説明

微粒子を含む活性剤溶出マトリックス

本発明は、親水性生物活性剤の制御放出用ポリマーマトリックスに関する。主に、溶出制御マトリックスは、第一のポリマー及び親水性生物活性剤を含む複数の微粒子を有するポリマーマトリックスを含む。一実施形態では、マトリックスは、親水性及び疎水性部位を含むポリマーを含む。別の実施形態では、微粒子は架橋親水性ポリマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本非仮特許出願は、「ACTIVE AGENT ELUTING COATINGS WITH PARTICULATES」の名称で2006年6月28日に出願された米国仮特許出願第60/806,030号の35USC119(e)に基づく優先権を主張し、前記仮特許出願の全ては参照により本書に含まれる。
【0002】
本願発明は、親水性薬剤送達用ポリマーマトリックス及び関連方法に関する。より詳細には、本願発明は、微粒子を含むポリマーマトリックス及び関連方法に関する。
【背景技術】
【0003】
時として、全身投与の代わりに、特異的に局在化した標的組織に生物活性剤を与えることにより治療効果が得られる。他の組織上への副作用を最小化しながら、標的組織上の活性剤の効果を最大化できるからである。生物活性剤の放出を制御する方法で、生物活性剤を対象に与えることによっても治療効果が得られる。生物活性剤の放出を制御すると、標的組織部位の生物活性剤の濃度を、より堅実な治療濃度に保つことができる。
【0004】
放出を制御した部位特異的薬剤送達を提供する1つの手法は、医療デバイスに配置された生物活性剤溶出塗装システムを使用することである。この塗装は、生物活性剤が溶出する速度の制御を可能にする。さらに、その塗膜が医療デバイスに配置され、医療デバイスが所定の患者の体内に配置されるので、生物活性剤の送達は部位特異的となり得る。
【0005】
しかし、同種の生物活性剤は、支持体上に塗布するのに使われる溶剤と接触すると、分解するか、その活性を失うことがある。さらに、その塗装システムは、特異的生物活性剤の望ましい溶出速度制御を提供できないことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故に、生物活性剤の活性を保つことができるポリマーマトリックス及びそれらの調製法(例えば塗装)が必要とされている。所望の生物活性剤の溶出速度制御を提供できるポリマーマトリックスも必要とされている。
【0007】
タンパク質などの幾つかの生物活性剤は、それらの三次構造に左右される活性を示す。三次構造は、温度、溶媒、他の溶質、アクセサリー分子(例えばシャペロニン)などの、生物活性剤そのもの以外の各種の因子に影響される。したがって、生物活性剤の活性は、不意に消えるか、生物活性剤が受けるハンドリング条件の結果として消えてしまうことさえある。
【0008】
生物活性剤を、溶液を形成するマトリックス中に入れて、次にその溶液を支持体に配置する方法(例えば吹き付け)は、各種の溶媒への接触、他の分子への接触、及び様々な温度への暴露を伴うことがある。分子の三次構造上でのそれらの潜在的な影響によって、それらの全条件が、潜在的には生物活性剤の活性に悪影響を与えることがある。
【0009】
生物活性剤の活性を保護する一手法は、微粒子としてそれを配合することである。微粒子としてならば、ポリマー溶液中に生物活性剤を分散して、支持体上にそれを塗布する工程中に、生物活性剤を保護できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、生物活性剤を対象へ送達するのに有用な微粒子を有するポリマーマトリックスに関する。
【0011】
実施形態では、本発明としては、制御された態様で親水性生物活性剤を放出できる溶出制御マトリックスが挙げられる。この溶出制御マトリックスは、少なくとも、疎水性の第一のポリマー、疎水性及び親水性セグメントを含む第二のポリマー、並びにマトリックス内に分散した複数の微粒子(該微粒子は親水性生物活性剤を含む)から形成されたポリマーマトリックスを含む。
【0012】
第一のポリマー材料は、微粒子を形成する骨格、及び、幾つかの態様では埋め込み型デバイスの表面上の被膜として適切な骨格を備える。該微粒子は、マトリックス内に分散していて、溶出マトリックスが溶出環境に置かれると親水性生物活性剤を放出できる。親水性生物活性剤(微粒子状である)は、個々のミクロドメイン内のマトリックスの至る所に分散していてよい。親水性生物活性剤については、微粒子の使用は、マトリックス内で親水性生物活性剤を凝集させる又はほとんど分散させないであろう他のマトリックス形成工程に比べて、有利である。
【0013】
さらに、該微粒子は生物活性剤の放出を制御する態様を提供できる。所望により、該微粒子は、親水性生物活性剤の活性を安定化するポリマー(第一又は第二のポリマーと異なるものなど)と合わせてもよく、及び/又は微粒子からの親水性生物活性剤の放出を別の水準で制御することもできる。
【0014】
第二のポリマーは、その疎水性及び親水性を考慮すると、微粒子及びマトリックスからの生物活性剤の放出を促進し、調節する。幾つかの具体的な態様では、マトリックス中の、第二のポリマー:微粒子の重量比は、0.1:1〜10:1、より具体的には0.5:1〜1:1である。
【0015】
第一のポリマー、第二のポリマー、及び親水性生物活性剤を含む微粒子の特定の組み合わせ及び特性は、溶出制御マトリックスが対象に配置されたときに、親水性生物活性剤の制御放出にとって著しく効果的なシステムを提供する。例えば、本発明の溶出制御マトリックスは、親水性生物活性剤の短期バーストを防ぐことができる(そうしなければ、短期バーストは、マトリックスからの親水性生物活性剤を減少させて、その治療的有用性を落とすであろう)。
【0016】
より具体的な態様では、微粒子は巨大分子の親水性生物活性剤を含む。例えば、巨大分子の生物活性剤は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、及び多糖類からなる群から選択してよい。典型的なポリペプチドとしては、抗体及びFabフラグメントのような抗体フラグメントが挙げられる。多くの態様では、微粒子の大部分又は全部は、Fab微粒子のような、親水性生物活性剤からなる。微粒子の大部分又は全部が親水性生物活性剤からなるとき、溶出制御マトリックスは高い生物活性剤重量を有する。例えば、幾つかの態様では、微粒子重量を基準として、親水性生物活性剤がマトリックスに30〜70固形重量%存在する。
【0017】
高重量の生物活性剤を用いると、マトリックスの成分が提供する溶出制御に加えて、マトリックスが作られたことによって、持続放出プロフィールを有するマトリックスから親水性生物活性剤が放出される。この場合には、本願発明の微粒子含有マトリックスの持続放出プロフィールは、より長く、より治療に有用な期間に亘って、埋め込み型医療デバイスから親水性生物活性剤を放出させる。本願発明の溶出制御マトリックスは、より長い治療を必要とする医療条件の治療に特に有用となり得る。例えば、幾つかの態様では、数ヶ月間に亘る医療条件の部位特異的治療のために、溶出制御マトリックスを血管内又は眼内に入れることができる。
【0018】
溶出制御マトリックスは、塗膜の形態でよく、埋め込み型医療デバイスの全部又は一部に存在してよい。本願発明の成分は、埋め込み型医療デバイスの表面上に望ましい塗膜を形成するのに適している。体の標的部位に配置すると、親水性生物活性剤を制御された態様で塗膜から放出させることができる。
【0019】
別の実施形態では、本願発明としては、溶出制御マトリックスを形成する方法が挙げられる。その方法は、疎水性の第一のポリマー、疎水性及び親水性セグメントを含む第二のポリマー、並びに組成物に分散した複数の微粒子(ただし、その微粒子は親水性生物活性剤を含む)を含む組成物を準備する工程を含む。その方法は、支持体の表面上にその組成物を配置する工程も含む。幾つかの具体的な実施の態様では、その方法は、支持体上にその組成物を吹き付け塗装して、塗膜を形成する工程を含む。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも、疎水性の第一のポリマー、及びマトリックスに分散した複数の微粒子(ただし、その微粒子は親水性生物活性剤及び架橋親水性ポリマーを含む)からなるポリマーマトリックスを含む溶出制御マトリックスを提供する。典型的な親水性ポリマーとしては、ペンダント型カップリング基によって架橋している、マルトデキストリン及びポリアルジトールなどの、天然生分解性多糖類が挙げられる。この架橋ポリマーは、親水性生物活性剤をカプセル化する微粒子面上では、被膜の形態になり得る。架橋ポリマーは、微粒子の至る所に架橋マトリックスを形成することもできる。
【0021】
本発明は、次の図面と関連させることで、より良く理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】塗装された金属コイルからの活性IgGの溶出を示すグラフである。
【図2】塗装された金属ステントからの活性IgGの溶出を示すグラフである。
【図3】塗装された金属ステントからの全IgGの溶出を示すグラフである。
【図4】塗装された金属コイルからの全IgGの溶出を示すグラフである。
【図5】塗装された金属コイルからの全IgGの溶出を示すグラフである。
【図6】粒子からの全IgGの溶出を示すグラフである。
【図7】粒子からの全IgGの溶出を示すグラフである。
【図8】塗装された金属コイルからの全Fabの溶出を示すグラフである。
【図9】塗装された金属コイルからの全Fabの溶出を示すグラフである。
【図10】塗装された金属コイルからの全Fabの溶出を示すグラフである。
【図11】塗装された金属コイルからの全Fabの溶出を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここで説明した本願発明の実施形態は、包括的になること又は本発明を次の詳細な説明で開示される明確な形態に限定することを目的とするものではない。それどころか、その実施形態は、他の当業者が本願発明の原理や実施について正しく評価して理解できるように、選ばれて説明されている。
【0024】
ここで述べた全ての公開公報及び特許公報は参照によりここに含まれる。ここで開示された公開公報及び特許公報は、単にそれらを開示するために提供されている。本書には、本発明人らが、ここで引用した任意の公開公報及び特許公報などの、任意の公開公報及び/又は特許公報によって新規性を失うことを自白していると解釈されるものはない。
【0025】
主に本願発明は、親水性生物活性剤の放出を制御する微粒子含有ポリマーマトリックスに関する。主にマトリックスは、親水性生物活性剤がマトリックスから放出されて対象に適用される体組織又は液体(「溶出環境」)と接触できるように構成されている。生物活性剤の放出は部位特異的であり、医療条件を扱うのに利用できる。
【0026】
溶出制御マトリックスは、生物活性剤を放出する効果的なビヒクルを供給する任意の1つ又は複数の様々な形態でよい。幾つかの態様では、溶出制御マトリックスは、埋め込み型医療デバイス(例えば本書で提供されるもの)の表面上では塗膜の形態で存在する。注目すべきは、本発明の多くの具体的な組成が、溶出制御マトリックスを強度、コンプライアンス、耐久性などのような望ましい性質を有する塗膜状にするのに適切していることである。
【0027】
溶出制御マトリックスは他の形態でもよい。例えば、溶出制御マトリックスは医療デバイス内に、例えばデバイスの内部空間(例えば管腔)に、形成することが可能であり、そのデバイスは、生物活性剤がデバイスの一部から、例えばデバイスに付設された開口部又は膜から、及び生物活性剤が通過できるものから放出されるように配置されている。
【0028】
別の形態では、溶出制御マトリックスをインプラントそのものとして製造できる。この場合には、溶出制御マトリックスは、フィラメント、コイル、又は人工装具のようなインプラントの形態である。インプラント形態の溶出制御マトリックスは、親水性生物活性剤を放出する容器として機能できるし、それを含んでもよい。該構造体は(その薬剤放出能に加えて)、対象に設置されると機械的特性を提供できる。
【0029】
実施形態では、本発明としては、第一のポリマーを含むポリマーマトリックス及び該ポリマーマトリックス内に分散した複数の微粒子を有する、溶出制御塗膜が挙げられる。今や本発明の様々な態様をより詳細に説明する必要があろう。
【0030】
溶出制御マトリックスは非分解性、部分的分解性、又は完全分解性でよい。分解性及び非分解性ポリマーの両方を本発明の実施形態で使用できる。幾つかの態様では、マトリックスの一部は、生物活性剤の放出を促進及び制御できる分解性ポリマーを含む。幾つかの態様では、微粒子は分解性ポリマーを含む。
【0031】
溶出制御塗膜に分解性ポリマーを使用すると、生物活性剤がマトリックス自体から拡散する工程にだけ依存することのない、生物活性剤の溶出速度を制御する有益な効果を提供できる。さらに言えば、マトリックスの一部が浸食(例えば、バルク又は表面浸食による)されるので、生物活性剤は溶出制御塗膜から局所的環境中へ放出される。
【0032】
ポリマーに関してここで使われる用語「分解性」とは、生理的条件(酵素又は非酵素過程)下では、ある期間で構成成分に分解する天然又は合成ポリマーをいうものとする。一例として、多くの分解性ポリマーは、そのポリマー骨格内に、加水分解に不安定な結合を含む。用語「分解性(erodible)」、「生体内分解性(bioerodible)」、「生分解性(biodegradable)」及び「非耐久性」は、用語「分解性(degradable)」と同じ意味で使われるものである。
【0033】
一例として、多くの分解性ポリマーは、ポリマー骨格内に加水分解に不安定な結合を含む。これらの加水分解に不安定な結合の開裂によって、ポリマーの分解が起こる。他の分解性ポリマー(天然生分解性ポリマーなど)は、開裂してポリマーの分解を起こす酵素開裂性結合を含む。これらのポリマーは、酵素的に分解するが、通常は非酵素的で加水分解に安定である。さらに、本発明の溶出制御マトリックスに使用できる他の種類のポリマーには、酵素開裂性結合及び加水分解に不安定な結合の両方がある。
【0034】
本発明の幾つかの実施形態では、本発明の溶出制御マトリックスは3つの以上の成分を含む。一の成分は疎水性ポリマーである。疎水性ポリマーは、微粒子が存在するポリマーマトリックスの少なくとも一部を形成できる。別の成分は、マトリックスに固定され得る親水性生物活性剤を含む一組の微粒子であり、それから親水性生物活性剤が放出され得る。別の成分は、疎水性及び親水性セグメントを含む第二のポリマーである。多くの態様では、第二のポリマーは、第一のポリマーを有するマトリックスに含まれている。
【0035】
本発明の態様を説明するために、第一のポリマー、第二のポリマー、及び微粒子を含む組成物から溶出制御マトリックスを調製する方法が開示される。溶出制御マトリックスは、他の方法によって調製してもよく、その幾つかはここで説明される。
【0036】
本発明の溶出制御マトリックスは、1つ又は複数の生物活性剤を含むことができる。少なくとも、溶出制御マトリックスに存在する微粒子は、親水性生物活性剤を含む。
【0037】
本発明によれば、親水性生物活性剤は微粒子の形態で提供される。溶出制御マトリックスでは、本発明の微粒子は、本質的には親水性生物活性剤のミクロドメインである。微粒子の形態で親水性生物活性剤を使用すると、マトリックス内に生物活性剤が望ましく配分されているマトリックスを調製できるという利点がある。ここで述べたマトリックス材料と併用して微粒子を使用すると、生物活性剤の放出が制御されるという利点もある。さらに別の利点として、理論的には、微粒子内において生物活性剤は、単純に溶液中又は溶液を含むエマルション中で溶媒和されるならば、構造的に変化させようとする力を受けないので、微粒子の形態は生物活性剤の活性を保つことができる。
【0038】
本発明の実施形態で使われる微粒子は、望ましい生物活性剤の溶出速度を提供できるように構成してよい。微粒子から生物活性剤が溶出する速度は、微粒子の粒径、ポリマー、添加剤、又は溶媒などの微粒子中の他の選択的成分の存否、微粒子内の物質の浸食特性、多孔度などの微粒子の構造特性、オーバーコートなどの様々な要因に依存するものである。
【0039】
本書の用語「微粒子」は、(個別に分離した微粒子として観測されたときに)直径1mm未満の粒径を有する溶解していない微粒子状物をいうものとする。用語「微粒子」はナノ粒子すら包含する。特定の態様では、溶出制御マトリックスは、約10nm〜約100μmの平均粒径(「dn」、数平均)を有する一組の微粒子を含む。幾つかのより具体的な態様では、溶出制御マトリックスは、約100nm〜約25μm、約500nm〜約15μm、さらに具体的には約1〜10μmの平均粒径を有して使用される一組の微粒子を含む。実施形態では、微粒子は約5μm以下である。
【0040】
幾つかの本発明の態様では、より小さい平均粒径を有する種類の微粒子が、溶出制御マトリックスを調製するのに使われる。より小粒径の微粒子を使って、マトリックスからの放出の速度及び時間のような、親水性生物活性剤の放出性を改良してよい。より小粒径の微粒子を使って、マトリックス形態の態様を改良してもよい。例えば、より小さい微粒子は、より平滑な塗膜を提供できるし、塗装装置を詰まらせることも少ない。幾つかの態様では、微粒子は約10μm未満の粒径を有する。
【0041】
多くの態様では、溶出制御マトリックスは、球状又は実質的に球状の粒子を含む。球状粒子では、(微粒子の)中心から微粒子の外面への距離は、微粒子の表面上のいずれの点でもほぼ同じであろう。半径に差があったとしても、通常は最小半径と最大半径の差が、小さい方の半径の約40%以下、より典型的には約30%未満、又は20%未満であるものが、実質的に球状の微粒子である。
【0042】
本発明の微粒子は親水性生物活性剤を含む。親水性生物活性剤は、1部以上の活性剤/50部の水という溶解度を有する。より具体的な態様では、親水性生物活性剤は、可溶性(1部以上の活性剤/10〜30部の水という溶解度を有する)か、溶けやすい(1部以上の活性剤/1〜10部の水という溶解度を有する)か、又は極めて溶けやすい(1部を超える活性剤/1部の水という溶解度を有する)ものでよい。溶解度を表すこれらの記述用語は、その技術分野(例えば、「Remington: The Science and Practice of Pharmacy(第20版(2000年)、Lippincott Williams & Wilkins、メリーランド州ボルチモア)」を参照)で使われる標準用語である。
【0043】
幾つかの態様では、親水性生物活性剤は巨大分子である。親水性巨大分子は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、及び多糖類のような化合物によって例示される。親水性巨大分子は、約1000Da以上、5,000Da以上、又は10,000Da以上の分子量を有する。
【0044】
幾つかの具体的な態様では、微粒子はポリペプチドを含む。ポリペプチドとは、2つ以上のアミノ酸残基を含有するオリゴマー又はポリマーをいい、該技術分野ではタンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド等と呼ばれている化合物を包含することを目的とする。一例として、ペプチドは抗体(モノクロナール及びポリクロナール)、抗体誘導体(二重特異性抗体、f(ab)フラブメント、ヒト化抗体などを含む)、サイトカイン、増殖因子、受容体リガンド、酵素などを含んでよい。ポリペプチドは、別の生体分子又は生体適合性化合物で変性されるもの又はそれらと複合化したものを含んでもよい。例えば、ポリペプチドは、ペプチド‐核酸(PNA)複合体、多糖類‐ペプチド複合体(例えば、グリコシル化ポリペプチド;糖タンパク質)、ポリエチレングリコール‐ポリペプチド複合体(PEG化ポリペプチド)でよい。
【0045】
粒子の幾つかの形態では、微粒子は、約10,000Da以上、又は約20,000Da以上、より具体的には約10,000〜100,000Da、又は約25,000〜75,000Daの分子量を有するポリペプチドから調製される。
【0046】
本発明の微粒子を形成できるポリペプチドの一種としては、抗体及び抗体フラグメントが挙げられる。各種の抗体及び抗体フラグメントは入手可能であり、沈殿又は沈殿サンプルにより得られ、又は当技術分野で知られているような手法により調製できる。例えば、モノクロナール抗体(mAbs)は、培養下での連続的セルラインにより抗体分子の製造を行なう任意の手法により得ることができる。これらとしては、例えば、ハイブリドーマ法(Kohler及びMilsteinの、「Nature」、256:495‐497(1975));ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kosborらの、「Immunology Today」、4:72(1983);及びEBV‐ハイブリドーマ法(Coleらの、「Monoclonal Antibody and Cancer Therapy」、Alan R. Liss社、pp.77‐96(1985))が挙げられる。そのような抗体はIgG、IgM、IgE、IgA、IgD及びこれらの任意のサブクラスなどの任意の免疫グロブリンのクラスのものでよい。
【0047】
Fab又はFab’2フラグメントは、それぞれ、パパイン又はペプシン分解を含む標準的手法により、モノクロナール抗体から発生させてよい。Fab又はFab’2フラグメントを発生させるキットは、例えばPierce Chemical(Rockford, IL)社から市販されている。
【0048】
本発明の微粒子を調製するのに使用可能な抗体及び抗体フラグメントの例としては、限定されるものではないが、治療用抗体としては、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、ヒト化抗HER2モノクロナール抗体(mAb);アレムツズマブ(Campath(登録商標))、ヒト化抗CD52mAb;ゲムツズマブ(Mylotarg(登録商標))、ヒト化抗CD33mAb;リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、キメラ抗CD20mAb;イブリツモマブ(Zevalin(登録商標))、β放射性ラジオアイソトープと複合化したマウスmAb;トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、マウス抗CD20mAb;エドレコロマブ(Panorex(登録商標))、マウス抗上皮細胞接着分子mAb;セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、キメラ抗EGFRmAb;ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、ヒト化抗VEGFmAb、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、抗血管内皮増殖因子mAbフラグメント、サツモマブ(OncoScint(登録商標))抗pan癌腫抗原(Tag-72)mAb、ペルツマブ(Omnitarg(登録商標))抗HER2mAb、及びダクリズマブ(Zenapax(登録商標))抗IL‐2受容体mAbが挙げられる。
【0049】
ポリペプチドは細胞応答調節因子から選択してもよい。細胞応答調節因子としては、血小板由来増殖因子(PDGF)、色素上皮由来因子(PEDF)などの化学走化性因子、好中球活性化タンパク質、単球走化性タンパク質、マクロファージ刺激タンパク質、SIS(小型誘導分泌)タンパク、血小板因子、血小板塩基性タンパク質、メラノーマ増殖促進効果、表皮増殖因子、形質転換増殖因子(α)、線維芽細胞増殖因子、血小板由来内皮細胞増殖因子、インスリン様増殖因子、神経増殖因子、血管内皮増殖因子、骨形態形成タンパク質、及び骨増殖/軟骨誘導因子(α及びβ)が挙げられる。他の細胞応答調節因子は、インターロイキン、インターロイキン阻害剤又はインターロイキン受容体、インターロイキン1〜インターロイキン10など;インターフェロン、α、β、γなど;造血因子、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子及び顆粒球‐マクロファージコロニー刺激因子など;腫瘍壊死因子、α及びβなど;形質転換増殖因子(β)、β‐1、β‐2、β‐3、インヒビン、アクチビンなどである。
【0050】
ポリペプチドは、プロテアーゼ、ホスホリパーゼ、リパーゼ、グリコシダーゼ、コレステロール・エステラーゼ、及びヌクレアーゼなどの治療用酵素から選択してもよい。
【0051】
具体例としては、組み換えヒト組織プラスミノゲン活性化因子(アルテプラーゼ)、RNaseA、RNaseU、コンドロイチナーゼ、ペガスパルガーゼ、アルギニンデアミナーゼ、ビブリオリシン、サクロシダーゼ、N‐アセチルガラクトースアミン‐4‐スルファターゼ、グルコセレブロシダーゼ、α‐ガラクトシダーゼ、及びラロニダーゼが挙げられる。
【0052】
本発明の多くの態様では、微粒子の大部分又は全体は親水性生物活性剤からなる。例えば、微粒子ポリペプチドは、親水性生物活性剤を約90重量%以上、約95重量%以上、約98重量%以上、さらには約99重量%以上含んでよい。対象に適用できる親水性生物活性剤の量を微粒子の投与後に最大化できるから、これは多くの治療法において重要である。
【0053】
幾つかの調製では、溶出制御マトリックスは、大部分がポリペプチドからなる微粒子を含む。例えば、ポリペプチド微粒子は、本願と同日付で出願された共同特許出願 号、名称「Polypeptide Microparticle」、代理人整理番号SRM0101/P1で説明されたように形成してよい。一般に、ポリペプチドを核形成剤と融合させてポリペプチド核を形成する工程;相分離剤を溶液と混合して、さらにポリペプチド核の周囲にポリペプチドを融合させることによって、混合物を形成する工程;混合物を冷やしてポリペプチド微粒子を形成する工程;及びポリペプチド微粒子から相分離剤の全部又は一部を除去する工程によって、これらの微粒子を溶媒中で形成する。本方法によって、大部分が抗体又は抗体フラグメントから形成された微粒子を調製するのに特に有利であり、また所望の粒径の微粒子を有し、低粒径のポリ分散度を有し、及び良好なポリペプチド活性を維持している微粒子が提供されることが分かった。
【0054】
所望により、微粒子は、親水性生物活性剤とは異なる成分を含んでよい。選択的成分は、生物活性剤の溶出速度を追加的に制御するという利点を提供できる。幾つかの実施形態では、選択的成分は、生物活性剤の活性の保護を強化するという利点を提供できる。この成分は、ポリマーでよく、また溶出制御マトリックスの第一及び第二のポリマーと異なってよい。マトリックスの組成(すなわち、マトリックスを形成するのに使われる異なったポリマーの数)によって、選択的ポリマーは、「第三のポリマー」、「第四のポリマー」等ということができる。
【0055】
微粒子に使われる選択的ポリマーは分解性又は非分解性でよい。具体的なポリマーは、生物活性剤との相溶性などの各種の要因、ポリマーが分解性かどうか、浸食の速度と種類(バルク又は表面)、及び塗料を塗布するのに使われる溶剤との相溶性又は非相溶性、に基づいて選択してよい。
【0056】
このポリマーは、粒子内で、粒子の表面上で、又はその両方で架橋させてよい。該ポリマーは、架橋が実施されるように、重合性基、又は反応対(例えば、アミン及びアミン反応性基)の反応性基のようなカップリング基を含んでよい。重合開始剤を含有させて、ポリマーと重合性基(マクロマー)との架橋を促進してよい。
【0057】
実施形態では、微粒子は分解性ポリマーを含む。分解性ポリマー自体からの又は分解性ポリマーの浸食(バルク又は表面浸食)からの生物活性剤の拡散によって、分解性ポリマーを含む粒子から生物活性剤を溶出させてよい。分解性ポリマーは、より詳細に後述するものを含んでよい。
【0058】
幾つかの調製では、微粒子は天然生分解性多糖類を含む。この微粒子は、架橋マトリックス内に親水性生物活性剤を備えた状態で、天然生分解性多糖類の架橋マトリックスの形状をなしてよい。該微粒子には、天然生分解性多糖類の架橋マトリックスの塗膜又はシェルがあってもよい。例えば、その塗膜又はシェルは、生物活性剤の中核を包含してよい。この態様では、中核は前述のポリペプチド微粒子でよい。
【0059】
粒子の幾つかの望ましい態様では、生分解性多糖類は、500,000Da以下の分子量を有し、ペンダント型カップリング基(多糖類架橋を可能にする)を含む。ペンダント型カップリング基は、重合性基、又は反応対(アミン及びアミン反応性基など)をなす化学基の形態でよい。典型的な生分解性多糖類としては、アミローゼ、マルトデキストリン、及びポリアルジトールが挙げられる。
【0060】
幾つかの実施形態では、使用される微粒子は実質的に単分散系である。他の実施形態では、使用される微粒子は多分散系である。幾つかの用途では、実質的に単分散の微粒子からの溶出速度は、他の類似の多分散微粒子からの放出速度よりも安定しているので、実質的に単分散の微粒子を使用すると有利である。
【0061】
特徴的な溶出速度を有する微粒子を、同一又は異なる特徴的な溶出速度を有する他の微粒子と合わせてよい。異なる特徴的な放出速度を有する粒子を合わせることにより、粒子からの、及び粒子が分散されるマトリックスからの生物活性剤の全放出速度を、所望する通りに制御できる。例えば、、塗膜中で、比較的速い溶出速度を有する微粒子を比較的遅い溶出速度を有する微粒子と合わせて、望ましい組成物の溶出プロフィールを提供できる。
【0062】
所望により、親水性生物活性剤とは異なる1つ又は複数の追加の生物活性剤が、溶出制御マトリックスに存在してもよい。例えば、1つ又は複数の追加の親水性生物活性剤が、2つの異なるポリペプチドのように、微粒子に存在してよい。
【0063】
別の例としては、所望により、非親水性生物活性剤が溶出制御マトリックスに存在してよい。例えば、第一のポリマーから形成されたマトリックスに、水溶性の不十分な又は水溶性の、化合物を備えてよい。例えば、(a)ポリペプチドなどの親水性生物活性剤から形成された微粒子、(b)第一のポリマー、(c)第二の生物活性剤、及び(d)第一のポリマー及び第二の生物活性剤の両方が溶ける有機溶媒を含む、組成物を形成することにより、そのような溶出制御マトリックスを調製してよい。第二の生物活性剤は、第一のポリマーから形成されたマトリックスから直接拡散して、追加的な医療的作用を起こすことができる。
【0064】
親水性生物活性剤、及び所望によりマトリックスに含まれる他の生物活性剤(第二の生物活性剤など)は、本書で例示されたものなどの、当技術分野で知られているようなものから選択してよい。
【0065】
ここでは、用語「生物活性剤」は、特定の望ましい生物学的作用を有する化合物を意味する。例えば、生物活性剤は対象の比活性度に影響を及ぼす治療化合物でよい。幾つかの実施形態では、生物活性剤とは、順にペプチド、タンパク質、糖質、核酸、脂質、多糖類若しくはこれらの組み合わせ、又は合成無機又は有機分子に関するものであり、限定されるものではないが、鳥及び人間などの哺乳類などの動物へin vivoで投与されたときに望ましい生物学的作用を起こす。生物活性剤には多くの異なる種類の溶出プロフィールがあり得る。
【0066】
