説明

微細空洞を有する発泡ポリウレタン及びその製造方法

【課題】 平均空洞径が0.1〜5μmという、従来の発泡ポリウレタンと比較して、極めて微細な空洞を有する発泡ポリウレタン、及びその製造方法を提供する。また、10μm未満の空洞径を有し且つ平均空洞径が0.1〜5μmの微細空洞と、10μm以上の空洞径を有し且つ平均空洞径が10〜500μmの空洞とを共に有する発泡ポリウレタン、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 イソシアネート基含有化合物を含む第1成分と、活性水素基含有化合物を含む第2成分とを混合して発泡ポリウレタンを製造する方法において、前記第1成分及び前記第2成分のうちの少なくとも一方に、温度及び圧力を制御しながら、イソシアネート基に対して非反応性の気体を溶解させ、前記第1成分及び/又は前記第2成分の気体溶解液を得る気体溶解工程と、前記第1成分と前記第2成分とを混合して硬化させる混合硬化工程とを含む発泡ポリウレタンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均空洞径が0.1〜5μmである極めて微細な空洞を有する発泡ポリウレタン、及びその製造方法に関するものである。また、本発明は、10μm未満の空洞径を有し且つ平均空洞径が0.1〜5μmの微細空洞と、10μm以上の空洞径を有し且つ平均空洞径が10〜500μmの空洞とが混在する発泡ポリウレタンに関するものである。本発明は、ガラス及び半導体等のシリコンウエハ、及びディスク等の超精密仕上げ研磨に用いる研磨パッドをはじめ、滑り防止等の表面特性を改良したタイヤ、紙送りロール、靴底等に利用可能である。
【背景技術】
【0002】
従来から、超精密仕上げ研磨に使用される研磨パッド等として、微細空洞を有する発泡ポリウレタンが知られている。このような微細空洞を有する発泡ポリウレタンの製造方法は各種提案されている。
【0003】
例えば、イソシアネート基含有化合物を含む第1成分と、活性水素基含有化合物を含む第2成分とを混合、攪拌及び硬化させて発泡ポリウレタンを製造する2液硬化型がある。2液硬化型の製造方法として、例えば、(1)前記第1成分と第2成分とを発泡剤の存在下で反応させ、反応熱によって発泡させることにより空洞を形成する方法、(2)イソシアネート基と水との反応により発生するCOにより空洞を形成する方法、(3)攪拌時に空気を巻き込ませ、この空気を微細化した後、硬化して、空洞を形成する方法、(4)特開2002−194104号公報等に開示されている、微小な中空ビーズを混入して硬化させることにより、空洞を形成する方法、(5)水溶性の中空微小粒体を混入硬化させたポリウレタンを、研磨時の水で溶解させて空洞を形成する方法、等がある。
【0004】
しかしながら、上記の方法により製造される発泡ポリウレタンの空洞径は、(1)の方法では100〜数千μm、(2)の方法では50〜500μm、(3)及び(4)の方法では、50〜1000μmである。
【0005】
【特許文献1】特開2002−194104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、平均空洞径が0.1〜5μmという、従来の発泡ポリウレタンと比較して、極めて微細な空洞を有する発泡ポリウレタン、及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、10μm未満の空洞径を有し且つ平均空洞径が0.1〜5μmの微細空洞と、10μm以上の空洞径を有し且つ平均空洞径が10〜500μmの空洞とを共に有する発泡ポリウレタン、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の手段により、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、平均空洞径が0.1〜5μmである微細空洞を有する発泡ポリウレタンである。
【0009】
本発明は、イソシアネート基含有化合物を含む第1成分と、活性水素基含有化合物を含む第2成分とを混合して発泡ポリウレタンを製造する方法であって、
前記第1成分及び前記第2成分のうちの少なくとも一方に、温度及び圧力を制御しながら、イソシアネート基に対して非反応性の気体を溶解させ、前記第1成分及び/又は前記第2成分の気体溶解液を得る気体溶解工程と、
前記第1成分と前記第2成分とを混合して硬化させる混合硬化工程とを含む発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0010】
本発明は、前記気体溶解工程が、前記非反応性の気体を、前記第1成分及び前記第2成分のうちの少なくとも一方に吹き込みながら攪拌して溶解させた後に、溶解せずに気泡として分散している気体を、脱泡することにより除去するものである、前記の発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0011】
本発明は、前記非反応性の気体が、イソシアネート基に対して非反応性であり、且つ沸点が0℃以下の気体を、前記非反応性の気体全量を基準として、少なくとも50mol%含むものである、前記の発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0012】
本発明は、前記非反応性の気体が、0℃、1atmの条件下で、前記第1成分又は前記第2成分に対する溶解度が0.001以上であって、且つ沸点が0℃以下のものである、前記の発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0013】
本発明は、前記非反応性の気体が、HFC−134a、HFC−134、HFC−152a、HCFC−22、HCFC−142b、HCFC−124、CFC−12等のフロン系ガスの中から選択される少なくとも1種の気体である、前記の発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0014】
本発明は、前記のいずれかに記載の方法により製造された発泡ポリウレタンである。
【0015】
本発明は、10μm未満の空洞径を有し且つ平均空洞径が0.1〜5μmの微細空洞と、10μm以上の空洞径を有し且つ平均空洞径が10〜500μmの空洞とが混在する発泡ポリウレタンである。
【0016】
本発明は、イソシアネート基含有化合物を含む第1成分と、活性水素基含有化合物を含む第2成分とを混合して発泡ポリウレタンを製造する方法であって、
前記第1成分及び前記第2成分のうちの少なくとも一方に、温度及び圧力を制御しながら、イソシアネート基に対して非反応性の気体を溶解させ、前記第1成分及び/又は前記第2成分の気体溶解液を得る気体溶解工程と、
前記第1成分及び前記第2成分のうちの少なくとも一方に、イソシアネート基に対して非反応性の気体を微粒状態で分散させる気体分散工程と、
