説明

微小素子の特性決定方法及び装置

本発明の目的は、信頼性があり、安価であると同時に、特性を求める素子の数が多くても良好な測定結果を得ることが可能な、微小素子の特性決定方法及び装置を提示することにある。
この点に関し、本発明は、MOEMSと呼ばれる、光電気機械素子(220)のマイクロシステム(200)を用いて光源信号(12、120)を分離することを提供し、それは、特に時間における、励起信号の変調の新規な可能性を生み出す。より正確には、本発明の主題は、微小素子の特性を決定する方法であり、その方法は、特に、拡散する光源信号(12、120)を伝播させ、その光源信号(12、120)のスペクトルを所定の波長λiを持つ少なくとも二つの励起信号(18、180)に空間的に分離し、その励起信号(18、180)を符号化し、その励起信号(18、180)をフォーカスして測定ゾーン(30、300)へ伝播するセンサ信号(28、280)を生成し、センサ信号(28、280)と測定空間(30、300)内に存在する微小素子との相互作用により生じる相互作用信号(32、320)を分析することを含む。光源信号のスペクトルを空間的に分離することは、光電気機械素子(220)のマイクロシステム(200)(MOEMS)によって実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源信号の多変数変調により微小素子の質及び量の特性を求める方法及び装置に関する。特に、本発明は微小素子の分析の分野に関し、すなわち、光束内を高速で通過する粒子、分子または細胞をカウントし、その特性を決定することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、流体内に存在する粒子の量を分析する様々な方法が知られている。特に、フローサイトメトリーは、レーザまたはアーク灯の光束を横切る粒子によって放射される光または物理信号を分析して、そこから特性の情報を推定し、流体内に含まれる粒子をカウントする。
【0003】
蛍光分析は、一般に、溶液の異なる化合物に蛍光色素とも呼ばれる大量の蛍光マーカを注入し、固定することにより実行される。特定の励起波長と、そのため、潜在的に、関連する単色光源とが各蛍光色素に対応する。
【0004】
それにもかかわらず、これらのマーカの数を増やすことは、その放射のスペクトルの重なりによって制限される。これは、ある化合物の蛍光発光スペクトルが他の化合物の蛍光スペクトルの一部と重複する場合にオーバラップが生じることによる。
【0005】
これを避けるために、幾つかの技術を使用することができる。最もよく使用されるものは補償方法であり、これは二つの蛍光色素間のスペクトルのオーバーラップの割合によって、蛍光信号または励起信号を減衰させることを含む。それでもなお、蛍光色素の数を増やすことは、分析に関して著しい困難さを招くとともに、分析において高い誤り率を発生させてしまう。
【0006】
これらの問題を解決する一つの方法は、蛍光色素に対する専用の励起信号のそれぞれに周波数変調を導入することで、分光分析に加えて周波数分析により蛍光発光を識別することを可能にする。この目的のために、音響光学変調器または電気光学変調器を用いることができる。この多変数サイトメトリック分析の原理は、幾つかの特許出願の主題となっている。
【0007】
特に、米国特許出願第03/0205682号が知られている。この出願には、所定の周波数で各波長を変調することが記載されている。また、国際特許出願WO06/111641号及び米国特許出願第04/0251436号は、音響光学変調器を使用して、多色光内で波長を選択し、所定の周波数において各波長を特に変調可能とすることが開示されている。
【0008】
音響光学変調器または電気光学変調器を用いた周波数変調は、使用される光源と変調器の両方に関する困難さをもたらす。この理由は、変調器が使用波長に応じて異なる特性を持ち、そのため色収差を補正しなければならないことによる。また、光源信号が分離される場合、幾つかの分析信号を得るために、光源は十分に高い放射周波数を持たなければならない。放射周波数が低すぎる場合、光源信号の分離は制限され、その結果、マーカの特性を十分に決定することはできなくなる。
【0009】
さらに、分光周波数変調は、特に蛍光色素の数が多すぎる場合、常に信頼性があり、かつ十分な結果を得られるとは限らない。
最後に、音響光学変調器と高放射周波数を持つレーザの使用には高いコストが掛かる。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、微小な素子の特性を求める、信頼性があり、安価で、かつ特性を求める素子の数が多いときでも良好な結果を得られる方法及び装置を提示することによって上記の技術的課題に対する解を利用可能することにある。
