説明

心臓刺激装置システム

【課題】心臓に穿刺せずに、電極を確実に心臓の表面に留置することができる心臓刺激装置システムを提供する。
【解決手段】絶縁材料でシート状に形成されるとともに厚さ方向に貫通する貫通部16が形成された基材13、および基材の一方の面13aに取り付けられた導電性の印加部を有する電極10と、先端部35に電極が着脱可能に取り付けられる電極操作処置具30と、を備え、電極操作処置具は、先端部に電極が装着された状態で、基材の一方の面側の心嚢膜W4を貫通部内に引き込む引き込み手段33を有し、電極は、一方の面に沿うように貫通部に突出する係止部材14を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓刺激装置システム、より詳しくは、心嚢膜上に電極を留置して使用される心臓刺激装置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
胸腔内からのアプローチにより低侵襲な手技を用いて、電極を心臓の外部表面に留置して使用する心臓刺激装置が開発されている。このような心臓刺激装置は、留置された電極が心臓の拍動に伴って位置ずれを生じると好ましくないため、心筋へ固定部材を穿刺することにより電極を固定する方法がしばしば用いられる。
【0003】
特許文献1には、固定部材を用いて電極を固定する心臓電極固定システムが記載されている。この固定システムでは、心筋内にアンカーが係止され、アンカーに取り付けられた張力要素または糸により電極が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−532144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、アンカーなどの部材を心筋に穿刺することは、心臓にとって大きな負荷であり、心臓の拍動にも影響が少なくない。また、心筋の表面には心筋に酸素や栄養を供給するための血管である冠動脈および冠静脈が走行しており、部材がこれらの血管に穿刺された場合、出血し心タンポナーデなどの重篤な合併症を引き起こす可能性があるという問題がある。
【0006】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであって、心臓に穿刺せずに、電極を確実に心臓の表面に留置することができる心臓刺激装置システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の心臓刺激装置システムは、絶縁材料でシート状に形成されるとともに厚さ方向に貫通する貫通部が形成された基材、および前記基材の一方の面に取り付けられた導電性の印加部を有する電極と、先端部に前記電極が着脱可能に取り付けられる電極操作処置具と、を備え、前記電極操作処置具は、前記先端部に前記電極が装着された状態で、前記基材の前記一方の面側の心嚢膜を前記貫通部内に引き込む引き込み手段を有し、前記電極は、前記基材内に設けられ、前記一方の面に沿うように前記貫通部に突出する係止部材を有することを特徴としている。
【0008】
また、上記の心臓刺激装置システムにおいて、前記基材は、前記貫通部を挟んで前記係止部材が突出する突出方向の両側に配置されていることがより好ましい。
また、上記の心臓刺激装置システムにおいて、前記貫通部は、前記基材に形成された貫通孔であることがより好ましい。
また、上記の心臓刺激装置システムにおいて、前記係止部材が前記貫通部に突出したときに、前記係止部材の前記突出方向の先端が前記基材に穿刺することがより好ましい。
【0009】
また、上記の心臓刺激装置システムにおいて、前記引き込み手段は、自身の先端が前記先端部とされた本体と、互いに接近および離間可能とされた一対の把持片と、先端側回動軸および基端側回動軸を有するとともに一対の前記把持片に接続され、前記回動軸間の距離が短くなったときに一対の前記把持片が互いに離間し、前記回動軸間の距離が長くなったときに一対の前記把持片が互いに接近するように構成された開閉機構と、前記先端側回動軸に接続された支持部材と、前記基端側回動軸に先端が接続された操作ワイヤと、前記操作ワイヤに沿って伸縮可能に配置され、先端が前記操作ワイヤに接続されるとともに基端が前記支持部材に接続された第一のバネ部材と、前記操作ワイヤに沿って伸縮可能に配置され、先端が前記支持部材に接続されるとともに基端が前記本体に接続された第二のバネ部材と、を有し、前記第一のバネ部材のバネ定数は前記第二のバネ部材のバネ定数よりも小さく設定されていることがより好ましい。
【0010】
また、上記の心臓刺激装置システムにおいて、前記係止部材は、前記係止部材が突出する突出方向を螺旋の軸線とするコイル状に形成されるとともに、前記突出方向の先端が鋭利に形成された針部材であることがより好ましい。
また、上記の心臓刺激装置システムにおいて、前記係止部材は、前記係止部材が突出する突出方向に延びるとともに、前記突出方向の先端が鋭利に形成された針部材であることがより好ましい。
また、上記の心臓刺激装置システムにおいて、前記電極操作処置具は、前記先端部の先端面から突出する係合部を有し、前記電極は、前記基材に形成され前記係合部に着脱可能に取り付けられる被係合部を有することがより好ましい。
【0011】
また、上記の心臓刺激装置システムにおいて、前記引き込み手段は、自身の先端が前記先端部とされた本体と、互いに接近および離間可能とされた一対の把持片と、先端側回動軸および基端側回動軸を有するとともに一対の前記把持片に接続され、前記回動軸間の距離が短くなったときに一対の前記把持片が互いに離間し、前記回動軸間の距離が長くなったときに一対の前記把持片が互いに接近するように構成された開閉機構と、前記先端側回動軸に接続された支持部材と、前記基端側回動軸に先端が接続された操作ワイヤと、前記操作ワイヤに沿って伸縮可能に配置され、先端が前記操作ワイヤに接続されるとともに基端が前記支持部材に接続された第一のバネ部材と、前記操作ワイヤに沿って伸縮可能に配置され、先端が前記支持部材に接続された第二のバネ部材と、を有し、前記電極操作処置具は、前記本体の先端面から突出するとともに前記第二のバネ部材の基端に接続された係合部と、前記操作ワイヤに沿って伸縮可能に配置され、先端が前記係合部に接続されるとともに基端が前記本体に接続された第三のバネ部材と、を有し、前記第一のバネ部材のバネ定数は前記第二のバネ部材のバネ定数よりも小さく設定され、かつ、前記第二のバネ部材のバネ定数は前記第三のバネ部材のバネ定数よりも小さく設定され、前記電極は、前記基材に形成され、前記本体の先端面から突出した前記係合部に着脱可能に取り付けられる被係合部を有することがより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の心臓刺激装置システムによれば、心臓に穿刺せずに、電極を確実に心臓の表面に留置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態の心臓刺激装置システムの全体図である。
