説明

心土作溝土層改良機

【課題】サトウキビは収穫時の大型ハーベスタの踏圧により、畝間の心土作溝土層改良が必要とされる。しかし地表面は常に多量の残渣物に覆われ雑草繁茂を防止している。従って畝間を心土作溝土層改良する際は、地表面を露出させず、かつ放擲した土塊で新芽を痛めないようにせねばならない。しかし作業機に残渣物が絡みつくと、土を巻き込んだ残渣物の塊ができ、牽引抵抗の増大とこの塊に引きずられた残渣物の移動による地表面の露出等の問題が生じた。
【解決手段】作業機の犂体中間部に、前傾し、フレーム位置まで伸長した、刃のついた分割爪を取り付け、心土を放擲するエネルギーを、地表面を隆起するエネルギーに変えることによって、畝間の残渣物を持ち上げ浮かせるようにし、同時に前傾し刃のついた分割爪によって、残渣物に割り込み、押し分け、絡みつく事無く分割できる様にし、心土作溝土層改良作業の効率を向上した。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圃場において幅狭い作溝を造成し上層の作土を溝空隙に落とし掘削心土層までの部分厚層作土で根圏域を拡大、かつ透排水性の向上を計る、心土作溝土層改良作業機に関するものであり、残渣物の多い圃場における心土作溝土層改良作業機に関するものである。
【0002】
特にサトウキビ畑において切り株から出てきた新芽を痛めずに、畝を覆った残渣物を残したまま、畝間の心土を含む土壌を破砕改良することを目的にしたものである。
【0003】
従来の心土作溝土層改良作業機としては、特許文献1に記載されている作業機が実用化されている。図9のように犂体を30cm以上深く地中に差し込み、作溝土を地上部に放擲させ牽引抵抗減を計りトラクタ等の牽引車両の最大牽引力を利用して、できる限り地中深くから土壌を耕起して膨軟にし透排水性を向上させようとするものであり、同時に硬盤層を破砕するものである。
【0004】
硬盤層とは、重量のあるトラクタ及び作業機に何度も踏圧されたり、図10のようにロータリ爪の回転で生じる下層への打圧による圧密のためにできた、土中の水を透過させない硬い層のことである。通常このトラクタ及び作業機で踏圧された場所はロータリ耕耘作業等によって砕土されるが、図10のようにロータリ刃70の届かない部分は、毎年の作業によって年々硬くなって層が形成される。
【0005】
硬盤層は透水性の阻害だけでなく作物の根の発育を妨げ、作物の倒伏や減収の原因となる。
【0006】
図3に示される圃場断面において上部の作物を作るための土を作土という。作土層aの下の土は心土という。硬盤層kは作土層aと心土層bの境目に発生し、心土よりも硬くなっていることが多い。そのために透水性を悪化させ湿害に、また毛管作用を悪化させ旱魃になりやすい。そのために、狭い根圏域は著しく天候に左右されると考えられる。
【0007】
特許文献1に記載されている図9のような心土作溝土層改良作業機は、ビーム前面に撥土板72が取り付けられており、タガネ状のチゼル71が掘削した土壌を、撥土板72に添って上昇(滑動)させ、地表面に排出する構造になっている。
【0008】
図9のように硬盤層を破砕しながら、心土を上昇させ地表に排出する耕起方法は、硬盤層を破砕し、透水性を長期間に渡って改善する、優れた心土作溝土層改良機であるが、本件で対象としているサトウキビ畑のような残渣物の多い畝間に使用する特殊な場合は、心土を地表に排出し土塊で新芽を痛めることを防がねばならない。
【0009】
サトウキビは多年性植物で、5年程度は同一株から出る新芽を育成し繰り返し収穫する。収穫時に畑から搬出されるのは茎であり、その他の茎葉は畑内に残渣物Zとして放置される。従って5年に一度、残渣物、切り株を含めてプラウで反転耕起するとき以外は、地表面は残渣物Zで覆われている。
放置された残渣物Zは地表面を覆うので、赤土流出防止や雑草の発生を防止することができる。更には保水・保温効果があるので微生物を育成することができる。
【0010】
従って、サトウキビ畑において、図9のような心土作溝土層改良機を使用すると、残渣物Zがビームに絡み作業続行が阻まれる。更に残渣物Zの上に心土を放擲してしまうので土壌が地表面を覆うことになり、雑草繁茂の原因となると共に、保水・保温効果が阻害されてしまう。更には心土を放擲する際に、株から発生した新芽に土壌が放擲され折れたり、埋められたりしてしまう。
【0011】
つまりサトウキビ畑における心土作溝土層改良は、畝を覆った残渣物を残したまま畝間の心土層aと硬盤層kを破砕して膨軟にし、透排水性を良くし、根圏域を広げ、微生物が育ちやすい土壌を作らなければならない。
【0012】
そのため、土壌を地上に放擲させないように工夫した特許文献2に記載された図8のような作業機が実用化されている。この作業機はサトウキビの畝間に犂体を配置することによって、幅狭く心土をほりあげることを可能とした心土作溝土層改良作業をすることができる。
【0013】
特許文献2に記載された図8の犂体60は心土を上昇させ、残渣物Zの茎葉と地表の間を隆起するように心土を作土層に放出するので、残渣物Zの上に土壌を放擲する事無く、畝間の隆起で浮かされた残渣物Zが左右に分離されたところに分割爪が割り込み分離しながら前進することができる。
【0014】
【特許文献1】特開平9-322601号公報
【特許文献2】特開平2006-6182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、残渣物Zが大量で図6のように上手く分離できない場合、図8のように残渣物Zが分割爪61を乗り越えてビーム部に絡まりZ´´のようになり、塊となって大きな牽引抵抗となることがあった。このときは作業を中断し残渣物の塊を取外さなくてはならない。そのため連続作業の中断を余儀なくされることがあった。
【0016】
更にまわりの残渣物を移動して地表面を露出させてしまうので、すぐに作業を中断して除去しなくてはならない。
【0017】
残渣物の塊を取外すには、トラクタを停車させ、下車し、鎌などの道具を用いて取り外し作業せねばならず、作業効率を低下させる一番の原因であった。
【0018】
サトウキビは多年性植物で5年程度は毎年同一株から出る新芽を育成し収穫を繰り返す作物である。収穫時には重量の大きいハーベスタが全畝間を走りその土壌踏圧が新芽の生育を妨げる要素が大である。故に、畝間に心土作溝土層改良の強い要望がある。しかるに収穫後のサトウキビ畑の地表面は常に多量な残渣物に覆われており、雑草が繁茂するのを防止している。
【0019】
従って心土作溝土層改良作業する場合は、残渣物を地表面に残したまま、畝間の心土作溝土層改良を行わなければならない。まして、その際地表に土塊を放擲させて新芽を痛めてはならないという二重の問題点を解決せねばならない。多量の残渣物は犂体に絡みつき、土を巻き込んで塊となり、牽引抵抗を増大させると共に、残渣物を移動させて地表面を露出させてしまうので、作業の中断、塊の除外等で作業効率を著しく悪くしていた。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、牽引されるフレームに取り付けられ、チゼルと撥土板による土壌上昇機能をもつビームと、該ビームに取り付けられ、前記チゼルによって上昇させられた土壌を分割するための分割刃を備えた分割爪とを備え、前記分割刃は進行方向に向って形成されていると共に、前記分割刃は、進行方向側に前方へ傾斜し又は湾曲しており、地表に放擲させるそのエネルギーをあえて上昇途中で作土層に放出させるエネルギーに変え、畝中心部土層を大きく隆起させることで地表を覆っている残渣物も畝中心に大きく浮き上がらせることにより自然に左右に分離する作用と、土層隆起を促しかつ残渣物を分割し、更に前期分割爪で決定的に左右に分離させ残渣物がビームに絡む事無く畝を覆った残渣物を残したまま作業続行を可能としたことを特徴とする心土作溝土層改良機である。
【0021】
また、前記分割爪は前記ビームに取り付けられ、水平フレームの位置もしくは近傍までまで伸長したことを特徴とする心土作溝土層改良機であり、前記撥土板は前記分割爪の下部取付位置を越えて上方に延び、前方に湾曲させたことを特徴とする心土作溝土層である。

