説明

心臓ゲーティング方法およびシステム

発明は、業界の問題を緩和する心電図ゲーティングおよび除細動用の新しい材料および装置を提供する。本発明の実施の形態は、トリガ信号を生成するかまたはパルスをより確実に伝達することができ、且つ/または、他の診断手順との干渉が少ない材料から作られる一定の寸法の特別な電極を使用する。電極およびシステムは、振幅と、心電図信号を検出する全体的信頼性と、を改良する。改良された信号は、真の心臓フェーズおよび改良された心臓ゲーティングのより信頼のおける検出を可能にする。このようにして、本発明の実施の形態は、改良された画像品質、心臓および胸郭内の/上部腹部の構造物のより正確な画像形成、および、胸部およびたとえば四肢を含む身体のいずれ内の血流測定用の全身動脈血流の改良された参照を導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に医療診断的心肺蘇生に関し、より詳細には、心臓ケアおよび診断に使用される電極に関する。
【背景技術】
【0002】
医療的共鳴映像法(MRI)は、医療的状態を診断するために非常に有用である。MRIは、鼓動している心臓等の構造物の画像を生成することによって、心臓疾患を評価する助けをすることができる。しかし、MRI検査中にそのような構造物が動くと、結果として画像が大幅にぼやけ且つ他の非診断的情報になることがある。この運動問題は、心臓周期に対する心臓の生理的動作のため、心臓およびその周辺構造物をMR画像形成するのに特に厄介である。画像用に心臓周期の異なるフェーズからMRデータを無差別に獲得することは、結果として解像不良の心臓の画像になることが多い[1]。
【0003】
解像不良問題への解決は、Lanzerら著「放射線学(Radiology)150:121〜127(1984)」およびLanzerら著「放射線学(Radiology)155:681〜686(1985)」に記載されているように、心臓収縮周期でMRデータ獲得を「ゲーティング」することによってMRI信号獲得を同期することである。ゲーティング技術は、結果として得られる画像の品質を有意に改良し、非常に人気のあるものになってきている。心臓ゲーティングは、特定の心臓フェーズ中にMRデータを獲得するのを可能にする[2〜7]。たとえば、拡張期中の画像形成は、心臓の活動が比較的少ないため、心臓収縮に関するぼやけアーチファクトを最小限にする。特定の心臓フェーズ中に適切に画像形成できることは、心臓フェーズに特定的である異常の識別を可能にする(たとえば心弁不全)。心臓ゲーティングはまた、心臓周期にわたって(収縮期および拡張期の間中に)得られた画像を「シネ」モードに適切に参照することを可能にする。シネMRI画像形成は、一般に心臓血流および血管血流の例示および/または測定の中心である。さらに、心臓ゲーティングされたデータ獲得を正確に行うことができることは、よりはっきりした画像詳細だけではなく、より高度の空間解像度の画像を達成することを可能にする。
【0004】
心臓ゲーティングは典型的に、背臥位患者画像形成用には前部胸部(図1)に、または腹臥位患者画像形成用には背中上部(図2)に、配置された3つ以上の小さな電極から得られた心電図(EKG)情報を使用する。心電図電極は、直径が1から2インチであり、自動接着性の縁および中央ゲル部分を含み、心電図信号伝導を高める。電極、そのリード線および関連心電図機器は典型的に、日常の臨床検査心電図に使用されるものにならって作られている。
MRI用の典型的なゲーティング手順は、数個の(典型的に3または4個の)小さな1から2インチの電極ディスクを皮膚表面に置くことを伴う。患者の皮膚に置かれた電極からのリード線は、別個のゲーティング装置かまたは実際のMRスキャナかのいずれかに接続する。電極へのリード線を含む心電図に使用されるすべての材料は、MRIに互換性がなければならない。すなわち、材料は過剰な熱を生成するべきではなく、または、磁場に大幅に影響を与えてMR画像の歪みを招くべきではない。特に、心電図電極に使用される金属は、詳細には常磁性の材料、より詳細には強磁性の材料は、MRI環境に問題を生じさせ、不足して使用されることが多い。
【0005】
心電図から派生するゲーティングは、MRIを改良するために、且つ、一時的な心臓の参照を必要とする他の診断手順のために、有用である。心電図信号は典型的にフィルタされ、増大され、コンピュータで実行されるソフトウェアアルゴリズムが、R波を「トリガ」としてまたは手順用の主要基準点として識別するのを可能にする。近年、Chiaら(磁気共鳴映像法ジャーナル2000(J Magn Reson Imaging 2000;12:678−688))は、適切なR波検出のためにより高機能の心電図ベクトル分析アルゴリズムを記載した[7]。生来のMRI信号の増加は、適切なR波検出用のこれらのアルゴリズムの全体的な効率も改良する。
【0006】
診断手順の改良された性能に寄与しながら、心電図ゲーティングは一定の問題を有し、これは、結果として、特にMRIと使用するときには、劣化した信号になる。1つの問題は、MR画像形成中の心電図ゲーティングは、患者がMRスキャナ内にいるときには、「T波上昇」と呼ばれる現象を導くことが多いことである[8、9]。R波信号が不良であるときには、上昇したT波がR波と間違われることもあり、誤って画像獲得を始動させる。増加した信号、すなわちT波「膨張」が、R波として不正確に識別されることもあり、これは、意図したものとは反対の時間期間で画像形成を始動させる。逆タイミングの結果として、画像は、拡張期の代わりに収縮期中に得られることもあり、または、逆のこともある。
【0007】
別の問題は、不良心電図信号であり、これは、生得的に弱いか、または、皮膚表面で良好な心電図信号受信を排除する患者の身体の体型構造の結果として得られることもある。不良信号は、切換のために使用されるゲーティング回路および/またはソフトウェアが、診断読取を取るときに信頼して決定することができないため、不適切なゲーティングを誘発することがある。さらに別の問題は、電気信号発生器(心臓)が最適ではない軸(たとえば右方向軸)を有し、これは、標準電極配置でさえ空間的に捉えることは困難である。さらに別の問題は、電極リード線と患者皮膚との間の電気カップリングが、検査期間中に発汗および/または運動のため劣化することである。
【0008】
金属電極および導体から走査されたMRIの歪み問題は、van Genderingenらによって扱われ、彼らは、破壊を防ぐためにグラファイト金属がプラスチックで補強される必要があることを示した[10]。このグループは、通常の心電図電極にサイズおよび配置が類似した電極を使用した。この状況で、少なくとも12電極を使用する絶対的な要求がないならば、Burchら[11]およびMelendizら[12]によってコメントされているように、必要性を強調する者もいる。したがって、この分野の研究の多くは、電極破壊の問題を扱っており、心臓診断に重大な効果を与えることができる心電図信号の定位に関する所望の詳細を得るために十分な電極を使用している。
【0009】
MRI機器のまわりで電極を使用するのに関連する問題は、除細動器用に設計された電極はMRI診断に干渉し、MRI手順中に使用するのはふさわしくないということである。事実、現在の除細動器は一般に、これらの電極が、主にその金属組成のためにMRIに対して引き起こす危険のため、厳密にMRI環境の外部で使用される。残念ながら、この結果として、心臓除細動、および心肺蘇生(CPR)の他の形態は、MRスキャナ内では不適合であるとみなされる。MRI検査中に緊急事態が発生した場合には、患者は通常、実際のスキャナ室から出され、非係止スキャナ台の特徴はMRIスキャナには標準である。CPRは、必要に応じて、スキャナ室外部で行われる。したがって、CPR用の必需機器(すなわち、除細動機器および広いパッチ)は一般に、MRスキャナ室に使用されるように設計されていない[13]。この問題を避けるときには、別の場所で電気蘇生を行うことにおける余計な遅延のため、患者は、MRI中に危険にさらされる。
【0010】
