説明

心筋収縮能調節用の方法及び組成物

遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質を用いてホスホランバンの転写を調節することにより、心臓収縮を調節する方法及び組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々なジンクフィンガータンパク質(ZFP)及びかかるタンパク質を使用する方法が、心不全の治療の際に使用するために提供される。特に、ホスホランバン(PLN)遺伝子の標的部位に結合するZFPが記載される。
【背景技術】
【0002】
心不全は200万を超えるアメリカ人を苦しめ、そしてうっ血性心不全は、西欧社会における最も一般的な入院及び死亡の原因と認識されている。うっ血性心不全は、左心室の機能不全、運動耐容性の低下、クオリティ・オブ・ライフの低下、及び余命の劇的な減少により特徴付けられる症候群である。左心室の収縮の低下は、心拍出量の低下を招き、結果として全身性の動脈及び静脈の血管収縮が生じる。
【0003】
収縮は、主にカルシウム流入により制御されているようである。心臓が収縮するために、カルシウムは心臓細胞の本体(筋形質)に放出されなければならない。流入するカルシウムが多ければ多いほど、収縮の力は強くなる。心臓が弛緩するとき、カルシウムは、筋形質から出て、そして筋小胞体(SR)へと送られる。こうして、カルシウム(Ca2+)がリザーバーから筋肉細胞、つまりミオサイトへと放出され、次に筋小胞体内部Ca2+-ATPase 2a(SERCA2a)により急速にリザーバー、いわゆる筋小胞体(SR)へと送り戻されるメカニズムによって、心筋は、収縮と弛緩を引き起こされる。
【0004】
Ca2+がSRへと戻る効率は、次の収縮に利用できるCa2+の量を決定する。ホスホランバン(PLN)は、心筋小胞体Ca(2+)-ATPase酵素(SERCA2)によるCa2+の筋小胞体ルーメンへの能動輸送を調節する調節性のリンタンパク質である。SERCA2の可逆的阻害剤であるホスホランバンは、その酵素活性を抑制し、そして当該阻害はβ-アドレナリン作動性の刺激に応答したPLNのリン酸化の際に解除される。
【0005】
ホスホランバン対SERCA2の比は、心筋収縮の調節に決定的であるようであり、そして当該比の変更は、心不全の際に観察される機能低下に寄与しうる(Kossら、(1997)Basic Res Cardiol. 1997;92 Suppl 1:17-24)。特に、心不全において一般的に観察されるSERCA2a/PLN比の低下は、SRへのCa2+の補充を低下させ、そして収縮の減退をもたらす。収縮についてのSERCA2a:PLN比の重要性は、PLNノックアウトマウス;マウス心不全モデル(例えば、SERCA2aを過発現するモデル)、並びに単離されたヒト心筋細胞(例えば、SERCA2aを過発現するミオサイトにおけるアンチセンスによるPLN阻害)を用いて実験された。例えばMaclennanら、(2003) Nat Rev Mol Cell Biol. 4(7):566-77; Eizemaら、(2000) Circulation 101(18):2193-9; del Monteら(2002), Circulation 105(8):904-7; Minamisawaら、(1999) Cell 99(3):313-22を参照のこと。
【0006】
しかしながら、心筋収縮能を調節するためにPLN発現を調節することは、以前に記載されていなかった。さらに、PLN発現を調節することによる心筋収縮能を変化させる能力は、うっ血性心不全及び/又は他の心臓病の治療及び/又は予防に有用性を有することもある。
【発明の開示】
【0007】
要約
様々なジンクフィンガータンパク質(ZFP)及びかかるタンパク質を使用する方法が、心不全の治療に使用するために提供される。特に、ホスホランバン(PLN)遺伝子の標的部位に結合するZFPが記載される。ZFPは、融合タンパク質の一部として調節ドメインに融合しうる。ZFPと融合する活性化ドメイン又は抑制ドメインのいずれかを選択することにより、遺伝子発現を活性化できるか又は遺伝子発現を抑制することができる。こうして、ZFPに融合された調節ドメインの適切な選択により、PLNの発現を選択的に調節することができ、そうして、収縮及びカルシウム限局化に関連する様々な生理的過程を調節することができる。
【0008】
PLNに様々な度合いで結合し(そしてPLNの発現を調節する)ZFPを遺伝子操作することにより、生理的過程(例えば、収縮)が調節される程度は変化することがあり、それにより、個々に併せた治療を可能にする。当該治療は、PLN遺伝子、又は実際に収縮又はカルシウム限局化に関与する任意の遺伝子の複数の標的部位(例えば、9、12、又は18塩基対の標的部位)が、本明細書に提供されるZFPにより作用されうることから達成されうる。こうして、幾つかの方法において、複数のZFP(又は当該ZFPを含む融合体)が投与される。これらのZFPは、PLN遺伝子に又はその周辺に位置する異なる標的部位に結合することができる。かかるZFPは、幾つかの例において、相乗効果を有しうる。ある方法では、複数の融合タンパク質は、異なる調節ドメインを含む。
【0009】
本明細書に開示されるZFPをコードするポリヌクレオチド及び核酸も、本明細書に提供される。さらに、核酸及び/又はZFPを含む医薬組成物も提供される。例えば、ある組成物は、本明細書に記載されるZFPのうちの一つであって、調節配列に発現可能なように結合されたZFPをコードする核酸を、医薬として許容される担体又は希釈剤と組み合わせて含み、ここで、調節配列は、細胞内での核酸の発現を可能にする。タンパク質に基づく組成物は、本明細書に開示されるZFP及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含む。
【0010】
本明細書の開示を参照して、当業者は、これらの及び他の実施態様を思いつくであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
詳細な記載
本明細書中に開示される方法の実行、並びに組成物の調製及び使用は、他に記載がない限り、分子生物学、生化学、クロマチン構造及び分析、コンピューター化学、細胞培養、組換えDNA、及び当業者の範囲にある関連分野を利用する。これらの技術は、文献に十分に説明されている。例えば、Sambrook ら、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 第二版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989 及び第三版, 2001; Ausubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, New York, 1987 及び定期更新; the series METHODS IN ENZYMOLOGY, Academic Press, San Diego; Wolffe, CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION, 第三版, Academic Press, San Diego, 1998; METHODS IN ENZYMOLOGY, Vol. 304, "Chromatin" (P.M. Wassarman 及び A. P. Wolffe,編), Academic Press, San Diego, 1999; 並びに METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, Vol. 119, "Chromatin Protocols" (P.B. Becker編) Humana Press, Totowa, 1999を参照のこと。
【0012】
I.定義
「ジンクフィンガータンパク質」又は「ZFP」という用語は、亜鉛により安定化されるDNA結合ドメインを有するタンパク質を指す。個々のDNA結合ドメインは、典型的に「フィンガー」と呼ばれる。ZFPは、少なくとも1のフィンガー、典型的には2、3、4、5、6以上のフィンガーを有する。各フィンガーは、2〜4個の塩基対のDNAを結合し、典型的には3又は4個の塩基対のDNAを結合する。ZFPは、標的部位又は標的断片と呼ばれる核酸配列に結合する。各フィンガーは、典型的に、亜鉛をキレートする約30個のアミノ酸のDNA結合サブドメインを含む。これらのタンパク質(C2H2クラス)のうちの1つを特徴付ける典型的なモチーフは、-Cys-(X)2-4-Cys-(X)12-His-(X)3-5-His(ここで、Xは任意のアミノ酸である)(配列番号1)である。ジンクフィンター・タンパク質の更なるクラスが知られており、そして当該方法の実行において有用であり、そして本明細書に開示される組成物の製造及び使用に有用である(例えば、Rhodesら、(1993) Scientific American 268:56-65及び米国特許出願公開第2003/0108880を参照のこと)。当該クラスの1のジンクフィンガーが、1つのβターン内の2個のシステイン残基とともに亜鉛を配位する2個の不変ヒスチジン残基を含むαヘリックスからなることが、研究により示された (例えば、Berg&Shi, Science 271:1081-1085(1996)を参照のこと)。
【0013】
「標的部位」は、ZFPにより認識される核酸配列である。1の標的部位は、典型的に約4〜約10個の塩基対を有する。典型的に、2本指のZFPは、4から7個の塩基対標的部位を認識し、3本指のZFPは、6〜10個の塩基対標的部位を認識し、4本指のZFPは、12〜14bpの標的配列を認識し、そして6本指のZFPは、18〜20bpの標的配列を認識し、当該配列は、2個の隣接する9〜10個の塩基対標識部位を含むか、又は3個の隣接する6〜7bpの標的部位を含みうる。
【0014】
「標的サブサイト」又は「サブサイト」は、1のジンクフィンガーにより結合されるDNA標的部位の一部であり、交差鎖相互作用(cross strand interaction)を除く。こうして、交差鎖相互作用がない状態では、サブサイトは一般的に3個のヌクレオチド長である。交差鎖相互作用が生じる場合(つまり、「D-可能サブサイト」、共有のWO00/42219を参照のこと)、サブサイトは、4個のヌクレオチド長であり、そして他の3又は4個のヌクレオチドサブセットと重なり合っている。
【0015】
「Kd」は、結合分子についての解離定数、つまり、所定のアッセイ・システム(例えば、米国特許第5,789,538号を参照のこと)を用いて計測するとき、([標的]<<Kdである場合)所定の条件下で、化合物(例えば、ジンクフィンガー・タンパク質)のその標的への最大結合の半分(つまり、化合物分子の半分が標的に結合している)を与える化合物濃度を指す。Kdを計測するために使用されるアッセイ・システムは、ZFPの実際のKdを最も正確に計測する様に選ばれるべきである。ZFPの実際のKdを正確に計測する限り、任意のアッセイ・システムが使用されてもよい。一の態様において、ZFPについてのKdは、電気泳動移動度シフト・アッセイ(「EMSA」)を用いて計測される。ZFPの純度又は活性について調節がなされない限り、Kd計算は、与えられたZFPの真のKdを過大評価することになりうる。好ましくは、遺伝子転写を調節するために使用されるZFPのKdは、約100nM未満、より好ましくは75nM未満、より好ましくは50nM未満、最も好ましくは約25nM未満である。
【0016】
本開示の目的のため「遺伝子」は、遺伝子産物をコードするDNA領域、並びに調節配列がコーディング及び/又は転写配列に隣接していようといまいと、遺伝子産物の産生を調節する全てのDNA領域を含む。従って、遺伝子は、非限定的に、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列、例えばリボソーム結合部位及び内部リボソーム侵入部位、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起源、マトリックス結合部位、及び遺伝子座調節領域を含む。様々な種由来のホスホランバン(PLN)配列が記載され、そして公表されてきた。例えば、ヒトPLNのプロモーター近位領域(GenBank受諾番号AF177763)、ラットPLN(GenBank受諾番号AH002227)、ニワトリPLN(GenBank受諾番号AH003051)、ブタPLN(GenBank受諾番号X15075)、ラビットPLN(GenBank受諾番号AH001235)、マウスPLN(GenBank受諾番号NM_023129)、及びイヌPLN(AF037348)遺伝子が利用できる。
【0017】
さらに、「遺伝子」という用語は、生来の遺伝子と実質的に同一である核酸を含む。2以上の核酸又はポリペプチドとの関連で、「同一」又は部分的に「同一」という用語は、例えば以下に記載される配列比較アルゴリズムを用いて又は視覚による検査により計測されるときに最大一致に対して比較及び整列した場合、同じであるか又は同じとなるヌクレオチド又はアミノ酸残基が指定した割合を有する2以上の配列又はサブ配列を指す。
【0018】
2個の核酸又はポリペプチドの関連で、「実質的に同一」というフレーズは、例えば以下に記載される配列比較アルゴリズムを用いて、又は視覚による検査により計測されるとき、最大一致に対して比較及び整列される場合、少なくとも75%、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、95%、又はそれ以上であるか、或いはその間の任意の整数値のヌクレオチド又はアミノ酸残基の同一性を有する2以上の配列又はサブ配列を指す。好ましくは、実質的な同一は、少なくとも約10、好ましくは約20、より好ましくは約40〜60残基の長さ又はその間の任意の整数値である配列の領域に渡り、好ましくは、60〜80残基より長い領域、より好ましくは少なくとも約90〜100残基に渡り存在し、そして最も好ましくは、当該配列は、比較される配列、例えば、ヌクレオチド配列のコーディング領域の全長に渡り実質的に同一である。
【0019】
配列比較では、典型的に1の配列は、試験配列が比較される参照配列としての役割を果たす。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験及び参照配列は、コンピューターに入力され、必要があれば、サブ配列の座標が指定され、そして配列アルゴリズム・プログラムのパラメーターが指定される。配列比較アルゴリズムは、次に指定されたプログラム・パラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列(単数又は複数)についての配列同一性割合を計算する。
【0020】
比較のための配列の最適整列は、例えばSmith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)のローカルホモロジー・アルゴリズムにより、Needleman & Wunsch, J. MoI. Biol. 48:443 (1970)のホモロジー・アライメント・アルゴリズムにより、Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の相似方法の検索により、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行(the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)により、又は視覚による検査[一般的に、Current Protocols in Molecular Biology, (Ausubel, F. M.ら編) John Wiley & Sons, Inc., New York (1987-1999、補遺46 (April 1999)などの補遺を含む)を参照のこと]により行うことができる。 配列比較を行うためにこれらのプログラムを使用することは、各々のプログラムに特異的であるデフォルトのプログラムを使用して典型的に行われうる。
【0021】
配列同一性割合及び配列類似性を決定するために適したアルゴリズムの他の例は、BLASTアルゴリズムであり、これは、Altschulら、J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載されている。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センターを通して公共に利用可能である。このアルゴリズムは、最初にクエリー配列内の短いワード長Wを同定することにより、高スコアの配列ペア(HSP)を同定することを含み、当該ペアは、データーベースの配列における同じ長さのワードと配列比較した際に、適合するか又は幾つかの正の値の閾値Tを満たす。これは、近隣のワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)(Altschulら、上記)と呼ばれる。これらの開始近隣ワード・ヒットは、それらを含む長いHSPを発見するために検索を開始するための種としての役割を果たす。当該ワード・ヒットは、次に累積のアライメント・スコアが増加する限り、各々の配列に沿った両方向へ伸張する。累積スコアが、ヌクレオチド配列について、パラメーターM(適合している残基の対についての報酬スコア;常に>0)及びN(ミスマッチの残基についてのペナルティ・スコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列では、スコアリング・マトリックスは、累積スコアを計算するために使用される。ワード・ヒットの各方向への伸張は、累積アライメント・スコアが、最大値から量Xだけ下がった際;1以上の負のスコアの残基アライメントの増加のため、累積値が0以下になった際;又はいずれかの配列の末端に到達する際に止められる。配列類似性を決定するために、BLASTプログラムのデフォルト・パラメーターが適している。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、及び両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列についてはBLASTPプログラムは、デフォルトとして、3のワード長(W)、10の期待値(E)、及びBLOSUM62スコアリング・マトリックスを使用する。TBLATNプログラム(ヌクレオチド配列のタンパク質配列を使用する)は、デフォルトとして3のワード長(W)、10の期待値、及びBLOSUM62のスコアリング・マトリックスを使用する(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照のこと。)。配列同一性割合を計算することに加えて、BLASTアルゴリズムは、2個の配列間の同一性の統計分析を実行する(例えば、Karlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 (1993)を参照のこと)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1の計測法は、最小和確率(P(N))である。当該確率は、2個のヌクレオチド又はアミノ酸配列間の適合が、偶然起こる確率を指し示す。例えば、核酸は、試験核酸の参照核酸への比較の最小和確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01、そして最も好ましくは約0.001未満である場合、参照配列に類似すると考えられる。
【0022】
2個の核酸配列が、実質的に同一であるという別の指摘は、2個の分子が厳格な条件下で互いにハイブリダイズするということである。「実質的にハイブリダイズする」は、プローブ核酸と標的核酸との間の相補的ハイブリダイゼーションを指し、そして標的ポリヌクレオチド配列の所望の検出を達成するためのハイブリダイゼーション媒質の厳格度を低減することにより適合されうる重要度の低いミスマッチを含む。「特異的にハイブリッド形成する」というフレーズは、当該配列が複合体混合物(例えば全細胞)のDNA又はRNAにおいて存在する場合、厳格な条件下で特定のヌクレオチド配列にのみ分子が、結合し、二本鎖を形成するか、又はハイブリッドを形成することを指す。
【0023】
2個の核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であるという更なる指摘は、第一核酸によりコードされるポリペプチドが、以下に記載されるように、第二核酸によりコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であるということである。
【0024】
特定のポリヌクレオチド配列の「保存的に改変されたバリエーション」は、同一の又は実質的に同一のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを指し、又は、ポリヌクレオチドがアミノ酸配列を指さない場合、実質的に同一な配列を指す。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸は、任意の所定のポリペプチドをコードする。例えば、CGU、CGC、CGA、CGG、AGA、及びAGGのコドンは、全てアミノ酸であるアルギニンをコードする。こうして、コドンによりアルギニンが指定される全ての位置では、コドンは、コードされたポリペプチドを変化させることなく記載された対応するコドンのいずれかに変化されうる。かかる核酸変化は、「保存的に改変されたバリエーション」の一種である「サイレント・バリエーション」である。ポリペプチドをコードする本明細書に記載される全てのポリヌクレオチド配列は、そうでないと記載される場合を除いて、全ての可能なサイレント・バリエーションを記載する。核酸における各コドン(AUGを除く。AUGは、通常メチオニンについての唯一のコドンであるである)が、標準技術により機能的に同一の分子を産生するために改変されうるということが当業者により理解されよう。従って、ポリペプチドをコードする核酸のそれぞれの「サイレント・バリエーション」は、それぞれの記載された配列から暗示される。
【0025】
ポリペプチドは、典型的に第二ポリペプチドに実質的に同一であり、例えば、2個のペプチドが保存的置換によってのみ異なる。タンパク質を記載するとき、「保存的置換」は、タンパク質の活性を実質的に変化させないタンパク質のアミノ酸組成の変化を指す。こうして、特定のアミノ酸配列の「保存的に改変されたバリエーション」は、タンパク質活性に決定的ではないアミノ酸のアミノ酸置換、或いは決定的なアミノ酸の置換であっても、実質的に活性を変化させないように、アミノ酸を類似の性質(例えば、酸性、塩基性、正又は負荷電、極性又は非極性など)と置換することを指す。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当該技術分野に知られている。例えば、Creighton(1984) Proteins, W. H. Freeman and Companyを参照のこと。さらに、コードされた配列中の1のアミノ酸又は少数のアミノ酸を変化させ、加え、又は欠失する個々の置換、欠失、又は添加は、「保存的に改変されたバリエーション」である。
【0026】
タンパク質、ポリペプチド、又は核酸の「機能断片」又は「機能同等物」は、その配列が全長のタンパク質、ポリペプチド、又は核酸と同一ではないが、全長タンパク質、ポリペプチド、又は核酸としての同じ機能を保持するタンパク質、ポリペプチド、又は核酸である。機能断片は、対応する元の分子より多い、少ない、又は同じ数の残基を持ちうるし、及び/又は1以上のアミノ酸又はヌクレオチドの置換を含みうる。核酸の機能を決定する方法(例えば、コーディング機能、別の核酸へハイブリダイズする能力、調節分子への結合)は、当該技術分野に周知である。同様に、タンパク質機能を決定する方法は周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルター・バインディング、電気泳動移動シフト、又は免疫沈降アッセイにより決定することができる。上記のAusubelらを参照のこと。タンパク質が別のタンパク質へと相互作用するタンパク質の能力は、共免疫沈降、ツーハイブリッドアッセイ、又は相補性(遺伝的及び生物学的の両方)により決定されうる。例えば、Fieldsら、(1989) Nature 340: 245-246; 米国特許第5,585,245号、及びPCT WO98/44350を参照のこと。
【0027】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換性を持って使用され、そして、一本鎖又は二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドを指す。本開示の目的では、これらの用語は、ポリマーの長さに関して制限する物として解釈されるべきではない。当該用語が、天然ヌクレオチドの既知のアナログ、並びに塩基、糖、及び/又はホスフェート部において改変されたヌクレオチドを包含しうる。一般的に、特定のヌクレオチドのアナログは、同じ塩基対特異性を有する;つまり、Aのアナログは、Tと塩基対を形成する。こうして、ポリヌクレオチド配列という用語は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表示である。このアルファベット表示は、中央演算処理装置を有するコンピューターのデーターベースに入力され、そしてバイオインフォマティクス、例えば機能ゲノミクス及びホモロジー検索に用いられる。当該用語は、既知のヌクレオチド・アナログ、或いは改変された骨格残基又は結合であって、合成、天然、及び非天然型であり、参照核酸と類似の結合性質を有し、そして参照ヌクレオチドに類似する様式で代謝される骨格残基又は結合を包含する。かかるアナログの例は、非限定的に、ホスホロチオエート、ホスホールアミデート、メチル・ホスホネート、キラル-メチル・ホスホネート、2-O-メチル・リボヌクレオチド、及びペプチド-核酸(PNA)を含む。本明細書に示されたヌクレオチド配列は、慣用される5’-3’の向きで表される。
【0028】
