説明

心疾患の治療および/または予防のためのIL−18阻害剤の使用

【課題】心疾患、とくに虚血性心疾患の治療および/または予防用薬剤を提供すること。より詳しくは、心筋症の治療および/または予防用薬剤を提供すること。
【解決手段】IL−18阻害剤を含有する心筋症の治療および/または予防用薬剤であって、IL−18阻害剤がカスパーゼ−1(ICE)の阻害剤、IL−18に対する抗体、いずれかのIL−18受容体サブユニットに対する抗体、およびIL−18の生物学的活性を阻害するIL−18結合タンパク質またはそのアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質もしくは機能的誘導体から選択される薬剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓血管疾患の分野に属する。より詳細には、本発明は、心疾患、とくに虚血性心疾患の治療および/または予防のためのIL−18阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
サイトカインのインターロイキン18(IL−18)は、最初は、インターフェロン−γ(IFN−γ)誘導因子として記載された(Nakamura et al., 1989)。それは、T−リンパ球ヘルパー細胞1型(TH1)の応答の発生における初期シグナルである。IL−18は、IFN−γの産生を誘導するために、IL−12、IL−2、抗原、マイトジェンおよび、おそらくはさらなる因子とともに作用する。IL−18はまた、GM−CSFおよびIL−2の産生を促進し、抗CD3に誘導されるT細胞増殖を高め、そしてFasが介在するナチュラルキラー細胞の死滅(killing)を増加させる。
【0003】
成熟IL−18は、IL−1β変換酵素(ICE、カスパーゼ−1)によって、その前駆体から産生される。
【0004】
IL−18受容体は、リガンドの結合において共作用する、少なくとも2つの成分からなる。IL−18に対する高親和性の結合部位と低親和性の結合部位とがマウスIL−12に刺激されるT細胞において見出され(Yoshimoto et al., 1998)、多鎖受容体複合体(multiple chain receptor complex)であることが示唆される。2つの受容体サブユニットはこれまでに同定され、どちらもIL−1受容体ファミリーに属している(Parnet et al., 1996; Kim et al., 2001)。IL−18のシグナル伝達はNF−κBの活性化を含む(DiDonato et al., 1997)。IL−18受容体複合体は、IL−18Rα鎖と呼ばれるリガンド結合鎖およびIL−18Rβ鎖と呼ばれるシグナル伝達鎖の2つの受容体鎖からなる。IL−18R鎖は、最初は、放射性標識化IL−18に結合する細胞表面タンパク質として単離された。該タンパク質は精製され、そのアミノ酸配列により、以前に報告されたIL−1R関連タンパク質(IL−1Rrp)と呼ばれるオーファン受容体と同一であることが明らかになった(Torigoe et al., 1997)。
【0005】
最近、IL−18に高い親和性を有する可溶性タンパク質がヒトの尿から単離され、ヒトおよびマウスのcDNAならびにヒト遺伝子がクローン化された(Novick et al., 1999; WO 99/09063)。そのタンパク質は、IL−18結合タンパク質(IL−18BP)と呼ばれている。
【0006】
IL−18BPは、既知のIL−18受容体の1つの細胞外ドメインではないが、分泌され、通常循環しているタンパク質である。IL−18BPは、分泌タンパク質、さらにポックスウイルスにコードされるいくつかのタンパク質を含む、新しいファミリーに属する(Novick et al., 1999)。尿のIL−18BPおよび組換え体IL−18BPは、とくにIL−18に高い親和性で結合し、IL−18の生物学的親和性を修飾する。
【0007】
IL−18BP遺伝子はヒト染色体の11q13に位置しており、膜貫通ドメインをコードするエクソンは8.3kbのゲノム配列中に見つかっていない。選択的mRNAスプライシングにより生成されるIL−18BPの4つのスプライシング変異体またはアイソフォームが、これまでにヒトにおいて見出されている。それらはIL−18BPa、b、cおよびdと称され、すべてが、同一のN末端を共有し、C末端が異なっている(Novick et al., 1999)。それらのアイソフォームは、IL−18への結合能において異なる。4つの中で、hIL−18BPアイソフォームaおよびcは、IL−18に対して中和能を有することが知られている。ヒトIL−18BPアイソフォームaはマウスIL−18と交差反応する。
【0008】
心疾患は、心筋または心臓の血管を冒す疾患として定義されている(The Merck Manual Home Edition, www.merck.com)。血管性疾患は、閉塞により生じる貧循環(poor circulation)などの、血管の問題である。心疾患はまた、心臓血管疾患とも呼ばれる。
【0009】
虚血性心疾患は心不全の一般的な原因であり、欧州社会における最も一般的な死因である。虚血性心疾患は、通常、冠状動脈アテロームが原因である。心筋障害には、虚血性線維症や急性梗塞が含まれる。正常な状態では、冠状動脈の血流は、心筋の代謝要求量(metabolic demands)に密に調和されている。血液の供給自体が減じられたり、または、心筋が肥大して血液に対する要求が大きくなるため、虚血性心疾患は、血液の供給が不充分になった場合に生じる。冠状動脈血流は、通常大動脈圧から独立している。冠状動脈床(coronary vascular bed)を介して血流を制御するための効率的な自己調節機構が存在する。
【0010】
通常アテローム性動脈硬化症または粥状動脈硬化症(ateriosclerosis)が原因で主要な冠状動脈に閉塞が生じると、その閉塞に対して遠位の抹消抵抗が減じられるために、冠状動脈血流が最初に保護される。血管の内腔が75%を超えて塞がれると、とくに冠状動脈側副循環(coronary collateral circulation)が不完全に生じる場合、虚血が生じる。
【0011】
心筋は代謝が非常に活発であり、ミトコンドリアが、個々の線維の30%を超える体積に相当する。高エネルギーリン酸塩の蓄積が非常に不足しているので、有酸素代謝が必須である。組織のアデノシン三リン酸(ATP)濃度が非常に低く、嫌気的解糖が事実上停止すると、心筋は死ぬ。ほかの組織と同様に、死の正確な原因は不明であるが、致死的な心筋の負傷は、膜の損傷およびカルシウムの細胞質への急激な流入に関連する。短期間の虚血ののち、心臓の血流は回復し得る(再灌流)。しかしながら、危険な間欠期ののちには、おそらく毛細血管内皮細胞の膨張の結果、再灌流が不可能になる。
【0012】
アテローム性動脈硬化症は、冠状動脈疾患の大部分を占める。虚血性心疾患はまた、低い冠状動脈灌流からも生じ得る。ストークス(stoke)は、とくに出血の結果として、その一般的な原因である。
【0013】
前に指摘したように、虚血性心疾患は、心筋の血流と心筋の代謝要求量とのあいだの不均衡によって引き起こされる。血流は、血管攣縮、血栓症または低灌流(hypoperfusion)を導く循環の変化などの積載的事象(superimposed events)によってさらに減少され得る。
【0014】
冠状動脈灌流は、口(ostia)(大動脈拡張期血圧)と冠状静脈洞(右心房圧)とのあいだの圧力差に依存する。冠血流量は、冠状動脈口(coronary orifices)でのベンチューリ効果(Venturi effects)、および心室収縮中の筋内動脈の圧縮のために、収縮期に低下される。冠血流量を低下する要因としては、減少される大動脈拡張期血圧、増加される心室内圧および心筋収縮、冠状動脈狭窄、大動脈弁狭窄および逆流、ならびに増加される右心房圧が含まれる。
【0015】
新しく形成された血栓を溶解させるために、ストレプトキナーゼまたは組織プラスミノゲン活性化因子(TPA)などの薬剤による血栓溶解療法がしばしば用いられる。血栓の溶解を伴うそのような治療法は、多くの疾患において血流を回復し得る。これは、事象の進行の早期(1時間未満またはその前後)であれば、著しい心筋の負傷を予防するための助けになり、そして少なくとも、さらなる損傷を減らすための助けになる。
【0016】
狭心症は、発作性の胸痛発作(paroxysmal attacks of chest pain)によって特徴付けられる虚血性心疾患の合併症(symptom complex)であり、通常、胸骨下または前胸部におこる。狭心症は、梗塞の誘導には達しない心筋虚血によって生じる。突然の心臓死が生じる可能性があり、それは通常、心臓の事象ののち1時間以内または症状の発現なしに生じる心臓が原因の不測の死である。突然の心臓死は、年間300000〜400000人を襲っている。
【0017】
心疾患のほかの状態としては、アルコール性心筋症、大動脈弁逸脱(aortic valve prolapse)、大動脈弁狭窄、不整脈、心原性ショック、先天性心疾患、拡張型心筋症、心臓発作、心不全、心臓腫瘍、心臓弁肺動脈弁狭窄(heart valve pulmonary stenosis)、肥大型心筋症、突発性心筋症、虚血性心疾患、虚血性心筋症、僧帽弁逆流、僧帽弁逸脱、産辱性心筋症、安定狭心症が含まれる。
【0018】
心筋梗塞は、虚血性心疾患のさらに深刻な状態である。病気の発生は、閉塞性冠動脈内血栓(occlusive intracoronary thrombus)、すなわち潰瘍化したまたは亀裂を有する狭窄プラークを包含する血栓(a thrombus overlying an ulcerated or fissured stenotic plaque)を含み得る。閉塞性冠動脈内血栓は、貫壁性急性心筋梗塞の90%の原因である。血管攣縮は、アテローム性冠状動脈硬化症(coronary atherosclerosis)およびおそらくは血小板凝集との関連性を伴う、または伴わない可能性がある。塞栓はまた、心筋梗塞においても存在し得る。
【0019】
心筋梗塞のはなはだしい形態学的兆候は、様々である。貫壁性梗塞は、心内膜から心外膜までの左心室壁全層にかかわる。心内膜下の梗塞は、左心室壁の内部1/3〜1/2に制限された壊死の多病巣領域にかかわる。心筋梗塞の合併症は、「突然死」の可能性を有する、不整脈および伝導欠損、梗塞の継続、もしくは再梗塞、塞栓の可能性を有する、うっ血性心不全(肺水腫)、心原性ショック、心膜炎、壁在血栓症、タンポナーデの可能性を有する心筋壁破裂、心弁不全の可能性を有する乳頭筋破裂、心室瘤形成を含み得る。
