説明

微細気泡発生装置および方法

【課題】微細気泡を含有する液体を一時的に貯留させることなく、省スペースで液体に微細気泡を効率良く発生させることができる微細気泡発生装置および方法を提供する。
【解決手段】処理液Lを戻り循環部5で循環させながらマイクロバブルを発生させて処理液Lに含有されるマイクロバブル量を高め、流調バルブV1を介して送液配管2の下流端部2Bから処理槽100に送り出す。また、2つの流調バルブV1、V2によって気泡発生部6に与える処理液Lの流量を調整するとともに、ニードル弁V3によって気泡発生部6に供給する空気の流量を調整しているので、気泡発生部6に対して最適な圧力と流量の処理液Lおよび空気が供給されて所望の微細気泡を効率的に発生させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微細気泡、例えば直径が50〜60μm以下のマイクロバブルは、水などの液体中で縮小していき、水中で消滅する、つまり完全に溶解する。このように微細気泡が水中で縮小する過程で、気泡内部の圧力が高められたり、表面に集積したイオン類をさらに濃縮させることが近年の研究で確認されている(非特許文献1参照)。そして、これらの基本的な特性を利用することが様々な分野で提案されている。例えば、マイクロバブルなどの微細気泡を用いて湖や海などの水域を浄化する試みがなされている。また、半導体基板やガラス基板の表面を洗浄する処理液に微細気泡を含有させて洗浄効率の向上を図ること、並びに食料品などを洗浄する洗浄液に微細気泡を含有させて化学物質を分解除去することも提案されている。さらに、微量で多様な有害化学物質を効果的に除去することが可能であるため、飲料水に微細気泡を含有させて飲料水の安全性の向上を図ることも提案されている。
【0003】
例えば特許文献1では、マイクロバブルを含有する純水等の処理液を処理槽内に貯留し、その処理槽内の処理液に基板を浸漬することにより、洗浄処理等の処理を行っている。この特許文献1に記載の装置では、処理槽の上面は開放されており、その外側面の上端には外槽が設けられている。そして、この外槽へオーバーフローする処理液が配管により気液混合ポンプに吸入される。また、この配管には、窒素ガス供給源が接続されており、窒素ガスが処理液とともに気液混合ポンプへ導入される。窒素ガスと処理液は、気液混合ポンプで混合され、旋回加速器を介して処理槽に吐出される。こうして処理槽内の処理液に対してマイクロバブルを含有させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−147617号公報(例えば、図1)
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】高橋 正好、”研究紹介1.はじめに (微細な気泡の工学的応用)”、[online ]、平成22年4月26日 更新、産業技術総合研究所 環境管理技術研究部門、[平成22年4月28日検索]、インターネット<http://staff.aist.go.jp/m.taka/Research.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の装置では、上記したように処理槽内の処理液をポンプにより循環させるとともに、その循環経路の途中にマイクロバブル発生器を設置し、処理槽内にマイクロバブルを発生させている。このようにマイクロバブルを含有する処理液(以下「MB含有液」という)を貯留するための処理槽を必須的に設ける必要があった。また、上記した特許文献1に記載の装置では、処理槽内で基板処理しており、処理槽そのものがユースポイントとなっているが、ユースポイントがマイクロバブル発生器から離間している場合、MB含有液を貯留するタンクを別途設ける必要がある。このようにユースポイントとマイクロバブル発生器との位置関係にかかわらず、従来技術ではMB含有液を貯留する処理槽やタンクを設ける必要がある。
【0007】
また、マイクロバブルの発生量を増加させるために、処理槽やタンクと、マイクロバブル発生器との間で処理液を循環させながら処理液にマイクロバブルを発生させることが一般的に行われている。この場合、処理液の循環させるために、基板処理に必要な処理液量の数倍のMB含有液を貯留する必要があり、処理槽やタンクの大型化が不可避となるとともに、装置始動から所望のマイクロバブルを含有するMB含有液を得るまでに要する時間が長くなってしまう。このようにマイクロバブルを効率的に発生させることが難しかった。