本願発明に有用な生物活性剤は、トロンビン阻害剤、抗血栓剤、血栓溶解剤、線溶剤、抗凝固剤、血小板抑制剤、血管けいれん防止剤、カルシウム・チャンネル遮断薬、ステロイド、血管拡張剤、抗高血圧剤、抗菌(anti-microbial)剤、抗生物質、抗菌(antibacterial)剤、抗寄生虫薬及び/又は抗原虫薬、消毒剤、抗真菌剤、血管形成剤、抗血管形成剤、表面糖タンパク質受容体の阻害剤、抗細胞分裂薬、微小管阻害剤、抗分泌薬、アクチン阻害剤、リモデリング抑制剤、アンチセンスヌクレオチド、抗代謝薬、縮瞳薬、増殖抑制剤、抗癌治療法剤、抗腫瘍剤、ポリメラーゼ阻害剤、抗ウィルス剤、抗AIDS剤、抗炎症ステロイド又は非ステロイド抗炎症剤、鎮痛剤、解熱剤、免疫抑制剤、免疫刺激剤、成長ホルモン拮抗薬、増殖因子、放射線治療薬、ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外マトリックス成分、ACE阻害剤、フリーラジカル・スカベンジャー、キレート剤、酸化防止剤、光線力学治療薬、遺伝子治療薬、麻酔剤、抗毒素、神経毒素、オピオイド、ドーパミンアゴニスト、睡眠薬、抗ヒスタミン剤、精神安定剤、抗けいれん剤(anticonvulsant)、筋弛緩剤及び抗パーキンソン病薬、抗けいれん剤(antispasmodic)及び筋収縮薬、抗コリン作用薬、点眼薬、抗緑内障薬、プロスタグランジン、抗うつ薬、抗精神病薬、神経伝達物質、制吐剤、造影剤、特異的標的因子、並びに細胞応答調節因子などの多種の治療剤を含んでよい。
【0067】
より詳細には、実施形態では、生物活性剤は、ヘパリン、コバレントヘパリン、合成ヘパリン塩、又は別のトロンビン阻害剤;ヒルジン、hirulog(登録商標)、アルガトロバン、D‐フェニルアラニル‐L‐ポリ‐L‐アルギニルクロロメチルケトン、又は別の抗血栓剤;ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノゲン活性化因子、又は別の血栓溶解剤;線溶剤;血管けいれん抑制剤;カルシウム・チャンネル遮断薬、硝酸塩、(一)酸化窒素、(一)酸化窒素プロモーター、(一)酸化窒素ドナー、ジピリダモール、又は別の血管拡張剤;HYTRIN(登録商標)又は他の降圧剤;表面糖タンパク質受容体の阻害剤;アスピリン(登録商標)、チクロピジン、クロピドグレル又は別の血小板抑制剤;コルヒチン又は別の抗細胞分裂薬、又は別の微小管阻害剤;ジメチルスルホキシド(DMSO)、レチノイド、又は別の抗分泌薬;サイトカラシン又は別のアクチン阻害剤;細胞周期阻害剤;リモデリング抑制剤;デオキシリボ核酸、アンチセンスヌクレオチド、又は別の分子遺伝学的診療薬;アプタマー(MACUGEN(登録商標)など);メトトレキサート、又は別の代謝拮抗剤若しくは抗増殖剤;クエン酸タモキシフェン、TAXOL(登録商標)、パクリタキセル、又はこれらの誘導体、ラパマイシン(又は他のラパログ(rapalog)、例えばABT-578又はシロリムス)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、酒石酸ビノレルビン、エトポシド、テノポシド、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシン、メクロレタミン、シウロホスファミド及びその類似体、クロラムブシル、エチレンイミン、メチルメラミン、スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(カルムスチンなど)、ストレプトゾシン、(多くの留置に使われる)メトトレキサート、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、2‐クロロデオキシアデノシン、シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、モルホリノホスホノジアミデートオリゴマー又は他の抗癌化学療法薬;シクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、ピメクロリムス、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、mTOR阻害剤、又は別の免疫抑制剤;コルチゾール、コルチゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、酢酸デキサメタゾン、デキサメタゾン誘導体、βメタゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6U‐メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン(例えば、トリアムシノロン・アセトアニリド)、又は別のステロイド薬;トラピジル(PDGF阻害薬)、アンジオペプチン(成長ホルモン拮抗薬)、アンギオジェニン、増殖因子(血管内皮増殖因子(VEGF)など)、又は別の増殖因子アンタゴニスト若しくはアゴニスト;ドーパミン、メシル酸ブロモクリプチン、メシル酸ペルゴリド、又は別のドーパミン作動薬;60Co(半減期5.3年)、192Ir(73.8日)、32P(14.3日)、111In(68時間)、90Y(64時間)、99Tc(6時間)、又は別の放射線治療薬;ヨウ素含有化合物、バリウム含有化合物、金、タンタル、白金、タングステン又は放射線不透過性物質として機能する別の重金属;細胞外マトリックス成分、細胞成分又は別の生物学的作用物質;カプトプリル、エナラプリル又は別のアンジオテシニン変換酵素(ACE)阻害剤;アンジオテシニン受容体遮断薬;酵素阻害剤(増殖因子シグナル変換キナーゼ阻害剤など);アスコルビン酸、αトコフェロール、スーパーオキシド・ジスムターゼ、デフェロキサミン、21‐アミノステロイド(ラサロイド)又は別のフリーラジカル・スカベンジャー、鉄キレート剤若しくは酸化防止剤;14C‐、3H‐、131I‐、32P‐若しくは36S‐放射標識体又は前述のいずれかの他の放射標識体;エストロゲン(例えば、エストラジオール、エストリオール、エストロンなど)若しくは別の性ホルモン;AZT又は他のポリメラーゼ阻害剤;アシクロビル、ファムシクロビル、塩酸リマンタジン、ガンシクロビルナトリウム、Norvir(リトナビル)抗HIV薬、Crixivan(インジナビル)、又は他の抗ウィルス剤;5‐アミノレブリン酸、メタテトラヒドロキシフェニルクロリン、ヘキサデカフルオロ亜鉛フタロシアニン、テトラメチルヘマトポルフィリン、ローダミン123又は他の光線力学治療薬;IgG2Kappa抗体(緑膿菌エキソトキシンAに対する抗体であり、A431表皮癌細胞と反応する)、モノクロナール抗体(サポリンに接合したノルアドレナリン性酵素ドーパミン‐β‐ヒドロキシラーゼに対する抗体である)、又は他の抗体標的療法薬;遺伝子治療薬;エナラピル又はそのプロドラッグ;PROSCAR(登録商標)、HYTRIN(登録商標)又は他の良性前立腺過形成(BHP)の治療薬;VIAGRA(登録商標)、ミトタン、アミノグルテチミド、ブレベルジン、アセトアミノフェン、エトドラク、トルメチン、ケトロラック(登録商標)、イブプロフェン及び誘導体、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、ナブメトン、オーラノフィン、オーロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム、これらのいずれかの混合物、或いはこれらのいずれかの誘導体を含んでよい。
【0068】
塗料に含めてよい他の生物学的に有用な化合物としては、限定されるものではないが、ホルモン、β‐ブロッカー、抗挟心症薬、強心薬、コルチコステロイド、鎮痛剤、抗炎症剤、不整脈治療剤、免疫抑制剤、抗菌剤、抗高血圧剤、抗マラリア薬、抗腫瘍剤、抗原虫剤、抗甲状腺薬、鎮静剤、睡眠薬及び神経安定薬、利尿薬、抗パーキンソン病薬、胃腸薬、抗ウィルス剤、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗真菌剤、ヒスタミンH‐受容体アンタゴニスト、脂質調節剤、筋弛緩剤、ビタミン及びミネラルなどの栄養剤、興奮剤、核酸、ポリペプチド、並びにワクチンが挙げられる。
【0069】
抗生物質は、微生物の増殖を阻害するか、微生物を殺す物質である。抗生物質は、合成的に又は微生物によって作られる。抗生物質の例としては、ペニシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、バンコマイシン、バシトラシン(登録商標)、カナマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ゲルダナマイシン、ゲルダナマイシン類似体、セファロスポリンなどが挙げられる。セファロスポリンの例としては、セファロチン、セファピリン、セファゾリン、セファレキシン、セフラジン、セファドロキシル、セファマンドール、セフォキシチン、セファクロール、セフロキシム、セフォニシド、セフォラニド、セフォタキシナム、モキサラクタム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、及びセフォペラゾンが挙げられる。
【0070】
消毒剤は、通常は非特異的に、例えば、それらの活性を阻害することにより、又はそれらを破壊することにより、微生物の増殖や活動を阻むか、或いは止める物質と解する。消毒剤の例としては、スルファジアジン銀、クロルヘキシジン、グルタルアルデヒド、過酢酸、次亜塩素酸ナトリウム、フェノール、フェノール化合物、ヨードフォア化合物、四級アンモニウム化合物、及びクロリン化合物が挙げられる。
【0071】
抗ウィルス剤は、ウィルスの複製を破壊するか抑制することができる物質である。抗ウィルス剤の例としては、α‐メチル‐1‐アダマンタンメチルアミン、ヒドロキシ‐エトキシメチルグアニン、アダマンタンアミン、5‐ヨード‐2’‐デオキシウリジン、トリフルオロチミジン、インターフェロン、及びアデニンアラビノシドが挙げられる。
【0072】
酵素阻害剤は酵素反応を阻害する物質である。酵素阻害剤の例としては、塩化エドロホニウム、N‐メチルフィゾスチグミン、臭化ネオスチグミン、フィゾスチグミン硫酸塩、塩酸タクリン、タクリン、1‐ヒドロキシマレイン酸塩、ヨードツベルシジン、p‐ブロモテトラミゾール、10‐(α‐ジエチルアミノプロピオニル)‐フェノチアジン塩酸塩、塩化カルミダゾリウム、ヘミコリニウム‐3,3,5‐ジニトロカテコール、ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤I、ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤II、3‐フェニルプロパルギルアミン、N‐モノメチル‐L‐アルギニン酢酸塩、カルビドパ、塩酸3‐ヒドロキシベンジルヒドラジン、塩酸ヒドラジン、塩酸クロルジリン、塩酸L(−)デプレニル、塩酸D(+)デプレニル、塩酸ヒドロキシルアミン、イプロニアジドりん酸塩、6‐MeO‐テトラヒドロ‐9H‐ピリド‐インドール、ニアラミド、塩酸パルギリン、塩酸キアナクリン、塩酸セミカルバジド、塩酸トラニルシプロミン、吉草酸N,N‐ジエチルアミノエチル‐2,2‐ジ‐フェニル塩酸塩、3‐イソブチル‐1‐メチルキサンテン、塩酸パパベリン、インドメタシン、2‐シクロオクチル‐2‐ヒドロキシエチルアミン塩酸塩、2,3‐ジクロロ‐α‐メチルベンジルアミン(DCMB)、8,9‐ジクロロ‐2,3,4,5‐テトラヒドロ‐1H‐2‐ベンザゼピン塩酸塩、p‐アミノグルテチミド、p‐アミノグルテチミド酒石酸塩R(+)、p‐アミノグルテチミド酒石酸塩S(−)、3‐ヨードチロシン、α‐メチルチロシンL(−)、α‐メチルチロシンD(−)、セタゾールアミド、ジクロルフェンアミド、6‐ヒドロキシ‐2‐ゼンゾチアゾールスルフォンアミド、及びアロプリノールが挙げられる。
【0073】
解熱剤は、熱を取り除く又は下げることができる物質である。抗炎症薬は、炎症を中和する又は抑制することができる物質である。そのような薬剤の例としては、アスピリン(登録商標、サリチル酸)、インドメタシン、インドメタシンナトリウム三水和物、サリチルアミド、ネプロキセン、コルヒチン、フェノプロフェン、スリンダク、ジフルニサル、ジクロフェナック、インドプロフェン及びナトリウムサリチルアミド。
【0074】
局所麻酔剤は局所部位に麻酔効果を有する物質である。そのような麻酔剤の例としては、プロカイン、リドカイン、テトラカイン及びジブカインが挙げられる。
【0075】
造影剤は、in vivoの所望の部位(例えば腫瘍)を造影できる薬剤である。造影剤の例としては、in vivoで分解できる標識(例えば、蛍光標識された抗体)を有する物質が挙げられる。用語「抗体」は、全ての抗体又はそのフラグメントを含む。
【0076】
ステロイド環系を有する化合物はステロイドと見なしてよい。実施形態では、生物活性剤はステロイドである。ステロイドは、天然物と部分的に又は完全に水素化されたシクロペンタ[α]フェナントレン炭素骨格を主成分とする合成類似体の両方を含む。ステロイドは、グルココルチコイド、エストロゲン及びアンドロゲンを含んでよい。一例として、ステロイドは、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、りん酸デキサメタゾンナトリウム、コルチゾン、酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、シピオン酸ヒドロコルチゾン、りん酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、プレドニゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、りん酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、ピバル酸プレドニゾロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンヘキサアセトニド、トリアムシノロン二酢酸、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、フルニソリド、ベクロメタゾン二プロピオン酸、りん酸βメタゾンナトリウム、βメタゾン、りん酸ヴェタメタゾン二ナトリウム、りん酸ヴェタメタゾンナトリウム、酢酸βメタゾン、りん酸βメタゾン二ナトリウム、酢酸クロロプレドニゾン、コルチコステロン、デスオキシコルチコステロン、酢酸デスオキシコルチコステロン、ピバル酸デスオキシコルチコステロン、デスオキシメタゾン、エストラジオール、フルドロコルチゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸ジクロリゾン、フルオロヒドロコルチゾン、フルオロメトロン、フルプレドニゾロン、パラメタゾン、酢酸パラメタゾン、アンドロステロン、フルオキシメステロン、アルドステロン、メタンドロステノロン、メチルアンドロステンジオール、メチルテストロステロン、ノルエタンドロロン、テストステロン、エナント酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、エキレニン、エキリン、安息香酸エストラジオール、ジプロピオン酸エストラジオール、エストリオール、エストロン、安息香酸エストロン、アセトキシプレグネノロン、酢酸アナゲストン、酢酸クロルマジノン、酢酸フルロゲストン、ヒドロキシメチルプロゲステロン、酢酸ヒドロキシメチルプロゲステロン、ヒドロキシプロゲステロン、酢酸ヒドロキシプロゲステロン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メレンゲストロール、ノルメチステロン、プレグネノロン、プロゲステロン、エチニルエストラジオール、メストラノール、ジメチステロン、エチステロン、エチノジオール二酢酸、ノレシンドロン、酢酸ノレシンドロン、ノルエチステロン、フルオシノロンアセトニド、フルランドレノロン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、りん酸プレドニゾロンナトリウム、トリアムシノロンアセトニド、ヒドロキシジオンナトリウム、スプロノラクトン、オキサンドロロン、オキシメトロン、プロメトロン、シピオン酸テストステロン、フェニル酢酸テストステロン、シピオン酸エストラジオール、及びノルエチノドレル、これらの類似体、又はこれらの組み合わせを含んでよい。
【0077】
溶出制御マトリックスは、微粒子が分散される疎水性の第一のポリマーを含み、それはマトリックスに構成成分を提供する。疎水性ポリマーは、水中でほとんど溶解度のないものである。
【0078】
幾つかの態様では、溶出制御マトリックスが特定の形態で提供されるとき、疎水性ポリマーは望ましい性質を提供する。例えば、マトリックスが塗膜の形態のときには、疎水性ポリマーは耐久性、コンプライアンスなどの1つ又は複数の性質を提供できる。ここでは、用語「耐久性」とは、ポリマー塗膜の耐摩耗性、又は塗膜が典型的には使用中に引き起こされる力(例えば、垂直力、せん断力など)に曝されても物品表面に接着している能力をいう。より耐久性のある塗膜は、磨耗されても支持体から、それほど簡単に除去されない。弾力性塗膜は、塗装された物品に合うように形を変えるもの、及び任意の実質的な物理的変形を加えることなく物品の形状が変われば変化するものである。
【0079】
幾つかの態様では、第一のポリマーは、耐久性及び生物学的安定性の疎水性ポリマーである。様々な耐久性及び生物学的安定性の疎水性ポリマーが本技術分野で説明されているか、入手可能である。
【0080】
幾つかの態様では、第一のポリマーは、ポリアルキル(メタ)アクリレート及びポリ芳香族(メタ)アクリレートからなる群から選択される。ただし、「(メタ)」は、アクリル及び/又はメタクリル形態(それぞれアクリレート及び/又はメタクリレートに対応する)のいずれかの分子を含むものとして当業者に知られているものとする。
【0081】
ポリアルキル(メタ)アクリレートの例としては、2以上8以下の炭素数のアルキル鎖長を有するものが挙げられる。典型的なポリアルキル(メタ)アクリレートのサイズは、約50〜1000キロダルトン、約100〜1000キロダルトン、約150〜500キロダルトン、及び約200〜400キロダルトンである。一の典型的なポリアルキル(メタ)アクリレートは、ポリn‐ブチルメタクリレートである。
【0082】
ポリアルキル(メタ)アクリレートの他の例としては、3:1のモノマー比のポリ(n‐ブチルメタクリレート‐co‐メチルメタクリレート)、1:1のモノマー比のポリ(n‐ブチルメタクリレート‐co‐イソブチルメタクリレート、及びポリt‐ブチルメタクリレートが挙げられる。そのようなポリマーは、約150〜350キロダルトンの分子量で、並びに様々な固有粘度、溶解度及び形態(例えば板状、顆粒、ビーズ、結晶又は粉末)で市販されている(例えばSigma-Aldrich社(ウィスコンシン州ミルウォーキー)製)。
【0083】
ポリ芳香族(メタ)アクリレートの例としては、ポリアリール(メタ)アクリレート、ポリアラルキル(メタ)アクリレート、ポリアルカリール(メタ)アクリレート、ポリアリールオキシアルキル(メタ)アクリレート、及びポリアルコキシアリール(メタ)アクリレートが挙げられる。ポリアリール(メタ)アクリレートの具体例としては、ポリ9‐アントラセニルメタクリレート、ポリクロロフェニルアクリレート、ポリメタクリルオキシ‐2‐ヒドロキシベンゾフェノン、ポリメタクリルオキシベンゾトリアゾール、ポリナフチルアクリレート、ポリナフチルメタクリレート、ポリ‐4‐ニトロフェニルアクリレート、ポリペンタクロロ(ブロモ、フルオロ)アクリレート及びメタクリレート、ポリフェニルアクリレート並びにポリフェニルメタクリレートが挙げられる。ポリアラルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ポリベンジルアクリレート、ポリベンジルメタクリレート、ポリ2‐フェネチルアクリレート、ポリ2‐フェネチルメタクリレート及びポリ1‐ピレニルメチルメタクリレートが挙げられる。ポリアルカリール(メタ)アクリレートの具体例としては、ポリ4‐sec‐ブチルフェニルメタクリレート、ポリ3‐エチルフェニルアクリレート、及びポリ2‐メチル‐1‐ナフチルメタクリレートが挙げられる。適切なポリアリールオキシアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ポリフェノキシエチルアクリレート、ポリフェノキシエチルメタクリレート、様々なポリエチレングリコール分子量の、ポリ(ポリエチレングリコールフェニルエーテルアクリレート)並びにポリ(ポリエチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート)が挙げられる。ポリ(アルコキシアリール(メタ)アクリレート)の具体例としては、ポリ4‐メトキシフェニルメタクリレート、ポリ2‐エトキシフェニルアクリレート及びポリ2‐メトキシナフチルアクリレートが挙げられる。
【0084】
アクリレート若しくはメタクリレート・モノマー若しくはポリマー及び/又はそれらのアルコール類が、Sigma-Aldrich社(ウィスコンシン州ミルウォーキー)又はPolysciences社(Warrington, PA)から市販されている。
【0085】
溶出制御マトリックスは、第一のポリマーと、第一(疎水性)及び第二(親水性及び疎水性セグメントを含むポリマー)のポリマーとは異なる別のポリマーとのブレンドから形成してもよい。マトリックスの組成(すなわち、マトリックスを形成するのに使われる、異なるポリマーの数)によって、第一のポリマーとブレンドできるポリマーを、「第三のポリマー」、「第四のポリマー」等ということができる。
【0086】
幾つかの態様では、第一のポリマーとブレンドできるポリマーはポリ(エチレン‐co‐酢酸ビニル)である。例えば、該ブレンドは、ポリn‐ブチルメタクリレート(pBMA)とポリ(エチレン‐co‐酢酸ビニル)(pEVA)の組み合わせである。そのようなブレンドは、同一出願人の米国特許第6,214,901号明細書(Chudzikら)及び米国特許出願公開第2002/0188037号明細書(Chudzikら)に記載されている。
【0087】
幾つかの態様では、第一のポリマーとブレンドできるポリマーは、(i)ポリ(アルキレン‐co‐アルキル(メタ)アクリレート)、(ii)他のアルキレンを有するエチレンコポリマー、(iii)ポリブテン、(iv)ジオレフィン由来の非芳香族ポリマー及びコポリマー、(v)芳香族基含有コポリマー、並びに(vi)エピクロロヒドリン含有ポリマーからなる群から選択される。これらのブレンドは、2005年4月6日に出願された同一出願人の米国特許出願、名称「Coating Compositions for Bioative Agent」の米国特許出願公開第2005/0220843号明細書に記載されている。
【0088】
また、これらのポリマーは第一のポリマーとしても使用できる。
【0089】
ポリ(アルキレン‐co‐(メタ)アクリル酸アルキル)としては、アルキル基が直鎖又は分岐鎖のいずれかであり、非干渉基又は原子で置換されている又は置換されていないコポリマーが挙げられる。そのようなアルキル基は、1以上8以下の炭素原子を含んでよい。より具体的な実施形態では、そのようなアルキル基は、1以上4以下の炭素原子を含んでよい。実施形態では、アルキル基はメチルである。幾つかの実施形態では、そのようなアルキル基を含むコポリマーは、約15〜80重量%のアクリル酸アルキルを含んでよい。アルキル基がメチルであるとき、このポリマーは、幾つかの実施形態ではアクリル酸メチルを約20〜40%含み、特定の実施形態ではアクリル酸メチルを約25〜30%含む。アルキル基がエチルであるとき、このポリマーは、実施形態ではアクリル酸エチルを約15%〜40%含み、アルキル基がブチルであるとき、このポリマーは、実施形態ではアクリル酸ブチルを約20〜40%含む。
【0090】
エチレンと他のアルキレンのコポリマーは、直鎖又は分岐鎖アルキレン、並びに置換又は非置換アルキレンを含んでよい。例としては、3以上8以下の分岐鎖又は直鎖の炭素原子を含むアルキレンから調製されたコポリマーが挙げられる。実施形態では、コポリマーは、3以上4以下の分岐鎖又は直鎖の炭素原子を含むアルキレン基から調製される。特定の実施形態では、コポリマーは、3つの炭素原子(例えば、プロペン)を含むアルキレン基から調製される。一例として、他のアルキレンは直鎖アルキレン(例えば、1‐アルキレン)である。この種類の典型的なコポリマーは、約20〜90mol%のエチレンを含んでよい。実施形態では、この種類のコポリマーは、約35〜80mol%のエチレンを含む。そのようなコポリマーは、約30〜500キロダルトンの分子量を有するであろう。典型的なコポリマーは、ポリ(エチレン‐co‐プロピレン)、ポリ(エチレン‐co‐1‐ブテン)、ポリ(エチレン‐co‐1‐ブテン‐co‐1‐ヘキセン)及び/又はポリ(エチレン‐co‐1‐オクテン)からなる群から選択される。
【0091】
「ポリブテン」は、イソブチレン、1‐ブテン及び/又は2‐ブテンを単独重合させるかランダム共重合させることにより得られたポリマーを含む。ポリブテンは、いずれかの異性体のホモポリマーでもよいし、いずれかのモノマーの任意の比率のコポリマー又はターポリマーでもよい。場合によっては、ポリブテンは、約90重量%以上のイソブチレン又は1‐ブテンを含む。特定の実施形態では、ポリブテンは、約90重量%以上のイソブチレンを含む。ポリブテンは、干渉しない量の他の含有物又は添加剤を含んでよく、例えば、1000ppm以下の酸化防止剤(例えば、2,6‐ジ‐tert‐ブチル‐メチルフェノール)を含んでよい。一例として、ポリブテンは約150〜1,000キロダルトンの分子量を有してよい。実施形態では、ポリブテンは約200〜600キロダルトンを有してよい。特定の実施形態では、ポリブテンは約350〜500キロダルトンを有してよい。約600キロダルトンを超える、或いは1,000キロダルトンを超える分子量を有するポリブテンは入手できるが、取り扱うのが困難な筈である。
【0092】
ポリマー又はコポリマーを調製するのにジオレフィンモノマーが使われるものなどの、ジオレフィン由来の非芳香族ポリマー及びコポリマーは、ブタジエン(CH2=CH‐CH=CH2)及び/又はイソプレン(CH2=CH‐C(CH3)=CH2)などのモノマーから誘導してよい。実施形態では、このポリマーは、ジオレフィンモノマー由来のホモポリマー又はジオレフィンモノマーと非芳香族モノオレフィンモノマーとのコポリマーであり、また所望により、このホモポリマー又はコポリマーは部分的に水素化されていてもよい。そのようなポリマーは、cis‐、trans‐及び/又は1,2‐モノマーユニットの重合により、又はこれら3種類のモノマー全ての混合物から、調製されたポリブタジエン、並びにcis‐1,4‐及び/又はtrans‐1,4‐モノマーユニットの重合により調製されたポリイソプレンからなる群から選択してよい。また、このポリマーは、アクリロニトリルのような非芳香族モノオレフィンモノマーと(メタ)アクリル酸アルキル及び/又はイソブチレンとを主成分とする、グラフトコポリマー及びランダムコポリマーなどのコポリマーである。実施形態では、モノオレフィンモノマーがアクリロニトリルのとき、共重合させたアクリロニトリルは約50重量%以下で存在し、また、モノオレフィンモノマーがイソブチレンのとき、ジオレフィンはイソプレン(例えば、市販では「ブチルゴム」として知られるものを形成するため)である。典型的なポリマー及びコポリマーは、約150〜1,000キロダルトンの分子量を有する。実施形態では、ポリマー及びコポリマーは、約200〜600キロダルトンの分子量を有する。
【0093】
追加のポリマーとしては、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー及びグラフトコポリマーなどの芳香族基含有コポリマーが挙げられる。実施形態では、芳香族基は、スチレンの重合によってこれらのコポリマーに入れられる。特定の実施形態では、ランダムコポリマーは、スチレンモノマーと、ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸C1‐C4アルキル(例えば、メタクリル酸メチル)及び/又はブテンから選択された1つ又は複数のモノマーとの共重合から得られたコポリマーである。有用なブロックコポリマーとしては、(a)ポリスチレンのブロック、(b)ポリブタジエン、ポリイソプレン及び/又はポリブテン(例えば、イソブチレン)から選択されたポリオレフィンのブロック、並びに(c)所望により、該ポリオレフィンブロックに共重合された第三のモノマー(例えば、エチレン)を含むコポリマーが挙げられる。芳香族基含有コポリマーは、約10〜50重量%の重合された芳香族モノマーを含み、このコポリマーの分子量は、約300〜500キロダルトンである。実施形態では、このコポリマーの分子量は、約100〜300キロダルトンである。
【0094】
追加のポリマーとしては、エピクロロヒドリンホモポリマー及びポリ(エピクロロヒドリン‐co‐アルキレンオキシド)コポリマーが挙げられる。実施形態では、このコポリマーの場合には、共重合されたアルキレンオキシドはエチレンオキシドである。一例として、エピクロロヒドリン含有ポリマーのエピクロロヒドリン含有量は、約30〜100重量%である。実施形態では、エピクロロヒドリン含有量は約50〜100重量%である。実施形態では、エピクロロヒドリン含有ポリマーは、約100〜300キロダルトンの分子量を有する。
【0095】
別の例としては、第一のポリマーは、ポリ(スチレン‐イソブチレン‐スチレン)などのスチレンコポリマー(例えば、米国特許第6,669,980号明細書を参照)でよい。分解性ポリマーを第一のポリマーに使用してもよい。分解性ポリマーの例としては、ポリマー骨格に加水分解に不安定な結合を有するものが挙げられる。本発明の分解性ポリマーは、バルク浸食特性を有するものと、表面浸食特性を有するものの両方を含む。
【0096】
合成分解性ポリマーは、分解性ポリエステル(ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ(乳酸‐co‐グリコール酸)、ポリジオキサノン、ポリラクトン(例えばポリカプロラクトン)、ポリ3‐ヒドロキシブチレート、ポリ3‐ヒドロキシ吉草酸、ポリバレロラクトン、ポリタルトロン酸、ポリβ‐マロン酸、ポリプロピレンフマレートなど);分解性ポリエステルアミド;分解性ポリ無水物(ポリセバシン酸、ポリ1,6‐ビス(カルボキシフェノキシ)ヘキサン、ポリ1,3‐ビス(カルボキシフェノキシ)プロパンなど);分解性ポリカーボネート(チロシン系ポリカーボネートなど);分解性ポリイミノカーボネート;分解性ポリアリーレート(チロシン系ポリアリーレートなど);分解性ポリオルトエステル;分解性ポリウレタン;分解性ポリホスファゼン;及び分解性ポリヒドロキシアルカノエート;及びこれらのコポリマーを含んでよい。
【0097】
天然系分解性ポリマーとしては、変性でんぷん、セルロース、キチン、キトサン、及びこれらのコポリマーなどの変性多糖類が挙げられ、その変性は、マトリックス形成に使われる溶剤系組成物中で適切な溶解度を提供する。
【0098】
分解性ポリマーの具体例としては、次の一般的な構造式で示される、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)を主成分とする、ポリ(エーテルエステル)マルチブロックコポリマーが挙げられる。
【0099】
【化1】

