微細凹凸構造体及びその製造方法
【課題】低い反射率及び優れた撥水性の少なくともいずれかを備えた微細凹凸構造体及び該微細凹凸構造体の製造方法の提供。
【解決手段】ポリマー溶液塗布膜形成工程と、水滴形成工程と、凹部形成工程と、前記複数の凹部に接着剤を介して第2の基板を貼り付け、該第2の基板を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、第2の基板上に複数の第1の突起構造体を形成する第1の突起構造体形成工程と、複数の第1の突起構造体をマスクとして前記第2の基板のエッチングを行う第2の基板エッチング工程とを含む微細凹凸構造体の製造方法である。
【解決手段】ポリマー溶液塗布膜形成工程と、水滴形成工程と、凹部形成工程と、前記複数の凹部に接着剤を介して第2の基板を貼り付け、該第2の基板を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、第2の基板上に複数の第1の突起構造体を形成する第1の突起構造体形成工程と、複数の第1の突起構造体をマスクとして前記第2の基板のエッチングを行う第2の基板エッチング工程とを含む微細凹凸構造体の製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材(プリズム構造体)、LEDの光取り出し構造、太陽電池の無反射構造、超撥水膜等の用途に好適な微細凹凸構造体及び該微細凹凸構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光学部材(プリズム構造体)、LEDの光取り出し構造、太陽電池の無反射構造、超撥水膜等の用途では基板表面に微細凹凸構造を付与することが求められている。
このような基板表面に微細凹凸構造を形成する方法としては、例えば、自己組織化を利用して精度良く微細凹凸構造を作製する方法が開示されている(非特許文献1参照)。この方法によれば、微細凹凸構造を作製したい対象の表面にSOG(Spin On Glass)層を形成し、その表面に熱を加えると相分離して自己組織的に一定間隔をあけて一定の大きさに凝集するポリマーを塗布し、加熱して自己組織化を行う。その後、自己組織化した組織を残してポリマーを除去するためにプラズマエッチングを行い、残った組織のパターンを下地のSOG層に転写するために、RIE(Reactive Ion Etching)を行う。最後に、加工表面のエッチングのために誘導結合型プラズマエッチングとアルゴンスパッタリングを行うことで、微細凹凸構造を形成する。
【0003】
また、レジストやエッチングを用いることで微細凹凸構造を形成させる方法が提案されている(特許文献1及び2参照)。この提案の方法によれば、微細凹凸構造を形成させたい面にレジスト組成物を塗布してパターニングしてレジストパターンを形成後、レジストパターン上からRIEやイオンミリング法でエッチングを行うことで微細凹凸構造を形成させる。これらのように形成した微細凹凸構造によって、光の入射角度が臨界角以内では無反射で光の取り出しが可能となり、臨界角以上の今まで取り出せなかった光は回折効果によって取出しができる。
【0004】
しかし、上記のような方法では、高価なフォトリソグラフィ装置を使用しなければならない。このため、工程数が多く複雑になり、製造コストが高くなるという問題がある。また、RIEなどのエッチングを行うことに伴い基板などがダメージを受けやすく歩留まりが悪化するという問題もある。
【0005】
このため、レジストやエッチングを用いないで、凹凸構造の代わりに多孔質構造を形成させる方法が提案されている(特許文献3参照)。この提案の方法によれば、基板表面をメタノール、フッ酸及び過酸化水素水の混合液に浸すことで多孔質構造を形成させる。この方法によれば、高価なフォトリソグラフィ装置を使用することも無く、エッチングによるダメージを解消させることができる。
【0006】
しかしながら、前記提案の方法では、凹凸構造が不規則であるため多孔質構造の形態によっては、低い反射率及び優れた撥水性の少なくともいずれかを備えることができないという課題があり、前記課題を解決することが望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−196152号公報
【特許文献2】特開2006−49855号公報
【特許文献3】特開2005−244201号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】東芝レビュー Vol.60 No.10 2005年、p32−35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、低い反射率及び優れた撥水性の少なくともいずれかを備え、光学部材(プリズム構造体)、LEDの光取り出し構造、太陽電池の無反射構造、超撥水膜等の用途に好適な微細凹凸構造体及び微細凹凸構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 第1の基板上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、
前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴形成雰囲気を供給して、該ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成する水滴形成工程と、
前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させて、ポリマー塗布膜に該ポリマー塗布膜表面を基準面として複数の凹部を形成する凹部形成工程と、
前記複数の凹部に接着剤を介して第2の基板を貼り付け、該第2の基板を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、前記第2の基板上に複数の第1の突起構造体を形成する第1の突起構造体形成工程と、
前記複数の第1の突起構造体をマスクとして前記第2の基板のエッチングを行う第2の基板エッチング工程と、
を含むことを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法である。
<2> 第1の基板上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、
前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴形成雰囲気を供給して、該ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成する水滴形成工程と、
前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させて、ポリマー塗布膜に該ポリマー塗布膜表面を基準面として複数の凹部を形成する凹部形成工程と、
前記複数の凹部に接着剤を介して第2の基板を貼り付け、該第2の基板を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、前記第2の基板上に複数の第1の突起構造体を形成する第1の突起構造体形成工程と、
前記複数の第1の突起構造体が形成された第2の基板上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記第2の基板から前記複数の第1の突起構造体を除去して、該第2の基板上に残された金属膜をマスクとして第2の基板のエッチングを行う第2の基板エッチング工程と、
を含むことを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法である。
<3> 第1の基板上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、
前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴形成雰囲気を供給して、該ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成する水滴形成工程と、
前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させて、ポリマー塗布膜に該ポリマー塗布膜表面を基準面として複数の凹部を形成する凹部形成工程と、
前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離して、前記第1の基板上に複数の第2の突起構造体を形成する第2の突起構造体形成工程と、
前記複数の第2の突起構造体をマスクとして前記第1の基板のエッチングを行う第1の基板エッチング工程と、
を含むことを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法である。
<4> エッチングがドライエッチング及びウエットエッチングのいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の微細凹凸構造体の製造方法である。
<5> 水滴形成工程がポリマー溶液塗布膜中の固形分が0.01質量%〜30質量%の状態で行われる前記<1>から<4>のいずれかに記載の微細凹凸構造体の製造方法である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の微細凹凸構造体の製造方法により製造されたことを特徴とする微細凹凸構造体である。
<7> 反射率が10.0%以下である前記<6>に記載の微細凹凸構造体である。
<8> 接触角が120°以上である前記<6>から<7>のいずれかに記載の微細凹凸構造体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における諸問題を解決でき、低い反射率及び優れた撥水性の少なくともいずれかを備え、光学部材(プリズム構造体)、LEDの光取り出し構造、太陽電池の無反射構造、超撥水膜等の用途に好適な微細凹凸構造体及び微細凹凸構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】図1Aは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法におけるポリマー溶液塗布膜形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図1B】図1Bは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法における水滴形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図1C】図1Cは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法における凹部形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図1D】図1Dは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法における凹部形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図1E】図1Eは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第1の突起構造体形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図1F】図1Fは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第1の突起構造体形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図1G】図1Gは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第2の基板エッチング工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図1H】図1Hは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法で形成された微細凹凸構造体の一例を示す概略断面図である。
【図1I】図1Iは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法で形成された微細凹凸構造体の他の一例を示す概略断面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法におけるポリマー溶液塗布膜形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図2B】図2Bは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法における水滴形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図2C】図2Cは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法における凹部形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図2D】図2Dは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法における凹部形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図2E】図2Eは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第1の突起構造体形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図2F】図2Fは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第1の突起構造体形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図2G】図2Gは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法における金属膜形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図2H】図2Hは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第2の基板エッチング工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図2I】図2Iは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法で形成された微細凹凸構造体の一例を示す概略断面図である。
【図3A】図3Aは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法におけるポリマー溶液塗布膜形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図3B】図3Bは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法における水滴形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図3C】図3Cは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法における凹部形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図3D】図3Dは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法における凹部形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図3E】図3Eは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第1の突起構造体形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図3F】図3Fは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第2の突起構造体形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図3G】図3Gは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第1の基板エッチング工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図3H】図3Hは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法で形成された微細凹凸構造体の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、図1Dにおける凹部の拡大図である。
【図5】図5は、ハニカム状の多孔質膜を示すSEM写真である。
【図6】図6は、実施例1の第1の突起構造体を示すSEM写真である。
【図7】図7は、実施例1の第1の突起構造体の斜方向から見たSEM写真である。
【図8】図8は、実施例1のエッチング後のシリコン基板を示すSEM写真である。
【図9】図9は、実施例1のエッチング後のシリコン基板の斜め方向から見たSEM写真である。
【図10A】図10Aは、実施例1のエッチング時間の合計で10分間エッチング後のシリコン基板を示すSEM写真である。
【図10B】図10Bは、実施例1のエッチング時間の合計で20分間エッチング後のシリコン基板を示すSEM写真である。
【図10C】図10Cは、実施例1のエッチング時間の合計で30分間エッチング後のシリコン基板を示すSEM写真である。
【図11】図11は、実施例1における接触角を測定した状態を示す図である。
【図12A】図12Aは、実施例1の微細凹凸構造体の反射率の測定結果を示す図である。
【図12B】図12Bは、図12Aの部分拡大図である。
【図13】図13は、実施例2の鉄基板をウエットエッチング後の状態を示す図である。
【図14】図14は、実施例3のエッチング後のシリコン基板を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(微細凹凸構造体の製造方法)