現在の機器のこれらの制限は、深刻な影響を与える。MRI中の不良心電図信号処理は、場合によっては、深刻な不整脈の検出を妨げることもあり、それによって、適切な治療の遅延を招く。さらに、心電図信号は、アーチファクトの電気信号の生成を受けやすい。この干渉は、機器を操作する技術者が、命を危うくする電気問題を、心拍停止事象後まで、適切に識別するのを妨げることがある。功を奏する除細動器は、適切なカウンターショックを与えるまで遅延1分ごとにおよそ10%死亡率が上がるため、非常に時間に敏感である。したがって、MRI中の不良心電図モニタリングは、診断検査の安全性を著しく低下する。
これらの問題は、MRI測定用の心電図ゲーティングに対する漸進的改良にもかかわらず、存続する[1〜7]。多くのそのような改良は、リード線配置の前に研磨ジェルを使用する等の適切な患者の準備、典型的に心電図信号受信を改良するために改良された材料を使用することによる小さな電極設計の進歩、電極を心電図記録/フィルタ装置および/またはMRスキャナ自体へ接続するケーブルを使用する改良されたリード線設計、および、R波を識別するための改良された検出アルゴリズムに係わる[2〜7]。これらの改良の大半は、通常の心電図モニタリング用に開発された既存のハードウェアおよびソフトウェアへの修正である。したがって、この分野の技術の大半は、標準心電図アッセイの必要性に基づいており、特にMRI環境では、心電図トリガの問題には対処しない。たとえば、第1鉄の、および他の常磁性材料が、電極およびコネクタに使用されることが多い。これらの材料は、MRI信号の誠実な生成に干渉し、実際に、MRI機器の傍で除細動電極等の一定の機器を使用するのを妨げる。
【0011】
【非特許文献1】1.Hawkes RC, Holland GN, Moore WS, Roebuck EJ, Worthington BS. Nuclear magnetic resonance (NMR) tomography of the normal J Comput Assist Tornog 1981; 5: 605-612. Lanzer P, Bontvinick EH, Schiller NB, et al. Cardiac imaging using gated magnetic resonance. Radiology 1984; 150: 121-127.
【非特許文献2】2.Lanzer P, Barta C, Botvinick EH, Wiesendanger HUD, Modin G, Higgins CB. ECG-synchronized cardiac MR imaging: Method and evaluation. Radiology 1985; 155: 681-686.
【非特許文献3】3.Haacke EM, Lenz GW, Nelson AD. Pseudo-gating: Elimination of Periodic motion artifacts in magnetic resonance imaging without gating. Magn Reson Med 1987; 4: 162-174.
【非特許文献4】4.Amoore JN, Rideway JP. A system for cardiac and respiratory gating of a magnetic resonance imager. Clin Phys Physiol Meas 1989; 10: 283-286.
【非特許文献5】5.Lenz GW, Haacke EM, White RD. Retrospective cardiac gatig: A review of technical aspects and future directions. Magn Reson Imaging 1989; 7: 445-455.
【非特許文献6】6.Chia JM, Fischer SE, Wickline SA, Lorenz CH. Performance of QRS detection for cardiac magnetic resonance imaging with a novel vectorcardiographic triggering method. J Magn Reson Imaging 2000; 12: 678-688.
【非特許文献7】7.Beischer DE, Knepton JC, Jr. Influence of strong magnetic fields on the electrocardiogram of squirrel monkeys (saimiri sciureus). Aerosp Med 1964; 35: 939-944.
【非特許文献8】8.Tenforde TS, Gaffey CT, Moyer BR, Budinger TF. Cardiovascular alterations in Macaca monkeys exposed to stationary magnetic fields: Experimental observations and theoretical analysis. Bioelectromagnetics 1983; 4: 1-9.
【非特許文献9】9.van Genderingen, H.R, Sprenger, M, de Ridder, J.W., and van Rossum, A.C. Carbon Fiber Electrodes and Leads for Electrocardiography during MR Imaging. Radiology 1989; 171: 872.
【非特許文献10】10.Burch, G.E. History of Precordial in Electrocardiography. Eur. J. of Cardiology 1978; 6: 207-236.
【非特許文献11】11.Melendiz, L.J., Jones, D.T., and Salcedo, J.R. Usefulness of Three Additional Electrocardiographic Chest Leads (V7, V8 and V9) in the Diagnosis of Acute Myocardial Infarction. Canadian Medical Association Journal 1978; 119: 745-748.
【非特許文献12】12.Defibrillator/ Monitor/ Pacemakers. Health Devices 2000; 29: 302-334.
【非特許文献13】13.Schenck JF, Jolensz FA, Roerner PB, et al. Superconducting open-donfiguration MR imaging system for image-guided therapy. Radiology 1995; 195: 805-814.
【非特許文献14】14.Cline HE, Hynynen K, Watkins et al. Focused US system for MR Imaging-guided tumor ablation Radiology 1995; 194: 731-737.
【非特許文献15】15.Chen JC, Moriatry JA, Derbyshire JA. Prostate cancer: MR imaging and thermometry during microwave thermal ablation- initial experience.
【非特許文献16】16.Shpun S, Gepstein L, Hayam G, Ben-Jaim SA. Guidance of radiofrequency endocardial ablation with real-time three dimensional magnetic navigation system. Circulation 1997; 96: 2016-2021.
