説明

微細気泡発生装置、入浴装置および台所装置

【課題】微細気泡を生成するのに有利な微細気泡発生装置、入浴装置および台所装置を提供する。
【解決手段】微細気泡発生装置1Aは、中空室16と中空室16に連通する気泡原料供給口10および泡吐出口15とをもつ基体1と、直進方向に往復移動可能に基体1に設けられた可動体2と、可動体2を直進往復移動させる駆動源3と、基体1の中空室16に位置するように可動体2に保持され複数の線状体40を有する線状体群4とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微細気泡発生装置、入浴装置および台所装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、コンプレッサ一体型の泡発生装置が開示されている。このものによれば、洗剤溶液の貯湯槽に空気を給気するノズルを設け、コンプレッサから吐出される高圧の空気を貯湯槽の洗剤溶液に給気することにより気泡を生成させることにしている。
【特許文献1】特開2002−78629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで上記した技術によれば、微細気泡を生成するには限界がある。従って、産業界では、微細気泡を生成するのに有利な微細気泡発生装置の開発が要望されている。
【0004】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、微細気泡を生成するのに有利な微細気泡発生装置、入浴装置および台所装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記した課題のもとに鋭意開発を進めている。そして、原液等の液体と空気等の気体とが混在する混在流体を回転式で起泡させて気泡を生成させる微細気泡発生装置をも開発している。しかしながらこの場合には、回転に起因する遠心力の作用により、比重が相違する液成分と気体とが互いに過剰分離する傾向があり、液成分と気体との均一攪拌性には限界があり、微細気泡の生成には限界があること、更に、線状体を回転ではなく、直進的に往復移動させれば、回転に起因する遠心力の発生が抑制されるため、液成分と気体との均一攪拌性を向上でき、微細気泡の生成に有利であることに、本発明者は着目し、試験で確認し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、様相1に係る微細気泡発生装置は、中空室と中空室に連通すると共に気泡原料を中空室に供給する気泡原料供給口および中空室で生成された気泡含有流体を吐出する泡吐出口とをもつ基体と、直進方向に往復移動可能に基体に設けられた可動体と、可動体を直進往復移動させる駆動源と、基体の中空室に位置するように可動体に保持され複数の線状体を有すると共に可動体と共に直進方向に往復移動可能な線状体群とを具備することを特徴とする。
【0007】
基体の気泡原料供給口から気泡原料を基体内に取り込んだ状態、あるいは、取り込み可能とした状態とする。この状態で駆動源が駆動すると、可動体が基体に対して直進往復移動する。この結果、可動体に保持されている線状体群が基体の中空室内において同方向に直進往復移動する。これにより気泡原料が中空室内で良好に直動的に攪拌され、微細気泡が生成される。ひいては、微細気泡を含有する微細気泡含有流体が生成される。微細気泡含有流体は基体の泡吐出口から吐出される。
【0008】
微細気泡が生成されるメカニズムとして次のように推察される。まず、線状体群を構成する線状体が直進方向に移動すると、線状体の移動方向と反対側の圧力が低下し、空気等の気体が巻き込まれ、気泡が発生する。更に線状体の移動が進行するため、線状体から気泡が剥離する。このような現象が繰り返されて基体の中空室において多数の微細気泡が生成されると推察される。更に、気泡を生成させた線状体の後方側の線状体がその気泡をせん断で切断するため、気泡が更に分断されて微細化されるものと推察される。このような気泡生成、気泡せん断の現象が繰り返され、基体の中空室において多数の微細気泡が生成されると推察される。
【0009】