【0020】
心筋梗塞(MI)は、心筋の部分に対する冠血流量の急激な低下により一般に生じる虚血性心筋壊死として定義される。
【0021】
90%を超える急性MI患者において、しばしばプラーク破裂に関連する急性血栓が、損傷領域を満たす動脈(アテローム斑により予め部分的に遮られている)を塞ぐ。アテローム斑における内皮細胞の変化によって誘導されて変化した血小板の機能は、おそらく血栓発生(thrombogenesis)に寄与する。自発的な血栓溶解は患者の約2/3に起こるので、24時間後には、血栓性閉塞は約30%のみに見られる。
【0022】
心筋梗塞は、動脈塞栓形成(たとえば、僧帽弁または大動脈弁狭窄、感染性心内膜炎、および衰弱性心内膜炎における動脈塞栓形成)によってしばしば引き起こされる。心筋梗塞は、冠動脈攣縮およびそれ以外は正常な冠状動脈の患者において報告された。コカインは激しい冠動脈攣縮を引き起こし、使用者はコカイン誘導性の狭心症または心筋梗塞を有している可能性がある。解剖研究および冠動脈造影により、コカイン誘導性の冠状動脈血栓が、正常な冠状動脈において生じ得ること、または以前から存在するアテローム上に積まれ得ることが示された。
【0023】
心筋梗塞は、主に左心室の疾患であるが、損傷は右心室(RV)または心房に拡大し得る。右心室梗塞は、一般に右冠状動脈のまたは主要な左回旋動脈の閉塞により生じ、高い右心室充満圧で特徴付けられ、しばしば重度の三尖弁逆流および心拍出量低下を伴う。ある程度の右心室機能障害が、下後壁梗塞(inferior-posterior infarction)患者の約半数に生じ、10〜15%に血流学的異常を引き起こしている。
【0024】
ポンプとして機能し続ける心臓の能力は、心筋の損傷拡大に直接関係する。
【0025】
貫壁性梗塞は、心内膜から心外膜までの心筋全層にかかわり、一般に、ECGにおける異常Q波によって特徴付けられる。非貫壁性梗塞または心内膜下梗塞は心室壁をとおして拡大せず、ST部分およびT波の異常のみを引き起こす。心内膜下梗塞は、一般に、壁の緊張が最も高く、心筋血流が循環の変化を最も受けやすい心筋の内部1/3にかかわる。それらはまた、長期の低血圧に伴っておこる。壊死の貫壁深度は、臨床的には正確に測定できないため、梗塞は、Q波および非Q波としてECGによって、より適当に分類される。破壊された心筋の体積は、CK上昇(CK elevation)の程度および持続時間によって評価することができる。
【0026】
虚血性心筋症は、虚血性心疾患に含まれるもう1つの疾患である。この症状において、予備的心筋梗塞があるかもしれないが、該疾患は、すべての主要な枝にかかわる重度のアテローム性冠状動脈硬化症の結果生じる。その結果は、不適当な血管供給であり、それは筋細胞の損失を導く。間質コラーゲン沈着という形で線維症と結び付けられる筋細胞の損失により伸展性が低下し、結果、付随する心臓肥大に伴い、残りの筋細胞に過度の負担がかかる。これにより、筋細胞肥大を続けることによる補償を伴い、工程が進行する。肥大だけではなく過形成による補償もさらにあり、このことが、その心臓の巨大なサイズ(正常なサイズの2〜3倍)を説明し得る。最終的には、心臓はもはや補償することができず、続いて、不整脈および/または虚血性の事象とともに心不全が生じる。このように、先行する心筋梗塞または狭心症の痛みの病歴を伴う、または伴わない、徐々に進行する心不全が、臨床上存在する。虚血性心筋症は、虚血性心疾患による死亡の約40%の原因である。
【0027】
心臓の再灌流ならびに虚血のあいだ、低分子第二メッセンジャーなどの多くの内在性メディエーターが産生され、心筋の機能に影響する。虚血発作の瞬間に心筋の収縮力は減退し、収縮力の全面的な回復は、虚血期の持続期間に大きく依存する(Daemen et al., 1999)。たとえば、虚血事象のあいだ、Ca2+恒常性が混乱し、酸素由来フリーラジカルが発生し、そして一酸化窒素(NO)の合成および放出が起こる。さらに、サイトカイン、とくにTNFαおよびIL−1βの局所産生も起こる(Bolli, 1990)。正常な心臓において、それらのサイトカインは、誘導NO合成(iNOS)のための遺伝子発現(Daemen et al., 1999)、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)およびホスホリパーゼA2ならびに血管接着分子およびいくつかのケモカインを誘導することによって、虚血誘導性心筋機能不全に寄与する。その結果、低分子メッセンジャーが介する心筋収縮力の即時低下が起こり、ついでサイトカインが介する好中球浸潤が起こって、さらに心筋に損傷を与える。血液または血液製剤の非存在下において研究された動物の心臓は、虚血という課題(challenge)のあいだ、TNFα(Herskowitz et al., 1995)およびIL−1βを合成する。心筋細胞はまた、それらの内在性サイトカインの作用のために、収縮力を失う(Meldrum et al., 1998)。
【0028】
TNFαおよびIL−1βが介する心筋機能障害に関する実験データの多くは、動物研究から得られている。しかしながら、任意の心肺バイパス処置を経験している患者から得られたヒト心筋組織が、制御されたex vivo条件のもとで研究されている(Gurevitch et al., 1996; Cleveland et al., 1997)。この実験モデルにおいて、ヒト心房小柱(atrial trabeculae)は、血液不含で生理的に酸素添加した緩衝液の槽に懸濁され、ついで、擬虚血発作にさらされた。この期間のあいだ、収縮力は劇的に減少する。組織が再び酸素にさらされると収縮力は戻るが減退し(60〜70%低下)、クレアチンキナーゼ(CK)の放出により、心筋の損傷の形跡が観察される(Gurevitch et al., 1996; Cleveland et al., 1997)。TNF生物活性が、虚血/再灌流(I/R)のあいだ特異的に中和されると、収縮力のより大きな回復が観察されることにより、虚血事象により誘導される収縮機能障害に内在性心筋TNF活性が寄与することが示唆される(Cain et al., 1999)。
【0029】
Daeman et al.(1999)は、腎虚血のマウスモデルを用いて、虚血とそれに続く再灌流の結果としての、組織の負傷を研究した。彼らは、虚血1日後に、腎臓IL−18mRNAのアップレギュレーションがカスパーゼ−1活性化と同時に起こることを示した。続いて、虚血6日後に、IFN−γおよびIL−12mRNAのアップレギュレーションが起こった。IFN−γ誘導サイトカインIL−12およびIL−18の、別々ではない同時のin vivo中和により、IFNガンマ依存性MHCクラスIおよびIIのアップレギュレーションが、IFN−γの中和と同程度まで減少された。
【0030】
しかしながら、IL−18が心疾患に役割を果たしていることは、今までに記載されていない。
【発明の開示】
【0031】
本発明は、洗い流した(suprafused)ヒト心房心筋の虚血/再灌流モデルにおいて、IL−18の阻害剤が心臓の収縮機能を実質的に改善したという成果に基づく。カスパーゼ−1(ICE)の阻害もまた、虚血および再灌流ののちの収縮力の低下を減じる。
【0032】
さらに、心筋梗塞のモデルマウスにおけるIL−18阻害剤の投与により、生存率が向上し、心室の機能が顕著に改善した。
【0033】
これらの研究は、IL−18の阻害剤が心筋機能障害の治療または予防に適することを示す。
【0034】
したがって、本発明は、心疾患、特に虚血性心疾患および/または心不全の治療および/または予防のための医薬の製造におけるIL−18阻害剤の使用に関する。
【0035】
IL−18阻害剤を病的組織または細胞に送達するための遺伝子治療法を適用するために、本発明はさらに、心疾患の治療および/または予防のための、IL−18阻害剤のコード配列を含む発現ベクターの使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明は、IL−18阻害剤が、心疾患、特に虚血性心疾患に有効であるという成果に基づく。以下の実施例に示すように、さまざまなIL−18阻害剤が虚血後の心筋の発展力に対して著しく有益な効果を示すことが見出された。
【0037】
このことに加え、IL−18阻害剤について心筋梗塞のインビボのモデルで試験したところ、生存率が向上し、心室の機能が顕著に改善した。
【0038】
したがって、本発明は、心疾患の治療および/または予防のための医薬の製造におけるIL−18阻害剤の使用に関する。
【0039】
本発明によると、用語「心疾患」は、心臓の機能障害を含む疾患を包含する。これらは一般に心臓血管障害とも呼ばれる。
【0040】
本発明の好ましい態様において、心疾患は虚血性心疾患である。
【0041】
本明細書において用いられる、用語「虚血性心疾患」は、「背景技術」において詳細に説明したものに限らず、また、心臓血管疾患または虚血性心疾患に関する疾患をも含む、虚血性心疾患の全ての異なるタイプを含む。
【0042】
本発明による使用は、長期間の治療に非常に適し、とくに慢性心疾患に関しての使用に有用である。したがって、本発明の好ましい態様において、虚血性心疾患は慢性である。アンギナ、または狭心症は、虚血性心疾患の長い病歴を有する患者に最も共通する臨床的特徴の1つである。以前に1回または複数回の心筋梗塞があったのちの左心室機能の障害は、左心室不全、最終的にはうっ血性心不全という結果になり得る。したがって、本発明は、さらには狭心症の治療および/または予防のためのIL−18阻害剤の使用に関する。
【0043】
さらに好ましい態様において、虚血性心疾患は急性であり、また、より好ましくは心筋梗塞である。
【0044】
急性の心筋の心疾患または心筋梗塞は通常、心筋、一般には左心室の壊死を伴う。それは、しばしば、血栓またはプラーク出血が蓄積した冠状動脈アテロームによるものである。壊死ののち、炎症性浸潤および繊維性の修復酵素が壊死した筋肉から血液および白血球へ放出され、それらは診断に有用である。急性心筋梗塞の合併症は、不整脈、心不全、心膜血腫を導く心筋破裂、塞栓症を導く壁性血栓および心室瘤を含む。さらに、合併症は、突然死、不整脈、持続的な痛み、アンギナ、心不全、僧帽弁閉鎖不全、心膜炎、心臓破裂(心室痛、隔壁または乳頭筋の痛み)、壁性血栓、心室瘤、ドレスラー症候群(胸痛、熱、滲出)、肺動脈の塞栓(pulmonary emboli)を含む。本発明による医薬は、これらの心筋梗塞の合併症の治療および/または予防にも用いられ得る。
