微小電極アレイデバイス、その製造方法及びバイオアッセイ法
【課題】細胞群中の細胞について一細胞毎に電位を計測できる微小電極アレイデバイス、その製造方法及び該デバイスを用いたバイオアッセイ法を提供する。
【解決手段】絶縁基板上に微小電極17と、該微小電極17の配線と、前記微小電極17を露出させるように該絶縁基板上を被覆する絶縁膜15とを備え、前記絶縁膜15上の所定領域にはさらに非細胞接着層19が設けられると共に、該非細胞接着層19が設けられず、前記微小電極17とその近傍の絶縁膜15とが露出された絶縁基板上の領域が細胞配置部10aとされていることを特徴とする微小電極アレイデバイス1。
【解決手段】絶縁基板上に微小電極17と、該微小電極17の配線と、前記微小電極17を露出させるように該絶縁基板上を被覆する絶縁膜15とを備え、前記絶縁膜15上の所定領域にはさらに非細胞接着層19が設けられると共に、該非細胞接着層19が設けられず、前記微小電極17とその近傍の絶縁膜15とが露出された絶縁基板上の領域が細胞配置部10aとされていることを特徴とする微小電極アレイデバイス1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞電位を計測するための微小電極アレイデバイス、その製造方法及び該デバイスを用いたバイオアッセイ法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲノム計画の発展や生体分子の構造解析学の進展に伴い、分子生化学的に生命現象を理解し、産業に応用しようとする動きが活発化している。その一方で、よりin vivoに近い生体情報を取得するために、細胞を使用したバイオアッセイ法が注目されている。このような細胞を使用した解析により、細胞の機能、細胞間の相互作用、細胞と化学物質との相互作用等に関する情報を取得でき、例えば、生命現象、有用物質の生産、物質の生理活性や毒性等に関する新たな知見が得られる。
【0003】
細胞の解析方法としては、例えば、細胞表面に存在するタンパク質や糖鎖を蛍光標識抗体で修飾したり、解析対象の物質に特異的に結合する蛍光標識プローブを細胞内に導入することで得られる蛍光像を解析する方法、蛍光試薬等の指示薬を細胞内に導入して、細胞内のカルシウムやpHを計測する方法が挙げられる。しかしこれらの方法では、標識物質や指示薬によって、細胞が刺激や損傷を受けて少なからずダメージを受けることがあり、精度良く解析できないことがある。そこで、非侵襲的に細胞を解析する技術として、生命活動に伴い活動電位が変化する神経細胞、心筋細胞、筋肉細胞等の細胞を微小電極上で培養し、その時の活動電位の変化を計測する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2、非特許文献1参照)。細胞の活動電位の変化は、細胞膜内外におけるイオン濃度の変化により生じるものであり、電極を使用して細胞近傍のイオン濃度の変化をイオン電流として電位測定することで計測でき、これにより細胞活動を検出できる。
【0004】
一方、上記のような解析方法をはじめとする従来の方法では、複数細胞からなる細胞群を解析対象とし、解析して得られたデータの平均値をあたかも一細胞毎の特性であるかのように扱ってきた。しかし実際には、細胞群の中で細胞周期やサーカディアンリズム(概日リズム)が同調している事はまれであり、細胞毎に異なった周期で遺伝子及びタンパク質を発現している。このため、得られた解析結果には、細胞群を扱うが故の揺らぎの問題が付きまとい、高精度な解析結果が得られない。そこで、このような問題点を解決するために、同調培養等の手法が開発され利用されているが、常時同一ステージの細胞を供給し続けなければならないという問題点があった。そこで、このような問題点を解決するために、複数個の細胞を一つずつ個別に培養すると共に、各細胞のネットワークを形成して細胞群とし、その中の細胞について一細胞毎に情報を取得することで、より精度の高い解析を行おうとする動きが活発化してきている。
上記したように、細胞を恣意的に配置してネットワークを形成するための手法も提案されている。例えば、高さが10μm以上である障壁を有する空間内で細胞を培養することで、細胞の伸長や移動を制御する技術が開示されている(例えば、非特許文献2参照)。また、ラミリン等の細胞接着性物質でパターンを形成すると、神経細胞の突起がそのパターンに沿って伸長することが報告されており(非特許文献3参照)、これらの手段を併用することで、細胞を所定の空間内に配置してネットワークを構築することが可能となる。
【特許文献1】特開平6−078889号公報
【特許文献2】特開平11−187865号公報
【非特許文献1】Jimbo Y.,Tateno T.,Robinson H.P.C.,Biophys.J76,670−678(1999)
【非特許文献2】Stopak D.,et al.,Dev.Biol.,90,383−398(1982)
【非特許文献3】Letourneau P.C.,Dev.Biol.,66,183−196(1975)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような、細胞を微小電極上で培養し、その時の活動電位の変化を計測する手法は、細胞を長期間継続して解析する手法として有用である。しかし、従来提案されている手法では、微小電極アレー基板を使用して、組織断片又は培養細胞を計測対象とし、上記のように複数細胞に関する平均的なデータを取得して解析していたので、高精度に解析できないという問題点があった。例えば、薬剤や電気的刺激に対する応答をより高精度に解析するためには、一細胞毎に情報を解析することが必要である。しかし、一細胞を単独で培養して情報を解析しても、解析結果に細胞間の相互作用による影響が反映されず、細胞群からなる組織としての機能を正確に解析できない。
したがって、細胞を使用して解析を高精度に行うためには、細胞同士が相互作用している細胞群を構築し、該細胞群中の細胞を一細胞毎に解析する手法が必要とされる。そこで、このような解析を可能とする新規なデバイスの開発が強く望まれている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、細胞群中の細胞について一細胞毎に電位を計測できる微小電極アレイデバイス、その製造方法及び該デバイスを用いたバイオアッセイ法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は細胞電位を計測するための微小電極アレイデバイスであって、
絶縁基板上に微小電極と、該微小電極の配線と、前記微小電極を露出させるように該絶縁基板上を被覆する絶縁膜とを備え、前記絶縁膜上の所定領域にはさらに非細胞接着層が設けられると共に、該非細胞接着層が設けられず、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とが露出された絶縁基板上の領域が細胞配置部とされていることを特徴とする微小電極アレイデバイスである。
請求項2に記載の発明は、前記微小電極及び/又は非細胞接着層が光透過性を有する材質からなることを特徴とする請求項1に記載の微小電極アレイデバイスである。
請求項3に記載の発明は、複数個の前記細胞配置部が、前記非細胞接着層が設けられず前記絶縁膜が露出されてなる細胞連結部により連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の微小電極アレイデバイスである。
請求項4に記載の発明は、前記非細胞接着層が、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を有する化合物を前記絶縁膜上に結合させて形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の微小電極アレイデバイスである。
請求項5に記載の発明は、前記化合物が、下記一般式(1)又は(2)で表されることを特徴とする請求項4に記載の微小電極アレイデバイスである。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R1は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し;R1’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表し;R2は下記式(11)〜(16)で表される基のいずれかであり、複数のR2は互いに同一でも異なっていても良く;Yは式「−NH−C(=O)−」で表される基又はカルボニル基であり、複数のYは互いに同一でも異なっていても良く;Zは、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていても良いアルキル基又はアルキルオキシアルキル基に、一つの水素原子が置換されたエチレンオキシ基であり、複数のZは互いに同一でも異なっていても良く;j及びkはそれぞれ独立して0又は1であり、複数のj又はkは互いに同一でも異なっていても良く;l及びmはそれぞれ独立して0以上の整数であり、複数のl又はmは互いに同一でも異なっていても良く;lが2以上の整数である場合にはl個のZは互いに同一でも異なっていても良い。)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R3は水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表し;R4は水素原子又は1価の炭化水素基を表し;nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合にはn個のR3は互いに同一でも異なっていても良く;nが1である場合には2個のR4は互いに同一でも異なっていても良い。)
請求項6に記載の発明は、前記一般式(1)又は(2)で表される化合物が、下記一般式(3)又は(4)で表されることを特徴とする請求項5に記載の微小電極アレイデバイスである。
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、R1は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し;R1’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表し;R2は下記式(11)〜(16)で表される基のいずれかであり、複数のR2は互いに同一でも異なっていても良く;mは0以上の整数であり、複数のmは互いに同一でも異なっていても良い。)
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、R3は水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表し;R4は水素原子又は1価の炭化水素基を表し;nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合にはn個のR3は互いに同一でも異なっていても良く;nが1である場合には2個のR4は互いに同一でも異なっていても良い。)
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の微小電極アレイデバイスの製造方法であって、絶縁基板上に微小電極及び該微小電極の配線を形成する工程と、前記微小電極を露出させるように前記絶縁基板上に絶縁膜をパターニングする工程と、前記絶縁基板上の絶縁膜がパターニングされた面を非細胞接着層で被覆する工程と、前記非細胞接着層上に感光性樹脂をパターニングし、該感光性樹脂をマスクとしてエッチングにより前記非細胞接着層の所定部位を除去し、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とを露出させて細胞配置部を形成し、次いで前記感光性樹脂を除去する工程と、を有することを特徴とする微小電極アレイデバイスの製造方法である。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の微小電極アレイデバイスの製造方法であって、絶縁基板上に微小電極及び該微小電極の配線を形成する工程と、前記微小電極を露出させるように前記絶縁基板上に絶縁膜をパターニングする工程と、前記絶縁基板上の絶縁膜がパターニングされた面において、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とを被覆するように感光性樹脂をパターニングする工程と、前記絶縁基板上の感光性樹脂がパターニングされた面を非細胞接着層で被覆する工程と、前記感光性樹脂上の非細胞接着層を、該非細胞接着層で被覆されている感光性樹脂と共に除去して、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とを露出させて細胞配置部を形成する工程と、を有することを特徴とする微小電極アレイデバイスの製造方法である。
請求項9に記載の発明は、前記細胞配置部と共に、さらに、該細胞配置部同士を連結する所定領域において絶縁膜が露出されてなる細胞連結部を形成するように、前記感光性樹脂をパターニングすることを特徴とする請求項7又は8に記載の微小電極アレイデバイスの製造方法である。
請求項10に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の微小電極アレイデバイスを用いたバイオアッセイ法であって、前記微小電極アレイデバイス上の細胞配置部に計測対象の細胞を配置し、微小電極により該細胞の電位を計測する工程を有することを特徴とするバイオアッセイ法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、細胞群中の細胞について一細胞毎に電位を計測できる。これにより、細胞を非侵襲的に高精度に解析でき、例えば、種々の化学物質を使用したバイオアッセイにも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<微小電極アレイデバイス>
本発明の微小電極アレイデバイス(以下、デバイスと略記することがある)は、細胞電位を計測するための微小電極アレイデバイスであって、絶縁基板上に微小電極と、該微小電極の配線と、前記微小電極を露出させるように該絶縁基板上を被覆する絶縁膜とを備え、前記絶縁膜上の所定領域にはさらに非細胞接着層が設けられると共に、該非細胞接着層が設けられず、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とが露出された絶縁基板上の領域が細胞配置部とされていることを特徴とする。
本発明において計測対象の細胞は、目的に応じて適宜選択でき特に限定されない。そして、培養によって増殖可能なものも好適である。なかでも動物細胞が好ましく、特に好ましいものとして具体的には、神経芽細胞、心筋細胞、肝細胞、脂肪細胞等が例示できる。また、分化可能な細胞、例えば胚性幹細胞(Embryonic Stem cells:ES細胞)や誘導多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell,iPS細胞)を使用しても良い。
【0018】
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態に係るデバイスを例示する図であり、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
絶縁基板11上には、電極12がパターニングされている。電極12は、デバイス1と計測器(図示略)との電気的な接点となる第一の接続部12aと、参照電極13又は細胞計測用の微小電極と前記第一の接続部12aとを電気的に接続する第二の接続部12bとからなる。微小電極は、後記するように微小電極配置部14中に複数個が配置されている。
そして、前記電極12の第二の接続部12bを被覆するように、絶縁基板11上には、絶縁膜15が設けられ、さらに該絶縁膜15上において、前記参照電極13及び微小電極配置部14を包囲するように、隔壁16が立設されている。
【0019】
絶縁基板11の材質は、公知のものから適宜選択すれば良い。なかでも透明なものが好ましく、具体的には、ガラス、樹脂等が例示でき、ガラスが特に好ましい。
絶縁基板11の厚さ及び上面の大きさは、目的に応じて適宜選定すれば良い。例えば厚さであれば、通常、0.1〜10mmであることが好ましく、0.3〜1.5mmであることがより好ましい。このような範囲であれば、絶縁基板11の加工性やデバイス1の使用性に特に優れたものとなる。
【0020】
電極12の材質も、公知のものから適宜選択すれば良い。例えば、電極に通常使用される材質として、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、白金(Pt)、白金黒(PT−C)が例示できる。ただし本発明においては、光透過性を有する材質が好ましい。ここで「光透過性を有する」とは、「少なくとも可視光に対して透過性を有する」ことを指し、透明ガラスや二酸化ケイ素(SiO2)と同等の透明度であることが好ましい。光透過性を有する材質からなる電極を使用することで、顕微鏡等を使用して計測対象の細胞を光学的に解析する際に、効果的にノイズを低減でき、より高感度に解析できる。特に、顕微鏡観察下でレーザを照射し、通常光ピンセットと呼ばれる技術を適用したり、細胞に光刺激を与えて解析するのに好適である。このような好ましい材質として具体的には、スズドープ酸化インジウム(以下、ITOと略記する)、銀ドープITO、酸化インジウム・酸化亜鉛、酸化インジウム・酸化チタン、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、カドミウムドープ酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、ニオブドープ酸化チタンが例示できる。
また、電極12の屈折率は、透明ガラスや二酸化ケイ素(SiO2)と同等であることが好ましく、1.4〜1.6であることが好ましい。電極12がこのような好ましい物性を有することで、細胞をより高感度に光学的に解析できる。
【0021】
電極12のうち第一の接続部12aは帯状であり、計測器との接続部である。その幅はデバイスの大きさを考慮して設定することが好ましく、通常は、0.1〜2.0mmであることが好ましい。また、第二の接続部12bは屈曲部を有し、微小電極配置部14へ向けて幅が減じる部位を有する帯状である。その幅は特に限定されないが、通常は、第一の接続部12aの幅以下であることが好ましい。
ここでは、第一の接続部12a及び第二の接続部12bとして帯状のものを例示しているが、これに限定されず他の形状でも良い。ただし、細長形状であることが好ましい。
また、電極12は、後記する微小電極と同様の厚さであることが好ましい。
【0022】
参照電極13は、電極12と同様の材質からなるもので良い。