基体の気泡原料供給口から中空室に供給される気泡原料としては、気泡生成可能な洗剤を含む洗剤溶液が挙げられる。温泡を形成するためには、洗剤溶液は予熱されていることが好ましい。あるいは、水などの液体、洗剤などが挙げられる。洗剤は液体状でも、粉末状でも良い。生成される微細気泡は暖かい温泡とすることができるが、常温域の気泡でも良い。
【0010】
様相2に係る入浴装置は、使用者が温水または温泡で入浴する浴槽と、浴槽または浴槽を収容する室内に配置され使用者が浴槽で入浴するときに使用可能な微細気泡発生装置とを具備する入浴装置において、微細気泡発生装置は上記した様相に係る微細気泡発生装置であることを特徴とする。微細気泡発生装置で生成される微細気泡は、暖かい温泡であることが好ましい。但し、夏期等にシャワー式の泡として用いる場合には、常温域程度の気泡でも良い。浴槽としては、通常の入浴槽でも良いし、ブース式でも良い。
【0011】
様相3に係る台所装置は、洗浄室となる凹状部をもつシンク部をもつ台所部と、台所部または台所部を収容する室内に配置され使用者が台所部を利用するときに使用可能な微細気泡発生装置とを具備する台所装置において、微細気泡発生装置は上記した様相に係る微細気泡発生装置であることを特徴とする。微細気泡発生装置で生成される微細気泡は、暖かい温泡であることが好ましい。但し、夏期等には常温域程度の気泡でも良い。
【0012】
各様相によれば、次の少なくとも一つの態様が例示できる。基体は持ち運び可能な可搬式でも良いし、固定部に固定されている固定式でも良い。基体は、中空室と、中空室に連通する気泡原料供給口および泡吐出口とをもつものであれば良い。中空室の断面形状は、真円形状、楕円形状等の円形状、四角形状等の角形状が例示される。可動体は、中空室に配置された軸状をなしている態様が例示される。また、線状体群を構成する線状体は、その先端部が可動体から遠ざかる方向に突出している可動体に設けられている態様が例示される。可動体の横断面形状は特に限定されず、円形状でも、四角形状でも良い。線状体は可撓性を有する材質で形成されている態様が例示される。材質としては樹脂系、金属系、ガラス系、セラミックス系が例示される。
【0013】
線状体の先端部と基体の中空室を形成する壁の内壁面との間の隙間が過剰であると、気泡がその隙間に逃げ、ひいては、線状体の移動によるせん断から気泡が逃げ、気泡を微細化させにくいおそれがある。この点を考慮すると、生成せんとする微細気泡の径をAマイクロメートルとするとき、線状体の先端と壁の内壁面との間の隙間は、(1000×A)マイクロメートル以下、(800×A)マイクロメートル以下、(500×A)マイクロメートル以下、(300×A)マイクロメートル以下に設定されている態様が例示される。(200×A)マイクロメートル以下に設定されている態様が例示される。この場合、(100×A)以下、(50×A)マイクロメートル以下、(10×A)マイクロメートル以下、(5×A)マイクロメートル以下が例示される。勿論、線状体の先端部を基体の中空室を形成する壁の内壁面に接触させても良い。駆動源が駆動する方向に対して反発力を与える付勢部材が基体に設けられている態様が例示される。付勢部材としてバネが例示される。バネとしてはコイルバネ、板バネ、ねじりコイルバネ、たけのこバネ、多孔質体等が例示される。駆動源としては、可動体を直進往復移動させるものであればよい。駆動源としてはリニアモータが例示される。リニアモータとしては、リニア誘導モータ、リニア直流モータ、リニアパルスモータ、リニア同期モータ、リニア電磁ソレノイド等が例示される。更には、駆動源としては、回転式のモータと、モータの回転を可動体の直進往復移動に変換させる変換機構とを備える形態が例示される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る微細気泡発生装置によれば、回転に起因する遠心力の発生が抑制されるため、液成分と気体との過剰分離が抑制され、微細気泡を含有する微細気泡含有流体を効果的に且つ安定的に形成することができる。また、入浴装置および台所装置に適用すれば、サイズが微細な気泡を有する微細気泡含有流体が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の各実施形態について説明する。
【0016】
(実施形態1)