【0011】
この点に関し、本発明は、MOEMSと呼ばれる、光電気機械素子のマイクロシステムを用いて光源信号を分離して、励起信号の変調、特に時間における変調の新しい可能性を生じさせる。
【0012】
より正確には、本発明の主題は、微小素子の特性を求める方法にあり、その方法は、特に、拡散する光源信号を伝播させ、光源信号のスペクトルを所定の波長λiを持つ少なくとも二つの励起信号に空間的に分離し、励起信号を符号化し、励起信号をフォーカスして測定空間へ伝播するセンサ信号を生成し、センサ信号と測定空間内に存在する微小素子との相互作用から生じる相互作用信号を分析することを含む。光源信号のスペクトルの空間的な分離は、光電気機械ミラーを備えた素子のシステム(MOEMS)により実行される。
【0013】
そして励起信号を分離するステップの前に、これら励起信号のスペクトル幅を選択するフェーズが先行することが好ましい。
【0014】
励起信号を符号化するステップは、特に少なくとも一つの励起信号を遅延させ、かつ/または少なくとも一つの励起信号を位相変調することにより、励起信号を時間変調するフェーズと、特にMOEMSをスイッチングすることにより、励起信号を周波数変調するフェーズと、及び/または励起信号を偏光変調するフェーズとを含むことが有利である。
【0015】
また本発明は、上述した方法を実行する微小素子の特性決定装置に関する。この装置は、拡散する光源信号を放射する手段と、光源信号のスペクトルを所定の波長λiを持つ少なくとも二つの励起信号に分割可能なスペクトル分離器と、励起信号符号化手段と、励起信号を含むセンサ信号が伝播する測定空間と、測定空間内に存在する微小素子とセンサ信号との相互作用から生じる相互作用信号を分析する手段とを有する。スペクトル分離器は、光電気機械マイクロミラーを備えた素子のマイクロシステム(MOEMS)である。
【0016】
光電気機械素子は、励起信号のスペクトル幅を選択する手段を有することが有利である。
また光電気機械素子は、ブリッジまたはカンチレバータイプ、略三角形形状、及び/または変形可能なアクロマティックミラーであることが好ましい。
またこの装置は、光電気機械素子の前面にカラーフィルタを有することが有利である。
【0017】
この装置は、時間変調により励起信号を符号化する手段を有することが好ましい。
【0018】
有利な実施形態によれば、時間変調符号化手段は遅延線であることが好ましい。
【0019】
またこの装置は、励起信号の位相変調手段を有することが好ましい。
【0020】
位相変調手段は、遅延線を周期的に伸ばす圧電変調器からなることが有利である。
【0021】
またこの装置は、周波数変調により励起信号を符号化する手段を有することが有利である。
【0022】
一つの実施形態によれば、マイクロシステムは、励起信号を周波数変調させるために光電気機械素子をスイッチングする電気機械アクチュエータを有する。
【0023】
またこの装置は、偏光変調により励起信号を符号化する手段を有することが好ましい。
【0024】
例示的な実施形態によれば、光源はパルスタイプ白色光源である。
【0025】
他のアプリケーションの分野で既に実用化されている、MOEMS技術は、精密で安価であり、かつコンパクトであるという利点を有する成熟技術である。
【0026】
MOEMSは、光源信号を、所定の波長λiを持つ複数の励起信号に正確に分離することを可能にする。
【0027】
またMOEMSは、並列な分析を想定することを可能にする、複数の分析窓に、同期的または非同期的に、これらの励起信号を空間的にアドレスすることを可能にする。
【0028】
最後に、MOEMSを使用して、パルススイッチングにより時間及び/または周波数変調を行うことができる。
【0029】
三角形形状プロファイルのカンチレバータイプMOEMSの使用は、励起信号の中心波長λiを変えることなく励起信号のスペクトル幅を変えることを可能にする。これは、励起信号のパワースペクトル密度(スペクトル単位ごとの光束)の変動及び調整をもたらす。
【0030】
カンチレバータイプの光電気機械素子のマイクロシステムは、印加する制御電圧が低くて済むという利点を有する。
【0031】
ブリッジタイプの電子素子のマイクロシステムは、高い動作速度と最大200kHzの周波数範囲を持ち、それは装置のサンプリング周波数を高くすることを可能にする。
【0032】
光電子素子の前面におけるフィルタの使用は、所望の光束に関する付加的な自由度を導入する。
【0033】
スペクトル変調及び他の事前変調に加えて、励起信号を時間変調することは、結果のクロスチェックによる、より信頼性の高い分析を行うことを可能とし、かつ多数の微小素子を分析することを可能にする。この理由は、この時間変調が蛍光色素のスペクトルの重なりに関する問題を取り除くことによる。
