説明

微生物集団の分析に基づく工程管理

本発明は、微生物による工程管理の目的のために環境条件を決定することに関する。本発明は、外部刺激を適用した後に、微生物集団の組成における変化が、微生物集団によって受け取られた刺激の性質の特徴であるいう原理を使用する。これら変化を測定することによって、微生物集団の組成が、物理的化学的環境条件を決定するための、この環境条件における変化の程度を決定するための、刺激の性質及び強度を決定するための、及び様々な工程の種々の刺激の影響を測定することを可能にしてこれら工程を管理するための特別のセンサーとして使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境条件を決定するための方法に関する。特に本発明は、工程管理の目的のために環境条件を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの産業の及び自然の工程、例えば食品の発酵調理又はヒトの消化管の作用のうち、工程パラメータ及び支配的な工程条件は容易に決定されることができない。支配的な工程条件に関する知識のこの欠如の結果として、それらへの介入又はそれらの管理は、非常に困難であり且つほとんど効果がない。工程の条件は、環境によって非常に影響を受ける。しかしながら、これら環境条件はまた、決定することがしばしば困難である。それ故に、環境条件を決定するための方法は、特定の工程への支配的な影響について価値ある情報を提供しうる。また、支配的な工程条件についての情報は、この工程の管理を相当に容易にするだろう。
【0003】
本明細書では、語「環境条件」は、広義で、環境の物理的及び/又は化学的条件をいうと意味される。
【0004】
工程、例えばバイオフィルム形成、土壌における石灰化、虫歯、水精製、生分解、製品品質損失及び感染における環境条件は例えば、その工程に役割を果たす物理的又は化学的パラメータから導かれる。
【0005】
最近、種々様々の環境条件が、この目的のために特に開発された装置を使用して容易に測定されうる。また、多くの化合物を測定するための特異的バイオセンサーが利用可能である。しかしながら、ほとんどの化合物は、容易に測定されえないか、または全く測定されえない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
物理的環境条件(例えば、(気)圧、温度、光条件、雑音、照射線、水分含量及び/又は大気湿度)、化学的環境条件(例えば、化学成分又は化学物質の濃度)、及び例えば酸性度を管理すること又は監視することが、多くの産業においていま非常に望まれている。
【0007】
上記された環境条件における変化の決定における問題は、多くの場合、それらが、単独で大いに工程に影響を及ぼすことが出来る非常に小さい変化に関係することである。しかしながら、現在の手段及び方法によっては、環境におけるそのように非常に小さい変化は、仮に測定できたとしても、困難である。
【0008】
上記された環境条件における変化の決定の更なる問題は、環境のどの物理的又は化学的パラメータが特定の工程において役割を果たす又はそれらに影響を及ぼすかは常には知られていないことである。その場合には、その環境において起こる工程の管理を複雑にする環境条件における変化は、特定されることができない又は特定することが難しい。
【0009】
微生物は、それらの環境の条件に非常に敏感である。実際、微生物の状態は、その環境の条件を反映する。1つ又はほんのわずかの種が(優勢に)存在する状況では、これら微生物の生化学的組成(の一部)を測定することによって、環境へのこれら微生物の反応を決定することが可能である。この文脈では、生化学的組成として、非常に適切に、トランスクリプトーム、プロテオーム又はメタボロームの組成の(一部)が決定されうる。なぜならば、微生物の細胞性又は生化学的組成のこの一部が、環境に非常に強く反応するからである。
【0010】
しかしながら、多くの場合、幾つかの乃至は非常に多くの微生物の種及び/若しくは株又はさらに門(phyla)の集団が関与し、それらは互いに異なる割合で見出され、そしてそれらはしばしば全てしばしば異なる様式で環境条件に反応する。これは、微生物の生化学的組成の測定を複雑にする。どの微生物で測定が実行されるべきか、及び得られた測定データがどの微生物に由来するか?
【課題を解決するための手段】
【0011】
微生物集団の組成が、支配的な環境条件に関する及び支配的な工程条件に関する並びにまたそれらにおける変化に関する情報を提供することができることが驚くべきことにいま見つけられた。微生物集団は全体として、環境条件及び/又はそれらにおける変化を決定するための測定手段として使用されてよい。何故ならば、この集団の組成は支配的な環境条件を反映するからである。
【0012】
本発明は、この環境条件に暴露される微生物集団の組成を測定することによって、環境条件を決定するための方法を提供する。
【0013】
本発明は、環境条件におけるこれら変化に暴露される微生物集団の組成における変化を測定することによって、環境条件における変化を決定するための方法をさらに提供する。
【0014】
本発明は、環境条件を決定するための方法であって、この環境条件に暴露された微生物集団の組成を測定すること、この組成を、この微生物集団を複数の環境条件へ暴露することによって得られた複数の組成の予め編集された参照データファイルに関連づけること、そしてこの関連の結果に基づきこの環境条件を決定することを含む方法をさらに提供する。
【0015】
該改善された方法によって、工程は、工程中に若しくは(工程)環境中にすでに存在する若しくは存在しない又は本発明に従う方法によって環境条件を決定する目的で環境中に導入されるところの微生物集団の組成における変化に基づいて管理されうる。
【0016】
該改善された方法は、以前は困難を伴って測定されえた又は全く測定されえなかったところの環境における非常に小さい変化又は検出されるべき物質の非常に低い濃度が、同様にいま測定されうるという有利点を有する。
【0017】
測定の速度が少なくとも潜在的に高いことが本発明の有利点である。新しい測定が、予め見出された結果と比較されうるようにデータベース又はデータファイル中に保存されることができ、故に適時に該方法が予測値を得ることが本発明の更なる有利点である。従って、該改善された方法は、自己学習的になる。
【0018】
