも部分的に画定される第1の主面を含む、基板と、
前記基板の第1の面に画定された複数の微小構造化ウェルであって、前記複数のウェルのそれぞれは底部と少なくとも3つの前記複数の交差壁部とによって少なくとも部分的に画定され、前記底部は前記基板の第1の主面から所定の距離だけ離間され、前記複数のウェルのそれぞれが前記第1の主面の平面内に少なくとも1つの寸法を有し、前記少なくとも1つの寸法が1000マイクロメートル未満であるような複数の微小構造化ウェルと、
前記基板の第1の主面から所定の距離だけ離間された上面を有するように前記複数のウェルの少なくとも一部のものの内部に配置された抗微生物物質と、を備える微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項23】
前記複数のウェルのそれぞれが250マイクロメートル未満の深さを含む、請求項22に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項24】
前記基材がポリマーフィルムを含む、請求項22に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項25】
前記基板が、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、生分解性ポリマー、ポリ塩化ビニル、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項22に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項26】
前記基板が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、セルロース誘導体、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項22に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項27】
前記抗微生物物質が、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)、パラクロロメタキシレノール(PCMX)、脂肪酸モノエステル/モノエーテル、第4級アンモニウム化合物、ポリヘキサメチレンビグアニド、銀含有化合物、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項22に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項28】
前記抗微生物物質が液体を含む、請求項22に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項29】
前記抗微生物物質が流動性粉末を含む、請求項22に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項30】
前記抗微生物物質がポリマー結合剤中に分散された抗微生物剤を含む、請求項22に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項31】
前記複数のウェルが複数の一次ウェルであり、前記複数の交差壁部が複数の一次交差壁部であり、前記複数のウェルのそれぞれの前記底部が一次底部であり、前記複数の一次ウェルのそれぞれが複数の二次ウェルを更に含み、前記複数の二次ウェルのそれぞれは二次底部と少なくとも1つの二次壁部とによって少なくとも部分的に画定される、請求項22に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項32】
前記二次底部が前記一次底部の一部を形成し、前記第1の主面から前記一次底部が離間されているのと同じ距離だけ前記第1の主面から離間されている、請求項31に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項33】
前記少なくとも1つの二次壁部が前記複数の一次交差壁部よりも短いことにより、前記少なくとも1つの二次壁部の上面が前記基板の前記第1の主面から所定の距離だけ離間される、請求項31に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項34】
前記抗微生物物質が前記複数の二次ウェル内に配置されることにより、前記抗微生物物質の上面が前記少なくとも1つの二次壁部の上面から所定の距離だけ離間される、請求項31に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項35】
前記少なくとも1つの二次壁部が前記複数の一次交差壁部に対して約45°の角度となる向きを有する、請求項31に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項36】
前記複数の二次ウェルのそれぞれが前記二次底部と少なくとも3つの前記少なくとも1つの二次壁部とによって少なくとも部分的に画定され、前記二次壁部の上面は前記基板の前記第1の主面から所定の距離だけ離間されている、請求項31に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項37】
前記微小構造化抗微生物フィルムがロールの形態である、請求項22に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項38】
前記微小構造化抗微生物フィルムが複数の積層された微小構造化抗微生物フィルムのうちの1つである、請求項22に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項39】
前記基板が第2の主面を含む第2の面を更に含み、前記第2の主面に接着剤が結合される、請求項22に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項40】
前記接着剤が、(メタ)アクリレート、ウレタン、シリコーン、エポキシ、ゴム系接着剤、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項39に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項41】
前記接着剤が第2の抗微生物フィルムの第1の面の第1の主面に更に結合される、請求項39に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項42】
前記微小構造化抗微生物フィルムがロールの形態であり、前記ロールが剥離ライナーを有さない、請求項39に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項43】
前記基板が第2の主面を含む第2の面を更に有し、前記第2の主面が画像を含む、請求項22に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項44】
前記複数の交差壁部が複数の交差部を形成し、前記複数の交差部のそれぞれが上側に延びる突起部を有する、請求項22に記載の微小構造化抗微生物フィルム。
