説明

微細気泡発生機能付きシャワー装置

【課題】複雑な気液混合機構を用いずとも十分な量の微細気泡を容易に発生できる微細気泡発生機構付シャワー装置を提供する。
【解決手段】シャワー装置1内部の液体流路9中に、第一端が閉じ第二端が開放した管柱状構造物22を軸線が流れに対し交差する形態にて第二端側が液体流路9中に配置され、流路の軸線と管柱状構造物22の軸線との双方と直交する向きにおいて構造物の両側には、流路の内壁面との間に液体が通過可能な迂回隙間が形成され、管柱状構造物22の第二端には流路直交面から下流側に仰角を有して傾斜する傾斜開口面を形成することで、迂回隙間にてキャビテーションポイントの周囲を通過する高速化した流れによりキャビテーションを発生する。このキャビテーションによって発生する陰圧は管柱状構造物22の空洞内に蓄積し、水流の蒸気圧以上の陰圧により溶存空気が排出されて気泡を効率よく発生できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細気泡発生機能付きシャワー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微細気泡の発生技術としては、機械的高速回転体によって気泡を拡散させる方式、水流を高速回転させる旋回裁断方式、気泡を超音波によって分断させることによって微細気泡にする方式、あるいは加圧溶解方式等、幾多の方式がマイクロバブル技術として実施され活用されている。特に、浴室等で使用するシャワー装置に関しては微細気泡発生機構を組み込んだものが種々提案されている(特許文献1〜5)。これら特許文献に開示されたシャワー装置に組み込まれている微細気泡発生機構は、シャワー水流を噴出するヘッド部分に旋回流発生翼体を組み込み、該翼体が形成する渦流に翼体軸部に形成された細孔から負圧吸引される外気を巻き込んで気液混合する方式(特許文献1:二相流旋回方式と称される)、シャワー本体(ヘッド部分から延出する把手の部分)内にベンチュリ管などの絞り機構を組み込み、水が該絞り機構を高流速化して通過する際にベルヌーイの原理に由来して生ずる減圧効果により、水に溶解していた空気を微細気泡として析出させるキャビテーション方式(特許文献2〜5)に大別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2008−229516号公報
【特許文献2】 特開2008−73432号公報
【特許文献3】 特開2007−209509号公報
【特許文献4】 特開2007−50341号公報
【特許文献5】 特開2006−116518号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】 インターネットホームページ(http://unit.aist.go.jp/emtech−ri/26env−fluid/takahashi.pdf#search=’マイクロバブルおよびナノバブルに関する研究’)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の各方式は、特に浴室等でのシャワー装置への需要を視野に入れた場合、一般家庭に敷設された上水道の水圧ないし流量のみでは結局十分なマイクロバブルを発生できない問題があり、加圧溶解部など比較的大掛かりな付帯装置が必要とされていた。また、気泡発生用の空気を外部より吸気する構造の場合は、マイクロバブルの気泡サイズの制御を行なうために吸入する大気の流量の調整が微妙であり、特に吸入気体量が過剰になるとマイクロバブルからかけ離れた巨大気泡しか発生できなくなる問題がある。
【0006】
本発明の課題は、複雑な気液混合機構を用いずとも十分な量の微細気泡を容易に発生できる微細気泡発生機構付シャワー装置を提供することにある。
【課題を解決する手段及び発明の効果】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の微細気泡発生機構付シャワー装置は、
シャワー装置内部の液体流路中に、第一端が閉じ第二端が開放した管柱状構造物を軸線が流れに対し交差する形態にて第二端側が液体流路中に位置するように配置し、
流路の軸線と管柱状構造物の軸線との双方と直交する向きにおいて構造物の両側には、流路の内壁面との間に液体が通過可能な隙間が形成され、