【0045】
さらに好ましい態様において、心疾患は心臓不全(cardiac failure)または心不全(heart failure)である。心臓不全は、心臓が正常な代謝に必要な速度で血液を送り出すことができない病態である。心臓不全のほとんど全ての状態において、心拍出量が減少し、これにより動脈のアンダーフィリング(underfilling)と呼ばれるわずかな低流量灌流(underperfusion)が起こる。身体は、体液を留めることにより血液容量の上昇を補償している。心不全は急性または慢性であり得る。初期の段階で、心臓不全の臨床での徴候は一面的であるようであるが、右および左の心室により共有される心室間の隔壁により、1つの心室の心房(ventricular chamber)の不全に続いてもう一方の不全が起こることは避けられない。心臓不全は虚血性心疾患によるものであり得る。また、全身性高血圧、弁の心疾患(valvular heart disease)、またはうっ血性心不全を導く肺疾患などの他の原因によるものでもあり得る。
【0046】
心不全は、血流力学、腎臓および神経ホルモンの応答が特徴的なパターンとなる徴候性の心筋障害である、うっ血性心不全であり得る。心不全の臨床での徴候は、左心室不全または右心室不全であり得る。心不全は、心臓の収縮または弛緩の機能不全あるいはその両方が原因であることは明白である。心臓の収縮および弛緩の異常が組み合わさることは、よく起こることである。
【0047】
さらに好ましい態様において、心疾患は心筋症である。心筋症は心室の心筋の構造または機能の異常である。
【0048】
本発明の文脈における用語「予防」は、ある種の作用の完全な予防のみならず、疾患の発症前または初期の作用の部分的または実質的な予防、希釈(attenuation)、減少、減退または縮小を言う。
【0049】
本発明の文脈における用語「治療」は、疾患発症後の病理学的進行の希釈、減少、減退または縮小を含む疾患の進行に対するあらゆる有効な作用を言う。
【0050】
本発明の文脈における用語「IL−18の阻害剤」は、IL−18の産生および/または作用を希釈、減少、または部分的に、実質的にもしくは完全に予防または遮断するというようにIL−18の産生および/または作用を調節するあらゆる分子を言う。
【0051】
産生阻害剤はIL−18の合成、プロセシングまたは成熟化に否定的に作用するあらゆる分子であり得る。本発明によって考えられる阻害剤は、たとえばインターロイキンIL−18の遺伝子発現のサプレッサー、IL−18mRNAの転写を減じさせるまたは阻害する、もしくはmRNAを分解させるアンチセンスmRNAs、正しい折りたたみを損傷させる、または部分的もしくは実質的にIL−18の分泌を阻害するタンパク質、いったん合成されたIL−18を分解するプロテアーゼ、カスパーゼ−1阻害剤などの、成熟したIL−18を産生するためにプロ−IL−18を開裂するプロテアーゼの阻害剤などであり得る。
【0052】
IL−18作用の阻害剤は、たとえばIL−18アンタゴニストであり得る。アンタゴニストは、IL−18または、IL−18のそのリガンド(たとえばその受容体)への結合を招くIL−18結合部位を部分的または実質的に中和するために、充分な親和性および特異性でIL−18分子自身と結合することまたはIL−18分子自身を隔離することができる。アンタゴニストはまた、IL−18/受容体の結合に際して細胞内で活性化するIL−18シグナル経路をも阻害し得る。
【0053】
IL−18作用の阻害剤はまた、可溶性IL−18受容体またはその受容体に似た分子、またはIL−18受容体を遮断する薬剤、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体などのIL−18抗体、またはIL−18とその標的との結合を阻害するその他のあらゆる薬剤または分子でもあり得、したがって、IL−18によって仲介される細胞内または細胞外の反応の誘因を減少または阻害する。
【0054】
本発明の好ましい態様において、IL−18阻害剤は、カスパーゼ−1(ICE)の阻害剤、IL−18に対する抗体、IL−18受容体のあらゆるサブユニットに対する抗体、IL−18シグナル伝達経路の阻害剤、IL−18と拮抗およびIL−18受容体を遮断するIL−18のアンタゴニスト、ならびにIL−18の生物学的活性を阻害するIL−18結合タンパク質、それらのアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質、機能的な誘導体、活性断片または循環変更(circularly permutated)誘導体から選択される。
【0055】
本明細書において、用語「IL−18結合タンパク質」は、「IL−18結合タンパク質」または「IL−18BP」と同義として使用される。それは、国際公開第99/09063号パンフレットまたはNovick et al., 1999において定義される、IL−18結合タンパク質のスプライシング変異体および/またはアイソフォームを含むIL−18結合タンパク質、Kim et al., 2000において定義されるIL−18と結合するIl−18結合タンパク質を含む。とくに、本発明によると、IL−18BPのヒトのアイソフォームaおよびcは有用である。本発明により有用なタンパク質は、グリコシル化または非グリコシル化されていてもよく、尿などの天然源に由来していてもよく、また、好ましくは組換え的に産生され得る。組換え体の発現は、大腸菌など原核生物の発現系、または真核生物、好ましくは哺乳動物、の発現系で行なわれ得る。
【0056】
本明細書中で使用されるように、用語「ムテイン」は、天然のIL−18BPまたはウイルス性IL−18BPの1つ以上のアミノ酸残基が異なるアミノ酸残基に置換または欠失され、または、IL−18BPまたはウイルス性IL−18BPの天然の配列に1つ以上のアミノ酸残基が付加され、野生型のIL−18BPまたはウイルス性IL−18BPと比較して、得られた産物の活性があまり変化していない、IL−18BPのアナログまたはウイルス性IL−18BPのアナログを示す。それらのムテインは、既知の合成および/または位置指定突然変異誘発技術、またはこの場合に適した他の既知の技術によって製造される。
【0057】
本発明によると、ムテインは、本発明にしたがいストリンジェントな条件下で、IL−18またはウイルス性IL−18BPをコードするDNAまたはRNAにハイブリダイズするDNAまたはRNAなどの核酸によってコードされるタンパク質を含む。用語「ストリンジェントな条件」とは、当業者が通常「ストリンジェント」と言う、ハイブリダイゼーションおよびそのあとの洗浄の条件を言う。Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, supra, Interscience, N. Y., §§6.3 and 6.4 (1987, 1992)、およびSambrook et al., supra参照。制限がない場合、ストリンジェントな条件の例は、洗浄条件が研究において算出されたハイブリッドするTm以下である12〜20℃で、たとえば2×SSCおよび0.5%のSDSを5分間、2×SSCおよび0.1%のSDSを15分間;0.1×SSCおよび0.5%のSDSを37℃で30〜60分間、ついで0.1×SSCおよび0.5%のSDSを68℃で30〜60分間であること含む。当業者であれば、ストリンジェントな条件がDNA配列、オリゴヌクレオチドプローブ(たとえば10〜40塩基対)または混合オリゴヌクレオチドプローブの長さに依存することは理解される。もしプローブを混合して用いる場合、SSCの代わりにテトラメチルアンモニウムクロライド(TMAC)を用いることが好ましい。Ausubel, supra参照。
【0058】
そのようなムテインは、好ましくは、IL−18BPと同様の活性を有するほど、IL−18BPの配列に充分似た、またはウイルス性IL−18BPに充分似たアミノ酸配列を有する。IL−18BPの1つの活性は、IL−18に結合する能力である。ムテインがIL−18に対する実質的な結合能力を有するかぎり、アフィニティークロマトグラフィーの方法などによって、IL−18の精製において使用することができ、IL−18BPと実質的に類似した活性を有すると考えることができる。したがって、得られたムテインが、IL−18BPと実質的に同じ活性を有するかどうかは、たとえば、放射線免疫検定法またはELISA法などの適宜ラベルされたIL−18にムテインが結合するかどうか決定するための単純なサンドウィッチ競合アッセイにそのムテインを供することからなるルーチンの実験方法によって、決定されることができる。
【0059】
好ましい態様において、そのようなムテインはいずれも、国際公開第99/09063号パンフレットにおいて定義されるように、IL−18BPまたはウイルスにコードされたIL−18のホモログのいずれかの配列と少なくとも40%の同一性または相同性を有する。より好ましくは、ムテインはそれらと少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、もっとも好ましくは少なくとも90%の同一性または相同性を有する。
【0060】
本発明において使用されることができる、IL−18BPポリペプチドのムテインまたはウイルス性IL−18BPsのムテイン、もしくはそれをコードする核酸は、本明細書中で紹介された教示および指導に基づいて、過度の実験をすることなく、当業者によって決まりきった手順で得られる置換ペプチドまたはポリヌクレオチドと実質的に一致する配列の有限の一群を含む。
【0061】
本発明におけるムテインの好ましい変更は、「保存的な」置換として知られるものである。IL−18BPポリペプチドまたはタンパク質またはウイルス性IL−18BPsの保存的なアミノ酸置換は、メンバー間における置換は分子の生物学的機能を保存しているという、実質的に類似した物理化学的な特性を有する群における同義アミノ酸を含み得る(Grantham, 1974)。とくに挿入または欠失が、たとえば30以下、好ましくは10以下のわずかなアミノ酸に関するのみであり、たとえばシステイン残基など機能的構造に重要なアミノ酸の除去または入れ替えをしない場合、アミノ酸の挿入および欠失もまた、その機能を変化させることなく前記配列においてなされることは明らかである。このような欠失および/または挿入によって産生されるタンパク質およびムテインは、本発明の範囲内である。
【0062】