【図2】同心臓刺激装置システムの電極の斜視図である。
【図3】同心臓刺激装置システムの電極における一部を破断した平面図である。
【図4】同心臓刺激装置システムの電極操作処置具において先端から把持装置を突出させた状態の斜視図である。
【図5】同電極操作処置具の押し込み状態での基端側における側面の断面図である。
【図6】同電極操作処置具の押し込み状態での先端側における側面の断面図である。
【図7】同電極操作処置具の第一の牽引状態での先端側における側面の断面図である。
【図8】同電極操作処置具の第一の牽引状態での基端側における側面の断面図である。
【図9】同電極操作処置具の第二の牽引状態での先端側における側面の断面図である。
【図10】同電極操作処置具の第二の牽引状態での基端側における側面の断面図である。
【図11】同心臓刺激装置システムの使用時の動作を説明する図である。
【図12】同心臓刺激装置システムの使用時の動作を説明する図である。
【図13】同心臓刺激装置システムの使用時の動作を説明する図である。
【図14】本発明の第1実施形態の変形例における心臓刺激装置システムの電極の平面図である。
【図15】同心臓刺激装置システムの使用時の動作を説明する図である。
【図16】本発明の第1実施形態の変形例における心臓刺激装置システムの電極の平面図である。
【図17】本発明の第1実施形態の変形例における心臓刺激装置システムの一部を破断した模式図である。
【図18】本発明の第2実施形態の心臓刺激装置システムの要部の断面図である。
【図19】同心臓刺激装置システムの使用時の動作を説明する図である。
【図20】同心臓刺激装置システムの使用時の動作を説明する図である。
【図21】同心臓刺激装置システムの使用時の動作を説明する図である。
【図22】本発明の第3実施形態の心臓刺激装置システムの要部の断面図である。
【図23】同心臓刺激装置システムの使用時の動作を説明する図である。
【図24】本発明の第4実施形態の心臓刺激装置システムの電極の斜視図である。
【図25】同心臓刺激装置システムの要部の断面図である。
【図26】同心臓刺激装置システムの使用時の動作を説明する図である。
【図27】同心臓刺激装置システムの使用時の動作を説明する図である。
【図28】同心臓刺激装置システムの使用時の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る心臓刺激装置システム(以下、「システム」とも称する。)の第1実施形態を、図1から図17を参照しながら説明する。本システムは、心嚢膜上に取り付けられ、心嚢膜を介して心臓に電気的な刺激を印加して治療を行う装置である。
図1に示すように、本システム1は、導電性の印加部11、12を有する電極10と、後述する先端硬質部35に電極10が着脱可能に取り付けられる電極操作処置具30とを備えている。
なお、図1においては電極10は1つしか示していないが、システム1に備えられる電極10の数に制限はなく、いくつでもよい。
【0015】
電極10は、図2および図3に示すように、絶縁材料でシート状に形成された支持体(基材)13と、支持体13の一方の面13aに露出するように取り付けられた一対の前述の印加部11、12と、針部材(係止部材)14とを有している。
支持体13は、例えばシリコーンなどの生体適合性の高い絶縁体で略円板状に形成されている。支持体13には、支持体13の厚さ方向に貫通する貫通孔(貫通部)16、および一対のガイド部(被係合部)17、18が形成されている。
この例では、貫通孔16は平面視で矩形状に形成され、ガイド部17、18は円形状に形成されている。平面視において、ガイド部17、18は、貫通孔16の中央部を挟む一対の角部上に配置され、貫通孔16と連通している。本実施形態では、貫通部は貫通孔16であるので、一方の面13aに平行ないずれの方向においても、貫通孔16を挟んだ両側に支持体13が配置されていることになる。
支持体13には、一方の面13aに平行に通し孔13bが形成されている。通し孔13bの一端が貫通孔16の内周面に開口することで、通し孔13bと貫通孔16とが連通している。
平面視において、通し孔13bの軸線と、ガイド部17、18を結ぶ仮想線とのなす角度θは、約45°に設定されている。
【0016】
通し孔13bの内周面には、筒状部材19が取り付けられている。筒状部材19における貫通孔16側となる先端には係止部19aが、貫通孔16とは反対側となる基端には係止部19bがそれぞれ設けられている。係止部19a、19bは、筒状部材19の内周面から突出するように、それぞれが略環状に形成されている。係止部19a、19bの内径については、後述する。筒状部材19の先端は、貫通孔16の内周面とほぼ同一面上に配置されている。
【0017】
針部材14は、素線14aが螺旋状に巻回されたコイル状に形成されている。素線14aの先端は鋭利に形成されている。針部材14全体の外径は、筒状部材19の内径より小さく設定されている。針部材14の基端には円板状の支持板22における一方の主面が固定され、支持板22における他方の主面には、スタイレット23の先端が固定されている。針部材14、支持板22、およびスタイレット23は、筒状部材19内で、針部材14の螺旋の軸線に沿って進退可能となっている。
【0018】
前述の係止部19a、19bの内径は、支持板22の外径より小さく設定されている。スタイレット23は、係止部19b内を挿通可能となっている。
