説明

微粒子検知システム

【課題】微粒子検知システムの検知部への水滴の付着による不具合の発生を、抑制或いは防止できる微粒子検知システムを提供する。
【解決手段】 微粒子検知システム1,2,3は、内燃機関ENGから排出され、排気管EP内を流通する排気ガスEG中の微粒子Sの量を検知する。システム1,2,3は、排気管EPに装着された検知部10と、検知部10と電気的に接続し、検知部10を駆動すると共に、検知部10からの信号Isを検知処理する駆動処理回路201と、を備え、駆動処理回路201は、内燃機関ENGの始動後、駆動処理回路201で定める開始条件を満たすまで、検知部10の駆動開始を遅らせる駆動開始遅延手段S2,S3,S11,S12,S13,S22,S23を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気管内を流通する排気ガス中の微粒子の量を検知する微粒子検知システム(以下、単に、システムともいう。)に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン)では、その排気ガス中にススなどの微粒子を含むことがある。
このような微粒子を含む排気ガスは、フィルタで微粒子を捕集して浄化することが行われている。また、必要に応じてフィルタを高温にすることで、このフィルタに蓄積した微粒子を燃焼させて除去することも行われる。しかるに、フィルタが破損するなどの不具合を生じた場合には、未浄化の排気ガスが直接、フィルタの下流に排出されることとなる。
そこで、(未浄化の)排気ガス中の微粒子の量を直接計測したり、フィルタの不具合を検知すべく、排気ガス中の微粒子の量を検知可能な微粒子検知システムが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、粒子計測処理方法及び機器が開示されている。この特許文献1では、イオン化された正のイオン粒子を含む気体を、排気管からチャネル内に取り込んだ微粒子を含む排気ガスと混合して微粒子を帯電させ、その後排気管に排出する。そして、排出された帯電微粒子の量に応じて流れる電流(信号電流)を検知して、微粒子の濃度を検知する手法が開示されている。
このように、微粒子検知システムでは、検知部を排気管に取り付け、排気管内の排気ガス中の微粒子を検知すべく排気ガスを取り入れる。このため、検知部の一部は、排気管の内部空間に連通した状態に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2009/109688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内燃機関或いは排気管は、前回の内燃機関の駆動後に冷却されるので、外気温などによっては、ターボチャージャのハウジング内や排気管内に、凝縮水が溜まる場合がある。このため、内燃機関の始動後、しばらくの間は、排気ガス中に水滴が含まれている場合がある。また、内燃機関の始動前から検知部自身の内部や周囲に凝縮水が付着している場合もある。即ち、検知部は、内燃機関の始動前から或いは事後的に、水滴が付着した状態となる場合がある。なお、付着した水滴は、内燃機関の始動から時間が経過して、内燃機関自身の温度が上昇し、また、排気ガスにより排気管自身の温度、及び検知部自身の温度が上昇することにより、蒸発する。
【0006】
しかしながら、検知部に水滴が未だ付着している場合には、水滴の付着位置によっては、検知部を構成する各部材間において、絶縁抵抗が低下した状態となることがある。そして、このように各部の絶縁抵抗が低下した状態の検知部について、駆動処理回路で駆動を開始し、電圧を印加すると、不要な電流が流れて駆動処理回路中の電源回路が過負荷となったり、検知部での放電等の動作が不安定となって適切な検知ができない場合がある。また、絶縁のための絶縁部材の表面に水滴が付着しているために、この絶縁部材によって互いに絶縁されているべき部材間に電流が流れてマイグレーションを生じ、絶縁部材の表面に電流経路が形成され恒久的に絶縁抵抗が低下した状態となって、検知部の機能自身が
低下するなどの不具合を生じる場合もある。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、微粒子検知システムの検知部への水滴の付着による不具合の発生を、抑制或いは防止できる微粒子検知システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その一態様は、内燃機関から排出され、排気管内を流通する排気ガス中の微粒子の量を検知する微粒子検知システムであって、上記排気管に装着された検知部と、上記検知部に電気的に接続し、上記検知部を駆動すると共に、上記検知部からの信号を検知処理する駆動処理回路と、を備え、上記駆動処理回路は、上記内燃機関の始動後、上記駆動処理回路で定める開始条件を満たすまで、上記検知部の駆動開始を遅らせる駆動開始遅延手段を有する微粒子検知システムである。
【0009】
上述の微粒子検知システムでは、駆動処理回路で定める開始条件を満たすまで、駆動開始遅延手段によって検知部の駆動開始を遅らせる。このため、駆動処理回路の起動の直後から、(内燃機関の始動の有無や始動からの時間経過に拘わらず、)検知部を駆動する場合とは異なり、検知部への水滴の付着による不具合の発生を抑制或いは防止することができる。
【0010】
ここで、駆動処理回路で定める開始条件としては、例えば、内燃機関の始動(内燃機関の完爆)からの待機時間を、一定にあるいは外気温センサによる外気温等の情報に基づいて定め、この待機時間を経過することを開始条件とすると良い。時間の経過と共に、検知部に付着した水滴が蒸発等して減少するからである。そして待機時間の経過後、駆動処理回路において検知部の駆動を開始する。
また、排気管に装着された排気温センサで検知した排気温や、検知部に別途形成した温度センサで検知した検知部の温度などが所定の値となること、あるいは、各種センサで検知した各条件の組合せが所定の条件を満たすことを開始条件とすることもできる。この場合には、排気温等が所定の値となって、開始条件を満たした場合に、駆動処理回路で検知部の駆動を開始する。
この場合に、開始条件としうる条件としては、凝縮水が発生している可能性、検知部に水滴が付着している可能性を評価しうる情報を出力するセンサ(例えば、外気温を検知する外気温センサ、内燃機関の冷却水温を検知する水温センサ、検知部の温度を検知する温度センサなど)からの情報を駆動処理回路で得て、これに基づいて、開始条件を設定すると良い。
あるいは、凝縮水が発生したとしても、その凝縮水が内燃機関の始動後に消滅した可能性を評価できる情報を出力するセンサ(例えば、水温センサ、排気温センサ、検知部の温度を検知する温度センサなど)からの情報を駆動処理回路で得て、これに基づいて、開始条件を満たしたか否かを判定しても良い。
なお、複数のセンサの出力を組み合わせて、開始条件を判断するようにしても良い。
【0011】
さらに、上述の微粒子検知システムであって、前記開始条件は、前記駆動処理回路の起動後の経過時間が、上記駆動処理回路で定めた待機時間を経過したことである期間経過条件であり、前記駆動開始遅延手段は、上記経過時間が上記期間経過条件を満たしたか否かを判断する期間判断手段を含む微粒子検知システムとすると良い。
【0012】
本システムでは、駆動開始遅延手段の開始条件を、上述の期間経過条件としている。そして、駆動開始遅延手段には、経過時間が期間経過条件を満たしたか否かを判断する期間判断手段を含んでいる。このため、本システムでは、駆動開始遅延手段の期間判断手段で、経過時間の経過を待てば良く、処理が容易である。
【0013】
なお、待機時間としては、常に一定の時間(例えば、60秒)としても良いし、内燃機関の駆動開始直後における外気温などに応じて、変化させる(例えば、外気温が、−10℃以下の場合には待機時間を60秒、10℃〜−10℃の場合には待機時間を30秒、10℃〜20℃である場合には待機時間を15秒、20℃以上である場合には待機時間を0秒(直ちに駆動開始)などと定める。)こともできる。
また、待機時間を変化させる手法としては、外気温や、内燃機関の水温など、凝縮水の発生可能性や検知部の水滴付着の可能性を推定しうる情報を提供するセンサ(例えば、外気温センサ、水温センサなど)からの情報(付着可能性情報)を駆動処理回路で得て、これに基づいて、待機時間の長短(例えば、今回は、内燃機関の始動から60秒間待機とするなど。)を決めるようにすると良い。