【非特許文献17】17.Jerzewski A, van der Wall EE. Special considerations for cardiovascular magnetic resonance: Safety, electrocardiographic set-up, monitoring, contraindications. In: Manning WJ,
【非特許文献18】18.Pennell DJ. Cardiovascular Magnetic Resonance. Churchill Livingston: New York, 2002.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、業界の問題を緩和する心電図ゲーティングおよび除細動用の新しい材料および装置を提供する。本発明の実施の形態は、トリガ信号を生成するかまたはパルスをより確実に伝達することができ、且つ/または、他の診断手順との干渉が少ない材料から作られる一定の寸法の特別な電極を使用する。電極およびシステムは、振幅および心電図信号を検出する全体的信頼性を改良する。改良された信号は、真の心臓フェーズおよび改良された心臓ゲーティングのより信頼のおける検出を可能にする。このようにして、本発明の実施の形態は、改良された画像品質、心臓および胸郭内の/上部腹部の構造のより正確な画像形成、および、胸部およびたとえば四肢を含む身体のいずれ内の血流測定用の全身動脈血流の改良された参照を導く。
【課題を解決するための手段】
【0013】
除細動に関する本発明の1つの実施の形態は、MRI設備自体での心臓蘇生を可能にし、したがって患者の運動を最小限にする。有利な実施の形態において、本願に記載されたような心電図信号を検出するために使用される電極は、除細動の第2の機能のために使用される。
これらの電極およびその使用のためのシステムは、特に、MRI等の通常の心電図電極測定に干渉することが多い診断システムと組み合わせた心電図トリガに有用である。本発明はまた、他の画像形成の心臓同期化または診断検査にも有用であり、たとえば、心臓核シンチグラフィ(たとえば、負荷タリウム、負荷セスチミビ(sestimibi)等)、コンピュータ断層撮影(CT、電子ビームCT、マルチデテクタCT等)、コンピュータ断層撮影血管造影および負荷心エコー検査である。
【0014】
本発明の実施の形態は、敏感な領域(たとえば、鼓動する心臓)が時によっては避けられるかまたは処置分野に含まれる放射線または他の剥離治療に必要な画像誘導治療の同期化も包含する。そのような治療は、たとえば、Schenckら[14]によって記載されるような画像誘導治療用の超伝導開口構成、Clineら[15]によって記載されるような腫瘍剥離、Chenら[16]によって記載されるようなマイクロ波熱剥離、および、Shpunら[17]によって記載されるようなリアルタイム三次元磁気ナビゲーションを使用する高周波心臓内剥離を含む。そのような治療の結果はMRIによってモニタされてもよく、治療から解剖学的変化および温度変化でさえ決定する。各場合に、適切な心電図ゲーティングは、たとえばカテーテルの適切なまたは改良された画像形成を確実にするか(すなわち、カテーテルまたは目標構造物を見るためにより高度な詳細が必要であってもよい)、治療を潜在的に増大するか、または、単に剥離の適切な選択的タイミングを可能にするか、によって、心臓治療のための適切なタイミングを容易にする。加えて、本発明は、一定の心臓介入(たとえば、不整脈のための心臓剥離治療)の治療進捗および結果の心電図モニタリングも改良する。本発明の実施の形態は、少なくとも2つの広い面積の電極を具備する患者の診断のための医療手順における前向きおよび後ろ向きの心臓ゲーティング用のシステムであり、各電極は、2平方インチの最小皮膚表面接触領域を有する。関連した実施の形態において、各電極は、少なくとも3平方インチの最小皮膚表面接触領域を有する。他の実施の形態において、各電極は、少なくとも4平方インチおよびそれ以上の最小皮膚表面接触領域を有する。
【0015】
本発明の別の実施の形態は、4平方インチの最小表面接触領域と、最大直径にわたって少なくとも10オームの抵抗と、を有する心電図電極を具備する。
本発明の別の実施の形態は、少なくとも2つの広い面積の電極を具備する患者の診断のために使用される医療手順における心臓ゲーティング用のシステムを具備し、各電極は、4平方インチの最小皮膚表面接触領域と、心臓フェーズを決定するための信号処理ユニットと、を有し、各電極は信号処理ユニットに電気的に接続され、信号処理ユニットは、画像形成用の基準点としてR波に応答する信号を出力する。
【0016】
本発明の別の実施の形態は、4平方インチの最小表面積域を有し、有機導体を具備する心電図電極を具備する。
本発明の他の実施の形態および利点は、部分的には下記の説明に述べられており、部分的には、本説明から明らかであり、または、本発明の実際から知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明者らは、従来の心電図電極を使用することによってかまたは心電図機器へ漸進的変化を行うことによってかのいずれかで、心電図トリガ電極を導き出したこの分野の他の人の実例を否定した。驚くべきことに、局所心電図信号に非常に詳細な情報を生成する能力を利用することによって、心電図トリガのために必要なより大きな信頼性のある信号を得ることができるということが発見された。したがって、本発明の実施の形態は、広い表面の皮膚電極を使用し、これは、幾分の詳細な心電図記録にはあまりふさわしくはないが、より頑強であり、トリガ用には優れている。多くの実施の形態に望ましい広い表面積は、タイミングが良く適切な総心電図詳細を検出するのに非常にうまくいくが、より広い表面積が係わっているため、電極位置の小さな変化、大きな患者の運動または内部内臓運動(たとえば、呼吸動作)にはあまり敏感ではないことが分かった。より広い表面積は、エクササイズおよびストレス誘発画像形成中に皮膚接触を改良することも可能にした。それによって、患者または内臓位置の重大な変化が発生することもあり、被験者の発汗は検査中の電極の変位を容易にしてもよい。より広い表面積は、MRI用に使用されるような電磁場との相互作用を最小限にすることによって安全も改良し、それによって、患者に対して組織が焼ける機会を提供することは減少した。
【0018】
より広い表面積は、より大きな信号対雑音比で、心電図測定、特に心臓R波の改良された信頼性のため、より信頼のおける心拍およびリズムの情報を提供することによって患者の安全をさらに改良した。実施の形態において、信号対雑音比は、たとえば、実施例I[18]に記載されたような通常の電極およびシステムで得ることができるものに比較して、25%、50%、100%、200%および500%さえ、高い。信号対雑音比の改良は、特に通常の病院患者に見られ、発汗的で神経質であることが多く、呼吸が速く一般に不規則な患者である。比較測定は、これらの症状の1つ以上を呈する10例の典型的な心臓血管患者から平均として取られる。
【0019】