管柱状構造物の第二端には流路直交面から下流側に仰角を有して傾斜する傾斜開口面が形成され、管柱状構造物の液体流路内壁面と対向する第二端側の先端をキャビテーションポイントとして、隙間にて該キャビテーションポイントの周囲を通過する流れによりキャビテーションを発生するとともに、隙間を経て傾斜開口面から管柱状構造物内部に流入した液体からキャビテーションによる陰圧により溶存空気を排出させて気泡となすことを特徴とする。
【0008】
上記本発明の構成によれば、シャワー装置内部の液体流路中に、第一端が閉じ第二端が開放した管柱状構造物を軸線が流れに対し交差する形態にて第二端側が液体流路中に位置するように配置され、流路の軸線と管柱状構造物の軸線との双方と直交する向きにおいて構造物の両側には、流路の内壁面との間に液体が通過可能な隙間が形成される。そして、管柱状構造物の第二端には流路直交面から下流側に仰角を有して傾斜する傾斜開口面を形成することで、該管柱状構造物の液体流路内壁面と対向する第二端側の先端をキャビテーションポイントとして、隙間にて該キャビテーションポイントの周囲を通過する高速化した流れによりキャビテーションを発生することができる。このキャビテーションによって発生する陰圧は管柱状構造物の空洞内に蓄積し、水流の蒸気圧以上の陰圧により溶存空気が排出されて気泡を効率よく発生することができる。
【0009】
本発明の装置によれば直径70μm以下の微細気泡を発生できる。当該サイズの微細気泡は、気泡と管柱状構造物との高速摩擦で発生した静電気により、水の誘電率に従い気泡表面がマイナス電位に帯電しやすくなり、一般的表現として、イオン化するのと同じ状態になる。例えば、水分子構造がマイナス傾向のイオン化によりプロトン(H)を遊離すれば、OHイオン(あるいは水和したHイオン(ヒドロキシルイオン)となって活性化し、界面活性作用等さまざまな化学変化に大きく影響する。また、クーロンの法則により同一極性を持つ微細気泡同士は電荷の大きさに比例して相互反発することにより泡同士の合一成長が少なくなる。
【0010】
本発明の装置によって発生した微細気泡は制御可能であるが、直径30μm程度以下にて水中における浮力が特に小さくなり水中残留時間が長くなるので、対電荷としてのプラスイオンに付着しやすくなる。一般に汚れ物質はプラスイオン化する傾向が強いといわれており、マイナスイオン化の傾向が強い微細気泡は、界面活性作用と対電子による相互吸引作用とにより汚れ物質の周囲に数多く付着する。そして、複数の微細気泡が持っているマイナス電荷がプラスイオンによって中和消滅されることにより、複数の微細気泡が合一成長し大きな浮力となって汚れ物質と共に遊離浮遊し、これを効果的に除去することができる。また、本発明の装置によって発生した微細気泡は外部から吸気導入した結果の微細気泡ではなく、溶存空気から析出した気泡なので時間経過と気泡内部の空気が再溶解してサイズを縮小する。その結果、水中に浮遊する気泡サイズはますます小さくなり、さらに長時間に亘って存在状態を維持することができる。
【0011】
管柱状構造物は軸断面が円状をなすように形成できる。この場合、傾斜開口面の形状は楕円状となり、キャビテーションポイントは楕円状の該傾斜開口面の先端に形成される。楕円状の傾斜開口面の先端両側では液体を流通させる隙間が狭小化し、キャビテーションポイント付近の流速が高まるので微小気泡の発生効率をより高めることができる。
【0012】
上記本発明のシャワー装置は、一端にシャワー給水部が形成される筒状の握り手部と、シャワー水流の噴出口を有して握り手部の他端側に連通形態にて一体化されるシャワーヘッド部とからなるシャワー筺体を有するものとして構成できる。該シャワー筐体の内部には、液体流路の一部を構成するとともに握り手部の内部空間よりも流路軸断面積が小さい絞り貫通流路が軸線方向に形成されたキャビテーション用筒状部材を組み込むことができ、前述の管柱状構造物を該キャビテーション用筒状部材に対し、キャビテーションポイントを形成する傾斜開口面が絞り貫通流路内にて下流側を向く形で位置するよう、該キャビテーション用筒状部材の軸線に関する半径方向に挿着することができる。この構成によると、キャビテーション用筒状部材の絞り貫通流路によりシャワー水流を増速でき、ここに管柱状構造物の先端が位置するように配置することで、微小気泡の発生効率をより高めることができる。また、管柱状構造物を挿着したキャビテーション用筒状部材に微小気泡発生のための機構部を集約でき、握り手部とシャワーヘッド部とからなる通常のシャワー装置筐体に容易に組み込むことができる。