【0008】
さらに、上記したようにユースポイントがマイクロバブル発生器から離れている場合、当該タンクとユースポイントとを接続する配管系および送液用ポンプをそれぞれ付加的に設け、ポンプによってタンク内のMB含有液を送液する必要がある。また、既設設備でMB含有液を用いている場合、上記タンクを設置するスペースを新たに確保する必要があり、しかもユースポイントにつながる既設の配管より分岐し、タンク内に導入してマイクロバブルを含有させた後、元の配管に送液して合流させる必要があり、装置の大型化および複雑化は避けられない。
【0009】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、微細気泡を含有する液体を一時的に貯留させることなく、省スペースで液体に微細気泡を効率良く発生させることができる微細気泡発生装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明にかかる微細気泡発生装置は、上記目的を達成するため、液体を所定の送液方向に導く送液配管と、送液配管に設けられて送液配管の上流端部を介して液体を吸入するとともに送液方向に圧送して送液配管の下流端部を介して送り出すポンプと、送液配管の下流端部から分岐するとともに送液配管の上流端部に接続されて液体の循環経路を構成する戻り循環部と、循環経路内を流れる液体に気体を供給して微細気泡を発生させる気泡発生部と、送液配管からの戻り循環部の分岐位置に対して送液方向の下流側に設けられて液体の送出量を調整する第1調整部と、戻り循環部での液体の流量を調整する第2調整部とを備えることを特徴としている。
【0011】
また、この発明にかかる微細気泡発生方法は送液配管に設けられたポンプによって送液配管の上流端部から吸入されて送液配管の下流端部に送り出される液体に微細気泡を発生させる微細気泡発生方法であって、上記目的を達成するため、送液配管の下流端部を流れる液体の一部を循環経路を介して送液配管の上流端部に戻しながら循環経路内を流れる液体に気体を供給して微細気泡を発生させて液体に含有させることを特徴としている。
【0012】
このように構成された発明(微細気泡発生装置および方法)では、ポンプによって液体が送液配管の下流端部から送り出されるが、送液配管の下流端部を流れる液体の一部は送液配管の上流端部に戻される。すなわち、送液配管の下流端部から分岐するとともに送液配管の上流端部に接続されて液体を循環させる循環経路が形成されている。そして、第1調整部により液体の送出量が調整されるとともに、第2調整部により戻り循環部での液体の流量が調整され、送液配管を流れる液体の一部が送液配管と戻り循環部との間を循環する。また、このように循環している液体に対して気体が供給されて微細気泡が発生し、液体に微細気泡が効率良く含有される。
【0013】
ここで、戻り循環部を、送液配管の下流端部から分岐する第1配管と、送液配管の上流端部に接続される第2配管と、第1配管と第2配管との間を連通する第3配管と、第1配管と第2配管との間を連通する第4配管とで構成してもよい。そして、第2調整部が第3配管に設けられ、この第2調整部によってポンプに戻される液体量を調整することで常にポンプに対して一定量以上の液体を戻すことができ、ポンプを良好に作動させることができる。また、第1調整部および第2調整部による流量調整により、第1配管、第4配管および第2配管を介して流れる液体の流量が調整されて気泡発生部に対して適切な圧力と流量の液体が供給されて所望の微細気泡を発生させることができる。
【0014】
また、第2調整部を第3配管のみならず第4配管にも設けてもよく、これによって気泡発生部に流れ込む液体の圧力や流量をさらに高精度に制御することができ、気泡発生部で発生する微細気泡をさらに適正化することができる。また、微細気泡の発生量を増加させるためには、第4配管を複数設けるとともに、各第4配管に第2調整部および気泡発生部を設けてもよい。このように第1配管および第2配管に対して複数の気泡発生部を並列的に設けることで液体に対して微細気泡を短時間で効率良く発生させることができる。
【0015】
また、気泡発生部への気体の供給流量を調整する第3調整部をさらに設けることで気泡発生部に流れ込む気体の圧力や流量をさらに高精度に制御することができ、気泡発生部で発生する微細気泡をさらに適正化することができる。ここで、第4配管を複数設けるとともに、各第4配管に気泡発生部を設けた場合、複数の気泡発生部に対して1つの第3調整部を設けてもよい。また、気泡発生部と第3調整部とを「多対多」や「1対1」の対応関係で設けてもよい。