発明者らは、2つまたは3つの電極のみで正確な心電図トリガを達成することができることをさらに発見した。本発明の実施の形態において、図2に示されるように、2つ以上の広い自動接着性電極パッチ220が、胸部および背中上部にわたって置かれ、トリガするために適切な心電図信号の広い詳細を検出する。2つの広い電極が、医者が容易に決定することができる異なる場所に置かれてもよく、トリガするために適切な異なる電気信号の生成を最適化する。1つの実施の形態において、1つの電極が右肩または右胸部の中線に置かれ、別の電極が、左乳首の下にまたは前腋窩線に対して側方向に置かれる。従来の小さな電極130および230は、それぞれ図1および2に示される。実施の形態において、小さな電極(単/複)は、広い電極(単/複)と組み合わされて使用される。任意に、身体接地用の1つ以上の電極が電気基準点として使用される。
驚くべきことに、最小金属導体材料のメッシュワークは、磁場を変えることによって誘発される渦電流の形成に対してあまり敏感ではなく、MRI等の技術により適合するということがさらに発見された。さらに別の発見は、電極とそのリード線との間の電気接続をより拡散させることが、特に高インピーダンス材料との組み合わせでは、心電図トリガ用により安定した信号を提供するということであった。好適な実施の形態において、メッシュサイズは、電磁放射線の波長の少なくとも10倍小さい。より好適な実施の形態において、メッシュサイズは少なくとも100倍小さく、さらにより好適な実施の形態において、メッシュサイズは少なくとも1000倍小さい。
【0020】
電極およびそのリード線は、本発明の実施の形態によると、MRI設備等の機器によって生成された磁場に対してあまり敏感ではない。特に、本願に開示された材料およびそれから作られた物体は、5ガウスを超える磁場の存在中に使用されてもよい。これらの材料は、1つ以上の電気回路を含み且つMRI中に有用である他のシステムにも使用されてもよい。電気回路に依存し且つ本願に開示される材料および装置の使用によって改良されることがある多数の医学的に有用な装置は、公知である。
【0021】
(高い電極表面積)
好適な実施の形態の電極は、広い表面積を有する。この特徴は、身体運動による、且つ発汗のための導電率の局所変化による、電気ノイズおよび他の予測できない変動を最小限にする。本発明の好適な実施の形態は、2つまたは3つの高い表面積の電極を利用する。「高い表面積」の電極は、心電図記録に使用される大半の電極に比較して患者の皮膚に接触するより広い表面積を有する電極を意味する。これらの実施の形態において、「高い表面積」という用語は、4平方インチ以上、好ましくは6平方インチ以上、より好ましくは8平方インチ以上、さらにより好ましくは10平方インチ以上、さらにより好ましくは12平方インチ以上、さらにより好ましくは16平方インチ以上、最も好ましくは成人に使用するための20平方インチ以上であり、さらにより好ましくは24平方インチである。
この実施の形態からの望ましい結果は、電極によって拾われる信号が、その信号がデテクタへ送られる前に、電極表面全体に対して電子的に標準化される(たとえば平均される)ことである。この特性は、小さな電気皮膚接触領域にわたる偏差を標準化することによって信号品質を改良し、これは、そうでなければ、より小さな電極で電気ノイズを形成することもある。この特徴は、従来の電極で得られた局所心電図信号に質問する能力を、基本的なタイミング詳細を明らかにする全体的な心電図信号のより信頼のおける記録と交換する。
【0022】
(本発明による改良されたCPR電極)
患者がMRI診断を受けているときにCPRが必要な場合には、患者は一般に、スキャナ台をスキャナ室のドッキング位置から外すことによって、MRスキャナ室(および磁場)から出される。次いでCPRは、MRスキャナ室の外部で与えられる。これらの行為は、心臓細動へ応答するのに余分な遅延を招く。本発明の実施の形態は、実質的に最小の金属材料から作られ且つMRIおよび他の同様の手順に適合するCPR電極を提供することによって、この問題に対処する。
本発明のこの実施の形態によるCPR電極の導電性材料は、実質的に最小の金属材料を含み、これは、磁場との相互作用を最小限にするためにメッシュまたはファブリックの構成であることが好ましい。好ましくは、電極メッシュまたはファブリックは、電磁信号の平均波長の少なくとも10倍小さいインターウィーブまたはメッシュサイズ(電極内の空間を形成する隣接する導電性繊維の間の間隔あけ)を有し、好ましくは波長の少なくとも100倍小さく、より好ましくは少なくとも1000倍小さくてもよく、電磁エネルギの吸収を禁止し、それによって診断アッセイとの干渉を緩和する。当然ながら、適切なウィーブは、日常の実験から選ぶことができ、電磁信号の通過を可能にし、一方、電磁放射線の吸収から電極に渦電流が形成するのを最小限にする。材料のウィーブは、少なくとも幾分のMRI信号に対して透過であることが好ましい。「少なくとも幾分のMRI信号に対して透過である」というフレーズは、MRI信号の90%未満が、材料を通ることによって吸収されるということを意味する。ある実施の形態では、MRI信号の50%未満が材料によって吸収され、別の実施の形態では、20%未満が吸収される。好適な電極は、放射線透過性であり、すなわち、CTおよび核医学用途のために電離放射線を阻止しないという特性を有する。
【0023】
この実施の形態の電極用に好適な導電性材料は、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(p−硫化フェニレン)、ポリアセチレン、ポリアナリン、ポリキノリン、ポリピロールおよび/またはポリチオフェン等のポリマーから調製された炭素である。一般に、カーボンポリマー系材料等の有機電極材料は、開始ポリマー(単/複)をより高い炭素含有物質に転換する酸化過程によって製造される。したがって、本発明の1つの実施の形態は、心電図電極または除細動電極を作るための方法であり、ストランド、布または繊維状粒子の形態である上記リストから選択されたポリマー等の有機カーボンポリマーを提供するステップと、好ましくは加熱によって、ストランド、布または繊維状粒子を酸化して炭素含有率を高めるステップと、酸化されたストランド、布または繊維状粒子を、患者の皮膚に接触するのにふさわしい二次元形態に(典型的にはスピニング、ウィービングおよびカッティングによって)形状づけるステップと、を含む。好適な実施の形態において、材料は、少なくとも10%の酸素存在中に第1の加熱によって処理され、これは、材料を酸化し、次いで、酸素欠如中に(すなわち、1%未満、好ましくは0.1%未満、より好ましくは0.01%未満)実行される第2の加熱ステップが続く。
【0024】
電極の使用中に、形状づけられた導電性材料は、好ましくはイオン性ゲルと組み合わされて、皮膚との電気接触を改良する。MRI機器のそばで使用されるために開発されたイオン性ゲルは、よく知られており、この使用のために企図されている。好適なメッシュ様形態は、イオン性ゲルにより大きな表面積を提供し、したがって、より低い抵抗を可能にする。除細動電極用の材料として使用されるときに、摂氏20度で調製された材料の電気抵抗は、好ましくは1平方メートル当たり100オーム未満、より好ましくは1平方メートル当たり10オーム未満、さらにより好ましくは1平方メートル当たり5オーム未満であり、用途によってはさらにより好ましくは1平方メートル当たり2オーム未満である。心電図トリガ電極または他の心電図電極用の材料として使用されるときに、摂氏20度で調製された材料の電気抵抗は、好ましくは1平方メートル当たり1000オーム未満、より好ましくは1平方メートル当たり100オーム未満、さらにより好ましくは1平方メートル当たり10オーム未満である。心電図入力回路のインピーダンスが適切に高い他の実施の形態において、好適な電極は、1平方メートル当たり1000オームより大きい電気抵抗、または、1平方メートル当たり10,000オームより大きい電気抵抗さえ有してもよい。
