説明

微生物採取装置、ノズル装置および微生物採取方法

【課題】インピンジャ方式を用いた微生物の採取において、微生物の捕集率を従来よりも良好なものにする。
【解決手段】インピンジャ方式により微生物を採取する微生物採取装置1において、回収液Qを収容する容器3と、吐出口が容器3内の回収液中Qに存在するノズル5と、回収液Q中でノズル5から一定の距離だけ離れて設けられ、ノズル5から吐出された空気が衝突する被衝突部材7とを有し、被衝突部材7には、ノズル5から吐出した空気と回収液Qとが交互に触れるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物採取装置、ノズル装置および微生物採取方法に係り、特に、インピンジャ方式を用いて空気中の微生物を採取するものに関する。
【背景技術】
【0002】
微生物エアロゾル(aerosol)を水中に採取することができると、フローサイトメトリーなどの計測機器による自動測定や長時間のサンプリング測定が可能になる。微生物エアロゾルを水中に採取(取り込む)方式としてインピンジャ方式が知られている。
【0003】
インピンジャ方式は、微生物エアロゾルを直接水中に取り込む方式であるので、採取に要する時間が短くてすみ、しかも、採取の作業も容易である。したがって、インピンジャ方式は広く採用されている。
【0004】
なお、従来のインピンジャ方式に関連する文献として、たとえば、特許文献1、特許文献2を掲げることができる。
【特許文献1】特開平7−294398号公報
【特許文献2】特開平11−90161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インピンジャ方式を用いた微生物の採取において微生物の捕集率(採取率;捕集効率)を良好なものにするためには、ノズルを通過する空気(微生物を含んだ空気)の風速、ノズルの径、ノズルの噴き出し口(吐出口)から空気の衝突面までの距離を適切なものにすることが重要である。なお、風速、ノズルの径は、吸引ポンプやファン等の性能を考慮して、インピンジャ方式の微生物採取装置を設計するときに決められるものである。
【0006】
インピンジャ方式を採用した場合、衝突面(ノズルから噴出した空気が衝突する面)が水であるので、ノズルから空気が噴出することにより衝突面である水が遠退き、ノズルの噴き出し口と衝突面との間の距離を一定にすることが難しく、捕集率が低下するおそれがあるという問題がある。
【0007】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、インピンジャ方式を用いた微生物の採取において、微生物の捕集率を従来よりも良好なものにすることができる微生物採取装置、ノズル装置および微生物採取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、インピンジャ方式により微生物を採取する微生物採取装置において、回収液を収容する容器と、吐出口が前記容器内の回収液中に存在するノズルと、前記回収液中で前記ノズルから一定の距離だけ離れて設けられ、前記ノズルから吐出された空気が衝突する被衝突部材とを有し、前記被衝突部材には、前記ノズルから吐出した空気と前記回収液とが交互に触れるように構成されている微生物採取装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、インピンジャ方式により微生物を採取する微生物採取装置において、回収液を収容する容器と、吐出口が前記容器内の回収液中に存在するノズルと、前記回収液中で前記ノズルから一定の距離だけ離れて設けられ、前記ノズルから吐出された空気が衝突する被衝突部材とを有し、前記ノズルから吐出され前記被衝突部材に衝突した空気により、前記ノズルから吐出され前記被衝突部材に衝突する空気の流れ方向とは異なる方向に流れる前記回収液の流れが発生するように構成されている微生物採取装置である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、インピンジャ方式により微生物を採取する微生物採取装置において、回収液を収容する容器