【0013】
キャビテーション用筒状部材の絞り貫通流路の上流側端部は、握り手部の内部空間に対しテーパ状に拡径しつつ開口する導入テーパ部とすることができる。これにより、絞り貫通流路内の流速がさらに高められ、微小気泡の発生効率がさらに向上する。
【0014】
握り手部は先端開口部にてシャワーヘッド部の後端開口部に着脱可能に結合することができる。また、キャビテーション用筒状部材には半径方向にて一端が該筒状部材の外周面に、他端が同じく内周面に開口する挿着孔を形成できる。そして、管柱状構造物を該挿着孔内に、傾斜開口面が形成されているのと反対側の端面がキャビテーション用筒状部材の外周面よりも引っ込んで位置するように挿着することで、キャビテーション用筒状部材を、該管柱状構造物を装着した状態で後端開口部からシャワーヘッド部の内側に嵌着することができる。これにより、本発明のシャワー装置の組立てが極めて容易となる。
【0015】
この場合、キャビテーション用筒状部材の外周面にはシャワーヘッド部の内周面との間をシールするゴム製のオーリングを装着することができ、該オーリングを挿着した状態でシャワーヘッド部内に後端開口部から圧入することができる。これにより、キャビテーション用筒状部材の外周面とシャワーヘッド部の内周面との隙間をオーリングによりシールでき、当該隙間へのシャワー水流の迂回による絞り貫通流路内の流速低下を効果的に防止できる。
【0016】
また、握り手部は先端開口部の内周面に形成される雌ねじ部にてシャワーヘッド部の後端開口部に形成される雄ねじ部に螺着することができる。これにより、握り手部を取り外した状態のシャワーヘッド部に対し、管柱状構造物を組み付けたキャビテーション用筒状部材を後端開口部から装着し、その後、握り手部をシャワーヘッド部に螺着することで組み立てを簡単に行なうことができる。この場合、キャビテーション用筒状部材の前端面をシャワーヘッド部内部に形成されたヘッド側支持部に、同じく後端面を握り手部内周面に形成された握り手部側支持部に当接させ、握り手部側の雌ねじ部をシャワーヘッド部側の雄ねじ部に螺着する際の螺進力により軸線方向に挟みつけて支持する構成とすれば、キャビテーション用筒状部材のシャワー筐体内でのがたつきが生じなくなり、オーリングによる密封状態もより向上する。
【0017】
次に、シャワーヘッド部の内部空間は、握り手部に接続する後端開口部から、該握り手部の軸線と交差する向きに屈曲しつつ拡径して水流噴出開口を形成するように形成でき、該水流噴出開口に噴出孔が分散形成された散水板を取り付けることができる。また、該シャワーヘッド部の水流噴出開口が形成されているのと反対側の内底面からは、キャビテーション用筒状部材を通過してシャワーヘッド部内に流れ込む気泡を含んだ水流を衝突させる水流衝突部を突出形成することができる。キャビテーションポイントで発生した微細気泡を含む水流を、シャワーヘッド部内の水流衝突部に衝突させることで、水流を構成する水分子の摩擦帯電が促進され、微細気泡の帯電効果をより高めることができる。また、衝突時の衝撃力により気泡の粉砕が促進され、より微細な気泡を得ることができる。
【0018】
シャワーヘッド部は水流噴出開口を円状に形成でき、該円状の開口面の中心を通って該開口面と直交する開口軸線を定めたとき、水流衝突部は、該開口軸線を含む柱状突出部として形成することができる。キャビテーション用筒状部材からの気泡を含んだ水流を該柱状突出部の突出基端部外周面に向けて噴出することができる。水流は柱状突出部に衝突して粉砕されるとともに、柱状突出部を回り込む際の旋回を伴いつつ柱状突出部に沿って流下するので、微細気泡の帯電効果を高めつつ散水板に向けてスムーズに導くことができ、十分な量の微細気泡を含んだ水流を効率よく散水板から噴出させることができる。
【0019】
シャワーヘッド部の内周面は、開口軸線と直交する断面が円状を呈する湾曲凹面形態に形成できる。このようにすると、柱状突出部に衝突した水流は該柱状突出部による反射ないし迂回を受けつつシャワーヘッド部の内周面に導かれ、該内周面に沿った旋回流を伴って散水板の噴出孔から噴出させることができる。これにより、水流がシャワーヘッド部の内面に沿って旋回する際の摩擦力により気泡の帯電効果がさらに高められ、また、散水板から水流を均一に噴出させることができる。