【0016】
また、気泡発生部で微細気泡を発生させるために、液体に供給される気体をせん断して微細気泡を生成する気液せん断法を用いることができる。この気液せん断法を用いた気泡発生部として、例えばアスピレータを使用することができる。
【0017】
さらに、既設配管内を流れる液体が流れている場合、送液配管の上流端部および下流端部を既設配管に接続することで所望の微細気泡を既設配管内の液体に含有させることができる。なお、送液配管内での液体の圧力が既設配管の耐圧を上回ると、既設配管に破損などが生じる可能性がある。この場合、減圧部を、戻り循環部の分岐位置に対して送液方向の下流側に設けて送液配管の下流端部から既設配管に送り出される液体の圧力を既設配管の耐圧以下に減圧するのが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、ポンプにより液体を導く送液配管に対して液体の循環経路を形成するとともに、その循環経路を流れる液体に対して気体を供給して微細気泡を発生させているため、微細気泡を含有する液体を貯留するタンクなどを設けることなく、効率的に液体に微細気泡を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる微細気泡発生装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】本発明にかかる微細気泡発生装置の第2実施形態を示す図である。
【図3】本発明にかかる微細気泡発生装置の第3実施形態を示す図である。
【図4】第3実施形態にかかる微細気泡発生装置の変形例を示す図である。
【図5】本発明にかかる微細気泡発生装置の第4実施形態を示す図である。
【図6】第4実施形態にかかる微細気泡発生装置の改良例を示す図である。
【図7】気泡発生部として用いるアスピレータの一例を示す断面図である。
【図8】気泡発生部として用いるアスピレータの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
図1は本発明にかかる微細気泡発生装置の第1実施形態を示す図である。この実施形態は処理槽100をユースポイントとするものであり、微細気泡発生装置1Aは処理槽100から純水などの処理液Lを吸入し、所望の微細気泡を含有させてMB含有液を得た後、処理槽100に送り出す装置である。この第1実施形態にかかる微細気泡発生装置1Aは処理槽100内の処理液Lを所定の送液方向Dに導く送液配管2を有している。この送液配管2の上流端部2Aは処理槽100の下方側部に接続される一方、送液配管2の下流端部2Bは処理槽100の上方側部に接続されている。また、送液配管2の中央部には、送液用ポンプ3が設けられている、つまりポンプ3の取水口(図示省略)が送液配管2の上流端部2Aを介して処理槽100と接続されるとともに、ポンプ3の排出口(図示省略)が送液配管2の下流端部2Bを介して処理槽100と接続されている。そして、ポンプ3は、装置全体を制御する制御部4からの動作指令に応じて作動することで、送液配管2の上流端部2Aを介して処理槽100から処理液Lを吸入するとともに送液方向Dに圧送して送液配管2の下流端部2Bを介して処理槽100に送り出す。
【0021】
また、送液配管2に対して戻り循環部5が取り付けられており、ポンプ3の排出口から送り出される処理液Lの一部をポンプ3の取水口に戻す循環経路を形成している。より詳しくは、戻り循環部5は、送液配管2の下流端部2Bから分岐する第1配管51と、送液配管2の上流端部2Aに接続される第2配管52とを有している。そして、ポンプ3に近接して第3配管53が配置されて第1配管51と第2配管52との間を連通して第1循環経路を形成している。また、第1配管51および第2配管52の先端部(図1の右側端部)が第4配管54で相互に連結されて第2循環経路を形成している。このように第1実施形態では、2つの循環経路が形成されており、そのうち第1循環経路に流調バルブV2が配置されている。このように、第3配管53に流調バルブV2が設けられて第1循環経路を介してポンプ3に戻る処理液Lの最低流量を調整可能となっている。この流調バルブV2は可変流量バルブであり、制御部4からの指令に応じて第3配管53を流れる処理液Lの流量を調整する。このように第1実施形態では、ポンプ3に対して一定量以上の処理液Lが戻されるように流調バルブV2は制御されてポンプ3を常に良好な状態で作動させている。また、流調バルブV2による流量調整によって、第2循環経路に流れ込む処理液Lの流量が調整される。このように本実施形態では流調バルブV2が本発明の「第2調整部」として機能している。