と、吐出口が前記容器内の回収液中に存在するノズルと、厚さ方向の一方の側の面が、前記ノズルからの空気の吐出方向に対して交差する方向に展開するように、前記回収液中で前記ノズルから一定の距離だけ離れて設けられ、前記ノズルから吐出された空気が衝突する被衝突部材とを有する微生物採取装置である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、インピンジャ方式により空気中の微生物を採取する微生物採取方法において、回収液中に存在しているノズルの先端から微生物エアロゾルを含んだ空気を吐出し、この吐出した空気を、厚さ方向の一方の側の面が前記ノズルからの空気の吐出方向に対して交差する方向に展開するようにして前記ノズルの吐出口の近くで前記容器内の回収液中で前記ノズルから一定の距離だけ離れて存在している被衝突部材に衝突させ、前記回収液中に微生物を取り込む微生物採取方法である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、インピンジャ方式により微生物を採取する微生物採取装置に使用されるノズル装置において、微生物エアロゾルを含んだ空気を吐出口から吐出するノズルと、厚さ方向の一方の側の面が、前記ノズルからの空気の吐出方向に対して交差する方向に展開するようにして前記ノズルに一体的に設けられ、前記ノズルから吐出された空気が衝突する被衝突部材とを有するノズル装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インピンジャ方式を用いた微生物の採取において、微生物の捕集率を従来よりも良好なものにすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る微生物採取装置1の概略構成を示す斜視図であり、図2は、図1におけるII矢視図であり、微生物採取装置1の平面図である。
【0015】
図3は、図2におけるIII−III断面図であり、図4、図5は、ノズル5およびこの周辺の拡大図である。より詳しくは、図4(a)は、図3におけるIV部の拡大図であり、図4(b)は、図4(a)のIV−IV断面図であり、図5は、ノズル5およびこの周辺の斜視図である。
【0016】
微生物採取装置1は、インピンジャ方式により空気中の微生物を採取(採集;捕集)する装置である。インピンジャ方式とは、微生物エアロゾル(空中浮遊微生物)Mを含んだ空気(大気)を、回収液(たとえば、水)Q中に吐出(噴出)して、空気中の微生物エアロゾル(空中浮遊微生物)Mを回収液Q中に取り込んで採取する方式である。
【0017】
微生物採取装置1は、回収液Qを収容する容器3と、微生物エアロゾルMを含んだ空気(大気)を吐出口から吐出する吐出口5Aが容器3内の回収液中に存在するノズル5と、ノズル5から吐出された空気が衝突する被衝突部材7とを備えて構成されている。
【0018】
被衝突部材7は、板状の部位7Aを備えており、この板状の部位7Aの厚さ方向の一方の側の面(ノズル5側の面)7Bが、ノズル5からの空気の吐出方向(図4に示す矢印AR1の方向)に対して交差する方向(たとえば、直交する方向)に展開している。より正確には、面7Bが円柱側面状に形成されているので、ノズル5の中心軸(矢印AR1の方向に延伸している中心軸)の延長線と面7Bとの交差部位7Cのところで、面7Bに接する平面(図示せず)とノズル5の中心軸の延長線とがお互いに直交している。なお、面7Bは円柱側面状ではなく、平面状に形成されていてもよい。
【0019】
板状の部位7Aは、容器3内の回収液Q中でノズル5の吐出口5Aから一定の距離だけ離れて設けられている。また、ノズル5から吐出した空気が衝突する被衝突部材7の部位(交差部位7Cおよびこの近傍の部位)よりも上部から、被衝突部材7に衝突した空気が容器3内の回収液Q中に逃げるように構成されている(図4(a)の矢印AR2参照)。
【0020】
微生物採取装置1についてより詳しく説明する。
【0021】
容器3は、上側に開口部9を備えており、内部(開口部9と後述する管状の部材11とを除いて閉じている閉空間内)に回収液Qを収容するようになっている。
【0022】