あるいは、微粒子検知システムの検知部自身が有するセンサ(例えば、検知部に別途形成した検知部の温度センサ)からの情報に基づいて、待機時間の長短を決めるようにしても良い。また、複数のセンサの情報を組み合わせて、待機時間の長さを決めても良い。
また、待機時間の始期(計時の起点)としては、内燃機関の始動(内燃機関の完爆)したタイミングや、内燃機関の運転を開始するスイッチ(キースイッチ)をオン位置としたタイミング、微粒子検知システム(駆動処理回路)の処理プログラムの起動において、経過時間を計時するタイマの計時開始ステップを実行したタイミングなどに定めることができる。
【0014】
さらに、上述の微粒子検知システムであって、前記駆動処理回路は、前記検知部に水滴が付着する可能性を評価しうる付着可能性情報を出力するセンサの上記付着可能性情報を受け入れる付着情報入力手段を備え、前記駆動開始遅延手段は、上記付着可能性情報により、前記期間経過条件における前記待機時間の長さを決定する待機長さ決定手段を含む微粒子検知システムとすると良い。
【0015】
前述のように、微粒子検知システムでは、検知部への水滴の付着による不具合の発生を抑制或いは防止することが求められている。しかしその一方で、微粒子検知システムによる微粒子の検知を、内燃機関の始動後、早期に行いたい要望もある。
このシステムでは、駆動処理回路が付着情報入力手段を備え、駆動開始遅延手段は待機長さ決定手段を含んでいる。このため、センサからの付着可能性情報に基づき、待機時間の長さを、適切に決定することができ、検知部への水滴の付着による不具合の発生を抑制或いは防止しながらも、できるだけ早期となる適切なタイミングで、検知部の駆動を開始することができる。
【0016】
なお、検知部に水滴が付着する可能性を評価しうる付着可能性情報としては、凝縮水の発生可能性を検討しうる外気温や、内燃機関の水温、検知部自身の温度などの情報が挙げられる。また、これらの付着可能性情報を出力するセンサとしては、外気温センサ、水温センサ、検知部の温度を検知する温度センサなどが挙げられる。
【0017】
あるいは、当初に記載の微粒子検知システムであって、前記駆動処理回路は、前記検知部に付着した水滴の消滅可能性を評価しうる消滅可能性情報を出力するセンサの上記消滅可能性情報を受け入れる消滅情報入力手段を備え、前記駆動開始遅延手段は、上記消滅可能性情報により、前記開始条件を満たしたか否かを判定する判定手段を含む微粒子検知システムとすると良い。
【0018】
この微粒子検知システムでは、消滅情報入力手段を備える。また、駆動開始遅延手段は、判定手段を含んでいる。このように、本システムでは、センサからの消滅可能性情報に基づいて、検知部の駆動開始の適否を判定するため、検知部への水滴の付着による不具合の発生を抑制或いは防止しながらも、できるだけ早期となる適切なタイミングで、検知部の駆動を開始することができる。
【0019】
なお、検知部に付着した水滴の消滅可能性を評価しうる消滅可能性情報は、内燃機関や排気管、検知部など、温度上昇による付着した凝縮水の減少或いは消滅を推定しうる情報であり、例えば、内燃機関の水温、排気温、検知部自身の温度などの情報が挙げられる。また、これらの消滅可能性情報を出力するセンサとしては、水温センサ、排気温センサ、検知部の温度を検知する温度センサなどが挙げられる。
またこれに加えて、内燃機関の始動からの経過時間をも考慮して判断することもできる。
【0020】
さらに、上述のいずれかに記載の微粒子検知システムであって、前記検知部のうち前記排気管内に位置しまたは上記排気管内を臨む管内検知部に気体を送る送気手段を備え、上記送気手段は、上記検知部の駆動より前に、送気を開始する微粒子検知システムとすると良い。
【0021】
本システムでは、検知部に外部の気体を送る送気手段を備え、検知部の駆動開始以前から送気を開始する。送気を行うと、検知部内に水滴が存在した場合でも、この水滴を検知部の外部に効果的に排出できる、水滴をより早く蒸発させうるなどにより、水滴を早期に除去できる。これにより、検知部内に水滴が存在することによる不具合の発生を抑制あるいは防止することができる。
なお、検知部の駆動より前のタイミングとしては、システム(駆動処理回路)の起動と同時、内燃機関の始動と同時などとするほか、駆動処理回路の起動後、内燃機関の始動後であっても良い。
また、送気する気体としては、たとえば、空気(外気)や窒素ガス、炭酸ガスなどが挙げられる。空気を用いる場合には、送気手段としてポンプを用い、ポンプ周囲の雰囲気(空気)を送気するようにすると良い。また、窒素ガス、炭酸ガスを用いる場合には、ボンベに圧入したガスの気圧を用いて、送気を行うようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態にかかる微粒子検知システムのうち、微粒子帯電部内での、微粒子の取り入れ、帯電、排出の様子を模式的に説明する説明図である。
【図2】実施形態にかかり、内燃機関の制御系の概略構成を示す説明図である。
【図3】実施形態にかかる微粒子検知システムの概略構成を示す説明図である。
【図4】実施形態にかかる駆動処理回路の待機処理のフローチャートである。
【図5】変形形態1にかかる駆動処理回路の待機処理のフローチャートである。
【図6】変形形態2にかかる駆動処理回路の待機処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施形態1)
先ず、本実施形態の微粒子検知システム1のうち検知部10の構成及び電気的機能、動作について、図1を参照して説明する。なお、この図1は、本システム1の検知部10の構成、電気的機能等を理解容易のため模式的に示したものであり、他の各図等に記載の形態等と異なる部分が存在する。
検知部10は、主として、針状電極体20の針状に尖った針状先端部22と、補助電極体50の補助電極部53と、これらを囲む概略円筒状で基端部分を残して先端側が排気管EP内に挿入される検知部シャーシ11と、排気管EPの外部に位置し検知部シャーシ11の基端部分を包囲する外側包囲部材15(図3参照)と、からなる。
【0024】
検知部シャーシ11のうち、針状先端部22よりも先端側(図1において右方)には、ノズル部12が形成されている。このノズル部12は、先端側に向かうほど先細に窪んで、針状先端部22に対向する対向面12Tが形成され、その中央部には細孔が穿孔されノズル12Nとされている。また、検知部シャーシ11のうち、ノズル部12より先端側(図1において右方)の側壁には、取入口11Iが開口している。また取入口11Iよりも先端側は捕集極13とされており、その一部は内側に向けて膨出した形態となって、後述する空気ARの流路が狭くされている。さらに検知部シャーシ11の内部には、この検知部シャーシ11とは絶縁されて、補助電極体50の補助電極部53が配置されている。この補助電極部53も先端が尖った形状とされ、基端側(図中、左方)を向いて配置されている。さらに、この補助電極部53よりも先端側において、検知部シャーシ11には排出口11Oが穿孔されている。
【0025】
この検知部10のうち、取入口11I及びこれより先端側(図1において右方)は、排気管EP内に挿入され、排気ガスEGに曝される(図3参照)。
一方、検知部シャーシ11のうち、取入口11Iよりも基端側(図1、図3において左方)は、排気管EP外に位置している。この基端部分の周囲には、検知部シャーシ11とは絶縁される一方、排気管EPに導通した外側包囲部材15が取り囲んでいる。なお、排気管EPはボディアースされて、接地電位PVEとされているので、外側包囲部材15も接地電位PVEとされる。
【0026】
ノズル部12を含む検知部シャーシ11は、後述する内側包囲配線165を介して、後述するイオン源電源回路210の第1出力端211、補助電極電源回路240の補助第1出力端241、信号電流検知回路230の信号入力端231等に接続、導通している。これらは、第1フローティング電位PV1とされている。
一方、 針状電極体20(針状先端部22)は、後述する電源配線161を介して、後述するイオン源電源回路210の第2出力端212に接続、導通している。このため、この針状電極体20(針状先端部22)は、これを取り囲む検知部シャーシ11の第1フローティング電位PV1に対して、100kHz,1〜2kV0-Pの正の半波整流パルス電圧である、第2フローティング電位PV2とされている。
