微細藻類培養器具
【課題】簡便な構成で、しかも大量生産が容易な微細藻類培養器具を提供する。
【解決手段】培養すべき微細藻類、および該藻類を分散させるための液体を、その内部に保持可能な形状としたフィルムを、少なくとも一部に含む微細藻類培養器具。該フィルムが、養分透過性を有する無孔性親水性フィルムである。
【解決手段】培養すべき微細藻類、および該藻類を分散させるための液体を、その内部に保持可能な形状としたフィルムを、少なくとも一部に含む微細藻類培養器具。該フィルムが、養分透過性を有する無孔性親水性フィルムである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細藻類を培養するための培養器具および培養方法に関する。本発明は、特に、簡便な構成で、微細藻類を大量に培養することが容易であるという利点を有する。
【背景技術】
【0002】
微細藻類は、無機塩と太陽エネルギーとCO2から光合成を利用して種々の有用物質を生産することができる。実際に、有用物質を生産する微細藻類として、クロレラやスピルリナ、ドナリエラ等を古くから我々は培養し利用してきた。太陽エネルギーとCO2から有用物質を生産することができる微細藻類は、今後も医薬、食料、生理活性物質、環境浄化等種々の分野に応用できる微生物の1つとして注目されている。
【0003】
光合成微生物、特に微細藻類の生産プロセスは、これまで多くの努力が払われ種々の種類の生産プロセスが提案されてきた。微細藻類の生産方法には、基本的に開放、封鎖系の二つに分けられ、微細藻類の種類や特徴により選択されている(非特許文献1)。
【0004】
従来の培養系では、開放系では簡単な自然池を利用したものや、レースウェイ等の人工池を利用した生産プロセスが採られている。また、封鎖系ではフォトバイオリアクターが開発されチューブ型、フラットパネル型、タンク型、ドーム型等種々のタイプのバイオリアクターが設計、利用されている。しかし、これらの生産プロセスは、生産(培養)条件とともに、立地条件(面積、日照時間、気候)等が重要な要素となる。
【0005】
従来の各々の微細藻類の生産(培養)方法には、それぞれ長所、短所があり、開放系の場合では雑菌の混入(コンタミネーション)、培養条件が不安定(日照、環境変化)の影響が大きく、商業的に生産されているのは、クロレラやスピルリナ等の高塩濃度、高pH下等の特殊環境中で生育することができる藻種に限られている。このため、付加価値の高い物質を生産することが見出されても、開放系では価値の高い微細藻類の培養は行えないのが現状である。
【0006】
また、これらの特殊な環境中でさえも、開放系の場合では雑菌汚染が避けられず、品質が一定でないという問題が指摘されている。
【0007】
他方、封鎖系の培養システムでは、雑菌汚染の排除、培養条件の均一化により高い生産性を維持することが可能であるが、スケールアップや高価な光導入型のバイオリアクターが必要となり容積当りのコストが高いという欠点がある。
【0008】
微細藻類の生産では、広大な受光面積を必要とするため広大な土地が必要となる。しかし、今後新たに微細藻類を生産するのに必要な土地を準備することは、日本においては難しいと考えられる。
【0009】
海洋表面やダム、湖沼等の環境水面は光が充分にあり、微細藻類の生育に必要な栄養塩も存在しており、このような環境水面を用いて微細藻類を用いた物質生産が行うことができれば、未利用な地域の有効利用もでき、更に微細藻類による窒素、リン、CO2の除去も行え(富栄養化対策)、大きな利点となると予想される。
【0010】
上記した従来技術の現状を纏めれば、以下の通りである。
(1)従来の微細藻類の生産システムでは、開放系を利用した大規模大量培養プロセスが利用されている。しかしながら、これらは、雑菌汚染に強い微細藻類のみしか生産できていないのが現状である。また、汚染に強い微細藻類でも、しばしば雑菌に汚染され品質が一定にならないといった問題も挙げられる。
【0011】
(2)更に、これら以外の利用価値の高い微細藻類は、雑菌汚染で生育困難となることから、生産できていない。一方で、封鎖系では、培養条件のコントロールは比較的容易に行えるが、スケールアップが困難で、全体的にコスト高である。
【0012】
(3)商業生産では、非常に広大な面積を必要とする。このような非常に広大な面積は、日本のような国土が狭い国では、非現実的な広さである。
【0013】
【非特許文献1】Borowitzka MA(1999) Comercial production of microalgae: ponds, tanks, tubes and fermenters., J. Biotechnology、vol.70,第313−321頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消することができる微細藻類培養器具を提供することにある。
【0015】
本発明の目的は、簡便な構成で、しかも大量生産が容易な微細藻類培養器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は鋭意研究の結果、無孔性親水性フィルムを利用して、培養すべき藻類が存在する環境と、養分が存在する外部の環境とを隔てつつ培養を行うことが、上記目的の達成のために極めて効果的なことを見出した。
【0017】
本発明の微細藻類培養器具は上記知見に基づくものであり、より詳しくは、培養すべき微細藻類、および該藻類を分散させるための液体を、その内部に保持可能な形状を有するリザーバを含む微細藻類培養器具であって;且つ、前記リザーバの少なくとも一部が、養分透過性を有する無孔性親水性フィルムから構成されることを特徴とするものである。
【0018】
本発明によれば、更に、培養すべき微細藻類、および該藻類を分散させるための液体を、その内部に保持可能な形状を有するリザーバを含み;且つ、前記リザーバの少なくとも一部が、養分透過性を有する無孔性親水性フィルムから構成される微細藻類培養器具を用い;該リザーバ内に、培養すべき微細藻類および液体を配置し;栄養源を有する外部水性環境に該リザーバの外部を接触させつつ、リザーバに光を照射することにより、前記微細藻類を培養することを特徴とする微細藻類培養方法が提供される。
【0019】
上記構成を有する本発明によれば、微細藻類が存在する器具内部の環境と、該器具の外部環境とを無孔性親水性フィルムによって好適に隔てることができるため、外部環境中に存在する栄養分を選択的に器具内部の微細藻類に摂取させることが可能となる。本発明においては、実質的に栄養分(特に栄養塩)を選択的に微細藻類が外部環境から摂取できるため、器具内部における雑菌の汚染のリスクを著しく軽減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、例えば、以下の効果を得ることができる。
(1)培養器具内部における雑菌汚染を著しく抑制した状態で、該器具の外部に存在する環境水から栄養塩を、培養器具内部に配置した微細藻類に摂取させつつ、該微細藻類を培養できる。
【0021】
(2)無孔性親水性フィルムを含むフィルムを使用するため、該フィルム表面からの水分の蒸発による吸熱に基づき、フィルム内に配置された内容物の温度上昇を、低コスト且つ効率的に抑制することができる。このような培養中の温度上昇は、培養すべき藻類に悪影響を及ぼす可能性があるため、このような昇温防止効果は、実際の培養においては、極めて重要である。
【0022】
(3)したがって、例えば、環境水面上に、微細藻類を内包する本発明の培養器具を配置することにより、微細藻類の生育に必要な窒素、リン等の栄養塩を外部環境から選択的に供給でき、環境水中で効率的に培養を行うことができる。他方、外部環境においては、いわゆる環境の富栄養化を防止することができる。
【0023】
(4)例えば、微細藻類に必要な栄養塩や太陽エネルギーが豊富に存在しているが、従来は未利用地域であった広大な面積を有する環境水面(湖沼やダム等の貯水池、海洋表層等)上において、効率的に微細藻類を培養することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0025】
(微細藻類培養器具)
本発明の微細藻類培養器具は、培養すべき微細藻類、および該藻類を分散させるための液体を、その内部に保持可能な形状としたフィルムを、少なくとも一部に含む。本発明においては、該フィルムとして、養分透過性を有する無孔性親水性フィルムを用いる。
(微細藻類)
微細藻類は、淡水、海水に分布しており、光エネルギー、CO2、N.Pなどの無機塩を利用して光合成を行い、酸素を発生させながら生育することができる、大きさが0.数μm〜数十μm程度の微生物である。これらの微生物は細胞内にクロロフィル、カロチテイド色素を有しており、これらの色素を利用して光合成を行なう。また、これらの微生物は一般に、植物プランクトンと呼ばれており、食物連鎖の底辺を担う重要な微生物群である。微細藻類は、11の植物門に分かれており、クロレラやヘマトコッカスなどの緑色植物門、スピルリナなどの藍色植物門などに分類される。なお、微細藻類の詳細な情報については、千原光雄編「藻類多様性の生物学」を参照することができる。
【0026】
また、微細藻類は光エネルギーとCO2から様々な有用物質を生産可能なことが知られている利用価値の高い微生物の1つでもある。微細藻類は、光とN.Pを含む無機塩を利用して有用脂肪酸や抗酸化物質などの生理活性物質、また大気中のCO2を固定化する能力を有している。
【0027】
通常これら微細藻類は、滅菌した三角フラスコなどに人工の培地を加え、空気通気(CO2含)、攪拌、蛍光灯などにより2000〜15000luxの光を供給しながら培養することができる。光強度などは、微細藻類の種類によって要求する強度が異なることから、微細藻類の種類で選択することが好ましい。
【0028】
また、整地することや攪拌しながらの震倒培養でも培養できる。生育は約2週間程度で定常期に達する。
【0029】
利用価値の高い微細藻類は、屋外や封鎖型のバイオリアクターで大規模大量生産されている。屋外での大量生産は、開放型で太陽エネルギーの豊富な地域で行なわれている。ポンド型やレースウェイ型の培養では、太陽エネルギーが底まで届くように培養液が約10〜15cmの厚さで、パドルなどで攪拌されている。pHや温度、光、コンタミネーションなどの微細藻類の生育に必要な重要なファクターについては、コントロールすることが出来ない。最も生育に影響がある光の強度などは、のそのため、それらの変化に強い微細藻類が選定されてきた。
一方で、封鎖型のバイオリアクターでは、通気量(CO2供給量)、光、攪拌、コンタミネーションなどのファクターをコントロールすることができ、効率の高い培養が行える。単位体積当りに対する生産性を高めることができるが、コスト高になり易い傾向がある。
【0030】
(培養器具の一態様)
本発明の培養器具の一態様を、図1の模式断面図に示す。図1を参照して、この態様においては、培養器具1は、培養すべき微細藻類2、および該藻類を分散させるための液体3を保持可能なリザーバ(「袋」形状を有するフィルム4)から構成される。該フィルム4は、養分透過性を有する無孔性親水性ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール(PVA))からなるフィルムである。
【0031】
(リザーバ)
本発明の培養器具を構成するリザーバは、培養すべき微細藻類、および該藻類を分散させるための液体を、その内部に保持可能であり、且つ、その少なくとも一部として、養分透過性を有する無孔性親水性フィルムを含む限り、その材質、形状、容量等は特に制限されない。
【0032】
(リザーバの構成)
本発明において、リザーバは、その少なくとも一部として無孔性親水性フィルムを含むものであればよい。すなわち、リザーバの全体が、該無孔性親水性フィルムから構成されていてもよく、また、リザーバの一部が、無孔性親水性フィルムから構成されていてもよい。
【0033】
「リザーバ」における無孔性親水性フィルム以外の要素の構成、形状等は任意である。すなわち、リザーバの他の部分は、不透性のポリエステル・フィルムで構成されていてもよく、また後述する補強部材で構成されていてもよい。
【0034】
(リザーバの形状等)
上記リザーバは、フレキシブルな容器の形状を有していてもよく、また比較的にリジッドな容器の形状を有していてもよい。このような「容器」の形状としては、例えば、袋状、筒状、チューブ状、およびフラットパネル状からなる群から選ばれる形状が挙げられる。
【0035】
(補強部材)
必要に応じて、上記リザーバ内側または外側に、更に他の補強材料が配置されていてもよい。このような補強部材としては、例えば、スプリング状、「さん」状、箱枠状の部材が挙げられる。例えば、このような補強部材に、該フィルムを「貼った」形状としてリザーバを構成してもよい(このような態様においては、例えば、フィルムが障子紙で、補強部材が、その障子紙の形状を支える「さん」のような状態となる)。
【0036】
(フィルム)
本発明者らの知見によれば、本発明において、微細藻類培養器具1のリザーバを構成するフィルム4としては、以下のような水分透過性/イオン透過性のバランスを有するフィルムが好ましいことが見出されている。本発明者らの知見によれば、このような水分/イオン透過性のバランスを有するフィルムにおいては、微細藻類の培養に好適な水分/養分透過性のバランスが容易に実現できるためと推定される。本発明において、微細藻類はフィルムを通して養分をイオンとして吸収するが、このようなフィルムの塩類(イオン)透過性が、微細藻類に与えられる養分の量に影響すると推定される。該フィルムを介して水と塩水を対向して接触させた際に、下記に示す測定開始4日後の水/塩水の電気伝導度(EC)の差が4.5dS/m以下のイオン透過性を有するフィルムを好適に用いることができる。このようなフィルムを用いた際には、微細藻類に対する好適な水あるいは養液を供給することが容易となる。
【0037】
(耐水圧)
本発明における使用すべきフィルム4は、耐水圧として10cm以上の水不透性を有することが好ましい。このようなフィルムを用いた際には、該フィルムを介しての雑菌汚染を防止することが容易となる。
【0038】
耐水圧はJIS L1092(B法)に準じた方法によって測定することができる。本発明のフィルムの耐水圧としては、10cm以上が好ましく、更には20cm以上(特に30cm以上)であることが好ましい。
【0039】
(光線透過率)
光線透過率はJIS K7105(A法)により測定することができる。本発明の光線透過率としては65%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上である。
【0040】
(クロロフィル吸収波長域の透過性)
本発明においては、人工光および天然光のいずれも使用可能である。これらの光には、それぞれ一長一短がある。すなわち、人工光は、培養すべき藻類に適した種類の光の選択が容易であるが、培養スペース、コスト、省エネルギーの点では不利である。他方、天然光は、培養スペース、コスト、省エネルギーの点では有利であるが、培養すべき藻類に適した種類の光の選択の点では不利である。
【0041】
(人工光に適したフィルム)
本発明において、人工光を用いて培養する態様においては、下記のような特性を有するフィルムを使用することが好ましい。あるいは又、有害紫外線領域をカットするフィルターとの併用も好適に実施可能である。
【0042】
(UV照射に対する耐久性)
本発明において、藻類培養時ないしは培養後におけるリザーバの劣化ないし破損を効果的に防止する点からは、該リザーバを構成するフィルムは、下記のようなUV照射に対する耐久性を有することが好ましい。
【0043】
これらのUV照射前後の引張り強さ、およびUV照射前後の引張り破断伸びは、以下の方法で好適に測定することができる。
【0044】
<UV照射前後の引張り強さ/引張り破断伸びの測定方法>
引張り強さ/引張り破断伸びは、下記の条件で測定する。
使用機器:テンシロンUCT−5T型(エー・アンド・デイ社製)
試験条件:掴み具間距離:50mm、試験速度:100mm/min
測定雰囲気:室温23℃、湿度50%で実施
【0045】
(UV照射法等)
上記の試料について、それぞれUV照射前の引張り強さ/引張り破断伸びを測定した後、後述する実施例14の条件で試料にUV(波長:253.7nm)を照射する。その後、該試料について、それぞれUV照射後の引張り強さ/引張り破断伸びを測定する。
(セルロース産生/分解微生物に対する耐久性)
本発明において、藻類培養時ないしは培養後におけるリザーバの劣化ないし破損を効果的に防止する点からは、該リザーバを構成するフィルムは、下記のようなセルロース産生/分解微生物に対する耐久性を有することが好ましい。
【0046】
これらの微生物暴露前後の引張り強さ、および微生物暴露前後の引張り破断伸びは、「UV照射」で上述した方法により、好適に測定することができる。
【0047】
(微生物暴露法等)