【0100】
式中、‐C64‐は、テレフタル酸の各エステル化された分子の二価の芳香環残基を示し、nは各親水性PEGブロック内のエチレンオキシドユニットの数を示し、xは、コポリマー中の親水性ブロックの数を示し、そしてyは、コポリマー内の疎水性ブロックの数を示し、nはPEGブロックの分子量が約300〜4000であるように選択してよい。x及びyは、マルチブロックコポリマーが、PEGを約55〜80重量%含むように選択してよい。コポリマー構造式のn、x及びyの値を変えることにより、ブロックコポリマーを開発して、数々の物理的特性(例えば、親水性、密着性、強度、可塑性、分解性、耐久性、柔軟性)及び生物活性剤放出特性(例えば、制御されたポリマー分解及び膨潤による)を提供できる。
【0101】
本発明の実施形態に使われる分解性ポリエステルアミドポリマーとしては、式[‐O‐(CH2x‐O‐C(O)‐CHR‐NH‐C(O)‐(CH2y‐C(O)‐NH‐CHR‐C(O)‐](式中、xはC2‐C12であり、yはC2‐C12であり、そしてRはCH(CH32、CH2CH(CH32、CH(CH3)CH2CH3、(CH23CH3、CH265、又は(CH23SCH3である)を有するものが挙げられる。そのようなポリマーは米国特許第6,703,040号明細書に記載されている。この天然物のポリマーは、x‐aa‐yの命名法で説明され、式中、xは、炭素原子数xのアルキルジオールを示し、「aa」はロイシン又はフェニルアラニンなどのアミノ酸を示し、及びyは、炭素原子数yのアルキルジカルボン酸を示し、該ポリマーは、ジオール、ジカルボン酸、及びアミノ酸の重合体である。この種類の典型的なポリマーは、4‐Leu‐4である。
【0102】
分解性ポリマー材料は、(a)非ペプチド性ポリアミノポリマー、(b)ポリイミノカーボネート、(c)アミノ酸由来のポリカーボネート及びポリアリーレート、並びに(d)ポリアルキレンオキシドポリマーから選択してもよい。
【0103】
実施形態では、分解性ポリマー材料は、非ペプチド性ポリアミノ酸ポリマーからなる。適切な非ペプチド性ポリアミノ酸ポリマーは、例えば、米国特許第4,638,045号明細書(「Non-Peptide Polyamino Acid Bioerodible Polymers」、1987年1月20日)に記載されている。一般に、これらのポリマー材料は、次の2つの構造の1つを有する2つ又は3つのアミノ酸ユニットなどのモノマーから得られる。
【0104】
【化2】