本実施形態に係る微細気泡発生装置1Aは、基体1と、可動体2と、可動体2を移動させる駆動源3と、複数の線状体を有するブラシ状の線状体群4とを備えている。基体1は、金属または硬質樹脂で形成された縦長の円筒形状をなしており、気泡原料供給口10と、泡吐出口15とをもつ。気泡原料供給口10は基体1の下部側に形成されており、互いに並設された第1供給口11と第2供給口12とを備えている。第1供給口11は第1筒部11aで形成されている。第2供給口12は第2筒部12aで形成されている。第1供給口11から気体としての空気が基体1の中空室16に供給される。第2供給口12から洗剤溶液が中空室16に供給される。泡吐出口15は基体1の上部側に形成されている。基体1は持ち運び可能な可搬式でも良いし、固定部に固定されている固定式でも良い。
【0017】
基体1は、第1供給口11および第2供給口12をもつ筒形状の第1基体1fと、泡吐出口15および駆動源3をもつ第2基体1sとを組み付けて形成されている。第1基体1fは第1フランジ部101をもつ。第2基体1sは第2フランジ部102をもつ。第1フランジ部101と第2フランジ部102との間にシール部材104が介在している。なお、中間室16は断面で円形状をなしており、その内径は、少なくとも線状体群4が移動する移動ストローク範囲内においては同径とされている。
【0018】
可動体2は、基体1が延びる方向に沿って一方向に延びている長い軸状をなしており、直進方向(矢印Y1,Y2方向、上下方向)に往復移動可能に基体1の中空室16内に設けられている。駆動源3は、可動体2を直進方向(矢印Y1,Y2方向)に直進往復移動させる機能をもつ。駆動源3はリニアモータとされており、長軸状の可動体2のうち気泡原料供給口10と反対側の端部20に接続されており、可動子と固定子とを備えている。なお、駆動源3は可動体2を直進往復移動させるものの、回転運動させない。線状体群4(ブラシ)は、基体1の中空室16に位置するように可動体2に植毛状態に保持されている。線状体群4を構成する線状体40は、可動体2から放射方向に突出している。可動体2の横断面形状は特に限定されず、円形状でも、四角形状でも良い。線状体40は可撓性を有する材質で形成されている。材質としては樹脂系、金属系、ガラス系、セラミックス系が例示される。1本の線状体40の繊維長をLとし、1本の線状体40の繊維径をDとすると、L/Dは大きいため、その形状からして線状体40は可撓性を有する。
【0019】
微細気泡発生装置1Aの用途(家庭用、工業用)、要請される微細気泡の性質、気泡原料の材質、駆動源3の能力等によっても変動するものの、Lは10〜300ミリメートル、20〜100ミリメートル、30〜500ミリメートルが例示される。Lの下限値としては、5ミリメートル、10ミリメートルが例示される。Lの上限値としては、500ミリメートル、300ミリメートル、100ミリメートルが例示される。Dは0.05〜10ミリメートル、0.1〜10ミリメートル、0.5〜2ミリメートルが例示される。Dの下限値としては、0.05ミリメートル、0.1ミリメートルが例示される。Dの上限値としては、10ミリメートル、4ミリメートル、2ミリメートルが例示される。但しLおよびDは上記した値に限定されるものではない。
【0020】
基体1の中空室16において、線状体群4の一端4f(下端)側には第1室16fが形成されている。線状体群4の他端4s(上端)側には第2室16sが形成されている。線状体群4の移動方向(矢印Y1,Y2方向)の両側には第1室16fおよび第2室16sが形成されている。このため、線状体群4の移動ストロークは良好に確保される。一本の線状体40のうち可動体2に近い側を基端部40aとする。線状体40のうち可動体2から遠い側を先端部40cとする。一本の線状体40の先端部40cの可撓性は、線状体40の基端部40aの可撓性よりも大きい。先端部40cは基端部40aよりも可動体2から離間しているためである。
【0021】
