微細加工集積DNA分析システム
【課題】
【解決手段】ゲノム分析のための方法および装置が提供されている。マイクロ流体分配流路を備える微細加工構造は、配列決定テンプレートの複数の複製物を有するマイクロリアクタ要素を微細加工熱循環チャンバに分配するよう構成されている。マイクロリアクタ要素は、配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロキャリア要素を含んでよい。マイクロキャリア要素は、マイクロスフィアを含んでよい。1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証するために、熱循環チャンバの出口ポートに配置された自動弁、光学スキャナ、または、タイミング構成を用いてよく、熱循環チャンバ内では、熱循環伸長断片が生成される。伸長産物は、集積オリゴヌクレオチドゲル捕捉チャンバで、捕捉、精製、および、濃縮される。精製された伸長断片は、微細加工成分分離装置を用いて分析される。微細加工構造は、DNAまたはRNAに関する配列決定やその他の遺伝分析を実行する処理で用いられてよい。
【解決手段】ゲノム分析のための方法および装置が提供されている。マイクロ流体分配流路を備える微細加工構造は、配列決定テンプレートの複数の複製物を有するマイクロリアクタ要素を微細加工熱循環チャンバに分配するよう構成されている。マイクロリアクタ要素は、配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロキャリア要素を含んでよい。マイクロキャリア要素は、マイクロスフィアを含んでよい。1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証するために、熱循環チャンバの出口ポートに配置された自動弁、光学スキャナ、または、タイミング構成を用いてよく、熱循環チャンバ内では、熱循環伸長断片が生成される。伸長産物は、集積オリゴヌクレオチドゲル捕捉チャンバで、捕捉、精製、および、濃縮される。精製された伸長断片は、微細加工成分分離装置を用いて分析される。微細加工構造は、DNAまたはRNAに関する配列決定やその他の遺伝分析を実行する処理で用いられてよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の説明]
本願は、米国特許法第119条(e)に従って、「MICROBEAD INTEGRATED DNA ANALYSIS SYSTEM(MINDS)」と題され、2004年6月1日に出願された米国特許仮出願第60/576,102号(代理人整理番号UCALP054P)からの優先権を主張するものであり、ここに参照によって組み込まれる。
【0002】
本発明は、微細加工構造およびマイクロ流体構造に関する。一例では、本発明は、ゲノム配列決定のための微細加工システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
有機体のゲノムは、その有機体のDNA(デオキシリボ核酸)によって、もしくは、一部のウイルスではRNA(リボ核酸)、によって規定されている。ゲノムの配列決定とは、DNAまたはRNA鎖のヌクレオチドすなわち塩基の順番を解読することである。
【0004】
DNAのゲノム規模の配列決定のための現在の方法を、図1に示す。このショットガン配列決定法100は、細菌形質転換、選択、および、培養によって、個々のゲノムDNA断片を操作する。この方法の最初の3工程、すなわち、せん断(シアリング)、ベクターライゲーション(vector ligation)、および、形質転換(工程102、104、および、106)は、1回だけ行えばよい。それらの工程自体は、特に問題を引き起こすものではない。最後の工程、すなわち、キャピラリ電気泳動(CE)(工程114)は、微細加工によって小型化されている。それにより、この工程に関連するコストおよび処理時間が低減されている。しかしながら、植種(プレート)および培養(工程108)と、採取、増殖、および、抽出(工程110)には、問題がある。これらの工程は、サンガー伸長工程(工程112)に先行して、クローンの単離と挿入物の増幅とを実行する。増幅は、細菌による方法、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、または、RCA(ローリングサークル増幅)であってよい。これらの工程は、小型化および集積化ができていない。したがって、現在の巨視的なパラダイムは、これらの主要な工程を実現する技術としてのロボット工学の利用に依存している。しかしながら、これは、3,000万以上のコロニーを採取および増殖して、ゲノムの配列決定のテンプレートを生成する必要があるため問題となる。さらに、かかるロボット技術によって準備される材料の最小量は、最新の微細加工CE分析システムが要求するよりも桁違いに大きい。
【0005】
したがって、ゲノム配列決定の処理時間、体積の規模、および、集積化のレベルを改善することが望ましい。また、ゲノム配列決定に関するコストおよびスペースの要件を低減することが望ましい。
【発明の開示】
【0006】
一態様では、本発明は、クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロリアクタ要素を複数の熱循環チャンバに分配するための分配流路を備える微細加工構造を提供する。1つの熱循環チャンバには、1つだけのマイクロリアクタ要素が入り、マイクロリアクタ要素から熱循環伸長断片が生成される。熱循環チャンバには、精製チャンバが結合され、伸長断片の捕捉および濃縮を行う。精製チャンバには、成分分離流路が接続されており、伸長断片の分析を行う。
【0007】
本発明の様々な実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。マイクロリアクタは、クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロキャリア要素を備える。マイクロリアクタ要素は、ボーラス(bolus)すなわちマイクロエマルジョン液滴である。マイクロリアクタ要素は、クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロスフィアを備える。配列決定テンプレートは、DNAまたはRNAの配列決定テンプレートである。
【0008】
さらに別の態様では、本発明は、配列決定を実行するためのシステムに関する。そのシステムは、DNAまたはRNAを断片にせん断する手段と、断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と、不純物(コンタミネーティング)である線形産物との混合物を形成する手段とを備える。そのシステムは、さらに、不純物である線形産物を選択的に除去する手段と、1つの配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロリアクタ要素を生成する手段とを備える。そのシステムは、さらに、配列決定テンプレートを有するマイクロリアクタ要素を選択する手段と、1つの配列決定テンプレートを有する選択されたマイクロリアクタ要素を熱循環チャンバに分配するマイクロ流体分配手段とを備える。さらに、システムは、1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロリアクタ要素が流れ込むことを保証する手段と、熱循環チャンバを備え、配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロリアクタ要素から熱循環伸長断片を生成する伸長手段とを備える。また、そのシステムの一部として、伸長断片を捕捉、精製、および、濃縮する精製チャンバ手段と、伸長断片を分析する成分分離手段とが備えられている。
【0009】
本発明の他の実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。マイクロリアクタ要素は、クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロキャリア要素を備える。マイクロリアクタ要素は、ボーラスすなわちマイクロエマルジョン液滴である。マイクロリアクタ要素は、配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロスフィアを備える。
【0010】
別の態様では、本発明は、クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロスフィアを複数の熱循環チャンバに分配するための分配流路を備える微細加工構造を提供する。1つの熱循環チャンバ内に1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証するために、熱循環チャンバの出口ポートには自動弁が配置されており、熱循環チャンバでは、マイクロスフィアから熱循環伸長断片が生成される。熱循環チャンバには、精製チャンバが結合され、伸長断片の捕捉および濃縮を行う。精製チャンバには、成分分離流路が接続されており、伸長断片の分析を行う。
【0011】
本発明の様々な実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。マイクロスフィアの直径は、約1から100ミクロンの間である。マイクロスフィアの直径は、約10ミクロンである。各熱循環チャンバと、分離流路との間では、流体が行き来する。配列決定テンプレートは、DNAまたはRNAの配列決定テンプレートである。
【0012】
さらに別の態様において、本発明は、配列決定テンプレートを運ぶマイクロスフィアを熱循環チャンバに分配するマイクロ流体分配手段を備える微細加工構造を提供する。1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証するために、自動弁手段が用いられる。熱循環チャンバを備える伸長手段が、配列決定テンプレートを運ぶマイクロスフィアから熱循環伸長断片を生成する。伸長断片は、集積化精製チャンバ手段を用いて、捕捉、精製、および、濃縮される。伸長断片を分析するために、成分分離手段が用いられる。
【0013】
本発明の他の実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。伸長手段は、複数の熱循環チャンバを備えたサンガー伸長手段である。自動弁手段は、熱循環チャンバの出口ポートに配置された自動弁を備える。精製チャンバ手段は、熱循環チャンバに接続された精製チャンバを備える。成分分離手段は、精製チャンバに接続された複数のマイクロ流路を備えたキャピラリアレイ電気泳動手段である。配列決定テンプレートは、DNAまたはRNAの配列決定テンプレートである。
【0014】
さらなる態様において、本発明は、熱循環チャンバを備える微細加工装置を提供する。熱循環チャンバは、クローンのテンプレートを運ぶマイクロスフィアを受け入れるよう構成されている。そのチャンバは、流入ポートと流出ポートを備えており、流出ポートは、チャンバ内にマイクロスフィアを捕捉して熱循環チャンバへのさらなる流入を実質的に遮断するよう構成された狭窄部を備える。
【0015】
本発明の様々な実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。狭窄部の形状は、実質的に円形または半円形である。流入ポートとの間で流体が行き来する流入路には、第1の弁が配置されており、流出ポートとの間で流体が行き来する流出路には、第2の弁が配置されている。動作中、第1の弁より前に第2の弁を閉じることで、熱循環の前に、マイクロスフィアを、狭窄部からそのチャンバの本体部分の中に移動させる。精製チャンバと熱循環チャンバの流出ポートとの間で流体が行き来し、精製チャンバの出力ポートと成分分離装置との間で流体が行き来するようになっている。
【0016】
さらに別の態様において、本発明は、配列決定を実行するためのシステムを提供する。そのシステムは、DNAまたはRNAを断片にせん断する手段と、断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と、不純物である線形産物との混合物を形成する手段とを備える。そのシステムは、さらに、不純物である線形産物を選択的に除去する手段と、一つの配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロスフィアを生成する手段とを備える。そのシステムは、さらに、配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアを選択する手段と、配列決定テンプレートを有する選択されたマイクロスフィアを熱循環チャンバに分配するマイクロ流体分配流路手段とを備える。さらに、そのシステムは、統計的に1つの熱循環チャンバ内に1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証する手段を備える。そのシステムは、さらに、熱循環チャンバを備えた伸長手段であって、配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロスフィアから熱循環伸長断片を生成する伸長手段を備える。また、そのシステムの一部として、伸長断片を捕捉、精製、および、濃縮する精製チャンバ手段と、伸長断片を分析する成分分離手段とが備えられている。
【0017】
本発明の他の実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。保証手段は、熱循環チャンバ内に配置された自動弁と、光学検出器と、タイミング機構との内の少なくとも1つである。光学検出器は、マイクロスフィアからの散乱光を検出する光学スキャナである。タイミング機構は、熱循環チャンバの流入口に隣接して配置された空気入力を備える。
【0018】
さらなる態様において、本発明は、DNA配列決定を実行するためのシステムを提供する。そのシステムは、DNAをDNA断片にせん断する手段と、DNA断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と、不純物である線形産物との混合物を形成する手段とを備える。そのシステムは、さらに、不純物である線形産物を選択的に除去するエキソヌクレアーゼ分解手段と、1つのDNA配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロスフィアを生成するエマルジョンPCR反応手段とを備える。さらに、そのシステムは、DNA配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアを選択する蛍光活性化細胞選別(FACS)手段を備える。DNA配列決定テンプレートを有する選択されたマイクロスフィアを熱循環チャンバに分配するために、マイクロ流体分配流路手段が用いられる。統計的に1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証するために、自動弁手段が用いられる。DNA配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロスフィアから熱循環伸長断片を生成するために、熱循環チャンバを備えたサンガー伸長手段が用いられる。伸長断片を捕捉、精製、および、濃縮するために、集積化精製チャンバ手段が用いられ、伸長断片を分析するために、キャピラリアレイ電気泳動手段が用いられる。
【0019】
またさらに別の態様において、本発明は、配列決定を実行するための処理を提供する。その処理は、DNAまたはRNAを断片にせん断する工程と、断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と、不純物である線形産物との混合物を形成する工程と、不純物である線形産物を選択的に除去する工程とを備える。その処理は、さらに、配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロリアクタ要素を生成する工程と、配列決定テンプレートを有するマイクロリアクタ要素を選択する工程と、その配列決定テンプレートを有するマイクロリアクタ要素を熱循環チャンバに分配する工程とを備える。配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロリアクタ要素から、熱循環伸長断片が生成される。伸長断片は、捕捉、濃縮、および、分析される。
【0020】
本発明の様々な実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。マイクロリアクタ要素は、クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロキャリア要素を備える。マイクロリアクタ要素は、ボーラスすなわちマイクロエマルジョン液滴である。マイクロリアクタ要素は、クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロスフィアを備える。分配工程は、1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロリアクタ要素が入るように実行される。1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロリアクタ要素が入ることを保証するために、熱循環チャンバの出口ポートに配置された自動弁が用いられる。例の生成工程は、エマルジョンPCR反応またはフロースルー型PCR処理によって、配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を生成する工程を備える。選択工程は、FACSである。
【0021】
さらに別の態様において、本発明は、DNA配列決定を実行するための処理を提供する。その処理は、DNAをDNA断片にせん断する工程と、DNA断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と、不純物である線形産物との混合物を形成する工程と、不純物である線形産物をエキソヌクレアーゼ分解によって選択的に除去する工程とを備える。DNA配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロスフィアが、エマルジョンPCR反応によって生成される。DNA配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアが、FACSによって検出される。そのDNA配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアは、熱循環チャンバに分配される。統計的に1つの熱循環チャンバ内に1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証するために、熱循環チャンバの出口ポートに配置された自動弁が用いられる。DNA配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロスフィアから、熱循環伸長断片が生成される。伸長断片は、捕捉、精製、濃縮、および、分析される。
【0022】
本発明の様々な実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。捕捉工程は、オリゴヌクレオチド捕捉マトリクスを用いる。
【0023】
またさらに別の態様において、本発明は、配列決定のための方法を提供する。その方法は、熱循環チャンバの流入ポートにおいてクローンのテンプレートを運ぶマイクロスフィアを受け入れる工程と、チャンバの流出ポートに配置された狭窄部を用いて、チャンバ内でマイクロスフィアを捕捉してチャンバへのさらなる流入を実質的に遮断する工程とを備える。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、配列決定テンプレートを運ぶマイクロスフィアを生成する工程を備える分析方法を提供する。マイクロスフィアは、熱循環チャンバへのさらなる流入を実質的に遮断するように、熱循環チャンバの出力ポートに配置された狭窄部によって熱循環チャンバ内に配置される。
【0025】
本発明の他の実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。熱循環チャンバの流入ポートに、第1の弁が配置されると共に、熱循環チャンバの流出ポートに、第2の弁が配置されており、第2の弁は、第1の弁よりも前に閉じられてよい。これにより、熱循環の前に、マイクロスフィアが、狭窄部から熱循環チャンバの本体部分に移動される。
【0026】
本発明は、以下の利点の内の1または複数を備えうる。ショットガンゲノム配列決定に要求される面倒な細菌の操作の代わりに、自動化および集積化が容易なインビトロ(in vitro)の工程を用いることができる。それにより、数百万回の手動またはロボットによるコロニー採取動作が排除される。配列決定伸長断片を生成、精製、および、分離するために必要な流体および温度に関する制御構造すべてが、微細加工装置に集積される。コスト、時間、および、空間の大幅な節約を実現できる。他の遺伝子分析技術を実行することも可能である。
【0027】
本発明に関する上述およびその他の特徴と利点は、本発明の原理を例示的に説明する本発明の明細書および添付の図面を参照して詳細に提示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
ここで、本発明を実施するために発明者が検討した最良の実施形態を含む本発明のいくつかの具体的な実施形態について詳細に説明する。これら具体的な実施形態の例は、添付の図面に示されている。本発明は、これら具体的な実施形態に関連して説明されているが、説明されている実施形態に本発明を限定する意図はない。逆に、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の趣旨および範囲に含まれうる代替物、変形物、および、等価物を網羅するよう意図されている。
【0029】
以下の説明では、本発明の完全な理解を促すために、数多くの具体的な詳細事項が記載されている。本発明は、これら具体的な詳細事項の一部あるいはすべてがなくとも実施可能である。また、本発明を不必要にわかりにくくすることを避けるために、周知の処理動作については、説明を省略した。
【0030】