【0022】
この第2循環経路には気泡発生部6が配置されており、第4配管54内を流れる処理液Lに対して空気が供給されて直径が50〜60μm以下のマイクロバブルを処理液Lに発生させる。この第1実施形態では、後述するように気液せん断法によりマイクロバブルを処理液Lに発生させており、図示省略の空気供給源から圧送されてくる空気がニードル弁V3を介して気泡発生部6に供給されてマイクロバブルを発生させて処理液Lにマイクロバブルを含有させてMB含有液を生成している。このように本実施形態では、ニードル弁V3によって気泡発生部6に供給される空気の圧力や流量が調整されており、ニードル弁V3が本発明の「第3調整部」として機能している。
【0023】
このように生成されるMB含有液は第4配管54および第2配管52を介して送液配管2の上流端部2Aに送られて処理液L中のマイクロバブル含有量を増大させる。そして、処理液Lはポンプ3によって送液配管2の下流端部2Bを介して送り出される。この送液配管2の下流端部2Bでは、第1配管51の分岐位置BPに対して送液方向Dの下流側(図1の上方側)に流調バルブV1が設けられて下流端部2Bを介して処理槽100に送り出される処理液Lの流量を調整可能となっている。この流調バルブV1は可変流量バルブであり、制御部4からの指令に応じて処理液Lの送出量を調整する。また、流調バルブV1による送出量の調整によって戻り循環部5に流れ込む処理液Lの流量が制御される。このように本実施形態では流調バルブV1が本発明の「第1調整部」として機能している。
【0024】
このように構成された微細気泡発生装置1Aでは、制御部4の動作指令に応じてポンプ3が作動するとともに、各バルブV1〜V3が開くと、ポンプ3によって処理槽100内の処理液Lが微細気泡発生装置1Aに吸入されて送液配管2内を送液方向Dに送られる。そして、ポンプ3から送り出された処理液Lは第1流調バルブV1の開き度合いに応じた割合で分岐位置BPで戻り循環部5の第1配管51に流れ込む。
【0025】
また、第2流調バルブV2の開き度合いに応じた割合で第1配管51から第3配管53および第4配管54にそれぞれ流入する。この第3配管53では、処理液Lがそのまま第2流調バルブV2を介して第1循環経路に沿って流れ、第2配管52および送液配管2の上流端部2Aを介してポンプ3に戻される。一方、第4配管54では、第1流調バルブV1および第2流調バルブV2の開き度合いに応じた流量で処理液Lが気泡発生部6に送り込まれる。この気泡発生部6には、ニードル弁V3を介して流量および圧力が調整された空気が供給される。この結果、処理液Lにより切断・粉砕されてマイクロバブルが形成されて処理液Lにマイクロバブルが含有される。こうして得られたMB含有液は第2循環経路に沿って流れ、第2配管52および送液配管2の上流端部2Aを介してポンプ3に戻される。
【0026】
以上のように、第1実施形態では、処理液Lを戻り循環部5で循環させながらマイクロバブル(微細気泡)を発生させることで処理液Lに含有されるマイクロバブル量を高め、流調バルブV1を介して送液配管2の下流端部2Bから処理槽100に送り出している。したがって、処理液Lを貯留するためのタンクなどを設けることなく、MB含有液を効率的に得ることができる。
【0027】
また、第1実施形態にかかる微細気泡発生装置1Aでは、流調バルブV2によってポンプ3に戻される処理液Lの最低流量を調整して常にポンプ3に対して一定量以上の処理液Lを戻しているため、ポンプ3を良好に作動させることができる。また、2つの流調バルブV1、V2によって気泡発生部6に与える処理液Lの流量を調整するとともに、ニードル弁V3によって気泡発生部6に供給する空気の流量を調整しているので、気泡発生部6に対して最適な圧力と流量の処理液Lおよび空気が供給されて所望のマイクロバブル(微細気泡)を効率的に発生させることができる。
【0028】
<第2実施形態>