前記第1成分と前記第2成分とを混合して硬化させる混合硬化工程とを含む発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0017】
本発明は、前記気体溶解工程における前記非反応性の気体が、イソシアネート基に対して非反応性であり、且つ沸点が0℃以下の気体を、前記非反応性の気体全量を基準として、少なくとも50mol%含むものである、前記の発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0018】
本発明は、前記気体溶解工程における前記非反応性の気体が、0℃、1atmの条件下で、前記第1成分又は前記第2成分に対する溶解度が0.001以上であって、且つ沸点が0℃以下のものである、前記の発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0019】
本発明は、前記気体溶解工程における前記非反応性の気体が、HFC−134a、HFC−134、HFC−152a、HCFC−22、HCFC−142b、HCFC−124、CFC−12等のフロン系ガスの中から選択される少なくとも1種の気体である、前記の発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0020】
本発明は、イソシアネート基含有化合物を含む第1成分と、活性水素基含有化合物を含む第2成分とを混合して発泡ポリウレタンを製造する方法であって、
前記第1成分及び前記第2成分のうちの少なくとも一方に、温度及び圧力を制御しながら、イソシアネート基に対して非反応性の気体を溶解させ、前記第1成分及び/又は前記第2成分の気体溶解液を得る気体溶解工程と、
前記第2成分に水を添加する水添加工程と、
前記第1成分と前記の水を添加した第2成分とを混合し、水とイソシアネート基の反応により発生するCOを分散させて、硬化させる混合分散硬化工程とを含む発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0021】
本発明は、前記非反応性の気体が、イソシアネート基に対して非反応性であり、且つ沸点が0℃以下の気体を、前記非反応性の気体全量を基準として、少なくとも50mol%含むものである、前記の発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0022】
本発明は、前記非反応性の気体が、0℃、1atmの条件下で、前記第1成分又は前記第2成分に対する溶解度が0.001以上であって、且つ沸点が0℃以下のものである、前記の発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0023】
本発明は、前記非反応性の気体が、HFC−134a、HFC−134、HFC−152a、HCFC−22、HCFC−142b、HCFC−124、CFC−12等のフロン系ガスの中から選択される少なくとも1種の気体である、前記の発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0024】
本発明は、前記第1成分及び前記第2成分のうちの少なくとも一方に、イソシアネート基に対して非反応性の気体を微粒状態で分散させる気体分散工程を含む、前記の発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0025】
本発明は、イソシアネート基含有化合物を含む第1成分と、活性水素基含有化合物を含む第2成分とを混合して発泡ポリウレタンを製造する方法であって、
前記第1成分及び前記第2成分のうちの少なくとも一方に、温度及び圧力を制御しながら、イソシアネート基に対して非反応性の気体を溶解させ、前記第1成分及び/又は前記第2成分の気体溶解液を得る気体溶解工程と、
前記第1成分及び前記第2成分のうちの少なくとも一方に、発泡剤を添加する発泡剤添加工程と、
前記第1成分と前記第2成分とを混合して硬化させる混合硬化工程とを含む発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0026】
本発明は、前記非反応性の気体が、イソシアネート基に対して非反応性であり、且つ沸点が0℃以下の気体を、前記非反応性の気体全量を基準として、少なくとも50mol%含むものである、前記の発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0027】
本発明は、前記非反応性の気体が、0℃、1atmの条件下で、前記第1成分又は前記第2成分に対する溶解度が0.001以上であって、且つ沸点が0℃以下のものである、前記の発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0028】
本発明は、前記非反応性の気体が、HFC−134a、HFC−134、HFC−152a、HCFC−22、HCFC−142b、HCFC−124、CFC−12等のフロン系ガスの中から選択される少なくとも1種の気体である、前記の発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0029】
本発明は、前記第1成分及び前記第2成分のうちの少なくとも一方に、イソシアネート基に対して非反応性の気体を微粒状態で分散させる気体分散工程を含む、前記の発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0030】
本発明は、前記第2成分に水を添加する水添加工程を含み、前記混合硬化工程において、前記第1成分と前記の水を添加した第2成分とを混合し、水とイソシアネート基の反応により発生するCOを分散させて、硬化させる、前記の発泡ポリウレタンの製造方法である。
【0031】
本発明は、前記のいずれかに記載の方法により製造された発泡ポリウレタンである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、平均空洞径が0.1〜5μmという、従来と比較して極めて微細な空洞を有する発泡ポリウレタンを得ることができる。また、10μm未満の空洞径を有し且つ平均空洞径が0.1〜5μmの微細空洞と、10μm以上の空洞径を有し且つ平均空洞径が10〜500μmの空洞とを共に有する発泡ポリウレタンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
まず、本発明の平均空洞径が0.1〜5μmである微細空洞を有する発泡ポリウレタンについて説明する。
【0034】
このような発泡ポリウレタンの空洞率は、好ましくは2〜90%であり、より好ましくは5〜80%である。