本発明の他の有利点は、該改善された方法によって、環境条件又は工程条件における逸脱及び変化が、この環境条件又は工程条件の他の、より重大な特徴が明らかに変更する前にすでに検出されうることである。従って、該改善された方法は、警報システムとして役立ちうる。
【0019】
本発明に従う該方法のさらに他の有利点は、それ自身測定出来ない低い環境条件又は刺激が、集団組成の大きな変化に、増幅された様式で、反映されうることである。
【0020】
本発明は、微生物が外部の影響に強く反応する原理を使用する。外部刺激(環境条件)を適用した後の微生物における固有の変化は、生体分子、例えばRNA、タンパク質及び代謝物質の量及び性質における変化にある。そのような変化の総計は、微生物が受け取る外部刺激の性質を特徴づける。
【0021】
しかしながら、特定の刺激又は環境条件の影響下で、微生物中の前記された生体分子の濃度のみが変化するのではない。微生物における最適環境条件のシフト(shifting)そして引き続く固有の変化の結果として、集団における個々の微生物の成長及び競争能力がまた変化する。これは、集団の組成を変化させる。最初に優勢に存在した有機体は、このようにして、与えられた環境条件下でよりよく成長する有機体によって完全に置き換えられうる。
【0022】
このようにして、微生物集団の組成は、環境条件を決定するための、この環境条件における変化の程度を決定するための、刺激の性質及び強度を決定するための、及び様々な工程での種々の刺激の影響を測定し、そしてこれら工程を管理することができるための特異的なセンサーとして使用されうる。
【0023】
細菌の集団について測定する多くの方法は、文献において既に知られている。欧州公開特許公報EP 1,215,285号は例えば、個人の細菌の腸内菌叢に基づき彼自身の健康状態に関する個人の感じを監視するための可能性を記載する。従って、そのような方法は、血液検査によって決定されることができない健康状態における小さな変化を検出するために健康診断において使用されうる。しかしながら、健康又は病弱の感じを測定することが、本出願の主題ではない。
【0024】
国際公開公報WO 97/05282号は、インシチュー(in situ)ハイブリダイゼーションによって微生物集団の組成を決定するための方法を記載する。該刊行物は、化学物質によって生じた集団における変化が測定されうることを記載する。しかしながら、これは、環境における変化に関する決定的な答えを提供しない。
【0025】
組成だけでなく、集団の他の特性が測定される多くの刊行物が知られている。ドイツ公開特許公報DE 195 43 993号は、有害な物質のそばで見つけられる微生物集団の密度の測定を記載する。国際公開公報WO 99/09202号は、細胞性粘菌(Dictyostelium)細胞における形態学的変化又はリポーター遺伝子発現に基づくバイオセンサーを記載する。ドイツ公開特許公報DE 199 17 955号は、フロー細胞(flow cell)における微生物の混合された集団の生物学的酸素消費量が測定される装置を記載する。米国特許明細書第5,055,397号は、土壌細菌の生存が決定される方法を記載する。国際公開公報WO97/13873号は、微生物の成長が調査される方法を記載する。米国特許明細書第5,563,043号は、生きている細胞の数が減少する速度が決定される方法を記載する。日本国公開特許公報第2001-231598号要約書は、細菌細胞中のATPの減少が決定される方法を記載する。英国公開特許公報第1,437,458号は、微生物の代謝活性が、例えば細胞増加、二酸化炭素生成、酸性度変化又は酸素消費量を測定することによって測定される方法を記載する。しかしながら、これら方法のいずれも、本発明に従う微生物集団の組成を決定しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明では、微生物集団の組成とは、少なくとも2つの異なるグループのコミュニティーを含む微生物のコミュニティーのグループ構造であって、実質的に安定な環境条件において実質的に安定な条件にあるグループ構造を意味すると理解される。
【0027】
ここで、微生物のグループは、1以上の特定の遺伝子型又は表現型特徴に基づき他のグループから区別されうる微生物のグループを意味すると理解される。そのようなグループは、分類学的グループ、例えば門、科、属又は株だけでなく、方法論的に分類されるグループ、例えば、系統発生的クラスタ、リボタイプ、単離物、血清型、又は形態型をまた含んでよい。
【0028】
微生物集団の組成の決定では、異なるグループが集団で見つけられる割合だけでなく、集団におけるグループの割合(ratio)もまた決定されてよい。割合又は比率(proportion)は例えば、細胞数だけでなく、細胞若しくは細胞成分の重量(例えば、核酸の重量)、又は蛍光強度で表現されてよい。当業者は、微生物集団の組成が発現されるところの様式がこの組成が決定される方法に依存することを理解するだろう。
【0029】
本発明では、微生物集団の組成における変化は、集団におけるグループの割合の絶対的若しくは相対的な増加又は減少を意味すると理解される。
【0030】
本発明に従う方法で使用されてよい微生物集団は、微生物、例えば細菌、古細菌、真菌、酵母、原虫及び藻類を含んでよい。好ましくは、細菌、酵母及び/又は真菌の微生物集団が本発明に従う方法で使用され、最も好ましくは細菌である。
【0031】
本発明に従う方法では、特定の工程内に導入された又は特定の工程内で自然に生じる微生物集団が、その同じ工程又は完全に異なる工程の環境条件を決定するために使用されてよい。しかしながら好ましくは、元来存在する微生物集団が使用される。したがって、微生物の特定の集団が役割を果たす工程の管理において、好ましくはこれら工程からの微生物の特定の集団が使用されるだろう。
【0032】
工程が微生物集団の不存在下で起こる場合、微生物集団が、例えばそれを好ましくは工程の開始から処理室内に導入することによって又は工程物資(の一部)を処理室の外で微生物集団と接触させることによって、より短い又はより長い期間、工程条件に暴露されうる。
【0033】
もし要求されれば、例えば混合された開始培養物(starter culture)が移植片として使用される工程内で行われるように、微生物が前もって成長されうる。ある実施態様では、前もって均一化されている又は標準化されている又定義されている組成で微生物集団を使用することが可能である。これは、微生物集団が例えば、例えばそれを処理物質(例えば、水、空気、食品のサンプル)(の一部)に暴露することによって、処理室の外で上記された工程条件に暴露される場合、又は微生物が工程条件を決定する目的のためにより短い又はより長い期間、或る工程条件に暴露される場合に、そうでありうる。