本発明の微細凹凸構造体の製造方法は、第1の形態では、ポリマー溶液塗布膜形成工程と、水滴形成工程と、凹部形成工程と、第1の突起構造体形成工程と、第2の基板エッチング工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明の微細凹凸構造体の製造方法は、第2の形態では、ポリマー溶液塗布膜形成工程と、水滴形成工程と、凹部形成工程と、第1の突起構造体形成工程と、金属膜形成工程と、第2の基板エッチング工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明の微細凹凸構造体の製造方法は、第3の形態では、ポリマー溶液塗布膜形成工程と、水滴形成工程と、凹部形成工程と、第2の突起構造体形成工程と、第1の基板エッチング工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
以下において、前記第1の形態から前記第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法では、前記ポリマー溶液塗布膜形成工程、前記水滴形成工程、及び前記凹部形成工程については共通する内容であるので、これらの共通する工程についてはまとめて説明する。
【0014】
<ポリマー溶液塗布膜形成工程>
前記ポリマー溶液塗布膜形成工程は、第1の基板上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成する工程である。
【0015】
−第1の基板−
前記第1の基板としては、その形状、構造、大きさ、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0016】
前記第1の基板の材質としては、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、SiO2膜被覆シリコン基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリアミド、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエーテルケトン、ポリフッ化エチレン等のポリマー基板;鉄、タングステン等の金属基板、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シリコン基板、金属基板が特に好ましい。
【0017】
前記第1の基板としては、特に制限はなく、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記第1の基板の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、100μm以上が好ましく、500μm以上がより好ましい。
【0018】
−有機溶媒−
前記有機溶媒としては、ポリマー溶液上に水滴粒子を形成させポリマー溶液塗布膜中に水滴の一部を入り込ませるために非水溶性溶媒であることが好ましい。また、前記有機溶媒としては、ポリマー溶液塗布膜上に形成された水滴を避けて先に蒸発させる必要があることから、水の沸点より低い沸点であることが好ましい。
【0019】
前記非水溶性溶媒としては、例えば、ハロゲン系有機溶剤、芳香族炭化水素、エステル類、非水溶性ケトン類、エーテル類、二硫化炭素などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ハロゲン系有機溶剤としては、例えばクロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられる。
前記芳香族炭化水素としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
前記エステル類としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
前記非水溶性ケトン類としては、例えばメチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
前記エーテル類としては、例えばジエチルエーテルなどが挙げられる。
【0020】
−疎水性ポリマー−
前記疎水性ポリマーとしては、前記有機溶媒に溶解すれば特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル重合ポリマー、ポリエステル、ポリラクトン、ポリアミド又はポリイミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリシロキサン誘導体、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記ビニル重合ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロペン、ポリビニルエーテル、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0022】
前記ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸などが挙げられる。
前記ポリラクトンとしては、例えば、ポリカプロラクトンなどが挙げられる。
前記ポリアミドとしては、例えば、ナイロンやポリアミド酸などが挙げられる。
【0023】
前記疎水性ポリマーを有機溶媒で溶解したポリマー膜を用いて複数の凹部を形成させる場合、前記ポリマー溶液における前記疎水性ポリマーの濃度としては、0.01質量%〜30質量%が好ましく、0.02質量%〜10質量%がより好ましく、0.05質量%〜5質量%が更に好ましい。
前記ポリマー濃度が、0.01質量%未満であると、得られる膜の力学強度が不足したり、細孔のサイズや配列が乱れてしまったりするなどの障害が生じることがあり、30質量%を超えると、凹部が得られにくくなることがある。
【0024】
−両親媒性化合物−
前記両親媒性化合物は、親水性であるとともに親油性でもある物質であり、具体的には、親水基と疎水基をもつ化合物である。前記両親媒性化合物としては、市販される多くの界面活性剤のようなモノマーの他に、二量体、三量体等のオリゴマー、ポリマーを用いることができ、前記疎水性ポリマーに対する分散状態を制御するにはポリマーを用いることが好ましい。
【0025】
前記ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリルアミドを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基、親水性側鎖としてカルボキシル基を併せ持つ両親媒性化合物、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマーなどが挙げられる。
【0026】
前記ポリマーの中でも、疎水性側鎖の親水性側鎖の交互重合体よりも、疎水性溶媒への溶解性に影響しない範囲で疎水性側鎖と親水性側鎖がブロックを形成しているブロックポリマーであることが好ましい。
【0027】
前記疎水性側鎖としては、アルキレン基、フェニレン基等の非極性直鎖状基であり、エステル基、アミド基等の連結基を除いて、末端まで極性基やイオン性解離基などの親水性基を分岐しない構造であることが好ましい。また、前記疎水性側鎖としては、例えば、アルキレン基を用いる場合には5つ以上のメチレンユニットからなることが好ましい。
前記親水性側鎖は、アルキレン基等の連結部分を介して末端に極性基やイオン性解離基、又はオキシエチレン基などの親水性部分を有する構造であることが好ましい。
【0028】
前記疎水性側鎖と前記親水性側鎖との比率としては、その大きさや非極性、極性の強さ、疎水性有機溶媒の疎水性の強さなどに応じて異なり一概には規定できないが、ユニット比(親水基:疎水基)が、0.1:9.9〜4.5:5.5であることが好ましい。前記ユニット比(親水基:疎水基)の親水基比が0.1未満であると、凹部のサイズが不均一となることがあり、4.5を超えると、疎水性有機溶媒に溶解せず析出するという問題がある。
【0029】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性化合物の数平均分子量(Mn)としては、1,000〜10,000,000が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。前記数平均分子量が1,000未満であると、材料が脆くなり取り扱い性が損なわれることがあり、10,000,000を超えると、疎水性溶媒に溶解しにくいという問題が生じることがある。
【0030】
前記疎水性ポリマーと前記両親媒性化合物との質量比率(疎水性ポリマー:両親媒性化合物)は、99:1〜50:50が好ましく、90:10〜80:20がより好ましい。
前記質量比率が、50:50よりも前記疎水性ポリマーの比率が小さくなると、膜の安定性、特に力学的な安定性が十分に得られなくなることがあり、99:1よりも前記疎水性ポリマーの比率が大きくなると、均一に分散した凹部が得られなくなることがある。
【0031】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性化合物としては、得られる膜の機械的強度の点で分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)ポリマーであることが好ましい。また、前記疎水性ポリマー及び/又は前記両親媒性化合物とともに、重合性の多官能モノマーを配合し、この配合物により複数の凹部を形成させたポリマー溶液塗布膜を形成した後、熱硬化法、紫外線硬化法、電子線硬化法等の公知の方法によって硬化処理を施すことも好ましい。
【0032】
前記多官能モノマーとしては、反応性の点から、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
前記多官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジペンタエリスリトールペンタアクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン付加物へキサアクリレート、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマ−、N−ビニル−2−ピロリドン、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、又はこれらの変性物などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記疎水性ポリマーと前記両親媒性化合物とを有機溶媒で溶解したポリマー膜を用いて複数の凹部を形成させる場合、前記ポリマー溶液における前記疎水性ポリマーと前記両親媒性化合物の両者を合わせたポリマー濃度(固形分)としては、0.01質量%〜30質量%が好ましく、0.05質量%〜5質量%がより好ましい。
前記ポリマー濃度が、0.01質量%未満であると、得られる膜の力学強度が不足したり、生産性が低くなるなどの問題が生じることがあり、30質量%を超えると、凹部が得られにくくなることがある。
【0034】
−ポリマー溶液の塗布−
前記ポリマー溶液を前記第1の基板上に塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばスピンコート法、ディップ法、インクジェット塗布法、スライド法、エクストリュージョン法、バー法、グラビア法などが挙げられる。
【0035】
前記ポリマー溶液を前記第1の基板上に塗布することで形成された前記ポリマー溶液塗布膜のWet厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、5μm〜2,000μmが好ましく、10μm〜1,000μmがより好ましく、20μm〜500μmが更に好ましい。
前記Wet厚みが、5μm未満であると、均一に塗布膜を形成することが困難となることがあり、2,000μmを超えると、生産性が低くなることがある。
前記Wet膜の厚みは、例えばレーザー変位計(キーエンス社製、LTシリーズ又はSIシリーズ)等により測定することができる。
また、ポリマー塗布膜のDry厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05μm〜100μmであることが好ましい。
【0036】
<水滴形成工程>
前記水滴形成工程は、前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴形成雰囲気を供給して、該ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成する工程である。
【0037】
前記水滴形成工程では、前記ポリマー溶液塗布膜上に結露させるように第1の基板の温度を制御する。第1の基板の温度制御に加え、送風ダクトからの空気の条件である温度と湿度と風速との制御を加えることがより好ましい。第1の基板の温度をTS、雰囲気の露点をTDとするときに、0℃<TD−TSの条件を満たすように、第1の基板の温度、または第1の基板の温度と送風ダクトからの空気の条件とを制御することがより好ましく、3℃≦TD−TS≦30℃の条件とすることが更に好ましい。TD−TSが1℃以下であると、水滴が発生しにくいからである。このように、第1の基板の温度を変えて結露を開始したり、結露を続けることにより、ポリマー溶液塗布膜上における水滴の発生のタイミング及び発生初期における水滴の大きさを従来の方法よりも精緻に制御することができる。
【0038】
ポリマー溶液塗布膜の表面に、前記第1の基板の表面温度Tsと水滴形成雰囲気の露点Tdとが、次式、Ts<Tdとなるような水滴形成雰囲気を供給することが好ましい。
前記水滴形成雰囲気中での水滴の露点Td(℃)としては、ポリマー溶液塗布膜の表面温度TL(℃)に対して0℃≦(Td−TL)℃が好ましく、0℃≦(Td−TL)℃≦80℃がより好ましく、5℃〜60℃が更に好ましく、10℃〜40℃が特に好ましい。
前記(Td−TL)℃が、0℃未満であると、水滴が生じ難くなることがあり、80℃を超えると、水滴と乾燥とが急峻となり、凹部の孔寸法制御やその均一化することが困難となることがある。
【0039】
前記水滴形成雰囲気の温度としては、10℃〜50℃が好ましく、15℃〜35℃がより好ましい。
前記温度が、10℃未満であると、結露しすぎてしまい孔のサイズが不均一になることがあり、50℃を超えると、結露による水滴形成が困難になることがある。
ここで、前記温度は、例えばクリモマスター風速計(KANOMAX社製、Model6543−01)を使用して測定することができる。
【0040】
ポリマー溶液塗布膜の表面に、前記第1の基板の表面温度Tsと水滴形成雰囲気の露点Tdとが、次式、Ts<Tdとなるような水滴形成雰囲気を供給することが、均一な水滴形成の点で好ましい。
前記第1の基板の表面温度Tsとしては、0℃〜40℃が好ましく、0℃〜30℃がより好ましく、0℃〜20℃が特に好ましい。
前記水滴形成雰囲気中での水滴の露点Td(℃)としては、ポリマー溶液塗布膜の表面温度TL(℃)に対して0℃≦(Td−TL)℃が好ましく、0℃≦(Td−TL)℃≦80℃がより好ましく、2℃〜60℃が更に好ましく、3℃〜30℃が特に好ましい。
前記(Td−TL)℃が、0℃未満であると、水滴が生じ難くなることがあり、80℃を超えると、水滴と乾燥とが急峻となり、凹部の孔寸法制御やその均一化することが困難となることがある。なお、前記水滴の露点Tdは、クリモマスター風速計(KANOMAX社製、Model6543−01)を使用して測定した平均値である。
【0041】
前記ポリマー溶液塗布膜の表面温度TL(℃)としては、0℃〜40℃が好ましく、0℃〜30℃がより好ましく、0℃〜20℃が更に好ましい。
前記表面温度TLが、30℃を超えると、結露による水滴形成が困難になることがある。なお、ポリマー溶液塗布膜の表面温度TLは、デジタル放射温度センサ(キーエンス社製、FT−H30)を使用して測定した平均値である。
【0042】
前記水滴形成雰囲気下に前記第1の基板を置く時間としては、特に限定されず、適宜変更することができるが、1秒〜3,000秒が好ましく、10秒〜2,000秒がより好ましく、20秒〜1,500秒が特に好ましい。
前記時間が、1秒未満であると、結露による水滴が形成されず凹部が形成されないことがあり、3,000秒を超えると、凹部のサイズが不均一となったり、生産性が劣ることがある。
【0043】
前記第1の基板の載置方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリマー溶液塗布膜上に水滴を形成させる必要があるので、ポリマー溶液塗布膜が上面となるように載置することが好ましい。
【0044】
前記水滴形成雰囲気下とする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結露用に調整された風の送風、などの方法が挙げられる。これらの中でも、結露の水滴形成による凹部の形成と溶媒の乾燥による凹形状の固定化両立の観点で結露用に調整された風をポリマー溶液塗布膜上に送風することが特に好ましい。
【0045】
前記風の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10℃〜100℃が好ましく、15℃〜60℃がより好ましく、20℃〜40℃が特に好ましい。
前記風の温度が、10℃未満であると、結露による水滴の形成が不均一となってしまうことがあり、100℃を超えると、ポリマー溶液塗布膜内に水滴が生じる前に、水蒸気として揮発してしまうことがある。
【0046】
前記風の送風方向としては、前記第1の基板の表面に沿って送風(平行流(並流))することが好ましい。
【0047】
前記風の送風速度(基板を移動させながら結露させるときは相対速度)としては、0.05m/s〜20m/sが好ましく、0.1m/s〜10m/sがより好ましく、0.2m/s〜5m/sが更に好ましい。
前記送風速度が、0.05m/s未満であると、水滴が、ポリマー溶液塗布膜中で充分に成長しないことがあり、20m/sを超えると、ポリマー溶液塗布膜表面に乱れが生じたり、水滴が十分に形成されないことがある。
【0048】
ここで、前記水滴形成工程では、風中の水分は、ポリマー溶液塗布膜上で結露して水滴(液滴)となる。そして、この水滴を核として水分が結露して水滴を成長させる。
【0049】
<水滴成長工程>
前記水滴成長工程は、前記水滴形成工程にてポリマー溶液塗布膜上で形成した水滴を好ましい大きさに成長させる工程であり、必要に応じて省略することができる。
【0050】
前記水滴を成長させる方法としては、ポリマー溶液塗布膜の表面温度TLと水滴の露点Tdとのいずれか一方を制御することが好ましく、水滴の露点Td(℃)とポリマー溶液塗布膜の表面温度TL(℃)との差(ΔT=Td−TL)が0℃〜20℃(0℃<ΔT<20℃)が好ましい。
前記ΔTが、0℃未満であると、水滴の成長が不十分となり、密な状態に形成されないため、凹部の形状や大きさ及び配列が不均一となることがあり、20℃を超えると、水滴が局所的に多層化、つまり三次元的に形成され、凹部の形状や大きさ及び配列が不均一となることがある。