容器3には、管状の部材11が設けられている。管状の部材11は、容器3の筐体(外壁材)を貫通している。管状の部材11の開放している一方の端(上端)が、容器3の上方で容器3の外部に位置し、管状の部材11の閉じている他方の端(下端)が容器3の内部(回収液Q内)に位置している。さらに、管状の部材11の閉じている他方の端もしくはこの近くに小さなノズル用孔13(ノズル5を形成する貫通孔)が、管状の部材11の材質部(肉部)貫通して設けられている。
【0023】
被衝突部材7は、基端部側の部位15と先端部側部位17とを備えて構成されている。基端部側の部位15が、管状の部材11の他方の端の近くであって(下端の近くであって)ノズル用孔13よりも上側で、管状の部材11に一体的に設けられており、先端部側部位17が管状の部材11から僅かに離れている。具体的には、先端部側部位17が、ノズル用孔13の内径の1〜3倍の距離だけ離れている。なお、この距離は、前述したようにほぼ一定している。
【0024】
さらに、ノズル用孔13の貫通方向(図4の矢印AR1の方向)から見ると先端部側の部位17がノズル用孔13を覆っている。
【0025】
また、管状の部材11は、円管状に形成されて上下方向に延びて設けられている。ノズル用孔13は、管状の部材11の下端部の近くであって管状の部材11の円周を等分配する位置で、管状の部材11の半径方向に延びて複数設けられている。
【0026】
被衝突部材7の基端部側部位15は円筒状に形成されており、基端部側部位15の内径が管状の部材11の外径とほぼ等しくなっている。被衝突部材7の先端部側部位17には、切り欠き19が設けられているが、この切り欠き19が設けられていないとすれば、先端部側部位17も円筒状に形成されている。ただし、先端部側部位17の内径は、基端部側部位15の内径よりも大きくなっており、先端部側部位17の外径は、基端部側部位15の外径と等しくなっている。
【0027】
また、先端部側部位17は、基端部側部位15と同軸で、基端部側部位15の軸方向の一方の側(下側)で基端部側部位15に一体で設けられている。さらに、先端部側部位17には、前述したように複数の切り欠き19が設けられている。各切り欠き19が設けられていることによって、板状の部位7Aが形成されている。
【0028】
なお、切り欠き19のそれぞれは、ほぼ矩形状に形成されており、長手方向が被衝突部材7の軸方向(基端部側部位15や先端部側部位17の軸方向;上下方向)とほぼ一致するようにして設けられている。また、切り欠き19のそれぞれは、先端部側部位17の円周を等分配する位置で、ノズル用孔13と同じ個数設けられており、前述したように、ノズル用孔13の貫通方向から見ると、切り欠き19が設けられていない先端部側部位17(板状の部位7A)がノズル用孔13を覆っている。したがって、前述したように面7Bの交差部位7Cが形成されるようになっている。
【0029】
なお、すでに理解されるように、基端部側部位15と先端部側部位17との円周を直線状に展開すると、櫛歯状になっている。また、切り欠き19の幅B1と切り欠きが設けられていない先端部側部位17(板状の部位7A)の幅B2とはお互いにほぼ等しくなっている(図4(b)参照)。
【0030】
ところで、容器3は、容器本体21と蓋23とで形成されている。容器本体21は、たとえば、円筒状の部材の下端を円板状の部材で塞いだ形状に形成されている。蓋23は、中央に開口部9を備えた円板状に形成され、容器本体21の上部の開口部(開口部9よりも大きな開口部)を塞ぐべく容器本体21に着脱自在になっている。
【0031】
また、管状の部材11と被衝突部材7とは複数設けられている。管状の部材11は、蓋23(容器3)の中心を中心とする円(直径が容器3の内径よりも小さい円)CLの円周をほぼ等分配する位置で、蓋23に一体的に設けられている(図2参照)。
【0032】
なお、ノズル用孔13に対して切り欠き19が上下方向に延びているが、切り欠き19では、ノズル用孔13よりも下側の長さH1が、ノズル用孔13よりも上側の長さH3よりも短くなっている(図4(a)参照)。したがって、ノズル用孔13から吐出された空気が、回収液Q中に効率よく抜けるようになっており、管状の部材11と先端部側部位17との間の空間SPに空気が溜まることを的確に防止することができるようになっている。