支持板22は、係止部19a、19bの間に配置されている。スタイレット23を牽引操作することで支持板22を係止部19bの先端面に当接させると、針部材14が筒状部材19内に収容される待機状態となる。一方で、待機状態から、スタイレット23をスタイレット23の軸線回りに回転させつつ押し込み、支持板22を係止部19aの基端面に当接させると、針部材14が一方の面13aに沿うように貫通孔16内に突出した突出状態となる。この突出状態のときに、貫通孔16に対する針部材14が突出する突出方向Dの先端の支持体13に針部材14の先端が穿刺するように設定されている。
【0019】
印加部11、12は、ステンレス鋼やチタンなどの生体適合性を有する金属で形成されている。
【0020】
図1に示すように、電極10の外周面にはリード81の一端が接続され、リード81の他端は、コネクタ82により心臓刺激装置83に着脱可能に接続されている。
リード81内には、不図示の電線が設けられていて、印加部11、12と心臓刺激装置83とを電気的に接続する。また、図3に示すように、リード81に形成された管路81aに、前述のスタイレット23を進退可能に挿通することができる。
心臓刺激装置83は、リード81を介して印加部11、12間に所定の波形の直流電圧などを印加することで、印加部11、12に接触している心臓などを刺激し、除細動やペーシングなどの各種治療を行うことができる。
【0021】
電極操作処置具30は、図1および図4に示すように、長尺の挿入部(本体)31と、挿入部31の基端に取り付けられた操作部32とを有している。また、電極操作処置具30は、把持装置(引き込み手段)33を有している(図4参照。)。
挿入部31は、先端に設けられた先端硬質部(先端部)35と、先端硬質部35の基端に接続された湾曲部36と、湾曲部36の基端に固定された基端管部37とで構成されている。
先端硬質部35は略管状に形成され、先端硬質部35の先端面35aには、先端面35aから突出する一対の突起(係合部)38、39が設けられている。突起38、39の外径は電極10のガイド部17、18の内径にほぼ等しく設定されているとともに、突起38、39間の距離はガイド部17、18間の距離に等しく設定されている。
このように構成された突起38、39は、電極10における支持体13の他方の面13c(図2参照。)側からガイド部17、18に着脱可能となっている。そして、先端硬質部35の突起38、39に電極10のガイド部17、18を係合させることで、先端硬質部35に電極10が装着される。
【0022】
挿入部31内には、不図示の複数の調節ワイヤが挿通されている。湾曲部36は、複数の湾曲駒が互いに回動可能に接続されていて、湾曲部36はこれらの回動軸線回りに湾曲することができる。
基端管部37は、管状に形成されている。
【0023】
操作部32は、図1および図5に示すように、ケーシング42と、先端硬質部35を湾曲部36の先端における軸線回りに回転させるための回転用ダイヤル43と、湾曲部36を湾曲させるための湾曲用ダイヤル44と、把持装置33を操作するためのレバー45とを有する。
回転用ダイヤル43および湾曲用ダイヤル44はケーシング42に回転可能に支持され、レバー45はケーシング42に自身の基端部回りに揺動可能に支持されている。
回転用ダイヤル43を回転させることで、湾曲部36の先端における軸線に対して先端硬質部35を回転基準位置から時計回りおよび反時計回りに約90°ずつ回転させることができる。湾曲用ダイヤル44を回転させることで複数の調節ワイヤが進退し、湾曲部36を湾曲基準平面上で湾曲させることができる。この例では、湾曲部36は湾曲基準位置を中心として左右に約90°ずつ湾曲する。
先端硬質部35の回転範囲や、湾曲部37の湾曲範囲は、適宜設定されてよい。
【0024】
図5に示すように、ケーシング42のハンドル部42aにはケーシング側溝部46が、レバー45における揺動先端部45aにはケーシング側溝部46に係合するレバー側溝部47がそれぞれ設けられている。ケーシング側溝部46およびレバー側溝部47で、公知のラチェット構造48を構成する。
ハンドル部42aに対してレバー45が揺動するが、ラチェット構造48により、後述するいくつかの揺動角度で、ハンドル部42aにレバー45を位置決めすることができる。
【0025】
把持装置33は、先端硬質部35に電極10が装着された状態で、支持体13の一方の面13a側の心嚢膜を貫通孔16内に引き込む装置である。
図5および図6に示すように、把持装置33は、前述の挿入部31と、互いに接近および離間可能とされた一対の把持片51、52と、先端側回動軸53および基端側回動軸54を有し把持片51、52を操作する開閉機構55と、先端側回動軸53に接続された支持部材56と、基端側回動軸54に接続された操作ワイヤ57と、第一のバネ部材58および第二のバネ部材59とを有している。
【0026】
把持片51、52の対向する面には、歯部51a、52aがそれぞれ形成されている。把持片51、52が互いに接近して閉状態になったときに、歯部51a、52aにより、把持片51、52間に狭持された心嚢膜を確実に把持することができる。
開閉機構55は、公知のいわゆるパンタグラフ型のリンク機構であり、一対の先端側リンク片62、63、一対の基端側リンク片64、65、先端側リンク片62と基端側リンク片64とを回動自在に接続する接続ピン66、先端側リンク片63と基端側リンク片65とを回動自在に接続する接続ピン67、および、前述の回動軸53、54とで構成される。
先端側回動軸53は、先端側リンク片62、63の先端同士を回動自在に接続している。基端側回動軸54は、基端側リンク片64、65の基端同士を回動自在に接続している。前述の把持片51は先端側リンク片63の先端に接続され、把持片52は先端側リンク片62の先端に接続されている。
【0027】
このように構成された開閉機構55は、回動軸53、54間の距離が長くなったときに把持片51、52が互いに接近して前述の閉状態になり、回動軸53、54間の距離が短くなったときに把持片51、52が互いに離間して開状態になるように構成されている。
【0028】