【0105】
式中、モノマーユニットは、側基R1、R2、及びR3の1つ以上において加水分解に不安定な結合によって結合していて、R1、R2、R3は天然アミノ酸の側鎖であり、Zは任意の望ましいアミン保護基又は水素であり、Yは任意の望ましいカルボキシル保護基又はヒドロキシルである。各モノマーユニットは、事後的にアミド又は「ペプチド」結合以外の結合によってモノマーユニットとして重合される天然アミノ酸を含む。このモノマーユニットは、ペプチド結合によって結合した2つ又は3つのアミノ酸からなるので、ジペプチド又はトリペプチドを含んでよい。モノマーユニットの正確な組成にかかわらず、ポリペプチド鎖に特有のアミド結合を形成しているアミノ及びカルボキシル基以外のそれら個々の側鎖を介して、加水分解に不安定な結合によって、まとめて重合される。該ポリマー組成物は無毒性であり、分解性であり、各種の治療用途での生物活性剤の送達に望ましい放出速度を提供できる。これらの態様によれば、アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、ヒドロキシリジン、アルギニン、ヒドロキシプロリン、メチオニン、システイン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、シトルリン、オルニチン、ランチオニン、ヒポグリシンA、β‐アラニン、γ‐アミノ酢酸、αアミノアジピン酸、カナバニン、ベンゾイック酸、チオヒスチジン、エルゴチオニン、ジヒドロキシフェニルアラニン、及びタンパク質化学分野でよく知られ、特徴付けられている他のアミノ酸などの天然L‐αアミノ酸から選択される。
【0106】
実施形態では、分解性ポリマー材料は、ポリイミノカーボネートからなることができる。ポリイミノカーボネートは、ポリカーボネートと構造的に似ている(通常はポリカーボネート中のカルボニル酸素によって占められている部分にイミノ基(C=NH)が存在する)。したがって、分解性成分を、次の結合
【0107】
【化3】

【0108】
を有するポリイミノカーボネートから形成してよい。
【0109】
例えば、一の有用なポリイミノカーボネートは、次の一般的なポリマー構造式
【0110】
【化4】

【0111】
を有する。式中、Rは非縮合芳香族有機環を含む二価の有機基であり、nは1より大きい。上記の一般式の範囲内のR基の実施形態は、限定されるものではないが、次のように例示される。
【0112】
【化5】

【0113】
式中、R’はC1〜C6の低アルカンである。
【0114】
【化6】

【0115】
式中、nは1以上の整数であり、Xは‐O‐、‐S‐などのヘテロ原子、又は‐NH‐、‐S(=O)‐、‐SO2‐、‐C(=O)‐、‐C(CH32‐、‐CH(CH3)‐、‐CH(CH3)‐CH2‐CH(CH3)‐などの架橋基である。
【0116】
【化7】

【0117】
また、一般式
【0118】
【化8】

【0119】
の化合物を利用してよく、式中、XはO、NH、又はNR’’’(式中、R’’’は低アルキルラジカル)であり、R’’は、ポリオレフィン、ポリアルキレングリコールエーテルなどのオリゴグリコール若しくはポリグリコール、ポリエステル、ポリ尿素、ポリアミン、ポリウレタン、又はポリアミドのような、ポリマーを含む二価の炭化水素残基である。これらの実施形態で用いる典型的な出発原料としては、下記式
【0120】
【化9】

【0121】
を有するジフェノール化合物及び下記式
【0122】
【化10】

【0123】
を有するジシアネート化合物が挙げられ、R1及びR2は同一又は異なっていて、アルキレン、アリーレン、アルキルアリーレン又はへテロ原子を含む官能基である。Z1、及びZ2はそれぞれに、水素、ハロゲン、低アルキル、カルボキシル、アミノ、ニトロ、チオエーテル、スルホキシド、及びスルホニルからなる群から選択される、1つ又は複数の同一又は異なるラジカルを表すことができる。Z1及びZ2のそれぞれが水素でもよい。
【0124】
実施形態では、分解性ポリマー材料は、各種のアミノ酸由来のポリカーボネート及びポリアリーレートからなることができる。これらのアミノ酸由来のポリカーボネート及びポリアリーレートは、それぞれ、特定のアミノ酸由来のジフェノール出発原料をホスゲン又はジカルボン酸のいずれかと反応させることにより、調製してよい。この実施形態のモノマーはジフェノール化合物であり、下記式を有するアミノ酸エステル誘導体である。
【0125】
【化11】

【0126】
式中、R1は18以下の炭素原子を含むアルキル基である。
【0127】
さらに別の実施形態では、分解性ポリマーは、親水性ポリアルキレンオキシド(PAO)及び分解性配列の両方を含むコポリマーからなり、各PAOユニットの炭化水素部位は1〜4つの炭素原子、又は2つの炭素原子を含む(すなわち、PAOはポリエチレンオキシド)。
【0128】
例えば、有用な分解性ポリマー材料は、PAO及びアミノ酸又はペプチド配列を含むブロックコポリマーから作ってよく、構造‐L‐R1‐L‐R2‐(R1はポリアルキレンオキシドであり、Lは‐O‐又は‐MH‐であり、R2はアミノ酸又は2つのカルボン酸基及び少なくとも1つのペンダント型アミノ基を含むペプチド配列である)によって独立して表される1つ又は複数の繰り返し構造ユニットを含んでよい。
【0129】
他の有用な分解性ポリマー材料は、ポリアリーレート、又は下記ポリカーボネートのような、チロシン由来のジフェノールモノマー及びポリアルキレンオキシドを含むポリカーボネートランダムブロックコポリマーからなる。
【0130】
【化12】

【0131】
式中、R1は‐CH=CH‐又は(‐CH2‐)j(ただし、jは0〜8である)であり、R2は、直鎖又は分岐鎖アルキル及びアルキルアリール基(18以下の炭素原子を含み、所望により1以上のエーテル結合を含む)、並びにコポリマーと共有結合した生物学的及び薬学的に活性な化合物の誘導体から選択され、各R3は1〜4の炭素原始を含むアルキレン基から独立して選択され、yは5〜約3000であり、またfはコポリマー中のアルキレンオキシドのモル分率(%)であり、約0.01〜約0.99である。
【0132】
幾つかの実施形態では、ペンダント型カルボン酸基を、ポリカーボネート、ポリアリーレート、及び/又はこれらのポリアルキレンオキシドブロックコポリマーのポリマーバルク内に含有させて、ポリマー骨格の分解速度及び再吸収速度をさらに制御できる。
【0133】
本発明の分解性ポリマーは、米国特許出願公開第2005/0255142号明細書(名称「Coatings for Medical Articles Including Natural Degrable Polysaccharides」)、米国特許出願公開第2007/0065481号明細書(名称「Coatings Including Natural Degrable Polysaccharides and Uses Thereof」)、及び米国出願第11/724,553号(名称「Hydrophobic Derivatives of Natural Degrable Polysaccharides」)に記載されているものなどの重合多糖類を含んでもよい。
【0134】
本発明の分解性ポリマーは、米国特許第6,303,148号明細書(名称「Process for the Preparation of a Controlled Release Sytem」)に記載されているものなどのデキストラン系ポリマーを含んでもよい。典型的なデキストラン系分解性ポリマーとしては、OCTODEX(登録商標)として市販されているものが挙げられる。
【0135】
幾つかの本発明の態様では、溶出制御マトリックスは、親水性及び疎水性部位を含む第二のポリマーを含む。マトリックス溶出制御マトリックスと関連して、第二のポリマーが、微粒子及びマトリックスからの生物活性剤の放出を容易にし、調節することが分かった。ある面では、生物活性剤の放出についての改良は、少なくとも一部では、第二のポリマーが、マトリックス形成の工程中に微粒子の懸濁の安定性を増加させることが原因であろう。
【0136】
幾つかの態様では、第二のポリマーは、親水性及び疎水性ブロックを含むブロックコポリマーである。ブロック間の結合は、生分解性又は生物学的安定性でよい。親水性及び疎水性ブロックは、生分解性又は生物学的安定性のいずれか又は両方でよい。
【0137】
典型的な親水性ブロックは、エチレングリコール、エチレンオキシド、ビニルアルコール、プロピレンオキシド、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、及びヒドロキシエチルアクリレートなどのモノマーから形成されたポリマーセグメントから選択してよい。
【0138】
典型的な親水性ブロックとしては、PEO、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、親水性ポリウレタン、HYPAN(登録商標)、配向HYPAN(登録商標)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチルオキサゾリン、及びポリアミン(例えば、Jeffamine(登録商標))が挙げられる。
【0139】
幾つかの態様では、第二のポリマーはポリアルコキシアルカンブロックを含む。ポリアルコキシアルカンブロックの代表例としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパンエトキシレート、及びペンタエリスリトールエトキシレートブロックが挙げられる。
【0140】
典型的な親水性ブロックは、約100〜5000Da、又は約250〜3500Daの分子量を有する。
【0141】
幾つかの態様では、疎水性ブロックは、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリバレロラクトン(PVL)、ポリ(ラクチド‐co‐グリコリド)(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチロラクトン(PBL)、ポリグリコリド、ポリプロピオラクトン(PPL)、及びポリトリメチレンカーボネートから選択された生分解性ポリマーセグメントを含む。
【0142】
幾つかの態様では、疎水性ブロックは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(ブチレン‐2,6‐ナフタレート)、ポリ(エチレン‐2,6‐ナフタレート)、ポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)、ポリ(エチレン‐co‐シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ(ジメタノール‐1,4‐シクロヘキサンジカルボキシレート)、及びポリキシレンテレフタレートなどの、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)を含む。
【0143】
生分解性ポリエーテルエステルコポリマーを第二のポリマーとして使用してよい。一般的に言えば、ポリエーテルエステルコポリマーは、親水性(例えば、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコール)及び疎水性(例えば、ポリエチレンテレフタレート)ブロックを含む両親媒性ブロックコポリマーである。分解性ポリマーの具体例としては、次の一般式で示される、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)を主成分とするポリ(エーテルエステル)マルチブロックコポリマーが挙げられる。
【0144】
【化13】