上記の試料について、それぞれ微生物暴露前の引張り強さ/引張り破断伸びを測定した後、該試料を微生物暴露容器内に配置し、セルロース産生微生物については、後述する実施例15の条件で微生物暴露を行い、セルロース分解微生物については、後述する実施例16の条件で微生物暴露を行う。
【0048】
(水分/イオン透過性)
本発明においては、上記フィルム4は、該フィルムを介して水と塩水(0.5質量%)とを対向して接触させた際に、測定開始4日後の水/塩水の栽培温度において測定した電気伝導度(EC)の差が4.5dS/m以下であることが好ましい。この電気伝導度の差は、更には3.5dS/m以下であることが好ましい。特に、2.0dS/m以下であることが好ましい。この電気伝導度の差は、以下のようにして測定することが好ましい。
【0049】
<実験器具等>
なお、本明細書の以降の部分(実施例も含む)において用いた実験器具、装置および材料は、(特に指定がない限り)後述する「実施例」の前の部分に示した通りである。
【0050】
<電気伝導度の測定方法>
養分は、通常イオンの形で吸収されるため、液中に溶けている塩類(あるいはイオン)量を把握することが望ましい。このイオン濃度を測定する手段として電気伝導度(EC、イーシー)を用いる。ECは比導電率ともいい、断面積1cm2の電極2枚を1cmの距離に離したときの電気伝導度の値を使用する。単位はシーメンス(S)が使われ、S/cmとなるが肥料養液のECは小さいので、1/1000のmS/cmを使う(国際単位系ではdS/m(dはデシ)と表示する)。
【0051】
実際の測定においては、上記した電気伝導度の測定部位(センサー部)にスポイトを用いて試料(例えば溶液)を少量乗せ、導電率を測定することができる。
【0052】
<フィルムの塩/水の透過試験>
市販の食塩(例えば、後述する「伯方の塩」)10gを水2000mlに溶解して、0.5%塩水を作製する(EC:約9dS/m)。
【0053】
図5を参照して、「ざるボウルセット」を使い、ざる上に試験すべきフィルム(サイズ:200〜260×200〜260mm)を乗せ、該フィルム上に水150gを加える。他方、ボウル側に上記の塩水150gを加え、得られた系全体を食品用ラップ(ポリ塩化ビニリデンフィルム、商品名:サランラップ、旭化成社製)で包んで、水分の蒸発を防ぐ。この状態で、常温で放置して、24hrs毎に水側、塩水側のECを測定する。
【0054】
(フィルム材料)
上述した「水と塩水とを対向して接触させた際に、測定開始後4日目(96時間)の水/塩水の電気伝導度(EC)の差が4.5dS/m以下である」性質を満足する限り、本発明において、使用可能なフィルム材料は、特に制限されず、公知の材料から適宜選択して使用することが可能である。このような材料は、通常フィルムないし膜の形態で用いることができる。
【0055】
より具体的には、このようなフィルム材料としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、セロファン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、エチルセルロース、ポリエステル等の親水性材料が使用可能である。
【0056】
上記フィルムの厚さも特に制限されないが、通常は、300μm以下程度、更には200〜5μm程度、特に100〜10μm程度であることが好ましい。
【0057】
必要に応じて、上記フィルム4は他の材料と複合化(例えば、ラミネート化)してもよい。このような複合化は、例えば、フィルムの強度維持の点から好ましい。上記した「他の材料」としては、本発明におけるフィルム4の効果を実質的に妨害しない限り特に制限されない。通常の多孔質材料(例えば、不織布)、透水性および/又はイオン透過性材料等をフィルム4に配置しても、本発明におけるフィルム4の効果が実質的に妨害されない場合が多い。
【0058】
本発明のフィルム4の強度補強、取り扱い易さおよび形状保持性の向上の目的で、必要に応じて、「他の材料」と複合化する場合、このような「他の材料」としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロース等から成る不織布および連通孔を有するスポンジ等が挙げられる。該複合化の手法としては、例えば、貼り合せ、二重容器等が挙げられる。
【0059】
更には、フィルム4の機械的強度を考慮して、該フィルム4の外側を、水透過性を有する他の材料でカバーしてもよい。該「他の材料」とフィルム4とは接触(一部接触を含む)していてもよく、また必要に応じて、互いに間隙をおいて配置してもよい。このような材料としては、例えば、金属、プラスチック、セラミック、木材等の比較的堅い材料が挙げられる。
【0060】
(フィルム強度とイオン透過性の関係)
一般に、フィルムの厚さが大きくなるにつれてフィルムの強度は増加するが、養液の透過性は減少する傾向にあると考えられる。本発明の培養器具では、微細藻類培養を長期にわたりフィルムを用いて行うので、フィルムの長期耐久性(例えば、破れ難さ)は高い方が好ましい。フィルムの耐久性を上げる方法は、例えば、組成や延伸等の加工方法やフィルム種類を変えること、あるいは、同一種類の場合は厚みを増す方法もある。これに対して、フィルム厚みを単に増した場合、イオン透過性が低下する可能性がある。
【0061】
しかしながら、本発明者の知見によれば、例えば、スキン構造を有するフィルムにおいては、厚さが厚くなっても、透過性はあまり低下しない場合があることが見出された。例えばソルベント・キャスティングでは、表面のみが先ず乾燥して緻密な膜(スキン層)を形成するため、スキン構造を有するフィルムが形成される。この場合、スキン構造以外の部分(フィルム内部)は、かなり多孔質のままである。本発明者の知見によれば、「養液の透過」は、緻密なスキン層の透過が律速であり、内部の多孔質部分はあまり影響がない(すなわち、スキン構造の厚さがあまり変化しなければ、フィルムの厚さが大きくなっても、透過性はあまり低下しない)と推定される。例えば、後述するようにPVAフィルムを使用した場合には、厚さが厚くなっても、透過性はあまり低下せず非常に好都合であることが判明している。後述する実施例5に示すように、フィルム強度を上げるために、フィルム厚みを増しても、PVAフィルムの場合には、養液成分のイオン透過性の目安である0.5%塩水透過性が、大きく変化しない利点がある。
【0062】
この実施例5においては、PVAフィルムについて、フィルム厚みを25〜65μmの範囲で変え、0.5%塩水透過性(養分イオンのフィルム透過性の目安となる)の試験結果が示されている。PVAフィルムの場合、フィルム厚みを25〜65μmに変えたとき、殆ど塩水透過性が変化せず、本発明のシステムにおいて、非常に有利であることがわかる。
【0063】
(水分/イオン透過性のフィルム厚み依存性)
本発明においては、上記フィルムは、所定の温度(27±3℃)において、該フィルムを介して水と塩水(0.5質量%)とを対向して接触させた際に、測定開始24時間後の水/塩水の電気伝導度(EC)の差で表現した際の水分/イオン透過性が、特定のフィルム厚み依存性を有することが好ましい。この水分/イオン透過性のフィルム厚み依存性が小さい場合には、(例えば、該フィルムの破損耐性を増大させる観点から)フィルム厚みを増大させたとしても、フィルムの水分/イオン透過性は比較的、低下しないこととなり、フィルムの破損耐性の向上、および水分/イオン透過性の維持の両立を図ることが容易となるからである。
【0064】
より具体的には、27±3℃において、該フィルムを介して水と塩水を対向して接触させた際に、測定開始24時間後の水/塩水の電気伝導度(EC)の差ΔEC24hrs(dS/m)を、フィルム厚み(μm)を横軸にプロットしたグラフの傾きΔEC24hrs(dS/m)/10μm(即ち、厚み10μm当たりのΔEC24hrs変化量)が、0.7以下であることが好ましく、更には0.5以下(特に0.3以下)であることが好ましい。
【0065】
上記のフィルム透過度試験においては、比較的に高い温度(27±3℃)を使用したが、この温度は、本発明に好適に使用可能なフィルムを確認する目的のみに使用するものであって、他の温度条件(例えば、実際の培養時の温度条件)を何ら制限しない。すなわち、本発明においては、例えば、実質的に温度調節を省略することにより、比較的に低温の条件(冬季等)においても、微細藻類を培養することができる。
【0066】
(フィルムの耐久性)
本発明で使用するフィルムは光(太陽光あるいは人工光)の下で長時間曝され、また、自然界に存在する微生物に曝されるので、これらに対するフィルムの耐久性があることが好ましい。実施例6はフィルムの微生物に対する腐食性を試験した結果であるが、ポリビニルアルコールフィルムは微生物によりフィルムが破壊することは無かったが、セロファンフィルムは1週間程度で破壊され、本発明に使用するフィルムとしては適さない。
【0067】
また、実施例7はフィルムの耐候性を試験した結果であるが、ポリビニルアルコールフィルムおよびセロファンフィルムは3ヶ月以上、太陽光に暴露されてもフィルムが破壊することが無かった。従って、フィルムの耐久性の点からは、本発明に使用するフィルムとしてはポリビニルアルコールフィルムが特に好ましい。
【0068】
(フィルムの形状)
その内部に、培養すべき微細藻類、および該藻類を分散させるための液体を保持可能な形状である限り、フィルムの形状は特に制限されない。該形状の例としては、例えば、袋状、筒状、チューブ状、フラットパネル状等が挙げられる。光による藻類の培養においては、フィルムの表面積が重要であるため、例えば、複数本のチューブ状フィルムを配置して培養を行うことが好ましい。
【0069】
(フィルムの補強/保護)
フィルムの補強/保護方法としては、上述したものに加えて、例えば、フィルムの外側に、保護材料を配置することができる。フィルム表面に対する光の供給と、フィルム保護との好適なバランスが得られる限り、該保護材料の材質、形状、サイズ等は特に制限されない。
【0070】
(培養方法)
本発明において、藻類を培養する方法は、上記した本発明の培養器具を使用する限り、特に制限されない。本発明においては、例えば、以下のようにして藻類を培養することができる。
【0071】
すなわち、本発明の一態様としては、その内部に、培養すべき微細藻類および該藻類を分散させるための液体を保持可能な形状としたリザーバ(無孔性親水性フィルムを含む)を用い、該フィルム内に、培養すべき微細藻類および液体を配置した後、栄養源を有する外部水性環境に該フィルムの外部を接触させつつ、フィルムに光を照射することにより、前記微細藻類を培養することができる。
【0072】
(液体の攪拌/循環)
本発明においては、藻類が置かれる環境における養分濃度、温度等の不均一を低減するために、フィルム内部および/又は外部に存在する液体を、攪拌および/又は循環させることが好ましい。このような攪拌および/又は循環の手段は、特に制限されない。
【0073】
(表面積の増大)
本発明の培養において、効率を増大させる点からは、フィルムの表面積を出来る限り増大させることが好ましい。この観点からは、例えば、図4の模式斜視図(チューブ状のフィルムを複数本配置した態様)に示すように、チューブ状のフィルムを並べることにより、フィルムの表面積を増大させることが好ましい。
(本発明培養方法の概念図)
図2は、本発明培養方法の原理の一例を示す模式斜視図(概念図)である。上記したような無孔性親水性フィルム膜を利用することで、本発明においては、微細藻類培養系への雑菌の進入を防ぎ、他方で、外環境から生育に必要な栄養塩を利用(微細藻類培養系へ導入)しながら微生物を培養することができる。
【0074】
(本発明培養器具の他の態様)
図3は、本発明の培養器具をスケールの大きなシステムとする場合の態様の一例を示す模式断面図であり、図4は、このようなシステムの模式平面図である。この態様においては、上記で用いた無孔性親水性フィルムを、チューブ型の形状としている。
【実施例】
【0075】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
以下で用いた実験方法は上述あるいは実施例で記述されたものの他は、以下の通りである。
<実験器具等>
(1)使用器具および装置
1)ざるボールセット:ざるの半径6.4cm(底面の面積約130cm2)
2)上皿電子天秤:Max.1Kg 株式会社タニタ
3)ばね式天秤:Max.500g 株式会社鴨下精衡所
4)電気伝導度計:Twin Cond B−173 株式会社堀場製作所
5)pHメーター:pHパル TRANSInstruments(グンゼ産業)
【0077】
(2)使用材料
1)ポリビニルアルコール(PVA)フィルム:日本合成化学工業(株)
2)二軸延伸PVAフィルム:ボブロン(日本合成化学工業(株))
3)Hymec膜:PVA膜(Hymec(商標)メビオール(株)(本社 神奈川県平塚市 URL;http/www.mebiol.co.jp))
4)セロファン:フタムラ化学(株)
5)不織布:シャレリエ(超極細繊維不織布)旭化成(株)
6)原液ハイポネックス:(株)ハイポネックスジャパン
7)大塚化学養液:大塚ハウス1号、2号(大塚化学(株))の標準処方により調製し、所定濃度のEC値の養液を作製した。
【0078】
9)伯方の塩: 伯方塩業株式会社(100g中ナトリウム37.5g、マグネシウム110mg、カルシウム90mg、カリウム50mg15)
【0079】
実施例1
(塩水透過試験)
前述の<フィルムの塩/水透過試験>方法に従って、各種フィルムの塩水透過試験を行った。フィルムはPVA、ボブロン(二軸延伸PVA)、セロファン、超極細繊維不織布(シャレリア)の4種である。
【0080】
上記実験により得られた結果を、以下の表に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
上記データをグラフ化したものを図6に示す。
(実験結果に対する記述)
超極細繊維不織布は水と共に塩が完全に透過しているが、PVAおよびセロファンも比較的早く塩の透過が進んでいる。ボブロンは塩の透過速度が小さいものの、4日目には塩水系と水系とのEC値の差が4.5以内になっている。
【0083】
実施例2
(耐水圧試験)
JIS L1092(B法)に準じた試験により、200cmH2Oの耐水圧試験を行った。各種フィルムの実験結果は以下の通りである。PVAフィルム(40μm)は 200cmH2O以上、二軸延伸PVA(ボブロン)は 200cmH2O以上、セロファンは 200cmH2O以上、超極細繊維不織布は 0cmH2Oであった。
【0084】
実施例3
(光線透過率の測定)
JIS K7105(A法)により、光線透過率を測定した。PVAフィルム(40μm)は91%、二軸延伸PVA(ボブロン)は91%、セロファン(30μm)は90%であった。
【0085】
実施例4
実施例1と同様にしてざるボールセット(ざるの半径6.4cm、容量130cm3)を用い、ざるに20×20cmのフィルムを乗せ純水を150g加え、ボール側に養液150gを加えて、サランラップで包んだ。サンプリング時間3、6、12、24、36、48、72hrsで計7個の容器を用意し、所定時間経過後100mlずつサンプル容器に採取した。各サンプル中の、主要養分成分の分析を行った。
【0086】
1)透湿フィルム:PVAフィルム25μm
【0087】
2)水:蒸留水(和光純薬工業(株)製)、養液肥料:大塚ハウス1号 1.5g/L、2号 1g/L(大塚化学(株)製)
【0088】
3)分析方法
a)アンモニウムイオン、硝酸イオンおよび硫酸イオン:イオンクロマトグラフ法により分析(分析の詳細に関しては:「水の分析」第4版 日本分析化学会北海道支部編 発行(株)化学同人 1997年7月20日 第3章水の分析に用いられる分析法 3.7.3 イオンクロマトグラフィー(P125〜129)を参照することができる)。
【0089】
b)りん、カリウム、カルシウムおよびマグネシウム:ICP(発光分光分析)法により分析(分析の詳細に関しては:「水の分析」第4版 日本分析化学会北海道支部編 発行(株)化学同人 1997年7月20日 第13章微量汚染物質と関連する分析法 13.10 ICP(P478〜480)を参照することができる)。
【0090】
主要成分のアンモニア性窒素(NH4−N)、硝酸性窒素(NO3−N)、りん酸(P2O5)、カリウム(K2O)、カルシウム(CaO)、マグネシウム(MgO)および硫黄(SO4)について、フィルム透過性の経時変化を表2)〜表8)に、またこれらのデータに対応するグラフを図7〜図13に示す。
【0091】
上記した表およびグラフに示すように、養分のフィルム透過性に関して、養分成分によって透過速度の違いはあるものの、主要成分の窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)および硫黄(S)はすべて透過する。
【0092】
アンモニア性窒素 単位:ppm
【表2】
【0093】
硝酸性窒素 単位:ppm
【表3】
【0094】
りん酸 単位:ppm
【表4】
【0095】
カリウム 単位:ppm
【表5】