そして、参照電極13は、略正方形状であり、後記する微小電極よりも十分大きいことが好ましく、通常は、1.0×10−8〜1.0×10−6m2であることが好ましく、1.0×10−8〜2.5×10−7m2であることがより好ましい。
ここでは、参照電極13として略正方形状のものを例示しているが、これに限定されず他の形状でも良い。
また、参照電極13は、後記する微小電極と同様の厚さであることが好ましい。
ここでは、参照電極を四つ有する例を示しているが、参照電極の数は微小電極の数等に応じて適宜調整すれば良い。
【0023】
絶縁膜15の材質は、公知のものから適宜選択すれば良い。好ましいものとしては、各種樹脂類及び酸化ケイ素が例示できる。前記樹脂として好ましいものとしては、フォトレジスト等の感光性樹脂が例示できる。
絶縁膜15の上面の大きさは、絶縁基板11の大きさに応じて適宜設定すれば良い。絶縁膜15の厚さは、電気的に確実に絶縁できるだけでなく、細胞配置部に配置された細胞にストレスを与えない厚さ、具体的には、細胞の高さに対して同等以下の厚さであることが好ましい。このような観点から、絶縁膜15の厚さは、0.1〜30μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。
【0024】
隔壁16は、後記するように、デバイス1の参照電極13及び微小電極配置部14を含む所定領域上に細胞培養液を保持するためのものである。保持した細胞培養液を供給することで、計測対象の細胞を生存させることができる。細胞培養液は、計測対象の細胞の種類に応じて適宜選択すれば良い。
隔壁16は、平面視にて中空部が略正方形の角筒状である。
また、隔壁16の材質は、保持した細胞培養液に対して安定なものが好ましく、電極12の場合と同様の理由により、光透過性を有する材質が好ましい。特に好ましいものとしてガラスが例示できる。
隔壁16で包囲される包囲面の大きさは、参照電極13及び微小電極配置部14の配置形態によって、適宜調整することが好ましい。隔壁16の高さは、保持する細胞培養液の液量に応じて適宜調整すれば良く、特に限定されない。
隔壁16は、ここに例示するように、絶縁基板11と同心状に配置されていることが好ましい。
隔壁16は、ここでは角筒状のものを例示しているが、これに限定されず、丸筒状等他の形状でも良く、適宜選択できる。
【0025】
微小電極配置部14は、計測対象の細胞を配置する細胞配置部及び配置した細胞の電位を計測する微小電極を備える。微小電極配置部14は、デバイス1の電極12が設けられている面上に配置されており、ここに例示するように、絶縁基板11と同心状に配置されていることが好ましい。
【0026】
図2は、微小電極配置部14を拡大して例示する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の一部をさらに拡大して例示する平面図である。
微小電極配置部14においては、略正方形状である複数個の微小電極17が配置されている。そして、これら複数個の微小電極17が露出するように、絶縁基板11上には絶縁膜15が被覆されている。さらに絶縁膜15上には、露出された前記微小電極17と、該微小電極17近傍でこれを包囲する所定領域とからなる略円形状領域、及びこれら略円形状領域を連結する帯状領域からなる非積層領域10を除いて、非細胞接着層19が設けられている。前記略円形状領域は、計測対象の細胞を配置する細胞配置部10aであり、微小電極17及び絶縁膜15が露出されている。また、隣接する細胞配置部10a同士を連結する帯状領域は、配置された細胞同士を連結させる細胞連結部10bであり、絶縁膜15が露出されている。
【0027】
非細胞接着層19は、非細胞接着性を有する物質(以下、非接着性物質と略記する)を含み、その露出面(以下、非接着面と略記する)において、培養時及び非培養時のいずれにおいても細胞の接着を阻害するものである。そして、非細胞接着層19は、非接着性物質の前駆体を前記絶縁膜上に結合させることで形成できる。すなわち、非接着性物質の前駆体とは、絶縁膜への結合能を有する官能基を含む物質である。
非細胞接着層19として、具体的には、撥液性を有するものが例示できる。ここで言う「撥液」とは、「撥水」又は「撥油」を指す。
【0028】
前記非接着面は、水の接触角が100°以上である撥水性を有することが好ましく、ヘキサデカンの接触角が30°以上である撥油性を有することが好ましい。撥水性及び撥油性の大きさは、非接着性物質の前駆体の種類により調整できる。
このように、非接着面が撥液性を有することにより、非接着面においては生体物質の吸着が抑制されるので、細胞が吸着する際の足場が形成されない。その結果、計測対象の細胞がデバイス1中の細胞配置部10aに選択的に吸着され、固定される。
【0029】
また、非細胞接着層19は、電極12の場合と同様の理由により、光透過性を有するものが好ましい。非細胞接着層19を光透過性とするためには、非接着性物質等の含有成分を、光透過性を有するものとすれば良い。
【0030】
なかでも非細胞接着層19としては、撥液性及び光透過性を有する材質からなるものが好ましい。
そして、このような非細胞接着層19として、より具体的には、前記非接着性物質として撥液性及び光透過性を有するフッ素含有化合物を含むものが例示できる。
【0031】
前記フッ素含有化合物の前駆体としては、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を分子の一端に有する化合物が好ましく、より好ましいものとして、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物(以下、それぞれ化合物(1)、化合物(2)と略記する)が例示できる。
【0032】
【化5】
【0033】
(式中、R1は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し;R1’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表し;R2は下記式(11)〜(16)で表される基のいずれかであり、複数のR2は互いに同一でも異なっていても良く;Yは式「−NH−C(=O)−」で表される基又はカルボニル基であり、複数のYは互いに同一でも異なっていても良く;Zは、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていても良いアルキル基又はアルキルオキシアルキル基に、一つの水素原子が置換されたエチレンオキシ基であり、複数のZは互いに同一でも異なっていても良く;j及びkはそれぞれ独立して0又は1であり、複数のj又はkは互いに同一でも異なっていても良く;l及びmはそれぞれ独立して0以上の整数であり、複数のl又はmは互いに同一でも異なっていても良く;lが2以上の整数である場合にはl個のZは互いに同一でも異なっていても良い。)
【0034】
【化6】
【0035】
(式中、R3は水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表し;R4は水素原子又は1価の炭化水素基を表し;nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合にはn個のR3は互いに同一でも異なっていても良く;nが1である場合には2個のR4は互いに同一でも異なっていても良い。)
【0036】
R1は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基である。ここで「パーフルオロアルキル基」とは、「アルキル基の水素原子がすべてフッ素原子に置換されたもの」を指す。また、「パーフルオロアルキルエーテル基」とは、「前記パーフルオロアルキル基が酸素原子に結合した一価の基」を指す。
R1における前記アルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシルが例示できる。
R1の炭素数は、3〜12であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。
また、R1は直鎖状であることが好ましく、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0037】
R1’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表す。具体的には、前記R1から一つのフッ素原子を除いた二価の基が例示できる。R1’の炭素数が2以上である場合には、前記R1の「Z」に結合している炭素原子とは反対側の末端の炭素原子に結合しているフッ素原子を一つ除いた二価の基が好ましい。
【0038】
R2は前記式(11)〜(16)で表される基のいずれかである。そして、複数のR2は互いに同一でも異なっていても良く、例えば、化合物(2)における両分子末端のR2は互いに同一でも異なっていても良いし、化合物(1)におけるR2と化合物(2)におけるR2とは互いに同一でも異なっていても良い。
【0039】
R3は水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表す。
R3の水酸基に置換可能な原子としては、好ましいものとしてフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられ、なかでも塩素原子が特に好ましい。
また、水酸基に置換可能な基としては、好ましいものとして、炭素数が1〜6のアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基及びアシルオキシ基が挙げられる。
炭素数が1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基及びヘキシルオキシ基が例示できる。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基及びナフトキシ基が例示できる。
アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基及びフェネチルオキシ基が例示できる。
アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基及びベンゾイルオキシ基が例示できる。
これらのなかでもR3としては、塩素原子、メトキシ基及びエトキシ基がより好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0040】
R4は水素原子又は1価の炭化水素基を表す。
R4の1価の炭化水素基は特に限定されず、鎖状構造及び環状構造のいずれでも良く、飽和及び不飽和のいずれでも良い。鎖状構造の場合には、直鎖状及び分岐鎖状のいずれでも良く、環状構造である場合には、単環構造及び多環構造のいずれでも良い。
なかでも、好ましいものとして、炭素数が1〜6のアルキル基、アリール基及びアラルキル基が挙げられる。
炭素数が1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基が例示できる。
アリール基としては、フェニル基及びナフチル基が例示できる。
アラルキル基としては、ベンジル基及びフェネチル基が例示できる。
これらのなかでもR4としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0041】
Yは式「−NH−C(=O)−」で表される基又はカルボニル基である。すなわち、隣り合うメチレン基及び酸素原子とは、以下のように結合する。
「−(CH2)m−(NH−C(=O))j−(O)k−」
「−(CH2)m−(C(=O))j−(O)k−」
そして、複数のYは互いに同一でも異なっていても良く、例えば、化合物(2)において「R1’」を挟んで対峙しているY同士は互いに同一でも異なっていても良いし、化合物(1)におけるYと化合物(2)におけるYとは互いに同一でも異なっていても良い。
【0042】
Zは、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていても良いアルキル基又はアルキルオキシアルキル基に、一つの水素原子が置換されたエチレンオキシ基である。前記エチレンオキシ基の末端の酸素原子が隣り合うR1に結合する。
前記エチレンオキシ基の置換されていても良い水素原子の数は、一つであることが好ましい。また、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていても良い前記アルキル基又はアルキルオキシアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。そして、炭素数は1〜16であることが好ましい。
そして、複数のZは互いに同一でも異なっていても良く、例えば、化合物(2)において「R1’」を挟んで対峙しているZ同士は互いに同一でも異なっていても良いし、化合物(1)におけるZと化合物(2)におけるZとは互いに同一でも異なっていても良い。
【0043】
j及びkはそれぞれ独立して0又は1であり、0であることが特に好ましい。また、複数のj又はkは互いに同一でも異なっていても良い。例えば、化合物(2)において「R1’」を挟んで対峙しているYにかかるj同士は互いに同一でも異なっていても良いし、化合物(1)におけるYにかかるjと化合物(2)におけるYにかかるjとは互いに同一でも異なっていても良い。kについても同様である。
【0044】
l及びmはそれぞれ独立して0以上の整数である。
そして、lは0であることが特に好ましい。
mは0〜3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。
また、複数のl又はmは互いに同一でも異なっていても良い。例えば、化合物(2)において「R1’」を挟んで対峙しているZにかかるl同士は互いに同一でも異なっていても良いし、化合物(1)におけるZにかかるlと化合物(2)におけるZにかかるlとは互いに同一でも異なっていても良い。mについても同様である。
さらに、lが2以上の整数である場合には、l個のZは互いに同一でも異なっていても良い。
【0045】
nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合には、n個のR3は互いに同一でも異なっていても良く、nが1である場合には、2個のR4は互いに同一でも異なっていても良い。
【0046】
化合物(1)又は(2)としては、より好ましいものとして、下記一般式(3)又は(4)で表されるものが挙げられる。
【0047】
【化7】
【0048】
(式中、R1、R1’、R2、mは前記と同様である。)
【0049】
また、前記一般式(1)又は(2)において、Zが「−(CHR5−CHR6−O)l’−(CHR7−CHR8−O)l’’」で表される化合物も、より好ましいものとして挙げられる。
ここで、R5及びR6の一方は水素原子を表し、他方はメチル基の一つの水素原子が、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のフルオロアルキル基又はフルオロアルキルエーテル基に置換された基を表す。ここで「フルオロアルキルエーテル基」とは、「前記炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のフルオロアルキル基が酸素原子に結合した一価の基」を指す。
また、R7及びR8の一方は水素原子を表し、他方は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はアルキルエーテル基を表す。ここで「アルキルエーテル基」とは、「前記炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が酸素原子に結合した一価の基」を指す。
【0050】
l’は、2以上の整数であり、2〜20であることが好ましく、5〜10であることがより好ましい。
l’’は、0以上の整数であり、0〜20であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0051】
R5及びR6における、メチル基の一つの水素原子が置換された前記フルオロアルキル基としては、CF3−、CHF2−、CClF2−、C2F5−、CHF2CF2−、CClF2CF2−、(CF3)2CF−、CF3CF2CF2−、(CHF2)2CF−、(CF3)(CHF2)CF−、(CF3)2CFCF2CF2−、(CF3)2CF(CF2CF2)2−、CF3(CF2)3−、CF3(CF2)5−、CF3(CF2)7−、CF3(CF2)9−、CF3(CF2)11−、CF3(CF2)13−、CF3(CF2)15−が例示できる。
そしてR5及びR6における、メチル基の一つの水素原子が置換された前記フルオロアルキルエーテル基としては、これらフルオロアルキル基が酸素原子に結合した一価の基が例示できる。
【0052】
R7及びR8における前記アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシルが例示できる。
そしてR7及びR8における前記アルキルエーテル基としては、これらアルキル基が酸素原子に結合した一価の基が例示できる。
【0053】
非細胞接着層19は、上記のように、非接着性物質の前駆体を前記絶縁膜15上に結合させることで形成できる。非接着性物質の前駆体としては、市販品を使用しても良い。
例えば、絶縁膜15が水酸基を有する場合には、前記化合物(1)又は(2)として、R2が前記式(11)、(12)又は(16)等で表される基を有するものを使用することが好ましい。
なかでも、前記式(16)等で表される有機シリル基を有する化合物(1)又は(2)は、市販品の入手が容易であり好適である。このような市販品としては、例えば、サイトップシリーズ(商標、旭硝子株式会社製)、メガファック(商標、大日本インキ化学工業株式会社製)、ディックガード(商標、大日本インキ化学工業株式会社製)、FPX−30G(商標、JSR株式会社製)、ノベックEGC−1720(商標、住友スリーエム株式会社製)、Patinalシリーズ(substance WR1,WR2,WR3)(商標、メルク株式会社製)、オプツールDSX(商標、ダイキン工業株式会社製)が例示できる。
【0054】
また、R2が前記式(11)、(12)及び(16)以外の基、例えば、前記式(13)、(14)又は(15)等で表される基を有するものである場合には、これらの基と反応可能な官能基を有するように絶縁膜を処理しても良い。
例えば、Chembiochem,2,686−694(2001)(Benters R. Et al.)に記載の方法によれば、R2として前記式(14)で表される基(すなわち、アミノ基)を有する化合物(1)又は(2)を、絶縁膜に結合させることができる。