「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。「細胞性クロマチン」は、核酸、主にDNA、並びにヒストン及び非ヒストン染色体タンパク質を含むタンパク質を含む。真核細胞クロマチンの大部分は、ヌクレオソームの形態で存在し、ここで、ヌクレオソーム・コアは、ヒストンH2A、H2B、H3、及びH4の各々2個を含む8量体と結びついた約150塩基対のDNAを含み;そして(生物に依存して様々な大きさの)リンカーDNAは、ヌクレオソームのコア間に伸びている。ヒストンH1の分子は、一般的にリンカーDNAと結びついている。本開示の目的では、「クロマチン」という用語は、真核生物及び原核生物の両方の、全てのタイプの細胞核タンパクを包含することを意味する。細胞クロマチンは、染色体クロマチン及びエピソームクロマチンの両者を含む。
【0029】
「染色体」という用語は、細胞ゲノムの全て又は一部を含むクロマチン複合体である。細胞ゲノムは、しばしば、その核型により特徴付けられることがあり、核型は、細胞ゲノムを含む染色体全ての集合である。細胞ゲノムは、1以上の染色体を含みうる。
【0030】
「エピソーム」は、複製する核酸、核タンパク質複合体、又は他の構造であって細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む構造である。エピソームの例は、プラスミド及びある種のウイルス・ゲノムを含む。
【0031】
「外来分子」は、通常細胞内に存在しないが、1以上の遺伝的、生化学的、又は他の手法により細胞中へ誘導されうる分子である。細胞内に通常存在するものは、細胞の特定の発生段階及び環境条件に関して決定される。こうして、例えば、筋肉の胚発生の間のみ存在する分子は、成人の筋肉細胞に関しては外来分子である。外来分子は、例えば、上手く機能しない内在性分子の機能型又は通常機能している内在性分子の機能不良型を含みうる。
【0032】
外来分子は、他の物の中から、例えばコンビナトリアル化学過程により作成される低分子、又はタンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、脂質タンパク質、多糖、上記分子の任意の改変誘導体、又は1以上の上記分子を含む任意の複合体などの巨大分子でありうる。核酸は、DNA及びRNAを含み、一本鎖又は二本鎖でありうるし;直鎖、分枝鎖、又は環状でありうるし;そして任意の長さでありうる。核酸は、二本鎖を形成できる核酸、並びに三本鎖形成核酸を含む。例えば、米国特許第5,176,996号及び5,422,251号を参照のこと。タンパク質は、非限定的に、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチン・リモデリング因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ギラーゼ、及びヘリカーゼを含む。
【0033】
外来分子は、内在性分子と同じタイプの分子、例えばタンパク質又は核酸(つまり、外来性遺伝子)であることがある。但し、外来分子は、内在性分子とは異なる配列を有している。外来分子を細胞内へと導入する方法は、当業者に知られており、そして、非限定的に、脂質媒介性輸送(つまり、リポソーム、例えば、中性及びカチオン性脂質)、電気穿孔、直接注入、細胞融合、粒子照射、リン酸カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介性輸送、及びウイルス-ベクター媒介性輸送を含む。
【0034】
対照的に、「内在性分子」は、特定の環境条件下で特定の発生段階における特定の細胞において通常存在する分子である。
【0035】
「内在性遺伝子」は、通常のゲノム及びクロマチン中に存在する遺伝子である。内在性遺伝子は、例えば、クロモソーム、エピソーム、細菌ゲノム、又はウイルスゲノム中に存在しうる。
【0036】
「転写開始部位に隣接する」という用語は、転写開始部位の上流又は下流のいずれか約50塩基内に存在する標的部位を指す。転写開始部位の「上流」は、転写開始部位の5’側における約50を超える塩基である標的部位(つまり、遺伝子の非転写領域)を指す。転写開始部位の「下流」は、転写開始部位の3’側の約50を超える塩基である。
【0037】
「融合分子」は、2以上のサブユニット分子が、典型的に共有結合により結合される分子である。サブユニット分子は、同じ化学型の分子でありうるか、又は異なる化学型の分子でありうる。第一タイプの融合分子の例は、非限定的に融合ポリペプチド(例えば、ZFP・DNA結合ドメインと転写活性化ドメインとの間の融合である)及び融合核酸(例えば、上記融合ポリペプチドをコードする核酸)を含む。融合分子の第二タイプの例は、非限定的に、三本鎖形成核酸とポリペプチドとのあいだの融合、及びマイナー・グルーブ結合物質と核酸との間の融合を含む。
【0038】
「遺伝子発現」は、遺伝子内に含まれる情報を遺伝子産物へと変換することを指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA、又はRNAの他のタイプ)、又はmRNAの翻訳により産生されるタンパク質でありうる。遺伝子産物はまた、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、及び編集などの方法により改変されるRNA、並びに例えばメチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP-リボシル化、ミリスチル化、及びグリコシル化により改変されるタンパク質を含む。
【0039】
「遺伝子活性化」は、遺伝子産物の産生の増加をもたらす任意の方法を指す。遺伝子産物は、RNA(例えば、非限定的に、mRNA、rRNA、tRNA、及び構造RNA)又はタンパク質でありうる。従って、遺伝子活性化は、遺伝子の転写及び/又はmRNAの翻訳を増加させる方法を含む。転写を増加させる遺伝子活性化方法の例は、非限定的に、転写開始複合体の形成を促進する方法、転写開始割合を増加させる方法、転写伸張率を増加させる方法、転写の進行を増加させる方法、及び転写抑制を開放する方法(例えば、転写リプレッサーの結合をブロッキングすることによる)を含む。遺伝子活性化は、例えば、 抑制の阻害、並びに既存のレベルを超える発現の刺激から構成されうる。翻訳を増大させる遺伝子活性化法の例は、翻訳開始を増加させる方法、翻訳伸張を増加させる方法、及びmRNA安定性を増加させる方法を含む。一般的に、遺伝子活性化は、遺伝子産物の産生の検出可能な増加を含み、ある例では、約2倍に遺伝子産物の生成を増加させ、別の例では、約2〜約5倍又はその間の任意の整数倍、さらに別の例では約5倍〜約10倍又はその間の任意の整数倍、さらに別の例では約10〜約20倍又はその間の任意の整数倍、ときには約20〜約50倍又はその間の任意の整数倍、別の例では約50〜約100倍又はその間の任意の整数倍、そしてさらに別の例では100倍以上増加させる。
【0040】
「遺伝子抑制」及び「遺伝子発現の阻害」は、遺伝子産物の産生の低下をもたらす任意の方法を指す。遺伝子産物は、RNA(例えば、非限定的にmRNA、rRNA、tRNA、及び構造RNA)又はタンパク質のいずれかでありうる。従って、遺伝子抑制は、遺伝子の転写及び/又はmRNAの翻訳を低減する方法を含む。転写を低減する遺伝子抑制方法の例は、非限定的に、転写開始複合体の形成を阻害する方法、転写開始率を低減する方法、転写伸張率を低減する方法、転写の進行を低減する方法、及び転写活性化を拮抗作用する方法(例えば、転写アクチベーターの結合を阻害することによる)である。遺伝子抑制は、例えば、活性化の抑制、並びに既存のレベル以下への発現の阻害から構成されうる。翻訳を低減する遺伝子抑制方法の例は、翻訳開始を低減する方法、翻訳伸張を低減する方法、及びmRNAの安定性を低減する方法を含む。転写抑制は、可逆的及び不可逆的遺伝子転写の不活性化の両方を含む。一般的に、遺伝子抑制は、遺伝子産物の産生における検出可能な減少を含み、幾つかの例では、遺伝子産物の産生を約2倍、別の例では約2〜約5倍又はその間の整数倍、さらに別の例では約5倍〜約10倍又はその間の整数倍、さらに別の例では約10〜約20倍又はその間の整数倍、さらに別の例では約20倍〜約50倍又はその間の整数倍、さらに別の例では約50倍〜約100倍又はその間の整数倍、さらに別の例では100倍以上低減する。さらに別の例では、遺伝子抑制は、遺伝子発現の完全な抑制をもたらし、その結果遺伝子産物は検出されない。
【0041】
「調節」は、活性又は方法のレベル又は程度の変化を指す。変化は、増加又は低下のいずれかでありうる。例えば、遺伝子発現の調節は、遺伝子活性化及び遺伝子抑制の両方を含む。調節は、標的遺伝子の発現(例えばPLN)により間接的に又は直接的に影響される任意のパラメーターを決定することによりアッセイされうる。かかるパラメーターは、例えば、RNA又はタンパク質レベルの変化、タンパク質活性の変化、産物レベルの変化、下流の遺伝子発現の変化、レポーター遺伝子 (ルシフェラーゼ、CAT、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、グリーン・フルオレセント・タンパク質(例えば、Mistili & Spector, Nature Biotechnology 15: 961-964(1997)) の転写の変化;シグナル伝達、リン酸化及び脱リン酸化、レセプター-リガンド相互作用、第二メッセンジャー濃度(例えば、cGMP、cAMP、IP3、及びCa2+)、細胞成長、及び血管形成の変化を含む。これらのアッセイは、in vitro、in vivo、及びex vivoで行われうる。かかる機能の効果は、当業者に知られている方法のいずれか、例えば、RNA又はタンパク質レベルの計測、RNA安定性の計測、下流又はレポーター遺伝子発現の同定(例えば、化学ルミネッセンス、比色反応、抗体結合、誘導マーカー、リガンド結合アッセイを介する);細胞内第二メッセンジャー、例えばcGMP、及びイノシトール・トリホスフェート(IP3)の変化;細胞内カルシウム・レベルの変化;サイトカインの放出などにより計測されうる。
【0042】
「調節ドメイン」又は「機能ドメイン」は、DNA結合ドメイン、つまりZFP、にくっ付けたときに転写調節活性を有するタンパク質又はタンパク質ドメインを指す。典型的に、調節ドメインは、(例えば、融合タンパク質を形成するために)ZFPに共有結合又は非共有結合されて、転写調節を生じさせる。制御ドメインは、活性化ドメイン又は抑制ドメインでありうる。活性化ドメインは、非限定的に、核因子κ-BのVP16、VP64、及びp65サブユニットを含む。抑制ドメインは、非限定的に、KOX、KRAB、MBD2B、及びv-ErbAを含む。さらなる制御ドメインは、例えば、転写因子及びコファクター(例えば、MAD、ERD、SID、初期成長応答因子1、及び核ホルモン受容体)、エンドヌクレアーゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、メチルトランスフェラーゼ、ヒストン・アセチラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含む。アクチベーター及びリプレッサーは、コアクチベーター及びコリプレッサーを含む(例えば、Utleyら、Nature 394:498-502(1998))。或いは、ZFPは、調節ドメインなしで単独で役割を果たして、転写調節を生じさせる。
【0043】
「作動可能な様に結合される」又は「発現可能な様に結合される」という用語は、2以上の構成要素(例えば、配列要素)の並列に関して使用され、ここで、構成要素は、両方の構成要素が通常に機能し、そして少なくとも1の構成要素が少なくとも1の他の構成要素上で発揮される機能を媒介できるという可能性を許容するように配置される。例示の目的で、転写調節配列、例えばプロモーターは、1以上の転写調節因子の有無に応答してコード配列の転写レベルを制御する場合、コード配列に発現可能な様に結合されている。発現可能なように結合された転写制御配列は、一般的にコード配列に対しシス配置で結合されるが、当該配列に直接隣接する必要はない。例えば、エンハンサーは、隣接していなくとも、コード配列に発現可能な様に結合される転写調節配列を構成しうる。
【0044】
融合ポリペプチドに関して、「作動可能な様に結合される」又は「発現可能な様に結合される」という用語は、各構成要素が、他の構成要素に結合された状態において、その様に結合されていない場合に当該各構成要素が発揮するのと同じ機能を発揮するということを指す。例えば、ZFP・DNA結合ドメインが転写活性化ドメイン(又はその機能断片)に融合される融合ポリペプチドについて、ZFP・DNA結合ドメイン及び転写活性化ドメイン(又は、その機能断片)は、当該融合ポリペプチドにおいて、ZFP・DNA結合ドメイン部位がその標的部位及び/又はその結合部位に結合でき、その一方、転写活性化ドメイン(又はその機能断片)が転写を活性化できる場合、作動可能な結合状態である。
【0045】
「組換え」という用語は、細胞に関して使用される場合、当該細胞が外来性核酸を複製するか、又は外来性核酸によりコードされるペプチド又はタンパク質を発現することを指す。組換え細胞は、当該細胞の生来の(非組換え)形態では見られない遺伝子を含むことができる。組換え細胞は、当該細胞の生来の形態において見られる遺伝子であって、当該遺伝子が改変されそして人工的方法により当該細胞へと再導入された遺伝子を含むことができる。当該用語はまた、当該細胞から当該核酸を取り除くことなく改変された細胞に内在する核酸を含む細胞を含む。かかる改変は、遺伝子置換、部位特異的突然変異、及び関連技術により得られる改変を含む。
【0046】
「組換え発現カセット」、「発現カセット」、又は「発現コンストラクト」は、組換え又は合成により作成された調節エレメントを有する核酸コンストラクトである。当該調節エレメントは構造遺伝子の発現に影響でき、当該構造遺伝子はかかる配列に適合する宿主の調節エレメントに発現可能な様に結合している。発現カセットは、少なくともプロモーターと、場合により転写終結シグナルを含む。典型的に、組換え発現カセットは、転写される少なくとも1の核酸(例えば、所望のポリペプチドをコードする核酸)及びプロモーターを含む。発現を生じさせるのに必須又は役立つ更なる因子は、本明細書に記載される様に使用されてもよい。例えば、発現カセットはまた、宿主細胞から発現されるタンパク質の分泌を誘導するシグナル配列をコードするヌクレオチド配列を含むことができる。転写終結シグナル、エンハンサー、及び他の核酸配列であって遺伝子発現に影響するものは、また発現カセット内に含めることができる。
【0047】
「プロモーター」は、転写を導く核酸制御配列の配列として定義される。本明細書で使用されるとき、プロモーターは典型的に転写開始部位の近くの必須核酸配列、例えば、あるRNAポリメラーゼII型のプロモーターの場合、TATAエレメント、CCAATボックス、SP-1サイトなどを含む。本明細書に使用されるとき、プロモーターはまた場合により遠位のエンハンサー又はリプレッサー・エレメントを含む。当該エレメントは、転写開始部位から最大で数千塩基対の位置に位置しうる。プロモーターは、ポリペプチドなどのDNA結合成分、例えば核レセプター、Gal4、lacリプレッサーなどによるトランス活性化に応答するエレメントを有する。
【0048】
「構成的」プロモーターは、多くの環境及び発生条件下で活性であるプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、特定の環境又は発生条件下で活性であるプロモーターである。
【0049】
「弱いプロモーター」は、Eisenberg & Mcknight, Mol. Cell. Biol. 5:1940-1947(1985)に記載されるように、野生型単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジン・キナーゼ(tk)プロモーター又は突然変異型HSVtkプロモーターとおよそ同じ活性を有するプロモーターを指す。
【0050】
「発現ベクター」は、組換え又は合成により作成された核酸コンストラクトであって、宿主細胞において特定の核酸の転写を許容し、そして場合により当該宿主細胞において発現ベクターの組み込み又は発現を許容する一連の特定の核酸要素を有する核酸コンストラクトを指す。当該発現ベクターは、プラスミド、ウイルス、又はウイルス若しくは非ウイルス起源の核酸断片の一部でありうる。典型的に、発現ベクターは、プロモーターに発現可能な様に結合する転写される核酸を含む「発現カセット」を含む。「発現ベクター」という用語はまたプロモーターに発現可能な様に結合された裸のDNAを含む。
【0051】
「宿主細胞」は、発現ベクター又は核酸を含む細胞を意味し、その各々は、場合によりZFP又はZFP融合タンパク質をコードする。宿主細胞は、典型的に発現ベクターの複製又は発現を支持する。宿主細胞は、原核細胞、例えば、大腸菌(E.coli)であるか、又は真核細胞、例えば酵母、細菌、プロトゾア、高等植物細胞、昆虫細胞、又は両生類細胞、或いは哺乳動物細胞、例えばCHO、HeLa、293、COS-1など、例えば培養細胞(in vitro)、移植片及び初代培養物(in vitro及びex vivo)、及び細胞(in vivo)でありうる。
【0052】
「天然」という用語は、物に対して適用されるとき、当該物が自然界に見出せることを意味し、人間により人工的に作り出されたものとは区別される。
【0053】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書中で互換性を持って使用されて、アミノ酸残基のポリマーを指す。当該用語は、1以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸のアナログ又はミメティクスであるアミノ酸ポリマー、並びに天然アミノ酸ポリマーに適用される。ポリペプチドは、例えば、糖残基を加えることにより改変されて、糖タンパク質を形成しうる。「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、糖タンパク質並びに糖タンパク質でないものを含む。ポリペプチド配列は、慣用されるN-末端からC末端への向きで本明細書に表示される。
【0054】
核酸又はポリペプチドに関して使用されるとき、「サブ配列」又は「断片」は、それぞれ、ヌクレオチド又はアミノ酸の長い配列(例えばポリペプチド)の一部を構成するヌクレオチド又はアミノ酸の配列を指す。
【0055】
本明細書に使用される「治療する」及び「治療」という用語は、本明細書で使用されるとき、症状の重篤度及び/又は頻度の低減、症状及び/又は原因の除去、症状及び/又はその原因の発生の予防、並びに損傷の改善又は寛解を指す。
【0056】
医薬組成物の「有効量」は、所望の効果を提供するための薬剤の十分であるが無毒性である量を意味する。当該用語は、対象を治療するために十分な量を指す。こうして、治療「有効量」という用語は、疾患又は他の不所望な症状の進行を予防し、妨げ、遅延し、又は回復させることによる、疾患状態又は症状を治療するために十分な量を指す。予防「有効量」という用語は、疾患を有していない対象に与えられる量を指し、そうして疾患の開始を予防し、妨げ、遅延するために有効な量である。
【0057】
II.要旨
PLN発現を調節し、それにより種々の心臓病を治療するための様々な組成物及び方法が、提供される。例えば、PLN発現を調節できるジンクフィンガー・タンパク質が提供される。生物又は生物体内などの細胞集合を、PLN遺伝子に関する特異的配列に結合する1以上のジンクフィンガー・タンパク質(ZFP)と接触させることにより、心筋収縮能を調節する方法が記載される。ある方法では、一のZFPが投与され、そしてPLN遺伝子の標的部位に結合できる。別の方法は、PLN遺伝子の複数の標的部位に結合する複数の異なるZFPを投与することに関する。
【0058】
こうして、PLN遺伝子における特定の核酸断片(標的部位)を特異的に認識し、そして結合するように遺伝子操作され、PLN発現を調節し、それにより心筋収縮能を調節しそして心臓疾患を治療する、様々なジンクフィンガー・タンパク質が提供される。一の実施態様では、ZFPは、PLN遺伝子の転写を活性化又は抑制するキメラ転写因子を作成するために、調節ドメインに結合される。
【0059】
係るZFPではPLNの発現が高められ;ある他のZFPでは発現が抑制されうる。標的部位は、転写開始部位(ヌクレオチド+1として定義される)の上流に及び/又は下流にに隣接しうる。上に記載される様に、1以上のZFPが、PLN発現を調節するために使用されうる。こうして、利用される特定のZFPに依存して、PLN遺伝子を発現するレベルを調節することができる。
【0060】
標的部位に結合し、そしてPLNの発現に影響するZFPの能力のおかげで、本明細書に提供されるZFPは、広い範囲の心臓病を治療するために使用されうる。例えば、PLN発現の抑制は、本明細書に記載されるZFPを用いて達成され、それにより収縮を増大させる(例えば、SERCA2a:PLN比を増加させることによる)。こうして、ある適用では、ZFPは、in vitro及びin vivoの両方においてPLNの発現を抑制するために使用されうる。かかる抑制は、心筋の収縮活性を変化させるため、そして従って、うっ血性心不全の治療として使用されうる。
【0061】
他の方法は、頻脈及び不整脈の治療における収縮を低減するためのPLNの活性化に関する。
【0062】
さらに、ホスホランバン遺伝子の不活性化は、うっ血性心不全の治療のために使用され、及び/又は心筋収縮能を刺激するために使用されうる。これらの実施態様では、遺伝子操作されたジンク・フィンガー・ドメイン及び切断ドメイン(又は切断されたハーフ・ドメイン)を含む融合タンパク質は、内在のホスホランバン遺伝子におけるDNA配列の標的切断に使用される。標的化された切断は、続いて、相同でない末端結合により切断された遺伝子に突然変異を導入することをもたらしうる。或いは、1以上の配列は、標的化切断の後に、異種組換えにより遺伝子に導入されうる。標的切断及び組換えに関して更なる詳細については、米国特許出願公開第2003/0232410号;第2005/0026157号;第2005/0064474号、及びWO03/87341を参照のこと。
【0063】
III. ホスホランバン遺伝子発現を調節するためのジンクフィンガー・タンパク質
A.概要
本明細書に開示されるジンクフィンガー・タンパク質は、配列特異的な様式でDNAに結合できるタンパク質である。上に記載されるように、これらのZFPは、in vivo又はin vitroにおいてPLN発現を調節するために使用され、そしてそうすることにより様々な心臓病を治療する事ができる。当該タンパク質の一のクラスを特徴付ける代表的なモチーフであるC22クラスは、-Cys-(X)2-4-Cys-(X)12-His-(X)3-5-His(ここで、Xは任意のアミノ酸である)(配列番号1)である。幾つかの構造研究により、フィンガードメインが、2個の不変ヒスチジン残基を含むαヘリックスと、亜鉛を配位するβターン中の2個の不変システイン残基とを含むということが示された。しかしながら、本明細書に提供されるZFPは、この特定のクラスに限られない。ジンクフィンガ-タンパク質の更なるクラスが知られており、そして本明細書に開示される当該方法及び組成物において使用されうる(例えば、Rhodesら、 (1993) Scientific American 268:56-65及び米国特許出願公開第2003/0108880号を参照のこと)。あるZFPにおいて、1つのフィンガー・ドメインは約30アミノ酸長である。ジンク・フィンガー・ドメインは、DNA認識だけではなく、RNA結合及びタンパク質-タンパク質結合にも関与する。
【0064】
Zif268、マウス転写因子由来の3本のフィンガー・ドメインのX線結晶構造が、同族のDNA配列と組み合わせて解読され、そして各々の指は、周期的な回転により次の指に重なりうるということが示される。当該構造により、各フィンガーが、3塩基対の間隔にわたりDNAと独立して相互作用し、各認識ヘリックス上の-1、2、3、及び6の位置での側鎖がそれぞれのDNAトリプレット・サブサイトと接触している。Zif268のアミノ末端は、DNA鎖の3’末端に位置し、当該3’末端に当該アミノ酸が最も接触する。幾つかのジンクフィンガーは、標的断片の4番目塩基に結合できる。ジンクフィンガー・タンパク質が最も密接に接触する鎖が標的鎖に指定されたならば、幾つかのジンクフィンガー・タンパク質は、標的鎖の3塩基トリプレット及び標的ではない鎖の4番目の塩基に結合する。当該4番目の塩基は、3塩基サブサイトの3’側の次の塩基に相補的である。
【0065】
B.代表的なZFP
PLN遺伝子内の特定の標的部位に結合するZFPが本明細書に開示される。当該標的部位は、転写開始部位(ヌクレオチド+1として定義される)の上流又は下流に位置しうる。標的部位は、例えば9個のヌクレオチド、12個のヌクレオチド、又は18個のヌクレオチドを含みうる。
【0066】
標的部位は、転写開始部位の近くに位置しうるか、又は転写開始部位のかなり上流又は下流に位置しうる。ある実施態様では、一の標的部位は、ZFPにより認識される。別の例では複数のZFPが使用され、その各々がPLN遺伝子の異なる標的を認識する。
【0067】
標的部位に結合するZFPは典型的に、少なくとも1のジンクフィンガーを含むが、複数のジンクフィンガー(例えば、2、3、4、5、6以上のフィンガー)を含みうる。通常、ZFPは少なくとも3個のフィンガーを含む。ZFPのあるものは4又は6のフィンガーを含む。3個のフィンガーを含むZFPは、典型的に9又は10個のヌクレオチドを含む標的部位を認識する。4個のフィンガーを含むZFPは、12〜14個のヌクレオチド標的部位を認識し、そして6個のフィンガーを有するZFPは18〜21個のヌクレオチドを含む標的部位を認識できる。ZFPは、1以上の調節ドメインを含む融合タンパク質であり、当該ドメインは、転写活性化又は抑制ドメインでありうる。
【0068】
PLN遺伝子の標的部位に結合する代表的なジンクフィンガー・タンパク質は、実施例1及び表1、2、及び3に詳細に記載される。表1は、各ジンクフィンガー・タンパク質についての標的部位のヌクレオチド配列及び転写開始部位に対する標的部位の位置を示す。小文字は、当該タンパク質の構成ジンクフィンガーにより直接接触されないヌクレオチドを表す。例えばWO01/53480及びUS2003-0119023を参照のこと。負の数字は、転写開始部位の上流のbpを示し、そして正の数は転写開始部位の下流のbpを示す。ここで、転写開始部位は、ヌクレオチド+1として定義される。標的部位について試験されたPLN配列は、ラット(GenBank受諾番号NW NW_043442)及びヒト(GenBank受諾番号NT_033944) PLN遺伝子を含む。
【0069】
【表1】