【0096】
カルシウム 単位:ppm
【表6】
【0097】
マグネシウム 単位:ppm
【表7】
【0098】
硫黄 単位:ppm
【表8】
【0099】
実施例5
実施例1と同様に、ざるボールセット(ざるの半径6.4cm、容量130cm3)を用い、ざるに20×20cmのフィルムを乗せ水道水を150g加え、ボール側に塩水150gを加えて、サランラップで包み室温に置いた。サンプリング時間毎に、水側(ざる)および塩水側(ボール)の溶液を良く撹拌した後、スポイトでサンプリングし、EC値を測定した。
【0100】
1)透湿フィルム:厚みの異なるPVAフィルムを使用した。
【0101】
PVA #25(25μm)、#40(40μm)、#65(65μm)
【0102】
2)0.5%塩水:水道水に「伯方の塩」を0.5重量%溶解した。
【0103】
伯方の塩:100g中ナトリウム37.5g、マグネシウム110mg、カルシウム90mg、カリウム50mg
【0104】
3)実験方法
電気伝導度計:Twin Cond B−173を用い、スポイトでサンプリングした溶液を電気伝導度計の測定部位に少量乗せ、電気伝導度EC(ds/m)を測定した。
【0105】
実施期間:2003年8月26日〜31日
PVAフィルムの結果を表9および図15に示す。
【0106】
上記の図15から、水側のEC値は増加し、塩水側のEC値は減少し、両者の値が時間と共に同じ値に収束して行くことが判明した。PVAフィルムの場合、フィルム厚み25〜65μmの範囲で、厚みが増しても0.5%塩水透過性は殆ど変わらない。
【0107】
PVA 単位:dS/m
【表9】
【0108】
実施例6
(フィルムの腐食性)
使用するフィルムが天然に存在する微生物により分解するか否かの試験を実施した。
プラスチック製容器(20×12×5.5cm)に水道水700mlを加え、30×22cmの各種フィルムを水面上に乗せる。フィルムの上に、土壌スーパーミックスA((株)サカタのタネ製)170gを乗せ、ルッコラ(オデッセイ、(株)サカタのタネ)の本葉約1枚の幼苗(播種後17日目)を各6本植えつけた。温度21℃、湿度60〜70%、人工光による照度3700〜3800Lxの栽培棚で2005.4.28から5.30まで栽培し、39日目に草丈と本葉数を測定した。
【0109】
使用したフィルムは、No.1:セロファンフィルムPL#500(厚み:35μm)およびPVAフィルム#40(厚み:40μm)である。
【0110】
フィルムの種類と結果は下記の通り。
【表10】
【0111】
実験No.1のセロファンPL#500(厚み:35μm)に関しては再現試験を実施したが同じく1週でフィルムに穴が開いた。
【0112】
実施例7
(フィルムの耐候性)
本発明に使用するフィルムは常に太陽光に曝されるので、使用するフィルムの耐候性を試験した。試験方法は、フィルムサイズ20×25cmを室内の窓辺に置き(2003.9.12〜12.17)外観の変化を観察した。使用したフィルムはポリビニルアルコール(PVA#2500)(25μm)およびセロファン(30μm)である。
【0113】
結果は、ポリビニルアルコールおよびセロファンは3ヶ月後も変化が無かった。
【0114】
実施例8
(培養システムに好適な膜の選択)
(1)種々の機能性膜を利用し、微細藻類を内封し培養を行い、封入した微細藻類が効率的に培養できる機能性膜の選定を、以下の実験例において調べた。
【0115】
(2)恒温水槽(36Lcm×26Wcm×15H アクリル製)に模擬環境水としてBG−11培地(硝酸ナトリウム1.5g/L、リン酸二カリウム 三水和物30mg/L、硫酸マグネシウム 七水和物75mg/L、塩化カルシウム 二水和物36mg/L、クエン酸6mg/L、Na2 EDTA1mg/L、炭酸ナトリウム20mg/L、クエン酸鉄(III) アンモニウム6mg/L、ビタミンB121μg、塩化ナトリウム 30g/L、トレースエレメント:ホウ酸2.86g/L、塩化マンガン(II) 四水和物1.81g/L、硫酸亜鉛 七水和物222mg/L、モリブデン酸(VI) 二ナトリウム390mg/L、硫酸銅(II) 五水和物79mg/L、硫酸コバルト 六水和物49.4mg/L、pH7.4)を10L加え、25℃の温度に温調機によって設定した。微細藻類の生育に必要な光源は、蛍光灯(昼色光)を用い、2000lux(40uE/m2/s)の光を供給した。恒温水槽中のも模擬環境水は、絶えず温調器を用いて攪拌した。
【0116】
(3)今回の実験で用いた微細藻類は、淡水から分離された一般的な藻類であるらん藻、Synechocystis sp. PCC6803株(以下「シアノバクテリウム」と称する)である。
【0117】
(4)用いた機能性膜は、限外ろ過膜、ニトロセルロース膜、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)膜、PVA膜等を使用した。
【0118】
(5)それぞれの機能性膜を一片が閉じられてない透明アクリル板に貼り付けて、密封型のリアクターを作製し、シアノバクテリウムの生育、栄養塩の透過量についてしらべ、本培養システムに適用できる機能性膜の選択を行った。
【0119】
(結果)
(1)栄養塩を含まない純水にシアノバクテリウムを懸濁した溶液を、袋状PVA膜に内封し栄養塩を含む模擬環境水としてBG−11培地中に浸漬し、培養を行った結果、PVA膜を用いた場合良好な生育が確認された(図1)。このことから、PVA膜が培養システムに適用できることが示された。
【0120】
(2)他の機能性膜については、生育が確認されなかった。
【0121】
実施例9
(膜厚の最適化)
(1)まず、PVA膜を袋状に成型し、微細藻類を内封し、種々の条件化で培養を行い、封入した微細藻類が効率的に生育すること条件等を、以下の実験例において調べた。
【0122】
(2)恒温水槽(36Lcm×26Wcm×15H アクリル製)に模擬環境水としてBG−11培地(硝酸ナトリウム1.5g/L、リン酸二カリウム 三水和物30mg/L、硫酸マグネシウム 七水和物75mg/L、塩化カルシウム 二水和物36mg/L、クエン酸6mg/L、Na2 EDTA1mg/L、炭酸ナトリウム20mg/L、クエン酸鉄(III) アンモニウム6mg/L、ビタミンB121μg、塩化ナトリウム 30g/L、トレースエレメント:ホウ酸2.86g/L、塩化マンガン(II) 四水和物1.81g/L、硫酸亜鉛 七水和物222mg/L、モリブデン酸(VI) 二ナトリウム390mg/L、硫酸銅(II) 五水和物79mg/L、硫酸コバルト 六水和物49.4mg/L、pH7.4)を10L加え、25℃の温度に温調機によって設定した。微細藻類の生育に必要な光源は、蛍光灯(昼色光)を用い、2000lux(40uE/m2/s)の光を供給した。恒温水槽中のも模擬環境水は、絶えず温調器を用いて攪拌した。
【0123】
(3)今回の実験で用いた微細藻類は、淡水から分離された一般的な藻類であるシアノバクテリウムである。
【0124】
(4)3種類の膜厚を有するPVA膜(25μm、40μm、65μm)を縦17cm、横8cm程度に切り取り、内寸が縦10cm、横6cmになるようにシーラーを用いて各辺3箇所をシールした。
【0125】
(5)クリーンベンチ内で、30mlの純水(121℃、10分間オートクレーブ滅菌済)を、袋状PVA膜に加え、シアノバクテリウムを2.0x10^6 cells/mlになるように植菌した。開放していた1箇所は植菌後、クリーンベンチ内でシーラーを用いてできるだけ空気を排除した形で密封した(図1)。
【0126】
(6)シアノバクテリウムを袋の中に密封した袋状PVA膜は、2000luxの光照射、25℃でコントロールされた水槽中に浸漬し、培養を開始した(図2)。
【0127】
(7)浸漬した袋状PVA膜は、水面付近を浮遊している状態であった。
(8)培養は6日間で行い、培養終了後、封入した純水中で増殖したシアノバクテリウムの細胞数、pH、栄養塩濃度を測定した。培養期間中は、適宜袋状PVA膜を振盪し、内部のシアノバクテリウムを攪拌した。
【0128】
(9)また、100ml三角フラスコに50mlの滅菌したBG−11培地を加えて25℃、2000luxの光照射下で振盪培養(100rpm)したものを対照とした。
【0129】
(10)実験に用いたシアノバクテリウムは、すべて100ml三角フラスコに50mlの滅菌したBG−11培地を加えて25℃、2000luxの光照射下で1週間程度、振盪培養(100rpm)したものを用いた。
【0130】
(結果)
(1)PVA膜内に封入したシアノバクテリウムの生育を培養時間毎において観察した結果、3日目からシアノバクテリウムの生育が目視できるようになった。これは、模擬環境水からのN.P等の栄養塩がPVA膜を介して内部に流入し、それらをシアノバクテリウムが利用して増殖したことを確認した。
【0131】
(2)25μm、40μm、65μmの膜厚で作製した袋状PVA膜を用いて水槽中でのシアノバクテリウムの生育は、すべての条件で生育することが確認された。更に、25μmの厚さで作製した袋状PVA膜が最も高い生育を示し、6日目において2.01x10^8 cells/mlに達した。その他の40μm、65μmでは、1.79x10^8 cells/ml、1.64x10^8 cells/mlであった(表11)。
【0132】
【表11】
【0133】
(3)培養期間中、水槽には多くの細菌の増殖が観察されたが(図3)、袋状PVA膜の中で生育するシアノバクテリウムの培養液中では雑菌の汚染は確認されなかった。
【0134】
(4)また、6日後の模擬環境水中のpHが7.4程度であったが、袋状PVA膜の培養液は、7.7〜10.2程度まで上昇した。pHの上昇は生育に影響を与える程度ではなかった。
【0135】
(5)一方で、対照実験として用いた振盪培養の条件では、6日目において1.59x10^8 cells/mlであった。
【0136】
(6)これらの結果から、袋状PVA膜を用いた培養方法が従来の培養方法に比べ、高い藻体生産性を示した。また、25μmの厚さのPVA膜は、使用後の強度、透明性等についても培養前と変化なかった。
【0137】
実施例10
(表面積/内容積の最適化)
(1)まず、PVA膜を袋状に成型し、袋状PVA膜の表面積と内容積が微細藻類の生育に与える影響を調べ、最適な表面積/内容積比を以下の実験例で調べた。
【0138】
(2)恒温水槽(36Lcm×26Wcm×15H アクリル製)に模擬環境水としてBG−11培地(硝酸ナトリウム1.5g/L、リン酸二カリウム 三水和物30mg/L、硫酸マグネシウム 七水和物75mg/L、塩化カルシウム 二水和物36mg/L、クエン酸6mg/L、Na2 EDTA1mg/L、炭酸ナトリウム20mg/L、クエン酸鉄(III) アンモニウム6mg/L、ビタミンB121μg、塩化ナトリウム 30g/L、トレースエレメント:ホウ酸2.86g/L、塩化マンガン(II) 四水和物1.81g/L、硫酸亜鉛 七水和物222mg/L、モリブデン酸(VI) 二ナトリウム390mg/L、硫酸銅(II) 五水和物79mg/L、硫酸コバルト 六水和物49.4mg/L、pH7.4)を10L加え、25℃の温度に温調機によって設定した。微細藻類の生育に必要な光源は、蛍光灯(昼色光)を用い、2000lux(40uE/m2/s)の光を供給した。恒温水槽中のも模擬環境水は、絶えず温調器を用いて攪拌した。
【0139】
(3)今回の実験で用いた微細藻類は、淡水から分離された一般的な藻類であるシアノバクテリウムを用いた。
【0140】
(4)袋状PVA膜(cm)と内容積(ml)の比を持つ10:1(120cm2:12ml)、8:1(120cm2:15ml)、6:1(120cm2:20ml)、4:1(120cm2:30ml)、2:1(120cm2:60ml)、1:1(480cm2:500ml)の6種類の袋状PVA膜を作成した。内寸は、各条件で縦10cm、横6cm(60cm2)になるようにシーラーを用いて各辺3箇所をシールした。受光面積は、袋状PVA膜が浮遊しているため、上面、下面の2方向から光が当たると考え倍の面積とした。
【0141】
(5)クリーンベンチ内で、30mlの純水(121℃、10分間オートクレーブ滅菌済)を、袋状PVA膜に加え、シアノバクテリウムを2.0x10^6 cells/mlになるように植菌した。開放していた1箇所は植菌後、クリーンベンチ内でシーラーを用いてできるだけ空気を排除した形で密封した。
【0142】
(6)シアノバクテリウムを袋の中に密封した袋状PVA膜は、2000luxの光照射、25℃でコントロールされた水槽中に浸漬し、培養を開始した。
【0143】
(7)浸漬した袋状PVA膜は、水面付近を浮遊している状態であった。
(8)培養は6日間で行い、培養終了後、封入した純水中で増殖したシアノバクテリウムの細胞数、pH、栄養塩濃度を測定した。培養期間中は、適宜袋状PVA膜を振盪し、内部のシアノバクテリウムを攪拌した。
【0144】
(9)また、100ml三角フラスコに50mlの滅菌したBG−11培地を加えて25℃、2000luxの光照射下で振盪培養(100rpm)したものを対象とした。
【0145】
(10)実験に用いたシアノバクテリウムは、すべて100ml三角フラスコに50mlの滅菌したBG−11培地を加えて25℃、2000luxの光照射下で1週間程度、振盪培養(100rpm)したものをもちいた。
【0146】
(結果)
(1)BG−11に浸漬し6日間の培養で、すべての条件でシアノバクテリウムの生育が確認された(図4、5、6、7、8、9)。その中でも表面積/内容積の比が8:1の条件が最も高い生育を示し、2.40x10^8 cells/mlに達した(表13)。また、10:1以外の条件で、対照条件よりも高い生育を確認した。10:1の条件下で観察された生育不良な原因として、内封した培養液の量が少なくPVA膜同士が接着することで、BG−11からのN.Pの流入効率が低下したためだと考えられた。また、pHについては生育には影響がでない範囲内であった。
【0147】
【表12】
【0148】
(2)このことから、表面積/内容積比が8:1の場合において効率的に培養が行えることが示された。
【0149】
実施例11
(内容積/環境水容積の最適化)
(1)まず、PVA膜を袋状に成型し、微細藻類を内封し、種々の条件化で培養を行い、封入した微細藻類が効率的に生育すること条件等を、以下の実験例において調べた。
【0150】
(2)恒温水槽(36Lcm×26Wcm×15H アクリル製)に模擬環境水としてBG−11培地(硝酸ナトリウム1.5g/L、リン酸二カリウム 三水和物30mg/L、硫酸マグネシウム 七水和物75mg/L、塩化カルシウム 二水和物36mg/L、クエン酸6mg/L、Na2 EDTA1mg/L、炭酸ナトリウム20mg/L、クエン酸鉄(III) アンモニウム6mg/L、ビタミンB121μg、塩化ナトリウム 30g/L、トレースエレメント:ホウ酸2.86g/L、塩化マンガン(II) 四水和物1.81g/L、硫酸亜鉛 七水和物222mg/L、モリブデン酸(VI) 二ナトリウム390mg/L、硫酸銅(II) 五水和物79mg/L、硫酸コバルト 六水和物49.4mg/L、pH7.4)を10L加え、25℃の温度に温調機によって設定した。微細藻類の生育に必要な光源は、蛍光灯(昼色光)を用い、2000lux(40uE/m2/s)の光を供給した。
【0151】
(3)今回の実験で用いた微細藻類は、淡水から分離された一般的な藻類であるシアノバクテリウムを用いた。
【0152】
(4)袋状PVA膜を縦17cm、横8cm程度に切り取り、内寸が縦10cm、横6cmになるようにシーラーを用いて各辺3箇所をシールした。
【0153】
(5)クリーンベンチ内で、15mlの純水(121℃、10分間オートクレーブ滅菌済)を、袋状PVA膜に加え、シアノバクテリウムを2.0x10^6 cells/mlになるように植菌した。開放していた1箇所は植菌後、クリーンベンチ内でシーラーを用いてできるだけ空気を排除した形で密封した。
【0154】
(6)表面積/内容積比8:1の条件下で最も高い藻体濃度が得られることが明らかとなったことから、内容積を15mlに設定し、模擬環境水としてBG−11培地を1L、2L、5Lに変化させた。
【0155】
(7)シアノバクテリウムを袋の中に密封した袋状PVA膜は、2000luxの光照射、25℃でコントロールされた水槽中に浸漬し、培養を開始した。
【0156】
(8)浸漬した袋状PVA膜は、水面付近を浮遊している状態であった。
(9)培養は6日間で行い、培養終了後、封入した純水中で増殖したシアノバクテリウムの細胞数、pH、栄養塩濃度を測定した。培養期間中は、適宜袋状PVA膜を振盪し、内部のシアノバクテリウムを攪拌した。
【0157】
(10)また、100ml三角フラスコに50mlの滅菌したBG−11培地を加えて25℃、2000luxの光照射下で振盪培養(100rpm)したものを対照とした。
【0158】
(11)実験に用いたシアノバクテリウムは、すべて100ml三角フラスコに50mlの滅菌したBG−11培地を加えて25℃、2000luxの光照射下で1週間程度、振盪培養(100rpm)したものを用いた。