【0051】
前記水滴の露点Tdとしては、送風口から送風される風の条件を制御することで変化させることができる。前記ΔTを0℃<ΔT<20℃とすることにより、水滴をゆっくり成長させるとともに水滴の配列を促し、均一な水滴を密に形成することができる。
【0052】
<凹部形成工程>
前記凹部形成工程は、前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させて、ポリマー塗布膜に該ポリマー塗布膜表面を基準面として複数の凹部を形成する工程である。
【0053】
前記有機溶媒及び水滴を蒸発させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば乾燥雰囲気下に基板を置く方法、などが挙げられる。前記乾燥雰囲気下にする方法としては、例えば乾燥風を送風する方法、その他減圧乾燥法などが挙げられる。
【0054】
前記水蒸気の露点TD2(℃)とポリマー溶液塗布膜の膜面温度TL(℃)との関係としては、(TL−TD2)℃≧1℃が好ましい。これにより、ポリマー溶液塗布膜の水滴の成長を停止させて、水滴を構成する水分を水蒸気として揮発させることができる。
前記ポリマー溶液塗布膜の表面温度TL(℃)と前記風又は前記乾燥風の露点温度TDn(℃)(nは、1又は2)との関係としては、0℃≦|TDn−TL|≦80℃が好ましい。
前記|TDn−TL|が、80℃を超えると有機溶媒及び水分の少なくともいずれかの急激な揮発を抑制できず、所望の形態の凹部を得ることができないことがある。また、ポリマー溶液塗布膜に不純物が混入すると、凹部の形成を阻害する原因となるので、送風口の塵埃度がクラス1,000以下とすることが好ましい。
【0055】
前記凹部形成工程においては、水滴が形成したポリマー溶液塗布膜中の有機溶媒をまず蒸発させる(溶媒蒸発工程)、塗布溶液中のポリマーが析出してポリマー塗布膜の流動性が低下した後に、水滴を蒸発させる(水滴蒸発工程)。ポリマー塗布膜が固定化される前に、水滴が先に蒸発してなくなってしまうと、凹部は形成されない。
【0056】
−溶媒蒸発工程−
第1の基板の温度を変えることにより、水滴形成工程から溶媒蒸発工程へ移行させる。
前記溶媒蒸発工程の開始では、送風ダクトからの空気の露点が水滴形成工程における露点よりも高くなるように制御する。
前記溶媒蒸発工程では、水滴が完全には蒸発しないように、より好ましくはできるだけ水滴の蒸発を抑えて溶媒だけを蒸発させるようにするように、第1の基板の温度を調節し、加えて送風ダクトからの空気の条件を調節する。
溶媒がポリマー溶液塗布膜から蒸発している間に、個々の水滴は大きく成長するとともにポリマー溶液塗布膜の中に入り込む。
【0057】
溶媒蒸発工程では、0℃<TD−TS≦10℃の条件を満たすように第1の基板の温度を制御することが好ましい。第1の基板の温度制御に加えて、送風ダクトからの空気の条件、即ち温度、湿度、風速を制御することがより好ましい。TD−TSが0℃以下の場合には、水滴の成長が不十分で密な状態に形成せず、孔の形状や大きさ及び多孔フィルムにおける孔の配列が不均一となることがある。また、TD−TSが10℃よりも大きいと、水滴が局所的に厚み方向にも重なる等、孔の形状や大きさ及び多孔フィルムにおける孔の配列が不均一となることがある。
【0058】
−水滴蒸発工程−
次に、第1の基板の温度を変えることにより水滴蒸発工程を開始する。
水滴蒸発工程では、TS>TDの条件となるように第1の基板の温度を制御することがより好ましい。第1の基板の温度制御に加えて、送風ダクトからの送風を実施することがより好ましい。この水滴蒸発工程は、水滴の蒸発を主たる目的としているが、溶媒蒸発工程で蒸発しきれなかった溶媒も蒸発させてもよい。
【0059】
送風ダクトから出される空気の風速は、0.02m/秒以上2m/秒以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.05m/秒以上1.5m/秒以下の範囲であり、最も好ましくは0.1m/秒以上0.5m/秒以下の範囲である。前記風速が0.02m/秒未満であると、水滴が細密に配列して形成されない場合があり、一方、前記風速が2m/秒を超えると、ポリマー溶液塗布膜の露出面が乱れたり、水滴形成工程における結露が充分に進行しなかったりすることがある。
【0060】
前記乾燥風の送風方向としては、前記第1の基板の表面に沿って送風(平行流(並流))することが好ましい。前記乾燥風を向流として送風すると、ポリマー溶液塗布膜の膜面に乱れが生じて凹部の均一分散性が損なわれることがある。
【0061】
前記乾燥風の送風速度としては、0.05m/s〜20m/sが好ましく、0.1m/s〜15m/sがより好ましく、0.5m/s〜10m/sが更に好ましい。
前記送風速度が、0.05m/s未満であると、水滴からの水分の蒸発が充分に進行しないことがあり、生産性にも劣ることがあり、20m/sを超えると、水滴から水分の蒸発が急激に生じて、形成される凹部の形態が乱れることがある。
【0062】
前記乾燥風がポリマー溶液塗布膜に送風されると、有機溶媒がポリマー溶液塗布膜より揮発する。なお、この際にも水滴からも水分が揮発するが、有機溶媒は水滴よりも揮発性が高いので、有機溶媒の揮発速度の方が速い。そのため、水滴は、有機溶媒の揮発に伴い表面張力により略均一の形態となる。更に、乾燥が進行するとポリマー溶液塗布膜の水滴から水分が水蒸気として揮発する。ポリマー溶液塗布膜から水滴が蒸発すると、水滴を形成していた箇所が凹部の各孔となる。前記有機溶媒及び水滴がポリマー溶液塗布膜から完全に蒸発することで、前記第1の基板上に凹部形成膜(ポリマー塗布膜)が形成される。
【0063】
前記乾燥風を送風する方法以外としては、減圧乾燥法により乾燥することも可能である。前記減圧乾燥法を行うことで、有機溶媒と水滴の水分との蒸発速度を調整することが可能となる。これを調整することで、ポリマー溶液塗布膜中に水滴を形成し、有機溶媒を蒸発させつつ水滴を蒸発させ、前記水滴が設けられている位置における凹部の各孔の大きさ、形状などを変化させることができる。
【0064】
また、ポリマー溶液塗布膜の表面から3mm〜20mm程度離れた位置に、ポリマー溶液塗布膜の表面より冷却され表面に溝を有する凝縮器を設けて、凝縮器の表面で水蒸気(揮発有機溶媒も含む)を凝縮させて乾燥させる方法も適用することができる。前記いずれかの乾燥方法を適用することで、ポリマー溶液塗布膜の膜面への動的な影響を少なくして乾燥させることができるため、より平滑な膜面を得ることができる。
【0065】
また、送風機、乾燥機を複数用いたりすることにより、異なる露点条件を設定したり、異なる乾燥温度条件を設定したりすることができる。これら条件を選択することで、各凹部の寸法制御性の向上や均一性の向上を図ることができる。
【0066】
−凹部−
図4に示すように、前記凹部18の隣接する凹部の中心間の平均距離P(以下、ピッチ間隔ともいう)としては、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがより好ましい。
前記ピッチ間隔Pが、0.01μm未満であると、孔径が小さすぎることで後述する凹部の表層の剥離が困難となることがあり、100μmを超えると、製造に時間がかかり過ぎて生産性が低くなったり、凹部が均一に形成されないことがある。なお、ピッチ間隔Pは、図4に示したように、凹部18が形成されているポリマー溶液塗布膜17の表面を上から見たとき、各凹部18の外接円を計測し、隣接する外接円の中心間の平均距離を10点測定した平均値をいう。ここで、前記外接円は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察により測定することができる。
【0067】
前記凹部における凹部の平均高さDとしては、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがより好ましく、0.1μm〜30μmが更に好ましい。
前記平均高さDが、0.01μm未満であると、後述する凹部の表層の剥離が困難となることがあり、100μmを超えると、製造に時間がかかり過ぎて生産性が低くなったり、凹部が均一に形成されないことがある。前記凹部における凹部の平均高さは、形状測定レーザーマイクロスコープ(キーエンス社製、VK−8700)を用いて凹部の高さを測定した平均値である。
【0068】
前記水滴形成工程及び前記凹部形成工程としては、風を送風する送風機を有する結露ゾーン(水滴形成ゾーン)及び乾燥風を送風する送風機を有する乾燥ゾーンに区画されている製造装置で行うことができる。具体的には、ポリマー溶液塗布膜が形成された前記第1の基板を流延ベルトに載置し、基板を結露ゾーンに搬送して前記水滴形成工程が行われる。前記水滴形成工程終了後、乾燥ゾーンに搬送し、前記凹部形成工程が行われる。
【0069】
<第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法>
前記第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法は、前記ポリマー溶液塗布膜形成工程、前記水滴形成工程、及び前記凹部形成工程を含み、以下に説明する第1の突起構造体形成工程、及び第2の基板エッチング工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0070】
<<第1の突起構造体形成工程>>
前記第1の突起構造体形成工程は、前記複数の凹部に接着剤を介して第2の基板を貼り付け、該第2の基板を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、前記第2の基板上に複数の第1の突起構造体を形成する工程である。
【0071】
−第2の基板−
前記第2の基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記第1の基板と同様のものを用いることができる。これらの中でも、シリコン基板、サファイア基板、鉄基板、タングステン基板が特に好ましい。更に用途に応じて太陽電池の受光素子、LEDの発光素子なども用いることができる。
【0072】
−接着剤−
前記接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール系粘着剤、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系、スチレン系粘着剤などが挙げられる。
前記接着剤は、前記複数の凹部と前記第2の基板の間に介在していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、第2の基板表面に塗布する方法、複数の凹部表面に塗布する方法、などが挙げられる。
前記塗布は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばスピンコーター、スリットコーター、ダイコーター、スプレーコーター、バーコーター等を用いる塗布方法などが挙げられる。
【0073】
前記複数の凹部に接着剤を介して第2の基板を貼り付け、該第2の基板を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離することにより、前記第2の基板上に複数の第1の突起構造体が形成される。
前記第1の突起構造体は、ハニカム構造体における力学的強度の弱いくびれた部分(中心部分)で分割された表面部分の突起構造に起因する。
前記第1の突起構造体における突起の高さとしては、50nm〜10,000nmが好ましく、100nm〜5,000nmがより好ましい。
前記第1の突起構造体における突起間隔としては、50nm〜10,000nmが好ましく、100nm〜5,000nmがより好ましい。ここで、前記突起間隔とは、隣接する第1の突起構造体間の最短距離を表す。
前記第1の突起構造体における突起の比(高さ/突起間隔)が、0.01以上100以下であることが好ましい。
前記第1の突起構造体における突起形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、略円錐乃至略角錐形状であることが好ましい。
ここで、前記第1の突起構造体の突起高さ、突起間隔、突起形状などは、例えば、電解放出走査型電子顕微鏡、などにより測定することができる。
【0074】
<<第2の基板エッチング工程>>
前記第2の基板エッチング工程は、前記複数の第1の突起構造体をマスクとして前記第2の基板のエッチングを行う工程である。
【0075】
前記エッチングとしては、ドライエッチング及びウエットエッチングのいずれかであることが好ましい。
【0076】
−ドライエッチング−
前記ドライエッチングとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチングなどがある。エッチングガスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ハロゲンを含む化合物が用いられ、例えばSF6、CF4、CHF3、XeF2が挙げられる。
ドライエッチングにおいては、用いられるガス、処理時間などによって対象物の深さや形状を変化させることができる。
【0077】
−ウエットエッチング−
前記ウエットエッチングとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばシリコン(Si)基板をエッチングするにはフッ酸と硝酸を混合した液を作製し、この溶液中にシリコン基板を浸漬する方法によって処理することができる。また、浸漬時間によってエッチングにより処理される深さなどを制御可能である。
【0078】
前記第1の突起構造体をマスクとしてエッチングを行うことにより、エッチングの効率が向上し、エッチングの照射角度をふることで、異方性を出すことが可能となる。また、第1の突起構造体は、通常のレジストパターンとは形状が異なるの、露出部分の面積が同じでも、レジストパターンの体積が少ないので、エッチング後のパターンの除去が容易である。
【0079】
<第2の形態の凹凸構造体の製造方法>
前記第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法は、前記ポリマー溶液塗布膜形成工程、前記水滴形成工程、前記凹部形成工程、及び前記第1の突起構造体形成工程を含み、以下に説明する金属膜形成工程、第2の基板エッチング工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0080】
<<金属膜形成工程>>
前記金属膜形成工程は、前記複数の第1の突起構造体が形成された第2の基板上に金属膜を形成する工程である。
【0081】
前記金属膜における金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば金、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、チタン、タングステン、クロム、又はこれらの合金などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記金属膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばメッキ法、印刷法、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、電鋳法などが挙げられる。これらの中でも、真空蒸着法が特に好ましい。
前記金属膜の厚みとしては、特に制限はなく、材料等により適宜選択可能であるが、1nm〜1,000nmが好ましく、2nm〜100nmがより好ましい。
【0082】
<第2の基板エッチング工程>
前記第2の基板エッチング工程は、前記第2の基板から前記複数の第1の突起構造体を除去して、該第2の基板上に残された金属膜をマスクとして第2の基板のエッチングを行う工程である。この金属膜マスクによるエッチングでは、第1の実施形態の突起構造体マスクによるエッチングとポジネガが反転したパターンが得られる。
【0083】
−第2の基板から第1の突起構造体の除去−
前記第2の基板から第1の突起構造体を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリマー塗布膜が溶解可能な溶剤中に浸漬する方法、溶剤中に浸漬して超音波処理を行う方法、酸素プラズマ等により除去する方法、などが挙げられる。
前記ポリマー塗布膜が溶解可能な溶剤としては、使用するポリマーに応じて異なり一概には規定できないが、例えばクロロホルム、塩化メチレン、硝酸などが挙げられる。
【0084】
前記第2の基板から第1の突起構造体を除去すると、第2の基板上には金属膜のみが残るので、該金属膜をマスクとして、第2の基板をエッチングすることにより、微細凹凸構造体を形成することができる。
前記第2の基板エッチング工程におけるエッチングの種類、条件、処理方法などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上記第1の形態の第2の基板エッチング工程と同様である。
前記第2の形態の製造方法により製造される微細凹凸構造体は、第1の形態の製造方法により製造される微細凹凸構造体とポジネガが反転したものであり、図2Iに示すような形状の微細凹凸構造体が得られる。
【0085】
<第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法>
前記第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法は、前記ポリマー溶液塗布膜形成工程と、前記水滴形成工程と、前記凹部形成工程と、以下に説明する第2の突起構造体形成工程と、第1の基板エッチング工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0086】
<<第2の突起構造体形成工程>>
前記第2の突起構造体形成工程は、前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離して、前記第1の基板上に複数の第2の突起構造体を形成する工程である。
【0087】
前記第2の突起構造体は、いわゆるピラー構造体とも呼ばれ、該ピラー構造体を有するフィルムは、前記ハニカム状多孔質フィルムを厚み方向に分割することによって得られる。分割方法としては、例えば、ハニカム状多孔質フィルムの上面に粘着部材を貼り付けた後、厚み方向に引き離す方法、粘着性を有するロール上に搬送させ、ハニカム構造体の両面を二つに切り離す、静電印加によりロールに接着搬送させながら、ハニカム構造体の両面を二つに切り離す、接着剤を塗布した支持体を重ね合わせて切り離す方法、前記第1の形態の第1の突起構造体形成工程と同様に、複数の凹部に接着剤を介して第2の基板を貼り付け、該第2の基板を剥がして複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離する方法、などが挙げられる。