【0145】
式中、‐C64‐は、テレフタル酸の各エステル化された分子の二価の芳香環残基を示し、nは各親水性PEGブロック内のエチレンオキシドユニットの数を示し、xは、コポリマー内の親水性ブロックの数を示し、そしてyは、コポリマー内の疎水性ブロックの数を示し、下付きnは、PEGブロックの分子量が約300〜4000であるように選択してよい。x及びyは、マルチブロックコポリマーが、PEGを約55重量%から約80重量%以下含むように選択してよい。
【0146】
コポリマー構造式内のn、x及びyの値を変えることにより、ブロックコポリマーを開発して、数々の物理的特性(例えば、親水性、密着性、強度、可塑性、分解性、耐久性、柔軟性)及び活性剤放出特性(例えば、制御されたポリマー分解及び膨潤による)を提供できる。これらの種類のマルチブロックコポリマーの例は、例えば米国特許第5、980、948号明細書に記載されている。PEG/PBTポリマーは、商品名PolyActive(登録商標)としてOctoplus BV社から入手できる。
【0147】
幾つかの態様では、第二のポリマーは、親水性骨格及びペンダント型疎水性基を含む。幾つかの態様では、親水性骨格は多糖類を含む。ペンダント型疎水性基を有する典型的な多糖類としては、2007年3月15日に出願された米国特許出願第11/724,553号(Chudzik)に記載されているような、脂肪酸誘導体化されたポリ‐α(1→4)グルコピラノースポリマーが挙げられる。多糖類は、第二のポリマーとして使用するのに適している、かなりの誘導体及びペンダント型疎水性基を含んでよい。親水性骨格とペンダント型疎水性基の間の結合は、加水分解で開裂できるものであり、エステル基を含んでよい。
【0148】
第二のポリマーの親水性及び疎水性部位は、ポリマー中のそれらの重量比によって定義してもよい。例えば、幾つかの態様では、親水性部位:疎水性部位の重量比は、約5:1〜約1:5、約3:1〜約1:3、約2:1〜約1:2、又は約1.5:1〜約1:1.5でよい。例えば、45重量%ポリエチレングリコール(1000kDaの平均分子量を有する)及び55重量%ブチレンテレフタレートを有するポリ(ブチレンテレフタレート‐co‐エチレングリコール)コポリマーは、親水性部位:疎水性部位が約1:1.22の重量比を有するものである。
【0149】
実施形態では、本発明は、溶出制御マトリックスを形成する方法を含む。その方法は、複数の微粒子及び少なくとも第一のポリマーを含む組成物(ただし、該微粒子は該組成物に分散されている)を調製する工程を含む。幾つかの具体的な態様では、その組成物は、複数の微粒子、第一のポリマー、及び第二のポリマーを含む。次に、この塗料を使用して溶出制御マトリックスを形成する。例えば、その組成物を支持体に塗布して、溶出制御マトリックスの塗膜を形成できる。
【0150】
その組成物に使われる微粒子は、本書で説明した又は引用したもの及びそれらの当業者に知られているものなどの、色々な手法によって形成してよい。該微粒子を、乾燥状態(例えば凍結乾燥形態)の組成物に供給してよいし、或いは微粒子形成工程に使われる溶媒中に供給してよい。例えば、微粒子形成工程において相分離剤の抽出に有用な溶媒は、マトリックス形成(例えば塗装)工程中の溶媒としても有用であることに注目すべきである。
【0151】
塗料の成分は、任意の特定の順序で溶媒に加えるか、同時に混合してよい。多くの実施の態様では、それらの成分を撹拌しながら加えて、微粒子を分散した状態に保つ。
【0152】
調製の幾つかの態様では、微粒子が製造されるか入手されたらすぐに、それらを(a)溶媒及び(b)マトリックス(「マトリックスポリマー」)を形成するであろう少なくとも第一のポリマーと混合する。適切な溶媒又は溶媒系を、この組成物を調製するために選択してよい。粒子の性質及びマトリックスポリマーの性質によって各種の溶媒を使用してよい。適切な溶媒としては、この工程中に微粒子を実質的に又は任意に溶解させないものが挙げられる。溶媒の例としては、トルエン及びキシレン、テトラヒドロフランなどのエーテル;並びにジメチルホルムアミド(DMF)などのアミドが挙げられる。ポリペプチド微粒子とともに使用するのに好ましい溶媒としては、塩化メチレン及びクロロホルムなどのハロゲン化アルカンが挙げられる。1つ又は複数の、これらの又は他の溶媒の組み合わせを使用してもよい。
【0153】
塗装工程によって例示されたような、マトリックス形成中に、組成物(第一のポリマー、微粒子などによって表された組成物の固形分を有する)を支持体に塗布してよく、次に溶媒を支持体から蒸発させる。実施の幾つかの態様では、構成成分(微粒子及びポリマー)を低濃度で用いてこの組成物を調製してよく、構成成分を繰り返して表面に塗布して、塗膜を補強し、固形分を増やしてよく、幾つかの実施の態様では、構成成分(微粒子及びポリマー)をより高い濃度で用いて組成物を調製し、その組成物を一回、又は数回だけ塗布して、望ましい固形分を有する塗膜を提供してよい。そのようなものとしては、マトリックスを形成する方法が極めて多様であり、生物活性剤の量、膜厚などのような、望ましい特性を有する塗膜を提供するのに適している。
【0154】
マトリックス中に入れられる微粒子の量は、マトリックス中に含有させる予定の親水性生物活性剤の種類や量、並びに生物活性剤の望ましい放出速度及び放出時間などの各種の要因に基づいて選んでよい。
【0155】
組成物に分散される微粒子の量をより低く制限することはない。しかし、溶媒に分散される微粒子の典型的な濃度は、約25mg/mL以下、例えば約5〜25mg/mL、より具体的には約10〜15mg/mLでよい。
【0156】
マトリックスのポリマー成分を組成物に加えて、マトリックスが形成された後に、微粒子を形成して適切な位置に保つのに適した濃度を提供し、望ましい溶出性を有するマトリックスを提供することができる。全ポリマー含有物は、少なくとも第一のポリマー;第一及び第二のポリマー;又は第一、第二、及び任意の追加的なポリマーでよい。
【0157】
溶媒中の全ポリマー含有物の典型的な濃度は、25mg/mL以下、例えば、約10〜25mg/mL、より具体的には約10〜20mg/mLでよい。
【0158】
幾つかの態様では、組成物は、第一のポリマー、及び第一のポリマーとブレンド可能であるが第二のポリマーとは異なる少なくとも1つの他のポリマーを含む。一の典型的な組み合わせでは、第一のポリマーはポリn‐ブチルメタクリレートなどのポリアルキル(メタ)アクリレートであり、またブレンド可能なポリマーはポリ(エチレン‐co‐酢酸ビニル)である。一例として、ポリマーは、第一のポリマー(例えばpBMA):ブレンド可能なポリマー(例えばpEVA)の比が約10:1〜約10:1、約4:1〜約1:4、より具体的には約1:1〜約1:4であるブレンドによって準備できる。
【0159】
幾つかの態様では、組成物は、ポリエチレングリコール系ブロックコポリマーのような、親水性及び疎水性部位を有する第二のポリマーを含有させて、調製される。溶媒中の第二のポリマー典型的な濃度は、20mg/mL以下、例えば約1〜20mg/mLでよい。
【0160】
塗料溶液の全成分を混合した後、マトリックス形成組成物を処理して実質的に均質な懸濁液を提供する。組成物の成分の性質に応じて、超音波処理装置、ホモジナイザー、攪拌装置などを用いて行なってよい。場合によっては、組成物は、約5分間〜約24時間に亘って安定な懸濁液を形成する。他の例では、組成物は不安定なので、かき混ぜるか、さもなければ攪拌して懸濁液の均質性を維持しなければならない。幾つかの実施形態では、他の活性剤をこの懸濁液に加えてよい。一例として、抗凝集剤を加えてよい。
【0161】
幾つかの態様では、マトリックス形成組成物を使用して、支持体上に塗膜を形成する。次に、浸漬塗装、吹き付け塗装(ガス噴霧と超音波噴霧の両方を含む)、噴霧法、ブラシ塗装、プレス塗装、ブレード塗装などの各種の塗装法のいずれかを用いて、この塗料を支持体上に塗布する。当然のことながら、多くの異なる技術を利用して、分解性/非分解性塗料の併用品を支持体に塗布してよい。一例として、それらの技術としては、噴霧析出、気相成長、浸漬塗装、ブラシ塗装、印刷などが挙げられる。幾つかの実施形態では、分解性/非分解性塗料の併用品を支持体上に噴霧する。相対湿度、温度、ガス組成などの大気特性が制御される条件下で塗料を塗布してよい。
【0162】
幾つかの実施形態では、吹き付け法を用いて塗料溶液を塗布する。本発明の塗料を塗布するのに使用できる典型的な吹き付け塗装装置は、米国特許第6,562,136号明細書;第7,077,910号明細書;第7,192,484号明細書;第7,125,577号明細書、米国特許出願公開第2006/0088653号明細書及び第2005/019424号明細書、及び米国特許出願第11/102,465号及び第60/736,995号から見つけられる。
【0163】
吹き付け法は、支持体の表面上に組成物を吹き付けることにより行なうことができる。一般に、吹き付け塗装中及び組成物が表面に塗布された後に、ある量の溶媒が蒸発するであろう。組成物を繰り返して表面上に吹き付けて、膜厚及び表面の単位面積辺りの生物活性剤の量などの望ましい性質を有する塗膜を提供できる。塗布された組成物から塗料が蒸発して、表面上に固体の塗膜が残る。この工程を行なって、所望の性質を有する塗膜を提供できる。
【0164】
塗膜は、膜厚などの、一定の外形寸法を有することができる。多くの態様では、膜厚は、表面上の全塗膜に亘って比較的均一であろう。塗装工程を行なって、塗膜に含有させる微粒子の粒径に少なくとも基づいている塗膜を提供できる。多くの態様では、塗膜の膜厚は、塗膜中に存在する微粒子の直径よりも大きい。例えば、塗膜の膜厚は、約5μmを超え、約10μmを超えてよい。典型的な塗膜は、約40〜50μmの範囲の膜厚を有する。
【0165】
他の実施の態様では、2つ以上の吹き付け溶液を用いて、塗膜を形成するのに使われる成分を、別々に支持体上へ吹き付ける塗装工程を行なう。例えば、米国特許出願公開第2007/0128343号明細書、名称「Apparatus and Meshods for Applying Coatings」に記載された二重スプレーヘッドを備える吹き付け塗装装置を用いて、該塗装工程を行なうことができる。この方法を例示すると、第一のポリマー及び微粒子を含む1つの組成物を第一のスプレーヘッドから吹き付けて、第二のポリマーを含む別の組成物を第二のスプレーヘッドから吹き付ける。両スプレーヘッドからの噴霧パターンは、支持体の表面上の同じ場所へ向いているし、塗装工程中に構成成分を混ぜて塗膜を形成できる。
【0166】
他の種類の工程を使用して溶出制御マトリックスを形成できる。前述したように、マトリックスは、移植可能な物品からなる管腔のような、移植可能な物品内の塊の形態でよい。この管腔に組成物を配置して、この工程中に溶媒を除去して、該物品からなる管腔内にマトリックスを形成する。形成及び移植の後に、生物活性剤を開口部によってマトリックスから溶出させる、開口部のような該物品の一部分を通して、マトリックスを体液と接触させることができる。
【0167】
別の実施の態様では、マトリックス自体からなるインプラントの形態で溶出制御マトリックスを調製する。インプラントは、インプラントが対象に設置されたときに生物活性剤がマトリックスから放出されるフィラメント、コイル、又は人工装具の形態でよい。調製の一態様では、組成物を型に入れて、次に、溶媒除去及びマトリックスの固化の後、形成されたインプラントを型から外すことにより、インプラントを形成する。
【0168】
溶出制御マトリックスについては、相互との関連で、マトリックスの成分の(特定の固体重量%での)量、又は形成されたマトリックス中の成分の量について議論してもよい。
【0169】
幾つかの態様では、溶出制御マトリックスは、約70重量%以下、約30重量%〜約60重量%、約30重量%〜約50重量%、又は約30重量%〜約40重量%の微粒子の量(すなわち、塗膜の全重量の百分率(%)としての微粒子の量)を有する。
【0170】
幾つかの態様では、溶出制御マトリックスは、30重量%を超える、約30重量%〜約70重量%、約40重量%〜約70重量%、約50重量%〜約70重量%、又は約60重量%〜約70重量%の、全ポリマー含有量(すなわち、溶出制御マトリックスの全重量に対する割合(%)としての第一のポリマー、第二のポリマー、及び任意の追加的なポリマーの量)を有する。
【0171】
幾つかの態様では、溶出制御マトリックスは、約30重量%〜約70重量%、約30重量%〜約60重量%、又は約30重量%〜約50重量%の、第一のポリマー(又は、全ポリマー材料の組み合わせ − 第二のポリマー)を有する。
【0172】
幾つかの態様では、溶出制御マトリックスは、約1重量%〜約30重量%、約5重量%〜約25重量%、又は約10重量%〜約20重量%の、第二のポリマーの量を有する。
【0173】
幾つかの態様では、第二のポリマー:第一のポリマーの重量比(又は、第二のポリマー:(微粒子以外の)マトリックス中の他の全てのポリマーの組み合わせ)は、約1:1〜約1:10の比である。
【0174】
幾つかの態様では、第二のポリマー:マトリックス中の微粒子の重量比は、約0.1:1〜約1:10、又は約0.5:1〜約1:1である。
【0175】
典型的な調製では、マトリックスは、微粒子を約30重量%、第二のポリマーを約15重量%、及び残りのポリマー材料(すなわち、第一のポリマー及び任意の他のマトリックス形成ポリマー)を約55重量%含む。
【0176】
本発明の実施形態は、多くの各種の支持体などの、医療デバイスなどの、多くの各種のデバイスに関する溶出制御マトリックスを形成するのに使用してよい。医療デバイスは、埋め込み型デバイス(長期的に及び一時的に移植可能である)と非埋め込み型医療デバイスの両方を含んでよい。多くの態様では、溶出制御マトリックスを形成するのに使われる組成物を、本書で述べるようなデバイスの形にすることができる。
【0177】
本発明の実施形態は、限定されるものではないが、グラフト(例えば、腹部大動脈瘤グラフトなど)、ステント(例えば、主にニチノールから作られる自己拡張性ステント、主にステンレス鋼から調製された風船拡張型ステント、分解性冠状動脈ステントなど)、カテーテル(動脈、静脈、血圧ステントグラフトなどを含む)、弁(例えば、ポリマー又は炭素機械弁、生体弁、経皮を含む弁設計、縫物カフなど)、塞栓性タンパク質フィルター(末梢タンパク質デバイスなど)、大静脈フィルター、動脈瘤排出デバイス、人工心臓、心臓治療用ジャケット、及び心臓補助デバイス(左心室補助デバイスなど)、埋め込み型除細動器、電気刺激デバイス及びリード線(ペースメーカー、リードアダプター及びリードコネクターなど)、埋め込み型医療デバイス電源(例えば、バッテリーなど)、心臓抹消血管デバイス、心房中隔欠損閉鎖器、左心耳フィルター、弁形成デバイス(例えば、弁形成リング)、僧帽弁修復デバイス、血管インターベンションデバイス、心室補助ポンプ、及び血管アクセス器具(非経口的栄養補給カテーテル、血管アクセス口、中心静脈アクセスカテーテルなど)などの血管デバイス;全種類の縫合製品、ステープル、吻合デバイス(吻合閉鎖器など)、縫合アンカー、止血バリア、スクリュー、プレート、クリップ、血管インプラント、組織骨格、髄液短絡術シャント、水頭症用シャント、ドレナージ管、胸腔吸引ドレナージカテーテル、腫瘍吸引カテーテル、胆道ドレナージ製品などのカテーテル、及び埋め込み型ポンプのような外科デバイス;関節インプラント、寛骨臼カップ、膝蓋骨ボタン、骨修復/増強デバイス、脊髄麻酔デバイス(例えば、椎間板など)、骨ピン、軟骨修復デバイス、及び人工腱のような矯正デバイス;歯科用インプラント及び歯科用骨折修復デバイスのような歯科用デバイス;薬剤送達ポンプ、埋め込み型薬剤注入管、薬剤注入カテーテル、及びガラス体内薬剤送達デバイスのような薬剤送達デバイス;眼底内インプラント、緑内障廃液管シャント及び眼内レンズなどの眼科用デバイス;ペニス・デバイス(例えば、インポテンス・デバイス)、括約筋・尿道・前立腺及び膀胱デバイス(例えば、失禁デバイス、良性前立腺肥大症管理デバイス、前立腺癌インプラントなど)、留置(「フォーリーカテーテル」)及び非留置尿カテーテル、及び腎臓デバイスなどの尿カテーテルのような泌尿器デバイス;義乳房及び人工臓器(例えば、膵臓、肝臓、肺、心臓など)のような人工装具;肺カテーテルなどの呼吸器デバイス;神経刺激、神経カテーテル、神経血管風船(バルーン)カテーテル、神経動脈瘤治療コイル、及び神経パッチのような神経系デバイス;鼻腔ボタン、鼻腔及び気道スプリント、鼻タンポン、耳芯、耳ドレナージ管、中耳腔排出管、耳鼻ストリップ、喉頭切除管、食道管、食道ステント、喉頭ステント、唾液バイパス管、及び気管開口管のような耳鼻及び咽喉用デバイス;グルコース・センサー、心筋活動センサー、動脈内血液ガスセンサーなどのバイオセンサー・デバイス;腫瘍インプラント;並びに疼痛管理インプラントなどの埋め込み型又は一時的埋め込み型デバイスに利用できる。
【0178】
適切な非埋め込み型デバイスの種類としては、透析デバイス及び集合管組織、カテーテル、膜、及びグラフト;自己輸血デバイス;粥腫カテーテル、血管造影カテーテル、大動脈内バルーンポンプ、心臓内吸引デバイス、血液ポンプ、血液酸素供給デバイス(管組織及び膜など)、血液フィルター、血液温度モニター、血液かん流ユニット、プラスマフェレーシス・ユニット、分化シース、ダイアレーター、子宮内圧デバイス、血栓抽出カテーテル、経皮経腔的血管形成カテーテル、電気生理カテーテル、呼吸回路コネクタ、探針(血管及び非血管)、冠状動脈ガイドワイヤー、抹消部位ガイドワイヤーなどの血管・外科デバイス;ダイアレーター(例えば、尿など);手術機器(例えば、外科用メスなど);内視鏡デバイス(例えば、内視鏡手術用組織抽出器、食堂用聴診器);並びに、血液保存用バッグ、臍テープ、膜、手袋、手術用布、創傷包帯、創傷管理デバイス、針、経皮閉鎖デバイス、トランスデューサー保護機、ペッサリー、子宮出血パッチ、PAPブラシ、クランプ(ブルドッグクランプなど)、カニューレ、細胞培養デバイス、生体内診断用材料、クロマトグラフィー担体、感染対策デバイス、結腸瘻バッグ接続デバイス、避妊デバイス;交換型温度プローブなどの一般的な医療及び医療関連デバイス;並びに綿撒糸が挙げられる。
【0179】
幾つかの態様では、本発明の実施形態は眼科用デバイスについて利用できる。これらの態様の適切な眼科用デバイスは、目の任意の所望の領域に生物活性剤を供給できる。幾つかの態様では、本デバイスを利用して、目の前部(水晶体の前)セグメント、及び/又は目の後部(水晶体の裏)セグメントに生物活性剤を送達できる。所望により、適切な眼科用デバイスを利用して、生物活性剤を目のすぐ近くの組織に供給することもできる。
【0180】
幾つかの態様では、本発明の実施形態は、目の外部又は内部に設置できるように構成された眼科用デバイスについて利用できる。適切な外部デバイスは、生物活性剤を局所的に投与できるように構成してよい。そのような外部デバイスは、角膜(例えば、コンタクトレンズ)又は眼球結膜のような、目の外面上に存在してよい。幾つかの実施形態では、適切な外部デバイスは目の外面のすぐ近くに存在してよい。
【0181】
目の内部に設置できるように構成されたデバイスは、目の任意の所望の領域に存在してよい。幾つかの態様では、眼科用デバイスは、ガラス体のように、眼内に設置できるように構成してよい。具体的な眼内デバイスとしては、限定されるものではないが、米国特許第6,719,750号(Varnerらの「Devices for Intraocular Drug Delivery」)及び第5,466,233号(Weinerらの「Tack for Intraocular Drug Delivery and Method for Inserting and Removing Same」);米国特許出願公開第2005/0019371号(Andersonらの「Controlled Release Bioactive Agent Delivery Device」)、第2004/0133155号(Varnerらの「Devices for Intraocular Drug Delivery」)、第2005/0059956号(Varnerらの「Devices for Intraocular Drug Delivery」)、第2003/0014036号(Varnerらの「Reservoir Devices for Intraocular Drug Delivery」);及び米国特許出願公開第2005/0276837号(12月15日に出願、Andersonら)、第2004/0271706号(2005年12月8日に出願、Andersonら)、第2005/0287188号(2005年12月29日に出願、Andersonら)、第2008/0271703号(2005年12月8日に出願、Andersonら)、第2005/0281863号(2005年12月22日に出願、Andersonら);並びに関連出願に記載されているものが挙げられる。
【0182】
幾つかの態様では、眼科用デバイスは、目の中の網膜部分に設置できるように構成してよい。網膜下用の具体的な眼科用デバイスとしては、限定されるものではないが、米国特許出願公開第2005/0143363号明細書(de Juanらの「Method for Subretinal Administration of Therapeutics Including Steroids; Method for Localizing Pharmacodynamic Action at the Choroid and the Retina; and Related Methods for Treatment and/or Prevention of Retinal Diseases」);米国特許出願公開第2006/0110428号明細書(2005年7月5日に出願、de Juanらの「Methods and Devices for the Treatment of Ocular Conditions」);並びに関連出願に記載されているものが挙げられる。
【0183】
適切な眼科用デバイスは、目の任意の所望の組織内に設置できるように構成してよい。例えば、眼科用デバイスは、緑内障廃液デバイスのように、強膜の外であるが結膜下に設置されたデバイスなどの、目の結膜下の領域に設置できるように構成してよい。
【実施例】
【0184】
本願発明は下記の実施例を参照することで、より詳細に理解されるものである。これらの実施例は本発明の特定の実施形態を示すものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0185】
実施例のポリマーマトリックスから溶出したタンパク質(Fabフラグメント)の濃度の測定値は、約280nm(A280)での吸光度を測定することにより分光学的に決定された。この波長の光は芳香族アミノ酸により、最も強いのはトリプトファンにより、吸収される。検量線の調製のために、Fabフラグメントの検定サンプルを濃度250、125、62.5、31.3、15.6、及び7.8μg/mLで調製した。一定分量の150μLの検定サンプル(3回)及び150μLの溶出サンプル(2回)を96黒色ウェルプレートの中にピペットで入れた。全サンプルに、150μLの12MグアニジンHCl脱イオン蒸留水(DDW)溶液を加えた。このプレートをフリーザーに入れて−20℃で10分間インキュベートした。インキュベーション後、すぐに96ウェルプレートをプレートリーダーに移した(λex=290nm、λem=370nm、λ=325nmでカットオフ)。
【0186】
酵素結合免疫吸着法(ELlSA)を用いて、溶出サンプルのウサギ抗体分子の活性も分析した。簡潔にいうと、最初に96ウェルプレートのウェルをヤギIgG(Sigma社(ミズーリ州St. Louis)製;カタログNo.15256)塗料溶液で被覆し、室温で90分間インキュベートし、次に300μLのPBS/Tween20(Sigma社製)で3回洗浄した。このウェルを200μLのStabilCoat(SurModics社(ミネソタ州Eden Prairie)製)によって室温で1時間ブロックし、次に300μLのPBS/Tween20で3回洗浄した。100μLの溶出液(ポリマーマトリックスからのFabの溶出)を適切なウェルに加えて、室温で1時間インキュベートし、次にPBS/Tween20で3回洗浄した。0.1μg/mLロバ抗ウサギIgGHRP(Rockland Immunochemicals社(ペンシルバニア州Gilbertsville)製;カタログNo.611-703-127)の100μLサンプルを各ウェルに加えて室温で1時間インキュベートした。ウェルを300μLのPBS/Tween20で4回洗浄した。100μLのTMBマイクロウェルペルオキシダーゼ基質系(KPL社(メリーランド州Gaithersburg)製;カタログNo.50-76-00)を各ウェルに加えた。動態検査のために、TMB基質は、ペルオキシダーゼとの反応において青色を生じさせる。15分後、96ウェルプレートのHRP複合体を分光計(Molecular Devices社製)によって650nmの吸収波長から分析した。終点検査のために、酸性停止液を加えると、着色を停止させて、TMB基質を黄色に変色させるであろう。また、15分後、1NのHCl溶液100μLをウェルに加えて、反応を停止させた。次に450nmの吸光度を測定した。ELISA法に対する任意の変化や改良が本実施例に示されている。
【0187】
次のポリマーを実施例に使用した。ポリブチルメタクリレート(pBMA)及びポリ(エチレン‐co‐酢酸ビニル)(pEVA)が米国特許第6,214,901号明細書の実施例1に記載されている。pBMA/pEVAポリマーマトリックスはBRAVO(登録商標)の製品名でSurModics(ミネソタ州Eden Prairie)社から購入できる。PEG1000-45PBT-55ポリマーは、1000kDaの平均分子量を有する45重量%ポリエチレングリコールと55重量%ブチレンテレフタレートのポリ(ブチレンテレフタレート‐co‐エチレングリコール)コポリマーである。PEG1000-45PBT-55は、PolyActive(登録商標)の製品名でOctoPlus社(オランダ、Leiden)から入手できる。マクロマー「MD‐アクリレート」は、米国特許出願公開第2007/0065481号明細書に記載されているように調製されたアクリル化マルトデキストリンポリマーである。ポリビニルピロリドン(PVP)Kollidion 90Fは、BASF社(ニュージャージー州Mt. Olive)から得た(カタログ#85-2549)。ポリエチレングリコール)(PEG)はUnion Carbide(コネチカット州Danbury)社から得た(#37255-26-6)。
【0188】
光リガンド4,5‐ビス(4‐ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン‐1,3‐ジスルホン酸二ナトリウム塩(DBDS)を、米国特許第6,669,994号明細書の実施例1に記載されているように調製した。
【0189】
コロイド金(5nm、0.01%w/v、5μgの金、0.00013重量%タンパク質)は、VWR(ペンシルバニア州West Chester)社から購入した(カタログ#1C15401005)。
【0190】
吹き付け塗装は、米国特許出願公開第2004/0062875号明細書に記載されているような超音波スプレー塗装機、又は米国特許出願公開第2005/0244453号明細書に記載されているような、IVEKガス噴霧スプレーシステム(Dlgispense2000、型番4065、IVEK社(バーモント州North Springfield)製)に接続しているシリンジポンプを有するIVEK塗装機を用いて行なった。
【0191】
実施例1 IgG及び分解性ポリマーを含む微粒子の形成
5mMりん酸緩衝液中で3.54mg/mLの濃度のIgG(10%ウサギ抗ヤギ、90%非特異的ウサギ)(Sigma社(ミズーリ州St. Louis)製)溶液を調製した。MD‐アクリレートを10mg/mLの濃度でりん酸緩衝溶液に加えた。MD‐アクリレート溶液を様々な比でIgGに加えた。全固形分を1.7mgに保った。混合したMD‐アクリレート及びIgG溶液に20mg/mLのPVPを加え、MD‐アクリレート/IgG微粒子を形成させた。次に、PVPを有する溶液を凍結乾燥した(ドライアイス上で冷凍し、サンプルを高真空下、終夜、及び室温に保った)。
【0192】
米国特許第5,414,075号明細書(実施例1)に記載されているように調製されたペンタエリスリトール(「テトラ‐BBE‐PET」)の光開始剤テトラキス(4‐ベンゾイルベンジルエーテル)の10mg/mL濃度のクロロホルム溶液を、凍結乾燥させたMD‐アクリレート/IgG微粒子に、MD‐アクリレートの0.2当量で加えた。その溶液を十分にボルテックスして、Dymax Lightweld PC-2照射システム(Dymax社(コネチカット州Torrington)製;330〜340nm、光強度6.5mW/cm2)内に置き、MD‐アクリレートの架橋を促進した。その溶液を光源から30cm離して置き、240秒間照射してから、取り出した。その混合物を5000rpmで5分間攪拌し、クロロホルムを捨てた。残留物をクロロホルムで2回洗浄した。
【0193】
その固体を1mLの脱イオン水(DI)に溶かし、光学顕微鏡検査により分析するためにサンプルをプレート上に移した。微粒子を500倍及び1000倍の拡大倍率で観察した。微粒子の粒径は約1〜2μmであった。
【0194】
実施例2
IgG及び分解性ポリマーを含む微粒子の形成
IgG(10%ウサギ抗ヤギ、90%非特異的ウサギ(Sigma社(ミズーリ州St. Louis)製))溶液を、5mMりん酸緩衝液によって3.54mg/mLの濃度で調製した。デキストラングリシジルメタクリレート(米国特許第6,303,148号明細書に記載され;「Octodex(登録商標)」の商標として入手できるものなど)を水に、濃度10mg/mLまで加えた。次に、デキストラングリシジルメタクリレート溶液をIgGに様々な比で加えた。全固形分を1.7mgに保った。水溶液に、20mgのPVPを加えて凍結乾燥した。10mg/mLのテトラ‐BBE‐PETのクロロホルム溶液を、凍結乾燥させたIgG/デキストラングリシジルメタクリレート微粒子に、デキストラングリシジルメタクリレートの0.2当量で加えた。その溶液を十分にボルテックスして、Dymax Lightweld PC-2照射システム(Dymax社製;330〜340nm、光強度6.5mW/cm2)内に置いた。その溶液を光源から30cm離して置き、240秒間照射してから取り出した。その混合物を5000rpmで5分間攪拌し、クロロホルムを捨てた。残留物をクロロホルムで2回洗浄した。
【0195】
実施例3 IgG及び両親媒性ポリマーを含む微粒子の形成
11mgの特異的ウサギ抗ヤギIgG及び100mgの非特異的ウサギIgG(ともにLampire Biological Laboratories社(ペンシルバニア州Pipersville)製)を含む11mLのPBSを2.75mLずつ4つに分けて、5mMりん酸緩衝液によって脱塩カラム(Econopac 10DG、Bio-Rad社製)を通過させた。その溶出液に、2gのポリビニルピロリドン(PVP)を40mLの脱イオン水(DI)に溶解させて加えた。その溶液を−20℃で2時間、−5℃で2時間、20℃で2時間、0℃で24時間処理してから、凍結乾燥させた。次に、クロロホルムに固体を懸濁させ、遠心機でタンパク質を沈降させ、そして溶媒を吸引することにより、PVPを抽出した。
【0196】
実施例4 サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いたIgG及びPVPを含む微粒子の特性解析
実施例3で説明した方法によって作られた微粒子の2つのサンプルを分析して、PVPの残留濃度を決定した。そのサンプルを8mLバイアルに移して秤量した(26mg及び27mg)。1.75mLの水を加え、その溶液を静かに振って、微粒子を溶解/懸濁させた。最初に分析サンプルの両溶液は濁っていたが、0.5%酢酸を滴加すると、一つ目の溶液が全て透明になる一方で、二つ目は少し透明になった。アセトニトリル(ACN)を滴加すると、この溶液はさらに少し透明になるが、完全ではなく、さらにACNを加えると、両サンプルのタンパク質の凝集という所定の効果が発生し、明らかに大量のタンパク質が両サンプル溶液中で凝集した。
【0197】
その抽出物を遠心分離して、その上澄みを窒素雰囲気下75℃で、100μL又は150μLのいずれかの最終体積へ蒸発させた。その溶液をポリプロピレンフィルターによってろ過した。最終体積への蒸発において、両抽出物には多量の白沈が見られた。注入液(50mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH6.8)を含む63%MeOH)をサンプルに加えてから、サンプルにサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を行なった。両サンプルには、PVP基準品と同じ保持時間の範囲で溶出した、ブロードで規格外のピークが見られた。サンプル抽出物の1つを希釈すると、その物質がポリビニルピロリドン(PVP)基準品の保持時間とほぼ一致することが確認された。較正曲線の外挿法を用いて、これらのサンプルの両方についてPVPの濃度を0.5重量%〜2.0重量%と見積もった。したがって、実施例3で説明した方法によって作られた微粒子には、約0.5重量%〜2.0重量%のPVPがある。
【0198】
実施例5
分解性マトリックス内に微粒子を含む塗膜の形成
IgG微粒子を調製するために、実施例3で説明したように、IgG(ウサギ抗ヤギ)2.4mgを透析して、PVP(50mg)で共凍結乾燥させた。回転(5krpm、5分)と再懸濁を数回(≧3)行なってPVPをクロロホルムで抽出した。IgG粒子を1mgの量で、5mLのクロロホルム中で100mgのポリマー「4‐L‐Phe‐4‐PEA」(米国特許第6,703,040号明細書(表2の説明文の最終行に記載されているように調製した)と混ぜた。超音波プローブ(15秒、0.5秒のパルス)を用いて、懸濁液を均質化した。ガス噴霧型スプレー装置を用いて、3つの異なる全IgG量(8.0μgのIgG、9.9μgのIgG、及び30.0μgのIgG。ただし、全て0.8重量%のIgG)で、パリレン塗装金属MP‐35N合金コイル(Lake Region Manufacturing社(ミネソタ州Chaska)製)にその懸濁液を吹き付けた。具体的には、標準的な気相成長法を用いて、1g重量のパリレン‐C二量体を各コイル全面に堆積させた。
【0199】
次に、塗装されたコイルからのIgGの放出速度を次のように評価した。塗装されたコイルを微小遠心管内の500μLの1×PBS溶液に入れた。所定の間隔で、その溶出物を微小遠心管から取り出して、未使用の溶出液(1×PBS)0.5mLを、コイルを含む微小遠心管に加えた。本書で述べた酵素結合免疫吸着法(ELISA)を用いて、96ウェルプレート内の溶出サンプルのウサギ抗体分子の活性を分析した。
【0200】
各時点の溶出サンプルに検出可能な抗体が見つかった。活性IgGの溶出率(%)を全活性IgGの百分率として下記表1に示す。結果を図1にも示す。0.8重量%での放出速度は、全塗膜に関して約0.1μg/日であることが分かった。より薄い塗膜(より少ないタンパク質)ほど、相対放出速度(放出率(%))も速くなる。
【0201】
【表1】