【0159】
(結果)
(1)環境水の攪拌を伴わない条件下で培養を行った結果、表面積/内容積8:1を利用した場合、模擬環境水量が増加するにつれて生育量が増加し、10Lの模擬環境水を使用した場合が最も高い生育を示した。各1L、5Lにおいてもシアノバクテリウムの生育は確認されたが、環境水量が少なくなるにつれ、生育量が低下することが確認された。pH変化については、それぞれの条件下において7.4〜8.6の間であった。
【0160】
(2)また、全体的なシアノバクテリウムの生育量の低下については、攪拌によるPVA膜への環境水の接触が低下することにより、膜内へのN、Pの供給量が低下したためと考えられた。
【0161】
(3)このことから、最適な表面積/内容積8:1の条件で模擬環境水量を検討した結果、模擬環境水量が多ければ生育が高まる傾向が確認され、本実験から内容積/模擬環境水1:666程度であることが示された。
【0162】
(4)環境水の滞留による栄養塩の供給不足が考えられたが、少ない模擬環境水中の栄養塩濃度を上げることにより、こまで得られた藻体量が得られる可能性がある。
【0163】
実施例12
(本培養システムを利用した多種類の微細藻類の培養)
種々の機能性膜を利用し、海洋微細藻類を内封し培養を行い、封入した微細藻類が効率的に培養できる機能性膜の選定を、以下の実験例において調べた。
【0164】
恒温水槽(36LcmX26WcmX15H アクリル製)に模擬環境水として海水培地(硝酸ナトリウム400mg/L、リン酸水素二ナトリウム 1.4mg/l、リン酸二水素カリウム 5mg/L、塩化アンモニウム68mg/L、ビタミンB12 1.5μg/L、ビオチン 1.5μg/L、チアミン 0.2mg/L、トレースエレメント:ホウ酸2.86g/L、塩化マンガン(II) 四水和物 0.18g/L、硫酸亜鉛 七水和物222mg/L、モリブデン酸(VI) 二ナトリウム 7.2mg/L、硫酸銅(II) 五水和物 24mg/L、硫酸コバルト 六水和物 14mg/L、亜セレン酸 五水和物 1.6mg/L pH7.9を合成人工海水(富田製薬)10L加え、25℃の温度に温調機によって設定した。海洋微細藻類の生育に必要な光源は、蛍光灯(昼色光)を用い、2000lux(40uE/m2/s)の光を供給した。恒温水槽中のも模擬環境水は、絶えず温調器を用いて攪拌した。
【0165】
今回の実験で用いた海洋微細藻類は、我々が日本近海の海水から分離したChlorella sp.、Synechococcus sp.、Chlamydomonas sp.、Nannochloris sp.、Nanochlorum sp.、Isochrysis sp. Porphyridium sp.、Chlorococcum sp.、Pavlova sp.を用いた。
【0166】
Hymec膜(商標、PVA膜、メビオール(株)製、厚さ25μm) を縦17cm、横8cm程度に切り取り、内寸が縦10cm、横6cmになるようにシーラーを用いて各辺3箇所をシールした。
【0167】
クリーンベンチ内で、30mlの純水(121℃、10分間オートクレーブ滅菌済)を、袋状Hymec膜に加え、それぞれ株を2.0x10^6 cells/mlになるように植菌した。開放していた1箇所は植菌後、クリーンベンチ内でシーラーを用いてできるだけ空気を排除した形で密封した。
【0168】
Chlorella sp.、Synechococcus sp.、Chlamydomonas sp.、Nannochloris sp.、Nanochlorum sp.、Isochrysis sp.、Porphyridium sp.、Chlorococcum sp.、Pavlova sp.のそれぞれの株を袋の中に密封した袋状Hymec膜は、2000luxの光照射、25℃でコントロールされた水槽中に浸漬し培養を開始した。
【0169】
(結果)
(1)Hymec膜内に封入したそれぞれの株の生育を培養開始6目後に評価した結果、Synechococcus sp. において生育が確認された(図26)。それ以外についてもChlorella sp.、Chlamydomonas sp.、Nannochloris sp.、Nanochlorum sp.、Chlorococcum sp.、Porphyridium sp.について生育が確認された。しかし、Isochrysis sp.及びPavlova sp.については、生育が確認されなかった(表13)。
【0170】
【表13】
【0171】
(2)培養期間中、水槽には多くの細菌の増殖が観察されたが、袋状Hymec膜の中で生育するChlorella sp.、Chlamydomonas sp.、Nannochloris sp.、Nanochlorum sp.、Chlorococcum sp.、Porphyridium sp.、Synechococcus sp.の培養液中では雑菌の汚染は確認されなかった。
【0172】
(3)また、6日後の模擬環境水中のpHが8.4程度であったが、袋状Hymec膜の培養液は、8.7程度まで上昇した。pHの上昇は生育に影響を与える程度ではなかった。
(4)一方で、対照実験として用いた震倒培養の条件では6日目において、すべて袋状Hymec膜を用いた場合よりも低い値となった。
【0173】
(5)これらの結果から、袋状Hymec膜を用いた培養方法が従来の培養方法に比べ、高い藻体生産性を示した。
(6)このことから、海洋性微細藻類についても袋状Hymec膜を用いることが可能であり、海などの環境水面を利用することも可能であることが示された。
【0174】
実施例13
(OPP膜との比較)
実施例12のSynechocystis sp. PCC6803株の袋状Hymec膜の実験方法と同じとした。膜サイズ、培地、細胞数、評価などはすべて同じ条件とした。OPP膜としては花等をラッピングするためのOPPフィルムを用いた。
【0175】
(結果)
(1)袋状Hymec膜と透明高分子膜であるOPP膜を用いたSynechocystis sp. PCC6803株の生育比較を行った結果、袋状Hymec膜ではSynechocystis sp. PCC6803株の良好な生育が確認されたがOPP膜では生育が確認できなかった(図26)。このことは、OPP膜では環境水より栄養塩の流入が起こっていないことが示唆された。
(2)このことから、透明高分子膜であるOPP膜は本システムに適用できないことが示された。
【0176】
(3)また、栄養塩と伴に内封した場合においてもOPP膜では生育が確認されなかった(図28)。これは、気密性が高いため生育に必要な溶存酸素不足などにより生育阻害が引き起こされたものと考えられた。
【0177】
実施例14
(UV照射前後の引張り強さ/引張り破断伸びの測定)
引張り強さ/引張り破断伸びは、下記の条件で測定した。
測定用試料の調製法:試料を打抜き型で10mm×100mmの短冊状のものを作製し、試験片とした。
【0178】
使用機器:テンシロンUCT−5T型(エー・アンド・デイ社製)
試験条件:掴み具間距離:50mm、試験速度:100mm/min
測定雰囲気:室温23℃、湿度50%で実施
【0179】
(UV照射法等)
上記の試料について、それぞれUV照射前の引張り強さ/引張り破断伸びを測定した後、該試料をUV照射容器内に配置し、下記の条件で試料にUV(波長:253.7nm)を照射した。その後、該試料について、それぞれUV照射後の引張り強さ/引張り破断伸びを測定して、UV照射前後の引張り強さの比(Tb/Ta)、および引張り破断伸びの比(Lb/La)を求めた。
【0180】
(UV照射条件)
2種類のフィルム、PVA(商品名;ビニロンNP#25;厚さ25μm)、セロファン(商品名;PL#500;厚さ35μm)を縦100mm、横60mmの大きさに裁断し、1枚ずつクリーンベンチ内に放置して、殺菌ランプによりUV照射した。この殺菌ランプとしては、GL−15(波長が253.7nmの短波長紫外線;National社製)を使用し、殺菌ランプからフィルムまでの距離は50cmとし、殺菌ランプの照射時間は264hr(11日間)とした。
このようなUV照射後に、フィルムを取り出して、上記の強度試験を実施した。
得られた結果を、下記の表14に示す。
【0181】
【表14】
【0182】
上記表14に示したように、引張り強さの減耗率(Tb/Ta)ではセロファン130%、PVA121%であった。引張り破断伸びの減耗率(Lb/La)ではセロファン78%、PVA70%であった。従って、UV照射に対する耐性はセロファン・PVAで強いことが判明した。
【0183】
実施例15
(セルロース産生微生物によるフィルムの劣化実験)
三角フラスコ(1000ml)に培養液(ペプトン 5g、酵母エキス(Yeast Extract)5g、グルコース 5g、マンニトール 5g、MgSO4・7H2O 1g、エタノール 5ml、蒸留水 1L、pH7.0)を500ml入れ、セルロース産生微生物(Gluconoacetobacter sp.NBRC14816)を5ml植菌後、振盪恒温槽(28℃ 150rpm)で3日間前培養した。
【0184】
上記培養後、実施例14で用いたものと同様の2種類のフィルム(PVA、セロファン)を、それぞれ強度試験を行った後に、縦100mm、横60mmの大きさに裁断し、1枚ずつそれぞれ培養液が入った三角フラスコに浸漬した。この際の植菌状況の例を、図28の写真に示す。
【0185】
上記したフィルム浸漬後、振盪恒温槽(28℃、150rpm)で14日間培養した。この際の培養状況の例を、図29の写真に示す。該14日間培養後、次亜塩素酸ナトリウムで洗浄した。その後、滅菌水に浸漬し、次いで強度試験を実施した。
【0186】
(フィルムの強度試験)
試料の付着水分を拭い、打抜き型で10mm×100mmの短冊状のものを作製し、試験片とした。測定条件は、以下の通りとした。
使用機器:テンシロンUCT−5T型(エー・アンド・デイ社製)
試験条件:掴み具間距離:50mm、試験速度:100mm/min
測定雰囲気:室温23℃、湿度50%
得られた結果を、下記表15に示す。
【0187】
【表15】
【0188】
上記の表15に示すように、引張り強さの減耗率(Td/Tc)ではPVA81%で、セロファンは培養後粉砕状態になっていた。引張り破断伸びの減耗率(Ld/Lc)ではPVA58%で、セロファンは培養後粉砕状態になっていた。
【0189】
従って、セルロース産生微生物(Gluconoacetobacter sp.NBRC14816)に対した耐性は、PVAで最も強く、セロファンは分解されることが判明した。
【0190】
実施例16
(セルロース分解微生物によるフィルムの劣化実験)
三角フラスコ(1000ml)に培養液(ペプトン 5g、酵母エキス 3g、MgSO4・7H2O 1g、蒸留水 1L、pH7.0)を500ml入れ、セルロース分解微生物(Streptomyces sp.NBRC10117)を5ml植菌後、振盪恒温槽(28℃ 150rpm)で3日間前培養した。
【0191】
上記の培養、実施例14で用いたものと同様の2種類のフィルム(PVA、セロファン)を、それぞれ強度試験を行った後に、縦100mm、横60mmの大きさに裁断し、1枚ずつそれぞれ培養液が入った三角フラスコに浸漬した。この際の植菌状況の例を、図30の写真に示す。
【0192】
上記したフィルム浸漬後、振盪恒温槽(28℃、150rpm)で14日間培養した。この際の培養状況の例を、図31の写真に示す。該14日間培養後、次亜塩素酸ナトリウムで洗浄した。その後、滅菌水に浸漬し、次いで強度試験を実施した。
【0193】
(フィルムの強度試験)
試料の付着水分を拭い、打抜き型で10mm×100mmの短冊状のものを作製し、試験片とした。測定条件は、実施例15と同様とした。
得られた結果を、下記表16に示す。
【0194】
【表16】
【0195】
上記の表16に示すように、引張り強さの減耗率(Tf/Te)ではPVA94%、セロファン66%であった。また、引張り破断伸びの減耗率(Lf/Le)ではPVA73%、セロファン72%であった。従って、セルロース分解微生物(Streptomyces sp.NBRC10117)に対した耐性は、PVAで最も強いことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】本発明の培養器具の一態様を示す模式断面図である。
【図2】本発明の原理を示す模式斜視図である。
【図3】本発明の培養器具の他の態様を示す模式断面図である。
【図4】本発明の培養器具の他の態様を示す模式平面図である。
【図5】本発明において用いるフィルム特性(水−塩水接触)測定を説明するための模式断面図である。
【図6】本発明において用いるフィルム特性(水−塩水接触)測定結果の例を示すグラフである。
【図7】アンモニア性窒素のフィルム透過性を表すグラフである。
【図8】硝酸性窒素のフィルム透過性を表すグラフである。
【図9】りん酸のフィルム透過性を表すグラフである。
【図10】カリウムのフィルム透過性を表すグラフである。
【図11】カルシウムのフィルム透過性を表すグラフである。
【図12】マグネシウムのフィルム透過性を表すグラフである。
【図13】硫黄のフィルム透過性を表すグラフである。
【図14】種々の厚みのPVAフィルムの0.5%塩水透過性を示すグラフである。
【図15】PVA膜内で生育したシアノバクテリウムを示す写真である((A):培養前、(B)培養後)。
【図16】実施例で用いた実際の培養系の一例を示す写真である。
【図17】培養系における雑菌の増殖状態の一例を示す写真である。
【図18】純水中におけるシアノバクテリウムの増殖状態の例を示す写真である。
【図19】特定の表面積比におけるシアノバクテリウムの増殖状態の例を示す写真である。
【図20】他の表面積比におけるシアノバクテリウムの増殖状態の例を示す写真である。
【図21】他の表面積比におけるシアノバクテリウムの増殖状態の例を示す写真である。
【図22】他の表面積比におけるシアノバクテリウムの増殖状態の例を示す写真である。
【図23】他の表面積比におけるシアノバクテリウムの増殖状態の例を示す写真である。
【図24】他の表面積比におけるシアノバクテリウムの増殖状態の例を示す写真である。
【図25】海水基調培地を使用した場合の微細藻類の生育状態を示す写真である。
【図26】PVA膜およびOPP膜を使用した場合の微細藻類の生育状態を示す写真である。
【図27】栄養塩を内部に含ませたOPP膜を使用した場合の微細藻類の生育状態を示す写真である。
【図28】実施例15における植菌状況の一例を示す写真である。
【図29】実施例15における14日間の培養状況の一例を示す写真である。
【図30】実施例16における植菌状況の一例を示す写真である。
【図31】実施例16における14日間の培養状況の一例を示す写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細藻類を培養するための培養器具および培養方法に関する。本発明は、特に、簡便な構成で、微細藻類を大量に培養することが容易であるという利点を有する。
【背景技術】
【0002】
微細藻類は、無機塩と太陽エネルギーとCO2から光合成を利用して種々の有用物質を生産することができる。実際に、有用物質を生産する微細藻類として、クロレラやスピルリナ、ドナリエラ等を古くから我々は培養し利用してきた。太陽エネルギーとCO2から有用物質を生産することができる微細藻類は、今後も医薬、食料、生理活性物質、環境浄化等種々の分野に応用できる微生物の1つとして注目されている。
【0003】
光合成微生物、特に微細藻類の生産プロセスは、これまで多くの努力が払われ種々の種類の生産プロセスが提案されてきた。微細藻類の生産方法には、基本的に開放、封鎖系の二つに分けられ、微細藻類の種類や特徴により選択されている(非特許文献1)。
【0004】
従来の培養系では、開放系では簡単な自然池を利用したものや、レースウェイ等の人工池を利用した生産プロセスが採られている。また、封鎖系ではフォトバイオリアクターが開発されチューブ型、フラットパネル型、タンク型、ドーム型等種々のタイプのバイオリアクターが設計、利用されている。しかし、これらの生産プロセスは、生産(培養)条件とともに、立地条件(面積、日照時間、気候)等が重要な要素となる。
【0005】
従来の各々の微細藻類の生産(培養)方法には、それぞれ長所、短所があり、開放系の場合では雑菌の混入(コンタミネーション)、培養条件が不安定(日照、環境変化)の影響が大きく、商業的に生産されているのは、クロレラやスピルリナ等の高塩濃度、高pH下等の特殊環境中で生育することができる藻種に限られている。このため、付加価値の高い物質を生産することが見出されても、開放系では価値の高い微細藻類の培養は行えないのが現状である。
【0006】
また、これらの特殊な環境中でさえも、開放系の場合では雑菌汚染が避けられず、品質が一定でないという問題が指摘されている。
【0007】
他方、封鎖系の培養システムでは、雑菌汚染の排除、培養条件の均一化により高い生産性を維持することが可能であるが、スケールアップや高価な光導入型のバイオリアクターが必要となり容積当りのコストが高いという欠点がある。
