説明

微小異物除去ロール及び微小異物除去方法

【課題】搬送中のウェブ基材に付着している異物を、従来よりも一層のクリーン度に確実に除去することのできる微小異物除去ロールを提供する。
【解決手段】光学機能性フィルム等の柔軟性を有するウェブ基材に付着した微小異物の除去ロールであって、搬送されるウェブ基材の表面に接しながらウェブ基材の搬送方向に回転し、且つウェブ基材の表面に接する外周に網目状の構造を有する外刃ロールと、ダンパーを有し前記外刃ロールの内周に接して配置された内刃と、外刃ロールの内部のエアーをロールの外部に排気する手段と、外刃ロールを加温する手段と、を有することを特徴とする微小異物除去ロール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学機能性フィルム等の柔軟性を有するフィルムに付着した微小異物を除去するためのロール及び除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラスチックフィルム、紙、金属箔等の柔軟性を有する長尺の基材をロール状に巻き付けた状態から巻き出してから巻取りを行う間に、印刷や塗工、フォトリソプロセス等の各種表面処理を行う技術が一般的に多用されてきた。そこで取り扱う柔軟で長尺の媒体をウェブと称し、ウェブを巻き出し搬送し、前記処理工程を経て最終的に巻き取る技術がウェブハンドリング技術として知られている。
【0003】
近年は、特に、光学機能性フィルム等の光学フィルムの製造において、前記ウェブハンドリング技術を駆使して、大量で安価な生産を可能としている。また、量産に際しては、光学フィルムの原反材料そのものに付着している異物欠陥や、製造工程中に生じる異物欠陥が有り、異物の洗浄や除去に関する手法が各種提案されている。
【0004】
図1は光学機能性フィルムの一例である液晶ディスプレイ等の表示デバイスの表示画面の最表面に貼られる反射防止フィルムの断面を示す図である。反射防止フィルムは、表示画面をキズから保護したり、防汚、帯電防止、映り込み防止のために、透明フィルムに反射防止材料をコーティングして製造される。
【0005】
反射防止フィルムの製造工程では、ロール状の長尺帯状の透光性のフィルムに対し、塗工、乾燥が単数または複数回行われ、光学膜が形成される。図1に示される反射防止フィルムはフィルム基材1、ハードコート層2、反射防止層3の各層で構成されている。
【0006】
従来よりフィルム基材1にハードコート層2を塗布する前、ハードコート層2を塗布した後、更に反射防止層3を塗布した後、あるいはそのいずれかの段階でウェブに付着している塵埃のような異物の除去が行われることがある。
【0007】
従来、ウェブの表面の異物の除去は、粘着性を持ったゴムロール等をウェブ表面に接触させてウェブ表面に付着した異物を粘着ゴム等に転写させる方法や、ウェブ表面に高圧エアや超音波で振動させたエアを吹き付けてウェブ表面の異物を剥離させその剥離した異物を含む空気を吸引して除去する非接触の除塵方法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−103224号公報
【特許文献2】特開平8−144041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記方法のような粘着ゴムロールによってウェブ表面を除塵する方法は、除塵能力は大きいが、同時に大きな剥離帯電が発生する。したがって除塵後の搬送ウェブに、この帯電(静電気)によって室内の浮遊塵挨が吸着されてしまう。また帯電防止のため、ゴムに帯電防止剤(炭素繊維、炭素粒子など)を含有させる方法もあるが、この帯電防止剤は安定せず、劣化が早くなる、ゴムが脆くなり粉状のものが発生してウェブに逆転写してしまう、などの問題が発生する。このため、一般的には、ゴムロールによる除塵直後に除電装置を設置するが、これもゴムロールから除電装置までの間にある程度の距離があり、この間でウェブが汚染されてしまう。特にゴムロールから除電装置までの間は設備的に発塵の多い環境である場合も多く、軽視できない。
【0010】