さらに、補助電極部53(補助電極体50)は、後述する補助配線162を介して、後述する補助電極電源回路240の補助第2出力端242に接続、導通している。このため、補助電極部53は、検知部シャーシ11の電位PV1に対して、100〜200Vの正の直流電位である、第3フローティング電位PV3とされている。
【0027】
従って、検知部10では、第1フローティング電位PV1とされたノズル部12(その対向面12T)と、これよりも正の高電位である第2フローティング電位PV2とされる針状電極体20の針状先端部22との間で、気中放電、具体的にはコロナ放電が生じる。さらに具体的には、正極となる針状先端部22の周りにコロナが発生する正針コロナPCを生じる。これにより、その雰囲気をなす大気(空気)のN2,O2等が電離等して、正のイオンCPが発生する。発生したイオンCPの一部は、後述するようにてエアパイプ163を通じて供給された空気ARと共に、ノズル12Nを通って、混合領域MXに向けて噴射され、検知部シャーシ11内を通って、その排出口11Oから、排気管EP内に排出される。
【0028】
また、空気ARが混合領域MXに噴射されると、混合領域MXの気圧が低下するため、取入口11Iから排気ガスEGが引き込み路HKを通じて、混合領域MXに取り入れられる。取入排気ガスEGIは、空気ARと混合され、空気ARと共に、排出口11Oから排出される。
その際、排気ガスEG中に、ススなどの微粒子Sが含まれていた場合、図1に示すように、この微粒子Sも混合領域MX内に取り入れられる。一方、噴射された空気ARには、イオンCPが含まれている。このため、取り入れられたススなどの微粒子SにイオンCPが付着して、正に帯電した帯電微粒子SCとなり、この状態で、混合領域MXを通って、排出口11Oから、空気ARと共に排出される。
一方、混合領域MXに噴射されたイオンCPのうち、微粒子Sに付着しなかった浮遊イオンCPFは、第1フローティング電位PV1とされた捕集極13をなす検知部シャーシ11の各部に付着する(捕捉される)。
なお、補助電極部53は、前述したように、100〜200Vの正の直流電位である第3フローティング電位PV3としてある。これにより、浮遊イオンCPFは、この補助電極部53から斥力を受けるので、捕集極13に捕捉されやすくなっている。
【0029】
本実施形態のシステム1において検知部10はこのように構成されているので、針状電極体20(針状先端部22)とノズル部12との間の気中放電(正針コロナ放電)に伴って、イオン源電源回路210の第2出力端212から、電源配線161を通じて針状電極体20に、放電電流Idが供給される。一方、この放電電流Idの多くは、ノズル部12に流れ込む(受電電流Ij)。この受電電流Ijは、ノズル部12,検知部シャーシ11,及び内側包囲配線165(後述する)を流れて、イオン源電源回路210の第1出力端211(後述する)に流入する。
また、ノズル12Nから噴射されたイオンCPの多くは捕集極13で、浮遊イオンCPFとして捕集される。捕集極13で捕集された浮遊イオンCPFが有していた電荷に起因する捕集電流Ihも、捕集極13及び検知部シャーシ11に導通する内側包囲配線165を通じて、第1出力端211に流れ込む。つまり、内側包囲配線165には、これらの和である受電捕集電流Ijh(=Ij+Ih)が流れる。
【0030】
但し、この受電捕集電流Ijhは、放電電流Idよりも若干小さな値となる(Ijh<Id)。というのも、排出口11Oから帯電微粒子SCが排出されると、ノズル12Nから噴射されたイオンCPのうち、この排出された帯電微粒子SCに付着した排出イオンCPHも排出されたこととなる。この排出された排出イオンCPHの電荷に対応する電流分は、受電捕集電流Ijhとして流れないからである。
【0031】
以上から判るように、放電電流Idと受電捕集電流Ijhとの差分(=Id−Ijh)は、検知部10から排出された排出イオンCPHの量に対応したものとなる。そして、この差分の大きさは、排出された帯電微粒子SCに付着して排出された排出イオンCPHの量、したがって、取入排気ガスEGI中の微粒子Sの量、ひいては、排気管EPを流れる排気ガスEG中の微粒子Sの量に対応して増減する。このため、差分の大きさを検知することにより、排気ガスEG中の微粒子Sの量を検知することが可能となる。なお、差分に相当する信号電流Isの検知手法については、後述する。
【0032】
次いで、本システム1を適用する内燃機関の構成について、図2を参照して説明する。
車両(図示しない)に搭載されたエンジンENG(内燃機関)には、始動時に用いるセルモータSMが付設されている。また、エンジンENGは、ラジエタRDを含み、冷却水CLWを用いてエンジンENGを冷却する冷却系CLを有している。この冷却系CLには、エンジンENGにおける冷却水CLWの水温を検知する水温センサWSが設置されている。
さらに、エンジンENGからは、排気ガスEGを流通させる排気管EPが延出しており、その途中には、排気ガスEGを浄化するためのフィルタFL及びマフラMFが設置されている。この排気管EPのうち、フィルタFLの下流(マフラMFの上流)には、排気温センサGSが設置されている。また、この部位には、微粒子検知システム1の検知部10も設置されている。具体的には、排気管EPの側面に貫通孔(図示しない)が穿孔されており、この貫通孔を挿通して、検知部10のうち、検知部シャーシ11の取入口11Iよりも先端側(図1において右方)の管内検知部10Nが、排気管EP内に挿入されている。
なお、エンジンENG及び排気管EPは、ボディアースされて、接地電位PVEとされている。
【0033】
エンジンENGは、キースイッチSWを、オフ位置から、オン位置を経由してスタート位置とすることで、バッテリBTによってセルモータSMが駆動され、エンジンENGがクランキングされる。その後、燃料に着火し、エンジンENGが完爆したら、キースイッチSWはオン位置に戻される。以降、エンジンENGは、キースイッチSWがオフとされるまで、自律して継続的に運転される。
制御ユニットECUは、バッテリBTで常時駆動されている一方、キースイッチSWの各接点にも接続され、このスイッチSWが、オフ位置、ACC位置、オン位置あるいはスタート位置とされたことを検知できるように構成されている。この制御ユニットECUは、エンジンENGを制御すると共に、外気温を測定する外気温センサOS、水温センサWS、排気温センサGSなど各センサの出力を検知している。
一方、微粒子検知システム1のうち、処理回路部200(駆動処理回路201)は、キースイッチSWがオン位置(あるいはスタート位置)とされることによって起動され、所定の処理を行う。また、処理回路部200(駆動処理回路201)は、制御ユニットECUと相互に通信可能とされており、処理回路部200からは、この微粒子検知システム1で検知した微粒子Sの量に関するデータを、制御ユニットECUに向けて送信する。
【0034】
次いで、本実施形態の微粒子検知システム1の電気的構成及び動作について、図3を参照して説明する。このシステム1は、車両(図示しない)に搭載したエンジンENGの排気管EPに装着される検知部10と、この検知部10から延出するケーブル160と、このケーブル160に接続する処理回路部200と、圧縮された空気ARを圧送する圧送ポンプ300とからなる(図2も参照)。処理回路部200のうち、駆動処理回路201は、ケーブル160を介して検知部10と電気的に接続しており、この検知部10を駆動するとともに、後述する信号電流Isを検知する。
【0035】
先ず、処理回路部200に含まれる駆動処理回路201の電気回路上の構成について、説明する。駆動処理回路201は、計測制御回路220と、イオン源電源回路210と、補助電極電源回路240とを有している。なお、計測制御回路220内には、信号電流検知回路230が含まれている。
この駆動処理回路201のうち、イオン源電源回路210は、第1フローティング電位PV1とされる第1出力端211と、第2フローティング電位PV2とされる第2出力端212とを有している。第2フローティング電位PV2は、具体的には、第1フローティング電位PV1に対して、100kHz程度の正弦波を半波整流した、1〜2kV0-pの正のパルス電圧が出力される。なお、イオン源電源回路210は、その出力電流についてフィードバック制御され、自律的に、その実効値が予め定めた電流値(本実施形態では、5μA)を保つ定電流電源を構成している。