ここで、空洞率とは、発泡ポリウレタン全体の体積に占める、空洞の体積比率をいう。 発泡ポリウレタンの空洞を維持するためには、隣り合う空洞と空洞とが適切な距離、例えば1μm程度以上離れていることが必要である。空洞率が90%より大きくなると、発泡ポリウレタン全体におけるポリウレタン量が少なく、空洞が大部分を占める。その結果、隣り合う空洞同士が近接するために合一し、空洞径が数十μm以上の空洞が形成されやすい。また、空洞率が2%より小さくなると、空洞を有することによる効果が発現されにくい。
【0035】
次に、本発明の平均空洞径が0.1〜5μmである微細空洞を有する発泡ポリウレタンの製造方法について説明する。
原料として用いる、イソシアネート基含有化合物を含む第1成分と、活性水素基含有化合物を含む第2成分について説明する。
【0036】
第1成分に含まれるイソシアネート基含有化合物としては、ポリウレタンの技術分野において公知のポリイソシアネート化合物を限定なく使用できる。特に、ジイソシアネート化合物とその誘導体、とりわけイソシアネートプレポリマーの使用が、得られる発泡ポリウレタンの物理的特性が優れており、好適である。
【0037】
本発明において使用可能な有機ジイソシアネートとして、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートが例示される。
【0038】
芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0039】
脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。
【0040】
脂環式ジイソシアネートとしては、水素添加4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加m−キシリレンジイソシアネート(HXDI)、ノルボルナンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
【0041】
上記の化合物は単独使用してもよく、併用してもよい。発泡ポリウレタンを研磨パッドとして使用する際の、性能及び価格面を考慮すると、トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及び水素添加4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)を用いることが好ましい。
【0042】
上記ジイソシアネート化合物の他に、3官能以上の多官能ポリイソシアネート化合物も使用可能である。具体的には、デスモデュール−N(バイエル社製)やデュラネート(旭化成工業社製)等がある。
【0043】
本発明において、第1成分として好適なイソシアネート基含有化合物は、上記のイソシアネート化合物と活性水素基含有化合物との反応物であるイソシアネートプレポリマーである。このような活性水素基含有化合物としては、後述するポリオール化合物が使用される。イソシアネート基と活性水素基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が1.1〜10、好ましくは、1.3〜5の範囲で加熱反応して、イソシアネート基末端のオリゴマーであるイソシアネートプレポリマーが製造される。市販品のイソシアネートプレポリマーの使用も好適である。具体的には、アジプレンL−325(ユニロイヤル製)やハイプレンL−315(三井東圧化学社製)がある。
【0044】
第2成分に含まれる活性水素基含有化合物は、2以上の活性水素原子を有する有機化合物であり、ポリウレタンの技術分野において通常、ポリオール化合物、鎖延長剤と称される化合物である。活性水素基とは、イソシアネート基と反応する官能基であり、例えば、水酸基、第1級若しくは第2級アミノ基、及びチオール基(SH)が挙げられる。
【0045】
ポリオール化合物の数平均分子量は、500〜4000程度のものが好ましい。ポリオール化合物の数平均分子量が500未満であると、得られる発泡ポリウレタンは十分な弾性を有さず、脆いポリマーとなりやすい。一方、数平均分子量が4000より大きいと、得られる発泡ポリウレタン中のウレタン結合が極端に少なくなるため、十分な弾性が得られない。
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類及びアクリルポリオール類が挙げられる。
【0046】
ポリエーテルポリオール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールのうちの1種又は2種以上に、プロピレンオキサイドを付加して得られるポリオキシプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドを付加して得られるポリオキシエチレンオキサイド、ブチレンオキサイドを付加して得られるポリオキシブチレンオキサイド、及び、前記多価アルコールにテトラヒドロフランを開環重合により付加して得られるポリオキシテトラメチレンポリオール等が挙げられる。また、上記環状エーテルの混合物も使用可能である。
【0047】
ポリエステルポリオール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールあるいはその他の多価アルコールの1種又は2種以上と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸あるいはその他の低分子ジカルボン酸の1種又は2種以上との縮合重合体、及び環状エステル類の開環重合体等のポリオール類が挙げられる。
【0048】
アクリルポリオール類としては、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸β−ヒドロキシブチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸βヒドロキシペンチル等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、又は、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸モノエステル、さらに、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の水酸基を有するモノエチレン性不飽和モノマーを共重合モノマー成分とする、1分子中に2以上の水酸基を有するアクリルポリオールが挙げられる。
【0049】
その他のポリオールとしては、フェノールレジンポリオール、エポキシポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリエステル−ポリエーテルポリオール、アクリルニトリルやスチレンを付加分散せしめたポリオール、ウレア分散ポリオール及びカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0050】
鎖延長剤と称されるものは、分子量が500程度以下の化合物である。