【0008】
微細藻類の生産では、広大な受光面積を必要とするため広大な土地が必要となる。しかし、今後新たに微細藻類を生産するのに必要な土地を準備することは、日本においては難しいと考えられる。
【0009】
海洋表面やダム、湖沼等の環境水面は光が充分にあり、微細藻類の生育に必要な栄養塩も存在しており、このような環境水面を用いて微細藻類を用いた物質生産が行うことができれば、未利用な地域の有効利用もでき、更に微細藻類による窒素、リン、CO2の除去も行え(富栄養化対策)、大きな利点となると予想される。
【0010】
上記した従来技術の現状を纏めれば、以下の通りである。
(1)従来の微細藻類の生産システムでは、開放系を利用した大規模大量培養プロセスが利用されている。しかしながら、これらは、雑菌汚染に強い微細藻類のみしか生産できていないのが現状である。また、汚染に強い微細藻類でも、しばしば雑菌に汚染され品質が一定にならないといった問題も挙げられる。
【0011】
(2)更に、これら以外の利用価値の高い微細藻類は、雑菌汚染で生育困難となることから、生産できていない。一方で、封鎖系では、培養条件のコントロールは比較的容易に行えるが、スケールアップが困難で、全体的にコスト高である。
【0012】
(3)商業生産では、非常に広大な面積を必要とする。このような非常に広大な面積は、日本のような国土が狭い国では、非現実的な広さである。
【0013】
【非特許文献1】Borowitzka MA(1999) Comercial production of microalgae: ponds, tanks, tubes and fermenters., J. Biotechnology、vol.70,第313−321頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消することができる微細藻類培養器具を提供することにある。
【0015】
本発明の目的は、簡便な構成で、しかも大量生産が容易な微細藻類培養器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は鋭意研究の結果、無孔性親水性フィルムを利用して、培養すべき藻類が存在する環境と、養分が存在する外部の環境とを隔てつつ培養を行うことが、上記目的の達成のために極めて効果的なことを見出した。
【0017】
本発明の微細藻類培養器具は上記知見に基づくものであり、より詳しくは、培養すべき微細藻類、および該藻類を分散させるための液体を、その内部に保持可能な形状を有するリザーバを含む微細藻類培養器具であって;且つ、前記リザーバの少なくとも一部が、養分透過性を有する無孔性親水性フィルムから構成されることを特徴とするものである。
【0018】
本発明によれば、更に、培養すべき微細藻類、および該藻類を分散させるための液体を、その内部に保持可能な形状を有するリザーバを含み;且つ、前記リザーバの少なくとも一部が、養分透過性を有する無孔性親水性フィルムから構成される微細藻類培養器具を用い;該リザーバ内に、培養すべき微細藻類および液体を配置し;栄養源を有する外部水性環境に該リザーバの外部を接触させつつ、リザーバに光を照射することにより、前記微細藻類を培養することを特徴とする微細藻類培養方法が提供される。
【0019】
上記構成を有する本発明によれば、微細藻類が存在する器具内部の環境と、該器具の外部環境とを無孔性親水性フィルムによって好適に隔てることができるため、外部環境中に存在する栄養分を選択的に器具内部の微細藻類に摂取させることが可能となる。本発明においては、実質的に栄養分(特に栄養塩)を選択的に微細藻類が外部環境から摂取できるため、器具内部における雑菌の汚染のリスクを著しく軽減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、例えば、以下の効果を得ることができる。
(1)培養器具内部における雑菌汚染を著しく抑制した状態で、該器具の外部に存在する環境水から栄養塩を、培養器具内部に配置した微細藻類に摂取させつつ、該微細藻類を培養できる。
【0021】
(2)無孔性親水性フィルムを含むフィルムを使用するため、該フィルム表面からの水分の蒸発による吸熱に基づき、フィルム内に配置された内容物の温度上昇を、低コスト且つ効率的に抑制することができる。このような培養中の温度上昇は、培養すべき藻類に悪影響を及ぼす可能性があるため、このような昇温防止効果は、実際の培養においては、極めて重要である。
【0022】
(3)したがって、例えば、環境水面上に、微細藻類を内包する本発明の培養器具を配置することにより、微細藻類の生育に必要な窒素、リン等の栄養塩を外部環境から選択的に供給でき、環境水中で効率的に培養を行うことができる。他方、外部環境においては、いわゆる環境の富栄養化を防止することができる。
【0023】
(4)例えば、微細藻類に必要な栄養塩や太陽エネルギーが豊富に存在しているが、従来は未利用地域であった広大な面積を有する環境水面(湖沼やダム等の貯水池、海洋表層等)上において、効率的に微細藻類を培養することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0025】
(微細藻類培養器具)
本発明の微細藻類培養器具は、培養すべき微細藻類、および該藻類を分散させるための液体を、その内部に保持可能な形状としたフィルムを、少なくとも一部に含む。本発明においては、該フィルムとして、養分透過性を有する無孔性親水性フィルムを用いる。
(微細藻類)
微細藻類は、淡水、海水に分布しており、光エネルギー、CO2、N.Pなどの無機塩を利用して光合成を行い、酸素を発生させながら生育することができる、大きさが0.数μm〜数十μm程度の微生物である。これらの微生物は細胞内にクロロフィル、カロチテイド色素を有しており、これらの色素を利用して光合成を行なう。また、これらの微生物は一般に、植物プランクトンと呼ばれており、食物連鎖の底辺を担う重要な微生物群である。微細藻類は、11の植物門に分かれており、クロレラやヘマトコッカスなどの緑色植物門、スピルリナなどの藍色植物門などに分類される。なお、微細藻類の詳細な情報については、千原光雄編「藻類多様性の生物学」を参照することができる。
【0026】
また、微細藻類は光エネルギーとCO2から様々な有用物質を生産可能なことが知られている利用価値の高い微生物の1つでもある。微細藻類は、光とN.Pを含む無機塩を利用して有用脂肪酸や抗酸化物質などの生理活性物質、また大気中のCO2を固定化する能力を有している。
【0027】
通常これら微細藻類は、滅菌した三角フラスコなどに人工の培地を加え、空気通気(CO2含)、攪拌、蛍光灯などにより2000〜15000luxの光を供給しながら培養することができる。光強度などは、微細藻類の種類によって要求する強度が異なることから、微細藻類の種類で選択することが好ましい。
【0028】
また、整地することや攪拌しながらの震倒培養でも培養できる。生育は約2週間程度で定常期に達する。
【0029】
利用価値の高い微細藻類は、屋外や封鎖型のバイオリアクターで大規模大量生産されている。屋外での大量生産は、開放型で太陽エネルギーの豊富な地域で行なわれている。ポンド型やレースウェイ型の培養では、太陽エネルギーが底まで届くように培養液が約10〜15cmの厚さで、パドルなどで攪拌されている。pHや温度、光、コンタミネーションなどの微細藻類の生育に必要な重要なファクターについては、コントロールすることが出来ない。最も生育に影響がある光の強度などは、のそのため、それらの変化に強い微細藻類が選定されてきた。
一方で、封鎖型のバイオリアクターでは、通気量(CO2供給量)、光、攪拌、コンタミネーションなどのファクターをコントロールすることができ、効率の高い培養が行える。単位体積当りに対する生産性を高めることができるが、コスト高になり易い傾向がある。
【0030】
(培養器具の一態様)
本発明の培養器具の一態様を、図1の模式断面図に示す。図1を参照して、この態様においては、培養器具1は、培養すべき微細藻類2、および該藻類を分散させるための液体3を保持可能なリザーバ(「袋」形状を有するフィルム4)から構成される。該フィルム4は、養分透過性を有する無孔性親水性ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール(PVA))からなるフィルムである。
【0031】
(リザーバ)
本発明の培養器具を構成するリザーバは、培養すべき微細藻類、および該藻類を分散させるための液体を、その内部に保持可能であり、且つ、その少なくとも一部として、養分透過性を有する無孔性親水性フィルムを含む限り、その材質、形状、容量等は特に制限されない。
【0032】
(リザーバの構成)
本発明において、リザーバは、その少なくとも一部として無孔性親水性フィルムを含むものであればよい。すなわち、リザーバの全体が、該無孔性親水性フィルムから構成されていてもよく、また、リザーバの一部が、無孔性親水性フィルムから構成されていてもよい。
【0033】
「リザーバ」における無孔性親水性フィルム以外の要素の構成、形状等は任意である。すなわち、リザーバの他の部分は、不透性のポリエステル・フィルムで構成されていてもよく、また後述する補強部材で構成されていてもよい。
【0034】
(リザーバの形状等)
上記リザーバは、フレキシブルな容器の形状を有していてもよく、また比較的にリジッドな容器の形状を有していてもよい。このような「容器」の形状としては、例えば、袋状、筒状、チューブ状、およびフラットパネル状からなる群から選ばれる形状が挙げられる。
【0035】
(補強部材)
必要に応じて、上記リザーバ内側または外側に、更に他の補強材料が配置されていてもよい。このような補強部材としては、例えば、スプリング状、「さん」状、箱枠状の部材が挙げられる。例えば、このような補強部材に、該フィルムを「貼った」形状としてリザーバを構成してもよい(このような態様においては、例えば、フィルムが障子紙で、補強部材が、その障子紙の形状を支える「さん」のような状態となる)。
【0036】
(フィルム)
本発明者らの知見によれば、本発明において、微細藻類培養器具1のリザーバを構成するフィルム4としては、以下のような水分透過性/イオン透過性のバランスを有するフィルムが好ましいことが見出されている。本発明者らの知見によれば、このような水分/イオン透過性のバランスを有するフィルムにおいては、微細藻類の培養に好適な水分/養分透過性のバランスが容易に実現できるためと推定される。本発明において、微細藻類はフィルムを通して養分をイオンとして吸収するが、このようなフィルムの塩類(イオン)透過性が、微細藻類に与えられる養分の量に影響すると推定される。該フィルムを介して水と塩水を対向して接触させた際に、下記に示す測定開始4日後の水/塩水の電気伝導度(EC)の差が4.5dS/m以下のイオン透過性を有するフィルムを好適に用いることができる。このようなフィルムを用いた際には、微細藻類に対する好適な水あるいは養液を供給することが容易となる。
【0037】
(耐水圧)
本発明における使用すべきフィルム4は、耐水圧として10cm以上の水不透性を有することが好ましい。このようなフィルムを用いた際には、該フィルムを介しての雑菌汚染を防止することが容易となる。
【0038】
耐水圧はJIS L1092(B法)に準じた方法によって測定することができる。本発明のフィルムの耐水圧としては、10cm以上が好ましく、更には20cm以上(特に30cm以上)であることが好ましい。
【0039】
(光線透過率)
光線透過率はJIS K7105(A法)により測定することができる。本発明の光線透過率としては65%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上である。
【0040】
(クロロフィル吸収波長域の透過性)
本発明においては、人工光および天然光のいずれも使用可能である。これらの光には、それぞれ一長一短がある。すなわち、人工光は、培養すべき藻類に適した種類の光の選択が容易であるが、培養スペース、コスト、省エネルギーの点では不利である。他方、天然光は、培養スペース、コスト、省エネルギーの点では有利であるが、培養すべき藻類に適した種類の光の選択の点では不利である。
【0041】
(人工光に適したフィルム)
本発明において、人工光を用いて培養する態様においては、下記のような特性を有するフィルムを使用することが好ましい。あるいは又、有害紫外線領域をカットするフィルターとの併用も好適に実施可能である。
【0042】
(UV照射に対する耐久性)
本発明において、藻類培養時ないしは培養後におけるリザーバの劣化ないし破損を効果的に防止する点からは、該リザーバを構成するフィルムは、下記のようなUV照射に対する耐久性を有することが好ましい。
【0043】
これらのUV照射前後の引張り強さ、およびUV照射前後の引張り破断伸びは、以下の方法で好適に測定することができる。
【0044】
<UV照射前後の引張り強さ/引張り破断伸びの測定方法>
引張り強さ/引張り破断伸びは、下記の条件で測定する。
使用機器:テンシロンUCT−5T型(エー・アンド・デイ社製)
試験条件:掴み具間距離:50mm、試験速度:100mm/min
測定雰囲気:室温23℃、湿度50%で実施
【0045】
(UV照射法等)
上記の試料について、それぞれUV照射前の引張り強さ/引張り破断伸びを測定した後、後述する実施例14の条件で試料にUV(波長:253.7nm)を照射する。その後、該試料について、それぞれUV照射後の引張り強さ/引張り破断伸びを測定する。
(セルロース産生/分解微生物に対する耐久性)
本発明において、藻類培養時ないしは培養後におけるリザーバの劣化ないし破損を効果的に防止する点からは、該リザーバを構成するフィルムは、下記のようなセルロース産生/分解微生物に対する耐久性を有することが好ましい。
【0046】
これらの微生物暴露前後の引張り強さ、および微生物暴露前後の引張り破断伸びは、「UV照射」で上述した方法により、好適に測定することができる。
【0047】
(微生物暴露法等)
上記の試料について、それぞれ微生物暴露前の引張り強さ/引張り破断伸びを測定した後、該試料を微生物暴露容器内に配置し、セルロース産生微生物については、後述する実施例15の条件で微生物暴露を行い、セルロース分解微生物については、後述する実施例16の条件で微生物暴露を行う。
【0048】
(水分/イオン透過性)
本発明においては、上記フィルム4は、該フィルムを介して水と塩水(0.5質量%)とを対向して接触させた際に、測定開始4日後の水/塩水の栽培温度において測定した電気伝導度(EC)の差が4.5dS/m以下であることが好ましい。この電気伝導度の差は、更には3.5dS/m以下であることが好ましい。特に、2.0dS/m以下であることが好ましい。この電気伝導度の差は、以下のようにして測定することが好ましい。
【0049】
<実験器具等>
なお、本明細書の以降の部分(実施例も含む)において用いた実験器具、装置および材料は、(特に指定がない限り)後述する「実施例」の前の部分に示した通りである。
【0050】
<電気伝導度の測定方法>
養分は、通常イオンの形で吸収されるため、液中に溶けている塩類(あるいはイオン)量を把握することが望ましい。このイオン濃度を測定する手段として電気伝導度(EC、イーシー)を用いる。ECは比導電率ともいい、断面積1cm2の電極2枚を1cmの距離に離したときの電気伝導度の値を使用する。単位はシーメンス(S)が使われ、S/cmとなるが肥料養液のECは小さいので、1/1000のmS/cmを使う(国際単位系ではdS/m(dはデシ)と表示する)。
【0051】
実際の測定においては、上記した電気伝導度の測定部位(センサー部)にスポイトを用いて試料(例えば溶液)を少量乗せ、導電率を測定することができる。
【0052】
<フィルムの塩/水の透過試験>
市販の食塩(例えば、後述する「伯方の塩」)10gを水2000mlに溶解して、0.5%塩水を作製する(EC:約9dS/m)。
【0053】
図5を参照して、「ざるボウルセット」を使い、ざる上に試験すべきフィルム(サイズ:200〜260×200〜260mm)を乗せ、該フィルム上に水150gを加える。他方、ボウル側に上記の塩水150gを加え、得られた系全体を食品用ラップ(ポリ塩化ビニリデンフィルム、商品名:サランラップ、旭化成社製)で包んで、水分の蒸発を防ぐ。この状態で、常温で放置して、24hrs毎に水側、塩水側のECを測定する。
【0054】
(フィルム材料)
上述した「水と塩水とを対向して接触させた際に、測定開始後4日目(96時間)の水/塩水の電気伝導度(EC)の差が4.5dS/m以下である」性質を満足する限り、本発明において、使用可能なフィルム材料は、特に制限されず、公知の材料から適宜選択して使用することが可能である。このような材料は、通常フィルムないし膜の形態で用いることができる。
【0055】