また、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン等のアミノ基を有する有機シラン化合物を絶縁膜表面に結合させておけば、R2として前記式(13)で表される基(すなわち、カルボキシル基)又は前記式(15)で表される基(すなわち、エポキシ基)を有する化合物(1)あるいは(2)を、絶縁膜に結合させることができる。前記有機シラン化合物は、入手も容易である。
【0055】
非細胞接着層19において、非接着性物質は、少なくとも分子の一部、好ましくは分子の一端が絶縁膜15上の特定の原子や官能基と結合している一方、撥液性を有する部位がデバイス1の外側へ向けて露出するように配向すると推測される。例えば、非接着性物質の前駆体として前記化合物(1)を使用した場合には、そのR2が絶縁膜と結合する一方、R1がデバイス1の外側へ向けて露出するように配向する。また、前記化合物(2)を使用した場合には、その一つ又は二つのR2が絶縁膜と結合する一方、R1’がデバイス1の外側へ向けて露出するように配向すると推測される。
このように、撥液性を有する部位が配向することで、非細胞接着層19は細胞に対する非接着性を発現すると推測される。したがって、前記化合物(1)又は(2)のように、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を有する化合物を使用することで、デバイス1により高い非接着効果を発現させることが可能となる。
【0056】
また、前記化合物(1)又は(2)を使用して形成した非細胞接着層19は、従来のポリテトラフオロエチレンなどを含む層よりも、透明度に優れ、薄い単層薄膜とするのに好適であり、パターニングや除去などの微細加工性に優れる。透明度が優れているので、細胞や細胞に作用する物質を光学的に検出する場合には、ノイズの大幅な低減が可能であり、高感度な解析が可能である。また、微細加工性に優れているので、後記するように絶縁基板11上に微小サイズの細胞配置部10aや細胞連結部10bを多数形成でき、絶縁基板11上の細胞の配置密度を高くできるので、高い効率で解析できる。
【0057】
非細胞接着層19中の非接着性物質は一種でも良いし、二種以上でも良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率等は目的に応じて適宜選択できる。
また、非細胞接着層19は、本発明の効果を妨げない範囲で、非接着性物質以外の如何なる成分を含んでいても良い。
【0058】
非細胞接着層19の厚さは、計測対象の細胞の種類等に応じて適宜調整することが好ましい。通常は、5000nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが特に好ましい。特に、化合物(1)を使用して非接着性物質の単分子膜を形成させ、非細胞接着層19とした場合には、5〜100nmの厚さのものが好適に得られる。
上記範囲の厚さであれば、非細胞接着層19は加工性にも優れる。
【0059】
細胞配置部10aは、いずれも直径Dの略円形状である。そして、絶縁基板11上において、互いに直交する二方向に等間隔で合計16個の細胞配置部10aが配置されており、細胞配置部10a一つあたり一つの微小電極17が配置されている。
一方、細胞連結部10bは、いずれも幅がWの帯状である。各細胞連結部は、連結対象である各細胞配置部を最短距離で連結するように配置されるのが好ましく、図2においては、連結される細胞配置部の略中心部を結ぶ線に重なるように細胞連結部10bが配置されている。連結距離Sは、連結される細胞配置部10a同士の中心間距離に相当する。
すなわち、細胞配置部10aは頂点を、細胞連結部10bは辺をそれぞれ構成するように升目状に配置されている。
【0060】
細胞配置部10aの面積は、配置する細胞の種類や数、その他目的に応じて適宜調整すれば良い。例えば、配置する細胞数が細胞配置部一つにつき一つである場合には、細胞配置部の面積は通常、2.0×10−11〜4.0×10−8m2であることが好ましく、1.8×10−10〜2.3×10−8m2であることがより好ましい。このような好ましい面積とするためには、細胞配置部10aの直径Dをこの面積に対応するように調整すれば良く、好ましくは5〜225μm、より好ましくは15〜150μmとすると良い。直径Dが小さいほど、基板1上の接着面131の数を増やせる点で好ましい。
細胞連結部10bの幅W及び連結距離Sも、配置する細胞の種類や数、その他目的に応じて適宜調整すれば良い。上記と同様に、配置する細胞数が細胞配置部10a一つにつき一つである場合には、通常、幅Wは、30μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。連結距離Sは、細胞によって異なるが、通常は直径Dに応じて調整することが好ましく、D+5〜D+350μmであることが好ましく、D+20〜D+250μmであることがより好ましい。
【0061】
ここでは、微小電極配置部14に16個の細胞配置部10aが配置された例を示しているが、細胞配置部の数は、絶縁基板の大きさや、計測に供する細胞の数等を考慮して、適宜調整すれば良い。そして、細胞配置部の数が多いほど、デバイスを多様な解析に使用できる点で好ましい。
また、細胞配置部として略円形状のものを例示しているが、これに限定されず、多角形状等、他の形状でも良い。
そして、細胞配置部の形状や大きさは、ここに示すように、必ずしもすべて同じである必要性はないが、同じである方がデバイスの作製が容易である点で好ましい。
また、ここでは絶縁基板上において、細胞配置部が互いに直交する二方向に等間隔で配置された例を示しているが、配置方向及び間隔はこれに限定されず、目的に応じて適宜選択できる。
【0062】
ここでは、細胞連結部として帯状のものを例示しているが、これに限定されず他の形状でも良い。ただし、細長形状のものが好ましい。
また、細胞連結部の数も、細胞配置部の数や、目的に応じて適宜調整すれば良い。
そして、細胞連結部の形状や大きさは、ここに示すように、必ずしもすべて同じである必要性はないが、同じである方がデバイスの作製が容易である点で好ましい。
また、ここでは、細胞配置部は頂点を、細胞連結部は辺をそれぞれ構成するように升目状に配置された例を示しているが、例えば、細胞連結部は升目の辺だけでなく対角線に重なるように配置されていても良く、対角線のみに重なるように配置されていても良いし、これらのいずれでなくても良い。
【0063】
微小電極17の材質は、公知のものから適宜選択すれば良く、前記電極12と同様のものが例示できる。そして、前記電極12の場合と同様の理由により、光透過性を有する材質が好ましい。
微小電極17の大きさは、計測対象の細胞の種類に応じて適宜調整することが好ましいが、通常は、電極面の面積が1.0×10−11〜5.0×10−9m2であることが好ましく、3.0×10−11〜2.0×10−9m2であることがより好ましい。微小電極17の厚さは、50〜1000nmであることが好ましく、100〜400nmであることがより好ましい。
【0064】
ここでは、微小電極配置部14に16個の微小電極17が配置された例を示しているが、微小電極の数は、計測に供する細胞の数等を考慮して、適宜調整すれば良い。例えば、微小電極配置部に微小電極が一つだけ設けられたものでも、細胞電位を計測できるが、微小電極が複数個設けられたものであれば、複数個の細胞の電位を同時に計測でき、例えば、細胞群ネットワークにおける特定細胞の機能や、細胞間の相互作用等、種々の解析が可能となる。
また、ここでは、細胞配置部10a一つあたり一つの微小電極17が配置された例を示しているが、細胞配置部一つ当たりに配置される微小電極の数は複数でも良い。複数配置した場合には、例えば、一細胞あたり複数箇所(例えば、核近傍とそれ以外の部位)の電位を計測して比較することにより、イオンを選択的に細胞内外に透過させるイオンチャネル分子の分布に関する情報が得られるなど、一層高度な解析が可能となる。
また、必ずしもすべての細胞配置部に微小電極が配置されていなくても良く、目的に応じて、適宜選択すれば良い。微小電極が配置されていない細胞配置部を併設した場合には、例えば、細胞電位が変化しない異種細胞を併用した解析や、微小電極の総数を削減したことによる解析装置の負荷軽減に好適である。
【0065】
一方、微小電極17として、ここでは略正方形状のものを例示しているが、これに限定されず、その他の多角形状、円形状等、他の形状でも良い。
そして、微小電極の形状は、ここに示すように、必ずしもすべて同じである必要性はないが、同じである方がデバイスの作製が容易である点で好ましい。
微小電極17は、必ずしも露出された絶縁膜15で包囲されていなくても良く、例えば、周縁部の一部が非細胞接着層19に接していても良い。ただし、細胞を細胞配置部により安定して配置できることから、微小電極17は露出された絶縁膜15で包囲されていることが好ましい。そして、ここに例示するように、微小電極17は細胞配置部10aと同心状に配置されていることが好ましい。
【0066】
図3は、図2(a)のIII−III線における縦断面図である。
配線18は帯状であり、前記電極12のうちの第二の接続部12bと微小電極17とを電気的に接続するものである。したがって通常は、電極12、配線18及び微小電極17は同数となる。このような構成により、微小電極17は、デバイス1が接続される外部の計測器(図示略)と電気的に接続される。
配線18は、後記するデバイスの製造方法における説明のように、微小電極17と同時に形成することを考慮すると、微小電極17と同じ厚さとすることが好ましい。
配線18の幅は、微小電極17の大きさ等を考慮して適宜調整すれば良いが、通常は、2〜70μmであることが好ましく、3〜20μmであることがより好ましい。
ここでは、配線として帯状のものを例示しているが、これに限定されず他の形状でも良い。ただし、細長形状のものが好ましい。
【0067】
計測対象の細胞は、微小電極17に接触するようにして細胞配置部10aに配置する。この時、細胞配置部10a、すなわち絶縁基板11上の微小電極17が露出された凹部内に、細胞全体が収容されるようにしても良いし、細胞の一部分が前記凹部内に収容されていなくても良い。細胞全体が前記凹部内に収容されていなくても、細胞全体は、細胞配置部10aを包囲する非細胞接着層19により配置位置が固定されるからである。
【0068】
本発明においては、非細胞接着層19及び微小電極17の少なくとも一方が光透過性を有するものが好ましく、非細胞接着層19及び微小電極17が共に光透過性を有するものがより好ましい。
【0069】
ここまでは、デバイスとして、微小電極の配線がすべて絶縁膜で被覆されているものを例示しているが、例えば、配線の一部が絶縁膜で被覆されずに露出されているものでも良い。ただし、配線の劣化を抑制するために、配線の露出部は少ないほど好ましい。
【0070】
本発明においては、必ずしも細胞連結部が設けられていなくても良いが、ここで例示するように細胞連結部が設けられていることにより、細胞同士が連結部で互いに容易に結合し、細胞間でネットワークを構築して細胞群を形成するようになる。その結果、細胞群中の細胞について一細胞毎に電位を計測でき、高精度に細胞の機能を解析できる。また、細胞間の相互作用、細胞と化学物質との相互作用等に関する高精度な情報を取得できる。
【0071】
(第二の実施形態)
図4は、本発明の第二の実施形態に係るデバイスを例示する平面図である。
ここに例示するデバイス2は、細胞配置部及び隔壁の形態が第一の実施形態と異なっており、第一の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0072】
デバイス2においては、微小電極配置部24中の微小電極の配置形態に応じて、絶縁基板11上にパターニングされている電極12及び参照電極13の数が、第一の実施形態と異なっている。
また、隔壁26は、平面視にて中空部が略円形の丸筒状であり、その他の点では、第一の実施形態における隔壁16と同様である。
【0073】
図5は、微小電極配置部24を拡大して例示する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の平面図の一部をさらに拡大して例示する平面図である。
微小電極配置部24においては、略円形状である複数個の微小電極27が配置されている。微小電極27は、形状が異なる点以外は、第一の実施形態における微小電極17と同様である。
そして、これら複数個の微小電極27が露出するように、絶縁基板11上には絶縁膜15が被覆されている。さらに、露出された前記微小電極27と、該微小電極27近傍でこれを包囲する所定領域とからなる略円形状の細胞配置部20a、及びこれら細胞配置部20aを連結する帯状の細胞連結部20bからなる非積層領域20を除いて、絶縁膜15上には、非細胞接着層19が設けられている。
【0074】
図6は、図5(a)のIV−IV線における縦断面図である。
配線28は、前記電極12のうちの第二の接続部12bと微小電極27とを電気的に接続するものである。したがって通常は、電極12、配線28及び微小電極27は同数となる。このような構成により、微小電極27は、デバイス1が接続される外部の計測器(図示略)と電気的に接続される。
配線28は、微小電極27の配置形態に応じて数が異なる点以外は、第一の実施形態における配線18と同様である。
【0075】
細胞配置部20aは、いずれも直径D’の略円形状である。そして、絶縁基板11上において、互いに直交する二方向に等間隔で合計10個の細胞配置部20aが配置されており、細胞配置部20a一つあたりの微小電極27の配置数は、0又は1である。
一方、細胞連結部20bは、いずれも幅がW’の帯状である。各細胞連結部は、連結対象である各細胞配置部を最短距離で連結するように配置されるのが好ましく、図5においては、連結される細胞配置部の略中心部を結ぶ線に重なるように細胞連結部20bが配置されている。連結距離S’は、連結される細胞配置部20a同士の中心間距離に相当する。
細胞配置部20aの面積は、第一の実施形態における細胞配置部10aと同様である。そして、D’、W’及びS’の大きさも、第一の実施形態におけるD、W及びSと同様である。
【0076】
本発明のデバイスは、微小電極配置部において、細胞配置部及び細胞連結部以外は非細胞接着層で被覆されているので、計測対象の細胞をアプライした時に、細胞が細胞配置部以外の領域に付着しても容易に除去できる。そして、細胞配置部に細胞を安定して保持できる。
また、特に前記化合物(1)又は(2)を使用して形成した非細胞接着層は、薄い単層薄膜とするのに好適であり、微細加工性に優れ、細胞配置部及び細胞連結部を従来よりも高精細且つ高精度に形成でき、しかも加工精度が損なわれることが無い。したがって、細胞の配置密度を高くできるので、高い効率で計測できる。さらに、透明度に優れ、細胞や細胞に作用する物質を光学的に検出する場合には、ノイズの大幅な低減が可能である。したがって、解析時のS/N比が従来よりも大幅に向上するので、より高精度に解析できる。
【0077】
本発明のデバイスを使用することで、細胞群中の細胞について一細胞毎にその機能を高精度に解析でき、その機能を利用する種々の解析や物質生産等も高い効率で行うことができる。一例を挙げれば、異種細胞間のコミュニティーエフェクトを利用して、種々の環境下で細胞が受ける影響を客観的に解析できる。より具体的には、例えば、種々の化学物質を使用してバイオアッセイを行うこともでき、毒性検査試験等にも応用できる。これにより、例えば、医薬品や化学物質の投与が生体に及ぼす影響を、従来は体調の良・不良という主観的な表現で評価していたのに対し、具体的な数値比較により評価できるようになる。
そして、これら解析や物質生産を行う場合には、本発明のデバイスを使用すること以外は、従来のバイオチップやデバイス等を使用する場合と同様の方法を適用すれば良い。
【0078】
<微小電極アレイデバイスの製造方法>
上記本発明のデバイスは、以下のように製造できる。
(製造方法1)
図7〜9は、図1〜3に例示する本発明のデバイスの製造工程を例示する図である。以下においては、特に微小電極配置部14を図示しながら説明する。
まず、絶縁基板11の片面全面に、電極12、参照電極13、微小電極17及び配線18の材質となる材料で成膜した後、パターニングすることで、電極12、参照電極13、並びに図7(a)及び(b)に示すように微小電極17及び配線18をそれぞれ形成する。図7(a)は微小電極配置部14の平面図、(b)は(a)のI−I線における縦断面図である。成膜方法は公知の方法から適宜選択すれば良いが、スパッタリングが好ましい。成膜後のパターニング方法も公知の方法から適宜選択すれば良いが、ウェットエッチング又はリフトオフ加工が好ましい。
【0079】
次いで、電極12のうちの第二の接続部12b、参照電極13、微小電極17及び配線18が形成された絶縁基板11上の所定領域に、前記参照電極13、並びに図8(a)及び(b)に示すように微小電極17がそれぞれ露出するように、絶縁膜15をパターニングする。図8(a)は微小電極配置部14の平面図、(b)は(a)のII−II線における縦断面図である。絶縁膜15のパターニング方法は、絶縁膜15の材質に応じて公知の方法から適宜選択すれば良い。例えば、絶縁膜として感光性樹脂を使用する場合には、フォトリソグラフィーによりパターニングすれば良い。また、絶縁膜として酸化ケイ素膜を使用する場合には、プラズマCVD法等により酸化ケイ素膜を成膜した後、該酸化ケイ素膜上にフォトレジスト等の感光性樹脂を積層させ、これをフォトリソグラフィーによりパターニングした後、パターニングされた感光性樹脂をマスクとしてエッチングを行うことで、参照電極13及び微小電極17が露出するように酸化ケイ素膜をパターニングすれば良い。この時のエッチングはウェットエッチングが好ましい。
【0080】
次いで、絶縁基板11上の絶縁膜15がパターニングされた面、具体的には、絶縁膜15、参照電極13及び微小電極17を、非接着性物質の前駆体で被覆し、非細胞接着層19を形成する。この時の被覆方法としては、ディップ塗布法、真空蒸着法、CVD(化学気相蒸着)法、プラズマ重合法が例示できる。例えば、ディップ塗布法の場合は、非接着性物質の前駆体を含有する被覆処理溶液を調製し、これを塗布して、塗布後は乾燥により前記処理溶液中の溶媒成分を除去することが好ましい。非細胞接着層19の厚さは、前記前駆体の分子の大きさや使用量で調整できる。
【0081】
次いで、非細胞接着層19が形成された絶縁基板11を洗浄し、乾燥させると良い。洗浄は、メタノールやエタノール等のアルコールを使用しても良いし、被覆処理溶液がフッ素系溶媒を含有する場合には、フッ素系溶媒を使用しても良い。
【0082】
次いで、非細胞接着層19上の、参照電極13、細胞配置部10a及び細胞連結部10bに相当する領域以外の領域をフォトリソグラフィーにより感光性樹脂で被覆し、該樹脂をマスクとして非細胞接着層19をエッチングする。この時のエッチング方法は如何なる方法でも良いが、ドライエッチングが好ましく、より具体的には、酸素、アルゴン及び塩素からなる群から選択される一種のガスから生成されるプラズマを用いたエッチングが好ましい。また、紫外光又はオゾン照射でエッチングしても良い。