本実施形態によれば、線状体40の先端部40cと基体1の壁18の内壁面18iとの間には隙間19(図3参照)が形成されていることがある。この隙間19の隙間幅Mが過剰であると、気泡がその隙間19に移動し、線状体40の移動によるせん断から気泡が逃げるおそれがある。この点を考慮し、隙間19が形成されている場合には、基体1のうち中空室16を形成する壁18の厚みをt(図3参照)とするとき、線状体40の先端部40cと壁18の内壁面18iとの間の隙間19の隙間幅Mは、(10×t)以下に設定されていることが好ましい。あるいは、(5×t)以下、(3×t)以下、(1×t)以下に設定されていることが好ましい。また、線状体40の径(直径)をDとすると、隙間19の隙間幅Mは、(20×D)以下に設定されていることが好ましい。あるいは(10×D)以下、(50×D)以下、(3×D)以下に設定されていることが好ましい。但し隙間19の隙間幅Mは上記した値に限定されるものではない。勿論、本実施形態によれば、線状体40の先端部40cを基体1の壁18の内壁面18iに接触させ、隙間幅Mを解消させることも好ましい。線状体40の先端部40cに、先方に円弧凸形状に突出する丸み40rを形成することも好ましい。生成せんとする微細気泡の径をAとするとき、線状体40の先端部40cと壁18の内壁面18iとの間の隙間幅Mは、(1000×A)以下に設定されている態様が例示される。この場合、(800×A)以下、(600×A)以下、(400×A)以下、(200×A)以下が例示される。(100×A)以下、(30×A)以下、(20×A)以下が例示される。勿論、線状体の先端部を基体の中空室を形成する壁の内壁面に接触させても良い。
【0022】
図1から理解できるように、駆動源3が駆動する方向に対して反発力を与える付勢部材としてバネ5が基体1の内部に設けられている。バネはコイルバネとされている。バネ5は、第1バネ51と第2バネ52とで形成されている。第1バネ51は、線状体群4の長さ方向(矢印Y方向)の一端4f側に設けられた円錐コイルバネで形成されている。第2バネ52は、線状体40群4の長さ方向の他端4s側に設けられた円錐コイルバネで形成されている。図1に示すように、第1バネ51および第2バネ52は、可動体2の長さ方向(矢印Y方向)において線状体群4を挟むように基体1の中空室16に配置されている。これにより線状体群4が移動するとき、線状体群および駆動源34等に作用する衝撃が緩和される。故に第1バネ51および第2バネ52は衝撃緩和要素として機能できる。
【0023】
ここで、図1に示すように、第1バネ51では、線状体群4側の端部が第1径小部51aとされ、線状体群4と反対側の端部が第1径大部51cとされている。第1径大部51cは、基体1の中空室16に形成された鍔状の第1座部1xに着座可能とされており、第1径小部51aよりも大きい径を有するため、着座時における衝撃緩和に有利である。第1座部1xは、第1供給口11および第2供給口12を形成する平坦な壁で形成されている。第1径小部51aは可動体2の端部22に巻き付けられ、可動体2に固定されている。
【0024】
また図1に示すように、第2バネ52では、線状体4側の端部が第2径小部52aとされ、線状体群4と反対側の端部が第2径大部52cとされている。第2径大部52cは、基体1の中空室16に形成された鍔状の第2座部1yに着座可能とされており、第1径小部52aよりも大きい径を有するため、着座時における衝撃緩和に有利である。第2径小部52aは、可動体2のうち線状体群4の近傍部位24に巻き付けられて、可動体2に固定されている。上記したように第1バネ51および第2バネ52は可動体2に固定されているため、第1バネ51および第2バネ52のがたつきが抑制されると共に、可動体2が移動すると第1バネ51および第2バネ52も同方向に移動する。第1バネ51の付勢力F1と第2バネ52の付勢力F2とは実質的に対応するため(F1=F2,F1≒F2)、線状体群4を中空室16の定位置に維持させるのに有利である。但し場合によってはF1<F2,F1>F2としても良い。
【0025】
微細気泡生成装置の使用方法について説明する。まず、基体1のうち下部側の気泡原料供給口10から気泡原料を取り込んだ状態、あるいは、取り込み可能とした状態とする。この場合、第1供給口11から気体としての空気が供給される。第2供給口12から暖かい洗剤含有溶液が供給される。この状態で駆動源3が駆動する。すると、可動体2が基体1の中空室16内において直進方向(矢印Y1,Y2方向)に繰り返して往復移動する。この結果、可動体2に保持されている線状体群4が中空室16内において直進方向(矢印Y1,Y2方向)に繰り返して往復移動する。これにより中空室16内で気泡原料(洗剤溶液および空気)から微細気泡が連続的に生成される。これにより気体(空気)と液成分(水成分)とが混在する微細気泡含有流体が連続的に生成される。