【0033】
開口部9には、管材25を介して吸引ポンプ27が接続されている。吸引ポンプ27で容器3内の上部に存在する空気を吸引することにより、容器3内の気圧が大気圧よりも下がり、管状の部材11の上端から、微生物エアロゾルMと共に空気が吸い込まれ、この吸い込まれた空気がノズル5より回収液Q中に吐出され、この吐出された空気が、回収液Q中を上昇し、容器3内の上部に存在する空気のところにまで到達するようになっている。
【0034】
ここで、微生物採取装置1の動作について説明する。
【0035】
図1や図3に示すように、容器3内に適量の回収液Qを入れた微生物採取装置1を、測定する雰囲気中に設置し、吸引ポンプ27を所定時間作動する。
【0036】
吸引ポンプ27の作動により、回収液Q中に存在しているノズル5の先端から微生物エアロゾルMを含んだ空気が吐出する。この吐出した空気が、厚さ方向の一方の側の面7Bに衝突し、この後、回収液Q中を上昇しつつ通過する。そして、回収液Q中に微生物エアロゾルMが取り込まれる。
【0037】
図6は、微生物採取装置1の試験結果を示す表である。
【0038】
図6に示すくし状(櫛状)囲い型Cは、本実施形態の微生物採取装置1のものを示し、全周囲い型Bは、微生物採取装置1の先端部側部位17に切り欠き19を一切設けていないものを示し、開放型Aは、被衝突部材7を一切設けていないものを示している。
【0039】
また、捕集率は、次の式f1で示される。式f1;捕集率={(管状の部材11の上端部に存在する所定体積の空気中に存在する微生物エアロゾルMの数−吸引ポンプ27から排出される前記所定体積の空気中に存在する微生物エアロゾルMの数)/管状の部材11の上端部に存在する所定体積の空気中に存在する微生物エアロゾルMの数}×100 この場合、空気の温度と圧力は一定であるものとする。
【0040】
図6から理解されるように、試験粒子としてPAOを用いた場合であっても、枯草菌芽胞を用いた場合であっても、第1の実施形態に係る微生物採取装置1の捕集率が最も良くなっている。
【0041】
微生物採取装置1によれば、被衝突部材7(板状の部位7A)がノズル5から一定の距離だけ離れて設けられているので、ストークス数に代表される慣性衝突現象によって、被衝突部材7に微生物エアロゾルMがほぼ一定の良好な効率で一旦捕捉されるようになっている。
【0042】
また、ノズル5から吐出した空気の移動により負圧になった所には回収液Qが入り込み、ノズル5から吐出した空気と容器3内の回収液Qとが被衝突部材7(交差部位7Cおよびこの近傍の部位)に短い時間間隔で交互に触れるようになっており、被衝突部材7に一旦捕捉された微生物エアロゾルMが効率良く回収液Qで洗われ、微生物エアロゾルMを効率よく回収液Qの中に取り込むことができ、微生物エアロゾルMの捕集率を良好なものにすることができる。
【0043】
また、微生物採取装置1によれば、ノズル5から吐出した空気が衝突する被衝突部材7の部位(被衝突部位;部位7Cおよびこの近傍の部位)よりも上部から、被衝突部材7に衝突した空気が容器3内の回収液中に逃げるように構成されているので、前記被衝突部位よりも上部における空気溜まりの発生を防止することができ、被衝突部材7を万遍なく回収液Qで洗うことができ、微生物エアロゾルMを効率よく回収液の中に取り込むことができる。
【0044】
なお、図8(ノズル5およびこの周辺の部位を示す斜視図であり、図5に対応していると共に、被衝突部材7の変形例を示している図)に示すように切り欠き19の代わりに、先端部側部位17の上部側に貫通孔29を設けた構成であってもよい。
【0045】
[第2の実施形態]
図7は、本発明の第2の実施形態に係る微生物採取装置のノズル5a等の部位を示す図であり、図4(a)に対応する図である。
【0046】
本発明の第2の実施形態に係る微生物採取装置は、ノズル5aを構成するノズル用孔13aが斜めに設けられている点が、本発明の第1の実施形態に係る微生物採取装置1とは異なり、その他の点は、本発明の第1の実施形態に係る微生物採取装置1とほぼ同様に構成されほぼ同様の効果を奏する。