【0036】
また、駆動処理回路201のうち、補助電極電源回路240は、第1フローティング電位PV1とされる補助第1出力端241と、第3フローティング電位PV3とされる補助第2出力端242とを有している。この第3フローティング電位PV3は、具体的には、第1フローティング電位PV1に対して、正の直流高電位であるが、第2フローティング電位PV2のピーク電位(1〜2kV)よりも低い、DC100〜200Vの電位にされている。
【0037】
さらに、駆動処理回路201のうち、計測制御回路220の一部をなす信号電流検知回路230は、イオン源電源回路210の第1出力端211に接続する信号入力端231と、接地電位PVEに接続する接地入力端232とを有している。この信号電流検知回路230は、信号電流Isを検知する回路である。
【0038】
加えて、この駆動処理回路201においては、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240は、第1フローティング電位PV1とされる電源回路包囲部材250に包囲され、電磁遮蔽されている。イオン源電源回路210の第1出力端211、補助電極電源回路240の補助第1出力端241、及び、信号電流検知回路230の信号入力端231は、この電源回路包囲部材250に接続して、共通の第1フローティング電位PV1とされている。
なお、本実施形態では、この電源回路包囲部材250は、内側金属ケース251及び絶縁トランス270の二次側鉄心271Bから構成されている。内側金属ケース251は、箱状金属体で形成されてなり、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240を収容して包囲すると共に、内側包囲配線165に導通している。
一方、絶縁トランス270は、その鉄心271が、一次側コイル272を捲回した一次側鉄心271Aと、電源回路側コイル273及び補助電極電源側コイル274が捲回された二次側鉄心271Bとに、分離可能に構成されている。但し、絶縁トランス270は、一次側鉄心271Aと二次側鉄心271Bとを、小さな隙間を介して離間させ、電気的に互いに絶縁しながらも、磁気回路的には両者を共通の磁束が通過するように構成することで、絶縁トランス270としての変成作用を果たしている。なお、鉄心271のうち、一次側鉄心271Aは、接地電位PVEに導通し、二次側鉄心271Bは、第1フローティング電位PV1(イオン源電源回路210の第1出力端211)に導通している。
【0039】
さらに、イオン源電源回路210、補助電極電源回路240、電源回路包囲部材250(内側金属ケース251)、及び、信号電流検知回路230を含む計測制御回路220は、アルミニウムの箱状であり、接地されて接地電位PVEとされた外側金属ケース260に包囲、収容されて、電磁遮蔽されている。なお、信号電流検知回路230の接地入力端232及び絶縁トランス270の一次側鉄心271Aも、この外側金属ケース260に接続している。
【0040】
計測制御回路220は、レギュレータ電源PSを内蔵しており、このレギュレータ電源PSにより、計測制御回路220(信号電流検知回路230を含む)のほか、絶縁トランス270を介して、イオン源電源回路210、補助電極電源回路240が駆動される。なお、このレギュレータ電源PSは、キースイッチSWを介して、車載のバッテリBTで駆動されており、キースイッチSWをオン位置(あるいはスタート位置)とすることで、レギュレータ電源PSが作動し、計測制御回路220が起動する。
【0041】
また、計測制御回路220は、図示しないマイクロプロセッサ,ROM,RAMのほか、入出力回路IOを含み、ROMにはマイクロプロセッサで処理するプログラムが記憶させてある。この計測制御回路220は、自身のほか、イオン源電源回路210、補助電極電源回路240の駆動を制御する。また、入出力回路IOは、通信ケーブルCCを介して、エンジンENGを制御する制御ユニットECUと通信可能となっており、前述した信号電流検知回路230の測定結果(信号電流Isの大きさ)、これを微粒子量などに換算した値、あるいは、微粒子量が所定量を超えたか否かなどの信号を、制御ユニットECUに送信可能となっている。これにより、制御ユニットECUで、エンジンENGの制御や、フィルタFLの不具合警告を発するなどの動作が可能となる。
また本実施形態では、後述するように、制御ユニットECUから、通信ケーブルCCを通じて、外気温情報OTが、計測制御回路220の入出力回路IOに入力される。
【0042】
外部からレギュレータ電源PSを通じて計測制御回路220に入力された電力の一部は、絶縁トランス270を介して、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240に分配される。従って、計測制御回路220により、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240への電力分配を制御(ON/OFF)することにより、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240の駆動のオンオフすることができる。
【0043】
その一方で前述したように、絶縁トランス270をなし、計測制御回路220の一部である一次側コイル272と、イオン源電源回路210の一部である電源回路側コイル273と、補助電極電源回路240の一部である補助電極電源側コイル274と、鉄心271(一次側鉄心271A,二次側鉄心271B)とは、互いに絶縁されている。このため、計測制御回路220から、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240に電力を分配できる一方、これら同士間の絶縁を保つことができる。
【0044】
なお、送気手段をなす圧送ポンプ300も、キースイッチSW(図2も参照)を介して、車載のバッテリBTで駆動される。従って、圧送ポンプ300は、キースイッチSWがオン位置(あるいはスタート位置)とされた時点で、従って、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240の駆動(検知部10の駆動)開始より前に、駆動が開始され、それ以降、先端部分が処理回路部200内に差し込まれた送気パイプ310およびケーブル160のエアパイプ163を通じて、針状先端部22近傍まで、清浄な空気ARを圧送する。
【0045】
次いで、ケーブル160について説明する。このケーブル160は、二重包囲ケーブルであり、その中心部分には、銅線からなる電源配線161及び補助配線162のほか、PTFEからなる中空のエアパイプ163(送気手段)が配置されている。これらの径方向周囲は、絶縁体(図示しない)で包囲されている。
【0046】
さらに、この絶縁体の周囲は、銅細線を編んだ編組からなる内側包囲配線165で被覆されている。さらに、この内側包囲配線165の周囲も絶縁体(図示しない)で被覆されて囲まれている。また、被覆している絶縁体(被覆層)の周囲も、銅細線を編んだ編組からなる外側包囲配線167で被覆されている。さらに、この外側包囲配線167の周囲も、その保護のため、絶縁体(図示しない)で被覆されている。かくして、このケーブル160では、電源配線161及び補助配線162の周囲を、絶縁体を介して内側包囲配線165及び外側包囲配線167で二重に取り囲む形態となっている。
加えて、このケーブル160は、エアパイプ163内の気体流通路163Hを通じて、ケーブル160の長手方向に、気体を流通させることができる。
【0047】
処理回路部200は、このケーブル160と接続している(図3参照)。具体的には、イオン源電源回路210の第2出力端212は、電源配線161に接続され、互いに導通している。また、補助電極電源回路240の補助第2出力端242は、補助配線162に接続され、互いに導通している。さらに、イオン源電源回路210の第1出力端211は、補助電極電源回路240の補助第1出力端241、信号電流検知回路230の信号入力端231、電源回路包囲部材250、及び、内側包囲配線165に接続され、互いに導通している。加えて、信号電流検知回路230の接地入力端232は、接地電位PVE及び外側包囲配線167に接続され、互いに導通している。
