説明

微粒子製造方法及び微粒子製造装置

【課題】 ビルドアップ法を用いて結晶性の高い微粒子を製造する方法及び装置を提供する。
【解決手段】前記微粒子の形成材料の溶解度が小さい貧溶媒中に気泡を発生させる気泡発生工程と、前記微粒子の形成材料が溶解した溶解液と、前記気泡を含んだ前記貧溶媒と、を混合させる混合工程と、を備え、前記気泡の表面で前記微粒子を析出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子製造方法及び微粒子製造装置に関するものであって、特に、結晶析出による微粒子製造方法及び微粒子製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノサイズの微粒子は、表面積が大きいことや、散乱が少ないため、様々な機能性材料として用いられている。また、内部に空洞を有する中空の微粒子を製造することにより、微粒成形性材料のコストを削減することができる。ナノサイズの微粒子製造方法の一つとして、ビルドアップ法がある。ビルドアップ法とは、微粒子形成材料を溶剤に溶解した溶液と、微粒子形成材料が溶解しにくい貧溶媒と、を接触させることで、微粒子を析出させる方法である。
【0003】
ビルドアップ法については、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された微粒子製造方法は、ビルドアップ法によって微粒子を形成する際に、溶解液と貧溶媒とを反応させながら反応流路内で凝集剤とも接触させる工程を備えている。これにより、微粒子形成と凝集体形成を同時に行うことができるので、製造装置の簡略化ができるとしている。
【0004】
また、中空のマイクロカプセルを製造する方法については、特許文献2及び非特許文献1に記載されている。両者に記載された中空マイクロカプセル製造方法は、液体中に分散させた微細気泡の気液界面で重合反応をさせる工程を備えている。これにより、中空マイクロカプセルを安価に大量に製造できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−227841号公報
【特許文献2】特開2007−21315号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】産総研プレス発表、「マイクロバブルから作る中空マイクロカプセル」、2006年10月4日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来のビルドアップ法では、種晶は、マイクロサイズであり、ナノサイズの微細な微粒子の形成はできない。また、種晶を使用せず析出を行えば、得られた微粒子の結晶性が良くないため、結晶性を向上させるためにアニール等の結晶変換の工程が更に必要であった。
【0008】
また、特許文献2に記載された従来の中空マイクロカプセルの製造法は、重合反応に基づくマイクロカプセルの製造方法であり、ビルドアップ法によるマイクロカプセルの製造方法は今まで報告例がなかった。
【0009】
本発明は、かかる実情に鑑み、結晶性の良い、かつ、ナノサイズの粒子、中空粒子の製造方法及びそれに用いられる製造装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様による微粒子製造方法は、前記微粒子の形成材料の溶解度が小さい貧溶媒中に気泡を発生させる気泡発生工程と、前記微粒子の形成材料が溶解した溶解液と、前記気泡を含んだ前記貧溶媒と、を混合させる混合工程と、を備え、前記気泡の表面で前記微粒子を析出させることを主要な特徴としている。
【0011】
上記手段によれば、気泡を種晶の代わりとして気泡の表面で前記微粒子の結晶を析出させることができる。これにより、種晶無しで液体中に結晶を析出させる場合よりも、ゆっくりと析出させることができるので、結晶性の良い微粒子を得ることができる。
【0012】
本発明の第2の態様による微粒子の製造方法は、第1の態様に加えて、前記混合工程の後に、前記気泡を粉砕する工程を更に含むことを主要な特徴としている。