【0026】
ここで、微細気泡は基体1の中空室16内を基本的には矢印Y1方向に沿って上昇し、基体1の上部側の泡吐出口15から微細気泡含有流体として吐出される。微細気泡発生装置1Aの用途、要請される微細気泡の性質、気泡原料の材質、駆動源3の能力等によっても変動するものの、駆動源3の駆動回数としては、可動体2の1往復を1サイクルとすると、単位時間(1秒間)あたり10〜2000サイクルの範囲内とすることが例示される。この場合、単位時間(1秒間)あたり20〜1000サイクルの範囲内、更には、50〜500サイクルの範囲内、100〜200サイクルの範囲内とすることができる。但し駆動源3の駆動回数はこれらに限定されるものではない。
【0027】
微細気泡のサイズとしては、駆動源3の単位時間あたりの駆動回数、線状体40の径、線状体40の長さ、線状体40の材質、中空室16の容積などによっても変動する。気泡のサイズ(気体部分のサイズ)としては、1〜1000マイクロメートル、5〜500マイクロメートル、殊に、10〜300マイクロメートルが例示される。更に、30〜200マイクロメートル、50〜150マイクロメートルが例示される。但しこれらに限定されるものではない。生成せんとする微細気泡の径をAとするとき、線状体の先端部と壁の内壁面との間の隙間としては、(10×A)以下、(100×A)以下、(200×A)以下、(500×A)以下、(800×A)以下、(1000×A)以下に設定されている。
【0028】
一般的には、気泡が微細な方が液相成分(水成分)の比率が増加し、気泡が冷めにくくなり、温泡として利用するのに好ましい傾向がある。このため入浴などで使用する場合には、一般的には、気泡は細かい方が好ましい。また、微細気泡含有流体のうち液相成分(水成分)の比率が多い方が、微細気泡含有流体は冷めにくい傾向がある。このため微細気泡含有流体のうち液相成分(水成分)の比率としては1〜6程度、1.5〜4程度、2〜3程度が例示される。但し比率はこれらに限定されるものではない。ここで、微細気泡が生成されるメカニズムとして次のように推察される。まず、線状体群4を構成する線状体40が直進方向(矢印Y1,Y2方向)に移動すると、線状体40の移動方向と反対側の圧力が局所的に低下し、空気が巻き込まれ、気泡が発生する。更に線状体40の移動が進行するため、線状体40から気泡が剥離する。このような現象が繰り返されて基体1の中空室16において多数の微細気泡が連続的に生成されると推察される。更に、気泡を生成させた線状体40の後方側の線状体40が気泡をせん断するため、気泡が更に分断されるものと推察される。このような気泡生成、気泡分断の現象が繰り返され、基体1の中空室16において多数の微細気泡が連続的に生成されると推察される。
【0029】
線状体群4の長さLA(図1参照)は、上記した気泡生成、気泡分断の回数に影響を与える。このため、線状体群4の下端(気泡原料供給口10に近い側の一端)から上端(泡吐出口15に近い側の他端)に向かうにつれて、気泡は次第に細かくなると推定される。線状体群4の長さLA(図1参照)は、線状体群4の直径DA(図2参照)よりも大きく設定されている(LA>DA)。但し、場合によっては、必要に応じて、LA=DA,LA≒DA,LA<DAとしても良い。図2に示すように、基体1の軸線P1の回りの周方向(矢印S方向)において、線状体40は可動体2に密集状態に植毛されている。従って、気泡が基体1の周方向に移動しても、別の線状体40が気泡を分断させることが期待される。
【0030】
以上説明したように本実施形態によれば、線状体群4を構成する線状体40を直進的に往復移動させて気泡を生成する。このため回転に起因する遠心力の発生が抑制されるため、気泡生成にあたり液成分と気体との過剰分離が抑制され、微細気泡を効果的に且つ安定的に形成することができる。本実施形態によれば、線状体40の直進方向の往復移動で気泡を形成するため、高圧を生成させるコンプレッサを廃止することができる。但し、コンプレッサを用い、コンプレッサから空気を基体1の第1供給口11に供給することにしても良い。