【0034】
補助的な変調、特に周波数及び偏光タイプの変調は、多数の微小素子の特性を求めることを可能とし、かつ測定結果のクロスチェックによりその分析をより信頼性のあるものにすることができる。
【0035】
さらに、機械的に長さを調節可能な光学ファイバを使用することにより、励起信号に対する位相変調及び時間符号化を追加的に行うことが可能になる。
【0036】
励起信号の時間変調とともにパルスタイプ白色光源を使用することにより、本発明による装置の性能を劣化させることなく、この装置のコストが制限される。
【0037】
本発明の他の特徴及び利点は、図を参照しつつ、以下の詳細な例示的実施形態を読み取ることにより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による微小素子の特性決定装置の第1の例示的な実施形態の概略図である。
【図2】本発明による微小素子の特性決定装置の第2の例示的な実施形態の概略図である。
【図3】本発明による微小素子の特性決定装置に含まれる光電気機械素子のマイクロシステムの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明による微小素子の特性決定方法の例示的な実施形態を、図1を参照しつつ以下に説明する。
【0040】
この例示的な実施形態では、微小素子は、蛍光サイトメトリーと呼ばれるフローサイトメトリーによって特性が求められる。そのため、その微小素子は、励起後に蛍光を放射する蛍光色素によってマークされる。
【0041】
本発明の第1のステップは、放射手段10と拡散手段14により、コヒーレントまたは部分コヒーレントな光源信号12を伝播させ、空間的に拡散させることからなる。
【0042】
そして拡散した信号12のスペクトルは、分析される微小素子に固定された蛍光色素の励起波長に対応する波長λiを持つ幾つかの励起信号に、分離手段16により空間的に分離される。
【0043】
本発明によれば、光源信号12を分離する手段16は、光電気機械素子のマイクロシステム(詳細は後述するが、図1には示されていない)からなる。
【0044】
そして励起信号18は、符号化手段24により符号化される。そのため、各励起信号は、時間、周波数及び/または偏光において変調される。
【0045】
励起信号18の変調は、光電気機械素子のスイッチングにより実行されることが好ましい。
【0046】
そして符号化された励起信号18は、フォーカス手段26によりフォーカスされ、拡散度合いの低いセンサ信号28が生成される。そしてセンサ信号28は、分析される微小素子を含む測定ゾーン30へ伝播する。
【0047】
センサ信号28と蛍光色素を含む微小素子との相互作用は、測定空間30内に含まれる微小素子の特性を求めることを可能にする相互作用信号32を生じさせる。
【0048】
そして相互作用信号32は分析手段34へ向けられ、その分析手段34は分析される微小素子の特性を決定する。
【0049】
本発明の第2の例示的な実施形態を、図2及び図3を参照しつつ以下に説明する。
【0050】
この例示的な実施形態では、放射手段100は、第1の半波長板104及び偏光子106と結合された光源102である。
【0051】
光源102は、約6kHzの繰り返し周波数で、1064ナノメートルの波長と600ピコ秒のパルス長の放射を生じるパルスタイプレーザ信号の形で光源信号120を放射する。
【0052】
光源102の平均パワーは45ミリワットであり、これは約12.5キロワットのパルスごとのピークパワーに対応する。
【0053】
半波長板と偏光子106との連携は、半波長板104の向きを変えることにより光源信号120のパワーを増減することを可能にする。
【0054】
そして光源信号120の偏光は、第2の半波長板108を用いて直線状に向けられ、2ミリメートルの焦点距離を持つレンズ110により、直線導波路(例えば、空気/シリカの微細構造ファイバ)へフォーカスされる。
【0055】
このアーキテクチャは、可視領域内に光源信号120のスペクトルを広げることを可能にする。
【0056】
光源信号120は、例えば、400ナノメートルから750ナノメートルの範囲のスペクトル帯域にわたって約3デシベルの平坦性を持つことが有利である。
【0057】
変形例によれば、放射手段100は、マイクロレーザタイプのサブナノ秒光源を有し、そのサブナノ秒光源は、コヒーレントまたは部分コヒーレントなパルスタイプの広帯域白色光の形で光源信号120を放射する。この方法は、装置のコストを最小化しつつ、光源のパワー密度を上げるという利点を持つ。
【0058】