【0013】
これにより、気泡表面に析出した微粒子のうち隣り合うもの同士が弱い凝集を形成したとしても、気泡が砕け散ると同時に、微粒子同士も砕け散ることで微分散状態になる。即ち、非常に微細な粒子を得ることができる。
【0014】
本発明の第3の態様による微粒子製造方法は、第1または第2の態様において、前記気泡の直径が50nm〜10μmであることを主要な特徴としている。
【0015】
これにより、微細でかつ結晶性の良い粒子を一プロセスで得ることができる。
【0016】
本発明の第4の態様による微粒子製造方法は、第1から第3のいずれかの態様において、前記気泡が、超音波発生器によって発生させられたキャビティであることを主要な特徴としている。
【0017】
これにより、さらに簡便で良好な微結晶を一プロセスで得ることができる。
【0018】
本発明の第5の態様による微粒子製造方法は、第1の態様において、前記気泡の表面で前記微粒子を析出させた後、前記気泡の表面全体を析出した微粒子が覆うまで析出を継続させる工程を更に含み、中空の微粒子を製造することを主要な特徴としている。
【0019】
これにより、結晶性の高い中空微粒子をビルドアップ法によって得ることができる。
【0020】
本発明の第6の態様による微粒子製造装置は、前記微粒子の成分が溶解した溶解液を供給するための溶解液供給手段と、前記微粒子の成分の溶解度が小さい貧溶媒を供給するための貧溶媒供給手段と、前記貧溶媒供給手段から供給された貧溶媒中に気泡を発生させるバブル発生器と、前記溶解液供給手段から供給された溶解液を流通させるための溶解液導入流路と、前記バブル発生器によって内部に気泡が発生させられた貧溶媒を流通させるための貧溶媒導入流路と、前記溶解液導入流路から流出した溶解液と、前記貧溶媒導入流路から流出した貧溶媒とを混合させる混合部と、前記混合部で混合された前記溶解液と前記貧溶媒の混合液を流通させる反応流路と、前記混合液中の気泡を粉砕するためのバブル粉砕手段と、を備えたことを主要な特徴としている。
【0021】
この装置を使用することにより、気泡を種晶の代わりとして気泡の表面で前記微粒子の結晶を析出させることができる。これにより、種晶無しで液体中に結晶を析出させる場合よりも、ゆっくりと析出させることができるので、結晶性の良い微粒子を得ることができる。
【0022】
本発明の第7の態様の微粒子製造装置は、第6の態様に加えて、前記バブル発生器が、50nm〜10μmの気泡を発生させることを主要な特徴としている。
【0023】
これにより、さらに簡便で良好な微結晶を一プロセスで得ることができる。
【0024】
本発明の第8の態様の微粒子製造装置は、第6または第7態様において、前記バブル発生器が、超音波発生器であることを主要な特徴としている。
【0025】
本発明の第9の態様の微粒子製造装置は、第6から第8のいずれかの態様において、前記バブル粉砕手段が、超音波発生器であることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明の微粒子製造方法及び微粒子製造装置によれば、ビルトアップ法により結晶性の良い微粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に用いられる微粒子製造装置の一実施例を示す概略斜視図である。
【図2】本発明に用いられる微粒子製造装置において5本の導入路を設けた一例を説明する説明図である。
【図3】バブル粉砕時の状況の説明図である。
【図4】中空粒子作製の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する互いに対応する部分である。また、本明細書中で、数値範囲を“ 〜 ”を用いて表す場合は、“ 〜 ”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
【0029】
<微粒子製造装置>