その他、圧送ポンプ300の送気パイプ310は、内側金属ケース251内を通じて、ケーブル160のエアパイプ163に連通されている。
【0048】
次いで、ケーブル160と検知部10との関係について説明する。
ケーブル160のうち、電源配線161の先端側(図3において、右方)には、針状電極体20が接続されている。この針状電極体20は、タングステン線からなり、その先端部分に、針状に尖った形態とされた針状先端部22を有する(図1参照)。このため、針状先端部22(針状電極体20)は、電源配線161を通じて、イオン源電源回路210の第2出力端212と導通し、第2フローティング電位PV2とされる。
また、補助配線162の先端側には、補助電極をなす補助電極体50が接続されている。この補助電極体50は、ステンレス線からなり、その先端側でU字状に曲げ返されて
補助電極部53とされている。このため、補助電極部53(補助電極体50)は、補助配線162を通じて、補助電極電源回路240の補助第2出力端242と導通し、第3フローティング電位PV3とされる。
【0049】
また、ケーブル160のうち、内側包囲配線165の先端側には、検知部シャーシ11が接続されている。このため、検知部シャーシ11(これをなすノズル部12、捕集極13)は、内側包囲配線165を通じて、イオン源電源回路210の第1出力端211、補助電極電源回路240の補助第1出力端241、信号電流検知回路230の信号入力端231、及び、電源回路包囲部材250に導通して、第1フローティング電位PV1とされる。
さらに、ケーブル160のうち、外側包囲配線167の先端側には、検知部10の外側包囲部材15が接続されている。このため、外側包囲部材15は、外側包囲配線167を通じて、信号電流検知回路230の接地入力端232に導通すると共に、接地電位PVEとされている。
さらに、ケーブル160のうち、エアパイプ163は、針状電極体20の針状先端部22付近まで延ばされ、その先端部163Sが開放されている。このため、針状先端部22付近において、エアパイプ163の先端部163Sから空気ARを放出することができる。なお、エアパイプ163の先端部163Sの周囲は、ノズル部12のノズル12N以外から、空気ARが漏れ出ないように、ケーブル160,検知部シャーシ11等で包囲されている。
【0050】
本実施形態のシステム1はこのように構成されているので、既に図1を用いて説明したように、針状先端部22とノズル部12との間の気中放電に伴って、イオン源電源回路210の第2出力端212から、電源配線161を通じて針状先端部22に、放電電流Idが供給される。一方、この放電電流Idの多くは、ノズル部12(第1電極)に流れ込む(受電電流Ij)。この受電電流Ijは、内側包囲配線165を流れて、イオン源電源回路210の第1出力端211に流入する。
また、気中放電で生成され、噴射されたイオンCPの多くは、浮遊イオンCPFとして捕集極13で捕集される。この捕集極13で捕集された浮遊イオンCPFが有していた電荷に起因する捕集電流Ihも、捕集極13(検知部シャーシ11)に導通する内側包囲配線165を通じて、第1出力端211に流れ込む。つまり、内側包囲配線165には、これらの和である受電捕集電流Ijh(=Ij+Ih)が流れる。
但し、この受電捕集電流Ijhは、排出口11Oから排出された排出イオンCPHの電荷に対応する電流分だけ、放電電流Idよりも小さな値となる。
【0051】
ところでイオン源電源回路210から見ると、第2出力端212から流出した放電電流Idと、第1出力端211から流入する受電捕集電流Ijhとにアンバランスが生じることとなる。このため、この不足分(差分=放電電流Id−受電捕集電流Ijh)に相当する信号電流Isが、接地電位PVEから第1出力端211に向けて流れ込んでバランスする。
そこで、本システム1では、第1出力端211に導通する信号入力端231と、接地電位PVEに導通する接地入力端232とを有し、これらの間を流れる電流を検知する信号電流検知回路230を設けることで、第1出力端211と接地電位PVEとの間を流れる信号電流Isを検知する。
この差分(放電電流Id−受電捕集電流Ijh)に相当する信号電流Is(=Id−Ijh)の大きさは、排出された帯電微粒子SCに付着して排出された排出イオンCPHの量、したがって、取入排気ガスEGI中の微粒子Sの量、ひいては、排気管EPを流れる排気ガスEG中の微粒子Sの量に対応して増減する。このため、信号電流Isの大きさを検知することにより、排気ガスEG中の微粒子Sの量を検知することが可能となる。
【0052】
ところで、外気温が低い場合など、車両(エンジンENG)の置かれた環境によっては、エンジンENGの停止後に、ターボチャージャ(図示しない)のハウジング内、あるいは排気管EP内に、排気ガスEGに含まれていた水蒸気が凝縮して凝縮水が発生する場合がある。本実施形態に即して言えば、排気管EPのうち、検知部10からフィルタFLまでの上流に、凝縮水が溜まっている場合がある(図2参照)。
この状態で、再びエンジンENGを始動させると、しばらくの間は、排気ガス中に水蒸気のみならず、水滴(液滴)が含まれている場合がある。従って、検知部10のうち排気管EP内に位置あるいは排気管EP内に臨む管内検知部10Nに、水滴が付着する場合がある。
また、エンジンENGの始動前から検知部10(管内検知部10N)自身の内部や周囲に凝縮水が付着している場合も有り得る。
付着した水滴は、エンジンENGの始動から時間が経過して、エンジンENG自身の温度が上昇し、また、排気ガスEGにより排気管EP自身の温度、及び検知部10自身の温度が上昇すれば、蒸発して除去される。
【0053】
しかしながら、検知部10に水滴が未だ付着している場合、水滴の付着位置によっては、検知部10の各部材間(例えば、検知部シャーシ11と外側包囲部材15との間)において、絶縁抵抗が低下した状態となることがある。
そして、このように各部の絶縁抵抗が低下した状態の検知部10について、通電、即ち、駆動処理回路201(イオン源電源回路210、補助電極電源回路240)の駆動を開始し、検知部10に電圧を印加すると、不要な電流が流れてイオン源電源回路210あるいは補助電極電源回路240が過負荷となる虞がある。あるいは、針状先端部22とノズル部12との間の気中放電等の動作が不安定となって、微粒子Sの適切な検知ができない虞もある。
その他、絶縁のための絶縁部材の表面に水滴が付着しているために、この絶縁部材で絶縁されているべき部材間(例えば、図示しない絶縁部材で絶縁されている検知部シャーシ11と外側包囲部材15との間)に電流が流れる場合がある。すると、検知部シャーシ11を構成する金属が溶け出し、絶縁部材の表面を移動し、外側包囲部材15で樹枝状などに析出するマイグレーションが生じ、絶縁部材の表面に電流経路が形成され恒久的に絶縁抵抗が低下した状態となって、受電捕集電流Ijhが流れる経路が不安定になり、信号電流Isを適切に計測できなくなるなど、検知部10の機能自身が低下する不具合を生じる虞もある。
【0054】
そこで、本実施形態では、キースイッチSWをオン位置(あるいはスタート位置)としたことで、システム1の駆動処理回路201の起動した直後(処理駆動回路201におけるイオン源電源回路210、補助電極電源回路240の駆動が可能となった直後)から、あるいはエンジンENGの始動の直後から、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240の駆動を開始することはせず、しばらく時間が経過してから、これらの回路210,240の駆動を開始する。この待機処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。
キースイッチSWが、オン位置(あるいはスタート位置)とされると、制御ユニットECUはこれを検知する。また、キースイッチSWを、オン位置(あるいはスタート位置)とすることにより、本システム1の駆動処理回路201(計測制御回路220)が通電されると、自身に記憶されていたプログラムに従って起動し、各動作を開始する。そのうち、待機処理ルーチンについては、先ず、ステップS1において、初期設定を行う。具体的には、例えば、待機タイマの経過時間Tをリセットする(T=0)。
【0055】
次いで、ステップS2に進み、待機タイマをスタートさせる。本実施形態では、計測制御回路220が、このステップS2を実行したタイミングが、次述する待機時間T1の計時の始期となる。