【0047】
すなわち、第2の実施形態に係る微生物採取装置は、回収液を収容する容器と、吐出口が前記容器内の回収液中に存在するノズル5aと、前記容器内の回収液中でノズル5aから一定の距離だけ離れて設けられノズル5aから吐出された空気が衝突する被衝突部材7(板状の部位7A)とを備えて構成されている。
【0048】
また、第2の実施形態に係る微生物採取装置は、ノズル5aから吐出され被衝突部材7に衝突した空気により、ノズル5から吐出され被衝突部材7に衝突する空気の流れ方向とは異なる方向に流れる回収液の流れが発生するように構成されている。
【0049】
例を掲げてより詳しく説明すると、第2の実施形態に係る微生物採取装置は、ノズル用孔13aの貫通方向(図7の矢印AR3の方向)と、ノズル用孔13aに対向している被衝突部材7の先端部側部位17の面7Bの展開方向とが、斜めに交差している。
【0050】
より正確には、ノズル用孔13a中心軸の延長線と、ノズル用孔13aに対向している被衝突部材7の先端部側部位17の面7Bとの交差部位7Cで、先端部側部位17の面7Bもしくはこの面7Bに接する平面とノズル用孔13aの中心軸の延長線とがお互いに斜めに交差している。また、ノズル用孔13aの貫通方向と先端部側部位17の面7Bの展開方向とがお互いに斜めに交差していることから理解できるように、ノズル用孔13aから吐出されて被衝突部材7にぶつかった空気の多くは、ノズル用孔13aの貫通方向と先端部側部位17の面7Bと交差角度が鈍角になる側で、被衝突部材7(板状の部位7A)の面にほぼ沿って流れるようになっている(図7の矢印AR4参照)。
【0051】
ノズル用孔13aに対向している先端部側部位17の面7Bは、鈍角になる側で長くなっている。すなわち、図7に示す寸法L3が寸法L4よりも長くなっている。
【0052】
前述したように、各ノズル用孔13aのうちの1つのノズル用孔13aは、管状の部材11の半径方向に対して斜めに交差する方向に延びている。すなわち、ノズル用孔13aの中心軸の延長線が管状の部材11の中心軸C1と交わらないようになっている。前記1つのノズル用孔13a以外の他のノズル用孔13aのそれぞれは、管状の部材11の中心軸C1を中心にして前記1つのノズル用孔13aを所定の角度回転して移動した位置に存在している。
【0053】
このように構成されているので、ノズル用孔13aの貫通方向と、ノズル用孔13aに対向している被衝突部材7の先端部側部位17の面7Bの展開方向とが、斜めに交差しているので、ノズル5aから吐出され被衝突部材7に衝突する空気の流れ方向とは異なる方向に流れる回収液Qの流れが発生するようになっている。
【0054】
なお、本実施形態では、ノズル用孔13aの中心軸が水平方向(図7の紙面と平行な方向)に延びているが、ノズル用孔13aの中心軸が上下方向のベクトル成分を含んで斜めに(図7の紙面に対して斜めに交差する方向)延びていてもよい。この場合、下方向のベクトル成分を含めるようにすることが望ましい。すなわち、ノズル用孔13aの吐出口が下方を向いていることが望ましい。
【0055】
第2の実施形態に係る微生物採取装置によれば、被衝突部材7がノズル5aから一定の距離だけ離れて設けられていると共に、ノズル5aから吐出され被衝突部材7に衝突する空気の流れ方向とは異なる方向に流れる回収液の流れが発生するようになっているので、ストークス数に代表される慣性衝突現象によって、被衝突部材7に微生物がほぼ一定の良好な効率で一旦捕捉され、その後、被衝突部材7に衝突する空気の流れ方向とは異なる方向に流れる回収液の流れにより、被衝突部材7に一旦捕捉された微生物が洗われるという動作を繰り返すことになり、微生物を効率よく回収液の中に取り込むことができ、微生物の捕集率を良好なものにすることができる。
【0056】
[第3の実施形態]
図9は、本発明の第3の実施形態に係る微生物採取装置のノズル5a等の部位を示す図であり、図4(a)に対応する図である。
【0057】