【0034】
本文脈中では、均一化された又は標準化された又は定義された組成は、組成が所与の環境条件又は工程条件下で知られている微生物集団を意味すると理解される。集団のそのような組成が、例えば既知の割合で異なる微生物を混合することによって繰り返し得られることができる場合、それはまた標準であると考えられうる。
【0035】
しかしながら、微生物集団が、均一化された又は標準化された又は定義された組成において使用されることは要求されない。実際、本発明に従う方法において使用される微生物集団組成又はこの組成における変化を測定することは、微生物集団組成(における変化)が特定の環境条件又は工程条件に関連されうる限り、環境の条件又はそれらの中における変化を決定するのに十分である。
【0036】
本発明では、微生物集団組成は、その個々のメンバーの分類学的位置が知られている微生物集団を含みうる。しかし、その個々の有機体の分類学的位置が知られていない微生物集団の使用がまた可能である。
【0037】
本明細書の上記で述べられたように、本発明では、微生物集団の組成が、微生物の生体分子について測定を実行することによって決定されることができ、それによって、集団における微生物の種々のグループ例えば種の発生が決定されうる。
【0038】
微生物の種々のグループの発生を決定するために測定されうる適切な生体分子は、なかんずく生物学的高分子、例えば多糖、脂質、ポリペプチド及びポリヌクレオチドを含む。
【0039】
したがって、種々の分類学的グループが識別され、そして任意的に定量化されうる測定が使用されうる。しかし、これは必須ではない。
【0040】
それ故に、特定の実施態様では、集団における個々のグループの分類学的位置を決定することなく又は個々の微生物を識別することなく、微生物集団の組成を決定することが可能である。
【0041】
分類学的位置のそのような識別又は決定が起こらない場合、「コミュニティーフィンガープリント」又は生体分子の集団パターンに基づき微生物集団の組成において個々の微生物を区別することがなお可能である。この目的のために、微生物集団においてバルク中に生じる生物学的高分子の分離が使用されうる。バルク高分子のそのような分析によって、最初に、集団における個々の分類学的レベルが決定されることができず、そして集団の個々のメンバーが識別されることができない。しかしながら、それらは、集団組成の「コミュニティーフィンガープリント」を得るために使用されうる。異なる時間に採取されたそのような「コミュニティーフィンガープリント」の2つの比較によって、集団組成における変化が決定されうる。
【0042】
微生物のバルク高分子のそのような分析は、例えば細胞全体からのタンパク質の一次元又は二次元電気泳動(SDS-PAGE)を含む(Vauterin, L., Swings, J.及びK. Kersters、1994年、Handbook of a New Bacterial Systematics、Goodfellow及びO'Donnell編、サンディエゴ、カリフォルニア州、Academic Press)。さらに、「コミュニティーフィンガープリント」を得るために、該集団の細胞全体からの核酸は、「genome profiling」(Nishigaki等、1991年、Chem. Lett.、第1097〜1100頁)、「bacterial restriction enzyme nucleic acid digest analysis」(BRENDA;Robinson等、1982年、J. Med. Microbiol、第15巻:第331〜8頁)、染色体DNAの制限エンドヌクレアーゼ消化との組み合わせでの「pulsed-fieldgel electrophoresis」(PFGE;Swain等、1996年、Appl. Environ. Microbiol、第62巻:第994〜7頁)、リボタイプ及びAFLP(商標)(Vos等、1995年、Nucleic Acids Res.、第23巻:第4407〜14巻)を含む「(terminal) restriction fragment length polymorphism」((T)RFLP;Dunbar等、2000年、Appl. Environ. Microbiol、第66巻:第2943〜50頁;Park等、2002年、Water Sci. Technol.、第46巻:第273〜80頁)、「amplified ribosomal DNA restriction analysis」(ARDRA; Vaneechoutte等、1992年、FEMS Microbiol. Lett.、第72巻:第227〜33頁)、「random amplified polymorphic DNA」(RAPD;Okamura等、1993年、Proc.R. Soc. Lond. B. Biol. Sci.、第253巻:第147〜54頁)、「denaturing gradient gel-electrophoresis」"(DGGE;Muyzer等、1993年、Appl. Environ. Microbiol.、第59巻:第695〜700頁、「temperature gradient gel electrophoresis」(TGGE;Felske等、1997年、Microbiology、第143巻:第2983〜9頁)、「single strandcon formational polymorphism」"(SSCP;Widjojoatmodjo等、1995年、J. Clin. Microbiol.、第33巻:第2601〜2606頁、「plasmid profiling」(Tannock等、1990年、J. Clin. Microbiol.、第28巻:第1225〜8頁、「plasmid fingerprinting」(Tenover、1985年、Clin. Lab. Med.、第5巻:第413〜36頁)のような方法によって分析されることができ、及び/又は増幅された核酸フラグメントの「shot-gun cloning and sequencing」"(例えば、Giovannoni等、1990年、Nature、第345巻:第60〜3頁)が使用されうる。微生物集団の組成を決定するための測定で使用されうる可能な方法の概観について、Molecular Microbial Ecology Manual、1998年、Akkermans, van Elsas及びde Bruijn編、Kluwer Academic Publishers、Dordrecht、オランダ、ISBN 0-7923-5343-9及びそれらの定期的な改訂版が本明細書で引用される。