エッチングにより、感光性樹脂でマスクされていない非細胞接着層19が除去されて、非細胞接着層19がパターニングされる。その結果、参照電極13及び微小電極17が露出され、細胞配置部10a及び細胞連結部10bに相当する領域では、絶縁膜15が露出される。
【0083】
次いで、絶縁基板11上に残っている感光性樹脂をすべて除去することで、参照電極13が露出し、図9(a)及び(b)に示すように、微小電極配置部14に非細胞接着層19がパターニングされ、細胞配置部10a及び細胞連結部10bが形成された絶縁基板11が得られる。図9(a)は微小電極配置部14の平面図、(b)は(a)のIII−III線における縦断面図である。
【0084】
次いで、絶縁膜15上の所定領域に、参照電極13及び微小電極配置部14を包囲するように、隔壁16を固定することで、デバイス1が得られる。隔壁16は、接着剤を使用して固定するのが好ましい。接着剤は、絶縁膜15及び隔壁16の材質に応じて、公知のものから適宜選択すれば良い。
【0085】
(製造方法2)
本発明のデバイスは、以下の方法でも製造できる。
前記製造方法1と同様の方法で、参照電極13、並びに図8(a)及び(b)に示すように微小電極17がそれぞれ露出するように、絶縁基板11上の所定領域に絶縁膜15をパターニングする。
次いで、絶縁基板11上の絶縁膜15がパターニングされた面において、参照電極13、微小電極17、微小電極17近傍でこれを包囲する領域の絶縁膜15、前記微小電極17を包囲する領域同士を連結する所定領域の絶縁膜15を、それぞれフォトリソグラフィーにより感光性樹脂9で被覆してパターニングする。ここで、「微小電極17近傍でこれを包囲する領域」とは、細胞配置部10aに相当する領域であり、「微小電極17を包囲する領域同士を連結する所定領域」とは、細胞連結部10bに相当する領域である。
次いで、絶縁基板11上の感光性樹脂9がパターニングされた面、具体的には、被覆した感光性樹脂9及び絶縁膜15を非接着性物質の前駆体で被覆し、図10(a)及び(b)に示すように、非細胞接着層19を形成する。図10(a)は微小電極配置部14の平面図、(b)は(a)のV−V線における縦断面図である。非接着性物質の前駆体の被覆方法は、製造方法1と同様で良い。
次いで、感光性樹脂9上の非細胞接着層19を、該非細胞接着層19で被覆されている感光性樹脂9と共に除去する。これにより、参照電極13及び微小電極17が露出され、細胞配置部10a及び細胞連結部10bに相当する領域では、絶縁膜15が露出される。その結果、製造方法1の場合と同様に、図9(a)及び(b)に示すように、微小電極配置部14に非細胞接着層19がパターニングされた絶縁基板11が得られる。
次いで、製造方法1と同様の方法で、絶縁膜15上の所定領域に、参照電極13及び微小電極配置部14を包囲するように、隔壁16を固定することで、デバイス1が得られる。
【0086】
ここでは、図1〜3に例示する、本発明の第一の実施形態に係るデバイス1の製造方法について説明したが、例えば、図4〜6に例示するデバイス2等、他の実施形態に係るデバイスも、同様に製造できることは言うまでもない。例えば、細胞配置部及び/又は細胞連結部を異なる形状で形成したい場合には、非細胞接着層の除去に使用する前記感光性樹脂を所望のものとなるようにパターニングすれば良い。そして、細胞連結部が不要である場合には、参照電極が露出され、且つ細胞配置部だけが形成されるように、前記感光性樹脂をパターニングすれば良い。
【実施例】
【0087】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
前記製造方法1により、図1〜3に例示するデバイスを作製した。
すなわち、パイレックス(登録商標)(コード7059、コーニングインターナショナル株式会社製)のガラス基板(厚さ;0.5mm)の片面全面に、ITOを厚さが200nmとなるようにスパッタリングにより成膜し、さらにウェットエッチングによりパターニングすることで、電極、参照電極、微小電極及び配線を形成した。
電極のうち第一の接続部は幅が0.8mmの帯状とし、第二の接続部は幅が0.8〜0.01mmの範囲で減じる帯状とした。また、参照電極は一辺が0.2mmの正方形状とした。さらに、微小電極は一辺が10μmの正方形状とし、配線は幅が7.5μmの帯状とした。
次いで、ガラス基板上の所定領域に、絶縁膜としてフォトレジストを厚さが1.2μmとなるようにフォトリソグラフィーによりパターニングし、該パターニング面、参照電極及び微小電極に、オプツールDSX(商標、ダイキン工業株式会社製)をディップ塗布した。そして、一晩乾燥させた後、100℃で1時間加熱し、フッ素系溶媒であるノベックHFE(商標、住友スリーエム株式会社製)を使用して洗浄することで、非細胞接着層を形成した。
次いで、非細胞接着層上の所定領域をフォトリソグラフィーによりフォトレジストで被覆し、該樹脂をマスクとして非細胞接着層を酸素プラズマで5分間エッチングして、非細胞接着層をパターニングした。
次いで、絶縁基板上のフォトレジストをすべて除去することで、細胞配置部及び細胞連結部を形成した。細胞配置部の直径Dは25μm、細胞連結部の幅Wは1μm、連結距離Sは50μmであった。なお、非細胞接着層の厚さは12nmであった。
次いで、厚さが0.7mmのガラス板からなり、高さが2.0mmであり、平面視にて中空部が一辺2.5mmの正方形である角筒状の隔壁を、絶縁膜上の所定領域に接着して固定することで、本発明のデバイスを得た。
【0088】
このデバイスを使用して、下記手順にしたがって、ラット心筋細胞の活動電位を計測した。
まず、濃度が0.3mg/mLとなるようにCell Matrix Type III(新田ゼラチン社製)をpH3の希塩酸水溶液に溶解させて得たコラーゲン溶液を、培養液として隔壁内にアプライし、10分間静置後、pH3の希塩酸水溶液で洗浄した。
次いで、コラーゲン溶液をアプライした隔壁内に、ラット心筋初代培養細胞(北海道システム・サイエンス株式会社製)をアプライし、赤外レーザによる光ピンセットを使用して、細胞配置部に前記細胞を一つずつ配置して吸着させた。
微小電極及び非細胞接着層が共に透明なので、細胞配置部が明りょうに視認でき、その結果、前記細胞を非細胞接着層上に配置することなく、容易に細胞配置部に配置できた。さらに図11に示すように、前記細胞同士が連結部で互いに結合し、拍動が同期する様子を確認できた。図11は、この時の微小電極配置部14を模式的に示す平面図であり、符号110が配置された細胞である。また、図12は、この時の配置された一つの細胞の活動電位の測定結果である。図12中、横軸は時間を、縦軸は電位(V)を示す。図12(a)に示すように、培養液中での前記細胞の拍動に伴う電位変化が、0.44秒ごとに確認された。次に、心筋の拍動を速くする薬理効果を有することが知られているエピネフリンを隔壁内の培養液中へ添加したところ、図12(b)に示すように、電位変化が0.20秒ごとに見られるようになり、心筋の拍動が速くなっていることが確かに確認された。
以上により、細胞の活動電位を単一細胞ごとに高精度に計測できることが確認された。
【0089】
(実施例2)
オプツールDSX(商標、ダイキン工業株式会社製)の代わりに、濃度が0.02mol/LであるCF3−(CF2)7−(CH2)2−SiCl3のノベックHFE(商標、住友スリーエム株式会社製)溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でデバイスを得た。
得られたデバイスを使用して、実施例1と同様の方法でラット心筋初代培養細胞の活動電位を計測したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
【0090】
(実施例3)
前記製造方法2により、図4〜6に例示するデバイスを作製した。
すなわち、パイレックス(登録商標)(コード7059、コーニングインターナショナル株式会社製)のガラス基板(厚さ;0.5mm)の片面全面に、クロム薄膜をスパッタリングによって100nmの厚さで成膜し、該クロム薄膜上にさらに、プラチナ薄膜をスパッタリングによって200nmの厚さで成膜して、リフトオフ加工によりパターニングすることで、電極、参照電極、微小電極及び配線を形成した。
電極のうち第一の接続部は幅が1mmの帯状とし、第二の接続部は幅が1〜0.015mmの範囲で減じる帯状とした。また、参照電極は一辺が0.3mmの正方形状とした。さらに、微小電極は一辺が30μmの正方形状とし、配線は幅が15μmの帯状とした。
次いで、得られた絶縁基板上にプラズマCVD法により、テトラエトキシシランを蒸着源として二酸化ケイ素膜を500nmの厚さで成膜し、該二酸化ケイ素膜上にフォトリソグラフィーによりフォトレジストをパターニングした後、これをマスクとしてフッ化水素酸によりウェットエッチングを行うことで、参照電極及び微小電極が露出するように酸化ケイ素膜をパターニングした。
次いで、絶縁基板上の所定領域をフォトリソグラフィーによりフォトレジストで被覆し、さらに、被覆したフォトレジスト及び絶縁膜上に、WR1 Partinal(商品名、メルク株式会社製)を蒸着源とした真空蒸着法にて、非接着性物質の前駆体を被覆させ、非細胞接着層を形成した。この時、蒸着源の温度は360℃から450℃とし、10−3Paの真空度で30秒間蒸着した。
次いで、フォトレジスト上の非細胞接着層を、該非細胞接着層で被覆されているフォトレジストと共にアセトンを使用して除去することで、細胞配置部及び細胞連結部を形成した。細胞配置部の直径D’は30μm、細胞連結部の幅W’は0.75μm、連結距離S’は100μmであった。
次いで、厚さが0.7mmのガラス板からなり、高さが2.5mmであり、平面視にて中空部が直径3mmの円形である丸筒状の隔壁を、絶縁膜上の所定領域に接着して固定することで、本発明のデバイスを得た。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、細胞機能の研究、細胞を用いるバイオアッセイや物質生産などの分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るデバイスを例示する図であり、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係るデバイス上の微小電極配置部を拡大して例示する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の一部をさらに拡大して例示する平面図である。
【図3】図2(a)のIII−III線における縦断面図である。
【図4】本発明の第二の実施形態に係るデバイスを例示する平面図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係るデバイス上の微小電極配置部を拡大して例示する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の一部をさらに拡大して例示する平面図である。
【図6】図5(a)のIV−IV線における縦断面図である。
【図7】本発明の第一の実施形態に係るデバイスの製造工程を例示する図であり、(a)は微小電極配置部の平面図、(b)は(a)のI−I線における縦断面図である。
【図8】本発明の第一の実施形態に係るデバイスの製造工程を例示する図であり、(a)は微小電極配置部の平面図、(b)は(a)のII−II線における縦断面図である。
【図9】本発明の第一の実施形態に係るデバイスの製造工程を例示する図であり、(a)は微小電極配置部の平面図、(b)は(a)のIII−III線における縦断面図である。
【図10】本発明の第一の実施形態に係るデバイスの製造工程の他の例を示す図であり、(a)は微小電極配置部の平面図、(b)は(a)のV−V線における縦断面図である。
【図11】実施例1における微小電極配置部中の細胞の配置状態を模式的に示す平面図である。
【図12】実施例1における細胞の活動電位の測定結果であり、(a)はエピネフリン添加前の測定結果、(b)はエピネフリン添加後の測定結果である。
【符号の説明】
【0093】
1,2・・・微小電極アレイデバイス、11・・・絶縁基板、17,27・・・微小電極、18,28・・・配線、15・・・絶縁膜、19・・・非細胞接着層、10,20・・・非積層領域、10a,20a・・・細胞配置部、10b,20b・・・細胞連結部、9・・・感光性樹脂、14,24・・・微小電極配置部
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞電位を計測するための微小電極アレイデバイス、その製造方法及び該デバイスを用いたバイオアッセイ法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲノム計画の発展や生体分子の構造解析学の進展に伴い、分子生化学的に生命現象を理解し、産業に応用しようとする動きが活発化している。その一方で、よりin vivoに近い生体情報を取得するために、細胞を使用したバイオアッセイ法が注目されている。このような細胞を使用した解析により、細胞の機能、細胞間の相互作用、細胞と化学物質との相互作用等に関する情報を取得でき、例えば、生命現象、有用物質の生産、物質の生理活性や毒性等に関する新たな知見が得られる。
【0003】
細胞の解析方法としては、例えば、細胞表面に存在するタンパク質や糖鎖を蛍光標識抗体で修飾したり、解析対象の物質に特異的に結合する蛍光標識プローブを細胞内に導入することで得られる蛍光像を解析する方法、蛍光試薬等の指示薬を細胞内に導入して、細胞内のカルシウムやpHを計測する方法が挙げられる。しかしこれらの方法では、標識物質や指示薬によって、細胞が刺激や損傷を受けて少なからずダメージを受けることがあり、精度良く解析できないことがある。そこで、非侵襲的に細胞を解析する技術として、生命活動に伴い活動電位が変化する神経細胞、心筋細胞、筋肉細胞等の細胞を微小電極上で培養し、その時の活動電位の変化を計測する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2、非特許文献1参照)。細胞の活動電位の変化は、細胞膜内外におけるイオン濃度の変化により生じるものであり、電極を使用して細胞近傍のイオン濃度の変化をイオン電流として電位測定することで計測でき、これにより細胞活動を検出できる。
【0004】
一方、上記のような解析方法をはじめとする従来の方法では、複数細胞からなる細胞群を解析対象とし、解析して得られたデータの平均値をあたかも一細胞毎の特性であるかのように扱ってきた。しかし実際には、細胞群の中で細胞周期やサーカディアンリズム(概日リズム)が同調している事はまれであり、細胞毎に異なった周期で遺伝子及びタンパク質を発現している。このため、得られた解析結果には、細胞群を扱うが故の揺らぎの問題が付きまとい、高精度な解析結果が得られない。そこで、このような問題点を解決するために、同調培養等の手法が開発され利用されているが、常時同一ステージの細胞を供給し続けなければならないという問題点があった。そこで、このような問題点を解決するために、複数個の細胞を一つずつ個別に培養すると共に、各細胞のネットワークを形成して細胞群とし、その中の細胞について一細胞毎に情報を取得することで、より精度の高い解析を行おうとする動きが活発化してきている。
上記したように、細胞を恣意的に配置してネットワークを形成するための手法も提案されている。例えば、高さが10μm以上である障壁を有する空間内で細胞を培養することで、細胞の伸長や移動を制御する技術が開示されている(例えば、非特許文献2参照)。また、ラミリン等の細胞接着性物質でパターンを形成すると、神経細胞の突起がそのパターンに沿って伸長することが報告されており(非特許文献3参照)、これらの手段を併用することで、細胞を所定の空間内に配置してネットワークを構築することが可能となる。
【特許文献1】特開平6−078889号公報
【特許文献2】特開平11−187865号公報
【非特許文献1】Jimbo Y.,Tateno T.,Robinson H.P.C.,Biophys.J76,670−678(1999)
【非特許文献2】Stopak D.,et al.,Dev.Biol.,90,383−398(1982)
【非特許文献3】Letourneau P.C.,Dev.Biol.,66,183−196(1975)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような、細胞を微小電極上で培養し、その時の活動電位の変化を計測する手法は、細胞を長期間継続して解析する手法として有用である。しかし、従来提案されている手法では、微小電極アレー基板を使用して、組織断片又は培養細胞を計測対象とし、上記のように複数細胞に関する平均的なデータを取得して解析していたので、高精度に解析できないという問題点があった。例えば、薬剤や電気的刺激に対する応答をより高精度に解析するためには、一細胞毎に情報を解析することが必要である。しかし、一細胞を単独で培養して情報を解析しても、解析結果に細胞間の相互作用による影響が反映されず、細胞群からなる組織としての機能を正確に解析できない。
したがって、細胞を使用して解析を高精度に行うためには、細胞同士が相互作用している細胞群を構築し、該細胞群中の細胞を一細胞毎に解析する手法が必要とされる。そこで、このような解析を可能とする新規なデバイスの開発が強く望まれている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、細胞群中の細胞について一細胞毎に電位を計測できる微小電極アレイデバイス、その製造方法及び該デバイスを用いたバイオアッセイ法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は細胞電位を計測するための微小電極アレイデバイスであって、
絶縁基板上に微小電極と、該微小電極の配線と、前記微小電極を露出させるように該絶縁基板上を被覆する絶縁膜とを備え、前記絶縁膜上の所定領域にはさらに非細胞接着層が設けられると共に、該非細胞接着層が設けられず、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とが露出された絶縁基板上の領域が細胞配置部とされていることを特徴とする微小電極アレイデバイスである。
請求項2に記載の発明は、前記微小電極及び/又は非細胞接着層が光透過性を有する材質からなることを特徴とする請求項1に記載の微小電極アレイデバイスである。
請求項3に記載の発明は、複数個の前記細胞配置部が、前記非細胞接着層が設けられず前記絶縁膜が露出されてなる細胞連結部により連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の微小電極アレイデバイスである。