さらに、本発明の技術および機構は、明確にするために単数形で表す場合がある。しかしながら、一部の実施形態は、特に断らない限りは、1つの技術を複数回繰り返したり、1つの機構を複数回用いたりしてよいことに注意されたい。
【0031】
本発明のシステムおよび方法は、DNA配列決定に関連して説明されている。しかしながら、同じシステムおよび方法を、RNA配列決定に利用してもよい。さらに、同じシステムおよび方法を、DNAまたはRNAに関する他の遺伝分析に利用してもよい。
【0032】
本発明のシステムおよび方法は、一部の実施形態ではマイクロスフィアやビーズなどのマイクロキャリア要素を含むマイクロエマルジョン液滴すなわちボーラスなどのマイクロリアクタ要素を用いる。マイクロキャリア要素は、ボーラスすなわちマイクロエマルジョン液滴の中に含まれており、DNA産物またはRNA産物を捕捉するのに有用である。すなわち、増幅されたDNAまたはRNAを、マイクロキャリア要素に対して化学的に結合させることができる。あるいは、増幅されたDNAまたはRNAは、マイクロキャリア要素を利用せずに、マイクロリアクタ要素によって運ばれてもよい。例えば、ボーラスすなわちマイクロエマルジョン液滴の中でPCR反応を実行してよく、その後、結果として得られたボーラスすなわちマイクロエマルジョン液滴を、次の処理工程に送ってよい。
【0033】
本発明の微細加工集積DNA分析システム(a microfabricated integrated DNA analysis system:MINDS)は、マイクロ流体サンプル成分分離装置に容易に適合できるシステムおよび方法を提供する。図2に示すように、MINDS処理200は、一実施形態において、DNAをDNA断片にせん断する工程(工程202)から始まる。次に、断片は、ライゲーション(ligate)を施されて、所望の環状産物と不純物である線形産物との混合物を形成する(工程204)。次に、不純物となる線形産物は、例えば、エキソヌクレアーゼ分解によって選択的に除去される(工程206)。次いで、DNA配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロスフィアのコロニーが形成される(工程208)。コロニーは、例えば、エマルジョンPCR反応によって生成されてよい。次に、DNA配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアが特定される(工程210)。マイクロスフィアは、蛍光活性化細胞選別(a fluorescence activated cell sorting:FACS)技術によって特定されてよい。かかる作業は1回だけ実行すればよく、6時間以内で完了できる。次に、DNA配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアは、伸長断片を生成する複数の熱循環すなわち配列決定反応チャンバに分配され、その後、断片は、精製および濃縮される(工程212)。次いで、伸長断片は、例えば、CE装置などのサンプル成分分離装置によって分析される(工程214)。
【0034】
MINDSの方法、処理、および、装置は、一実施形態において、熱循環、親和性による捕捉、サンプルの精製、および、キャピラリアレイ電気泳動(CAE)の構成要素を集積した微細加工構造を備える。以下で説明するように、かかるシステムは、配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロスフィアを複数の熱循環すなわち配列決定反応チャンバに分配するためのマイクロ流体分配流路を備える。マイクロスフィアから熱循環伸長断片を生成する各チャンバにマイクロスフィアを確実に1つだけ流入させるように、熱循環チャンバの出口ポートに、自動弁を配置してよい。熱循環チャンバには、精製チャンバが接続され、伸長断片の捕捉、精製、および、濃縮を行う。精製チャンバには、伸長断片の分析を行うための微細加工CE分離流路が接続されている。
【0035】
本発明は、従来の配列決定における、困難、高価、かつ、時間の掛かるインビボ(in vivo)でのクローニング、選択、コロニー単離、および、増幅の工程を排除する。これらの工程の代わりに、小型化および自動化が容易なインビトロ(in vitro)の工程を用いる。
【0036】
マイクロスフィアは、理想的なキャリアであり、サイズ、表面、蛍光、および、磁気の特性を柔軟に制御できる。微細加工と、それに伴う試薬の体積の低減とによって、配列決定反応チャンバを小型化することで、単一のクローンマイクロスフィアを、十分なDNA配列決定テンプレートのキャリアとして利用することが可能になる。これにより、ナノリットルの伸長、浄化、および、配列決定の処理との直接的な統合に適した、クローンテンプレートの選択、増幅、および、選別を可能にする処理工程を用いることができるようになる。
【0037】
図3は、MINDSと共に利用可能なクローニング処理300の概略を示す図である。その処理は、ライブラリの作成および選択を含む。一実施形態では、ゲノムDNAが、全血から分離され、その後、ネブライザでせん断されて、DNA断片を生成する(工程302および304)。次に、DNA断片は、酵素処理を受けて、平滑末端DNAを生成する(工程306)。処理された断片は、ベクター内にライゲーションされて、所望の環状産物と不純物である線形産物との混合物を生成する(工程308および310)。次いで、エキソヌクレアーゼ分解によって、挿入物およびベクターと、不純物である線形産物とを、ライゲーション産物から除去して、残りのベクターの内の約95%よりも多くが、挿入物を含み、所望の環状産物となるようにする(工程312)。
【0038】
クローニング処理300の最初の5つの工程(工程302から310)は、標準的なライブラリ作成の手順に従う。より具体的には、Invitrogen社(カリフォルニア州カールズバッド)が、1ないし6Kbの挿入ゲノムショットガンライブラリを2時間で作成できるTOPOサブクローニングキット(#K7000−01)を供給している。そのサブクローニングキットは、Qiagen社(ノルウェイ、オスロ)のBlood&Cell Culture DNA Mini Kit(#13323)を用いて、1mLの全血から得られる約20マイクログラム(μg)のゲノムDNAを要求する。DNAは、ネブライザでせん断されて、1ないし6KbのDNA断片を生成する。次に、断片は、T4 DNAポリメラーゼおよびクレノウポリメラーゼと、仔牛小腸ホスファターゼ(calf intestinal phosphatase:CIP)とによる酵素処理を受けて、脱リン酸化された平滑末端DNAを生成する。次いで、処理された断片は、Invitrogen社のpCR 4Blunt−TOPOベクター内にライゲーションされる。クローニングベクターに共有結合するワクシニアウイルストポイゾメラーゼI(vaccinia virus topoisomerase I)を用いることにより、迅速かつ効率的なライゲーション(5分間の室温でのライゲーションにより、95%を超える形質転換体が生成される)が実行され、ライゲーションの前に挿入物の脱リン酸化が可能になるため、キメラクローンの形成が防止される。
【0039】
標準ライブラリの作成における最後の工程(工程312)は、インビトロMINDS処理に適合するよう修正されており、細菌形質転換と抗生物質選択とを含む。エキソヌクレアーゼ分解は、所望のライゲーション産物から挿入物およびベクターを選択的に除去する。λエキソヌクレアーゼ(New England Biolabs社の#M0262S)は、5’−リン酸化および非リン酸化二本鎖DNAを分解するが、ライゲーション後のベクターに存在するニックにおいてDNAの消化を開始できないため、上記の工程で利用可能である。開始ゲノムDNAの回収が1%であると悲観的に仮定すると、結果としてのライブラリは、10倍の配列カバー(sequence coverage)に必要な6,000倍以上の余分な分子を含むが、この余分は、後述する1分子PCR増幅工程において、希釈によって低減される。
【0040】
ペア末端の全ゲノムデノボ配列決定(de novo sequencing)のために、挿入物のサイズを厳密に制御することが要求される場合には、DNAのせん断(工程304)後に、ゲルの分離およびバンドの精製の工程を実行できる。あるいは、挿入物のサイズは、PCR増幅の間の伸長時間を制限することにより制限されてもよいし、狭い蛍光強度範囲内のマイクロスフィアをフローサイトメトリで選択することにより制限されてもよい。チアゾールオレンジ(TO)などの挿入色素でマイクロスフィアのクローンを標識(ラベル)すると、増幅産物(アンプリコン)のサイズに比例した蛍光信号が得られる。フローサイトメトリは、MINDS処理内の工程であるため、>5%の再環状化ベクターも排除する魅力的なサイズ選択方法であり、唯一の欠点は、収率が低下することである。
【0041】
サブクローニングキットで用いられるベクターは、T7およびT3プライミング部位が挿入部位から33bp(base pairs:塩基対)離れるよう、配列決定に最適化されてよい。MINDSのベクターには、生物学的制約がないため、配列決定のプライミング部位を、挿入部位の近くに移動して、pUC ori、f1 ori、lacZ、および、抗生物質抵抗性の遺伝子を除去してもよい。サンプルの浄化を改善し、プライマの二量体形成を低減するために、最適化されたアクリダイト捕捉配列(acrydite capture sequences)およびホモのPCRプライミング部位を挿入してもよい。
【0042】
MINDS処理における配列決定は、個々のマイクロスフィアまたはビーズに付着したクローンテンプレートDNAを用いてよい。クローンの付着は、プライマの1つをマイクロスフィアに共有結合させることによって実現される。
【0043】
単一分子の増幅(例えば、マイクロエマルジョンポロニー)または組み合わせハイブリダイゼーション方法による1,000から100,000のDNA分子のクローン単離について示した。Mitra,R.D.,et al.、「Digital genotyping and haplotyping with plymearase colonies」、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、2003、100(10)、p.5926−5931;Dressman,D.,et al.、“Transforming single DNA molecules into fluorescent magnetic particles for detection and enumeration of genetic variations”,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、2003、100(15):p.8817−8822;Brenner,S.,et al.、“Gene expression and analysis by massively parallel signature sequencing (MPSS) on microbead arrays”、Nature Biotechnology、2000、18(6):p.630−634、を参照。これらは、それぞれ、参照によって本明細書に組み込まれる。従来のマイクロチップによる配列決定は、1反応あたり約10億のテンプレートDNA分子を要求する。20倍の線形サンガー配列決定の増幅後には、200億の伸長断片が生成され、これは、共焦点ラジアルスキャナを用いた高い信号対雑音(S/N)検出((1バンドあたり100万の断片)×1,000バンド=10億の分子)にとって20倍の余分になる。クロスインジェクション(cross-injection)処理は、交点で等モル混合物が得られるまで分離カラムに伸長断片を流した後に、全サンプルの内の約5%を注入することを要求するため、上記の余分が必要である。以下で説明する親和性捕捉によるダイレクトインジェクション(direct-injection)の方法では、20倍の余分は必要なく、要求される最初のテンプレートの複製物は5,000万だけである。
【0044】
CPG Biotech社(ニュージャージー州リンカーンパーク)は、8,000万のDNA分子を確実に結合させることができるアミン修飾プライマへの共有結合のための長鎖アルキルアミンリンカーを備え、5ミクロン(μm)に制御された多孔ガラス常磁性マイクロスフィアを生産している。単一のDNA分子から始まり、30サイクルのPCRによって、理論的には、10億のDNA分子が得られる。実際には、得られる分子は、各サイクルの効率が100%未満であること、後半のサイクルで酵素の活性が落ちること、および、pL規模の反応では試薬が限られていることから、それほど多くはない。クローンマイクロスフィアを生成するためには、DNA分子と、プライマが結合したマイクロスフィアとを、1つずつPCRリアクタに配置する必要がある。効率的な単一分子PCRには、単一DNA分子の有効濃度を増大させるために、極度に小さい容積のリアクタ(1−10pL)が要求される。ヒトのサイズのゲノムの配列決定を行うには、約3,000万のマイクロスフィアのクローンが必要である。チャンバにおける単一マイクロスフィアおよび単一DNA分子の高スループットな組み合わせは、統計的に希釈されたマイクロエマルジョンの溶液を用いて実現できる。DNA分子およびマイクロスフィアが、リアクタの容積の10倍の体積に1つの種が存在するように、それぞれ希釈されれば、リアクタの内の1%では、高い可能性(99%より大きい)で両者が同時に存在する(コンカレンス)。リアクタの99%が非生産的であるため、3,000万のマイクロスフィアのクローンを生成するために、100倍(30億)以上の反応が要求される。
【0045】
多数の小容積の反応を起こすには、微細加工PCR装置およびエマルジョンPCRという2つの方法が可能である。しかしながら、PCR装置は、要求される30億の反応を実現するために、数千回の実行を必要とする。一方、エマルジョンPCRは、従来のサーマルサイクラを用いて、1つのチューブ内で数百万から数十億の別個の区画に熱循環することができる。エマルジョンPCRによって磁性粒子に付着されたクローンPCR増幅産物(アンプリコン)が生成される。平均して、各マイクロスフィアは、10,000を超える250bpの増幅産物を含んでおり、これは、各5μm径の区画において利用可能なヌクレオシド三リン酸に基づく理論的な最大値600,000増幅産物よりも小さい値である。15ミクロンのマイクロエマルジョンPCR区画については、1,000bpの増幅産物の最大数が、最初のテンプレートの複製物として最低限要求される5,000万の10分の1の値である500万であることが示された。この問題は、様々な方法で解決できる。
【0046】
第1に、ビーズに結合するDNAの量を増大させるために、さらなるマイクロエマルジョンPCR工程を実行してよい。第2に、試薬に制限されない増幅工程を、蛍光フローサイトメトリ工程後に追加する必要があってもよい。補助的なPCR増幅は、常磁性マイクロスフィアが、個々のリアクタに送られて磁気的に保持されるオンチップで二重用途の熱循環チャンバで実行可能である。未使用のPCRミックスをチャンバに通し、15回熱循環させて、各マイクロスフィアを最大の8,000万テンプレートまで飽和させる。この場合、サンガー配列決定反応ミックスが、チャンバ内に流されて、固相配列決定に続く際に、磁界が維持される。最終的に、スキャナのS/Nが10倍まで改善されることで、上述の計算よりも約10倍少ないテンプレートの配列決定を可能にできる。
【0047】
約1,500万の15μm径の区画が、25μL水相、75μL油相のエマルジョン内に形成されてよい。コインシデントな単一DNA分子および単一のマイクロスフィアの事象を3,000万だけ生成するためには、30億の区画が要求される。したがって、100μLの96ウェルプレートでの反応が約2回要求される。反応が終了すると、3億の非標識マイクロスフィアのバックグラウンドから、3,000万のマイクロスフィアのクローンを分離する必要がある。
【0048】
上述のように、配列決定テンプレートを有するビーズは、FACSによって特定されてよい。利用可能なシステムとしては、カリフォルニア州サンノゼのBD Biosciences社が供給するBD FACS ArrayBioanalyzer Systemが挙げられる。BD FACS Arrayのフローサイトメータは、1秒間に15,000までのイベントを処理することが可能であり、6時間未満で、10倍の網羅範囲(カバー)である30億のベースゲノムに要求されるすべてのクローンの単離を可能にする。ビーズは、TOなどの挿入色素で処理される。挿入色素は、二本鎖DNA内に挿入されるまでは、非蛍光性である。TOの蛍光強度は、DNAの量に対して線形に比例するため、増幅されたDNAを有するビーズとそうでないビーズとを簡単に区別できる。
【0049】
図4A、4B、および、4Cは、本発明に従った単一流路マイクロ装置400を示す図である。その装置は、マイクロ流体弁と、ヒータと、抵抗温度検出器(RTD)と、すべての反応、捕捉および浄化、CEのための構造と、を備える4つの層、すなわち、ガラス−ガラス−PDMS(ポリジメチルシロキサン)−ガラスのサンドイッチ構造として形成されてよい。その装置は、別の実施形態では、ガラス−PDMS−ガラス−ガラスのスタックとして形成されてもよい。弁と、ヒータと、RTDと、チャンバと、CE構造とを備える4層の微細加工システムについては、2003年12月29日に出願された米国特許出願No.10/750,533、「Fluid Control Structures In Microfluidic Devices」に記載されている。この出願は、本願の譲受人に譲渡されたものであり、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0050】
マイクロ装置400は、伸長断片の生成、反応の浄化、および、伸長断片の分離(図2の工程212および214)を含むMINDS処理における後処理工程すべてを実行することができる。装置400は、熱循環すなわち配列決定反応チャンバ402と、捕捉・精製チャンバ404と、分離流路407を有するCEシステム406とを備える。図に示すように、装置400のこれらの構成要素は、様々な弁および流路によって接続されている。熱循環チャンバの内容物を加熱するために、ヒータ(図示せず)、例えば、カプトンヒータを用いてよい。チャンバのテンプレートは、RTD405によって監視される。
【0051】
図4Cに示すように、その装置400は、流路層430と、ビア層432と、マニホルド層434とを含む3つのガラス層を備える。ビア層432とマニホルド層434との間には、PDMS膜層436が設けられている。最上層430は、熱循環リアクタと、捕捉チャンバと、CE形状とを含む。第2の層432は、ガラスウエハの上面にRTDを備え、下面にエッチング形状を備えることで、下の膜層436と共に弁およびポンプを形成している。最後の層434は、ヒータを備えており、空気圧アクチュエーションラインおよび置換チャンバによって弁およびポンプ構造を完成させている。
【0052】
一動作方法では、装置400のポート408からマイクロ弁410を介して熱循環チャンバ402に、配列決定マスターミックスがロードされる。チャンバ402の容積は、約250ナノリットル(nL)でよい。CEシステム406の分離流路は、ポート412からポート414まで、線形のポリアクリルアミドで満たされる。CEシステムは、16センチメートル(cm)のハイパーターンシステムであってよい。ポート416からポート418まで、アクリダイト(acrydite)の捕捉マトリクスをロードして、捕捉チャンバ404と、介在する狭まったチャンバ419とを満たす。チャンバ402の熱循環後、伸長断片と残った反応物質とを、弁420と流路422とを通して捕捉チャンバ404内に、電気動力学的に送り出す。次に、捕捉された伸長断片は、電気泳動によって洗浄され、流路424内に注入されて、CEシステム406による分離に備える。
【0053】
この親和性捕捉・サンプル浄化マイクロ装置の利点は、合成中に追加されたアクリダイトのモノマの量によって決まる濃度で、1−10nL中に、精製された伸長断片を保持できる点である。図5A、5B、および、5Cは、熱循環、捕捉、洗浄(精製)、サンプルの濃縮、および、分離が実行される装置400と同様のマイクロ装置500の動作から得られた蛍光画像(印加される相対電位を「+」および「−」で示している)を示す図である。具体的には、5% w/vのアクリルアミドと、1×TTE(50mMのTris、50mMのTAPS遊離酸、1mMのEDTA、pH=8.4)と、20nmolのメタクリル酸塩修飾のオリゴとの2mL溶液内で、アクリダイト捕捉マトリクスを合成した(5’−アクリダイト−ACTGGCCGTCGTTTTACAA−3’、TM=60.4℃、カリフォルニア州エメリービルのOperon Technologies社)。その溶液は、0.015% w/vのAPSおよびTEMEDを加えて重合を開始する前に、2時間アルゴンで拡散した。次いで、重合された捕捉マトリクスを、1mLシリンジを用いて捕捉チャンバ504に注入した。ポリマ配列決定マトリクス(CEQ、カリフォルニア州フラートンのBeckman社)を、高圧ゲルローダを用いて、CEシステム506にロードした。80nMのETプライマと、1×Cターミネータミックス(Amersham社)と、4nMのPCR産物とを含むC−トラック・マスターミックスを準備して、250nLの熱循環チャンバすなわちリアクタ(図示せず)に注入した。LabVIEWプログラム(National Instruments社、テキサス州オースチン)を用いてオンチップで、熱循環(35回、94℃ 30秒、45℃ 40秒、70℃ 40秒)を実行した。
【0054】
まず、50℃に加熱されたステージ上で30秒間、マイクロ装置の平衡を保つことにより、配列決定反応の浄化を実行した。次に、捕捉チャンバの出口(図4Aのポート416)に2,000Vを印加しつつ、リアクタの入り口(図4Aのポート408)を接地することにより、サンプルの捕捉(図5A)を開始した。このように、伸長断片および残留ヌクレオチドと、プライマと、塩とを含むサンプルを、熱循環チャンバから流路522を通して捕捉チャンバ504に電気泳動した。伸長断片は、捕捉チャンバ内でアクリダイトマトリックスにハイブリダイズするが、残留反応物質は、通過する。オリゴヌクレオチドの捕捉が完了すると、保持された伸長断片を30秒間、電気泳動によって洗浄して(図5B)、捕捉チャンバ内に残った余分なプライマや他の不純物を除去した。電気泳動によって洗浄した後、ステージを傾斜させて70℃にし、60秒間平衡を保ち、産物−マトリクスの二本鎖(デュープレックス)を完全に変性させた。変性されたサンプルは、アノードに2,500Vを印加しつつ、捕捉チャンバの出口を接地することにより、CE装置506の分離カラム507に直接注入される(図5C)。(ただし、流路の構造を強調して、蛍光の表面不純を除去するように、画像処理を行った)。