支持部材56は、この例では、先端側に配置され先端側回動軸53に接続された先端側支持部材70と、先端側支持部材70の基端側に配置され、先端側支持部材70の基端面に係止される基端側支持部材71とで構成される。
先端側支持部材70は、後述するように挿入部31の軸線C1に沿って進退する。基端側支持部材71は、管状に形成されている。基端側支持部材71の先端には、先端側支持部材70の外周面を覆い、先端側支持部材70が軸線C1に沿って移動するように案内する円筒部72が設けられている。
挿入部31に対して操作ワイヤ57を最も押し込んだ押し込み状態では、把持片51、52が開状態になるとともに、基端側支持部材71と先端側支持部材70との間に軸線C1方向に隙間Sが形成される。基端側支持部材71の基端には、当て板73が取り付けられている。当て板73には、軸線C1方向に通し孔73aが形成されている。
【0029】
操作ワイヤ57は軸線C1方向に延び、基端側支持部材71の管路、当て板73の通し孔73a、および、後述する支持板75の通し孔75aに進退可能に挿通されている。
操作ワイヤ57の外周面であって当て板73より先端側には、固定板74が固定されている。操作ワイヤ57の基端にはレバー45が接続されていて、レバー45を揺動させることで、操作ワイヤ57を軸線C1方向に進退させることができる。
【0030】
バネ部材58、59としては、つる巻きバネが用いられている。
第一のバネ部材58は軸線C1に沿うように配置され、第一のバネ部材58の螺旋の軸線上には操作ワイヤ57が配置されている。第一のバネ部材58は、先端が固定板74を介して操作ワイヤ57に接続されるとともに、基端が当て板73に接続されている。
第二のバネ部材59は軸線C1に沿うように配置され、第二のバネ部材59の螺旋の軸線上には操作ワイヤ57が配置されている。第二のバネ部材59は、先端が当て板73に接続されるとともに、基端がケーシング42に取り付けられた支持板75に接続されている。支持板75には、通し孔75aが形成されている。
このように構成されたバネ部材58、59は、軸線C1方向に伸縮可能に配置されている。
第一のバネ部材58のバネ定数は、第二のバネ部材59のバネ定数よりも小さく設定されている。第一のバネ部材58のバネ定数は、第二のバネ部材59のバネ定数の、例えば10分の1以下になっていることが好ましい。
【0031】
電極操作処置具30では、第二のバネ部材59が、支持板75が取り付けられたケーシング42に対して当て板73を先端側に移動させる力を発生させ、第一のバネ部材58が、固定板74と当て板73との間を軸線C1方向に押し広げる力を発生させている。これにより、術者がレバー45を操作していない状態において、バネ部材58、59がそれぞれ伸びることで操作ワイヤ57は押し込み状態になり、レバー45の揺動先端部45aは、電極操作処置具30全体の先端側に移動している。
【0032】
このように構成された電極操作処置具30は、操作ワイヤ57が押し込み状態である状態から、レバー45を揺動させ揺動先端部45aを基端側に移動させていくと、以下のようになる。すなわち、図7に示すように、操作ワイヤ57が牽引され、基端側回動軸54が基端側に移動することで、把持片51、52が互いに接近して閉状態になり、先端側支持部材70が円筒部72に案内されて軸線C1に沿って基端側に移動し、基端側支持部材71の先端に当接する。このとき、図8に示すように、第二のバネ部材59よりもバネ定数が小さな第一のバネ部材58が第二のバネ部材59より大きく変形し(縮む変化量が大きくなり)、第一のバネ部材58の隣り合う素線が密着する密着状態となる。
このときの操作ワイヤ57の位置を、以下では、「第一の牽引状態」と称する。
【0033】
さらに、揺動先端部45aを基端側に移動させると、操作ワイヤ57が牽引され、第一のバネ部材58が密着状態となっているために、図9および図10に示すように、操作ワイヤ57、先端側支持部材70、および基端側支持部材71が一体となって基端側に移動する。このとき、閉状態となった把持片51、52が先端硬質部35の管路内に引き込まれる。
このときの操作ワイヤ57の位置を、以下では、「第二の牽引状態」と称する。
【0034】
前述のラチェット構造48は、操作ワイヤ57が第一の牽引状態および第二の牽引状態となったときのレバー45の揺動角度で、ハンドル部42aに対してレバー45を位置決めすることができるように設定されている。
【0035】
次に、以上のように構成された本システム1の使用時の動作について説明する。
まず、術者は、図11に示すように患者Wの胸壁W1に開口を形成し、この開口にトロッカーTなどを設置して胸腔W2内へのアクセス経路を確立する。
電極操作処置具30において、レバー45を操作することで、挿入部31内に把持片51、52が収容された第二の牽引状態にする。電極操作処置具30の先端硬質部35に設けられた突起38、39に電極10のガイド部17、18を係合させることで、電極操作処置具30に電極10を装着する。
なお、この時点では、針部材14は筒状部材19内に収容された待機状態となっていて、リード81と心臓刺激装置83とは接続されていない。
【0036】
続いて、電極10が装着された電極操作処置具30の挿入部31を、トロッカーTを通して胸腔W2内に導入する。
図示しない胸腔鏡などの観察手段で電極10の留置位置を確認し、ラチェット構造48による位置決めを解除し、レバー45を操作して操作ワイヤ57を押し込み状態にし、図6に示すように、電極10の貫通孔16を通して把持片51、52を先端側に突出させるとともに、把持片51、52を開状態にする。
開状態にした把持片51、52の歯部51a、52aを心嚢膜W4(図11参照。)に当接させつつ、レバー45を操作して第一の牽引状態とすることで、図7に示すように、把持片51、52間に心嚢膜W4を把持する。
【0037】
さらにレバー45を操作して第二の牽引状態とすることで、図9に示すように、電極10の貫通孔16内に心嚢膜W4を引き込んでおく。貫通孔16内に心嚢膜W4が引き込まれた状態は、ラチェット構造48により保持される。
次に、リード81の管路81a内のスタイレット23を、スタイレット23の軸線回りに回転させつつ押し込むことで針部材14を突出状態にする。針部材14は回転しながら貫通孔16内に突出して心嚢膜Wを貫通し、針部材14の突出方向Dの先端が支持体13を穿刺する。このとき、針部材14の隣り合う素線14aの間に心嚢膜W4が挟まれる。