好ましくは、同義アミノ酸群は表1に示されているものである。より好ましくは、同義アミノ酸群は表2に示されているものであり;最も好ましくは、同義アミノ酸群は表3に示されているものである。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
本発明において使用されるための、IL−18BPのポリペプチドもしくはタンパク質のムテイン、またはウイルス性IL−18BPsのムテインを得るために用いられ得る、タンパク質のアミノ酸置換の産生の例は、マーク(Mark)らによる米国特許第4,959,314号明細書、同第4,588,585号明細書および同第4,737,462号明細書;コース(Koths)らによる同第5,116,943号明細書、ナーメン(Namen)らによる同第4,965,195号明細書、コング(Chong)らによる同第4,879,111号明細書、リー(Lee)らによる同第5,017,691号明細書などにおいて示された周知の方法手順;および米国特許第4,904,584号明細書に示されたリジン置換タンパク質(Shaw et al)を含む。
【0067】
用語「融合タンパク質」は、たとえば体液内において長期の滞在時間を有する他のタンパク質と融合された、IL−18BPまたはウイルス性IL−18BPまたはそのムテインもしくは断片からなるポリペプチドのことを言う。IL−18BPまたはウイルス性IL−18BPは、このようにたとえば免疫グロブリンまたはその断片といった他のタンパク質、ポリペプチドなどと融合され得る。
【0068】
本明細書中で用いられる「機能的誘導体」は、本技術分野において周知の方法で、残基またはN末もしくはC末基の側鎖として存在する官能基から調整され得るIL−18BPsまたはウイルス性IL−18BPの誘導体、ならびに、そのムテインおよび融合タンパク質を含み、薬学的に許容し得るかぎり、すなわちIL−18BPまたはウイルス性IL−18BPsの活性と実質的に類似しているタンパク質の活性を破壊せず、それを含む組成物において毒性を与えないかぎり、本発明に含まれる。
【0069】
それらの誘導体は、たとえば、抗原部位を覆い、体液内でIL−18BPまたはウイルス性IL−18BPの滞留を延ばし得るポリエチレングリコール側鎖を含み得る。他の誘導体は、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニアまたは第一級もしくは第二級アミンを用いた反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部分(たとえばアルカノイル基または炭素環式アロイル基)で形成されるアミノ酸残基の遊離アミノ基のN−アシル誘導体、アシル部分で形成される遊離水酸基(たとえばセリルまたはトレオニル残基)のO−アシル誘導体を含む。
【0070】
IL−18BPまたはウイルス性IL−18BP、ムテインおよび融合タンパク質の「活性断片」がIL−18BPと実質的に類似した活性を有する場合、本発明では、該断片として、タンパク質分子のポリペプチド鎖の断片または前駆体のみまたはそれと結合する関連分子もしくは残基(たとえば糖もしくはリン酸塩残基、またはタンパク質分子もしくは糖残基自身の集合体)を伴うタンパク質分子のポリペプチド鎖の断片または前駆体を含む。
【0071】
本発明のさらに好ましい態様において、IL−18阻害剤は、IL−18またはその受容体(すなわちIL−18R)に対する抗体である。IL−18Rαおよびβと呼ばれるIL−18Rのサブユニットのいずれかに対する抗体は、本発明によって用いられ得る。
【0072】
本発明による抗体は、ポリクローナルもしくはモノクローナル、キメラ、ヒト化した、または完全にヒトのものであり得る。組換え抗体およびその断片は、インビボにおいてIL−18またはIL−18Rと結合する高い親和性および低毒性によって特徴付けられる。本発明において用いることができる抗体は、病的な症状またはあらゆる徴候または病的な症状に関連する徴候群を極めて軽減または緩和するために充分な期間、患者を治療することができる能力、および低毒性によって特徴付けられる。
【0073】
中和抗体は、IL−18またはIL−18Rαもしくはβで免疫されたウサギ、ヤギまたはマウスなどの動物によって容易に作製することができる。免疫されたマウスはとくに、ハイブリドーマの製造するためのB細胞の供給源を提供するのに有効であり、その結果、ハイブリドーマは大量の抗IL−18モノクローナル抗体を産生するために培養される。
【0074】
キメラ抗体は、さまざまな動物種由来の2つまたはそれ以上の切片または一部によって特徴づけられた免疫グロブリン分子である。一般的に、キメラ抗体の可変領域は、マウスモノクローナル抗体のようなヒトではない哺乳動物の抗体由来であり、免疫グロブリンの定常領域はヒトの免疫グロブリン分子由来である。好ましくは、両方の領域およびその組み合わせは、決まりきった手順によって決定されたように低い免疫原性を有する(Elliott et al., 1994)。ヒト化抗体は、マウスの定常領域をマウスの抗原結合領域は残したままヒトの対応物で置き換えるという、遺伝子工学技術によって創出された免疫グロブリン分子である。得られるマウス−ヒトキメラ抗体は、ヒトにおいて、好ましくは免疫原性が減少し、薬物動態が改善される(Knight et al., 1993)。
【0075】
したがって、さらに好ましい態様において、IL−18またはIL−18Rの抗体はヒト化抗体である。ヒト化抗IL−18抗体の好ましい例は、たとえば欧州特許出願第0974600号明細書に記載されている。
【0076】
さらになお好ましい態様において、抗体は、完全にヒト由来のものである。ヒト抗体を産生する技術は、たとえば国際公開第00/76310号パンフレット、国際公開第99/53049号パンフレット、米国特許第6,162,963号明細書またはオーストラリア特許第5336100号明細書に詳細に記載されている。
【0077】
完全なヒト抗体を作製するための方法の1つは、マウス体液の免疫系の「ヒト化」、すなわち、内因性のIg遺伝子を不活化されたマウスにヒトの免疫グロブリン(Ig)座を導入することによる、ヒトIgを産生することができるマウス株(異種マウス(Xenomice))の作製からなる。該Ig座は、物理的な構造、遺伝子の再編成、および最終的に幅広い免疫応答を産み出すのに必要な発現過程のどの点に関しても複合的である。抗体の多様性は、まずIg座に存在するさまざまなV、DおよびJ遺伝子間でのコンビナトリアル再編成によって産み出される。これらの座もまた、抗体の発現、アレルの排除、クラススイッチ、および親和性の成熟化などを制御する点在した調節因子を含有する。再編成しないヒトのIg導入遺伝子のマウスへの導入によって、マウス組換え機構がヒト遺伝子に適合することが証明された。さらに、抗原特異的なhu−mAbsのさまざまなアイソタイプを分泌するハイブイリドーマは、異種マウスに抗原を用いて予防接種することによって得ることができる。
【0078】
完全なヒト抗体およびその産生方法は、本技術分野において周知である(Mendez et al (1997); Buggemann et al (1991); Tomizuka et al., (2000) 特許国際公開第98/24893号パンフレット)。
【0079】
本発明の非常に好ましい実施態様において、IL−18阻害剤は、IL−18BPまたはそのアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質、機能的な誘導体、活性断片もしくは循環変更誘導体である。それらアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質または機能的な誘導体は、とくにIL−18と結合するというIL−18BPの生物学的活性を残し、好ましくは、本質的には少なくともIL−18BPと類似した活性を有する。理想的には、そのようなタンパク質は、非修飾のIL−18BPと比較して増大した生物学的活性を有する。好ましい活性断片は、IL−18BPの活性よりも優れた活性を有するか、もしくはより優れた安定性またはより低い毒性もしくは免疫原性などのさらなる利点を有し、または大量に産生することがより容易であるか、もしくは精製がより容易である。
【0080】
IL−18BPおよびそのスプライシング変異体/アイソフォームの配列は、2000年のキムらによるものだけでなく、国際公開第99/09063号パンフレットまたは1999年のノービックらによって提供される。
【0081】
IL−18BPの機能的誘導体は、安定性、半減期、生物学的利用能、人体による寛容または免疫原性などのタンパク質の性質を改善するために、ポリマーと結合されてもよい。これらの目標を達成するために、IL−18BPはたとえばポリエチレングリコール(PEG)と結合されてもよい。ポリエチレングリコール化(PEGylation)は、たとえば国際公開第92/13095号パンフレットに記載されている周知の方法によって行なわれる。
【0082】
したがって、本発明の好ましい態様において、IL−18阻害剤、とくにIL−18BPはポリエチレングリコール化される。
【0083】
本発明のさらに好ましい態様において、IL−18阻害剤は、免疫グロブリンの融合からなる。すなわち、IL−18阻害剤は、免疫グロブリンの全てまたは一部に融合したIL−18結合タンパク質の全てまたは一部からなる融合タンパク質である。免疫グロブリンの融合タンパク質の作製方法は、たとえば国際公開第01/03737に記載されている方法のように、本技術分野において周知である。当業者であれば、得られた本発明の融合タンパク質が、とくにIL−18への結合といったIL−18BPの生物学的活性を保持することを理解するだろう。融合は、直接または、1から3アミノ酸残基の長さ、またはより長いたとえば13から20アミノ酸残基の長さの短いリンカーペプチドを介してなるものであってよい。該リンカーは、たとえば配列E−F−M(Glu−Phe−Met)のトリペプチド、またはIL−18BP配列と免疫グロブリン配列とのあいだに導入されるGlu−Phe−Gly−Ala−Gly−Leu−Val−Leu−Gly−Gly−Gln−Phe−Metからなる13アミノ酸リンカー配列であり得る。得られる融合タンパク質は、体液内での長い滞留時間(半減期)、増大した特異的な活性、上昇した発現レベルまたは融合タンパク質の精製が容易になるなどの改善された性質を有する。
【0084】