鎖延長剤としては、例えば、ビスアニリン誘導体、及び芳香族系ジオール類が挙げられる。
【0051】
ビスアニリン誘導体としては、メチレンビス(o−クロルアニリン)(Methylene bis(o-chloroaniline;MOCA)(1)等の下記の化学式(1)〜(6)で示される化合物が挙げられる。
【0052】
【化1】

【0053】
芳香族系ジオール類としては、下記の化学式(7)〜(9)で示される化合物が挙げられる。
【0054】
【化2】

【0055】
その他の鎖延長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4ブタンジオール、トリメチロールプロパン等に代表される脂肪族系低分子グリコールやトリオール類が挙げられる。
【0056】
鎖延長剤が、ビスアニリン誘導体、特にMOCAである場合は、適度な強度を有する発泡ポリウレタンが得られ、研磨パッドとして最適である。
【0057】
次に、気体溶解工程について説明する。
気体溶解工程は、混合硬化工程の前に行う。
気体を、前記第1成分及び第2成分のうちの少なくとも一方に溶解させる、すなわち、液中に分子サイズで存在させることにより、後に述べる混合硬化工程において、溶解した気体がガス化して、平均空洞径が0.1〜5μmの微細空洞が形成される。
【0058】
イソシアネート基に対して非反応性の気体としては、窒素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、フッ素ガス、空気、メタンガスやプロパンガス等のハイドロカーボン系ガス、及びHFC−134a(CHFCF)やCFC−12(CCl)等のフロン系ガス等が挙げられる。
【0059】
前記非反応性の気体として、含有水分を除いた乾燥気体を用いることが好ましい。イソシアネート基含有化合物に非反応性の気体を溶解させる場合には、イソシアネート基は気体中の極微量の水分とさえも反応して硬化するため、完全に水分を除去することが望ましい。
【0060】
前記非反応性の気体として、酸素を含まない気体が好ましい。酸素の存在下で、イソシアネート基が2量化及び3量化して硬化するのを防ぐためである。
【0061】
前記非反応性の気体として、好ましく用いられる乾燥気体は、酸素を含まない窒素ガス、ハイドロカーボン系ガス及びフロン系ガスである。
【0062】
また、前記非反応性の気体が、イソシアネート基に対して非反応性であり、且つ沸点が0℃以下の気体を、前記非反応性の気体全量を基準として、少なくとも50mol%含むものであることが好ましい。
沸点が0℃より高い気体は、第1成分及び/又は第2成分に溶解させた後、混合硬化工程が進んだ時点においてガス化を起こすので、粒径の大きな気泡を発生させ、硬化反応後に空洞径が10μm以上の空洞を形成しやすい。一方、沸点が0℃以下の気体は、混合硬化工程の初期においてガス化するので、微細な気泡を発生させ、硬化反応後に平均空洞径が0.1〜5μmである微細空洞を形成しやすい。
従って、前記沸点が0℃以下の気体を、前記非反応性気体に対してできるだけ多く含むことが好ましく、少なくとも50mol%含むことが好ましい。非反応性気体の全量が、前記沸点が0℃以下の気体であることも好ましい。
【0063】
また、前記非反応性の気体が、0℃、1atmの条件下で、第1成分または第2成分に対する溶解度が0.001以上であって、且つ沸点が0℃以下のものであることが好ましい。ここで、溶解度とは、0℃、1atmの条件下で溶媒1mlに溶解する気体の体積(ml)をいう。前記溶解度の上限は、特に制限されないが、0.1以下のものを用いることができる。溶解度の高い非反応性気体を用いることで、所望の空洞率を有する発泡ポリウレタンを得やすくなる。
【0064】
さらに、前記非反応性の気体が、HFC−134a(CHFCF)、HFC−134(CHFCHF)、HFC−152a(CHFCH)、HCFC−22(CHClF)、HCFC−142b(CHCClF)、HCFC−124(CHClFCF)、CFC−12(CCl)等のフロン系ガスの中から選択される少なくとも1種の気体であることが好ましい。このような気体は、20℃、大気圧の条件下で、第1成分または第2成分に対する溶解度が0.001以上であって、且つ沸点が0℃以下のものである。
【0065】
温度及び圧力を制御しながら、非反応性気体を溶解させる方法としては、密閉系において、温度及び圧力を制御しながら、第1成分と第2成分のうちの少なくとも一方の液中に非反応性気体を吹き込みながら攪拌し、溶解させる方法がある。
【0066】
例えば、圧力調整弁を有する密閉タンク内に、非反応性気体を適宜吹き込むことのできるノズル等を有する装置を用いて、圧力調整弁により密閉タンク内の圧力を調整しながら、原料液中に、非反応性気体を適宜吹き込み、攪拌して、非反応性気体を溶解させる方法がある。
【0067】
また、圧力調整弁を有し、非反応性気体の吹込みノズルが設けられた液送管を用いて、圧力調整弁により液送管内の圧力を調整し、原料液を液送管に通過させながら、前記吹込みノズルから非反応性気体を吹き込み、液中に溶解させる方法がある。目的量の気体を溶解させるために、原料液を循環させるようにパイプを配置することが好ましい。
【0068】
非反応性気体を溶解させる際の温度は、用いる第1成分及び第2成分の融点以上に制御することが好ましい。室温より低い温度に制御するには、冷却装置が必要となるため、コスト高となる。また、必要以上に高温に制御すると、使用エネルギーのロスが大きくなる。従って、用いる第1成分及び第2成分の融点を考慮して、室温〜200℃の範囲で制御することが好ましい。
【0069】
非反応性気体を溶解させる際の圧力は、液送管中及びタンク内において、大気圧〜大気圧+20kgf/cmに制御することが好ましい。
【0070】
以上の方法により、第1成分又は第2成分のいずれか、又は双方に対して非反応性気体を溶解させる。いずれの場合においても、非反応性気体の溶解量は、非反応性気体の溶解度、及び得られる発泡ポリウレタンの所望の空洞率に応じて、適宜決定される。
【0071】
次に、混合硬化工程について説明する。
混合硬化工程では、上記気体溶解工程で液中に溶解した気体によって、平均空洞径が0.1〜5μmである微細空洞が発現する。ポリウレタンの樹脂化や、樹脂化の際の反応熱による温度上昇等によって、気体の溶解度が低下した結果、液中に溶解された気体が、ガス化すること、及び膨張することによって微細空洞が形成される。
【0072】
第1成分と第2成分の混合比は、各々の分子量やこれらから製造される研磨パッドの所望物性などにより種々変え得る。特に、第1成分のイソシアネート基と第2成分の活性水素基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が0.8〜1.2の範囲となるように混合することが好ましい。
混合攪拌時には、空気の巻き込みを防ぐため、混合液を泡立てないように注意する。