【0202】
実施例6
非分解性ポリマーマトリックス内に微粒子を含む塗膜の形成
2gのPVPを、100mgの非特異的ウサギIgG及び11mgのウサギIgG抗ヤギを含むPBS溶液11mLに溶解させた。凍結乾燥後、未使用のクロロホルム中で遠心分離と再懸濁を繰り返して(3回以上)、そのPVPをクロロホルムで抽出した。得られた懸濁液はIgG及び残留PVP(1〜2重量%)からなり、その物質は非晶質であった(凝集しているように見えた)。秤量した分の乾燥IgG粉末は、20mg/mLでクロロホルムに再懸濁させた。PEG1000-45PBT-55を懸濁液に加え、最終濃度を10mg/mLにした。懸濁液を20μmフィルターによってろ過して、次に5mLのHamiltonガラス製注射器に充填し、ミクロスターラーを付けて、シリンジポンプに取り付けた。第二の5mLのHamiltonガラス製注射器に、クロロホルム中でそれぞれ4mg/mL及び16mg/mL(20mg/mLの全ポリマー)のpEVA及びpBMAからなる、塗料溶液を加えた。次に、2つの溶液を、2006年11月14日に出願された米国特許出願公開第2007/0128343号明細書、名称「Apparatus and Methods for Applying Coatings」に記載された超音波スプレーシステムを用いて、ステント上へ同時に吹き付けた。主に塗装条件を一定にした(1.5W、3.5psi、100塗装サイクル)。塗装ヘッドに送達されている溶液の流速は、合わせて0.06mL/分であり、表2のタンパク質懸濁液とポリマー溶液に分けられる。
【0203】
【表2】