好ましい態様において、IL−18BPはIg分子の定常領域に融合される。好ましくは、それは、たとえばヒトのIgG1のCH2およびCH3ドメインのような重鎖領域に融合される。IL−18BPおよび免疫グロブリンの部分からなる特異的な融合タンパク質の産生は、たとえば国際公開第99/09063号パンフレットの実施例11に記載されている。IgG2もしくはIgG4、またはたとえばIgMもしくはIgAのような他のIgクラスのアイソフォームなど、Ig分子の他のアイソフォームもまた、本発明における融合タンパク質の産生に適する。融合タンパク質は、モノマーまたはマルチマー、ヘテロもしくはホモのマルチマーであり得る。
【0085】
なお、本発明のさらなる態様において、IL−18阻害剤はTNFアンタゴニストと組み合わせて用いられる。TNFアンタゴニストは、いくつかの方法でその活性を発揮する。まず、アンタゴニストは、TNFエピトープまたはTNF受容体結合能力を有するエピトープを部分的または実質的に中和するために充分な親和性および特異性により、TNF分子そのものに結合またはTNF分子そのものを隔離することができる(以下「隔離アンタゴニスト」と呼ぶ)。隔離アンタゴニストは、たとえば、TNFに対する抗体である。
【0086】
あるいはまた、TNFアンタゴニストは、TNF結合後、細胞表面の受容体によって活性化されるTNFシグナル経路を阻害することができる(以下「シグナリングアンタゴニスト」と呼ぶ)。アンタゴニストの両群は、心疾患の治療または予防において、IL−18阻害剤と組み合わせて、単独または併用のどちらでも有益である。
【0087】
TNFアンタゴニストは、たとえばTNFによって増殖および免疫グロブリン分泌を引き起こすヒトB細胞といった、インビトロでの感受性細胞株における本来のTNF活性に対するTNFアンタゴニストの効果に関して、候補をルーチンにスクリーニングすることによって容易に同定、評価される。そのアッセイは、たとえばアッセイで用いられるTNFのモル量のたとえば0.1から100倍で候補アンタゴニストの希釈度を変化させるTNF処方、およびTNFなしまたはアンタゴニストのみの対照を含む(Tucci et al., 1992)。
【0088】
隔離アンタゴニストは、本発明によって用いられる好ましいTNFアンタゴニストである。隔離アンタゴニストのなかでも、高い親和性でTNFに結合し、低い免疫原性を有するポリペプチドが好ましい。可溶性のTNF受容体分子およびTNFに対する中和抗体は、とくに好ましい。たとえば、可溶性のTNF−RIおよびTNF−RIIは、本発明において有効である。その受容体の細胞外ドメインまたはその機能的部分からなる切断型のそれらの受容体は、本発明によると、よりとくに好ましいアンタゴニストである。切断型の可溶性のI型TNF受容体およびII型TNF受容体は、たとえば欧州特許第914431号明細書に記載されている。
【0089】
切断型のTNF受容体は、可溶性であり、尿および血清において30kDaおよび40kDaのTNF阻害結合タンパク質として検出され、それぞれTBPIおよびTBPIIと呼ばれている(Engelmann et al., 1990)。同時に、連続的にまたは別々にTNFアンタゴニスト伴うIL−18阻害剤の使用は、本発明によると好ましい。
【0090】
さらに好ましい態様において、ヒトの可溶性TNF−RI(TBPI)は、本発明によって使用されるTNFアンタゴニストである。天然および組換えの可溶性TNF受容体分子ならびにその産生方法は、欧州特許第308378号明細書、欧州特許第398327号明細書および欧州特許第433900号明細書において記載されている。
【0091】
その受容体分子の誘導体、断片、領域および生物学的に活性な部分は、機能上、本発明においても用いられ得る受容体分子に類似している。そのような受容体分子の生物学的活性の等価物または誘導体は、充分なサイズであり、膜結合TNF受容体との相互作用が阻害または遮断されるような親和性でTNFと結合することができる受容体分子をコードするポリペプチドまたは配列の部分を言う。
【0092】
IL−18阻害剤は、TNF阻害剤と同時に、連続的にてまたは別々に用いられ得る。
【0093】
本発明によると、医薬は、IL−18阻害剤と組み合わせて、硝酸塩、たとえばニトログリセン、利尿薬、ACE阻害剤、ジギタリス、ベータ−遮断薬、またはカルシウム遮断薬などの心疾患の治療のために用いられる既知の薬剤をさらに含有し得る。該活性成分は、同時に、連続的にまたは別々に用いられ得る。
【0094】
本発明のさらに好ましい態様において、IL−18阻害剤は、約0.001〜100mg/kg、または約1〜10mg/kgまたは約2〜5mg/kgの量で使用される。
【0095】
本発明のIL−18阻害剤は、全身、および好ましくは皮下または筋肉内に投与されるのが好ましい。
【0096】
本発明はさらに、心疾患の予防および/または治療用の医薬の製造における、IL−18阻害剤のコード配列からなる発現ベクターの使用に関する。したがって、遺伝子治療的アプローチは、IL−18阻害剤を必要とする部位にIL−18阻害剤を送達するために考慮される。心疾患を治療および/または予防するために、IL−18阻害剤の配列からなる遺伝子治療ベクターは、病的組織に直接注入される。たとえば、遺伝子治療ベクターの全身投与には、標的細胞または組織に到達および標的するベクターの希釈、ならびに副作用という避けるべき問題が含まれる。
【0097】
通常IL−18阻害剤が発現されていない細胞、または阻害剤の発現量が充分ではない細胞において、IL−18阻害剤の内因的な産生を誘導および/または増強するためのベクターの使用もまた、本発明において意図される。そのベクターは、IL−18阻害剤を発現することが所望される細胞において機能する調節配列からなる。そのような調節配列は、たとえばプロモーターまたはエンハンサーであり得る。その調節配列は、そののち相同組換えによってゲノムの適当な座に導入されてもよく、したがって使用可能に調節配列と遺伝子とを結合させることにより必要とされる発現が誘導または増強される。その技術は、通常「内在性遺伝子活性化」(EGA)と呼ばれ、たとえば国際公開第91/09955号パンフレットに記載されている。
【0098】
同じ技術で、IL−18阻害剤を用いずに直接IL−18の発現を抑えることが可能であることは、当業者によって理解されるであろう。そのようにするためには、たとえばサイレンシング因子のような負の調節因子をIL−18の遺伝子座に導入することによって、IL−18発現のダウンレギュレーションまたは予防を導くことができる。そのようなIL−18発現のダウンレギュレーションまたはサイレンシングが、疾患を予防および/または治療するためのIL−18阻害剤の使用と同じ効果を有することは、当業者に理解されるであろう。
【0099】
本発明はさらに、心疾患の治療および/または予防用医薬の製造における、IL−18阻害剤を産生するために遺伝子的に改変された細胞の使用に関する。
【0100】
本発明により使用されるIL−18阻害剤は、好ましくは、医薬組成物として、任意に治療に有効な量のTNF阻害剤と組み合わせて投与され得る。
【0101】
IL−18BP、およびそのアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性断片または循環変更誘導体が、前記したように、医薬組成物の好ましい活性成分である。
【0102】
「薬学的に許容し得る」という定義は、活性成分の生物学的活性の効果を妨げず、投与される宿主に対する毒性がないあらゆる担体を包含することを意味する。たとえば、非経口投与において、活性タンパク質は、食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミンおよびリンガー液などのビヒクルで注射用の単位投与形態に処方されてもよい。
【0103】
本発明の医薬組成物の活性成分は、さまざまな方法で個体に投与され得る。投与経路は、皮内、経皮的(たとえば、徐放性製剤で)、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、頭蓋内、硬膜外、局部および鼻腔内の経路を含む。その他に、たとえば上皮または内皮組織を介した吸収作用、または活性剤をコードするDNA分子を(ベクターを介して)患者に投与し、インビボでその活性剤を発現および分泌させる遺伝子治療を、治療に有効な投与経路として用いることができる。さらに、本発明におけるタンパク質は、薬学的に許容し得る界面活性剤、賦形剤、担体、希釈剤およびビヒクルなどの、生物学的活性剤の他の成分と共に投与することができる。
【0104】
非経口(たとえば、静脈内、皮下、筋肉内)投与に対して、活性タンパク質は、薬学的に許容し得る非経口ビヒクル(たとえば、水、食塩水、デキストロース溶液)および等脹を維持する添加物(たとえばマンニトール)または化学的安定性を維持する添加物(たとえば防腐剤および緩衝液)とともに、溶液、懸濁液、乳液または親水性の粉末として製剤化され得る。その製剤は、通常用いられる技術によって滅菌される。
【0105】
本発明における活性タンパク質の生物学的利用能もまた、PCT特許出願の国際公開第92/13095号パンフレットに記載されているように、たとえば分子をポリエチレングリコールに結合するなど、ヒトの体内での分子の半減期を延ばす接合方法を用いることによって改良されることができる。
【0106】
活性タンパク質の治療に有効な量は、アンタゴニストのタイプ、IL−18に対するアンタゴニストの親和性、アンタゴニストによって示される未解決の細胞毒性の活性、投与経路、患者の臨床症状(内因性のIL−18活性を非毒性レベルに維持するという望ましさを含む)を含む、多くの変数の関数であるだろう。
【0107】
「治療に有効な量」とは、投与した場合、IL−18阻害剤がIL−18の生物学的活性を阻害する結果となる量である。単回投与または複数回投与として固体に投与される用量は、IL−18阻害剤の薬学動態特性、投与経路、患者の症状および特徴(性別、年齢、体重、健康状態、大きさ)、症状の程度、同時進行中の治療、治療頻度および望ましい効果を含むさまざまな因子に依存して変化するであろう。確立された投与量範囲の調整および取扱いは、個体においてIL−18の阻害を測定するインビトロおよびインビボ方法と同様、当業者の能力の充分範囲内である。
【0108】
本発明によれば、IL−18阻害剤は、約0.001〜100mg/kg体重または約0.01〜10mg/kg体重、または約0.1〜5mg/kg体重または約1〜3mg/kg体重または約2mg/kg体重の量で使用される。
【0109】
本発明において好ましい投与経路は、皮下経路による投与である。筋肉内投与は、本発明においてさらに好ましい。IL−18阻害剤をその作用させる場所に直接投与するために、局所的に投与することも好ましい。