【0073】
混合には、公知のあらゆる攪拌装置又は混合装置を用いることができる。第1成分と第2成分を高圧で混合槽に吐出させ、衝突混合させることができる混合装置を用いると、混合時間が極めて短縮されるため好ましい。
【0074】
続いて、前記第1成分と第2成分の混合液を硬化させる。混合液を、型、通常はオープンモールドに流し込み、流動しなくなるまで硬化反応させる。型は室温〜200℃の範囲で温度制御できるものを用いることが好ましい。型が閉鎖系の場合には、圧力を大気圧+100kgf/cmの範囲で制御できるものを用いることが好ましい。
【0075】
さらに、加熱し、ポストキュアすることが、発泡体の物理的特性を向上させるため好ましい。ポストキュアは、50〜120℃で2〜24時間行うことが好ましい。
【0076】
本発明においては、前記非反応性の気体を溶解する前に、第1成分及び第2成分のうちの少なくとも前記溶解を行う成分に、界面活性剤を予め混合しておくことが好ましい。
界面活性剤は、ポリウレタンの技術分野において公知の界面活性剤を限定なく使用することができる。一般に、ポリウレタンに使用される界面活性剤として、シリコン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤があるが、シリコン系が最も好ましい。
界面活性剤の使用量は、前記第1成分と第2成分の合計量に対して、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0077】
その他に、本発明の発泡ポリウレタンの製造においては、ポリウレタンの技術分野において公知の触媒、難燃剤、及び反応遅延剤を用いてもよい。
【0078】
触媒としては、第4級アミン類、スズ及び鉛等の金属系等がある。
【0079】
上記の発泡ポリウレタンの製造方法について、さらに、前記気体溶解工程において、非反応性気体を溶解させた後に、溶解せずに気泡として分散している気体を脱泡により除去することが好ましい。
【0080】
非反応性気体を溶解させる場合、特に非反応性気体を原料液中に吹き込みながら攪拌して溶解させる場合には、液中には溶解しない気体が気泡として分散している。これらの気泡は、数μm以上の気泡粒径を有し、硬化反応後には数μm以上の空洞を形成するものである。液中に分散した気泡を脱泡して除去することにより、より均一な微細空洞を有する発泡ポリウレタンを得ることができる。
【0081】
脱泡は、気体を溶解させた際の温度及び圧力を維持して、24〜48時間静置脱泡することが好ましい。
【0082】
上記の製造方法によって製造された発泡ポリウレタンは、従来の発泡ポリウレタンと比較して極めて微細な空洞、すなわち平均空洞径が0.1〜5μmである微細空洞を有する発泡ポリウレタンである。
【0083】
さらに、10μm未満の空洞径を有し且つ平均空洞径が0.1〜5μmの微細空洞と、10μm以上の空洞径を有し且つ平均空洞径が10〜500μmの空洞とが混在する発泡ポリウレタンについて説明する。
【0084】
このような発泡ポリウレタンの空洞率は、好ましくは2〜90%であり、より好ましくは5〜80%である。空洞率が90%より大きい場合には、発泡ポリウレタンのエラストマーとしての性能が発揮されにくい。一方、空洞率が2%より小さい場合には、空洞を有することによる効果が発現しにくい。
【0085】
空洞径の異なる空洞を混在させることにより、例えば、ガラス表面等の研磨において、小さな凹凸は微細空洞によって、また、大きな凹凸は大きな空洞によって吸収することができる。その結果、効率よく平滑化でき、全体として非常に均一な研磨が可能となる。また、チャッキングにおいては、微細空洞には対象物をしっかりつかみ、滑りにくくするという効果があり、大きな空洞には物の形に沿いやすいという効果がある。
【0086】
次に、本発明の、10μm未満の空洞径を有し且つ平均空洞径が0.1〜5μmの微細空洞と、10μm以上の空洞径を有し且つ平均空洞径が10〜500μmの空洞とが混在する発泡ポリウレタンの製造方法について説明する。
【0087】
後述の気体溶解工程については、上記の説明の通りであり、液中に溶解された非反応性気体が、後述の混合硬化工程又は混合分散硬化工程でガス化することにより、10μm未満の空洞径を有し且つ平均空洞径が0.1〜5μmの微細空洞が形成される。
【0088】
10μm以上の空洞径を有し且つ平均空洞径が10〜500μmの空洞を形成するための方法としては、気体を分散する方法、水を添加する方法、及び発泡剤を添加する方法が挙げられる。
【0089】
まず、気体を分散する方法を用いるものとして、気体溶解工程と、気体分散工程と、混合硬化工程とを含む発泡ポリウレタンの製造方法がある。
気体溶解工程と気体分散工程とは、どちらを先に行ってもよいが、混合硬化工程の前に行う。
【0090】
まず、気体分散工程について説明する。
気体分散工程とは、第1成分及び第2成分のうちのすくなくとも一方に、イソシアネート基に対して非反応性の気体を微粒状態で分散させる工程をいう。
【0091】
イソシアネート基に対して非反応性の気体としては、窒素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、空気、メタンガスやプロパンガス等のハイドロカーボン系ガス、及びフロン系ガス等が挙げられる。
【0092】
前記非反応性の気体として、含有水分を除いた乾燥気体を用いることが好ましい。イソシアネート基含有化合物に非反応性の気体を分散させる場合には、イソシアネート基は気体中の極微量の水分とさえも反応して硬化するため、完全に水分を除去することが望ましい。
【0093】
前記非反応性の気体として、酸素を含まない気体が好ましい。酸素の存在下で、イソシアネート基が2量化及び3量化して硬化するのを防ぐためである。
【0094】
前記非反応性気体として、好ましく用いられる乾燥気体は、酸素を含まない窒素ガス、ハイドロカーボン系ガス及びフロン系ガスであり、価格及び安全性の面から、除湿された窒素ガスの使用が最も好ましい。
【0095】
非反応性気体を微粒状態で分散するとは、非反応性気体を粒径が数μm〜数百μmの気泡として分散させることをいう。
このような気泡を形成する方法としては、ポリウレタンの技術分野で公知の方法を制限なく用いることができ、例えば、攪拌時に空気を巻き込ませ、この空気を微細化した後、硬化して、微細気泡を生成する製造方法、微小な中空ビーズを混入して硬化させることにより微細気泡を生成する製造方法等がある。
【0096】
非反応性気体の量は、得られる発泡ポリウレタンの所望の空洞率に応じて、適宜決定される。
【0097】
次に混合硬化工程について説明する。
混合硬化工程において行われる操作は、上記の説明の通りである。
混合硬化工程では、気体溶解工程で液中に溶解した気体が、ポリウレタンの樹脂化の際にガス化することによって、平均空洞径が0.1〜5μmである微細空洞が形成される。