図2は本発明にかかる微細気泡発生装置の第2実施形態を示す図である。この第2実施形態にかかる微細気泡発生装置1Bが第1実施形態と大きく相違する点は、第4配管54に流調バルブV4が設けられている点であり、その他の構成は第1実施形態と同一である。すなわち、第4配管54を介して処理液Lが気泡発生部6に流入するが、その流れ方向において気泡発生部6の上流側(同図中の上側)に流調バルブV4が配置されている。この流調バルブV4は可変流量バルブであり、制御部4からの指令に応じて気泡発生部6に流れ込む処理液Lの流量を調整する。このように第2実施形態では、気泡発生部6に処理液Lが流入する直前位置に流調バルブV4を設けたことで、気泡発生部6に流れ込む処理液Lの圧力や流量をさらに高精度に制御することができ、気泡発生部6で発生する微細気泡の量やサイズなどをさらに適正化することができる。このように本実施形態では、流調バルブV2、V4が本発明の「第2調整部」として機能しており、この点については次に説明する第3実施形態にかかる微細気泡発生装置においても同様である。
【0029】
<第3実施形態>
図3は本発明にかかる微細気泡発生装置の第3実施形態を示す図である。この第3実施形態にかかる微細気泡発生装置1Cが第1実施形態と大きく相違する点は、第4配管54が2本設けられている点と、各第4配管54に流調バルブV4および気泡発生部6が設けられている点と、ニードル弁V3を介して空気が各気泡発生部6に供給される点とであり、その他の構成は第1実施形態と同一である。
【0030】
この第3実施形態にかかる微細気泡発生装置1Cでは、制御部4の動作指令に応じてポンプ3が作動するとともに、第1流調バルブV1が開くと、第1実施形態と同様に、ポンプ3から送り出された処理液Lは第1流調バルブV1の開き度合いに応じた割合で一部が分岐位置BPで戻り循環部5の第1配管51に流れ込む。
【0031】
また、第1流調バルブV1と同時に流調バルブV2、V4、V4が開くことで、流調バルブV2、V4の開き度合いに応じた割合で第1配管51から第3配管53および第4配管54、54にそれぞれ流入する。この第3配管53では、処理液Lがそのまま第2流調バルブV2を介して第1循環経路に沿って流れ、第2配管52および送液配管2の上流端部2Aを介してポンプ3に戻される。一方、各第4配管54では、流調バルブV4の開き度合いに応じた流量で処理液Lが気泡発生部6に送り込まれる。この気泡発生部6には、ニードル弁V3を介して流量が調整された空気が供給される。この結果、第1実施形態と同様に気液せん断法によりマイクロバブル(微細気泡)が形成されて処理液Lにマイクロバブルが含有される。こうして得られたMB含有液は第2循環経路に沿って流れ、第2配管52および送液配管2の上流端部2Aを介してポンプ3に戻される。
【0032】
以上のように、第3実施形態では、第1実施形態と同様に、処理液Lを戻り循環部5で循環させながらマイクロバブルを発生させて生成されるMB含有液を流調バルブV1を介して送液配管2の下流端部2Bから処理槽100に送り出している。したがって、第1実施形態と同様の作用効果、つまり処理液Lを貯留するためのタンクなどを設けることなく、MB含有液を効率的に得るという作用効果が得られる。
【0033】
さらに、上記したように第1配管51および第2配管52に対して複数の気泡発生部6を並列的に設け、各気泡発生部6で同時にマイクロバブルを発生させているので、処理液Lに対してマイクロバブルを短時間で効率良く発生させることができる。なお、第3実施形態では、2つの気泡発生部6を並列して配置しているが、第1配管51および第2配管52に対して3本以上の第4配管54を並列的に介挿し、各第4配管54に気泡発生部6を配置してもよい。また、複数の気泡発生部6に対して1つのニードル弁V3を設けているが、気泡発生部6とニードル弁V3との対応関係は上記した「多対1」に限定されるものではなく、「多対多」の対応関係で気泡発生部6に対してニードル弁V3を設けてもよい。さらには、例えば図4に示すように、気泡発生部6の個数と同数のニードル弁V3を準備し、それぞれの気泡発生部6に対して1つのニードル弁V3を介して流量が調整された空気を供給するように構成してもよい。つまり、「1対1」の対応関係で気泡発生部6に対してニードル弁V3を設けてもよい。
【0034】
<第4実施形態>