【0025】
(電極組成)
電極は、様々な導電性材料および材料の組み合わせから作られてもよい。磁気共鳴映像法中にまたはMRIの存在中に高い電磁放射線を生成する別の手順中に使用するために、電極は、感知できるほどの(すなわち、接触ゲルを含まない総導電性材料の10重量%未満を含む)常磁性材料がないことが好ましい。MRI信号との干渉を回避するために、より好ましくは電極材料は5%未満の常磁性材料を有し、さらにより好ましくは1%未満、最も好ましくは常磁性材料として総導電率の0.1%未満を有する。別の実施の形態において、電極は、感知できるほどの(すなわち、接触ゲルを含まない総導電性材料の10重量%未満)金属がなく、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%の金属がない。
望ましい実施の形態において、電極の導体は、「最小金属」組成を含む。「最小金属」という用語は、材料が、25重量%未満の金属であることを意味する。より好ましくは、材料は、10重量%未満の金属材料、さらにより好ましくは5重量%未満の金属材料、最も好ましくは金属材料として総重量の1%未満を有する。
別の実施の形態において、電極の導体は、少なくとも75重量%は有機材料である。別の実施の形態において、有機導体は、少なくとも90重量%の導電性材料を含み、別の実施の形態において、有機導体は、少なくとも99重量%の導電性材料を含む。ここで使用される「有機材料」および「有機導体」という用語は、下記群から選択される要素の少なくとも90重量%を含む材料を意味する。すなわち、炭素、硫黄、酸素、ケイ素、ゲルマニウム、水素、窒素、リンおよびセレンである。より好ましくは、有機材料は少なくとも95重量%の、リストに挙げられた要素の1つ以上を含む。好適な実施の形態において、有機導電性材料は、95重量%を超える炭素である。
【0026】
本発明の別の実施の形態において、金属導体は、機械式サポートとして、最小金属導体(単/複)または不導体と組み合わせて使用される。しかし、MRIと組み合わせて使用されるときには、電極用および電極リード線用の導体として、常磁性材料を避けることが最も好適である。
【0027】
(導電性ポリマー)
本発明の特に好適な実施の形態において、電極内の導電性材料および/またはその接触リード線は、(好ましくは少なくとも75重量%の、より好ましくは少なくとも90重量%の、さらにより好ましくは少なくとも99重量%の)導電性ポリマー(単/複)を含む。導電性有機材料は、MRIおよび他の技術とともに使用するのに特に好適であるが、それは、そのような材料が、これらの手順によって生成される電磁エネルギに干渉することが少ないからである。
驚くべきことに、最小金属導体材料と高い表面積の電極とを組み合わせることが、心電図および心電図トリガシステムに特に有用であり、非常に極端な場合には燃焼を招くことさえありうる、電極およびそのリード線内に誘発された電気(渦)電流等の問題を緩和することができ、非常に極端な場合には、焼けを招くこともあるということが発見された。本発明のこの実施の形態のいずれの1つの理論に縛られることを望むことなく、有機導体材料は生得的に、誘発された(渦)電流に対して抵抗し、一般に電磁波に対して透過であり、特に、電極が固体表面ではなくメッシュを有するときにそうであると考えられている。有機導体の導電率を調整して、MRI放射線誘導電流へ所望の高インピーダンスを提供することができるが、心電図信号の十分な導電性を提供するために、導体は十分に厚いマットで調製されてもよい。有機電極はMRIに対して不透過であり、渦電流をほとんど生成せず、しかし、身体の広い表面積接触に一本のリード線によって接続することができるため、メッシュの形態の厚い有機ポリマーが金属電極よりも優れていることが発見されたかまたは実現された。1つの実施の形態において、有機導体または他の導体から作られた電極は、低い温度上昇率でMRI信号に応答し、以前使用された典型的な小さな電極よりも安全である。
【0028】
導電性ポリマーは、20年以上にわたり集中的に研究されており、広い多様性が知られている。初期には、ポリアセチレン、すなわち、共役有機ポリマーが、適切な試薬によって酸化されるときに高い電気伝導率を有すると報告された。共役ポリマーの導電率および電気活性の概念は、ポリアセチレンから急速に広まり、たとえば、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(p−硫化フェニレン)、ポリアセチレン、ポリアナリン、ポリキノリン、ポリピロールおよびポリチオフェン等の多数の共役炭化水素および芳香族複素環式ポリマーを含み、一方、より近年には、米国特許第6,208,075号に記載されているように、フルオロカーボンポリマーでの成功が報告された。導電性ポリマーを調製するための主な方法は、共鳴安定芳香族分子の電気化学的酸化、ドーピングと一緒の構造的修正、および、導電性遷移金属含有ポリマーの合成を含んだ。これらの材料の1つのみ、組み合わせおよび金属導体の組み合わせの各々が、電極および/または電極リード線の両方用に本発明の実施の形態で使用されてもよい。
【0029】
本発明の特に有用な実施の形態は、電極材料用に、ポリアクリロニトリルまたは他の物質から作られた炭化繊維をあてにする。導電性があり広い面積の電極を作るのに適切である炭化繊維は、たとえばGordonらに付与された米国特許第6,172,344号に教示されたように当業者には公知であり、この特許は参照してここに組み込まれ、特に、有機導体のファブリックをどのように合成するかが記載されているコラム6の下半分を組み込む。この特許には、ポリアクリロニトリル繊維の加熱/酸化が記載されている。処理された繊維は、「事実上100%炭素含有量」を含み、270gm/平方メートル重量のファブリック形態に仕上げられ、摂氏20度で幅にわたって1平方メートル当たり3から4.5オームの範囲の且つ長さ方向に沿って1平方メートル当たり1.5から2.5オームの電気抵抗を呈した。導電性ファブリックは、たとえば、米国特許第6,172,344号のコラム9および表1に示されるように、材料の範囲のいずれで一方の側でカプセル化されるかまたはラミネートされる。この特許は参照して特に組み込まれる。
【0030】
(電極リード線)
従来の心電図電極とは異なる本発明の1つの実施の形態において、リード線は、より大きな導電率のために広い電極に、広い表面にわたってまたはその電極の縁領域に取り付けられてもよく、電極パッド全体にわたる心電図応答を標準化する。電極とそのリード線との間のそのような拡散した接触は、リード線のため、およびリード線と電極との間の接合のために、よりMRI抵抗性材料の使用を可能にしながら、より高い導電率を維持することが発見された。1つの実施の形態において、電極は上述のような有機ポリマーであり、リード線は電極の領域全体にわたって拡散的に接続される。別の実施の形態において、リード線は、少なくとも0.25インチ、より好ましくは0.5インチ、さらにより好ましくは少なくとも0.75インチ長さの縁に沿って取り付けられる。別の実施の形態において、リード線は、少なくとも0.5平方インチ、より好ましくは少なくとも1平方インチの表面積にわたって取り付けられる。