一方、気体分散工程で液中に分散された粒径数μm〜数百μmの気泡が、ポリウレタンの樹脂化によって樹脂中でそのまま空洞となり、空洞径数μm〜数百μmの空洞を形成する。
【0098】
次に、水を添加する方法を用いるものとして、気体溶解工程と、水添加工程と、混合分散硬化工程とを含む発泡ポリウレタンの製造方法がある。
気体溶解工程は、混合分散硬化工程の前に行う。水添加工程は、気体溶解工程の前に行っても後に行ってもよく、又、混合分散硬化工程と同時に行ってもよい。
【0099】
まず、水添加工程について説明する。
水添加工程とは、第2成分に水を添加する工程をいう。第1成分に水を加えると、イソシアネート基が水と反応して、COを発生すると共に硬化する。
【0100】
水の添加量は、得られる発泡ポリウレタンの所望の空洞率に応じて、適宜決定されるが、作製されるポリウレタンに対して0.1重量%以下となるように逆算して添加することが好ましい。0.1重量%より多く水を添加すると、イソシアネート基と反応して発生するCO量が多くなりすぎ、作製される発泡ポリウレタンの空洞部分が過剰に増加して、発泡ポリウレタンがエラストマーとしての性能を十分に発現しにくい。
【0101】
次に、混合分散硬化工程について説明する。
混合分散硬化工程とは、第1成分と水を添加した第2成分とを混合し、水とイソシアネート基の反応により発生するCOを分散させて、硬化させる工程をいう。
【0102】
混合分散硬化工程では、気体溶解工程で液中に溶解した気体が、ポリウレタンの樹脂化の際にガス化することによって、平均空洞径が0.1〜5μmである微細空洞が形成される。
一方、第1成分に含まれるイソシアネート基と、水添加工程で第2成分に添加された水とが反応してCOが発生する。発生したイソシアネート基に対して非反応性の気体であるCOは、公知の攪拌装置又は混合装置を用いて分散され、粒径50〜500μmの気泡を生成する。この気泡は、ポリウレタンの樹脂化によって樹脂中でそのまま空洞となり、空洞径50〜500μmの空洞を形成する。
【0103】
第1成分と第2成分の混合比は、各々の分子量やこれらから製造される研磨パッドの所望物性などにより種々変え得る。特に、第1成分のイソシアネート基と第2成分の活性水素基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が0.8〜1.2の範囲となるように混合することが好ましい。
混合攪拌時には、空気の巻き込みを防ぐため、混合液を泡立てないように注意する。
【0104】
混合には、公知のあらゆる攪拌装置又は混合装置を用いることができる。第1成分と第2成分を高圧で混合槽に吐出させ、衝突混合させることができる混合装置を用いると、混合時間が極めて短縮されるため好ましい。
【0105】
続いて、前記第1成分と第2成分の混合液を硬化させる。混合液を、型、通常はオープンモールドに流し込み、流動しなくなるまで硬化反応させる。型は室温〜200℃の範囲で温度制御できるものを用いることが好ましい。型が閉鎖系の場合には、圧力を大気圧+100kgf/cmの範囲で制御できるものを用いることが好ましい。
【0106】
さらに、加熱し、ポストキュアすることが、発泡体の物理的特性を向上させるため好ましい。ポストキュアは、50〜120℃で2〜24時間行うことが好ましい。
【0107】
気体溶解工程と、水添加工程と、混合分散硬化工程とに加えて、さらに前記気体分散工程を含む製造方法も好ましい。
気体分散工程は、気体溶解工程の前に行っても後に行ってもよく、混合分散硬化工程の前に行う。
【0108】
さらに、発泡剤を添加する方法を用いるものとして、気体溶解工程と、発泡剤添加工程と、混合硬化工程とを含む発泡ポリウレタンの製造方法がある。
気体溶解工程と発泡剤添加工程とは、どちらを先に行ってもよいが、混合硬化工程の前に行う。
【0109】
まず、発泡剤添加工程について説明する。
発泡剤添加工程とは、第1成分及び第2成分のうちの少なくとも一方に、発泡剤を添加する工程をいう。
【0110】
発泡剤は、ポリウレタンの技術分野で一般的に用いられる発泡剤を制限なく用いることができ、特に10〜50℃程度の沸点を有するものを用いることが好ましい。具体的には、F−11(沸点24℃)、HCFC−141b(沸点32℃)、HFC−365mfc(沸点40.2℃)、HFC−245fa(沸点15.3℃)、n−ペンタン(沸点36℃)、イソペンタン(沸点28℃)等が挙げられる。
発泡剤は、第1成分と第2成分の合計重量に対して、0.05〜5.0重量%添加することが好ましい。
【0111】
次に、混合硬化工程について説明する。
混合硬化工程において行われる操作は、上記の説明の通りである。
混合硬化工程では、気体溶解工程で液中に溶解した気体が、ポリウレタンの樹脂化の際にガス化することによって、平均空洞径が0.1〜5μmである微細空洞が形成される。
一方、発泡剤添加工程で添加された発泡剤は、ポリウレタンの樹脂化の際の反応熱によって発泡し、粒径が100〜数千μmの気泡を形成する。この気泡は樹脂中でそのまま空洞となり、空洞径100〜数千μmの空洞を形成する。
【0112】
気体溶解工程と、発泡剤添加工程と、混合硬化工程とに加えて、さらに前記気体分散工程を含む製造方法も好ましい。
気体分散工程と、気体溶解工程と、発泡剤添加工程とはいずれを先に行ってもよいが、混合硬化工程の前に行う。
【0113】
また、気体溶解工程と、発泡剤添加工程と、混合硬化工程とに加えて、さらに前記水添加工程を含む製造方法も好ましい。この場合、混合硬化工程においては、第1成分と水を添加した第2成分を混合するので、水とイソシアネート基が反応してCOが発生する。従って、発生したCOを分散して気泡を形成させる一方で、硬化反応が進行する。
水添加工程と、気体溶解工程と、発泡剤添加工程とは、いずれを先に行ってもよいが、混合硬化工程の前に行う。
【0114】
本発明においては、気体溶解工程において非反応性の気体を溶解する前に、第1成分及び第2成分のうちの少なくとも溶解を行う成分に、及び/又は、気体分散工程において非反応性気体を分散する前に、第1成分及び第2成分のうちの少なくとも分散を行う成分に、界面活性剤を予め混合しておくことが好ましい。
界面活性剤は、ポリウレタンの技術分野において公知の界面活性剤を限定なく使用することができる。一般に、ポリウレタンに使用される界面活性剤として、シリコン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤があるが、シリコン系が最も好ましい。
界面活性剤の使用量は、前記第1成分と第2成分の合計量に対して、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0115】
その他に、本発明の発泡ポリウレタンの製造においては、ポリウレタンの技術分野において公知の触媒、難燃剤、及び反応遅延剤を用いてもよい。