その後光源信号120は、拡散手段140によって空間的に拡散される。そのために、光源信号120は、顕微鏡レンズ142を用いてコリメートされ、そして可視波長及び紫外線の領域において高い透過率を持つプリズム144によって拡散され、最後に約50ミリメートルの焦点距離を持つシリンドリカルレンズ146を用いてコリメートされる。
【0059】
その後、拡散された光源信号120は分離手段160へ向かい、その分離手段160は光源信号120を、分析される微小素子に固定された蛍光色素の励起波長に対応する波長λiを持つ、複数の励起信号180に分割することができる。
【0060】
本発明によれば、分離手段160は、少なくとも一つの光電気機械素子220のマイクロシステム200を有する。
【0061】
マイクロシステム200は、12個の変形可能な光電気機械素子220を有し、各素子は電気機械アクチュエータを有する。光電気機械素子220は、アクロマティックミラーのような、広帯域の反射カバー222を持つことが有利である。
【0062】
変形例によれば、その反射カバー222を、反射される励起信号180の帯域幅を制限するよう、ダイクロイックミラーを蒸着することにより生成することができる。
【0063】
あるいは、反射カバー222は、金、銀またはアルミニウムからなる薄膜であり、それは紫外から赤外までの広帯域の反射範囲が得られることを可能にする。さらに、これらの素子はアクロマティックであり、このことは、このような光学装置において極めて重要である。
【0064】
光電気機械素子220のマイクロシステム200は、拡散された光源信号120を分割する。光電気機械素子220の反射カバー222は、分析される微小素子に固定された蛍光色素の励起波長λiに対応する励起信号180を反射する。
【0065】
分離される励起信号180の数は、使用される光電気機械素子220の数と等しい。
【0066】
この例示的な実施形態では、光電気機械素子220のマイクロシステム200は、6個の光電気機械素子220の2倍のバッテリを持つ。励起信号180のスペクトル幅は、プリズム144によって実行されるスペクトルの伸長と、光電気機械素子220のマイクロシステム200の反射カバー222の幅によってフィックスされる。
【0067】
また、この装置は、光電気機械素子220の反射カバー222の前面におけるスペクトル面に配置されたカラーフィルタ224を有してもよい。そのため、カラーフィルタ224は所望の光束に関して追加的な自由度をもたらす。
【0068】
これらの光電気機械素子220は、同期的または非同期的に動作することができる。この動作は、マルチトラック電子制御モジュール228によって制御される。
【0069】
一つの実施形態によれば、光電気機械素子220のマイクロシステム200はカンチレバータイプである。そのため、印加される制御電圧は約4ボルトから20ボルトであり、繰り返し周波数(recurrence frequency)は最大約10kHzまでの範囲を取り得る。
【0070】
他の実施形態によれば、光電気機械素子220はブリッジタイプであり、すなわち、それらの二つの端部において支持される。この形状は、200kHzの周波数に達するまで電気機械アクチュエータの動作速度を上昇させる。
【0071】
最後に、図3に示された、第3の実施形態によれば、光電気機械素子220はカンチレバータイプでかつ略三角形形状を有している。これらの光電気機械素子220は並べて置かれた二つのバー230に沿って配置される。そのため、第1のバー230の光電気機械素子220は第2の光電気機械素子220にはめ込まれる。
【0072】
バー230の長手方向位置は、バー230の長手方向の移動により、各励起信号180の中心波長λiを変えられるように、光源信号120のスペクトルの位置に対して調節可能となっている。
【0073】
さらに、二つのバー230の横断方向の分離も調節可能であり、そのため、中心波長λiを変えることなく、各励起信号180のスペクトル幅を変えることができる。
【0074】
変形例によれば、光電気機械素子の形状は台形であり、それは前述したものと同様の結果を得ることができる。
【0075】
各励起信号180は周波数変調されることが有利である。この変調はマイクロシステム200の電子制御モジュール232によって管理され、電子制御モジュール232は関連する光電気機械素子220の各スイッチに対して特定のスイッチング周波数ωiを割り当てる。そのため、この光電気機械素子220に関連する励起信号180は周波数変調によって符号化される。
【0076】
例示的な実施形態によれば、パルスレーザ102は、1MHzと等しいパルス周波数FLを持つ。この周波数変調は、時間における通常の方式でのパルスのサンプリングをもたらす。そしてスイッチング周波数Fiと等しいサンプリング周波数は、パルス周波数よりも低い(F1=FL/2、F2=FL/3、F3=FL/5等)。