ところで、上記した第1実施形態ないし第3実施形態は処理槽100をユースポイントとするものであり、処理槽100の近傍に微細気泡発生装置1A〜1Cが配置されているが、ユースポイントが微細気泡発生装置から離れている場合にも本発明は有用である。というのも、このような場合、処理液をユースポイントに供給するために配管が設置されているが、本発明にかかる微細気泡発生装置は上記のようにタンクレス構造であるため、送液配管を既設配管に接続することで既設配管内を流れる処理液に対して大量のマイクロバブルを効率的に含有させることができる。以下、既設配管に第1実施形態にかかる微細気泡発生装置1Aを設置した場合について図5を参照しつつ説明する。
【0035】
図5は本発明にかかる微細気泡発生装置の第4実施形態を示す図である。この実施形態では、ユースポイント(図示省略)に対して処理液Lを供給するために配管200が既設されている。この既設配管200に対して送液配管2の上流端部2Aおよび下流端部2Bが連通される。この第4実施形態では、既設配管200内での処理液Lの流れ方向(同図中の白矢印方向)において上流端部2Aが下流端部2Bよりも上流側に位置するように送液配管2が既設配管200に接続されている。
【0036】
微細気泡発生装置1Aでは、制御部4の動作指令に応じてポンプ3が作動するとともに、各バルブV1〜V3が開くと、第1実施形態と同様に、ポンプ3によって既設配管200を流れる処理液Lの一部が微細気泡発生装置1Aに吸入され、戻り循環部5で循環させられる。そして、その循環中に気泡発生部6が処理液Lにマイクロバブルを発生させてMB含有液を生成し、そのMB含有液が送液配管2の上流端部2Aに戻され、さらに流調バルブV1を介して送液配管2の下流端部2Bから既設配管200に送り出される。したがって、処理液Lを貯留するためのタンクなどを設けることなく、既設配管200内を流れる処理液Lに対してマイクロバブル(微細気泡)を効率的に含有させることができる。
【0037】
このように第4実施形態では、ポンプ3により既設配管200から処理液Lを吸入し、マイクロバブルを含有させて送液配管2を介して既設配管200に圧送しているため、送液配管2内での処理液L(MB含有液を含む)の圧力が既設配管200の耐圧を上回り、既設配管200に破損などが生じる可能性がある。このような場合、戻り循環部5の分岐位置BPに対して送液方向Dの下流側に減圧部を設け、送液配管2の下流端部2Bから既設配管200に送り出される処理液Lの圧力を既設配管200の耐圧以下に減圧するのが望ましい。この減圧部として、例えば図6に示すように中央部にパインチング孔71が形成されて処理液Lの流通面積を制限する減圧部材7を用いることができる。
【0038】
図6は第4実施形態にかかる微細気泡発生装置の改良例を示す図である。この改良例では、送液配管2の下流端部2Bの一部に配管継ぎ部が設けられている。この配管継ぎ部では、下流端部2Bを構成する2つの配管2Ba、2Bbのうち上流側の配管2Baの下流側端面にフランジ21が取り付けられるとともに、下流側の配管2Bbの上流側端面にフランジ21が取り付けられている。そして、それらのフランジ21、21に挟み込まれるようにフランジ21と同一径の減圧部材7が介挿されている。減圧部材7の中央部には、配管2Ba、2Bbの内径とほぼ同一径の円盤状の薄プレート72が取り付けられている。この薄プレート72には、複数のパインチング孔71が穿設されており、配管2Baから流れてくる処理液Lを一部規制するように構成されている。したがって、減圧部材7を通過した処理液Lの圧力は大幅に低減されて既設配管200の耐圧以下となる。その結果、既設配管200が破損するなどの不具合を効果的に防止することができる。
【0039】
<その他>
ところで、上記実施形態で採用している気泡発生部6としては、気液せん断法によりマイクロバブルを形成するもの、例えば図7に示すように構成されたアスピレータ6Aを用いることができる。
【0040】
図7は、気泡発生部として用いるアスピレータの一例を示す断面図である。アスピレータ6Aでは、第4配管54の上流端部と接続されて第2循環経路の上流側(同図の左手側)から処理液Lが流入する流入部61と、第4配管54の下流端部と接続されて第2循環経路の下流側(同図の右手側)に向かって処理液(MB含有液)Lを流出する流出部62とは一直線上に結合され、その結合部に、気体を吸引するための吸引部63が略直角に結合されている。このように流入部61および流出部62は、第2循環経路の一部を構成しており、処理液Lが図6に1点鎖線矢印で示す方向に流通する。
【0041】