【0043】
好ましくは、微生物集団の組成を決定するために、分類学的識別が起きる測定がまた使用される。例えば、より低い分類学的レベル、例えば株、変種、亜種及び種だけでなく、より高い分類学的レベル、例えば属、科、目、綱などが決定されうる。集団組成がそれによって測定される本発明に従う方法において微生物の異なる分類学的レベルの組み合わせを決定することがまた可能である。
【0044】
この目的のために、マーカー分子が微生物の分類学的グループを識別するために非常に適切に使用されうる。そのようなマーカー分子はなかんずく、微生物中に存在し且つそれらの分類学的位置に特異的であるところの生物学的高分子(の部分)、例えば、多糖、脂質、ポリペプチド及びポリヌクレオチドを含む。
【0045】
微生物の分類学的識別のための分類群特異的マーカーとして使用されうるポリペプチド又はタンパク質を識別するための方法が、当業者に知られており、そしてなかんずく二次元ゲル電気泳動及び質量分析(MS)並びに「peptide display library」技術(Smith & Scott、1993年、Meth. Enzymol.、第217巻:第228〜257頁)の組み合わせを含む。
【0046】
1つの細胞集団に存在する又は発現されうる(しかし他に存在せず、それ故に分類群特異的マーカーとして使用されうる)ところのポリヌクレオチド又は核酸配列を識別するための方法がまた、当業者に知られており、そしてなかんずく「subtractive cloning」(Sagerstrom等、1997年、Annu. Rev. Biochem.、第66巻:第751〜83頁)、RAPD(Hadrys等、1992年、Mol. Ecol.、第1巻:第55〜63頁)及び/又は「subtractive hybridization」(el-Adhami等、1997年、J. Med. Microbiol.、第46巻:第987〜97頁)を含む。
【0047】
さらに、分類群特異的マーカーの識別について、「コミュニティーフィンガープリント」を決定するための上記された方法が、そのようなパターンから分離されそして選択された核酸フラグメントの配列分析と組み合わされうる。バルク(bulk)及び分類群特異的方法の組み合わせによって分類群特異的マーカーを識別するためのそのような組み合わされた方法は例えば、総集団からのリボソームRNA遺伝子の増幅そしてショットガンクローニング、引き続き該クローニングされた遺伝子の部分的配列分析(例えば、Wilson & Blitchington、1996年、Appl. Environ. Microbiol.、第62巻:第2273〜8頁を参照)を含み、また、例えばTGGEによるバルク増幅されたRNA遺伝子の分離、そして選択され、分離されたフラグメントの部分的配列分析(例えば、Muyzer、1999年、Curr. Opin. Microbiol.、第2巻:第317〜22頁を参照)、又は例えば、タンパク質の2次元ゲル電気泳動分離、そして単離され、分離されたタンパク質に対する抗体の製造を含んでよい。
【0048】
適切な分類群特異的ポリヌクレオチドマーカー分子は、例えばリボソームRNA(例えば、5S、5.8S、9S、12S、16S、18S、23S 若しくは25S又はそれらの間のスペーサー領域)(のフラグメント)、トランスファーRNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA又はミトコンドリアDNAを含んでよい。好ましくは、ゲノムDNAに関連付けられた及び/又はrRNAに関連付けられたマーカーが使用される。
【0049】
適切な分類群特異的ポリペプチドマーカー分子は例えば、細胞内及び/又は膜-結合酵素、例えばシトクロムb、シトクロムcオキシダーゼ、NADHデヒドロゲナーゼ、ATPシンターゼ及び/又はエステラーゼを含んでよい。そのようなポリペプチドが非常に適切である。何故ならば、それらの分類学的に注釈を付けられたデータベースが利用可能であるからである。また、分類群特異的抗原が、本発明に従う方法において測定されうる。
【0050】
本発明に従う方法は好ましくは、分類群特異的ポリペプチドマーカー分子、例えば核酸マーカーの使用を含む。
【0051】
分類群特異的なマーカーによる微生物集団の組成を決定するために、1以上の技術、例えば、
−インシチュー(in situ)測定技術、例えば核酸プローブ技術 (なかんずくAmann等、1990年、J. Bacteriol.、第172巻:第762〜70頁を参照)及び/又は免疫学的測定技術;ここで、種々の細胞性成分が、特異的な又は非特異的な検出技術(その適切性が、検出されるべき組成に依存する)によって、それらの実際の分離を生じることなしに、別々に測定されることができる;
−電気泳動の及び/又はクロマトグラフの測定技術、例えばなかんずくDGGE;ここで、細胞性成分は、なかんずく、サイズ、重量、荷電、変性への感受性に基づき分離されることができ、その後検出が、その使用が検出されるべき成分に依存する特異的な又は非特異的な検出技術によって行われる(例えば、Molecular Microbial Ecology Manual、1998年、Akkermans, van Elsas及びde Bruijn編集、Kluwer Academic Publishers、ドルドレヒト、オランダを参照);
−マイクロアレイ及び/又はバイオチップ技術;ここで、生化学組成は、担体上で固定化されたバインディングパートナーへのアフィニティに基づいて分離され、そして検出が特異的な又は非特異的な検出技術(その適切性が、検出されるべき組成に依存する)によって行われる;
を使用できる。
【0052】
上記技術に関連して使用されてよい適切な検出技術は、なかんずくオートラジオグラフィー検出技術、蛍光、ルミネセンス又は燐光に基づく検出技術、及びクロマトグラフ検出技術である。これら技術は、生体分子の検出の分野で知られている。
【0053】