本発明の微粒子製造方法に用いられる製造装置の一実施例について図を用いて説明する。図1は、本発明に用いられる微粒子製造装置の一実施例を示す概略斜視図である。
【0030】
尚、微粒子形成材料として有機顔料を用い、有機顔料微粒子を製造する例で説明するが、本願発明に用いられる製造装置は、有機顔料微粒子の製造に限定されるものではなく、例えば、無機顔料微粒子、シリカ粒子、水酸化マグネシウム粒子等の製造に幅広く適用することが可能である。
【0031】
図1に示すように、本発明の微粒子製造装置10は、主として、装置本体12と、有機顔料を良溶媒に溶解した溶解液L1を装置本体12に流す溶解液配管14と、前記良溶媒に相溶し有機顔料を溶解しない貧溶媒L2を装置本体12に流す貧溶媒配管16と、それぞれの配管14、16を介して溶解液L1及び貧溶媒L2を装置本体12に供給するそれぞれの供給手段18、20と、前記貧溶媒供給手段20と前記貧溶媒配管16との間に配置され前記貧溶媒L2を貯留する貯留手段50と、前記貯留手段50の内部または外部に配置され前記貯留手段50内に貯留された貧溶媒L2中にナノバブルを発生させるナノバブル発生器52と、装置本体12に接続され該装置本体12の流路内の液体に超音波振動を発生させる超音波発生器54と、を含んで構成される。
【0032】
装置本体12は、基板26と蓋板28とが合わさって形成され、基板26の合わせ面には、反応溝、溶解液導入溝、貧溶媒導入溝が刻設される。そして、基板 26に蓋板28が合わさって一体化されることによって、反応流路30、溶解液導入流路32、貧溶媒導入流路34の各流路が形成され、溶解液導入流路32と貧溶媒導入流路34とは混合部36において合流し、反応流路30に接続される。これにより、溶解液L1と貧溶媒L2とは、反応流路30の混合部36において合流し、瞬時混合する。混合した溶解液L1と貧溶媒L2は、反応流路30通過中に、超音波発生器54による超音波振動を受ける。
【0033】
また、2本の導入流路32、34は、蓋板28に形成された貫通孔38、38を介してそれぞれの配管14、16の先端部にそれぞれ連結されると共に、溶解液配管14の基端部には溶解液供給手段18が連結され、貧溶媒配管16の基端部には貯留手段50が連結される。貯留手段50は、貧溶媒供給手段20に連結され、該貧溶媒供給手段20から供給された貧溶媒を貯留する。
【0034】
この貯留手段50には、ナノバブル発生器52が設置されており、該貯留手段50に貯留されている貧溶媒中に気泡(以下、気泡をバブルと称する)を発生させる。発生させるバブルの直径は、50nm〜 10μmが好ましいが、更に好ましくは、50nm〜1μmであり、もっとも好ましくは、50nm〜100nmである。ナノバブル発生器としては、エンバイランビジョン製YJノズル等を好適に使用することができる。また、超音波発生器をナノバブル発生器として使用することもできる。
【0035】
溶解液L1及び貧溶媒L2の供給手段としては、例えばマイクロシリンジポンプを好適に使用できる。この場合、溶解液供給手段18と貧溶媒供給手段20には、装置本体12に供給する供給量を調整する調整手段(図示せず)を備えていることが好ましい。
【0036】
溶解液配管14及び貧溶媒配管16としては、金属性の配管の他、樹脂チューブを好適に使用することができる。また、反応流路30の出口は、蓋板28に形成された貫通孔40を介して図示しない排出管等に連結される。
【0037】
また、図1では、溶解液L1と貧溶媒L2は、それぞれ1本の導入流路32、34によって混合部36に導入されるが、図2に示すように、導入流路32、34の数は少なくとも合計で3本以上設けられ、溶解液導入流路32と貧溶媒導入流路34とが交互に配置されることがいっそう好ましい。
【0038】