前記粘着部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セロハンテープ等の粘着テープなどが挙げられる。前記ピラー構造体は、前記ハニカム構造体における力学的強度の弱いくびれた部分(ほぼ中心部分)で二分割された構造を有する。
【0088】
前記第2の突起構造体における突起の高さとしては、50nm〜10,000nmが好ましく、100nm〜5,000nmがより好ましい。
前記第2の突起構造体における突起間隔としては、50nm〜10,000nmが好ましく、100nm〜5,000nmがより好ましい。ここで、前記突起間隔とは、隣接する第2の突起構造体間の最短距離を表す。
前記第2の突起構造体における突起の比(高さ/突起間隔)が、0.01以上100以下であることが好ましい。
前記第2の突起構造体における突起形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、略円錐乃至略角錐形状であることが好ましい。
ここで、前記第2の突起構造体の突起高さ、突起間隔、突起形状などは、例えば、電解放出走査型電子顕微鏡、などにより測定することができる。
【0089】
<<第1の基板エッチング工程>>
前記複数の第2の突起構造体をマスクとして前記第1の基板のエッチングを行う工程である。
前記第1の基板エッチング工程におけるエッチングの種類、条件、処理方法などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上記第1の形態の第2の基板エッチング工程と同様である。
【0090】
前記第3の形態の製造方法により製造される微細凹凸構造体は、図3Hに示すように、丸みを帯びた底部を有する円柱状パターンの微細凹凸構造体が得られる。
【0091】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、洗浄工程、研磨工程などを適宜行うことができ、これらの工程は、必要に応じて適宜省略することもできる。
【0092】
ここで、図1A〜図1Iは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法の一例を示す工程図である。
図1Aは、ポリマー溶液塗布膜形成工程を示し、第1の基板15上に有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布し、ポリマー溶液塗布膜17を形成する。
次に、図1Bは、水滴形成工程を示し、前記ポリマー溶液塗布膜17の表面に水滴形成雰囲気41を供給し、該ポリマー溶液塗布膜17の表面に水滴52を形成する。
次に、図1Cは、凹部形成工程において、乾燥風42を供給し、有機溶媒及び水滴52を蒸発させて、ポリマー溶液塗布膜をポリマー塗布膜とする。
次に、図1Dに示すように、前記ポリマー塗布膜に該ポリマー塗布膜表面を基準面として複数の凹部18を形成する。
次に、図1Eに示すように、前記複数の凹部18に接着剤層28を介して第2の基板27を貼り付ける。
次に、図1Fに示すように、第2の基板27を剥がして前記複数の凹部18の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、前記第2の基板27上に複数の第1の突起構造体29を形成する。
次に、図1Gに示すように、前記複数の第1の突起構造体29をマスクとして前記第2の基板27のエッチングを行う。
次に、図1Hに示すように、シャープな形状の微細凹凸構造体100が形成される。
そして、エッチングを更に続けると、図1Iに示すような棘棘(とげとげ)を有する針状の微細凹凸構造体100が得られる。
【0093】
図2A〜図2Iは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法の一例を示す工程図である。
図2A〜図2Fは、前記第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法と同じ工程であるので、これらの説明は省略する。
次に、図2Gに示すように、複数の第1の突起構造体29が形成された第2の基板27上に金属膜31を形成する。
次に、図2Hに示すように、前記第2の基板27から前記複数の第1の突起構造体29を除去し、該第2の基板27上に残された金属膜31をマスクとして第2の基板27のエッチングを行う。
そして、図2Iに示すように、微細凹凸構造体101が形成される。
【0094】
図3A〜図3Hは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法の一例を示す工程図である。
図3A〜図3Eは、前記第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法と同じ工程であるので、これらの説明は省略する。なお、図3Eにおいては、接着剤層を有する第2の基板の代わりに粘着テープを用いてもよい。
次に、図3Fに示すように、前記複数の凹部18の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離して、前記第1の基板15上に複数の第2の突起構造体32を形成する。
次に、図3Gに示すように、前記複数の第2の突起構造体32をマスクとして前記第1の基板15のエッチングを行う。
そして、図3Hに示すように、丸みを帯びた円柱状の微細凹凸構造体102が形成される。
【0095】
(微細凹凸構造体)
本発明の微細凹凸構造体は、本発明の微細凹凸構造体の製造方法により製造されるものである。
前記微細な凹凸構造体は、エッチングにより形成される形状が、通常のレジストパターンを用いた場合と異なり、無反射に有利なプリズム構造体様である。
また、反射防止のためには、光を取り込むための凹凸が必要となるが、エッチングの条件によっては、棘棘(とげとげ)を有する針状の微細凹凸構造体を形成することができ、より低い反射率とすることができる。
凹凸の配置は、規則的ではなく、微妙なゆらぎがあり、これにより干渉を防ぐことができるというメリットもある。
【0096】
前記微細凹凸構造体は、その反射率が10.0%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。前記反射率が、10.0%を超えると、反射防止性能が不十分になることがある。
ここで、前記反射率は、例えば紫外可視近赤外分光光度計(Lambda900、PerkinElmer社製)により測定することができる。
【0097】
前記微細凹凸構造体は、その接触角が120°以上であることが好ましく、150°以上であることがより好ましい。
ここで、前記接触角は、例えば協和界面科学株式会社製DropMasterシリーズにより測定することができる。
【0098】
−用途−
本発明の微細凹凸構造体の製造方法及び該製造方法により製造された微細凹凸構造体は、低い反射率及び優れた撥水性の少なくともいずれかを有しているので、例えば光学部材(プリズム構造体)、LEDの光取り出し構造、太陽電池の無反射構造などに好適に用いることができる。
また、本発明の微細凹凸構造体は、形成されるパターンの形状を円錐形状とすることができ、雌型とした場合には抜きやすいので、ナノインプリントにも好適である。
【実施例】
【0099】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0100】
(実施例1)
−ハニカム状多孔質膜の作製−
ハニカム状多孔質膜の作製は、文献(T.Nishikawa, R.Ookura, J.Nishida, K.Arai, J.Hayashi, N.Kurono, T.Sawadaishi, M.Hara, M.Shimomura, Langmuir,2002,18(15),5734.)に従った。
鋳型となるハニカム状多孔質膜の作製には、ポリスチレン(PSt、Aldrich社製、重量平均分子量(Mw)=280,000)と、下記構造式で表されるCap化合物(ドデシルアクリルアミド−ω−カルボキシヘキシルアクリルアミド)とのを質量比で10:1となるように混合したクロロホルム溶液を、第1の基板上(ガラス、40cm×11cm)に約30mL滴下し、温度25℃、露点20℃の空気を風速0.3m/sで吹き付けた。溶液は次第に白濁し、干渉色が観察され、完全に溶媒、水滴が蒸発した後に走査型電子顕微鏡(SEM)で構造を観察すると、図5に示すように、ハニカム状の多孔質膜が形成されているのが観察された。
【化2】
この図5の結果から、膜の孔は膜内でお互いが連結しており、膜の中心を通る平面に関して上下がほぼ対象となっており、三次元的に結合した構造を持っていた。特開2004−330330号公報の記載に基づき、孔径はキャスト量を変えることによって、100nm〜50μmまで調節することが可能であった。
【0101】
−シリコン基板上への突起構造体マスクの作製−
作製したハニカム状多孔質膜をUVオゾン洗浄装置で5分間処理し、ポリビニルアルコール(PVA)の1質量%水溶液を滴下し、1,000rpmで120秒〜150秒スピンコートした。スピンコートしたサンプルはUVオゾン洗浄装置で1時間表面洗浄した第2の基板としてのシリコン基板上に貼り付けて剥がしとり、シリコン基板上に突起構造体膜が残るようにした。次いで、脱イオン水で洗浄し、ドライヤーで乾燥させ、シリコン基板上の余分なPVAを除去した。以上により、図6及びその斜め方向から見た図7に示す突起構造体マスクを作製した。
【0102】
−突起構造体膜マスクを用いたシリコン基板のエッチング−
作製した突起構造体膜をマスクとしてシリコンのエッチングを行った。シリコンのエッチングには誘導結合プラズマエッチング装置(ICP;dry etching equipment、SPM−200、住友精密工業株式会社製)を用いて、エッチングガスである六フッ化硫黄(SF6)と保護ガスであるパーフルオロシクロブタン(C4F8)を用いて行った。このとき、エッチング工程としてSF6とC4F8をそれぞれ50sccmと90sccmで5.5秒間流してエッチングを行った。また、パッシベーション工程としてC4F8を140sccmで5.0秒間流す工程を行った。上記2工程を交互に繰り返し、合計で10分間エッチングした。エッチング後のシリコン基板をアセトンの50質量%水溶液に浸漬させ、30分間超音波洗浄処理することで突起構造体マスクを除去した。突起構造体マスクを除去後のシリコン基板を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると、図8及びその斜め方向から見た図9に示すように、マスクに形成されていた周期的な空孔と対応する微細凹凸構造体が観察された。
図10Aは、合計で10分間エッチングして、得られた微細凹凸構造体を示す。
図10Bは、更にエッチングを繰り返し、合計で20分間エッチングして、得られた微細凹凸構造体を示す。
図10Cは、更にエッチングを繰り返し、合計で30分間エッチングして、得られた微細凹凸構造体を示す。
【0103】
作製した図10Cに示すシリコン微細凹凸構造体について、協和界面科学株式会社製DropMasterシリーズにより、接触角を測定したところ、図11に示すように、接触角は172°であり、超撥水性を示すことが分かった。
また、作製した図10A〜図10Cに示すシリコン微細凹凸構造体について、紫外可視近赤外分光光度計(Lambda900、PerkinElmer社製)により、反射率を測定したところ、図12A及び12Bに示すように、反射率が10.0%以下であり、無反射特性を示した。
【0104】
(実施例2)
−鉄基板のウエットエッチング−
実施例1と同様にして、第2の基板としての鉄基板(3cm角)上に突起構造体マスクを作製後、硝酸0.6mLとエタノール9.4mLの混合溶液に5秒間浸漬し、その後エタノールで洗浄、ドライヤーで乾燥させた。また、エッチング溶液に浸漬し、エタノール洗浄、ドライヤーで乾燥の一連の行程を繰り返すことで、エッチングの深さを調節した。エッチング後はクロロホルムに浸漬し、超音波処理をすることで、残った突起構造体マスクを除去した。光学顕微鏡で作製したサンプルの表面を観察したところ、周期的に穴の開いた鉄のパターン基板が作製されている様子が観察された(図13参照)。
【0105】
(実施例3)
−金ドットパターンの形成−
実施例1と同様の方法により第2の基板としてのシリコン基板上に突起構造体マスクを作製後、該突起構造体マスク表面に、スパッタ法により金をスパッタした(5mV、3分45秒)。金をスパッタした後、クロロホルムに浸漬して超音波をかけた。次に、硝酸中に浸漬することで完全に突起構造体マスクを除去した。突起構造体マスク除去後には金のドットパターンが得られた。
【0106】
−シリコン基板のエッチング−
作製した金のドットパターンをマスクとしてシリコンのエッチングを行った。シリコンのエッチングには誘導結合プラズマエッチング装置(ICP dry etching equipment、SPM−200、住友精密工業株式会社製)を用いて、エッチングガスである六フッ化硫黄(SF6)と保護ガスであるパーフルオロシクロブタン(C4F8)を用いて行った。このとき、エッチング工程としてSF6とC4F8をそれぞれ50sccmと90sccmで5.5秒間流してエッチングを行った。また、パッシベーションの工程としてC4F8を140sccmで5.0秒間流す工程を行った。上記2工程を交互に繰り返し、合計で10分間エッチングした。エッチング後には図14に示すような周期的にドットが並んだ微細凹凸構造体が形成されていた。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の微細凹凸構造体の製造方法及び該製造方法により製造された微細凹凸構造体は、低い反射率及び優れた撥水性の少なくともいずれかを有しているので、例えば光学部材(プリズム構造体)、LEDの光取り出し構造、太陽電池の無反射構造などに好適に用いることができる。
また、本発明の微細凹凸構造体は、形成されるパターンの形状を円錐形状とすることができ、雌型とした場合には抜きやすいので、ナノインプリントにも好適である。
【符号の説明】
【0108】
15 第1の基板
17 ポリマー溶液塗布膜
18 凹部
27 第2の基板
28 接着剤層
29 第1の突起構造体
31 金属膜
32 第2の突起構造体
41 風
42 乾燥風
100、101、102 微細凹凸構造体
P 間隔(ピッチ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材(プリズム構造体)、LEDの光取り出し構造、太陽電池の無反射構造、超撥水膜等の用途に好適な微細凹凸構造体及び該微細凹凸構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光学部材(プリズム構造体)、LEDの光取り出し構造、太陽電池の無反射構造、超撥水膜等の用途では基板表面に微細凹凸構造を付与することが求められている。
このような基板表面に微細凹凸構造を形成する方法としては、例えば、自己組織化を利用して精度良く微細凹凸構造を作製する方法が開示されている(非特許文献1参照)。この方法によれば、微細凹凸構造を作製したい対象の表面にSOG(Spin On Glass)層を形成し、その表面に熱を加えると相分離して自己組織的に一定間隔をあけて一定の大きさに凝集するポリマーを塗布し、加熱して自己組織化を行う。その後、自己組織化した組織を残してポリマーを除去するためにプラズマエッチングを行い、残った組織のパターンを下地のSOG層に転写するために、RIE(Reactive Ion Etching)を行う。最後に、加工表面のエッチングのために誘導結合型プラズマエッチングとアルゴンスパッタリングを行うことで、微細凹凸構造を形成する。
【0003】
また、レジストやエッチングを用いることで微細凹凸構造を形成させる方法が提案されている(特許文献1及び2参照)。この提案の方法によれば、微細凹凸構造を形成させたい面にレジスト組成物を塗布してパターニングしてレジストパターンを形成後、レジストパターン上からRIEやイオンミリング法でエッチングを行うことで微細凹凸構造を形成させる。これらのように形成した微細凹凸構造によって、光の入射角度が臨界角以内では無反射で光の取り出しが可能となり、臨界角以上の今まで取り出せなかった光は回折効果によって取出しができる。
【0004】
しかし、上記のような方法では、高価なフォトリソグラフィ装置を使用しなければならない。このため、工程数が多く複雑になり、製造コストが高くなるという問題がある。また、RIEなどのエッチングを行うことに伴い基板などがダメージを受けやすく歩留まりが悪化するという問題もある。
【0005】
このため、レジストやエッチングを用いないで、凹凸構造の代わりに多孔質構造を形成させる方法が提案されている(特許文献3参照)。この提案の方法によれば、基板表面をメタノール、フッ酸及び過酸化水素水の混合液に浸すことで多孔質構造を形成させる。この方法によれば、高価なフォトリソグラフィ装置を使用することも無く、エッチングによるダメージを解消させることができる。
【0006】
しかしながら、前記提案の方法では、凹凸構造が不規則であるため多孔質構造の形態によっては、低い反射率及び優れた撥水性の少なくともいずれかを備えることができないという課題があり、前記課題を解決することが望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−196152号公報
【特許文献2】特開2006−49855号公報
【特許文献3】特開2005−244201号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】東芝レビュー Vol.60 No.10 2005年、p32−35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、低い反射率及び優れた撥水性の少なくともいずれかを備え、光学部材(プリズム構造体)、LEDの光取り出し構造、太陽電池の無反射構造、超撥水膜等の用途に好適な微細凹凸構造体及び微細凹凸構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 第1の基板上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、
前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴形成雰囲気を供給して、該ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成する水滴形成工程と、
前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させて、ポリマー塗布膜に該ポリマー塗布膜表面を基準面として複数の凹部を形成する凹部形成工程と、