【発明の効果】
【0022】
本発明の心土作溝土層改良機で作業すると、分割爪が進行方向に傾斜しており、フレームの位置もしくは近傍まで伸長され、進行方向に向って刃がつけられているので、チゼルと撥土板によって上昇させられた心土によって大きく隆起した地表面と、前方に傾斜した分割爪に隆起で浮かされた残渣物Zは左右に分離させられて作業機は進行する。
【0023】
チゼルによって掘削された心土b´は、撥土板上を滑動し上昇する。その際上部には土圧Pを発生させ、地表面を大きく隆起させる働きをする。上昇中の心土b´と土圧Pが分割爪に当接することによって隆起部hは大きくなる。分割爪が前傾していれば、地表を隆起させるエネルギーは大きくなり、隆起部hは更に大きくなる。そこでフレームまで伸長した分割爪が必要とされる。
【0024】
地表面が大きく隆起することによって、図7のように残渣物は片方が持ち上げられ、浮き上がって軽くなり、自然に左右に分けられるので、分割爪が当接する前にあらかじめ残渣物を分離しておく役割をする。
【0025】
また、隆起した地表面に片方を持ち上げられた残渣物は、重心が低い方に移動するので、分割爪に当接しても下方部が移動しにくく、地表面を露出させることが少ない。
【0026】
その結果、残渣物が大きな塊になりにくいので牽引抵抗が発生しにくくなり、トラクタを停車させ、下車し残渣物の塊の取り外し作業することがなくなるので、作業が中断されず、効率が大幅に向上する。
【0027】
以上のように心土層をチゼルで掘削し、土壌を撥土板で上昇させ地表に排出する犂体の中間部に、進行方向に前傾し、フレーム高さ近傍まで伸長した、進行方向の面が刃になっている分割爪を取り付けることによって、心土層を掘削放擲するエネルギーを途中で止め、畝間の土壌を隆起させるエネルギーに変えることによって、畝間の残渣物を大きく持ち上げ浮かせるようにした。
【0028】
この作用によって分割爪に残渣物が絡むことが無く、残渣物に割り込み、おしわけ、分割することができるようになった。この手段によって土塊を地表に放擲する事無く、地表は残渣物に覆われたまま、畝間の心土部を膨軟にすることができるようになった。これによって畝間に残渣物を残したまま、サトウキビの新芽を育てる畝間の土中環境を整える心土作溝土層改良作業の作業効率が著しく向上した。