【0116】
上記の製造方法によって得られた発泡ポリウレタンは、10μm未満の空洞径を有し且つ平均空洞径が0.1〜5μmの微細空洞と、10μm以上の空洞径を有し且つ平均空洞径が10〜500μmの空洞とが混在する発泡ポリウレタンである。
微細空洞は溶解気体によって形成され、一方、10μm以上の空洞径を有し且つ平均空洞径が10〜500μmの空洞は、液中に微粒状態で分散された粒径数μm〜数百μmの気泡、イソシアネート基と水との反応により発生するCOにより生成された粒径50〜500μmの気泡、及び発泡剤の作用により生成された粒径100〜数千μmの気泡が、ポリウレタン中でそのまま空洞となって形成される。
【実施例】
【0117】
[実施例1]
80℃に加温したアジプレンL−325(ユニロイヤル製、NCO末端プレポリマー、NCO=9.25%)100重量部に、界面活性剤SH−192(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)3重量部の割合で混合し、混合液とした。その混合液中に、空気を、大気圧+0kgf/cmの圧力調整下で吹き込み、ミキサーを用いて400rpmで約20分攪拌混合して、比重0.95のアジプレンL−325プレポリマーを得た。次に、大気圧+0kgf/cmの圧力下にて、80℃で24時間静置脱泡を行った。
【0118】
80℃に加温した静置脱泡後のアジプレンL−325プレポリマー5000重量部と、120℃に加温溶解したキュアミンMT(メチレンビス−o−クロルアニリン、イハラケミカル社製)1300重量部とを、攪拌槽に投入した。空気を巻き込まないように注意して、1分間攪拌混合した後、35cm(縦)×35cm(横)×20cm(深さ)のオープンモールドに入れて、80℃で10分間硬化させた。さらに、110℃で4時間ポストキュアを行い、厚みが約5cmの発泡ポリウレタンブロックを作製した。
【0119】
[実施例2]
空気の代わりに窒素ガスを用い、大気圧+2kgf/cmの圧力調整下で吹き込んだ以外は、実施例1と同様の方法で、発泡ポリウレタンブロックを作製した。
【0120】
[実施例3]
80℃に加温したアジプレンL−325を100重量部に、界面活性剤SH−192を5重量部の割合にて混合した液中に、非反応性気体HFC−134a(CHFCF、分子量102、沸点−27℃)0.08重量部の割合にて溶解させ、アジプレンL−325プレポリマーを得た。
【0121】
80℃に加温したアジプレンL−325プレポリマー5000重量部と、120℃に加温溶解したキュアミンMTを1300重量部とを、攪拌槽に投入した。空気を巻き込まないように注意して、1分間攪拌混合した後、35cm(縦)×35cm(横)×20cm(深さ)のオープンモールドに入れて、80℃で10分間硬化させた。さらに、110℃で4時間ポストキュアを行い、厚みが約5cmの発泡ポリウレタンブロックを作製した。
【0122】
[実施例4]
80℃に加温したアジプレンL−325を100重量部に、界面活性剤SH−192を3重量部の割合で混合し、混合液とした。その混合液中に、窒素ガスを、大気圧+0kgf/cmの圧力調整下で吹き込み、ミキサーを用いて400rpmで約20分攪拌混合し、比重0.85のアジプレンL−325プレポリマーを得た。
【0123】
80℃に加温したアジプレンL−325プレポリマー5000重量部と、120℃に加温溶解したキュアミンMTを1300重量部とを、攪拌槽に投入した。空気を巻き込まないように注意して、1分間攪拌混合した後、35cm(縦)×35cm(横)×20cm(深さ)のオープンモールドに入れて、80℃で10分間硬化させた。さらに、110℃で4時間ポストキュアを行い、厚みが約5cmの発泡ポリウレタンブロックを作製した。
【0124】
(評価)
実施例1〜4でそれぞれ作成した35cm(縦)×35cm(横)×5cm(厚み)の各発泡ポリウレタンブロックをスライスし、35cm×35cm×1.5mmの発泡ポリウレタンシートを得た後、以下の測定を行った。
【0125】
(1)空洞径(μm)
発泡ポリウレタンシートの表面を、光学顕微鏡で写真撮影した。その写真を用いて、空洞の個数と空洞径を測定した。測定で得られた空洞径の範囲(最小粒径〜最大粒径)を表1に示した。
【0126】
測定した空洞の個数は、空洞径10μmを基準として、空洞径10μm未満の空洞の個数、及び空洞径が10μm以上の空洞の個数としてカウントした。
平均空洞径を、下記の計算式により算出した。
平均空洞径(μm)=Σ{(空洞径)×(個数)}/(個数)
【0127】
(2)比重
発泡ポリウレタンの空洞率に対応する物性値として、比重の測定を行った。
作製された発泡ポリウレタンの比重の測定は、JIS K7112 A法に基づいて行った。
実施例1〜4で得た各発泡ポリウレタンシートから、任意の2cm×2cm×1.5mmのサンプルを切り出し、温度23±2℃、湿度50±5%の室内に1日間放置して、重量を測定した後、水中にて浸漬重量を測定して、比重を求めた。
【0128】
【表1】

【0129】
以上の測定結果を表1に示した。
実施例1〜3では、微細空洞を有する発泡ポリウレタンが作製され、実施例4では、空洞径が大きく異なる2種の空洞が混在する発泡ポリウレタンが作製された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均空洞径が0.1〜5μmである微細空洞を有する発泡ポリウレタン。
【請求項2】
イソシアネート基含有化合物を含む第1成分と、活性水素基含有化合物を含む第2成分とを混合して発泡ポリウレタンを製造する方法であって、
前記第1成分及び前記第2成分のうちの少なくとも一方に、温度及び圧力を制御しながら、イソシアネート基に対して非反応性の気体を溶解させ、前記第1成分及び/又は前記第2成分の気体溶解液を得る気体溶解工程と、
前記第1成分と前記第2成分とを混合して硬化させる混合硬化工程とを含む発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項3】
前記気体溶解工程が、前記非反応性の気体を、前記第1成分及び前記第2成分のうちの少なくとも一方に吹き込みながら攪拌して溶解させた後に、溶解せずに気泡として分散している気体を、脱泡することにより除去するものである、請求項2に記載の発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項4】
前記非反応性の気体が、イソシアネート基に対して非反応性であり、且つ沸点が0℃以下の気体を、前記非反応性の気体全量を基準として、少なくとも50mol%含むものである、請求項2又は3に記載の発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項5】