【0204】
次に、ステントからのIgGの溶出速度を評価した。ステントを1mLのPBS中に入れて、その溶液の一部を全IgG含有量及び活性IgG含有量の両方について定期的に評価した。上述の手順の酵素結合免疫吸着分析法によって、活性タンパク質放出量を算定した。全活性タンパク質(例えば、特異的IgG)の百分率として活性タンパク質放出量を表3及び図2に示す。
【0205】
【表3】

【0206】
全タンパク質の量は、Bradford試薬(Sigma社(ミズーリ州St. Louis)製)を用いて、BCA全タンパク質キット(Sigma社製(ミズーリ州St. Louis)で測定した。全タンパク質の溶出率を表4及び図3に示す。
【表4】

【0207】
実施例7
pBMA/pEVA/PEG1000-45PBT-55マトリックス内のIgG微粒子のコイル塗装及びIgG溶出
PVP中での相分離によってIgGタンパク質粒子を作った。Bio-Rad Econo-Pac 10 DG(Bio-Rad社(カリフォルニア州Hercules)製)を用いて、IgGサンプル150mgを含む10mg/mLのPBS溶液を脱塩した。5mMのPBSでカラムからIgGを溶出させた。その溶液に、3gのPVPを加え、凍結させてから、凍結乾燥した。クロロホルムを用いてPVPを抽出した。超音波スプレー塗装機を用いる前に、ブフナー漏斗を用いて、IgG粒子のクロロホルム懸濁液を20μmポリプロピレンフィルターに通した。次に、そのIgG粒子をpBMA/pEVA/PEG1000-45PBT-55塗料溶液に分散した。40重量%タンパク質のIgG/PEG1000-45PBT-55(2:1)を作った。組成物を調製してpBMA/pEVA比を1:1又は1:4にした。IVEK塗装機を用いるだけでなく、超音波スプレー塗装機上でも、その溶液の吹き付け塗装を行なった。表5では、下記の目付量で、IVEK塗装機を用いて計6個のコイルを塗装し、超音波スプレー塗装機で3個のコイル(コイル7〜9)を塗装した。
【0208】
【表5】

【0209】
図4及び5は、IVEK塗装機又は超音波スプレー塗装吹き付けシステムのいずれかを用いて形成した塗膜からのIgGタンパク質の累積放出率を示す。IgGタンパク質の溶出はPBSで行ない、ELlSAを用いて測定した。
【0210】
超音波スプレー塗装機によって形成した塗膜からのIgGの放出は、約90日後に止まった。IVEK塗装機によって形成した塗膜からのIgGの放出は、長期に渡ることが分かった(>150日)。IVEK塗装機で生じた塗膜は、目視検査下では、超音波スプレーシステムと比較して、より粗く見えた。pBMA及びpEVAポリマー成分が相分離しているように見えた。
【0211】
実施例8
IgG/MD‐アクリレート粒子からのIgG放出
10%特異的ウサギ‐α‐ヤギ及び90%非特異的タンパク質(Lampire社製)からなるIgG水溶液を調製した。MD‐アクリレートをIgG溶液に、1:2(IgG:MD‐アクリレート)の重量比で溶解させた。IgG:MD‐アクリレート溶液をボルテックスしながら、30%w/vPEGの20kDa溶液を0.5mg/mLのDBDSと静かに混ぜることにより、粒子を得た。DBDSをPEG相に加えたことによって、形成された粒子は架橋させることができた。5分間のUV照射によって、架橋粒子を形成した。UV照射は、氷上でPEG粒子懸濁液を攪拌しながら、低温室内で、Dymax lampを用いて、4℃で行なわれた。遠心分離を5krpmで10分間行なうことにより、合成粒子を単離した。5mLのイソプロピルアルコール(IPA)を残留物に加えることにより、残りのPEGをさらに除去した。その懸濁液をボルテックスし、同設定で回転させた。TPAによる洗浄を繰り返した。5mLのクロロホルムで後洗浄した。
【0212】
IgG/MD‐アクリレート粒子(秤量10mg)を1mLのPBS中でインキュベートして、放出運動を特性解析した。図6では、最初の1時間に、約50%のバーストが見られる。このバーストは、大部分がIgGのみからなる粒子又は架橋の不十分な粒子のいずれかに起因する。酵素結合免疫吸着分析法を用いて、約85%(活性IgG重量/全活性IgG重量)の全放出量を11日に亘って測定したが、粒子はまだ機能性IgGタンパク質を放出し続けていた。
【0213】
実施例9
pBMA/pEVA/PEG1000-45PBT-55マトリックス内のIgG/MD‐アクリレート微粒子のコイル塗装及びIgG溶出
上述のIgG/MD‐アクリレート粒子をpBMA/pEVA/PEG1000-45PBT-55塗料溶液中に、IgG/MD‐アクリレートが30質量%になるように充填した。表5に示したようなポリマー塗料を調製した。15mLのクロロホルムに、IgGと架橋化合物IIIの混合物(0.83mg/mL、6.3mgのPEG1000-45PBT-55、12.5mgのpEVA、及び12.5mgのpBMAでは、1:2の比)からなる粒子の懸濁液を、その混合物を37℃で、オービタルシェイカー上で30分間振とうしながら、溶解した。4個のコイルを塗装した。支持体上のIgGの全重量は約50μg(500μgの塗膜中に150μgのIgG/MD粒子)であった。結果はIgGの10%が活性(約5μg)であることを示した。pEVA/pBMA(1:1)を含む追加のトップコートをコイル番号9及び10に塗布した(目付量については表8を参照)。塗料溶液、pBMA/pEVA/PEG1000-45PBT-55、及び粒子マトリックスIgG/MD‐アクリレート(MD)が表6に記載されている。
【0214】
【表6】

【0215】
粒子マトリックス懸濁液は、著しく微粒子状であり、極めて安定であった。目視検査下では、得られた塗膜は平滑であった。IgGの全重量は約50μg(500μgの塗膜中に150μgのIgG/MD粒子)である。最終目付量は約500μgであった。
【0216】
図7は、4個のコイルからの、pBMA/pEVA/PEG1000-45PBT-55塗料溶液中のIgG/MD‐アクリレート粒子からのIgGの制御放出の結果を示す。pBMA/pEVAトップコートの追加は、IgGのさらなる制御放出を可能にする。
【0217】
ELISA法により活性IgGを測定した。表7は、トップコートを備えているときと、備えていないときの、55日以内の活性IgGの制御放出を示す。
【0218】
【表7】

【0219】
実施例10
pBMA/pEVA/PEG1000-PBTマトリックス内のIgG/MD‐アクリレート微粒子のコイル塗装及びIgG溶出
一連のカラム溶出と遠心分離の工程を用いて、Fabタンパク質を調製した。実施例7で説明したように、4個のBio-Radカラムを調製した。保存バッファーを入れた。カラムを5mMのPBS20mLと2.5mLのFab(特異的ウサギ‐α‐ヤギ及び90%非特異的タンパク質(Southern Biotech社(アラバマ州Birmingham)製)、A280(50μL)=0.898、ε=1.35、すなわち13.3mg/mL)で溶出した。PBS・Fab溶液を各カラム中に入れて、十分に吸収させた。次に、カラムに、NaClを含まない5mMのりん酸緩衝液(pH=7.31)を十分に充填した。溶出サンプルを各々約1mL集めて、A280で分析した。計4個のカラムの最初の4つのフラクションをまとめた(約19mL、A280=0.491、濃度=7.27mg/mL)。
【0220】
2つの遠心分離フィルター(10kDaカットオフ、Pall社(ニューヨーク州East Hills)製)に3.5mLのFabタンパク質溶液を充填し、5500g、50分間、及び6℃で回転させた。残りの上澄みに、3mLの残留溶液を加え、遠心分離フィルターに加えて、同条件下で50分間回転させた。その上澄みをまとめて、残りの6mLの溶液に加えた。まとめたフラクションは、A280(50μL)=1.452に基づくと21.5mg/mLのタンパク質濃度を有していたので、計130mgのFabが得られた。
【0221】
タンパク質溶液を、ネジフタに穴を開けた50mL遠心分離管に37℃で10分間保持することによって、粒子を形成した。ボルテックスしながら、37℃に前加熱した30%(w/v)のPEG(20kDa)溶液8.67mLを、フタの穴からタンパク質溶液に加えた。白色懸濁液が形成され、それをプラスチックシャーレ中に注いだ。そのシャーレをカバーして、連続的に温度を下げた(4℃で1時間、−20℃で1時間、及びドライアイス上で30分間)。PEG/タンパク質懸濁液の最初の光沢が消えて固体になった。この凍結懸濁液を凍結乾燥のために真空オーブンに入れて、室温及び終夜(真空30mmHg)で静置した。
【0222】
目視検査により、柔軟な又は湿った部分がないのを確認したらすぐに、ドライケーキを50mL遠心分離管に移して、−20℃で2.5日間置いた。次に、20mLのHPLC品質クロロホルムを加えた。PEGは濁った微小タンパク質懸濁液の状態で溶解した。クロロホルムを2つの15mL管中に分注して、遠心分離機にかけた(5000rpm及び4℃で10分間)。ガラスピペットを用いて、クロロホルムを吸引して保管した。未使用のクロロホルム(管毎に10mL)を加えた。この洗浄手順を計3回行なった。次に、10mLのクロロホルム中でこれらのタンパク質粒子を混合して、5000rpm及び4℃で10分間回転させた。クロロホルムを吸引しつくしてから、タンパク質粒子をクロロホルム10mLに再懸濁させた。吸引されたクロロホルムフラクションから残留Fabタンパク質粒子を別々に回収して、2回洗浄して、主バッチに加えた。21krpmの携帯用ホモジナイザーで懸濁液を均質化し、次に20μmポリプロピレンフィルター(ブフナーフィルター)によってろ過した。全Fab粒子がフィルターを通過した。ろ過したバッチを20mLホウ素化ガラスバイアルに集めた。
【0223】
Fabタンパク質粒子の濃度を2回測定した。具体的には、50μLの懸濁液をガラスカバースリップ上に分注して秤量した。そのカバースリップをプラスチックシャーレに置いて、5mMのPBS1mLで洗浄した。A280でそのPBSのタンパク質濃度を分析した。200μLの分割量をサンプリングして4℃で保管した。表8に、塗料溶液を調合する前のFabタンパク質調合液の特性値をまとめる。
【0224】
【表8】

【0225】
14mLのFabクロロホルム懸濁液を洗浄済みのホウ素化ガラスバイアルに移すことにより、塗料調合液を作った。Fab粒子の全重量は72.38mgであった。36.19mgのPolyActiveをFab懸濁液に加え、PolyActiveが溶解するまで振とうした。Fab/PolyActive混合物を−20℃及び終夜で約8時間保管した。
【0226】
66.6mgのpBMA及び66.6mg量のpEVAからなる塗料を、Fab微粒子・PEG1000-45PBT-55混合物に加えた。Fab微粒子/pBMA/pEVA/PEG1000-45PBT-55塗料溶液の成分の最終重量%は、塗料溶液の各々の成分について、それぞれ、29.93%、14.97%、27.55%、27.55%であった。噴霧析出によりコイルを塗装する前に、その混合物をオービタルシェイカー上で、200rpm及び32℃で60分間振とうした。超音波スプレー塗装機で計8個のコイルを塗装し、300μgのFabタンパク質を各コイル上に堆積させた。窒素ボックス内で終夜乾燥させた後、パリレン‐Cトップコートを塗布した(モノマー1gを使用した)。具体的には、標準的な気相成長法を用いて、1gのパリレン‐C二量体を各コイル全面に堆積させた。
【0227】
8個のコイルについて、ELISA法及びトリプトファン分析法により、全タンパク質及び活性タンパク質を測定した。図8は、それぞれの4個のコイルについて約120日に亘る活性タンパク質及び全タンパク質の2つの記述曲線を示す。85%を超える活性タンパク質が約120目に検出された。
【0228】
実施例11
様々なpBMA/pEVA/PEG1000PBT比を有するFab‐微粒子塗料配合液
一連のカラム溶出と遠心分離の工程を用いて、Fabタンパク質を調製した。保存バッファーを入れることによって4個のBio-Radカラムを調製し、5mMのPBS20mL(pH7.3)で溶出させた。A280(50μL)=0.953、14.1mg/mLのFab(RαG、Southern Biotech社製)2.5mLを各カラム上に置いて、十分に吸収させた。次に、カラムに、NaClを含まない5mMのPBSを十分に充填した。溶出サンプルを各々約1mL集めて、A280で分析した。2対のカラムの最初の4つのフラクションをまとめた。4つの遠心分離フィルター(10kDaカットオフ、Pall社(ニューヨーク州East Hills)製)に3.5mLのFabタンパク質溶液を充填し、5500g、50分間、及び6℃で回転させた。残りの上澄みに、溶液の残りを加え、同条件下で10分間回転させた。その上澄みをまとめて、22.52mg/mLのFab5.5mLを得た。
【0229】
タンパク質溶液を、ネジフタに穴を開けた50mL遠心分離管に入れて、その管を37℃に10分間加熱することによって、粒子を形成した。ボルテックスしながら、37℃に前加熱した30%(w/v)のPEG(20kDa)溶液6.67mLを、フタの穴からタンパク質溶液に加えた。白色懸濁液が形成され、それをプラスチックシャーレ中に注いだ。そのシャーレをカバーして、連続的に温度を下げた(4℃で1時間、−20℃で1.5時間、及びドライアイス上で30分間)。PEG/タンパク質懸濁液の最初の光沢が消えて固体になった。この凍結懸濁液を真空オーブン内で、室温及び終夜(真空30mmHg)で凍結乾燥させた。
【0230】
目視検査により、凍結乾燥させた粉末に柔軟な部分がないのを確認したらすぐに、ドライケーキを50mL遠心分離管に移した。次に、20mLのHPLC品質クロロホルムを加えた。PEGは濁った微小タンパク質懸濁液の状態で溶解した。クロロホルムを2つの15mL管中に分注して、遠心分離機にかけた(5000rpm及び4℃で10分間)。ガラスピペットを用いて、クロロホルムを吸引して保管した。未使用のクロロホルム(管毎に10mL)を加えた。この洗浄手順を計3回行なった。タンパク質粒子をクロロホルム10mLに再懸濁させた。吸引されたクロロホルムフラクションから残留Fabタンパク質粒子を別々に回収し、2回洗浄して主バッチに加えた。その後に、懸濁液を20μmポリプロピレンフィルター(ブフナーフィルター)によってろ過し、20mLホウ素化ガラスバイアルに集めた。
【0231】
Fabタンパク質粒子の濃度を3回測定した。50μLの懸濁液をガラスカバースリップ上に分注して秤量した。そのカバースリップをプラスチックシャーレに置いて、5mMのPBS1mLで洗浄した。A280でそのPBSのタンパク質濃度を分析した。200μLをサンプリングして4℃で保管した。
【0232】
ポリマーを加える前に、ホモジナイザーを20に設定して10秒間使用して、タンパク質クロロホルム懸濁液を均質化した。ブフナー漏斗を用いて、20μmフィルターによって懸濁液をろ過した。表9に列挙した組成によって塗料溶液を調製した。超音波スプレー塗装機を用いて、塗料溶液を金属コイルに塗布した。
【0233】
【表9】