本発明の第3の実施形態に係る微生物採取装置は、被衝突部材7が斜めに設けられている点が、本発明の第1の実施形態に係る微生物採取装置1とは異なり、その他の点は、本発明の第1の実施形態に係る微生物採取装置1とほぼ同様に構成されほぼ同様の効果を奏する。
【0058】
すなわち、第3の実施形態に係る微生物採取装置は、回収液を収容する容器と、吐出口が前記容器内の回収液中に存在するノズル5aと、前記容器内の回収液中でノズル5aから一定の距離だけ離れて設けられノズル5aから吐出された空気が衝突する被衝突部材7(板状の部位7A)とを備えて構成されている。
【0059】
また、第3の実施形態に係る微生物採取装置は、ノズル5aから吐出され被衝突部材7に衝突した空気により、ノズル5から吐出され被衝突部材7に衝突する空気の流れ方向とは異なる方向に流れる回収液の流れが発生するように構成されている。
【0060】
例を掲げてより詳しく説明すると、第3の実施形態に係る微生物採取装置は、ノズル用孔13aの貫通方向(図9の矢印AR5の方向)と、ノズル用孔13aに対向している被衝突部材7の先端部側部位17の面7Bの展開方向とが、斜めに交差している。
【0061】
より正確には、ノズル用孔13a中心軸の延長線と、ノズル用孔13aに対向している被衝突部材7の先端部側部位17の面7Bとの交差部位7Cで、先端部側部位17の面7Bもしくはこの面7Bに接する平面とノズル用孔13aの中心軸の延長線とがお互いに斜めに交差している。また、ノズル用孔13aの貫通方向と先端部側部位17の面7Bの展開方向とがお互いに斜めに交差していることから理解できるように、ノズル用孔13aから吐出されて被衝突部材7にぶつかった空気の多くは、ノズル用孔13aの貫通方向と先端部側部位17の面7Bと交差角度が鈍角になる側で、被衝突部材7(板状の部位7A)の面にほぼ沿って流れるようになっている(図9の矢印AR6参照)。
【0062】
ノズル用孔13aに対向している先端部側部位17の面7Bは、鈍角になる側で長くなっている。すなわち、図9に示す寸法L5が寸法L6よりも長くなっている。
【0063】
このように構成されているので、すなわち、ノズル用孔13aの貫通方向とノズル用孔13aに対向している被衝突部材7の先端部側部位17の面7Bの展開方向とが斜めに交差しているので、ノズル5aから吐出され被衝突部材7に衝突する空気の流れ方向とは異なる方向に流れる回収液Qの流れが発生するようになっている。
【0064】
なお、本実施形態では、ノズル用孔13aの中心軸が水平方向(図9の紙面と平行な方向)に延びているが、ノズル用孔13aの中心軸が上下方向のベクトル成分を含んで斜めに(図9の紙面に対して斜めに交差する方向)延びていてもよい。この場合、下方向のベクトル成分を含めるようにすることが望ましい。すなわち、ノズル用孔13aの吐出口が下方を向いていることが望ましい。
【0065】
第3の実施形態に係る微生物採取装置によれば、被衝突部材7がノズル5aから一定の距離だけ離れて設けられていると共に、ノズル5aから吐出され被衝突部材7に衝突する空気の流れ方向とは異なる方向に流れる回収液の流れが発生するようになっているので、ストークス数に代表される慣性衝突現象によって、被衝突部材7に微生物がほぼ一定の良好な効率で一旦捕捉され、その後、被衝突部材7に衝突する空気の流れ方向とは異なる方向に流れる回収液の流れにより、被衝突部材7に一旦捕捉された微生物が洗われるという動作を繰り返すことになり、微生物を効率よく回収液の中に取り込むことができ、微生物の捕集率を良好なものにすることができる。
【0066】
なお、上記各実施形態に係る微生物採取装置は、インピンジャ方式により微生物を採取する微生物採取装置であって、回収液を収容する容器と、微生物エアロゾルを含んだ空気(大気)を吐出口から吐出すると共に前記吐出口が前記容器内の回収液中に存在するノズルと、前記容器内の回収液中で前記ノズルから一定の距離だけ離れて設けられ、前記ノズルから吐出された空気が衝突する被衝突部材とを有し、前記被衝突部材には、前記ノズルから吐出した空気と前記容器内の回収液とが、短い時間間隔で交互に触れるように構成されている微生物採取装置の例である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る微生物採取装置1の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1におけるII矢視図であり、微生物採取装置1の平面図である。