【0077】
そのため、1MHzの周波数から、1/2のパルス出力または1/3のパルス出力のサンプリングは、それぞれ、500kHz及び333kHzの変調をもたらす。
【0078】
その後、励起信号180は時間符号化手段242へ送られる。時間符号化手段242は、ここでは、各励起信号180を時間的に遅延させるために所定長Δiを持つ光ファイバまたは遅延線である。
【0079】
またこの装置は、機械的に伸長することで各ファイバの長さを周期的に変える、励起信号180の位相変調手段244を有する。一つの例示的な実施形態によれば、これらの位相変調手段は、周期的な電気パルスを用いて、遅延ファイバの長さを機械的に伸ばすことが可能な圧電変調器からなる。各ファイバが特定の周波数で伸長されると、励起信号は位相変調される。
【0080】
あるいは、位相変調手段は、遅延ファイバを伸長する他の手段、特に磁気検知素子を用いたものから構成されてもよい。
【0081】
ここで、時間符号化手段は、各励起信号180に対して、一意な遅延を生じさせる。この一意な遅延は、各蛍光色素に対して特定の時間窓がその蛍光色素が部分的または全体的な逆励起(de-excite)することを可能にする。そのため、蛍光色素は、相互作用信号320の時間的なオーバーラップを防止するよう逐次的に作動する。
【0082】
例えば、2ナノ秒の蛍光時間を持つ蛍光色素が、600ピコ秒の励起信号180により、波長488ナノメートルで励起される。この特定の蛍光色素から生じる、蛍光信号または相互作用信号320を識別可能とするため、後続する励起信号180は、他方よりも長いファイバを透過することにより、2ナノ秒よりも遅延される。ここで2ナノ秒の遅延は、0.6メートルの長さを持つファイバを用いることで得られる。
【0083】
そして、各励起信号180間に導入された遅延は、各蛍光色素の蛍光時間の関数となる。
【0084】
また、位相変調符号化手段は、各励起信号180に対して、時間的な遅延における短い周期的な変動を生じさせる。この時間的な遅延の変動は、信号の位相変動と等しく、分析システム340によって検知される。そのため、この変調は、同時に励起された二つの蛍光色素から生じる蛍光を差別化することを可能にする。
【0085】
また励起信号は、その偏光の変調によって符号化されてもよい。そしてそれらの偏光の分析は、蛍光の減衰期間により、または波長分析によって得られた情報を補足する情報を得ることを可能とする。
【0086】
偏光による変調手段は、例えば、下記の文献に記載されている。
・Klaus Suhling、 Paul M. W. French、David Philips、「時間解像蛍光顕微鏡」、フォトケミカル・アンド・フォトバイオロジカル・サイエンス、2005年、第4巻、p.13-22、DOI 10.1039/b412924p
・Gaponenko S.V.、 Germanenko I.N.、 Stupak A.P.、 Eyal M.、 Brusilovsky D.、 Reisfeld R、 Graham S、 Klingshirn C、「無機ガラスマトリックスにおけるアクリジン・オレンジの蛍光」、アプライドフィジックス B、1994年、第58巻、第4号、p.283-288
【0087】
また本発明による装置の第2の例示的な実施形態は、励起信号180の偏光変調による符号化手段250を有する。
【0088】
これらの偏光変調による符号化手段250は、分析される微小素子に含まれる蛍光色素を励起する励起信号180の波の偏光ベクトルの向きを制御することを可能にする。
【0089】
そのため、偏光変調による符号化手段250は、分析されるサンプルに対する励起信号180の偏光を方向付けることができる手段であると理解されなければならない。
【0090】
図2に示された例示的な実施形態では、光源102は直線偏光化される。偏光の向きは第2の半波長板108を用いて得られる。さらに、使用される光ファイバは偏光保持タイプのものである。そのため、遅延線は複屈折を示す。
【0091】
したがって、励起信号180の向きは遅延ライン244の端部の向きを制御することにより、遅延ライン244の出力において制御される。そして各励起信号180は、その偏光ベクトルの特定の向きを持つ。
【0092】
変形例によれば、偏光変調による符号化手段250は、半波長板からなる。
【0093】
符号化されると、励起信号180は、フォーカス手段260として機能する、45°に傾けられたミラー262と結合されたレンズ146及びプリズム144へ向けて反対方向へ再送される。
【0094】