一方、非接触の、高圧エア吹出し/吸引または超音波を含むエア吹出し/吸引による除塵方式は、除塵後に上記のような帯電による塵挨吸着の問題は発生しないが、粘着ゴムロール接触式の除塵方式と比較すると除塵能力が劣る。具体的には、静電気によって吸着されただけの異物については十分な除塵が可能であるものの、異物付着後に巻取りが行なわれた場合のように、圧力が加わりその圧力によってウェブに異物がめりこんだようなものについては非接触式での異物除去は難しい。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、搬送中のウェブ基材に付着している異物を、従来よりも一層のクリーン度に確実に除去することのできる微小異物除去ロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明は、光学機能性フィルム等の柔軟性を有するウェブ基材に付着した微小異物の除去ロールであって、
搬送されるウェブ基材の表面に接しながらウェブ基材の搬送方向に回転し、且つウェブ基材の表面に接する外周に網目状の構造を有する外刃ロールと、
ダンパーを有し前記外刃ロールの内周に接して配置された内刃と、
外刃ロールの内部のエアーをロールの外部に排気する手段と、
外刃ロールを加温する手段と、を有することを特徴とする微小異物除去ロールである。
【0013】
本発明の請求項2に係る発明は、光学機能性フィルム等の柔軟性を有するウェブ基材に付着した微小異物の除去ロールであって、
芯ロールと
芯ロールの外周面全体に貼り付けられる粘着シートと、
粘着シートの表面に貼り付けられるワイヤーネットと、を備えたことを特徴とする微小異物除去ロールである。
【0014】
本発明の請求項3に係る発明は、ワイヤーネットと芯ロールの外周面との間隔が調整可能であることを特徴とする請求項2に記載の微小異物除去ロールである。
【0015】
本発明の請求項4に係る発明は、光学機能性フィルム等の柔軟性を有するウェブ基材に付着した微小異物の除去方法であって、
搬送されるウェブ基材の表面に接しながらウェブ基材の搬送方向に回転し、且つウェブ基材の表面に接する外周に網目状の構造を有する外刃ロールと、
ダンパーを有し前記外刃ロールの内周に接して配置された内刃と、
外刃ロールの内部のエアーをロールの外部に排気する手段と、
外刃ロールを加温する手段と、を有する微小異物除去ロールをウェブ基材の搬送方向に1または複数備え微小異物を除去することを特徴とする微小異物除去方法である。
【0016】
本発明の請求項5に係る発明は、光学機能性フィルム等の柔軟性を有するウェブ基材に付着した微小異物の除去方法であって、
芯ロールと
芯ロールの外周面全体に貼り付けられる粘着シートと、
粘着シートの表面に貼り付けられるワイヤーネットと、を備えた微小異物除去ロールをウェブ基材の搬送方向に1または複数備え微小異物を除去することを特徴とする微小異物除去方法である。
【0017】
本発明の請求項6に係る発明は、請求項1記載の微小異物除去ロールと請求項2記載の微小異物除去ロールを組み合わせて微小異物を除去することを特徴とする微小異物除去方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明による微小異物除去ロールによれば、ウェブ基材の表面を傷つけることなく、更にウェブ基材に粘着質の新たな付着をさせることなく従来よりも一層のクリーン度に確実に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】光学機能性フィルムの一例である反射防止フィルムの断面を示す図。
【図2】本発明に係る微小異物除去ロールの構成を示す図。
【図3】(a)は外刃ロールを模式的に示す図。(b)は内刃を模式的に示す図。
【図4】本発明に係る排気ユニットを説明するための図。
【図5】本発明に係る洗浄ユニットを説明するための図。
【図6】本発明に係る図3とは別の微小異物除去ロール示す図。
【図7】本発明に係る図6に示される微小異物除去ロールによって微小異物が除去される様子を示す図。
【図8】本発明に係るワイヤーネットと粘着シートと芯ロールの外周面を拡大した図。
【図9】本発明に係る微小異物除去ロールをウェブ基材の搬送方向に複数備えて微小異物を除去する方法を示す図。