【0055】
あるいは、まっすぐなクロスインジェクタと、30cmの分離キャピラリとを用いてもよい。これにより、分解能が向上される。
【0056】
マイクロスフィアコロニーの生成手順と、単一リアクタのマイクロ装置とは、再配列決定の試みに適したシングル末端の読み取りを生成できる。複雑なゲノムのデノボ(de novo)全ゲノムショットガン配列決定を行うには、長短の挿入クローンからのペア末端の読み取りが要求される。マイクロスフィアのサブセットに対して、蛍光フローサイトメトリの前にロングレンジPCRを用いて、長挿入物クローンを選択的に生成することができる。従来のペア末端の配列決定は、マイクロスフィアから、クローンDNAを解放して、別個の順方向および逆方向の配列決定リアクタに送ることができるように、手順およびマイクロ装置を修正することを要求する。別の方法では、変更された塩基標識方法を用いて、塩基のサブセットに対して、同時に順方向および逆方向の配列決定を実行する。これらのペア末端読み取りは、配列アセンブリに4塩基シングル末端読み取りを固定するのに適した長い1塩基または2塩基の読み取りを生成する。
【0057】
図6A、6B、および、6Cに示すように、マイクロスフィア600を用いて、配列決定反応が実行される熱循環すなわち配列決定反応チャンバ602に、クローンテンプレートを移送する。この処理では、各配列決定反応チャンバに1つのマイクロスフィアを導入することが要求される。そのために、個々に作動される弁や検知の必要なしに、配列決定反応チャンバ内に個々のマイクロスフィアを捕捉する自動弁技術を用いる。
【0058】
図に示すように、反応チャンバ602は、導入流路すなわちアーム604と、出口流路すなわちアーム606とを備える。導入流路と、反応チャンバの流入ポート605との間で、流体が行き来するようになっており、出口流路と、反応チャンバの流出ポート607との間で、流体が行き来するようになっている。反応チャンバの流出端部すなわちポートに、狭窄部または狭窄領域608を形成することにより、自動弁を実現する。狭窄領域は、半円の形状を有する。
【0059】
狭窄部は、マイクロスフィアを、チャンバを出る前に捕捉する。捕捉されたマイクロスフィアは、流速を低減することにより、さらなるマイクロスフィアがチャンバに流れ込むのを防止する。マイクロスフィアの希釈は、最初のマイクロスフィアがチャンバを閉塞する前に、別のマイクロスフィアが反応チャンバに流れ込む可能性が、約0.5%未満になるように選択される。この統計的な方法が、信頼できない、すなわち、選別率が低い場合には、ビーズの光散乱に対するオンチップ・センサを用いることが可能であり、選別ループに2つの弁を追加して、より時間的に一様なビーズ分布を実現することも可能である。
【0060】
図6Aないし6Cに示した装置を形成するために、ガラス加工処理を用いることができる。一例では、狭窄部を除くすべての形状を、30μmの深さまで等方性エッチングした。サンプルのための導入流路および出口流路は、70μmの幅と、15mmの長さを有するよう構成した。配列決定チャンバの容積は、250nLであった。流路および反応チャンバのための基本的な加工処理が完了した後に、第2のマスクを用いて、狭窄部を加工した。このために、より粘性の高いフォトレジスト(SJR 5740、Shipley社、マサチューセッツ州マールボロ)を、2500rpmで35秒間、ウエハ上に回転塗布する。この次に、70℃で7分間および90℃で6分間の弱い焼成を行った。より粘性の高いフォトレジストにより、形状を形成されたウエハ上に、より一様な被覆が施される。次に、コンタクトプリンタを用いて、被覆されたウエハに、狭窄部のパターンを転写した。位置決めマークを用いて、すでにエッチングされた流路およびチャンバに対して狭窄部の位置決めを行った(±1μm)。現像(ディベロップメント)後、プラズマエッチングによって、アモルファスシリコンのマスク層を除去し、5:1BHFを用いて、2μm/時の有効エッチング速度で1.5時間、露出されたガラスを湿式エッチングした。これにより、狭窄部の深さすなわち高さは、3μmになった。狭窄部の幅は8μmに設定され、長さは15μmに設定された。
【0061】
1×Tris(pH8.0)および1%のTriton X−100の溶液に、6μm径のストレプトアビジン被覆フルオレスブライト(Fluoresbrite)YGカルボキシル化ポリスチレン・マイクロスフィア(Polysciences社、ペンシルベニア州ウォリントン)をけん濁して、最終的に1マイクロスフィア/3μLとなるように希釈した物を用いて、自動弁の構想の試験を行った。ポワソン分布を用いた計算によると、反応チャンバ容積の10倍の希釈によって、最初のマイクロスフィアが狭窄部を閉塞する前に、別のマイクロスフィアが250nLのチャンバに入る可能性が、約0.5%未満になる。
【0062】
図6Aないし6Cに示したものと同様の装置を、1×Tris(pH8.0)および1%のTriton X−100の溶液で事前に満たした。マイクロスフィア溶液(6μL)を、流入口にピペットで注入した。チャンバを通してビーズを引くために、真空ラインを用いた。マイクロスフィアが狭窄部で捕捉されると、圧力低下が、−60kPaから−70kPaに増大して、最初の60秒以内に、閉塞が起きた。12分間、実験を継続したが、その他のマイクロスフィアが、チャンバに入るのは観察されなかった。
【0063】
図7Aおよび7Bは、それぞれ、空の状態および溶液を満たした状態(マイクロスフィアを含まない)の熱循環チャンバ702の狭窄領域708の20倍に拡大した明視野画像を示す図である。図7Cは、蛍光マイクロスフィア700が狭窄部708に捕捉されて弁として機能している状態の熱循環チャンバ702の暗視野画像を示す図である。約6μm径のマイクロスフィアについて、実験を行った。この構想は、リアクタ内のテンプレートの数を増大するために、より大きいマイクロスフィアに容易に拡張することが可能である。また、より小さいマイクロスフィアを用いてもよい。特に、マイクロスフィアは、約1から100μmの直径を有してよい。一実施形態では、マイクロスフィアは、10μmの直径を有する。
【0064】
完全に流れを遮断する別の自動弁の実施形態を、図8Aおよび8Bに示す。この実施例では、反応チャンバ802は、チャンバの流出ポート807に形成されたほぼ円形の狭窄部または狭窄領域808を有する。チャンバおよび狭窄部は、ダブルエッチング、すなわち、2つの結合されたガラス面の両方にエッチングされる。これにより、図6Aないし6Cの実施形態の半円形の狭窄部と異なり、ほぼ円形の狭窄部が形成される。これは、マイクロスフィア800を捕捉するために、より良好な弁の機能を提供する。
【0065】
上述のように、弁は、配列決定反応すなわち熱循環チャンバ402(図4Aおよび4B参照)の両側に組み込まれる。マイクロスフィアは、狭窄部に捕捉されると、クローンテンプレートが、ポリメラーゼ、プライマ、dNTP、および、ddNTPに対して良好な接近性を有するように、熱循環のためにチャンバ内に押し戻される必要がある。流入弁410を閉じる前にチャンバの出口の弁420を閉じることにより、弁の限定されたデッドボリュームの結果、マイクロスフィアは、チャンバ内に押し戻される。この原理は、複数の流入弁および複数の流出弁を並行に(インパラレル)作動させることにより、簡単にアレイシステムに拡張できる。
【0066】
DNA分析のための高スループットで完全に集積されたシステムを実現するために、熱循環チャンバ、精製チャンバ、および、配列決定断片のCE分析のための分離流路を組み込んだ集積分析器の微細加工アレイを提供する。かかるシステム900の説明図を、図9Aおよび9Bに示した。このシステムは、図4Aないし4Cの単一流路装置を、高度な並列分析を実行できるアレイ構造に拡張したものである。
【0067】
様々な実施形態によると、システム900は、複数の熱循環チャンバ902と、それらに関連するサンプル精製すなわち捕捉チャンバ904とを、円の中心線の周りに配置して、放射状の並列システムを形成している。熱循環チャンバおよびサンプル精製チャンバは、すべて、分離流路すなわちマイクロ流路908を備えたCE分析システム906と統合されている。CE分析器は、共通の中央アノード(A)910と、カソード容器(C)912と、廃棄物容器(W)914とを備える。カソードおよびアノード容器は、隣接する分離流路908のセットに関連している。マイクロ流路908は、回転式共焦点蛍光スキャナを用いて検出を行うために、アノード910に結合されている。このスキャナは、「High−throughput genetic analysis using microfabricated 96−sample capillary array electrophoresis microplates」、Peter C.Simpson,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA、Vol.95、pp2256−2261、1998年3月、という論文に記載されている種類のものであり、この論文は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0068】
システム900は、さらに、分配流路916と、集積ヒータ918aおよび918bと、RTD920とを備える。ヒータ918aおよび918bは、それぞれ、複数の熱循環チャンバおよび複数の精製チャンバを並行に(インパラレル)扱う。このように、複数の熱循環チャンバおよびサンプル精製チャンバに対して、単純な環状のヒータを用いれば十分である。
【0069】
これらの反応の温度は、RTDによって監視される。一実施形態では、等間隔に配置された4つのRTDが、基板に組み込まれており、最適な熱循環性能を実現するために、ヒータ918aの全体にわたって正確な温度検出を行う。同様に、等間隔に配置された4つのRTDを用いて、ヒータ918bの温度を監視することができる。
【0070】
システム900は、さらに、システムにおける流れを制御するために集積された弁およびポートのアレイを備える。それらの弁は、モノリシックエラストマ(PDMS)膜の弁であってよい。そのシステムは、上述の米国特許出願No.10/750,533(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されているように加工されてよい。すなわち、システムは、マイクロ流体弁およびポンプと、RTDと、熱循環チャンバと、浄化および濃縮チャンバと、CE流路とを組み込んだ4つの層(ガラス−ガラス−PDMS−ガラス)のスタックを備えてよい。
【0071】
システム900は、一実施形態では、24の熱循環チャンバと、24の精製チャンバと、24のCE流路とを、150mm径のガラス基板の四分円状部分に配列されている。各熱循環チャンバ(〜250nL)は、PDMS膜の弁(V1)922によって分配流路から隔てられている。サンプルの動き、泡の形成、および、サンプルの蒸発は、性能に深刻な影響を与えるので、熱循環中に泡の発生なしにサンプルをロードして動かないようにするために、動作中の(アクティブ)弁によってチャンバの容積をしっかりと封じ込めることが必要である。
【0072】
RTDは、チタン(Ti)およびプラチナ(Pt)から加工されてよい。スパッタリング蒸着や、熱および電子ビーム蒸着など、様々な金属蒸着技術を用いて、様々な材料(Au、Al、Pt、Ni)で、ヒータを加工してよい。ニッケルヒータは、加熱の均一性や引っかきの抵抗性が良好であり、数百回の熱循環の後にも顕著な劣化がなく、加工が容易である。微細加工されたヒータと、熱循環チャンバとを、CEマイクロ流路から離して配置することにより、カソード容器内のバッファの蒸発を防ぎ、熱循環の際の注入領域の加熱を最小限に抑えている。環状の抵抗ヒータを下部のウエハの裏側に加工することで、ヒータとチャンバとの間の良好な熱伝達を実現できる。等間隔のRTDは、マイクロプレート上に組み込まれ、ヒータ全体にわたって均一な温度を保証することで性能を最適化するために精確に温度を検出する。
【0073】
熱循環チャンバは、LabVIEWプログラム(National Instruments社、テキサス州オースチン)によって循環を実行されてよい。(LabVIEW VI)。LabVIEWプログラム内の比例/積分/微分(PID)モジュールによって、温度の制御を実現できる。
【0074】
動作中、一実施形態では、アノード910を通して、正圧を用いて、CE分離流路内に、配列決定分離マトリクスを導入する。分離マトリクスは、カソード容器912と、廃棄物容器914と、関連のサンプル精製チャンバにクロスインジェクション点を接続するアーム924とを満たす。満たす速度は、様々な相互接続流路の幅および長さを変えることによって調節することができる。カソード容器およびアノード容器と、接続アームとは、同じ速度で満たされてよい。例えば、分配流路916に接続されたロード用ポート(L)926から、水をロードして、熱循環チャンバ902と、サンプル精製チャンバ904とを満たし、後に続く処理の連続性を確保する。出口ポート(E)936は、両方の熱循環チャンバ902によって共有される。
【0075】
サンプル精製チャンバには、ポート(F)928を通して、捕捉ゲルマトリクスがロードされる。FACSユニットを用いて選別および準備されたクローンDNAビーズのライブラリが、例えば、シリンジポンプを用いて、ポート926から(弁(V1)922および(V2)930を開放して、弁(V3)932を閉じた状態で)ロードされる。上部圧力を監視するために、流入口内で圧力変換器を用いる。熱循環チャンバの出口ポートにおける自動弁は、上述のように、自動弁にビーズが捕捉されると、チャンバ内への流れを止める。各々の自動弁が各熱循環チャンバ内のビーズで満たされると、上部圧力が上昇し続ける。このように、上部圧力を監視することにより、各熱循環チャンバに1つのビーズをロードできる。
【0076】
チャンバを満たす際には、弁(V2)930および(V1)922が閉じられて、熱循環反応が開始される。ビーズは、熱循環混合物内で直接的に選別されるため、熱循環の前に、さらなる工程は必要ない。あるいは、バッファ内で選別を実行した後に、熱循環混合物を熱循環チャンバに導入して、試薬の使用量を最小限に抑えてもよい。ヒータ918aおよび918bは、上述のように、熱循環およびサンプル精製の反応を促進し、それらの反応温度は、RTD920によって監視される。
【0077】
熱循環産物は、弁(V1)922および(V3)932を開放した状態でポート(L)926およびサンプルポートすなわち電気的接点(S)934にわたって電界を掛けることにより、精製チャンバに送られる。ポート(S)934とポート(F)928との間に電界を掛けることにより、捕捉されなかった試薬の洗浄を実行する。その後、配列決定産物は、ポート(S)934と廃棄物容器(W)914との間に電位を印加することにより、CE分離のため、精製チャンバから、関連のマイクロ流路980に注入される。回転式共焦点蛍光スキャナを用いて、配列決定サンプルを検出する。スキャナは、スキャナヘッドの回転ごとに、複数の流路を順次走査する。
【0078】
図に示すように、精製されたDNA配列決定産物の分離は、クロスインジェクションを用いて実現される。あるいは、ダイレクトインジェクションを用いてもよい。
【0079】
別の実施形態では、コロニー形成のマイクロエマルジョンPCR法の代わりに、テンプレートの1分子PCR増幅を実行するための複数のボーラスすなわち液滴を形成して増幅する連続フロースルー型PCR技術を用いる。複数のボーラスすなわちプラグは、例えば、PCR試薬と低濃度のテンプレート断片の水溶液を、キャリアとして機能する疎水性溶液と混合することにより形成される。この技術で生成されるボーラスは、統計的に、配列決定テンプレートの少数の複製物を含む。理想的には、濃度は、10ボーラスの内の1つだけが、1つの配列決定テンプレートを含むよう選択される。これは、2つのテンプレートを同時に含む望ましくないボーラスが、100に1つだけであることを意味する。PCR反応のプライマの1つを運ぶマイクロスフィアすなわちビーズが、この技術を実行する処理におけるボーラスすなわち液滴に含まれてもよい。したがって、コロニーは、単一の配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶボーラス、または、かかる複製物を運ぶマイクロスフィアを有するボーラスを含んでよい。
【0080】
図10A、10B、および、10Cに示すように、連続フロースルー型微細加工PCRシステム1000は、ポート1002および1004を備える。一実施形態では、マイクロスフィアと、PCR試薬と、テンプレート断片との水溶液が、ポート1002を通して「T字形」インジェクタ領域1006に導入され、疎水性のキャリア溶液が、ポート1004を通して「T字形」インジェクタに導入される。こうして、マイクロスフィアを含むボーラスすなわち液滴1012が、「T字形」インジェクタ領域の下流側で形成される。
【0081】
システム1000は、さらに、「T字形」インジェクタ領域の下流側における流路1014の入力側の近くに配置された光学センサ1007(図10B)を備える。そのセンサは、集束レーザビームと、軸外の光散乱を検出するための光ダイオードとを備えてよい。
【0082】
センサは、ビーズを含むボーラスを選択し、ビーズを含まないボーラスと2以上のビーズを含むボーラスとを拒絶するよう構成される。拒絶されたボーラスは、弁1009と廃棄ポートおよび流路1011とを通してシステムの外に排出される。弁1009は、開いた時に、拒絶されたボーラスが廃棄ポート1011を通してシステムから出ることを可能にする4層のPDMS弁であってよい。弁は、弁作動ポート1013によって作動されてよい。連続フロー型システムの流体の抵抗は非常に大きいため、主流路1014には弁が必要ない。
【0083】
システム1000は、アニーリング工程および伸長工程を組み合わせた2工程PCR用に設計されている。したがって、そのシステムは、液滴1012が、流路1014を抜ける流れを介して通り過ぎる2つの温度領域1008および1010を備える。装置1000は、異なる温度領域の温度を監視するために、RTD1016と、関連するRTDコンタクトパッド1018とを備える。ボーラスおよびマイクロスフィアは、2つの温度のPCRを受けた後、ポート1020を通してシステムから出る。
【0084】
上述のように、マイクロスフィアは、TOなどの挿入色素で処理される。挿入色素は、二本鎖DNA内に挿入されるまでは、非蛍光性である。したがって、増幅されたDNAを含むマイクロスフィアは、ポート1020を通り抜けた後に、例えば、FACS技術によって特定可能である。その後、マイクロスフィアは、装置900(図9Aおよび9B)のような装置の分配流路内に導入される。一方、増幅されたDNAを含まないマイクロスフィアは、廃棄される。
【0085】
連続フロースルー型PCRシステム1000は、一例では、ペルフルオロ炭化水素のキャリアにけん濁されたPCR試薬のナノリットルの液滴を用いる。Song,H.,et al.、「A microfluidic system for controlling reaction networks in time」、Angewandte Chemie-International Edition 42, 768-772 (2003)を参照。これは、参照によって本明細書に組み込まれる。非混和液によって互いに分離された状態で、マイクロスフィアと、PCR試薬と、テンプレート断片とを含む液滴が、微細加工されたT字形インジェクタ1006で形成される。その後、液滴は、アニーリング−伸長−変性の温度に保持された装置の領域1008および1010を流れる。温度の異なる領域1008および1010における流路1014の長さは、それらの温度で要求される滞留時間に基づいて選択される。流路の断面積と、所望の流速とは、安定した液滴の形成を実現できるように選択される。装置のパラメータは、90秒間の変性温度でのホットスタートを実現し、その後に、1秒の自己伸長を伴う45秒間のアニーリング/伸長を35サイクルと、15秒間の変性時間とを実行するように、設定されてよい。最後の15サイクルは、80秒間の一定のアニーリング/伸長時間を有するよう構成されてもよい。
【0086】
装置1000は、2つの1.1mm厚×10cm径のボロフロートガラスのウエハを備えてよい。パターニングされたウエハ上の流路は、約210μmの幅と約95μmの深さとを有するD字形の断面を有してよい。他方のウエハ上には、装置の異なる地点において温度勾配を監視するために、Ti/PtのRTDが加工されてよい。流路にアクセスするための穴が、開けられてよく、2つのウエハは、互いに熱接着されて、流路を密閉してよい。ナノポート1002および1004は、PEEK管を介してマイクロリットルのシリンジに装置を接続するために用いられる。流路のガラス表面は、Srinivasan et al.、「Alkyltrichlorosilane−based self−assembled monolayer films for stiction reduction in silicon micromachines」、Journal of Microelectromechanical Systems 7、252−260、(1998)に記載された手順に基づいて、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリクロロシランによるシラン処理で疎水化されてよい。この論文は、参照によって本明細書に組み込まれる。2つのシリンジポンプは、水と、ペルフルオロデカリン(シスおよびトランスの混合物、95%、米国ニュージャージー州のAcros Organics社)および1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクタノール(米国ニュージャージー州のAcros Organics社)の10:1の混合物とを、それぞれ0.5μl/分の流速で供給するために用いられる。図10Bは、約1液滴/秒でのT字形インジェクタにおける液滴形成処理を示す図であり、図10Cは、流路を通って移動する際の液滴を示す図である。