【0020】
なお、散水板を内面外周縁部にてシャワーヘッド部の水流噴出開口の内周縁部に嵌着し、該散水板を厚さ方向に貫通する締結用のねじ部材が設けるとともに、柱状突出部を、ねじ部材を螺合させる雌ねじ部が軸線方向に形成された締結用ボス部に兼用することができる。これにより、シャワーヘッド部内に散水板固定用の余分な突出部を形成する必要がなくなり、水流を衝突させる構造部を柱状突出部に集約できるので、シャワーヘッド部の内周面に沿って形成される旋回流が乱れにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】 シャワー本体の三面図。
【図2】 キャビテーション用筒状部材の三面図。
【図3】 管柱状構造物の種々の変形例。
【図4】 シャワー内部圧力分布解析図。
【図5】 キャビテーション用筒状部材周辺圧力分布解析拡大図。
【図6】 キャビテーション用筒状部材およびシャワーヘッド部内部圧力分布による流線解析図。
【図7】 シャワー内部流速分布流線解析図。
【図8】 キャビテーション用筒状部材およびシャワーヘッド部内部流速分布による流線解析拡大図。
【図9】 キャビテーション用筒状部材およびシャワーヘッド部圧力分布による流線軌跡。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の微細気泡発生機構付シャワー装置の一例を示すものであり、図2はこれに組み込まれた微細気泡の発生機構を拡大して示すものである。シャワー装置1は内部に液体流路9を有し、第一端が閉じ第二端が開放した管柱状構造物22が該液体流路9に対し、軸線が流れに対し交差する形態にて第二端側が液体流路9中に位置するように配置されている。図2に示すように、流路(後述の絞り貫通流路27J)の軸線と管柱状構造物22の軸線との双方と直交する向きにおいて管柱状構造物22の両側には流路27Jの内壁面との間に、液体(供給水)が通過可能な迂回隙間251が形成されている。
【0023】
管柱状構造物22の第二端には流路直交面から下流側に仰角を有して傾斜する傾斜開口面22eが形成されている。そして、管柱状構造物22の液体流路27Jの内壁面と対向する第二端側の先端がキャビテーションポイント21Gを形成している。迂回隙間251にて該キャビテーションポイント21Gの周囲を通過する水流によりキャビテーションが発生し、迂回隙間251を経て傾斜開口面22eから管柱状構造物22内部に流入した供給水からキャビテーションによる陰圧により溶存空気が排出され、気泡となって供給水中に混入する。
【0024】
上記シャワー装置1においては、管柱状構造物22のキャビテーションポイント21Gを形成する側の先端が液体流路27J中に位置するように配置され、2に示すごとく、その管柱状構造物22の両側には、流路の内壁面との間に供給水が通過可能な迂回隙間251が形成される。そして、管柱状構造物22の上記先端側には、流路直交面から下流側に仰角を有して傾斜する傾斜開口面22eが形成される。そして、該管柱状構造物22の液体流路27Jの内壁面と対向する(接する)先端をキャビテーションポイント21Gとして、迂回隙間251にて該キャビテーションポイント21Gの周囲を通過する高速化した流れによりキャビテーションが発生する。このキャビテーションによって発生する陰圧は管柱状構造物22の空洞内に蓄積し、図4及び図5に示すように、水流の蒸気圧以上の陰圧により溶存空気が排出され,微小気泡が効率よく発生する。
【0025】
図3の左端に示すように、管柱状構造物22はステンレス鋼パイプにより軸断面が円状をなすように形成されている。傾斜開口面22eの形状は楕円状であり、キャビテーションポイント21Gは楕円状の該傾斜開口面22eの先端に形成される。図2に示すように、楕円状の傾斜開口面22eの先端両側では液体を流通させる迂回隙間251が狭小化し、キャビテーションポイント21G付近の流速が高まるので微小気泡の発生効率をより高めることができる。ただし、管柱状構造物22は、図3に示すように、断面を四角形状、三角形状あるいは楕円状に形成することも可能である。
【0026】