【0031】
(実施形態2)
図4は実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図4に示すように、線状体群4の中央には軸状の可動体2が配置されている。線状体群4は、軸状をなす可動体2の外壁面に植毛状態で保持されている。線状体群4を構成する多数の線状体40の先端部40cは、可動体2の外壁面において、可動体2の外壁面から遠ざかる方向に放射方向に突出している。可動体2の横断面形状は、円形状とされている。線状体40は可撓性を有する材質で形成されている。材質としては樹脂系、金属系、ガラス系、セラミックス系が例示される。ここで、線状体40のうち可動体2から遠い側を先端部40cとする。線状体40の先端部40cの可撓性は、線状体40の基端部40aの可撓性よりも大きい。
【0032】
(実施形態3)
図5は実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および作用効果を有する。第1バネおよび第2バネが設けられていない。軸状をなす可動体2の一端部(上端部)は駆動源3に接続されている。駆動源3が駆動すると、可動体2は線状体群4と共に直進方向(矢印Y1,Y2方向)に往復移動する。
【0033】
(実施形態4)
図6は実施形態4を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図6に示すように、基体1は横断面で四角形状をなす角筒形状をなしている。可動体2Bは、基体1が延びる方向に沿って一方向に延びている長い盤状をなしており、直進方向(図6に示す紙面の厚み方向)に往復移動可能に基体1の中空室16内に設けられている。線状体群4は基体1の中空室16に位置するように可動体2Bに保持されている。線状体群4を構成する線状体40は、可動体2の外壁面から、可動体2から遠ざかるように一方向(矢印E1方向)に植毛状態に突出している。図6に示すように、可動体2と基体1との間には、可動体2と基体1との間の摩擦抵抗を低減させるための複数の転動体60が設けられている。これにより可動体2は基体1に対して良好に相対移動できる。なお、可動体2と基体1との間の摩擦抵抗が少ないのであれば、場合によっては、転動体60を廃止しても良い。図6に示すように、線状体40の先端部40cと基体1の壁18の内壁面18iとの間の隙間幅Mが過剰であると、気泡がその隙間に逃げ、線状体40の移動によるせん断から気泡が逃げるおそれがある。この点を考慮し、生成せんとする微細気泡の径をAとするとき、線状体40の先端部40cと壁18の内壁面18iとの間の隙間幅Mは、(1000×A)以下に設定されている。但し隙間幅Mは上記した値に限定されるものではない。
【0034】
(実施形態5)
図7は実施形態5を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および作用効果を有する。上記した実施形態1によれば、駆動源は駆動方向が回転方向ではなく直動方向であるリニアモータが採用されている。この点について本実施形態によれば、駆動源3Bは、回転方向に駆動するモータ300と、モータ300の回転軸301の回転運動を往復直動運動に変換する変換機構310とを備えている。変換機構310は、モータ300のモータ軸301に連結されたクランクアーム311と、クランクアーム311に一端部312aが揺動可能に連結されたリンク312と、リンク312の他端部312cに揺動可能に連結されたスライダ313と、スライダ313を直動させるガイド面314aをもつガイド部314とを備えている。スライダ313は可動体2に軸状の枢支部2mを介して揺動可能に連結されている。モータ300が矢印R1方向に回転すると、モータ軸301がこれの軸線回りで回転運動し、クランクアーム311がモータ軸301回りで回転運動し、ひいてはリンク312を介してスライダ313が直動方向(矢印Y1,Y2方向)に繰り返して往復運動し、更に可動体2および線状体群4を直動方向(矢印Y1,Y2方向)に往復運動させる。
【0035】
(実施形態6)