その後、ステップS3において、待機タイマの経過時間Tが、所定の待機時間T1(本実施形態では、T1=60秒)を経過したか否か(T>T1?)を確認する。ここでNo、即ち、経過時間Tが待機時間T1以下である場合(T≦T1)には、ステップS3を繰り返す。一方、Yes、即ち、経過時間Tが待機時間T1を経過した場合(T>T1)には、ステップS4に進む。
【0056】
ステップS4では、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240を、オン即ち駆動開始する。具体的には、計測制御回路220から、絶縁トランス270の一次側コイル272に電流を流すことにより、絶縁トランス270の電源回路側コイル273及び補助電極電源側コイル274を通じて、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240に電力を送り、これらの電源回路210,240の作動を開始させる。これによって、イオン源電源回路210の第2出力端212を第2フローティング電位PV2、第1出力端211を第1フローティング電位PV1として、針状先端部22とノズル部12との間に気中放電を生じさせる。一方、補助電極電源回路240の補助第2出力端242を第3フローティング電位PV3として、補助電極部53をも第3フローティング電位PV3とする。
【0057】
かくして、ステップS4において、検知部10が作動し始め、排気ガスEG中の微粒子Sの量に対応する信号電流Isを、計測制御回路220の信号電流検知回路230で検知することができるようになる。
その際には、エンジンENGの始動から既にT1(本実施形態ではT1=60秒)を越える時間が経過しているため、検知部10に水滴が付着している可能性は低く、信号電流Isを適切に検知できるほか、前述したように、水滴が付着したままの状態で検知部10に通電することで発生する不具合を抑制あるいは防止することができる。
【0058】
なお、本実施形態においては、上述のステップS2,S3を実行している計測制御回路220(これに含まれる図示しないマイクロプロセッサ)が、駆動開始遅延手段に相当する。また、そのうちでも、ステップS3を実行している計測制御回路220が、期間判断手段に相当する。また、圧送ポンプ300,送気パイプ310及びエアパイプ163が送気手段に相当する。
【0059】
そして本実施形態の微粒子検知システム1では、駆動開始遅延手段S2,S3により、駆動処理回路201の計測制御回路220で定める開始条件(T>T1)を満たすまで検知部10の駆動開始を遅らせる。このため、エンジンENGの駆動開始の有無や始動からの時間経過に拘わらず、駆動処理回路201の起動の直後から検知部10を駆動する場合とは異なり、検知部10への水滴の付着による不具合の発生を抑制或いは防止することができる。
【0060】
さらに本実施形態のシステム1では、駆動開始遅延手段S2,S3の開始条件を、駆動処理回路201(計測制御回路220)の起動後(より正確には、前述のステップS2の実行後)の経過時間Tが、駆動処理回路201の計測制御回路220で定めた待機時間T1を経過したことである期間経過条件(T>T1)としている。そして、駆動開始遅延手段S2,S3には、経過時間Tが期間経過条件(T>T1)を満たしたか否かを判断する期間判断手段S3を含んでいる。このため、本システム1では、駆動開始遅延手段S2,S3のうちの期間判断手段S3で、経過時間Tの経過を待てば良く、処理が容易である。
【0061】
このシステム1では、検知部10に外部の空気ARを送る圧送ポンプ300,送気パイプ310,エアパイプ163を備え、キースイッチSWがオン位置(あるいはスタート位置)とされた以降、従って検知部10の駆動開始以前から、空気ARの送気を行っている。送気を行うと、検知部10(管内検知部10N)内に水滴が存在した場合でも、この
水滴を検知部10の外部に効果的に排出できる、水滴をより早く蒸発させうるなどにより、水滴を早期に除去できる。これにより、検知部10内に水滴が存在することによる不具合の発生を抑制あるいは防止することができる。
加えて、空気ARの送気によって、検知部10内に存在した水滴が、ノズル部12のノズル12Nを通じて、コロナ放電を生じさせる空間(針状電極体20の針状先端部22付近)に侵入して、放電発生に影響することをも防止することができる。このように、水滴の存在によって検知部10に生じる障害を、適切に防止することもできる。
【0062】
(変形形態1)
次いで、上述の実施形態の第1の変形形態について説明する。本変形形態1の微粒子検知システム2は、上述の実施形態と同様の機械的構成、電気的構成を有しており、排気管EPへの取り付けも同様である(図1〜図3参照)。
但し、実施形態のシステム1では、駆動処理回路201の計測制御回路220(具体的には、これに内蔵される、図示しないROMに記憶させて、図示しないマイクロプロセッサ)で処理するプログラムにおいて、待機処理ルーチンを図4で示す処理フローで行い、その際の待機時間T1の長さを常に一定とした。
これに対し、本変形形態のシステム2では、図5に示す待機処理ルーチンにより、待機時間T2の長さを変化させる点で異なるだけである。そこで、異なる部分について説明し、同様な部分については記載を省略あるいは簡略化する。
なお、本変形形態1でも、実施形態と同じく、圧送ポンプ300は、キースイッチSWがオン位置(あるいはスタート位置)とされた時点で駆動が開始され、それ以降、針状先端部22近傍まで清浄な空気ARを圧送(送気)する。
【0063】
本変形形態1に係る待機処理ルーチンについて、図5を参照して説明する。
実施形態と同じく、キースイッチSWが、オン位置(あるいはスタート位置)とされて、本システム2の駆動処理回路201(計測制御回路220)が通電されると、この駆動処理回路201(計測制御回路220)は、自身に記憶されていたプログラムに従って起動し、各動作を開始する。図5の待機処理ルーチンでも、先ず、ステップS1において、初期設定を行う。具体的には、例えば、待機タイマの経過時間Tをリセットする(T=0)。
【0064】
次いで、本変形形態1では、ステップS11に進む。具体的には、本変形形態1では、図2に示すように、外気温センサOSの出力する外気温情報OTを、一旦、制御ユニットECUで収集する。制御ユニットECUは、さらに通信ケーブルCCを通じて、外気温情報OTを計測制御回路220の入出力回路IOに入力する。
外気温が低い(例えば、−10℃以下)の場合には、外気温が低いほど、排気管EP等に凝縮水が発生しやすくなる。つまり、この外気温情報OTは、検知部10に水滴が付着する可能性を評価しうる付着可能性情報となっているからである。
【0065】
次いで、ステップS12では、この外気温情報OT(付着可能性情報)に基づき、実施形態における待機時間T1(=60秒)に代えて、待機時間T2をセットする。なお、この待機時間T2は、例えば、外気温情報OT(外気温)が、−10℃以下の場合には待機時T2を60秒、10℃〜−10℃の場合には待機時間T2を30秒、10℃〜20℃である場合には待機時間T2を15秒、20℃以上である場合には待機時間T2を0秒(直ちに駆動開始)と定めている。
【0066】
次いで、ステップS2に進み、実施形態1と同じく、待機タイマをスタートさせる。本変形形態1でも、計測制御回路220が、このステップS2を実行したタイミングが、次述する待機時間T2の計時の始期となる。
その後、ステップS13において、待機タイマの経過時間Tが、ステップS12でセットした待機時間T2を経過したか否か(T>T2?)を確認する。ここでNo、即ち、経過時間Tが待機時間T2以下である場合(T≦T2)には、ステップS13を繰り返す。一方、Yes、即ち、経過時間Tが待機時間T2を経過した場合(T>T2)には、ステップS4に進む。
このステップS4では、実施形態1と同じく、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240を、オン即ち駆動開始する。なおこのステップS4は、既に説明した実施形態1と同じであるので、その説明を省略する。
【0067】
かくして、ステップS4において検知部10が作動し始め、排気ガスEG中の微粒子Sの量に対応する信号電流Isを、計測制御回路220の信号電流検知回路230で検知することができるようになる。