MRIとともに使用される実施の形態において、電極へのリード線は、非常磁性材料(単/複)から作られた総伝導性質量の実質的な部分(すなわち5%未満)を有することができる。常磁性材料の使用は、MRI環境では避けることが好ましいが、それは、常磁性材料がMRI場に干渉することがあり、検出された信号を劣化するからである。1つの実施の形態において、電極の少なくとも75%の導電率は、有機ポリマー(単/複)または酸化ポリマー(単/複)から生じる。多くの有機ポリマーは、鉄、銅および銀等の金属ほどよく伝達しない。しかし、有機ポリマーは、厚い片として製造されてもよく、1平方メートル当たり低い(1,000オーム未満、好ましくは100オーム未満、より好ましくは10オーム未満、さらにより好ましくは5オーム未満の)電気抵抗を有する。1つの実施の形態において、電極および電極へのリード線は、大部分(少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも90重量%)が同一の材料から作られ、リード線は、電極の表面から延在するケーブルを形成する。
【0031】
厚い最小金属導体の使用は、皮膚表面と測定機器との間に良好な導電性を提供するやり方で高インピーダンス材料の使用を可能にするため、MRIには有用である。本発明のこの実施の形態のためにいずれの1つの理論に縛られることを望むことなく、高インピーダンスもまた、電極加熱を減少するのを助ける。この実施の形態および本発明の別の実施の形態は、低い温度上昇率で、すなわち、臨床MRIスキャナにおける露出に典型的な無線周波数および磁場変動によって生じる電極質量の温度の上昇で、加熱する電極を提供する。「低い温度上昇率」という用語は、電極質量の温度の上昇が、1.5テスラスキャナでのMRI検査中にゲーティングに使用されるときに、実施例1に記載されたような従来の電極よりも少ないものを意味する。たとえば、望ましい電極は、実施例1に記載され且つJerzewskiおよびWall[18]によってより完全に記載された典型的な小さな電極よりも、50%少ないか、25%少ないか、または10%少なく温度上昇する。
【0032】
本発明の実施の形態において、単一の電極パッドが、その上に複数のリード線を含んでもよい。各リード線は、パッド内の別個の小さな導電性電極領域に対応してもよく、代替の電極−リード線組み合わせからの信号は、接続された機器でハードウェアまたはソフトウェアによって平均が出されてもよい。あるいは、各リード線は、広い面積の導電性電極の異なる領域に接続してもよい。後者の場合には、取り付けられたリード線を通って流れる電流の大半が、リード線に最も近い電極表面に連結される(源を置くかまたは沈められる)ように、任意に、広い面積の電極は十分に高いインピーダンスを有する。1つの実施の形態において、多数のリード線が、比較的高いインピーダンスの広い面積の電極表面の異なる場所に電気的に接続される。このようにして、より高いインピーダンスが使用されながら、無線周波数電界効果に対する最大抵抗のためにリード線インピーダンスを最小限にする。当然ながら、「その上に複数のリード線」を有する「単一の電極パッド」は、電気的に孤立しており且つ各領域に取り付けられた別個のリード線を有する別個の領域を有する広い面積の導電性電極も含む。
【0033】
(心電図トリガ用の電極システム)
電極は、そのリード線を通って、MRI等の診断手順とともに使用される心電図トリガシステムに連結される。そのようなシステムは、本発明の実施の形態において、直接または幾分の修正後に、使用されることができる。一般に、システムは、少なくとも2つの電極と任意の接地とを有して回路によって分解される信号を生成し、コンピュータプログラムを有して心臓周期のステップに対応する信号を生成する。任意の接地は、どこでもよいが、胴体の上部であることが好ましい。JerzewskiおよびWallからの図7−4は、接地電極、心臓血管磁気共鳴電極および心電図電極の代表的な配置を示す。これらの配置は、電極温度および信号対雑音測定に関するMRIの効果を測定するときに、電極および/または接地の配置に使用されてもよい。
【0034】
ハードウェア入力回路は、インピーダンスの3つの源、すなわち、ハードウェア自体のインピーダンス、電極およびリード線のインピーダンス、および、電極に接続される身体組織のインピーダンスを見るとみなすことが可能である。好ましくは、ハードウェアのインピーダンスは、電極、リード線および身体組織の組み合わされたインピーダンスよりも大きい。より好ましくは、ハードウェアのインピーダンスは、電極およびリード線の組み合わされたインピーダンスよりも、少なくとも10倍大きく、さらにより好ましくは、ハードウェアのインピーダンスは、少なくとも100倍大きい。本発明の実施の形態は、他者によって使用される心電図電極の表面積に比較して、より大きな表面積のため身体組織用により低いインピーダンスを与える。好適な実施の形態において、エレクトロニクスの入力インピーダンスの10%未満、より好ましくは1%未満、さらにより好ましくは0.1%未満である(電極+リード線)インピーダンスを与える導電性ポリマーが使用される。業界で公知のシールドおよびケーブル材料およびシステムが、多くの実施の形態で使用されてもよく、心電図トリガのために既に開発されているハードウェアも同様であり、ここではさらには説明されない。
【0035】
本発明の1つの実施の形態において、外部回路(リード線、ローパスフィルタ等のいずれの電子フィルタ、電極、身体組織)時定数は、高周波数渦電流等の高周波数パルス、および、トリガのために必要ではない心電図信号の高周波数構成要素を拒否するように調整される。別の実施の形態において、心電図トリガハードウェアおよび/またはソフトウェアは、これらの高周波数構成要素の1つ以上を拒否するように調整される。1つの態様において、本発明の実施の形態は、より速く動くパルスよりもより遅く動くパルスを拾うことがより好ましいより広い面積のパッド(より高いキャパシタンスを有する)によって、生得的に低い周波数識別システムを提供する。これらの実施の形態は、身体運動を拾うのもあまり容易ではなく、これは、より高い周波数構成要素を有することが多い。
ここに検討された望ましい電極の有利な特徴は、改良された安全のために重要な結果を有する。たとえば、広い面積の電極は一般に、以前使用された小さな電極システムに比較して、より信頼のおけるR波情報を提供することができることが分かった。この特徴は、心拍のより信頼のおけるモニタリングを可能にし、医療手順全体により大きな安全を提供する。
【0036】
次に、より具体的に図面に向かうと、本発明の代表的な実施の形態がさらに説明される。下記の実施例は、本発明の実施の形態を例示するように提供されるが、本発明の範囲を限定するとみなされるべきではない。
【実施例1】
【0037】
従来のMR電極は、被験者から心電図記録を記録するための広い面積のパッチ電極と比較された。データを受け取り分析するために、バイオパック(BIOPAC)デジタルデータ獲得システムが使用された。2つの除細動パッチ(アギレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)、カタログ番号M3501A、多機能成人除細動電極(Multifunction Adult Defib Electrodes))のリード線が剥がされ、裸線がバイオパック心電図プリアンプの入力に挿入された。得られた信号は、パッチとして同一の電気軸上の2つのMRの従来の電極から同時に記録されたものと比較された。