請求項4に記載の発明は、前記非細胞接着層が、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を有する化合物を前記絶縁膜上に結合させて形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の微小電極アレイデバイスである。
請求項5に記載の発明は、前記化合物が、下記一般式(1)又は(2)で表されることを特徴とする請求項4に記載の微小電極アレイデバイスである。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R1は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し;R1’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表し;R2は下記式(11)〜(16)で表される基のいずれかであり、複数のR2は互いに同一でも異なっていても良く;Yは式「−NH−C(=O)−」で表される基又はカルボニル基であり、複数のYは互いに同一でも異なっていても良く;Zは、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていても良いアルキル基又はアルキルオキシアルキル基に、一つの水素原子が置換されたエチレンオキシ基であり、複数のZは互いに同一でも異なっていても良く;j及びkはそれぞれ独立して0又は1であり、複数のj又はkは互いに同一でも異なっていても良く;l及びmはそれぞれ独立して0以上の整数であり、複数のl又はmは互いに同一でも異なっていても良く;lが2以上の整数である場合にはl個のZは互いに同一でも異なっていても良い。)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R3は水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表し;R4は水素原子又は1価の炭化水素基を表し;nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合にはn個のR3は互いに同一でも異なっていても良く;nが1である場合には2個のR4は互いに同一でも異なっていても良い。)
請求項6に記載の発明は、前記一般式(1)又は(2)で表される化合物が、下記一般式(3)又は(4)で表されることを特徴とする請求項5に記載の微小電極アレイデバイスである。
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、R1は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し;R1’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表し;R2は下記式(11)〜(16)で表される基のいずれかであり、複数のR2は互いに同一でも異なっていても良く;mは0以上の整数であり、複数のmは互いに同一でも異なっていても良い。)
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、R3は水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表し;R4は水素原子又は1価の炭化水素基を表し;nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合にはn個のR3は互いに同一でも異なっていても良く;nが1である場合には2個のR4は互いに同一でも異なっていても良い。)
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の微小電極アレイデバイスの製造方法であって、絶縁基板上に微小電極及び該微小電極の配線を形成する工程と、前記微小電極を露出させるように前記絶縁基板上に絶縁膜をパターニングする工程と、前記絶縁基板上の絶縁膜がパターニングされた面を非細胞接着層で被覆する工程と、前記非細胞接着層上に感光性樹脂をパターニングし、該感光性樹脂をマスクとしてエッチングにより前記非細胞接着層の所定部位を除去し、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とを露出させて細胞配置部を形成し、次いで前記感光性樹脂を除去する工程と、を有することを特徴とする微小電極アレイデバイスの製造方法である。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の微小電極アレイデバイスの製造方法であって、絶縁基板上に微小電極及び該微小電極の配線を形成する工程と、前記微小電極を露出させるように前記絶縁基板上に絶縁膜をパターニングする工程と、前記絶縁基板上の絶縁膜がパターニングされた面において、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とを被覆するように感光性樹脂をパターニングする工程と、前記絶縁基板上の感光性樹脂がパターニングされた面を非細胞接着層で被覆する工程と、前記感光性樹脂上の非細胞接着層を、該非細胞接着層で被覆されている感光性樹脂と共に除去して、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とを露出させて細胞配置部を形成する工程と、を有することを特徴とする微小電極アレイデバイスの製造方法である。
請求項9に記載の発明は、前記細胞配置部と共に、さらに、該細胞配置部同士を連結する所定領域において絶縁膜が露出されてなる細胞連結部を形成するように、前記感光性樹脂をパターニングすることを特徴とする請求項7又は8に記載の微小電極アレイデバイスの製造方法である。
請求項10に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の微小電極アレイデバイスを用いたバイオアッセイ法であって、前記微小電極アレイデバイス上の細胞配置部に計測対象の細胞を配置し、微小電極により該細胞の電位を計測する工程を有することを特徴とするバイオアッセイ法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、細胞群中の細胞について一細胞毎に電位を計測できる。これにより、細胞を非侵襲的に高精度に解析でき、例えば、種々の化学物質を使用したバイオアッセイにも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<微小電極アレイデバイス>
本発明の微小電極アレイデバイス(以下、デバイスと略記することがある)は、細胞電位を計測するための微小電極アレイデバイスであって、絶縁基板上に微小電極と、該微小電極の配線と、前記微小電極を露出させるように該絶縁基板上を被覆する絶縁膜とを備え、前記絶縁膜上の所定領域にはさらに非細胞接着層が設けられると共に、該非細胞接着層が設けられず、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とが露出された絶縁基板上の領域が細胞配置部とされていることを特徴とする。
本発明において計測対象の細胞は、目的に応じて適宜選択でき特に限定されない。そして、培養によって増殖可能なものも好適である。なかでも動物細胞が好ましく、特に好ましいものとして具体的には、神経芽細胞、心筋細胞、肝細胞、脂肪細胞等が例示できる。また、分化可能な細胞、例えば胚性幹細胞(Embryonic Stem cells:ES細胞)や誘導多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell,iPS細胞)を使用しても良い。
【0018】
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態に係るデバイスを例示する図であり、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
絶縁基板11上には、電極12がパターニングされている。電極12は、デバイス1と計測器(図示略)との電気的な接点となる第一の接続部12aと、参照電極13又は細胞計測用の微小電極と前記第一の接続部12aとを電気的に接続する第二の接続部12bとからなる。微小電極は、後記するように微小電極配置部14中に複数個が配置されている。
そして、前記電極12の第二の接続部12bを被覆するように、絶縁基板11上には、絶縁膜15が設けられ、さらに該絶縁膜15上において、前記参照電極13及び微小電極配置部14を包囲するように、隔壁16が立設されている。
【0019】
絶縁基板11の材質は、公知のものから適宜選択すれば良い。なかでも透明なものが好ましく、具体的には、ガラス、樹脂等が例示でき、ガラスが特に好ましい。
絶縁基板11の厚さ及び上面の大きさは、目的に応じて適宜選定すれば良い。例えば厚さであれば、通常、0.1〜10mmであることが好ましく、0.3〜1.5mmであることがより好ましい。このような範囲であれば、絶縁基板11の加工性やデバイス1の使用性に特に優れたものとなる。
【0020】
電極12の材質も、公知のものから適宜選択すれば良い。例えば、電極に通常使用される材質として、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、白金(Pt)、白金黒(PT−C)が例示できる。ただし本発明においては、光透過性を有する材質が好ましい。ここで「光透過性を有する」とは、「少なくとも可視光に対して透過性を有する」ことを指し、透明ガラスや二酸化ケイ素(SiO2)と同等の透明度であることが好ましい。光透過性を有する材質からなる電極を使用することで、顕微鏡等を使用して計測対象の細胞を光学的に解析する際に、効果的にノイズを低減でき、より高感度に解析できる。特に、顕微鏡観察下でレーザを照射し、通常光ピンセットと呼ばれる技術を適用したり、細胞に光刺激を与えて解析するのに好適である。このような好ましい材質として具体的には、スズドープ酸化インジウム(以下、ITOと略記する)、銀ドープITO、酸化インジウム・酸化亜鉛、酸化インジウム・酸化チタン、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、カドミウムドープ酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、ニオブドープ酸化チタンが例示できる。
また、電極12の屈折率は、透明ガラスや二酸化ケイ素(SiO2)と同等であることが好ましく、1.4〜1.6であることが好ましい。電極12がこのような好ましい物性を有することで、細胞をより高感度に光学的に解析できる。
【0021】
電極12のうち第一の接続部12aは帯状であり、計測器との接続部である。その幅はデバイスの大きさを考慮して設定することが好ましく、通常は、0.1〜2.0mmであることが好ましい。また、第二の接続部12bは屈曲部を有し、微小電極配置部14へ向けて幅が減じる部位を有する帯状である。その幅は特に限定されないが、通常は、第一の接続部12aの幅以下であることが好ましい。
ここでは、第一の接続部12a及び第二の接続部12bとして帯状のものを例示しているが、これに限定されず他の形状でも良い。ただし、細長形状であることが好ましい。
また、電極12は、後記する微小電極と同様の厚さであることが好ましい。
【0022】
参照電極13は、電極12と同様の材質からなるもので良い。
そして、参照電極13は、略正方形状であり、後記する微小電極よりも十分大きいことが好ましく、通常は、1.0×10−8〜1.0×10−6m2であることが好ましく、1.0×10−8〜2.5×10−7m2であることがより好ましい。
ここでは、参照電極13として略正方形状のものを例示しているが、これに限定されず他の形状でも良い。
また、参照電極13は、後記する微小電極と同様の厚さであることが好ましい。
ここでは、参照電極を四つ有する例を示しているが、参照電極の数は微小電極の数等に応じて適宜調整すれば良い。
【0023】
絶縁膜15の材質は、公知のものから適宜選択すれば良い。好ましいものとしては、各種樹脂類及び酸化ケイ素が例示できる。前記樹脂として好ましいものとしては、フォトレジスト等の感光性樹脂が例示できる。
絶縁膜15の上面の大きさは、絶縁基板11の大きさに応じて適宜設定すれば良い。絶縁膜15の厚さは、電気的に確実に絶縁できるだけでなく、細胞配置部に配置された細胞にストレスを与えない厚さ、具体的には、細胞の高さに対して同等以下の厚さであることが好ましい。このような観点から、絶縁膜15の厚さは、0.1〜30μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。
【0024】
隔壁16は、後記するように、デバイス1の参照電極13及び微小電極配置部14を含む所定領域上に細胞培養液を保持するためのものである。保持した細胞培養液を供給することで、計測対象の細胞を生存させることができる。細胞培養液は、計測対象の細胞の種類に応じて適宜選択すれば良い。
隔壁16は、平面視にて中空部が略正方形の角筒状である。
また、隔壁16の材質は、保持した細胞培養液に対して安定なものが好ましく、電極12の場合と同様の理由により、光透過性を有する材質が好ましい。特に好ましいものとしてガラスが例示できる。
隔壁16で包囲される包囲面の大きさは、参照電極13及び微小電極配置部14の配置形態によって、適宜調整することが好ましい。隔壁16の高さは、保持する細胞培養液の液量に応じて適宜調整すれば良く、特に限定されない。
隔壁16は、ここに例示するように、絶縁基板11と同心状に配置されていることが好ましい。
隔壁16は、ここでは角筒状のものを例示しているが、これに限定されず、丸筒状等他の形状でも良く、適宜選択できる。
【0025】
微小電極配置部14は、計測対象の細胞を配置する細胞配置部及び配置した細胞の電位を計測する微小電極を備える。微小電極配置部14は、デバイス1の電極12が設けられている面上に配置されており、ここに例示するように、絶縁基板11と同心状に配置されていることが好ましい。
【0026】
図2は、微小電極配置部14を拡大して例示する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の一部をさらに拡大して例示する平面図である。
微小電極配置部14においては、略正方形状である複数個の微小電極17が配置されている。そして、これら複数個の微小電極17が露出するように、絶縁基板11上には絶縁膜15が被覆されている。さらに絶縁膜15上には、露出された前記微小電極17と、該微小電極17近傍でこれを包囲する所定領域とからなる略円形状領域、及びこれら略円形状領域を連結する帯状領域からなる非積層領域10を除いて、非細胞接着層19が設けられている。前記略円形状領域は、計測対象の細胞を配置する細胞配置部10aであり、微小電極17及び絶縁膜15が露出されている。また、隣接する細胞配置部10a同士を連結する帯状領域は、配置された細胞同士を連結させる細胞連結部10bであり、絶縁膜15が露出されている。
【0027】
非細胞接着層19は、非細胞接着性を有する物質(以下、非接着性物質と略記する)を含み、その露出面(以下、非接着面と略記する)において、培養時及び非培養時のいずれにおいても細胞の接着を阻害するものである。そして、非細胞接着層19は、非接着性物質の前駆体を前記絶縁膜上に結合させることで形成できる。すなわち、非接着性物質の前駆体とは、絶縁膜への結合能を有する官能基を含む物質である。
非細胞接着層19として、具体的には、撥液性を有するものが例示できる。ここで言う「撥液」とは、「撥水」又は「撥油」を指す。
【0028】
前記非接着面は、水の接触角が100°以上である撥水性を有することが好ましく、ヘキサデカンの接触角が30°以上である撥油性を有することが好ましい。撥水性及び撥油性の大きさは、非接着性物質の前駆体の種類により調整できる。
このように、非接着面が撥液性を有することにより、非接着面においては生体物質の吸着が抑制されるので、細胞が吸着する際の足場が形成されない。その結果、計測対象の細胞がデバイス1中の細胞配置部10aに選択的に吸着され、固定される。
【0029】
また、非細胞接着層19は、電極12の場合と同様の理由により、光透過性を有するものが好ましい。非細胞接着層19を光透過性とするためには、非接着性物質等の含有成分を、光透過性を有するものとすれば良い。
【0030】
なかでも非細胞接着層19としては、撥液性及び光透過性を有する材質からなるものが好ましい。
そして、このような非細胞接着層19として、より具体的には、前記非接着性物質として撥液性及び光透過性を有するフッ素含有化合物を含むものが例示できる。
【0031】
前記フッ素含有化合物の前駆体としては、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を分子の一端に有する化合物が好ましく、より好ましいものとして、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物(以下、それぞれ化合物(1)、化合物(2)と略記する)が例示できる。
【0032】
【化5】
【0033】
(式中、R1は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し;R1’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表し;R2は下記式(11)〜(16)で表される基のいずれかであり、複数のR2は互いに同一でも異なっていても良く;Yは式「−NH−C(=O)−」で表される基又はカルボニル基であり、複数のYは互いに同一でも異なっていても良く;Zは、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていても良いアルキル基又はアルキルオキシアルキル基に、一つの水素原子が置換されたエチレンオキシ基であり、複数のZは互いに同一でも異なっていても良く;j及びkはそれぞれ独立して0又は1であり、複数のj又はkは互いに同一でも異なっていても良く;l及びmはそれぞれ独立して0以上の整数であり、複数のl又はmは互いに同一でも異なっていても良く;lが2以上の整数である場合にはl個のZは互いに同一でも異なっていても良い。)
【0034】
【化6】
【0035】
(式中、R3は水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表し;R4は水素原子又は1価の炭化水素基を表し;nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合にはn個のR3は互いに同一でも異なっていても良く;nが1である場合には2個のR4は互いに同一でも異なっていても良い。)
【0036】