以上の手順により、心嚢膜W4に電極10が係止される。
【0038】
次に、ラチェット構造48による位置決めを解除し、操作ワイヤ57を先端側に少し押し込むことで把持片51、52を開状態にして心嚢膜W4の把持を解除する。
心嚢膜W4に係止された電極10に対して先端硬質部35を基端側に移動させることで、先端硬質部35の突起38、39から電極10のガイド部17、18が外れる。
これにより、図12および図13に示すように、心嚢膜W4における心臓W5とは反対側の面上に電極10が留置される。
トロッカーTを通して電極操作処置具30の挿入部31を患者Wの体外に取り出す。
上記の手順を必要な数だけ繰り返すことで、心嚢膜W4の所望の部位に複数の電極10を取り付ける。
【0039】
続いて、トロッカーTを通して観察手段などを体外に取り出し、患者WからトロッカーTを取り外して、胸壁W1に形成した開口を縫合する。
リード81と心臓刺激装置83とをコネクタ82により接続し、リード81および心臓刺激装置83を患者Wの皮下に埋め込み、一連の手技を終了する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態のシステム1によれば、電極操作処置具30の先端硬質部35に電極10が装着された状態で、把持装置33により電極10の貫通孔16内に心嚢膜W4を引き込む。支持体13の一方の面13aに当接する心嚢膜W4は変形するのが抑えられる一方で、貫通孔16内に引き込まれた心嚢膜W4は、心臓W5の表面から立ち上がり、電極操作処置具30の一方の面13aに直交する方向、すなわち、支持体13の厚さ方向に近づくように変形する。このため、心嚢膜W4に針部材14を確実に貫通させて穿刺することができ、心嚢膜W4に電極10を留置することができる。
また、針部材14が突出する突出方向Dは心臓W5の表面にほぼ平行になるため、針部材14が心臓W5を穿刺するのを防止することができる。
【0041】
支持体13は、貫通孔16を挟んで突出方向Dの両側に配置されているため、貫通孔16内に引き込まれた心嚢膜W4の向きを、突出方向Dの両側ともに支持体13の厚さ方向に近づくように変形させることができる。したがって、針部材14が突出する突出方向Dに直交する方向に近づくように心嚢膜W4が配置されるため、心嚢膜W4に針部材14をより確実に穿刺することができる。
本実施形態では、貫通部は、支持体13に形成された貫通孔16である。このため、貫通孔16の全周にわたり、貫通孔16内に引き込まれた心嚢膜W4の向きを、支持体13の厚さ方向に近づくように変形させることができる。
突出状態のときに針部材14の先端が支持体13を穿刺するため、胸腔W2内に留置した針部材14により周辺の組織が損傷するのを防止することができる。
【0042】
把持装置33は、挿入部31、把持片51、52、開閉機構55、支持部材56、操作ワイヤ57、およびバネ部材58、59により構成されている。
操作ワイヤ57が押し込み状態になり把持片51、52が開状態になっている状態から、操作ワイヤ57を牽引して第一の牽引状態とすることで、まず、バネ定数の小さな第一のバネ部材58が第二のバネ部材59に比べて大きく変形し、把持片51、52が閉状態となることで把持片51、52が心嚢膜W4を把持する。
操作ワイヤ57をさらに牽引して第二の牽引状態とすることで第二のバネ部材59が変形し、心嚢膜W4を把持した把持片51、52を貫通孔16内に引き込む。
このように、バネ定数が互いに異なるバネ部材58、59を用いることで、心嚢膜W4を把持する動作と、貫通孔16内に心嚢膜W4を引き込む動作とを順番に行うことができ、心嚢膜W4に針部材14を穿刺する確実性を高めることができる。
【0043】
針部材14はコイル状に形成されているため、隣り合う素線14aの間に心嚢膜W4が挟まれることで、素線14aおよび心嚢膜W4の弾性力により、針部材14が心嚢膜W4から外れにくくなる。
電極10に形成されたガイド部17、18、および、挿入部31に形成された突起38、39という簡単な構成で、電極操作処置具30に電極10を着脱可能に構成することができる。
【0044】
本実施形態では、先端側支持部材70および基端側支持部材71は、1つの支持部材として一体に形成されてもよい。このように構成しても、第一のバネ部材58が密着状態となれば、操作ワイヤ57および支持部材を一体にして基端側に移動させることができるからである。
また、本実施形態では、バネ部材58、59は操作ワイヤ57の先端側に配されてもよい。
【0045】
本実施形態のシステム1は、以下に説明するようにその構成を様々に変形させることができる。
例えば、針部材14に代えて、図14に示す針部材91を備えてもよい。針部材91は、突出方向Dに延びる棒状に形成されている。針部材91の突出方向Dの先端は鋭利に形成され、返し91aを有する略銛状に形成されている。
このように構成された本システム1を用いたときには、図15に示すように、電極10の貫通孔16内に引き込まれた心嚢膜W4に針部材91を貫通させる。
本変形例の針部材91によれば、本実施形態の針部材14と同様の効果を奏することができる。さらに、針部材91における突出方向Dの先端には返し91aが形成されているため、針部材91から心嚢膜W4を抜けにくくすることができる。
【0046】
電極10に代えて、図16に示す電極10Aを備えてもよい。この電極10Aは、本実施形態の支持体13に代えて、平面視で略U字状(略三日月状)に形成された支持体94を備えている。
支持体94には、支持体94の厚さ方向に貫通する切り欠き(貫通部)95が形成されている。切り欠き95に突出した針部材14が支持体94に穿刺するように、切り欠き95は、支持体94の突出方向Dに対する側方に形成されることが好ましい。
この変形例では、ガイド部17、18は切り欠き95とは連通していない。
本変形例の支持体94においても、本実施形態の支持体13と同様の効果を奏することができる。
【0047】
図17に示す電極操作処置具30Aは、引き込み手段として把持装置33に代えて吸引装置98を備えている。