【0110】
さらに好ましい態様において、IL−18阻害剤は、毎日または1日おきに投与される。
【0111】
毎日の投与は、望ましい結果を得るために有効な、間隔をあけた投与または持続的な放出剤形で通常与えられる。2回目または継続的な投与は、個体に最初またはあらかじめ投与された用量と同じ、それ以下またはそれ以上の用量で行なうことができる。2回目または継続的な投与は、疾患の発症中またはそれ以前に投与されることができる。
【0112】
本発明によれば、IL−18阻害剤は、治療に有効な量で、事前に、またはほかの治療養生法または薬剤(たとえば多剤養生法)、とくにTNF阻害剤および/またはほかの心保護剤(cardioprotective agent)と同時に、または連続的に、個体に予防的または治療的に投与されることができる。他の治療薬と同時に投与される活性剤は、同じまたは異なる組成物で投与されることができる。
【0113】
本発明はさらに、薬学的に許容し得る担体と有効量のIL−18阻害剤および/またはTNFアンタゴニストを混合することからなる医薬組成物の製造方法に関する。
【0114】
本発明はさらに、心疾患の治療方法であって、医薬的に有効量のIL−18阻害剤を、任意には、薬学的に有効量のTNFアンタゴニストと組み合わせて、治療を必要とする患者に投与することからなる心疾患の治療方法に関する。
【0115】
今や充分に本発明について記載したが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、および過度な実験を必要とせずに、同様のことが広範囲の同等の条件、濃度および症状で行なうことができることは、当業者に理解されるであろう。
【0116】
本発明は、その特異的な態様と関連付けて記載されているけれども、さらなる改変が可能であることは理解されるであろう。この出願は、本発明が属する技術分野において既知もしくは習慣的な実施の範囲にあるような、また、以下の添付するクレームの範囲内の先に述べた必須の性質に適用し得るような、本発明の開示からの変更を含む本発明の原理を受けた、本発明のあらゆる変化、使用または適合を含むことを意図するものである。
【0117】
雑誌の論文もしくは要約、公開されたもしくは公開されていない米国もしくは外国特許出願、公布された米国もしくは外国特許またはそのほかの参考文献を含む、本明細書で引用されたすべての参考文献は、該引用文献で紹介された全てのデータ、表、図および文章を含めて、完全に本発明での言及によって包含されている。したがって、本明細書で引用された参考文献内で引用された参考文献の完全な内容もまた、言及によって完全に包含される。
【0118】
既知の方法手段、常套的な方法手段、既知の方法または常套的な方法への言及は、本発明のあらゆる局面、記載または実施態様が関連技術において開示、教示または示唆されるものであると認めるものではない。
【0119】
特別な実施態様を先行する記載は、第三者が本技術分野の知識(本明細書で引用された参考文献の内容を含む)を適用することによって、過度の実験をすることなく、本発明の全体的な概念から逸脱することなく、特別な実施態様などのさまざまな適用のために、容易に修飾および/または適応させることができるほど、本発明の全体的な性質を充分に示すものであろう。したがって、本明細書で紹介された教示および手引きに基づいて、そのような適応および修飾は、開示された実施態様と同等の範囲の意味であると意図される。本明細書の用語または術語は、本明細書で紹介された教示および手引きによる見地と当業者の知識とを組み合わせて、当業者に理解されるものであるため、本明細書での用語または術語は、説明を目的とするものであって限定するためのものではない。
【実施例】
【0120】
実施例1:IL−18の阻害はインビトロにおける心筋虚血機能障害を減少する
材料および方法
試薬
IL−18BPaアイソフォームはチャイニーズハムスター卵巣細胞においてN末端(His)6タグを伴い発現され、均質に精製された。IL−18を中和するためのIL−18BPa−(His)6の能力は述べられている(Kim et al., 2000)。ICE阻害剤(ICEi)Ac−Try−Val−Ala−Asp−クロロメチルケトン(YVAD)は、アレキス バイオケミカルズ(Alexis Biochemicals)(サンディエゴ)から購入し、DMSOに10mg/mlで溶解した。ICEiは使用前にタイロード溶液で希釈した。ELISAによって測定された場合、ヒトの末梢血単核細胞において、ICEiにより成熟IL−1βのエンドトキシンに誘導される分泌が92%まで減少した(シストロン バイオテクノロジー(Cistron Biotechnology)、パイン ブルック(Pine Brook)、ニュージャージー)。
【0121】
単離された心房小柱
人工心肺を用いる選択的な冠動脈バイパス手術を受ける患者は、右心房へカニューレの挿入が必要である。そのとき、右心耳の小片がルーチンに切開および除去される。小柱はその取り除かれた組織から得られた。ヒトの心房組織は、酸素添加改変タイロード緩衝溶液に4℃で置かれた。改変タイロード溶液は、脱イオン蒸留水で毎日調製され、5.0mmol/リットルのD−グルコース、2.0mmol/リットルのCaCl2、118.0mmol/リットルのNaCl、4.0mmol/リットルのKCl、1.2mmol/リットルのMgSO4・7H2O、25.0mmol/リットルのNaHCO3、1.2mmol/リットルのNaH2PO4を含有する。基質の入っていないタイロード溶液は、浸透圧モル濃度を維持するために7mmol/リットルの塩化コリンを含有する。別段の表示がない限り、化学薬品および試薬はシグマ(Sigma)から入手した。2から4の小柱(4〜7mmの長さで、かつ<1.0mmの直径)を力の変換器に取り付け、改変タイロード溶液(92.5%のO2/7.5%のCO2の混合物が酸素正常状態中に泡立っている)の温められた(37℃)30mlの浴槽に浸漬した。この気体の混合物は、>350mmHg(1mmHg=133Pa)のO2分圧、36〜40mmHgのCO2分圧、7.35〜7.45のpHを備える。各パラメーターは、自動血液ガス分析器を用いてルーチンに検査された。臓器の浴槽の温度は、実験を通して37℃に維持された。擬似虚血のあいだ、気体の混合物は92.5%のN2/7.5%のCO2に切り替えられた。この混合物は<50mmHgのO2分圧を生じる。緩衝溶液は、30分間の擬似虚血のあいだを除いて、20分毎に交換した。
【0122】
実験の構想
小柱は、基準伸長力を1000mgまで上昇させるため、および発展力を安定化させるために、90分間均衡に保った。250mg以上の発展力が生じなかった小柱は研究から除外した。90分間の平衡のあいだ、プラチナ電極(Radnoti Glass, Monrovia, CA)を用いて場刺激(field stimulation)に対してペーシング(pacing)を行なった。電極は小柱の両側に設置され、閾値より20%高い電圧で6msパルス刺激し(Grass SD9 stimulator, Warwick, RI)、酸素正常状態のあいだは1Hz、虚血のあいだは3Hzで置いた。収縮は力変換器(Grass FT03)によってモニターされ、コンピュータ処理化プリアンプおよびデジタイザ(MacLab Quad Bridge, MacLab/8e, AD Instruments, Milford, MA)により記録され、連続してマッキントッシュコンピュータでモニターされた。
【0123】
平衡ののち、一人の患者由来の小柱は3つの実験条件(90分間の酸素正常状態の過融解(suprafusion)からなる対照条件;30分間の擬似虚血ののち45分間の再灌流からなるI/R;および抗サイトカイン干渉からなる第3の条件)下で研究された。後者の場合、抗サイトカインは過融解浴槽に虚血の開始直前に添加され、45分間の再灌流のあいだ中、存在した。
【0124】
保存された小柱のCK活性
再灌流を終えた組織(90分)のCK活性を、記載されているように決定した(Keplan et al., 1993)。組織を、100容量の氷冷された等張抽出緩衝液中でホモジナイズした(Cleveland et al., 1997, Keplan et al., 1993)。分析はCKキット(シグマ)で自動分光光度計を用いて行なった。結果を1mg(組織の湿重量)当たりのCK活性の単位で表わした。
【0125】
RNAの単離と逆転写共役PCR(Reverse Transcription-Coupled PCR)
新鮮な小柱をTri−Reagent(Molecular Research Center, Cincinnati)でホモジナイズし、全RNAをクロロホルム抽出およびイソプロパノール沈殿により単離した。RNAをジエチルピロカーボネイト処理水に溶解し、DNase処理、ついでGeneQuant(Amersham Pharmacia Biotech)により定量した。cDNA法は記載されている(Reznikov et al., 2000)。各PCRには、以下の順序を用いた(95℃で15分間の予熱、ついで94℃を40秒間、55℃を45秒間、72℃を1分間のサイクル、72℃で10分間の最後の伸長期)。適切なサイクル数は、35回と決定した。グリセルアルデヒド−3−ホスフェート デヒドロゲナーゼ(GAPDH)およびヒトIL−18に対するプライマー(Reznikov et al., 2000)ならびにヒトIL−18BPaに対するプライマー(Kim et al., 2000)が報告されている。PCR産物は、0.5mg/mlのエチジウム ブロマイドと、0.5×TBE(50mM Tris/45mM ホウ酸/0.5mM EDTA、pH8.3)を含有する1.5%のアガロースゲル上で分離し、UV照射によって視覚化し、撮影した。ネガティブ像(IMAGEQUANT software, Molecular Dynamics)でデンシトメトリーを行ない、IL−18およびIL−18BPのPCR産物の関連吸光度は、GAPDHで得られた吸光度に対して補正した。
【0126】
IL−18決定