R1は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基である。ここで「パーフルオロアルキル基」とは、「アルキル基の水素原子がすべてフッ素原子に置換されたもの」を指す。また、「パーフルオロアルキルエーテル基」とは、「前記パーフルオロアルキル基が酸素原子に結合した一価の基」を指す。
R1における前記アルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシルが例示できる。
R1の炭素数は、3〜12であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。
また、R1は直鎖状であることが好ましく、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0037】
R1’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表す。具体的には、前記R1から一つのフッ素原子を除いた二価の基が例示できる。R1’の炭素数が2以上である場合には、前記R1の「Z」に結合している炭素原子とは反対側の末端の炭素原子に結合しているフッ素原子を一つ除いた二価の基が好ましい。
【0038】
R2は前記式(11)〜(16)で表される基のいずれかである。そして、複数のR2は互いに同一でも異なっていても良く、例えば、化合物(2)における両分子末端のR2は互いに同一でも異なっていても良いし、化合物(1)におけるR2と化合物(2)におけるR2とは互いに同一でも異なっていても良い。
【0039】
R3は水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表す。
R3の水酸基に置換可能な原子としては、好ましいものとしてフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられ、なかでも塩素原子が特に好ましい。
また、水酸基に置換可能な基としては、好ましいものとして、炭素数が1〜6のアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基及びアシルオキシ基が挙げられる。
炭素数が1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基及びヘキシルオキシ基が例示できる。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基及びナフトキシ基が例示できる。
アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基及びフェネチルオキシ基が例示できる。
アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基及びベンゾイルオキシ基が例示できる。
これらのなかでもR3としては、塩素原子、メトキシ基及びエトキシ基がより好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0040】
R4は水素原子又は1価の炭化水素基を表す。
R4の1価の炭化水素基は特に限定されず、鎖状構造及び環状構造のいずれでも良く、飽和及び不飽和のいずれでも良い。鎖状構造の場合には、直鎖状及び分岐鎖状のいずれでも良く、環状構造である場合には、単環構造及び多環構造のいずれでも良い。
なかでも、好ましいものとして、炭素数が1〜6のアルキル基、アリール基及びアラルキル基が挙げられる。
炭素数が1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基が例示できる。
アリール基としては、フェニル基及びナフチル基が例示できる。
アラルキル基としては、ベンジル基及びフェネチル基が例示できる。
これらのなかでもR4としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0041】
Yは式「−NH−C(=O)−」で表される基又はカルボニル基である。すなわち、隣り合うメチレン基及び酸素原子とは、以下のように結合する。
「−(CH2)m−(NH−C(=O))j−(O)k−」
「−(CH2)m−(C(=O))j−(O)k−」
そして、複数のYは互いに同一でも異なっていても良く、例えば、化合物(2)において「R1’」を挟んで対峙しているY同士は互いに同一でも異なっていても良いし、化合物(1)におけるYと化合物(2)におけるYとは互いに同一でも異なっていても良い。
【0042】
Zは、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていても良いアルキル基又はアルキルオキシアルキル基に、一つの水素原子が置換されたエチレンオキシ基である。前記エチレンオキシ基の末端の酸素原子が隣り合うR1に結合する。
前記エチレンオキシ基の置換されていても良い水素原子の数は、一つであることが好ましい。また、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていても良い前記アルキル基又はアルキルオキシアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。そして、炭素数は1〜16であることが好ましい。
そして、複数のZは互いに同一でも異なっていても良く、例えば、化合物(2)において「R1’」を挟んで対峙しているZ同士は互いに同一でも異なっていても良いし、化合物(1)におけるZと化合物(2)におけるZとは互いに同一でも異なっていても良い。
【0043】
j及びkはそれぞれ独立して0又は1であり、0であることが特に好ましい。また、複数のj又はkは互いに同一でも異なっていても良い。例えば、化合物(2)において「R1’」を挟んで対峙しているYにかかるj同士は互いに同一でも異なっていても良いし、化合物(1)におけるYにかかるjと化合物(2)におけるYにかかるjとは互いに同一でも異なっていても良い。kについても同様である。
【0044】
l及びmはそれぞれ独立して0以上の整数である。
そして、lは0であることが特に好ましい。
mは0〜3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。
また、複数のl又はmは互いに同一でも異なっていても良い。例えば、化合物(2)において「R1’」を挟んで対峙しているZにかかるl同士は互いに同一でも異なっていても良いし、化合物(1)におけるZにかかるlと化合物(2)におけるZにかかるlとは互いに同一でも異なっていても良い。mについても同様である。
さらに、lが2以上の整数である場合には、l個のZは互いに同一でも異なっていても良い。
【0045】
nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合には、n個のR3は互いに同一でも異なっていても良く、nが1である場合には、2個のR4は互いに同一でも異なっていても良い。
【0046】
化合物(1)又は(2)としては、より好ましいものとして、下記一般式(3)又は(4)で表されるものが挙げられる。
【0047】
【化7】
【0048】
(式中、R1、R1’、R2、mは前記と同様である。)
【0049】
また、前記一般式(1)又は(2)において、Zが「−(CHR5−CHR6−O)l’−(CHR7−CHR8−O)l’’」で表される化合物も、より好ましいものとして挙げられる。
ここで、R5及びR6の一方は水素原子を表し、他方はメチル基の一つの水素原子が、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のフルオロアルキル基又はフルオロアルキルエーテル基に置換された基を表す。ここで「フルオロアルキルエーテル基」とは、「前記炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のフルオロアルキル基が酸素原子に結合した一価の基」を指す。
また、R7及びR8の一方は水素原子を表し、他方は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はアルキルエーテル基を表す。ここで「アルキルエーテル基」とは、「前記炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が酸素原子に結合した一価の基」を指す。
【0050】
l’は、2以上の整数であり、2〜20であることが好ましく、5〜10であることがより好ましい。
l’’は、0以上の整数であり、0〜20であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0051】
R5及びR6における、メチル基の一つの水素原子が置換された前記フルオロアルキル基としては、CF3−、CHF2−、CClF2−、C2F5−、CHF2CF2−、CClF2CF2−、(CF3)2CF−、CF3CF2CF2−、(CHF2)2CF−、(CF3)(CHF2)CF−、(CF3)2CFCF2CF2−、(CF3)2CF(CF2CF2)2−、CF3(CF2)3−、CF3(CF2)5−、CF3(CF2)7−、CF3(CF2)9−、CF3(CF2)11−、CF3(CF2)13−、CF3(CF2)15−が例示できる。
そしてR5及びR6における、メチル基の一つの水素原子が置換された前記フルオロアルキルエーテル基としては、これらフルオロアルキル基が酸素原子に結合した一価の基が例示できる。
【0052】
R7及びR8における前記アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシルが例示できる。
そしてR7及びR8における前記アルキルエーテル基としては、これらアルキル基が酸素原子に結合した一価の基が例示できる。
【0053】
非細胞接着層19は、上記のように、非接着性物質の前駆体を前記絶縁膜15上に結合させることで形成できる。非接着性物質の前駆体としては、市販品を使用しても良い。
例えば、絶縁膜15が水酸基を有する場合には、前記化合物(1)又は(2)として、R2が前記式(11)、(12)又は(16)等で表される基を有するものを使用することが好ましい。
なかでも、前記式(16)等で表される有機シリル基を有する化合物(1)又は(2)は、市販品の入手が容易であり好適である。このような市販品としては、例えば、サイトップシリーズ(商標、旭硝子株式会社製)、メガファック(商標、大日本インキ化学工業株式会社製)、ディックガード(商標、大日本インキ化学工業株式会社製)、FPX−30G(商標、JSR株式会社製)、ノベックEGC−1720(商標、住友スリーエム株式会社製)、Patinalシリーズ(substance WR1,WR2,WR3)(商標、メルク株式会社製)、オプツールDSX(商標、ダイキン工業株式会社製)が例示できる。
【0054】
また、R2が前記式(11)、(12)及び(16)以外の基、例えば、前記式(13)、(14)又は(15)等で表される基を有するものである場合には、これらの基と反応可能な官能基を有するように絶縁膜を処理しても良い。
例えば、Chembiochem,2,686−694(2001)(Benters R. Et al.)に記載の方法によれば、R2として前記式(14)で表される基(すなわち、アミノ基)を有する化合物(1)又は(2)を、絶縁膜に結合させることができる。
また、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン等のアミノ基を有する有機シラン化合物を絶縁膜表面に結合させておけば、R2として前記式(13)で表される基(すなわち、カルボキシル基)又は前記式(15)で表される基(すなわち、エポキシ基)を有する化合物(1)あるいは(2)を、絶縁膜に結合させることができる。前記有機シラン化合物は、入手も容易である。
【0055】
非細胞接着層19において、非接着性物質は、少なくとも分子の一部、好ましくは分子の一端が絶縁膜15上の特定の原子や官能基と結合している一方、撥液性を有する部位がデバイス1の外側へ向けて露出するように配向すると推測される。例えば、非接着性物質の前駆体として前記化合物(1)を使用した場合には、そのR2が絶縁膜と結合する一方、R1がデバイス1の外側へ向けて露出するように配向する。また、前記化合物(2)を使用した場合には、その一つ又は二つのR2が絶縁膜と結合する一方、R1’がデバイス1の外側へ向けて露出するように配向すると推測される。
このように、撥液性を有する部位が配向することで、非細胞接着層19は細胞に対する非接着性を発現すると推測される。したがって、前記化合物(1)又は(2)のように、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を有する化合物を使用することで、デバイス1により高い非接着効果を発現させることが可能となる。
【0056】
また、前記化合物(1)又は(2)を使用して形成した非細胞接着層19は、従来のポリテトラフオロエチレンなどを含む層よりも、透明度に優れ、薄い単層薄膜とするのに好適であり、パターニングや除去などの微細加工性に優れる。透明度が優れているので、細胞や細胞に作用する物質を光学的に検出する場合には、ノイズの大幅な低減が可能であり、高感度な解析が可能である。また、微細加工性に優れているので、後記するように絶縁基板11上に微小サイズの細胞配置部10aや細胞連結部10bを多数形成でき、絶縁基板11上の細胞の配置密度を高くできるので、高い効率で解析できる。
【0057】
非細胞接着層19中の非接着性物質は一種でも良いし、二種以上でも良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率等は目的に応じて適宜選択できる。
また、非細胞接着層19は、本発明の効果を妨げない範囲で、非接着性物質以外の如何なる成分を含んでいても良い。
【0058】
非細胞接着層19の厚さは、計測対象の細胞の種類等に応じて適宜調整することが好ましい。通常は、5000nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが特に好ましい。特に、化合物(1)を使用して非接着性物質の単分子膜を形成させ、非細胞接着層19とした場合には、5〜100nmの厚さのものが好適に得られる。
上記範囲の厚さであれば、非細胞接着層19は加工性にも優れる。
【0059】
細胞配置部10aは、いずれも直径Dの略円形状である。そして、絶縁基板11上において、互いに直交する二方向に等間隔で合計16個の細胞配置部10aが配置されており、細胞配置部10a一つあたり一つの微小電極17が配置されている。
一方、細胞連結部10bは、いずれも幅がWの帯状である。各細胞連結部は、連結対象である各細胞配置部を最短距離で連結するように配置されるのが好ましく、図2においては、連結される細胞配置部の略中心部を結ぶ線に重なるように細胞連結部10bが配置されている。連結距離Sは、連結される細胞配置部10a同士の中心間距離に相当する。
すなわち、細胞配置部10aは頂点を、細胞連結部10bは辺をそれぞれ構成するように升目状に配置されている。
【0060】
細胞配置部10aの面積は、配置する細胞の種類や数、その他目的に応じて適宜調整すれば良い。例えば、配置する細胞数が細胞配置部一つにつき一つである場合には、細胞配置部の面積は通常、2.0×10−11〜4.0×10−8m2であることが好ましく、1.8×10−10〜2.3×10−8m2であることがより好ましい。このような好ましい面積とするためには、細胞配置部10aの直径Dをこの面積に対応するように調整すれば良く、好ましくは5〜225μm、より好ましくは15〜150μmとすると良い。直径Dが小さいほど、基板1上の接着面131の数を増やせる点で好ましい。
細胞連結部10bの幅W及び連結距離Sも、配置する細胞の種類や数、その他目的に応じて適宜調整すれば良い。上記と同様に、配置する細胞数が細胞配置部10a一つにつき一つである場合には、通常、幅Wは、30μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。連結距離Sは、細胞によって異なるが、通常は直径Dに応じて調整することが好ましく、D+5〜D+350μmであることが好ましく、D+20〜D+250μmであることがより好ましい。
【0061】
ここでは、微小電極配置部14に16個の細胞配置部10aが配置された例を示しているが、細胞配置部の数は、絶縁基板の大きさや、計測に供する細胞の数等を考慮して、適宜調整すれば良い。そして、細胞配置部の数が多いほど、デバイスを多様な解析に使用できる点で好ましい。
また、細胞配置部として略円形状のものを例示しているが、これに限定されず、多角形状等、他の形状でも良い。
そして、細胞配置部の形状や大きさは、ここに示すように、必ずしもすべて同じである必要性はないが、同じである方がデバイスの作製が容易である点で好ましい。
また、ここでは絶縁基板上において、細胞配置部が互いに直交する二方向に等間隔で配置された例を示しているが、配置方向及び間隔はこれに限定されず、目的に応じて適宜選択できる。
【0062】
ここでは、細胞連結部として帯状のものを例示しているが、これに限定されず他の形状でも良い。ただし、細長形状のものが好ましい。
また、細胞連結部の数も、細胞配置部の数や、目的に応じて適宜調整すれば良い。
そして、細胞連結部の形状や大きさは、ここに示すように、必ずしもすべて同じである必要性はないが、同じである方がデバイスの作製が容易である点で好ましい。
また、ここでは、細胞配置部は頂点を、細胞連結部は辺をそれぞれ構成するように升目状に配置された例を示しているが、例えば、細胞連結部は升目の辺だけでなく対角線に重なるように配置されていても良く、対角線のみに重なるように配置されていても良いし、これらのいずれでなくても良い。
【0063】
微小電極17の材質は、公知のものから適宜選択すれば良く、前記電極12と同様のものが例示できる。そして、前記電極12の場合と同様の理由により、光透過性を有する材質が好ましい。
微小電極17の大きさは、計測対象の細胞の種類に応じて適宜調整することが好ましいが、通常は、電極面の面積が1.0×10−11〜5.0×10−9m2であることが好ましく、3.0×10−11〜2.0×10−9m2であることがより好ましい。微小電極17の厚さは、50〜1000nmであることが好ましく、100〜400nmであることがより好ましい。
【0064】
ここでは、微小電極配置部14に16個の微小電極17が配置された例を示しているが、微小電極の数は、計測に供する細胞の数等を考慮して、適宜調整すれば良い。例えば、微小電極配置部に微小電極が一つだけ設けられたものでも、細胞電位を計測できるが、微小電極が複数個設けられたものであれば、複数個の細胞の電位を同時に計測でき、例えば、細胞群ネットワークにおける特定細胞の機能や、細胞間の相互作用等、種々の解析が可能となる。