表面心電図信号は、志願者から、安静呼吸中、息こらえ中、および、志願者がゆっくり動いている間に記録され、典型的なMR検査中に予想される状態をシミュレートした。
【0038】
広い面積のパッチから記録された信号は、従来のリード線から記録されたものと形態は同一であるが、振幅は15から25%大きいという結果が示された。両方のトレーシングに同一の尺度を示す図3を参照。図3の上部プロットは広い電極パッチからの結果を示し、下部プロットは従来の小さな電極の使用からの結果を示す。増大した信号は、プリアンプを変えることによって影響されなかった。
被験者が有意なアーチファクトで左右に動いたときに、図4の記録に見られるように、マウンド540が従来の電極から容易に誘発されたが、広い表面のパッチからはなかった。上部プロットは広い電極パッチからの結果を示し、下部プロットは従来の小さな電極の使用からの結果を示す。従来の電極から記録されたノイズは、生来の心電計復極に等しいように、振幅が十分に高かった。すなわち、測定されたノイズは、MRゲーティングを不適切に始動するほど十分に強かった。他方、広い電極パッチからの同時記録は、有意なアーチファクトを示さなかった。2つの記録は同一の尺度を使用して呈されている。この所見は再現された。
呼吸中に、両方の信号の振幅の減少が注目されたが、図5に見られるように、より広いパッチからの信号は、従来の小さな電極からのものほど影響されなかった。上部プロットは広い電極パッチからの結果を示し、下部プロットは従来の小さな電極の使用からの結果を示す。従来の小さな電極からの信号は、広い面積のパッチからのものよりも29%小さかった。
【実施例2】
【0039】
長さ7インチ幅4.25インチの2つの広い面積の長円形状の電極パッチが製造され、図1の心電図ゲーティング用に示されるように使用される。この実施例は、図面に示された任意の電極位置を使用した。しかし、本願では、他の位置も企図される。好ましくは、2つの電極は重なり合わないが、当業者によって理解されるように信号を得るために十分な距離を有する。
電極パッチの導電性材料は、99パーセントを超える有機材料を含む炭化ファブリックであり、米国特許第6,172,344号に記載されているように、1.5デニールのポリアクリルアミド繊維トウから調製される。簡単に言うと、繊維は、10時間100パーセント酸素の存在内で摂氏221度で炉内で継続して焼かれる。繊維は次いで引かれ、断面で100繊維にスピンされ、2/14重量ヤーンに撚られる。ヤーンは、16分の1インチのインターウィーブ間隔あけを有するゆるいニット繊維に織られる。ゆるいニット材料は鋏で切られ、2つの長円形状を形成する。2フィート長さの50繊維の束が、各々の終端1インチを針で縫合することによって、各長円形状に取り付けられる。取り付けられた束のリード線を備えた長円電極が、15分間100パーセント窒素の存在内で摂氏1000度で焼かれる。製品は黒であり、摂氏20度で1平方メートル当たり2から30オームの間の抵抗を有する。
【0040】
各長円導電性繊維製品が、束が長円から来る側に、絶縁ではあるが依然として剛性のプラスチック層を接着することによって、電極内に組み立てられ、出口はリード線束用に開口する。リード線取付部位とは反対側に通常の導電性ゲルが加えられ、長円が、図1に示されるように、患者に装着される。リード線は心電図モニタに電気的に接続され、心電図信号が生成される。長円電極は、通常の心電図電極のものと比較すると、MRI測定に対して有意に低い干渉を生成することがわかる。
長円電極は、下記のように除細動用に作られ使用される。上記に引用された手順を使用して、長円布を製造するが、1フィート長250繊維のより厚い束が各長円に取り付けられてリード線を形成する。リード線の各々は、除細動器から銅線を取り付けるための摩擦カップリングで終端する。除細動器は、銅線を電極リード線端に取り付けた後に、患者がMRI装置の近傍にいる間に、使用することができる。銅線は、常に患者から少なくとも数インチ離れて位置決めされる。薄いリード線が接続された炭素長円電極と厚いリード線が接続された炭素長円電極との両方が、MRI手順の存在中に心電図測定を達成するために使用される。
本発明の他の実施の形態および使用は、明細書および本願に開示された本発明の実際を考慮すれば、当業者には明らかである。本願に引用されたすべての参考文献および他の文書は、すべての米国特許および外国特許および特許出願およびすべての優先権書類を含めて、具体的に且つ全体的に参照してここに組み込まれる。明細書および実施例は例としてみなされるだけであり、本発明の真の範囲および精神は特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来の心電図電極および本発明の広い電極パッチを使用する前部電極配置を示す図である。
【図2】従来の心電図電極および本発明の広い電極パッチを使用する後部電極配置を示す図である。
【図3】広い電極パッチ(頂部グラフ)および従来の小さい電極(底部グラフ)を使用して得られた心電図信号結果を示す図である。
【図4】広い電極パッチ(頂部グラフ)および従来の小さい電極(底部グラフ)を使用して得られた心電図信号における任意の患者運動の影響を示す図である。
【図5】広い電極パッチ(頂部グラフ)および従来の小さい電極(底部グラフ)を使用して得られた心電図信号における患者呼吸の影響を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の診断のための医療手順における前向きおよび後ろ向きの心臓ゲーティング用のシステムであって、
少なくとも2つの広い面積の電極を具備し、各電極は3平方インチの最小皮膚表面接触領域を有する
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
各電極は、1平方メートル当たり少なくとも2オームの抵抗を有する
ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
各電極は、1平方メートル当たり少なくとも10オームの抵抗を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
各電極は、リード線を有し、前記リード線の抵抗は長さ方向の10センチメートル当たり少なくとも100オームである
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記医療手順は、磁気共鳴映像法、心臓画像形成、心臓核シンチグラフィ、コンピュータ断層撮影および心エコー検査からなる群から選択される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記電極は、常磁性材料がない
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記電極は、有意の強磁性特性を備えた材料がない
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記電極は、放射線透過性である
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記電極は、少なくとも50%の炭素と任意に導電性ゲルとから構成される導体を具備する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記導体は、少なくとも95%炭素である