その際には、エンジンENGの始動(より正確には、前述のステップS2の実行後)から既に待機時間T2を越える時間が経過している。待機時間T2は、外気温情報OTに応じて(具体的には、外気温が高いほど待機時間T2が短く)設定されている。このため、この変形形態1においても、待機時間T2が経過した後には、検知部10に水滴が付着している可能性は低く、信号電流Isを適切に検知できるほか、前述したように、水滴が付着したままの状態で検知部10に通電することで発生する不具合を抑制あるいは防止することができる。しかも、一律の待機時間T1を用いた実施形態と異なり、本変形形態1では、待機時間T2の長さ(終期)を外気温情報OTに応じて変化させている。このため、凝縮水の発生可能性が低い外気温が高い場合には、待機時間T2を短くできるなど、検知部10への凝縮水の付着による不具合を抑制あるいは防止しつつ、早期に本システム2による微粒子検出が可能となる。
【0068】
なお、本変形形態1においては、上述のステップS11,S12,S2,S13を実行している計測制御回路220(これに含まれる図示しないマイクロプロセッサ)が、駆動開始遅延手段に相当する。また、そのうちでも、ステップS13を実行している計測制御回路220が、期間判断手段に相当する。
さらに、駆動処理回路201(計測制御回路220)の入出力回路IOが、付着情報入力手段に相当する。また、ステップS12を実行している計測制御回路220が、待機長さ決定手段に相当する。
【0069】
かくして、本変形形態1の微粒子検知システム2では、駆動処理回路201(計測制御回路220)が入出力回路IOを備え、駆動開始遅延手段S11,S12,S2,S13は待機長さ決定手段S12を含んでいる。このため、外気温センサOSの外気温情報OTに基づき、待機時間T2の長さを適切に決定することができ、検知部10への水滴の付着による不具合の発生を抑制或いは防止しながらも、できるだけ早期となる適切なタイミングで、検知部10の駆動を開始することができる。
【0070】
なお、検知部10に水滴が付着する可能性を評価しうる付着可能性情報として、本変形形態1では、外気温センサOSからの外気温情報OTを例示した。しかし、このほか、付着した凝縮水の発生可能性や検知部10(管内検知部10N)への水滴の付着可能性を推定しうる情報、例えば、エンジンENGの水温センサWSからの水温情報WTを用いることもできる。検知部10自身の温度を検知する検知部温度センサを別途設けた場合には、この検知部温度センサからの検知部温度情報も用いうる。従って、これらのセンサの情報を用いて、待機時間T2の長さ(終期)を決定しても良い。さらには、これらの付着可能性情報を、1つのみならず、複数組み合わせて、待機時間T2の長さを決定するようにしても良い。
さらに、変形形態1では、外気温センサOSの外気温情報OTを、一旦、制御ユニットECUで検知し、この制御ユニットECUから、通信ケーブルCCを介して、駆動処理回路201(計測制御回路220)の入出力回路IOに入力する情報経路を用いている。これと同様に、水温センサWSからの水温情報WT等の情報についても、制御ユニットECU経由で、計測制御回路220の入出力回路IOに入力する情報経路を採ることができる。あるいは、外気温センサOSからの外気温情報OTを、計測制御回路220の入出力回路IOに直接入力する情報経路を採ることもできる。水温情報WT、検知部10の温度センサについても同様に、計測制御回路220に直接入力しても良い。
【0071】
(変形形態2)
次いで、上述の実施形態の第2の変形形態について説明する。本変形形態2の微粒子検知システム3は、上述の実施形態及び変形形態1と同様の機械的構成、電気的構成を有しており、排気管EPへの取り付けも同様である(図1〜図3参照)。
但し、前述の実施形態のシステム1及び変形形態1のシステム2では、駆動処理回路201の計測制御回路220内の図示しないROMに記憶させて、図示しないマイクロプロセッサで処理するプログラムにおいて、待機処理ルーチンを図4あるいは図5で示す処理フローで行った。なお、実施形態では、待機時間T1の長さは一定とされている。また、変形形態1では、待機時間T2の長さはステップS12で予め定めていた。つまり、これらにおいて、待機時間T1,T2の長さは予め定められていた。
これに対し、本変形形態2のシステム3では、待機時間を定めることはせず、図6に示す待機処理ルーチンにより、待機処理の終期を各時点で判断する点で異なる。そこで、実施形態等と異なる部分について説明し、同様な部分については記載を省略あるいは簡略化する。
なお、本変形形態2でも、実施形態及び変形形態1と同じく、圧送ポンプ300は、キースイッチSWがオン位置(あるいはスタート位置)とされた時点で駆動が開始され、それ以降、針状先端部22近傍まで清浄な空気ARを圧送(送気)する。
【0072】
本変形形態2に係る待機処理ルーチンについて、図6を参照して説明する。
実施形態及び変形形態1と同じく、キースイッチSWが、オン位置(あるいはスタート位置)とされて、本システム3の駆動処理回路201(計測制御回路220)が通電されると、駆動処理回路201(計測制御回路220)は、自身に記憶されていたプログラムに従って起動し、各動作を開始する。図6の待機処理ルーチンでも、先ず、ステップS21において、初期設定を行う。具体的には、例えば、排気温センサGSの排気温情報GTをリセットする。
【0073】
次いで、本変形形態2では、ステップS22に進む。具体的には、本変形形態2では、図2に示すように、排気温センサGSの出力する排気温情報GTを、一旦、制御ユニットECUで収集する。制御ユニットECUは、通信ケーブルCCを通じて、計測制御回路220の入出力回路IOを入力する。
排気温が低い(例えば、100℃未満)の場合には、未だ、排気管EPも十分暖まっておらず、未だこれらに凝縮水が蒸発せずに溜まっており、排気ガス中に水滴が含まれ、検知部10に新たに水滴が付着する場合が有り得る。また、検知部10に凝縮水が未だ蒸発せずに付着している場合も有りうる。つまり、この排気温情報GTは、検知部10に付着した水滴の消滅可能性を評価しうる消滅可能性情報となっているからである。
【0074】
次いで、ステップS23では、この排気温情報GT(消滅可能性情報)に基づき、検知部10に水滴が付着している虞があるか否かを評価する。例えば、図2に示す位置の排気温センサGSが示す排気ガスEGの排気温情報GT(排気温)が、100℃以上である場合には、検知部10に水滴の付着は無いと評価する。一方、100℃未満の場合には、検知部10に水滴が付着している場合が有り得る(「水滴有り」)と評価する。
このステップS23で、Yes、即ち、「水滴有り」と評価した場合(GT<100℃)には、ステップS23を繰り返す。一方、No、即ち、「水滴有り」ではない(水滴無し)と評価した場合(GT≧100℃)には、ステップS4に進む。
このステップS4では、実施形態及び変形形態1と同じく、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240を、オン即ち駆動開始する。なおこのステップS4は、既に説明した実施形態1と同じであるので、その説明を省略する。
【0075】
かくして、ステップS4において検知部10が作動し始め、排気ガスEG中の微粒子Sの量に対応する信号電流Isを、計測制御回路220の信号電流検知回路230で検知することができるようになる。
その際には、排気温情報GT(排気温)が、100℃以上となっており、検知部10に水滴が付着している可能性は低い。このため、信号電流Isを適切に検知できるほか、前述したように、水滴が付着したままの状態で検知部10に通電することで発生する不具合を抑制あるいは防止することができる。しかも、一律の待機時間T1を用いた実施形態、あるいは、予め待機時間T2の長さ(終期)を設定する変形形態1とは異なり、排気温センサGSの出力する排気温情報GTに応じて、待機時間の長さを決定しているので、待機時間を適切に終了させることができるので、検知部10への凝縮水の付着による不具合を抑制あるいは防止しつつ、早期に本システム3による微粒子検出が可能となる。
【0076】
なお、本変形形態2においては、上述のステップS22,S23を実行している計測制御回路220(これに含まれる図示しないマイクロプロセッサ)が、駆動開始遅延手段に相当する。