この流入部61には、処理液の流通方向に沿って断面積がほぼ一定に形成された定常部61Aと、この定常部61Aの下流側に連続して下流側に向かってほぼ一定の傾斜で断面積が縮小する縮小部61Bとが形成されている。一方、流出部62には、下流側に向かってほぼ一定の傾斜で断面積が拡大するように形成された拡大部62Aと、拡大部62Aの下流側に連続して処理液の流通方向に沿って断面積がほぼ一定に形成された定常部62Bとが形成されている。また、流入部61と流出部62との結合部には、第2循環経路の断面積を縮小する絞り部が形成され、この絞り部に吸引部63が連通している。なお、この吸引部63には、ニードル弁V3を介して空気供給源から空気が圧送される。
【0042】
この吸引部63の断面積は、流入部61の定常部61Aや流出部62の定常部62Bの断面積よりも小さく形成されており、流入部61から流入した水が絞り部を介して流出部62へと流出する際に、流速が速くなり、絞り部側に負圧が生じて、いわゆるベンチュリー管現象によって、図7に破線矢印で示すように、吸引部63から絞り部に空気が吸引され、第2循環経路内を流れる処理液Lに空気が供給される。このとき、絞り部に供給される空気が高速で流通している処理液Lによりせん断されてマイクロバブル(微細気泡)が生成するとともに、処理液Lに含有される。こうしてアスピレータ6AでMB含有液が生成され、第4配管54および第2配管52を介して送液配管2の上流端部2Aに戻される。
【0043】
ところで、図7に示すように構成されたアスピレータ(気泡発生部)6では、絞り部の断面積が固定化されているが、図8に示すように構成されたアスピレータ6Bを用いることで絞り部の断面積を調整することができ、種々の条件で微細気泡を発生することができ、汎用性を向上させることができる。
【0044】
図8は、気泡発生部として用いるアスピレータの他の例を示す断面図である。このアスピレータ6Bが図7のアスピレータ6Aと大きく相違する点は、流出部62の拡大部62Aから上流側(同図の左手側)に挿入部62Cが延設されている点と、流入部61と流出部62とが互いに分離されて流入部61の縮小部61Bが挿入部62Cの凹部内に入り込んだ状態で流入部61が流出部62に対して処理液Lの流れ方向(同図の左右方向)に相対的に移動自在となっている点とである。
【0045】
また、縮小部61Bの先端部は下流側(同図の右手側)に向かってほぼ一定の傾斜で外径が縮小しており、最先端部での外径が拡大部62Aに形成された上流側開口の口径よりも狭く、縮小部61Bの先端部が拡大部62Aの後端開口に対して進退可能となっている。そして、縮小部61Bの先端部が拡大部62Aの後端開口から離間することで円環状の絞り部が形成されるとともに、その離間状態を調節することで絞り部の断面積を可変させることができる。また、絞り部に対し、縮小部61Bの先端部と挿入部62Cの凹部との間に形成される空間SPを介して吸引部63が連通されている。したがって、流入部61を流出部62に対して処理液Lの流通方向(同図の左右方向)に移動させることで絞り部での負圧状態を変化させて絞り部で発生する気泡の大きさや量を制御することが可能となっている。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、ニードル弁V3を介して空気供給源から空気を供給して微細気泡を発生させているが、例えば液体の種類に応じて窒素ガスやオゾンガスなどの他の気体を気泡発生部6に供給して微細気泡を発生させるように構成してもよい。つまり、微細気泡発生装置の使用用途に応じて液体および気体を適用な組み合わせで使用することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、気泡発生部6としては、気液せん断法によりマイクロバブルを形成するものを用いているが、他の方法、例えば高圧下で気体を大量に溶解させ、減圧により再気泡化する、いわゆる加圧減圧法によりマイクロバブルを形成するものを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明は、非特許文献1で紹介されている技術以外に、半導体ウエハや液晶表示用ガラス基板などの基板に対して所定の基板処理を施すための処理液を生成する技術など、処理液に微細気泡を発生させる技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1A〜1C…微細気泡発生装置
2…送液配管
2A…(送液配管の)上流端部
2B…(送液配管の)下流端部
3…送液用ポンプ
5…戻り循環部
6…気泡発生部
6A…アスピレータ