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記電極導体は、有機材料から作られた導電性メッシュまたはファブリックを具備する
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
4平方インチの最小表面接触領域と、最大直径にわたって少なくとも10オームの抵抗と、を有する
ことを特徴とする心電図電極。
【請求項13】
最大直径にわたって少なくとも100オームの抵抗を有する
ことを特徴とする請求項12記載の電極。
【請求項14】
常磁性材料がない
ことを特徴とする請求項12または13に記載の電極。
【請求項15】
有意の強磁性特性を備えた材料がない
ことを特徴とする請求項12から14のいずれか一項に記載の電極。
【請求項16】
少なくとも50%の炭素と任意に導電性ゲルとを含む導体を具備する
ことを特徴とする請求項12から15のいずれか一項に記載の電極。
【請求項17】
前記導体は、少なくとも90%の有機材料を具備する
ことを特徴とする12から16のいずれか一項に記載の電極。
【請求項18】
前記導体は、少なくとも95%の炭素を具備する
ことを特徴とする請求項12から17のいずれか一項に記載の電極。
【請求項19】
前記導体は、メッシュまたはファブリックの形態である
ことを特徴とする請求項12から18のいずれか一項に記載の電極。
【請求項20】
MRIスキャナの5ガウス境界線内で使用することができる心臓電極であって、導電性有機材料を具備し且つ金属導体がない
ことを特徴とする心臓電極。
【請求項21】
前記導電性有機材料は、少なくとも幾分のMRI信号に対して透過するウィーブを備えたファブリックまたはマットの形態である
ことを特徴とする請求項20記載の電極。
【請求項22】
患者の診断のための医療手順における心臓ゲーティング用のシステムであって、
少なくとも2つの広い面積の電極であって、各々が4平方インチの最小皮膚表面接触領域を具備する電極と、
心臓フェーズを決定するための信号処理ユニットであって、各電極は前記信号処理ユニットに電気的に接続され、前記信号処理ユニットは、画像形成のための基準点としてR波に応答する信号を出力する信号処理ユニットと、を具備する
ことを特徴とするシステム。
【請求項23】
前記医療手順は、磁気共鳴映像法、心臓画像形成、心臓核シンチグラフィ、コンピュータ断層撮影および心エコー検査からなる群から選択される
ことを特徴とする請求項22記載のシステム。
【請求項24】
前記医療手順は磁気共鳴映像法であり、前記電極は有意の強磁性材料が実質的にない
ことを特徴とする請求項22または23に記載のシステム。
【請求項25】
前記電極は、有意の強磁性材料が実質的にないリード線によって前記信号処理ユニットに電気的に接続される
ことを特徴とする請求項22から24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
各電極は、少なくとも98重量%の非金属材料を具備し、可撓性のあるメッシュまたはファブリックの形態である
ことを特徴とする請求項22から25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
画像誘導介入医療手順における前向きおよび後ろ向きの心臓ゲーティング用のシステムであって、少なくとも2つの広い面積の電極を具備し、各電極は3平方インチの最小皮膚表面接触領域を有する
ことを特徴とするシステム。
【請求項28】
前記医療手順は、剥離治療の形態である
ことを特徴とする請求項27記載のシステム。
【請求項29】
各電極は、最大直径にわたって少なくとも2オームの抵抗を有する
ことを特徴とする請求項27または28に記載のシステム。
【請求項30】
各電極は、リード線を有し、前記リード線の抵抗は長さ方向の10センチメートル当たり少なくとも2オームである
ことを特徴とする請求項27から29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記電極は、常磁性材料がない
ことを特徴とする請求項27から30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記電極は、有意の強磁性特性を備えた材料がない
ことを特徴とする請求項27から31のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項33】
前記導体は、少なくとも95%炭素である
ことを特徴とする請求項27から32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
前記電極導体は、有機材料から作られた導電性メッシュまたはファブリックを具備する
ことを特徴とする請求項27から33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
患者の診断のためのMRI手順における前向きおよび後ろ向きの心臓ゲーティング用の安全なシステムであって、
少なくとも2つの広い面積の電極を具備し、各電極は3平方インチの最小皮膚表面接触領域を有し、各電極は、低い温度上昇率で1.5テスラスキャナの磁場変動および高周波数に応答する
ことを特徴とするシステム。
【請求項36】
前記低い温度上昇率は、1.5インチ直径の従来のMR電極から得られるものの高さよりも25%低い
ことを特徴とする請求項35記載のシステム。
【請求項37】
患者の診断のためのMRI手順における前向きおよび後ろ向きの心臓ゲーティング用の安全なシステムであって、少なくとも2つの広い面積の電極を具備し、各電極は3平方インチの最小皮膚表面接触領域を有し、前記システムは、1.5インチ直径の従来のMR電極で得られるものよりも少なくとも2倍高い信号雑音比を備えたR波信号を検出する
ことを特徴とするシステム。
【請求項38】
各電極は、低い温度上昇率で1.5テスラスキャナの磁場変動および高周波数に応答する
ことを特徴とする請求項37記載のシステム。
【請求項39】
画像形成手順中に心臓合併症の早期検出を容易にする画像形成システムであって、請求項1から38のいずれか一項に記載のシステムを具備する
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項40】
放射線検査中に心臓合併症に遭遇した患者における治療的心臓除細動を容易にするシステムであって、二重機能MRI適合電極を具備し、第1の機能は少なくとも1つの心電図信号をモニタすることであり、第2の機能は除細動である
ことを特徴とするシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2006−509528(P2006−509528A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−541435(P2003−541435)
【出願日】平成14年11月1日(2002.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2002/035043
【国際公開番号】WO2003/039337
【国際公開日】平成15年5月15日(2003.5.15)
【出願人】(503366243)ザ ヘンリー エム ジャクソン ファウンデーション (3)
【氏名又は名称原語表記】The Henry M.Jackson Foundaion
【Fターム(参考)】