これらのフォーカス手段から出たところで、センサ信号280は符号化された励起信号180からもたらされる情報を搬送している。そしてセンサ信号280は測定空間300へ向けられ、蛍光色素を含む、分析される微小素子との相互作用によって、相互作用信号320を生じる。
【0095】
相互作用信号320は分析手段340により分析される。その分析手段340は、分析されるサンプルに含まれる微小素子の特性を求めるために上記のパラメータを考慮する。
【0096】
分析手段は、ダイクロイックミラー及び偏光子(図示せず)を有することが有利であり、それらは先ず、相互作用信号320に含まれる様々な波長を分離することを可能にする。
【0097】
そして光電子増倍管またはフォトダイオードが各相互作用信号320を電気信号に変換し、その電気信号はマルチボイスオシロスコープ(oscilloscope multivoix)及び/または電子スペクトルアナライザを用いて、蛍光色素から生じた蛍光の減衰期間と、様々な相互作用信号320の発振周波数及び振幅についての情報を与える。
【0098】
本発明に関して応用可能な多くの蛍光分析技術が、例えば以下の文献に記載されている。
・古川俊之、「バイオロジカルイメージングアンドセンシング」、ISBN9783540438984
・Paulo、Kaupo、Brand、Leif、Eggeling、Christian、Jager、Stefan他、「蛍光強度及び存続期間分布分析:蛍光ゆらぎ分光における高精度化に向けて」、バイオフィジカルジャーナル、2002年8月
・James V. Watson、「フローサイトメトリーデータ分析の基礎概念及び統計」、1992年、ISBN0521415454
【0099】
本発明は、上述した例示的な実施形態に限定されるものではない。当業者は、本発明の範囲から外れることなく、上述した方法及び装置を様々に組み合わせることができる。
【0100】
したがって、微小素子の特性の決定は、蛍光、またはりん光により、あるいは、拡散、回折または吸収により等しく実行できる。これら様々なパラメータの分析を組み合わせることも可能である。
【0101】
さらに、時間符号化、位相変調及び偏光手段も、光電気機械素子220のマイクロシステム200に組み込むこともできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小素子(2)の特性を求める方法であって、特に、
分散する光源信号(12、120)を伝播させるステップと、
前記光源信号(12、120)のスペクトルを所定の波長λiを持つ少なくとも二つの励起信号(18、180)に空間的に分離するステップと、
前記励起信号(18、180)を符号化するステップと、
前記励起信号(18、180)をフォーカスして測定空間(30、300)へ伝播するセンサ信号(28、280)を生成するステップと、
前記センサ信号(28、280)と前記測定空間(30、300)内に存在する前記微小素子との相互作用から生じる相互作用信号(32、320)を分析するステップとを含み、
前記光源信号(12、120)のスペクトルを空間的に分離するステップは、光電気機械マイクロミラー(220)を備えた素子のマイクロシステム(200)により実行され、かつ、前記励起信号(18、180)のスペクトル幅を選択するフェーズが前記励起信号(18、180)を分離するステップに先行して行われる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記符号化ステップは、前記励起信号(18、180)を時間変調するフェーズを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記励起信号の時間変調は、少なくとも一つの前記励起信号(18、180)を所定値だけ遅延させることからなることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記時間変調は、少なくとも一つの前記励起信号(18、180)の位相を変調するフェーズを含むことを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記符号化ステップは、前記励起信号(18、180)の周波数を変調するフェーズを含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記周波数変調は、前記マイクロシステム(200)の前記光電気機械素子(220)をスイッチングすることにより実行されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記符号化ステップは、前記励起信号(18、180)の偏光を変調するフェーズを含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法を実施することが可能な微小素子特性決定装置であって、