【図3】図2におけるIII−III断面図である。
【図4】ノズル5およびこの周辺の拡大図である。
【図5】ノズル5およびこの周辺の拡大図である。
【図6】微生物採取装置1の試験結果を示す表である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る微生物採取装置のノズル5a等の部位を示す図であり、図4(a)に対応する図である。
【図8】ノズル5およびこの周辺の部位を示す斜視図であり、図5に対応していると共に、被衝突部材7の変形例を示している図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る微生物採取装置のノズル5a等の部位を示す図であり、図4(a)に対応する図である。
【符号の説明】
【0068】
1 微生物採取装置
3 容器
5、5a ノズル
7 被衝突部材
11 管状の部材
M 微生物エアロゾル
Q 回収液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インピンジャ方式により微生物を採取する微生物採取装置において、
回収液を収容する容器と;
吐出口が前記容器内の回収液中に存在するノズルと;
前記回収液中で前記ノズルから一定の距離だけ離れて設けられ、前記ノズルから吐出された空気が衝突する被衝突部材と;
を有し、前記被衝突部材には、前記ノズルから吐出した空気と前記回収液とが交互に触れるように構成されていることを特徴とする微生物採取装置。
【請求項2】
インピンジャ方式により微生物を採取する微生物採取装置において、
回収液を収容する容器と;
吐出口が前記容器内の回収液中に存在するノズルと;
前記回収液中で前記ノズルから一定の距離だけ離れて設けられ、前記ノズルから吐出された空気が衝突する被衝突部材と;
を有し、前記ノズルから吐出され前記被衝突部材に衝突した空気により、前記ノズルから吐出され前記被衝突部材に衝突する空気の流れ方向とは異なる方向に流れる前記回収液の流れが発生するように構成されていることを特徴とする微生物採取装置。
【請求項3】
インピンジャ方式により微生物を採取する微生物採取装置において、
回収液を収容する容器と;
吐出口が前記容器内の回収液中に存在するノズルと;
厚さ方向の一方の側の面が、前記ノズルからの空気の吐出方向に対して交差する方向に展開するように、前記回収液中で前記ノズルから一定の距離だけ離れて設けられ、前記ノズルから吐出された空気が衝突する被衝突部材と;
を有することを特徴とする微生物採取装置。
【請求項4】
インピンジャ方式により空気中の微生物を採取する微生物採取方法において、
回収液中に存在しているノズルの先端から微生物エアロゾルを含んだ空気を吐出し、この吐出した空気を、厚さ方向の一方の側の面が前記ノズルからの空気の吐出方向に対して交差する方向に展開するようにして前記ノズルの吐出口の近くで前記容器内の回収液中で前記ノズルから一定の距離だけ離れて存在している被衝突部材に衝突させ、前記回収液中に微生物を取り込むことを特徴とする微生物採取方法。
【請求項5】
インピンジャ方式により微生物を採取する微生物採取装置に使用されるノズル装置において、
微生物エアロゾルを含んだ空気を吐出口から吐出するノズルと;
厚さ方向の一方の側の面が、前記ノズルからの空気の吐出方向に対して交差する方向に展開するようにして前記ノズルに一体的に設けられ、前記ノズルから吐出された空気が衝突する被衝突部材と;
を有することを特徴とするノズル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−55791(P2009−55791A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223159(P2007−223159)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】