好ましくは、本発明では、微生物集団の組成は、特定の生体分子が特定のバインディングパートナーのマイクロアレイに結合される技術を使用することによって測定される。例えば、核酸プローブ又は核酸を模倣するプローブ(例えば、PNA)のマイクロアレイが、分類群特異的ポリヌクレオチドマーカーの検出のために使用されることができ、又はペプチドのバインディングパートナーのマイクロアレイ(「プロテインチップ」)又は抗体のマイクロアレイが、分類群特異的なポリペプチドマーカーの検出のために使用されうる。
【0054】
核酸プローブを開発するための及び本発明で使用されうるポリヌクレオチドを扱うための方法が、当業者に知られ(なかんずくStahl & Amann、1991年、In : Nucleic Acid Techniques in Bacterial Systematics, Stackebrandt及びGoodfellow編集、第205〜48頁、Whiley, Chichesterを参照)、及びMolecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、第1〜3巻、Sambrook等編集、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989年)及びCurrent Protocols in Molecular Biology、Ausubel等編集、Greene Publishing and Wiley-Interscience:ニューヨーク(1987年)を含む多くのハンドブック並びにそれらの定期的な改訂版に記載されている。
【0055】
ペプチドプローブを開発するための及び本発明で使用されうる分類群特異的ポリペプチドの検出のためのマイクロアレイを扱うための方法が、当業者に知られ、及びProteomics、Palzkill編集、Kluwer Academic Publishers、2002年及びPeptide Arrays on Membrane Supports:Synthesis and Applications、Mahler編集、Springer-Verlag New York、2002年を含む多くのハンドブックに記載されている。
【0056】
本発明に従う方法では、DNAマイクロアレイの使用が好ましい。そのようなアレイは、分類群特異的核酸マーカーに特異的である配列を有するオリゴヌクレオチドを含み、そして本発明においてオリゴヌクレオチドアレイ、固体担体核酸マイクロアレイ、DNAアレイ又はDNAバイオチップとまたいわれる。
【0057】
本発明に従うDNAマイクロアレイの製造は、当業者に知られている方法によって実行されうる。特定の核酸配列の検出のためのDNAマイクロアレイの製造及び使用は、刊行物(米国特許明細書第5,571,639号;Sapolsky等、1999年、Genet. Anal. -Biomolecular Eng.、第14巻、第187〜192頁;Chee等、1996年、Science、第274巻:第610〜614頁、Shena等、1995年、Science、第270巻、第467〜470頁;Sheldon等、1993年、Clinical Chem.、第39巻、第718〜719頁;Fodor等、1991年、Science、第251巻、第767〜773頁)、及びハンドブック(DNA Microarrays:A Molecular Cloning Manual、Bowtell & Sambrook編集、Cold Spring Harbor Laboratory Press (2002年)、ISBN : 0-87969-625-7)にしばしば記載されている。
【0058】
当業者は、彼自身の設計に従うアレイ及び専門の供給業者から対応するアレイ読み取り装置を得ることが可能であろう(例えば、DNAアレイについて、Affymetrix Corp.、サンタクララ、カリフォルニア州、米国、及びプロテインチップアレイ(Protein Chip Array)についてCiphergen Biosystems、フレモント、カリフォルニア州、米国)。
【0059】
好ましい実施態様では、本発明に従う方法は、少なくとも2つの環境条件(すなわち標準状態と実験条件)間での比較を含み、その結果として、微生物集団の組成のおそらく検出された変化が変更された環境条件によるものとしうる。
【0060】
好ましくは、集団の組成についてのこれら測定は定量的であるが、半定量的又は定性的測定がまた使用されてもよい。
【0061】
この環境条件に暴露された微生物集団の組成を測定することによる環境条件の決定は、単一の測定として実行されうる。また、微生物集団の組成は、複数の環境条件に暴露した後に測定されることができ、1つの特別の、定義された環境パラメータが異なる値で設定される。このようにして、この変化する環境パラメータに起因する微生物集団の組成の特定の変化が決定されうる。
【0062】
複数の既知の環境条件に暴露された微生物集団の組成を測定する際に、1つの特別の、定義された環境パラメータが、異なる値、例えば異なるpHで設定され、参照データファイルがそれに基づいて構築されうるところの参照測定を得ることが可能である。そのようなデータファイルは、例えば環境パラメータが設定された異なる値の第1の変数p、及びこの環境パラメータに暴露された微生物集団の異なる組成の第2の変数Xを含む。
【0063】
微生物集団の組成の測定に、種々の分析技術、例えば統計分析(例えば、多変量解析、又はそれらが存在するような又はそれらが本発明に従う実施態様で使用するために開発されることができるような他の分析技術)が適用されてよい。本発明に従う方法では、分析方法、例えば「自己組織マップ(self-organizing maps)」、階層クラスタリング(hierarchical clustering)、「多次元的尺度構成法(multidimensional scaling)」、主成分分析、「監督付学習(supervised learning」、「k最近傍推定(k-nearest neighbors)」、サポートベクトルマシン(support vector machines)、判別分析及び「部分最小二乗法」の使用が好ましい。変化する、定義された環境条件数から生じる微生物集団の組成における変化をともに記載する測定結果のコレクションの解析は、環境パラメータの値、従って環境条件の値を生じる。
【0064】