図2は、本発明に用いられる微粒子製造装置において5本の導入路を設けた一例を説明する説明図である。図2に示されるように、装置本体12は、1本の反応流路30と、該反応流路30から放射状に分岐した5本の導入流路32A、32B、32C、34A、34Bと、を備えている。図1の場合と同様に、導入流路32A、32B、32Cは、溶解液L1を導入する流路であり、導入流路34A、34Bは貧溶媒L2を導入する流路である。即ち、反応流路30の反対側には導入流路32Aが設けられ、該導入流路32Aを挟んだ左右に、導入流路34A、 34BがV字状に配置される。更に、反応流路30を挟んだ左右に、第2及び第3の導入流路32B、32Cが逆V字状に配設される。
【0039】
反応流路30は、その入口にあたる混合部36が5本の導入流路と連通しており、導入流路32A、32B、32Cから導入する溶解液L1と、導入流路34A、34Bから導入する貧溶媒L2とを混合して有機顔料微粒子を生成する。反応流路30の長さは、有機顔料微粒子を生成するのに十分な長さ、例えば0.5mm〜100mmに設定される。さらに短い流路でも粒子の形成が出来ることが期待されるが、反応器の加工精度を考慮すると、上記の流路長さが適当である。
【0040】
なお、上記においては、反応装置としてマイクロリアクターを用いた場合を例に挙げて説明したが、本発明は、マイクロリアクターを用いた反応に限定されるものではなく、その他、一般に化学反応に用いられる反応装置を用いた場合にも適用でき、例えば、タンク撹拌方法を用いた反応においても適用可能であることはいうまでもない。
【0041】
タンク撹拌方法を含む一般的な化学反応装置を用いた場合においては、反応場であるタンク内にバブルを発生させても良いし、バブルを含んだ貧溶媒をタンク(反応場)に加えても良い。いずれにしても、バブルを核にして微粒子結晶が形成できる構成であればよい。
【0042】
<微粒子製造方法>
次に本発明の微粒子製造方法の一実施例として、顔料微粒子を析出法で作製する場合について図面を参照して説明する。
【0043】
作製する顔料は、PR254(チバスペシャリティーケミカルズ)とした。PR254をDMSO/アルカリに溶解させ、濃度を0.5wt%に調製した顔料溶解液L1を作製した。貧溶媒L2としてイオン交換水を準備した。
【0044】
図1を参照して説明する。溶解液L1を溶解液供給手段18から投入し、貧溶媒L2を貧溶媒供給手段20から投入した。投入された貧溶媒L2は、貯留手段50に貯留され、ナノバブル発生器52は、貧溶媒L2の液中に多数のナノバブルを発生させる。発生させるナノバブルの直径は、50nm〜10μmが好ましいが、更に好ましくは、50nm〜1μmであり、もっとも好ましくは、50nm〜100nmである。バブル直径が大きすぎると、浮上速度が速くなることや、流路を閉塞、不均一な場を発生させるという問題が発生するからであり、小さすぎる場合は、必ず良好な結果が得られるという確証(実績)がないからである。50nm〜10μmの範囲のナノバブルを発生させることにより、結晶性が良好になり、微細化に好適である。
【0045】
ここで、ナノバブル発生器として、超音波発生器を使用することもできる。これにより、ただの気泡ではなく、真空のキャビティの泡を発生させ、この泡を気泡の代わり使用することができる。この真空のキャビティの泡を使用することにより、破砕効果を高めるという効果がある。また、ナノバブルを貧溶媒L2中に発生させる場所として、貯留手段50内ではなく、貧溶媒配管16中で発生させてもよい。この場合は、ナノバブル発生器を貧溶媒配管16に設けることになる。
【0046】
溶解液供給手段18から投入された溶解液L1は、溶解液配管14を通って装置本体12の溶解液導入流路32に導かれる。多数のナノバブルを含んだ貧溶媒L2は、貯留手段50から貧溶媒配管16を通って装置本体12の貧溶媒導入流路34に導かれる。溶解液導入流路32中を流れる溶解液L1の流量は、顔料体積流量が10ml/minになるように調整され、貧溶媒導入流路34中を流れる貧溶媒L2の流量は、100ml/minになるように調整される。
【0047】
流量の調整方法としては、バルブ、圧力で調整などを採用することができるが、これに限定されるものではない。
【0048】