【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施例を第一と第二と第三の実施例について説明する。
【実施例1】
【0030】
本発明の第一の実施例を図1、図2、図3に第二の実施例を図4に第三の実施例を図5に示す。トラクタ1の後部には油圧で上下する2本のロアリンク8と1本のトップリンク9があり、作業機のマスト10にはトップリンク9がピンによって連結され、フレーム11にはロアリンク8がピンによって連結され、トラクタ1によって牽引され作業する。
【0031】
道路走行時や圃場内における枕地でのターン時には、ロアリンク8を油圧によって高々と差し上げることによって作業機を持ち上げ耕耘作業を中断して移動できる様になっている。
【0032】
水平フレーム12にはマスト10とフレーム11が固着されており、更に水平フレーム12にはビームプレート13と分割爪プレート16が水平フレームボルト15によって移動もしくは取り外し可能なように取り付けられている。
ビームプレート13にはビーム14が取り付けられ、ビーム14の下端部にはチゼル21が取り付けられ、中間部には撥土板22が取り付けられている。撥土板22の上部には、進行方向に前傾した分割爪25が、分割爪プレート16にボルト26で固着され、更にビーム14にもボルト27で固着されている。
【0033】
このような組み合わせによって心土作溝犂体20が構成され、この作業機2を牽引することによってチゼル21が掘削した心土が、撥土板22によって上昇させられ分割爪25によって上昇して放擲するエネルギーを途中で止め、隆起させるエネルギーに変えることによって、畝間の残渣物を持ち上げ、浮かせるようになった。つまり分割爪25には土壌を上昇させる働きがないので地表面が隆起したとしても、地表に心土が放擲されることを防止するようになっている。
【0034】
トラクタ1のロアリンク8は、作業中フリー状態になっている。ロアリンク8は作業機を持ち上げる力はあるが、下方向に押し付ける力は無い。作業機は犂体20のもつ刺さり込み能力(サクションによって発生する)によって土中に食い込み牽引時の作用によってトップリンク9の長さと、作業機のフレーム形状に応じた位置に犂体20が留まるようになっている。
【0035】
サクションとは例えばプラウの場合であれば、犂体の地側板、耕起刃板、犂体の3者には一種の逃げ(凹み)を付与してあり、耕深、耕幅、進行方向等の安定を保ち、かつ常に土中への食い込みを良好にする。その逃げのことである。
【0036】
また、水平フレームボルト15を弛めることによってビームプレート13と分割爪プレート16が水平フレーム12上をスライドし任意の位置に固定できる様になっている。この構成によって犂体20の位置を、トラクタ幅より広い幅広にしたり、中心に寄せて幅狭にしたり、畝間の位置に設定したりできる様になっている。
【0037】
犂体20のビーム14の中段部に取り付けられた分割爪25はボルト27によってビーム14に固着され、同時にボルト26によって分割爪プレート16に固着されているが、図3の点線で記載された補強プレート28を用いれば、ボルト26の取付は省略することができる。また、ボルト26の2本のボルトでしっかりと固着されるのであれば、ボルト27や補強プレート28は省略することができる。
【0038】
しかし重粘土や岩石の多い圃場ならボルト26,27更には補強プレート28の3者の固着方法を併用し強化することが望ましい。しかし補強プレート28や図4の第二実施例の補強材19は残渣物が絡みつきやすいので無い方が望ましい。
【0039】
以上のように構成された作業機で、作業する場合を図3、図6、図7を用いて説明する。
図3のように前進する犂体20の下端部にあるチゼル21によって心土層bの心土b´は持ち上げられ、撥土板22の上を滑動し分割爪25に達する。このとき作土層a及び硬盤層kは下からの土圧Pで破砕され心土作溝土層改良されるので、膨軟になり透水性が向上する。
【0040】
土圧Pは地表面を持ち上げる役割をするが、前傾した分割爪25に当接することにより、土圧Pと上昇した心土b´の相乗効果で更に大きく隆起する役割をする。
この作用によって図7のように残渣物の一部が持ち上げられ重心Gが下方に移動するので、分割爪25に残渣物Zが当接しても下方部は移動しにくくなり、持ち上げられた上方部は簡単に分離することができるようになる。その結果図6のように残渣物Zは効率良く分離される。
【0041】
しかし何らかの原因で、図3のように残渣物の堆積Z´が生じてしまうことがあるが、分割爪25には地表面と傾斜角θが設けられ前傾していることによって、隆起部hと分割爪25に残渣物の堆積Z´が挟まれるので、分割爪が割り込み、押し分け分離する。
傾斜角θは作業機に取り付ける場合の合理性を考慮する必要がある。