【0234】
37℃のPBS中で、コイルの制御放出を評価した。トリプトファン蛍光を用いて放出されたタンパク質を分析した。トリプトファン蛍光の手順では、等量の12Mグアニジンの再蒸留水溶液を加えることにより、タンパク質サンプルを室温で変性させた。そのタンパク質サンプルを−20℃で10分間保持した。λex=290nm及びλem=370nmでの蛍光を記録した。図9は、30日までのFabの制御放出を示す。
【0235】
実施例12
コロイド金で作製したFab微粒子
一連のカラム溶出と遠心分離の工程を用いて、Fabタンパク質を調製した。4個のBio-Radカラムを調製し、保存バッファーを入れた。カラムを5mMのPBS20mLで溶出させた。NaClを含まない5mMのりん酸緩衝液を10×PBS原液から調製した。分割した25mLをDI水(18.1Ω)で全量500mLに希釈した。一滴のH3PO4を加えた後、pHをpH=7.31に調整した。A280(50μL)=0.953、ε=1.35、すなわち14.1mg/mLのFab(RαG、Southern Biotech社製)2.5mLを各カラム上に置いて、十分に吸収させた。5mMのPBS4mLをカラム中に入れて、十分に溶出させた。4つの遠心分離フィルター(10kDaカットオフ、Pall社(ニューヨーク州East Hills)製)に4mLのFabタンパク質溶液を充填し、5500g、50分間、及び10℃で回転させた。それらの上澄みをまとめると、A280によって算出したFab濃度は20.4mg/mLであった。タンパク質溶液のpHを5.3に調整した。2mLのFabタンパク質(40mg)に、50μLのコロイド金(5nm、0.01%w/v、5μgの金、0.00013重量%のタンパク質)溶液を加えた。
【0236】
粒子を形成するために、タンパク質/コロイド金溶液を、15mL遠心分離管内で、50℃で40分間保持した。30%(w/v)のPEG(20kDa)溶液をDI水中で調製し、pHを5.0に調整し、50℃に加温した。ネジフタにドリルで穴を開け、ボルテックスしながら、PEG700μL(タンパク質の重量の5.25倍)を、フタの穴からタンパク質溶液に滴下した。僅かに濁った溶液が得られ、それをプラスチックシャーレ中に注いだ。そのシャーレをカバーして、−20℃で1.5時間、及びドライアイス上で30分間処理した。PEG/タンパク質懸濁液の最初の光沢が消えて固体になった。この凍結懸濁液を真空オーブン内で、室温及び終夜で凍結乾燥させた。
【0237】
目視検査により、柔軟な部分がないのを確認したらすぐに、ドライケーキを50mL遠心分離管に移した。20mLのHPLC品質クロロホルムを加えた。PEGは濁った微小タンパク質懸濁液の状態で溶解した。クロロホルムを4つの0.2μmポリプロピレンフィルター上に分注して、遠心分離機にかけた(5000rpm及び10℃で15分間)。ガラスピペットを用いて、クロロホルムを加えた。この洗浄手順を計3回行なった。タンパク質粒子をクロロホルム10mLに再懸濁させた。分割した50μLの懸濁液をガラスカバースリップ上に分注して秤量した。そのカバースリップをプラスチックシャーレに置いて、5mMのPBS1mLで洗浄した。A280でそのPBSのタンパク質濃度を分析した。
【0238】
ナノ金核形成法を用いている非特異的Fab粒子を、PolyActive/BRAVOの配合液によって塗布した。この塗料溶液は、タンパク質30%、PEG1000-45PBT-55を15%、並びにpBMA及びpEVAともに27.5%ずつを用いる。超音波スプレー塗装機を用いて、該塗料溶液をコイルサンプル上へ吹き付けた。コイル上の最終タンパク質重量は、300μgであった。室温、窒素ボックス内、及び終夜で乾燥させた後、パリレン(モノマー1g)のトップコートを塗装されたコイルの一部分に塗布した。吹き付け塗装後、そのコイルを10mMのPBS溶液500μLに入れ、200rpmのオービタルシェイカー上で37℃に保った。
【0239】
コロイド金からのFab粒子の制御放出を図10に示す。Fabの放出プロフィールは約50日まで続いている。
【0240】
実施例13
コロイド金で作製したFab粒子
一連のカラム溶出と遠心分離の工程を用いて、Fabタンパク質を調製した。4個のBio-Radカラムを調製し、保存バッファーを入れた。カラムをNaClを含まない5mMのりん酸緩衝液20mLで溶出させた。15.2mg/mLのFab(RαG、Southern Biotech社製)3mLを各カラム上に置いて、十分に吸収させた。5mMのPBS4mLをカラム中に入れて、十分に溶出させた。4つの遠心分離フィルター(10kDaカットオフ、Pall社(ニューヨーク州East Hills)製)に4mLのFabタンパク質溶液を充填し、5500g、50分間、及び10℃で回転させた。それらの上澄みをまとめると、A280によって算出したFab濃度は20mg/mLであった。タンパク質溶液のpHを5.3に調整した。2mLのFabタンパク質(40mg)に、50μLのコロイド金(5nm、0.01%w/v、5μgの金、0.00013重量%のタンパク質)溶液を加えた。
【0241】
粒子を形成するために、タンパク質/コロイド金溶液を、15mL遠心分離管内で、50℃で40分間保持した。30%(w/v)のPEG(20kDa)のDI水溶液を調製し、pHを5.0に調整し、50℃に加温した。ネジフタにドリルで穴を開け、ボルテックスしながら、PEG700μL(タンパク質の重量の5.25倍)を、フタの穴からタンパク質溶液に滴下した。僅かに濁った溶液が得られ、それをプラスチックシャーレ中に注いだ。そのシャーレをカバーして、−20℃で1.5時間、及びドライアイス上で30分間処理した。PEG/タンパク質懸濁液の最初の光沢が消えて固体になった。この凍結懸濁液を卓上凍結乾燥機で凍結乾燥させた。
【0242】
その乾燥粉末を15mL遠心分離管に移した。5mLのHPLC品質クロロホルムを加えた。PEGは濁った微小タンパク質懸濁液の状態で溶解した。クロロホルムを4つの0.2μmポリプロピレンフィルター上に分注して、遠心分離機にかけた(5000rpm及び10℃で15分間)。ガラスピペットを用いて、未使用クロロホルムを加えた。この洗浄手順を計3回行なった。タンパク質粒子をクロロホルム10mLに再懸濁させた。分割した50μLの懸濁液をガラスカバースリップ上に分注して秤量した。そのカバースリップをプラスチックシャーレに置いて、5mMのPBS1mLで洗浄した。A280でそのPBSのタンパク質濃度を分析した。
【0243】
ナノ金核形成法を用いている非特異的Fab粒子を、pEVA/pBMA(1:1)の配合液によって塗布した。この塗料溶液は、タンパク質30%、並びにpBMA及びpEVAともに35%ずつを用いる。超音波スプレー塗装機を用いて、該塗料溶液をコイルサンプル上へ吹き付けた。コイル上の最終タンパク質重量は、約450μgであった。室温、窒素ボックス内、及び終夜で乾燥させた後、20mg/mLのpEVAのトップコートを塗装されたコイルの一部分に塗布した。吹き付け塗装後、そのコイルを10mMのPBS溶液500μLに入れ、オービタルシェイカー上で37℃に保った。
【0244】
コロイド金からのFab粒子の制御放出を図11に示す。
【0245】
実施例14
塗料によるFab微粒子の形成
この一連の実験では、コロイド金微粒子上の各種の被膜組成について検討する。10×PBS原液から、NaClを含まない5mMりん酸緩衝液を調製した。そのPBSをDDWで全量500mLに希釈した。濃縮H3PO4を一滴加えた後、pHを7.31に調整した。
【0246】
14A. コロイド金によるFab微粒子の調製
BioRad脱塩カラム(Econo-Pac 10 DG)を用いてFab(ウサギ抗ヤギ(RαG))を脱塩した。カラムの保存バッファーを入れた。カラムを5mMのPBS20mLで溶出させた。一定量のFab(RαG)(2.5mL、A280(50μL)=0.953、ε=1.35、すなわち14.1mg/mL)を各カラム上に置いて、十分に吸収させた。5mMのPBS4mLでカラムからFabを溶出させた。
【0247】
次に、脱塩したFab溶出液4mLを充填して5500g、50分間、及び10℃で回転させている4つの遠心分離フィルター(10kDaカットオフ、Pall LifeSciences社製)を用いて、Fabを濃縮した。濃縮したFabの上澄みをまとめて、分光光度法(A280)で決定した20.4mg/mLの濃度のFabを用意した。2NのHClを10μL加えることにより、タンパク質溶液のpHを5.3に調整した。
【0248】
2mLの濃縮Fabタンパク質(40mg)に、50μLのコロイド金(VWR、5nm、0.01%w/v、5μgの金、0.00013重量%のタンパク質)溶液を加えた。15mL遠心分離管内で、タンパク質/コロイド金溶液を50℃で40分間インキュベートした。
【0249】
PEG溶液(20kDa、DI水に30%(w/v)溶解している、pH=5)を50℃に加温した。Fabタンパク質/コロイド金溶液を含む遠心分離管のネジフタにドリルで穴を開け、追加中及びその後にもう5秒間、十分にボルテックスしながら、PEG溶液700μL(タンパク質の重量の5.25倍)をタンパク質/コロイド金溶液に加えた。
【0250】
僅かに濁った溶液が得られ、それをプラスチックシャーレ中に注いだ。そのシャーレをカバーして、−20℃で1.5時間、次にドライアイス上で30分間静置した。PEG/タンパク質懸濁液の最初の光沢が消えて固体になった。次に、この凍結懸濁液を真空オーブン内、室温及び終夜で凍結乾燥させた。
【0251】
凍結乾燥の後に、クロロホルムを用いてPEGを抽出した。柔軟な部分がないのを確認したらすぐに、ドライケーキを50mL遠心分離管に移した。20mLのクロロホルムを加えた。PEGは濁った微小タンパク質懸濁液の状態で溶解した。クロロホルムを4つの0.2μmPTFEフィルター(Amicon社製Ultrafree-CL)上に分注して、遠心分離機にかけた(5000rpm及び10℃で15分間)。ガラスピペットを用いて、未使用のクロロホルムを加えた。この洗浄手順を計3回行なった。タンパク質粒子をクロロホルム10mLに再懸濁させた。
【0252】
このコロイド金‐Fab微粒子を、次の実施例14B〜Dに利用した。
【0253】
14B. APTAC‐EITC‐PEI塗料
本実施例については、Chudzikらの米国特許出願公開第2004/0202774号明細書、名称「Charged Initiator Polymers and Methods of Use」の実施例1〜2に説明されているように、APTAC‐EITC‐PEIを調製した。
【0254】
4mgの微粒子をクロロホルム1mLに懸濁させることによって、準備済みのコロイド金‐Fab微粒子のバッチを調製した。その懸濁液を遠心分離管に入れた。その粒子に、2mg/mLのAPTAC‐EITC‐PEIメタノール(MeOH)液を含む10、25、50又は100μLの溶液を加えた。適量のメタノールを加えて、各々のサンプルについてクロロホルム/メタノール(10:1)混合物を得た。その混合物を室温で20分間インキュベートした。溶液は無色になり、粒子は明らかにAPTAC‐EITC‐PEIで被覆されていた。
【0255】
PTFEフィルター(0.2μm(Amicon社製Ultrafree-CL))内で粒子を3000rpmで3分間回転させることによって、任意の過剰なAPTAC‐EITC‐PEIを除去した。次に、CHCl3を用いて粒子を洗浄し、再び3000rpmで3分間回転させた。
【0256】
次に、真空オーブン内で粒子を乾燥させることにより、粒子から溶媒を除去した。PBSに懸濁させたとき、粒子が不溶性であると分かった。24〜48時間に亘って、懸濁液は徐々に溶解した。
【0257】
14C.APTAC‐EITC‐PEI及び多糖類を有する塗料
10mgのコロイド金‐核形成化Fab粒子を遠心分離フィルターに置いた。それらの粒子に、APTAC‐EITC‐PEIメタノール溶液を含む2mg/mLの溶液200μLを加えて、15分間インキュベートした。溶液は無色になり、粒子は明らかにAPTAC‐EITC‐PEIで被覆されていた。PTFEフィルター(0.2μm(Amicon社製Ultrafree-CL))内で粒子を3000rpmで3分間回転させることによって、任意の過剰なAPTAC‐EITC‐PEIを除去した。次に、CHCl3を用いて粒子を洗浄し、再び3000rpmで3分間回転させた。さらに、真空オーブン内で粒子を乾燥させることにより、粒子から溶媒を除去した。
【0258】
利用した生分解性多糖類は、メタクリル化マルトデキストリン(MD‐メタクリレート)であった。MD‐メタクリレートを準備するために、次の手順を行なった。攪拌しながらマルトデキストリン(MD;Aldrich社製;100g;3.67mmol;デキストローズ当量(DE):4.0〜7.0)をジメチルスルホキシド(DMSO)1000mLに溶解させた。マルトデキストリンの大きさを算出すると、2,000Da〜4,000Daの範囲であった。反応溶液が完成したらすぐに、1‐メチルイミダゾール(Aldrich社製;2.0g、1.9mL)、次にメタクリル酸無水物(Aldrich社製;38.5g)を攪拌しながら加えた。反応混合物を室温で1時間攪拌した。その後、水で反応混合物の反応を停止して、1,000排除分子量(MWCO)透析管を用いて蒸留水(DI)に対して透析した。凍結乾燥によってMD‐メタクリレートを単離して、63.283g(収率63%)を得た。マクロマー中の計算上のメタクリレート重量は、0.33μmol/ポリマーのmgであった。
【0259】
MD‐メタクリレート及びポリエチレングリコール(PEG、30%)を500μg/mL及び1mg/mLの濃度で用いて、塗料溶液を作った。塗料溶液をAPTAC‐EITC‐PEIで被覆された粒子に加えた。粒子を懸濁させながら十分に混合し、Blue Wave照射機(330nm、約1〜2mW/cm2で稼動しているDYMAX BLUE-WAVE 200)を用いて、UV光に60秒間当てた。次に粒子を遠心沈降させて、過剰な塗料溶液をデカンテーションした。
【0260】
14D.TEMED‐DQ/多糖類の塗料
本実施例については、Swanらの米国特許第6,077,698号明細書、名称「Photoactivatable Cross-Liking Agents Containing Charged Groups for Water Solubility」に説明されているように(実施例2を参照)、TEMED‐DQ(エチレンビス(4‐ベンゾイルベンジルジメチルアンモニウム)二臭化物(Diphoto-Diquat))を調製した。
【0261】
準備済みのコロイド金‐Fab微粒子(実施例14)の塗料溶液を次のように調製した。一般に、TEMED‐DQは、pH7ではクロロホルム、メタノール又はDDWに容易に溶けないことが分かっていた。したがって、TEMED‐DQの10mgを、100μLのメタノール及び900μLのクロロホルムを含む溶液に溶解させた。MeOH:CHCl3(1:9)の溶液100μLを5mgの(実施例14Aで調製した)Fab粒子に加えた。その混合物を室温で30分間反応させた。
【0262】
次に、溶媒が蒸発するまで、その微粒子を真空オーブン内で乾燥した。MD‐メタクリレートを、30%(w/v)PEG(20kDa)DDW溶液に、pH7で、500μg/mL、1mg/mL又は50mg/mLの濃度で溶解させて、第二の塗料溶液を調製した。MD‐メタクリレート/PEG溶液1mLを、TEMED‐DQで被覆された粒子に加えた。粒子を十分に混合し、次にBlue Wave照射機(330nm、約1〜2mW/cm2で稼動しているDYMAX BLUE-WAVE 200)を用いて、UVランプ下に60秒間置いた。
【0263】
照射後、粒子を遠心沈降させて、過剰なMD‐メタクリレート/PEG溶液をデカンテーションした。
【0264】
実施例15
両親媒性ポリマー塗料によるFab微粒子の形成
上記実施例14Aで説明したように、微粒子をAPTAC‐EITC‐PEIで被覆した(0.2mgのAPTAC‐EITC‐PEIを有する4mgのコロイド金‐Fab微粒子)。実施例14Aで説明したように、被覆粒子を乾燥した。被覆コロイド金‐Fab微粒子を微小遠心管内の1mLのクロロホルムに再懸濁させた。
【0265】
この実施例については、Jelleらの2007年4月25日に出願された同時係属出願第11/789,786号(実施例7を参照)に説明されているように、ポリエチレングリコール‐ジ(イミダゾリルカーボネート)(PEG‐DCI)を合成した。
【0266】
PEG‐DCIを次の方法で粒子に加えた。
サンプル1〜3
一定分量のPEG‐DCI(100μL)を500mLのクロロホルムに溶解させた。30μL、100μL、又は230μLの残りのPEG‐DCI/クロロホルム溶液を粒子に加え、粒子を室温に保って定期的に水中に溶解するかどうか監視した。
サンプル4
乾燥APTAC‐EITC‐PEI被覆コロイド金‐Fab粒子を純PEG‐DCI(200μL)に再懸濁させた。
サンプル5a
また、凍結乾燥後にFab粒子が形成するときに存在していた30%(w/v)PEGを除去する工程を含まないワンポット反応で、Fab‐微粒子をAPTAC‐EITC‐PEIで、次にPEG‐DCIで被覆した。
サンプル5b
もう一方では、PEG30%(w/v)がまだ残っているコロイド金‐Fab微粒子(4mg)のクロロホルム懸濁液に、APTAC‐EITC‐PEI(0.2mg)を加えた。粒子がAPTAC‐EITC‐PEIによって被覆され、溶液が無色になった後、PEG‐DCI(200μL)のクロロホルム溶液1mLを加えた。
【0267】
残りの被覆粒子(サンプル1〜5b)を真空オーブン内で乾燥した。粒子はPBSに懸濁したときに不溶性であると分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックスの一部又は全部を形成する、疎水性の第一のポリマー、
疎水性及び親水性部位を含む第二のポリマー、並びに
親水性生物活性剤を含む、前記マトリックス内に分散した複数の微粒子
を含む、親水性生物活性剤の放出を制御する溶出制御マトリックス。
【請求項2】
微粒子がポリペプチドを含む、請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項3】
微粒子が、抗体又はそのフラグメントであるポリペプチドを含む、請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項4】
微粒子がFabフラグメントを含む、請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項5】
微粒子の大部分が親水性生物活性剤で形成されている請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項6】
第一のポリマーが生物学的安定性ポリマーである請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項7】
第一のポリマーが、ポリアルキル(メタ)アクリレート及びポリ芳香族(メタ)アクリレートからなる群から選択される、請求項6に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項8】
第一のポリマーがポリn‐ブチルメタクリレートを含む請求項7に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項9】
第二のポリマーが生分解性である請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項10】
第二のポリマーがポリエチレングリコールブロックコポリマーを含む、請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項11】
第二のポリマーがポリエーテルエステルコポリマーを含む、請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項12】
第二のポリマーがPEGT/PBTを含む、請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項13】
マトリックス内の、第二のポリマー:前記微粒子の重量比が0.5:1〜1:1である、請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項14】
微粒子がマトリックスに30〜70固形重量%存在している請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項15】
微粒子がマトリックスに30〜40固形重量%存在している請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項16】
埋め込み型医療デバイス上では塗膜の形態である請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項17】
埋め込み型眼内デバイス上では塗膜の形態である請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項18】
第一のポリマーとブレンドできる第三のポリマーを含む、請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項19】
第三のポリマーがポリ(エチレン‐co‐酢酸ビニル)を含む、請求項18に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項20】
前記微粒子内及び/又は前記微粒子の表面上に存在する第四のポリマーを含む、請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項21】
第四のポリマーが天然生分解性多糖類を含む請求項20に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項22】
第一のポリマーが、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ(乳酸‐co‐グリコール酸)、及びポリカプロラクトンからなる群から選択される、請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項23】
インプラントの形態である請求項1に記載の溶出制御マトリックス。
【請求項24】
疎水性の第一のポリマー、
疎水性及び親水性部位を含む第二のポリマー、並びに
親水性生物活性剤を含む複数の微粒子
を含む組成物を準備する工程と、
支持体の表面上に前記組成物を配置する工程
を含む、親水性生物活性剤の放出を制御する溶出制御マトリックスを調製する方法。
【請求項25】
前記の配置する工程が、表面上に組成物を吹き付ける工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ポリマーマトリックスの一部又は全部を形成する、疎水性の第一のポリマー、並びに
親水性生物活性剤及び架橋親水性ポリマーを含む、前記マトリックス内に分散した複数の微粒子
を含む、親水性生物活性剤の放出を制御する溶出制御マトリックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−542671(P2009−542671A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518278(P2009−518278)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/015075
【国際公開番号】WO2008/002657
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(506112683)サーモディクス,インコーポレイティド (50)
【Fターム(参考)】