図1に戻り、シャワー装置1は、一端にシャワー給水部274が形成される筒状の握り手部11と、シャワー水流の噴出口39を有して握り手部11の他端側に連通形態にて一体化されるシャワーヘッド部16とからなるシャワー筺体10を有する。該シャワー筺体10の内部には、液体流路9の一部を構成するとともに握り手部11の内部空間よりも流路軸断面積が小さい絞り貫通流路27Jが軸線方向に形成されたキャビテーション用筒状部材27が組み込まれている。管柱状構造物22は該キャビテーション用筒状部材27に対し、キャビテーションポイント21Gを形成する傾斜開口面22eが絞り貫通流路27J内にて下流側を向く形で位置するよう、該キャビテーション用筒状部材27の軸線に関する半径方向に挿着されている。キャビテーション用筒状部材27の絞り貫通流路27Jによりシャワー水流が増速され、ここに管柱状構造物22の先端が位置するように配置することで、微小気泡の発生効率が高められている。図2に示す如く、微小気泡発生のための機構部は、該管柱状構造物22を挿着したキャビテーション用筒状部材27に集約されている。また、管柱状構造物22の絞り貫通流路27Jの上流側端部は、握り手部11の内部空間に対しテーパ状に拡径しつつ開口する導入テーパ部32とされている。これにより、絞り貫通流路27J内の流速がさらに高められている。
【0027】
図1に示すように、握り手部11は先端開口部にてシャワーヘッド部16の後端開口部に着脱可能に結合される。他方、図2に示すように、キャビテーション用筒状部材27には半径方向にて一端が該筒状部材の外周面に、他端が同じく内周面に開口する挿着孔27hが形成されている。その挿着孔27h内に管柱状構造物22は、傾斜開口面22e側の先端が絞り貫通流路27Jの内周面に当接する一方、これと反対側の端面がキャビテーション用筒状部材27の外周面と面一又は引っ込んで位置するように挿着される。図1においてキャビテーション用筒状部材27は、該管柱状構造物22を装着した状態で握り手部11を外した状態のシャワーヘッド部16に対し、後端開口部からその内側に嵌着される。なお、図2に示すように、キャビテーション用筒状部材27の外周面にはシャワーヘッド部16の内周面との間をシールするゴム製のオーリング17が装着される。キャビテーション用筒状部材27は、該オーリング17を挿着した状態で、図1のシャワーヘッド部16内に後端開口部から圧入される。キャビテーション用筒状部材27の外周面とシャワーヘッド部16の内周面との隙間は該オーリング17によりシールされる。
【0028】
なお、握り手部11は、先端開口部の内周面に形成される雌ねじ部11tにてシャワーヘッド部16の後端開口部に形成される雄ねじ部16tに螺着される。キャビテーション用筒状部材27は、前端側がシャワーヘッド部16内部に形成されたヘッド側支持部16Sに、後端側が握り手部11内周面に形成された握り手部側支持部10kに当接し、握り手部11側の雌ねじ部11tをシャワーヘッド部16側の雄ねじ部16tに螺着する際の螺進力により軸線方向に挟みつけて支持される。この実施形態では、キャビテーション用筒状部材27の軸線方向前端部が段付き形状に縮径される一方、後端部も握り手部11の開口内側に嵌着可能となる外径に段付き形態に縮径されている。そして、握り手部側支持部10kは雌ねじ部11tの基端側に軸線方向に隣接して形成された内周縮径段部とされ、キャビテーション用筒状部材27の外周面に形成された段部に当接するようになっている。他方、握り手部11が螺着されるシャワーヘッド部16の後端側開口部の内周面は、握り手部11の内周面の延長に対して傾斜して形成され、この傾斜した内周面をヘッド側支持部16Sとして、キャビテーション用筒状部材27の前端側段部を当接支持するようになっている。
【0029】
次に、シャワーヘッド部16の内部空間は、握り手部11に接続する後端開口部から、該握り手部11の軸線と交差する向きに屈曲しつつ拡径して水流噴出開口39を形成するように形成され、該水流噴出開口39に噴出孔401が分散形成された散水板40が取り付けられている。また、該シャワーヘッド部16の水流噴出開口39が形成されているのと反対側の内底面からは、キャビテーション用筒状部材27を通過してシャワーヘッド部16内に流れ込む気泡を含んだ水流を衝突させる水流衝突部16bが突出形成されている。図6〜図9に示すように、キャビテーションポイント21Gで発生した微細気泡を含む水流は、シャワーヘッド部16内の水流衝突部16bに衝突する。水流を構成する水分子の摩擦帯電が促進され、微細気泡の帯電効果をより高めることができる。また、衝突時の衝撃力により気泡の粉砕が促進され、より微細な気泡を得ることができる。