吸引装置98としては公知の装置を用いることができ、先端硬質部35の管路内の空気を外部に排出する排出動作を行うか否かを切り替えることができる。
吸引装置98に排出動作を行わせないようにして、心嚢膜W4に電極10の一方の面13aを当接させておく。この状態で、吸引装置98に排出動作を行わせることで、心嚢膜W4が電極10の貫通孔16内に引き込まれる。
この後は、本実施形態と同様な手順で、心嚢膜W4に針部材14を貫通させる。
本変形例の電極操作処置具30Aによっても、本実施形態の電極操作処置具30と同様の効果を奏することができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図18から図21を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図18に示すように、本実施形態のシステム2は、前述の電極10と、電極操作処置具100とを備えている。
電極操作処置具100は、前記第1実施形態の電極操作処置具30の各構成に対して、突起38、39、および支持部材56に代えて、係合部101、第三のバネ部材102、および支持部材103を備えている。
【0049】
支持部材103は、先端側が先端側回動軸53に接続されるとともに、基端が第一のバネ部材58の基端および第二のバネ部材59の先端に接続されている。支持部材103の基端には、軸線C1方向に通し孔103aが形成されている。
係合部101は、円板状に形成された当て板105と、当て板105の縁部から先端側に延びる一対の棒状体(係合部)106、107とで構成されている。
当て板105には軸線C1方向に通し孔105aが形成され、当て板105は第二のバネ部材59の基端に接続されている。
バネ部材58、59、102がそれぞれ伸び、操作ワイヤ57が先端側に移動した押し込み状態では、棒状体106、107の先端が先端硬質部35の先端面35aから突出している。棒状体106、107の先端は、突起38、39と同一形状に形成されている。
【0050】
第三のバネ部材102としては、つる巻きバネが用いられている。
第三のバネ部材102は軸線C1に沿うように配置され、第三のバネ部材102の螺旋の軸線上には操作ワイヤ57が配置されている。
第三のバネ部材102は、先端が当て板105に接続されるとともに、基端が支持板75に接続されている。第三のバネ部材102は、バネ定数が第二のバネ部材59のバネ定数よりも大きく設定され、軸線C1方向に伸縮可能に配置されている。
操作ワイヤ57は、支持部材103の通し孔103a、係合部101の通し孔105a、および、支持板75の通し孔75aに進退可能に挿通されている。
【0051】
このように構成された電極操作処置具100は、操作ワイヤ57が押し込み状態になっている状態からレバー45を操作して操作ワイヤ57を牽引すると、図19に示すように、基端側回動軸54が基端側に移動することで、把持片51、52が閉状態になり、第一のバネ部材58がバネ部材59、102より大きく変形し(縮む変化量が大きくなり)、第一のバネ部材58の隣り合う素線が密着する密着状態となる。このときの操作ワイヤ57の位置を、以下では、「第一の牽引状態」と称する。
【0052】
操作ワイヤ57を牽引すると、第一のバネ部材58が密着状態となっているために、図20に示すように、操作ワイヤ57および支持部材103が一体となって基端側に移動する。このとき、閉状態となった把持片51、52が先端硬質部35の管路内に引き込まれるとともに、第一のバネ部材58だけでなく第二のバネ部材59も密着状態となる。
このときの操作ワイヤ57の位置を、以下では、「第二の牽引状態」と称する。
【0053】
さらに、操作ワイヤ57を牽引すると、バネ部材58、59が密着状態となっているために、図21に示すように、操作ワイヤ57、支持部材103および係合部101が一体となって基端側に移動する。このとき、棒状体106、107の先端が、先端硬質部35内に引き込まれ、バネ部材58、59、102の全てが密着状態となる。
このときの操作ワイヤ57の位置を、以下では、「第三の牽引状態」と称する。
【0054】
次に、以上のように構成された本システム2の使用時の動作について説明する。
まず、術者は、第1実施形態のシステム1を使用した時と同様に、患者WにトロッカーTを設置する。
図18に示すように、操作ワイヤ57を押し込み状態にし、電極操作処置具100の棒状体106、107の先端に電極10のガイド部17、18を係合させることで、電極操作処置具100に電極10を装着する。
なお、このとき、把持片51、52は開状態になっている。
【0055】
続いて、トロッカーTを通して、電極10が装着された電極操作処置具100を胸腔W2内に導入する。
開状態になっている把持片51、52を心嚢膜W4に当接させつつ、レバー45を操作して操作ワイヤ57を第一の牽引状態とすることで、図19に示すように、把持片51、52間に心嚢膜W4を把持する。
レバー45を操作して第二の牽引状態とすることで、図20に示すように、電極10の貫通孔16内に心嚢膜W4を引き込む。
次に、リード81内のスタイレット23を押し込むことで、針部材14を突出状態にして心嚢膜Wを貫通させる。以上の手順により、心嚢膜W4に電極10が係止される。
【0056】
さらに、操作ワイヤ57を第三の牽引状態とすることで、図21に示すように、棒状体106、107の先端が先端硬質部35内に引き込まれ、電極操作処置具100から電極10が取り外される。
これ以降は、第1実施形態のシステム1と同様の手順なので、説明を省略する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態のシステム2によれば、心臓W5に穿刺せずに、電極10を確実に心臓W5の表面に留置することができる。
さらに、電極操作処置具100が係合部101および第三のバネ部材102を備えることで、操作ワイヤ57を牽引して第三の牽引状態としたときに、電極操作処置具100から電極10を容易に取り外すことができる。
【0058】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図22および図23を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図22に示すように、本実施形態のシステム3は、電極110と、電極操作処置具120とを備えている。