【0087】
その技術は、一実施形態では、10nL液滴に含まれたマイクロビーズを用いる。スループットは、10液滴の内の1つが、1つのテンプレート分子と1つのビーズとの両方を含むように維持される。PCRミックスの水溶液は、100nLのミックス当たり1つのテンプレート分子が存在する(10液滴ごとに1分子に相当)ように準備される。さらに、PCRミックスには、10nLのミックス当たり1つの濃度(平均して1液滴ごとに1ビーズに相当)で、マイクロビーズが存在する。ポワソン分布によって決定されるように、10nLの液滴の37%は、マイクロビーズを1つだけ含み、残りの液滴は、1つも含まないか、2つ以上を含む。次いで、各液滴は、上述のように、光学的に走査されて、含有するビーズの数を決定される。液滴が含むマイクロビーズが1つでない場合には、弁1009が開放されて、その液滴を廃棄する。液滴の約3分の1は、1つのビーズを含むため、主流路に送られる。したがって、平均流速は、1.5秒当たり約1液滴となる。このように、主流路内の液滴はすべて、1つのマイクロビーズを含み、10の内1つは、さらに、1つのテンプレート分子を含む。
【0088】
装置1000の終点において、液滴は、ポート1020で収集されて、標準的なキャピラリを経由し、マイクロフュージ管に流入する。液滴は、遠心分離によって破壊される。マイクロビーズは、収集され、1XのTEで洗浄されて、再び、遠心分離される。マイクロビーズは、オンチップ検出を備えた能動(アクティブ)弁または自動弁によって、装置900の熱循環チャンバ内に送られる。オンチップ検出は、マイクロスフィアが熱循環チャンバの流入口に近づいたことを判定する光学スキャナまたはタイミング構成を備えてよい。光学スキャナは、上述のように、ビーズの光散乱を用いて、分配流路内のマイクロスフィアの位置を決定してよい。タイミング構成は、分配流路内の流体が非圧縮性であることに基づく。すなわち、分配流路内のマイクロスフィアの位置(例えば、熱循環チャンバの流入口の近くの位置など)は、分配流路内でのマイクロスフィアの滞在時間から算出可能である。これは、分配流路から96の入力の各々への弁による流入口を、例えば、単一の空気入力によって作動させることができるため有利である。また、空気入力は、検出されたビーズが、ビーズをまだ含まないリアクタの真正面(ディレクトリオポジット)に流されるまでは作動されない。
【0089】
2温度PCRを用いて配列決定テンプレートを生成する実現可能性を示すために、高温プライマを設計して、従来の熱循環器で試験した。M13ゲノムから943bpの増幅産物を生成するために、2つのプライマ、すなわち、M13_2T_F 5’TTCTGGTGCCGGAAACCAGGCAAAGCGCCA−3’(Tm=70.3℃)、および、M13_2T_R 5’− ACGCGCAGCGTGACCGCTACACTTGCCA−3’(Tm=70.7℃)を設計した。11nLのエマルジョン区画内に1つのテンプレート分子が存在する濃度に近づけるために、18.75フェムトグラムのM13テンプレートを、25μLのPCR反応に循環させた(94℃で1.5分のPCR反応の後、94℃で10秒、70℃で30秒を、50サイクル、1秒/サイクルの自己伸長で行った)。結果として生じる増幅産物は、約40ng/μLの収率で、期待されたサイズで単一のきれいなピークを示した。
【0090】
かかるシステムをゲノムDNAの増幅に用いた場合、1倍の網羅範囲(カバー)および1000bpsの平均断片サイズに対して、約300万の断片を増幅する必要がある。2つの異なる断片が最終的に1つの液滴内に含まれる可能性は、10の液滴の内の平均1つの液滴が1つの断片を含むように、PCR試薬内の断片を希釈することにより、0.01未満に低減できる。したがって、システムは、3,000万の液滴を処理する必要がある。この装置は、約1.5秒ごとに1つの液滴を生成するよう設計されている。20の装置を並行に実行すれば、ゲノム全体を増幅して、1組の配列決定システム900に適合させ、ほんの1ヶ月で1倍の網羅範囲を実現できる。
【0091】
本発明は、具体的な実施形態を参照して詳細に図示および記載されているが、本発明の趣旨や範囲から逸脱せずに、開示された実施形態の形態および詳細事項を変更することができることは、当業者にとって明らかなことである。例えば、上述の実施形態は、様々な材料を用いて実施されてよい。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
【0092】
[連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載]
本発明の技術とメカニズムとは、整理番号HG001399,PO1 CA77664,U01AI056472の米国国立衛生研究所の提供(NIH Grant)による政府のサポートによって、なされた。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】従来のゲノム規模の配列決定動作が備える工程を示す説明図。
【図2】本発明に従って、ゲノム配列決定処理が備える工程を示す説明図。
【図3】本発明で利用可能なクローニング処理を示す説明図。
【図4A】本発明に従って、単一流路マイクロ装置を示す説明図。
【図4B】図4Aの装置の一部を示す拡大図。
【図4C】単一流路マイクロ装置を示す分解図。
【図5A】伸長断片の捕捉の際の本発明の装置の蛍光画像を示す図。
【図5B】伸長断片の洗浄の際の本発明の装置の蛍光画像を示す図。
【図5C】伸長断片のサンプル注入の際の本発明の装置の蛍光画像を示す図。
【図6A】反応チャンバの部分拡大図と共に、装置の配列決定反応チャンバを示す説明図。
【図6B】図6Aの線分6B−6Bに沿った部分を示す図。
【図6C】配列決定されるDNAを運ぶビーズの捕捉に用いられる図6Aの反応チャンバの狭窄領域を示す説明図。
【図7A】空の配列決定反応チャンバの狭窄領域の明視野画像を示す図。
【図7B】溶液で満たされているが狭窄領域にマイクロスフィアが存在しない状態の配列決定反応チャンバの狭窄領域の明視野画像を示す図。
【図7C】配列決定反応チャンバの狭窄領域に配置されたマイクロスフィアの暗視野画像を示す図。
【図8A】ビーズの捕捉用に設計された配列決定反応チャンバの狭窄領域の別の実施形態を示す説明図。
【図8B】図8Aの線分8Bー8Bに沿った部分を示す図。
【図9A】集積配列決定アレイシステムの四分円状部分を示す説明図。
【図9B】図9Aのシステムの一部を示す拡大図。
【図10A】連続フロースルー型PCR微細加工装置を示す説明図。
【図10B】図10Aの線分10B−10Bにおける微細加工装置の「T字形」インジェクタ領域を示す拡大図。
【図10C】図10Aの線分10C−10Cにおける微細加工装置の流路の一部を示す拡大図。
【技術分野】
【0001】
[関連出願の説明]
本願は、米国特許法第119条(e)に従って、「MICROBEAD INTEGRATED DNA ANALYSIS SYSTEM(MINDS)」と題され、2004年6月1日に出願された米国特許仮出願第60/576,102号(代理人整理番号UCALP054P)からの優先権を主張するものであり、ここに参照によって組み込まれる。
【0002】
本発明は、微細加工構造およびマイクロ流体構造に関する。一例では、本発明は、ゲノム配列決定のための微細加工システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
有機体のゲノムは、その有機体のDNA(デオキシリボ核酸)によって、もしくは、一部のウイルスではRNA(リボ核酸)、によって規定されている。ゲノムの配列決定とは、DNAまたはRNA鎖のヌクレオチドすなわち塩基の順番を解読することである。
【0004】
DNAのゲノム規模の配列決定のための現在の方法を、図1に示す。このショットガン配列決定法100は、細菌形質転換、選択、および、培養によって、個々のゲノムDNA断片を操作する。この方法の最初の3工程、すなわち、せん断(シアリング)、ベクターライゲーション(vector ligation)、および、形質転換(工程102、104、および、106)は、1回だけ行えばよい。それらの工程自体は、特に問題を引き起こすものではない。最後の工程、すなわち、キャピラリ電気泳動(CE)(工程114)は、微細加工によって小型化されている。それにより、この工程に関連するコストおよび処理時間が低減されている。しかしながら、植種(プレート)および培養(工程108)と、採取、増殖、および、抽出(工程110)には、問題がある。これらの工程は、サンガー伸長工程(工程112)に先行して、クローンの単離と挿入物の増幅とを実行する。増幅は、細菌による方法、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、または、RCA(ローリングサークル増幅)であってよい。これらの工程は、小型化および集積化ができていない。したがって、現在の巨視的なパラダイムは、これらの主要な工程を実現する技術としてのロボット工学の利用に依存している。しかしながら、これは、3,000万以上のコロニーを採取および増殖して、ゲノムの配列決定のテンプレートを生成する必要があるため問題となる。さらに、かかるロボット技術によって準備される材料の最小量は、最新の微細加工CE分析システムが要求するよりも桁違いに大きい。
【0005】
したがって、ゲノム配列決定の処理時間、体積の規模、および、集積化のレベルを改善することが望ましい。また、ゲノム配列決定に関するコストおよびスペースの要件を低減することが望ましい。
【発明の開示】
【0006】
一態様では、本発明は、クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロリアクタ要素を複数の熱循環チャンバに分配するための分配流路を備える微細加工構造を提供する。1つの熱循環チャンバには、1つだけのマイクロリアクタ要素が入り、マイクロリアクタ要素から熱循環伸長断片が生成される。熱循環チャンバには、精製チャンバが結合され、伸長断片の捕捉および濃縮を行う。精製チャンバには、成分分離流路が接続されており、伸長断片の分析を行う。
【0007】
本発明の様々な実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。マイクロリアクタは、クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロキャリア要素を備える。マイクロリアクタ要素は、ボーラス(bolus)すなわちマイクロエマルジョン液滴である。マイクロリアクタ要素は、クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロスフィアを備える。配列決定テンプレートは、DNAまたはRNAの配列決定テンプレートである。
【0008】
さらに別の態様では、本発明は、配列決定を実行するためのシステムに関する。そのシステムは、DNAまたはRNAを断片にせん断する手段と、断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と、不純物(コンタミネーティング)である線形産物との混合物を形成する手段とを備える。そのシステムは、さらに、不純物である線形産物を選択的に除去する手段と、1つの配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロリアクタ要素を生成する手段とを備える。そのシステムは、さらに、配列決定テンプレートを有するマイクロリアクタ要素を選択する手段と、1つの配列決定テンプレートを有する選択されたマイクロリアクタ要素を熱循環チャンバに分配するマイクロ流体分配手段とを備える。さらに、システムは、1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロリアクタ要素が流れ込むことを保証する手段と、熱循環チャンバを備え、配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロリアクタ要素から熱循環伸長断片を生成する伸長手段とを備える。また、そのシステムの一部として、伸長断片を捕捉、精製、および、濃縮する精製チャンバ手段と、伸長断片を分析する成分分離手段とが備えられている。
【0009】
本発明の他の実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。マイクロリアクタ要素は、クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロキャリア要素を備える。マイクロリアクタ要素は、ボーラスすなわちマイクロエマルジョン液滴である。マイクロリアクタ要素は、配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロスフィアを備える。
【0010】
別の態様では、本発明は、クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロスフィアを複数の熱循環チャンバに分配するための分配流路を備える微細加工構造を提供する。1つの熱循環チャンバ内に1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証するために、熱循環チャンバの出口ポートには自動弁が配置されており、熱循環チャンバでは、マイクロスフィアから熱循環伸長断片が生成される。熱循環チャンバには、精製チャンバが結合され、伸長断片の捕捉および濃縮を行う。精製チャンバには、成分分離流路が接続されており、伸長断片の分析を行う。
【0011】
本発明の様々な実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。マイクロスフィアの直径は、約1から100ミクロンの間である。マイクロスフィアの直径は、約10ミクロンである。各熱循環チャンバと、分離流路との間では、流体が行き来する。配列決定テンプレートは、DNAまたはRNAの配列決定テンプレートである。
【0012】
さらに別の態様において、本発明は、配列決定テンプレートを運ぶマイクロスフィアを熱循環チャンバに分配するマイクロ流体分配手段を備える微細加工構造を提供する。1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証するために、自動弁手段が用いられる。熱循環チャンバを備える伸長手段が、配列決定テンプレートを運ぶマイクロスフィアから熱循環伸長断片を生成する。伸長断片は、集積化精製チャンバ手段を用いて、捕捉、精製、および、濃縮される。伸長断片を分析するために、成分分離手段が用いられる。
【0013】
本発明の他の実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。伸長手段は、複数の熱循環チャンバを備えたサンガー伸長手段である。自動弁手段は、熱循環チャンバの出口ポートに配置された自動弁を備える。精製チャンバ手段は、熱循環チャンバに接続された精製チャンバを備える。成分分離手段は、精製チャンバに接続された複数のマイクロ流路を備えたキャピラリアレイ電気泳動手段である。配列決定テンプレートは、DNAまたはRNAの配列決定テンプレートである。
【0014】
さらなる態様において、本発明は、熱循環チャンバを備える微細加工装置を提供する。熱循環チャンバは、クローンのテンプレートを運ぶマイクロスフィアを受け入れるよう構成されている。そのチャンバは、流入ポートと流出ポートを備えており、流出ポートは、チャンバ内にマイクロスフィアを捕捉して熱循環チャンバへのさらなる流入を実質的に遮断するよう構成された狭窄部を備える。
【0015】
本発明の様々な実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。狭窄部の形状は、実質的に円形または半円形である。流入ポートとの間で流体が行き来する流入路には、第1の弁が配置されており、流出ポートとの間で流体が行き来する流出路には、第2の弁が配置されている。動作中、第1の弁より前に第2の弁を閉じることで、熱循環の前に、マイクロスフィアを、狭窄部からそのチャンバの本体部分の中に移動させる。精製チャンバと熱循環チャンバの流出ポートとの間で流体が行き来し、精製チャンバの出力ポートと成分分離装置との間で流体が行き来するようになっている。
【0016】
さらに別の態様において、本発明は、配列決定を実行するためのシステムを提供する。そのシステムは、DNAまたはRNAを断片にせん断する手段と、断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と、不純物である線形産物との混合物を形成する手段とを備える。そのシステムは、さらに、不純物である線形産物を選択的に除去する手段と、一つの配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロスフィアを生成する手段とを備える。そのシステムは、さらに、配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアを選択する手段と、配列決定テンプレートを有する選択されたマイクロスフィアを熱循環チャンバに分配するマイクロ流体分配流路手段とを備える。さらに、そのシステムは、統計的に1つの熱循環チャンバ内に1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証する手段を備える。そのシステムは、さらに、熱循環チャンバを備えた伸長手段であって、配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロスフィアから熱循環伸長断片を生成する伸長手段を備える。また、そのシステムの一部として、伸長断片を捕捉、精製、および、濃縮する精製チャンバ手段と、伸長断片を分析する成分分離手段とが備えられている。
【0017】
本発明の他の実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。保証手段は、熱循環チャンバ内に配置された自動弁と、光学検出器と、タイミング機構との内の少なくとも1つである。光学検出器は、マイクロスフィアからの散乱光を検出する光学スキャナである。タイミング機構は、熱循環チャンバの流入口に隣接して配置された空気入力を備える。
【0018】
さらなる態様において、本発明は、DNA配列決定を実行するためのシステムを提供する。そのシステムは、DNAをDNA断片にせん断する手段と、DNA断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と、不純物である線形産物との混合物を形成する手段とを備える。そのシステムは、さらに、不純物である線形産物を選択的に除去するエキソヌクレアーゼ分解手段と、1つのDNA配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロスフィアを生成するエマルジョンPCR反応手段とを備える。さらに、そのシステムは、DNA配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアを選択する蛍光活性化細胞選別(FACS)手段を備える。DNA配列決定テンプレートを有する選択されたマイクロスフィアを熱循環チャンバに分配するために、マイクロ流体分配流路手段が用いられる。統計的に1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証するために、自動弁手段が用いられる。DNA配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロスフィアから熱循環伸長断片を生成するために、熱循環チャンバを備えたサンガー伸長手段が用いられる。伸長断片を捕捉、精製、および、濃縮するために、集積化精製チャンバ手段が用いられ、伸長断片を分析するために、キャピラリアレイ電気泳動手段が用いられる。
【0019】
またさらに別の態様において、本発明は、配列決定を実行するための処理を提供する。その処理は、DNAまたはRNAを断片にせん断する工程と、断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と、不純物である線形産物との混合物を形成する工程と、不純物である線形産物を選択的に除去する工程とを備える。その処理は、さらに、配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロリアクタ要素を生成する工程と、配列決定テンプレートを有するマイクロリアクタ要素を選択する工程と、その配列決定テンプレートを有するマイクロリアクタ要素を熱循環チャンバに分配する工程とを備える。配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロリアクタ要素から、熱循環伸長断片が生成される。伸長断片は、捕捉、濃縮、および、分析される。
【0020】
本発明の様々な実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。マイクロリアクタ要素は、クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロキャリア要素を備える。マイクロリアクタ要素は、ボーラスすなわちマイクロエマルジョン液滴である。マイクロリアクタ要素は、クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロスフィアを備える。分配工程は、1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロリアクタ要素が入るように実行される。1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロリアクタ要素が入ることを保証するために、熱循環チャンバの出口ポートに配置された自動弁が用いられる。例の生成工程は、エマルジョンPCR反応またはフロースルー型PCR処理によって、配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を生成する工程を備える。選択工程は、FACSである。
【0021】