前記非反応性の気体が、0℃、1atmの条件下で、前記第1成分又は前記第2成分に対する溶解度が0.001以上であって、且つ沸点が0℃以下のものである、請求項2〜4のうちのいずれか1項に記載の発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項6】
前記非反応性の気体が、HFC−134a、HFC−134、HFC−152a、HCFC−22、HCFC−142b、HCFC−124、CFC−12等のフロン系ガスの中から選択される少なくとも1種の気体である、請求項2〜5のうちのいずれか1項に記載の発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法により製造された発泡ポリウレタン。
【請求項8】
10μm未満の空洞径を有し且つ平均空洞径が0.1〜5μmの微細空洞と、10μm以上の空洞径を有し且つ平均空洞径が10〜500μmの空洞とが混在する発泡ポリウレタン。
【請求項9】
イソシアネート基含有化合物を含む第1成分と、活性水素基含有化合物を含む第2成分とを混合して発泡ポリウレタンを製造する方法であって、
前記第1成分及び前記第2成分のうちの少なくとも一方に、温度及び圧力を制御しながら、イソシアネート基に対して非反応性の気体を溶解させ、前記第1成分及び/又は前記第2成分の気体溶解液を得る気体溶解工程と、
前記第1成分及び前記第2成分のうちの少なくとも一方に、イソシアネート基に対して非反応性の気体を微粒状態で分散させる気体分散工程と、
前記第1成分と前記第2成分とを混合して硬化させる混合硬化工程とを含む発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項10】
前記気体溶解工程における前記非反応性の気体が、イソシアネート基に対して非反応性であり、且つ沸点が0℃以下の気体を、前記非反応性の気体全量を基準として、少なくとも50mol%含むものである、請求項9に記載の発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項11】
前記気体溶解工程における前記非反応性の気体が、0℃、1atmの条件下で、前記第1成分又は前記第2成分に対する溶解度が0.001以上であって、且つ沸点が0℃以下のものである、請求項9又は10に記載の発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項12】
前記気体溶解工程における前記非反応性の気体が、HFC−134a、HFC−134、HFC−152a、HCFC−22、HCFC−142b、HCFC−124、CFC−12等のフロン系ガスの中から選択される少なくとも1種の気体である、請求項9〜11のうちのいずれか1項に記載の発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項13】
イソシアネート基含有化合物を含む第1成分と、活性水素基含有化合物を含む第2成分とを混合して発泡ポリウレタンを製造する方法であって、
前記第1成分及び前記第2成分のうちの少なくとも一方に、温度及び圧力を制御しながら、イソシアネート基に対して非反応性の気体を溶解させ、前記第1成分及び/又は前記第2成分の気体溶解液を得る気体溶解工程と、
前記第2成分に水を添加する水添加工程と、
前記第1成分と前記の水を添加した第2成分とを混合し、水とイソシアネート基の反応により発生するCOを分散させて、硬化させる混合分散硬化工程とを含む発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項14】
前記非反応性の気体が、イソシアネート基に対して非反応性であり、且つ沸点が0℃以下の気体を、前記非反応性の気体全量を基準として、少なくとも50mol%含むものである、請求項13に記載の発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項15】
前記非反応性の気体が、0℃、1atmの条件下で、前記第1成分又は前記第2成分に対する溶解度が0.001以上であって、且つ沸点が0℃以下のものである、請求項13又は14に記載の発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項16】
前記非反応性の気体が、HFC−134a、HFC−134、HFC−152a、HCFC−22、HCFC−142b、HCFC−124、CFC−12等のフロン系ガスの中から選択される少なくとも1種の気体である、請求項13〜15のうちのいずれか1項に記載の発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項17】
イソシアネート基含有化合物を含む第1成分と、活性水素基含有化合物を含む第2成分とを混合して発泡ポリウレタンを製造する方法であって、
前記第1成分及び前記第2成分のうちの少なくとも一方に、温度及び圧力を制御しながら、イソシアネート基に対して非反応性の気体を溶解させ、前記第1成分及び/又は前記第2成分の気体溶解液を得る気体溶解工程と、
前記第1成分及び前記第2成分のうちの少なくとも一方に、発泡剤を添加する発泡剤添加工程と、
前記第1成分と前記第2成分とを混合して硬化させる混合硬化工程とを含む発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項18】
前記非反応性の気体が、イソシアネート基に対して非反応性であり、且つ沸点が0℃以下の気体を、前記非反応性の気体全量を基準として、少なくとも50mol%含むものである、請求項17に記載の発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項19】
前記非反応性の気体が、0℃、1atmの条件下で、前記第1成分又は前記第2成分に対する溶解度が0.001以上であって、且つ沸点が0℃以下のものである、請求項17又は18に記載の発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項20】
前記非反応性の気体が、HFC−134a、HFC−134、HFC−152a、HCFC−22、HCFC−142b、HCFC−124、CFC−12等のフロン系ガスの中から選択される少なくとも1種の気体である、請求項17〜19のうちのいずれか1項に記載の発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項21】
請求項9〜20のいずれか1項に記載の方法により製造された発泡ポリウレタン。


【公開番号】特開2006−22139(P2006−22139A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198978(P2004−198978)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(504074972)
【Fターム(参考)】