【0030】
図1に示すように、シャワーヘッド部16は水流噴出開口39を円状に形成されき、該円状の開口面の中心を通って該開口面と直交する開口軸線を定めたとき、水流衝突部16bは、該開口軸線を含む柱状突出部16bとして形成されている。図6〜図9に示すように、キャビテーション用筒状部材27からの気泡を含んだ水流は該柱状突出部16bの突出基端部外周面に向けて噴出される。水流は柱状突出部16bに衝突して粉砕されるとともに、柱状突出部16bを回り込む際の旋回を伴いつつ柱状突出部16bに沿って流下する。これにより、微細気泡の帯電効果を高めつつ散水板40に向けてスムーズに導くことができ、十分な量の微細気泡を含んだ水流を効率よく散水板40から噴出させることができる。
【0031】
図1に示すように、シャワーヘッド部16の内周面は、開口軸線と直交する断面が円状を呈する湾曲凹面形態に形成されている。図6〜図9に示すように、柱状突出部16bに衝突した水流は該柱状突出部16bによる反射ないし迂回を受けつつシャワーヘッド部16の内周面に導かれ、該内周面に沿った旋回流を伴って散水板40の噴出孔401から噴出する。水流がシャワーヘッド部16の内面に沿って旋回する際の摩擦力により気泡の帯電効果がさらに高められ、また、散水板40から水流を均一に噴出させることができる。
【0032】
図1に示すように、散水板40は内面外周縁部にてシャワーヘッド部16の水流噴出開口39の内周縁部に嵌着され、該散水板40を厚さ方向に貫通する締結用のねじ部材18が設けられている。柱状突出部16bは、ねじ部材18を螺合させる雌ねじ部が軸線方向に形成された締結用ボス部16bに兼用されている。
【0033】
図2に示すキャビテーション用筒状部材27に十分な水圧、流水量にて水流WFが供給された場合の、管柱状構造物22周囲における動作は以下のごとくである。水流WFが十分な流水量と水圧にて管柱状構造物22面に当たると、水流WFは管柱状構造物22の側方の迂回隙間251を通過する。柱状構造物22の先端は先細り形状にて絞り貫通流路27Jの内周面に当接しているので、迂回隙間251はその先端に向けて幅を縮小し、キャビテーションポイント21G近傍の流速は高められる。
【0034】
図4〜図9は、ベルヌーイの法則におけるエネルギー転移現象に従い管柱状構造物22周囲における流量および圧力をシミュレーションした結果であり(市販の熱流体解析ソフトウェア(EFD.Lab、株式会社構造計画研究所製)を用いた)、キャビテーションポイント21G近傍で流速を増加していることが明らかである。また、高速流体の近傍は流体の持つ圧力が著しく低下していることもわかる。管柱状構造物22の先端近傍においては該管柱状構造物22によって妨げられた水流が、その妨げられた割合に応じて圧縮される結果、図7の水流流速測定結果の如く毎秒10m以上の高速水流となってキャビテーションポイント21Gを通過する。その結果、流れの局所的な圧縮・開放が行われ、図4の全体圧力分布測定図の如く減圧方向の大きな圧力変化が生ずる。
【0035】
通常大気圧下において水は1気圧、25℃の条件下で8.11mg/L(飽和溶存酸素量)の酸素が溶け込むことが知られ、窒素を含む大気組成から考えれば、供給される水流中の溶存空気量は例えば30ppm程度と見積もられる。キャビテーションポイント21Gを通過した流水は大きな減圧環境を通過する結果、低圧沸騰と類似した原理により多くの気泡を発生する。また、管柱状構造物22内の空洞は大きな陰圧を保持する。
【0036】
流速が一定ならば管柱状構造物22内空洞は一定の陰圧を保つことによって気泡含有水流は一定の減圧条件でほぼ一定の気泡を含有し、キャビテーションポイント21Gにおいては水流の圧縮、開放が行われる際に超音波振動が発生するので、その振動が水流に粗密変調によって大きな圧力変動を与える。与えられた変調は水流に粗密進行波としての特性を与えるため管柱状構造物22内の空洞は200kHz前後の共振状態になると考えられその振動により水流に含まれる気泡はさらに粉砕され細分化する。