前記複数の凹部に接着剤を介して第2の基板を貼り付け、該第2の基板を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、前記第2の基板上に複数の第1の突起構造体を形成する第1の突起構造体形成工程と、
前記複数の第1の突起構造体をマスクとして前記第2の基板のエッチングを行う第2の基板エッチング工程と、
を含むことを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法である。
<2> 第1の基板上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、
前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴形成雰囲気を供給して、該ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成する水滴形成工程と、
前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させて、ポリマー塗布膜に該ポリマー塗布膜表面を基準面として複数の凹部を形成する凹部形成工程と、
前記複数の凹部に接着剤を介して第2の基板を貼り付け、該第2の基板を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、前記第2の基板上に複数の第1の突起構造体を形成する第1の突起構造体形成工程と、
前記複数の第1の突起構造体が形成された第2の基板上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記第2の基板から前記複数の第1の突起構造体を除去して、該第2の基板上に残された金属膜をマスクとして第2の基板のエッチングを行う第2の基板エッチング工程と、
を含むことを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法である。
<3> 第1の基板上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、
前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴形成雰囲気を供給して、該ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成する水滴形成工程と、
前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させて、ポリマー塗布膜に該ポリマー塗布膜表面を基準面として複数の凹部を形成する凹部形成工程と、
前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離して、前記第1の基板上に複数の第2の突起構造体を形成する第2の突起構造体形成工程と、
前記複数の第2の突起構造体をマスクとして前記第1の基板のエッチングを行う第1の基板エッチング工程と、
を含むことを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法である。
<4> エッチングがドライエッチング及びウエットエッチングのいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の微細凹凸構造体の製造方法である。
<5> 水滴形成工程がポリマー溶液塗布膜中の固形分が0.01質量%〜30質量%の状態で行われる前記<1>から<4>のいずれかに記載の微細凹凸構造体の製造方法である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の微細凹凸構造体の製造方法により製造されたことを特徴とする微細凹凸構造体である。
<7> 反射率が10.0%以下である前記<6>に記載の微細凹凸構造体である。
<8> 接触角が120°以上である前記<6>から<7>のいずれかに記載の微細凹凸構造体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における諸問題を解決でき、低い反射率及び優れた撥水性の少なくともいずれかを備え、光学部材(プリズム構造体)、LEDの光取り出し構造、太陽電池の無反射構造、超撥水膜等の用途に好適な微細凹凸構造体及び微細凹凸構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】図1Aは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法におけるポリマー溶液塗布膜形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図1B】図1Bは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法における水滴形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図1C】図1Cは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法における凹部形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図1D】図1Dは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法における凹部形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図1E】図1Eは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第1の突起構造体形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図1F】図1Fは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第1の突起構造体形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図1G】図1Gは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第2の基板エッチング工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図1H】図1Hは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法で形成された微細凹凸構造体の一例を示す概略断面図である。
【図1I】図1Iは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法で形成された微細凹凸構造体の他の一例を示す概略断面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法におけるポリマー溶液塗布膜形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図2B】図2Bは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法における水滴形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図2C】図2Cは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法における凹部形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図2D】図2Dは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法における凹部形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図2E】図2Eは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第1の突起構造体形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図2F】図2Fは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第1の突起構造体形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図2G】図2Gは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法における金属膜形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図2H】図2Hは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第2の基板エッチング工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図2I】図2Iは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法で形成された微細凹凸構造体の一例を示す概略断面図である。
【図3A】図3Aは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法におけるポリマー溶液塗布膜形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図3B】図3Bは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法における水滴形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図3C】図3Cは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法における凹部形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図3D】図3Dは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法における凹部形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図3E】図3Eは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第1の突起構造体形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図3F】図3Fは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第2の突起構造体形成工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図3G】図3Gは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法における第1の基板エッチング工程を説明するための一例を示す概略断面図である。
【図3H】図3Hは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法で形成された微細凹凸構造体の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、図1Dにおける凹部の拡大図である。
【図5】図5は、ハニカム状の多孔質膜を示すSEM写真である。
【図6】図6は、実施例1の第1の突起構造体を示すSEM写真である。
【図7】図7は、実施例1の第1の突起構造体の斜方向から見たSEM写真である。
【図8】図8は、実施例1のエッチング後のシリコン基板を示すSEM写真である。
【図9】図9は、実施例1のエッチング後のシリコン基板の斜め方向から見たSEM写真である。
【図10A】図10Aは、実施例1のエッチング時間の合計で10分間エッチング後のシリコン基板を示すSEM写真である。
【図10B】図10Bは、実施例1のエッチング時間の合計で20分間エッチング後のシリコン基板を示すSEM写真である。
【図10C】図10Cは、実施例1のエッチング時間の合計で30分間エッチング後のシリコン基板を示すSEM写真である。
【図11】図11は、実施例1における接触角を測定した状態を示す図である。
【図12A】図12Aは、実施例1の微細凹凸構造体の反射率の測定結果を示す図である。
【図12B】図12Bは、図12Aの部分拡大図である。
【図13】図13は、実施例2の鉄基板をウエットエッチング後の状態を示す図である。
【図14】図14は、実施例3のエッチング後のシリコン基板を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(微細凹凸構造体の製造方法)
本発明の微細凹凸構造体の製造方法は、第1の形態では、ポリマー溶液塗布膜形成工程と、水滴形成工程と、凹部形成工程と、第1の突起構造体形成工程と、第2の基板エッチング工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明の微細凹凸構造体の製造方法は、第2の形態では、ポリマー溶液塗布膜形成工程と、水滴形成工程と、凹部形成工程と、第1の突起構造体形成工程と、金属膜形成工程と、第2の基板エッチング工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明の微細凹凸構造体の製造方法は、第3の形態では、ポリマー溶液塗布膜形成工程と、水滴形成工程と、凹部形成工程と、第2の突起構造体形成工程と、第1の基板エッチング工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
以下において、前記第1の形態から前記第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法では、前記ポリマー溶液塗布膜形成工程、前記水滴形成工程、及び前記凹部形成工程については共通する内容であるので、これらの共通する工程についてはまとめて説明する。
【0014】
<ポリマー溶液塗布膜形成工程>
前記ポリマー溶液塗布膜形成工程は、第1の基板上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成する工程である。
【0015】
−第1の基板−
前記第1の基板としては、その形状、構造、大きさ、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0016】
前記第1の基板の材質としては、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、SiO2膜被覆シリコン基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリアミド、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエーテルケトン、ポリフッ化エチレン等のポリマー基板;鉄、タングステン等の金属基板、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シリコン基板、金属基板が特に好ましい。
【0017】
前記第1の基板としては、特に制限はなく、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記第1の基板の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、100μm以上が好ましく、500μm以上がより好ましい。
【0018】
−有機溶媒−
前記有機溶媒としては、ポリマー溶液上に水滴粒子を形成させポリマー溶液塗布膜中に水滴の一部を入り込ませるために非水溶性溶媒であることが好ましい。また、前記有機溶媒としては、ポリマー溶液塗布膜上に形成された水滴を避けて先に蒸発させる必要があることから、水の沸点より低い沸点であることが好ましい。
【0019】
前記非水溶性溶媒としては、例えば、ハロゲン系有機溶剤、芳香族炭化水素、エステル類、非水溶性ケトン類、エーテル類、二硫化炭素などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ハロゲン系有機溶剤としては、例えばクロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられる。
前記芳香族炭化水素としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
前記エステル類としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
前記非水溶性ケトン類としては、例えばメチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
前記エーテル類としては、例えばジエチルエーテルなどが挙げられる。
【0020】
−疎水性ポリマー−
前記疎水性ポリマーとしては、前記有機溶媒に溶解すれば特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル重合ポリマー、ポリエステル、ポリラクトン、ポリアミド又はポリイミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリシロキサン誘導体、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記ビニル重合ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロペン、ポリビニルエーテル、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0022】
前記ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸などが挙げられる。
前記ポリラクトンとしては、例えば、ポリカプロラクトンなどが挙げられる。
前記ポリアミドとしては、例えば、ナイロンやポリアミド酸などが挙げられる。
【0023】
前記疎水性ポリマーを有機溶媒で溶解したポリマー膜を用いて複数の凹部を形成させる場合、前記ポリマー溶液における前記疎水性ポリマーの濃度としては、0.01質量%〜30質量%が好ましく、0.02質量%〜10質量%がより好ましく、0.05質量%〜5質量%が更に好ましい。
前記ポリマー濃度が、0.01質量%未満であると、得られる膜の力学強度が不足したり、細孔のサイズや配列が乱れてしまったりするなどの障害が生じることがあり、30質量%を超えると、凹部が得られにくくなることがある。
【0024】