【0042】
以上のように本発明の心土作溝土層改良機2で作業すると、分割爪25が進行方向に傾斜しており、水平フレーム12の位置まで伸長され、進行方向に向って刃が付けられているので、チゼル21と撥土板22によって上昇させられた心土によって隆起した地表面は、前方に傾斜した分割爪25によって更に大きく隆起する。その結果隆起部hによって浮かされた残渣物Zは絡みつく事無く分離されて犂体20が進行する。
【0043】
分割爪25は前傾しており水平フレーム12まで伸長しているので、分離されなかった残渣物Zも大きな塊にならず、隆起部hと分割爪25に押し分け分離される。分割爪25は進行方向に向って刃が付けられている。隆起部hで浮かされている残渣物Zは絡みつかず左右に分離される。
その結果、残渣物を引きずったり、塊を作ったりすることが無いので、作業が中断されず、効率が大幅に向上する。
【0044】
以上のように心土作溝土層改良された、サトウキビ畑の正面からの断面は図7のようになる。
さらに、上面から見た図6のように残渣物Zは、一旦分割爪25によってかきわけられても、作業機2が通過した後に折り重なって元のように地表を覆い隠す。
このように本発明によれば、残渣物Zの上に土壌を放擲する事無く、心土作溝土層改良することができ、かつこの作業を効率的に行うことができる。
【0045】
本発明の第二の実施例を図4に示す。残渣物Zが湿っていると分割爪25に絡みつきやすくなることがある。そこで前傾しかつ前方に湾曲した分割爪25Aを取り付けたものである。
【0046】
湾曲した分割爪25Aはフレーム11の高さまで伸長されているので残渣物の堆積Z´が大きくても乗り越えることができない。また、湾曲した分割爪25Aの進行方向の面は前方に湾曲しており、前側が刃になっている。この作業機で作業すると前方に湾曲した分割爪25Aと隆起した地表面によって残渣物の堆積Z´は、前方に湾曲した分割爪25Aの前方に張り出した圧力で更に隆起を大きくして残渣物の堆積Z´を浮き上げるように働く力が大きくなるので、より効果的に分離することができる。
【0047】
本発明の第三の実施例を図5に示す。分割爪25Bは湾曲部と直線部を組み合わせることにより、フレーム11に分割爪プレート16を用いて取り付けられるようにし、実施例一と二を兼用したものである。補強材19を無くし残渣物Zが絡みつきにくくしたものである。
また、撥土板22Aは分割爪25Bの下部取付位置を越えて上方に延び、また後方に湾曲させることで、更に上昇を高め隆起を大きくし、心土b´を後方に案内する役割をするようにしたものである。これにより心土b´の上昇位置及び隆起高さを調整し安定させることができる。
【0048】
以上のような心土作溝土層改良機を用いることにより、サトウキビ畑で地表面を覆い隠している残渣物Z上に、心土を排出する事無く、心土層bを作溝し、心土を作土内に上昇放出させて混和し土層を改良することができる。
【0049】
その際に本件発明の分割爪25乃至湾曲した分割爪25A,25Bを用いた心土作溝土層改良機であれば、残渣物の堆積Z´ができにくくすることができるので、残渣物の塊が発生しにくく連続作業することができる。
【0050】
従って本発明によれば、切り株から出てきている新芽を痛める事無く、地表を覆った残渣物を残したままで、サトウキビ畑の畝間を心土作溝で耕起し、透排水性を向上させ、根圏域を拡大することで、株の育成を促進させることができる。
【0051】
本発明により、心土層を掘削放擲するエネルギーを途中で止め、畝間の土壌を隆起させるエネルギーに変えることによって、畝間の残渣物を持ち上げ浮かせるようにした。この作用によって分割爪に残渣物が絡むことが無く、残渣物に割り込み、おしわけ、分割することができるようになった。また、この手段によって土塊を地表に放擲する事無く、地表は残渣物に覆われたまま、畝間の心土部を膨軟にすることができるようになった。これによって畝間に残渣物を残したまま、サトウキビの新芽を育てる畝間の土中環境を整える心土作溝土層改良作業の作業効率が著しく向上した。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の作業機を水田圃場に用いれば、圃場に深い溝を形成しないことから、田植え機の轍を陥没させることが無い。
また、畑圃場に用いれば、地表面に放擲するれき土が無いことから中耕、除草、培土に都合がよい。このことは牧草地においても有効で、部分的に牧草の根を破砕しても、牧草上にれき土を放擲しないので、牧草を枯らすことが無い。更に礫石の多い圃場においては、礫石を圃場表面に露呈させないので除礫作業の軽減になる。
【0053】
さらに犂体の数、あるいはそれらの間隔を選択すること。そして配列の変更などにより、プラウ作業機による反転耕起後の粗砕土作業や心土と作土の撹拌作業に用いることができる。