発明に従う方法によって未知の環境条件を決定するために、未知の環境条件の決定に先行するステージにおいて参照測定を実行することが好ましい。その後、未知の環境条件に暴露された微生物集団の測定された組成は、微生物集団のこの組成を上記されたデータファイルとの関連後にこの環境境条件の値を与える。
【0065】
本発明の実施態様で使用されるような参照データファイルは、例えば仮想検量線の形でよい。その場合、微生物集団の組成は例えば、現実の数値を有する変数としてデータファイル内に入力されており、そして環境条件のパラメータが現実の数値を有する他の変数としてデータ内に入力されているだろう。
【0066】
さらに、微生物集団の変化する組成の変遷過程(dynamics)は、データファイル内に結果として格納されうる;このようにして、環境条件における変化が、非常に初期の段階ですでに検出されうる。ここで、変遷過程は、第1の本質的に安定な状態から第2の本質的に安定な状態へ遷移の段階にある微生物集団の組成の遷移特徴を意味すると理解される。そのような遷移特徴は例えば、わずかに存在する有機体の短時間の若しくは突然の増加、又は細胞サイズの減少の結果として集団における特定の有機体の集団割合における変化を含みうる。
【0067】
特定の工程からの微生物集団の組成のデータファイルの使用は、例えば測定の結果を先の測定の結果と比較すること、そしてまた、新しい測定を新しい参照測定としてデータファイルに追加することを含んでもよい。従って、結果がますます新しい結果のますます強固な基礎を提供されるように、データファイルがサイズ及び詳細において増加するだろう。
【0068】
微生物集団の組成についての測定の結果と先の測定の結果との比較は、結果の統計的相関によって非常に適切に実行されうる。それ故に、代替の実施態様では、環境条件の決定がなかんずく、微生物集団の組成を、複数の環境条件への前記微生物集団の暴露を通じて得られた複数の組成の予め編集されたデータファイルに関連づけるステップを含む。
【0069】
本発明に従う方法はなかんずく、下記事項のために非常に適切に使用されうる:
−微生物集団におけるシフトを測定することによって、水(ミネラルウォーター、工程水又は精製水)の品質管理;
−開始培養物を測定することによる食品調製工程の管理(及び任意的に調製)(なかんずくチーズ、乳製品及び食肉産業のために);
−土壌細菌叢の分析による農業及び園芸における農作物栽培の最適化;
−製品を微生物の集団に暴露することによって、製品中の望ましくない微生物、例えば腐食有機体、病原体及び品質を落とす微生物の増殖の検出;
−(水)土壌細菌叢の分析による(水)土壌における汚染の検出;及び
−品質及び信頼性の管理のために生物学的に培養された製品の固有の細菌叢(自然の微生物集団)の監視。
【実施例】
【0070】
実験の部
この実験の部は、微生物集団への物理的、化学的環境の影響が決定される2つの独立した実験(A及びB)を含む。
【0071】
実験Aは、選択的な培養培地及び分子測定装置の両方によって分析された人工的集団への環境の影響に関する。
【0072】
実験Bは、ボトルにパッケージされた商業的に入手可能なミネラルウォーター中の細菌集団への自然環境の影響に関する。水細菌は、選択的培養培地によって区別されることができないため、培養は可能でなく、及び分子を測定する装置は、逸脱したミネラルウォーター品質の分析に極めて適している。ミネラルウォーターの中性の性質は、それを官能的逸脱に非常に敏感にさせる。該逸脱は化学的性質である。訓練された鼻は、化学的逸脱を素早く検出しうる。訓練されていない人々は、低濃度における逸脱を必ずしも認識することができない。化学的分析は、逸脱したミネラルウォーターの検出のためにも十分に敏感ではない。それ故に、化学的逸脱は、分子を測定する装置による細菌集団の分析を介して十分に認識されうる。
【0073】
材料及び方法
微生物学的分析
実験Aにおける人工的集団のために、6つの細菌株が使用された:リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)ATCC19114、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida) S12、サルモネラ・セル・チフィムリウム(Salmonella ser. typhymurium) ATCC 13311、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum) ATCC 14917、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)Bacl-12 NCCB 93057及びラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)ATCC 393。該菌株は、37℃、100 rpmで、ブレーンハートインフュージョン(BHI;Brain Heart Infusion)ブロス(OXOID)中で一晩培養された。一晩の培養物から、菌株当たり105コロニー形成ユニット(CFU)/mlの混合物が作成された。この混合物は、100 mlグラス・ボトル中に20 ml のBHIを移植するために使用された。20 mlの体積につき、200μlの細菌混合物が添加された。
【0074】
該混合培養物に、下記の条件が適用された:
1.BHI pH 7、30℃で;参照集団
2.BHI pH 7、48℃で
3.BHI pH 7、30℃でカナマイシン40μg/mlを使用
4.BHI pH 5.0、30℃で
5.BHI pH 7、30℃で1%トルエン及び1 mMの塩化マグネシウムを使用
【0075】
t=0、6、24及び48時間後に、1μlループによって、該混合培養物は、次の選択的な栄養培地MRSA(OXOID)上に置かれた。MRSA(OXOID)は、40μg/mlカナマイシン、ブリリアントグリーン寒天(BGA、OXOID)、PALCAM(OXOID)、シュードモナス寒天基材(PAB、OXOID)及びMYP(OXOID)に接触した。該6つの細菌株がまた、上記の栄養培地上で個々にストリークされた。さらに、6、24及び48時間後に、6 x 1mlの混合培養物が遠心分離され(3 分、10,000 g)、その後、細胞ペレットが、DNA単離のために-80℃で保存された。
【0076】
分子集団の分析