さらに別の態様において、本発明は、DNA配列決定を実行するための処理を提供する。その処理は、DNAをDNA断片にせん断する工程と、DNA断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と、不純物である線形産物との混合物を形成する工程と、不純物である線形産物をエキソヌクレアーゼ分解によって選択的に除去する工程とを備える。DNA配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロスフィアが、エマルジョンPCR反応によって生成される。DNA配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアが、FACSによって検出される。そのDNA配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアは、熱循環チャンバに分配される。統計的に1つの熱循環チャンバ内に1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証するために、熱循環チャンバの出口ポートに配置された自動弁が用いられる。DNA配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロスフィアから、熱循環伸長断片が生成される。伸長断片は、捕捉、精製、濃縮、および、分析される。
【0022】
本発明の様々な実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。捕捉工程は、オリゴヌクレオチド捕捉マトリクスを用いる。
【0023】
またさらに別の態様において、本発明は、配列決定のための方法を提供する。その方法は、熱循環チャンバの流入ポートにおいてクローンのテンプレートを運ぶマイクロスフィアを受け入れる工程と、チャンバの流出ポートに配置された狭窄部を用いて、チャンバ内でマイクロスフィアを捕捉してチャンバへのさらなる流入を実質的に遮断する工程とを備える。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、配列決定テンプレートを運ぶマイクロスフィアを生成する工程を備える分析方法を提供する。マイクロスフィアは、熱循環チャンバへのさらなる流入を実質的に遮断するように、熱循環チャンバの出力ポートに配置された狭窄部によって熱循環チャンバ内に配置される。
【0025】
本発明の他の実施例は、以下の特徴の1または複数を備えてよい。熱循環チャンバの流入ポートに、第1の弁が配置されると共に、熱循環チャンバの流出ポートに、第2の弁が配置されており、第2の弁は、第1の弁よりも前に閉じられてよい。これにより、熱循環の前に、マイクロスフィアが、狭窄部から熱循環チャンバの本体部分に移動される。
【0026】
本発明は、以下の利点の内の1または複数を備えうる。ショットガンゲノム配列決定に要求される面倒な細菌の操作の代わりに、自動化および集積化が容易なインビトロ(in vitro)の工程を用いることができる。それにより、数百万回の手動またはロボットによるコロニー採取動作が排除される。配列決定伸長断片を生成、精製、および、分離するために必要な流体および温度に関する制御構造すべてが、微細加工装置に集積される。コスト、時間、および、空間の大幅な節約を実現できる。他の遺伝子分析技術を実行することも可能である。
【0027】
本発明に関する上述およびその他の特徴と利点は、本発明の原理を例示的に説明する本発明の明細書および添付の図面を参照して詳細に提示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
ここで、本発明を実施するために発明者が検討した最良の実施形態を含む本発明のいくつかの具体的な実施形態について詳細に説明する。これら具体的な実施形態の例は、添付の図面に示されている。本発明は、これら具体的な実施形態に関連して説明されているが、説明されている実施形態に本発明を限定する意図はない。逆に、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の趣旨および範囲に含まれうる代替物、変形物、および、等価物を網羅するよう意図されている。
【0029】
以下の説明では、本発明の完全な理解を促すために、数多くの具体的な詳細事項が記載されている。本発明は、これら具体的な詳細事項の一部あるいはすべてがなくとも実施可能である。また、本発明を不必要にわかりにくくすることを避けるために、周知の処理動作については、説明を省略した。
【0030】
さらに、本発明の技術および機構は、明確にするために単数形で表す場合がある。しかしながら、一部の実施形態は、特に断らない限りは、1つの技術を複数回繰り返したり、1つの機構を複数回用いたりしてよいことに注意されたい。
【0031】
本発明のシステムおよび方法は、DNA配列決定に関連して説明されている。しかしながら、同じシステムおよび方法を、RNA配列決定に利用してもよい。さらに、同じシステムおよび方法を、DNAまたはRNAに関する他の遺伝分析に利用してもよい。
【0032】
本発明のシステムおよび方法は、一部の実施形態ではマイクロスフィアやビーズなどのマイクロキャリア要素を含むマイクロエマルジョン液滴すなわちボーラスなどのマイクロリアクタ要素を用いる。マイクロキャリア要素は、ボーラスすなわちマイクロエマルジョン液滴の中に含まれており、DNA産物またはRNA産物を捕捉するのに有用である。すなわち、増幅されたDNAまたはRNAを、マイクロキャリア要素に対して化学的に結合させることができる。あるいは、増幅されたDNAまたはRNAは、マイクロキャリア要素を利用せずに、マイクロリアクタ要素によって運ばれてもよい。例えば、ボーラスすなわちマイクロエマルジョン液滴の中でPCR反応を実行してよく、その後、結果として得られたボーラスすなわちマイクロエマルジョン液滴を、次の処理工程に送ってよい。
【0033】
本発明の微細加工集積DNA分析システム(a microfabricated integrated DNA analysis system:MINDS)は、マイクロ流体サンプル成分分離装置に容易に適合できるシステムおよび方法を提供する。図2に示すように、MINDS処理200は、一実施形態において、DNAをDNA断片にせん断する工程(工程202)から始まる。次に、断片は、ライゲーション(ligate)を施されて、所望の環状産物と不純物である線形産物との混合物を形成する(工程204)。次に、不純物となる線形産物は、例えば、エキソヌクレアーゼ分解によって選択的に除去される(工程206)。次いで、DNA配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロスフィアのコロニーが形成される(工程208)。コロニーは、例えば、エマルジョンPCR反応によって生成されてよい。次に、DNA配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアが特定される(工程210)。マイクロスフィアは、蛍光活性化細胞選別(a fluorescence activated cell sorting:FACS)技術によって特定されてよい。かかる作業は1回だけ実行すればよく、6時間以内で完了できる。次に、DNA配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアは、伸長断片を生成する複数の熱循環すなわち配列決定反応チャンバに分配され、その後、断片は、精製および濃縮される(工程212)。次いで、伸長断片は、例えば、CE装置などのサンプル成分分離装置によって分析される(工程214)。
【0034】
MINDSの方法、処理、および、装置は、一実施形態において、熱循環、親和性による捕捉、サンプルの精製、および、キャピラリアレイ電気泳動(CAE)の構成要素を集積した微細加工構造を備える。以下で説明するように、かかるシステムは、配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロスフィアを複数の熱循環すなわち配列決定反応チャンバに分配するためのマイクロ流体分配流路を備える。マイクロスフィアから熱循環伸長断片を生成する各チャンバにマイクロスフィアを確実に1つだけ流入させるように、熱循環チャンバの出口ポートに、自動弁を配置してよい。熱循環チャンバには、精製チャンバが接続され、伸長断片の捕捉、精製、および、濃縮を行う。精製チャンバには、伸長断片の分析を行うための微細加工CE分離流路が接続されている。
【0035】
本発明は、従来の配列決定における、困難、高価、かつ、時間の掛かるインビボ(in vivo)でのクローニング、選択、コロニー単離、および、増幅の工程を排除する。これらの工程の代わりに、小型化および自動化が容易なインビトロ(in vitro)の工程を用いる。
【0036】
マイクロスフィアは、理想的なキャリアであり、サイズ、表面、蛍光、および、磁気の特性を柔軟に制御できる。微細加工と、それに伴う試薬の体積の低減とによって、配列決定反応チャンバを小型化することで、単一のクローンマイクロスフィアを、十分なDNA配列決定テンプレートのキャリアとして利用することが可能になる。これにより、ナノリットルの伸長、浄化、および、配列決定の処理との直接的な統合に適した、クローンテンプレートの選択、増幅、および、選別を可能にする処理工程を用いることができるようになる。
【0037】
図3は、MINDSと共に利用可能なクローニング処理300の概略を示す図である。その処理は、ライブラリの作成および選択を含む。一実施形態では、ゲノムDNAが、全血から分離され、その後、ネブライザでせん断されて、DNA断片を生成する(工程302および304)。次に、DNA断片は、酵素処理を受けて、平滑末端DNAを生成する(工程306)。処理された断片は、ベクター内にライゲーションされて、所望の環状産物と不純物である線形産物との混合物を生成する(工程308および310)。次いで、エキソヌクレアーゼ分解によって、挿入物およびベクターと、不純物である線形産物とを、ライゲーション産物から除去して、残りのベクターの内の約95%よりも多くが、挿入物を含み、所望の環状産物となるようにする(工程312)。
【0038】
クローニング処理300の最初の5つの工程(工程302から310)は、標準的なライブラリ作成の手順に従う。より具体的には、Invitrogen社(カリフォルニア州カールズバッド)が、1ないし6Kbの挿入ゲノムショットガンライブラリを2時間で作成できるTOPOサブクローニングキット(#K7000−01)を供給している。そのサブクローニングキットは、Qiagen社(ノルウェイ、オスロ)のBlood&Cell Culture DNA Mini Kit(#13323)を用いて、1mLの全血から得られる約20マイクログラム(μg)のゲノムDNAを要求する。DNAは、ネブライザでせん断されて、1ないし6KbのDNA断片を生成する。次に、断片は、T4 DNAポリメラーゼおよびクレノウポリメラーゼと、仔牛小腸ホスファターゼ(calf intestinal phosphatase:CIP)とによる酵素処理を受けて、脱リン酸化された平滑末端DNAを生成する。次いで、処理された断片は、Invitrogen社のpCR 4Blunt−TOPOベクター内にライゲーションされる。クローニングベクターに共有結合するワクシニアウイルストポイゾメラーゼI(vaccinia virus topoisomerase I)を用いることにより、迅速かつ効率的なライゲーション(5分間の室温でのライゲーションにより、95%を超える形質転換体が生成される)が実行され、ライゲーションの前に挿入物の脱リン酸化が可能になるため、キメラクローンの形成が防止される。
【0039】
標準ライブラリの作成における最後の工程(工程312)は、インビトロMINDS処理に適合するよう修正されており、細菌形質転換と抗生物質選択とを含む。エキソヌクレアーゼ分解は、所望のライゲーション産物から挿入物およびベクターを選択的に除去する。λエキソヌクレアーゼ(New England Biolabs社の#M0262S)は、5’−リン酸化および非リン酸化二本鎖DNAを分解するが、ライゲーション後のベクターに存在するニックにおいてDNAの消化を開始できないため、上記の工程で利用可能である。開始ゲノムDNAの回収が1%であると悲観的に仮定すると、結果としてのライブラリは、10倍の配列カバー(sequence coverage)に必要な6,000倍以上の余分な分子を含むが、この余分は、後述する1分子PCR増幅工程において、希釈によって低減される。
【0040】
ペア末端の全ゲノムデノボ配列決定(de novo sequencing)のために、挿入物のサイズを厳密に制御することが要求される場合には、DNAのせん断(工程304)後に、ゲルの分離およびバンドの精製の工程を実行できる。あるいは、挿入物のサイズは、PCR増幅の間の伸長時間を制限することにより制限されてもよいし、狭い蛍光強度範囲内のマイクロスフィアをフローサイトメトリで選択することにより制限されてもよい。チアゾールオレンジ(TO)などの挿入色素でマイクロスフィアのクローンを標識(ラベル)すると、増幅産物(アンプリコン)のサイズに比例した蛍光信号が得られる。フローサイトメトリは、MINDS処理内の工程であるため、>5%の再環状化ベクターも排除する魅力的なサイズ選択方法であり、唯一の欠点は、収率が低下することである。
【0041】
サブクローニングキットで用いられるベクターは、T7およびT3プライミング部位が挿入部位から33bp(base pairs:塩基対)離れるよう、配列決定に最適化されてよい。MINDSのベクターには、生物学的制約がないため、配列決定のプライミング部位を、挿入部位の近くに移動して、pUC ori、f1 ori、lacZ、および、抗生物質抵抗性の遺伝子を除去してもよい。サンプルの浄化を改善し、プライマの二量体形成を低減するために、最適化されたアクリダイト捕捉配列(acrydite capture sequences)およびホモのPCRプライミング部位を挿入してもよい。
【0042】
MINDS処理における配列決定は、個々のマイクロスフィアまたはビーズに付着したクローンテンプレートDNAを用いてよい。クローンの付着は、プライマの1つをマイクロスフィアに共有結合させることによって実現される。
【0043】
単一分子の増幅(例えば、マイクロエマルジョンポロニー)または組み合わせハイブリダイゼーション方法による1,000から100,000のDNA分子のクローン単離について示した。Mitra,R.D.,et al.、「Digital genotyping and haplotyping with plymearase colonies」、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、2003、100(10)、p.5926−5931;Dressman,D.,et al.、“Transforming single DNA molecules into fluorescent magnetic particles for detection and enumeration of genetic variations”,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、2003、100(15):p.8817−8822;Brenner,S.,et al.、“Gene expression and analysis by massively parallel signature sequencing (MPSS) on microbead arrays”、Nature Biotechnology、2000、18(6):p.630−634、を参照。これらは、それぞれ、参照によって本明細書に組み込まれる。従来のマイクロチップによる配列決定は、1反応あたり約10億のテンプレートDNA分子を要求する。20倍の線形サンガー配列決定の増幅後には、200億の伸長断片が生成され、これは、共焦点ラジアルスキャナを用いた高い信号対雑音(S/N)検出((1バンドあたり100万の断片)×1,000バンド=10億の分子)にとって20倍の余分になる。クロスインジェクション(cross-injection)処理は、交点で等モル混合物が得られるまで分離カラムに伸長断片を流した後に、全サンプルの内の約5%を注入することを要求するため、上記の余分が必要である。以下で説明する親和性捕捉によるダイレクトインジェクション(direct-injection)の方法では、20倍の余分は必要なく、要求される最初のテンプレートの複製物は5,000万だけである。
【0044】
CPG Biotech社(ニュージャージー州リンカーンパーク)は、8,000万のDNA分子を確実に結合させることができるアミン修飾プライマへの共有結合のための長鎖アルキルアミンリンカーを備え、5ミクロン(μm)に制御された多孔ガラス常磁性マイクロスフィアを生産している。単一のDNA分子から始まり、30サイクルのPCRによって、理論的には、10億のDNA分子が得られる。実際には、得られる分子は、各サイクルの効率が100%未満であること、後半のサイクルで酵素の活性が落ちること、および、pL規模の反応では試薬が限られていることから、それほど多くはない。クローンマイクロスフィアを生成するためには、DNA分子と、プライマが結合したマイクロスフィアとを、1つずつPCRリアクタに配置する必要がある。効率的な単一分子PCRには、単一DNA分子の有効濃度を増大させるために、極度に小さい容積のリアクタ(1−10pL)が要求される。ヒトのサイズのゲノムの配列決定を行うには、約3,000万のマイクロスフィアのクローンが必要である。チャンバにおける単一マイクロスフィアおよび単一DNA分子の高スループットな組み合わせは、統計的に希釈されたマイクロエマルジョンの溶液を用いて実現できる。DNA分子およびマイクロスフィアが、リアクタの容積の10倍の体積に1つの種が存在するように、それぞれ希釈されれば、リアクタの内の1%では、高い可能性(99%より大きい)で両者が同時に存在する(コンカレンス)。リアクタの99%が非生産的であるため、3,000万のマイクロスフィアのクローンを生成するために、100倍(30億)以上の反応が要求される。
【0045】
多数の小容積の反応を起こすには、微細加工PCR装置およびエマルジョンPCRという2つの方法が可能である。しかしながら、PCR装置は、要求される30億の反応を実現するために、数千回の実行を必要とする。一方、エマルジョンPCRは、従来のサーマルサイクラを用いて、1つのチューブ内で数百万から数十億の別個の区画に熱循環することができる。エマルジョンPCRによって磁性粒子に付着されたクローンPCR増幅産物(アンプリコン)が生成される。平均して、各マイクロスフィアは、10,000を超える250bpの増幅産物を含んでおり、これは、各5μm径の区画において利用可能なヌクレオシド三リン酸に基づく理論的な最大値600,000増幅産物よりも小さい値である。15ミクロンのマイクロエマルジョンPCR区画については、1,000bpの増幅産物の最大数が、最初のテンプレートの複製物として最低限要求される5,000万の10分の1の値である500万であることが示された。この問題は、様々な方法で解決できる。
【0046】
第1に、ビーズに結合するDNAの量を増大させるために、さらなるマイクロエマルジョンPCR工程を実行してよい。第2に、試薬に制限されない増幅工程を、蛍光フローサイトメトリ工程後に追加する必要があってもよい。補助的なPCR増幅は、常磁性マイクロスフィアが、個々のリアクタに送られて磁気的に保持されるオンチップで二重用途の熱循環チャンバで実行可能である。未使用のPCRミックスをチャンバに通し、15回熱循環させて、各マイクロスフィアを最大の8,000万テンプレートまで飽和させる。この場合、サンガー配列決定反応ミックスが、チャンバ内に流されて、固相配列決定に続く際に、磁界が維持される。最終的に、スキャナのS/Nが10倍まで改善されることで、上述の計算よりも約10倍少ないテンプレートの配列決定を可能にできる。
【0047】
約1,500万の15μm径の区画が、25μL水相、75μL油相のエマルジョン内に形成されてよい。コインシデントな単一DNA分子および単一のマイクロスフィアの事象を3,000万だけ生成するためには、30億の区画が要求される。したがって、100μLの96ウェルプレートでの反応が約2回要求される。反応が終了すると、3億の非標識マイクロスフィアのバックグラウンドから、3,000万のマイクロスフィアのクローンを分離する必要がある。
【0048】
上述のように、配列決定テンプレートを有するビーズは、FACSによって特定されてよい。利用可能なシステムとしては、カリフォルニア州サンノゼのBD Biosciences社が供給するBD FACS ArrayBioanalyzer Systemが挙げられる。BD FACS Arrayのフローサイトメータは、1秒間に15,000までのイベントを処理することが可能であり、6時間未満で、10倍の網羅範囲(カバー)である30億のベースゲノムに要求されるすべてのクローンの単離を可能にする。ビーズは、TOなどの挿入色素で処理される。挿入色素は、二本鎖DNA内に挿入されるまでは、非蛍光性である。TOの蛍光強度は、DNAの量に対して線形に比例するため、増幅されたDNAを有するビーズとそうでないビーズとを簡単に区別できる。
【0049】
図4A、4B、および、4Cは、本発明に従った単一流路マイクロ装置400を示す図である。その装置は、マイクロ流体弁と、ヒータと、抵抗温度検出器(RTD)と、すべての反応、捕捉および浄化、CEのための構造と、を備える4つの層、すなわち、ガラス−ガラス−PDMS(ポリジメチルシロキサン)−ガラスのサンドイッチ構造として形成されてよい。その装置は、別の実施形態では、ガラス−PDMS−ガラス−ガラスのスタックとして形成されてもよい。弁と、ヒータと、RTDと、チャンバと、CE構造とを備える4層の微細加工システムについては、2003年12月29日に出願された米国特許出願No.10/750,533、「Fluid Control Structures In Microfluidic Devices」に記載されている。この出願は、本願の譲受人に譲渡されたものであり、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0050】