図8は実施形態6を示す。入浴装置は、使用者が温水または温泡で入浴する容器状の浴槽70と、浴槽70に装備された微細気泡発生装置1Aとを備えている。浴槽70には、温泡供給ノズル71をもつ温泡供給具72が設けられている。温泡供給具72は微細気泡発生装置1Aと接続されている。温泡供給ノズル71は、浴槽70で入浴している使用者の肩に対面するように肩の上側に配置されている。使用者が図略の気泡スイッチ74を操作すれば、微細気泡発生装置1Aが駆動し、微細気泡発生装置1Aは微細気泡を発生させ、ひいては微細気泡含有流体を連続的に生成させる。微細気泡含有流体は、微細気泡発生装置1Aから連通路400を介して温泡供給ノズル71に供給され、温泡供給ノズル71から浴槽70内の使用者の肩付近に連続的に供給される。このようにして温泡(微細気泡含有流体)は浴槽70に供給される。このようにして使用者は温泡入浴を行うことができる。なお、微細気泡発生装置1Aは浴槽70に装備されているが、これに限らず、浴槽70を配置している室内に配置することにしても良い。
【0036】
(実施形態7)
図9は実施形態7を示す。本実施形態は実施形態1〜5と基本的には同様の構成および作用効果を有する。入浴装置は、使用者が温水または温泡で入浴するブース室75をもつブース76と、ブース76に装備された微細気泡発生装置1Aとを備えている。ブース室75には、使用者が着座する着座部77と、温泡供給ノズル71をもつ温泡供給具72とが設けられている。温泡供給具72は微細気泡発生装置1Aと連通路400を介して接続されている。温泡供給ノズル71は、着座部77に着座している使用者の肩に対面するように肩の上側に配置されている。使用者が気泡スイッチ74を操作すれば、微細気泡発生装置1Aが駆動し、微細気泡発生装置1Aは温泡である微細気泡含有流体を連続的に生成させる。微細気泡含有流体は、連通路400を介して温泡供給ノズル71から使用者の肩に連続的に供給される。このようにして使用者はブース76内で温泡入浴を行うことができる。図8から理解できるように、微細気泡含有流体は、ブース76の床面の排出口80aから排出室80b内に排出され、排出室80b内のシャワー部81aから噴出されるシャワー水により消泡処理される。ブース76の床面にはシャワー部81bが装備されており、シャワー部81bから噴出されるシャワー水によりブース76の床面の微細気泡含有流体は、排出口80aから排出室80bに排出される。
【0037】
(実施形態8)
図10は実施形態8を示す。本実施形態は実施形態1〜5と基本的には同様の構成および作用効果を有する。台所装置は、台所室内に設置されるシンク部90をもつ台所部93と、台所部93に配置され使用者が台所部93を利用するときに使用可能な微細気泡発生装置1Aとを備えている。シンク部90には蛇口部91が設けられている。シンク部90は、野菜、食器、調理具などを洗浄する洗浄室となる凹状部90aをもつ。台所部93は、調理具等を配置する配置面93a,93b、ガス式または電気式のレンジ93c、物品収容庫93e,93f等をもつ。使用者が気泡スイッチ74を操作すれば、微細気泡発生装置1Aの駆動源3が駆動し、微細気泡発生装置1Aは微細気泡含有流体を連続的に生成させる。微細気泡含有流体は、温泡供給ノズル71からシンク部90の凹状部90a内に連続的に供給される。このようにして使用者はシンク部90の凹状部90aにおいて温泡を洗浄液として用い、野菜、食器、調理具などを洗浄することができる。微細気泡含有流体は温泡でも良いし、常温の泡でも良い。なお、微細気泡発生装置1Aはシンク部90に装備されているが、これに限らず、シンク部90を配置している室内に配置することにしても良い。
【0038】
(他の実施形態)
上記した実施形態によれば、基体1は縦長の筒体とされているが、これに限らず、横長の筒体とすることもできる。中間室16は断面で円形状をなしており、その内径は、少なくとも線状体群4が移動する移動ストローク範囲内においては同径とされているが、場合によっては、線状体群4の移動を許容できる限り、内径が多少変動していても良い。その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施可能である。ある実施形態に特有の構造および機能は他の実施形態についても適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は例えば温泡入浴、温泡シャワー、台所等といった微細気泡を利用できる分野に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】微細気泡発生装置を長手方向に沿って切断した状態を示す断面図である。