【図10】本発明に係る微小異物除去ロールをウェブ基材の搬送方向に複数備えて微小異物を除去する方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を用いて本発明を実施する形態を説明する。
【0021】
図2は、本発明に係る微小異物除去ロールの構成を示す図である。微小異物除去ロール10は搬送されるウェブ基材101の表面に接しながらウェブ基材の搬送方向102と同じ方向103に回転軸12によって回転し、且つウェブ基材101の表面に接する外刃ロール11と、ダンパー13aを有し前記外刃ロール11の内周に接して配置された内刃13と、外刃ロール11の内部のエアーをロールの外部に排気する手段である図示しない排気ユニットと、外刃ロール11を加温する手段である図示しない加温ユニットと、を備えた構成となっている。
【0022】
図3(a)は外刃ロール11を模式的に示す図で、ロール外周に網目状の構造11aを有している。網目状の構造11aは、微小な開口11bを有しており、SUS等の堅牢で汚染の少ない金属を使用して作られている。図3(b)は内刃13を模式的に示す図で、ダンパー13aと、刃13b−1と13b−2から成る刃部13bと、を備えた構成となっている。
【0023】
内刃13は、外刃ロール11の内周に刃部13bの先端が接するように配置され、外刃ロール11の回転時であっても、ダンパー13aによって確実に刃部13bが外刃ロール11の内周に接することが出来る。
【0024】
網目状の構造11aによってウェブ基材に付着した異物が、網目の中に入り込み異物を除去することが可能となる。網目状の構造11aの利点は、網目の中に入り込む突起異物のみが内刃13の刃部13bの先端に触れるため、ウェブ基材の表面を傷つけることが無
く異物を除去することが出来る。
【0025】
除去された異物は、図4に示す排気ユニットによって外刃ロール11の外にエアーとともに排気される。図4に示す排気ユニットは、例えば内刃13を囲む排気フード14と、排気フード14に繋がれる図示しないバキューム装置と、で構成される。
【0026】
更に、外刃ロール11の下流には図5に示す洗浄ユニットを設けることが望ましい。図5に示す洗浄ユニットは、外刃ロール11のウェブ基材の搬送方向の下流に備えられた洗浄用ロール16内に設けられた例を示す。洗浄ユニットとしては、例えば洗浄用ロール16のウェブ基材101が接する部分に向けて、液体又は霧状の洗浄液を噴射するノズル15と図示しない送液装置を用いることが出来る。この場合の洗浄用ロール16は外刃ロール11と同じ構造のロールを用いることが出来る。
【0027】
更に外刃ロール11を加温する手段である図示しない加温ユニットによって温度調整を行うことによって、異物除去効果を更に向上することが出来る。
【0028】
図6は上記微小異物除去ロール10とは別の微小異物除去ロール20を示す図で、図6に示す微小異物除去ロール20は芯ロール21と、芯ロール21の外周面全体に貼り付けられる粘着シート22と、粘着シートの表面に貼り付けられるワイヤーネット23と、を備えている。
【0029】
図7に示すように、矢印104で示される方向に搬送されるウェブ基材101の表面に接しながら微小異物除去ロール20を矢印105で示される方向に回転することによってウェブ基材101に付着した異物が、ワイヤーネット23の隙間に入り込み、粘着シート22に触れることによって異物を除去することが可能となる。ワイヤーネット23の隙間と粘着シート22によって、ワイヤーネット23の隙間の中に入り込む突起異物のみが粘着シート22に触れるため、ウェブ基材の表面を傷つけることが無く、また粘着シート22の粘着物がウェブ基材101へ転移することが無く、異物を除去することが出来る。
【0030】
図8は、ワイヤーネット23と粘着シート22と芯ロール21の外周面を拡大した図である。ワイヤーネット23と芯ロール21との間隔30は、ワイヤーネット23を貼り付ける際の締め付け強さを調整することによって適宜調整される。間隔30を適宜調整することによって除去したい異物の高さを選択することが出来る。
【0031】
図9は微小異物除去ロールをウェブ基材の搬送方向に複数備えて微小異物を除去する方法を示す図で、図9(a)は微小異物除去ロール10を3個備えた場合、図9(b)は微小異物除去ロール20を3個備えた場合を示す図で、微小異物除去ロールを複数個設けることによって、微小異物をより確実に除去することが出来る。