【請求項45】
第1の抗微生物フィルムと第2の抗微生物フィルムとを有する抗微生物フィルムアセンブリであって、前記第1の抗微生物フィルム及び前記第2の抗微生物フィルムのそれぞれが、
第1の主面を有する第1の面と、第2の主面を有する第2の面とを有する基板と、
前記基板の前記第1の面に画定され、前記基板の前記第1の主面から陥入した複数の微小構造化ウェルと、
前記複数のウェル内に配置された抗微生物物質と、を有し、
前記第1の抗微生物フィルムが前記基板の前記第2の主面に結合された接着剤を有し、前記第1の抗微生物フィルムの前記接着剤が前記第2の抗微生物フィルムの前記第1の主面と接触する、抗微生物フィルムアセンブリ。
【請求項46】
前記抗微生物フィルムアセンブリがロールの形態である、請求項45に記載の抗微生物フィルムアセンブリ。
【請求項47】
前記抗微生物フィルムアセンブリが積層体の形態である、請求項45に記載の抗微生物フィルムアセンブリ。
【請求項48】
前記第2の抗微生物フィルムの前記複数の微小構造化ウェルが前記第1の抗微生物フィルムによって少なくとも部分的に覆われる、請求項45に記載の抗微生物フィルムアセンブリ。
【請求項49】
前記第2の抗微生物フィルムの前記抗微生物物質が前記第1の抗微生物フィルムによって少なくとも部分的に覆われる、請求項45に記載の抗微生物フィルムアセンブリ。
【請求項50】
前記第2の抗微生物フィルムが前記基板の前記第2の主面に結合された接着剤を更に含み、前記第2の抗微生物フィルムの前記接着剤が前記第1の抗微生物フィルムの前記接着剤よりも厚い、請求項45に記載の抗微生物フィルムアセンブリ。
【請求項51】
前記第2の抗微生物フィルムが前記基板の前記第2の主面に結合された接着剤を更に含み、前記第2の抗微生物フィルムの前記接着剤が前記第1の抗微生物フィルムの前記接着剤よりも強力である、請求項45に記載の抗微生物フィルムアセンブリ。
【請求項52】
前記第2の抗微生物フィルムの前記複数の微小構造化ウェルが、前記第1の抗微生物フィルムの前記複数の微小構造化ウェルよりも平均して小さい、請求項45に記載の抗微生物フィルムアセンブリ。
【請求項53】
前記第1の抗微生物フィルムの前記複数の微小構造化ウェルが第1の平均のピッチを有し、前記第2の抗微生物フィルムの前記複数の微小構造化ウェルが第2の平均のピッチを有し、前記第2の平均のピッチが前記第1の平均のピッチよりも大きい、請求項45に記載の抗微生物フィルムアセンブリ。
【請求項54】
第1の主面を有する第1の面と、第2の主面を有する第2の面とを有する基板と、
前記基板の前記第1の面に画定され、前記基板の前記第1の主面から陥入した複数の微小構造化ウェルと、
前記複数のウェル内に配置された抗微生物物質と、を有する第3の抗微生物フィルムを更に含み、
前記第2の抗微生物フィルムが前記基板の前記第2の主面に結合された接着剤を更に有し、前記第2の抗微生物フィルムの前記接着剤が前記第3の抗微生物フィルムの前記第1の主面と接触し、前記第2の抗微生物フィルムの前記接着剤と前記第3の抗微生物フィルムの前記第1の主面との間の接触面積が前記第1の抗微生物フィルムの前記接着剤と前記第2の抗微生物フィルムの前記第1の主面との間の接触面積よりも大きい、請求項45に記載の抗微生物フィルムアセンブリ。
【請求項55】
微生物による汚染から表面を保護するための方法において、
第1の抗微生物フィルム及び第2の抗微生物フィルムを提供する工程であって、前記第1の抗微生物フィルム及び前記第2の抗微生物フィルムのそれぞれが、
第1の主面を有する第1の面と、第2の主面を有する第2の面とを有する基板と、
前記基板の前記第1の面に画定され、前記第1の主面から陥入した複数の微小構造化ウェルと、
前記複数のウェル内に配置された抗微生物物質と、
前記第2の主面に結合された接着剤と、を有し、
前記第1の抗微生物フィルムの前記接着剤が前記第2の抗微生物フィルムの前記第1の主面と接触し、前記第2の抗微生物フィルムの前記接着剤が、保護しようとする表面に結合される、工程と、
前記第1の抗微生物フィルムの前記接着剤を前記第2の抗微生物フィルムの前記第1の主面との接触状態から剥離することによって前記第2の抗微生物フィルムから前記第1の抗微生物フィルムを剥離して、前記第2の抗微生物フィルムの前記抗微生物物質を露出させることと、を含む方法。
【請求項56】
前記保護しようとする表面に前記第2の抗微生物フィルムの前記接着剤を結合することによって前記表面に前記第1の抗微生物フィルム及び前記第2の抗微生物フィルムを適用することを更に含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記第2の抗微生物フィルムの前記抗微生物物質を露出させる工程が、剥離ライナーを剥離することなく前記第2の抗微生物フィルムの前記抗微生物物質を露出させることを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
微小構造化抗微生物フィルムを製造するための方法において、
第1の主面を含む第1の面を有する基板と、
前記基板の前記第1の面に画定され、前記基板の前記第1の主面からそれぞれが陥入した複数の微小構造化ウェルと、を有する微小構造化抗微生物フィルムを提供することと、
前記基板の第1の主面から所定の距離だけ離間した上面を抗微生物物質が有するように前記複数の微小構造化ウェルの内部に抗微生物物質を配置することと、を含む、方法。
【請求項59】
前記複数の微小構造化ウェルの内部に抗微生物物質を配置する工程が、
前記複数の微小構造化ウェルを、抗微生物剤及び溶媒を含む抗微生物物質で少なくとも部分的に充填することと、
前記溶媒を除去することと、を更に含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記複数の微小構造化ウェルの内部に抗微生物物質を配置する工程が、前記微小構造化抗微生物フィルムの前記第1の面上に前記抗微生物物質をコーティングすることを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記複数の微小構造化ウェルの内部に抗微生物物質を配置する工程が、前記微小構造化抗微生物フィルムの前記第1の面上に前記抗微生物物質を印刷することを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記微小構造化抗微生物フィルムを提供する工程が、微小構造化抗微生物フィルムをキャスティングすることを含む、請求項58に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−506457(P2011−506457A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538073(P2010−538073)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/085814
【国際公開番号】WO2009/076270
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】