拡散する光源信号(12、120)を放射する手段(10、100)と、
前記光源信号(12、120)のスペクトルを所定の波長λiを持つ少なくとも二つの励起信号(18、180)に分割することが可能なスペクトル分離器(16、160)と、
前記励起信号を符号化する手段(24、240)と、
前記励起信号(18、180)が集光されたセンサ信号(28、280)が伝播する測定空間(30、300)と、
前記センサ信号(12)と前記測定空間(30、300)内に存在する前記微小素子との相互作用により生じる相互作用信号(32、320)を分析する手段(34、340)とを有し、
前記スペクトル分離器(16、160)は、前記励起信号(18、180)のスペクトル幅を選択する手段(228)を有する光電気機械マイクロミラー(220)を備えた素子のマイクロシステム(200)である、
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
前記光電気機械素子(220)はカンチレバータイプであることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記光電気機械素子(220)はブリッジタイプであることを特徴とする請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記光電気機械素子(220)は略三角形形状を有することを特徴とする請求項8〜10の何れか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記光電気機械素子(220)は変形可能なアクロマティックミラーであることを特徴とする請求項8〜11の何れか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記光電気機械素子(220)の前面に少なくとも一つのカラーフィルタ(224)を有することを特徴とする請求項8〜12の何れか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記励起信号(18、180)の時間変調による符号化手段(242)を有することを特徴とする請求項8〜13の何れか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記時間変調による符号化手段(242)は複数の遅延線であることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
少なくとも一つの前記励起信号(18、180)の位相を変調する手段(244)を有することを特徴とする請求項14または15に記載の装置。
【請求項17】
前記位相変調手段(244)は、前記複数の遅延線のうちの少なくとも一つを周期的に伸長させる少なくとも一つの圧電変調器からなることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記励起信号(18、180)の周波数を変調することにより符号化する手段(200)を有することを特徴とする請求項8〜17の何れか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記マイクロシステム(200)は、前記励起信号(18、180)を周波数変調するために前記光電気機械素子(220)をスイッチングする電気機械アクチュエータを有することを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記励起信号(18、180)の偏光を変調することにより符号化する手段(250)を有することを特徴とする請求項8〜19の何れか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記光源は、パルス白色光源であることを特徴とする請求項8〜20の何れか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−501117(P2011−501117A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528447(P2010−528447)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001424
【国際公開番号】WO2009/087287
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【出願人】(506336795)ユニベルシテ ドゥ リモージュ (4)
【Fターム(参考)】