【0037】
微細気泡直径が70ミクロン程度よりも微細な直径となると分子間摩擦等の影響を受け微細気泡表面が電荷を帯びるようになり、微細気泡表面が帯電する電荷は微細気泡の大きさに関係なくほぼ一定のマイナス70mVといわれている。微細気泡表面が帯電することによってクーロンの法則によって、同一電界同士は反発するようになり、微細気泡同士はその電荷を失うまで合一成長することはない。また、水分子がマイナスに帯電するという現象は、水分子が水素2原子と酸素1原子からなることを考慮すれば、水素イオンが水分子から遊離することと等価であり、残った水素1原子と酸素1原子は不足電子対を有したOHイオン(またはその水和物)として存在し、水酸基として働くことになり界面活性作用を持つ。事実通常の水よりも洗浄能力が高いことは実験的にも確認した。
【0038】
水中にマイナス電荷を持った水酸基が存在することは、微細気泡よりもプラス電荷が存在すれば分子の安定を保つためにクーロンの法則に従い存在電荷間に引力が働く。換言すれば、プラス電荷を持つものに引き寄せられて行く。微細気泡自体その微細体積により、内包する気体量は極微量で大きな浮力を持たない結果として水中残留時間が長い。その結果、帯電電荷の中和が発生すればクーロンの法則による同電荷同士の反発力は打ち消され、微細気泡同士の合一成長が発生し、表面体積の増大と共に内包気体量の増大と共に大きな浮力を発生し水面上に上昇する。つまり、正帯電しやすい汚れ成分等が存在しない場合は合一成長が発生しにくく、微細気泡は水中に長くとどまるが、汚れ成分の正帯電と出会うと電化中和が起きて微細気泡は合一成長し、汚れ成分を伴って速やかに水面に浮上するのである。
【0039】
外部より大気補給を行なわないで溶存空気量に大きな減圧を加えて発生させた微細気泡は、溶存空気量が一時的に低下した水中に存在するため内包気体の溶出が若干早い。これは通常言われるマイクロバブルが速く縮小することを物語っている。マイクロバブルが縮小するとナノバブルといわれる極微小泡の状態となり、内包気体が極限まで圧縮された状態できわめて長期に存在できるようになる。このような極めて小さなサイズの泡は特に大きな洗浄力を持ち、定着した汚れ等を剥離し、また、健康面においても肌の洗浄と生理活性化を行なうとともに、自然環境の汚染もほとんどなく、その利用価値は極めて高い。
【符号の説明】
【0040】
1 シャワー装置
9 液体流路
11 握り手部
11t 雌ねじ部
16 シャワーヘッド部
16b 水流衝突部
16t 雄ねじ部
17 オーリング
22 管柱状構造物
22e 傾斜開口面
27 キャビテーション用筒状部材
27J 絞り貫通流路
32 導入テーパ部
39 水流噴出開口
40 散水板
251 迂回隙間
21G キャビテーションポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワー装置内部の液体流路中に、第一端が閉じ第二端が開放した管柱状構造物を軸線が流れに対し交差する形態にて前記第二端側が前記液体流路中に位置するように配置し、
前記流路の軸線と前記管柱状構造物の軸線との双方と直交する向きにおいて前記構造物の両側には、前記流路の内壁面との間に液体が通過可能な隙間が形成され、
前記管柱状構造物の前記第二端には流路直交面から下流側に仰角を有して傾斜する傾斜開口面が形成され、前記管柱状構造物の前記液体流路内壁面と対向する前記第二端側の先端をキャビテーションポイントとして、前記隙間にて該キャビテーションポイントの周囲を通過する流れによりキャビテーションを発生するとともに、前記隙間を経て前記傾斜開口面から前記管柱状構造物内部に流入した液体から前記キャビテーションによる陰圧により溶存空気を排出させて気泡となすことを特徴とする微細気泡発生機能付きシャワー装置。
【請求項2】
前記管柱状構造物は軸断面が円状であり、前記傾斜開口面が楕円状に形成されるとともに、前記キャビテーションポイントは楕円状の該傾斜開口面の先端に形成される請求項1記載の微細気泡発生機能付きシャワー装置。
【請求項3】