【0070】
表2は、ラットPLN遺伝子内の標的配列に結合するように設計された様々なジンクフィンガータンパク質の各フィンガー(F1〜F6)の認識領域内に含まれるアミノ酸配列を示す。表示されたアミノ酸配列は、ジンクフィンガーのアルファヘリックス部分における第一アミノ酸残基に対してつけられるとき、-1〜+6の残基を指す。アミノ酸配列により認識される標的サブサイトを括弧書きで示す。
【0071】
【表2】

【0072】
表3は、ヒトPLN遺伝子内の標的配列に結合するように設計された様々なジンクフィンガータンパク質の各フィンガー(F1〜F6)の認識領域内に含まれるアミノ酸配列を示す。表示されたアミノ酸配列は、ジンクフィンガーのアルファへリックス部分における第一アミノ酸残基に対して番号を付けられるとき、-1〜+6の残基を指す。アミノ酸配列により認識される標的サブサイトを括弧書きで示す。
【0073】
【表3】

【0074】
上で記載される様に、標的部は、任意の長さであってもよいが、好ましくは9〜10個のヌクレオチド長であるか、又は18〜21個のヌクレオチド長である。上で記載される代表的なZFPについて、その選択された標的部位は、H9c2(2-1)細胞及びラット初代心筋細胞の両者において高い配列保存性並びに高いDNaseI近接可能性を示すと示された。
【0075】
こうして、本明細書中に示される様に、本明細書に記載される1以上のZFPは、PLNの活性を調節することにより、心臓収縮能を調節するために使用される(そしてそうすることにより心臓及び他の収縮性の疾患を治療する)。様々なZFP及び/又はその組合せの賢明な選択により、PLN調節を最適化することができ、そして収縮能を調節することができる。
【0076】
IV.ZFPの特徴
ジンクフィンガー・タンパク質は、ジンクフィンガー構成要素から形成される。例えば、ジンクフィンガー・タンパク質は、1〜37個のフィンガーを有することができ、一般に2、3、4、5、又は6個のフィンガーを有する。ジンクフィンガー・タンパク質は、標的遺伝子内の比較的小さいサブ配列を示す標的部位(標的断片と呼ばれる)を認識し、そして結合する。ジンクフィンガータンパク質の各構成フィンガーは、標的部位内のサブサイトに結合できる。当該サブサイトは、(標的鎖とも呼ばれることが多い)同じ鎖に全て存在する3個の連続塩基のトリプレットを含む。当該サブサイトは、当該標的鎖上の3個の連続塩基の3’側の次の塩基の相補塩基である反対側の鎖上の第4の塩基を含む。多くのジンクフィンガー・タンパク質において、ジンクフィンガーは、同じジンクフィンガー・タンパク質中の他のフィンガーとは実質的に無関係であるトリプレット・サブサイトに結合する。従って、複数のフィンガーを含むジンクフィンガーの結合特異部は、通常、おおよそその構成フィンガーの特異部の集合である。例えば、ジンクフィンガー・タンパク質が、トリプレットXXX、YYY、ZZZに独立して結合する第一、第二、及び第三フィンガーから形成される場合、ジンクフィンガー・タンパク質の結合特異部は、3’XXXYYYZZZ5’である。
【0077】
N末端からC末端へのジンクフィンガー・タンパク質中のフィンガーの相対順番は、標的における3’から5’への方向のトリプレットの相対順番を決定する。例えば、ジンクフィンガー・タンパク質が、トリプレット5’GAC3’、5’GTA3’、及び5’GGC3’にそれぞれ個別に結合する第一、第二、及び第三フィンガーをN末端からC末端方向に含む場合、当該ジンクフィンガー・タンパク質は、3’CAGATGCGG5’(配列番号2)に結合する。ジンクフィンガー・タンパク質が別の順序で、例えば、第二フィンガー、第一フィンガー、第三フィンガーの順でフィンガーを含む場合、当該ジンクフィンガー・タンパク質は、トリプレットの異なる順列を含む標的断片、この例では3’ATGCAGCGG5’(配列番号3)を含む標的断片に結合する。Berg & Shi, Science 271, 1081-1086(1996)を参照のこと。その構成フィンガーの集合としてジンクフィンガー・タンパク質の結合性質を評価することは、幾つかの場合、同じタンパク質内で結合する複数のフィンガーの周囲配列依存性の相互作用により影響されることもある。
【0078】
2以上のジンクフィンガー・タンパク質は、構成ジンクフィンガー・タンパク質の標的の集合体である標的特異性を有するように結合されうる(例えば、Kim & Pabo, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95, 2812-2817(1998)を参照のこと)。例えば、第一、第二、及び第三構成フィンガーであって、それぞれXXX、YYY、及びZZZに結合するフィンガーを有する第一ジンクフィンガー・タンパク質は、第一、第二、及び第三構成フィンガーであって、結合特異部AAA、BBB、及びCCCを有するフィンガーを有する第二ジンクフィンガー・タンパク質に結合されうる。その結果、第一及び第二タンパク質の結合特異部は、3’XXXYYYZZZ_AAABBBCCC5’であり、ここで下線は短い介在領域(典型的には0〜5個の任意のタイプの塩基)を指し示す。この状況では、標的部位は、介在断片により分離された2個の標的断片を含むものと見られうる。
【0079】
結合は、以下の:
TGEKP:(配列番号4)(Liuら、1997,上記);
(G4S)n(配列番号5)(Kimら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:1156-1160 (1996);
GGRRGGGS:(配列番号6)
LRQRDGERP:(配列番号7)
LRQKDGGGSERP:(配列番号8)
LRQKD(G3S)2ERP(配列番号9)
で表されるペプチドリンカーのいずれかを用いて達成されうる。
【0080】
或いは、可動性のリンカーは、DNA結合部位及びペプチド自身をモデリングできるコンピューター・プログラムを用いて、又はファージディスプレイ法により合理的に設計されうる。他の変法では、非共有結合は、2個のジンクフィンガー・タンパク質間のヘテロダイマー形成を促進するドメインを有する2個のジンクフィンガー・タンパク質を融合することにより達成されうる。例えば、1のジンクフィンガー・タンパク質は、fosと融合され、そしてもう一方はjunと融合される(Barbasら、WO95/119431を参照のこと)。
【0081】
2個のジンクフィンガー・タンパク質を結合することが、哺乳動物ゲノム内に固有の結合特異部を与えるのに有利である。典型的な哺乳動物の二倍体ゲノムは、3×109bpからなる。4個のヌクレオチドA、C、G、及びTがランダムに分布されるとすると、所定の9bpの配列は、約23000回出現する。こうして、絶対的な特異性で9bpを認識するZFPは、ゲノム中で約23000箇所に結合する能力を有するであろう。18bpの配列は、その複雑性が哺乳動物ゲノムの複雑性の10倍であるランダムなDNA配列中で約1回出現する。
【0082】
ジンクフィンガー・タンパク質の構成フィンガーは、典型的に約30個のアミノ酸を含み、一の実施態様では、以下のモチーフ(N-C):
Cys-(X)2-4-Cys-X.X.X.X.X.X.X.X.X.X.X.X-His-(X)3-5-His(配列番号88)
を有する。
【0083】
2個の不変のヒスチジン残基及び一つのβターンにおける2個の不変のシステイン残基は、亜鉛原子を配位する(例えばBerg & Shi, Science 271, 1081-1085 (1996)を参照のこと)。上記モチーフは、結合特異性を与えるジンクフィンガーの領域についての分野において標準である番号付けの慣習を示す。一つ目の不変His残基の左側(N末端側)のアミノ酸に+6を割り当て、そしてさらに左側の他のアミノ酸に連続して番号を減らして数字を割り当てる。アルファヘリックスは、残基1で始まり、そして第二保存ヒスチジンの次の残基にわたる。ヘリックス全体は、その結果11〜13残基で長さが変わる。
【0084】
V.ZFPの設計
本明細書中に提供されるZFPは、PLN遺伝子内の選択された標識部位を認識する様に遺伝子操作される。PLN発現を調節するのに適したZFPの非制限的な例は、本明細書に記載される。
【0085】
ZFPを設計又は選択する方法は、典型的に、天然ZFPをフレームワーク残基のソースとして開始する。設計又は選別の方法は、所望の結合特異性を与えるために、保存されていない位置(つまり-1〜+6の位置)を規定するのに役に立つ。1の適切なZFPは、マウス転写因子Zif268のDNA結合ドメインである。当該タンパク質のDNA結合ドメインは、以下の:
【化1】

で表されるアミノ酸配列を有し、そして標的5’GCG TGG GCG 3’(配列番号13)に結合する。
【0086】
フレームワーク残基のソースとしての他の適切な天然ジンクフィンガーは、Sp-1である。ジンクフィンガー・タンパク質の構築のために使用されるSp-1配列は、Sp-1転写因子のアミノ酸531〜624に一致する。当該配列は、94個のアミノ酸長である。例えば、Sp1の配列及びSp-1の代わりの形態(Sp-1コンセンサス配列と呼ばれる)について米国特許出願第20030021776を参照のこと。
【0087】
Sp-1は、標的部位5’GGG GCG GGG3’(配列番号14)に結合する。
【0088】
幾つかのジンクフィンガー・タンパク質の合理的な設計を手助けする多くの置換法則が存在する。例えば、共有されるWO 00/42219; WO 00/41566;及び1999年11月19日に出願された米国特許出願第 09/444,241号、第2000年3月23日に出願された米国特許出願第09/535,088号、並びに米国特許第5,789,538号;第6,007,408号;第6,013,453号;第6,140,081号;及び第6,140,466号;並びにPCT出願公開WO 95/19431、WO 98/54311、WO 00/23464、及びWO 00/27878に記載されるように、ZFPのDNA結合ドメインは、特定の標的部位を認識する様に設計され及び/又は選別されうる。1の実施態様では、ジンクフィンガーDNA結合ドメインについての標的部位は、共有に係るWO00/42219に開示される部位選別則に従って同定される。好ましい実施態様では、ZFPは、共有に係るWO 02/077227に記載される様に選択される;WO 96/06166; Desjarlais & Berg, PNAS 90, 2256-2260 (1993); Choo & Klug, PNAS 91, 11163-11167 (1994); Desjarlais & Berg, PNAS 89, 7345-7349 (1992); Jamiesonら、Biochemistry 33:5689-5695 (1994);及びChooら、WO 98/53057、WO 98/53058、WO 98/53059、WO 98/53060を参照のこと。
【0089】
これらの法則の多くは、汎用の転写因子であるSp-1の3個のフィンガードメインの部位特異的突然変異誘導によりサポートされる(Desjarlais and Berg、1992;1993)。これらの法則のうちの一つは、DNAトリプレットのうちの5’Gが、認識ヘリックスの6位においてアルギニンを取り込むジンクフィンガーにより結合されうるという法則である。他の置換法則は、サブサイトの真ん中のGが、ジンクフィンガーの3位にヒスチジン残基を含めることにより認識されうるという法則である。さらなる置換法則は、トリプレットの真ん中のAを認識するためにアスパラギンが取り込まれうるということ、トリプレットの真ん中のCを認識するためにアスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、又はスレオニンが取り込まれうること、そしてトリプレットの真ん中のTを認識するためにアラニンなどの小さい側鎖を有するアミノ酸が取り込まれうるということである。さらなる置換法則は、トリプレット・サブサイトの3’塩基が以下のアミノ酸:Gを認識するためにアルギニン、Aを認識するためにグルタミン、Cを認識するためにグルタミン酸(又はアスパラギン酸)、及びTを認識するためにスレオニン、を認識ヘリックスの-1位に取り込むことにより認識されうる。これらの置換法則は、ジンクフィンガー・タンパク質を設計するのに有用であるが、全ての可能な標的部位を考慮するものではない。さらに、当該法則の基礎をなす前提、つまり、ジンクフィンガー中の特定のアミノ酸がサブサイト中の特定の塩基に結合するのに責任があるということは、推測でしかない。フィンガー中の隣接するアミノ酸間の配列依存性の相互作用、又は複数のアミノ酸の1の塩基への結合若しくはその逆は、現存する置換法則により予想される結合特異性の変動性を引き起こしうる。従って、ある実施態様では、予め決められた特異性のZFP・DNA結合ドメインは、共有のWO02/077227に記載される方法に従って得られる。
【0090】
当該技術分野に知られている任意の適切な方法は、ZFPをコードする核酸を設計及び構築するために使用されうる。例えば、ファージディスプレイ、ランダム突然変異誘導、コンビナトリアル・ライブラリー、コンピューター/合理的設計、アフィニティー選別、PCR、cDNA又はゲノム・ライブラリーからのクローニング、合成構築などである(例えば、米国特許第5,786,538号;Wuら、PNAS 92:344-348 (1995); Jamiesonら、Biochemistry 33:5689-5695 (1994); Rebar & Pabo, Science 263:671-673 (1994); Choo & Klug, PNAS 91:11163-11167 (1994); Choo & Klug, PNAS 91: 11168-11172 (1994); Desjarlais & Berg, PNAS 90:2256-2260 (1993); Desjarlais & Berg, PNAS 89:7345- 7349 (1992); Pomerantzら、Science 267:93-96 (1995); Pomerantzら、PNAS 92:9752-9756 (1995); and Liuら, PNAS 94:5525-5530 (1997); Griesman & Pabo, Science 275:657-661 (1997); Desjarlais & Berg, PNAS 91:11-99-11103 (1994))を参照のこと)。
【0091】
ある好ましい実施態様では、DNA結合ドメイン (例えば、ZFP・DNA結合ドメイン) の結合特異性は、問題となる配列における近接可能な領域(例えば、細胞内クロマチン)を同定することにより決定されうる。近接可能な領域は、共有のWO01/83732に記載されているように決定されうる。また、米国特許出願題20030021778A1を参照のこと。DNA結合ドメインは、つぎに本明細書に記載される様に設計及び/又は選択されて、近接可能な領域内の標的部位に結合する。
【0092】
VI.代表的なジンクフィンガー・タンパク質及びその同等物
うっ血性心不全及び他の心筋収縮能の欠損の治療に有用である転写調節のための及び/又は標的されたDNA切断のための方法及び組成物が本明細書に開示される。これらは、遺伝子操作されたジンクフィンガー・タンパク質及び機能ドメイン、例えば、転写抑制ドメイン、転写活性化ドメイン、ヌクレアーゼドメイン、又はヌクレアーゼ・ハーフドメインを含む。適切な機能ドメインは、当業者に知られており、そして非限定的に、転写活性化ドメイン、例えば、VP16、VP64、及びp65;転写抑制ドメイン、例えば、KOX及びv-erbA;切断ドメイン、例えばHO及び切断ハーフ・ドメイン、例えば、FokIの切断ドメインを含む。1以上の同じか又は異なる機能ドメインは、所定の融合タンパク質内に存在しうる。代表的な転写活性化及び抑制ドメインの開示として、本明細書に援用される共有の米国特許出願第2002/0160940号を参照のこと。援用される共有の米国特許出願第2005/0064474号は、代表的な切断ドメイン及び切断ハーフ・ドメインを開示する。
【0093】
ある実施態様では、ジンクフィンガー・タンパク質は、ヒトホスホランバン遺伝子の上流に存在する標的配列GATTGGTACAAGaGTGGGG(配列番号16)を含む配列に結合する様に遺伝子操作される(表1)。
【0094】
配列番号16に結合する様に遺伝子操作された代表的な6個のフィンガーのジンクフィンガー・タンパク質であるSBS-6576は、以下のアミノ酸配列:
【化2】