−両親媒性化合物−
前記両親媒性化合物は、親水性であるとともに親油性でもある物質であり、具体的には、親水基と疎水基をもつ化合物である。前記両親媒性化合物としては、市販される多くの界面活性剤のようなモノマーの他に、二量体、三量体等のオリゴマー、ポリマーを用いることができ、前記疎水性ポリマーに対する分散状態を制御するにはポリマーを用いることが好ましい。
【0025】
前記ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリルアミドを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基、親水性側鎖としてカルボキシル基を併せ持つ両親媒性化合物、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマーなどが挙げられる。
【0026】
前記ポリマーの中でも、疎水性側鎖の親水性側鎖の交互重合体よりも、疎水性溶媒への溶解性に影響しない範囲で疎水性側鎖と親水性側鎖がブロックを形成しているブロックポリマーであることが好ましい。
【0027】
前記疎水性側鎖としては、アルキレン基、フェニレン基等の非極性直鎖状基であり、エステル基、アミド基等の連結基を除いて、末端まで極性基やイオン性解離基などの親水性基を分岐しない構造であることが好ましい。また、前記疎水性側鎖としては、例えば、アルキレン基を用いる場合には5つ以上のメチレンユニットからなることが好ましい。
前記親水性側鎖は、アルキレン基等の連結部分を介して末端に極性基やイオン性解離基、又はオキシエチレン基などの親水性部分を有する構造であることが好ましい。
【0028】
前記疎水性側鎖と前記親水性側鎖との比率としては、その大きさや非極性、極性の強さ、疎水性有機溶媒の疎水性の強さなどに応じて異なり一概には規定できないが、ユニット比(親水基:疎水基)が、0.1:9.9〜4.5:5.5であることが好ましい。前記ユニット比(親水基:疎水基)の親水基比が0.1未満であると、凹部のサイズが不均一となることがあり、4.5を超えると、疎水性有機溶媒に溶解せず析出するという問題がある。
【0029】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性化合物の数平均分子量(Mn)としては、1,000〜10,000,000が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。前記数平均分子量が1,000未満であると、材料が脆くなり取り扱い性が損なわれることがあり、10,000,000を超えると、疎水性溶媒に溶解しにくいという問題が生じることがある。
【0030】
前記疎水性ポリマーと前記両親媒性化合物との質量比率(疎水性ポリマー:両親媒性化合物)は、99:1〜50:50が好ましく、90:10〜80:20がより好ましい。
前記質量比率が、50:50よりも前記疎水性ポリマーの比率が小さくなると、膜の安定性、特に力学的な安定性が十分に得られなくなることがあり、99:1よりも前記疎水性ポリマーの比率が大きくなると、均一に分散した凹部が得られなくなることがある。
【0031】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性化合物としては、得られる膜の機械的強度の点で分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)ポリマーであることが好ましい。また、前記疎水性ポリマー及び/又は前記両親媒性化合物とともに、重合性の多官能モノマーを配合し、この配合物により複数の凹部を形成させたポリマー溶液塗布膜を形成した後、熱硬化法、紫外線硬化法、電子線硬化法等の公知の方法によって硬化処理を施すことも好ましい。
【0032】
前記多官能モノマーとしては、反応性の点から、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
前記多官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジペンタエリスリトールペンタアクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン付加物へキサアクリレート、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマ−、N−ビニル−2−ピロリドン、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、又はこれらの変性物などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記疎水性ポリマーと前記両親媒性化合物とを有機溶媒で溶解したポリマー膜を用いて複数の凹部を形成させる場合、前記ポリマー溶液における前記疎水性ポリマーと前記両親媒性化合物の両者を合わせたポリマー濃度(固形分)としては、0.01質量%〜30質量%が好ましく、0.05質量%〜5質量%がより好ましい。
前記ポリマー濃度が、0.01質量%未満であると、得られる膜の力学強度が不足したり、生産性が低くなるなどの問題が生じることがあり、30質量%を超えると、凹部が得られにくくなることがある。
【0034】
−ポリマー溶液の塗布−
前記ポリマー溶液を前記第1の基板上に塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばスピンコート法、ディップ法、インクジェット塗布法、スライド法、エクストリュージョン法、バー法、グラビア法などが挙げられる。
【0035】
前記ポリマー溶液を前記第1の基板上に塗布することで形成された前記ポリマー溶液塗布膜のWet厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、5μm〜2,000μmが好ましく、10μm〜1,000μmがより好ましく、20μm〜500μmが更に好ましい。
前記Wet厚みが、5μm未満であると、均一に塗布膜を形成することが困難となることがあり、2,000μmを超えると、生産性が低くなることがある。
前記Wet膜の厚みは、例えばレーザー変位計(キーエンス社製、LTシリーズ又はSIシリーズ)等により測定することができる。
また、ポリマー塗布膜のDry厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05μm〜100μmであることが好ましい。
【0036】
<水滴形成工程>
前記水滴形成工程は、前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴形成雰囲気を供給して、該ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成する工程である。
【0037】
前記水滴形成工程では、前記ポリマー溶液塗布膜上に結露させるように第1の基板の温度を制御する。第1の基板の温度制御に加え、送風ダクトからの空気の条件である温度と湿度と風速との制御を加えることがより好ましい。第1の基板の温度をTS、雰囲気の露点をTDとするときに、0℃<TD−TSの条件を満たすように、第1の基板の温度、または第1の基板の温度と送風ダクトからの空気の条件とを制御することがより好ましく、3℃≦TD−TS≦30℃の条件とすることが更に好ましい。TD−TSが1℃以下であると、水滴が発生しにくいからである。このように、第1の基板の温度を変えて結露を開始したり、結露を続けることにより、ポリマー溶液塗布膜上における水滴の発生のタイミング及び発生初期における水滴の大きさを従来の方法よりも精緻に制御することができる。
【0038】
ポリマー溶液塗布膜の表面に、前記第1の基板の表面温度Tsと水滴形成雰囲気の露点Tdとが、次式、Ts<Tdとなるような水滴形成雰囲気を供給することが好ましい。
前記水滴形成雰囲気中での水滴の露点Td(℃)としては、ポリマー溶液塗布膜の表面温度TL(℃)に対して0℃≦(Td−TL)℃が好ましく、0℃≦(Td−TL)℃≦80℃がより好ましく、5℃〜60℃が更に好ましく、10℃〜40℃が特に好ましい。
前記(Td−TL)℃が、0℃未満であると、水滴が生じ難くなることがあり、80℃を超えると、水滴と乾燥とが急峻となり、凹部の孔寸法制御やその均一化することが困難となることがある。
【0039】
前記水滴形成雰囲気の温度としては、10℃〜50℃が好ましく、15℃〜35℃がより好ましい。
前記温度が、10℃未満であると、結露しすぎてしまい孔のサイズが不均一になることがあり、50℃を超えると、結露による水滴形成が困難になることがある。
ここで、前記温度は、例えばクリモマスター風速計(KANOMAX社製、Model6543−01)を使用して測定することができる。
【0040】
ポリマー溶液塗布膜の表面に、前記第1の基板の表面温度Tsと水滴形成雰囲気の露点Tdとが、次式、Ts<Tdとなるような水滴形成雰囲気を供給することが、均一な水滴形成の点で好ましい。
前記第1の基板の表面温度Tsとしては、0℃〜40℃が好ましく、0℃〜30℃がより好ましく、0℃〜20℃が特に好ましい。
前記水滴形成雰囲気中での水滴の露点Td(℃)としては、ポリマー溶液塗布膜の表面温度TL(℃)に対して0℃≦(Td−TL)℃が好ましく、0℃≦(Td−TL)℃≦80℃がより好ましく、2℃〜60℃が更に好ましく、3℃〜30℃が特に好ましい。
前記(Td−TL)℃が、0℃未満であると、水滴が生じ難くなることがあり、80℃を超えると、水滴と乾燥とが急峻となり、凹部の孔寸法制御やその均一化することが困難となることがある。なお、前記水滴の露点Tdは、クリモマスター風速計(KANOMAX社製、Model6543−01)を使用して測定した平均値である。
【0041】
前記ポリマー溶液塗布膜の表面温度TL(℃)としては、0℃〜40℃が好ましく、0℃〜30℃がより好ましく、0℃〜20℃が更に好ましい。
前記表面温度TLが、30℃を超えると、結露による水滴形成が困難になることがある。なお、ポリマー溶液塗布膜の表面温度TLは、デジタル放射温度センサ(キーエンス社製、FT−H30)を使用して測定した平均値である。
【0042】
前記水滴形成雰囲気下に前記第1の基板を置く時間としては、特に限定されず、適宜変更することができるが、1秒〜3,000秒が好ましく、10秒〜2,000秒がより好ましく、20秒〜1,500秒が特に好ましい。
前記時間が、1秒未満であると、結露による水滴が形成されず凹部が形成されないことがあり、3,000秒を超えると、凹部のサイズが不均一となったり、生産性が劣ることがある。
【0043】
前記第1の基板の載置方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリマー溶液塗布膜上に水滴を形成させる必要があるので、ポリマー溶液塗布膜が上面となるように載置することが好ましい。
【0044】
前記水滴形成雰囲気下とする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結露用に調整された風の送風、などの方法が挙げられる。これらの中でも、結露の水滴形成による凹部の形成と溶媒の乾燥による凹形状の固定化両立の観点で結露用に調整された風をポリマー溶液塗布膜上に送風することが特に好ましい。
【0045】
前記風の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10℃〜100℃が好ましく、15℃〜60℃がより好ましく、20℃〜40℃が特に好ましい。
前記風の温度が、10℃未満であると、結露による水滴の形成が不均一となってしまうことがあり、100℃を超えると、ポリマー溶液塗布膜内に水滴が生じる前に、水蒸気として揮発してしまうことがある。
【0046】
前記風の送風方向としては、前記第1の基板の表面に沿って送風(平行流(並流))することが好ましい。
【0047】
前記風の送風速度(基板を移動させながら結露させるときは相対速度)としては、0.05m/s〜20m/sが好ましく、0.1m/s〜10m/sがより好ましく、0.2m/s〜5m/sが更に好ましい。
前記送風速度が、0.05m/s未満であると、水滴が、ポリマー溶液塗布膜中で充分に成長しないことがあり、20m/sを超えると、ポリマー溶液塗布膜表面に乱れが生じたり、水滴が十分に形成されないことがある。
【0048】
ここで、前記水滴形成工程では、風中の水分は、ポリマー溶液塗布膜上で結露して水滴(液滴)となる。そして、この水滴を核として水分が結露して水滴を成長させる。
【0049】
<水滴成長工程>
前記水滴成長工程は、前記水滴形成工程にてポリマー溶液塗布膜上で形成した水滴を好ましい大きさに成長させる工程であり、必要に応じて省略することができる。
【0050】
前記水滴を成長させる方法としては、ポリマー溶液塗布膜の表面温度TLと水滴の露点Tdとのいずれか一方を制御することが好ましく、水滴の露点Td(℃)とポリマー溶液塗布膜の表面温度TL(℃)との差(ΔT=Td−TL)が0℃〜20℃(0℃<ΔT<20℃)が好ましい。
前記ΔTが、0℃未満であると、水滴の成長が不十分となり、密な状態に形成されないため、凹部の形状や大きさ及び配列が不均一となることがあり、20℃を超えると、水滴が局所的に多層化、つまり三次元的に形成され、凹部の形状や大きさ及び配列が不均一となることがある。
【0051】
前記水滴の露点Tdとしては、送風口から送風される風の条件を制御することで変化させることができる。前記ΔTを0℃<ΔT<20℃とすることにより、水滴をゆっくり成長させるとともに水滴の配列を促し、均一な水滴を密に形成することができる。
【0052】
<凹部形成工程>
前記凹部形成工程は、前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させて、ポリマー塗布膜に該ポリマー塗布膜表面を基準面として複数の凹部を形成する工程である。
【0053】
前記有機溶媒及び水滴を蒸発させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば乾燥雰囲気下に基板を置く方法、などが挙げられる。前記乾燥雰囲気下にする方法としては、例えば乾燥風を送風する方法、その他減圧乾燥法などが挙げられる。
【0054】
前記水蒸気の露点TD2(℃)とポリマー溶液塗布膜の膜面温度TL(℃)との関係としては、(TL−TD2)℃≧1℃が好ましい。これにより、ポリマー溶液塗布膜の水滴の成長を停止させて、水滴を構成する水分を水蒸気として揮発させることができる。
前記ポリマー溶液塗布膜の表面温度TL(℃)と前記風又は前記乾燥風の露点温度TDn(℃)(nは、1又は2)との関係としては、0℃≦|TDn−TL|≦80℃が好ましい。
前記|TDn−TL|が、80℃を超えると有機溶媒及び水分の少なくともいずれかの急激な揮発を抑制できず、所望の形態の凹部を得ることができないことがある。また、ポリマー溶液塗布膜に不純物が混入すると、凹部の形成を阻害する原因となるので、送風口の塵埃度がクラス1,000以下とすることが好ましい。
【0055】
前記凹部形成工程においては、水滴が形成したポリマー溶液塗布膜中の有機溶媒をまず蒸発させる(溶媒蒸発工程)、塗布溶液中のポリマーが析出してポリマー塗布膜の流動性が低下した後に、水滴を蒸発させる(水滴蒸発工程)。ポリマー塗布膜が固定化される前に、水滴が先に蒸発してなくなってしまうと、凹部は形成されない。
【0056】
−溶媒蒸発工程−
第1の基板の温度を変えることにより、水滴形成工程から溶媒蒸発工程へ移行させる。
前記溶媒蒸発工程の開始では、送風ダクトからの空気の露点が水滴形成工程における露点よりも高くなるように制御する。
前記溶媒蒸発工程では、水滴が完全には蒸発しないように、より好ましくはできるだけ水滴の蒸発を抑えて溶媒だけを蒸発させるようにするように、第1の基板の温度を調節し、加えて送風ダクトからの空気の条件を調節する。
溶媒がポリマー溶液塗布膜から蒸発している間に、個々の水滴は大きく成長するとともにポリマー溶液塗布膜の中に入り込む。
【0057】
溶媒蒸発工程では、0℃<TD−TS≦10℃の条件を満たすように第1の基板の温度を制御することが好ましい。第1の基板の温度制御に加えて、送風ダクトからの空気の条件、即ち温度、湿度、風速を制御することがより好ましい。TD−TSが0℃以下の場合には、水滴の成長が不十分で密な状態に形成せず、孔の形状や大きさ及び多孔フィルムにおける孔の配列が不均一となることがある。また、TD−TSが10℃よりも大きいと、水滴が局所的に厚み方向にも重なる等、孔の形状や大きさ及び多孔フィルムにおける孔の配列が不均一となることがある。
【0058】
−水滴蒸発工程−
次に、第1の基板の温度を変えることにより水滴蒸発工程を開始する。
水滴蒸発工程では、TS>TDの条件となるように第1の基板の温度を制御することがより好ましい。第1の基板の温度制御に加えて、送風ダクトからの送風を実施することがより好ましい。この水滴蒸発工程は、水滴の蒸発を主たる目的としているが、溶媒蒸発工程で蒸発しきれなかった溶媒も蒸発させてもよい。
【0059】
送風ダクトから出される空気の風速は、0.02m/秒以上2m/秒以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.05m/秒以上1.5m/秒以下の範囲であり、最も好ましくは0.1m/秒以上0.5m/秒以下の範囲である。前記風速が0.02m/秒未満であると、水滴が細密に配列して形成されない場合があり、一方、前記風速が2m/秒を超えると、ポリマー溶液塗布膜の露出面が乱れたり、水滴形成工程における結露が充分に進行しなかったりすることがある。
【0060】
前記乾燥風の送風方向としては、前記第1の基板の表面に沿って送風(平行流(並流))することが好ましい。前記乾燥風を向流として送風すると、ポリマー溶液塗布膜の膜面に乱れが生じて凹部の均一分散性が損なわれることがある。
【0061】
前記乾燥風の送風速度としては、0.05m/s〜20m/sが好ましく、0.1m/s〜15m/sがより好ましく、0.5m/s〜10m/sが更に好ましい。
前記送風速度が、0.05m/s未満であると、水滴からの水分の蒸発が充分に進行しないことがあり、生産性にも劣ることがあり、20m/sを超えると、水滴から水分の蒸発が急激に生じて、形成される凹部の形態が乱れることがある。
【0062】
前記乾燥風がポリマー溶液塗布膜に送風されると、有機溶媒がポリマー溶液塗布膜より揮発する。なお、この際にも水滴からも水分が揮発するが、有機溶媒は水滴よりも揮発性が高いので、有機溶媒の揮発速度の方が速い。そのため、水滴は、有機溶媒の揮発に伴い表面張力により略均一の形態となる。更に、乾燥が進行するとポリマー溶液塗布膜の水滴から水分が水蒸気として揮発する。ポリマー溶液塗布膜から水滴が蒸発すると、水滴を形成していた箇所が凹部の各孔となる。前記有機溶媒及び水滴がポリマー溶液塗布膜から完全に蒸発することで、前記第1の基板上に凹部形成膜(ポリマー塗布膜)が形成される。