一端にシャワー給水部が形成される筒状の握り手部と、シャワー水流の噴出口を有して前記握り手部の他端側に連通形態にて一体化されるシャワーヘッド部とからなるシャワー筺体を有し、該シャワー筺体の内部には、前記液体流路の一部を構成するとともに前記握り手部の内部空間よりも流路軸断面積が小さい絞り貫通流路が軸線方向に形成されたキャビテーション用筒状部材が組み込まれ、前記管柱状構造物が該キャビテーション用筒状部材に対し、前記キャビテーションポイントを形成する前記傾斜開口面が前記絞り貫通流路内にて下流側を向く形で位置するよう、該キャビテーション用筒状部材の軸線に関する半径方向に挿着されてなる請求項2記載の微細気泡発生機能付きシャワー装置。
【請求項4】
前記キャビテーション用筒状部材の前記絞り貫通流路の上流側端部が前記握り手部の内部空間に対し、テーパ状に拡径しつつ開口する導入テーパ部とされてなる請求項3記載の微細気泡発生機能付きシャワー装置。
【請求項5】
前記握り手部は先端開口部にて前記シャワーヘッド部の後端開口部に着脱可能に結合され、前記キャビテーション用筒状部材には前記半径方向にて一端が該筒状部材の外周面に、他端が同じく内周面に開口する挿着孔が形成され、前記管柱状構造物が該挿着孔内に、前記傾斜開口面側の先端が前記絞り貫通流路の内周面に当接する一方、これと反対側の端面が前記キャビテーション用筒状部材の外周面と面一ないし引っ込んで位置するように挿着されるとともに、前記キャビテーション用筒状部材は該管柱状構造物を装着した状態で前記後端開口部から前記シャワーヘッド部の内側に嵌着されてなる請求項3又は請求項4に記載の微細気泡発生機能付きシャワー装置。
【請求項6】
前記キャビテーション用筒状部材の外周面には前記シャワーヘッド部の内周面との間をシールするゴム製のオーリングが装着されるとともに、該オーリングを挿着した状態で前記シャワーヘッド部内に前記後端開口部から圧入されてなる請求項5記載の微細気泡発生機能付きシャワー装置。
【請求項7】
前記握り手部は前記先端開口部の内周面に形成される雌ねじ部にて前記シャワーヘッド部の後端開口部に形成される雄ねじ部に螺着されてなる請求項5又は請求項6に記載の微細気泡発生機能付きシャワー装置。
【請求項8】
前記シャワーヘッド部の内部空間は、前記握り手部に接続する後端開口部から、該握り手部の軸線と交差する向きに屈曲しつつ拡径して水流噴出開口を形成するとともに、該水流噴出開口に前記噴出孔が分散形成された散水板が取り付けられてなり、かつ、該シャワーヘッド部の前記水流噴出開口が形成されているのと反対側の内底面からは、前記キャビテーション用筒状部材を通過して前記シャワーヘッド部内に流れ込む前記気泡を含んだ水流を衝突させる水流衝突部が突出形成されている請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の微細気泡発生機能付きシャワー装置。
【請求項9】
前記シャワーヘッド部は前記水流噴出開口が円状に形成されるとともに、該円状の開口面の中心を通って該開口面と直交する開口軸線を定めたとき、前記水流衝突部は該開口軸線を含む柱状突出部として形成されてなり、前記気泡を含んだ水流が該柱状突出部の突出基端部外周面に向けて噴出される請求項8記載の微細気泡発生機能付きシャワー装置。
【請求項10】
前記シャワーヘッド部の内周面は、前記開口軸線と直交する断面が円状を呈する湾曲凹面形態に形成され、前記柱状突出部に衝突した前記水流は該柱状突出部による反射ないし迂回を受けつつ前記シャワーヘッド部の内周面に導かれ、該内周面に沿った旋回流を伴って前記散水板の前記噴出孔から噴出される請求項8又は請求項9に記載の微細気泡発生機能付きシャワー装置。
【請求項11】
前記散水板は内面外周縁部にて前記シャワーヘッド部の前記水流噴出開口の内周縁部に嵌着されるとともに、該散水板を厚さ方向に貫通する締結用のねじ部材が設けられ、前記柱状突出部は前記ねじ部材を螺合させる雌ねじ部が軸線方向に形成された締結用ボス部に兼用されている請求項10記載の微細気泡発生機能付きシャワー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−29649(P2010−29649A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146975(P2009−146975)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(595150906)
【出願人】(308002186)
【Fターム(参考)】