溶解液L1と貧溶媒L2は、混合部36で瞬時混合する。このとき、貧溶媒L2と混合されたため、過飽和となった顔料が析出する。この析出は、貧溶媒L2中に含まれるバブルの表面に顔料が凝集し、凝集した顔料の結晶が成長することによって行われる。バブルの表面に顔料が凝集し、その顔料結晶が成長する理由としては、通常用いられる種晶の周りに結晶が成長してゆくのと同じ原理が働いているものと考えられる。
【0049】
液中に顔料が突然固体として析出する場合には、液−液界面から、固−液界面に変化させるための界面変化にともなうエンタルピー変化に相当するエネルギーを必要とするのでこの変化は起きにくい。よって、あるきっかけで析出が始まると素早く大きな結晶になるので、結晶性の良い微粒子ができにくく、アモルファスな部分を含んだ結晶になりがちである。
【0050】
これに対して、種晶が存在すると、種晶は固体であり、自分と同じ組成なので、液−液界面から固−固界面への変化であり、界面変化に相当するエネルギー量が少なくてすむので種晶の周りにゆっくりと析出し結晶成長しやすい。よって、原子がきちんと並んだ結晶性の良い微粒子ができる。
【0051】
ここで、バブルを使用した場合は、バブルは気体なので、液−液界面から固−気界面への変化となり、固−液界面への変化よりも界面エネルギー変化が少なくてすむ。そのため、バブル表面に顔料の結晶が、ゆっくりと析出し結晶成長してゆくのでやはり結晶性のよい顔料微粒子が得られる。本発明者は、研究により上記発想を得て、種晶を使用しなくてもバブルが種晶の代わりになるということを見いだした。バブルを使用することにより、種晶を使って結晶成長させたのと同等の高い結晶性を有する顔料を得ることができた。顔料PR254の場合、カラーフィルター等、最も商品価値の高い結晶型は、α型であるが、バブルなしでは、α結晶化度60−75%程度であったが、本手法を用いることで、80%を達成することが可能であった。また、結晶化度が上がる際に、粒子サイズが大きくなる傾向もあるが、本手法の破砕効果により、サイズが大きくなることを抑えることができた。
【0052】
混合部36で瞬時混合された溶解液L1と貧溶媒L2の混合液は、バブルの表面に顔料を析出させ、析出した顔料が結晶成長しながら反応流路30を通過する。このとき、超音波発生器54によって混合液に超音波振動が加えられる。これにより、反応流路30を通過している混合液中のバブルが超音波振動で粉砕され、バブル表面の顔料粒子が分散状態になる。ここで、超音波発生器54の条件としては、周波数20kHz〜100kHz、出力30W〜3000Wが好ましいが、周波数20kHz、500Wの出力の条件が更に好ましい。得られた顔料粒子を日機装社製、マイクロトラック粒度分布測定装置にかけたところ、10nmの粒径の顔料粒子が得られたことが分かった。
【0053】
この時の状況を図3を参照して説明する。図3は、バブル粉砕時の状況の説明図である。図3に示されるように、破壊される前のバブル100の表面には、多数の顔料粒子110が凝縮している。ここに超音波振動が加えられ、バブルが破壊されることにより、顔料粒子110は、分散状態となる。これにより、隣り合う顔料粒子110が弱い凝集を形成したとしても、砕け散ることで微分散状態になる。つまり、非常に微細な粒子を得ることができる。
【0054】
ここで、バブルを粉砕するためのバブル粉砕手段としては、超音波発生器に限定されるものではなく、超音波発生器の代わりに高せん断攪拌機を使用することもできる。この場合は、図1の反応流路30から流れ出た混合液を高せん断攪拌機が配置された貯留手段に導き、そこで高せん断攪拌機を作動させることにより、バブルを破壊することができる。
【0055】
他の実施例として、混合液に超音波振動を加えてバブルを破壊せず、そのままバブル表面で顔料粒子の結晶成長を継続させることもできる。これについて、図4を参照して説明する。図4は、中空粒子作製の説明図である。
【0056】