【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施例をトラクタに取り付けた状態の鳥瞰図である。
【図2】本発明の実施例をトラクタに取り付けた状態の上面図、側面図、後面図である。
【図3】本発明の実施例の側面図と圃場の断面図である。
【図4】本発明の第二実施例の側面図と圃場の断面図である。
【図5】本発明の第三実施例の側面図と圃場の断面図である。
【図6】本発明の実施例が残渣物を分離する状態の図である。
【図7】本発明の実施例による作業状態における圃場の正面断面図である。
【図8】従来例(特許文献2)の側面図と圃場断面図である。
【図9】従来例(特許文献1)をトラクタに取り付けた状態の側面図である。
【図10】ロータリによる耕耘の側面図である。
【符号の説明】
【0055】
1.
トラクタ
2.
作業機(心土作溝土層改良機)
8.
ロアリンク
9.
トップリンク
10.
マスト
11.
フレーム
12.
水平フレーム
13.
ビームプレート
14.
ビーム
15.
水平フレームボルト
16.
分割爪プレート
19. 補強材
20.
犂体
21.
チゼル
22.
撥土板
25.
分割爪
25A. 湾曲した分割爪
25B. 湾曲部を変化させた分割爪
26.
ボルト(分割プレート側)
27.
ボルト(ビーム側)
28.
補強プレート
71.
従来例のチゼル
72.
従来例の撥土板
a. 作土層
b. 心土層
b´. 心土(上昇中の心土)
k. 硬盤層
P. 下からの土圧
Z. 残渣物
Z´. 残渣物の堆積
Z´´. ビームに絡まった残渣物
θ. 傾斜角


【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引されるフレームに取り付けられ、チゼルと撥土板による土壌上昇機能をもつビームと、該ビームに取り付けられ、前記チゼルによって上昇させられた土壌を分割するための分割刃を備えた分割爪とを備え、
前記分割刃は進行方向に向って形成されていると共に、前記分割刃は、進行方向側に前方へ傾斜し又は湾曲しており、地表に放擲させるそのエネルギーをあえて上昇途中で作土層に放出させるエネルギーに変え、畝中心部土層を大きく隆起させることで地表を覆っている残渣物も畝中心に大きく浮き上がらせることにより自然に左右に分離する作用と、土層隆起を促しかつ残渣物を分割し、更に前期分割爪で決定的に左右に分離させ残渣物がビームに絡む事無く畝を覆った残渣物を残したまま作業続行を可能としたことを特徴とする心土作溝土層改良機。

【請求項2】
前記分割爪は前記ビームに取り付けられ、水平フレームの位置もしくは近傍まで伸長したことを特徴とする請求項1記載の心土作溝土層改良機。

【請求項3】
前記撥土板は前記分割爪の下部取付位置を越えて上方に延び、前方に湾曲させたことを特徴とする請求項1及び請求項2記載の心土作溝土層改良機。



【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図9】
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【図10】
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