【0063】
前記乾燥風を送風する方法以外としては、減圧乾燥法により乾燥することも可能である。前記減圧乾燥法を行うことで、有機溶媒と水滴の水分との蒸発速度を調整することが可能となる。これを調整することで、ポリマー溶液塗布膜中に水滴を形成し、有機溶媒を蒸発させつつ水滴を蒸発させ、前記水滴が設けられている位置における凹部の各孔の大きさ、形状などを変化させることができる。
【0064】
また、ポリマー溶液塗布膜の表面から3mm〜20mm程度離れた位置に、ポリマー溶液塗布膜の表面より冷却され表面に溝を有する凝縮器を設けて、凝縮器の表面で水蒸気(揮発有機溶媒も含む)を凝縮させて乾燥させる方法も適用することができる。前記いずれかの乾燥方法を適用することで、ポリマー溶液塗布膜の膜面への動的な影響を少なくして乾燥させることができるため、より平滑な膜面を得ることができる。
【0065】
また、送風機、乾燥機を複数用いたりすることにより、異なる露点条件を設定したり、異なる乾燥温度条件を設定したりすることができる。これら条件を選択することで、各凹部の寸法制御性の向上や均一性の向上を図ることができる。
【0066】
−凹部−
図4に示すように、前記凹部18の隣接する凹部の中心間の平均距離P(以下、ピッチ間隔ともいう)としては、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがより好ましい。
前記ピッチ間隔Pが、0.01μm未満であると、孔径が小さすぎることで後述する凹部の表層の剥離が困難となることがあり、100μmを超えると、製造に時間がかかり過ぎて生産性が低くなったり、凹部が均一に形成されないことがある。なお、ピッチ間隔Pは、図4に示したように、凹部18が形成されているポリマー溶液塗布膜17の表面を上から見たとき、各凹部18の外接円を計測し、隣接する外接円の中心間の平均距離を10点測定した平均値をいう。ここで、前記外接円は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察により測定することができる。
【0067】
前記凹部における凹部の平均高さDとしては、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがより好ましく、0.1μm〜30μmが更に好ましい。
前記平均高さDが、0.01μm未満であると、後述する凹部の表層の剥離が困難となることがあり、100μmを超えると、製造に時間がかかり過ぎて生産性が低くなったり、凹部が均一に形成されないことがある。前記凹部における凹部の平均高さは、形状測定レーザーマイクロスコープ(キーエンス社製、VK−8700)を用いて凹部の高さを測定した平均値である。
【0068】
前記水滴形成工程及び前記凹部形成工程としては、風を送風する送風機を有する結露ゾーン(水滴形成ゾーン)及び乾燥風を送風する送風機を有する乾燥ゾーンに区画されている製造装置で行うことができる。具体的には、ポリマー溶液塗布膜が形成された前記第1の基板を流延ベルトに載置し、基板を結露ゾーンに搬送して前記水滴形成工程が行われる。前記水滴形成工程終了後、乾燥ゾーンに搬送し、前記凹部形成工程が行われる。
【0069】
<第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法>
前記第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法は、前記ポリマー溶液塗布膜形成工程、前記水滴形成工程、及び前記凹部形成工程を含み、以下に説明する第1の突起構造体形成工程、及び第2の基板エッチング工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0070】
<<第1の突起構造体形成工程>>
前記第1の突起構造体形成工程は、前記複数の凹部に接着剤を介して第2の基板を貼り付け、該第2の基板を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、前記第2の基板上に複数の第1の突起構造体を形成する工程である。
【0071】
−第2の基板−
前記第2の基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記第1の基板と同様のものを用いることができる。これらの中でも、シリコン基板、サファイア基板、鉄基板、タングステン基板が特に好ましい。更に用途に応じて太陽電池の受光素子、LEDの発光素子なども用いることができる。
【0072】
−接着剤−
前記接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール系粘着剤、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系、スチレン系粘着剤などが挙げられる。
前記接着剤は、前記複数の凹部と前記第2の基板の間に介在していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、第2の基板表面に塗布する方法、複数の凹部表面に塗布する方法、などが挙げられる。
前記塗布は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばスピンコーター、スリットコーター、ダイコーター、スプレーコーター、バーコーター等を用いる塗布方法などが挙げられる。
【0073】
前記複数の凹部に接着剤を介して第2の基板を貼り付け、該第2の基板を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離することにより、前記第2の基板上に複数の第1の突起構造体が形成される。
前記第1の突起構造体は、ハニカム構造体における力学的強度の弱いくびれた部分(中心部分)で分割された表面部分の突起構造に起因する。
前記第1の突起構造体における突起の高さとしては、50nm〜10,000nmが好ましく、100nm〜5,000nmがより好ましい。
前記第1の突起構造体における突起間隔としては、50nm〜10,000nmが好ましく、100nm〜5,000nmがより好ましい。ここで、前記突起間隔とは、隣接する第1の突起構造体間の最短距離を表す。
前記第1の突起構造体における突起の比(高さ/突起間隔)が、0.01以上100以下であることが好ましい。
前記第1の突起構造体における突起形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、略円錐乃至略角錐形状であることが好ましい。
ここで、前記第1の突起構造体の突起高さ、突起間隔、突起形状などは、例えば、電解放出走査型電子顕微鏡、などにより測定することができる。
【0074】
<<第2の基板エッチング工程>>
前記第2の基板エッチング工程は、前記複数の第1の突起構造体をマスクとして前記第2の基板のエッチングを行う工程である。
【0075】
前記エッチングとしては、ドライエッチング及びウエットエッチングのいずれかであることが好ましい。
【0076】
−ドライエッチング−
前記ドライエッチングとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチングなどがある。エッチングガスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ハロゲンを含む化合物が用いられ、例えばSF6、CF4、CHF3、XeF2が挙げられる。
ドライエッチングにおいては、用いられるガス、処理時間などによって対象物の深さや形状を変化させることができる。
【0077】
−ウエットエッチング−
前記ウエットエッチングとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばシリコン(Si)基板をエッチングするにはフッ酸と硝酸を混合した液を作製し、この溶液中にシリコン基板を浸漬する方法によって処理することができる。また、浸漬時間によってエッチングにより処理される深さなどを制御可能である。
【0078】
前記第1の突起構造体をマスクとしてエッチングを行うことにより、エッチングの効率が向上し、エッチングの照射角度をふることで、異方性を出すことが可能となる。また、第1の突起構造体は、通常のレジストパターンとは形状が異なるの、露出部分の面積が同じでも、レジストパターンの体積が少ないので、エッチング後のパターンの除去が容易である。
【0079】
<第2の形態の凹凸構造体の製造方法>
前記第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法は、前記ポリマー溶液塗布膜形成工程、前記水滴形成工程、前記凹部形成工程、及び前記第1の突起構造体形成工程を含み、以下に説明する金属膜形成工程、第2の基板エッチング工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0080】
<<金属膜形成工程>>
前記金属膜形成工程は、前記複数の第1の突起構造体が形成された第2の基板上に金属膜を形成する工程である。
【0081】
前記金属膜における金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば金、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、チタン、タングステン、クロム、又はこれらの合金などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記金属膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばメッキ法、印刷法、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、電鋳法などが挙げられる。これらの中でも、真空蒸着法が特に好ましい。
前記金属膜の厚みとしては、特に制限はなく、材料等により適宜選択可能であるが、1nm〜1,000nmが好ましく、2nm〜100nmがより好ましい。
【0082】
<第2の基板エッチング工程>
前記第2の基板エッチング工程は、前記第2の基板から前記複数の第1の突起構造体を除去して、該第2の基板上に残された金属膜をマスクとして第2の基板のエッチングを行う工程である。この金属膜マスクによるエッチングでは、第1の実施形態の突起構造体マスクによるエッチングとポジネガが反転したパターンが得られる。
【0083】
−第2の基板から第1の突起構造体の除去−
前記第2の基板から第1の突起構造体を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリマー塗布膜が溶解可能な溶剤中に浸漬する方法、溶剤中に浸漬して超音波処理を行う方法、酸素プラズマ等により除去する方法、などが挙げられる。
前記ポリマー塗布膜が溶解可能な溶剤としては、使用するポリマーに応じて異なり一概には規定できないが、例えばクロロホルム、塩化メチレン、硝酸などが挙げられる。
【0084】
前記第2の基板から第1の突起構造体を除去すると、第2の基板上には金属膜のみが残るので、該金属膜をマスクとして、第2の基板をエッチングすることにより、微細凹凸構造体を形成することができる。
前記第2の基板エッチング工程におけるエッチングの種類、条件、処理方法などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上記第1の形態の第2の基板エッチング工程と同様である。
前記第2の形態の製造方法により製造される微細凹凸構造体は、第1の形態の製造方法により製造される微細凹凸構造体とポジネガが反転したものであり、図2Iに示すような形状の微細凹凸構造体が得られる。
【0085】
<第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法>
前記第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法は、前記ポリマー溶液塗布膜形成工程と、前記水滴形成工程と、前記凹部形成工程と、以下に説明する第2の突起構造体形成工程と、第1の基板エッチング工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0086】
<<第2の突起構造体形成工程>>
前記第2の突起構造体形成工程は、前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離して、前記第1の基板上に複数の第2の突起構造体を形成する工程である。
【0087】
前記第2の突起構造体は、いわゆるピラー構造体とも呼ばれ、該ピラー構造体を有するフィルムは、前記ハニカム状多孔質フィルムを厚み方向に分割することによって得られる。分割方法としては、例えば、ハニカム状多孔質フィルムの上面に粘着部材を貼り付けた後、厚み方向に引き離す方法、粘着性を有するロール上に搬送させ、ハニカム構造体の両面を二つに切り離す、静電印加によりロールに接着搬送させながら、ハニカム構造体の両面を二つに切り離す、接着剤を塗布した支持体を重ね合わせて切り離す方法、前記第1の形態の第1の突起構造体形成工程と同様に、複数の凹部に接着剤を介して第2の基板を貼り付け、該第2の基板を剥がして複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離する方法、などが挙げられる。
前記粘着部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セロハンテープ等の粘着テープなどが挙げられる。前記ピラー構造体は、前記ハニカム構造体における力学的強度の弱いくびれた部分(ほぼ中心部分)で二分割された構造を有する。
【0088】
前記第2の突起構造体における突起の高さとしては、50nm〜10,000nmが好ましく、100nm〜5,000nmがより好ましい。
前記第2の突起構造体における突起間隔としては、50nm〜10,000nmが好ましく、100nm〜5,000nmがより好ましい。ここで、前記突起間隔とは、隣接する第2の突起構造体間の最短距離を表す。
前記第2の突起構造体における突起の比(高さ/突起間隔)が、0.01以上100以下であることが好ましい。
前記第2の突起構造体における突起形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、略円錐乃至略角錐形状であることが好ましい。
ここで、前記第2の突起構造体の突起高さ、突起間隔、突起形状などは、例えば、電解放出走査型電子顕微鏡、などにより測定することができる。
【0089】
<<第1の基板エッチング工程>>
前記複数の第2の突起構造体をマスクとして前記第1の基板のエッチングを行う工程である。
前記第1の基板エッチング工程におけるエッチングの種類、条件、処理方法などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上記第1の形態の第2の基板エッチング工程と同様である。
【0090】
前記第3の形態の製造方法により製造される微細凹凸構造体は、図3Hに示すように、丸みを帯びた底部を有する円柱状パターンの微細凹凸構造体が得られる。
【0091】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、洗浄工程、研磨工程などを適宜行うことができ、これらの工程は、必要に応じて適宜省略することもできる。
【0092】
ここで、図1A〜図1Iは、本発明の第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法の一例を示す工程図である。
図1Aは、ポリマー溶液塗布膜形成工程を示し、第1の基板15上に有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布し、ポリマー溶液塗布膜17を形成する。
次に、図1Bは、水滴形成工程を示し、前記ポリマー溶液塗布膜17の表面に水滴形成雰囲気41を供給し、該ポリマー溶液塗布膜17の表面に水滴52を形成する。
次に、図1Cは、凹部形成工程において、乾燥風42を供給し、有機溶媒及び水滴52を蒸発させて、ポリマー溶液塗布膜をポリマー塗布膜とする。
次に、図1Dに示すように、前記ポリマー塗布膜に該ポリマー塗布膜表面を基準面として複数の凹部18を形成する。
次に、図1Eに示すように、前記複数の凹部18に接着剤層28を介して第2の基板27を貼り付ける。
次に、図1Fに示すように、第2の基板27を剥がして前記複数の凹部18の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、前記第2の基板27上に複数の第1の突起構造体29を形成する。
次に、図1Gに示すように、前記複数の第1の突起構造体29をマスクとして前記第2の基板27のエッチングを行う。
次に、図1Hに示すように、シャープな形状の微細凹凸構造体100が形成される。
そして、エッチングを更に続けると、図1Iに示すような棘棘(とげとげ)を有する針状の微細凹凸構造体100が得られる。
【0093】
図2A〜図2Iは、本発明の第2の形態の微細凹凸構造体の製造方法の一例を示す工程図である。
図2A〜図2Fは、前記第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法と同じ工程であるので、これらの説明は省略する。
次に、図2Gに示すように、複数の第1の突起構造体29が形成された第2の基板27上に金属膜31を形成する。
次に、図2Hに示すように、前記第2の基板27から前記複数の第1の突起構造体29を除去し、該第2の基板27上に残された金属膜31をマスクとして第2の基板27のエッチングを行う。
そして、図2Iに示すように、微細凹凸構造体101が形成される。
【0094】
図3A〜図3Hは、本発明の第3の形態の微細凹凸構造体の製造方法の一例を示す工程図である。
図3A〜図3Eは、前記第1の形態の微細凹凸構造体の製造方法と同じ工程であるので、これらの説明は省略する。なお、図3Eにおいては、接着剤層を有する第2の基板の代わりに粘着テープを用いてもよい。
次に、図3Fに示すように、前記複数の凹部18の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離して、前記第1の基板15上に複数の第2の突起構造体32を形成する。
次に、図3Gに示すように、前記複数の第2の突起構造体32をマスクとして前記第1の基板15のエッチングを行う。
そして、図3Hに示すように、丸みを帯びた円柱状の微細凹凸構造体102が形成される。
【0095】
(微細凹凸構造体)
本発明の微細凹凸構造体は、本発明の微細凹凸構造体の製造方法により製造されるものである。
前記微細な凹凸構造体は、エッチングにより形成される形状が、通常のレジストパターンを用いた場合と異なり、無反射に有利なプリズム構造体様である。