図4に示されるように、バブルの表面での顔料粒子の凝縮、顔料粒子の結晶成長を継続させると、バブルの表面が顔料粒子で覆われて中空の粒子が形成される。このようにして、中空の粒子を形成することができる。この際、図1のナノバブル発生器52で発生させるバブルを、空気のバブルではなく様々な気体のバブルとすることにより、様々な機能を有する中空顔料粒子を作製することが可能となる。例えば、香料を含んだ空気のバブルを使用することにより、香料を含んだ空気が中空部分に含まれた顔料粒子を作製することができる。これにより、例えばプリンタなどでこの顔料粒子を含むインクで用紙にプリントした場合、プリント部分を物理的にこするなどして粒子を破壊することにより、プリント部分から香料の香りを漂わすことができる。また、空気のバブルではなく、不活性ガスのバブルを使用することにより、たとえば、窒素ガスを中空部分に含んだ粒子を作製することができる。これにより、酸化を粒子内側から抑える効果がある。
【符号の説明】
【0057】
10:微粒子製造装置、12:装置本体、14:溶解液配管、16:貧溶媒配管、18:溶解液供給手段、20:貧溶媒供給手段、26 基板、28:蓋板、30:反応流路、32:溶解液導入流路、32A:導入流路、32B:導入流路、34:貧溶媒導入流路、34A:導入流路、36:混合部、38:貫通孔、40:貫通孔、50:貯留手段、52:ナノバブル発生器、54:超音波発生器、100:バブル、110:顔料粒子、L1:溶解液、L2:貧溶媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子製造方法であって、
前記微粒子の形成材料の溶解度が小さい貧溶媒中に気泡を発生させる気泡発生工程と、
前記微粒子の形成材料が溶解した溶解液と、前記気泡を含んだ前記貧溶媒と、を混合させる混合工程と、を備え、
前記気泡の表面で前記微粒子を析出させる、微粒子製造方法。
【請求項2】
前記混合工程の後に、前記気泡を粉砕する工程を更に含む、
請求項1に記載の微粒子製造方法。
【請求項3】
前記気泡の直径が50nm〜10μmである、
請求項1または2に記載の微粒子製造方法。
【請求項4】
前記気泡が、超音波発生器によって発生させられたキャビティである、
請求項1から3のいずれか一つに記載の微粒子製造方法。
【請求項5】
前記気泡の表面で前記微粒子を析出させた後、前記気泡の表面全体を析出した微粒子が覆うまで析出を継続させる工程を更に含み、中空の微粒子を製造する請求項1に記載の微粒子製造方法。
【請求項6】
微粒子を製造するための微粒子製造装置であって、
前記微粒子の成分が溶解した溶解液を供給するための溶解液供給手段と、
前記微粒子の成分の溶解度が小さい貧溶媒を供給するための貧溶媒供給手段と、
前記貧溶媒供給手段から供給された貧溶媒中に気泡を発生させるバブル発生器と、
前記溶解液供給手段から供給された溶解液を流通させるための溶解液導入流路と、
前記バブル発生器によって内部に気泡が発生させられた貧溶媒を流通させるための貧溶媒導入流路と、
前記溶解液導入流路から流出した溶解液と、前記貧溶媒導入流路から流出した貧溶媒とを混合させる混合部と、
前記混合部で混合された前記溶解液と前記貧溶媒の混合液を流通させる反応流路と、
前記混合液中の気泡を粉砕するためのバブル粉砕手段と、
を備えた微粒子製造装置
【請求項7】
前記バブル発生器が、50nm〜10μmの気泡を発生させる、
請求項6に記載の微粒子製造装置。
【請求項8】
前記バブル発生器が、超音波発生器である、請求項6または7に記載の微粒子製造装置。
【請求項9】
前記バブル粉砕手段が、超音波発生器である、請求項6から8のいずれか一つに記載の微粒子製造装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−194366(P2011−194366A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66525(P2010−66525)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】