さらに、駆動処理回路201(計測制御回路220)の入出力回路IOが、消滅情報入力手段に相当する。また、ステップS23を実行している計測制御回路220が、判定手段に相当する。
【0077】
このように、本微粒子検知システム3では、入出力回路IOを備える。また、駆動開始遅延手段S22,S23は、判定手段S23を含んでいる。このため、本システム3では、排気温情報GT(消滅可能性情報)に基づいて、検知部10の駆動開始の適否を判定できるため、検知部10への水滴の付着による不具合の発生を抑制或いは防止しながらも、できるだけ早期となる適切なタイミングで、検知部10の駆動を開始することができる。
【0078】
なお、検知部10に付着した水滴の消滅可能性を評価しうる消滅可能性情報として、本変形形態2では、排気温センサGSからの排気温情報GTを例示した。しかし、このほか、エンジンENG始動後のエンジン温の上昇による、付着した凝縮水の減少或いは消滅を推定しうる、エンジンENGの水温センサWSからの水温情報WTが挙げられる。また、検知部10自身の温度を検知する検知部温度センサからの検知部温度情報も用いうる。
これらのセンサの消滅可能性情報を用いて、待機時間の終了を決定しても良い。さらには、これらの複数のセンサからの消滅可能性情報を、1つのみならず、複数組み合わせて、待機時間の終了を決定するようにしても良い。
また、凝縮水の発生を推定する外気温センサOSの外気温情報OTなど付着可能性情報と組み合わせることもできる。
【0079】
さらに、変形形態2では、排気温センサGSの排気温情報GTを、一旦制御ユニットECUで検知し、この制御ユニットECUから、通信ケーブルCCを介して、駆動処理回路201(計測制御回路220)の入出力回路IOに入力する情報経路を用いている。これと同様に、水温センサWSからの水温情報WTについても、制御ユニットECU経由で、計測制御回路220の入出力回路IOに入力する情報経路を採ると良い。
その他、図2において破線で示すように、排気温センサGSからの排気温情報GTを、計測制御回路220の入出力回路IOに直接入力する情報経路を採ることもできる。水温情報WTについても同様に、計測制御回路220に直接入力することもできる。
【0080】
なお、本発明を実施形態及び変形形態1,2に即して説明したが、本発明は上記実施形態,変形形態1,2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
実施形態等では、システム1〜3の検知部10を、排気管EPのうち、フィルタFLの下流(マフラMFの上流)に配置した(図2参照)。しかし、このほか、フィルタFLの上流に検知部10を配置して、エンジンENGの排気ガスEGに含まれる微粒子Sを直接検知する構成を採ることもできる。
また、実施形態等では、キースイッチSWがオン位置(あるいはスタート位置)とされたことにより、システム1等(駆動処理回路201)の起動と並行して、これとは独立して、圧送ポンプ300自身が駆動を開始し、送気を開始した。しかし、駆動処理回路201で、圧送ポンプ300の駆動をも制御するようにしても良い。具体的には、圧送ポンプ300の駆動開始を、エンジンENGの始動と同時としたり、駆動処理回路201の起動後の所定のタイミング、あるいは、エンジンENGの始動の後の所定のタイミングとしても良い。但し、送気は、できるだけ早くから行う方が好ましい。その分だけ早い段階で、検知部10(管内検知部10N)内に付着した水滴を除去しやすいからである。
【0081】
さらに、実施形態等では、検知部10と処理回路部200(駆動処理回路201)とは離間して配置されており、これらの間を、電源配線161,補助配線162等を内包するケーブル160で接続した例を示した。しかし、検知部と回路処理部(駆動処理回路)とが一体に構成された、一体型の微粒子検知システムを構成し、このシステム全体を排気管EPに装着するようにしても良い。
【符号の説明】
【0082】
BT バッテリ
SW キースイッチ
ENG エンジン(内燃機関)
ECU 制御ユニット
OS 外気温センサ
OT 外気温情報(付着可能性情報)
GS 排気温センサ
GT 排気温情報(消滅可能性情報)
EP 排気管
EG 排気ガス
S 微粒子
SC 帯電微粒子
CP イオン
CPF 浮遊イオン
CPH 排出イオン
Ijh 受電捕集電流
Is 信号電流
1,2,3 微粒子検知システム
10 検知部
11 検知部シャーシ
12 ノズル部
13 捕集極
20 針状電極体(第2電極)
22 針状先端部
MX 混合領域
EX 排出路
PV1 第1フローティング電位
PV2 第2フローティング電位
PV3 第3フローティング電位
PVE 接地電位
50 補助電極体(補助電極)
53 補助電極部(補助電極)
53S (補助電極部の)針状先端部
AR 空気(気体)
160 ケーブル(二重包囲ケーブル、リード線)
161 電源配線
162 補助配線
163 エアパイプ(送気手段)
163H 気体流通路
165 内側包囲配線
167 外側包囲配線
200 処理回路部
201 駆動処理回路
210 イオン源電源回路
211 第1出力端
212 第2出力端
220 計測制御回路
IO 入出力回路(付着情報入力手段、消滅情報入力手段)
230 信号電流検知回路
231 信号入力端
232 接地入力端
240 補助電極電源回路
241 補助第1出力端
242 補助第2出力端
250 電源回路包囲部材
251 内側金属ケース(電源回路包囲部材)
260 外側金属ケース
270 絶縁トランス(補助電極絶縁トランス)
300 圧送ポンプ(送気手段)
310 送気パイプ(送気手段)
S2,S3,S11,S12,S13,S22,S23 駆動開始遅延手段
S12 期間長さ決定手段
S3,S13 期間判断手段
S23 判定手段
T1,T2 待機時間
T 経過時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出され、排気管内を流通する排気ガス中の微粒子の量を検知する微粒子検知システムであって、
上記排気管に装着された検知部と、
上記検知部に電気的に接続し、上記検知部を駆動すると共に、上記検知部からの信号を検知処理する駆動処理回路と、を備え、
上記駆動処理回路は、
上記内燃機関の始動後、上記駆動処理回路で定める開始条件を満たすまで、上記検知部の駆動開始を遅らせる駆動開始遅延手段を有する
微粒子検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の微粒子検知システムであって、
前記開始条件は、
前記駆動処理回路の起動後の経過時間が、上記駆動処理回路で定めた待機時間を経過したことである
期間経過条件であり、
前記駆動開始遅延手段は、
上記経過時間が上記期間経過条件を満たしたか否かを判断する期間判断手段を含む
微粒子検知システム。
【請求項3】
請求項2に記載の微粒子検知システムであって、
前記駆動処理回路は、
前記検知部に水滴が付着する可能性を評価しうる付着可能性情報を出力するセンサの上記付着可能性情報を受け入れる付着情報入力手段を備え、
前記駆動開始遅延手段は、
上記付着可能性情報により、前記期間経過条件における前記待機時間の長さを決定する待機長さ決定手段を含む
微粒子検知システム。
【請求項4】
請求項1に記載の微粒子検知システムであって、
前記駆動処理回路は、
前記検知部に付着した水滴の消滅可能性を評価しうる消滅可能性情報を出力するセンサの上記消滅可能性情報を受け入れる消滅情報入力手段を備え、
前記駆動開始遅延手段は、
上記消滅可能性情報により、前記開始条件を満たしたか否かを判定する判定手段を含む
微粒子検知システム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の微粒子検知システムであって、
前記検知部のうち前記排気管内に位置しまたは上記排気管内を臨む管内検知部に気体を送る送気手段を備え、
上記送気手段は、
上記検知部の駆動より前に、送気を開始する
微粒子検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−237641(P2012−237641A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106662(P2011−106662)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】