6B…アスピレータ
7…減圧部材(減圧部)
200…既設配管
BP…分岐位置
D…送液方向
L…処理液
V1…流調バルブ(第1調整部)
V2、V4…流調バルブ(第2調整部)
V3…ニードル弁(第3調整部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を所定の送液方向に導く送液配管と、
前記送液配管に設けられて前記送液配管の上流端部を介して前記液体を吸入するとともに前記送液方向に圧送して前記送液配管の下流端部を介して送り出すポンプと、
前記送液配管の下流端部から分岐するとともに前記送液配管の上流端部に接続されて前記液体の循環経路を構成する戻り循環部と、
前記循環経路内を流れる前記液体に気体を供給して微細気泡を発生させる気泡発生部と、
前記送液配管からの前記戻り循環部の分岐位置に対して前記送液方向の下流側に設けられて前記液体の送出量を調整する第1調整部と、
前記戻り循環部での前記液体の流量を調整する第2調整部と
を備えることを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記戻り循環部は、前記送液配管の下流端部から分岐する第1配管と、前記送液配管の上流端部に接続される第2配管と、前記第1配管と前記第2配管との間を連通する第3配管と、前記第1配管と前記第2配管との間を連通する第4配管とを有し、
前記第3配管に前記第2調整部が設けられる一方、前記第4配管に前記気泡発生部が設けられる請求項1に記載の微細気泡発生装置。
【請求項3】
前記第4配管に前記第2調整部がさらに設けられる請求項2に記載の微細気泡発生装置。
【請求項4】
前記戻り循環部は、前記送液配管の下流端部から分岐する第1配管と、前記送液配管の上流端部に接続される第2配管と、前記第1配管と前記第2配管との間を連通する第3配管と、前記第1配管と前記第2配管との間を連通する複数の第4配管とを有し、
前記第3配管に前記第2調整部が設けられる一方、前記複数の第4配管の各々に前記第2調整部および前記気泡発生部が設けられる請求項1に記載の微細気泡発生装置。
【請求項5】
前記複数の気泡発生部と1対1で対応して設けられる複数の第3調整部をさらに備え、
前記複数の第3調整部はそれぞれ対応する前記気泡発生部への前記気体の供給流量を調整する請求項4に記載の微細気泡発生装置。
【請求項6】
前記気泡発生部への前記気体の供給流量を調整する第3調整部をさらに備える請求項1ないし3のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【請求項7】
前記気泡発生部は前記液体に供給される前記気体をせん断して前記微細気泡を生成する請求項1ないし6のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【請求項8】
前記気泡発生部はアスピレータである請求項7に記載の微細気泡発生装置。
【請求項9】
既設配管内を流れる前記液体中に前記微細気泡を発生させる請求項1ないし8のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置であって、
前記送液配管の上流端部および下流端部が前記既設配管に接続可能となっている微細気泡発生装置。
【請求項10】
前記戻り循環部の分岐位置に対して前記送液方向の下流側で前記送液配管の下流端部に設けられて前記送液配管の下流端部から前記既設配管に送り出される前記液体の圧力を前記既設配管の耐圧以下に減圧する減圧部をさらに備える請求項9に記載の微細気泡発生装置。
【請求項11】
送液配管に設けられたポンプによって前記送液配管の上流端部から吸入されて前記送液配管の下流端部に送り出される液体に微細気泡を発生させる微細気泡発生方法であって、
前記送液配管の下流端部を流れる前記液体の一部を循環経路を介して前記送液配管の上流端部に戻しながら前記循環経路内を流れる前記液体に気体を供給して微細気泡を発生させて前記液体に含有させることを特徴とする微細気泡発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−240218(P2011−240218A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112202(P2010−112202)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】