CK測定のために、新鮮な小柱を前記のようにホモジナイズした。IL−18を液相電気化学発光(ECL, Igen, Gaithersburg, MD)で分析した。マウス抗ヒトIL−18mAb(R & D Systems)をルテニウム(Igen)で標識した。さらに、アフィニティー−精製(affinity-purified)ヤギ抗ヒトIL−18抗体(R & D)をビオチン(Igen)で標識した。ビオチン標識抗体は、0.25%のBSA、0.5%のTween−20および0.01%のアジ化物を含有するPBS(pH7.4)(ECL緩衝液)で、最終濃度1μg/mlまで希釈した。分析チューブ毎に、室温で25μlのストレプトアビジンでコートされた常磁性のビーズ(Dynal, Great Neck, NY)とともに1μg/μlで30分間力いっぱい振とうすることによって、25μlのビオチン標識抗体をプレインキュベーションした。被験試料(25μl)または標準をチューブに添加し、ついで25μlのルテニウム標識抗体(最終濃度、1μg/μl、ECL緩衝液で希釈)を添加した。チューブはそののち24時間振とうした。200μl/チューブのPBSの添加によって反応を止め、化学発光の量をOrigen Analyzer(Igen)で測定した。IL−18の検出限界は16pg/mlである。
【0127】
人工心肺のカニューレの挿入のあいだに得られたヒトの心房組織の共焦点顕微鏡検査を、1cmのプラスチックホルダーに設置し(Meldrum et al., 1998)、埋め込み、ついでドライアイスで冷やされたイソペンタン上で組織凍結培地(Triangle Biomedical Sciences, Durham, NC)で凍結させた。凍結切片(5μm)はLeica CM 1850冷却器(Leica, Deerfield, IL)上で切断した。スライドを10分間、4%のパラホルムアルデヒドで固定し、風乾し、20分間10%の標準ヤギ血清を補充したPBSでインキュベーションした。1:100希釈のウサギ抗ヒトIL−18抗体(Peprotech, Rocky Hill, NJ)、または陰性対照として免疫していないウサギIgGを1μg/mlで、切片をインキュベーションした。抗体は1%BSAを含有するPBSで希釈された。一晩4℃でインキュベーションしたのち、切片を0.5%のBSAを含有するPBSで3回洗浄した。ついで、切片をAlexa488(Molecular Probes)と接合した二次ヤギ抗ウサギ抗体で60分間室温で暗室においてインキュベーションした。核は、1μg/100mlのビスベンジミド(Bisbenzimid)(シグマ)で青色に染色した。染色ののち、切片を洗浄し、Leica DM RXA(Leica)共焦点レーザー走査システムで検査し、Maclntosh(Intelligent Imaging Innovations, Denver)用のSLIDEBOOKソフトウェアで解析した。
【0128】
統計分析
データを平均±SEMで表わす。発展力の平均変化は、各患者の組織における90分間の対照値に対応して計算した。群間の統計的な有意差を、Bonferroni−Dunn post hoc分析によって階乗のANOVAで決定した。統計分析は、STAT−VIEW4.51ソフトウェア(Abacus Concepts, Calabasas, CA)で行なった。
【0129】
結果
虚血後の発展力におけるIL−18BPによる内因性IL−18の中和効果
図1AにI/R損傷に対する小柱の運動応答を示す。平衡の最後の15分間が示され、実験期間の開始時で100%の標準とする。対照の小柱は、実験を通して酸素正常状態下で過融解される。示されるように、対照の小柱において発展力の減少(10%)がある。虚血にさらされた小柱は、収縮機能の急速な低下を示す(再灌流において、収縮力は対照の発展力のおよそ25%まで回復した)。対照的に、虚血にさらされたが、IL−18BPが存在する小柱は、対照の発展力の55%まで回復した。数人の患者からの心臓組織のI/R応答を評価するために、対照小柱において90分に発展力のレベルを、各患者の試料に対して100%とし、実験群における発展力の相対百分率変化を計算した。
【0130】
図1Bに示すように、未処理の小柱(I/R)における虚血後発展力は、対照の平均35%まで減少した。しかしながら、IL−18BPが存在する場合、それぞれ、1μg/mlのとき対照の平均66.2%まで、5μg/mlのとき対照の平均76%まで減少した。これらの結果から、I/Rが内因性のIL−18前駆体をICEによりプロセシングしたのち、生物学的に活性なIL−18を放出することが示唆される。したがって、新しく得られた心房組織においてIL−18を測定した。図2に示されるように、右心房に人工心肺カニューレを挿入する前に得られた小柱中には基礎的なIL−18が存在する。90分間の平衡、30分間の虚血、および45分間の再酸化ののち、小柱をホモジナイズし、IL−18レベルを決定した。I/Rののち組織内のIL−18の上昇は4.5倍であった(図2)。
【0131】
IL−18およびIL−18BPの定常状態のmRNAレベルもまた、これらの組織において決定した。我々は、新しく得られた虚血前の心房ホモジネートにおいて、IL−18およびIL−18BPの基礎的遺伝子発現を観察した(図3A、B)。IL−18タンパク質の増加と同様に、I/Rは定常状態のIL−18mRNAレベルのさらなる増加(4.7倍上昇)を誘導した。IL−18BP遺伝子発現もまた、新しく得られた心房組織で観察され、I/Rののち少しだけ上昇した(1.3倍)。
【0132】
ヒト心筋におけるIL−18の所在
ECLによって測定されたように、IL−18タンパク質、IL−18mRNAが新しく得られた心筋ホモジネートに存在するので、IL−18の所在を決定するため、組織化学染色が用いられた。心房組織は人工心肺カニューレの挿入直前に得られ、すぐに手早く凍結させた(示されていない)。IL−18は内在する心筋のマクロファージおよび血管内皮細胞内で観察された。マクロファージおよび内皮細胞内のIL−18は、虚血に関連するあらゆる操作が行なわれる前に存在し、あらゆる外来の表面との接触がない場合に存在する。内在するマクロファージおよび内皮細胞内へのIL−18の局在性は、健康な被験者から新しく得られたヒト末梢単球における構造的な前IL−18前駆体(preformed IL-18 precursor)に関する先行する研究と一致する(Purenら、1999)。したがって、前IL−18前駆体が、虚血性心疾患のために冠動脈バイパスを予定する患者の心筋に存在することが結論付けられる。
【0133】
虚血後の発展力に対するICE阻害剤の効果
IL−18BPは効果的に虚血が誘導する心筋機能障害を減じさせるため、我々は前IL−18前駆体の成熟IL−18への変換の阻害もまた、虚血が誘導する心筋機能不全を減じさせるだろうと仮定した。したがって、特異的なICE阻害剤YVADを、虚血開始前に過融解槽に添加した。YVADの添加によるICE阻害を、虚血期間中および再灌流のあいだ、持続した。YVADが介するICE阻害により、I/Rにおける対照の35%から、10μg/mlで60%まで、20μg/mlで75.8%までの収縮機能の改善によって示されるように、虚血が誘導する心筋機能障害を減じさせた(図4)。これらの結果より、ヒトの心筋における生物学的に活性なIL−18がICEによる前IL−18前駆体の開裂の結果であることが確認される。さらに、これらの結果により、心筋虚血が潜在性のICEを活性化し得ることが示唆される。
【0134】
細胞の生存能力の保護
CKの細胞内レベルをI/Rののちの細胞の生存能力の程度を評価するために用いた。この分析においては、CK値が高いほど、生存細胞の数がより多くなる。各抗サイトカイン干渉の結果、細胞の生存能力が保護された。図5に示されるように、IL−18BPおよびICE阻害剤(10および20μg/ml)は、I/R後、細胞内のCKレベルを、1mg(湿潤組織)当たりのCK活性単位として、1,399から5,921、5,675、6,624、4,662単位増加させた。これらの観察により、IL−18のI/R誘導活性化の阻害はex vivoモデルにおける筋細胞の生存能力を保護することが示唆される。
【0135】
TNFαに誘導された心筋機能障害の中和効果
図6に示されるように、90分間の外因性TNFαへの暴露ののち、小柱の発展力(DF)は18%まで減少した。TNFαの添加前に、IL−18BPとともに10分間インキュベーションすることによって外因性TNFαに暴露されたヒト心筋での収縮機能における内因性IL−18の中和は、発展力(DF)における低下の大きさを減少させた(図6参照)。90分後対照群の発展力は18%減少したが、TNFαに暴露された小柱においては対照に比べ58%まで上昇した。しかしながら、IL−18BPを伴うTNFα暴露小柱における発展力は、対照に比べて30%しか下落しなかった。これらのデータより、心筋の収縮低下に対するTNFαの直接的な効果は、少なくとも部分的に生物学的に活性な内因性のIL−18によって介されることが示唆される。
【0136】
発展力に対する内因性IL−18の効果
次に、心筋の収縮機能に対する内因性IL−18の直接的な効果を測定した。平衡の90分後に、各槽を替えるとともに過融解された小柱にIL−18を添加した。図7に示されるように、IL−18は実験期間のあいだ、発展力のゆっくりではあるが連続的な減少を導く。90分間の連続したIL−18への暴露ののち、発展力は42%まで減じた。これらのデータにより、TNFαと同様、内因性IL−18は心筋の筋肉抑制薬として働くことが証明された。
【0137】
興味深いことに、IL−18はTNFαのような強力な心筋筋肉抑制薬ではない。
【0138】
細胞の生存能力の保護
カサセス(Casases)はしばしばアポトーシスに結びつく。TNFαに暴露された小柱における細胞の生存能力を評価するために、組織細胞内クレアチンキナーゼ(CK)を測定した。この分析において、高CKレベルは生存細胞を示す。図8に示すように、90分間の酸素正常状態の過融解を受けた対照小柱は、湿潤組織重量ミリグラム当たり6801±276単位のCK活性であった。対照的に、30/45分間のI/R傷害または90分間のTNFα暴露にさらされた小柱は、それぞれ、1774±181および3246±217単位/mgの減少したレベルの保存されたCKを示した。IL−18BP存在下でTNFαに暴露された小柱は、5605±212単位/mg組織であった。興味深いことに、TNFα処理された小柱は、I/R小柱に比べより高い保存されたCKレベルを有した。このことは、実験期間の終了時の発展力の大きさがI/RおよびTNFαに関して類似しているので、意外な発見であった。
【0139】
実施例3:IL−18BPはインビボにおいて心筋梗塞からIL−18BPを保護する
方法
インビボにおけるマウスIL−18BP発現プラスミドの筋肉内の電気的導入(electrotransfer)