【0059】
電極110は、前記実施形態の電極10において、支持体13にガイド部17、18が形成されていないこと以外は同一の構成となっている。
電極操作処置具120は、前記第2実施形態の電極操作処置具100の各構成に対して、係合部101に代えて、一対の揺動部材121、122、および保持部材123を備えている。
【0060】
揺動部材121、122は、それぞれの基端が先端硬質部35に揺動可能に接続されている。揺動部材121、122の先端は、先端硬質部35の先端面より前方において、互いに離間するように、不図示のバネ部材などで付勢されている。
保持部材123は、前述の当て板105と、当て板105の縁部から先端側に延びる一対の棒状体124、125とで構成されている。当て板105は第二のバネ部材59の基端に接続されている。
バネ部材58、59、102がそれぞれ伸び、操作ワイヤ57が先端側に移動した押し込み状態では、前述のバネ部材の付勢力に抗して、揺動部材121、122の先端の間に電極110を挟むように、棒状体124の先端および棒状体125の先端が揺動部材121、122を保持するように設定されている。
第三のバネ部材102は、先端が当て板105に接続されている。
【0061】
このように構成された電極操作処置具120は、操作ワイヤ57が押し込み状態になっている状態からレバー45を操作して操作ワイヤ57を牽引すると、基端側回動軸54が基端側に移動することで、把持片51、52が閉状態になるとともに、第一のバネ部材58が密着状態となる。このときの操作ワイヤ57の位置を、以下では、「第一の牽引状態」と称する。
【0062】
操作ワイヤ57を牽引すると、第一のバネ部材58が密着状態となっているために、操作ワイヤ57および支持部材103が一体となって基端側に移動する。このとき、閉状態となった把持片51、52が先端硬質部35の管路内に引き込まれるとともに、第一のバネ部材58だけでなく第二のバネ部材59も密着状態となる。
このときの操作ワイヤ57の位置を、以下では、「第二の牽引状態」と称する。
【0063】
さらに、操作ワイヤ57を牽引すると、バネ部材58、59が密着状態となっているために、図23に示すように、操作ワイヤ57、支持部材103および保持部材123が一体となって基端側に移動する。このとき、棒状体124、125が、先端硬質部35内に引き込まれ、棒状体124、125による保持がなくなることで、揺動部材121、122の先端が離間する。バネ部材58、59、102の全てが密着状態となる。
このときの操作ワイヤ57の位置を、以下では、「第三の牽引状態」と称する。
【0064】
次に、以上のように構成された本システム3の使用時の動作について説明する。
基本的な手順は、第2実施形態のシステム2を使用した時と同様なので省略するが、操作ワイヤ57を第三の牽引状態にしておき、揺動部材121、122の先端の間に電極110を配置した状態で操作ワイヤ57を押し込み状態にする。これにより、図22に示すように、電極110の側面両側から揺動部材121、122の先端で挟み、電極操作処置具120に電極110を装着する。
【0065】
開状態になっている把持片51、52を心嚢膜W4に当接させつつ、レバー45を操作して操作ワイヤ57を第一の牽引状態とすることで、把持片51、52間に心嚢膜W4を把持する。
レバー45を操作して第二の牽引状態とすることで、電極110の貫通孔16内に心嚢膜W4を引き込む。
さらに、操作ワイヤ57を第三の牽引状態とすることで、図23に示すように、電極操作処置具120から電極110が取り外される。
これ以降は、前記実施形態のシステム1と同様の手順なので、説明を省略する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態のシステム3によれば、心臓W5に穿刺せずに、電極10を確実に心臓W5の表面に留置することができる。
さらに、電極110にガイド部17、18が形成されていないため、電極110をより小さく形成することができ、電極110が留置される患者Wの負担を低減させることができる。
【0067】
なお、本実施形態では、不図示のバネ部材などにより揺動部材121、122の先端は互いに離間するように付勢されているとした。しかし、このバネ部材を備えず、揺動部材自身の弾性により、一対の揺動部材の先端が互いに離間するように付勢されるように構成してもよい。
【0068】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図24から図28を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図24および図25に示すように、本実施形態のシステム4は、電極130と、前述の電極操作処置具30とを備えている。
【0069】
電極130は、第1実施形態の電極10の各構成に対して、針部材14およびスタイレット23に代えて、棒状の接続体131を備えている。接続体131は、貫通孔16を挟んで対向する貫通孔16の内周面同士を接続している。すなわち、接続体131の幅方向の両側には、貫通孔16がそれぞれ形成されている。
【0070】
次に、以上のように構成された本システム4の使用時の動作について説明する。
以下の手順は、第1実施形態のシステム1を使用したときの手順と同様なので、異なる部分のみ説明する。
術者は、図25に示すように、不図示の操作ワイヤ57の位置を第二の牽引状態にして、把持片51、52により、電極130の貫通孔16内に心嚢膜W4を引き込んでおく。
次に、縫合糸T6が接続された曲がり針T5を不図示の把持鉗子などで把持し、貫通孔16内に引き込まれた心嚢膜W4に、先端硬質部35の管路の基端側から曲がり針T5を貫通させる。さらに、貫通孔16内で、接続体131の回りを回るように曲がり針T5を通す。
【0071】
続いて、図26に示すように電極操作処置具30から電極130を取り外し、図27に示すように把持鉗子T2で曲がり針T5を把持して、曲がり針T5を電極130から離間させるように引くことで、心嚢膜W4に縫合糸T6を通す。