【図2】微細気泡発生装置を横方向に沿って切断した状態を示す断面図である。
【図3】基体の中空室を形成する壁と線状体の先端部との関係を示す断面図である。
【図4】実施形態2に係り、線状体群を示す斜視図である。
【図5】実施形態3に係り、微細気泡発生装置を長手方向に沿って切断した状態を示す断面図である。
【図6】実施形態4に係り、微細気泡発生装置を横方向に沿って切断した状態を示す断面図である。
【図7】実施形態5に係り、駆動源付近を模式的に示す断面図である。
【図8】実施形態6に係り、浴槽式の入浴装置に適用した状態を模式的に示す構成図である。
【図9】実施形態7に係り、ブース式の入浴装置に適用した状態を模式的に示す構成図である。
【図10】実施形態8に係り、台所装置に適用した状態を模式的に示す構成図である。
【符号の説明】
【0041】
1Aは微細気泡発生装置、1は基体、10は気泡原料供給口、11は第1供給室、12は第2供給室、15は泡出口、16は中空室、18は壁、19は隙間、4は線状体群、40は線状体、40aは基端部、40cは先端部、5はバネ、70は浴槽、71は温泡供給ノズル、72は温泡供給具、74は気泡スイッチ、75はブース室、76はブース、77は着座部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空室と前記中空室に連通すると共に気泡原料を前記中空室に供給する気泡原料供給口と前記中空室で生成された気泡含有流体を吐出させる泡吐出口とをもつ基体と、
直進方向に往復移動可能に前記基体に設けられた可動体と、
前記可動体を直進往復移動させる駆動源と
前記基体の前記中空室に位置するように前記可動体に保持され複数の前記線状体を有すると共に前記可動体と共に直進方向に往復移動可能な線状体群とを具備することを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項2】
請求項1において、前記線状体群を構成する前記線状体は、その先端部が前記可動体から遠ざかる方向に突出して前記可動体に設けられていることを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記線状体は可撓性を有する材質で形成されていることを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、生成せんとする微細気泡の径をAとするとき、前記線状体の先端部と前記壁の内壁面との間の隙間は、(1000×A)以下に設定されていることを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの一項において、前記駆動源が駆動する方向に対して反発力を与える付勢部材が前記基体に設けられていることを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項6】
使用者が温水または温泡で入浴する浴槽と、前記浴槽または前記浴槽を収容する室内に配置され使用者が浴槽で入浴するときに使用可能な微細気泡発生装置とを具備する入浴装置において、前記微細気泡発生装置は請求項1〜5のうちの一項に係る微細気泡発生装置であることを特徴とする入浴装置。
【請求項7】
洗浄室となる凹状部をもつシンク部をもつ台所部と、前記台所部または前記台所部を収容する室内に配置され使用者が前記台所部を利用するときに使用可能な微細気泡発生装置とを具備する台所装置において、前記微細気泡発生装置は請求項1〜5のうちの一項に係る微細気泡発生装置であることを特徴とする台所装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−165982(P2009−165982A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8089(P2008−8089)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】