また、ここでは、細胞配置部10a一つあたり一つの微小電極17が配置された例を示しているが、細胞配置部一つ当たりに配置される微小電極の数は複数でも良い。複数配置した場合には、例えば、一細胞あたり複数箇所(例えば、核近傍とそれ以外の部位)の電位を計測して比較することにより、イオンを選択的に細胞内外に透過させるイオンチャネル分子の分布に関する情報が得られるなど、一層高度な解析が可能となる。
また、必ずしもすべての細胞配置部に微小電極が配置されていなくても良く、目的に応じて、適宜選択すれば良い。微小電極が配置されていない細胞配置部を併設した場合には、例えば、細胞電位が変化しない異種細胞を併用した解析や、微小電極の総数を削減したことによる解析装置の負荷軽減に好適である。
【0065】
一方、微小電極17として、ここでは略正方形状のものを例示しているが、これに限定されず、その他の多角形状、円形状等、他の形状でも良い。
そして、微小電極の形状は、ここに示すように、必ずしもすべて同じである必要性はないが、同じである方がデバイスの作製が容易である点で好ましい。
微小電極17は、必ずしも露出された絶縁膜15で包囲されていなくても良く、例えば、周縁部の一部が非細胞接着層19に接していても良い。ただし、細胞を細胞配置部により安定して配置できることから、微小電極17は露出された絶縁膜15で包囲されていることが好ましい。そして、ここに例示するように、微小電極17は細胞配置部10aと同心状に配置されていることが好ましい。
【0066】
図3は、図2(a)のIII−III線における縦断面図である。
配線18は帯状であり、前記電極12のうちの第二の接続部12bと微小電極17とを電気的に接続するものである。したがって通常は、電極12、配線18及び微小電極17は同数となる。このような構成により、微小電極17は、デバイス1が接続される外部の計測器(図示略)と電気的に接続される。
配線18は、後記するデバイスの製造方法における説明のように、微小電極17と同時に形成することを考慮すると、微小電極17と同じ厚さとすることが好ましい。
配線18の幅は、微小電極17の大きさ等を考慮して適宜調整すれば良いが、通常は、2〜70μmであることが好ましく、3〜20μmであることがより好ましい。
ここでは、配線として帯状のものを例示しているが、これに限定されず他の形状でも良い。ただし、細長形状のものが好ましい。
【0067】
計測対象の細胞は、微小電極17に接触するようにして細胞配置部10aに配置する。この時、細胞配置部10a、すなわち絶縁基板11上の微小電極17が露出された凹部内に、細胞全体が収容されるようにしても良いし、細胞の一部分が前記凹部内に収容されていなくても良い。細胞全体が前記凹部内に収容されていなくても、細胞全体は、細胞配置部10aを包囲する非細胞接着層19により配置位置が固定されるからである。
【0068】
本発明においては、非細胞接着層19及び微小電極17の少なくとも一方が光透過性を有するものが好ましく、非細胞接着層19及び微小電極17が共に光透過性を有するものがより好ましい。
【0069】
ここまでは、デバイスとして、微小電極の配線がすべて絶縁膜で被覆されているものを例示しているが、例えば、配線の一部が絶縁膜で被覆されずに露出されているものでも良い。ただし、配線の劣化を抑制するために、配線の露出部は少ないほど好ましい。
【0070】
本発明においては、必ずしも細胞連結部が設けられていなくても良いが、ここで例示するように細胞連結部が設けられていることにより、細胞同士が連結部で互いに容易に結合し、細胞間でネットワークを構築して細胞群を形成するようになる。その結果、細胞群中の細胞について一細胞毎に電位を計測でき、高精度に細胞の機能を解析できる。また、細胞間の相互作用、細胞と化学物質との相互作用等に関する高精度な情報を取得できる。
【0071】
(第二の実施形態)
図4は、本発明の第二の実施形態に係るデバイスを例示する平面図である。
ここに例示するデバイス2は、細胞配置部及び隔壁の形態が第一の実施形態と異なっており、第一の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0072】
デバイス2においては、微小電極配置部24中の微小電極の配置形態に応じて、絶縁基板11上にパターニングされている電極12及び参照電極13の数が、第一の実施形態と異なっている。
また、隔壁26は、平面視にて中空部が略円形の丸筒状であり、その他の点では、第一の実施形態における隔壁16と同様である。
【0073】
図5は、微小電極配置部24を拡大して例示する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の平面図の一部をさらに拡大して例示する平面図である。
微小電極配置部24においては、略円形状である複数個の微小電極27が配置されている。微小電極27は、形状が異なる点以外は、第一の実施形態における微小電極17と同様である。
そして、これら複数個の微小電極27が露出するように、絶縁基板11上には絶縁膜15が被覆されている。さらに、露出された前記微小電極27と、該微小電極27近傍でこれを包囲する所定領域とからなる略円形状の細胞配置部20a、及びこれら細胞配置部20aを連結する帯状の細胞連結部20bからなる非積層領域20を除いて、絶縁膜15上には、非細胞接着層19が設けられている。
【0074】
図6は、図5(a)のIV−IV線における縦断面図である。
配線28は、前記電極12のうちの第二の接続部12bと微小電極27とを電気的に接続するものである。したがって通常は、電極12、配線28及び微小電極27は同数となる。このような構成により、微小電極27は、デバイス1が接続される外部の計測器(図示略)と電気的に接続される。
配線28は、微小電極27の配置形態に応じて数が異なる点以外は、第一の実施形態における配線18と同様である。
【0075】
細胞配置部20aは、いずれも直径D’の略円形状である。そして、絶縁基板11上において、互いに直交する二方向に等間隔で合計10個の細胞配置部20aが配置されており、細胞配置部20a一つあたりの微小電極27の配置数は、0又は1である。
一方、細胞連結部20bは、いずれも幅がW’の帯状である。各細胞連結部は、連結対象である各細胞配置部を最短距離で連結するように配置されるのが好ましく、図5においては、連結される細胞配置部の略中心部を結ぶ線に重なるように細胞連結部20bが配置されている。連結距離S’は、連結される細胞配置部20a同士の中心間距離に相当する。
細胞配置部20aの面積は、第一の実施形態における細胞配置部10aと同様である。そして、D’、W’及びS’の大きさも、第一の実施形態におけるD、W及びSと同様である。
【0076】
本発明のデバイスは、微小電極配置部において、細胞配置部及び細胞連結部以外は非細胞接着層で被覆されているので、計測対象の細胞をアプライした時に、細胞が細胞配置部以外の領域に付着しても容易に除去できる。そして、細胞配置部に細胞を安定して保持できる。
また、特に前記化合物(1)又は(2)を使用して形成した非細胞接着層は、薄い単層薄膜とするのに好適であり、微細加工性に優れ、細胞配置部及び細胞連結部を従来よりも高精細且つ高精度に形成でき、しかも加工精度が損なわれることが無い。したがって、細胞の配置密度を高くできるので、高い効率で計測できる。さらに、透明度に優れ、細胞や細胞に作用する物質を光学的に検出する場合には、ノイズの大幅な低減が可能である。したがって、解析時のS/N比が従来よりも大幅に向上するので、より高精度に解析できる。
【0077】
本発明のデバイスを使用することで、細胞群中の細胞について一細胞毎にその機能を高精度に解析でき、その機能を利用する種々の解析や物質生産等も高い効率で行うことができる。一例を挙げれば、異種細胞間のコミュニティーエフェクトを利用して、種々の環境下で細胞が受ける影響を客観的に解析できる。より具体的には、例えば、種々の化学物質を使用してバイオアッセイを行うこともでき、毒性検査試験等にも応用できる。これにより、例えば、医薬品や化学物質の投与が生体に及ぼす影響を、従来は体調の良・不良という主観的な表現で評価していたのに対し、具体的な数値比較により評価できるようになる。
そして、これら解析や物質生産を行う場合には、本発明のデバイスを使用すること以外は、従来のバイオチップやデバイス等を使用する場合と同様の方法を適用すれば良い。
【0078】
<微小電極アレイデバイスの製造方法>
上記本発明のデバイスは、以下のように製造できる。
(製造方法1)
図7〜9は、図1〜3に例示する本発明のデバイスの製造工程を例示する図である。以下においては、特に微小電極配置部14を図示しながら説明する。
まず、絶縁基板11の片面全面に、電極12、参照電極13、微小電極17及び配線18の材質となる材料で成膜した後、パターニングすることで、電極12、参照電極13、並びに図7(a)及び(b)に示すように微小電極17及び配線18をそれぞれ形成する。図7(a)は微小電極配置部14の平面図、(b)は(a)のI−I線における縦断面図である。成膜方法は公知の方法から適宜選択すれば良いが、スパッタリングが好ましい。成膜後のパターニング方法も公知の方法から適宜選択すれば良いが、ウェットエッチング又はリフトオフ加工が好ましい。
【0079】
次いで、電極12のうちの第二の接続部12b、参照電極13、微小電極17及び配線18が形成された絶縁基板11上の所定領域に、前記参照電極13、並びに図8(a)及び(b)に示すように微小電極17がそれぞれ露出するように、絶縁膜15をパターニングする。図8(a)は微小電極配置部14の平面図、(b)は(a)のII−II線における縦断面図である。絶縁膜15のパターニング方法は、絶縁膜15の材質に応じて公知の方法から適宜選択すれば良い。例えば、絶縁膜として感光性樹脂を使用する場合には、フォトリソグラフィーによりパターニングすれば良い。また、絶縁膜として酸化ケイ素膜を使用する場合には、プラズマCVD法等により酸化ケイ素膜を成膜した後、該酸化ケイ素膜上にフォトレジスト等の感光性樹脂を積層させ、これをフォトリソグラフィーによりパターニングした後、パターニングされた感光性樹脂をマスクとしてエッチングを行うことで、参照電極13及び微小電極17が露出するように酸化ケイ素膜をパターニングすれば良い。この時のエッチングはウェットエッチングが好ましい。
【0080】
次いで、絶縁基板11上の絶縁膜15がパターニングされた面、具体的には、絶縁膜15、参照電極13及び微小電極17を、非接着性物質の前駆体で被覆し、非細胞接着層19を形成する。この時の被覆方法としては、ディップ塗布法、真空蒸着法、CVD(化学気相蒸着)法、プラズマ重合法が例示できる。例えば、ディップ塗布法の場合は、非接着性物質の前駆体を含有する被覆処理溶液を調製し、これを塗布して、塗布後は乾燥により前記処理溶液中の溶媒成分を除去することが好ましい。非細胞接着層19の厚さは、前記前駆体の分子の大きさや使用量で調整できる。
【0081】
次いで、非細胞接着層19が形成された絶縁基板11を洗浄し、乾燥させると良い。洗浄は、メタノールやエタノール等のアルコールを使用しても良いし、被覆処理溶液がフッ素系溶媒を含有する場合には、フッ素系溶媒を使用しても良い。
【0082】
次いで、非細胞接着層19上の、参照電極13、細胞配置部10a及び細胞連結部10bに相当する領域以外の領域をフォトリソグラフィーにより感光性樹脂で被覆し、該樹脂をマスクとして非細胞接着層19をエッチングする。この時のエッチング方法は如何なる方法でも良いが、ドライエッチングが好ましく、より具体的には、酸素、アルゴン及び塩素からなる群から選択される一種のガスから生成されるプラズマを用いたエッチングが好ましい。また、紫外光又はオゾン照射でエッチングしても良い。
エッチングにより、感光性樹脂でマスクされていない非細胞接着層19が除去されて、非細胞接着層19がパターニングされる。その結果、参照電極13及び微小電極17が露出され、細胞配置部10a及び細胞連結部10bに相当する領域では、絶縁膜15が露出される。
【0083】
次いで、絶縁基板11上に残っている感光性樹脂をすべて除去することで、参照電極13が露出し、図9(a)及び(b)に示すように、微小電極配置部14に非細胞接着層19がパターニングされ、細胞配置部10a及び細胞連結部10bが形成された絶縁基板11が得られる。図9(a)は微小電極配置部14の平面図、(b)は(a)のIII−III線における縦断面図である。
【0084】
次いで、絶縁膜15上の所定領域に、参照電極13及び微小電極配置部14を包囲するように、隔壁16を固定することで、デバイス1が得られる。隔壁16は、接着剤を使用して固定するのが好ましい。接着剤は、絶縁膜15及び隔壁16の材質に応じて、公知のものから適宜選択すれば良い。
【0085】
(製造方法2)
本発明のデバイスは、以下の方法でも製造できる。
前記製造方法1と同様の方法で、参照電極13、並びに図8(a)及び(b)に示すように微小電極17がそれぞれ露出するように、絶縁基板11上の所定領域に絶縁膜15をパターニングする。
次いで、絶縁基板11上の絶縁膜15がパターニングされた面において、参照電極13、微小電極17、微小電極17近傍でこれを包囲する領域の絶縁膜15、前記微小電極17を包囲する領域同士を連結する所定領域の絶縁膜15を、それぞれフォトリソグラフィーにより感光性樹脂9で被覆してパターニングする。ここで、「微小電極17近傍でこれを包囲する領域」とは、細胞配置部10aに相当する領域であり、「微小電極17を包囲する領域同士を連結する所定領域」とは、細胞連結部10bに相当する領域である。
次いで、絶縁基板11上の感光性樹脂9がパターニングされた面、具体的には、被覆した感光性樹脂9及び絶縁膜15を非接着性物質の前駆体で被覆し、図10(a)及び(b)に示すように、非細胞接着層19を形成する。図10(a)は微小電極配置部14の平面図、(b)は(a)のV−V線における縦断面図である。非接着性物質の前駆体の被覆方法は、製造方法1と同様で良い。
次いで、感光性樹脂9上の非細胞接着層19を、該非細胞接着層19で被覆されている感光性樹脂9と共に除去する。これにより、参照電極13及び微小電極17が露出され、細胞配置部10a及び細胞連結部10bに相当する領域では、絶縁膜15が露出される。その結果、製造方法1の場合と同様に、図9(a)及び(b)に示すように、微小電極配置部14に非細胞接着層19がパターニングされた絶縁基板11が得られる。
次いで、製造方法1と同様の方法で、絶縁膜15上の所定領域に、参照電極13及び微小電極配置部14を包囲するように、隔壁16を固定することで、デバイス1が得られる。
【0086】
ここでは、図1〜3に例示する、本発明の第一の実施形態に係るデバイス1の製造方法について説明したが、例えば、図4〜6に例示するデバイス2等、他の実施形態に係るデバイスも、同様に製造できることは言うまでもない。例えば、細胞配置部及び/又は細胞連結部を異なる形状で形成したい場合には、非細胞接着層の除去に使用する前記感光性樹脂を所望のものとなるようにパターニングすれば良い。そして、細胞連結部が不要である場合には、参照電極が露出され、且つ細胞配置部だけが形成されるように、前記感光性樹脂をパターニングすれば良い。
【実施例】
【0087】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
前記製造方法1により、図1〜3に例示するデバイスを作製した。
すなわち、パイレックス(登録商標)(コード7059、コーニングインターナショナル株式会社製)のガラス基板(厚さ;0.5mm)の片面全面に、ITOを厚さが200nmとなるようにスパッタリングにより成膜し、さらにウェットエッチングによりパターニングすることで、電極、参照電極、微小電極及び配線を形成した。
電極のうち第一の接続部は幅が0.8mmの帯状とし、第二の接続部は幅が0.8〜0.01mmの範囲で減じる帯状とした。また、参照電極は一辺が0.2mmの正方形状とした。さらに、微小電極は一辺が10μmの正方形状とし、配線は幅が7.5μmの帯状とした。
次いで、ガラス基板上の所定領域に、絶縁膜としてフォトレジストを厚さが1.2μmとなるようにフォトリソグラフィーによりパターニングし、該パターニング面、参照電極及び微小電極に、オプツールDSX(商標、ダイキン工業株式会社製)をディップ塗布した。そして、一晩乾燥させた後、100℃で1時間加熱し、フッ素系溶媒であるノベックHFE(商標、住友スリーエム株式会社製)を使用して洗浄することで、非細胞接着層を形成した。
次いで、非細胞接着層上の所定領域をフォトリソグラフィーによりフォトレジストで被覆し、該樹脂をマスクとして非細胞接着層を酸素プラズマで5分間エッチングして、非細胞接着層をパターニングした。
次いで、絶縁基板上のフォトレジストをすべて除去することで、細胞配置部及び細胞連結部を形成した。細胞配置部の直径Dは25μm、細胞連結部の幅Wは1μm、連結距離Sは50μmであった。なお、非細胞接着層の厚さは12nmであった。
次いで、厚さが0.7mmのガラス板からなり、高さが2.0mmであり、平面視にて中空部が一辺2.5mmの正方形である角筒状の隔壁を、絶縁膜上の所定領域に接着して固定することで、本発明のデバイスを得た。
【0088】
このデバイスを使用して、下記手順にしたがって、ラット心筋細胞の活動電位を計測した。
まず、濃度が0.3mg/mLとなるようにCell Matrix Type III(新田ゼラチン社製)をpH3の希塩酸水溶液に溶解させて得たコラーゲン溶液を、培養液として隔壁内にアプライし、10分間静置後、pH3の希塩酸水溶液で洗浄した。
次いで、コラーゲン溶液をアプライした隔壁内に、ラット心筋初代培養細胞(北海道システム・サイエンス株式会社製)をアプライし、赤外レーザによる光ピンセットを使用して、細胞配置部に前記細胞を一つずつ配置して吸着させた。
微小電極及び非細胞接着層が共に透明なので、細胞配置部が明りょうに視認でき、その結果、前記細胞を非細胞接着層上に配置することなく、容易に細胞配置部に配置できた。さらに図11に示すように、前記細胞同士が連結部で互いに結合し、拍動が同期する様子を確認できた。図11は、この時の微小電極配置部14を模式的に示す平面図であり、符号110が配置された細胞である。また、図12は、この時の配置された一つの細胞の活動電位の測定結果である。図12中、横軸は時間を、縦軸は電位(V)を示す。図12(a)に示すように、培養液中での前記細胞の拍動に伴う電位変化が、0.44秒ごとに確認された。次に、心筋の拍動を速くする薬理効果を有することが知られているエピネフリンを隔壁内の培養液中へ添加したところ、図12(b)に示すように、電位変化が0.20秒ごとに見られるようになり、心筋の拍動が速くなっていることが確かに確認された。
以上により、細胞の活動電位を単一細胞ごとに高精度に計測できることが確認された。
【0089】
(実施例2)
オプツールDSX(商標、ダイキン工業株式会社製)の代わりに、濃度が0.02mol/LであるCF3−(CF2)7−(CH2)2−SiCl3のノベックHFE(商標、住友スリーエム株式会社製)溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でデバイスを得た。