細菌集団からのDNA単離は、Bead Beater方法(Hurley等、1987年、J. Clin. Microbiol.、第25巻、第2227〜9頁、及びerratum in J. Clin. Microbiol. 、第26巻:第1077頁)に従い実行された。この目的のために、該細胞ペレットが解凍され、その後に400μlのTE、400μlの0.1 mmジルコニウムビーズ及び400μlのフェノールが添加された。この混合物は、中間設定で2分間撹拌された。その後、それは24,000gでエッペンドルフ遠心分離機において5分間遠心分離された。上層は500μlのクロロホルムを使用して抽出され、そして遠心分離された(エッペンドルフ遠心分離機において24,000g)。水層は新しいエッペンドルフチューブに移され、その後、DNAが、-80℃で、1/10体積の3M酢酸ナトリウム(pH 5.2)、グリコーゲン(200μg/ml)及び2体積の96%エタノールを添加することによって沈殿された。1時間後、この冷混合物は、2分間、エッペンドルフ遠心分離機において遠心分離された。該ペレットは、70 %エタノールを使用して洗浄され、そして真空乾燥された。その後、該DNAは100μg/ml RNaseを有するTE中に溶解され、そして37℃で30分間、インキュベーションされた。
【0077】
細菌群集の組成を可視にするために、変性グラジエントゲル電気泳動(DGGE)が使用された。この目的のために、Favier等、(2002年) Appl Environ Microbiol.、2002年、第68巻:第219-26頁のプロトコルが使用された。簡単に云えば、細菌混合物のDNAの5〜40ngが、PCR反応にもたらされ、その中で、16S rDNAのV6〜V8領域が増幅された。
DGGEのために、PCRが次の組成で開始された:
ストックからの1μl又は10μlのDNA
5μlのゴールドスター(Goldstar)バッファーHOT(Eurogentec、セラン、ベルギー)
5μlのd’NTPs
6μlのゴールドスター塩化マグネシウム(25mM)
1μlのU968-GC(10 pmol/μl)
1μlのL1401(10 pmol/μl)
0.25μlのゴールドスターtaqポリメラーゼHOT
30.75又は21.75μlのミリ(milli)Q
【0078】
次のPCRプログラムが増幅のために使用された:10分間 94℃;30×(10秒 94℃、20秒 56℃、そして40秒 68℃);7分 68℃;4℃保持。PCRを確認するために、10μlのPCR生成物が、1.2%アガロースゲルにおいて電気泳動された。
【0079】
結果
実験A:細菌集団への人工的条件の影響
細菌成長
細菌集団における変化の展開が、選択的栄養培地でストリークすることによって追跡された。これは、支配的な化学的物理的条件の結果として集団において生じる変化の大まかな指標を提供した。30℃でのBHI培地において、全ての導入された種がまだ見付けられた。48℃で、B. subtilisは、非常に短い時間内で優位になり、そして全ての他の種は選択的な培地上でもはや見つけられなかった。カナマイシンを有するBHI培地では、L. plantarumが優位になった。最初に、他の種が、t=6時間でなお見つけられた。この後、L. plantarum及びP. putidaだけが存在した。pH4.5でのBHI培地では、ラクトバチラス種が特に優位になった。ここで同様に、我々はまた、t=6時間で選択的培地上で他の種を最初に見つける。トルエンを有するBHI培地では、我々は、全ての種の迅速な死を見つける。t=48で、L. plantarumの成長が再び検出される。
【0080】
細菌集団の分子組成
細菌集団における変化の展開がまた、存在するリボソームのヌクレオチド配列のDGGE分析によって追跡された。ここで、バンドは個々の種を表わす。
【0081】
図1及び2は、異なる培地における時間及び環境条件の結果としてのDGGEバンドパターンを示す。
【0082】
図1は、Li. Monocytogenes、P.putida、Salmonella ser. typhymurium、L. plantarum、B. subtilis及びL. caseiからなる細菌集団に対する、6時間後の工程条件の影響を示す。
【0083】
レーン1、参照集団;レーン2、Li. monocytogenes;レーン3、P. putida;レーン4、S. typhymurium;レーン5、L. plantarum;レーン6、B. subtilis;レーン7、L. casei;レーン8、参照集団、t=0時間;レーン9、参照集団、t=6時間;レーン10、48℃、t=6時間;レーン11、カナマイシン、t=6時間;レーン12、pH 4.5、t=6時間;レーン13、トルエン、t=6時間;及びレーン14、参照集団。
【0084】
図2は、Li. Monocytogenes、P.putida、Salmonella ser. typhymurium、B. subtilis、L. casei及びL. plantarumからなる細菌集団に対する、24及び48時間後の工程条件の影響を示す。
【0085】
レーン1、参照集団、t=0;レーン2、参照集団、t=24時間;レーン3、48℃;レーン4、カナマイシン、t=24時間;レーン5、pH 4.5、t=24時間;レーン6、トルエン、t=24時間;レーン7、参照集団、t=0;レーン8、参照集団、t=48時間;レーン9、48℃、t=48時間;レーン10、カナマイシン、t=48時間;レーン11、pH 4.5、t=48時間;レーン12、トルエン、t=48時間;及びレーン13、参照集団、t=0。
【0086】
選択培地上での細菌成長の分析によって示された図に沿って、我々は、集団が時間とともにシフトすることを理解する。30℃でのBHIにおける参照集団では、全てのバンドがサンプリングの異なる時間で可視のままであった。他の物理的化学的条件の使用で、バンドパターンの変化が検出された。t=6時間では、B. subtilisバンドが非常に優位になるところの48℃でのインキュベーション(図1、レーン10)を除き、該変化はしばしばまだ明らかに可視でない。t=0条件と比較された大きな差が、t=24及び48時間に生じた。これら差が、選択的栄養培地上で可視であったことと平行する。例外は、t=24及び48時間での参照集団である(図2、夫々レーン2及びレーン8)。これら集団では、Salmonella及びP. putidaが特に優位になる。カナマイシンの存在下で、t=24時間では、L. plantarumは、P. putidaの小さな割合とともに優位種として見出される。次に、t=48時間では、P. putidaは、限定された割合のL. plarztarumとともに優位種になったと見出された。低いpH(4.5)では、L. plantarumは特に優位になった。L. caseiは低いpHで小さな役割を果たす。トルエンの存在下において、全ての種の強い衰退が、t=24まで見られ、薄い(light)バンドのみが可視的である。次に、t=48では、L. plantarumが、優位になったと見出された。L. plantarumがトルエン耐性微生物として記載されていなかった故に、後者は驚くべきである。結論として、物理的化学的条件が細菌集団の組成を決定すると述べられうる。条件に依存して、異なる集団組成が発生する。