を有する。
【0095】
配列番号69において下線を引いたアミノ酸残基は、ジンクフィンガーのヘリックス部の開始点に関して-1から+6の残基に対応し、そして「認識部位」を意味する。なぜなら、1以上のこれらの残基は、核酸結合の配列特異性に寄与するからである。従って、異なるポリペプチド骨格配列中に上と同じ3個の認識領域を含むタンパク質は、配列番号69と認定されたタンパク質に対する同等物と考えられる。なぜなら、それらは同じDNA結合特異性を有するはずだからである。
【0096】
こうして、ある実施態様では、6個の認識領域(上の配列番号69の下線部)は、任意のジンクフィンガー骨格中に配置されうるし(例えば、米国特許第6,453,242号及び第6,543,261号を参照のこと)、そして得られたタンパク質は、転写を調節するために、例えば、うっ血性心不全及び他の心臓疾患の治療において心筋収縮能を調節するために、使用されうる。従って、以下の配列:
【化3】

を含む遺伝子操作されたジンクフィンガー・タンパク質が、開示された方法において使用されうる。
【0097】
認識領域内で、-1、+3、及び+6の残基は、タンパク質-ヌクレオチド接触に主に責任がある。従って、さらなる同等物の非制限的な例は、6個のジンクフィンガー:ここで第一フィンガーはR残基を-1に、H残基を+3に、及びQ残基を+6に含み(RXXHXXQ、配列番号90);第二フィンガーは、R残基を-1に、V残基を+3に、及びN残基を+6に含み(RXXVXXN、配列番号91);第三フィンガーはR残基を-1に、A残基を+3に、及びV残基を+6に含み(RXXAXXV、配列番号92)、第四フィンガーは、D残基を-1に、N残基を+3に、及びK残基を+6に含み(DXXNXXK、配列番号93);第五フィンガーは、R残基を-1に、H残基を+3に、及びT残基を+6に含み(RXXHXXT、配列番号94);そして第六フィンガーは、T残基を-1に、N残基を+3に、及びK残基を+6に含む(TXXNXXK、配列番号95)、を含むタンパク質を含む。こうして、以下の配列番号96:
【化4】

を含むタンパク質が当該開示された方法において使用するための同等物と考えられる。
【0098】
さらなる同等物は、標的配列GATTGGTACAAGaGTGGGG(配列番号16)を含む配列に結合する任意のZFPを含む。
【0099】
ジンクフィンガーの認識領域の-1、+3、及び+6におけるアミノ酸の接触残基及び標的部位のヌクレオチドの間の一致が記載された。例えば、米国特許第6,007,988号;第6,013,453号;第6,746,838号、及び第6,866,997号;並びにPCT公開WO 96/06166;WO 98/53058;WO 98/53059、及びWO 98/53060を参照のこと。従って、6本指のジンクフィンガー・タンパク質、ここで第一フィンガーがRを-1に;Hを+3に;そしてR、K、S、又はTを+6に含み(そしてS又はTの場合、隣接するC末端ジンクフィンガーの+2位にDを含む);第二フィンガーは、Rを-1に、A、S、又はVを+3に、そしてR、K、S、又はTを+6に含み(そしてS又はTの場合、隣接するC末端ジンクフィンガーの+2位にDを含み);第三フィンガーは、Rを-1に;Nを+3に、そしてE、N、Q、又はVを+6に含み(そしてQの場合、隣接するC末端ジンクフィンガーの+2位にDを含まない);第四フィンガーは、D又はHを-1に;Nを+3に、そしてS、T、V、又はKを+6に含み;第五フィンガーは、Rを-1に;Nを+3に、そしてS、T、V、又はKを+6に含み;第六フィンガーは、N、H、T、又はQを-1に;Nを+3に、そしてR、K、S、又はTを+6に含む(そしてS又はTの場合、隣接するC末端ジンクフィンガーの+2にDを含む)は、同等物と考えられる。
【0100】
あるさらなる実施態様では、ジンクフィンガー・タンパク質は、ヒトホスホランバン遺伝子(表1)の上流に存在する標的配列AGACAGGATTCAaATCCAG(配列番号19)を含む配列に結合する様に遺伝子操作される。代表的な6本指のジンクフィンガー・タンパク質であるSBS-6624(表3)は、配列番号19に結合する様に遺伝子操作された。
【0101】
6624ジンクフィンガー・タンパク質について表3に示されるアミノ酸残基は、ジンクフィンガーのヘリックス部分の開始点に関して-1から+6の残基に対応し、そして「認識領域」を意味する。なぜなら、一以上のこれらの残基は、核酸結合の配列特異性に寄与するからである。従って、異なるポリペプチド骨格配列における同じ3個の認識領域を含むタンパク質は、SBS-6624に同等であると考えられる。なぜなら、それらは、同じDNA結合特異性を有するはずだからである。
【0102】
こうして、ある実施態様では、SBS-6624タンパク質(表3)の6個の認識領域は、任意のジンクフィンガー骨格に存在しうるし(例えば、米国特許第6,453,242号及び第6,534,261号を参照のこと)、そして得られたタンパク質は、転写を調節するために、例えば心筋収縮能の調節のために使用されうる。従って、以下の配列:
【化5】

を含む遺伝子操作されたジンクフィンガー・タンパク質は、開示された方法において使用されうる。
【0103】
認識領域内において、-1、+3、及び+6の残基は、タンパク質-ヌクレオチドの接触に主に責任がある。従って、SBS-6624のさらなる同等物の非制限的な例は、6本のジンクフィンガー:ここで第一フィンガーはR残基を-1に、N残基を+3に、そしてE残基を+6に含み(RXXNXXE、配列番号98);第二フィンガーは、H残基を-1に、S残基を+3に、そしてK残基を+6に含み(HXXSXXK、配列番号99);第三フィンガーは、D残基を-1に、S残基を+3に、そしてA残基を+6に含み(DXXSXXA、配列番号100);第四フィンガーは、T残基を-1に、N残基を+3に、そしてR残基を+6に含み(TXXNXXR、配列番号101);第五フィンガーは、R残基を-1に、N残基を+3に、そしてQ残基を+6に含み(RXXNXXQ、配列番号102);そして第六フィンガーは、Q残基を-1に、H残基を+3に、そしてT残基を+6に含む(QXXSXXT、配列番号103)を含むタンパク質を含む。こうして、以下の配列番号104:
【化6】

を含むタンパク質は、開示された方法において使用するための同等物と考えられている。
【0104】
SBS-6624の更なる同等物は、標的配列AGACAGGATTCAaATCCAG(配列番号19)を含む配列に結合する任意のZFPを含む。
【0105】
ジンクフィンガーの認識領域における-1、+3、及び+6(及び場合により+2)の接触残基でのアミノ酸及び標的部位でのヌクレオチドとの間の一致が記載された。例えば、米国特許第6,007,988号:第6,013,453号;第6,746,838号及び第6,866,997号;並びにPCT公開WO 96/06166;WO 98/53058;WO 98/53059及びWO 98/53060を参照のこと。従って、6本指のジンクフィンガー・タンパク質であって、第一フィンガーがRを-1に、Nを+3に、そしてS、T、V、A、E、又はNを+6に含み;第二フィンガーがD又はHを-1に、A、S、又はVを+3に、そしてE、N、V、又はQを+6に含み(そしてQの場合、隣接するC末端ジンクフィンガーの+2位にDを含まない);第三フィンガーがQを-1に、S、D、E、L、T、又はVを+3に、そしてS、T、V、又はKを+6に含み(そしてS又はTの場合、隣接するC末端ジンクフィンガーの+2位にDを含み);第四フィンガーがH、T、N、又はQを-1に、Nを+3に、そしてR、K、S、又はTを+6に含み(そしてS又はTの場合、隣接するC末端ジンクフィンガーの+2位にDを含み);第五フィンガーがRを-1に、Nを+3に、そしてS、T、V、A、E、又はNを+6に含み;第6フィンガーがQを-1に、Hを+3に、そしてE、N、V、又はQを+6に含む(そしてQの場合、隣接するC末端ジンクフィンガーの+2位にDを含まない)ジンクフィンガー・タンパク質がSBS-6624の同等物と考えられる。
【0106】
VII.ジンクフィンガー・タンパク質の産生
A.合成及びクローニング
ZFPポリペプチド及び当該ポリペプチドをコードする核酸は、組換え遺伝学の分野における通常の技術を用いて作られうる。一般的な方法を開示する基本書は、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual (第二版、1989);Kriegler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990);及びCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubelら編、1994))を参照のこと。さらに、約100塩基未満の核酸は、様々な販売元、例えばThe Midland Certified Reagent Company (mcrc@oligos.com)、The Great American Gene Company (http://www.genco.com)、ExpressGen Inc.(www.expressgen.com)、Operon Technologies Inc.(Alameda, Calif.)のいずれかから特注販売されうる。この様に、ペプチドは、様々な販売元、例えばPeptidoGenic (pkim@ccnet.com)、HTI Bio-products, inc. (http://www.htibio.com)、BMA Biomedicals Ltd (U.K.)、Bio.Synthesis, Inc.から特注販売されうる。
【0107】
オリゴヌクレオチドは、Beaucage & Caruthers, Tetrahedron Letts. 22:1859-1862(1981)により最初に記載された固相ホスホールアミダイト・トリエステル法に従って、Van Devneterら、Nucleic Acids Res. 12:6159-6168(1984)に記載される自動合成機を用いて化学的に合成されうる。オリゴヌクレオチドの精製は、変性ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動によるか又は逆相HPLCによる。クローン化された遺伝子及び合成オリゴヌクレオチドの配列は、Wallecら、Gene 16:21-26(1981)の二本鎖テンプレート配列決定のためのチェーン・ターミネーション法を用いてクローニングした後に確かめられる。
【0108】
新たに設計されたDNA結合性ペプチドを発現するために必要とされるコード配列を作成するために、二者択一の方法が典型的に使用される。1のプロトコルは、6個の重なり合うオリゴヌクレオチドを利用するPCRに基づく組立方法である。3個のオリゴヌクレオチドが、認識ヘリックス内のDNA結合性ドメインの一部をコードする「共通」配列に対応する。これらのオリゴヌクレオチドは、典型的に全てのジンクフィンガーコンストラクトについて一定のままである。他の3個の「特異的」オリゴヌクレオチドは、認識ヘリックスをコードする様に設計される。これらのオリゴヌクレオチドは、認識ヘリックス上の主に−1、2、3、及び6位で置換を含み、当該ヘリックスを、異なるDNA結合性ドメインの各々について特異的にする。
【0109】
PCR合成は、2回のステップで行われる。第一に、二本鎖DNAテンプレートは、低い温度のアニーリングステップで、4サイクルのPCR反応において6個のオリゴヌクレオチド(3個が共通、3個が特異的)を混合することにより作成され、それによりオリゴヌクレオチドをアニーリングさせて、DNA骨格を形成する。骨格におけるギャップは、高フィデリティ熱安定ポリメラーゼにより満たされる。当該ポリメラーゼとして、TaqとPfuポリメラーゼの組合せで十分である。構築の第二フェーズでは、ジンクフィンガー・テンプレートは、シャトルベクターに又は直接発現ベクターにクローニングするため、いずれかの末端で制限酵素切断部位を取り込む様に設計された外部プライマーにより増幅される。
【0110】
新たに設計されたDNA結合タンパク質をクローニングする代わりの方法は、所望されるZFPの特異的領域をコードする相補的オリゴヌクレオチドをアニーリングさせることによる。この用途では、当該オリゴヌクレオチドが最後のライゲーション・ステップの前にリン酸化されていることが必要とされる。リン酸化は、通常、アニーリング反応を始める前に行われる。簡潔に記載すると、タンパク質の定常領域をコードする「共通の」オリゴヌクレオチド(オリゴ1、2、及び3)は、その相補オリゴヌクレオチドとアニールする。さらにフィンガー認識ヘリックスをコードする「特異的」オリゴヌクレオチドが、それぞれの相補的オリゴヌクレオチドとアニールする。これらの相補的オリゴは、上記プロトコルにおいてポリメラーゼによりすでにうめられた領域をうめるように設計される。オリゴ1及び6に相補的なオリゴヌクレオチドは、以下のステップで選択されるベクター中にクローニングする際に使用される制限酵素部位に特異的な突出配列を残すように遺伝子操作される。第二の組立プロトコルは、以下の点で最初のプロトコルとは異なっている。新たに設計されたZFPをコードする「骨格」が、合成DNAから完全に構成されており、それにより、ポリメラーゼ・フィルイン・ステップを排除でき、さらにベクター内にクローニングされる断片が増幅を必要としない点である。最後に、配列特異的突出部を残す設計が、インサート断片を制限酵素切断する必要性を除外する点である。或いは、ZFP認識ヘリックスの変更は、慣用の部位特異突然変異法を用いて作成されうる。
【0111】
上記両方の組立方法は、新たに設計されたZFPをコードする得られた断片がベクターにライゲーションされることを必要とする。最終的に、ZFPをコードする配列は、発現ベクターにクローニングされる。一般的に利用される発現ベクターは、非限定的に、改変されたpMAL-c2細菌発現ベクター(New England Biolabs, Beverly, Mass.)又は真核発現ベクターpcDNA(Promega、Madison、Wis.)を含む。最終的なコンストラクトはシーケンス解析により確かめられる。
【0112】
当業者に知られているタンパク質精製の適した方法は、ZFPを精製するために使用されうる(上記Ausubel、Sambrookを参照のこと)。さらに、任意の適切な宿主が発現に使用されうる。例えば、細菌細胞、昆虫細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞などである。
【0113】
細菌株JM109のマルトース結合タンパク質に融合されたジンクフィンガー・タンパク質(MBP-ZFP)の発現は、アミロースカラム(New England Biolabs, Beverly, Mass.)を通した直接的な精製を可能にする。ジンクフィンガーキメラタンパク質の高発現レベルは、IPTGでの誘導により得ることができる。なぜなら、pMal-c2発現プラスミド中のMBP-ZFP融合体は、tacプロモーター(New England Biolabs, Beverly, Mass.)の制御下に存在するからである。MBP-ZFP融合プラスミドを含む細菌は、10μM ZnCl2、0.02%グルコース、50μg/mlアンピシリンを含む2xYT培地中に植菌され、そして37℃で振盪した。指数関数増殖期の途中で、IPTGを0.3mMまで加え、そして培養物をシェイクさせた。3時間後、細菌を遠心により回収し、超音波処理により又は圧力セルを通過させることにより、又はライソザイムの使用を介して破壊し、そして不溶性の物質を遠心により取り除いた。MBP-ZFPタンパク質を、アミロース結合性レジン上にとり、20mM・Tris-HCl(pH7.5)、200mM・NaCl、5mM・DTT、及び50.mu.M・ZnCl2を含む緩衝液で十分に洗浄し、次に実質的に同じマルトースを含む緩衝液で溶出した(精製は、New England Biolabsの標準プロトコルに基づいた)。精製されたタンパク質を定量し、そして生化学分析用に貯蔵した。
【0114】
精製タンパク質の解離定数、例えばKdは、典型的に電気泳動移動シフト・アッセイ(EMSA)を介して特徴付けられる(Buratowski & Chodosh, in Current Protocols in Molecular Biology pp. 12.2.1-12.2.7 (Ausubel編, 1996))。アフィニティーは、一定量の標識された二本鎖オリゴヌクレオチド標識に対して精製されたタンパク質を滴定することにより計測される。標的は、典型的に天然配列に見られる3bp及び更に一定の隣接配列により繋がれた天然結合部位配列を含む。天然の結合部位は、典型的に3本指のタンパク質について9bpであり、そして6本指のZFPについて9bpの2倍+介在配列である。アニールされたオリゴヌクレオチド標的は、T4ファージポリヌクレオチドキナーゼを用いた標的の十分な標識を可能にする1塩基の5’側の突出部を有する。標的が1nM以下の濃度で加えられたアッセイでは(実際の濃度は予期された解離定数より少なくとも10倍低く維持されている)、精製されたZFPを様々な濃度で加え、そして、少なくとも45分間平衡にさせた。さらに、反応混合液は10mM・Tris (pH7.5)、100mM・KCl、1mM・MgCl2、0.1mM・ZnCl2、5mM・DTT、10%グリセロール、0.02%・BSAを含む。
【0115】
平衡化された反応液を、予めTris/グリシン緩衝液中で45分間泳動した10%ポリアクリルアミド・ゲル上にロードし、次に結合及び未結合の標識された標的を150Vで電気泳動により分離した。或いは10〜20%の勾配のTris-HClゲルであって、4%ポリアクリルアミド・スタッキングゲルを使用することができる。乾燥したゲルをオートラジオグラフィ又はホスホールイメージングにより可視化し、そして明らかなKdは、最大結合の半分をもたらすタンパク質濃度を計算することにより決定される。
【0116】
当該アッセイは、タンパク質調製品における活性分画を決定することを含みうる。活性分画は、タンパク質が高濃度の標的DNAに対して滴定される化学量論的なゲル・シフトにより決定される。標的の100、50、25%で(通常マイクロモル・レベルで)滴定は行われる。
【0117】
B.ファージ・ディスプレイ
ファージ・ディスプレイの技術は、所望の標的特異性を有するジンクフィンガー・タンパク質を広く実験的に得る手段を提供する(例えば、Rebar,米国特許第5,789,538号;Chooら、WO 96/06166;Barbasら、WO 95/19431及びWO 98/543111; 上記Jamiesonらを参照のこと)。当該方法は、合理的デザインと併せて、又は合理的デザインの代わりに用いられうる。当該方法は、当該方法は、突然変異を起こさせたジンクフィンガー・タンパク質の多様なライブラリーを作成し、つづいてアフィニティー選別方法を用いて所望のDNA結合性質でタンパク質を単離することに関与する。当該方法を使用するために、実験者は、典型的に以下の様に実行する。第一に、ジンクフィンガー・タンパク質は、結合特異性及び/又はアフィニティーに重要な領域に多様性を導入するために突然変異をさせる。典型的な適用では、当該突然変異は、1本のフィンガーを、-1、+2、+3、及び+6において、及びしばしば、+1、+5、+8、及び+10などの付属部位においてランダム化することを介して達成される。次に、突然変異された遺伝子を、コートタンパク質pIIIをコードする線状ファージの遺伝子IIIとの融合体としてファージ又はファージミドベクター中にクローン化する。ジンクフィンガー遺伝子は、膜輸送シグナルペプチドをコードする遺伝子IIIの断片と、pIIIの残りとの間に挿入され、その結果、ジンクフィンガー・タンパク質はpIIIとの融合体として又は成熟、プロセッシングされたタンパク質中に発現される。
【0118】
ファージミドベクターを使用する場合、突然変異されたジンクフィンガー遺伝子は、ファージ粒子中にpIIIを組み立てるために必要とされるC末端を最低限コードする遺伝子IIIの切り詰め形態に融合されてもよい。得られたベクター・ライブラリーを、大腸菌(E.col)中に形質導入し、そして被膜タンパク質pIIIとの融合体として表面上に様々なジンクフィンガー・タンパク質を発現する線状ファージを産生するために使用する。ファージミドベクターが使用される場合、当該ステップは、ヘルパー・ファージで重感染させることを必要とする。ファージ・ライブラリーを、次に標的DNA部位とインキュベーションし、そしてアフィニティー選別方法は、大量のファージから高い親和性を有する標的を結合するファージを単離するために使用される。典型的に、DNA標的は、固体支持体上に固定され、当該標的は次に、強い結合のファージを除く全てを取り除くために十分な条件下で洗浄される。洗浄後、支持体上に残っている任意のファージは、ジンク・フィンガー--DNAの結合を破壊する条件下で溶出することを介して回収される。回収されたファージは、新たな大腸菌を感染するために使用され、当該大腸菌は次に増幅され、そしてファージ粒子の新たなバッチを産生するために使用される。選択及び増幅は、これらがシーケンス及び/又はスクリーニング法を用いて同定されるように、強い結合についてファージ・プールを濃縮するために必要な回数繰り返される。当該方法は、pIII融合体について記載されているが、同様の原理が、pVIII融合体としてZFPバリアントを選別するために使用されうる。
【0119】
ある実施態様では、特定のジンクフィンガー・タンパク質により結合された配列は、タンパク質とランダム化された二本鎖オリゴヌクレオチド配列のプールとの間の結合反応を行うことにより決定される(例えば、上記Kdの決定のための条件を参照のこと)。結合反応は、電気泳動移動シフト・アッセイ(EMSA)により分析され、ここでタンパク質-DNA複合体は、ゲル中を遅れて移動し、そして未結合核酸から分離されうる。フィンガーを結合させたオリゴヌクレオチドが、ゲルから精製され、そして、例えばポリメラーゼ連鎖反応により増幅される。選別(つまり、結合反応及びEMSA分析)は、次に選択されたオリゴヌクレオチド配列に関して、所望されるだけ多く繰り返される。この様にして、特定のアミノ酸配列を有するジンクフィンガー・タンパク質の結合特異性が決定される。
【0120】
C. 調節ドメイン
ジンクフィンガー・タンパク質は、外来性ドメイン(又はその機能断片)を融合タンパク質として有して発現されることが多い。ZFPに加えて、一般的なドメインは、例えば、転写因子ドメイン(アクチベーター、リプレッサー、共アクチベーター、共リプレッサー)、サイレンサー、癌遺伝子(例えば、myc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb、mosファミリーメンバーなど);DNA修復酵素及びその関連因子及び修飾因子;DNA再構築酵素(DNA rearrangement enzyme)及びその関連因子及び修飾因子;クロマチン関連タンパク質及びその修飾因子(例えば、キナーゼ、アセチラーゼ、及びデアセチラーゼ);並びにDNA修飾酵素(例えば、メチルトランスフェラーゼ、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ)及びそれらの関連因子及び修飾因子を含む。ZFPが標的遺伝子の発現を抑制するために使用されるとき、ZFPと融合する好ましいドメインは、ヒトKOX-1タンパク質由来のKRAB抑制ドメインである(Thiesenら、New Biologist 2, 363-374 (1990); Margolinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 4509-4513 (1994); Pengueら、Nucl. Acids Res. 22:2908-2914 (1994); Witzgallら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 4514-4518 (1994))。活性化を達成するための好ましいドメインは、HSV VP16活性化ドメイン(例えば、Hagmannら、J. Virol. 71, 5952-5962 (1997)を参照のこと);核ホルモン受容体(例えば、Torchiaら、Curr. Opin. Cell. Biol. 10:373-383 (1998)を参照のこと);核因子カッパーBのp65サブユニット(Bitko & Barik, J. Virol. 72:5610-5618 (1998) 及び Doyle & Hunt, Neuroreport 8:2937-2942 (1997)); Liuら、Cancer Gene Ther. 5:3-28 (1998))、又はVP64などの人工キメラ機能ドメイン(Seifpalら、EMBO J. 11, 4961-4968 (1992))を含む。
【0121】
PLN遺伝子の新規の配列及び近接可能領域(例えば、DNaseI高感受性部位)の同定は、心臓疾患の治療用の融合タンパク質を設計することを可能にする。こうして、ある実施態様では、本明細書に開示される組成物及び方法は、PLN遺伝子の1以上の調節領域を特異的に標的されるDNA結合ドメインと機能(例えば、抑制又は活性化)ドメインとの間の融合体(或いはかかる融合体をコードするポリヌクレオチド)に関する。このようにして、抑制又は活性化ドメインは、DNA結合ドメインにより結合される遺伝子の配列の近位に連行される。機能ドメインの転写制御機能は、次に、選択された調節配列に作用できる。
【0122】
さらなる実施態様では、共有のWO01/83793に開示されるように、クロマチンの標的リモデリングは、DNA結合分子の結合に近接可能な細胞クロマチンの1以上の部位を作り出すために使用されうる。
【0123】
融合分子は、当業者に周知のクローニング及び生化学結合の方法により構築される。融合分子は、DNA結合ドメイン及び機能ドメイン(例えば、転写活性化又は抑制ドメイン)を含む。融合分子はまた、場合により、核局在化シグナル(例えば、SV40中型T抗原)及びエピトープ・タグ(例えば、FLAG及びヘマググルチニン)を含む。融合タンパク質(及びそれをコードする核酸)は、転写リーディング・フレームが融合タンパク質の構成要素間で保存される様に設計される。
【0124】
一方で機能ドメイン(又はその機能断片)のポリペプチド構成要素と、他方で非タンパク質DNA結合性ドメイン(例えば、抗生物質の、インターカレーター、マイナー・グルーブ結合物質、核酸)との間の融合は、当業者に知られている生化学的な結合方法により構築される。例えば、Pierce Chemical Company (Rockford, IL) のカタログを参照のこと。マイナーグルーブ結合物質とポリペプチドとの間を融合させるための方法お呼び組成物が記載された(Mappら(2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:3930-3935)。
【0125】
図1は、PLN遺伝子に結合し、そしてPLN発現を調節する本明細書に記載されるZFPを含む融合タンパク質のアミノ酸配列を示す。表4は、図1に示されるアミノ酸配列のN末端に対応するアミノ酸から番号付けられた融合タンパク質内の様々な機能ドメインの位置を示す。NLSは、例えばSV40大型T抗原に由来する核局在化シグナルを指す。「Kox」ドメインは、転写リプレッサーとして作用する調節ドメインを指し、そして上で記載されるようにヒトKOX1のKRAB-A/Bボックスに由来する。「FLAG」は、合成のエピトープ・タグである。
【0126】
【表4】