C57BL/6マウスに、3週間間隔で、IL−18BPのcDNAを含有する発現プラスミド(pcDNA3−IL18BPと呼ばれるもの、国際公開第01/85201号パンフレットに記載)を3回注入した。対照マウスには、対照の空のプラスミドを注入した。記載されているように単離したマウスIL−18BPアイソフォームd cDNA(受託番号#Q9ZOM9)(Kim et al., 2000)を、サイトメガロウイルスプロモーター(Invitrogen)の制御化にある哺乳動物細胞発現ベクターpcDNA3のEcoR1/Not1部位へサブクローニングした。対照プラスミドは、治療力のあるcDNAを欠く同じ構造のものである。対象群は31匹のマウスからなり、IL−18BPを受ける実験群は27匹のマウスからなる。
【0140】
IL−18BPまたは対照発現プラスミド(60μg)を、先に記載されたように(Mallat et al., 1999)、麻酔されたマウスの頭蓋の頚骨筋(tibial cranial muscles)に注入した。つまり、経皮的電気パルス(200V/cmの8方形波電気パルス、2Hzで20msec持続)をPS−15電子パルサー(Genetronics, France)によって、肢の各側で、4.2から5.3mm離して設置した2つのステンレススチールプレート電極を用いて送った。
【0141】
左心室への梗塞の誘導
IL−18BPプラスミドまたは空のプラスミドの投与から24時間後、キシラジンおよびケタミンのIP注入によりマウスを麻酔し、酸素を供給し、ついで開胸した。つぎに心筋梗塞を誘導するために、左冠状動脈を8−0プロレン縫合糸を用いて永久的に結紮し、胸を閉じたのち、動物を麻酔から回復させた。手術の死亡率は20%以下であった。手術後の死亡率は対照群では48%、実験群では26%であり、結紮4〜5日後にほぼ例外なく起こった。
【0142】
結紮から7日後、マウスを再び麻酔し、ATL HDI5000心エコー検査器を用いて、左心室(VL)の体積を胸を閉めた状態で心エコー検査器によって評価した。LVの部分的な縮小が、測定された最終拡張期直径と最終収縮期直径とから計算された。心エコー検査器測定の終了ののち、心臓を摘出し、固定し、ついで切片にレーザー切断した。ついで、梗塞の大きさを決定するために、組織学的切片をシリウスレッドで染色した。
【0143】
結果
結紮から7日後の生存しているマウスにおける左心室の拡張期の直径は以下の通りである。
【0144】
0.53+0.01mm(n=20)(IL−18BP処理されたマウス) 対 0.59+0.01mm(n=16)(対照マウス)、p<0.01
結紮から7日後の生存しているマウスにおける左心室の収縮期の直径は以下の通りである。
【0145】
0.45+0.02(IL−18BP処理されたマウス) 対 0.52+0.02(対照マウス)、p<0.01
左心室の部分的な縮小:15+1%(IL−18BP処理されたマウス) 対 11+1%(対照マウス)、p<0.01
結論:IL−18BPは、左心室の全冠状結紮によって誘導される心筋梗塞ののちのマウスの死亡率を、50%まで減少させる。このことに加え、左心室の収縮期および拡張期の減少した直径に示されるように、左心室の機能は著しく改善された。
【0146】
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【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】虚血により誘導される収縮機能障害に対するIL−18BPの効果を示す。(A)虚血傷害への力学的応答。以下の平衡(eq)、対照(Ctrl)小柱は実験を通して酸素正常状態下で過融解された。小柱はIL−18BP(5μg/ml)の存在下、または非存在下で、虚血/再灌流を行なった。縦軸は実験開始時(0時間)と比較した発展力の百分率を示す。データは1人の患者の小柱から得られ、90分での発展力の平均変化を計算するために用いられた方法を表わす。(B)1または5μg/mlのIL−18BPを用いたIL−18の中和ののちの、虚血後の発展力。結果は、再灌流(90分)が終了したのち、Ctrlと比較した発展力の平均百分率変化として表わす。かっこの中の数は、μg/mlでのIL−18BPを示す。N=6。I/R(虚血/再灌流)と比較して*p<0.01。
【図2】心筋のIL−18タンパク質の含有量を示す。酸素正常状態下で90分間の過融解(対照)、または30分間の虚血ののち45分間の再灌流(I/R)ののち、小柱をホモジナイズした。小柱は同じ被験者から適合された。IL−18レベルを縦軸にpg/mlで示す。N=4。p<0.01。
【図3】対照と虚血心房組織とにおける、定常状態のIL−18およびIL−18BPのmRNAレベルを示す。IL−18およびIL−18BPのmRNAレベルはRT−PCRによって決定された。データは評価された2人の被験者のうちの1人ものである。Aはエチジウムブロマイド染色されたアガロースゲルを示し、PCR産物が分離されている。Bは、対照(GAPDH)に対する倍変換(fold change)として、PCR産物の量の定量結果を示す。
【図4】虚血後の発展力に対するICE阻害剤の効果を示す。虚血/再灌流(I/R)ののちの、対照(Ctrl)と比較した発展力の平均百分率変化を結果として示す。かっこの中の数は、μg/mlでのICEiの濃度を示す。N=7。I/Rと比較して*p<0.01。
【図5】I/Rののちの組織クレアチンキナーゼ(CK)活性を示す。CKは組織の湿重量ミリグラム当たりの活性の単位で表わされる。実験条件は横軸の下に示す。CtrlおよびI/R、N=6;IL−18BP(5μg/ml)、N=5;ICEi(10および20μg/ml)、それぞれN=5;I/Rと比較して*p<0.05。
【図6】TNFα(1ng/ml)添加前に15分間10μg/mlでインキュベーションされた小柱の、平衡期間の発展力を100%に設定したときの、平衡期間後の発展力に対する発展力の平均変化を示す(n=5)。TNFαおよびIL−18BPを、それぞれ各浴槽に添加した。
【図7】酸素正常状態下でのIL−18に対するヒト心房小柱の時間的応答を示す。90分間の実験期間を通して、成熟IL−18(100ng/ml)を心房小柱に添加した。縦軸は、基準の発展力からの平均百分率変化を示す。基準は平衡期間の終了時に決定した(示していない)。(n=6)。同間隔で対照と比較した場合および残りの実験期間に対して、*p<0.05、**p<0.001。
【図8】I/R、TNFα(1ng/ml)およびTNFα(10ng/ml)+IL−18BPの暴露ののちの、筋細胞組織のクレアチンキナーゼ活性の保存を示す。CK活性は、組織の湿重量ミリグラム当たりのCK活性の単位で表わされる。n=6。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL−18阻害剤を含有する心筋症の治療および/または予防用薬剤であって、IL−18阻害剤がカスパーゼ−1(ICE)の阻害剤、IL−18に対する抗体、いずれかのIL−18受容体サブユニットに対する抗体、およびIL−18の生物学的活性を阻害するIL−18結合タンパク質またはそのアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質もしくは機能的誘導体から選択される薬剤。
【請求項2】
IL−18の阻害剤がIL−18に対する抗体である請求項1記載の薬剤。
【請求項3】
IL−18の阻害剤がIL−18受容体αに対する抗体である請求項1記載の薬剤。
【請求項4】
IL−18の阻害剤がIL−18受容体βに対する抗体である請求項1記載の薬剤。
【請求項5】
抗体がヒト化抗体またはヒト抗体である請求項1、2、3または4記載の薬剤。
【請求項6】
IL−18の阻害剤がICE阻害剤であり、ICEの阻害剤がAc−Tyr−Val−Ala−Asp−クロロメチルケトン(YVAD)である請求項1記載の薬剤。
【請求項7】
IL−18の阻害剤がIL−18の生物学的活性を阻害するIL−18結合タンパク質またはそのアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質または機能的誘導体である請求項1記載の薬剤。
【請求項8】
IL−18阻害剤が1つ以上の部位でグルコシル化されている請求項7記載の薬剤。
【請求項9】
融合タンパク質が免疫グロブリン(Ig)融合を含む請求項7または8記載の薬剤。
【請求項10】
機能的誘導体が、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖として存在する、1つ以上の官能基に結合された少なくとも1つの部分を含む請求項7または8記載の薬剤。
【請求項11】
部分がポリエチレン部分である請求項10記載の薬剤。
【請求項12】
医薬がさらに腫瘍壊死因子(TNF)アンタゴニストを含む請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載の薬剤。
【請求項13】
IL−18阻害剤が、TNFアンタゴニストと同時に、連続して、または別々に使用される請求項12記載の薬剤。
【請求項14】
TNFアンタゴニストがTBPIおよび/またはTBPIIである請求項12または13記載の薬剤。
【請求項15】
IL−18の阻害剤が、0.001〜100mg/kgの範囲の濃度で、または1〜10mg/kg、または2〜5mg/kgの範囲の濃度で使用される請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14記載の薬剤。
【請求項16】
IL−18の阻害剤のコード配列を含む発現ベクターを含む心筋症の治療および/または予防用薬剤であって、IL−18阻害剤が、IL−18に対する抗体、いずれかのIL−18受容体サブユニットに対する抗体、およびIL−18の生物学的活性を阻害するIL−18結合タンパク質またはそのアイソフォーム、ムテインもしくは融合タンパク質から選択される薬剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−102354(P2009−102354A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319532(P2008−319532)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【分割の表示】特願2002−560670(P2002−560670)の分割
【原出願日】平成14年1月28日(2002.1.28)
【出願人】(508066979)ラボワトール セロノ ソシエテ アノニム (2)
【Fターム(参考)】