【0087】
実験B:バクテリア集団への自然条件の影響。
実験Bは、ボトルにパッケージされた商業的に入手可能なミネラルウォーター中の細菌集団への自然の環境影響に関する。結果が図3に示される。図3は、1つの供給業者からのミネラルウォーターサンプルのDGGEパターンを示す。レーン1〜7は、官能逸脱の無いよいミネラルウォーターの「ベースライン」集団である。レーン8〜14は、官能逸脱を有するミネラルウォーターのパターンを示す。
【0088】
質的によいミネラルウォーターのベースラインDGGEパターンは、すべて非常に類似する(図3、レーン2〜7)。対応するミネラルウォーターは、何ら官能異常を示さなかった。官能的に逸脱したミネラルウォーターのDGGEパターンは、ベースラインパターンと比較して、逸脱したパターンを示した。サンプル(図3、レーン13)は特に、非常に強く逸脱する。これはまた、最強の官能逸脱を有するサンプルであった。この水では、DGGEパターンにおけるすべての他のバンドが消えた程に、1つの種が、非常に優位になった。生じた官能の変化は、訓練された検査官によってにおいを嗅ぐことによってのみ検出されることができた。訓練されていない鼻は、官能異常をしばしば検出できなかった。変化がppmレベルで生じる故に、変化が、化学的分析を介する従来技術の方法論によってまだ測定されることができなかった。細菌集団の分析は、明らかな差を示した(図3、レーン8〜14)。
【0089】
結論として、我々は、ミネラルウォーターの化学組成における微妙な差が、細菌集団に向けられた分子測定装置によって明らかに可視可能にされることが出来ると述べてよい。
【0090】
結論
環境における物理的化学的変化は、分子の法則に基づいた測定装置によって測定されうる細菌集団の組成における変化に基づき、測定され且つ読み取られることができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】異なる培地での時間及び環境条件の結果としてのDGGEバンドパターンを示す。
【図2】異なる培地での時間及び環境条件の結果としてのDGGEバンドパターンを示す。
【図3】1つの供給業者からのミネラルウォーターサンプルのDGGEパターンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境条件に暴露された微生物集団の組成を測定することによって、前記環境条件を決定するための方法。
【請求項2】
環境条件における変化に暴露された微生物集団の組成における変化を測定することによって、前記環境条件における変化を決定するための方法。
【請求項3】
環境条件を決定するための方法であって、前記環境条件に暴露された微生物集団の組成を測定すること、前記組成を、複数の環境条件への前記微生物集団の暴露を通じて得られた複数の組成の予め編集された参照データファイルに関連づけること、そして前記関連の結果に基づき前記環境条件を決定することを含む方法。
【請求項4】
前記微生物集団が、細菌、真菌及び/又は酵母を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記微生物集団が、腸内細菌叢又は土壌細菌叢である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記微生物集団が、特定の工程内に導入された又は特定の工程内で自然に生じる微生物集団である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記測定が、分類群特異的マーカーの使用を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記分類群特異的マーカーが核酸マーカーである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記微生物集団の前記組成が、1以上のマイクロアレイによって決定される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法を含む、環境条件を管理する又は監視するための方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法を含む、工程を管理するための方法。
【請求項12】
水の品質管理のために、食品調理工程の管理のために、農作物栽培の最適化のために、土壌における生分解の最適化のために、土壌汚染の検出のために、又は望ましくない微生物の検出のために、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法を使用する方法。
【請求項13】
土壌、大気における及び/又は水性環境における化学物質を決定するために、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法を使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−509506(P2006−509506A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558566(P2004−558566)
【出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【国際出願番号】PCT/NL2003/000885
【国際公開番号】WO2004/053147
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(502015784)ネーデルランドセ オルガニサティエ フォール トエゲパストナトールヴェテンシャッペリク オンデルゾエク ティエヌオー (41)
【Fターム(参考)】