また、反射防止のためには、光を取り込むための凹凸が必要となるが、エッチングの条件によっては、棘棘(とげとげ)を有する針状の微細凹凸構造体を形成することができ、より低い反射率とすることができる。
凹凸の配置は、規則的ではなく、微妙なゆらぎがあり、これにより干渉を防ぐことができるというメリットもある。
【0096】
前記微細凹凸構造体は、その反射率が10.0%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。前記反射率が、10.0%を超えると、反射防止性能が不十分になることがある。
ここで、前記反射率は、例えば紫外可視近赤外分光光度計(Lambda900、PerkinElmer社製)により測定することができる。
【0097】
前記微細凹凸構造体は、その接触角が120°以上であることが好ましく、150°以上であることがより好ましい。
ここで、前記接触角は、例えば協和界面科学株式会社製DropMasterシリーズにより測定することができる。
【0098】
−用途−
本発明の微細凹凸構造体の製造方法及び該製造方法により製造された微細凹凸構造体は、低い反射率及び優れた撥水性の少なくともいずれかを有しているので、例えば光学部材(プリズム構造体)、LEDの光取り出し構造、太陽電池の無反射構造などに好適に用いることができる。
また、本発明の微細凹凸構造体は、形成されるパターンの形状を円錐形状とすることができ、雌型とした場合には抜きやすいので、ナノインプリントにも好適である。
【実施例】
【0099】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0100】
(実施例1)
−ハニカム状多孔質膜の作製−
ハニカム状多孔質膜の作製は、文献(T.Nishikawa, R.Ookura, J.Nishida, K.Arai, J.Hayashi, N.Kurono, T.Sawadaishi, M.Hara, M.Shimomura, Langmuir,2002,18(15),5734.)に従った。
鋳型となるハニカム状多孔質膜の作製には、ポリスチレン(PSt、Aldrich社製、重量平均分子量(Mw)=280,000)と、下記構造式で表されるCap化合物(ドデシルアクリルアミド−ω−カルボキシヘキシルアクリルアミド)とのを質量比で10:1となるように混合したクロロホルム溶液を、第1の基板上(ガラス、40cm×11cm)に約30mL滴下し、温度25℃、露点20℃の空気を風速0.3m/sで吹き付けた。溶液は次第に白濁し、干渉色が観察され、完全に溶媒、水滴が蒸発した後に走査型電子顕微鏡(SEM)で構造を観察すると、図5に示すように、ハニカム状の多孔質膜が形成されているのが観察された。
【化2】
この図5の結果から、膜の孔は膜内でお互いが連結しており、膜の中心を通る平面に関して上下がほぼ対象となっており、三次元的に結合した構造を持っていた。特開2004−330330号公報の記載に基づき、孔径はキャスト量を変えることによって、100nm〜50μmまで調節することが可能であった。
【0101】
−シリコン基板上への突起構造体マスクの作製−
作製したハニカム状多孔質膜をUVオゾン洗浄装置で5分間処理し、ポリビニルアルコール(PVA)の1質量%水溶液を滴下し、1,000rpmで120秒〜150秒スピンコートした。スピンコートしたサンプルはUVオゾン洗浄装置で1時間表面洗浄した第2の基板としてのシリコン基板上に貼り付けて剥がしとり、シリコン基板上に突起構造体膜が残るようにした。次いで、脱イオン水で洗浄し、ドライヤーで乾燥させ、シリコン基板上の余分なPVAを除去した。以上により、図6及びその斜め方向から見た図7に示す突起構造体マスクを作製した。
【0102】
−突起構造体膜マスクを用いたシリコン基板のエッチング−
作製した突起構造体膜をマスクとしてシリコンのエッチングを行った。シリコンのエッチングには誘導結合プラズマエッチング装置(ICP;dry etching equipment、SPM−200、住友精密工業株式会社製)を用いて、エッチングガスである六フッ化硫黄(SF6)と保護ガスであるパーフルオロシクロブタン(C4F8)を用いて行った。このとき、エッチング工程としてSF6とC4F8をそれぞれ50sccmと90sccmで5.5秒間流してエッチングを行った。また、パッシベーション工程としてC4F8を140sccmで5.0秒間流す工程を行った。上記2工程を交互に繰り返し、合計で10分間エッチングした。エッチング後のシリコン基板をアセトンの50質量%水溶液に浸漬させ、30分間超音波洗浄処理することで突起構造体マスクを除去した。突起構造体マスクを除去後のシリコン基板を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると、図8及びその斜め方向から見た図9に示すように、マスクに形成されていた周期的な空孔と対応する微細凹凸構造体が観察された。
図10Aは、合計で10分間エッチングして、得られた微細凹凸構造体を示す。
図10Bは、更にエッチングを繰り返し、合計で20分間エッチングして、得られた微細凹凸構造体を示す。
図10Cは、更にエッチングを繰り返し、合計で30分間エッチングして、得られた微細凹凸構造体を示す。
【0103】
作製した図10Cに示すシリコン微細凹凸構造体について、協和界面科学株式会社製DropMasterシリーズにより、接触角を測定したところ、図11に示すように、接触角は172°であり、超撥水性を示すことが分かった。
また、作製した図10A〜図10Cに示すシリコン微細凹凸構造体について、紫外可視近赤外分光光度計(Lambda900、PerkinElmer社製)により、反射率を測定したところ、図12A及び12Bに示すように、反射率が10.0%以下であり、無反射特性を示した。
【0104】
(実施例2)
−鉄基板のウエットエッチング−
実施例1と同様にして、第2の基板としての鉄基板(3cm角)上に突起構造体マスクを作製後、硝酸0.6mLとエタノール9.4mLの混合溶液に5秒間浸漬し、その後エタノールで洗浄、ドライヤーで乾燥させた。また、エッチング溶液に浸漬し、エタノール洗浄、ドライヤーで乾燥の一連の行程を繰り返すことで、エッチングの深さを調節した。エッチング後はクロロホルムに浸漬し、超音波処理をすることで、残った突起構造体マスクを除去した。光学顕微鏡で作製したサンプルの表面を観察したところ、周期的に穴の開いた鉄のパターン基板が作製されている様子が観察された(図13参照)。
【0105】
(実施例3)
−金ドットパターンの形成−
実施例1と同様の方法により第2の基板としてのシリコン基板上に突起構造体マスクを作製後、該突起構造体マスク表面に、スパッタ法により金をスパッタした(5mV、3分45秒)。金をスパッタした後、クロロホルムに浸漬して超音波をかけた。次に、硝酸中に浸漬することで完全に突起構造体マスクを除去した。突起構造体マスク除去後には金のドットパターンが得られた。
【0106】
−シリコン基板のエッチング−
作製した金のドットパターンをマスクとしてシリコンのエッチングを行った。シリコンのエッチングには誘導結合プラズマエッチング装置(ICP dry etching equipment、SPM−200、住友精密工業株式会社製)を用いて、エッチングガスである六フッ化硫黄(SF6)と保護ガスであるパーフルオロシクロブタン(C4F8)を用いて行った。このとき、エッチング工程としてSF6とC4F8をそれぞれ50sccmと90sccmで5.5秒間流してエッチングを行った。また、パッシベーションの工程としてC4F8を140sccmで5.0秒間流す工程を行った。上記2工程を交互に繰り返し、合計で10分間エッチングした。エッチング後には図14に示すような周期的にドットが並んだ微細凹凸構造体が形成されていた。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の微細凹凸構造体の製造方法及び該製造方法により製造された微細凹凸構造体は、低い反射率及び優れた撥水性の少なくともいずれかを有しているので、例えば光学部材(プリズム構造体)、LEDの光取り出し構造、太陽電池の無反射構造などに好適に用いることができる。
また、本発明の微細凹凸構造体は、形成されるパターンの形状を円錐形状とすることができ、雌型とした場合には抜きやすいので、ナノインプリントにも好適である。
【符号の説明】
【0108】
15 第1の基板
17 ポリマー溶液塗布膜
18 凹部
27 第2の基板
28 接着剤層
29 第1の突起構造体
31 金属膜
32 第2の突起構造体
41 風
42 乾燥風
100、101、102 微細凹凸構造体
P 間隔(ピッチ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、
前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴形成雰囲気を供給して、該ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成する水滴形成工程と、
前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させて、ポリマー塗布膜に該ポリマー塗布膜表面を基準面として複数の凹部を形成する凹部形成工程と、
前記複数の凹部に接着剤を介して第2の基板を貼り付け、該第2の基板を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、前記第2の基板上に複数の第1の突起構造体を形成する第1の突起構造体形成工程と、
前記複数の第1の突起構造体をマスクとして前記第2の基板のエッチングを行う第2の基板エッチング工程と、
を含むことを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法。
【請求項2】
第1の基板上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、
前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴形成雰囲気を供給して、該ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成する水滴形成工程と、
前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させて、ポリマー塗布膜に該ポリマー塗布膜表面を基準面として複数の凹部を形成する凹部形成工程と、
前記複数の凹部に接着剤を介して第2の基板を貼り付け、該第2の基板を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、前記第2の基板上に複数の第1の突起構造体を形成する第1の突起構造体形成工程と、
前記複数の第1の突起構造体が形成された第2の基板上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記第2の基板から前記複数の第1の突起構造体を除去して、該第2の基板上に残された金属膜をマスクとして第2の基板のエッチングを行う第2の基板エッチング工程と、
を含むことを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法。
【請求項3】
第1の基板上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、
前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴形成雰囲気を供給して、該ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成する水滴形成工程と、
前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させて、ポリマー塗布膜に該ポリマー塗布膜表面を基準面として複数の凹部を形成する凹部形成工程と、
前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離して、前記第1の基板上に複数の第2の突起構造体を形成する第2の突起構造体形成工程と、
前記複数の第2の突起構造体をマスクとして前記第1の基板のエッチングを行う第1の基板エッチング工程と、
を含むことを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法。
【請求項4】
エッチングがドライエッチング及びウエットエッチングのいずれかである請求項1から3のいずれかに記載の微細凹凸構造体の製造方法。
【請求項5】
水滴形成工程がポリマー溶液塗布膜中の固形分が0.01質量%〜30質量%の状態で行われる請求項1から4のいずれかに記載の微細凹凸構造体の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の微細凹凸構造体の製造方法により製造されたことを特徴とする微細凹凸構造体。
【請求項7】
反射率が10.0%以下である請求項6に記載の微細凹凸構造体。
【請求項8】
接触角が120°以上である請求項6から7のいずれかに記載の微細凹凸構造体。
【請求項1】
第1の基板上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、
前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴形成雰囲気を供給して、該ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成する水滴形成工程と、
前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させて、ポリマー塗布膜に該ポリマー塗布膜表面を基準面として複数の凹部を形成する凹部形成工程と、
前記複数の凹部に接着剤を介して第2の基板を貼り付け、該第2の基板を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、前記第2の基板上に複数の第1の突起構造体を形成する第1の突起構造体形成工程と、
前記複数の第1の突起構造体をマスクとして前記第2の基板のエッチングを行う第2の基板エッチング工程と、
を含むことを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法。
【請求項2】
第1の基板上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、
前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴形成雰囲気を供給して、該ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成する水滴形成工程と、
前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させて、ポリマー塗布膜に該ポリマー塗布膜表面を基準面として複数の凹部を形成する凹部形成工程と、
前記複数の凹部に接着剤を介して第2の基板を貼り付け、該第2の基板を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、前記第2の基板上に複数の第1の突起構造体を形成する第1の突起構造体形成工程と、
前記複数の第1の突起構造体が形成された第2の基板上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記第2の基板から前記複数の第1の突起構造体を除去して、該第2の基板上に残された金属膜をマスクとして第2の基板のエッチングを行う第2の基板エッチング工程と、
を含むことを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法。
【請求項3】
第1の基板上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、
前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴形成雰囲気を供給して、該ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成する水滴形成工程と、
前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させて、ポリマー塗布膜に該ポリマー塗布膜表面を基準面として複数の凹部を形成する凹部形成工程と、
前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離して、前記第1の基板上に複数の第2の突起構造体を形成する第2の突起構造体形成工程と、
前記複数の第2の突起構造体をマスクとして前記第1の基板のエッチングを行う第1の基板エッチング工程と、
を含むことを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法。
【請求項4】
エッチングがドライエッチング及びウエットエッチングのいずれかである請求項1から3のいずれかに記載の微細凹凸構造体の製造方法。
【請求項5】
水滴形成工程がポリマー溶液塗布膜中の固形分が0.01質量%〜30質量%の状態で行われる請求項1から4のいずれかに記載の微細凹凸構造体の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の微細凹凸構造体の製造方法により製造されたことを特徴とする微細凹凸構造体。
【請求項7】
反射率が10.0%以下である請求項6に記載の微細凹凸構造体。
【請求項8】
接触角が120°以上である請求項6から7のいずれかに記載の微細凹凸構造体。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−173335(P2011−173335A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39369(P2010−39369)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年8月25日 社団法人 日本化学会 コロイドおよび界面化学部会発行の「第62回 コロイドおよび界面化学討論会 講演要旨集」に発表
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年8月25日 社団法人 日本化学会 コロイドおよび界面化学部会発行の「第62回 コロイドおよび界面化学討論会 講演要旨集」に発表
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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