得られたデバイスを使用して、実施例1と同様の方法でラット心筋初代培養細胞の活動電位を計測したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
【0090】
(実施例3)
前記製造方法2により、図4〜6に例示するデバイスを作製した。
すなわち、パイレックス(登録商標)(コード7059、コーニングインターナショナル株式会社製)のガラス基板(厚さ;0.5mm)の片面全面に、クロム薄膜をスパッタリングによって100nmの厚さで成膜し、該クロム薄膜上にさらに、プラチナ薄膜をスパッタリングによって200nmの厚さで成膜して、リフトオフ加工によりパターニングすることで、電極、参照電極、微小電極及び配線を形成した。
電極のうち第一の接続部は幅が1mmの帯状とし、第二の接続部は幅が1〜0.015mmの範囲で減じる帯状とした。また、参照電極は一辺が0.3mmの正方形状とした。さらに、微小電極は一辺が30μmの正方形状とし、配線は幅が15μmの帯状とした。
次いで、得られた絶縁基板上にプラズマCVD法により、テトラエトキシシランを蒸着源として二酸化ケイ素膜を500nmの厚さで成膜し、該二酸化ケイ素膜上にフォトリソグラフィーによりフォトレジストをパターニングした後、これをマスクとしてフッ化水素酸によりウェットエッチングを行うことで、参照電極及び微小電極が露出するように酸化ケイ素膜をパターニングした。
次いで、絶縁基板上の所定領域をフォトリソグラフィーによりフォトレジストで被覆し、さらに、被覆したフォトレジスト及び絶縁膜上に、WR1 Partinal(商品名、メルク株式会社製)を蒸着源とした真空蒸着法にて、非接着性物質の前駆体を被覆させ、非細胞接着層を形成した。この時、蒸着源の温度は360℃から450℃とし、10−3Paの真空度で30秒間蒸着した。
次いで、フォトレジスト上の非細胞接着層を、該非細胞接着層で被覆されているフォトレジストと共にアセトンを使用して除去することで、細胞配置部及び細胞連結部を形成した。細胞配置部の直径D’は30μm、細胞連結部の幅W’は0.75μm、連結距離S’は100μmであった。
次いで、厚さが0.7mmのガラス板からなり、高さが2.5mmであり、平面視にて中空部が直径3mmの円形である丸筒状の隔壁を、絶縁膜上の所定領域に接着して固定することで、本発明のデバイスを得た。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、細胞機能の研究、細胞を用いるバイオアッセイや物質生産などの分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るデバイスを例示する図であり、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係るデバイス上の微小電極配置部を拡大して例示する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の一部をさらに拡大して例示する平面図である。
【図3】図2(a)のIII−III線における縦断面図である。
【図4】本発明の第二の実施形態に係るデバイスを例示する平面図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係るデバイス上の微小電極配置部を拡大して例示する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の一部をさらに拡大して例示する平面図である。
【図6】図5(a)のIV−IV線における縦断面図である。
【図7】本発明の第一の実施形態に係るデバイスの製造工程を例示する図であり、(a)は微小電極配置部の平面図、(b)は(a)のI−I線における縦断面図である。
【図8】本発明の第一の実施形態に係るデバイスの製造工程を例示する図であり、(a)は微小電極配置部の平面図、(b)は(a)のII−II線における縦断面図である。
【図9】本発明の第一の実施形態に係るデバイスの製造工程を例示する図であり、(a)は微小電極配置部の平面図、(b)は(a)のIII−III線における縦断面図である。
【図10】本発明の第一の実施形態に係るデバイスの製造工程の他の例を示す図であり、(a)は微小電極配置部の平面図、(b)は(a)のV−V線における縦断面図である。
【図11】実施例1における微小電極配置部中の細胞の配置状態を模式的に示す平面図である。
【図12】実施例1における細胞の活動電位の測定結果であり、(a)はエピネフリン添加前の測定結果、(b)はエピネフリン添加後の測定結果である。
【符号の説明】
【0093】
1,2・・・微小電極アレイデバイス、11・・・絶縁基板、17,27・・・微小電極、18,28・・・配線、15・・・絶縁膜、19・・・非細胞接着層、10,20・・・非積層領域、10a,20a・・・細胞配置部、10b,20b・・・細胞連結部、9・・・感光性樹脂、14,24・・・微小電極配置部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞電位を計測するための微小電極アレイデバイスであって、
絶縁基板上に微小電極と、該微小電極の配線と、前記微小電極を露出させるように該絶縁基板上を被覆する絶縁膜とを備え、
前記絶縁膜上の所定領域にはさらに非細胞接着層が設けられると共に、該非細胞接着層が設けられず、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とが露出された絶縁基板上の領域が細胞配置部とされていることを特徴とする微小電極アレイデバイス。
【請求項2】
前記微小電極及び/又は非細胞接着層が光透過性を有する材質からなることを特徴とする請求項1に記載の微小電極アレイデバイス。
【請求項3】
複数個の前記細胞配置部が、前記非細胞接着層が設けられず前記絶縁膜が露出されてなる細胞連結部により連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の微小電極アレイデバイス。
【請求項4】
前記非細胞接着層が、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を有する化合物を前記絶縁膜上に結合させて形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の微小電極アレイデバイス。
【請求項5】
前記化合物が、下記一般式(1)又は(2)で表されることを特徴とする請求項4に記載の微小電極アレイデバイス。
【化1】
(式中、R1は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し;R1’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表し;R2は下記式(11)〜(16)で表される基のいずれかであり、複数のR2は互いに同一でも異なっていても良く;Yは式「−NH−C(=O)−」で表される基又はカルボニル基であり、複数のYは互いに同一でも異なっていても良く;Zは、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていても良いアルキル基又はアルキルオキシアルキル基に、一つの水素原子が置換されたエチレンオキシ基であり、複数のZは互いに同一でも異なっていても良く;j及びkはそれぞれ独立して0又は1であり、複数のj又はkは互いに同一でも異なっていても良く;l及びmはそれぞれ独立して0以上の整数であり、複数のl又はmは互いに同一でも異なっていても良く;lが2以上の整数である場合にはl個のZは互いに同一でも異なっていても良い。)
【化2】
(式中、R3は水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表し;R4は水素原子又は1価の炭化水素基を表し;nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合にはn個のR3は互いに同一でも異なっていても良く;nが1である場合には2個のR4は互いに同一でも異なっていても良い。)
【請求項6】
前記一般式(1)又は(2)で表される化合物が、下記一般式(3)又は(4)で表されることを特徴とする請求項5に記載の微小電極アレイデバイス。
【化3】
(式中、R1は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し;R1’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表し;R2は下記式(11)〜(16)で表される基のいずれかであり、複数のR2は互いに同一でも異なっていても良く;mは0以上の整数であり、複数のmは互いに同一でも異なっていても良い。)
【化4】
(式中、R3は水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表し;R4は水素原子又は1価の炭化水素基を表し;nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合にはn個のR3は互いに同一でも異なっていても良く;nが1である場合には2個のR4は互いに同一でも異なっていても良い。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の微小電極アレイデバイスの製造方法であって、
絶縁基板上に微小電極及び該微小電極の配線を形成する工程と、
前記微小電極を露出させるように前記絶縁基板上に絶縁膜をパターニングする工程と、
前記絶縁基板上の絶縁膜がパターニングされた面を非細胞接着層で被覆する工程と、
前記非細胞接着層上に感光性樹脂をパターニングし、該感光性樹脂をマスクとしてエッチングにより前記非細胞接着層の所定部位を除去し、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とを露出させて細胞配置部を形成し、次いで前記感光性樹脂を除去する工程と、
を有することを特徴とする微小電極アレイデバイスの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の微小電極アレイデバイスの製造方法であって、
絶縁基板上に微小電極及び該微小電極の配線を形成する工程と、
前記微小電極を露出させるように前記絶縁基板上に絶縁膜をパターニングする工程と、
前記絶縁基板上の絶縁膜がパターニングされた面において、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とを被覆するように感光性樹脂をパターニングする工程と、
前記絶縁基板上の感光性樹脂がパターニングされた面を非細胞接着層で被覆する工程と、
前記感光性樹脂上の非細胞接着層を、該非細胞接着層で被覆されている感光性樹脂と共に除去して、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とを露出させて細胞配置部を形成する工程と、
を有することを特徴とする微小電極アレイデバイスの製造方法。
【請求項9】
前記細胞配置部と共に、さらに、該細胞配置部同士を連結する所定領域において絶縁膜が露出されてなる細胞連結部を形成するように、前記感光性樹脂をパターニングすることを特徴とする請求項7又は8に記載の微小電極アレイデバイスの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の微小電極アレイデバイスを用いたバイオアッセイ法であって、
前記微小電極アレイデバイス上の細胞配置部に計測対象の細胞を配置し、微小電極により該細胞の電位を計測する工程を有することを特徴とするバイオアッセイ法。
【請求項1】
細胞電位を計測するための微小電極アレイデバイスであって、
絶縁基板上に微小電極と、該微小電極の配線と、前記微小電極を露出させるように該絶縁基板上を被覆する絶縁膜とを備え、
前記絶縁膜上の所定領域にはさらに非細胞接着層が設けられると共に、該非細胞接着層が設けられず、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とが露出された絶縁基板上の領域が細胞配置部とされていることを特徴とする微小電極アレイデバイス。
【請求項2】
前記微小電極及び/又は非細胞接着層が光透過性を有する材質からなることを特徴とする請求項1に記載の微小電極アレイデバイス。
【請求項3】
複数個の前記細胞配置部が、前記非細胞接着層が設けられず前記絶縁膜が露出されてなる細胞連結部により連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の微小電極アレイデバイス。
【請求項4】
前記非細胞接着層が、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を有する化合物を前記絶縁膜上に結合させて形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の微小電極アレイデバイス。
【請求項5】
前記化合物が、下記一般式(1)又は(2)で表されることを特徴とする請求項4に記載の微小電極アレイデバイス。
【化1】
(式中、R1は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し;R1’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表し;R2は下記式(11)〜(16)で表される基のいずれかであり、複数のR2は互いに同一でも異なっていても良く;Yは式「−NH−C(=O)−」で表される基又はカルボニル基であり、複数のYは互いに同一でも異なっていても良く;Zは、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていても良いアルキル基又はアルキルオキシアルキル基に、一つの水素原子が置換されたエチレンオキシ基であり、複数のZは互いに同一でも異なっていても良く;j及びkはそれぞれ独立して0又は1であり、複数のj又はkは互いに同一でも異なっていても良く;l及びmはそれぞれ独立して0以上の整数であり、複数のl又はmは互いに同一でも異なっていても良く;lが2以上の整数である場合にはl個のZは互いに同一でも異なっていても良い。)
【化2】
(式中、R3は水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表し;R4は水素原子又は1価の炭化水素基を表し;nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合にはn個のR3は互いに同一でも異なっていても良く;nが1である場合には2個のR4は互いに同一でも異なっていても良い。)
【請求項6】
前記一般式(1)又は(2)で表される化合物が、下記一般式(3)又は(4)で表されることを特徴とする請求項5に記載の微小電極アレイデバイス。
【化3】
(式中、R1は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し;R1’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表し;R2は下記式(11)〜(16)で表される基のいずれかであり、複数のR2は互いに同一でも異なっていても良く;mは0以上の整数であり、複数のmは互いに同一でも異なっていても良い。)
【化4】
(式中、R3は水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表し;R4は水素原子又は1価の炭化水素基を表し;nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合にはn個のR3は互いに同一でも異なっていても良く;nが1である場合には2個のR4は互いに同一でも異なっていても良い。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の微小電極アレイデバイスの製造方法であって、
絶縁基板上に微小電極及び該微小電極の配線を形成する工程と、
前記微小電極を露出させるように前記絶縁基板上に絶縁膜をパターニングする工程と、
前記絶縁基板上の絶縁膜がパターニングされた面を非細胞接着層で被覆する工程と、
前記非細胞接着層上に感光性樹脂をパターニングし、該感光性樹脂をマスクとしてエッチングにより前記非細胞接着層の所定部位を除去し、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とを露出させて細胞配置部を形成し、次いで前記感光性樹脂を除去する工程と、
を有することを特徴とする微小電極アレイデバイスの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の微小電極アレイデバイスの製造方法であって、
絶縁基板上に微小電極及び該微小電極の配線を形成する工程と、
前記微小電極を露出させるように前記絶縁基板上に絶縁膜をパターニングする工程と、
前記絶縁基板上の絶縁膜がパターニングされた面において、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とを被覆するように感光性樹脂をパターニングする工程と、
前記絶縁基板上の感光性樹脂がパターニングされた面を非細胞接着層で被覆する工程と、
前記感光性樹脂上の非細胞接着層を、該非細胞接着層で被覆されている感光性樹脂と共に除去して、前記微小電極とその近傍の絶縁膜とを露出させて細胞配置部を形成する工程と、
を有することを特徴とする微小電極アレイデバイスの製造方法。
【請求項9】
前記細胞配置部と共に、さらに、該細胞配置部同士を連結する所定領域において絶縁膜が露出されてなる細胞連結部を形成するように、前記感光性樹脂をパターニングすることを特徴とする請求項7又は8に記載の微小電極アレイデバイスの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の微小電極アレイデバイスを用いたバイオアッセイ法であって、
前記微小電極アレイデバイス上の細胞配置部に計測対象の細胞を配置し、微小電極により該細胞の電位を計測する工程を有することを特徴とするバイオアッセイ法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−287934(P2009−287934A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137705(P2008−137705)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
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