【0127】
ある実施態様では、ジンクフィンガー・タンパク質により結合される標的部位は、細胞クロマチンの近接可能な領域に存在する。近接可能な領域は、共有の国際公開WO 01/8732に記載される様に決定されうる。標的部位が細胞クロマチンの近接可能な領域に存在しない場合、1以上の近接可能な領域が共有のWO 01/83793に記載される様に作成されうる。さらなる実施態様では、融合分子のDNA結合ドメインは、その標的部位が近接可能領域に存在するかしないかに関わらず、細胞クロマチンに結合できる。例えば、かかるDNA結合性ドメインは、リンカーDNA及び/又はヌクレオソームDNAに結合できる。このタイプの「パイオニア(pioneer)」DNA結合性ドメインの例は、ある種のステロイド受容体において及び肝細胞核因子3(HNF3)において見られる(Cordingley ら、(1987) Cell 48:261-270; Pinaら、(1990) Cell 60:719-731;及びCirilloら、(1998) EMBO J. 17:244-254)。
【0128】
かかる適用では、当業者に知られているように、融合分子は典型的に医薬として許容される担体と剤形されている。例えば、RemingtonのPharmaceutical Sciences、第17版、1985;及び共有のWO 00/42219を参照のこと。
【0129】
融合分子の機能構成要素/ドメインは、一度融合分子がそのDNA結合性ドメインを介して標的配列に結合した場合、遺伝子の転写に影響できる様々な異なる構成要素のいずれかから選ばれうる。それゆえ、機能構成要素は、非限定的に様々な転写因子ドメイン、例えばアクチベーター、リプレッサー、コ-アクチベーター、コーリプレッサー、及びサイレンサーを含みうる。
【0130】
遺伝子の発現を抑制するために使用されるDNA結合ドメイン、例えばZFPと融合するための代表的な機能ドメインは、ヒトKOX-1タンパク質由来のKRAB抑制ドメインである(例えば、Thiesenら、New Biologist 2, 363-374 (1990); Margolinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 4509- 4513 (1994); Pengueら、Nucl. Acids Res. 22:2908-2914 (1994);Witzgallら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 4514-4518 (1994)を参照のこと)。別の適切な抑制ドメインは、メチル結合ドメインタンパク質2B(MBD-2B)である(MBDタンパク質の記載についてHendrichら、(1999) Mamm Genome 10:906-912を参照のこと)。別の有用な抑制ドメインは、v-ErbAタンパク質と会合するドメインである。例えば、Dammら、(1989) Nature 339:593-597; Evans (1989) Int. J. Cancer Suppl. 4:26-28; Painら、(1990) New Biol. 2:284-294; Sapら、(1989) Nature 340:242-244; Zenkeら、(1988) Cell 52:107-119;並びにZenkeら、(1990) Cell 61:1035-1049を参照のこと。
【0131】
活性化を達成するために適したドメインは、HSV・VP16活性化ドメイン(例えば、Hagmannら、J. Virol. 71, 5952-5962 (1997)を参照のこと)、核ホルモンレセプター(例えば、Torchiaら、Curr. Opin. Cell. Biol. 10:373-383 (1998)を参照のこと);核因子κBのp65サブユニット(Bitko & Barik, J. Virol. 72:5610-5618 (1998) 及びDoyle & Hunt, Neuroreport 8:2937-2942 (1997)); Liuら、Cancer Gene Ther. 5:3- 28 (1998))、又は人工的なキメラ機能ドメイン、例えばVP64(Seifpalら、EMBO J. 11, 4961-4968 (1992))を含む。さらなる活性化ドメインの例は、非限定的にVP16、VP64、p300、CBP、PCAF、SRC1 PvALF、AtHD2A、及びERF-2を含む。例えば、Robyrら、(2000) Mol. Endocrinol. 14:329-347; Collingwoodら、(1999) J. MoI. Endocrinol. 23:255-275; Leoら、(2000) Gene 245:1-11; Manteuffel-Cymborowska (1999) Acta Biochim. Pol. 46:77-89; McKennaら、(1999) J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 69:3-12; Malikら、(2000) Trends Biochem. Sci. 25:277-283;並びにLemonら、(1999) Curr. Opin. Genet Dev. 9:499- 504を参照のこと。さらなる活性化ドメインの例は、非限定的にOsGAI、HALF-1、C1、AP1、ARF-5,-6,-7,及び-8、CPRF1、CPRF4、MYC-RP/GP、及びTRAB1を含む。例えば、Ogawaら、(2000) Gene 245:21-29; Okanamiら、(1996) Genes Cells 1:87-99; Goffら. (1991) Genes Dev. 5:298-309; Choら、(1999) Plant MoI. Biol. 40:419-429; Ulmasonら、(1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:5844-5849; Sprenger-Hausselsら、(2000) Plant J. 22:1-8; Gongら、(1999) Plant MoI. Biol. 41:33-44; 及びHoboら、(1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:15,348-15,353を参照のこと。
【0132】
さらに代表的な抑制ドメインは、非限定的にKRAB(「KOX」とも呼ばれる)、SID、MBD2、MBD3、DNMTファミリーのメンバー(例えば、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B)、Rb、及びMeCP2を含む。例えば、Birdら、(1999) Cell 99:451-454; Tylerら、(1999) Cell 99:443-446; Knoepflerら、(1999) Cell 99:447-450;並びにRobertsonら、(2000) Nature Genet. 25:338-342を参照のこと。
さらなる代表的な抑制ドメインは、非限定的にROM2及びAtHD2Aを含む。例えば、Chemら、(1996) Plant Cell 8:305-321; 及びWuら、(2000) Plant J. 22:19-27を参照のこと。更なる例示的な機能ドメインは、例えば共有の米国特許第6,534,261号及び米国特許出願第2002/0160940号に開示される。
【0133】
D.発現ベクター
選択したZFPをコードする核酸は、典型的に、例えばKdの測定のため、複製及び/又は発現のために原核細胞又は真核細胞に形質転換するための中間ベクター中にクローン化される。中間ベクターは、典型的に、ZFPをコードする核酸の貯蔵又は操作用又はタンパク質産生用の原核ベクター、例えばプラスミド、又はシャトル・ベクター、又は昆虫ベクターである。ZFPをコードする核酸は、植物細胞、動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞、又はヒト細胞、心筋細胞、細菌細胞、又は原生細胞に投与するための発現ベクターに典型的にクローン化される。
【0134】
クローン化された遺伝子又は核酸を発現させるために、ZFPは典型的に転写を仕向けるためにプロモーターを含む発現ベクター中にサブクローニングされる。適切な細菌及び真核細胞プロモーターは、当該技術分野に知られており、そして、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual (第二版、1989); Kriegler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990);並びにCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubelら編、1994)に記載されている。ZFPを発現するための細菌発現システムは、例えば大腸菌、バチルス種(Bacillus sp.)、及びサルモネラ(Salmonella)で利用される(Palvaら、Gene 22:229-235 (1983))。かかる発現システム用のキットが市販されている。哺乳動物細胞、酵母、及び昆虫細胞用の真核細胞発現系は、当該技術分野に周知であり、そして市販されている。
【0135】
ZFP核酸の発現を仕向けるために使用されるプロモーターは、特定の適用に左右される。例えば、強力な構成的プロモーターは、ZFPの発現及び精製に典型的に使用される。対照的に、ZFPがin vivoで遺伝子調節に投与される場合、構成的又は誘導性のプロモーターのいずれかが、ZFPの特定用途に基づいて使用される。さらに、ZFPの投与用の好ましいプロモーターは、弱いプロモーター、例えばHSV TK又は同様の活性を有するプロモーターでありうる。当該プロモーターは、典型的に、転写活性化に応答するエレメント、例えば、低酸素応答エレメント、Gal4応答エレメント、lacリプレッサー応答エレメント、及び低分子制御システム、例えばtet調節システム及びRU586システムを含みうる(例えば、Gossen & Bujard, PNAS 89:5547 (1992); Oligino ら、Gene Ther. 5:491-496 (1998); Wangら、Gene Ther. 4:432-441 (1997); Neering ら、Blood 88:1147-1155 (1996);並びにRendahlら、Nat. Biotechnol. 16:757-761 (1998)を参照のこと)。
【0136】
プロモーターに加えて、発現ベクターは、原核生物又は真核生物であれ、典型的に宿主細胞における核酸の発現に必要とされる全ての付随的エレメントを含む転写ユニット又は発現カセットを含む。典型的な発現カセットは、例えばZFPをコードする核酸配列に発現可能な様に結合するプロモーター、及び転写産物の十分なポリアデニル化、転写終結、リボソーム結合部位、又は翻訳終結に必要とされるシグナルを含む。カセットの更なるエレメントは、例えば、エンハンサー及び外来性のスプライシングされたイントロン・シグナルを含んでもよい。
【0137】
遺伝情報を細胞へと輸送するために使用される特定の発現ベクターは、ZFPの意図した用途に関して選択される。標準的な細菌発現ベクターは、pBR322に基づくプラスミド、pSKF、pET23D、及び市販の融合発現系、例えばGST及びLacZを含む。好ましい融合タンパク質は、マルトース結合性タンパク質「MBP」である。係る融合タンパク質は、ZFPの精製に使用される。エピトープ・タグは、組換えタンパク質に加えることができ、発現をモニター、そして細胞及び細胞内の局在をモニターするために組換えタンパク質に加えられうる。例えば、c-myc又はFLAGである。
【0138】
真核細胞ウイルス由来の調節エレメントを含む発現ベクターは、しばしば真核生物発現ベクター、例えばSV40ベクター、パピローマ・ウイルスベクター、及びエプステイン-バーウイルスに由来するベクターにおいて使用される。他の例示的な真核ベクターは、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVE、並びに、他のベクターであって、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネイン・プロモーター、マウス哺乳動物腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリへドリン・プロモーター、又は他のプロモーターであって、真核細胞中の発現に有効性を示すプロモーターの指揮監督下でタンパク質の発現を許容するベクターにおいて使用されることが多い。
【0139】
幾つかの発現系は、安定に形質転換された細胞系列を選別するためのマーカー、例えば、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシンB・ホスホトランスフェラーゼ、及びジヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼを有する。高収量の発現系が適しており、例えば昆虫細胞においてバキュロウイルスを使用する際、ポリへドリン・プロモーター又は他の強力なバキュロウイルス・プロモーターの支配下にZFPをコードする配列を有する。
【0140】
発現ベクター内に典型的に含まれるエレメントは、大腸菌内で機能するレプリコン、組換えプラスミドを有する細菌の選択を可能にする抗生物質抵抗性をコードする遺伝子、及び組換え配列の挿入を可能にするためにプラスミドの非必須領域内に固有の制限酵素部位を含む。
【0141】
標準形質転換法は、大量のタンパク質を発現する細菌、哺乳動物、酵母、又は昆虫細胞系列産生するために使用され、当該タンパク質は標準技術を用いて精製される(例えば、Colleyら、J. Biol. Chem. 264:17619- 17622 (1989); タンパク質精製の指針、Methods in Enzymology, vol. 182 (Deutscher, ed., 1990)を参照のこと)。真核細胞及び原核細胞の形質転換は、標準技術に従って行われる(例えば、Morrison, J. Bact. 132:349-351 (1977); Clark-Curtiss & Curtiss, Methods in Enzymology 101:347-362 (Wuら編、1983)。
【0142】
外来のヌクレオチド配列を宿主細胞に導入するための周知の方法のいずれかが、使用されてもよい。これらは、リン酸カルシウム形質転換、ポリブレン、プロトプラスト融合、電気穿孔、リポソーム、マイクロインジェクション、裸のDNA、プラスミド・ベクター、ウイルスベクター、エピソーム及び統合の両方、クローン化されたゲノムDNA、cDNA、合成DNA、又は他の外来性の遺伝物質を宿主細胞中に導入するための他の周知の方法のいずれか、の使用を含む(例えば、上記Sambrookらを参照のこと)。使用される特定の遺伝子操作法が、少なくとも1の遺伝子を、選択したタンパク質を発現できる宿主細胞にうまく導入できることのみが必要である。
【0143】
VIII.アッセイ
ひとたび、ZFPが記載された方法に従って設計され、そして調製されると、設計されたZFPの活性の初期評価が行われる。関心遺伝子の発現を調節する能力を示すZFPタンパク質は、ZFPの設計用途に依存したより特異的な活性についてさらに評価されうる。こうして、例えば、本明細書に提供されるZFPは、PLN発現を調節する能力について最初に評価されうる。標的PLN遺伝子の発現を調節して、心臓疾患を治療するZFPの能力のより特異的なアッセイが次に、典型的に行われる。これらのより特異的なアッセイは、以下の項目IXにおいて記載される。
【0144】
特定のZFPの活性は、様々なin vitro及びin vivoアッセイを用いて、例えば、免疫アッセイ(例えば抗体を用いたELISA及び免疫組織学的アッセイ)、ハイブリダイゼーション・アッセイ(例えば、RNase保護、ノーザン、in situハイブリダイゼーション、オリゴヌクレオチド・アレイ試験)、比色アッセイ、増幅アッセイ、酵素活性アッセイ、腫瘍成長アッセイ、表現系アッセイなどを用いて、例えばタンパク質又はmRNAレベル、産物レベル、酵素活性、腫瘍性長、転写活性化、又はレポーター遺伝子の抑制、第二メッセンジャー・レベル(例えば、cGMP、cAMP、IP3、DAG、Ca2+);サイトカイン及びホルモン産生レベル;及び血管新生を評価することができる。
【0145】
ZFPは、典型的に、培養細胞、例えば、293細胞、CHO細胞、VERO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞などを用いてin vitroで活性を試験する。好ましくは、ヒトの細胞を使用する。ZFPを、レポーター遺伝子を用いて一過性発現システムを用いて最初に試験し、そして次に標的内在遺伝子をin vivo及びex vivoの両方において細胞及び動物内で試験する。ZFPは細胞内で組換え発現でき、動物内に移植された細胞内で組換え発現し、又はトランスジェニック動物中で組換え発現し、並びに以下に記載されるデリバリービヒクルを用いて動物又は細胞にタンパク質として投与される。細胞は固定されうるし、溶液内に存在しうるし、動物に注射されうるし、又はトランスジェニック又は非トランスジェニック動物中内に生じうる。
【0146】
遺伝子発現の調節を、本明細書に記載されるin vitro又はin vivoアッセイを使用して試験する。サンプル又はアッセイを、ZFPで処理し、そして未処理の対照サンプルと比較して、調節の程度を試験する。上に記載される様に、内在遺伝子発現の調節では、ZFPは、典型的に200nM以下、より好ましくは100nM以下、より好ましくは50nM、最も好ましくは25nM以下のKdを有する。
【0147】
ZFPの効果は、上記パラメーターのいずれかを試験することにより計測されうる。任意の適切な遺伝子発現、表現形、又は生理学的変化は、ZFPの影響を評価するために使用できる。機能的な因果関係が、未処理の細胞又は動物を用いて決定される場合、様々な効果、例えば、細胞内カルシウム区画化、細胞収縮 、転写の変化、既知の及び特徴付けられる遺伝子マーカー(例えば、ノーザンブロット又はオリゴヌクレオチド・アレイ研究)についての転写変化、細胞成長又はpH変化などの細胞代謝の変化、及びcamp又はcGMPなどの細胞内第二メッセンジャーの変化が計測できる。
【0148】
内在遺伝子発現のZFPによる調節についての好ましいアッセイは、in vitroで行われうる。1の好ましいin vitroアッセイ形式では、培養細胞における内在遺伝子発現のZFPによる調節は、ELISAアッセイを用いてタンパク質産生を試験することにより計測される。試験サンプルは、ZFPをコードする配列を欠くベクター又は別の遺伝子に対し標的化される無関係なZFPをコードするベクターで処理された対照細胞と比較される。
【0149】
別の実施態様では、内在遺伝子発現のZFPによる調節は、遺伝子のmRNA発現レベル(例えば、標的PLN遺伝子の発現レベル)を計測することによりin vitroで測定される。遺伝子発現レベルは、増幅を用いて、例えば、PCR、LCR、又はハイブリダイゼーション・アッセイ、例えばノーザンハイブリダイゼーション、ドット・ブロット及びRNase防御を用いて計測される。定量的RT-PCR技術(つまり、いわゆるTaqMan(登録商標)アッセイ)を使用することは、転写レベルを定量するために利用されうる。タンパク質又はmRNAのレベルは、本明細書に記載されるように、直接又は間接標識された検出試薬、例えば、蛍光又は放射性標識された核酸、放射性又は酵素標識された抗体などを用いて検出される。かかる方法は、Gelfandに対する米国特許第5,210,015号、Livakらに対する米国特許第5,538,848号、及びHaalandに対する米国特許第5,863,736、並びにHeid, C. A.,ら、Genome Research, 6:986-994 (1996); Gibson, U. E. M,ら, Genome Research 6:995-1001 (1996); Holland, P. M.,ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276-7280, (1991); 及びLivak, K. J.ら、PCR Methods and Applications 357-362 (1995)に記載されており、各文献は、その全てを援用される。
【0150】
或いは、レポーター遺伝子システムは、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、CAT、GAPDH、βgalなどのレポーター遺伝子に作動可能な様に結合される選択された標的遺伝子(例えばPLN)由来の遺伝子プロモーターを用いて改良されうる。レポーター・コンストラクトは、典型的に培養細胞にコ-トランスフェクションされる。選んだZFPで処理した後に、レポーター遺伝子の転写、翻訳、又は活性の量は、当業者に既知の標準技術に従って計測される。
【0151】
内在遺伝子発現のZFP調節をモニターするのに有用な好ましいアッセイ形式の別の例は、in vivoで行われる。このアッセイは、特に収縮に関与する遺伝子を試験するのに有用である。このアッセイにおいて、選んだZFPを、異常な心臓機能(例えば収縮異常)を示す動物に投与する(例えば筋肉内又は心臓内注射)。適切な期間、好ましくは4〜8週の後に、心臓機能及び/又は遺伝子発現が、異常収縮を有するがZFPを受けていない対照動物と比較される。対照と試験動物との間で有意に異なる収縮(スチューデントのT検定を用いる)は、ZFPにより影響されたと言われる。
【0152】
IX. 医薬組成物
本明細書に提供されるZFP及びより典型的にそれらをコードする核酸は、場合により医薬として許容されれる担体と共に、医薬組成物として剤形されうる。
【0153】
A.核酸に基づく組成物
慣用されているウイルスに基づく及び基づかない遺伝子輸送方法を使用して、哺乳動物細胞又は標的組織に存在するZFPをコードする核酸を導入することができる。かかる方法を使用して、ZFPをコードする核酸を、in vitroで細胞に投与することができる。幾つかの例では、ZFPをコードする核酸は、in vivo又はex vivo遺伝子治療用途で投与される。非ウイルス・ベクター・デリバリーシステムは、ポロキサマー又はリポソームなどのデリバリービヒクルと複合体形成されたDNAプラスミド、裸の核酸、及び核酸を含む。ウイルスベクターデリバリー・システムは、細胞にデリバリーされた後に、エピソーム性又は組み込まれたゲノムとなるDNA及びRNAウイルスを含む。遺伝子治療法の総説として、Anderson, Science 256:808-813 (1992); Nabel & Feigner, TIBTECH 11:211-217 (1993); Mitani & Caskey, TIBTECH 11:162-166 (1993); Dillon, TIBTECH 11: 167-175 (1993); Miller, Nature 357:455- 460 (1992); Van Brunt, Biotechnology 6(10): 1149-1154 (1988); Vigne, Restorative Neurology and Neuroscience 8:35-36 (1995); Kremer & Perricaudet, British Medical Bulletin 51(1):31-44 (1995); Haddadaら、 Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler及びBohm (共著) (1995);並びにYuら、Gene Therapy 1 : 13-26 (1994)を参照のこと。
【0154】
本明細書に提供されるZFPをコードするウイルスによらない核酸のデリバリー方法は、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン又は脂質:核酸複合体、裸のDNA、人工ビリオン、及び薬剤により高められたDNA取り込みを含む。リポフェクションは、米国特許第5,049,386号、第4,946,787号;及び第4,897,355号に記載され、そして、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(登録商標)及びLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効果的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性及び天然脂質は、FelgnerのWO 91/17424、WO 91/16024の脂質を含む。デリバリーは、細胞(ex vivo投与)又は標的組織(in vitro投与)に対するものでありうる。
【0155】
標的リポソーム、例えば免疫脂質複合体を含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者に知られている(例えば、Crystal, Science 270:404-410 (1995); Blaeseら、Cancer Gene Ther. 2:291-297 (1995); Behrら, Bioconjugate Chem. 5:382-389 (1994); Remyら、Bioconjugate Chem. 5:647-654 (1994); Gaoら、Gene Therapy 2:710-722 (1995); Ahmad ら、Cancer Res. 52:4817-4820 (1992); 米国特許第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、及び第4,946,787号を参照のこと)。
【0156】
遺伝子操作されたZFPをコードする核酸をデリバリーするためのRNA又はDNAウイルスに基づくシステムの使用は、体内の特異的細胞にウイルスを標的化し、そして核にウイルス負荷量を輸送する高度に進化した方法を利用する。ウイルスベクターは、患者に直接投与されうるか(in vivo)又はウイルスベクターは、in vitroで細胞を処理するために使用され、そして改変された細胞が患者に投与されうる(ex vivo)。ZFPのデリバリーのために慣用されるウイルスに基づくシステムは、遺伝子輸送のためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及び単純ヘルペスウイルスベクターを含みうる。ウイルスベクターは、標的細胞及び組織に遺伝子輸送する現在における最も効果的かつ多用途の方法である。宿主ゲノムへの取り込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、及びアデノ随伴ウイルスの遺伝子輸送方法を用いて可能であり、挿入されたトランス遺伝子の長期間の発現をもたらすことが多い。さらに、高い導入効率が、多くの異なる細胞型及び標的組織において観察された。
【0157】
レトロウイルスの指向性は、外来のエンベロープ・タンパク質を取り込むことにより変更することができ、標的細胞集合の潜在的な標的を広げることができる。レンチウイルス・ベクターは、分裂しない細胞に形質導入できるか又は感染でき、そして典型的に高いウイルス・タイターをもたらすことができるレトロウイルス・ベクターである。レトロウイルス・遺伝子輸送システムの選択は、それゆえ標的組織に左右されうる。レトロウイルス・ベクターは、最大6〜10kbの外来配列を取り込む能力を有する、最小のシス作用性の末端反復配列から構成される。最小のシス作用性のLTRは、ベクターの複製及びパッケージングに十分であり、次に当該LTRは、標的細胞に治療遺伝子を組み入れるために使用されて、永続的なトランス遺伝子発現を提供する。広く使用されるレトロウイルス・ベクターは、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及びそれらの組合せを含む(例えば、Buchscherら、J. Virol. 66:2731-2739 (1992); Johannら、J. Virol. 66:1635-1640 (1992); Sommerfeltら、Virol. 176:58-59 (1990); Wilsonら、J. Virol. 63:2374-2378 (1989); Millerら、J. Virol. 65:2220- 2224 (1991); PCT/US94/05700を参照のこと)。
【0158】
一過的なZFPの発現が好ましい場合の適用では、アデノウイルスに基づくシステムが典型的に使用される。アデノウイルスに基づくベクターは、多くの細胞が他においてかなり高い導入効率を可能とし、そして細胞分裂を必要としない。かかるベクターでは、高タイターかつ高レベルの発現が得られる。当該ベクターは、比較的単純な系で多くの量で産生可能である。アデノ随伴部ウイルス(AAV)ベクターは、核酸及びペプチドのin vitro産生において、標的核酸で細胞を形質導入するために使用され、そしてin vivo及びex vivo遺伝子治療法に使用される。(例えば、Westら、Virology 160:38-47 (1987);米国特許第4,797,368号;WO 93/24641; Kotin, Human Gene Therapy 5:793-801 (1994); Muzyczka, J. Clin. Invest. 94:1351 (1994)を参照のこと)。組換えAAVベクターの構築は、多くの刊行物に記載され、米国特許第5,173,414号;Tratschinら、Mol. Cell. Biol. 5:3251-3260 (1985); Tratschinら、Mol. Cell. Biol. 4:2072-2081 (1984); Hermonat & Muzyczka, PNAS 81:6466-6470 (1984);及びSamulskiら、J. Virol. 63:03822-3828 (1989)を含む。例えば、実施例1を参照のこと。
【0159】
特に、少なくとも6個のウイルスベクターのアプローチが、現在、臨床試験において遺伝子輸送に利用でき、レトロウイルス・ベクターが、最も頻繁に使用されるシステムである。これらのウイルスベクターの全ては、ヘルパー細胞系列に挿入された遺伝子により欠損のあるベクターを補完して、形質導入作用物を作り出すことに関与する。
【0160】
pLASN及びMFG-Sは、臨床試験において使用されたレトロウイルス・ベクターの例である(Dunbarら、Blood 85:3048-305 (1995); Kohnら、Nat. Med. 1:1017-102 (1995); Malechら、PNAS 94:22 12133-12138 (1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療の臨床試験で使用された最初の治療ベクターであった(Blaeseら、Science 270:475-480 (1995))。50%以上の形質導入効率が、MFG-Sパッケージされたベクターについて観察された(Ellemら、Immunol Immunother. 44(1): 10-20 (1997); Dranoffら、Hum. Gene Ther. 1:111-2 (1997))。
【0161】
組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、欠損がありかつ非病原性のパルボウイルス・アデノ随伴2型ウイルスに基づく代替遺伝子デリバリーシステムである。全てのベクターは、トランス遺伝子発現カセットに隣接するAAV145bpの反転された末端繰り返しのみを保持するプラスミドに由来する。形質導入された細胞のゲノム中への組み込みのため、効率的な遺伝子転写及び安定したトランス遺伝子のデリバリーは、ベクター・システムについての重要な特徴である(Wagnerら、Lancet 351:9117 1702-3 (1998), Kearnsら、Gene Ther. 9:748-55 (1996))。
【0162】
複製欠損組換えアデノウイルスベクター(Ad)は、大腸癌遺伝子治療に主に使用される。なぜなら、当該ベクターは、高いタイターで産生され、そして当該ベクターは多くの異なる細胞型に容易に感染するからである。多くのアデノウイルス・ベクターは、トランス遺伝子がAdE1a、E1b、及びE3遺伝子を置換し、続いて複製欠損ベクターが、欠損された遺伝子機能をトランスで供給するヒト293細胞において増殖するように遺伝子操作される。Adベクターは、in vivoで組織の複数のタイプに形質導入でき、当該タイプは、非分裂性、未分化細胞、例えば肝臓、腎臓及び筋肉系組織で見られる細胞を含む。慣用されるAdベクターは、高い運搬能力を有する。臨床試験においてAdベクターを使用する例は、筋肉内注射での抗腫瘍免疫化のためのポリヌクレオチド治療に関する(Stermanら、Hum. Gene Ther. 7:1083-9 (1998))。臨床試験において遺伝子輸送のためのアデノウイルスベクターを使用する更なる例は、Rosenecker ら、Infection 24:1 5-10 (1996); Stermanら、Hum. Gene Ther. 9:7 1083-1089 (1998); Welshら、Hum. Gene Ther. 2:205-18 (1995); Alvarezら、Hum. Gene Ther. 5:597-613 (1997); Topfら、Gene Ther. 5:507-513 (1998); Stermanら、 Hum. Gene Ther. 7:1083-1089 (1998)を含む。
【0163】
パッケージング細胞は、宿主細胞に感染可能なウイルス粒子を形成するために使用される。係る細胞は、アデノウイルスをパッケージする293細胞、レトロウイルスをパッケージする.psi.2細胞又はPA317細胞を含む。遺伝子治療に使用されるウイルスベクターは、核酸ベクターをウイルス粒子中にパッケージするプロデューサー細胞系列によって通常作成される。ベクターは、パッケージングし、続いて宿主細胞中へ組み込まれるために必要とされる最小限のウイルス配列しか含まず、他のウイルス配列は、発現されるタンパク質についての発現カセットにより置換されている。失われたウイルス機能は、パッケージング細胞系列によりトランスで供給される。例えば、遺伝子治療において使用されるAAVベクターは、典型的にAAVゲノムのうち、パッケージング及び宿主ゲノムへの組み込みに必要とされるITR配列のみを有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、つまりrep及びcapをコードするがITR配列を欠くヘルパープラスミドを含む細胞系列中でパッケージされる。当該細胞系列はまた、ヘルパーとしてアデノウイルスで感染される。ヘルパー・ウイルスは、AAVベクターの複製及びヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列を欠くため、有意な量でパッケージされることはない。アデノウイルスでの汚染は、たとえば、熱処理により低減されうる。アデノウイルスは、AAVよりも熱に感受性である。
【0164】
上で記載され、当該技術分野に知られているように、様々なウイルス・デリバリー・ビヒクルは、核酸(例えばジンクフィンガー・タンパク質をコードする核酸)を細胞に導入するために使用されうる。デリバリービヒクルの選択は、多くの因子、例えば非限定的にデリバリーされる核酸のサイズ及び所望される標的細胞などに左右される。
【0165】
ある実施態様では、アデノウイルスがデリバリービヒクルとして使用される。代表的なアデノウイルス・ビヒクルは、2型、5型、12型、及び35型アデノウイルスを含む。例えば、トランス遺伝子を造血系幹細胞、例えばCD34+細胞に形質導入するために使用されるビヒクルは、35型アデノウイルスを含む。さらなるアデノウイルス・ビヒクルは、いわゆる「弱い(gutless)」アデノウイルスを含む。例えば、Kochanekら、(1996) Proc. Natl. Acad. ScL USA 93:5,731-5,736を参照のこと。
【0166】
アデノ随伴ウイルス・ビヒクルは、AAV血清型1、2、5、6、7、8、及び9を含み、並びにキメラAAV血清型、例えば、AAV2/1及びAAV2/5を含む。一本鎖及び二本鎖の両方のAAVベクターが使用されうる。
【0167】
レンチウイルス・デリバリー・ビヒクルは、例えば、米国特許第6,312,682号及び第6,669,936号において記載され、そして米国特許出願公開第2002/0173030号において記載され、そしてトランス遺伝子を免疫細胞(例えばT細胞)に導入するために使用することができる。レンチウイルスは、そのRNAゲノムのDNAコピーを宿主細胞のゲノムに組み込むことができる。例えば、Oryら、(1996) Proc. Natl. Acad. Sci USA 93:11382-11388; Miyoshiら、(1998) J. Virology 72:8150-8157; Dullら、(1998) J. Virol. 72:8463-8471; Zufferyら、(1998) J. Virol. 72:9873-9880; Follenziら、(2000) Nature Genetics 25:217-222、並びにDelenda (2004) J. Gene Medicine 6:S125-S138を参照のこと。あるレンチウイルス・ビヒクルにおいて、当該組み込み機能は、非組み込み性のレンチウイルスを作成するために機能欠失された。例えば、Poonら、(2003) J. Virology 77:3962-3972 及びVargasら、(2004) Human Gene Therapy 15:361-372を参照のこと。造血幹細胞への形質導入するための組み込み性及び非組み込み性のレンチウイルスベクターの両方の使用が、Haasら、(2000) Mol. Therapy 2:71-8に記載された。組込み性のレンチウイルス・ベクターでのCD4+T細胞の形質導入は、Humeauら(2004) Mol. Therapy 9:902-913により記載された。
【0168】
ニューロン及び神経節において長期間の発現を可能にする単純ヘルペスウイルスビヒクルが記載された。例えば、Kriskyら、(1998) Gene Therapy 5(ll):1517-1530; Kriskyら、(1998) Gene Therapy 5(12): 1593- 1603; Burtonら、(2001) Stem Cells 19:358-377; Lilleyら、(2001) J. Virology 75(9):4343-4356を参照のこと。
【0169】
造血系幹細胞のレトロウイルスによる形質導入の効率を改善する方法が、例えば米国特許第5,928,638号において開示される。
レトロウイルス及びレンチウイルスデリバリービヒクルの指向性は、シュードタイピング法により変更することができ、それにより核酸を特定の細胞型へウイルスデリバリーすることを可能にする。例えば、米国特許第5,817,491号を参照のこと。
【0170】
多くの遺伝子治療適用において、遺伝子治療用ベクターが、特定の組織型に高い特異性でデリバリーされることが望ましい。ウイルスベクターは、典型的には、ウイルス外皮上でウイルスコートタンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現することにより、所定の細胞型に対する特異性を有する様に改変される。当該リガンドは、関心の細胞型上に存在すると知られている受容体に対する親和性を有する様に選ばれる。例えば、Hanら、PNAS 92:9747-9751 (1995)は、モロニー・マウス・白血病ウイルスが、gp70に融合されるヒト・ヘレグリンを発現する様に改変され、そして当該組換えウイルスがヒトの上皮成長因子受容対を発現するあるヒト乳癌細胞に感染することができるということが報告された。この原理は、リガンド融合タンパク質と標的細胞が発現する受容体との他の対に拡張可能である。例えば、線状ファージは、任意に選択された仮想上の細胞の受容体に対し特異的結合親和性を有する抗体断片(例えば、FAB又はFv)をディスプレイする様に遺伝子操作されうる。上の記載が主にウイルスベクターに適用されているが、同じ原理は、非ウイルス性のベクターに適用されうる。かかるベクターは、特異的標的細胞により好んで取り込まれると考えられる特異的取り込み配列を含む様に遺伝子操作されうる。
【0171】
遺伝子治療ベクターは、全身投与(例えば静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、又は頭蓋内注入)又は以下に記載される局所的用によりin vivoでデリバリーされうる。或いは、ベクターは、細胞、例えば、個々の患者から取り出した細胞(例えばリンパ球、骨髄吸引液、組織生検)又は万能供血者幹細胞にex vivoデリバリーし、続いて、通常当該ベクターを取り込んだ細胞を選別した後に当該細胞を患者に再移植することができる。
【0172】
診断、研究、又は遺伝子治療のためのex vivo細胞トランスフェクション(例えば、トランスフェクションされた細胞を宿主生物へと再び注入することを介する)は、当業者に周知である。幾つかの例では、細胞は、対象生物から単離され、ZFP核酸(遺伝子又はcDNA)でトランスフェクションされ、そして対象生物(例えば患者)に再注入で戻される。ex vivoトランスフェクションに適した様々な細胞型は、当業者に周知である(例えば、Freshneyら、Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique (第三版、1994)、並びに当該文献において引用される、患者から細胞の単離し、そして培養する方法についての記載についての参考文献を参照のこと)。
【0173】
1の実施態様では、幹細胞は、細胞トランスフェクション及び遺伝子治療のex vivo法において使用される。幹細胞を用いる利点は、in vitroで他の細胞型に分化できること又は、骨髄に移植する場合、哺乳動物(例えば細胞のドナーなど)に導入することができることである。GM-CSF、IFN-Y、及びTNF-αを用いて、in vitroでCD34+細胞を臨床的に重要な免疫細胞型に分化させる方法は知られている(例えば、Inabaら、J. Exp. Med. 176:1693-1702 (1992)を参照のこと)。
【0174】
幹細胞は、既知の方法を用いて、形質導入及び分化のために単離される。例えば、幹細胞は、不所望な細胞、例えばCD4+及びCD8+(T細胞)、CD45+(panB細胞)、GR-1(顆粒球)、及びlad(分化抗原提示細胞)などに結合する抗体で骨髄細胞を選別することにより、骨髄細胞から単離される(Inabaら、J. Exp. Med. 176:1693-1702 (1992)を参照のこと)。
【0175】
治療ZFP核酸を含むベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソームなど)は、in vivoにおいて細胞に形質導入するために生物体に直接投与されうる。或いは、裸のDNAが投与されうる。投与は、分子を最終的に血液又は組織細胞と接触するために通常使用される経路のいずれかによる。かかる核酸を投与する適切な方法が利用でき、そして当業者に周知である。そして1より多い経路が、特定の組成物を投与するために使用することができるが、特定の経路は、他の経路より即効性かつ有効な反応を提供する。
【0176】
医薬として許容される担体は、投与される特定の組成物により部分的に、並びに当該組成物を投与するために使用される特定方法により決定される。従って、以下に記載されるように、多くの適切な医薬組成物の剤形が存在する(例えば、RemingtonのPharmaceutical Science、第17版、1989を参照のこと)。
【0177】
B.タンパク質組成物
ポリペプチド化合物、例えば本発明のZFPの投与において重要な因子は、ポリペプチドが細胞の原形質膜、又は核などの細胞内区画の膜を横切る能力を有することを保証する。細胞膜は、小さい、非イオン性の脂溶性化合物を自由に透過でき、そして本来、極性化合物、巨大分子、及び治療又は診断薬を透過しない脂質-タンパク質二重膜から構成される。しかしながら、ZFPなどのポリペプチドが細胞膜を通して移動させる能力を有するタンパク質及び他の構成要素、例えば、リポソームが記載される。
【0178】
例えば、「膜移動ポリペプチド」は、両親媒性又は疎水性アミノ酸サブ配列であって、膜移動運搬体として作用する能力を有する配列を有する。一の実施態様では、ホメオドメインタンパク質は、細胞膜を通して移動する能力を有する。ホメオドメインタンパク質であるアンテナペディアの最も短い内在化ペプチドは、3〜58のアミノ酸位由来のタンパク質の第三ヘリックスであると分かっている(例えば、Prochiantz, Current Opinion in Neurobiology 6:629-634 (1996)を参照のこと)。別のサブ配列であるシグナルペプチドのh(疎水性)ドメインは、同様の細胞膜移動特性を有すると分かっている(例えば、Linら、J. Biol. Chem. 270:14255-14258 (1995)を参照のこと)。
【0179】
ZFPの細胞内への取り込みを促進するためにZFPに結合できるペプチド配列の例は、非限定的に以下の:HIVのtatタンパク質の11アミノ酸のペプチド;p16タンパク質のアミノ酸84〜103に対応する20残基のペプチド配列(Fahraeusら、Current Biology 6:84 (1996)を参照のこと) ;アンテナペディアの60アミノ酸長のホメオドメインの第三ヘリックス(Derossiら、J. Biol. Chem. 269:10444 (1994));カポジ線維芽細胞成長因子(K-FGF)h領域などのシグナルペプチドのh領域(上記Linら);又はHSV由来のVP22のトランスロケーション・ドメイン(Elliot & O'Hare, Cell 88:223-233 (1997))を含む。細胞取り込みの増加をもたらす他の適した化学成分が、化学的にZFPに結合されてもよい。膜トランスロケーション・ドメイン(つまり、内在化ドメイン)は、ランダム化されたペプチド配列のライブラリーから選択されうる。例えば、Yehら、(2003) Molecular Therapy 7(5):S461, Abstract #1191を参照のこと。
【0180】
トキシン分子はまた、細胞膜を介してポリペプチドを輸送する能力を有する。多くの場合、かかる分子は、少なくとも2個の部品:トランスロケーション又は結合ドメイン又はポリペプチドと分離トキシンドメイン又はポリペプチドから構成される(いわゆる「バイナリー・トキシンである)。典型的に、ポリペプチドのトランスロケーション・ドメイン又はポリペプチドは細胞受容体に結合し、次にトキシンは細胞内へと輸送される。クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)イオタ・トキシン、ジフテリア・トキシン(DT)、シュードモナス・エキソトキシンA(PE)、パーツシス・トキシン(PT)、バチルス・アンスラシス(Bacillus anthracis)トキシン、及びパーツシス・アデニレート・シクラーゼ(CYA)を含むいくつかの細菌トキシンは、ペプチドを細胞質へとデリバリーするために、内部又はアミノ末端融合体として使用された(Aroraら、J. Biol. Chem., 268:3334-3341 (1993); Perelleら、Infect Immun., 61:5147-5156 (1993); Stemnarkら、J. Cell Biol. 113:1025-1032 (1991); Donnellyら、PNAS 90:3530-3534 (1993); Carbonettiら、Abstr. Annu. Meet. Am. Soc. Microbiol. 95:295 (1995); Seboら、Infect. Immun. 63:3851-3857 (1995); Klimpelら、PNAS U.S.A. 89:10277-10281 (1992);及びNovakら、J. Biol. Chem. 267:17186-17193 1992))。
【0181】
かかるサブシーケンスは、細胞膜を通してZFPを移動させるために使用されうる。ZFPは、かかる配列に融合されるか、又はかかる配列で誘導体化されうる。典型的に、トランスロケーション配列は、融合タンパク質の一部として提供される。場合により、リンカーは、ZFPとトランスロケーション配列とをつなぐために使用されうる。任意の適したリンカー、例えばペプチドリンカーが使用されうる。
【0182】
ZFPは、動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞中に、リポソーム及びリポソーム誘導体、例えば免疫リポソームを介して取り込まれうる。「リポソーム」という用語は、同心円状に整えられた1以上の脂質二重層であって、水相を封入している二重層から構成されるベシクルを指す。水相は、典型的に、細胞にデリバリーする化合物(つまりZFP)を含む。リポソームは、原形質膜と融合し、それにより薬剤を細胞質内へと放出する。或いは、当該リポソームは、細胞により輸送ベシクルの内に貪食されるか又は取り込まれる。エンドソーム又はファゴソーム内に入ると、当該リポソームは分解するか、又は輸送ベシクルの膜と融合し、そして内容物を放出する。
【0183】
リポソームを介したドラッグデリバリーの現在の方法では、リポソームは、標的組織又は細胞において最終的に浸透性となり、そして封入された化合物(この場合、ZFP)を放出する。全身性又は組織特異的デリバリーでは、当該機構は、例えば、リポソーム二重層が体内の様々な作用物質の作用を介してゆっくり時間をかけて分解する受動的な様式で達成される。或いは、活性薬剤の放出は、リポソーム・ベシクルにおける浸透性の変化を誘導する薬剤を使用することを含む。リポソーム膜は、リポソーム膜付近で周囲環境が酸性になった際に不安定化されるように構築されうる(例えば、PNAS 84:7851 (1987); Biochemistry 28:908 (1989)を参照のこと)。リポソームが標的細胞によりエンドサイトーシスされると、リポソームは不安定になり、そしてその中身を放出する。この不安定化はフソジェネシス(fusogenesis)と名付けられる。ジオレオイル・ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)は、多くの「融合性」システムの基剤となる。
【0184】
かかるリポソームは、典型的に、ZFP及び脂質構成要素、例えば中性及び/又はカチオン性脂質であって、場合により受容体認識分子、例えば予め決められた細胞表面受容体又はリガンドに結合する抗体などを含む脂質構成要素を含む。例えば、Szokaら、Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:467 (1980)、米国特許第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028、第4,946,787号、PCT出願公開WO/17424号、Deamer & Bangham, Biochim. Biophys. Acta 443:629-634 (1976); Fraleyら、PNAS 76:3348-3352 (1979); Hopeら、Biochim. Biophys. Acta 812:55-65 (1985); Mayerら、Biochim. Biophys. Acta 858: 161-168 (1986); Williamsら、PNAS 85:242- 246 (1988); Liposomes (Ostro (編)、1983, Chapter 1); Hopeら、Chem. Phys. Lip. 40:89 (1986); Gregoriadis, Liposome Technology (1984)、及びLasic, Liposomes: from Physics to Applications (1993)に記載されるように、様々な方法がリポソームを調製するために利用できる。適切な方法は、例えば、超音波処理、押出し、高圧/ホモジェナイズ、マイクロ流動化、溶媒透析、小リポソーム・ベシクルのカルシウム誘導性の融合、及びエーテル融合法を含み、その全てが当該技術分野に周知である。
【0185】
幾つかの例では、リポソームは、特定の細胞型、組織などに特異的である標的化成分を使用して標的付けされる。様々な標的成分(例えば、リガンド、レセプター、及びモノクローナル抗体)は、以前に記載された(例えば、米国特許第4,957,773号及び第4,603,044号を参照のこと)。
【0186】
標的化剤をリポソームへとカップリングする標準的な方法が使用されうる。これらの方法は、一般的にリポソームに、標的剤を取り付けるために活性化されうる脂質構成要素、例えばホスファチジル・エタノール・アミン、又は誘導化された脂溶性化合物、例えば脂質誘導化ベロマイシンを取り込むことに関する。抗体標的化リポソームは、例えば、タンパク質Aを取り込んだリポソームを使用して構築されうる(Renneisenら、J. Biol. Chem., 265:16337-16342 (1990)及びLeonettiら、PNAS 87:2448-2451 (1990)を参照のこと)。
【0187】
C.用量
ZFPの治療適用のため、患者へ投与される用量は、長期間に渡り患者に有効な治療応答を与えるために十分であるべきである。当該用量は、使用される特定のZFPの有効性及びKd、標的細胞の核体積、及び患者の病状、並びに治療される患者の体重又は表面積により決定されよう。用量は、個々の患者への特定の化合物又はベクターの投与に付随するある副作用の存在、性質、及び程度により決定されよう。
【0188】
心臓病の治療又は予防において投与されるZFPの有効量を測定する際に、医師はZFP又はZFPをコードする核酸、潜在的なZFPの毒性、疾患の進行、及び抗ZFP抗体の産生を評価する。投与は一回又は分割用量を介して達成されうる。
【0189】
D.組成物及び投与モード
1.総則
ZFP及びZFPをコードする核酸は、遺伝子発現を調節するため、並びに治療又は予防適用のために、対象(例えば患者)に直接投与することができる。一般的に、そして本明細書の議論の観点から、ZFPを動物又は患者に導入することを指すフレーズは、ZFP又はZFP融合タンパク質が導入されること、及び/又はZFP又はZFP融合タンパク質をコードする核酸が、動物に発現されうる形態で導入されることを意味する。以下の項でより詳細に記載されるように、ZFP及び/又は核酸は、1以上の心臓病の治療に使用されうる。
【0190】
治療有効量の投与は、ZFPを治療される組織と最終的に接触させるために通常使用される経路のいずれかによる。ZFPは、適切な様式で投与され、好ましくは医薬として許容される担体とともに投与される。かかる調節因子を投与する適切な方法が利用でき、そして当業者に周知である。1超の経路が、特定の組成物を投与するために使用されうるが、特定の経路は、しばしば、他の経路よりも即効性であり、そしてより効果的な反応を提供しうる。
【0191】
医薬として許容される担体は、ある程度は投与される特定の組成物により、並びに組成物を投与するために使用される特定の方法により決定される。従って、医薬組成物の様々な適切な製剤が存在する(例えば、RemingtonのPharmaceutical Sciences, 第17版、1985)を参照のこと)。
【0192】
ZFPは、単独で又は他の適切な構成要素と組み合わせて、エアロゾル製剤(当該製剤は噴霧される)に作られて、吸入を介して投与されうる。エアロゾル製剤は、許容される高圧ガス、例えばジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの中に配置されうる。
【0193】
非経口投与、例えば静脈内、筋肉内、皮内、及び皮下経路による投与に適した製剤は、水性及び非水性の等張滅菌注射溶液であって、抗酸化物質、緩衝剤、静菌剤、及び溶質を含む溶液、並びに非水性滅菌懸濁液であって、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び保存剤を含みうる懸濁液を含む。開示された方法を実行する際に、組成物は、例えば静脈注入、経口、局所、腹腔内、膀胱内、又はくも膜下内に投与されうる。化合物の製剤は、単位用量又は複数用量で密閉された容器、例えばアンプル及びバイアル内で与えられる。注射溶液及び懸濁液は、以前に記載された種類の滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製されうる。
【0194】
2.代表的なデリバリー・オプション
様々なデリバリー・オプションが、PLN発現を調節するために、本明細書に提供される医薬組成物のデリバリーに利用できる。特定の適応症(例えば、心不全)に依存して、当該組成物は、対象の特定の領域又は組織に標的化されうる。例えば、幾つかの方法では、うっ血性心不全を治療するために心臓の特定の領域に組成物がデリバリーされる。他の治療は、対照的に、特定領域への標的デリバリーしようとせず、一般的な様式で組成物を投与することに関する。
【0195】
多くのアプローチは、薬剤のデリバリーを特定の領域に局在化させるために利用されうる。あるこれらの方法は、体のルーメン又は組織にデリバリーすることに関する(例えば、米国特許第5,941,868号、第6,067,988号、第6,050,986号、及び第5,997,509号、並びにPCT出願公開WO 00/25850号、WO 00/04928; 99/59666、及び99/38559を参照のこと)。デリバリーは、心筋内注射又は投与により達成されうる。かかるアプローチの例は、米国特許第6,086,582号、第6,045,565号、第6,056,969号、及び第5,997,525号、並びにPCT出願公開WO 00/16848;WO 00/18462; WO 00/24452; WO 99/49773及びWO 99/49926を参照のこと)。局所デリバリーのための他のオプションは、心膜内注射 (例えば、米国特許第5,931,810号、第5,968,010号、及び第5,972,013号を参照のこと)並びに血管周囲デリバリーを含む。様々な経心筋的血行再建術(TMR)チャネル・デリバリーアプローチは、同様に利用されうる。これらの方法の多くは、血行再建術を行うためにレーザーを利用する。かかるアプローチの議論は、例えば、米国特許第5,925,012号、第5,976,164号、第5,993,443号、及び第5,999,678号に記載されている。他のオプションは、動脈内及び/又は冠動脈内デリバリー、例えば冠動脈注射(例えば、WO 99/29251を参照のこと)及び血管内投与を含む(例えば、米国特許第6,001,350号、第6,066,123号、及び第6,048,332号、並びにPCT出願公開WO 99/31982; WO 99/33500; 及び WO 00/15285を参照のこと)。こうして、例えば、本明細書に記載される組成物は、直接心筋に直接注射されうる。
【0196】
PLN遺伝子発現を調節するために組成物をデリバリーするための更なるオプションは、静脈内又は皮下投与、心室アクセス(例えば、米国特許第5,924,424号を参照のこと)及び組織工学(米国特許第5,944,754号)を含む。
【0197】
当業者により知られている他のデリバリー方法は、米国特許第5,698,531号、第5,893,839号、第5,797,870号、第5,693,622号、第5,674,722号、第5,328,470号、及び第5,707,969号に開示される方法を含む。
【0198】
X.適用
A.総則
ZFPは関心の遺伝子の選択された標的部位を結合するように遺伝子操作され、そしてそれらをコードする核酸は、任意の対象においてPLN発現を調節するために利用され、そしてそうすることにより、うっ血性心不全などの収縮に関連する疾患を治療するために利用されうる。一般的に、細胞又は細胞集合のうちの核酸の標的部位は、標的部位への結合特異性を有するZFPと接触される。方法は、in vitroで細胞培養を伴って行われうるし又はin vivoで行われうる。うっ血性心不全がPLN遺伝子発現を抑制することにより治療されるように、ある方法が行われる。
【0199】
B.トランスジェニック/ノックアウト動物
本明細書に記載される組成物及び方法を使用すれば、標準技術を使用してトランスジェニック動物を作ることができる。さらに、PLNノックアウト又はノックダウン動物を作成することもまたできる。例えば、本明細書に記載される様に、PLN発現を抑制するPLN標的化ZFPは、ノックアウト又はノックダウン動物を作成するために任意の動物で投与される。これらの動物は、疾患の及び薬剤試験のモデルとして有用である。現在では、PLNノックアウト・マウスのみが利用できる。こうして、本明細書に記載されるZFPリプレッサーは、ノックアウトを作成するために現在実現可能な方法が存在しない任意の動物モデルにおいて、PLN活性を低減するか又は削除することを可能にしている。
【0200】
さらに、心臓病を研究し、そして候補薬剤を評価するための多くの許容される動物モデルが、マウス以外のモデルであるので、本明細書に記載されるPLN標的化ZFPを用いて任意の動物においてPLNノックアウト/ノックダウン動物を作成する能力は、当該分野において重要な利点を有する。
【0201】
C.治療適用
例えば、本明細書中に記載される医薬組成物中の本明細書に提供されるZFP及びZFPをコードする核酸は、PLNの発現を調節 (例えば、活性化又は抑制)するために利用されうるし、それにより心臓収縮を調節する。心臓収縮の調節は、様々な心臓病の寛解又は除去をもたらしうる。例えば、PLNは、細胞培養(つまり、in vitro適用)及びin vivoの両方において、PLN標的化ZFPを用いて抑制して、心筋収縮能を改善することができる。PLNについてのZFPリプレッサーは、他の遺伝子のいずれかの発現レベルを有意に変化させないので(実施例を参照のこと)、アンチセンス法よりも特異的であるようだ。PLNmRNAの多コピーを標的とする必要があるアンチセンス・アプローチとは異なって、各細胞あたり、ZFPにより標的化される2個の結合部位のみしかない(つまり、標的遺伝子の2個のコピー)。その結果、ZFPは、比較的低い発現レベルで機能しうる。
【0202】
それゆえ、心臓疾患を治療するある方法は、PLN標的化ZFPを動物に導入することに関する。PLNに対する抑制ドメインを有するZFPの結合は、心筋収縮能の増加及びうっ血性心不全の寛解(又は除去)をもたらす。ZFPに融合する抑制ドメインは、PLNの発現を表す。
【0203】
PLN発現が心筋収縮能に関する限り、PLN発現を評価するための様々な方法が知られている。例えば、エコー図及び他のリアルタイム・イメージング技術が、in vivoで使用されうる。例えば、Santanaら(1997) Heart Vessels Suppl 12:44-9を参照のこと。PLN標的化されたZFP及び/又はそれらをコードする核酸が、心臓収縮力を調節する能力は、例えば、実施例、並びにFujiiら、(1990) FEBS Lett. 273(l-2):232-4; Nakayama ら、(2002) FASEB J 17(l):61-3; Zhaoら、(2003) Cardiovasc Res. 57(1):71-81に記載される様に、カルシウム過渡応答アッセイで評価されうる。別のオプションは、Chossatら、(2001) Cardiovasc Res. 49(2):288-97に記載されるように、ATP依存性のシュウ酸に促進される筋肉ホモジェネートによるCa(2+)の取り込みを計測することである。収縮についての更なる代表的なアッセイは、ベースラインにおける最大dP/dt又はβ-アゴニスト・ドブタミンの用量増加に応答する心室機能の血流の評価;心エコー法による短縮率(FS)の計測;及びカルシウム・感受性色素、例えばフルオ-3-AMを用いた心筋細胞におけるカルシウムの過渡応答の計測を含む。例えば、Minamisawaら、(1999) Cell 99(3):313-322及びBraz ら、(2004) Nature Med. 10(3):248-254を参照のこと。他のアッセイは、米国特許第6,569,862号に開示されている。さらに、組織切片の顕微鏡試験が行われうるし、並びに電気刺激にかけて、収縮性質を計測するためにかけられた単離細胞のビデオ・イメージングが行われうる。これら及び他の方法は、認められたアッセイであり、そしてその結果は、他のシステムについても推測されうる。
【0204】
以下の例は、開示された方法及び組成物の特定の態様をさらに詳細に記載するために、単に提供され、そしていずれの様式で制限するものとして解釈すべきでない。
【実施例】
【0205】
実施例1:材料と方法
A.細胞培養とトランスフェクション
ラットH9C2(2-1)細胞を、10%FBSを含むDMEM中で培養した。細胞を6ウェルプレート中に、約1.5×105細胞/ウェルの密度で撒き、トランスフェクションするまで16〜24時間置いた。FuGENE6トランスフェクション試薬(Roche, Indianapolis, IN)を用いて各コンストラクトについて2重にトランスフェクションを行った。1〜1.2μgのZFP-TF発現プラスミド又は対照プラスミドを、各ウェルに、6μlのFuGENE6の試薬を用いてトランスフェクションした。培地を含むトランスフェクション試薬を、8時間後に取り除き、そして新たな培地を加えた。細胞を、トランスフェクション後48〜72時間で、RNA単離のために回収した。
【0206】
ヒトSJRH30細胞を、10%FBSを添加したRPMI1640培地中に培養した。細胞を約2×105細胞/ウェルの密度で6ウェルプレート中に撒き、トランスフェクションまで16〜24時間置いた。各コンストラクトについて、FuGENE6トランスフェクション試薬(Roche, Indianapolis,IN)を用いて、二重にトランスフェクションを行った。各ウェルについて、1.2μgのZFP・リプレッサー・プラスミドを、6μlのFuGENE6トランスフェクション試薬と30分混合した。複合体を次に、無血清培養液中に加えた。トランスフェクション試薬含有培地を8時間後に取り除き、そして新たな培地を加えた。細胞をトランスフェクションの48〜72時間後に回収した。
【0207】
ヒトUtSMC細胞を、SmGM-2Bulletkit培地(Cambrex, Rockland, ME)で培養した。Nucleofectionを、製品プロトコルに従って行った(Amaxa Biosystems, Cologne, Germany)。簡潔に記載すると、5×105細胞及び5μgのプラスミドDNAを100μlのNucleofector溶液Vと混合した。NucleofectorプログラムT-30で電気泳動した後に、細胞を6ウェルプレートに蒔いた。細胞をトランスフェクションの48〜72時間後に回収した。
【0208】
初代心筋細胞を1日齢のラット新生児(種:スプラーグ・ドーリー(Sprague Dawley))から単離し、そして、ZFP6439-kox又はkoxドメイン単独のいずれかを発現するアデノウイルスで感染させた。
【0209】
B.トランス遺伝子陽性細胞を濃縮するための薬剤選別法
トランスフェクションされた細胞集合を濃縮するために、薬剤選別プロトコルを、トランスフェクションされていない細胞を殺傷するために行った。1.2μgのZFP-TF発現プラスミド又は対照プラスミドを0.3μgのピューロマイシン抵抗性ベクターを用いて共トランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後、(H9C2(2-1)細胞について1.5μg/ml、及びSJRH30細胞について1.0μg/mlの終濃度で)ピューロマイシンを培地に加えた。ピューロマイシン選別の60時間後、トランスフェクションされていない細胞の大部分は死滅した。残りの細胞を次なるRNA分析のため回収した。
【0210】
C. TAQMAN分析
RNAをHigh Pure RNA単離キット(Roche)又はRNeasyキット(Qiagen, Valencia, CA)のいずれかを用いて単離した。Taqmanアッセイを以前に記載されたとおりに行った(J. Biol. Chem. 275:33850)。簡潔に記載すると、TaqManを96ウェルプレート形式で、ABI7700SDS機(Perkin Elmer, Boston, MA)で行い、そしてSDSバージョン1.6.3ソフトウェアで分析した。RNAサンプル(25ng)を0.1μMのプローブ、各プライマーの最適量、5.5mM・MgCl2、及び0.3mM(づつ)のdNTP、0.625ユニットのAmpliTaq Gold DNA ポリメラーゼ、6.25ユニットのMultiScribeリバース・トランスクリプターゼ、及び5ユニットのRNase阻害剤を、PEから販売される1×TaqMan緩衝液A中に混合した。逆転写反応を48℃で30分間行った。95℃で10分間ディネーチャーした後に、PCR増幅反応を、95℃で15秒、そして60℃で1分、を40サイクル行った。PLN及びGAPDHmRNAのレベルを、125倍の濃度範囲(相対レベル0.2〜25;5倍希釈系列)で分布する標準曲線を用いて定量した。各RNAサンプルを、Taqman反応で二重にアッセイした。PLN/GAPDHの割合を様々なサンプルでPLNの相対レベルを決定するために使用した。プライマー及びプローブの配列及び濃度を表Aに与える。
【0211】
【表5】

【0212】
D. ラット初代心筋細胞のRNA:単離と感染
51日齢のスプラーグ・ドーリーラットを屠殺し、そしてその心臓を酵素切断でばらばらにした(115ユニット/mlコラゲナーゼ(Worthington)及び0.8mg/mlパンクレアチン(Sigma)緩衝液中で適量)切断を15mlの酵素溶液で行った。切断を酵素溶液15mlで、スピンナー・フラスコ中で、37℃の循環水浴で行った。30分の切断後、心臓片を静置し、そして酵素溶液(多くの赤血球細胞及び細胞片を含む)を取り除き、そして捨てた。新たな酵素溶液を心臓片に加えた。20分ごとに、ばらばらにされた細胞を回収し、そして新たな酵素溶液を残りの心臓片に加えた。このプロセスを、4回繰り返し、そして集めた細胞を残しておいた。細胞を次にパーコール勾配の上部に重層した。各パーコール勾配は、4mlの上部パーコール(1.059mg/mlの密度)及び3mlの下部パーコール(1.082mg/mlの密度);約10個の心臓由来の細胞を、各勾配上にロードした。30分間3000rpmで遠心後、上部パーコールと下部パーコールとの間の界面の心筋細胞を回収し、洗浄し、そして1%ゼラチン(Sigma)で予め処理した培養皿上に蒔いた。培地は、DMEM(68%、Invitrogen)、M199(17%、Invitrogen)、ウシ胎児血清(5%、Hyclone)、及びウマ血清(10%、Hyclone)の混合物であった。蒔いた2日後、培地を、80%DMEM及び20%M199からなる成長培地と置換した。
【0213】
アデノウイルス感染について、新生児ラットの心筋を、24ウェル細胞培養プレートに60000細胞/ウェルで蒔いた。2日後、蒔かれた細胞の大体半分がプレート上に結合したと見積もられた。これらの細胞を、100、200、及び400の感染多重度(MOI)で、24時間37℃で組換えアデノウイルスで感染した。感染後48時間で、細胞をRNA分析用に回収した。
【0214】
E.アデノウイルス産生及び感染
組換えアデノウイルス・ベクター、Ad-Kox1及びAd-6439Kox1を以下の通りに作成した:ヒト・サイトメガロウイルス媒介性の前初期プロモーター/エンハンサー(CMV)及び2個のテトラサイクリン・オペレーター配列(TetO2)からなるプラスミドpcDNA4/TO(Invitrogen)のMlu I-Afl II断片、並びにZFP発現カセットを含むpcDNA3-Kox1又はpcDNA3-6439Kox1のAfl II-XhoI断片を、プラスミドpシャトル(Clontech)中にウシ成長ホルモン・ポリアデニル化シグナル(BGHポリA)の上流のMluI及びXbaI制限酵素部位中に同時にクローン化した。CMV-TetO2-ZFP-BGHポリAカセットを、次に固有のI-Ceu I及びPI-SceI制限部位を介して切断し、そしてI-CeuI及びPI-Sce I(Clontech)で予め切断されたアデノ-Xウイルス・DNAにライゲーションした。全てのクローン化された配列をDNA配列により確かめた。
【0215】
組換えアデノウイルス・ベクターを、トランスフェクションT-REx(商標)-293細胞によりパッケージングし、そしてアデノウイルスに感染させ、三回の凍結融解サイクルで溶解されたT-REx(商標)-293細胞から回収した。組換えアデノウイルスをさらに、T-REx(商標)293細胞中で増幅し、そして塩化セシウム勾配で2回遠心することにより精製した(Qiagene)。精製された組換えアデノウイルスを、10mM・Tris・pH8.0-2mM・MgCl2-4%スクロースへと三回変化させて透析し、そして一定量で-80℃で貯蔵した。アデノウイルス粒子数を260nmでの吸光度により決定し、そして感染タイターをAdeno-XRapid Titer Kit(Clontech)を用いて測定した。
【0216】
実施例2:設計されたジンクフィンガー・タンパク質を用いた細胞系列におけるホスホランバン発現の抑制
PLNにおける標的部位を認識するように設計された6本指のジンクフィンガー・タンパク質と抑制ドメインとを含む融合タンパク質は、上の記載及び米国特許第6,607,882号に記載されるように設計された。設計されたZFP及びZFPにより認識される標的部位を表2〜4に示した。
【0217】
A.ラットPLN標的化ZFPを含む融合タンパク質
上で設計され、そして表2〜4に示されるZFPの能力を試験するために、以下の実験を行った。PLN標的化ZFP(SBS-6439、SBS-6435、又はSBS-6437)及び抑制ドメイン(KOX)を、pcDNA3.1プラスミド骨格中(Invitrogen, Carlsbad, CA)に導入して、PLN標的化ZFP発現プラスミドを作成した。空pcDNA3.1プラスミドベクターを、対照として使用するために調製した。PLN標的化ZFP・AAV・ベクターを実施例1に記載される様に調製した。融合タンパク質を、6439-KOX、6437-KOX、及び6435-KOXと名付けた。
【0218】
6439-KOX、6437-KOX、又は6435-KOXを含むプラスミド又はAAVに基づくベクターを、実施例1に記載される様に、培養されたラットH9c2(2-1)細胞中にトランスフェクションした。空ベクターを、対照として使用した。薬剤選別アッセイでは、ピューロマイシン抵抗性プラスミドをPLN-ZFP含有プラスミド又は対照ベクターと共に、トランスフェクションして、トランスフェクションされた集合を濃縮した。細胞を、1μg/mlピューロマイシンで選別して、トランスフェクションされていない細胞を死滅させた。ZFP発現を、実施例1に記載されるようにTaqmanアッセイにより計測した。
【0219】
図2Aは、6439-KOX、6437-KOX、又は6435-KOXをプラスミドベクター中に使用する、ラット・PLN発現の抑制結果を示す。図2Bは、6439-KOXを含むプラスミドベクターでトランスフェクションされた細胞であって、選別されていない細胞及びピューロマイシン選別された細胞におけるPLNの抑制を示す。未然別の細胞において、6439-KOXは、空ベクターでトランスフェクションされた細胞に比べて約75%だけPLN発現を抑制した。ピューロマイシン選別細胞では、6439-KOXは、空ベクターをトランスフェクションされた細胞に比べて約97%だけラットPLN発現を抑制する。図2Cは、プラスミド(pcDNA)又はAAVベクターのいずれかを使用して投与された場合、6439-KOXによりPLNが抑制されることを示す。AAVによる6439-KOXのデリバリーは、約98%だけラットPLN発現を抑制した(図2C)。さらに、高いPLN抑制は、pcDNA3.1ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)に比較して、AAV-MCSベクター(Stratagene, La Jolla, CA)からのZFPの発現レベルが高いことと相関する。
【0220】
B.ヒトPLN標的化ZFPを含む融合タンパク質
ヒトPLN遺伝子発現の抑制を、ヒトPLNに対して標的化されたZFP(SBS-6576及びSBS-6624)及びKOX抑制ドメインを含む融合タンパク質を使用して試験した。ZFP-KOX融合体を、6576-KOX及び6624-KOXと名付けた。
【0221】
SJRH30細胞を培養し、そして上の実施例1に記載される様にピューロマイシン選別にかけた。トランス遺伝子陽性細胞を測定することにより計測するとき、ピューロマイシン選別は、85%を超える転写効率をもたらした。
【0222】
UtSMC細胞を、実施例1に記載される様に培養した。実質的に製造者の説明書(Amaxa, Germany)に記載されるとおりに、細胞をニューロフェクチン・プロトコルにかけた。
【0223】
図3に示されるように、6576-KOX及び6624-KOXは、SJRH30細胞において約75%だけヒトPLN発現を抑制した(図3B及び3D)。UtSMC細胞では、PLN発現は6576-KOXにより約75%だけ抑制され、その一方、6624-KOXは、約60%だけヒトPLN発現を抑制した(図3A及び図3C)。
こうして、PLN-標的化ZFPは、PLNの発現を抑制できる。
【0224】
実施例3:設計されたジンクフィンガー・タンパク質を用いた心筋細胞におけるホスホランバン発現の抑制
A.成獣ラット心筋細胞
融合タンパク質6439-KOXを、成獣ラット筋細胞におけるCa2+の過渡応答を調節する能力についても試験した。簡潔に記載すると、6439-KOXをコードするプラスミドを、緑色蛍光GFPをコードするプラスミドと共に成獣ラット心筋に注射した。
【0225】
心筋細胞を注射後3日目に単離し、そしてCa2+感受性色素であるフルオ-3-AMとインキュベーションした。蛍光の変化を、マイクロ蛍光光度計によりモニターした。上記Minamisawaらを参照のこと。
【0226】
図4に示されるように、6439-KOXは、成獣ラット心筋細胞中のCa2+過渡応答を増大させる。トランスフェクションされていない細胞に比べて、6439-KOXを含む細胞は、短い期間かつ早い減衰を伴うCa2+過渡応答を示し、ZFP媒介性のPLN発現が、Ca2+を変化させるために十分であることを示す。ビデオ・イメージの分析により、6439-KOXをコードするプラスミドでトランスフェクションされた単離心筋細胞の収縮は、トランスフェクションされていない細胞に比べて、収縮と弛緩の速度が
増大することが示された。
【0227】
B.初代心筋細胞
6439-KOXの活性を試験するために、以下の実験を行った。初代心筋細胞を、1日齢の新生児ラットから単離した。これらの細胞におけるPLNの発現レベルは、HPC2(2-1)細胞の発現レベルよりも約50倍高かった(図5A)。
【0228】
6439-KOXを、上記されるようにプラスミド又はAAVベクターを用いて初代心筋細胞に投与した。プラスミドベクターを使用した心筋細胞へのトランスフェクション効率は、典型的にかなり低く(10%未満);従って、ZFPを、細胞の85%超に感染できるアデノウイルスを使用してデリバリーした。
【0229】
6439-KOXは、初代ラット心筋細胞において用量依存的な様式でPLN発現を抑制し(図5B)、PLN標的化ZFPがPLNの転写を効率的に阻害することが示された。
【0230】
実施例4:特異性
PLN標的化ZFPの特異性を試験するために、以下のマイクロアレイ実験を行った。
A.SBS-6573(ヒト)を含む融合タンパク質
6573-KOXの特異性を試験するために、UtSMC細胞由来のトータルRNAを、RNeasy Miniキット(QIAGEN)を製造元の推奨に従って使用して単離した。ハイブリダイゼーション用のRNAサンプルを、200ngのトータルRNAを用いてAffymetrix GeneChip Small Sample Labelingプロトコルに従って調製した。遺伝子発現の変化を、Affymetrix Human U-133Aアレイを用いて分析した。当該アレイは、22,283個のプローブを含みおよそ16000個の遺伝子を表す。Affymetrix Microarray Suite 5.0及びData Mining Tool3.0ソフトウェアを、データー分析に使用した。異なった形で発現された遺伝子は:2倍を超える変化、100%の信頼性の要請、及び0.05未満のp値であった。
【0231】
B.SBS-6439(ラット)を含む融合タンパク質
6439-KOX、H9C2(2-1)細胞をp100プレートに蒔いた(約1×106細胞/プレート)。7μgの6439-kox又はpcDNA3の空ベクターを、30μlのリポフェクタミン2000試薬を用いて各プレートにトランスフェクションした。トランスフェクション試薬を含む培地を8時間後に取り除き、そして新たな培地を加えた。細胞を、トランスフェクション後60時間目に回収した。
【0232】
トータルRNAをTRIzol試薬(Invitrogen)を用いて、製造元の推奨に従って単離した。ハイブリダイゼーション用のRNAサンプルを、10μgのトータルRNAを用いて標準的なアフィメトリックス・プロトコルに従って調製した。遺伝子発現の変化を、ラットRAE-230Aアレイを用いて分析した。当該アレイは15,923個のプローブを含み、およそ14000個の遺伝子を表す。データーを、Affymetrix Microarray Suite 5.0及びData Mining Tool 3.0ソフトウェアを用いて行った。異なった形で発現された遺伝子は:2倍を超える変化、100%の信頼性の要請、及び0.05未満のp値であった。
【0233】
C.結果
約14,000及び16,000個の転写産物を、上で記載されたラット及びヒトマイクロアレイによりモニターした。試験されたラット及びヒト細胞の両方において、PLNは、発現レベルの変化が以下の基準:
1)Affymetrix 分析によりアッセイされた2倍以上の抑制、2)Affymetrix分析によりなされた100%の信頼性要請、3)0.05%未満のp値、及び4)RNAレベルがTaqman分析を用いて確認された場合における2倍以上の抑制に適合する唯一の遺伝子であった。
こうして、本明細書に記載されるPLN標的化ZFPは、PLN遺伝子に対する特異性を示す。
【0234】
実施例5:ホスホランバン制御をするように設計された転写因子を、培養された子宮平滑筋細胞にデリバリーするためのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの使用
KOX抑制ドメイン(1563-KOX)(表1及び3を参照のこと)に融合された3本指のSBR1563ジンクフィンガー・タンパク質をコードする配列を、pAAV-MCSベクター(Strategnen, La Jolla, CA)にクローニングした。このコンストラクトを、pAAV-RC及びpHelperプラスミド(両方ともStrategene, La Jolla, CAから購入した)と共にHEK293細胞に共トランスフェクションした。3日後、粗製ライセートを獲得し、そしてZFPをコードするウイルス源として使用した。
【0235】
UtSMC細胞、ヒト初代子宮平滑筋細胞系列を、1細胞あたり2×104のMOIで、粗製AAVライセートで感染させた。感染後72時間において、細胞を回収し、そのRNAを抽出し、そしてホスホランバンmRNAの量を、リアルタイムPCR(Taqman(登録商標))により計測した。図6に示される結果により、1563-KOXホスホランバン・リプレッサーをコードするAAVで感染した後に、ホスホランバンmRNAが約二分の一に低下することが示唆された。
【0236】
本明細書に記載される実施例及び実施態様が、例示を目的とするだけであり、そしてその範囲の変更又は改変が、当業者に示唆され、そして当該出願及び添付の特許請求の範囲の精神と権限の範囲内に含まれるということが理解される。本明細書に引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、個々の刊行物、特許、又は特許出願が、具体的かつ個別に援用されると記載される場合と同程度に、全ての目的のためにその全てを援用される。
【図面の簡単な説明】
【0237】
【図1】図1、パネルA及びBは、PLNの発現を抑制する本明細書に記載される典型的なZFPを含む融合タンパク質のアミノ酸配列を示す。図1Aは、SBS-6439(配列番号68)と名付けられるZFPを含む融合タンパク質のアミノ酸配列を示す。図1Bは、SBS-6576(配列番号69)と名付けられるZFPを含む融合タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【図2A−B】図2、パネルA-Cは、PLNを標的とするZFPを含むプラスミド又はAAVベクターでトランスフェクションされたラット細胞におけるホスホランバン(PLN)の抑制を示すグラフである。図2Aは、KOX抑制ドメイン及びPLNを標的とするZFP(SBS-6435、SBS6437、又はSBS6439)を含む融合タンパク質をコードするプラスミドによるPLNの抑制を示す。融合タンパク質は、6435-KOX、SBS-6437-KOX、又は6439-KOXと名付けられる。図2Bは、未選別の細胞及びピューロマイシン選別にかけた細胞における6439-KOXをコードするプラスミドによるPLNの抑制を示す。
【図2C】図2、パネルA-Cは、PLNを標的とするZFPを含むプラスミド又はAAVベクターでトランスフェクションされたラット細胞におけるホスホランバン(PLN)の抑制を示すグラフである。図2Cは、6439-KOXが、プラスミド又はAAVベクターを使用して投与されるとき、ラットPLNを抑制することを記載する。
【図3】図3、パネルA-Dは、PLNを標的とするZFPを含むプラスミドでトランスフェクションされたヒト細胞におけるホスホランバン(PLN)発現の抑制を記載するグラフである。図3Aは、空プラスミド対照と比べた6576-KOXによるUtSMC細胞におけるPLN発現の抑制を記載する。図3Bは、空プラスミド対照と比べた6576-KOXによるJRH30細胞におけるPLN発現の抑制を記載する。図3Cは、空プラスミド対照と比べた6576-KOX及び6624-KOXによるUtSMC細胞におけるPLN発現の抑制を記載する。図3Dは、空プラスミド対照と比べた6576-KOX及び6624-KOXによるSJRH30細胞におけるPLN発現の抑制を記載する。
【図4】図4は、成獣ラット心筋細胞におけるCa2+の一過的流入についてのPLNを標的とするZFPの効果を記載する。
【図5】図5、パネルA及びBは、PLNを標的とするZFPを用いたラット心筋細胞におけるPLN抑制を示す。図5Aは、ラット心筋細胞(RCM)及びH9C2(2-1)細胞から得たPLN・mRNAのTaqman増幅プロットを指し示す。RCM PLNについてのCt値は、〜16であり、そしてH9C2(2-1)PLNについてのCt値は〜22である。各Ctサイクルの差は、RNAレベルの2倍の差を示す。 図5Bは、アデノウイルスに感染したラット心筋細胞におけるPLNmRNAのレベルを示す。6439-kox又はkox抑制ドメインのみのいずれかを発現するアデノウイルスは、指定されたMOI(100、200、及び400)で心筋細胞を感染するために使用された。
【図6】図6は、1563-KOXホスホランバン抑制タンパク質をコードするAAVで感染させたUtSMC細胞における(18SrRNAに標準化された)ホスホランバンmRNAのレベル(右の棒グラフ)を示す。対照として(左の棒グラフ)、UtSMC細胞の別の培養物を、5475-KOXタンパク質、CHK2遺伝子を標的とするリプレッサー遺伝子をコードするAAVで感染させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の心筋収縮調節のための方法であって、当該方法が、以下の:
核酸を対象に導入し、ここで当該核酸はポリペプチドをコードし、ここで当該ポリペプチドが以下の:
(i) ホスホランバン遺伝子内の標的部位に結合するように遺伝子操作されたジンクフィンガーDNA結合ドメイン;及び
(ii) 転写抑制ドメイン;
を含み、その結果、当該核酸が上記対象の1以上の細胞において発現され、それにより当該ポリペプチドが標的部位に結合し、そしてホスホランバン遺伝子の転写を抑制する、前記方法。
【請求項2】
前記ジンクフィンガーDNA結合ドメインが、6個のジンクフィンガーを含み、そして当該ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列が以下の:
【化1】

である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジンクフィンガーDNA結合ドメインが、6個のジンクフィンガーを含み、そして当該ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列が以下の:
【化2】

である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
遺伝子操作されたジンクフィンガーDNA結合ドメインを含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、当該DNA結合ドメインが6個のジンクフィンガーを含み、そして当該ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列が以下の:
【化3】

である、前記ポリヌクレオチド。
【請求項5】
遺伝子操作されたジンクフィンガーDNA結合ドメインを含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、当該DNA結合ドメインが6個のジンクフィンガーを含み、そして当該ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列が以下の:
【化4】

である、前記ポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記転写抑制ドメインがKOXドメインである、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2A−B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−501311(P2008−501311A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507476(P2007−507476)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/011674
【国際公開番号】WO2005/100393
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(302043837)サンガモ バイオサイエンシズ インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】