【0032】
また、図10は上記微小異物除去ロールをウェブ基材の搬送方向に複数備えて微小異物を除去する方法を示す図で、図10では微小異物除去ロール10を2個と、微小異物除去ロール20を1個設けた場合を示している。2種の微小異物除去ロールの組み合わせによって、より多くの種類の形状や材質の突起異物に対応することが可能となる。
【0033】
尚、図9及び図10では、排気ユニット、加温ユニット、洗浄ユニットは図示していない。
【0034】
以上のように、本発明による微小異物除去ロール及び微小異物除去方法によれば、ウェブ基材を傷つけることなく、多くの種類の形状や材質の突起異物を除去することが可能になる。
【符号の説明】
【0035】
1・・・フィルム基材
2・・・ハードコート層
3・・・反射防止層
10・・・微小異物除去ロール
11・・・外刃ロール
11a・・・ロール外周の網目状の構造
11b・・・微小な開口
12・・・回転軸
13・・・内刃
13a・・・ダンパー
13b・・・刃部
13b−1、13b−2・・・刃
14・・・排気フード
15・・・ノズル
20・・・微小異物除去ロール10とは別の微小異物除去ロール
21・・・芯ロール
22・・・粘着シート
23・・・ワイヤーネット
30・・・ワイヤーネットと芯ロールとの間隔を示す矢印
101・・・搬送されるウェブ基材
102・・・ウェブ基材の搬送方向を示す矢印
103・・・微小異物除去ロール10の回転方向を示す矢印
104・・・ウェブ基材が搬送される方向を示す矢印
105・・・異物除去ロール20の回転方向を示す矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学機能性フィルム等の柔軟性を有するウェブ基材に付着した微小異物の除去ロールであって、
搬送されるウェブ基材の表面に接しながらウェブ基材の搬送方向に回転し、且つウェブ基材の表面に接する外周に網目状の構造を有する外刃ロールと、
ダンパーを有し前記外刃ロールの内周に接して配置された内刃と、
外刃ロールの内部のエアーをロールの外部に排気する手段と、
外刃ロールを加温する手段と、を有することを特徴とする微小異物除去ロール。
【請求項2】
光学機能性フィルム等の柔軟性を有するウェブ基材に付着した微小異物の除去ロールであって、
芯ロールと
芯ロールの外周面全体に貼り付けられる粘着シートと、
粘着シートの表面に貼り付けられるワイヤーネットと、を備えたことを特徴とする微小異物除去ロール。
【請求項3】
ワイヤーネットと芯ロールの外周面との間隔が調整可能であることを特徴とする請求項2に記載の微小異物除去ロール。
【請求項4】
光学機能性フィルム等の柔軟性を有するウェブ基材に付着した微小異物の除去方法であって、
搬送されるウェブ基材の表面に接しながらウェブ基材の搬送方向に回転し、且つウェブ基材の表面に接する外周に網目状の構造を有する外刃ロールと、
ダンパーを有し前記外刃ロールの内周に接して配置された内刃と、
外刃ロールの内部のエアーをロールの外部に排気する手段と、
外刃ロールを加温する手段と、を有する微小異物除去ロールをウェブ基材の搬送方向に1または複数備え微小異物を除去することを特徴とする微小異物除去方法。
【請求項5】
光学機能性フィルム等の柔軟性を有するウェブ基材に付着した微小異物の除去方法であって、
芯ロールと
芯ロールの外周面全体に貼り付けられる粘着シートと、
粘着シートの表面に貼り付けられるワイヤーネットと、を備えた微小異物除去ロールをウェブ基材の搬送方向に1または複数備え微小異物を除去することを特徴とする微小異物除去方法。
【請求項6】
請求項1記載の微小異物除去ロールと請求項2記載の微小異物除去ロールを組み合わせて微小異物を除去することを特徴とする微小異物除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−183524(P2012−183524A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50324(P2011−50324)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】