マイクロ装置400は、伸長断片の生成、反応の浄化、および、伸長断片の分離(図2の工程212および214)を含むMINDS処理における後処理工程すべてを実行することができる。装置400は、熱循環すなわち配列決定反応チャンバ402と、捕捉・精製チャンバ404と、分離流路407を有するCEシステム406とを備える。図に示すように、装置400のこれらの構成要素は、様々な弁および流路によって接続されている。熱循環チャンバの内容物を加熱するために、ヒータ(図示せず)、例えば、カプトンヒータを用いてよい。チャンバのテンプレートは、RTD405によって監視される。
【0051】
図4Cに示すように、その装置400は、流路層430と、ビア層432と、マニホルド層434とを含む3つのガラス層を備える。ビア層432とマニホルド層434との間には、PDMS膜層436が設けられている。最上層430は、熱循環リアクタと、捕捉チャンバと、CE形状とを含む。第2の層432は、ガラスウエハの上面にRTDを備え、下面にエッチング形状を備えることで、下の膜層436と共に弁およびポンプを形成している。最後の層434は、ヒータを備えており、空気圧アクチュエーションラインおよび置換チャンバによって弁およびポンプ構造を完成させている。
【0052】
一動作方法では、装置400のポート408からマイクロ弁410を介して熱循環チャンバ402に、配列決定マスターミックスがロードされる。チャンバ402の容積は、約250ナノリットル(nL)でよい。CEシステム406の分離流路は、ポート412からポート414まで、線形のポリアクリルアミドで満たされる。CEシステムは、16センチメートル(cm)のハイパーターンシステムであってよい。ポート416からポート418まで、アクリダイト(acrydite)の捕捉マトリクスをロードして、捕捉チャンバ404と、介在する狭まったチャンバ419とを満たす。チャンバ402の熱循環後、伸長断片と残った反応物質とを、弁420と流路422とを通して捕捉チャンバ404内に、電気動力学的に送り出す。次に、捕捉された伸長断片は、電気泳動によって洗浄され、流路424内に注入されて、CEシステム406による分離に備える。
【0053】
この親和性捕捉・サンプル浄化マイクロ装置の利点は、合成中に追加されたアクリダイトのモノマの量によって決まる濃度で、1−10nL中に、精製された伸長断片を保持できる点である。図5A、5B、および、5Cは、熱循環、捕捉、洗浄(精製)、サンプルの濃縮、および、分離が実行される装置400と同様のマイクロ装置500の動作から得られた蛍光画像(印加される相対電位を「+」および「−」で示している)を示す図である。具体的には、5% w/vのアクリルアミドと、1×TTE(50mMのTris、50mMのTAPS遊離酸、1mMのEDTA、pH=8.4)と、20nmolのメタクリル酸塩修飾のオリゴとの2mL溶液内で、アクリダイト捕捉マトリクスを合成した(5’−アクリダイト−ACTGGCCGTCGTTTTACAA−3’、TM=60.4℃、カリフォルニア州エメリービルのOperon Technologies社)。その溶液は、0.015% w/vのAPSおよびTEMEDを加えて重合を開始する前に、2時間アルゴンで拡散した。次いで、重合された捕捉マトリクスを、1mLシリンジを用いて捕捉チャンバ504に注入した。ポリマ配列決定マトリクス(CEQ、カリフォルニア州フラートンのBeckman社)を、高圧ゲルローダを用いて、CEシステム506にロードした。80nMのETプライマと、1×Cターミネータミックス(Amersham社)と、4nMのPCR産物とを含むC−トラック・マスターミックスを準備して、250nLの熱循環チャンバすなわちリアクタ(図示せず)に注入した。LabVIEWプログラム(National Instruments社、テキサス州オースチン)を用いてオンチップで、熱循環(35回、94℃ 30秒、45℃ 40秒、70℃ 40秒)を実行した。
【0054】
まず、50℃に加熱されたステージ上で30秒間、マイクロ装置の平衡を保つことにより、配列決定反応の浄化を実行した。次に、捕捉チャンバの出口(図4Aのポート416)に2,000Vを印加しつつ、リアクタの入り口(図4Aのポート408)を接地することにより、サンプルの捕捉(図5A)を開始した。このように、伸長断片および残留ヌクレオチドと、プライマと、塩とを含むサンプルを、熱循環チャンバから流路522を通して捕捉チャンバ504に電気泳動した。伸長断片は、捕捉チャンバ内でアクリダイトマトリックスにハイブリダイズするが、残留反応物質は、通過する。オリゴヌクレオチドの捕捉が完了すると、保持された伸長断片を30秒間、電気泳動によって洗浄して(図5B)、捕捉チャンバ内に残った余分なプライマや他の不純物を除去した。電気泳動によって洗浄した後、ステージを傾斜させて70℃にし、60秒間平衡を保ち、産物−マトリクスの二本鎖(デュープレックス)を完全に変性させた。変性されたサンプルは、アノードに2,500Vを印加しつつ、捕捉チャンバの出口を接地することにより、CE装置506の分離カラム507に直接注入される(図5C)。(ただし、流路の構造を強調して、蛍光の表面不純を除去するように、画像処理を行った)。
【0055】
あるいは、まっすぐなクロスインジェクタと、30cmの分離キャピラリとを用いてもよい。これにより、分解能が向上される。
【0056】
マイクロスフィアコロニーの生成手順と、単一リアクタのマイクロ装置とは、再配列決定の試みに適したシングル末端の読み取りを生成できる。複雑なゲノムのデノボ(de novo)全ゲノムショットガン配列決定を行うには、長短の挿入クローンからのペア末端の読み取りが要求される。マイクロスフィアのサブセットに対して、蛍光フローサイトメトリの前にロングレンジPCRを用いて、長挿入物クローンを選択的に生成することができる。従来のペア末端の配列決定は、マイクロスフィアから、クローンDNAを解放して、別個の順方向および逆方向の配列決定リアクタに送ることができるように、手順およびマイクロ装置を修正することを要求する。別の方法では、変更された塩基標識方法を用いて、塩基のサブセットに対して、同時に順方向および逆方向の配列決定を実行する。これらのペア末端読み取りは、配列アセンブリに4塩基シングル末端読み取りを固定するのに適した長い1塩基または2塩基の読み取りを生成する。
【0057】
図6A、6B、および、6Cに示すように、マイクロスフィア600を用いて、配列決定反応が実行される熱循環すなわち配列決定反応チャンバ602に、クローンテンプレートを移送する。この処理では、各配列決定反応チャンバに1つのマイクロスフィアを導入することが要求される。そのために、個々に作動される弁や検知の必要なしに、配列決定反応チャンバ内に個々のマイクロスフィアを捕捉する自動弁技術を用いる。
【0058】
図に示すように、反応チャンバ602は、導入流路すなわちアーム604と、出口流路すなわちアーム606とを備える。導入流路と、反応チャンバの流入ポート605との間で、流体が行き来するようになっており、出口流路と、反応チャンバの流出ポート607との間で、流体が行き来するようになっている。反応チャンバの流出端部すなわちポートに、狭窄部または狭窄領域608を形成することにより、自動弁を実現する。狭窄領域は、半円の形状を有する。
【0059】
狭窄部は、マイクロスフィアを、チャンバを出る前に捕捉する。捕捉されたマイクロスフィアは、流速を低減することにより、さらなるマイクロスフィアがチャンバに流れ込むのを防止する。マイクロスフィアの希釈は、最初のマイクロスフィアがチャンバを閉塞する前に、別のマイクロスフィアが反応チャンバに流れ込む可能性が、約0.5%未満になるように選択される。この統計的な方法が、信頼できない、すなわち、選別率が低い場合には、ビーズの光散乱に対するオンチップ・センサを用いることが可能であり、選別ループに2つの弁を追加して、より時間的に一様なビーズ分布を実現することも可能である。
【0060】
図6Aないし6Cに示した装置を形成するために、ガラス加工処理を用いることができる。一例では、狭窄部を除くすべての形状を、30μmの深さまで等方性エッチングした。サンプルのための導入流路および出口流路は、70μmの幅と、15mmの長さを有するよう構成した。配列決定チャンバの容積は、250nLであった。流路および反応チャンバのための基本的な加工処理が完了した後に、第2のマスクを用いて、狭窄部を加工した。このために、より粘性の高いフォトレジスト(SJR 5740、Shipley社、マサチューセッツ州マールボロ)を、2500rpmで35秒間、ウエハ上に回転塗布する。この次に、70℃で7分間および90℃で6分間の弱い焼成を行った。より粘性の高いフォトレジストにより、形状を形成されたウエハ上に、より一様な被覆が施される。次に、コンタクトプリンタを用いて、被覆されたウエハに、狭窄部のパターンを転写した。位置決めマークを用いて、すでにエッチングされた流路およびチャンバに対して狭窄部の位置決めを行った(±1μm)。現像(ディベロップメント)後、プラズマエッチングによって、アモルファスシリコンのマスク層を除去し、5:1BHFを用いて、2μm/時の有効エッチング速度で1.5時間、露出されたガラスを湿式エッチングした。これにより、狭窄部の深さすなわち高さは、3μmになった。狭窄部の幅は8μmに設定され、長さは15μmに設定された。
【0061】
1×Tris(pH8.0)および1%のTriton X−100の溶液に、6μm径のストレプトアビジン被覆フルオレスブライト(Fluoresbrite)YGカルボキシル化ポリスチレン・マイクロスフィア(Polysciences社、ペンシルベニア州ウォリントン)をけん濁して、最終的に1マイクロスフィア/3μLとなるように希釈した物を用いて、自動弁の構想の試験を行った。ポワソン分布を用いた計算によると、反応チャンバ容積の10倍の希釈によって、最初のマイクロスフィアが狭窄部を閉塞する前に、別のマイクロスフィアが250nLのチャンバに入る可能性が、約0.5%未満になる。
【0062】
図6Aないし6Cに示したものと同様の装置を、1×Tris(pH8.0)および1%のTriton X−100の溶液で事前に満たした。マイクロスフィア溶液(6μL)を、流入口にピペットで注入した。チャンバを通してビーズを引くために、真空ラインを用いた。マイクロスフィアが狭窄部で捕捉されると、圧力低下が、−60kPaから−70kPaに増大して、最初の60秒以内に、閉塞が起きた。12分間、実験を継続したが、その他のマイクロスフィアが、チャンバに入るのは観察されなかった。
【0063】
図7Aおよび7Bは、それぞれ、空の状態および溶液を満たした状態(マイクロスフィアを含まない)の熱循環チャンバ702の狭窄領域708の20倍に拡大した明視野画像を示す図である。図7Cは、蛍光マイクロスフィア700が狭窄部708に捕捉されて弁として機能している状態の熱循環チャンバ702の暗視野画像を示す図である。約6μm径のマイクロスフィアについて、実験を行った。この構想は、リアクタ内のテンプレートの数を増大するために、より大きいマイクロスフィアに容易に拡張することが可能である。また、より小さいマイクロスフィアを用いてもよい。特に、マイクロスフィアは、約1から100μmの直径を有してよい。一実施形態では、マイクロスフィアは、10μmの直径を有する。
【0064】
完全に流れを遮断する別の自動弁の実施形態を、図8Aおよび8Bに示す。この実施例では、反応チャンバ802は、チャンバの流出ポート807に形成されたほぼ円形の狭窄部または狭窄領域808を有する。チャンバおよび狭窄部は、ダブルエッチング、すなわち、2つの結合されたガラス面の両方にエッチングされる。これにより、図6Aないし6Cの実施形態の半円形の狭窄部と異なり、ほぼ円形の狭窄部が形成される。これは、マイクロスフィア800を捕捉するために、より良好な弁の機能を提供する。
【0065】
上述のように、弁は、配列決定反応すなわち熱循環チャンバ402(図4Aおよび4B参照)の両側に組み込まれる。マイクロスフィアは、狭窄部に捕捉されると、クローンテンプレートが、ポリメラーゼ、プライマ、dNTP、および、ddNTPに対して良好な接近性を有するように、熱循環のためにチャンバ内に押し戻される必要がある。流入弁410を閉じる前にチャンバの出口の弁420を閉じることにより、弁の限定されたデッドボリュームの結果、マイクロスフィアは、チャンバ内に押し戻される。この原理は、複数の流入弁および複数の流出弁を並行に(インパラレル)作動させることにより、簡単にアレイシステムに拡張できる。
【0066】
DNA分析のための高スループットで完全に集積されたシステムを実現するために、熱循環チャンバ、精製チャンバ、および、配列決定断片のCE分析のための分離流路を組み込んだ集積分析器の微細加工アレイを提供する。かかるシステム900の説明図を、図9Aおよび9Bに示した。このシステムは、図4Aないし4Cの単一流路装置を、高度な並列分析を実行できるアレイ構造に拡張したものである。
【0067】
様々な実施形態によると、システム900は、複数の熱循環チャンバ902と、それらに関連するサンプル精製すなわち捕捉チャンバ904とを、円の中心線の周りに配置して、放射状の並列システムを形成している。熱循環チャンバおよびサンプル精製チャンバは、すべて、分離流路すなわちマイクロ流路908を備えたCE分析システム906と統合されている。CE分析器は、共通の中央アノード(A)910と、カソード容器(C)912と、廃棄物容器(W)914とを備える。カソードおよびアノード容器は、隣接する分離流路908のセットに関連している。マイクロ流路908は、回転式共焦点蛍光スキャナを用いて検出を行うために、アノード910に結合されている。このスキャナは、「High−throughput genetic analysis using microfabricated 96−sample capillary array electrophoresis microplates」、Peter C.Simpson,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA、Vol.95、pp2256−2261、1998年3月、という論文に記載されている種類のものであり、この論文は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0068】
システム900は、さらに、分配流路916と、集積ヒータ918aおよび918bと、RTD920とを備える。ヒータ918aおよび918bは、それぞれ、複数の熱循環チャンバおよび複数の精製チャンバを並行に(インパラレル)扱う。このように、複数の熱循環チャンバおよびサンプル精製チャンバに対して、単純な環状のヒータを用いれば十分である。
【0069】
これらの反応の温度は、RTDによって監視される。一実施形態では、等間隔に配置された4つのRTDが、基板に組み込まれており、最適な熱循環性能を実現するために、ヒータ918aの全体にわたって正確な温度検出を行う。同様に、等間隔に配置された4つのRTDを用いて、ヒータ918bの温度を監視することができる。
【0070】
システム900は、さらに、システムにおける流れを制御するために集積された弁およびポートのアレイを備える。それらの弁は、モノリシックエラストマ(PDMS)膜の弁であってよい。そのシステムは、上述の米国特許出願No.10/750,533(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されているように加工されてよい。すなわち、システムは、マイクロ流体弁およびポンプと、RTDと、熱循環チャンバと、浄化および濃縮チャンバと、CE流路とを組み込んだ4つの層(ガラス−ガラス−PDMS−ガラス)のスタックを備えてよい。
【0071】
システム900は、一実施形態では、24の熱循環チャンバと、24の精製チャンバと、24のCE流路とを、150mm径のガラス基板の四分円状部分に配列されている。各熱循環チャンバ(〜250nL)は、PDMS膜の弁(V1)922によって分配流路から隔てられている。サンプルの動き、泡の形成、および、サンプルの蒸発は、性能に深刻な影響を与えるので、熱循環中に泡の発生なしにサンプルをロードして動かないようにするために、動作中の(アクティブ)弁によってチャンバの容積をしっかりと封じ込めることが必要である。
【0072】
RTDは、チタン(Ti)およびプラチナ(Pt)から加工されてよい。スパッタリング蒸着や、熱および電子ビーム蒸着など、様々な金属蒸着技術を用いて、様々な材料(Au、Al、Pt、Ni)で、ヒータを加工してよい。ニッケルヒータは、加熱の均一性や引っかきの抵抗性が良好であり、数百回の熱循環の後にも顕著な劣化がなく、加工が容易である。微細加工されたヒータと、熱循環チャンバとを、CEマイクロ流路から離して配置することにより、カソード容器内のバッファの蒸発を防ぎ、熱循環の際の注入領域の加熱を最小限に抑えている。環状の抵抗ヒータを下部のウエハの裏側に加工することで、ヒータとチャンバとの間の良好な熱伝達を実現できる。等間隔のRTDは、マイクロプレート上に組み込まれ、ヒータ全体にわたって均一な温度を保証することで性能を最適化するために精確に温度を検出する。
【0073】
熱循環チャンバは、LabVIEWプログラム(National Instruments社、テキサス州オースチン)によって循環を実行されてよい。(LabVIEW VI)。LabVIEWプログラム内の比例/積分/微分(PID)モジュールによって、温度の制御を実現できる。
【0074】
動作中、一実施形態では、アノード910を通して、正圧を用いて、CE分離流路内に、配列決定分離マトリクスを導入する。分離マトリクスは、カソード容器912と、廃棄物容器914と、関連のサンプル精製チャンバにクロスインジェクション点を接続するアーム924とを満たす。満たす速度は、様々な相互接続流路の幅および長さを変えることによって調節することができる。カソード容器およびアノード容器と、接続アームとは、同じ速度で満たされてよい。例えば、分配流路916に接続されたロード用ポート(L)926から、水をロードして、熱循環チャンバ902と、サンプル精製チャンバ904とを満たし、後に続く処理の連続性を確保する。出口ポート(E)936は、両方の熱循環チャンバ902によって共有される。
【0075】
サンプル精製チャンバには、ポート(F)928を通して、捕捉ゲルマトリクスがロードされる。FACSユニットを用いて選別および準備されたクローンDNAビーズのライブラリが、例えば、シリンジポンプを用いて、ポート926から(弁(V1)922および(V2)930を開放して、弁(V3)932を閉じた状態で)ロードされる。上部圧力を監視するために、流入口内で圧力変換器を用いる。熱循環チャンバの出口ポートにおける自動弁は、上述のように、自動弁にビーズが捕捉されると、チャンバ内への流れを止める。各々の自動弁が各熱循環チャンバ内のビーズで満たされると、上部圧力が上昇し続ける。このように、上部圧力を監視することにより、各熱循環チャンバに1つのビーズをロードできる。
【0076】
チャンバを満たす際には、弁(V2)930および(V1)922が閉じられて、熱循環反応が開始される。ビーズは、熱循環混合物内で直接的に選別されるため、熱循環の前に、さらなる工程は必要ない。あるいは、バッファ内で選別を実行した後に、熱循環混合物を熱循環チャンバに導入して、試薬の使用量を最小限に抑えてもよい。ヒータ918aおよび918bは、上述のように、熱循環およびサンプル精製の反応を促進し、それらの反応温度は、RTD920によって監視される。
【0077】
熱循環産物は、弁(V1)922および(V3)932を開放した状態でポート(L)926およびサンプルポートすなわち電気的接点(S)934にわたって電界を掛けることにより、精製チャンバに送られる。ポート(S)934とポート(F)928との間に電界を掛けることにより、捕捉されなかった試薬の洗浄を実行する。その後、配列決定産物は、ポート(S)934と廃棄物容器(W)914との間に電位を印加することにより、CE分離のため、精製チャンバから、関連のマイクロ流路980に注入される。回転式共焦点蛍光スキャナを用いて、配列決定サンプルを検出する。スキャナは、スキャナヘッドの回転ごとに、複数の流路を順次走査する。
【0078】
図に示すように、精製されたDNA配列決定産物の分離は、クロスインジェクションを用いて実現される。あるいは、ダイレクトインジェクションを用いてもよい。
【0079】
別の実施形態では、コロニー形成のマイクロエマルジョンPCR法の代わりに、テンプレートの1分子PCR増幅を実行するための複数のボーラスすなわち液滴を形成して増幅する連続フロースルー型PCR技術を用いる。複数のボーラスすなわちプラグは、例えば、PCR試薬と低濃度のテンプレート断片の水溶液を、キャリアとして機能する疎水性溶液と混合することにより形成される。この技術で生成されるボーラスは、統計的に、配列決定テンプレートの少数の複製物を含む。理想的には、濃度は、10ボーラスの内の1つだけが、1つの配列決定テンプレートを含むよう選択される。これは、2つのテンプレートを同時に含む望ましくないボーラスが、100に1つだけであることを意味する。PCR反応のプライマの1つを運ぶマイクロスフィアすなわちビーズが、この技術を実行する処理におけるボーラスすなわち液滴に含まれてもよい。したがって、コロニーは、単一の配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶボーラス、または、かかる複製物を運ぶマイクロスフィアを有するボーラスを含んでよい。
【0080】
図10A、10B、および、10Cに示すように、連続フロースルー型微細加工PCRシステム1000は、ポート1002および1004を備える。一実施形態では、マイクロスフィアと、PCR試薬と、テンプレート断片との水溶液が、ポート1002を通して「T字形」インジェクタ領域1006に導入され、疎水性のキャリア溶液が、ポート1004を通して「T字形」インジェクタに導入される。こうして、マイクロスフィアを含むボーラスすなわち液滴1012が、「T字形」インジェクタ領域の下流側で形成される。
【0081】
システム1000は、さらに、「T字形」インジェクタ領域の下流側における流路1014の入力側の近くに配置された光学センサ1007(図10B)を備える。そのセンサは、集束レーザビームと、軸外の光散乱を検出するための光ダイオードとを備えてよい。
【0082】