そして、図28に示すように、接続体131の回りに縫合糸T6を巻き、縫合糸T6で結び目T7を形成することで、心嚢膜W4に電極130を係止する。
【0072】
以上、本発明の第1実施形態から第4実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
たとえば、前記第1実施形態から第3実施形態では、ラチェット構造48は、操作ワイヤ57が各牽引状態となったときのレバー45の揺動角度以外でも、ハンドル部42aに対してレバー45を位置決めするように構成されていてもよい。
【0073】
また、前記第1実施形態から第3実施形態では、操作ワイヤ57に代えて、長手方向の圧縮力に対する一定の剛性を有する棒状部材を用いてもよい。この場合は、バネ部材58、59は備えられなくてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1、2、3、4 システム(心臓刺激装置システム)
10、10A、110、130 電極
11、12 印加部
13、94 支持体(基材)
13a 一方の面
14、91 針部材(係止部材)
16 貫通孔(貫通部)
17、18 ガイド部(被係合部)
30、100、120 電極操作処置具
31 挿入部(本体)
33 把持装置(引き込み手段)
35 先端硬質部(先端部)
38、39 突起(係合部)
51、52 把持片
53 先端側回動軸
54 基端側回動軸
55 開閉機構
56 支持部材
57 操作ワイヤ
58 第一のバネ部材
59 第二のバネ部材
95 切り欠き(貫通部)
98 吸引装置(引き込み手段)
102 第三のバネ部材
106、107 棒状体(係合部)
W4 心嚢膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料でシート状に形成されるとともに厚さ方向に貫通する貫通部が形成された基材、および前記基材の一方の面に取り付けられた導電性の印加部を有する電極と、
先端部に前記電極が着脱可能に取り付けられる電極操作処置具と、
を備え、
前記電極操作処置具は、前記先端部に前記電極が装着された状態で、前記基材の前記一方の面側の心嚢膜を前記貫通部内に引き込む引き込み手段を有し、
前記電極は、前記一方の面に沿うように前記貫通部に突出する係止部材を有することを特徴とする心臓刺激装置システム。
【請求項2】
前記基材は、前記貫通部を挟んで前記係止部材が突出する突出方向の両側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の心臓刺激装置システム。
【請求項3】
前記貫通部は、前記基材に形成された貫通孔であることを特徴とする請求項2に記載の心臓刺激装置システム。
【請求項4】
前記係止部材が前記貫通部に突出したときに、前記係止部材の前記突出方向の先端が前記基材に穿刺することを特徴とする請求項2に記載の心臓刺激装置システム。
【請求項5】
前記引き込み手段は、
自身の先端が前記先端部とされた本体と、
互いに接近および離間可能とされた一対の把持片と、
先端側回動軸および基端側回動軸を有するとともに一対の前記把持片に接続され、前記回動軸間の距離が短くなったときに一対の前記把持片が互いに離間し、前記回動軸間の距離が長くなったときに一対の前記把持片が互いに接近するように構成された開閉機構と、
前記先端側回動軸に接続された支持部材と、
前記基端側回動軸に接続された操作ワイヤと、
前記操作ワイヤに沿って伸縮可能に配置され、先端が前記操作ワイヤに接続されるとともに基端が前記支持部材に接続された第一のバネ部材と、
前記操作ワイヤに沿って伸縮可能に配置され、先端が前記支持部材に接続されるとともに基端が前記本体に接続された第二のバネ部材と、
を有し、
前記第一のバネ部材のバネ定数は前記第二のバネ部材のバネ定数よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の心臓刺激装置システム。
【請求項6】
前記係止部材は、前記係止部材が突出する突出方向を螺旋の軸線とするコイル状に形成されるとともに、前記突出方向の先端が鋭利に形成された針部材であることを特徴とする請求項1に記載の心臓刺激装置システム。
【請求項7】
前記係止部材は、前記係止部材が突出する突出方向に延びるとともに、前記突出方向の先端が鋭利に形成された針部材であることを特徴とする請求項1に記載の心臓刺激装置システム。
【請求項8】
前記電極操作処置具は、前記先端部の先端面から突出する係合部を有し、
前記電極は、前記基材に形成され前記係合部に着脱可能に取り付けられる被係合部を有することを特徴とする請求項1に記載の心臓刺激装置システム。
【請求項9】
前記引き込み手段は、
自身の先端が前記先端部とされた本体と、
互いに接近および離間可能とされた一対の把持片と、
先端側回動軸および基端側回動軸を有するとともに一対の前記把持片に接続され、前記回動軸間の距離が短くなったときに一対の前記把持片が互いに離間し、前記回動軸間の距離が長くなったときに一対の前記把持片が互いに接近するように構成された開閉機構と、
前記先端側回動軸に接続された支持部材と、
前記基端側回動軸に接続された操作ワイヤと、
前記操作ワイヤに沿って伸縮可能に配置され、先端が前記操作ワイヤに接続されるとともに基端が前記支持部材に接続された第一のバネ部材と、
前記操作ワイヤに沿って伸縮可能に配置され、先端が前記支持部材に接続された第二のバネ部材と、
を有し、
前記電極操作処置具は、
前記本体の先端面から突出するとともに前記第二のバネ部材の基端に接続された係合部と、
前記操作ワイヤに沿って伸縮可能に配置され、先端が前記係合部に接続されるとともに基端が前記本体に接続された第三のバネ部材と、
を有し、
前記第一のバネ部材のバネ定数は前記第二のバネ部材のバネ定数よりも小さく設定され、かつ、前記第二のバネ部材のバネ定数は前記第三のバネ部材のバネ定数よりも小さく設定され、
前記電極は、前記基材に形成され、前記本体の先端面から突出した前記係合部に着脱可能に取り付けられる被係合部を有することを特徴とする請求項1に記載の心臓刺激装置システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate