説明

心臓のパラメーターを測定するための方法およびシステム

【課題】医療施設の内外両方において心臓の性能および機能をモニタリングするための改善されたデバイス、システムおよび方法を提供する。
【解決手段】心臓性能パラメーターを測定するための方法であって、該方法は、以下:心臓周期の間の選択した時間に、心腔内の体積および圧力の少なくとも一方の変化を発生させる工程;体積および圧力の少なくとも一方の変化に応じて生じる該心腔の少なくとも1つの特性の変化を測定する工程;および該発生した変化に対する測定された特性の変化の割合に基づいて、少なくとも1つの心臓性能パラメーターを計算する工程、を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2003年1月24日に出願された米国仮特許出願第60/442441号(代理人名簿番号第21308−000800US号)の優先権の利益を主張し、この出願の開示内容は、引用することにより本願に援用する。本出願は、米国特許出願第10/ 号(代理人名簿番号第21308−000710US号);および第10/ 号(代理人名簿番号第21308−001110US号)に関連し、これらの出願は共に、本出願と同時に出願され、引用することにより全体的に本願に援用する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
発明の分野。本発明は、一般に医療デバイスおよび方法に関する。詳細には、本発明は、血管内またはカテーテルデバイスから取得したデータに基づいて、心臓性能パラメーターを決定するための医療デバイス、システムおよび方法に関する。
【0003】
血管内および腔内介入およびモニタリングは、現代の心臓学およびその他の医療分野において不可欠になった。本発明にとって特に興味深い点は、心臓の性能をモニタリングするために、心臓内カテーテル、埋め込み可能なセンサ、並びにその他のデバイスおよびシステムが開発されたことである。
【0004】
心疾患を罹患しているか、または心疾患の恐れがある患者を適切に治療する能力は、心臓の性能および機能を頻繁に、またはリアルタイムで連続的にモニタリングすることにより大幅に強化することが可能である。たとえば、鬱血性心不全を罹患している患者は、心臓の性能および機能、および患者が薬物療法にどのように反応するかに関して比較的多くの情報を入手可能であり、情報を比較的頻繁に入手可能であれば、特定の薬剤の投薬量を滴定することができる。さらに、比較的良好な心臓性能データが入手可能であれば、外科的介入の必要性も比較的良好に評価することが可能である。たとえば、特にモス状態が共存している場合、ポンプ機能の低下を生じる心筋機能不全などのその他の心臓状態から、主に大動脈弁狭窄症または僧坊弁閉鎖不全症による心臓機能障害を識別することは困難であることが多い。
【0005】
これらの理由から、医療施設の内外両方において心臓の性能および機能をモニタリングするための改善されたデバイス、システムおよび方法を提供することが望まれる。このような改善されたデバイス、システムおよび方法により、心臓の性能および機能に関する様々な機械的、生物学的および化学的パラメーターを測定し、こうして測定された性能特性に基づいて計算された心臓性能値を分析することが可能である。好ましくは、デバイスおよび装置は、発生部位の心臓性能データの周期的または連続的な収集を可能にする1個または複数の血管内カテーテルを備える。次に、システムは、収集された内外の測定性能データに基づいて、生理学的原因の心臓性能パラメーターを計算する。これらの目的の少なくとも一部は、以下に記載する本発明により達成されるであろう。
【0006】
2.発明の背景。様々な心臓パラメーターおよび生理的パラメーターを測定するためのカテーテル、並びに血管内および心臓内デバイスは、2003年12月11日に出願され、本願と同一の所有権者に譲渡された米国同時係属特許出願第10/734490号(代理人名簿番号第21308−000510US号)、「血行力学的パラメーターをモニタリングおよび処理するための方法およびシステム」(Method and System for Monitoring and Treating Hemodynamic Parameters)に記載されており、この出願全体の開示事項は、引用することにより本願に援用する。心臓および/または脈管構造内の様々な生理的パラメーターを測定可能なその他のカテーテルおよび埋め込み可能なセンサは、米国特許第5,814,089号;米国特許公報第6,328,699 B1号;米国特許公報6,438,408 B1号;米国特許公開公報第2001/0053882 Al号;米国特許公開公報第2001/0047138 Al号;米国特許公開公報第2002/0077568 Al号;米国特許公開公報第2002/0111560 Al号;米国特許公開公報第2002/0151816 Al号;米国特許第2002/0156417号;米国特許第2002/0169445号;および国際特許公開公報第WO 02/065894 A2号に記載されている。これらの特許および特許出願の各々の完全な開示事項は、引用することにより本願に援用する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
心臓性能パラメーターを測定するための方法であって、該方法は、以下:
心臓周期の間の選択した時間に、心腔内の体積および圧力の少なくとも一方の変化を発生させる工程;
体積および圧力の少なくとも一方の変化に応じて生じる該心腔の少なくとも1つの特性の変化を測定する工程;および
該発生した変化に対する測定された特性の変化の割合に基づいて、少なくとも1つの心臓性能パラメーターを計算する工程、
を包含する、方法。
(項目2)
上記変化を発生させる工程が、心拡張期に、ある体積の流体を心腔内に導入する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記体積の流体を導入する工程が、心腔内の流体を、該腔内に配置されたカテーテルにおける1つ以上の開口を介して排出する工程を包含する、項目2に記載の方法。
(項目4)
上記体積の流体を導入する工程が、心腔内に配置されたカテーテルと結合する拡張可能なバルーンを膨張させる工程を包含する、項目2に記載の方法。
(項目5)
上記バルーンを膨張させる工程が、以下:
心臓の心収縮期に該バルーンを膨張させる工程;および
該心収縮期直後の心臓の心拡張期に、該バルーンを収縮させる工程、
を包含する、項目4に記載の方法。
(項目6)
上記バルーンを膨張させる工程が、以下:
心臓の心拡張期に該バルーンを膨張させる工程;および
該心拡張期直後の心臓の心収縮期に該バルーンを収縮させる工程、
を包含する、項目4に記載の方法。
(項目7)
上記体積の流体を導入する工程が、以下:
心収縮期に心腔内でバルーンを膨張させる工程;
該心収縮期直後の心拡張期に、該バルーンを収縮させる工程;および
該心拡張期に該心腔内にある量の流体を放出する工程
を包含する、項目2に記載の方法。
(項目8)
上記バルーンが、上記放出された流体の量に等しい体積まで収縮する、項目7に記載の方法。
(項目9)
上記バルーンが、上記放出された流体の量を超える体積まで収縮する、項目7に記載の方法。
(項目10)
上記変化を発生させる工程が、心拡張期に少なくとも1回水中聴音器を作動させる工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目11)
作動させる工程が、約200Hzの周波数で水中聴音器を作動させる工程を包含する、項目10に記載の方法。
(項目12)
作動させる工程が、約500Hzの周波数で水中聴音器を作動させる工程を包含する、項目10に記載の方法。
(項目13)
作動させる工程が、約1000Hzの周波数で水中聴音器を作動させる工程を包含する、項目10に記載の方法。
(項目14)
上記変化を発生させる工程が、発作性心室収縮を誘発させる、項目1に記載の方法。
(項目15)
上記発作性心室収縮が、電気的刺激により誘発される、項目14に記載の方法。
(項目16)
心電図デバイスを使用して心臓周期を測定する工程をさらに包含し、ここで、上記心臓周期の間の選択した時間が、該心電図の測定値を使用して選択される、項目1に記載の方法。
(項目17)
上記心腔内に配置されたカテーテルにおける少なくとも1個のセンサを使用して、上記心臓周期を測定する工程をさらに包含し、ここで、上記心臓周期の間の選択した時間が、該センサの測定値を使用して選択される、項目1に記載の方法。
(項目18)
上記心臓の特性の変化が、体積および圧力の少なくとも一方の変化を生じさせた直後に測定される、項目1に記載の方法。
(項目19)
上記心臓の特性の変化が、体積または圧力の少なくとも一方の変化後に、上記心臓周期の少なくとも一部分の間に測定される、項目1に記載の方法。
(項目20)
一連の2回以上の連続する心臓周期にわたって、上記変化を生じさせる工程と、測定する工程と、計算する工程とを繰り返す工程を、さらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目21)
上記変化を測定する工程が、上記心腔内の少なくとも1つの圧力の変化を測定する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目22)
上記圧力の変化を測定する工程が、拡張期末圧力の変化および収縮期末圧力の変化を測定する工程を包含する、項目21に記載の方法。
(項目23)
上記少なくとも1つのパラメーターを計算する工程が、心臓圧力利得を計算する工程を包含する、項目22に記載の方法であって、以下:
第1収縮期末圧力と第2収縮期末圧力との間の第1の差を計算する工程;
第1拡張期末圧力と第2拡張期末圧力との間の第2の差を計算する工程;および
該第1の差を該第2の差で除算する工程
を包含する、方法。
(項目24)
表示デバイスに表示するために、上記拡張期末圧力、上記収縮期末圧力および上記心臓圧力利得の少なくとも1つを提供する工程をさらに包含する、項目23に記載の方法。
(項目25)
上記提供する工程が、プロットの形態のデータを提供する工程であって、該プロットは、該プロットの一方の軸上に少なくとも1つの拡張期末体積を、および該プロットの垂直軸上に少なくとも1つの収縮期末体積を有する、項目24に記載の方法。
(項目26)
上記変化を測定する工程が、左心室拡張期末圧力の変化および左心室収縮期末圧力の変化を測定する工程を包含する、項目21に記載の方法。
(項目27)
上記変化を測定する工程が、上記心腔内の少なくとも1つの体積の変化を測定する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目28)
上記変化を測定する工程が、拡張期末体積の変化および収縮期末体積の変化を測定する工程を包含する、項目27に記載の方法。
(項目29)
上記少なくとも1つのパラメーターを計算する工程が、体積予備力を計算する工程を包含する、項目28に記載の方法であって、以下:
第1収縮期末体積と第2収縮期末体積との間の第1の差を計算する工程;
第1拡張期末体積と第2拡張期末体積との間の第2の差を計算する工程;および
該第1の差を該第2の差で除算する工程
を包含する、方法。
(項目30)
表示デバイス上に表示するために、上記拡張期末体積、上記収縮期末圧力および上記体積予備力の少なくとも1つを提供する工程をさらに包含する、項目29に記載の方法。
(項目31)
上記提供する工程が、プロットの形態のデータを提供する工程であって、該プロットは、該プロットの一方の軸上に少なくとも1つの拡張期末体積を、および該プロットの垂直軸上に少なくとも1つの収縮期末体積を有する、項目30に記載の方法。
(項目32)
上記変化を測定する工程が、左心室拡張期末体積の変化および左心室収縮期末体積の変化を測定する工程を包含する、項目28に記載の方法。
(項目33)
上記変化を測定する工程が、上記心腔内における少なくとも1つの圧力の変化および少なくとも1つの体積の変化を測定する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目34)
上記変化を測定する工程が、拡張期末体積の変化および拡張期末圧力の変化を測定する工程を包含する、項目33に記載の方法。
(項目35)
圧力データおよび体積データをプロットとして提供する工程をさらに包含し、該プロットは、該プロットの一方の軸上に少なくとも1つの体積を、および該プロットの垂直軸上に少なくとも1つの体積を有する、項目34に記載の方法。
(項目36)
上記少なくとも1つのパラメーターを計算する工程が、上記心腔の拡張性硬度を計算する工程を包含する、項目34に記載の方法であって、以下:
第2拡張期末圧力と第1拡張期末圧力との間の第1の差を計算する工程;
第2拡張期末体積と第1拡張期末体積との間の第2の差を計算する工程;および
該第1の差を該第2の差で除算する工程
を包含する、方法。
(項目37)
表示デバイス上に表示するために、上記体積、上記圧力および上記拡張性硬度の少なくとも1つを提供する工程をさらに包含する、項目36に記載の方法。
(項目38)
上記少なくとも1つのパラメーターを計算する工程が、上記心腔の拡張性コンプライアンスを計算する工程を包含する、項目34に記載の方法であって、以下:
第2拡張期末体積と第1拡張期末体積との間の第1の差を計算する工程;
第2拡張期末圧力と第1拡張期末圧力との間の第2の差を計算する工程;および
該第1の差を該第2の差で除算する工程
を包含する、方法。
(項目39)
表示デバイス上に表示するために、上記体積、上記圧力および上記拡張性コンプライアンスの少なくとも1つを提供する工程をさらに包含する、項目38に記載の方法。
(項目40)
上記変化を測定する工程が、収縮期末体積の変化および収縮期末圧力の変化を測定する工程を包含する、項目33に記載の方法。
(項目41)
体積データおよび圧力データをプロットとして提供する工程をさらに包含し、該プロットは、プロットの一方の軸上に少なくとも1つの体積を、およびプロットの垂直軸上に少なくとも1つの体積を有する、項目40に記載の方法。
(項目42)
上記少なくとも1つのパラメーターを計算する工程が、上記心腔の変力性硬度を計算する工程を包含する、項目40に記載の方法であって、以下:
第2収縮期末圧力と第1収縮期末圧力との間の第1の差を計算する工程;
第2収縮期末体積と第1収縮期末体積との間の第2の差を計算する工程;および
該第1の差を該第2の差で除算する工程
を包含する、方法。
(項目43)
表示デバイス上に表示するために、上記体積、上記圧力および上記変力性硬度の少なくとも1つを提供する工程をさらに包含する、項目42に記載の方法。
(項目44)
上記少なくとも1つのパラメーターを計算する工程が、上記心腔の変力性コンプライアンスを計算する工程を包含する、項目40に記載の方法であって、以下:
第2収縮期末体積と第1収縮期末体積との間の第1の差を計算する工程;
第2収縮期末圧力と第1収縮期末圧力との間の第2の差を計算する工程;および
該第1の差を該第2の差で除算する工程
を包含する、方法。
(項目45)
表示デバイス上に表示するために、上記体積、上記圧力および上記変力性コンプライアンスの少なくとも1つを提供する工程をさらに包含する、項目44に記載の方法。
(項目46)
上記測定する工程および上記計算する工程が、以下:
心臓周期の間に、上記心腔内の圧力および体積を連続的に測定する工程;
心室の拡張に起因して該体積が増加する場合、該圧力の第1の積分を、体積の関数として計算する工程;
心室の収縮に起因して該体積が減少する場合、該圧力の第2の積分を、体積の関数として計算する工程;および
該第1の積分から該第2の積分を減算することにより、該心腔の心筋仕事量を計算する工程
を包含する、項目33に記載の方法。
(項目47)
上記測定する工程および上記計算する工程が、以下:
心臓周期の間に、上記心腔内の圧力および体積を連続的に測定する工程;
心室の拡張に起因して該体積が増加する場合、該圧力および該体積の積の第1積分を計算する工程;
心室の収縮に起因して該体積が減少する場合、該圧力および該体積の積の第2積分を計算する工程;および
該第1積分から該第2積分を減算することにより、該心腔の心筋仕事量の第1モーメントを計算する工程
を包含する、項目33に記載の方法。
(項目48)
以下:
体表面積を計算する工程;および
心筋仕事量を該体表面積で除算することにより、心筋仕事量係数を計算する工程
をさらに包含する、項目46に記載の方法。
(項目49)
以下:
大動脈内の速度がゼロから増加を開始する時から、大動脈内の速度が最初にゼロに戻る時までを計算する工程によって、1回拍出駆出期間を計算する工程;および
上記心筋仕事量を該1回拍出駆出期間で除算することにより、心筋出力を計算する工程
をさらに包含する、項目46に記載の方法。
(項目50)
以下:
体表面積を計算する工程;および
心筋出力を体表面積で除算することにより、心筋出力係数を計算する工程
をさらに包含する、項目49に記載の方法。
(項目51)
以下:
1回拍出量を計算する工程;および
心筋出力を1回拍出量で除算することにより、心筋出力要件パラメーターを計算する工程
をさらに包含する、項目49に記載の方法。
(項目52)
以下:
第1心臓周期に関する第1心筋仕事量を計算する工程;
上記拡張期末体積および上記拡張期末圧力を変化させる工程;
第2心臓周期に関する第2心筋仕事量を計算する工程;
該第1心臓周期に関する第1拡張期末圧力、および該第2心臓周期に関する第2拡張期末圧力を測定する工程;および
該第2心筋仕事量と該第1心筋仕事量との間の差を、該第2拡張期末圧力と該第1拡張期末圧力との間の差で除算することにより、心筋予備力を計算する工程
をさらに包含する、項目46に記載の方法。
(項目53)
以下:
体表面積を計算する工程;および
心筋予備力を該体表面積で除算して、心筋予備力係数を計算する工程
をさらに包含する、項目52に記載の方法。
(項目54)
上記心筋仕事量が、心臓の左心室に関して計算される、項目46に記載の方法。
(項目55)
上記心筋仕事量が、心臓の右心室に関して計算される、項目46に記載の方法。
(項目56)
以下:
第1心臓周期に関する第1心筋出力を計算する工程;
上記拡張期末体積および上記拡張期末圧力を変化させる工程;
第2心臓周期に関する第2心筋出力を計算する工程;
該第1心臓周期に関する第1拡張期末圧力、および該第2心臓周期に関する第2拡張期末圧力を測定する工程;および
該第2心筋出力と該第1心筋出力との間の差を、該第2拡張期末圧力と該第1拡張期末圧力との間の差で除算して、心筋出力予備力を計算する工程
をさらに包含する、項目46に記載の方法。
(項目57)
以下:
体表面積を計算する工程;および
心筋出力予備力を該体表面積で除算することにより、心筋出力予備力係数を計算する工程
をさらに包含する、項目56に記載の方法。
(項目58)
以下:
上記体積の変化および/または上記圧力の変化に応じて生じる心腔からの血液流出の少なくとも1つの流速の変化を測定する工程;および
該測定された流速の変化の、該体積の変化および/または該圧力の変化に対する割合に基づいて、該心腔の少なくとも1つの流速関連パラメーターを計算する工程
をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目59)
上記流速の変化を測定する工程が、大動脈内における少なくとも1つの流速を測定する工程を包含する、項目58に記載の方法。
(項目60)
上記流速の変化を測定する工程が、少なくとも1つの肺動脈における少なくとも1つの流速を測定する工程を包含する、項目58に記載の方法。
(項目61)
上記流速関連パラメーターを計算する工程が、流速が測定される心臓の少なくとも1つの1回拍出量を計算する工程を包含する、項目58に記載の方法であって、以下:
心臓の心拍出量を概算する工程;
心拍を測定する工程;
該概算心拍出量を該心拍で除算することによって、第1の速度を計算する工程;
ある回数の心臓周期にわたる流速の第1の積分を計算する工程;
該積分を該回数の心臓周期で除算することによって、第2の速度を計算する工程;
該第1の速度を該第2の速度で除算することによって、倍率を計算する工程;
選択した心臓周期にわたって流速の第2の積分を計算する工程;および
該第2の積分に該倍率を乗算することによって、該1回拍出量を計算する工程
をさらに包含する、方法。
(項目62)
以下:
体表面積を測定する工程;および
1回拍出量を該体表面積で除算することにより、1回拍出量係数を計算する工程
をさらに包含する、項目61に記載の方法。
(項目63)
上記心拍出量が、フィックの方法および希釈法のうちの少なくとも1つを使用して概算される、項目61に記載の方法。
(項目64)
上記1回拍出量を上記心臓周期の1つの持続時間で除算することにより、計算された心拍出量を決定する工程をさらに包含する、項目61に記載の方法。
(項目65)
以下:
体表面積を測定する工程;および
上記計算された心拍出量を該体表面積で除算することにより、心係数を計算する工程をさらに包含する、項目64に記載の方法。
(項目66)
以下:
第1心臓周期および第2心臓周期に関する、第1の計算された心拍出量および第2の計算された心拍出量を、決定する工程;
該第1心臓周期および該第2心臓周期に関する、第1拡張期末圧力および第2拡張期末圧力を、測定する工程;および
該第2の計算された心拍出量と該第1の計算された心拍出量との間の差を、該第2拡張期末圧力と該第1拡張期末圧力との間の差によって除算することにより、心臓予備力を計算する工程
をさらに包含する、項目64に記載の方法。
(項目67)
以下:
体表面積を測定する工程;
上記計算された心臓予備力を該体表面積によって除算することにより、心臓予備力係数を計算する工程
をさらに包含する、項目66に記載の方法。
(項目68)
以下:
第1心臓周期および第2心臓周期に関する、第1の1回拍出量および第2の1回拍出量を計算する工程;
該第1心臓周期および該第2心臓周期に関する、第1拡張期末圧力および第2拡張期末圧力を測定する工程;および
該第2の計算された1回拍出量と該第1の計算された1回拍出量との間の差を該第2拡張期末圧力と該第1拡張期末圧力との間の差によって除算することにより、1回拍出予備力を計算する工程
をさらに包含する、項目61に記載の方法。
(項目69)
以下:
体表面積を測定する工程;および
上記計算された1回拍出予備力を該体表面積で除算することにより、1回拍出予備力係数を計算する工程
を包含する、項目68に記載の方法。
(項目70)
以下:
心臓に隣接する少なくとも1つの流出動脈内における平均収縮期圧を測定する工程;
心腔内の平均拡張期圧力を測定する工程;
該平均収縮期圧力と該平均拡張期圧力との間の差を計算する工程;および
該差を上記1回拍出量で乗算することにより、1回仕事量を計算する工程
をさらに包含する、項目61に記載の方法。
(項目71)
以下:
体表面積を測定する工程;および
上記計算された1回仕事量を該体表面積で除算することにより、1回仕事量係数を計算する工程
をさらに包含する、項目70に記載の方法。
(項目72)
以下:
第1の心臓周期および第2の心臓周期に関する、第1の1回仕事量および第2の1回仕事量を計算する工程;
該第1の心臓周期および該第2の心臓周期に関する、第1拡張期末圧力および第2拡張期末圧力を測定する工程;および
該第2の計算された1回仕事量と第1の計算された1回仕事量との間の差を第2拡張期末圧力と第1拡張期末圧力との間の差で除算することにより、1回仕事量予備力を計算する工程
をさらに包含する、項目70に記載の方法。
(項目73)
以下:
体表面積を測定する工程;および
上記計算された1回仕事量予備力を該体表面積で除算することにより、1回仕事量予備力係数を計算する工程
をさらに包含する、項目72に記載の方法。
(項目74)
上記少なくとも1つの流出動脈が、大動脈を含む、項目70に記載の方法。
(項目75)
上記少なくとも1つの流出動脈が、少なくとも1つの肺動脈を含む、項目70に記載の方法。
(項目76)
上記1回仕事量を上記心筋仕事量で除算することにより、心臓効率を計算する工程をさらに包含する、項目46および項目70に記載の方法。
(項目77)
以下:
第1心臓周期および第2心臓周期に関する、第1の1回拍出量および第2の1回拍出量を計算する工程;
該第1心臓周期および該第2心臓周期に関する、第1拡張期末体積および第2拡張期末体積を測定する工程;および
該第2の計算された1回拍出量と該第1の計算された1回拍出量との間の差を、該第2拡張期末体積と該第1拡張期末体積との間の差で除算することにより、心臓の増幅度を計算する工程
をさらに包含する、項目61に記載の方法。
(項目78)
以下:
体積および圧力の第2の積と体積および圧力の第1の積との間の、第1の差を計算する工程であって、該第2の体積および圧力が、該第1の体積および圧力の直後に測定される、工程;
該第1回と該第2回との間での、近位動脈における上記速度の倍率と積分との積である、増分1回拍出量の定量を計算する工程;
該第1測定値と該第2測定値との間の期間を計算する工程;
該増分1回拍出量と該期間との間の第3の積を計算する工程;および
該第1の差を該第3の積で除算することによって、駆出収縮性パラメーターを計算する工程
をさらに包含する、項目61に記載の方法。
(項目79)
心臓の1つ以上のパラメーターを測定するためのシステムであって、以下:
少なくとも1個のセンサと、少なくとも1個の作動装置であって、心臓周期間の選択した時間に、既知体積の流体を心臓の少なくとも1つの腔内に導入し、該心腔内における体積の変化を生じさせる作動装置、とを備える、カテーテル;
該作動装置に流体を供給するために、該カテーテルに結合された流体源;および
少なくとも1個のセンサにより感知されたデータを処理するための、カテーテルに結合されたプロセッサ
を備える、システム。
(項目80)
上記少なくとも1個のセンサが、圧力センサおよび体積センサのうちの少なくとも1つを含む、項目79に記載のシステム。
(項目81)
上記少なくとも1個のセンサが、心臓からの血流を測定するための少なくとも1個の流速センサと、心臓から伸びる血管内の圧力を測定するための血圧センサとをさらに含む、項目80に記載のシステム。
(項目82)
少なくとも1個の流速センサまたは圧力センサが、大動脈、肺動脈および環状動脈のうちの少なくとも1つにおける流速または圧力を測定するための位置に配置される、項目81に記載のシステム。
(項目83)
上記少なくとも1個のセンサが、少なくとも1個の水中聴音器を備える、項目79に記載のシステム。
(項目84)
上記少なくとも1個のセンサが、心臓の1つの腔内の距離を測定するための少なくとも1個の超音波変換器を備える、項目79に記載のシステム。
(項目85)
上記少なくとも1個の超音波変換器が、以下:
第1の超音波変換器対であって、上記変換器と心臓の腔の壁との間の第1の距離を測定するために、上記カテーテルの長軸方向軸と平行に該カテーテルに結合される、第1の超音波変換器対;
第2の超音波変換器対であって、心腔の壁までの第2および第3の距離を測定するために、該第1の変換器対から90°回転した向きで該カテーテルに結合される、第2の超音波変換器対;および
第3の超音波変換器対であって、心腔の壁までの第4および第5の距離を測定するために、該第1および該第2の変換器対から90°回転した向きで該カテーテルに結合される、第3の超音波変換器対
を備える、項目84に記載のシステム。
(項目86)
上記少なくとも1個の作動装置が、流体出口ポートおよび拡張可能なバルーンのうちの少なくとも1つを備え、該拡張可能なバルーンが、該流体を該バルーン内に導入することにより拡張可能である、項目79に記載のシステム。
(項目87)
心臓周期を測定するために、上記プロセッサと連結された心電図デバイスをさらに備える、項目79に記載のシステム。
(発明の簡単な要旨)
本発明の方法およびシステムは、様々な心臓パラメーターの測定を可能にする。方法は、心腔内の体積および/または圧力を変化させ、変化を測定し、変化に基づいて少なくとも1つの心臓パラメーターを計算する工程を包含する。システムは、一般に、少なくとも部分的に心腔内に配置され、少なくとも1個の作動装置および少なくとも1個のセンサを備えるカテーテルまたはその他のデバイスを備える。米国特許出願第10/734490号に記載されている類のモニタリングデバイスを使用することができ、この出願は、上記のとおり引用することにより本願に援用する。実施態様によっては、米国特許出願第60/442441号に記載されている類の埋め込み可能なデバイスも使用することができ、この出願は、上記のとおり引用することにより本願に援用する。実施態様によっては、このシステムは、コンピュータまたはその他のプロセッサなどの制御装置、外部作動装置、ECGデバイス、注入デバイスおよび/またはその他も備える場合がある。本発明の方法およびシステムは、心臓の状態を比較的正確に診断し、疾病の重大度、および治療法の介入に対して可能性のある反応を正確に確立し、患者特有の治療を決定するために使用される。
【0008】
本発明の一態様では、心臓性能パラメーターを測定する方法は、心臓周期時の選択した時に、心腔内の体積および圧力の少なくとも一方を変化させる工程と、体積の変化および/または圧力の変化に応じて生じる心腔の少なくとも1つの特性の変化を測定する工程と、測定した特性の変化が体積の変化または圧力の変化に対して占める割合に基づいて、心腔の少なくとも1つのパラメーターの計算する工程とを含む。様々な血行力学パラメーターの同様の測定は、心拍の変化、電気化学的結合、電子生理学的タイミング、および末梢血管の変化により変化が誘発された後に行うことができる。
【0009】
実施態様によっては、変化を生じさせる工程は、心拡張時に流体体積を心腔内に導入する工程を包含する。流体は、拘束されていても、拘束されていなくても良い。たとえば、流体体積の導入は、チャンバ内に配置されたカテーテル内の1個または複数の開口を介して、心腔内の流体を放出する工程を包含する。詳細には、流体体積の導入は、心腔内に配置されたカテーテルと結合する拡張可能なバルーンを膨張させる工程を包含する。たとえば、バルーンの膨張は、心臓の心収縮期時におけるバルーンの膨張、および心収縮期直後の心臓の心拡張時におけるバルーンの収縮を含む。別法によると、流体体積の導入は、心収縮期時に心腔内でバルーンを膨張させる工程と、心収縮期直後の心拡張時にバルーンを収縮させる工程と、心拡張時に、心腔内のある量の非拘束流体を解放する工程とを含む。たとえば、バルーンは、解放される流体体積の量に等しい体積だけ収縮する。別法によると、バルーンは、解放される流体の量を超える体積の分だけ収縮する。実施態様によっては、変化を生じさせる工程は、心拡張時に少なくとも1回、水中聴音器を作動させることを含む。水中聴音器は、任意の適切な周波数で作動するが、実施態様によっては、約200Hzの周波数で作動する。さらに他の実施態様は、拡張期充満期間の変化、および瞬間的または外因的に誘発される発作性心室頻拍症(「PVC」)によって生じる期外収縮後の増強作用に関連する測定を含む。さらに他の実施態様は、運動により誘発される変化、心拍の変化、および負荷または無負荷状態の測定、並びに電子生理学的または薬理学的刺激または介入に対する反応の予測を含む。
【0010】
任意に、ある方法では、心電図デバイスを使用して心臓周期を測定する工程をさらに含み、心臓周期時の選択時間は、心電図測定を使用して選択される。もう1つの実施態様では、この方法は、心腔内に配置されたカテーテル上の少なくとも1個のセンサを使用して、心臓周期を測定する工程を含み、心臓周期の選択時間は、センサの測定を使用して選択される。様々な工程のタイミングは、実施態様によって異なる。たとえば、一実施態様では、測定工程は、体積および圧力の少なくとも一方を変化させた直後に行われる。もう1つの実施態様では、測定工程は、体積または圧力の少なくとも一方の変化後に、心臓周期の少なくとも1部分の間に行われる。任意に、この方法は、一連の2つ以上の連続する心臓周期において、変化を生じさせる工程と、測定する工程と、計算する工程とをさらに含む。
【0011】
一実施態様では、変化の測定は、心腔内の少なくとも1回の圧力変化の測定を含む。たとえば、圧力の変化の測定は、拡張期末圧力の変化および収縮期末圧力の変化の測定を含む。こうした実施態様では、少なくとも1つのパラメーターの計算は、心臓の圧力の予備力を計算することを含み、この計算は、第1拡張期末圧力と第2拡張期末圧力との間の第1の差を計算し、第1拡張期末圧力と第2拡張期末圧力との間の第2の差を計算し、第1の差を第2の差で除算することを含む。この方法は、拡張期末圧力、収縮期末圧力および心臓圧力予備力の少なくとも1つを提供して、表示デバイス上に表示することを含む。たとえば、提供工程は、プロットの形態のデータであって、プロットの一方の軸上に少なくとも1つの拡張期末圧力、およびプロットの垂直軸上に少なくとも1つの収縮期末圧力を有するデータを提供することを含む。特性およびパラメーターは、心腔内で測定および計算されるが、一実施態様では、変化の測定は、左心室拡張期末圧力の変化、および左心室の収縮期末圧力の変化を測定することを含む。
【0012】
もう1つの実施態様では、変化の測定は、心腔内における少なくとも1つの体積の変化を測定する工程を包含する。たとえば、変化の測定は、拡張期末体積の変化および収縮期末体積の変化の測定を含む。実施態様によっては、パラメーターの計算は体積予備力の計算を含み、体積予備力の計算は、第1収縮期末体積と第2収縮期末体積との間の第1の差を計算する工程と、第1拡張期末体積と第2拡張期末体積との間の第2の差を計算する工程と、第1の差を第2の差で除算する工程とを含む。この方法は、任意に、拡張期末体積、収縮期末体積および体積予備力の少なくとも1つを提供し、表示デバイスに表示する工程を包含することができる。たとえば、この提供工程は、プロットの形態のデータであって、プロットの一方の軸上に少なくとも1つの拡張期末体積、およびプロットの垂直軸上に少なくとも1つの収縮期末体積を有するデータを提供することを含む。変化の測定は、実施態様によっては、左心室拡張期末体積の変化、および左心室収縮期末体積の変化を測定することを含む。
【0013】
実施態様によっては、変化の測定は、少なくとも1つの圧力の変化、および心腔内の少なくとも1つの体積の変化を測定する工程を包含する。変化の測定は、たとえば、拡張期末体積の変化および拡張期末圧力の変化の測定を含む。拡張期末モーメントは、心室体積が拡張期末において最大である時に、体積センサを使用して決定される。この実施態様では、この方法は、少なくとも1つの体積がプロットの一方の軸上にあり、少なくとも1つの体積がプロットの垂直軸上にあるプロットとして圧力および体積データを提供する工程を包含する。少なくとも1つのパラメーターの計算は、心腔の拡張性硬度を計算する工程を含み、この工程は、第2拡張期末圧力と第1拡張期末圧力との間の第1の差を計算する工程と、第2拡張期末体積と第1拡張期末体積との間の第2の差を計算する工程と、第1の差を第2の差で除算する工程とを含む。この方法は、体積、圧力および拡張性硬度の少なくとも1つを提供し、表示デバイスに表示する工程を包含する。もう1つの実施態様では、少なくとも1つのパラメーターの計算は、心腔の拡張性コンプライアンスを計算する工程を含み、この工程は、第2拡張期末体積と第1拡張期末体積との間の第1の差を計算する工程と、第2拡張期末圧力と第1拡張期末圧力との間の第2の差を計算する工程と、第1の差を第2の差で除算する工程とを含む。様々な実施態様で、これらの方法は、体積、圧力および拡張性コンプライアンスの少なくとも1つを提供し、表示デバイスに表示する工程をさらに含む場合がある。
【0014】
さらにもう1つの実施態様では、変化の測定は、収縮期末体積の変化および収縮期末圧力の変化を測定する工程を包含する。収縮期末モーメントは、心室体積が収縮期末において最低である時に、体積センサを使用して決定される。実施態様によっては、少なくとも1つの体積がプロットの一方の軸上にあり、少なくとも1つの圧力がプロットの垂直軸上にあるプロットとして、体積および圧力データを提供する工程をさらに含む。少なくとも1つのパラメーターの計算は、一実施態様では、心腔の変力性硬度を計算する工程を含み、この工程は、第2収縮期末圧力と第1収縮期末圧力との間の第1の差を計算する工程と、第2収縮期末体積と第1収縮期末体積との間の第2の差を計算する工程と、第1の差を第2の差で除算する工程とを含む。この方法は、体積、圧力および変力性硬度の少なくとも1つを提供して、表示デバイス上に表示する工程も含む場合がある。
【0015】
もう1つの実施態様では、少なくとも1つのパラメーターの計算は、心腔の変力性コンプライアンスを計算する工程を含み、この工程は、第2収縮期末体積と第1収縮期末体積との間の第1の差を計算する工程と、第2収縮期末圧力と第1収縮期末圧力との間の第2の差を計算する工程と、第1の差を第2の差で除算する工程とを含む。やはり、体積、圧力および変力性コンプライアンスの何れかを提供して、表示デバイスに表示する工程を包含する。
【0016】
もう1つの実施態様では、測定および計算工程は、少なくとも2つの心臓周期の間に心腔ないおよび圧力および体積を連続的に測定し、第1の心臓周期は、変化を生じさせる工程の前に行われる工程と、体積が、変化を生じさせる工程により増加する時に、圧力と体積との積の第1の積分を計算する工程と、体積が減少する時に、圧力と体積との積の第2の積分を計算する工程と、第2積分を第1積分から減算することにより、心腔の心筋仕事量を計算する工程とを含む。任意に、この方法は、第1心臓周期における第1心筋仕事量を計算する工程と、第2心臓周期における第2心筋仕事量を計算する工程と、第1心臓周期における第1拡張期末圧力および第に心臓周期における第2拡張期末圧力とを測定する工程と、第2心筋仕事量と第1心筋仕事量との間の差を、第2拡張期末圧力と第1第1拡張期末圧力との間の差により除算する工程とをさらに含む。こうした方法は、本体の表面積を計算する工程と、心筋予備力を本体表面積により除算して、心筋予備力を計算する工程とをさらに含む。心筋仕事量は、心臓の左心室および心臓の右心室、またはその他の何らかの室に関して計算される。
【0017】
さらにもう1つの実施態様では、上記の方法は、心腔から流出する血液の少なくとも1回の流速の変化であって、体積および/または圧力の変化に対応して生じる変化を測定する工程と、測定した流速の変化が体積および/または圧力の変化に占める割合に基づいて、心腔の少なくとも1回の流速に関連するパラメーターを計算する工程とをさらに含む。こうした実施態様では、流速の変化の測定は、大動脈内で少なくとも1回の流速を測定する工程を包含する。別法によると、流速の変化の測定は、少なくとも1つの肺動脈内の少なくとも1回の流速を測定する工程を包含する。
【0018】
一実施態様では、流速関連パラメーターの計算は、流速を測定する心臓の少なくとも1回の1回拍出量を計算する工程を含み、この方法は、心臓の第1心拍出量を概算する工程と、心臓の脈拍数を測定する工程と、第1心拍出量を心拍で除算して第1の1回拍出量を計算する工程と、多数の心臓周期における流速の第1積分を計算する工程と、第1積分を心臓周期の数で除算して第2の1回拍出量を計算する工程と、第1の1回拍出量を第2の1回拍出量で除算して張りを計算する工程と、選択された心臓周期時に、流速の選択した積分を計算する工程と、選択した積分に倍率を乗算して、選択した1回拍出量を計算する工程とを含む。実施態様によっては、第1心拍出量は、フィック(Fick)の方法および希釈法の少なくとも一方を使用して概算する。実施態様によっては、この方法は、選択1回拍出量を選択心臓周期の持続時間で除算して、選択心拍出量を決定する工程をさらに含む。この校正手順の目的は、カテーテルシステムが、各々の心臓周期の1回拍出量および有効心拍出量を測定することを可能にすることである。フィックまたは希釈による現在の方法は、多くの心拍出量を平均する。したがって、こうした実施態様は、たとえば、体表面積を測定する工程と、選択心拍出量を体表面積で除算して心臓指数を計算する工程とをさらに含む。
【0019】
実施態様によっては、第1および第に心臓周期における第1の選択心拍出量および第2の選択心拍出量を決定する工程と、第1および第2心臓周期における第1拡張期末圧力および第2拡張期末圧力を測定する工程と、第2および第1の選択心拍出量の差を第2および第1拡張期末圧力の差で除算して心臓予備力を計算する工程とをさらに含む。たとえば、この方法は、対表面積を測定する工程と、計算された心臓予備力を体表面積で除算して、心臓予備力指数を計算する工程とをさらに含む。
【0020】
一実施態様では、この方法は、第1および第2心臓周期における第1の1回拍出量および第2の1回拍出量を計算する工程と、第1および第2心臓周期における第1拡張期末圧力および第2拡張期末圧力を測定する工程と、第2および第2の計算1回拍出量間の差を第2および第1拡張期末圧力間の差で除算して、行程予備力を計算する工程とをさらに含む。この方法は、対表面積を測定する工程と、計算した1回拍出量予備力を体表面積で除算して、1回拍出量予備力指数を計算する工程とをさらに含む。この方法は、任意に、心臓に隣接する少なくとも1つの流出動脈内の平均収縮期圧力を測定する工程と、心腔内の平均拡張期圧力を測定する工程と、平均心拍出量と平均拡張期圧力との間の差を計算する工程と、この差に1回拍出量を乗じて1回仕事量を計算する工程とをさらに含む。
【0021】
実施態様によっては、この方法は、第1および第2心臓周期における第1の1回仕事量および第2の1回仕事量を計算する工程と、第1および第2心臓周期における第1拡張期末圧力および第2拡張期末圧力を測定する工程と、第2および第1の計算された1回仕事量間の差を第2および第1拡張期末圧力間の差で除算して、1回仕事量予備力を計算する工程とをさらに含む。この方法は、任意に、体表面積を計算する工程と、計算された1回仕事量予備力を体表面積で除算して、1回仕事量予備力指数を計算する工程とをさらに含む。この方法は、心収縮後の増強作用およびその能力を測定して、心筋予備力を概算する工程も含む。
【0022】
上記の実施態様では、少なくとも1つの流出動脈は大動脈、少なくとも1つの肺動脈、または任意のその他の適切な流出動脈である。上記の実施態様は、任意に、1回仕事量を心筋仕事量で除算して、心臓効率を計算する工程をさらに含む。
【0023】
一実施態様では、方法は、第1および第2心臓周期における第1の1回拍出量および第2の1回拍出量を計算する工程と、第1および第2心臓周期における第1拡張期末体積および第2拡張期末体積を測定する工程と、第2および第2の計算1回拍出量間の差を第2および第1拡張期末体積間の差で除算して、心臓の増幅度(cardiac amplification)を計算する工程とを含む。
【0024】
本発明のもう1つの態様では、心臓の1つまたは複数のパラメーターを測定するシステムは、少なくとも1個のセンサおよび少なくとも1個の拡張可能な要素を備えるカテーテルを備え、カテーテルは、通常、心臓周期の選択した時に心臓の少なくとも一方の室内に拘束または非拘束流体を導入し、心腔内の体積を変化させるための作動装置と、カテーテルに結合されて、流体を作動装置に供給するための流体源と、カテーテルに結合され、少なくとも2個のセンサが感知したデータを処理するためのプロセッサとを含む。実施態様によっては、センサは、圧力センサおよび体積センサの少なくとも一方を備える。任意に、センサは、心臓から流れる血液を測定するための少なくとも1個の流速センサと、心臓から延在する血管内の圧力を測定するための血圧センサとをさらに備える。別法によると、カテーテルは、心腔変形手段、たとえば心腔を外側に偏向させるか、さもなければ機械的に再整形して、圧力の変化または体積の変化を誘発するためのプッシャなどを備えることができる。一実施態様では、流速計は、心腔の膨張性を測定するために備えられる。
【0025】
実施態様によっては、流速センサまたは圧力センサは、大動脈および肺動脈の少なくとも一方の流速または圧力を測定する位置に配置される。実施態様によっては、少なくとも1個のセンサは水中聴音器を備える。実施態様によっては、センサは、心室内の距離を測定するための少なくとも1個の超音波変換器を備える。実施態様によっては、たとえば、超音波変換器は、カテーテルの長手方向軸と平行にカテーテルに結合され、変換器と心腔壁部との間の第1の距離を測定するための第1の超音波変換器対と、第1の変換器対から90°回転した向きでカテーテルに結合され、心腔壁部までの第2および第3の距離を測定するための第2の超音波変換器対と、第1および第2の変換器対から90°回転した向きでカテーテルに結合され、心腔壁部までの第4および第5の距離を測定するための第3超音波変換器対とを備える。
【0026】
作動装置は、システムに使用するのに適するもので良い。たとえば、作動装置は、少なくとも1個の流速出口ポートと、拡張可能なバルーンとを備え、拡張可能なバルーンは、流速をバルーン内に導入することにより拡張可能である。実施態様によっては、システムは、プロセッサに結合されて心臓周期を測定するための心電図デバイスをさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の原理によるカテーテルベースの心臓性能モニタリングシステムを示す。
【図2】図2は、図1によるシステムの略図であり、システムの様々な構成部品の界面を含む。
【図3】図3は、複数のセンサおよび作動装置を有し、本発明の一実施態様によるカテーテルを所定の位置に有する患者の心臓を示す。
【図4A】図4Aは、いくつかの実施態様による本発明の原理に基づく誘導圧力/体積曲線を示す。
【図4B】図4Bは、いくつかの実施態様による本発明の原理に基づく誘導1回仕事量/圧力曲線を示す。
【図5A】図5Aは、本発明の原理によるいくつかの実施態様による誘導圧力/体積変化曲線を示す。
【図5B】図5Bは、1回仕事量/圧力曲線における図5Aによる誘導変化を示す。
【図6】図6は、経時的な心腔内の圧力の変化であって、本発明の原理に基づく作動装置により誘導された変化を示す。
【図7】図7は、本発明の原理に基づくローパスフィルタを通過した後の図7に示すデータを示す。
【図8】図8は、本発明の原理に基づくハイパスフィルタを通過した後の図6および図7に示すデータを示す。
【図9】図9は、本発明の原理に基づく図6〜図8に示すデータから導かれた経時的な心腔の硬度を示す。
【図10】図10は、本発明の一実施態様に使用される複数の超音波変換器を有するセンサを示す。
【図11】図11は、患者の心臓の所定の位置にあるカテーテルであって、図10に示す超音波センサを有するカテーテルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
本発明は、1つまたは複数の患者のパラメーター、特に心臓性能パラメーターをモニタリングするための方法、システムおよび装置を目的とする。本発明の装置は、一般に、1個または複数のセンサおよび1個または複数の作動装置を有するカテーテルを備える。こうした1つのカテーテルは、たとえば、米国特許出願第10/734490号「血行力学パラメーターをモニタリングおよび処理するための方法およびシステム」(Method and System for Monitoring and Treating Hemodynamics Parameters)に記載されており、この出願は、引用することにより本願に援用する。本発明のシステムは、一般に、カテーテル、外部作動デバイスおよび制御装置を備える。実施態様によっては、システムは、カテーテルに関連して使用される心電図(ECG)デバイス、その他の類似心臓モニタリングデバイス、サーミスタ、心拍出量測定コンソール、注入デバイス、心音図デバイスなども備える場合がある。さらに、実施態様によっては、米国特許出願第10/734490号「遠隔血行力学的モニタリングのための方法およびシステム」(Method and System for Remote Hemodynamic Monitoring)に記載されているモニタリングデバイスの類の1個または複数の埋め込み可能なデバイスを使用し、この出願は、上記のとおり引用することにより本願に援用する。本発明の方法は、一般に、心臓の特性を変化させる工程と、変化を測定する工程と、変化に基づいて心臓パラメーターを計算する工程とを含む。
【0029】
次に図1を参照すると、本発明の原理に従って構成された例示的なシステム100は、患者Pの心臓H内に配置されたカテーテルデバイス102と、カテーテルデバイス102と結合された制御装置108と、制御装置108およびカテーテルデバイス102と結合された外部作動装置110とを備える。以下で詳細に説明するとおり、カテーテルデバイス102は、一般に、1個または複数のセンサ104と、1個または複数の作動装置とを備え、心臓Hまたは脈管構造内の適切な位置に配置することができる。センサ104は、心臓機能に特徴的な様々な生理学的パラメーターを測定するように構成され、作動装置106は、一方の室、複数の室、または心臓H内のその他の領域もしくは心臓Hの周囲に変化を生じさせるように構成される。制御装置108は、一般に、センサ104からデータを受信し、さらに、カテーテル102の様々な構成要素、および外部作動装置110を作動させる。制御装置108は、ECGデバイスなどのその他の様々な構成要素からもデータを受信する。外部作動装置110は、一般に、制御装置108からの命令を介して、カテーテル102上の1個または複数の作動装置106を作動させる。
【0030】
本発明によるシステムは、特殊機器および既製機器の両方を含む様々な特定の形態を取ることができる。図1に示す構成要素は結合されるか、および/または追加の構成要素がシステム100に追加される。通常、カテーテルデバイス102は、本発明の原理に従って特に製造されるが、場合によっては、現在市販されているか、または将来市販されている比較的従来のセンサデバイスを使用することが可能である。さらに、外部制御装置108または外部作動装置110は、少なくとも部分的に市販の機器を備える。多くの場合、汎用コンピュータおよびワークステーションは、システムおよび本発明の多くの機能および計算を実行するようにプログラムされる。
【0031】
次に、図2を参照すると、図1に示したシステム100の様々な構成要素、およびECGデバイス210が示されており、矢印は、いくつかの実施態様において、データがシステム100の各構成要素間で流れる方向を指示する。たとえば、データは、1個または複数のセンサを作動させるデータなど、制御装置108からカテーテル102に流れ、エネルギーは、制御装置108からカテーテル102などに伝送される。その結果、カテーテル102は、感知したデータを制御装置108に伝送する。外部作動装置110は、カテーテル102上の1個または複数の作動装置がいつ作動するべきかを外部作動装置に指示するデータを制御装置108から受信する。ECGデバイス112は、制御装置108により作動し、心臓データを制御装置108に提供し、制御装置108は、これらのデータを使用して、システム100のその他の構成要素を作動させる。全体として、システム100の何らかの適切な構成要素間の適切な接続性、およびデータ、エネルギーなどの伝送は、本発明の範囲内であると考える。
【0032】
外部制御装置108は、直接的なユーザ入力/出力機能を提供し、つまり、スクリーン、プリンタインターフェース、読み/書きデータ記憶機能などを備える。任意に、外部制御装置108は、さらに他のコンピュータ、ワークステーション、またはユーザと直接的にインターフェースして、入力/出力機能を提供するその他のデバイスを必要とする。あらゆる場合に、外部制御装置108は、ライン120として大まかに示すデータ入力/出力接続部を提供する。
【0033】
次に、図3を参照すると、心臓H内に配置するためのカテーテル102は、様々な形態を取る。やはり、本発明の方法に使用される例示的なカテーテルの詳細な説明については、米国特許出願第10/734490号「血行力学的パラメーターをモニタリングおよび処理するための方法およびシステム」(Method and System for Monitoring and Treating Hemodynamic Parameters)を参照し、この出願は、上記のとおり、引用することにより本願に援用する。その他の実施態様では、その他のカテーテルを使用するか、および/または複数のカテーテルを同時に使用するか、または組み合わせて使用する。カテーテル102は、任意の適切な位置に配置することができる。図3では、カテーテル102は、大動脈を通って降下して心臓Hの左心室内に流入し、センサは、大動脈および左心室の両方に存在する。別法によると、カテーテルは、心臓の右側に配置され、センサは複数の心腔内に配置され、作動装置は大動脈、肺動脈または下大静脈などの中に配置することができる。したがって、カテーテル102は左心室内に示され、以下では左心室機能に関して説明する場合が多いが、本発明のカテーテル102およびシステム100は、心臓および/または心臓を支持する構造の適切な部分に配置することができる。
【0034】
カテーテル102は、一般に、センサおよび作動装置の任意の適切な組合せを備え、センサおよび作動装置は、カテーテル102に沿って任意の所望の位置に配置される。図3では、たとえば、センサは、流速センサ130、導電センサ131、線形アレイ上に配列された複数の圧力センサ132、複数の超音波変換器を有する回転立方体を備える超音波センサ134、および水中聴音器138を備える。また、カテーテルには作動装置が備えられ、この作動装置は、体積作動装置、圧力作動装置などを含む。体積作動装置は、1個または複数の注入ポート、1個または複数の流体吸入ポート、膨張可能なバルーン、これらの組合せなどを含む。実施態様によっては、1個または複数のサーミスタも備える場合がある。
【0035】
本発明の方法は、一般に、心臓または心腔の特性を変化させる工程と、変化を測定する工程と、測定した変化に応じて変化するパラメーターを計算する工程とを含む。多くの場合、変化した特性は圧力もしくは体積の何れか、またはその両方であり、こうした変化は、一般に、カテーテル上の1個または複数の作動装置により誘発される。当然、特定の手順または方法では、複数の変化および/またはその他のタイプの変化が誘発および測定され、複数のパラメーターが計算される。こうして変化するその他のタイプの特性は、流速、酸素含有量、二酸化炭素などのその他の適切な気体の含有量、室または壁圧などの寸法、温度などが挙げられるが、これらだけに限らない。計算された1つまたは複数のパラメーターは、多くの場合、患者の心臓機能および性能に関する貴重な診断情報を提供し、医師が、正確な診断を下し、患者Pを薬学的に、デバイスの介入により、外科手術により、またはこれらを組み合せずに、またはこれらの組合せにより治療するかどうかなど、患者特有の治療を決定することを可能にする。
【0036】
実施態様によっては、カテーテルシステムは、心臓周期全体の心臓の様々な特性を測定するために使用され、心室の体積および圧力を変化させて、この変化に対する即時かつ周期的な反応を測定する。いくつかの心筋特性は、作動手段に対する単一の点における反応、つまり1つのパラメーターの変化が、作動手段により誘発されたその他のいくつかのパラメーターの変化に占める割合により説明される。たとえば、室のコンプライアンスは、たとえば、心室体積の変化により誘発された心室内圧の即時的な変化である。さらに他の例である大動脈弁の勾配予備力は、最大大動脈流の位置で測定した最大大動脈弁横断圧力勾配の変化であり、この変化は、LVEDPの変更から生じる。その他の心臓特性は、2つの異なる「初期」条件の後の心臓の周期的な出力により表現される。これに関連して、「初期条件」は、心室が収縮を開始する時点である拡張期末における心室(またはその他の心腔)内に存在する条件として定義される。心臓予備力は、たとえば、LVEDP内の増加により誘発される心拍出量の増加である。同様に、本発明の方法は、多数の心臓特性の「予備力」を駆動するために使用される。これに関連して、「予備力」は、誘導条件の変化による特性の変化を表す。
【0037】
たとえば、一実施態様では、カテーテルは、左心室の圧力および体積をリアルタイムで測定するために使用される。カテーテルは、大動脈を通る血液の流速をリアルタイムで測定することも可能である。これらの測定結果から、カテーテルシステムは、拡張期末体積LVEDV、左心室収縮期末圧力 LVESP、左心室拡張期末体積LVESV、サイクル時間(心拍)、時間の変化で除算した圧力の変化(dP/dt)、僧坊弁、および/または各々のサイクルの心臓の駆出分画を計算することができる。システムは、カテーテルにより感知されたデータに基づいて、左心室の圧力−体積ループを計算、表示および記録することもできる。任意の右カテーテルは、使用する場合、右心房および/または右側心室内圧を同時に測定することを可能にする。これらの測定では、システムは、各々のサイクルに関する肺血管抵抗(PVR)および体血管抵抗(SVR)を決定するために使用される。
【0038】
本発明の方法は、一般に、心腔内の体積または圧力を変化させる工程も含む。こうした変化および変化の測定を行うことにより、様々な心臓パラメーターを測定して、正確な心臓の診断および特性化を促進することができる。一実施態様では、カテーテルは、心拡張時に心室に流体を追加して、拡張期末圧力および体積を増加するために使用される。別法により、または付加的に、心室内に配置されたバルーンは、心拡張時に膨張または収縮して、拡張期末圧力および圧力制御装置を調節することができる。もう1つの実施態様では、水中聴音器の送信機を使用して、心腔内の体積を変更する。水中聴音器などの作動装置は、水中聴音器などの作動装置は、毎秒100回以上の迅速な速度で体積の変化を生じさせるために使用される。さらに他の実施態様では、上記の方法の1つに追加して、または単独で、心臓の後負荷が変更される。たとえば、大動脈内に配置された膨張可能なバルーンは、後負荷を増加するために膨張される。同様に、予荷重は、下大静脈または右心房内に配置された膨張可能なバルーンなどの装置を使用して変更される。最後に、心臓の初期条件は、様々な薬剤を血流中に注入するか、たとえば生理食塩水の袋を上昇させることにより患者を訓練するか、または一般に、通常の拡張期末体積未満の体積を有する前心室収縮(PVC)、および一般に、通常の拡張期末体積を超え、収縮がより活発なPVC直後の周期を生じさせることにより薬学的に変更することができる。この後者の方法、つまりPVCに対する心臓の反応は、周期ごとに1回拍出量を測定する能力の値を示す。多くの適切な方法は、心臓の一方または複数の心室内において体積および/または圧力の変化を生じさせて、有用な心臓パラメーターデータに達するために使用される。
【0039】
心腔内において体積または圧力の変化を生じさせ、変化により生じるパラメーターの変化を測定し、変化に基づいてパラメーターを計算することにより、本発明の方法は、患者の心臓を定量的に特徴付けるのを促進するために使用される。たとえば、1回拍出量の増加が拡張期末圧力の増加に占める割合を計算することにより、システムは、心臓予備力の測定結果を計算する。もう1つの実施例では、心臓の増幅度と呼ばれるパラメーターは、1回拍出量の増加が拡張期末体積の増加に占める割合として測定される。さらにもう1つの実施例では、コンプライアンスの連続的な測定は、体積の変化により生じる圧力の変化の割合を計算することにより得られる。
【0040】
上記のとおり、センサの適切な組合せは、本発明のカテーテルに沿って配置され、多くの適切な心臓パラメーターの何れかを測定する。たとえば、絶対圧力は、1個または複数のセンサにより測定される。こうした圧力センサは、たとえば、ある実施態様では少なくとも100Hzの周波数反応を有する。一実施態様では、少なくとも1個の圧力センサはカテーテルの遠位の端部に位置し、第2の圧力センサはカテーテル上に位置して、センサを大動脈弁に隣接して配置することを可能にし(カテーテルが左心室内に配置された場合)、第3の圧力センサは、患者の体外に配置されて、大気圧を検知する。その他の実施態様では、第3の大気センサは省略され、大気圧は、その代わりに外部の計算デバイス(インターフェース「ボックス」)上で測定されるか、追加のセンサが追加されるか、またはセンサの位置が変更されるなどが行われる。実施態様によっては、たとえば、1個または複数のセンサを使用して、呼吸時に変化する経胸腔圧を測定し、これは、タンポン充填を診断する時に特に重要であり、または比較的微細な大動脈弁の圧較差および大動脈弁と左心室内との圧格差を測定し、これは、大動脈弁狭窄症(AS)、肥大性閉塞性心筋症(HOCM)、および肥大性非閉塞性心筋症(HNOCM)を区別して診断する場合に特に重要である。
【0041】
左心室などの心腔の体積の測定は、様々なセンサおよび方法のどれでも行うことができる。一実施態様では、互いに直交して実装された6個の超音波変換器を備えるセンサを使用して、心臓が取る卵形の湾曲の直交する6個の半径を測定する。これらの測定は、心臓周期ごとに1回、または1秒ごとに複数回でも、心室体積の複数の概算を決定するために使用される。別法による実施態様は、位相アレイ超音波システムを使用して、心臓周期全体において心腔の軸に沿った複数の位置で心腔の断面積を測定し、テイラー(Taylor)の定理を使用して体積の測定結果を計算する。もう1つの実施態様は、既知の量の染料または導電性液体の放出を利用して、液体の濃度を測定して、希釈された血液の体積を概算する。さらに他の方法は、心室内の血液の導電性を測定する工程を含み、これは、一般にコンダクタンス体積記録法と呼ばれる。
【0042】
本発明のカテーテルおよびシステムは、心拍出量を計算するために使用され、心拍出量は、多数の周期に関して平均される。こうした計算は、任意の適切な方法を使用して行われ、たとえば熱希釈、染料希釈、伝導希釈、または酸素消費量を使用するフィック(Fick)の方法が挙げられる。
【0043】
測定されるもう1つのパラメーターは、血流速度、たとえば大動脈または1つまたは複数の肺動脈内の血流速度である。任意の適切な測定方法を使用することができ、剪断力測定、ピトー管法(停滞流対動的流)、ドップラー超音波、または開示されていないその他の任意の適切な方法が挙げられる。心臓周期全体の血流速度を統合することにより、システムは、各々の周期の1回拍出量を導くために使用され、次に、測定した心拍と共に周期ごとの1回拍出量を使用して、周期ごとの心拍出量を計算する。この心拍出量の周期ごとの値は、心拍出量測定システムを使用して校正される。
【0044】
多くの実施態様では、カテーテルは、作動装置106を介して流体を導入および/または除去することにより、心腔内の体積および/または圧力を変更する能力を有する。実施態様によっては、流体は、心拡張時に導入および/または除去して、拡張期末圧力および/または体積を変化させることができる。その他の実施態様では、作動装置106は、心臓の周期全体で繰返し同量を迅速に膨張もしくは収縮するか、または導入および除去することができる。実施態様によっては、こうした迅速な導入/除去は、100Hzを超え、1000Hz未満の速度で生じるが、その他の速度も本発明の範囲内で意図されている。一実施態様では、外部の体積作動装置110、たとえばポンプはカテーテル102と結合し、導入および/または除去機能を果たす。別法によると、外部作動装置110は、多量の流体を導入するか、または抜き取り、カテーテル上の作動装置106は、比較的高周波数変調を行う。
【0045】
上記のとおり、デバイスおよび本発明の方法の様々な実施態様は、1個または複数の作動装置および1個または複数のセンサの任意の適切な組合せを含む。たとえば、1個の圧力センサ104と、外部作動装置110に結合された1個の作動装置106とを含むカテーテルを使用して、左心室収縮期末圧力の増加および左心室拡張期末圧力の増加を測定する。この測定は、心臓予備力を特性化するための1つの手段で、上記で圧力予備力と記載した手段を提供する。したがって、心臓パラメーターを測定および計算するための特定のシステム、デバイスおよび/または方法に関する上記および以下の説明は、何れの方法でも本発明の範囲を制限するものであると解釈すべきではなく、例示的な目的でのみ記載するものである。
【0046】
作動装置106は、心臓周期の1つまたは複数の正確な時期に心腔内の圧力および/または体積を変更するために使用される。一実施態様では、作動装置106は、流体(気体または液体)を室内に、または室内から供給することにより、こうした変更を行う。供給は、作動装置106内の1個または複数の開口を介するなど、室内への流体の直接的な供給を含む。別法によると、流体は、膨張可能なバルーンまたは類似の構造を介して導入される。流体を供給および/または抜き取るタイミングは制御装置108により調整され、制御装置108は、1個または複数のセンサ104、任意のECGシステム112および/またはその他からのデータを使用する。制御装置108は、その他のディジタル信号処理、メモリおよび表示機能も実行する。表示装置は、1つまたは複数の新規なパラメーターを医師またはその他のユーザに提示するために使用され、こうしたパラメーターとしては、様々な特性および以下に記載する予備力パラメーターを含むが、これらだけに限らない。
【0047】
心拍出量および心室内圧などの多くの既知の心臓パラメーターのほかに、カテーテルデバイスおよび本発明の方法は、以前に測定されなかったその他のパラメーターを測定する。次に、これらのパラメーターのいくつかをまとめる表(表1)を示す。その他のパラメーターも測定または計算することができ、たとえば、パラメーターの逆数、特定の室または弁に関するパラメーターの使用などが挙げられる。したがって、以下の表は網羅的ではない。
【0048】
(表1)
【0049】
【表1−1】

【0050】
【表1−2】

【0051】
【表1−3】



本発明の原理に基づく心臓パラメーターを測定および計算するための方法のいくつかについて、以下で説明する。これらの方法は、添付の請求の範囲に記載するように、本発明により採用される方法の網羅的なリストではない。
【0052】
(左心室拡張期末圧力(LVEDP)、左心室収縮期末圧力(LVESP)および大動脈圧(AOP)を決定する例示的な方法)
一実施態様では、カテーテル102は、左心カテーテル挿入手順に使用され、したがって、左心室に関連する心臓パラメーターを測定する。しかし、その他の方法は、心臓のその他の室に関して最適化され、その結果、心臓の他の3個の室の1つまたは複数のパラメーターを測定する。したがって、LVEDPおよびEDP(拡張期末圧力)は、この用途で交互に使用されることもあり、つまり、LVEDPは単にEDPの一実施例だからである。
【0053】
一実施態様では、LVP(左心室内圧)は、微細加工された圧力センサであって、カテーテルに取り付けられて、左心室内に導入される圧力センサを使用して測定される。別法による実施態様では、外部圧力センサは、カテーテル内の内腔により、左心室の体液に水力学的に連結される。同様に、AOPは、いくつかの実施態様では、カテーテルに取り付けられた第2の微細加工圧力センサを使用して測定される。別法による実施態様では、AOPは、第1の微細加工センサか、または大動脈に水力学的に連結された外部圧力センサを使用して測定される。
【0054】
LVEDPを決定する1つの方法は、左心室体積(LVV)が最大である時、つまり心室がほぼ収縮している時点の左心室内圧(LVP)を記録することである。別法による方法は、心電図(ECG)のQ−R−S複合体の「R」波でLVPを記録する工程を包含する。もう1つの別法による方法は、左心室内圧を連続的にモニタリングし、パターン認識アルゴリズムを使用して、適時の変化で除算された圧力の変化がゼロ(dP/dt=0)に等しく、dP/dtが最大になる直前のdP/dtが>0である時の圧力を発見する工程を包含する。LVEDPを決定するためのさらに他の別法による方法は、「第1」心音「S1」が停止した時の圧力を測定することであり、これは、僧坊弁が閉鎖した時に生じる。心音を得るには、圧力センサを使用して毎秒約2000回(またはその他の任意の周波数)で圧力信号を抽出し、血圧の増加に対応する比較的低周波数成分を濾波する。別法によると、カテーテルは、弁から発信する音響信号、分路を生じる心臓内欠陥、逆流性傷害などをモニタリングするための専用の水中聴音器を使用する。
【0055】
LVESPを決定する1つの方法は、LVVが最低である時のLVPを記録することであり、これは最低左心室体積の点である。LVESPを決定するもう1つの方法は、大動脈内の血流速度が、最大正数に達した後に最初にゼロになる時のLVPを記録することであり、これは、血液が大動脈内に流入するのを停止する点である。これらの2つの値の間の著しい差は、大動脈弁が閉鎖した後、僧坊弁逆流(または分路を通って右側に至る流れ)を定量化することを可能にする。別法による方法は、ECG上の「T」波がちょうど終了した時のLVPを記録することである。これらの3つの方法で測定した圧力は、ほぼ同じ結果を与えるはずであり、したがって、相違の比較は、生理学的異常性を指示するのに役立つ。もう1つの別法による方法は、逆流分画する工程を包含する。
【0056】
(左心室拡張期末体積を決定するための方法)
LVEDVを決定するために現在使用されている1つの方法は、心臓の1つまたは複数のX線画像、および電子カーソルを使った心室周囲の手動描画を使用する。次に、これらの輪郭は、拡張期末における心臓体積の概算を計算するための実験に基づく公式と関連して使用される。この技術は厄介かつ時間がかかるため、多数の拡張期末体積を概算する点では実行不可能である。さらに、心臓のわずか1つまたは2つの投影を使用するにすぎないため、この測定では、重大な誤差が考えられる。さらに、体積を計算するためのこうした技術に使用される公式は、真の体積を正確に反映するわけではない。
【0057】
もう1つの現在使用されている技術は、外部超音波変換器を使用して、全体の心臓を撮像し、体積の測定も行う。これは、かなり正確な技術であるが、超音波変換器は体外にあるため、圧力を測定し、拡張期末圧力を変化させることを同時に行うことはできない。さらに、すべての患者が、経胸腔的に超音波撮像システムに敏感に反応する生体構造を有するとは限らない。にも関わらず、この方法は、体積測定機能を備えないカテーテルと組み合わせて(同時に)使用することができる。
【0058】
本発明の一実施態様では、心腔などの体腔の体積を測定する方法は、図10に示すように、互いに直交して実装される6個の超音波変換器の使用を伴う。2個の変換器は、カテーテルと平行に実装され、カテーテルの軸に垂直な距離を測定する。他の4個の変換器は、第1対のセンサから軸方向に90°回転する表面であって、さらに上方または下方に45°傾斜する表面上に対として実装される。したがって、後者の4個の変換器は、互いにすべて直交する4方向に、変換器と心腔壁との間の距離を測定する。この構成を表すもう1つの方法は、各々が立方体の面上に実装された6個の変換器の構成である。次に、立方体は、1つの面の周囲で約45°回転し、カテーテル本体上に実装される。カテーテルの製造を容易にし、しかもスリムな輪郭を維持するには、立方体は「分解」することができ、つまり変換器の対は必ずしも隣接する必要はない。変換器組立体は、膨張可能または拡張可能な組立体の一部でもあり、測定時に多少は心室内に投影される。
【0059】
心室体積を測定するための別法による方法は、カテーテル周囲に円形電極、つまりリングを備える位相アレイ超音波撮像システムを使用することである。これらのリングは、互いにわずかに位相不一致状態で励起され、波をカテーテルの垂線に対して上または下に送信する。リングに帰る信号は、カテーテルからリングの様々なセグメント内の心室壁までの距離に応じて、時間の経過と共に配信される。したがって、反射信号の経時的な振幅は、カテーテルと心腔壁との間の様々な半径方向距離に対応する。非常に短期間で、法線から様々な角度で多数の測定を行う時に、システムは心室の複数回の断面積測定を行い、これらの結果は、体積を概算するためのテイラーの方法(外部の超音波アレイを使用して行われる方法に類似)を使用して加算される。心室体積を測定するさらに第3の方法は、平行な各々の対が互いに垂直な2対の平面位相アレイセンサを使用することであり、その結果、カテーテルの4つの側部には、位相アレイ変換器が実装される。各々のセンサは、上記のとおり、壁部までの距離を測定し、変換器からある一定の角度で、心室壁部までの4つの半径を測定する。
【0060】
LVEDVを概算する1つの方法は、LVVが最大である時点で、上記の方法のどれかを使用してLVVを測定して記録することである。別法による方法では、カテーテル上の電気コンダクタンスセンサのアレイは、心室内血液の平均コンダクタンスを決定するために使用される。既知および異なる導電性を有する液体の体積は、心拡張時に左心室内に分散する。拡張期末時、および心収縮期時では、心室内の伝導性がモニタリングされる。これらの測定は、心室内血液の希釈された電気コンダクタンスの概算を生成する。次に、注入血液の体積(V)、注入血液の電気コンダクタンス(k)、および希釈血液のコンダクタンス(k)が分かると、以下の方程式を使用して拡張期末体積を計算することができる。
【0061】
【化1】



拡張期末体積を概算するもう1つの方法は、カテーテル上の温度センサのアレイを使用して、血液の温度を決定することである。比較的低温の多量の血液は、心拡張時に心室内に注入される。希釈剤の温度は、精度を改善するために、希釈剤がカテーテルを出て行く直前に測定される。次に、注入血液(V)、血液の比熱(C)、希釈剤の比熱(C)、血液の非希釈温度(T)、希釈剤の温度(T)および拡張期末(T)における希釈血液の平均温度が分かると、拡張期末体積(V)は、以下の式により与えられる。
【0062】
【化2】



もう1つの実施態様では、拡張期末体積を概算する方法は、光源のアレイ、およびおそらく光ファイバを含む光センサを使用する。既知の濃度の染料を含む溶液の体積は、心拡張時に心室内に注入されて分散する。血液中の染料の濃度は、吸収または蛍光技術を使用して測定される。染料は、液体、気体、その他の流体などのマーカーである。蛍光技術は、たとえば、1波長の光を血液中に照射し、異なる(蛍光)波長で光の強度を検出することを含む。血液中の染料の濃度は、励起光の強度に対する蛍光灯の強度の割合の一次関数である。次に、注入血液(V)、非希釈血液の濃度(D)、希釈剤中の染料の濃度(D)、および拡張期末における希釈血液中の染料の平均濃度(D)、拡張期末体積(V)は、以下の式により与えられる。
【0063】
【化3】



その他の実施態様では、流体を心室に導入することなく、拡張期末体積を決定すると有益である。実施態様によっては、拡張期末体積または拡張期末圧力を静止値から減少させるとさらに有益である。そのため、カテーテルは、少なくとも希釈剤と同じだけの体積を維持することが可能なバルーンを備える(熱、伝導性もしくは染料希釈剤、または上記の方法のように、超音波を使用して体積を測定する場合は不要)。バルーンは、前の周期の心収縮相において心室内で最初に膨張し、対応する量の血液を心室から駆出するのを促進する。拡張期末体積に影響を与えずに拡張期末体積を決定するため、バルーンは、同時に心室内に注入された希釈剤の体積に等しい体積だけ、同時にかつ完全に心拡張時に収縮する。したがって、バルーンが収縮する時、希釈剤は、心室内の圧力を増減しない状態で心室内に追加される。拡張期末体積および/または拡張期末圧力を静止状態から減少させ、拡張期末体積を決定することは有益である。これは、心収縮相で、または反復周期の場合は、大動脈弁が閉鎖された直後に、最初のバルーンの膨張により行われる。次に、心室の拡張期充満時に、ある量の希釈剤が心室内に分散される。バルーンは、希釈剤の体積を超える体積だけ、同時にかつ完全に収縮し、拡張期末圧力および体積を減少させる。拡張期末体積は、上記の希釈方法のどれかを使用して決定される。一実施態様では、1個または複数の超音波変換器は、心室体積を連続的に測定するために使用され、バルーンは心収縮期で膨張し、心拡張時に収縮して、拡張期末圧力および/または体積を減少させる。
【0064】
(収縮期末体積を決定するための方法)
LVESVを測定するための1つの方法は、LVVが最低の時に、連続体積測定システムの1つを使用して、LVVを記録することである。LVESVを測定するための別法による方法は、大動脈流速が最大の後に最初にゼロになった時のLVVである。これらの2つの記録の体積の差は、僧坊弁逆流と、大動脈弁が閉鎖した後の左から右への分流との組合せに等しい。
【0065】
(駆出分画を決定するための方法)
駆出分画は、拡張期末体積と収縮期末体積との差が拡張期末体積に占める割合として定義される。この計算は、EDVおよびESVを測定する上記の方法の何れかを使用して行われる。
【0066】
(1回拍出基準での心拍出量、心係数、1回拍出量および1回拍出量係数)
一実施態様では、血流速度または流速センサはカテーテルに結合され、大動脈内に挿入される。このセンサは、毎ミリ秒に約1回など、定期的な間隔で血流速度を抽出し、情報を制御装置またはその他のプロセッサに伝達する。次に、制御装置は、1秒間(または、次の工程を代表するその他のある類似期間)に取得した指示値を平均することにより平均血流速度を決定する。当該抽出時に、心拍出量は、許容される方法の1つを使用して個々に測定され、こうした方法としては、酸素消費量を使用するフィックの法則、または希釈法(熱希釈、コンダクタンス希釈、もしくは気体、その他の流体、液体、染料などのマーカーによる希釈)が挙げられる。グロスマン(Grossman)の「心臓カテーテル挿入法および血管造影法」(Cardiac Catheterization and Angiography)pp.101〜117は、これらの方法について詳細に説明している)。こうして測定される心拍出量は、平均速度または流速で除算され、拡大縮小係数を決定する。この係数は、速度または流速センサ付近の大動脈断面が、抽出周期および後続の周期で合理的に一定であることを前提とする。血流速度または流速を測定する多くの異なる方法が可能であり、たとえば熱希釈、剪断力測定、ピトー管法(停滞流対動的流)、超音波、ドップラーおよび/または任意のその他の適切な方法が挙げられる。倍率を決定したら、ある特定の周期について1回拍出量を決定し、この1回拍出量は、倍率と、当該周期の速度の積分との積に等しい。1回拍出時間も、後続の拡張期末事象間の期間として計算する。次に、心拍出量は、1回拍出時間における1回拍出量間の割合として計算され、正しい単位に調節される。心係数は、体表面積(BSA)で除算した心拍出量であり、患者の身長および体重に基づく既知の値である。1回拍出量係数は、BSAで除算した1回拍出量である。
【0067】
(心臓予備力および心臓予備力係数)
一実施態様では、心臓予備力を測定する方法は、先ず、ある心臓周期の開始時にLVEDPおよび/またはLVEDVを測定し、次に当該周期時に、上記の方法を使用して心拍出量を測定する。この測定は、任意の回数だけ繰り返すことができ、複数のデータの対(LVEDP、CO)を取得することができる。次に、ある量の流体は、心拡張期間中に左心室内に注入され、拡張期末圧力が記録される。当該周期の心拍出量は上記の方法を使用して記録され、新たなデータ点(LVEDP、CO)が記録される。このプロセスは、データの対の集合(n>=2)を生成するのに必要なだけ繰り返される。次に、最小二乗技術を用いて、データ点を通る回帰線を決める。この線の勾配は、心臓予備力に等しい。心臓予備力係数は、BSAで除算した心臓予備力に等しい。
【0068】
(1回拍出予備力および1回拍出予備力係数を決定するための方法)
心臓予備力を測定する1つの方法は、最初にLVEDPおよび1つの心臓周期の開始を測定し、次に、上記の方法を使用して当該周期中の1回拍出量を測定することである。この測定は、任意の回数だけ繰り返すことができ、複数のデータの対(LVEDP、SV)を取得することができる。次に、心拡張期間中に、ある量の流体を左心室内に注入し、結果として得られる拡張期末圧力を記録する。当該周期の1回拍出量は、上記の方法を使用して記録し、新たなデータ点(LVEDP、SV)を記録する。このプロセスは、データの対の集合(n>=2)を生成するのに必要なだけ繰り返される。次に、最小二乗技術を用いて、データ点を通る回帰線を決める。この線の勾配は、1回拍出予備力(SR)に等しい。1回拍出予備力係数(SRI)は、BSAで除算したSRに等しい。
【0069】
(心筋仕事量、心筋仕事量係数、心筋仕事量予備力、心筋仕事量予備力係数を決定するための方法)
心筋仕事量(MW)は、単一心臓周期時に、心臓内の血液に対して心筋が行う仕事量から成る。これは、VがV(最大)からV(最小)に変化する時の圧力およびdVの積分から、VがV(最小)からV(最大)に変化する時の圧力およびdVの積分を差し引いた値として数学的に定義される。したがって、これは、心臓組織が心収縮期時に行う仕事量から、心拡張時に人体が心臓組織に対して行う仕事量を差し引いた値である。したがって、心筋仕事量は、体積が圧力と体積の積分から減少し、体積が増加する時の圧力と体積との積分間の差として表現される。
【0070】
【化4】



心筋仕事量係数(MWI)は、BSAで除算した心筋仕事量に等しい。
【0071】
実施態様によっては、第1モーメントの仕事量を計算することも有益であり、これは最適化の点でも有益であると思われる。第1モーメントの仕事量は、以下のように計算する。
【0072】
【化5】



心筋仕事量係数(MWI)は、BSAで除算した心筋仕事量に等しい。
【0073】
一実施態様では、心筋仕事量予備力は、先ず特定心臓周期のLVEDPを記録し、次に当該周期時の心筋仕事量を計算することにより計算される。この測定は任意の回数だけ繰り返すことができ、複数のデータの対(LVEDP、MW)を取得することができる。次に、ある量の流体は、心拡張期間中に左心室内に注入され、結果として得られる拡張期末圧力が記録される。当該周期の心筋仕事量は、上記の方法を使用して記録され、新たなデータ点(LVEDP、MW)が記録される。このプロセスは、データの対の集合(n>=2)を生成するのに必要なだけ繰り返される。次に、最小二乗技術を用いて、データ点を通る回帰線を決める。この線の勾配は、心筋予備力に等しい。心筋予備力係数(MRI)は、BSAで除算した心筋予備力に等しい。
【0074】
(1回仕事量、1回仕事量係数、1回仕事量予備力、1回仕事量予備力係数および心臓効率を決定する方法)
1回仕事量(SW)は、一般に、左心室が循環系に対して行う仕事量と定義される。この関係は、図4Aおよび図4Bに図形で表示する。本発明の一実施態様では、1回仕事量は、大動脈内に駆出される体積と、心室により増加する圧力との積の積分を計算して決定される。実施態様によっては、平均充填圧力は、心収縮期時に決定され、心室内圧から減算される。次に、この差には、大動脈内に流れる血液の量を乗算する。次に、この積を単一の1回拍出上に積分し、1回仕事量を計算する。
【0075】
【化6】


したがって、SWは心筋仕事量とは区別することが可能である。これらの2つのパラメーターの相違は、逆流が測定結果にどのように影響するかとう相違である。心筋仕事量は、心筋が行う仕事量を測定し、SWは、心臓が循環系に対して行う仕事量を測定する。心臓効率(CE)は、本発明により測定されるさらにもう1つのパラメーターであり、心筋仕事量に対するSWの割合として定義され、心臓が心筋仕事量を1回仕事量に変換する効率の測定基準である。このパラメーターは、たとえば、両室ペーシングデバイス、薬学的介入およびその他の介入により、それぞれの性能を最適化するために使用される。
【0076】
別法による実施態様では、1回仕事量は、大動脈圧と大動脈流速との積の積分から、左心房圧と僧坊弁を通る流速との積の積分を差し引いた値である。上記の2つの方法の何れかでは、1回仕事量係数は、BSAで除算した1回仕事量に等しい。計算の類似の集合は右心室に関して可能であり、この場合、1回仕事量は、肺動脈内の圧力の積の積分に肺動脈内に流入する収縮期体積を乗じた値から、右心房圧力の積分に、右心室内に流入する拡張期体積を乗じた値を差し引いた値である。
【0077】
実施態様によっては、1回仕事量予備力は、先ず特定の心臓周期のLVEDPを記録し、次に当該周期における1回仕事量を計算することにより計算する。この測定は任意の回数だけ繰り返すことができ、複数のデータの対(LVEDP、SW)を取得することができる。次に、予め決められた量の流体を心拡張期間に左心室内に注入し、結果として得られる拡張期末圧力を記録する。当該周期の1回仕事量は、上記の方法を用いて記録され、新たなデータ点(LVEDP、SW)が記録される。プロセスは、データの対の集合(n>=2)を生成するのに必要なだけ繰り返される。次に、最小二乗技術を用いてデータ点を通る回帰線を決める。この線の勾配は、1回仕事量予備力(SWR)に等しい。1回仕事量予備力係数(SWRI)は、BSAで除算したSWRに等しい。
【0078】
(心臓の増幅度を決定するための方法)
心臓の増幅度(cardiac amplification)(CA)は、拡張期末体積の限界増加による1回拍出量の限界増加として定義される。一実施態様では、心臓の増幅度は、先ず特定の心臓周期のLVEDVを記録し、次に当該周期における1回拍出量を計算することにより計算される。この測定は任意の回数だけ繰り返すことができ、複数のデータの対(LVEDP、SV)を取得することができる。次に、ある量の流体は、心拡張時に左心室内に注入され、結果として得られる拡張期末体積が測定される。当該周期の1回拍出量は、上記の方法を使用して測定され、新たなデータ点(LVEDP、SV)が記録される。このプロセスは、データの対の集合(n>=2)を生成するのに必要なだけ繰り返される。次に、最小二乗技術を用いて、データ点を通る回帰線を決める。この線の勾配は、心臓の増幅度に等しい。
【0079】
(弁勾配、弁勾配予備力、弁面積、弁面積予備力、弁閉鎖不全、弁閉鎖不全予備力、および弁抵抗)
一実施態様では、弁圧力勾配(VG)は、2個の圧力センサを使用して直接測定され、大動脈弁圧力勾配の場合のように、一方のセンサは心臓の上流にあり、他方のセンサは心臓の下流にある。もう1つの実施態様では、VGは、僧坊弁の場合のように多少間接的に測定され、上流の圧力は、既知の肺毛細管楔入圧を使用して測定され、下流の圧力は左心室内で測定される。どちらの場合も、弁を横断する圧力勾配は、適切な充填期間全体で測定され、弁を通る流れは同時に決定される。大動脈弁の場合、弁を通る流れは、大動脈内の上記の目盛り付き速度センサを使用して測定され、流れは、心室体積の拡張期変化から、大動脈内の目盛り付き速度センサにより測定した逆流大動脈流を差し引いた値として測定される。充填期間全体で、複数のデータの対は、(ΔP、Q)の形態で記録され、ΔPは圧力勾配、Qは弁を通る瞬間体積流速である。ある周期における最大圧力勾配(ΔP)および平均圧力勾配は、当該周期に関してVGとして記録される。
【0080】
周期−弁閉鎖不全(VR)で弁を通る全体の逆流は、ある周期における逆体積流速の積分として計算される。大動脈、肺または尖弁逆流の場合、この流れは、目盛り付き速度センサの出力を使用して直接決定され、ある周期におけるすべての負の体積流速の区分積分である。僧坊弁の場合、逆流は、1回拍出量(目盛り付き速度センサを使用して大動脈内で測定)を、最大および最小左心室体積から減算して決定される(LVEDV−LVESV)。したがって、僧坊弁逆流は、分路が存在しない場合、LVEDV−LVESV−SVに等しい。実施態様によっては、僧坊弁閉鎖不全症の測定は、存在する大動脈逆流内の因数分解を含む。1回拍出量の計算は、逆流(拡張期)大動脈流を特定の周期で大動脈中に区出される血液全体の量から減算する工程を包含する。実施態様によっては、僧坊弁閉鎖不全症を比較的正確に行うために、大動脈逆流の量は逆に追加される。したがって、MR=LVEDV−LVESV−SV+ARであり、ここで、MRは正味収縮期僧坊弁逆流で、ARは正味(拡張期)大動脈逆流である。
【0081】
弁の有効面積を計算するには、一実施態様は公知の公式を使用する(ゴーリン公式 − グロスマン(Grossman)の「心臓カテーテル挿入法および血管造影法」(Cardiac Catheterization and Angiography)p.143参照)。公知の公式を使用すると、心拍出量などの平均流速、および平均圧力勾配は、平均オリフィス面積を計算するために使用される。したがって、この実施態様は、これらの平均値を使用して、有効弁面積を計算する。平均僧坊弁面積(MMVA)の方程式は、
【0082】
【化7】



であり、ここで、COは心拍出量、cc/分、HRは拍動/分、DFPは充填期間、秒/拍動、ΔPは僧坊弁を横断する平均圧力勾配、mmHgである。この技術は、流速および圧力勾配の瞬間測定を使用することにより、弁面積のリアルタイムで概算することを可能にする。したがって、僧坊弁面積(MVA)は
【0083】
【化8】



であり、ここで、Qは、適時に何らかの点において弁を通る体積流速であり、ΔPは、ほぼ同一点における適時の流体勾配である。(この圧力勾配は、一般に、右心臓カテーテルを使って測定され、肺毛細管楔入圧と左心室内圧との間の差である)。ゴーリン(Gorlin)の修正およびオリジナルのこの方程式を使用すると、オリフィス直径を時間の関数として測定することが可能である。
【0084】
類似の方程式は、大動脈弁に関して見られる:平均大動脈弁面積(MAVA)は
【0085】
【化9】


であり、ここで、SEPは収縮期駆出期間であり、ΔPは、この場合は大動脈弁を横断する圧力勾配である。同様に、大動脈弁面積(AVA)のリアルタイムでの測定は、
【0086】
【化10】



であり、ここで、Qは、大動脈内の目盛り付き速度センサを使用して測定した大動脈を通る瞬間体積流速である。
【0087】
一実施態様では、心拍出量の増加に応じた上記のパラメーター(逆流、弁面積および圧力勾配)の変動を測定する。こうした変動を測定する1つの方法は、先ず特定の心臓周期におけるLVEDPを測定する工程を包含する。当該周期の終わりに、弁に関連する追加のパラメーター、たとえば弁閉鎖不全(VR)、弁面積(VA)および弁圧力勾配(VG)を測定する。任意の回数のこうした周期を記録し、複数の測定結果を互いに平均する。連続する心臓周期では、ある量の流体が、心拡張時に左心室内に導入されて拡張期末圧力を増加させ、一般に(必ずというわけではない)、比較的高い心拍出量で(比較的高いLVEDPから生じる)、結果として得られる値を再び測定する。こうして、複数のデータ集合を生成する。弁勾配予備力(VGR)を得るために、最小二乗法を使用して、複数のデータの対間の線を決定する。この曲線の勾配はVGRである。心拍出量が2倍になると、圧力勾配は4倍になり、したがってVGRは、心拍出量の増加に応じて増加すると予想される。それにも関わらず、VGRは、LVEDPの対応する範囲内のLVEDPの増加に応じた勾配の限界増加を表す。
【0088】
様々な実施態様では、弁面積予備力(VAR)は、様々なデータ対(LVEDP、VA)間の線を決定するための最小二乗法を使用して得られる。線を決定する勾配はVARであり、これは、LVEDP内の限界増加限界増加による弁面積の限界増加を表す。有効面積が心拍出量の増加と共に減少するいくつかの患者Pの母集団(いくつかの疾病状態)が存在し、この値は、このクラスの患者の場合は負である。
【0089】
同様に、弁閉鎖不全予備力(VRR)は、様々なデータ対(LVEDP、VR)間の線を決定するための最小二乗法を使用して得られる。この線の勾配はVRRであり、これは、LVEDPの限界増加による弁閉鎖不全の限界増加を表す。こうした「予備力」の測定は、LVEDPの代わりに心拍出量(またはLVEDV、またはその他の何らかの変数)に対して行うことができる。これらの「予備力」測定は、LVEDPの代わりに心拍出量(またはLVEDV、またはその他の変数)に関して行われる。
【0090】
(フランク−スターリング曲線を生成する方法)
フランク−スターリング曲線(F−S)は、文献に多くの定義が見られる。これらの定義は、一般に、左心室拡張期末体積(LVEDV)または左心室拡張期末圧力(LVEDP)の変化による左心室の血行力学的出力の変化に関連する。最も一般的なタイプのF−S曲線は、心拍出量対LVEDP、心拍出量対LVEDV、1回仕事量対LVEDP、1回仕事量対LVEDV、および LVESP/LVEDP対LVEDVである。
【0091】
実施態様によっては、F−S曲線は心拍出量(CO)を縦軸に、LVEDPを横軸に置く。カテーテルシステムは、1つまたは複数の心臓周期の開始時にLVEDPを記録し、次に、対応する各々の周期の終了時にCOを計算する。膨張可能なバルーンの流体を導入および/または除去(つまり、体積を増加または減少)することにより、システムは、拡張期末圧力を新たな値に調節し、その値を測定する。システムは、次に、当該周期の結果として得られる心拍出量を計算する。数回の心臓周期についてこのプロセスを繰り返し、各々のプロセスで異なるLVEDPを開始点として使用することにより、医師が見られるように、CO対LVEDPのグラフを作成し、記録および表示する。
【0092】
その他の実施態様では、心拍出量対LVEDVを表すF−S曲線を作成する。上記の方法はどれも、1回拍出基準でCOを測定し、1回拍出基準でLVEDVを測定するために使用される。次に、心拡張時に流体の量を心室に導入および/または心室から抜き取ることにより、心臓の1回または複数回の周期についてLVEDVを変更することができる。心臓の開始体積を減少させて、たとえば予荷重の減少をシミュレートする場合、バルーンをカテーテルに取り付けて、前の心臓周期の心収縮相で膨張させる。次に、バルーンを心拡張時に収縮させて、予荷重の減少をシミュレートする。
【0093】
F−S曲線のもう1つの変形は、上記で定義した心筋仕事量(MW)または1回仕事量(SW)の何れかを縦軸に、LVEDPを横軸に置くことである。2回の測定の差は、左心室に関する弁疾病の重要な指標である。CO対LVEDPに関して上記で説明した方法に類似する方法では、このシステムは、各々のLVEDPのMWおよびSWを同時に計算するために使用される。MWに対するSWの割合である心臓効率(CE)も計算および表示され、心臓効率が、増加するLVEDPのレベルで、おそらく増加する心拍出量のレベルに応じて、どのように変化するかを示す。
【0094】
一実施態様では、CO対LVEDP曲線を作成するために、リアルタイム心拍出量センサは、大動脈内に存在するようにカテーテルに結合する。このリアルタイムセンサは、心拍出量を測定するために認められたいくつかの方法の1つまたは複数を使用して、たとえば酸素消費量に基づくフィックの方法、または希釈法を使用して校正される。COセンサは、各々の周期で左心室から駆出される血液の体積を測定するために使用される。同時に、カテーテル上のもう1つのセンサは、左心室内の圧力を測定する。心拡張時、カテーテルシステムは、生理食塩水またはその他の流体を左心室内に導入し、結果として得られるLVEDPを測定する。次に、心臓がその周期を完了すると、COセンサは、周期における心臓の出力を測定する。その結果、1個の点をCO対LVEDP曲線上に表す。ある期間後、心拡張時に生理食塩水またはその他の液体を左心室内に注入することにより、第2の点を曲線上に描く。次に、当該周期で心拍出量およびLVEDPを測定して、第2の点を描く。後続の周期で、必要に応じて様々なLVEDP条件を形成して、追加の点を作成する。
【0095】
もう1つの実施態様では、上記の方法に類似する方法を使用して、1回仕事量の異なる定義に基づくF−S曲線を作成する。1回仕事量は、心拍出量と同時に(または、ほぼ同時に)計算される(つまり、同一周期で)。用いられる1回仕事量の1つの定義は、単一周期における圧力および1回拍出量の積の積分である。もう1つの定義は、心室の体積の変化を使用して、心臓が行う仕事量を決定する。しかし、この後者の測定は、僧坊弁に対して逆行する逆流をポンピングするのに必要な仕事量、および逆流性の大動脈流に無関係の仕事量を含む。その他の実施態様では、1回仕事量は、大動脈内に駆出された血液の体積に心室と大動脈との間の圧力勾配を乗じた積である。大動脈内に駆出される血液の体積は、血流速度センサにより測定され、圧力勾配は、2個の圧力センサ間の差を使用して測定され、一方の圧力センサは心室内にあり、他方は速度センサ付近の大動脈内にある。
【0096】
上記のとおり、本発明の多くの実施態様によるカテーテルは、心拡張時など、ある心臓周期の所望の時に、ある量の流体(生理食塩水、ブドウ糖、またはその他の適切な流体)を心室に導入するか、および/または心室から抜き取ることにより、拡張期末圧力および/または体積を達成するための手段を備える。一実施態様では、流体の導入は、コンピュータまたはその他のデータプロセッサなどの制御装置からの制御信号を使用して、カテーテルに結合されたポンプなどの外部作動装置を駆動することにより行われる。流体の導入および/または抜取りのタイミングは、心腔内の圧力センサを介して行われる測定に基づく。こうした測定は、任意の適切な間隔で行われるか、実施態様によっては、約1000Hzの速度で行われる。
【0097】
(圧力/体積ループを生成する方法)
次に、図4〜図9を参照すると、本発明の一実施態様により生成されて任意に表示される情報を示す。この情報は「圧力−体積ループ」と呼ばれ、こうした情報は、様々な形態で表示される。一実施態様では、カテーテルは、腔内圧力および体積を同時に、またはほぼ同時に測定することにより、圧力−体積ループを生成するために使用される。体積は、上記で詳細に述べたように、たとえば直交するように方向付けられた6個の超音波変換器を使用して測定される。図10および図11を参照すると、カテーテル102上のこうした6個の変換器デバイス162などの一実施態様を示す。図11に矢印で指示するように、6個の変換器は、変換器デバイス162から心腔の内壁上の様々な位置までの6つの距離を測定するために使用される。これらの6つの距離は、内接する卵形に対する曲率半径を表す。1個または複数の位相アレイ変換器は、別法により、体積を測定するために使用される。一実施態様では、複数の位相アレイ変換器は、少なくとも2個が、カテーテルの軸の周囲に軸方向に配列される。もう1つの実施態様では、4個の位相アレイセンサが、カテーテルの周囲に軸方向に配列される。
【0098】
圧力は、腔内(つまり、図11の左心室だが、その他の適切な心腔またはその他の腔も考えられる)に配置された1個または複数の圧力センサからの指示値を使用して測定される。実施態様によっては、心腔内に使用される圧力センサは絶対圧力センサを備え、したがって、周囲圧力を抽出する圧力センサも、ゲージ圧力の計算を可能にするために使用されることが多く、ゲージ圧力の計算は、殆どの医師が熟知している。ゲージ腔内圧力は、絶対腔内圧力から絶対周囲圧力を差し引いた値から成る。様々な実施態様では、周囲絶対圧力センサは、体外でカテーテルに結合されるか、その代わりかまたは付加的に、制御装置、コンソールおよび/またはその他に結合される。
【0099】
次に、図5Aおよび図5Bを参照すると、本発明による1つの方法は、心拡張時に、左心室などの心腔内に流体を導入し(または、拡張可能なバルーンを膨張させる)、圧力/体積ループにおける変位を生じさせる工程を包含する。元のループは、点a、bおよびcとして示し、変位したループ(上および右へ)はa’、b’およびc’として示す。一般に、流体を左心室内に心拡張時に導入する工程は、異なる拡張期末圧力および/または体積を生じ、これらを変位圧力/体積曲線として測定してグラフで示す。
【0100】
心拡張時に流体を心室内に導入するか、および/または心室から抜き取ることにより、心室に対する様々な拡張期末圧力および体積条件が形成される。次に、結果として得られる心室の圧力および体積は、心臓が周期を完了する時に連続的に測定する。体積(ある心臓周期で測定)を乗じた圧力の積分は、図5Aの曲線内部の領域、および図5Bの垂直軸上に示すように、1回仕事量に相当する。拡張期末圧力の関数としての1回仕事量は、心室性能の1つの測定基準である。図4Aおよび図5Aに示すように、圧力/体積ループは、フランク−スターリング曲線を生成するために使用され、この曲線は、上記で詳細に述べた様々な多くのパラメーターの何れかを含む。これは、フランク−スターリング曲線を生成する従来の方法を大々的に改善したものであり、従来の方法は、スワン−ガンツカテーテルを使用して日中のある期間にわたって測定を行い、心拍出量、および1種類または複数種類の薬剤の投与を測定し、LVEDPを変更する工程を包含する。
【0101】
再び図5Aおよび図5Bを参照すると、本発明の実施態様では、カテーテルが配置された心腔の心筋硬度および/またはコンプライアンスを計算するための方法を使用する。一実施態様では、心筋硬度を計算する方法は、先ず、体積が最大の時(つまり、心拡張の終わりに)、次に再び体積が最小の時(つまり、心収縮期の終わり)に、圧力および体積を測定する工程を包含する。後続の心臓周期では、拡張期末圧力および体積は、カテーテル上の1個または複数の作動装置を使用して増加(または減少)され、再びデータの2つの集合を記録する。こうしたデータの対の任意の適切な数を測定して、これらのデータの対を使用して圧力/体積曲線を生成する。次に、データの対の各々の集合(つまり、拡張期末集合および収縮期末集合)に関して、最小二乗ルーチンを使用して、各々の点の集合間の直線を決定する。拡張期末点を通る線の勾配は心臓の拡張性硬度であり、この勾配の逆は拡張性コンプライアンスである。収縮期末点を通る線の勾配は変力性硬度であり、この勾配の逆は変力性コンプライアンスである。これらの測定結果および計算に使用する方程式を図5Aにラベル状に示す。
【0102】
もう1つの実施態様では、心腔のコンプライアンスを測定する方法は、室内の体積を連続的に変化させ、同時に室内の圧力を測定し、室の壁部の硬度を連続的に測定する。この方法では、水中聴音器を使用して、任意の適切な周波数で、たとえば毎秒約200回などで心室内の体積を変化させる。圧力センサは、水中聴音器で生じる周波数とほぼ同じ周波数で、圧力の変化を測定するために使用される。圧力信号を200Hzで濾波することにより、振幅が周期全体で心臓の硬度に比例する信号を取得する。この数の逆数は、周期全体の心臓のコンプライアンスである。心室に至る弁の何れかが開放している場合、この方法は、水力学的に連結された室の有効硬度およびコンプライアンスを測定する。したがって、僧坊弁が開放すると、左心房および左心室の両方並びに肺静脈のいくつかの硬度およびコンプライアンスを測定する。僧坊弁が閉鎖し、大動脈弁が開放した時に、左心室および大動脈の結合硬度を測定する。両方の弁が閉鎖した場合、等容性収縮または等容性拡張の場合のように、左心室の硬度のみを測定する。圧力/体積勾配は等容性相ではむしろ鋭利であるため、1000Hzまたはさらに5000Hzなどの比較的高周波数を使用して、硬度およびコンプライアンスを測定し、これらの値が収縮時または拡張時にどのように変化するかを測定する。
【0103】
図6〜図9は、圧力の変化、ひいては硬度の変化をある期間にわたって表示する様々な方法を示す。図6は、作動装置を使用して、周期的に変動する体積の変化を生じさせた場合の圧力の変化を示す。図7は、ローパスフィルタを通して処理された後の同じ変化を示す。図8は、ハイパスフィルタを通して処理された後の同じ変化を示す。最後に、図9は、心腔の収縮期および拡張期の硬度に関連する同じデータを示す。
【0104】
(薬剤の投与量/反応特性を決定するための方法)
さらにもう1つの実施態様では、本発明の方法は、様々な心臓および/または循環機能に関する薬剤の1つまたは複数の投与量/反応特性を測定するために使用される。殆どの患者は、特定の薬剤に対してある程度特有の反応を有するため、薬剤の投与量/反応曲線を把握すると、類似の薬剤を定量的に選択し、選択した薬剤の最適な投与レベルを定量的に予測し、薬剤の組合せの短期間の影響を定量的に比較することが可能である。
【0105】
本発明の一実施態様では、ある方法は、硝酸1個または複数の様々な血行力学パラメーターおよび性能比をモニタリングしつつ、エステルタイプの薬剤を患者に対して少量の逓増投与量で投与する工程を包含する。次に、測定パラメーターをグラフの一方の軸上に描き、薬剤の投与濃度を対向する軸上に描く。たとえば、心臓予備力(CR)(y軸)を硝酸エステル投与量(x軸)の関数として描く。3次元の図は、たとえば、LVEDP(x軸)および硝酸エステル投与量(y軸)に対する心臓予備力(z軸)を表現するために使用し、ここでx、yおよびzは、立方体の隅であるかのように等長状態で提示される。
【0106】
さらに他の例では、患者に対して設定された新しい「定値」または最適な血行力学パラメーターは、カテーテル挿入時に決定された濃度レベルで薬剤のある組合せにより生成される。(たとえば、LVEDPはある値まで減少し、心拍出量はある値まで増加し、SVRはある値まで減少し、これらの各々は、治療上の利益を有すると考えられる)。次に、患者には、カテーテル挿入が終了してから相当後に定値を維持するように、同様に作用する経口薬剤を使用する「処方薬」が与えられる。
【0107】
さらに他の例では、カテーテルは大動脈内に配置され、大動脈の硬度およびコンプライアンスは直接測定される。このタイプの測定は、薬物療法の前後に使用され(たとえば、EDTAを大腿静脈内に注入する)、増加する大動脈コンプライアンスにおける当該薬剤の効果がテストされる。同様に、カテーテルは左心室内に配置され、患者には、心室のコンプライアンスを変更することを目的とする変力性薬剤が与えられる。拡張期末圧力を変更することなく、投与レベルの関数として、心室のコンプライアンスに対する薬剤の影響を直接測定して記録し、表示する。
【0108】
上記の説明は、本発明の完全かつ正確な説明であるが、例示的な目的で提示するのであり、請求の範囲に定義される本発明の範囲を制限するものと解釈するべきではない。上記の方法、デバイスおよびシステムには、請求する本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変化、追加、置換および/またはその他を加えることができる。たとえば、実施態様によっては、1つまたは複数の薬学的クラス、たとえば変力性薬剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、ベータ遮断薬およびカルシウム拮抗薬、利尿薬、後負荷軽減薬、強心配糖体、神経ホルモン剤を投与し、様々な血行力学パラメーターを測定する。こうした方法は、静止状態または運動状態で、心臓の電気的刺激を変化させるかまたは変化させずに、ペースメーカーまたは両室ペーシングデバイスと同様に行うことができる。多くのその他の実施態様および変形は、本発明の範囲内で考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−46512(P2010−46512A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247099(P2009−247099)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【分割の表示】特願2006−502956(P2006−502956)の分割
【原出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【出願人】(505222679)プロテウス バイオメディカル インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】