センサは、ビーズを含むボーラスを選択し、ビーズを含まないボーラスと2以上のビーズを含むボーラスとを拒絶するよう構成される。拒絶されたボーラスは、弁1009と廃棄ポートおよび流路1011とを通してシステムの外に排出される。弁1009は、開いた時に、拒絶されたボーラスが廃棄ポート1011を通してシステムから出ることを可能にする4層のPDMS弁であってよい。弁は、弁作動ポート1013によって作動されてよい。連続フロー型システムの流体の抵抗は非常に大きいため、主流路1014には弁が必要ない。
【0083】
システム1000は、アニーリング工程および伸長工程を組み合わせた2工程PCR用に設計されている。したがって、そのシステムは、液滴1012が、流路1014を抜ける流れを介して通り過ぎる2つの温度領域1008および1010を備える。装置1000は、異なる温度領域の温度を監視するために、RTD1016と、関連するRTDコンタクトパッド1018とを備える。ボーラスおよびマイクロスフィアは、2つの温度のPCRを受けた後、ポート1020を通してシステムから出る。
【0084】
上述のように、マイクロスフィアは、TOなどの挿入色素で処理される。挿入色素は、二本鎖DNA内に挿入されるまでは、非蛍光性である。したがって、増幅されたDNAを含むマイクロスフィアは、ポート1020を通り抜けた後に、例えば、FACS技術によって特定可能である。その後、マイクロスフィアは、装置900(図9Aおよび9B)のような装置の分配流路内に導入される。一方、増幅されたDNAを含まないマイクロスフィアは、廃棄される。
【0085】
連続フロースルー型PCRシステム1000は、一例では、ペルフルオロ炭化水素のキャリアにけん濁されたPCR試薬のナノリットルの液滴を用いる。Song,H.,et al.、「A microfluidic system for controlling reaction networks in time」、Angewandte Chemie-International Edition 42, 768-772 (2003)を参照。これは、参照によって本明細書に組み込まれる。非混和液によって互いに分離された状態で、マイクロスフィアと、PCR試薬と、テンプレート断片とを含む液滴が、微細加工されたT字形インジェクタ1006で形成される。その後、液滴は、アニーリング−伸長−変性の温度に保持された装置の領域1008および1010を流れる。温度の異なる領域1008および1010における流路1014の長さは、それらの温度で要求される滞留時間に基づいて選択される。流路の断面積と、所望の流速とは、安定した液滴の形成を実現できるように選択される。装置のパラメータは、90秒間の変性温度でのホットスタートを実現し、その後に、1秒の自己伸長を伴う45秒間のアニーリング/伸長を35サイクルと、15秒間の変性時間とを実行するように、設定されてよい。最後の15サイクルは、80秒間の一定のアニーリング/伸長時間を有するよう構成されてもよい。
【0086】
装置1000は、2つの1.1mm厚×10cm径のボロフロートガラスのウエハを備えてよい。パターニングされたウエハ上の流路は、約210μmの幅と約95μmの深さとを有するD字形の断面を有してよい。他方のウエハ上には、装置の異なる地点において温度勾配を監視するために、Ti/PtのRTDが加工されてよい。流路にアクセスするための穴が、開けられてよく、2つのウエハは、互いに熱接着されて、流路を密閉してよい。ナノポート1002および1004は、PEEK管を介してマイクロリットルのシリンジに装置を接続するために用いられる。流路のガラス表面は、Srinivasan et al.、「Alkyltrichlorosilane−based self−assembled monolayer films for stiction reduction in silicon micromachines」、Journal of Microelectromechanical Systems 7、252−260、(1998)に記載された手順に基づいて、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリクロロシランによるシラン処理で疎水化されてよい。この論文は、参照によって本明細書に組み込まれる。2つのシリンジポンプは、水と、ペルフルオロデカリン(シスおよびトランスの混合物、95%、米国ニュージャージー州のAcros Organics社)および1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクタノール(米国ニュージャージー州のAcros Organics社)の10:1の混合物とを、それぞれ0.5μl/分の流速で供給するために用いられる。図10Bは、約1液滴/秒でのT字形インジェクタにおける液滴形成処理を示す図であり、図10Cは、流路を通って移動する際の液滴を示す図である。
【0087】
その技術は、一実施形態では、10nL液滴に含まれたマイクロビーズを用いる。スループットは、10液滴の内の1つが、1つのテンプレート分子と1つのビーズとの両方を含むように維持される。PCRミックスの水溶液は、100nLのミックス当たり1つのテンプレート分子が存在する(10液滴ごとに1分子に相当)ように準備される。さらに、PCRミックスには、10nLのミックス当たり1つの濃度(平均して1液滴ごとに1ビーズに相当)で、マイクロビーズが存在する。ポワソン分布によって決定されるように、10nLの液滴の37%は、マイクロビーズを1つだけ含み、残りの液滴は、1つも含まないか、2つ以上を含む。次いで、各液滴は、上述のように、光学的に走査されて、含有するビーズの数を決定される。液滴が含むマイクロビーズが1つでない場合には、弁1009が開放されて、その液滴を廃棄する。液滴の約3分の1は、1つのビーズを含むため、主流路に送られる。したがって、平均流速は、1.5秒当たり約1液滴となる。このように、主流路内の液滴はすべて、1つのマイクロビーズを含み、10の内1つは、さらに、1つのテンプレート分子を含む。
【0088】
装置1000の終点において、液滴は、ポート1020で収集されて、標準的なキャピラリを経由し、マイクロフュージ管に流入する。液滴は、遠心分離によって破壊される。マイクロビーズは、収集され、1XのTEで洗浄されて、再び、遠心分離される。マイクロビーズは、オンチップ検出を備えた能動(アクティブ)弁または自動弁によって、装置900の熱循環チャンバ内に送られる。オンチップ検出は、マイクロスフィアが熱循環チャンバの流入口に近づいたことを判定する光学スキャナまたはタイミング構成を備えてよい。光学スキャナは、上述のように、ビーズの光散乱を用いて、分配流路内のマイクロスフィアの位置を決定してよい。タイミング構成は、分配流路内の流体が非圧縮性であることに基づく。すなわち、分配流路内のマイクロスフィアの位置(例えば、熱循環チャンバの流入口の近くの位置など)は、分配流路内でのマイクロスフィアの滞在時間から算出可能である。これは、分配流路から96の入力の各々への弁による流入口を、例えば、単一の空気入力によって作動させることができるため有利である。また、空気入力は、検出されたビーズが、ビーズをまだ含まないリアクタの真正面(ディレクトリオポジット)に流されるまでは作動されない。
【0089】
2温度PCRを用いて配列決定テンプレートを生成する実現可能性を示すために、高温プライマを設計して、従来の熱循環器で試験した。M13ゲノムから943bpの増幅産物を生成するために、2つのプライマ、すなわち、M13_2T_F 5’TTCTGGTGCCGGAAACCAGGCAAAGCGCCA−3’(Tm=70.3℃)、および、M13_2T_R 5’− ACGCGCAGCGTGACCGCTACACTTGCCA−3’(Tm=70.7℃)を設計した。11nLのエマルジョン区画内に1つのテンプレート分子が存在する濃度に近づけるために、18.75フェムトグラムのM13テンプレートを、25μLのPCR反応に循環させた(94℃で1.5分のPCR反応の後、94℃で10秒、70℃で30秒を、50サイクル、1秒/サイクルの自己伸長で行った)。結果として生じる増幅産物は、約40ng/μLの収率で、期待されたサイズで単一のきれいなピークを示した。
【0090】
かかるシステムをゲノムDNAの増幅に用いた場合、1倍の網羅範囲(カバー)および1000bpsの平均断片サイズに対して、約300万の断片を増幅する必要がある。2つの異なる断片が最終的に1つの液滴内に含まれる可能性は、10の液滴の内の平均1つの液滴が1つの断片を含むように、PCR試薬内の断片を希釈することにより、0.01未満に低減できる。したがって、システムは、3,000万の液滴を処理する必要がある。この装置は、約1.5秒ごとに1つの液滴を生成するよう設計されている。20の装置を並行に実行すれば、ゲノム全体を増幅して、1組の配列決定システム900に適合させ、ほんの1ヶ月で1倍の網羅範囲を実現できる。
【0091】
本発明は、具体的な実施形態を参照して詳細に図示および記載されているが、本発明の趣旨や範囲から逸脱せずに、開示された実施形態の形態および詳細事項を変更することができることは、当業者にとって明らかなことである。例えば、上述の実施形態は、様々な材料を用いて実施されてよい。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
【0092】
[連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載]
本発明の技術とメカニズムとは、整理番号HG001399,PO1 CA77664,U01AI056472の米国国立衛生研究所の提供(NIH Grant)による政府のサポートによって、なされた。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】従来のゲノム規模の配列決定動作が備える工程を示す説明図。
【図2】本発明に従って、ゲノム配列決定処理が備える工程を示す説明図。
【図3】本発明で利用可能なクローニング処理を示す説明図。
【図4A】本発明に従って、単一流路マイクロ装置を示す説明図。
【図4B】図4Aの装置の一部を示す拡大図。
【図4C】単一流路マイクロ装置を示す分解図。
【図5A】伸長断片の捕捉の際の本発明の装置の蛍光画像を示す図。
【図5B】伸長断片の洗浄の際の本発明の装置の蛍光画像を示す図。
【図5C】伸長断片のサンプル注入の際の本発明の装置の蛍光画像を示す図。
【図6A】反応チャンバの部分拡大図と共に、装置の配列決定反応チャンバを示す説明図。
【図6B】図6Aの線分6B−6Bに沿った部分を示す図。
【図6C】配列決定されるDNAを運ぶビーズの捕捉に用いられる図6Aの反応チャンバの狭窄領域を示す説明図。
【図7A】空の配列決定反応チャンバの狭窄領域の明視野画像を示す図。
【図7B】溶液で満たされているが狭窄領域にマイクロスフィアが存在しない状態の配列決定反応チャンバの狭窄領域の明視野画像を示す図。
【図7C】配列決定反応チャンバの狭窄領域に配置されたマイクロスフィアの暗視野画像を示す図。
【図8A】ビーズの捕捉用に設計された配列決定反応チャンバの狭窄領域の別の実施形態を示す説明図。
【図8B】図8Aの線分8Bー8Bに沿った部分を示す図。
【図9A】集積配列決定アレイシステムの四分円状部分を示す説明図。
【図9B】図9Aのシステムの一部を示す拡大図。
【図10A】連続フロースルー型PCR微細加工装置を示す説明図。
【図10B】図10Aの線分10B−10Bにおける微細加工装置の「T字形」インジェクタ領域を示す拡大図。
【図10C】図10Aの線分10C−10Cにおける微細加工装置の流路の一部を示す拡大図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細加工構造であって、
1つの熱循環チャンバ内に1つだけのマイクロリアクタ要素が入るように、クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロリアクタ要素を複数の熱循環チャンバに分配する分配流路を備え、
マイクロリアクタ要素から熱循環伸長断片が生成され、
前記微細加工構造は、さらに、
前記熱循環チャンバに接続され、前記伸長断片を捕捉および濃縮する精製チャンバと、
前記精製チャンバに接続され、前記伸長断片を分析する成分分離流路と、を備える、微細加工構造。
【請求項2】
請求項1に記載の微細加工構造であって、前記マイクロリアクタ要素は、前記クローン配列決定テンプレートの前記複数の複製物を運ぶマイクロキャリア要素を備える、微細加工構造。
【請求項3】
請求項1に記載の微細加工構造であって、前記マイクロリアクタ要素は、ボーラスすなわちマイクロエマルジョン液滴である、微細加工構造。
【請求項4】
請求項3に記載の微細加工構造であって、前記マイクロリアクタ要素は、前記クローン配列決定テンプレートの前記複数の複製物を運ぶマイクロスフィアを備える、微細加工構造。
【請求項5】
請求項1に記載の微細加工構造であって、前記配列決定テンプレートは、DNAまたはRNAの配列決定テンプレートである、微細加工構造。
【請求項6】
配列決定を実行するためのシステムであって、
DNAまたはRNAを断片にせん断する手段と、
前記断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と不純物である線形産物との混合物を形成する手段と、
前記不純物である線形産物を選択的に除去する手段と、
1つの配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロリアクタ要素を生成する手段と、
配列決定テンプレートを有するマイクロリアクタ要素を選択する手段と、
配列決定テンプレートを有する選択されたマイクロリアクタ要素を熱循環チャンバに分配するマイクロ流体分配手段と、
1つの熱循環チャンバ内に1つだけのマイクロリアクタ要素が流れ込むことを保証する手段と、
前記熱循環チャンバを備え、前記配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶ前記マイクロリアクタ要素から熱循環伸長断片を生成する伸長手段と、
前記伸長断片を捕捉、精製、および、濃縮する精製チャンバ手段と、
前記伸長断片を分析する成分分離手段と、を備える、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、前記マイクロリアクタ要素は、前記クローン配列決定テンプレートの前記複数の複製物を運ぶマイクロキャリア要素を備える、システム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムであって、前記マイクロリアクタ要素は、ボーラスすなわちマイクロエマルジョン液滴である、システム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムであって、前記マイクロリアクタ要素は、前記クローン配列決定テンプレートの前記複数の複製物を運ぶマイクロスフィアを備える、システム。
【請求項10】
微細加工構造であって、
クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶ複数のマイクロスフィアを複数の熱循環チャンバに分配する分配流路と、
熱循環チャンバの出口ポートに配置され、1つの熱循環チャンバ内に1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証する自動弁と、を備え、
マイクロスフィアから熱循環伸長断片が生成され、
前記微細加工構造は、さらに、
前記熱循環チャンバに接続され、前記伸長断片を捕捉および濃縮する精製チャンバと、
前記精製チャンバに接続され、前記伸長断片を分析する成分分離流路と、を備える、微細加工構造。
【請求項11】
請求項10に記載の微細加工構造であって、マイクロスフィアの直径は、約1から100ミクロンの間である、微細加工構造。
【請求項12】
請求項11に記載の微細加工構造であって、マイクロスフィアの直径は、約10ミクロンである、微細加工構造。
【請求項13】
請求項10に記載の微細加工構造であって、各熱循環チャンバと、分離流路との間で、流体が行き来するようになっている、微細加工構造。
【請求項14】
請求項10に記載の微細加工構造であって、前記配列決定テンプレートは、DNAまたはRNAの配列決定テンプレートである、微細加工構造。
【請求項15】
微細加工構造であって、
配列決定テンプレートを運ぶマイクロスフィアを熱循環チャンバに分配するマイクロ流体分配流路手段と、
1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証する自動弁手段と、
前記熱循環チャンバを備え、配列決定テンプレートを運ぶマイクロスフィアから熱循環伸長断片を生成する伸長手段と、
前記伸長断片を捕捉、精製、および、濃縮する集積精製チャンバ手段と、
前記伸長断片を分析する成分分離手段と、を備える、微細加工構造。
【請求項16】
請求項15に記載の微細加工構造であって、前記伸長手段は、複数の熱循環チャンバを備えるサンガー伸長手段である、微細加工構造。
【請求項17】
請求項16に記載の微細加工構造であって、前記自動弁手段は、前記熱循環チャンバの出口ポートの自動弁を含む、微細加工構造。
【請求項18】
請求項17に記載の微細加工構造であって、前記精製チャンバ手段は、前記熱循環チャンバに接続された精製チャンバを備える、微細加工構造。
【請求項19】
請求項18に記載の微細加工構造であって、前記成分分離手段は、前記精製チャンバに接続された複数のマイクロ流路を備えるキャピラリアレイ電気泳動手段である、微細加工構造。
【請求項20】
請求項15に記載の微細加工構造であって、前記配列決定テンプレートは、DNAまたはRNAの配列決定テンプレートである、微細加工構造。
【請求項21】
微細加工装置であって、
クローンテンプレートを運ぶマイクロスフィアを受け入れるよう構成され、流入ポートと流出ポートとを有する熱循環チャンバを備え、前記流出ポートは、前記チャンバ内でマイクロスフィアを捕捉して前記熱循環チャンバへのさらなる流入を実質的に遮断するよう構成された狭窄部を備える、微細加工装置。
【請求項22】
請求項21に記載の微細加工装置であって、前記狭窄部の形状は、実質的に円形である、微細加工装置。
【請求項23】
請求項21に記載の微細加工装置であって、前記狭窄部の形状は、実質的に半円形である、微細加工装置。
【請求項24】
請求項21に記載の微細加工装置であって、前記流入ポートとの間で流体が行き来する流入路には、第1の弁が配置されており、前記流出ポートとの間で流体が行き来する流出路には、第2の弁が配置されている、微細加工装置。
【請求項25】
請求項21に記載の微細加工装置であって、動作中、前記第2の弁が前記第1の弁より前に閉じられることで、熱循環の前に、マイクロスフィアを、前記狭窄部から前記熱循環チャンバの本体部分の中に移動させる、微細加工装置。
【請求項26】
請求項21に記載の微細加工装置であって、さらに、前記熱循環チャンバの前記流出ポートとの間で流体が行き来する精製チャンバと、成分分離装置との間で流体が行き来する前記精製チャンバの出力ポートとを備える、微細加工装置。
【請求項27】
配列決定を実行するためのシステムであって、
DNAまたはRNAを断片にせん断する手段と、
前記断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と不純物である線形産物との混合物を形成する手段と、
前記不純物である線形産物を選択的に除去する手段と、
1つの配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロスフィアを生成する手段と、
配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアを選択する手段と、
配列決定テンプレートを有する選択されたマイクロスフィアを熱循環チャンバに分配するマイクロ流体分配流路手段と、
統計的に1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証する手段と、
前記熱循環チャンバを備え、前記配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶ前記マイクロスフィアから熱循環伸長断片を生成する伸長手段と、
前記伸長断片を捕捉、精製、および、濃縮する精製チャンバ手段と、
前記伸長断片を分析する成分分離手段と、を備える、システム。
【請求項28】
請求項27に記載のシステムであって、前記保証手段は、前記熱循環チャンバに配置された自動弁と、光学検出器と、タイミング機構との内の少なくとも1つである、システム。
【請求項29】
請求項27に記載のシステムであって、前記光学検出器は、マイクロスフィアからの散乱光を検出する光学スキャナである、システム。
【請求項30】
請求項27に記載のシステムであって、前記タイミング機構は、熱循環チャンバの流入口に隣接して配置された空気入力を備える、システム。
【請求項31】
DNA配列決定を実行するためのシステムであって、
DNAをDNA断片にせん断する手段と、
前記DNA断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と不純物である線形産物との混合物を形成する手段と、
前記不純物である線形産物を選択的に除去するエキソヌクレアーゼ分解手段と、
1つのDNA配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロスフィアを生成するエマルジョンPCR反応手段と、
DNA配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアを選択する蛍光活性化細胞選別(FACS)手段と、
DNA配列決定テンプレートを有する選択されたマイクロスフィアを熱循環チャンバに分配するマイクロ流体分配流路手段と、
統計的に1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証する自動弁手段と、
前記熱循環チャンバを備え、前記DNA配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶ前記マイクロスフィアから熱循環伸長断片を生成するサンガー伸長手段と、
前記伸長断片を捕捉、精製、および、濃縮する集積精製チャンバ手段と、
前記伸長断片を分析するキャピラリアレイ電気泳動手段と、を備える、システム。
【請求項32】