より具体的には、このようなフィルム材料としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、セロファン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、エチルセルロース、ポリエステル等の親水性材料が使用可能である。
【0056】
上記フィルムの厚さも特に制限されないが、通常は、300μm以下程度、更には200〜5μm程度、特に100〜10μm程度であることが好ましい。
【0057】
必要に応じて、上記フィルム4は他の材料と複合化(例えば、ラミネート化)してもよい。このような複合化は、例えば、フィルムの強度維持の点から好ましい。上記した「他の材料」としては、本発明におけるフィルム4の効果を実質的に妨害しない限り特に制限されない。通常の多孔質材料(例えば、不織布)、透水性および/又はイオン透過性材料等をフィルム4に配置しても、本発明におけるフィルム4の効果が実質的に妨害されない場合が多い。
【0058】
本発明のフィルム4の強度補強、取り扱い易さおよび形状保持性の向上の目的で、必要に応じて、「他の材料」と複合化する場合、このような「他の材料」としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロース等から成る不織布および連通孔を有するスポンジ等が挙げられる。該複合化の手法としては、例えば、貼り合せ、二重容器等が挙げられる。
【0059】
更には、フィルム4の機械的強度を考慮して、該フィルム4の外側を、水透過性を有する他の材料でカバーしてもよい。該「他の材料」とフィルム4とは接触(一部接触を含む)していてもよく、また必要に応じて、互いに間隙をおいて配置してもよい。このような材料としては、例えば、金属、プラスチック、セラミック、木材等の比較的堅い材料が挙げられる。
【0060】
(フィルム強度とイオン透過性の関係)
一般に、フィルムの厚さが大きくなるにつれてフィルムの強度は増加するが、養液の透過性は減少する傾向にあると考えられる。本発明の培養器具では、微細藻類培養を長期にわたりフィルムを用いて行うので、フィルムの長期耐久性(例えば、破れ難さ)は高い方が好ましい。フィルムの耐久性を上げる方法は、例えば、組成や延伸等の加工方法やフィルム種類を変えること、あるいは、同一種類の場合は厚みを増す方法もある。これに対して、フィルム厚みを単に増した場合、イオン透過性が低下する可能性がある。
【0061】
しかしながら、本発明者の知見によれば、例えば、スキン構造を有するフィルムにおいては、厚さが厚くなっても、透過性はあまり低下しない場合があることが見出された。例えばソルベント・キャスティングでは、表面のみが先ず乾燥して緻密な膜(スキン層)を形成するため、スキン構造を有するフィルムが形成される。この場合、スキン構造以外の部分(フィルム内部)は、かなり多孔質のままである。本発明者の知見によれば、「養液の透過」は、緻密なスキン層の透過が律速であり、内部の多孔質部分はあまり影響がない(すなわち、スキン構造の厚さがあまり変化しなければ、フィルムの厚さが大きくなっても、透過性はあまり低下しない)と推定される。例えば、後述するようにPVAフィルムを使用した場合には、厚さが厚くなっても、透過性はあまり低下せず非常に好都合であることが判明している。後述する実施例5に示すように、フィルム強度を上げるために、フィルム厚みを増しても、PVAフィルムの場合には、養液成分のイオン透過性の目安である0.5%塩水透過性が、大きく変化しない利点がある。
【0062】
この実施例5においては、PVAフィルムについて、フィルム厚みを25〜65μmの範囲で変え、0.5%塩水透過性(養分イオンのフィルム透過性の目安となる)の試験結果が示されている。PVAフィルムの場合、フィルム厚みを25〜65μmに変えたとき、殆ど塩水透過性が変化せず、本発明のシステムにおいて、非常に有利であることがわかる。
【0063】
(水分/イオン透過性のフィルム厚み依存性)
本発明においては、上記フィルムは、所定の温度(27±3℃)において、該フィルムを介して水と塩水(0.5質量%)とを対向して接触させた際に、測定開始24時間後の水/塩水の電気伝導度(EC)の差で表現した際の水分/イオン透過性が、特定のフィルム厚み依存性を有することが好ましい。この水分/イオン透過性のフィルム厚み依存性が小さい場合には、(例えば、該フィルムの破損耐性を増大させる観点から)フィルム厚みを増大させたとしても、フィルムの水分/イオン透過性は比較的、低下しないこととなり、フィルムの破損耐性の向上、および水分/イオン透過性の維持の両立を図ることが容易となるからである。
【0064】
より具体的には、27±3℃において、該フィルムを介して水と塩水を対向して接触させた際に、測定開始24時間後の水/塩水の電気伝導度(EC)の差ΔEC24hrs(dS/m)を、フィルム厚み(μm)を横軸にプロットしたグラフの傾きΔEC24hrs(dS/m)/10μm(即ち、厚み10μm当たりのΔEC24hrs変化量)が、0.7以下であることが好ましく、更には0.5以下(特に0.3以下)であることが好ましい。
【0065】
上記のフィルム透過度試験においては、比較的に高い温度(27±3℃)を使用したが、この温度は、本発明に好適に使用可能なフィルムを確認する目的のみに使用するものであって、他の温度条件(例えば、実際の培養時の温度条件)を何ら制限しない。すなわち、本発明においては、例えば、実質的に温度調節を省略することにより、比較的に低温の条件(冬季等)においても、微細藻類を培養することができる。
【0066】
(フィルムの耐久性)
本発明で使用するフィルムは光(太陽光あるいは人工光)の下で長時間曝され、また、自然界に存在する微生物に曝されるので、これらに対するフィルムの耐久性があることが好ましい。実施例6はフィルムの微生物に対する腐食性を試験した結果であるが、ポリビニルアルコールフィルムは微生物によりフィルムが破壊することは無かったが、セロファンフィルムは1週間程度で破壊され、本発明に使用するフィルムとしては適さない。
【0067】
また、実施例7はフィルムの耐候性を試験した結果であるが、ポリビニルアルコールフィルムおよびセロファンフィルムは3ヶ月以上、太陽光に暴露されてもフィルムが破壊することが無かった。従って、フィルムの耐久性の点からは、本発明に使用するフィルムとしてはポリビニルアルコールフィルムが特に好ましい。
【0068】
(フィルムの形状)
その内部に、培養すべき微細藻類、および該藻類を分散させるための液体を保持可能な形状である限り、フィルムの形状は特に制限されない。該形状の例としては、例えば、袋状、筒状、チューブ状、フラットパネル状等が挙げられる。光による藻類の培養においては、フィルムの表面積が重要であるため、例えば、複数本のチューブ状フィルムを配置して培養を行うことが好ましい。
【0069】
(フィルムの補強/保護)
フィルムの補強/保護方法としては、上述したものに加えて、例えば、フィルムの外側に、保護材料を配置することができる。フィルム表面に対する光の供給と、フィルム保護との好適なバランスが得られる限り、該保護材料の材質、形状、サイズ等は特に制限されない。
【0070】
(培養方法)
本発明において、藻類を培養する方法は、上記した本発明の培養器具を使用する限り、特に制限されない。本発明においては、例えば、以下のようにして藻類を培養することができる。
【0071】
すなわち、本発明の一態様としては、その内部に、培養すべき微細藻類および該藻類を分散させるための液体を保持可能な形状としたリザーバ(無孔性親水性フィルムを含む)を用い、該フィルム内に、培養すべき微細藻類および液体を配置した後、栄養源を有する外部水性環境に該フィルムの外部を接触させつつ、フィルムに光を照射することにより、前記微細藻類を培養することができる。
【0072】
(液体の攪拌/循環)
本発明においては、藻類が置かれる環境における養分濃度、温度等の不均一を低減するために、フィルム内部および/又は外部に存在する液体を、攪拌および/又は循環させることが好ましい。このような攪拌および/又は循環の手段は、特に制限されない。
【0073】
(表面積の増大)
本発明の培養において、効率を増大させる点からは、フィルムの表面積を出来る限り増大させることが好ましい。この観点からは、例えば、図4の模式斜視図(チューブ状のフィルムを複数本配置した態様)に示すように、チューブ状のフィルムを並べることにより、フィルムの表面積を増大させることが好ましい。
(本発明培養方法の概念図)
図2は、本発明培養方法の原理の一例を示す模式斜視図(概念図)である。上記したような無孔性親水性フィルム膜を利用することで、本発明においては、微細藻類培養系への雑菌の進入を防ぎ、他方で、外環境から生育に必要な栄養塩を利用(微細藻類培養系へ導入)しながら微生物を培養することができる。
【0074】
(本発明培養器具の他の態様)
図3は、本発明の培養器具をスケールの大きなシステムとする場合の態様の一例を示す模式断面図であり、図4は、このようなシステムの模式平面図である。この態様においては、上記で用いた無孔性親水性フィルムを、チューブ型の形状としている。
【実施例】
【0075】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
以下で用いた実験方法は上述あるいは実施例で記述されたものの他は、以下の通りである。
<実験器具等>
(1)使用器具および装置
1)ざるボールセット:ざるの半径6.4cm(底面の面積約130cm2)
2)上皿電子天秤:Max.1Kg 株式会社タニタ
3)ばね式天秤:Max.500g 株式会社鴨下精衡所
4)電気伝導度計:Twin Cond B−173 株式会社堀場製作所
5)pHメーター:pHパル TRANSInstruments(グンゼ産業)
【0077】
(2)使用材料
1)ポリビニルアルコール(PVA)フィルム:日本合成化学工業(株)
2)二軸延伸PVAフィルム:ボブロン(日本合成化学工業(株))
3)Hymec膜:PVA膜(Hymec(商標)メビオール(株)(本社 神奈川県平塚市 URL;http/www.mebiol.co.jp))
4)セロファン:フタムラ化学(株)
5)不織布:シャレリエ(超極細繊維不織布)旭化成(株)
6)原液ハイポネックス:(株)ハイポネックスジャパン
7)大塚化学養液:大塚ハウス1号、2号(大塚化学(株))の標準処方により調製し、所定濃度のEC値の養液を作製した。
【0078】
9)伯方の塩: 伯方塩業株式会社(100g中ナトリウム37.5g、マグネシウム110mg、カルシウム90mg、カリウム50mg15)
【0079】
実施例1
(塩水透過試験)
前述の<フィルムの塩/水透過試験>方法に従って、各種フィルムの塩水透過試験を行った。フィルムはPVA、ボブロン(二軸延伸PVA)、セロファン、超極細繊維不織布(シャレリア)の4種である。
【0080】
上記実験により得られた結果を、以下の表に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
上記データをグラフ化したものを図6に示す。
(実験結果に対する記述)
超極細繊維不織布は水と共に塩が完全に透過しているが、PVAおよびセロファンも比較的早く塩の透過が進んでいる。ボブロンは塩の透過速度が小さいものの、4日目には塩水系と水系とのEC値の差が4.5以内になっている。
【0083】
実施例2
(耐水圧試験)
JIS L1092(B法)に準じた試験により、200cmH2Oの耐水圧試験を行った。各種フィルムの実験結果は以下の通りである。PVAフィルム(40μm)は 200cmH2O以上、二軸延伸PVA(ボブロン)は 200cmH2O以上、セロファンは 200cmH2O以上、超極細繊維不織布は 0cmH2Oであった。
【0084】
実施例3
(光線透過率の測定)
JIS K7105(A法)により、光線透過率を測定した。PVAフィルム(40μm)は91%、二軸延伸PVA(ボブロン)は91%、セロファン(30μm)は90%であった。
【0085】
実施例4
実施例1と同様にしてざるボールセット(ざるの半径6.4cm、容量130cm3)を用い、ざるに20×20cmのフィルムを乗せ純水を150g加え、ボール側に養液150gを加えて、サランラップで包んだ。サンプリング時間3、6、12、24、36、48、72hrsで計7個の容器を用意し、所定時間経過後100mlずつサンプル容器に採取した。各サンプル中の、主要養分成分の分析を行った。
【0086】
1)透湿フィルム:PVAフィルム25μm
【0087】
2)水:蒸留水(和光純薬工業(株)製)、養液肥料:大塚ハウス1号 1.5g/L、2号 1g/L(大塚化学(株)製)
【0088】
3)分析方法
a)アンモニウムイオン、硝酸イオンおよび硫酸イオン:イオンクロマトグラフ法により分析(分析の詳細に関しては:「水の分析」第4版 日本分析化学会北海道支部編 発行(株)化学同人 1997年7月20日 第3章水の分析に用いられる分析法 3.7.3 イオンクロマトグラフィー(P125〜129)を参照することができる)。
【0089】
b)りん、カリウム、カルシウムおよびマグネシウム:ICP(発光分光分析)法により分析(分析の詳細に関しては:「水の分析」第4版 日本分析化学会北海道支部編 発行(株)化学同人 1997年7月20日 第13章微量汚染物質と関連する分析法 13.10 ICP(P478〜480)を参照することができる)。
【0090】
主要成分のアンモニア性窒素(NH4−N)、硝酸性窒素(NO3−N)、りん酸(P2O5)、カリウム(K2O)、カルシウム(CaO)、マグネシウム(MgO)および硫黄(SO4)について、フィルム透過性の経時変化を表2)〜表8)に、またこれらのデータに対応するグラフを図7〜図13に示す。
【0091】
上記した表およびグラフに示すように、養分のフィルム透過性に関して、養分成分によって透過速度の違いはあるものの、主要成分の窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)および硫黄(S)はすべて透過する。
【0092】
アンモニア性窒素 単位:ppm
【表2】
【0093】
硝酸性窒素 単位:ppm
【表3】
【0094】
りん酸 単位:ppm
【表4】
【0095】
カリウム 単位:ppm
【表5】
【0096】
カルシウム 単位:ppm
【表6】
【0097】
マグネシウム 単位:ppm
【表7】
【0098】
硫黄 単位:ppm
【表8】
【0099】
実施例5
実施例1と同様に、ざるボールセット(ざるの半径6.4cm、容量130cm3)を用い、ざるに20×20cmのフィルムを乗せ水道水を150g加え、ボール側に塩水150gを加えて、サランラップで包み室温に置いた。サンプリング時間毎に、水側(ざる)および塩水側(ボール)の溶液を良く撹拌した後、スポイトでサンプリングし、EC値を測定した。
【0100】
1)透湿フィルム:厚みの異なるPVAフィルムを使用した。
【0101】
PVA #25(25μm)、#40(40μm)、#65(65μm)
【0102】
2)0.5%塩水:水道水に「伯方の塩」を0.5重量%溶解した。
【0103】
伯方の塩:100g中ナトリウム37.5g、マグネシウム110mg、カルシウム90mg、カリウム50mg
【0104】
3)実験方法
電気伝導度計:Twin Cond B−173を用い、スポイトでサンプリングした溶液を電気伝導度計の測定部位に少量乗せ、電気伝導度EC(ds/m)を測定した。
【0105】
実施期間:2003年8月26日〜31日
PVAフィルムの結果を表9および図15に示す。
【0106】
上記の図15から、水側のEC値は増加し、塩水側のEC値は減少し、両者の値が時間と共に同じ値に収束して行くことが判明した。PVAフィルムの場合、フィルム厚み25〜65μmの範囲で、厚みが増しても0.5%塩水透過性は殆ど変わらない。
【0107】
PVA 単位:dS/m
【表9】
【0108】
実施例6
(フィルムの腐食性)
使用するフィルムが天然に存在する微生物により分解するか否かの試験を実施した。
プラスチック製容器(20×12×5.5cm)に水道水700mlを加え、30×22cmの各種フィルムを水面上に乗せる。フィルムの上に、土壌スーパーミックスA((株)サカタのタネ製)170gを乗せ、ルッコラ(オデッセイ、(株)サカタのタネ)の本葉約1枚の幼苗(播種後17日目)を各6本植えつけた。温度21℃、湿度60〜70%、人工光による照度3700〜3800Lxの栽培棚で2005.4.28から5.30まで栽培し、39日目に草丈と本葉数を測定した。
【0109】
使用したフィルムは、No.1:セロファンフィルムPL#500(厚み:35μm)およびPVAフィルム#40(厚み:40μm)である。
【0110】
フィルムの種類と結果は下記の通り。
【表10】
【0111】
実験No.1のセロファンPL#500(厚み:35μm)に関しては再現試験を実施したが同じく1週でフィルムに穴が開いた。
【0112】
実施例7
(フィルムの耐候性)
本発明に使用するフィルムは常に太陽光に曝されるので、使用するフィルムの耐候性を試験した。試験方法は、フィルムサイズ20×25cmを室内の窓辺に置き(2003.9.12〜12.17)外観の変化を観察した。使用したフィルムはポリビニルアルコール(PVA#2500)(25μm)およびセロファン(30μm)である。
【0113】
結果は、ポリビニルアルコールおよびセロファンは3ヶ月後も変化が無かった。
【0114】
実施例8
(培養システムに好適な膜の選択)
(1)種々の機能性膜を利用し、微細藻類を内封し培養を行い、封入した微細藻類が効率的に培養できる機能性膜の選定を、以下の実験例において調べた。
【0115】
(2)恒温水槽(36Lcm×26Wcm×15H アクリル製)に模擬環境水としてBG−11培地(硝酸ナトリウム1.5g/L、リン酸二カリウム 三水和物30mg/L、硫酸マグネシウム 七水和物75mg/L、塩化カルシウム 二水和物36mg/L、クエン酸6mg/L、Na2 EDTA1mg/L、炭酸ナトリウム20mg/L、クエン酸鉄(III) アンモニウム6mg/L、ビタミンB121μg、塩化ナトリウム 30g/L、トレースエレメント:ホウ酸2.86g/L、塩化マンガン(II) 四水和物1.81g/L、硫酸亜鉛 七水和物222mg/L、モリブデン酸(VI) 二ナトリウム390mg/L、硫酸銅(II) 五水和物79mg/L、硫酸コバルト 六水和物49.4mg/L、pH7.4)を10L加え、25℃の温度に温調機によって設定した。微細藻類の生育に必要な光源は、蛍光灯(昼色光)を用い、2000lux(40uE/m2/s)の光を供給した。恒温水槽中のも模擬環境水は、絶えず温調器を用いて攪拌した。
【0116】
(3)今回の実験で用いた微細藻類は、淡水から分離された一般的な藻類であるらん藻、Synechocystis sp. PCC6803株(以下「シアノバクテリウム」と称する)である。
【0117】
(4)用いた機能性膜は、限外ろ過膜、ニトロセルロース膜、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)膜、PVA膜等を使用した。
【0118】
(5)それぞれの機能性膜を一片が閉じられてない透明アクリル板に貼り付けて、密封型のリアクターを作製し、シアノバクテリウムの生育、栄養塩の透過量についてしらべ、本培養システムに適用できる機能性膜の選択を行った。
【0119】
(結果)
(1)栄養塩を含まない純水にシアノバクテリウムを懸濁した溶液を、袋状PVA膜に内封し栄養塩を含む模擬環境水としてBG−11培地中に浸漬し、培養を行った結果、PVA膜を用いた場合良好な生育が確認された(図1)。このことから、PVA膜が培養システムに適用できることが示された。
【0120】
(2)他の機能性膜については、生育が確認されなかった。
【0121】
実施例9
(膜厚の最適化)
(1)まず、PVA膜を袋状に成型し、微細藻類を内封し、種々の条件化で培養を行い、封入した微細藻類が効率的に生育すること条件等を、以下の実験例において調べた。
【0122】
(2)恒温水槽(36Lcm×26Wcm×15H アクリル製)に模擬環境水としてBG−11培地(硝酸ナトリウム1.5g/L、リン酸二カリウム 三水和物30mg/L、硫酸マグネシウム 七水和物75mg/L、塩化カルシウム 二水和物36mg/L、クエン酸6mg/L、Na2 EDTA1mg/L、炭酸ナトリウム20mg/L、クエン酸鉄(III) アンモニウム6mg/L、ビタミンB121μg、塩化ナトリウム 30g/L、トレースエレメント:ホウ酸2.86g/L、塩化マンガン(II) 四水和物1.81g/L、硫酸亜鉛 七水和物222mg/L、モリブデン酸(VI) 二ナトリウム390mg/L、硫酸銅(II) 五水和物79mg/L、硫酸コバルト 六水和物49.4mg/L、pH7.4)を10L加え、25℃の温度に温調機によって設定した。微細藻類の生育に必要な光源は、蛍光灯(昼色光)を用い、2000lux(40uE/m2/s)の光を供給した。恒温水槽中のも模擬環境水は、絶えず温調器を用いて攪拌した。
【0123】
(3)今回の実験で用いた微細藻類は、淡水から分離された一般的な藻類であるシアノバクテリウムである。
【0124】
(4)3種類の膜厚を有するPVA膜(25μm、40μm、65μm)を縦17cm、横8cm程度に切り取り、内寸が縦10cm、横6cmになるようにシーラーを用いて各辺3箇所をシールした。
【0125】
(5)クリーンベンチ内で、30mlの純水(121℃、10分間オートクレーブ滅菌済)を、袋状PVA膜に加え、シアノバクテリウムを2.0x10^6 cells/mlになるように植菌した。開放していた1箇所は植菌後、クリーンベンチ内でシーラーを用いてできるだけ空気を排除した形で密封した(図1)。
【0126】
(6)シアノバクテリウムを袋の中に密封した袋状PVA膜は、2000luxの光照射、25℃でコントロールされた水槽中に浸漬し、培養を開始した(図2)。
【0127】
(7)浸漬した袋状PVA膜は、水面付近を浮遊している状態であった。
(8)培養は6日間で行い、培養終了後、封入した純水中で増殖したシアノバクテリウムの細胞数、pH、栄養塩濃度を測定した。培養期間中は、適宜袋状PVA膜を振盪し、内部のシアノバクテリウムを攪拌した。
【0128】
(9)また、100ml三角フラスコに50mlの滅菌したBG−11培地を加えて25℃、2000luxの光照射下で振盪培養(100rpm)したものを対照とした。
【0129】
(10)実験に用いたシアノバクテリウムは、すべて100ml三角フラスコに50mlの滅菌したBG−11培地を加えて25℃、2000luxの光照射下で1週間程度、振盪培養(100rpm)したものを用いた。
【0130】
(結果)
(1)PVA膜内に封入したシアノバクテリウムの生育を培養時間毎において観察した結果、3日目からシアノバクテリウムの生育が目視できるようになった。これは、模擬環境水からのN.P等の栄養塩がPVA膜を介して内部に流入し、それらをシアノバクテリウムが利用して増殖したことを確認した。
【0131】
(2)25μm、40μm、65μmの膜厚で作製した袋状PVA膜を用いて水槽中でのシアノバクテリウムの生育は、すべての条件で生育することが確認された。更に、25μmの厚さで作製した袋状PVA膜が最も高い生育を示し、6日目において2.01x10^8 cells/mlに達した。その他の40μm、65μmでは、1.79x10^8 cells/ml、1.64x10^8 cells/mlであった(表11)。
【0132】
【表11】
【0133】
(3)培養期間中、水槽には多くの細菌の増殖が観察されたが(図3)、袋状PVA膜の中で生育するシアノバクテリウムの培養液中では雑菌の汚染は確認されなかった。
【0134】
(4)また、6日後の模擬環境水中のpHが7.4程度であったが、袋状PVA膜の培養液は、7.7〜10.2程度まで上昇した。pHの上昇は生育に影響を与える程度ではなかった。
【0135】
(5)一方で、対照実験として用いた振盪培養の条件では、6日目において1.59x10^8 cells/mlであった。
【0136】
(6)これらの結果から、袋状PVA膜を用いた培養方法が従来の培養方法に比べ、高い藻体生産性を示した。また、25μmの厚さのPVA膜は、使用後の強度、透明性等についても培養前と変化なかった。
【0137】
実施例10
(表面積/内容積の最適化)
(1)まず、PVA膜を袋状に成型し、袋状PVA膜の表面積と内容積が微細藻類の生育に与える影響を調べ、最適な表面積/内容積比を以下の実験例で調べた。
【0138】
(2)恒温水槽(36Lcm×26Wcm×15H アクリル製)に模擬環境水としてBG−11培地(硝酸ナトリウム1.5g/L、リン酸二カリウム 三水和物30mg/L、硫酸マグネシウム 七水和物75mg/L、塩化カルシウム 二水和物36mg/L、クエン酸6mg/L、Na2 EDTA1mg/L、炭酸ナトリウム20mg/L、クエン酸鉄(III) アンモニウム6mg/L、ビタミンB121μg、塩化ナトリウム 30g/L、トレースエレメント:ホウ酸2.86g/L、塩化マンガン(II) 四水和物1.81g/L、硫酸亜鉛 七水和物222mg/L、モリブデン酸(VI) 二ナトリウム390mg/L、硫酸銅(II) 五水和物79mg/L、硫酸コバルト 六水和物49.4mg/L、pH7.4)を10L加え、25℃の温度に温調機によって設定した。微細藻類の生育に必要な光源は、蛍光灯(昼色光)を用い、2000lux(40uE/m2/s)の光を供給した。恒温水槽中のも模擬環境水は、絶えず温調器を用いて攪拌した。
【0139】
(3)今回の実験で用いた微細藻類は、淡水から分離された一般的な藻類であるシアノバクテリウムを用いた。
【0140】
(4)袋状PVA膜(cm)と内容積(ml)の比を持つ10:1(120cm2:12ml)、8:1(120cm2:15ml)、6:1(120cm2:20ml)、4:1(120cm2:30ml)、2:1(120cm2:60ml)、1:1(480cm2:500ml)の6種類の袋状PVA膜を作成した。内寸は、各条件で縦10cm、横6cm(60cm2)になるようにシーラーを用いて各辺3箇所をシールした。受光面積は、袋状PVA膜が浮遊しているため、上面、下面の2方向から光が当たると考え倍の面積とした。
【0141】
(5)クリーンベンチ内で、30mlの純水(121℃、10分間オートクレーブ滅菌済)を、袋状PVA膜に加え、シアノバクテリウムを2.0x10^6 cells/mlになるように植菌した。開放していた1箇所は植菌後、クリーンベンチ内でシーラーを用いてできるだけ空気を排除した形で密封した。
【0142】
(6)シアノバクテリウムを袋の中に密封した袋状PVA膜は、2000luxの光照射、25℃でコントロールされた水槽中に浸漬し、培養を開始した。
【0143】
(7)浸漬した袋状PVA膜は、水面付近を浮遊している状態であった。
(8)培養は6日間で行い、培養終了後、封入した純水中で増殖したシアノバクテリウムの細胞数、pH、栄養塩濃度を測定した。培養期間中は、適宜袋状PVA膜を振盪し、内部のシアノバクテリウムを攪拌した。
【0144】
(9)また、100ml三角フラスコに50mlの滅菌したBG−11培地を加えて25℃、2000luxの光照射下で振盪培養(100rpm)したものを対象とした。
【0145】
(10)実験に用いたシアノバクテリウムは、すべて100ml三角フラスコに50mlの滅菌したBG−11培地を加えて25℃、2000luxの光照射下で1週間程度、振盪培養(100rpm)したものをもちいた。
【0146】
(結果)
(1)BG−11に浸漬し6日間の培養で、すべての条件でシアノバクテリウムの生育が確認された(図4、5、6、7、8、9)。その中でも表面積/内容積の比が8:1の条件が最も高い生育を示し、2.40x10^8 cells/mlに達した(表13)。また、10:1以外の条件で、対照条件よりも高い生育を確認した。10:1の条件下で観察された生育不良な原因として、内封した培養液の量が少なくPVA膜同士が接着することで、BG−11からのN.Pの流入効率が低下したためだと考えられた。また、pHについては生育には影響がでない範囲内であった。
【0147】
【表12】
【0148】
(2)このことから、表面積/内容積比が8:1の場合において効率的に培養が行えることが示された。
【0149】
実施例11
(内容積/環境水容積の最適化)
(1)まず、PVA膜を袋状に成型し、微細藻類を内封し、種々の条件化で培養を行い、封入した微細藻類が効率的に生育すること条件等を、以下の実験例において調べた。
【0150】
(2)恒温水槽(36Lcm×26Wcm×15H アクリル製)に模擬環境水としてBG−11培地(硝酸ナトリウム1.5g/L、リン酸二カリウム 三水和物30mg/L、硫酸マグネシウム 七水和物75mg/L、塩化カルシウム 二水和物36mg/L、クエン酸6mg/L、Na2 EDTA1mg/L、炭酸ナトリウム20mg/L、クエン酸鉄(III) アンモニウム6mg/L、ビタミンB121μg、塩化ナトリウム 30g/L、トレースエレメント:ホウ酸2.86g/L、塩化マンガン(II) 四水和物1.81g/L、硫酸亜鉛 七水和物222mg/L、モリブデン酸(VI) 二ナトリウム390mg/L、硫酸銅(II) 五水和物79mg/L、硫酸コバルト 六水和物49.4mg/L、pH7.4)を10L加え、25℃の温度に温調機によって設定した。微細藻類の生育に必要な光源は、蛍光灯(昼色光)を用い、2000lux(40uE/m2/s)の光を供給した。
【0151】
(3)今回の実験で用いた微細藻類は、淡水から分離された一般的な藻類であるシアノバクテリウムを用いた。
【0152】
(4)袋状PVA膜を縦17cm、横8cm程度に切り取り、内寸が縦10cm、横6cmになるようにシーラーを用いて各辺3箇所をシールした。
【0153】
(5)クリーンベンチ内で、15mlの純水(121℃、10分間オートクレーブ滅菌済)を、袋状PVA膜に加え、シアノバクテリウムを2.0x10^6 cells/mlになるように植菌した。開放していた1箇所は植菌後、クリーンベンチ内でシーラーを用いてできるだけ空気を排除した形で密封した。
【0154】
(6)表面積/内容積比8:1の条件下で最も高い藻体濃度が得られることが明らかとなったことから、内容積を15mlに設定し、模擬環境水としてBG−11培地を1L、2L、5Lに変化させた。
【0155】
(7)シアノバクテリウムを袋の中に密封した袋状PVA膜は、2000luxの光照射、25℃でコントロールされた水槽中に浸漬し、培養を開始した。
【0156】
(8)浸漬した袋状PVA膜は、水面付近を浮遊している状態であった。
(9)培養は6日間で行い、培養終了後、封入した純水中で増殖したシアノバクテリウムの細胞数、pH、栄養塩濃度を測定した。培養期間中は、適宜袋状PVA膜を振盪し、内部のシアノバクテリウムを攪拌した。
【0157】
(10)また、100ml三角フラスコに50mlの滅菌したBG−11培地を加えて25℃、2000luxの光照射下で振盪培養(100rpm)したものを対照とした。
【0158】
(11)実験に用いたシアノバクテリウムは、すべて100ml三角フラスコに50mlの滅菌したBG−11培地を加えて25℃、2000luxの光照射下で1週間程度、振盪培養(100rpm)したものを用いた。
【0159】
(結果)
(1)環境水の攪拌を伴わない条件下で培養を行った結果、表面積/内容積8:1を利用した場合、模擬環境水量が増加するにつれて生育量が増加し、10Lの模擬環境水を使用した場合が最も高い生育を示した。各1L、5Lにおいてもシアノバクテリウムの生育は確認されたが、環境水量が少なくなるにつれ、生育量が低下することが確認された。pH変化については、それぞれの条件下において7.4〜8.6の間であった。
【0160】
(2)また、全体的なシアノバクテリウムの生育量の低下については、攪拌によるPVA膜への環境水の接触が低下することにより、膜内へのN、Pの供給量が低下したためと考えられた。
【0161】
(3)このことから、最適な表面積/内容積8:1の条件で模擬環境水量を検討した結果、模擬環境水量が多ければ生育が高まる傾向が確認され、本実験から内容積/模擬環境水1:666程度であることが示された。
【0162】
(4)環境水の滞留による栄養塩の供給不足が考えられたが、少ない模擬環境水中の栄養塩濃度を上げることにより、こまで得られた藻体量が得られる可能性がある。
【0163】
実施例12
(本培養システムを利用した多種類の微細藻類の培養)
種々の機能性膜を利用し、海洋微細藻類を内封し培養を行い、封入した微細藻類が効率的に培養できる機能性膜の選定を、以下の実験例において調べた。
【0164】
恒温水槽(36LcmX26WcmX15H アクリル製)に模擬環境水として海水培地(硝酸ナトリウム400mg/L、リン酸水素二ナトリウム 1.4mg/l、リン酸二水素カリウム 5mg/L、塩化アンモニウム68mg/L、ビタミンB12 1.5μg/L、ビオチン 1.5μg/L、チアミン 0.2mg/L、トレースエレメント:ホウ酸2.86g/L、塩化マンガン(II) 四水和物 0.18g/L、硫酸亜鉛 七水和物222mg/L、モリブデン酸(VI) 二ナトリウム 7.2mg/L、硫酸銅(II) 五水和物 24mg/L、硫酸コバルト 六水和物 14mg/L、亜セレン酸 五水和物 1.6mg/L pH7.9を合成人工海水(富田製薬)10L加え、25℃の温度に温調機によって設定した。海洋微細藻類の生育に必要な光源は、蛍光灯(昼色光)を用い、2000lux(40uE/m2/s)の光を供給した。恒温水槽中のも模擬環境水は、絶えず温調器を用いて攪拌した。
【0165】
今回の実験で用いた海洋微細藻類は、我々が日本近海の海水から分離したChlorella sp.、Synechococcus sp.、Chlamydomonas sp.、Nannochloris sp.、Nanochlorum sp.、Isochrysis sp. Porphyridium sp.、Chlorococcum sp.、Pavlova sp.を用いた。
【0166】
Hymec膜(商標、PVA膜、メビオール(株)製、厚さ25μm) を縦17cm、横8cm程度に切り取り、内寸が縦10cm、横6cmになるようにシーラーを用いて各辺3箇所をシールした。
【0167】
クリーンベンチ内で、30mlの純水(121℃、10分間オートクレーブ滅菌済)を、袋状Hymec膜に加え、それぞれ株を2.0x10^6 cells/mlになるように植菌した。開放していた1箇所は植菌後、クリーンベンチ内でシーラーを用いてできるだけ空気を排除した形で密封した。
【0168】
Chlorella sp.、Synechococcus sp.、Chlamydomonas sp.、Nannochloris sp.、Nanochlorum sp.、Isochrysis sp.、Porphyridium sp.、Chlorococcum sp.、Pavlova sp.のそれぞれの株を袋の中に密封した袋状Hymec膜は、2000luxの光照射、25℃でコントロールされた水槽中に浸漬し培養を開始した。
【0169】
(結果)
(1)Hymec膜内に封入したそれぞれの株の生育を培養開始6目後に評価した結果、Synechococcus sp. において生育が確認された(図26)。それ以外についてもChlorella sp.、Chlamydomonas sp.、Nannochloris sp.、Nanochlorum sp.、Chlorococcum sp.、Porphyridium sp.について生育が確認された。しかし、Isochrysis sp.及びPavlova sp.については、生育が確認されなかった(表13)。
【0170】
【表13】
【0171】
(2)培養期間中、水槽には多くの細菌の増殖が観察されたが、袋状Hymec膜の中で生育するChlorella sp.、Chlamydomonas sp.、Nannochloris sp.、Nanochlorum sp.、Chlorococcum sp.、Porphyridium sp.、Synechococcus sp.の培養液中では雑菌の汚染は確認されなかった。
【0172】
(3)また、6日後の模擬環境水中のpHが8.4程度であったが、袋状Hymec膜の培養液は、8.7程度まで上昇した。pHの上昇は生育に影響を与える程度ではなかった。
(4)一方で、対照実験として用いた震倒培養の条件では6日目において、すべて袋状Hymec膜を用いた場合よりも低い値となった。
【0173】
(5)これらの結果から、袋状Hymec膜を用いた培養方法が従来の培養方法に比べ、高い藻体生産性を示した。
(6)このことから、海洋性微細藻類についても袋状Hymec膜を用いることが可能であり、海などの環境水面を利用することも可能であることが示された。
【0174】
実施例13
(OPP膜との比較)
実施例12のSynechocystis sp. PCC6803株の袋状Hymec膜の実験方法と同じとした。膜サイズ、培地、細胞数、評価などはすべて同じ条件とした。OPP膜としては花等をラッピングするためのOPPフィルムを用いた。
【0175】
(結果)
(1)袋状Hymec膜と透明高分子膜であるOPP膜を用いたSynechocystis sp. PCC6803株の生育比較を行った結果、袋状Hymec膜ではSynechocystis sp. PCC6803株の良好な生育が確認されたがOPP膜では生育が確認できなかった(図26)。このことは、OPP膜では環境水より栄養塩の流入が起こっていないことが示唆された。
(2)このことから、透明高分子膜であるOPP膜は本システムに適用できないことが示された。
【0176】
(3)また、栄養塩と伴に内封した場合においてもOPP膜では生育が確認されなかった(図28)。これは、気密性が高いため生育に必要な溶存酸素不足などにより生育阻害が引き起こされたものと考えられた。
【0177】
実施例14
(UV照射前後の引張り強さ/引張り破断伸びの測定)
引張り強さ/引張り破断伸びは、下記の条件で測定した。
測定用試料の調製法:試料を打抜き型で10mm×100mmの短冊状のものを作製し、試験片とした。
【0178】
使用機器:テンシロンUCT−5T型(エー・アンド・デイ社製)
試験条件:掴み具間距離:50mm、試験速度:100mm/min
測定雰囲気:室温23℃、湿度50%で実施
【0179】
(UV照射法等)
上記の試料について、それぞれUV照射前の引張り強さ/引張り破断伸びを測定した後、該試料をUV照射容器内に配置し、下記の条件で試料にUV(波長:253.7nm)を照射した。その後、該試料について、それぞれUV照射後の引張り強さ/引張り破断伸びを測定して、UV照射前後の引張り強さの比(Tb/Ta)、および引張り破断伸びの比(Lb/La)を求めた。
【0180】
(UV照射条件)
2種類のフィルム、PVA(商品名;ビニロンNP#25;厚さ25μm)、セロファン(商品名;PL#500;厚さ35μm)を縦100mm、横60mmの大きさに裁断し、1枚ずつクリーンベンチ内に放置して、殺菌ランプによりUV照射した。この殺菌ランプとしては、GL−15(波長が253.7nmの短波長紫外線;National社製)を使用し、殺菌ランプからフィルムまでの距離は50cmとし、殺菌ランプの照射時間は264hr(11日間)とした。
このようなUV照射後に、フィルムを取り出して、上記の強度試験を実施した。
得られた結果を、下記の表14に示す。
【0181】
【表14】
【0182】
上記表14に示したように、引張り強さの減耗率(Tb/Ta)ではセロファン130%、PVA121%であった。引張り破断伸びの減耗率(Lb/La)ではセロファン78%、PVA70%であった。従って、UV照射に対する耐性はセロファン・PVAで強いことが判明した。
【0183】
実施例15
(セルロース産生微生物によるフィルムの劣化実験)
三角フラスコ(1000ml)に培養液(ペプトン 5g、酵母エキス(Yeast Extract)5g、グルコース 5g、マンニトール 5g、MgSO4・7H2O 1g、エタノール 5ml、蒸留水 1L、pH7.0)を500ml入れ、セルロース産生微生物(Gluconoacetobacter sp.NBRC14816)を5ml植菌後、振盪恒温槽(28℃ 150rpm)で3日間前培養した。
【0184】
上記培養後、実施例14で用いたものと同様の2種類のフィルム(PVA、セロファン)を、それぞれ強度試験を行った後に、縦100mm、横60mmの大きさに裁断し、1枚ずつそれぞれ培養液が入った三角フラスコに浸漬した。この際の植菌状況の例を、図28の写真に示す。
【0185】
上記したフィルム浸漬後、振盪恒温槽(28℃、150rpm)で14日間培養した。この際の培養状況の例を、図29の写真に示す。該14日間培養後、次亜塩素酸ナトリウムで洗浄した。その後、滅菌水に浸漬し、次いで強度試験を実施した。
【0186】
(フィルムの強度試験)
試料の付着水分を拭い、打抜き型で10mm×100mmの短冊状のものを作製し、試験片とした。測定条件は、以下の通りとした。
使用機器:テンシロンUCT−5T型(エー・アンド・デイ社製)
試験条件:掴み具間距離:50mm、試験速度:100mm/min
測定雰囲気:室温23℃、湿度50%
得られた結果を、下記表15に示す。
【0187】
【表15】
【0188】
上記の表15に示すように、引張り強さの減耗率(Td/Tc)ではPVA81%で、セロファンは培養後粉砕状態になっていた。引張り破断伸びの減耗率(Ld/Lc)ではPVA58%で、セロファンは培養後粉砕状態になっていた。
【0189】
従って、セルロース産生微生物(Gluconoacetobacter sp.NBRC14816)に対した耐性は、PVAで最も強く、セロファンは分解されることが判明した。
【0190】
実施例16
(セルロース分解微生物によるフィルムの劣化実験)
三角フラスコ(1000ml)に培養液(ペプトン 5g、酵母エキス 3g、MgSO4・7H2O 1g、蒸留水 1L、pH7.0)を500ml入れ、セルロース分解微生物(Streptomyces sp.NBRC10117)を5ml植菌後、振盪恒温槽(28℃ 150rpm)で3日間前培養した。
【0191】
上記の培養、実施例14で用いたものと同様の2種類のフィルム(PVA、セロファン)を、それぞれ強度試験を行った後に、縦100mm、横60mmの大きさに裁断し、1枚ずつそれぞれ培養液が入った三角フラスコに浸漬した。この際の植菌状況の例を、図30の写真に示す。
【0192】
上記したフィルム浸漬後、振盪恒温槽(28℃、150rpm)で14日間培養した。この際の培養状況の例を、図31の写真に示す。該14日間培養後、次亜塩素酸ナトリウムで洗浄した。その後、滅菌水に浸漬し、次いで強度試験を実施した。
【0193】
(フィルムの強度試験)
試料の付着水分を拭い、打抜き型で10mm×100mmの短冊状のものを作製し、試験片とした。測定条件は、実施例15と同様とした。
得られた結果を、下記表16に示す。
【0194】
【表16】
【0195】
上記の表16に示すように、引張り強さの減耗率(Tf/Te)ではPVA94%、セロファン66%であった。また、引張り破断伸びの減耗率(Lf/Le)ではPVA73%、セロファン72%であった。従って、セルロース分解微生物(Streptomyces sp.NBRC10117)に対した耐性は、PVAで最も強いことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】本発明の培養器具の一態様を示す模式断面図である。
【図2】本発明の原理を示す模式斜視図である。
【図3】本発明の培養器具の他の態様を示す模式断面図である。
【図4】本発明の培養器具の他の態様を示す模式平面図である。
【図5】本発明において用いるフィルム特性(水−塩水接触)測定を説明するための模式断面図である。
【図6】本発明において用いるフィルム特性(水−塩水接触)測定結果の例を示すグラフである。
【図7】アンモニア性窒素のフィルム透過性を表すグラフである。
【図8】硝酸性窒素のフィルム透過性を表すグラフである。
【図9】りん酸のフィルム透過性を表すグラフである。
【図10】カリウムのフィルム透過性を表すグラフである。
【図11】カルシウムのフィルム透過性を表すグラフである。
【図12】マグネシウムのフィルム透過性を表すグラフである。
【図13】硫黄のフィルム透過性を表すグラフである。
【図14】種々の厚みのPVAフィルムの0.5%塩水透過性を示すグラフである。
【図15】PVA膜内で生育したシアノバクテリウムを示す写真である((A):培養前、(B)培養後)。
【図16】実施例で用いた実際の培養系の一例を示す写真である。
【図17】培養系における雑菌の増殖状態の一例を示す写真である。
【図18】純水中におけるシアノバクテリウムの増殖状態の例を示す写真である。
【図19】特定の表面積比におけるシアノバクテリウムの増殖状態の例を示す写真である。
【図20】他の表面積比におけるシアノバクテリウムの増殖状態の例を示す写真である。
【図21】他の表面積比におけるシアノバクテリウムの増殖状態の例を示す写真である。
【図22】他の表面積比におけるシアノバクテリウムの増殖状態の例を示す写真である。
【図23】他の表面積比におけるシアノバクテリウムの増殖状態の例を示す写真である。
【図24】他の表面積比におけるシアノバクテリウムの増殖状態の例を示す写真である。
【図25】海水基調培地を使用した場合の微細藻類の生育状態を示す写真である。
【図26】PVA膜およびOPP膜を使用した場合の微細藻類の生育状態を示す写真である。
【図27】栄養塩を内部に含ませたOPP膜を使用した場合の微細藻類の生育状態を示す写真である。
【図28】実施例15における植菌状況の一例を示す写真である。
【図29】実施例15における14日間の培養状況の一例を示す写真である。
【図30】実施例16における植菌状況の一例を示す写真である。
【図31】実施例16における14日間の培養状況の一例を示す写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養すべき微細藻類、および該藻類を分散させるための液体を、その内部に保持可能な形状を有するリザーバを含む微細藻類培養器具であって、且つ、
前記リザーバの少なくとも一部が、養分透過性を有する無孔性親水性フィルムから構成されることを特徴とする微細藻類培養器具。
【請求項2】
前記フィルムが、該フィルムを介して水と塩水とを対向して接触させた際に、測定開始後4日目(96時間)の水/塩水の電気伝導度(EC)の差が4.5dS/m以下のフィルムである請求項1に記載の微細藻類培養器具。
【請求項3】
前記フィルムが、耐水圧として10cm以上の水不透性を有する請求項1に記載の微細藻類培養器具。
【請求項4】
前記フィルムの光線透過性が65%以上である請求項1に記載の微細藻類培養器具。
【請求項5】
前記リザーバが、フレキシブルな容器の形状を有する請求項1〜4のいずれかに記載の微細藻類培養器具。
【請求項6】
前記リザーバが、袋状、筒状、チューブ状、およびフラットパネル状からなる群から選ばれる容器の形状を有する請求項5に記載の細藻類培養器具。
【請求項7】
前記リザーバの外側に、更に他の補強材料が配置されている請求項1〜6のいずれかに記載の微細藻類培養器具。
【請求項8】
前記補強材料が透明である請求項7に記載の微細藻類培養器具。
【請求項9】
前記補強材料が、ネット状の形状を有する請求項7または8に記載の微細藻類培養器具。
【請求項10】
培養すべき微細藻類、および該藻類を分散させるための液体を、その内部に保持可能な形状を有するリザーバを含み;且つ、前記リザーバの少なくとも一部が、養分透過性を有する無孔性親水性フィルムから構成される微細藻類培養器具を用い、
該リザーバ内に、培養すべき微細藻類および液体を配置し、
栄養源を有する外部水性環境に該リザーバの外部を接触させつつ、リザーバに光を照射することにより、前記微細藻類を培養することを特徴とする微細藻類培養方法。
【請求項11】
リザーバ内部または外部の少なくとも一方の液体を、攪拌および/又は循環させる請求項10に記載の微細藻類培養方法。
【請求項1】
培養すべき微細藻類、および該藻類を分散させるための液体を、その内部に保持可能な形状を有するリザーバを含む微細藻類培養器具であって、且つ、
前記リザーバの少なくとも一部が、養分透過性を有する無孔性親水性フィルムから構成されることを特徴とする微細藻類培養器具。
【請求項2】
前記フィルムが、該フィルムを介して水と塩水とを対向して接触させた際に、測定開始後4日目(96時間)の水/塩水の電気伝導度(EC)の差が4.5dS/m以下のフィルムである請求項1に記載の微細藻類培養器具。
【請求項3】
前記フィルムが、耐水圧として10cm以上の水不透性を有する請求項1に記載の微細藻類培養器具。
【請求項4】
前記フィルムの光線透過性が65%以上である請求項1に記載の微細藻類培養器具。
【請求項5】
前記リザーバが、フレキシブルな容器の形状を有する請求項1〜4のいずれかに記載の微細藻類培養器具。
【請求項6】
前記リザーバが、袋状、筒状、チューブ状、およびフラットパネル状からなる群から選ばれる容器の形状を有する請求項5に記載の細藻類培養器具。
【請求項7】
前記リザーバの外側に、更に他の補強材料が配置されている請求項1〜6のいずれかに記載の微細藻類培養器具。
【請求項8】
前記補強材料が透明である請求項7に記載の微細藻類培養器具。
【請求項9】
前記補強材料が、ネット状の形状を有する請求項7または8に記載の微細藻類培養器具。
【請求項10】
培養すべき微細藻類、および該藻類を分散させるための液体を、その内部に保持可能な形状を有するリザーバを含み;且つ、前記リザーバの少なくとも一部が、養分透過性を有する無孔性親水性フィルムから構成される微細藻類培養器具を用い、
該リザーバ内に、培養すべき微細藻類および液体を配置し、
栄養源を有する外部水性環境に該リザーバの外部を接触させつつ、リザーバに光を照射することにより、前記微細藻類を培養することを特徴とする微細藻類培養方法。
【請求項11】
リザーバ内部または外部の少なくとも一方の液体を、攪拌および/又は循環させる請求項10に記載の微細藻類培養方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2007−330215(P2007−330215A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168833(P2006−168833)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【出願人】(596009814)メビオール株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【出願人】(596009814)メビオール株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
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