配列決定を実行するための処理であって、
DNAまたはRNAを断片にせん断する工程と、
前記断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と不純物である線形産物との混合物を形成する工程と、
前記不純物である線形産物を選択的に除去する工程と、
配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロリアクタ要素を生成する工程と、
配列決定テンプレートを有するマイクロリアクタ要素を選択する工程と、
前記配列決定テンプレートを有する前記マイクロリアクタ要素を熱循環チャンバ内に分配する工程と、
前記配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶ前記マイクロリアクタ要素から熱循環伸長断片を生成する工程と、
前記伸長断片を捕捉および濃縮する工程と、
前記熱循環伸長断片を分析する工程と、を備える、処理。
【請求項33】
請求項32に記載の処理であって、前記マイクロリアクタ要素は、前記クローン配列決定テンプレートの前記複数の複製物を運ぶマイクロキャリア要素を備える、処理。
【請求項34】
請求項32に記載の処理であって、前記マイクロリアクタ要素は、ボーラスすなわちマイクロエマルジョン液滴である、処理。
【請求項35】
請求項34に記載の処理であって、前記マイクロリアクタ要素は、前記クローン配列決定テンプレートの前記複数の複製物を運ぶマイクロスフィアを備える、処理。
【請求項36】
請求項32に記載の処理であって、前記分配工程は、1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロリアクタ要素が入るように実行される、処理。
【請求項37】
請求項36に記載の処理であって、さらに、前記熱循環チャンバの出口ポートに配置された自動弁を用いて、1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロリアクタ要素が流れ込むことを保証する工程を備える、処理。
【請求項38】
請求項32に記載の処理であって、前記生成工程は、エマルジョンPCR反応またはフロースルー型PCR処理によって、配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を生成する工程を備える、処理。
【請求項39】
請求項32に記載の処理であって、前記選択工程は、蛍光活性化細胞選別(FACS)である、処理。
【請求項40】
DNA配列決定を実行するための処理であって、
DNAをDNA断片にせん断する工程と、
前記DNA断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と不純物である線形産物との混合物を形成する工程と、
エキソヌクレアーゼ分解によって、前記不純物である線形産物を選択的に除去する工程と、
エマルジョンPCR反応によって、DNA配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロスフィアを生成する工程と、
蛍光活性化細胞選別(FACS)によって、DNA配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアを選択する工程と、
前記DNA配列決定テンプレートを有する前記マイクロスフィアを熱循環チャンバに分配する工程と、
熱循環チャンバの出口ポートに配置された自動弁を用いて、統計的に1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証する工程と、
前記DNA配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶ前記マイクロスフィアから熱循環伸長断片を生成する工程と、
前記伸長断片を捕捉、精製、および、濃縮する工程と、
前記熱循環伸長断片を分析する工程と、を備える、処理。
【請求項41】
請求項40に記載の処理であって、前記捕捉工程は、オリゴヌクレオチド捕捉マトリクスを用いる、処理。
【請求項42】
配列決定で用いる処理であって、
熱循環チャンバの流入ポートにおいてクローンテンプレートを運ぶマイクロスフィアを受け入れる工程と、
前記チャンバの流出ポートに配置された狭窄部を用いて、前記チャンバ内で前記マイクロスフィアを捕捉して前記チャンバへのさらなる流入を実質的に遮断する工程と、を備える、処理。
【請求項43】
分析のための方法であって、
配列決定テンプレートを運ぶマイクロスフィアを生成する工程と、
熱循環チャンバの出力ポートに配置された狭窄部を用いて、前記熱循環チャンバ内に前記マイクロスフィアを配置して、前記チャンバへのさらなる流入を実質的に遮断する工程と、を備える、方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法であって、前記熱循環チャンバの流入ポートに、第1の弁が配置されると共に、前記熱循環チャンバの流出ポートに、第2の弁が配置されており、前記第2の弁が前記第1の弁より前に閉じられることで、熱循環の前に、マイクロスフィアを、前記狭窄部から前記熱循環チャンバの本体部分に移動させる、方法。
【請求項1】
微細加工構造であって、
1つの熱循環チャンバ内に1つだけのマイクロリアクタ要素が入るように、クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶマイクロリアクタ要素を複数の熱循環チャンバに分配する分配流路を備え、
マイクロリアクタ要素から熱循環伸長断片が生成され、
前記微細加工構造は、さらに、
前記熱循環チャンバに接続され、前記伸長断片を捕捉および濃縮する精製チャンバと、
前記精製チャンバに接続され、前記伸長断片を分析する成分分離流路と、を備える、微細加工構造。
【請求項2】
請求項1に記載の微細加工構造であって、前記マイクロリアクタ要素は、前記クローン配列決定テンプレートの前記複数の複製物を運ぶマイクロキャリア要素を備える、微細加工構造。
【請求項3】
請求項1に記載の微細加工構造であって、前記マイクロリアクタ要素は、ボーラスすなわちマイクロエマルジョン液滴である、微細加工構造。
【請求項4】
請求項3に記載の微細加工構造であって、前記マイクロリアクタ要素は、前記クローン配列決定テンプレートの前記複数の複製物を運ぶマイクロスフィアを備える、微細加工構造。
【請求項5】
請求項1に記載の微細加工構造であって、前記配列決定テンプレートは、DNAまたはRNAの配列決定テンプレートである、微細加工構造。
【請求項6】
配列決定を実行するためのシステムであって、
DNAまたはRNAを断片にせん断する手段と、
前記断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と不純物である線形産物との混合物を形成する手段と、
前記不純物である線形産物を選択的に除去する手段と、
1つの配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロリアクタ要素を生成する手段と、
配列決定テンプレートを有するマイクロリアクタ要素を選択する手段と、
配列決定テンプレートを有する選択されたマイクロリアクタ要素を熱循環チャンバに分配するマイクロ流体分配手段と、
1つの熱循環チャンバ内に1つだけのマイクロリアクタ要素が流れ込むことを保証する手段と、
前記熱循環チャンバを備え、前記配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶ前記マイクロリアクタ要素から熱循環伸長断片を生成する伸長手段と、
前記伸長断片を捕捉、精製、および、濃縮する精製チャンバ手段と、
前記伸長断片を分析する成分分離手段と、を備える、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、前記マイクロリアクタ要素は、前記クローン配列決定テンプレートの前記複数の複製物を運ぶマイクロキャリア要素を備える、システム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムであって、前記マイクロリアクタ要素は、ボーラスすなわちマイクロエマルジョン液滴である、システム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムであって、前記マイクロリアクタ要素は、前記クローン配列決定テンプレートの前記複数の複製物を運ぶマイクロスフィアを備える、システム。
【請求項10】
微細加工構造であって、
クローン配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶ複数のマイクロスフィアを複数の熱循環チャンバに分配する分配流路と、
熱循環チャンバの出口ポートに配置され、1つの熱循環チャンバ内に1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証する自動弁と、を備え、
マイクロスフィアから熱循環伸長断片が生成され、
前記微細加工構造は、さらに、
前記熱循環チャンバに接続され、前記伸長断片を捕捉および濃縮する精製チャンバと、
前記精製チャンバに接続され、前記伸長断片を分析する成分分離流路と、を備える、微細加工構造。
【請求項11】
請求項10に記載の微細加工構造であって、マイクロスフィアの直径は、約1から100ミクロンの間である、微細加工構造。
【請求項12】
請求項11に記載の微細加工構造であって、マイクロスフィアの直径は、約10ミクロンである、微細加工構造。
【請求項13】
請求項10に記載の微細加工構造であって、各熱循環チャンバと、分離流路との間で、流体が行き来するようになっている、微細加工構造。
【請求項14】
請求項10に記載の微細加工構造であって、前記配列決定テンプレートは、DNAまたはRNAの配列決定テンプレートである、微細加工構造。
【請求項15】
微細加工構造であって、
配列決定テンプレートを運ぶマイクロスフィアを熱循環チャンバに分配するマイクロ流体分配流路手段と、
1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証する自動弁手段と、
前記熱循環チャンバを備え、配列決定テンプレートを運ぶマイクロスフィアから熱循環伸長断片を生成する伸長手段と、
前記伸長断片を捕捉、精製、および、濃縮する集積精製チャンバ手段と、
前記伸長断片を分析する成分分離手段と、を備える、微細加工構造。
【請求項16】
請求項15に記載の微細加工構造であって、前記伸長手段は、複数の熱循環チャンバを備えるサンガー伸長手段である、微細加工構造。
【請求項17】
請求項16に記載の微細加工構造であって、前記自動弁手段は、前記熱循環チャンバの出口ポートの自動弁を含む、微細加工構造。
【請求項18】
請求項17に記載の微細加工構造であって、前記精製チャンバ手段は、前記熱循環チャンバに接続された精製チャンバを備える、微細加工構造。
【請求項19】
請求項18に記載の微細加工構造であって、前記成分分離手段は、前記精製チャンバに接続された複数のマイクロ流路を備えるキャピラリアレイ電気泳動手段である、微細加工構造。
【請求項20】
請求項15に記載の微細加工構造であって、前記配列決定テンプレートは、DNAまたはRNAの配列決定テンプレートである、微細加工構造。
【請求項21】
微細加工装置であって、
クローンテンプレートを運ぶマイクロスフィアを受け入れるよう構成され、流入ポートと流出ポートとを有する熱循環チャンバを備え、前記流出ポートは、前記チャンバ内でマイクロスフィアを捕捉して前記熱循環チャンバへのさらなる流入を実質的に遮断するよう構成された狭窄部を備える、微細加工装置。
【請求項22】
請求項21に記載の微細加工装置であって、前記狭窄部の形状は、実質的に円形である、微細加工装置。
【請求項23】
請求項21に記載の微細加工装置であって、前記狭窄部の形状は、実質的に半円形である、微細加工装置。
【請求項24】
請求項21に記載の微細加工装置であって、前記流入ポートとの間で流体が行き来する流入路には、第1の弁が配置されており、前記流出ポートとの間で流体が行き来する流出路には、第2の弁が配置されている、微細加工装置。
【請求項25】
請求項21に記載の微細加工装置であって、動作中、前記第2の弁が前記第1の弁より前に閉じられることで、熱循環の前に、マイクロスフィアを、前記狭窄部から前記熱循環チャンバの本体部分の中に移動させる、微細加工装置。
【請求項26】
請求項21に記載の微細加工装置であって、さらに、前記熱循環チャンバの前記流出ポートとの間で流体が行き来する精製チャンバと、成分分離装置との間で流体が行き来する前記精製チャンバの出力ポートとを備える、微細加工装置。
【請求項27】
配列決定を実行するためのシステムであって、
DNAまたはRNAを断片にせん断する手段と、
前記断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と不純物である線形産物との混合物を形成する手段と、
前記不純物である線形産物を選択的に除去する手段と、
1つの配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロスフィアを生成する手段と、
配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアを選択する手段と、
配列決定テンプレートを有する選択されたマイクロスフィアを熱循環チャンバに分配するマイクロ流体分配流路手段と、
統計的に1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証する手段と、
前記熱循環チャンバを備え、前記配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶ前記マイクロスフィアから熱循環伸長断片を生成する伸長手段と、
前記伸長断片を捕捉、精製、および、濃縮する精製チャンバ手段と、
前記伸長断片を分析する成分分離手段と、を備える、システム。
【請求項28】
請求項27に記載のシステムであって、前記保証手段は、前記熱循環チャンバに配置された自動弁と、光学検出器と、タイミング機構との内の少なくとも1つである、システム。
【請求項29】
請求項27に記載のシステムであって、前記光学検出器は、マイクロスフィアからの散乱光を検出する光学スキャナである、システム。
【請求項30】
請求項27に記載のシステムであって、前記タイミング機構は、熱循環チャンバの流入口に隣接して配置された空気入力を備える、システム。
【請求項31】
DNA配列決定を実行するためのシステムであって、
DNAをDNA断片にせん断する手段と、
前記DNA断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と不純物である線形産物との混合物を形成する手段と、
前記不純物である線形産物を選択的に除去するエキソヌクレアーゼ分解手段と、
1つのDNA配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロスフィアを生成するエマルジョンPCR反応手段と、
DNA配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアを選択する蛍光活性化細胞選別(FACS)手段と、
DNA配列決定テンプレートを有する選択されたマイクロスフィアを熱循環チャンバに分配するマイクロ流体分配流路手段と、
統計的に1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証する自動弁手段と、
前記熱循環チャンバを備え、前記DNA配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶ前記マイクロスフィアから熱循環伸長断片を生成するサンガー伸長手段と、
前記伸長断片を捕捉、精製、および、濃縮する集積精製チャンバ手段と、
前記伸長断片を分析するキャピラリアレイ電気泳動手段と、を備える、システム。
【請求項32】
配列決定を実行するための処理であって、
DNAまたはRNAを断片にせん断する工程と、
前記断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と不純物である線形産物との混合物を形成する工程と、
前記不純物である線形産物を選択的に除去する工程と、
配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロリアクタ要素を生成する工程と、
配列決定テンプレートを有するマイクロリアクタ要素を選択する工程と、
前記配列決定テンプレートを有する前記マイクロリアクタ要素を熱循環チャンバ内に分配する工程と、
前記配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶ前記マイクロリアクタ要素から熱循環伸長断片を生成する工程と、
前記伸長断片を捕捉および濃縮する工程と、
前記熱循環伸長断片を分析する工程と、を備える、処理。
【請求項33】
請求項32に記載の処理であって、前記マイクロリアクタ要素は、前記クローン配列決定テンプレートの前記複数の複製物を運ぶマイクロキャリア要素を備える、処理。
【請求項34】
請求項32に記載の処理であって、前記マイクロリアクタ要素は、ボーラスすなわちマイクロエマルジョン液滴である、処理。
【請求項35】
請求項34に記載の処理であって、前記マイクロリアクタ要素は、前記クローン配列決定テンプレートの前記複数の複製物を運ぶマイクロスフィアを備える、処理。
【請求項36】
請求項32に記載の処理であって、前記分配工程は、1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロリアクタ要素が入るように実行される、処理。
【請求項37】
請求項36に記載の処理であって、さらに、前記熱循環チャンバの出口ポートに配置された自動弁を用いて、1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロリアクタ要素が流れ込むことを保証する工程を備える、処理。
【請求項38】
請求項32に記載の処理であって、前記生成工程は、エマルジョンPCR反応またはフロースルー型PCR処理によって、配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を生成する工程を備える、処理。
【請求項39】
請求項32に記載の処理であって、前記選択工程は、蛍光活性化細胞選別(FACS)である、処理。
【請求項40】
DNA配列決定を実行するための処理であって、
DNAをDNA断片にせん断する工程と、
前記DNA断片をライゲーションさせて、所望の環状産物と不純物である線形産物との混合物を形成する工程と、
エキソヌクレアーゼ分解によって、前記不純物である線形産物を選択的に除去する工程と、
エマルジョンPCR反応によって、DNA配列決定テンプレートの複数のクローン複製物を運ぶマイクロスフィアを生成する工程と、
蛍光活性化細胞選別(FACS)によって、DNA配列決定テンプレートを有するマイクロスフィアを選択する工程と、
前記DNA配列決定テンプレートを有する前記マイクロスフィアを熱循環チャンバに分配する工程と、
熱循環チャンバの出口ポートに配置された自動弁を用いて、統計的に1つの熱循環チャンバに1つだけのマイクロスフィアが流れ込むことを保証する工程と、
前記DNA配列決定テンプレートの複数の複製物を運ぶ前記マイクロスフィアから熱循環伸長断片を生成する工程と、
前記伸長断片を捕捉、精製、および、濃縮する工程と、
前記熱循環伸長断片を分析する工程と、を備える、処理。
【請求項41】
請求項40に記載の処理であって、前記捕捉工程は、オリゴヌクレオチド捕捉マトリクスを用いる、処理。
【請求項42】
配列決定で用いる処理であって、
熱循環チャンバの流入ポートにおいてクローンテンプレートを運ぶマイクロスフィアを受け入れる工程と、
前記チャンバの流出ポートに配置された狭窄部を用いて、前記チャンバ内で前記マイクロスフィアを捕捉して前記チャンバへのさらなる流入を実質的に遮断する工程と、を備える、処理。
【請求項43】
分析のための方法であって、
配列決定テンプレートを運ぶマイクロスフィアを生成する工程と、
熱循環チャンバの出力ポートに配置された狭窄部を用いて、前記熱循環チャンバ内に前記マイクロスフィアを配置して、前記チャンバへのさらなる流入を実質的に遮断する工程と、を備える、方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法であって、前記熱循環チャンバの流入ポートに、第1の弁が配置されると共に、前記熱循環チャンバの流出ポートに、第2の弁が配置されており、前記第2の弁が前記第1の弁より前に閉じられることで、熱循環の前に、マイクロスフィアを、前記狭窄部から前記熱循環チャンバの本体部分に移動させる、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【公表番号】特表2008−500836(P2008−500836A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515379(P2007−515379)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/018678
【国際公開番号】WO2005/118867
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(501035077)ザ・リージェンツ・オブ・ジ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (6)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/018678
【国際公開番号】WO2005/118867
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(501035077)ザ・リージェンツ・オブ・ジ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (6)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【Fターム(参考)】
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